(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-26
(45)【発行日】2024-04-03
(54)【発明の名称】畜肉様食品の原料および畜肉様食品
(51)【国際特許分類】
A23J 3/00 20060101AFI20240327BHJP
A23J 3/16 20060101ALI20240327BHJP
【FI】
A23J3/00 503
A23J3/16 501
A23J3/16 502
(21)【出願番号】P 2019211673
(22)【出願日】2019-11-22
【審査請求日】2022-11-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000000158
【氏名又は名称】イビデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】中村 真也
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼▲柳▼ 智博
(72)【発明者】
【氏名】井川 菜央
【審査官】厚田 一拓
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-328908(JP,A)
【文献】特開2010-200627(JP,A)
【文献】国際公開第2012/127694(WO,A1)
【文献】特開2013-034417(JP,A)
【文献】国際公開第2011/043384(WO,A1)
【文献】特開2008-161105(JP,A)
【文献】特開昭52-154551(JP,A)
【文献】特開2012-075358(JP,A)
【文献】特開2019-208471(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23J 1/00 - 7/00
A23L 2/00 - 35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
組織状大豆蛋白素材の表面に
のみ粉末状大豆蛋白素材が付着している
畜肉様食品の原料であって、
前記組織状大豆蛋白素材が偏平形状の組織状大豆蛋白素材および/または棒状の組織状大豆蛋白素材を含み、
前記棒状の組織状大豆蛋白素材の平均幅は、3~10mmであり、
前記偏平形状の組織状大豆蛋白素材の平均厚さは、1~5mmであり、
前記組織状大豆蛋白素材100重量部に対して、前記粉末状大豆蛋白素材が5~50重量部付着してなることを特徴とする畜肉様食品の原料。
【請求項2】
前記偏平形状の組織状大豆蛋白素材の平均長さが5mm以上、15mm以下であり、
前記棒状の組織状大豆蛋白素材の平均長さが、10mm以上、20mm以下である請求項
1に記載の畜肉様食品の原料。
【請求項3】
前記組織状大豆蛋白素材の吸水率が200~500%である請求項1
又は2に記載の畜肉様食品の原料。
【請求項4】
組織状大豆蛋白素材の表面に
のみ粉末状大豆蛋白素材が付着している畜肉様食品の原料と結着原料とからなる
畜肉様食品であって、
前記組織状大豆蛋白素材が偏平形状の組織状大豆蛋白素材および/または棒状の組織状大豆蛋白素材であり、
前記棒状の組織状大豆蛋白素材の平均幅は、3~10mmであり、
前記偏平形状の組織状大豆蛋白素材の平均厚さは、1~5mmであり、
前記組織状大豆蛋白素材100重量部に対して、前記粉末状大豆蛋白素材が5~50重量部付着してなることを特徴とする畜肉様食品。
【請求項5】
前記偏平形状の組織状大豆蛋白素材の平均長さが5mm以上、15mm以下であり、
前記棒状の組織状大豆蛋白素材の平均長さが、10mm以上、20mm以下である請求項
4に記載の畜肉様食品。
【請求項6】
前記組織状大豆蛋白素材の吸水率が200~500%である請求項
4又は5に記載の畜肉様食品。
【請求項7】
前記結着原料は、粉末状大豆蛋白素材を含む請求項
4~6のいずれかに記載の畜肉様食品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、畜肉様食品の原料と当該原料を使用した畜肉様食品に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、畜肉原料を取り巻く社会情勢は厳しくなる現状があり、畜肉の代替原料あるいは
増量剤として大豆蛋白質等の植物性蛋白質が使用される傾向が強まっている。
植物性蛋白は、加工食品の分野で広く利用されており、日本農林水産省において、「植物性たん白の日本農林規格」によって定義付けされている。この規格において、植物性蛋白の原材料は、大豆粉、脱脂大豆粉、小麦粉、小麦グルテン等から選ばれるものとされている。そして、植物性蛋白の種類は、粉末状植物性蛋白、ペースト状植物性蛋白、粒状植物性蛋白および繊維状植物性蛋白と区分されている(非特許文献1)。
【0003】
植物性蛋白の中でも、脱脂大豆や粉末状大豆蛋白素材を原料として組織化した組織状大豆蛋白素材は多様な用途に用いられており、ハンバーグやミートボール等の畜肉加工食品には挽肉の増量剤として組織状大豆蛋白が用いられている。
一方、組織状大豆蛋白素材の食感の特徴として、咀嚼時のほぐれや消失感が挽肉に比べて劣るという点が挙げられる。このような組織状大豆蛋白素材の食感改良について様々な研究がなされてきた。例えば、特許文献1のように組織状大豆蛋白素材が、所定長さの偏平形状の組織状大豆蛋白素材と、粒形状の組織状大豆蛋白素材を組合せたものであって、組織状大豆蛋白素材が還元糖を含むものが開示されているが、畜肉組織のほぐれ感は改善されているものの、咀嚼時の畜肉様組織の崩れ感が強すぎて、天然の上質な畜肉に比べて食感は劣ってしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【非特許文献】
【0005】
【文献】「植物性たん白の日本農林規格」;ウェブサイト(URL:http://www.maff.go.jp/j/kokuji_tuti/kokuji/k0001024.html)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らは、このような畜肉様食品について食感が天然の上質な畜肉に劣る理由として、組織状植物蛋白質を用いて製造した畜肉様食品は、組織状植物蛋白質と結着原料との密着性が低く、咀嚼時に組織状植物蛋白質と結着原料が離間してしまい、畜肉様組織に崩れが生じて、これが食感に違和感を与えている原因であることを突き止めた。
【0007】
本発明は、咀嚼時に組織状植物蛋白質と結着原料が離間することを防止することで、咀嚼時の畜肉様組織の崩れ感を無くし、天然の上質な畜肉の食感を忠実に再現できる畜肉様食品原料とその畜肉様食品原料と結着原料とからなる畜肉様食品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明は、組織状大豆蛋白素材の表面に粉末状大豆蛋白素材が付着していることを特徴とする畜肉様食品の原料である。
また、別の本発明は、組織状大豆蛋白素材の表面に粉末状大豆蛋白素材が付着している畜肉様食品の原料と結着原料とからなることを特徴とする畜肉様食品である。
【0009】
本明細書において、「組織状大豆蛋白素材」とは、大豆由来の植物性蛋白であり、「植物性たん白の日本農林規格」に規定された粒状植物性蛋白および/または繊維状植物性蛋白からなる肉様の組織を有するもののことを意味する。
また、「粉末状大豆蛋白素材」とは、大豆由来の植物性蛋白であり、「植物性たん白の日本農林規格」に規定された「粉末状植物性たん白」のことを意味する。
【0010】
本発明では、組織状大豆蛋白素材は偏平形状の組織状大豆蛋白素材および/または棒状の組織状大豆蛋白素材を含むことが望ましい。
【0011】
本発明では、前記偏平形状の組織状大豆蛋白素材の平均長さは5mm以上、15mm以下であり、前記棒状の組織状大豆蛋白素材の平均長さは、10mm以上、20mm以下であることが望ましい。
【0012】
本明細書において、「平均長さ」とは、乾燥状態における偏平形状または棒状の組織状大豆蛋白素材の平面視で最も長い部分を偏平形状または棒状の組織状大豆蛋白素材の長さと定義して、任意の300個の偏平形状または棒状の組織状大豆蛋白素材の長さを測定して、その平均値を平均長さとする。
【0013】
本発明では、前記棒状の組織状大豆蛋白素材の平均幅は、3~10mmであることが望ましい。
なお、本明細書において、「棒状の組織状大豆蛋白素材の平均幅」とは、乾燥状態における棒状の組織状大豆蛋白素材の任意の300個について、棒状の組織状大豆蛋白素材の平面視で最も短い部分を計測して、その平均値と定義する。
【0014】
本発明では、前記偏平形状の組織状大豆蛋白素材の平均厚さは、1~5mmであることが望ましい。
なお、本明細書において、「偏平形状の組織状大豆蛋白素材の平均厚さ」とは、乾燥状態における偏平形状の組織状大豆蛋白素材の任意の300個について、偏平形状の組織状大豆蛋白素材の最も厚い部分を計測して、その平均値と定義する。
【0015】
本発明では、組織状大豆蛋白素材の吸水率は200~500%であることが望ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、肉類を主体とする畜肉様食品において、従来の組織状大豆蛋白素材を使用した場合に比べ、咀嚼時の畜肉様組織の崩れ感を無くし、天然の上質な畜肉の食感を忠実に再現でき、食感を天然の上質な畜肉と遜色のないものとすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明は、組織状大豆蛋白素材の表面に粉末状大豆蛋白素材が付着していることを特徴とする畜肉様食品の原料である。
本発明の畜肉様食品の原料は、結着原料と混合され、畜肉様食品とされる。
本発明の畜肉様食品の原料では、組織状大豆蛋白素材の表面に粉末状大豆蛋白素材が付着しており、この粉末状大豆蛋白素材が結着原料との密着性を向上させることになる。その結果、咀嚼時に組織状大豆蛋白素材と結着原料が離間してしまうことを防止して、咀嚼時の畜肉様組織の崩れを抑制し、天然の上質な畜肉と同様の食感を再現できる。
【0018】
本発明の畜肉様食品の原料においては、組織状大豆蛋白素材100重量部に対して、粉末状大豆蛋白素材が5~50重量部付着していることが望ましい。粉末状大豆蛋白素材の付着量が少なすぎても結着原料との密着性が低くなり、粉末状大豆蛋白素材の付着量が多すぎても粉末状大豆蛋白素材が凝集してしまい、結着原料との密着性が低くなるからである。
【0019】
本発明の畜肉様食品の原料においては、組織状大豆蛋白素材は偏平形状の組織状大豆蛋白素材および/または棒状の組織状大豆蛋白素材を含むことが望ましい。偏平形状の組織状大豆蛋白素材は、畜肉組織のマトリクスを、棒状の組織状大豆蛋白素材は畜肉組織の繊維構造をそれぞれ再現できるからである。
【0020】
本発明の畜肉様食品の原料においては、偏平形状の組織状大豆蛋白素材の平均長さは、5mm以上、15mm以下であることが望ましい。
前記偏平形状の組織状大豆蛋白素材の平均長さが15mmを超える場合は、加熱調理後に畜肉様食品の硬さが高くなりすぎ、その一方、凝集性が低くなりすぎてしまい、食感が硬くなってしまう。
逆に前記偏平形状の組織状大豆蛋白素材の平均長さが5mm未満の場合は、加熱調理後に、畜肉様食品の硬さと凝集性が低くなってしまい、柔らかすぎる食感となる。
【0021】
また、棒状の組織状大豆蛋白素材の平均長さは、10mm以上、20mm以下であることが望ましい。
この範囲より長い場合は、加熱調理後に畜肉様食品の硬さが高くなりすぎ、その一方、凝集性が低くなりすぎてしまい、食感が硬くなってしまう。
逆にこの範囲より短い場合は、畜肉様食品の硬さと凝集性が低くなり、柔らかすぎる食感となってしまうからである。
【0022】
なお、凝集性とは、加重を掛けた場合における畜肉様組織の変形しやすさの指標であり、凝集性が高い場合は、加重が掛かった際に変形しやすく、破壊が起きにくいと言える。
凝集性も硬さもレオメーターを用いた粘弾性測定で計測することができる。
【0023】
本発明の畜肉様食品の原料においては、組織状大豆蛋白素材の吸水率は、200~500%であることが望ましい。
組織状大豆蛋白素材の吸水率が低すぎると、加熱調理時に水分や油分を吸収せず、硬さが高くなりすぎ、その一方、凝集性は低くなりすぎ、食感が硬くなる。
逆に前記組織状大豆蛋白素材の吸水率が高すぎると、加熱調理時に水分や油分を吸収して膨潤し、畜肉様食品の硬さが低下し、その一方、凝集性が高くなりすぎてしまうため、
食感が柔らかくなりすぎる。
【0024】
本発明の畜肉様食品の原料においては、偏平形状の組織状大豆蛋白素材の吸水率は、350~500%であることが望ましい。
偏平形状の組織状大豆蛋白素材の吸水率が低すぎると、加熱調理時に畜肉様食品が油や水分を含んだ場合でも、偏平形状の組織状大豆蛋白素材が膨張せず、畜肉様食品の硬さが高くなりすぎ、その一方、凝集性は低くなりすぎる。
逆に吸水率が高すぎると、加熱調理時に水や油により偏平形状の組織状大豆蛋白素材が膨張しすぎて、畜肉様食品の硬さが低下し、一方、凝集性が高くなりすぎてしまう。
【0025】
本発明の畜肉様食品の原料においては、棒状の組織状大豆蛋白素材の吸水率は、200%以上、350%未満であることが望ましい。
棒状の組織状大豆蛋白素材の吸水率が低すぎると加熱調理時に畜肉様食品が水や油を含んだ場合でも、前記棒状の組織状大豆蛋白素材が膨張せず畜肉様食品の硬さが高くなりすぎ、その一方、凝集性は低くなりすぎる。
逆に吸水率が高すぎると加熱調理時に水や油により棒状の組織状大豆蛋白素材が膨張しすぎて、棒状の組織状大豆蛋白素材の補強効果が低下して畜肉様食品の硬さが低下し、一方、凝集性が高くなりすぎてしまう。
【0026】
本発明の畜肉様食品の原料においては、偏平形状の組織状大豆蛋白素材と棒状の組織状大豆蛋白素材を重量比で2:8~8:2の割合で混合することが望ましい。
【0027】
本発明の畜肉様食品の原料においては、棒状の組織状大豆蛋白素材の平均幅は、3~10mmであることが望ましい。
前記棒状の組織状大豆蛋白素材の平均幅が大きすぎると棒状の組織状大豆蛋白素材同士の絡み合いが少なくなり、畜肉様食品に対する補強効果が低下する。
逆に前記棒状の組織大豆蛋白素材の平均幅が小さすぎると棒状の組織大豆蛋白素材自体の強度が低くなり、畜肉様食品に対する補強効果がやはり低下してしまう。
なお、本明細書において、「棒状の組織状大豆蛋白素材の平均幅」とは、乾燥状態における棒状の組織状大豆蛋白素材の任意の300個について、棒状の組織状大豆蛋白素材の平面視で最も短い部分を計測して得られた値の平均値と定義する。
【0028】
また、本発明の畜肉様食品の原料においては、偏平形状の組織状大豆蛋白素材の平均厚さは、1~5mmであることが望ましい。
厚すぎると加熱調理後の畜肉様食品の硬さと凝集性が高くなりすぎる。
逆に薄すぎても加熱調理後の畜肉様食品の硬さと凝集性が低下してしまう。
このような理由により、自然な畜肉の持つ硬さと凝集性から逸脱してしまう。
なお、本明細書において、「偏平形状の組織状大豆蛋白素材の平均厚さ」とは、乾燥状態における偏平形状の組織状大豆蛋白素材の任意の300個について、偏平形状の組織状大豆蛋白素材の最も厚い部分を計測して得られた値の平均値と定義する。
【0029】
次に、本発明の畜肉様食品の原料の製造方法について説明する。
【0030】
(大豆蛋白混合物準備工程)
まず、分離大豆蛋白、濃縮大豆蛋白や脱脂大豆等の大豆蛋白原料に加水し、さらに必要に応じてシリカ等の食感改善のための無機粒子を加え、混練することにより大豆蛋白混合物を準備する。
【0031】
(組織状大豆蛋白素材作製工程)
準備した大豆蛋白混合物をエクストルーダー(押出成型機)に投入し、その後、加圧加熱処理し、熱可塑性となった原料をスクリューの先端部に設けたダイ(口金)より押し出し、組織を所望な程度に膨化させ、次いで細断もしくは破砕、乾燥・冷却、整粒工程を経て組織状大豆蛋白素材を作製する。
この際、ダイの形状、細断もしくは破砕方法、整粒条件を調整することにより、組織状大豆蛋白素材の平均長さや厚さ等の形状を調整することができる。
これにより偏平形状や棒状の組織状大豆蛋白素材を作製することができる。
【0032】
加圧加熱処理は、公知のエクストルーダーを用い、公知の方法に従って行なうことができる。混練が強く安定的に組織化しやすい二軸以上の軸を有するエクストルーダーを用いることが望ましい。
【0033】
エクストルーダーの加熱条件は、80~150℃が望ましい。組織状大豆蛋白素材の形状は、ダイの形状、細断もしくは破砕方法によって調整する。また、整粒方法としてはふるいや風力分級などの方法を採用することができる。さらに、パワーミルのように破砕とふるいによる整粒を同時に行う方法でもよい。これにより、組織状大豆蛋白素材を偏平形状や棒状にすることができる。
吸水率は、原料組成、エクストルーダーの加熱温度により調整することができる。
【0034】
(粉末状大豆蛋白素材付着工程)
次に、作製した組織状大豆蛋白素材を水に浸漬して吸水させた後、粉末状大豆蛋白素材と混合し、さらにこれを乾燥させることで組織状大豆蛋白素材の表面に粉末状大豆蛋白素材を付着させることができる。このように、組織状大豆蛋白素材の表面に粉末状大豆蛋白素材を付着させたものは、結着原料との結合性に優れるため、畜肉様食品を咀嚼した場合に畜肉様組織が崩れず、弾力があり、畜肉特有の上質の食感を付与することができる。
【0035】
以上の工程を経て、本発明の畜肉様食品の原料を製造することができる。
【0036】
次に、本発明の畜肉様食品の原料を用いた畜肉様食品について説明する。
本発明の畜肉様食品は、組織状大豆蛋白素材の表面に粉末状大豆蛋白素材が付着している畜肉様食品の原料と結着原料とからなることを特徴とする。
このような、畜肉様食品は、本発明の畜肉様食品の原料を用いているので、畜肉の食感が忠実に再現されている。
なお、本発明の畜肉様食品の原料を用いた畜肉様食品も、本発明の一態様である。
【0037】
結着原料としては、水や、油脂や、ペースト状植物性蛋白や、大豆蛋白カード等が望ましい。また、結着原料は、粉末状大豆蛋白素材を含んでいてもよい。
なお、大豆蛋白カードとは、水と粉末状大豆蛋白素材をミキサー等で攪拌混合し、さらにこれに必要に応じて油脂を添加してミキサー等で攪拌混合することで得られるエマルジョンである。大豆蛋白カード中、粉末状大豆蛋白素材は5~30重量%、必要があれば油脂は5~20重量%の濃度で含まれていることが望ましい。油脂としてはキャノーラ油などの植物性油脂を使用できる。
【0038】
次に、畜肉様食品の製造方法について説明する。畜肉様食品を調製するに当たり、本発明の畜肉様食品の原材料同士をつなぎ合わせる役目を有する結着原料を加えた生地の調製を行う。
例えば、本発明の畜肉様食品の原料に、結着原料として粉末状大豆蛋白素材、水、油脂を加えて混練することにより大豆蛋白生地を調製することができる。
また、結着原料として、ペースト状植物性蛋白や大豆蛋白カードを利用することができる。
【0039】
本発明の畜肉様食品の原料は、生地中の重量割合が1~25重量%であることが望ましい。また、結着原料は、生地中の重量割合が2~20重量%であることが望ましい。
【0040】
生地中には、上記の本発明の畜肉様食品の原料および結着原料以外の副材料として、水、油脂類糖類、調味料等の生地の骨格を構成する材料のほか、人参、ごぼう、ごま、タマネギ等の野菜類や、ワカメ、ひじき等の海藻類や挽肉等の肉類等の生地中に分散させる固形具材を加えることができる。
【0041】
次に、生地を所定形状に成型して、焼成加熱、蒸し加熱、ボイル加熱、フライ加熱、電磁波加熱等を適宜組み合わせて用いることができる。これによって成型した生地が加熱凝固し、形状が安定化される。
【0042】
以上により得られた製品は、ハンバーグ、ミートボール等の畜肉食品の形態として提供することができる。
【実施例】
【0043】
(実施例1)
以下に示す方法により、実施例1に係る畜肉様食品の原料を製造した。
【0044】
(組織状大豆蛋白素材作製工程-偏平形状の組織状大豆蛋白素材の作製)
脱脂大豆90重量部、粉末状大豆蛋白10重量部からなる主原料粉の重量に対して、シリカ0.7重量部を混合し、二軸エクストルーダーにて原料混合粉に対し21重量部の水を供給しながら出口温度100℃、スクリュー回転数450RPMの条件で、厚み1mm幅15mmのスリットダイから押出して偏平なシート状の組織状大豆蛋白素材を作製した。
この偏平なシート状組織状大豆蛋白素材をパワーミルにて粉砕し、Φ12mmスクリーン通過品を回収して、偏平形状の組織状大豆蛋白素材とした。
【0045】
偏平形状の組織状大豆蛋白素材の吸水率を測定したところ410%であった。
なお、吸水率は、以下のように測定した。
まず、試料10gを200mLビーカーに入れ、そこに98℃の水を200g加え、5分間静置する。その後、篩を用いて5分間水切りを行った後、湯戻し後の試料の重量を測定する。吸水率を下記数式により算出する。
吸水率(%)=(湯戻し後の原料の固形分重量/原料10g中の固形分重量)×100
【0046】
また、乾燥状態における偏平形状の組織状大豆蛋白素材の平均長さは12.3mmであり、平均厚みは3mmであった。偏平形状の組織状大豆蛋白素材の長さの分布を表1に示す。
この偏平形状の組織状大豆蛋白素材は、左右および上下方向に引っ張った場合でも、繊維状に裂けることはなかった。
【0047】
【0048】
(組織状大豆蛋白素材作製工程-棒状の組織状大豆蛋白素材の作製)
脱脂大豆80重量部、粉末状大豆たん白20重量部からなる主原料粉の重量に対して、シリカ0.7重量部を混合し、二軸エクストルーダーにて原料混合粉に対し25重量部の水を供給しながら出口温度120℃、スクリュー回転数450RPMの条件で、厚み1mm幅15mmのスリットダイから押出して偏平なシート状の組織状蛋白素材を作製した。シート状組織は出口にて押出方向に対し垂直方向にカットし、平均幅3.2mmの棒状の組織状大豆蛋白素材を作製した。棒状の組織状大豆蛋白素材の吸水率を測定したところ300%であった。
また、乾燥状態における棒状の組織状大豆蛋白素材の平均長さは12.8mmであり、厚みは3mmであり、幅は3.2mmであった。棒状の組織状大豆蛋白素材の長さの分布を表1に示す。
この棒状の組織状大豆蛋白素材は、長手方向に垂直に引っ張った場合でも、繊維状に裂けることはなかった。
【0049】
(粉末状大豆蛋白素材付着工程)
上記偏平形状の組織状大豆蛋白素材と上記棒状組織状大豆蛋白素材を1:1の重量比で混合して実施例1に係る組織状大豆蛋白素材とした。
次に、当該組織状大豆蛋白素材を25℃、60分の条件で水に浸漬した後、原料中の固形分に対して重量比が330%となるように脱水することで水分を調整した。この組織状大豆蛋白素材の混合物を100重量部と粉末状大豆蛋白を27重量部とを混合した後、85℃で乾燥させて、実施例1に係る畜肉様食品の原料とした。
【0050】
(参考例1)
上記粉末状大豆蛋白素材付着工程において、粉末状大豆蛋白を添加せず、85℃で乾燥させた以外は実施例1と同様に参考例1に係る畜肉様食品の原料を製造した。
【0051】
(畜肉様食品の製造)
最初に、大豆蛋白カードを調製する。水12.8重量部に、粉末状大豆蛋白素材3.2重量部を加えてミキサーで攪拌する。ついでこれにキャノーラ油を1.6重量部加えて、ミキサーで攪拌してエマルジョン状態とし、大豆蛋白カードとした。
実施例1または参考例1に係る畜肉様食品の原料18.6重量部、水38重量部、大豆蛋白カード17.6重量部(キャノーラ油1.6重量部、粉末状大豆蛋白3.2重量部、水12.8重量部)、玉ねぎ20.8重量部、パン粉4.8重量部、塩0.5重量部、植物性野菜ブイヨン0.2重量部、ブラックペッパー0.05重量部、ココアパウダー0.1重量部を混合して混練し、ハンバーグ形状とした。
【0052】
(レオメーターによる評価)
このハンバーグを160~180℃で焼成して実施例1または参考例1に係る焼成サンプル(畜肉様食品)とした。このサンプルについてレオメーターによる粘弾性測定を実施する。
具体的には、レオメーターを用いた粘弾性測定によるテクスチャー解析により硬さを測定する。硬さはプランジャー押し込み時の最大荷重を面積で割った値であり、最初噛んだ時の食感の指標となる。
測定条件としては、直径Φ20mmのプランジャーを備えるレオメーター(SUN RHEO METER CR-100)により、テクスチャー解析モード、歪率50%、反復回数2回の条件で測定し、硬さを評価する。結果を表2に示す。
【0053】
(食感評価)
実施例1および参考例1に係る焼成サンプルを食し、食感を官能評価した。結果を表2に示す。
【0054】
【0055】
一般に、焼成した天然の畜肉をレオメーターで計測すると、硬さは0.5×107~1.5×107N/m2であり、実施例1および参考例1ともこの数値範囲を満たしている。
しかしながら、参考例1では、咀嚼時に畜肉組織がぼろぼろ崩れてしまい、ほぐれると言うよりはむしろ肉様組織がぼろぼろと崩れる食感であり、食感評価が良くなかった。
一方、本発明の畜肉様食品の原料を用いて製造した畜肉様食品は、咀嚼時においても畜肉組織が崩れることがなく、上質な天然肉が持つしっかりとした歯ごたえと、粘りながらほぐれる食感であり、天然の上質な畜肉の食感が維持されており、畜肉様食品として優れていることが分かる。