(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-26
(45)【発行日】2024-04-03
(54)【発明の名称】プリンタ
(51)【国際特許分類】
B65H 5/36 20060101AFI20240327BHJP
B41J 15/04 20060101ALI20240327BHJP
【FI】
B65H5/36
B41J15/04
(21)【出願番号】P 2020022260
(22)【出願日】2020-02-13
【審査請求日】2023-01-06
(73)【特許権者】
【識別番号】501398606
【氏名又は名称】FCLコンポーネント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】矢田 雄二
【審査官】後藤 健志
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-204144(JP,A)
【文献】特開平07-315622(JP,A)
【文献】特開2002-003011(JP,A)
【文献】特開2014-058168(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 5/36- 5/38
B41J 15/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像が形成された記録媒体を排出口へ搬送する搬送部と、
前記搬送部に搬送される前記記録媒体を案内する案内部と、
前記記録媒体の幅方向に沿った回転支点軸を中心として前記排出口への前記記録媒体の搬送が阻害される及び阻害が解除されると、前記案内部を回動させる回動部と
を有
し、
前記案内部は、前記記録媒体の一方の面に対向する第1面と前記記録媒体の他方の面に対向する第2面とを有する貫通穴を備え、
前記回動部は、前記排出口への前記記録媒体の搬送が阻害されると、前記貫通穴に前記記録媒体を通した状態で前記案内部を上方向に回動させて搬送経路の長さを前記搬送部から前記排出口までの距離より長くし、前記阻害が解除されると、前記貫通穴に前記記録媒体を通した状態で前記案内部を下方向に回動させて前記搬送経路の長さを前記搬送部から前記排出口までの距離に近づける
プリンタ。
【請求項2】
前記回動部の回動を検出する検出部と、
前記検出部が前記回動部の回動を検出すると、前記記録媒体への前記画像の形成を停止させる制御部とを更に有する
請求項1に記載のプリンタ。
【請求項3】
前記回動部の回動に連動して
前記回動部と同方向に回動する突起部を更に有する
請求項1又は2に記載のプリンタ。
【請求項4】
前記突起部は、前記案内部の下部に設置され、
前記回動部が上方向に回動している状態において前記案内部の下部に形成される空間に、前記記録媒体が入り込もうとするのを防止する防止部を有する
請求項3に記載のプリンタ。
【請求項5】
前記記録媒体が最大限に撓んだ状態で、前記搬送部が前記記録媒体を搬送する搬送面と、前記突起部が有する面とが成す突起角度が90°未満である
請求項4に記載のプリンタ。
【請求項6】
前記回動部に接続する弾性体であって、
前記弾性体は、上方向に回動した前記回動部を元の状態に戻す力を発生させる
請求項1乃至5のいずれか1項に記載のプリンタ。
【請求項7】
前記記録媒体の搬送が阻害されると発生する、前記記録媒体による前記案内部を持ち上げる力で前記回動部が回動する
請求項1乃至6のいずれか1項に記載のプリンタ。
【請求項8】
前記回動部が所定角度以上に回動するのを制限する制限機構を更に有する
請求項1乃至7のいずれか1項に記載のプリンタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
レシート又はチケット等を発行するプリンタが知られている。
【0003】
レシート等を発行する場面では、プリンタは、画像形成が終了した記録媒体を排出口に搬送することでプリンタから記録媒体を排出する。そして、記録媒体が搬送される搬送経路において、上方向、下方向、又は、両方向に、空洞又は窓が設けられる。このように空洞又は窓が設置された構成とし、記録媒体の搬送が阻害されると、記録媒体をループ状に撓むように変形させる。このようにして、ジャム(jam)を防止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平10-119375号公報
【文献】特開2008-68950号公報
【文献】特開2009-83447号公報
【文献】特開2009-83448号公報
【文献】特開2011-156677号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のようなプリンタは、搬送が阻害された記録媒体を逃がしてジャムを防止する。一方で、排出口の開放等によって阻害が解消された後、搬送が再開されても、記録媒体の変形等によって記録媒体が搬送できない場合がある。
【0006】
このため、画像形成を再開するのに、ユーザが記録媒体を整える等の保守作業を要した。
【0007】
よって、画像形成を再開するのに保守作業が少なくて済む、保守性の高いプリンタが求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本実施の形態の一観点によれば、プリンタは、
画像が形成された記録媒体を排出口へ搬送する搬送部と、
前記搬送部に搬送される前記記録媒体を案内する案内部と、
前記記録媒体の幅方向に沿った回転支点軸を中心として前記排出口への前記記録媒体の搬送が阻害される及び阻害が解除されると、前記案内部を回動させる回動部と
を有し、
前記案内部は、前記記録媒体の一方の面に対向する第1面と前記記録媒体の他方の面に対向する第2面とを有する貫通穴を備え、
前記回動部は、前記排出口への前記記録媒体の搬送が阻害されると、前記貫通穴に前記記録媒体を通した状態で前記案内部を上方向に回動させて搬送経路の長さを前記搬送部から前記排出口までの距離より長くし、前記阻害が解除されると、前記貫通穴に前記記録媒体を通した状態で前記案内部を下方向に回動させて前記搬送経路の長さを前記搬送部から前記排出口までの距離に近づけることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本開示のプリンタによれば、画像形成を再開するための保守作業を少なくし、保守性を高くできる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図11】第2実施形態のプリンタの例を示す外観斜視図
【
図15】第3状態における検出の例を示す外観斜視図
【
図16】第3実施形態における弾性体の設置例を示す断面図
【
図17】第3実施形態における弾性体の圧縮例を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、各実施形態の詳細について、添付する図面を参照して説明する。なお、各実施形態に係る明細書及び図面の記載において実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複した説明を省く。
【0012】
(第1実施形態)
(プリンタの例)
図1は、プリンタの例を示す外観斜視図である。以下の説明では、用紙101を排出するために搬送する方向を「X方向」とする。X方向に直交する方向を「Y方向」とする。そして、X-Y面に対して垂直であり、上方向となる方向を「Z方向」とする。
【0013】
プリンタ100は、例えば、筐体102、排出口103及び画像形成器104を有するハードウェア構成である。
【0014】
筐体102は、例えば、排出口103を形成する部品等を保持する。
【0015】
排出口103は、画像形成器104によって画像が形成された用紙101をプリンタの外へ排出する。したがって、排出口103から排出された用紙101が、ユーザに発行されるレシート又はチケット等となる。
【0016】
画像形成器104は、例えば、サーマルプリンタ形式等で用紙101に対して画像を形成する。なお、画像形成器104による画像形成の方式は、サーマルプリンタ形式以外でもよい。
【0017】
さらに、画像形成器104は、画像形成、給紙、及び、排出を行う上で用紙101を搬送するのに、アクチュエータ及びローラ等の部品、並びに、アクチュエータ等を制御する電子回路基板等を有する。以下、搬送部を画像形成器104で実現する例で説明する。
【0018】
また、画像形成器104は、画像形成、及び、プリンタ100を制御するため、入力装置、記憶装置、制御装置及び演算装置等を有する。
【0019】
なお、画像形成器104は、図示するような構成及び外観に限られず、用紙101に対して画像を形成して、搬送を行うことで排出口103から用紙101を排出できる装置であれば、方式、構成及び用いるハードウェアの種類は限定されない。
【0020】
(案内部及び回動部の構成例)
以下、A-A'の断面線とする断面図で説明する。
【0021】
図2は、プリンタの例を示す断面図である。例えば、案内部及び回動部の例である用紙案内板105は、排出における搬送経路、すなわち、画像形成器104と排出口103の間に設置される。そして、用紙案内板105には、例えば、図示するように、用紙101を通す貫通穴502が設けられる。
【0022】
用紙101が搬送される、すなわち、用紙101の搬送が阻害されておらず、用紙101の排出が可能な状態では、画像形成器104が用紙101を搬送すると、用紙案内板105は、用紙案内板105内を通すようにして排出口103へ向かって用紙101を案内する機構である。
【0023】
用紙案内板105は、例えば、金属、樹脂又はこれらの組み合わせ等の素材である。
【0024】
図3は、案内部及び回動部の例を示す外観斜視図である。
【0025】
図4は、案内部及び回動部の例を示す三面図である。なお、
図4(A)が側面図、
図4(B)が上面図、及び、
図4(C)が正面図である。
【0026】
例えば、案内部及び回動部は、図示するような外観の用紙案内板105で実現する。具体的には、用紙案内板105は、回転支点軸501及び貫通穴502を有する形状である。
【0027】
貫通穴502は、用紙101を通すことで所定の方向(この例は、X方向である。)へ用紙101を案内する機構である。なお、貫通穴502は、図示するように、上面と下面を有する構造が望ましい。例えば、貫通穴502が上面と下面のうち、どちらか一面を有さない構造であると、用紙101が撓む場合に、面がない方へ撓みによって用紙101が逃げる構成となる。そのため、用紙101を所定の方向へ案内できない場合がある。一方で、図示するように、上面と下面を有する構造であれば、用紙101を逃がすことなく案内できる。
【0028】
回転支点軸501は、用紙案内板105を回動させる機構である。具体的には、用紙案内板105は、回転支点軸501を軸(この例では、Y軸と一致する。)とする回転を行う。
【0029】
また、用紙案内板105は、図示するように、突起部及び防止部の例である突起503を更に有する形状であるのが望ましい。例えば、突起503は、リブ状の突起である。そして、突起503は、用紙案内板105が回動する際に、用紙案内板105の下部に形成される空間に、撓んだ用紙が入り込まないように筐体とかみ合うリブ状の突起である。具体的には、突起503は、以下のような機構である。
【0030】
図5は、搬送経路内の例を示す外観斜視図である。用紙101は、用紙案内板105が上方向に回動している状態では、筐体の内壁に当たりS字状に撓む場合がある。そのため、突起503がないと、用紙101は、用紙案内板105の下部に形成される空間に入り込む場合がある。そして、用紙101が用紙案内板105の下部に形成される空間に入り込んだ状態で用紙案内板105が元の状態に戻ると、用紙101が用紙案内板105と筐体の間に挟まり、搬送されなくなる場合がある。
【0031】
そこで、図示するように、用紙案内板105が上方向に回動している状態において、突起503は、用紙101が用紙案内板105の下部に形成される空間に入り込むのを防ぐようにする。
【0032】
例えば、突起503は、用紙案内板105が上方向に回動していない状態では、筐体とかみ合うように収納される。具体的には、突起503が有する隙間と、筐体側の突起とが収納の状態ではかみ合う。
【0033】
また、突起503は、例えば、図示するように、リブ状に隙間があり、筐体の底面側にある突起がかみ合う形状である。そして、突起503に形成される隙間は、用紙101よりも狭い幅であるのが望ましい。隙間の幅が用紙101よりも広いと、隙間に用紙101が入り込む可能性が高くなる。そこで、図示するような突起503のように、用紙101より狭い幅の間隔で隙間があり、筐体側の突起とかみ合う形状であるのが望ましい。
【0034】
このような突起503があると、用紙101が、S字状になって、用紙案内板105の下部に形成される空間に入り込むのを防げる。用紙案内板105の下部に形成される空間に用紙101がS字状になって入り込むと、用紙案内板105と筐体に挟まって用紙101が折れ曲がる。そこで、突起503によって入り込もうとする用紙101をはね返す壁面を形成して、用紙101がS字状となることによる折れ曲がりを防止することで自動復帰の際の用紙101の詰まりを防止して復帰を確実にできるようにする。
【0035】
例えば、用紙案内板105は、以下のように動作する。
【0036】
【0037】
【0038】
【0039】
【0040】
【0041】
以下、第1状態、第2状態、第3状態、第4状態、第5状態の順に状態が遷移していく場合を例に説明する。
【0042】
図6に示すように、
図2に示す状態に対して、排出口103付近に障害物200が設置されると、用紙101の搬送が阻害される。具体的には、
図6に示す状態は、障害物200があるため、画像形成器104が用紙101をX方向に搬送しようとしても、用紙101が障害物200に当たり、排出できない状態である。
【0043】
なお、排出口103への用紙101の搬送を阻害する要因は、障害物200の設置に限られない。例えば、用紙101の端部をユーザが摘まむことで搬送に抵抗ができるような状態も、用紙101の搬送を阻害する要因となる。ほかにも、用紙101が上方向から押さえられて搬送に抵抗ができるような状態も、用紙101の搬送を阻害する要因となる。
【0044】
第1状態において、更に用紙101の搬送が行われると、第2状態となる。
【0045】
図7に示すように、障害物200によって用紙101がX方向に排出できない状態で搬送が更に行われると、用紙101を図示右に搬送しようとする力と、障害物200による左方向に用紙を押し返そうとする反発力とによって、用紙101は、上下方向に撓む。このように、第2状態では、用紙101には、上方向に持ち上げる力が発生する。
【0046】
用紙101は、上下に撓む。用紙案内板105が上方向に持ち上げられるのは、下方向には用紙案内板105が筐体に当たって動かないように回動が制限されるためである。
【0047】
そこで、用紙案内板105は、用紙101による、持ち上げようとする力によって、回転支点軸501を軸として回動する。この例では、用紙案内板105は、用紙案内板105を持ち上げる力によって上方向に回動する。このような回動によって、用紙案内板105は、第3状態まで回動する。
【0048】
図8に示す状態は、用紙101が最大限に撓んだ状態の例である。例えば、図示するように用紙101が最大限に撓んだ場合でも、用紙案内板105の回動が所定角度以上に行われないように制限される構成が望ましい。以下、制限機構の例として、筐体の一部(以下単に「フレーム52」という。)を用いる例で説明する。
【0049】
図8に示す例では、フレーム52は、所定角度まで持ち上がった用紙案内板105に当たる位置に配置される。そのため、用紙案内板105は、更に上方向に回動しようとしても、フレーム52によって上方向に回動するのが制限される。
【0050】
用紙案内板105は、用紙101の搬送を阻害する要因がなくなると、下方向に回動して元の状態に戻ろうとする(詳細は後述する)。その際に、用紙案内板105がある角度以上に回動していると、元の状態に戻ろうとする回動を行わない場合がある。例えば、あまり用紙案内板105が高く持ち上げられると、用紙101の搬送を阻害する要因がなくなった場合に、元の状態に戻る方向(図では時計回りとなる。)とは逆方向に回動(図では反時計回りとなる。)、又は、持ち上げられた位置で静止してしまう場合がある。一方で、フレーム52等で所定角度以上に回動しないような構成であると、元の状態に戻す回動を行い、第1状態に戻る確率を高くできる。
【0051】
なお、制限機構は、フレーム52でなくともよい。すなわち、制限機構は、所定角度以上に用紙案内板105が回動するのを制限できる機構であれば、設置位置、素材及び形状等を問わない。また、制限機構は、フレーム52のように他の機構と兼用する構成でもよい。制限機構が他の部品と一体の構成であると、専用の部品を設置する場合よりも部品点数を少なくできる。
【0052】
所定角度は、例えば、60°程度に設定される。また、所定角度は、自動的に用紙案内板105が元の状態に戻る範囲で設定され、回動を制限させる角度である。なお、所定角度は、用紙案内板105の自重、元に戻る回動の力を発生させる弾性体の有無、記録媒体の種類、用紙案内板105の大きさ、又は、これらの組み合わせ等となる条件によって適宜設定される。また、所定角度は、用紙案内板105が自動的に元の状態に戻らなくなるリスクのある角度より、余裕を持たせて、小さく設定されてもよい。
【0053】
そして、突起503があると、図示するように、用紙101が用紙案内板105の下部に形成される空間に入り込むのを防げる。具体的には、突起503は、白抜き矢印で示す方向に用紙101が入り込むことを防ぐ。
【0054】
防止部は、用紙案内板105が回動して持ち上がった際に用紙案内板105の下部に形成される空間に、用紙101が入り込もうとするのを防止する壁面等(例えば、
図5で示すように突起503が形成する壁面である。)である。一方で、防止部は、用紙案内板105が持ち上げられる前の状態では、搬送面の下に収納される機構である。このような防止部があると、用紙の入り込みを防ぐことができるため、用紙案内板105が元の状態に戻り、画像形成が再開された場合に用紙101が用紙案内板105に絡んでしまうような状態を防げる。
【0055】
なお、防止部となる機構は、図示するような機構に限られない。例えば、防止部は、固定スライダ・クランク機構等の構造でもよい。また、突起503は、用紙101が最大限に撓んだ状態で、搬送面(以下「搬送面61」という。)と、突起503が有する面(以下「突起面62」という。)が成す角度(以下「突起角度63」という。)が90°未満となる形状であるのが望ましい。突起角度63が90°未満であると、用紙101が最大限に撓んだ状態であっても、用紙101がS字状にならずに、用紙101を排出口103へ案内できる。
【0056】
図示するように、用紙101は、用紙案内板105を通過した後、突起面62と、筐体の内壁との間を通過するように案内される。そのため、用紙101が最大限に撓んだ状態で、突起角度63があまり急な角度であると、用紙101は、用紙案内板105の下部に形成される空間に入り込みやすくなる。一方で、用紙101が最大限に撓んだ状態で、突起角度63が90°未満となる突起503であると、用紙101を排出口103へ案内できる。
【0057】
また、突起503は、例えば、ゴム等の樹脂を素材とする。上記のように、突起503は、用紙101を案内する構成の一部となる場合があるため、用紙101の滑りが良い素材が望ましい。
【0058】
次に、第4状態に遷移したとする。
【0059】
図9に示すように、第3状態において用紙101の搬送を阻害する要因であった障害物200が取り除かれると、第3状態から第4状態に状態が移行する。
【0060】
第4状態では、用紙101は、X方向に搬送される。そのため、第4状態では、用紙案内板105を持ち上げようとする力が弱くなる。一方で、用紙案内板105には、自重による力、すなわち、重力によって、元の状態に戻ろうとする力が働いており、第3状態と比較すると、第4状態では、用紙案内板105を持ち上げようとする力より重力の方が相対的に強くなる。ゆえに、第4状態では、用紙案内板105は、重力によって下方向回動を行う。そして、下方向回動は、第5状態となるまで行われる。
【0061】
図10に示すような状態は、用紙案内板105が持ち上げられる前の状態である、元の状態である。
【0062】
このように、用紙案内板105は、排出口103への用紙101の搬送が阻害されると発生する、用紙101による用紙案内板105を持ち上げる力によって、上方向に回動する構成である。そして、排出口103への用紙101の搬送が阻害されていたのが解除されると強くなる、用紙案内板105の自重による重力によって、下方向に回動する構成である。
【0063】
そして、上方向に用紙案内板105が回動すると、用紙案内板105に沿って用紙101が上方向に案内される。例えば、
図7及び
図8のように、用紙101は、用紙案内板105によって搬送経路が上方向へ変更される。したがって、排出口103への用紙101の搬送が阻害されると、用紙案内板105は、搬送経路を上方向に変更して搬送経路が長くなるようにする。このようにすると、ジャム(「ペーパジャム」とも呼ぶ。)を少なくできる。
【0064】
一方で、例えば、
図9のように、排出口103への用紙101の搬送が阻害されていたのが解除されると、用紙案内板105は、重力によって、
図10の状態に戻ろうとする。したがって、第3状態になった後、持ち上がった状態をアクチュエータや人の手によって戻す保守作業がなくても、用紙案内板105が回動するので、プリンタ100は、画像形成を再開できる。一方で、保守作業を要する場合、特に、無人機では、保守作業は、保守要員を現場に呼ぶ必要がある。
【0065】
このようにして、画像形成を再開する際に保守作業が少なくて済む高い保守性を確保できる。
【0066】
また、従来の方法では、ジャムが発生しているか否かの判断は、センサ等では難しい場合が多い。一方で、上記の例では、ジャムが発生しているか否かの判断が不要である。
【0067】
また、用紙案内板105を用いて用紙101が案内する。そのため、用紙101は、用紙案内板105及び突起503によって案内されるため、S字状になりづらく、折れ曲がる可能性が少ない。
【0068】
例えば、
図8に示す状態において、突起503がないと、用紙101は、一点鎖線が示すようになる場合がある。一点鎖線が示すように、用紙101が用紙案内板105の下部に形成される空間に入り込んで、用紙案内板105が元の状態に戻ると、用紙101が折れ曲がり、復帰できない場合がある。そこで、突起503によって、S字状となって用紙案内板105の下部に形成される空間に入り込もうとする用紙101をはね返すような構成とすると、用紙101が、用紙案内板105と筐体で挟まれて折れ曲がるのを防ぐことができる。用紙101が折れ曲がると、ジャムの要因となる場合がある。これに対し、用紙案内板105及び突起503を用いる構成であると、用紙101が折れ曲がりを防ぎ、ジャムを少なくできる。
【0069】
さらに、上記のような構成は、例えば、記録媒体をバッファさせて排出させる構成よりも装置を省スペース化できる。記録媒体をバッファさせて排出させるには、バッファとなるスペースを確保する必要がある。一方で、上記のような構成では、用紙101を上方向に逃がすように搬送経路を変更することでジャムを防げるため、装置が省スペース化されて小型にできる。
【0070】
また、ジャムを検出して画像形成等の処理を停止させる構成であっても、処理を急に停止できない場合もある。そのため、ジャムの発生から停止までに時間差が発生することがあるため、画像形成等の処理を停止させる構成でも、ある程度、用紙101を上方向に逃がすように搬送経路を変更して記録媒体を逃がす搬送経路が確保できる構成が望ましい。
【0071】
また、上記のように、突起503は、用紙案内板105の回動に連動して上下に動作する構成であるのが望ましい。例えば、用紙101の搬送が阻害されて、用紙案内板105が回動して持ち上がった際には、突起503は、連動して出現する構成であるのが望ましい。一方で、用紙案内板105が持ち上げられる前の状態では、突起503は、搬送面61の下に収納されているのが望ましい。用紙案内板105の回動に連動して上下に動作する構成であると、用紙案内板105が持ち上げられる前の状態では、突起503は、収納されているため、用紙101の搬送を邪魔しない。一方で、用紙案内板105が回動して持ち上がった状態では、突起503は、用紙の入り込みを防ぐ等の役割を果たす。
【0072】
なお、用紙案内板105は、例えば、10g程度の質量である。すなわち、用紙案内板105は、排出口103への用紙101の搬送が阻害されている状態では、用紙101の持ち上がる力で回動する程度の質量であり、かつ、排出口103への用紙101の搬送が阻害されていたのが解除された状態では、重力で元の状態に戻ろうとする力が十分に発生する質量であるのが望ましい。
【0073】
また、突起503は、用紙案内板105と一体に形成されてもよいし、突起503及び用紙案内板105は、別々の部品であって、どちらか一方を取り付けるような構成でもよい。
【0074】
用紙案内板105は、例えば、記録媒体の種類等によって適した質量が異なる。10g程度の質量は、レシートに用いられる種類の記録媒体の質量である。用紙案内板105の質量は、記録媒体の種類、搬送する力、記録媒体の大きさ等といった環境によって、用紙案内板105を構成する素材の変更又は重りの追加等によって調整してもよい。例えば、記録媒体が硬い素材である場合には、用紙案内板105の質量は、自重による重力を大きくするため、大きくするのが望ましい。
【0075】
(第2実施形態)
第2実施形態は、第1実施形態と比較すると、検出器等が追加される構成である点が異なる。以下、異なる点を中心に説明し、重複する説明を省略する。
【0076】
図11は、第2実施形態のプリンタの例を示す外観斜視図である。第2実施形態は、図示するような位置に、検出部の例であるセンサ201等を設置する構成である。
【0077】
センサ201は、例えば、投光器と受光器を有する透過型のフォトセンサ等である。そして、センサ201は、投光器と受光器の間に物体が介在するか否かを検出する装置である。この例では、センサ201は、検出板504の有無を検出して用紙案内板105の回動を検出する。なお、検出板504と用紙案内板105は、連動して動作する。
【0078】
具体的には、第1状態、第2状態、及び、第3状態では、センサ201は、以下のように状態を検出する。
【0079】
図12は、第1状態における検出の例を示す側面図である。
【0080】
図13は、第2状態における検出の例を示す側面図である。
【0081】
図14は、第3状態における検出の例を示す側面図である。
【0082】
なお、
図12乃至
図14は、プリンタ100を視点202の向きで見た図となる。
【0083】
図15は、第3状態における検出の例を外観斜視図で示す図である。
【0084】
図12に示すように、第1状態、すなわち、用紙案内板105の回動がない用紙案内板105が持ち上げられる前の状態では、センサ201の位置には、検出板504に形成される切欠部203が位置する。したがって、センサ201は、検出板504がなく、用紙案内板105が回動していない状態を検出する。
【0085】
次に、用紙案内板105が回動する前であることを示す検出結果に基づいて、制御部の例である画像形成器104は、画像形成を行う。すなわち、用紙案内板105が回動する前の状態では、用紙101が排出できる状態であるため、画像形成器104は、画像の形成を行い、用紙101を搬送する。
【0086】
図13及び
図14に示すように、第2状態又は第3状態、すなわち、用紙案内板105が回動し、上方向に持ち上がった状態では、センサ201の位置には検出板504が位置する。したがって、センサ201は、検出板504があるため、用紙案内板105が回動している状態と検出する。
【0087】
次に、回動している状態を示す検出結果に基づいて、画像形成器104は、画像形成を停止させる。
【0088】
第2状態又は第3状態は、上方向回動が行われている状態であるため、排出口103への用紙101の搬送が阻害されている状態でもある。したがって、用紙101を排出しようとしても難しい状態である。ゆえに、このような状態では、画像の形成を停止させて搬送を止めた方がジャムを防ぐことができる。
【0089】
なお、画像の形成を停止させるタイミングは、第2状態又は第3状態を検出した直後でなくともよい。すなわち、第2状態又は第3状態が検出されても、ある程度、画像の形成を続行してもよい。例えば、画像処理等によっては、処理を急に停止できない場合がある。したがって、画像の形成を停止させるタイミングは、画像の形成又は搬送等の処理を停止させても問題が少ないタイミングであるのが望ましい。
【0090】
また、検出部は、図示するような構成に限られない。例えば、センサ201は、角度センサ等でもよい。すなわち、用紙案内板105が上方向に持ち上がったか否かを検出できるのであれば、センサの種類は問わない。
【0091】
(第3実施形態)
第3実施形態は、第1実施形態と比較すると、弾性体が追加される構成である点が異なる。以下、異なる点を中心に説明し、重複する説明を省略する。具体的には、第3実施形態は、例えば、以下のような構成である。
【0092】
図16は、第3実施形態における弾性体の設置例を示す断面図である。例えば、第3実施形態は、第1実施形態と比較すると、弾性体の例であるコイルバネ300が接続されている点が異なる。
【0093】
コイルバネ300は、下方向に用紙案内板105を押さえる力を発生させる。例えば、第3状態では、以下のように、用紙案内板105がコイルバネ300を圧縮する構成である。
【0094】
図17は、第3実施形態における弾性体の圧縮例を示す断面図である。第3状態では、図示するように、上方向への回動によって、コイルバネ300が圧縮される。
【0095】
この後、第4状態に遷移、すなわち、用紙案内板105を持ち上げようとする力が弱まると、用紙案内板105は、重力及びコイルバネ300による反発力によって元の状態に戻る。
【0096】
このような弾性体があると、より確実に用紙案内板105を元の状態に戻すことができる。
【0097】
なお、弾性体は、コイルバネに限られず、用紙案内板105を元の状態に戻す復元力を発生させることができれば、バネ定数、種類、設置位置、数等は、問わない。
【0098】
(他の実施形態)
プリンタは、上記の構成に限られない。例えば、図示する構成のすべてが必須ということではなく、機能に応じて図示した構成がないプリンタでもよい。一方で、図示する構成以外の構成を有するプリンタでもよい。
【0099】
また、プリンタは、他の装置又はシステムに組み込まれて使用されてもよい。
【0100】
以上、本発明の実施に係る形態について説明したが、上記内容は、発明の内容を限定するものではない。すなわち、本発明は、上記に具体的に開示した実施の形態に限定されない。ゆえに、実施形態は、特許請求の範囲から逸脱することなく、種々の変形、改良又は変更が可能である。
【符号の説明】
【0101】
52 フレーム
61 搬送面
62 突起面
63 突起角度
100 プリンタ
101 用紙
102 筐体
103 排出口
104 画像形成器
105 用紙案内板
200 障害物
201 センサ
203 切欠部
300 コイルバネ
501 回転支点軸
502 貫通穴
503 突起
504 検出板