(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-26
(45)【発行日】2024-04-03
(54)【発明の名称】コンクリート床目地構造
(51)【国際特許分類】
E04B 1/682 20060101AFI20240327BHJP
E04B 5/02 20060101ALI20240327BHJP
【FI】
E04B1/682 A
E04B5/02 R
(21)【出願番号】P 2019236434
(22)【出願日】2019-12-26
【審査請求日】2022-08-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木村 篤
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 真理
(72)【発明者】
【氏名】川原 悟
(72)【発明者】
【氏名】羽嶋 宏治
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 伸一
(72)【発明者】
【氏名】藤田 進
(72)【発明者】
【氏名】油川 健樹
(72)【発明者】
【氏名】小林 亨
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 周平
(72)【発明者】
【氏名】廣田 惣
【審査官】吉村 庄太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-074337(JP,A)
【文献】特開2009-256971(JP,A)
【文献】特開平08-053949(JP,A)
【文献】特開2000-328503(JP,A)
【文献】特開2015-021343(JP,A)
【文献】米国特許第04972537(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/682
E04B 5/02
E04B 1/58
E04F 15/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート床部と、
前記コンクリート床部と隣り合うプレキャスト床版と、
軟質エポキシ樹脂で形成され、前記コンクリート床部及び前記プレキャスト床版の上面側の目地部に充填され
、前記コンクリート床部及び前記プレキャスト床版を接着する樹脂系軟質充填剤と、
前記コンクリート床部及び前記プレキャスト床版の前記上面、及び前記目地部を被覆するベースコートと、
を備えるコンクリート床目地構造。
【請求項2】
前記目地部は、互いに対向するとともに、前記コンクリート床部及び前記プレキャスト床版の前記上面側へ向かうに従って互いに離れるように傾斜する一対の対向面を有し、
前記樹脂系軟質充填剤は、前記一対の対向面間に充填される、
請求項1に記載のコンクリート床目地構造。
【請求項3】
前記目地部は、断面三角形状に形成される、
請求項1又は請求項2に記載のコンクリート床目地構造。
【請求項4】
前記コンクリート床部は、現場打ちコンクリートによって形成される、
請求項1~請求項3の何れか1項に記載のコンクリート床目地構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート床目地構造に関する。
【背景技術】
【0002】
隣り合うALC床パネルの目地部に、ガラス繊維等で形成された板状の定形耐火材が圧縮充填された床構造が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、プレキャストコンクリート床版(以下、「プレキャスト床版」という)の上面を、ベースコートで直仕上げする場合がある。この場合、例えば、プレキャスト床版の乾燥収縮に伴って、隣り合うプレキャスト床版の目地部が開くと、目地部に沿ってベースコートにひび割れが発生する可能性がある。
【0005】
本発明は、上記の事実を考慮し、目地部に沿ってベースコートに発生するひび割れを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1態様に係るコンクリート床目地構造は、コンクリート床部と、前記コンクリート床部と隣り合うプレキャスト床版と、前記コンクリート床部及び前記プレキャスト床版の上面側の目地部に充填される樹脂系軟質充填剤と、前記コンクリート床部及び前記プレキャスト床版の前記上面、及び前記目地部を被覆するベースコートと、を備える。
【0007】
第1態様に係るコンクリート床目地構造によれば、隣り合うコンクリート床部及びプレキャスト床版の上面側の目地部に、樹脂系軟質充填剤が充填される。また、コンクリート床部及びプレキャスト床版の上面、及び目地部は、ベースコートによって被覆される。
【0008】
ここで、例えば、コンクリート床部及びプレキャスト床版が乾燥収縮すると、コンクリート床部及びプレキャスト床版の上面側の目地部が開き、当該目地部に沿ってベースコートにひび割れが発生する可能性がある。
【0009】
この対策として本発明では、コンクリート床部及びプレキャスト床版の上面側の目地部に、樹脂系軟質充填剤が充填される。これにより、樹脂系軟質充填剤の接着力によって、目地部の開きが低減される。
【0010】
また、樹脂系軟質充填剤は、目地部の開きに追従して変形(伸び変形)する。この樹脂系軟質充填剤の変形により、目地部の開きに伴ってベースコートに作用する応力が吸収される。したがって、本発明では、目地部に樹脂系硬質充填剤が充填された場合と比較して、目地部に沿ってベースコートに発生するひび割れが抑制される。
【0011】
第2態様に係るコンクリート床目地構造は、第1態様に係るコンクリート床目地構造において、前記目地部は、互いに対向するとともに、前記コンクリート床部及び前記プレキャスト床版の前記上面側へ向かうに従って互いに離れるように傾斜する一対の対向面を有し、前記樹脂系軟質充填剤は、前記一対の対向面間に充填される。
【0012】
第2態様に係るコンクリート床目地構造によれば、目地部は、互いに対向する一対の対向面を有する。一対の対向面は、コンクリート床部及びプレキャスト床版の上面側へ向かうに従って互いに離れるように傾斜する。この一対の対向面間に、樹脂系軟質充填剤が充填される。
【0013】
これにより、本発明では、一対の対向面が鉛直面の場合と比較して、樹脂系軟質充填剤と一対の対向面との接着面積が増加する。この結果、目地部の開きが低減されるため、目地部に沿ってベースコートに発生するひび割れがさらに抑制される。
【0014】
第3態様に係るコンクリート床目地構造は、第1態様又は第2態様に係るコンクリート床目地構造において、前記目地部は、断面三角形状に形成される。
【0015】
第3態様に係るコンクリート床目地構造によれば、目地部は、断面三角形状に形成される。この目地部の一対の内壁面は、コンクリート床部及びプレキャスト床版の上面側へ向かうに従って互いに離れるように傾斜する。この一対の内壁面間に、樹脂系軟質充填剤が充填される。
【0016】
これにより、本発明では、一対の内壁面が鉛直面の場合と比較して、一対の内壁面と樹脂系軟質充填剤の接着面積が増加する。この結果、目地部の開きが低減されるため、目地部に沿ってベースコートに発生するひび割れが抑制される。
【0017】
また、目地部を断面三角形状にすることにより、目地部を断面矩形状にする場合と比較して、目地部に対する樹脂系軟質充填剤の充填量が低減される。
【0018】
このように本発明では、樹脂系軟質充填剤の接着面積を増加しつつ、目地部に対する樹脂系軟質充填剤の充填量を低減することができる。
【0019】
第4態様に係るコンクリート床目地構造は、第1態様~第3態様の何れか1つに係るコンクリート床目地構造において、前記コンクリート床部は、現場打ちコンクリートによって形成される。
【0020】
第4態様に係るコンクリート床目地構造によれば、コンクリート床部は、現場打ちコンクリートによって形成される。このように本発明は、現場打ちコンクリートによって形成されたコンクリート床部とプレキャスト床版との目地部にも適用することができる。
【発明の効果】
【0021】
以上説明したように、本発明に係るコンクリート床目地構造によれば、目地部に沿ってベースコートに発生するひび割れを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】一実施形態に係るコンクリート床目地構造が適用されたスラブを示す断面図である。
【
図2】(A)及び(B)は、
図1に示されるプレキャスト床版と現場打ち床部との目地部を示す拡大断面図である。
【
図3】比較例に係るスラブの目地部を示す断面図である。
【
図4】比較例に係るスラブの目地部を示す断面図である。
【
図5】一実施形態に係るコンクリート床目地構造の変形例が適用されたプレキャスト床版と現場打ち床部との目地部を示す断面図である。
【
図6】一実施形態に係るコンクリート床目地構造の変形例が適用されたプレキャスト床版同士の目地部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照しながら、一実施形態に係るコンクリート床目地構造について説明する。
【0024】
(スラブ)
図1には、本実施形態に係るコンクリート床目地構造12が適用されたスラブ10が示されている。スラブ10は、鉄筋コンクリート造とされており、構造物(建物)の床(コンクリート床)を形成している。このスラブ10は、隣り合う一対のプレキャスト床版20と、一対のプレキャスト床版20の間に設けられる現場打ち床部30とを備えている。
【0025】
プレキャスト床版20は、プレキャストコンクリートによって形成されている。このプレキャスト床版20には、スラブ筋22が適宜埋設されている。また、プレキャスト床版20は、梁40と図示しない梁とに架設されている。
【0026】
梁40は、例えば、ハーフプレキャストコンクリートで形成されたプレキャストコンクリート梁とされており、図示しない一対の柱に架設されている。この梁40には、複数の梁主筋(下端梁主筋)42及びせん断補強筋44が埋設されている。
【0027】
梁主筋42は、梁40の下端側に、当該梁40の材軸方向に沿って配筋されている。また、複数のせん断補強筋44は、梁40の材軸方向に間隔を空けて配筋されている。これらのせん断補強筋44の上部は、梁40の上面40Uから上方へ突出されている。
【0028】
梁40の上面40Uの外周部には、プレキャスト床版20の端部が載置されている。より具体的には、梁40の上面40Uの両側の端部に、目地材46を介してプレキャスト床版20の端部がそれぞれ載置されている。これにより、梁40上において、一対のプレキャスト床版20が隣り合って配置されている。また、一対のプレキャスト床版20は、各々の端面を対向させた状態で配置されている。なお、目地材46は、適宜省略可能である。
【0029】
一対のプレキャスト床版20の間には、現場打ち床部30が設けられている。現場打ち床部30は、梁40の上面40Uにコンクリート(現場打ちコンクリート)を打設することにより形成されている。この現場打ち床部30を介して、隣り合う一対のプレキャスト床版20が接合されるとともに、一対のプレキャスト床版20と梁40とが接合されている。
【0030】
また、現場打ち床部30には、梁40の梁主筋(上端梁主筋)48が埋設されている。つまり、現場打ち床部30は、スラブ10の一部を形成するとともに、ハーフプレキャストとされた梁40の上部を構成するトップコンクリートを形成している。
【0031】
なお、梁40は、ハーフプレキャストに限らず、例えば、フルプレキャストでも良い。また、梁40は、プレキャストに限らず、現場打ちコンクリートで形成されても良い。
【0032】
(コンクリート床目地構造)
図2(A)に示されるように、プレキャスト床版20と現場打ち床部30との上面20U,30U側の目地部50には、溝52が形成されている。溝52は、プレキャスト床版20及び現場打ち床部30の端部に沿って形成されている。この溝52は、断面三角形状(断面V字形状)に形成されている。
【0033】
具体的には、溝52は、互いに対向する一対の対向面(内壁面)52Aを有している。一対の対向面52Aは、プレキャスト床版20及び現場打ち床部30の上面20U,30Uへ向かうに従って互い離れるように傾斜している。換言すると、一対の対向面52Aは、プレキャスト床版20及び現場打ち床部30(スラブ10)の厚み方向(矢印T方向)に対し、互いに反対側へ傾斜されている。この一対の対向面52Aの下端側は、断面三角形状の頂部を形成している。
【0034】
なお、現場打ち床部30側の対向面52Aは、例えば、現場打ち床部30用の現場打ちコンクリートが硬化する前に、コテ等によって形成される。
【0035】
溝52には、樹脂系軟質充填剤54が充填されている。樹脂系軟質充填剤54は、軟質エポキシ樹脂等とされる。軟質エポキシ樹脂は、例えば、主剤(C262)及び硬化剤(H262)の配合比が1対1で、硬度60(ショアーD、JIS K 7215)とされる。この樹脂系軟質充填剤54は、溝52の上端開口まで充填されている。なお、樹脂系軟質充填剤54は、溝52の上端開口までに限らず、溝52の途中まで充填しても良い。
【0036】
樹脂系軟質充填剤54の上面54Uは、例えば、プレキャスト床版20及び現場打ち床部30の上面20U,30Uと面一又は略面一とされている。この樹脂系軟質充填剤54によって、溝52の一対の対向面52Aが互いに接着されている。これにより、樹脂系軟質充填剤54の接着力によって、プレキャスト床版20及び現場打ち床部30の乾燥収縮に伴う目地部50の開きが抑制されている。
【0037】
図2(B)に示されるように、プレキャスト床版20及び現場打ち床部30の上面20U,30U、及び目地部50は、ベースコート(トップコート)60によって直仕上げされている。ベースコート60は、例えば、スラブの直仕上げ用のコーティング材とされている。このベースコート60は、例えば、プレキャスト床版20、現場打ち床部30、及び樹脂系軟質充填剤54の上面20U,30U,54Uに、塗布又は散布された液状のコーティング材を硬化させることにより形成される。このベースコート60によって、プレキャスト床版20及び現場打ち床部30の上面20U,30U、及び樹脂系軟質充填剤54の上面54Uが被覆されている。
【0038】
なお、ベースコート60は、例えば、導電性、耐摩耗性、耐衝撃性、耐熱性、及び防滑性の少なくとも一つを有しており、スラブ10の用途に応じて適宜選択される。
【0039】
(作用)
次に、本実施形態の作用について説明する。
【0040】
先ず、本実施形態の作用をより明確するために、比較例について説明する。
【0041】
図3には、比較例に係るスラブ100が示されている。この比較例に係るスラブ100は、プレキャスト床版20と現場打ち床部30との目地部102に樹脂系軟質充填剤が充填されていない点で、本実施形態に係るスラブ10(
図1参照)と相違する。なお、比較例に係るスラブ100において、本実施形態に係るスラブ10と同様の構成には同符号を付している。
【0042】
ここで、比較例に係るスラブ100において、矢印Pで示されるように、プレキャスト床版20及び現場打ち床部30が乾燥収縮すると、プレキャスト床版20及び現場打ち床部30の上面20U,30U側の目地部102が開き、当該目地部102に沿ってベースコート60にひび割れVが発生する可能性がある。
【0043】
この対策として本実施形態では、
図2(B)に示されるように、プレキャスト床版20及び現場打ち床部30の上面20U,30U側の目地部50に形成された溝52に、樹脂系軟質充填剤54が充填されている。これにより、樹脂系軟質充填剤54の接着力によって、プレキャスト床版20及び現場打ち床部30の乾燥収縮(矢印P)に伴う目地部50の開きが低減される。
【0044】
また、樹脂系軟質充填剤54は、目地部50の開きに追従して変形(伸び変形)する。この樹脂系軟質充填剤54の変形により、目地部50の開きに伴ってベースコート60に作用する応力が吸収される。したがって、本実施形態では、目地部50に樹脂系硬質充填剤が充填された場合と比較して、目地部50に沿ってベースコート60に発生するひび割れが抑制される。
【0045】
さらに、目地部50には、断面三角形状の溝52が形成されている。この溝52の一対の対向面52Aは、プレキャスト床版20及び現場打ち床部30の上面20U,30U側へ向かうに従って互いに離れるように傾斜されている。この一対の対向面52A間に、樹脂系軟質充填剤54が充填されている。
【0046】
これにより、本実施形態では、例えば、
図4に示される目地部110のように、溝112の一対の対向面112Aが鉛直面の場合と比較して、一対の対向面52Aと樹脂系軟質充填剤54の接着面積が増加する。この結果、目地部50の開きがさらに低減される。したがって、目地部50に沿ってベースコート60に発生するひび割れがさらに抑制される。
【0047】
また、目地部50に断面三角形状の溝52を形成することにより、
図4に示されるように、目地部110に断面矩形状の溝112を形成する場合と比較して、目地部50に対する樹脂系軟質充填剤54の充填量が低減される。
【0048】
このように本実施形態では、樹脂系軟質充填剤54の接着面積を増加しつつ、目地部50に対する樹脂系軟質充填剤54の充填量を低減することができる。
【0049】
しかも、現場打ち床部30は、現場打ちコンクリートによって形成されている。このように本実施形態では、プレキャスト床版20と現場打ち床部30との目地部50にも適用することができる。
【0050】
(変形例)
次に、上記実施形態の変形例について説明する。
【0051】
上記実施形態では、目地部50に断面三角形状の溝52が形成されるが、溝の形状はこれに限らない。例えば、
図5に示される変形例では、目地部70に溝72が形成されている。溝72は、底面72Aと、一対の下側対向面72Bと、一対の上側対向面72Cとを有している。
【0052】
溝72の底面72Aは、略水平な平坦面とされ、プレキャスト床版20及び現場打ち床部30に亘って形成されている。この底面72Aの両端部から、一対の下側対向面72Bが上方へ延出されている。
【0053】
一対の下側対向面72Bは、互いに対向するとともに、プレキャスト床版20及び現場打ち床部30の厚み方向(矢印T方向)に沿ってそれぞれ形成されている。この一対の下側対向面72Bの上端部から、一対の上側対向面72Cが上方、かつ、溝72の外側へ延出されている。
【0054】
一対の上側対向面72Cは、互いに対向するとともに、プレキャスト床版20及び現場打ち床部30の上面20U,30U側へ向かうに従って互いに離れるように傾斜している。この一対の上側対向面72Cは、プレキャスト床版20及び現場打ち床部30の上面20U,30Uにそれぞれ達している。なお、一対の上側対向面72Cは、一対の対向面の一例である。
【0055】
このように形成された溝72に、樹脂系軟質充填剤54が充填されている。つまり、一対の下側対向面72B間に樹脂系軟質充填剤54が充填されるとともに、一対の上側対向面72C間に樹脂系軟質充填剤54が充填されている。これにより、一対の下側対向面72Bが樹脂系軟質充填剤54によって接着されるとともに、一対の上側対向面72Cが樹脂系軟質充填剤54によって接着されている。
【0056】
ここで、本変形例では、一対の上側対向面72Cが、プレキャスト床版20及び現場打ち床部30の上面20U,30U側へ向かうに従って互いに離れるように傾斜されている。これにより、本変形例では、一対の上側対向面72Cが鉛直面の場合と比較して、一対の上側対向面72Cと樹脂系軟質充填剤54との接着面積が増加する。この結果、上記実施形態と同様に、現場打ち床部30及びプレキャスト床版20の乾燥収縮(矢印P)に伴う目地部70の開きが低減される。したがって、目地部70に沿ってベースコート60に発生するひび割れがさらに抑制される。
【0057】
なお、本変形例において、一対の上側対向面を現場打ち床部30等の厚み方向に沿って形成し、一対の下側対向面をプレキャスト床版20及び現場打ち床部30の上面20U,30U側へ向かうに従って互いに離れるように傾斜させることも可能である。この場合、一対の下側対向面が、一対の対向面の一例となる。
【0058】
次に、上記実施形態に係るコンクリート床目地構造12は、プレキャスト床版20と現場打ち床部30との目地部50に適用されるが、例えば、
図6に示される変形例のように、隣り合う一対のプレキャスト床版20,80の目地部90に適用されても良い。
【0059】
具体的には、隣り合うプレキャスト床版20,80の目地部90には、目地材94が介在されており、この目地材94の上側に溝92が形成されている。溝92は、断面矩形状に形成されている。
【0060】
溝92は、互いに対向する一対の対向面92Aを有している。一対の対向面92Aは、一対のプレキャスト床版20の厚み方向(矢印T方向)に沿って形成されている。この一対の対向面92Aの間に、樹脂系軟質充填剤54が充填されている。そして、プレキャスト床版20,80の上面20U,80U、及び目地部90が、ベースコート60によって被覆されている。
【0061】
これにより、プレキャスト床版20,80の乾燥収縮(矢印P)に伴う目地部90の開きが抑制される。したがって、目地部90に沿ってベースコート60に発生するひび割れが抑制される。
【0062】
また、上記実施形態では、溝52の一対の対向面52Aが傾斜されるが、上記実施形態はこれに限らない。例えば、
図4に示される溝112のように、一対の対向面112Aは、必ずしも傾斜させなくても良い。これと同様に、
図6に示される溝92のように、一対の対向面92Aは、必ずしも傾斜していなくても良い。さらに、目地部50に形成する溝の形状は、上記したものに限らず、適宜変更可能である。
【0063】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明はこうした実施形態に限定されるものでなく、一実施形態及び各種の変形例を適宜組み合わせて用いても良いし、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0064】
12 コンクリート床目地構造
20 プレキャスト床版
20U 上面
30 現場打ち床部
30U 上面
50 目地部
52A 対向面
54 樹脂系軟質充填剤
60 ベースコート
70 目地部
72A 上側対向面(対向面)
90 目地部
110 目地部