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  • 特許-二輪車用タイヤ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-26
(45)【発行日】2024-04-03
(54)【発明の名称】二輪車用タイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 15/06 20060101AFI20240327BHJP
   B60C 9/06 20060101ALI20240327BHJP
【FI】
B60C15/06 J
B60C15/06 A
B60C9/06 B
B60C9/06 M
B60C15/06 N
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020026557
(22)【出願日】2020-02-19
(65)【公開番号】P2021130387
(43)【公開日】2021-09-09
【審査請求日】2022-12-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100096714
【弁理士】
【氏名又は名称】本多 一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100124121
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 由美子
(74)【代理人】
【識別番号】100176566
【弁理士】
【氏名又は名称】渡耒 巧
(74)【代理人】
【識別番号】100180253
【弁理士】
【氏名又は名称】大田黒 隆
(72)【発明者】
【氏名】松田 光之
【審査官】岩本 昌大
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-081873(JP,A)
【文献】特開平04-278806(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 1/00-19/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対のビード部間にまたがってトロイド状に延在し、該一対のビード部にそれぞれ埋設された一対のビードコアの周りに折り返されて係止された少なくとも1枚のカーカスプライからなるカーカスを骨格とし、該カーカスのタイヤ半径方向外側に配置された少なくとも1枚のベルト層からなるベルトを備える、バイアスタイヤである二輪車用タイヤにおいて、
前記カーカスと前記ビードコアとの間に、該ビードコアをタイヤ半径方向内側から包むように折り返されたフリッパーが配置され、該フリッパーのうち該ビードコアのタイヤ幅方向外側に折り返された部分の端部であるタイヤ幅方向外側端部が、前記ベルトのタイヤ幅方向端部よりもタイヤ幅方向内側まで延在することを特徴とする二輪車用タイヤ。
【請求項2】
前記カーカスのタイヤ幅方向外側端部が、前記ベルトのタイヤ幅方向端部よりもタイヤ幅方向内側まで延在する請求項1記載の二輪車用タイヤ。
【請求項3】
前記フリッパーのうち前記ビードコアのタイヤ幅方向内側に折り返された部分の端部であるタイヤ幅方向内側端部の高さFHが、タイヤ最大幅位置の高さSWHよりも低い請求項1または2記載の二輪車用タイヤ。
【請求項4】
タイヤ最大幅位置の高さSWHに対する、前記フリッパーのタイヤ幅方向内側端部の高さFHの比率が、30%以上100%未満の範囲内である請求項3記載の二輪車用タイヤ。
【請求項5】
タイヤ幅方向においてタイヤ表面に沿って測った、前記ベルトと前記カーカスとの重なり幅CLに対する、該ベルトと前記フリッパーとの重なり幅FLの比率が、25%~80%の範囲内である請求項2~4のうちいずれか一項記載の二輪車用タイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二輪車用タイヤ(以下、単に「タイヤ」とも称する)に関し、詳しくは、サイド部の改良に係る自動二輪車用空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、二輪車用タイヤは、一対のビード部間にまたがってトロイド状に延在する少なくとも1枚のカーカスプライを骨格とし、トレッド部の補強部材として、カーカスプライのタイヤ半径方向外側に配置された少なくとも1層のベルト層を備える構造を基本構造とする。
【0003】
二輪車用タイヤに関する先行技術としては、例えば、特許文献1に、サイド部の剛性不足に起因する横力不足や耐久性不足を解消することを目的として、カーカスプライの外側に、ビードコアの周りをタイヤ内側から外側へ折り返されたフリッパー層を配置し、その折り返し端がカーカスプライとベルト層の間で終端するものとした自動二輪車用空気入りラジアルタイヤが開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、タイヤケース剛性とタイヤケース柔軟性との両立を可能として接地性を高めるとともに操縦安定性を向上させることを目的として、少なくとも2枚のカーカスプライによって形成されるカーカス層について、各カーカスプライのコードが、所定の初期引張抵抗度、打込み数および一定荷重中間伸度の差を有し、互いに所定の角度でタイヤ赤道に対し反対方向に傾斜しているものとした自動二輪車用空気入りバイアスタイヤが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2013-166526号公報
【文献】特開平11-222007号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、自動二輪車の大型化に伴い、車両重量が増大しており、車両を支える二輪車用タイヤにも、これに対応することが求められている。特に、高荷重かつ高トルクとなる大型自動二輪車に装着される二輪車用タイヤにおいては、十分な縦方向の剛性を有し、操縦安定性に優れるとともに、耐久性に優れることが要求される。
【0007】
そこで本発明の目的は、操縦安定性および耐久性に優れた二輪車用タイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は鋭意検討した結果、カーカスとビードコアとの間にフリッパーを配置するとともに、そのタイヤ幅方向外側端部を、ベルト層のタイヤ幅方向端部よりもタイヤ幅方向内側まで巻き上げることで、上記課題を解決できることを見出して、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、一対のビード部間にまたがってトロイド状に延在し、該一対のビード部にそれぞれ埋設された一対のビードコアの周りに折り返されて係止された少なくとも1枚のカーカスプライからなるカーカスを骨格とし、該カーカスのタイヤ半径方向外側に配置された少なくとも1枚のベルト層からなるベルトを備える、バイアスタイヤである二輪車用タイヤにおいて、
前記カーカスと前記ビードコアとの間に、該ビードコアをタイヤ半径方向内側から包むように折り返されたフリッパーが配置され、該フリッパーのうち該ビードコアのタイヤ幅方向外側に折り返された部分の端部であるタイヤ幅方向外側端部が、前記ベルトのタイヤ幅方向端部よりもタイヤ幅方向内側まで延在することを特徴とするものである。
【0010】
本発明のタイヤにおいては、前記カーカスのタイヤ幅方向外側端部が、前記ベルトのタイヤ幅方向端部よりもタイヤ幅方向内側まで延在することが好ましい。また、本発明のタイヤにおいては、前記フリッパーのうち前記ビードコアのタイヤ幅方向内側に折り返された部分の端部であるタイヤ幅方向内側端部の高さFHが、タイヤ最大幅位置の高さSWHよりも低いことが好ましく、タイヤ最大幅位置の高さSWHに対する、前記フリッパーのタイヤ幅方向内側端部の高さFHの比率が、30%以上100%未満の範囲内であることがより好ましい。
【0011】
さらに、本発明のタイヤにおいては、タイヤ幅方向においてタイヤ表面に沿って測った、前記ベルトと前記カーカスとの重なり幅CLに対する、該ベルトと前記フリッパーとの重なり幅FLの比率が、25%~80%の範囲内であることが好ましい。
【0012】
なお、本発明においてタイヤの諸寸法は、特に断りのない限り、タイヤが生産され、使用される地域において有効な産業規格で規定されたリムにタイヤを組み付け、かかる産業規格において規定された内圧を充填した無負荷状態で測定した値をいうものとする。また、上記産業規格とは、例えば、日本ではJATMA(日本自動車タイヤ協会) YEAR BOOKであり、欧州ではETRTO(European Tyre and Rim Technical Organisation) STANDARD MANUALであり、米国ではTRA(THE TIRE and RIM ASSOCIATION INC.) YEAR BOOKである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、上記構成としたことにより、操縦安定性および耐久性に優れた二輪車用タイヤを実現することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の二輪車用タイヤの一例を示す幅方向断面図である。
図2図1の二輪車用タイヤを示す幅方向片側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1に、本発明の二輪車用タイヤの一例を示す幅方向断面図を示す。また、図2に、図1の二輪車用タイヤを示す幅方向片側断面図を示す。図示するように、本発明の二輪車用タイヤ10は、接地部を形成するトレッド部11と、その両端からタイヤ半径方向内側にそれぞれ延びる一対のサイドウォール部12およびビード部13と、を有している。
【0016】
また、図示する本発明のタイヤ10は、一対のビード部13間に跨ってトロイド状に延在し、一対のビード部13にそれぞれ埋設された一対のビードコア1の周りに折り返されて係止された少なくとも1枚、図示する例では2枚のカーカスプライ2a,2bからなるカーカス2を骨格とする。さらに、カーカス2のタイヤ半径方向外側には、少なくとも1枚、図示する例では3枚のベルト層3a~3cからなるベルト3が配置されている。
【0017】
本発明においては、カーカス2とビードコア1との間に、ビードコア1をタイヤ半径方向内側から包むように、フリッパー4が配置されており、フリッパー4のタイヤ幅方向外側端部4oが、トレッド部11まで巻き上げられて、ベルト3のタイヤ幅方向端部3xよりもタイヤ幅方向内側まで延在している点に特徴がある。
【0018】
本発明によれば、このような構成とすることで、サイド部の剛性を高めて、自動二輪車の操縦安定性を向上することができるとともに、タイヤの耐久性を向上することができる。また、フリッパー4の配置によりサイド剛性を高めているので、適切な衝撃吸収性を維持することができ、乗り心地性を損なうことがない。これにより、従来よりもさらに高荷重かつ高トルクとなるような大型自動二輪車にも適した、縦方向の剛性を高めたタイヤを実現することが可能となった。
【0019】
なお、本発明において、フリッパー4のタイヤ幅方向外側端部4oを、ベルト3のタイヤ幅方向端部3xよりもタイヤ幅方向内側まで延在させているのは、部材の端部の位置をタイヤ幅方向において一致させないことで、応力集中の抑制を図るためである。
【0020】
ここで、本発明のタイヤにおいて、ベルト層は、図示する例では3枚で設けられているが、少なくとも1枚で設けることができ、好適には2枚以上、より好適には3枚以上であって、例えば、1~5枚、特には2~3枚で設けることができる。このように2枚以上の複数層でベルト層を設ける場合、上記ベルト3のタイヤ幅方向端部3xは、図示するように、ベルト層3a~3cのうちタイヤ半径方向において最も内側に位置しカーカス2と隣り合う最内層ベルト3aのタイヤ幅方向端部を意味するものとする。
【0021】
図示するように、本発明においては、カーカス2のタイヤ幅方向外側端部2oが、ベルト3のタイヤ幅方向端部3xよりもタイヤ幅方向内側まで延在することが好ましい。このような構成とすることにより、各部材の端部の位置をタイヤ幅方向において異ならせることで、応力の集中を抑制しつつ、剛性段差が生じないものとすることができ、耐久性をより向上させることができる。また、この場合、カーカス2のタイヤ幅方向外側端部2oは、ベルト3のタイヤ半径方向内側に配置される。
【0022】
ここで、本発明のタイヤにおいて、カーカスプライは、図示する例では2枚で設けられているが、少なくとも1枚で設けることができ、好適には2枚以上で設けるものであり、3枚以上で設けてもよい。このように2枚以上の複数層でカーカスプライを設ける場合、通常、複数層のカーカスプライ2a,2bのうちビードコアの周りに折り返されて、より高い位置まで巻き上げられた1枚のカーカスプライ2bのタイヤ幅方向外側端部2oが、ベルト3のタイヤ幅方向端部3xよりもタイヤ幅方向内側まで延在するものであればよい。特に、耐久性および乗り心地性の観点において、タイヤ半径方向内側に設けられる1枚のカーカスプライ2bを、上記ベルト3のタイヤ幅方向端部3xよりタイヤ幅方向内側まで延在させるような形が好適である。他のカーカスプライ2aの巻き上げ高さについては、特に制限されないが、図示するように、トレッド部11まで達しない高さとすることが、サイド部の剛性が高くなりすぎることを防止して乗り心地性能を維持する点から、好ましい。
【0023】
また、本発明において、タイヤ幅方向においてタイヤ表面に沿って測った、ベルト3とカーカス2との重なり幅CLに対する、ベルト3とフリッパー4との重なり幅FLの比率は、好適には25%~80%、より好適には30%~75%の範囲内とする。いわゆるペリフェリ長にて比較した際における、ベルト3とカーカス2との重なり幅CLと、ベルト3とフリッパー4との重なり幅FLとの比率FL/CLを、百分率で示して25%~80%の範囲とすることで、応力の集中を抑制しつつ、剛性段差が生じないものとすることができ、耐久性をより向上させることができる。
【0024】
ベルト3とカーカス2との重なり幅CLは、具体的には、3~25mmとすることが好ましく、5~20mmとすることがより好ましい。また、ベルト3とフリッパー4との重なり幅FLは、具体的には、1~20mmとすることが好ましく、3~15mmとすることがより好ましい。
【0025】
また、本発明においては、フリッパー4のタイヤ幅方向内側端部4iの高さFHが、タイヤ最大幅位置、すなわちトレッド端TEの高さSWHよりも低いことが好ましい。これにより、応力の集中を抑制しつつ、剛性段差が生じないものとすることができ、耐久性をより向上させることができる。
【0026】
具体的には、タイヤ最大幅位置の高さSWHに対する、フリッパー4のタイヤ幅方向内側端部4iの高さFHの比率が、30%以上100%未満の範囲内であることが好ましく、50%~85%であることがより好ましい。タイヤ最大幅位置の高さSWHと、フリッパー4のタイヤ幅方向内側端部4iの高さFHとの比率FH/SWHを、百分率で示して30%以上100%未満の範囲とすることで、より効果的に応力の集中を抑制しつつ、剛性段差が生じないものとすることができ、耐久性をより向上させることができる。
【0027】
ここで、本発明において、フリッパー4のタイヤ幅方向内側端部4iの高さFH、タイヤ最大幅位置の高さSWH、および、後述するタイヤ断面高さSHは、ビードベースラインBLを基準として規定される。ビードベースラインBLとは、タイヤ幅方向断面において、上記産業規格で規定されるリムのリム径の位置を通るタイヤ軸に平行な直線を意味する。
【0028】
本発明においては、上記フリッパー4を配置した点のみが重要であり、これにより本発明の所期の効果を得ることができる。本発明においては、フリッパー4以外の各部材の材質や配置条件等の構成については、特に制限されるものではなく、常法に従い適宜決定することができる。例えば、本発明のタイヤにおいて、ビードコア1のタイヤ半径方向外側にはビードフィラー5を配置することができ、ビード部13におけるカーカス2のタイヤ半径方向内側には、チェーファー(補強層)6を配置することができる。さらに、タイヤの最内層には、図示しないインナーライナーを配置することができる。
【0029】
本発明のタイヤにおいて、カーカスプライにおけるプライコードのコード角度は、タイヤクラウン部において、タイヤ赤道CTに対し、好適には20°~50°である。カーカスプライを2枚以上で設ける場合には、2枚以上のカーカスプライのコードの方向が互いに交錯するように配置する。カーカスプライにおけるプライコードの打ち込み数は、好適には、3本~10本/5mmとすることができ、これにより、サイド部の剛性を十分に維持することができる。
【0030】
また、本発明のタイヤにおいて、ベルト層におけるベルトコードのコード角度は、タイヤ赤道CTに対して、好適には15°~80°、より好適には15°~45°である。ベルト層を2枚以上で設ける場合には、少なくとも一部のベルト層を、コードの方向が互いに交錯するように配置する。ベルト層におけるベルトコードの打ち込み数は、好適には、2本~10本/5mmとすることができる。
【0031】
さらに、本発明のタイヤにおいて、フリッパー4における補強コードのコード角度は、タイヤ半径方向に対し、好適には20°~60°、より好適には30°~55°である。フリッパーにおける補強コードの打ち込み数は、好適には2本~6本/5mm、より好適には3本~4本/5mmとすることができる。
【0032】
さらにまた、本発明のタイヤにおいて、カーカスプライ、ベルト層およびフリッパーに好適に適用し得る有機繊維コードの材質としては、ポリアミド(例えば、ナイロン)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、アラミド(例えば、Kevler(ケブラー、商品名))、レーヨンなどの他、これら有機繊維材料と同等程度の材料特性を有するものの中から、目的や用途に応じて、適宜組み合わせて、選択して用いることができる。
【0033】
さらにまた、本発明のタイヤにおいて、タイヤ断面高さSHに対する、タイヤ最大幅位置の高さSWHの比率は、40%~75%の範囲内であることが好ましい。タイヤ断面高さSHと、タイヤ最大幅位置の高さSWHとの比率SWH/SHを、百分率で示して40%~75%の範囲とすることで、適切な接地面を有し、より操縦安定性に優れたタイヤとすることができる。また、特に二輪車のコーナリング走行時において、バンクさせた状態での操縦安定性を向上させることができる。ここで、タイヤ断面高さSHとは、タイヤの外径と上記産業規格で規定されるリムのリム径との差の1/2をいう。
【0034】
さらにまた、本発明のタイヤにおいては、ネガティブ比が、5%~30%の範囲内であることが好ましい。ネガティブ比を上記範囲とすることで、排水性を確保しつつ、操縦安定性および乗り心地を良好に維持することができる。ここで、ネガティブ比とは、溝がないと仮定したトレッド表面の面積に対する溝の面積の割合であり、トレッド踏面部の面積に占める、サイプを除いた溝部の割合を意味する。
【0035】
本発明のタイヤは、特に、自動二輪車のリアタイヤとして好適である。また、本発明のタイヤは、ラジアル構造およびバイアス構造のいずれのタイヤにも適用することができるが、バイアスタイヤとして有用である。
【実施例
【0036】
以下、本発明を、実施例を用いてより詳細に説明する。
【0037】
(実施例1)
図1,2に示すような構造を有するタイヤサイズ180/65B16の自動二輪車用空気入りバイアスタイヤを作製した。図示するように、このタイヤは、2枚のカーカスプライからなるカーカスを骨格とし、そのタイヤ半径方向外側に配置された3枚のベルト層からなるベルトを備えるリアタイヤであり、カーカスとビードコアとの間には、ビードコアをタイヤ半径方向内側から包むフリッパーが配置されていた。
【0038】
2枚のカーカスプライは、打ち込み数4.6本/5mmであって、タイヤ赤道CTに対し±35°のコード角度で互いに交錯するよう配設されたプライコード(材質:ポリアミド)により補強されていた。また、3枚のベルト層は、打ち込み数4.4本/5mmであって、タイヤ赤道CTに対し±20°のコード角度で互いに交錯するよう配設されたベルトコード(材質:内層側からアラミド、アラミドおよびポリアミド)により補強されていた。さらに、フリッパーは、打ち込み数3.6本/5mmであり、タイヤ半径方向に対し45°のコード角度で配設された補強コード(材質:アラミド)により補強されていた。
【0039】
実施例1のタイヤにおいて、フリッパーのタイヤ幅方向外側端部およびカーカスのうちタイヤ半径方向内側に配置されたカーカスプライのタイヤ幅方向外側端部は、ベルトのタイヤ幅方向端部よりもタイヤ幅方向内側まで延在していた。また、フリッパーのタイヤ幅方向内側端部の高さは、タイヤ最大幅位置の高さよりも低い位置にあった。また、このタイヤの、タイヤ断面高さSHに対するタイヤ最大幅位置の高さSWHの比率は、59.5%であり、ネガティブ比は12.6%であった。
【0040】
(比較例1)
下記の表1中に示す条件に従い、フリッパーを配置しない以外は実施例1と同様にして、比較例1の供試タイヤを作製した。
【0041】
(比較例2)
下記の表1中に示す条件に従い、フリッパーのタイヤ幅方向外側端部の位置を、ベルトのタイヤ幅方向端部と重複しない位置に変えた以外は実施例1と同様にして、比較例2の供試タイヤを作製した。
【0042】
これら実施例1および比較例1,2のリアタイヤを、1800ccクラスの高荷重・高トルクである大型自動二輪車に装着して、下記の評価を行った。フロントタイヤとしては、市販のものを用いた。その結果を、下記の表1中に併せて示す。
【0043】
(操縦安定性試験)
各車両について走行試験を行って、高速でのコーナリング走行における操縦安定性を、テストドライバーによる官能評価により評価した。結果は、比較例2の供試タイヤを基準として示した。
【0044】
(耐久性試験)
各車両について段階的に荷重をかけて走行させた際に、タイヤに破損が生じた荷重の値を、実施例1を100として指数値化して評価した。数値が高いほど耐久性に優れることを示す。
【0045】
【表1】
【0046】
*1)タイヤ幅方向においてタイヤ表面に沿って測った、ベルトとフリッパーとの重なり幅FLの値である。
*2)タイヤ幅方向においてタイヤ表面に沿って測った、ベルトとカーカスとの重なり幅CLの値である。
*3)タイヤ幅方向においてタイヤ表面に沿って測った、ベルトとカーカスとの重なり幅CLに対する、ベルトとフリッパーとの重なり幅FLの比率を百分率で示した値である。
*4)タイヤ最大幅位置の高さSWHに対する、フリッパーのタイヤ幅方向内側端部の高さFHの比率を百分率で示した値である。
【0047】
上記表中に示すとおり、カーカスとビードコアとの間に、フリッパーを、そのタイヤ幅方向外側端部がベルトのタイヤ幅方向端部よりもタイヤ幅方向内側まで延在するように配置した実施例1のタイヤにおいては、この条件を満足しない比較例1,2のタイヤと比べて、操縦安定性および耐久性がいずれも向上していることが明らかである。
【符号の説明】
【0048】
1 ビードコア
2 カーカス
2a,2b カーカスプライ
2o カーカスのタイヤ幅方向外側端部
3 ベルト
3a~3c ベルト層
3x ベルトのタイヤ幅方向端部
4 フリッパー
4i フリッパーのタイヤ幅方向内側端部
4o フリッパーのタイヤ幅方向外側端部
5 ビードフィラー
6 チェーファー(補強層)
10 二輪車用タイヤ
11 トレッド部
12 サイドウォール部
13 ビード部
図1
図2