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特許7461159プリズムロッドホルダ、レーザモジュール、レーザ加工装置及び保持構造
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-26
(45)【発行日】2024-04-03
(54)【発明の名称】プリズムロッドホルダ、レーザモジュール、レーザ加工装置及び保持構造
(51)【国際特許分類】
   H01S 5/02325 20210101AFI20240327BHJP
   B23K 26/064 20140101ALN20240327BHJP
【FI】
H01S5/02325
B23K26/064 N
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020028321
(22)【出願日】2020-02-21
(65)【公開番号】P2021132192
(43)【公開日】2021-09-09
【審査請求日】2023-02-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000236436
【氏名又は名称】浜松ホトニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140442
【弁理士】
【氏名又は名称】柴山 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100177910
【弁理士】
【氏名又は名称】木津 正晴
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 正樹
(72)【発明者】
【氏名】伊東 勝久
【審査官】高椋 健司
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-182181(JP,A)
【文献】特開2003-161701(JP,A)
【文献】特開2014-130260(JP,A)
【文献】特開2017-097016(JP,A)
【文献】特開2018-003086(JP,A)
【文献】国際公開第2016/121116(WO,A1)
【文献】特開2018-024009(JP,A)
【文献】特開2002-148491(JP,A)
【文献】特開2005-246454(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0371168(US,A1)
【文献】国際公開第2018/221579(WO,A1)
【文献】特表2009-507383(JP,A)
【文献】特開平10-039349(JP,A)
【文献】特開平05-072577(JP,A)
【文献】特開2004-253733(JP,A)
【文献】特開平05-188413(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 5/00- 5/50
G02B 6/26
G02B 6/30- 6/34
G02B 6/42
B23K 26/00-26/70
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の軸線上に位置する入射端面及び出射端面と、前記軸線を包囲する側面とを有する棒状のプリズムロッドを保持するためのプリズムロッドホルダであって、
前記軸線に平行な方向における前記プリズムロッドの一部の前記側面に接触して前記プリズムロッドを保持する保持部材を備え、
前記保持部材は、本体部と、前記本体部の表面上に形成され、前記プリズムロッドの前記一部の前記側面に接触する金属層と、を有し、
前記金属層は、Au及びAgからなる群より選択される少なくとも一種の元素を合計で99質量%以上含有し、1.0μm以上の厚さを有している、プリズムロッドホルダ。
【請求項2】
前記金属層の厚さは、1.5μm以上である、請求項1に記載のプリズムロッドホルダ。
【請求項3】
前記金属層は、前記本体部の前記表面上に直接に形成されている、請求項1又は2に記載のプリズムロッドホルダ。
【請求項4】
前記本体部は、銅により形成されている、請求項1~のいずれか一項に記載のプリズムロッドホルダ。
【請求項5】
前記保持部材が取り付けられたジャケット部材を更に備え、
前記ジャケット部材には、前記保持部材の熱を放熱するための放熱構造が設けられている、請求項1~のいずれか一項に記載のプリズムロッドホルダ。
【請求項6】
前記放熱構造は、前記ジャケット部材内に形成され、冷媒が流れる流路である、請求項に記載のプリズムロッドホルダ。
【請求項7】
請求項1~のいずれか一項に記載のプリズムロッドホルダと、
レーザ光を出力する光源と、
前記プリズムロッドホルダによって保持され、前記光源からの前記レーザ光を導光する前記プリズムロッドと、を備える、レーザモジュール。
【請求項8】
前記光源は、JIS C 6802に規定されるクラス4のレーザ光を出力する、請求項に記載のレーザモジュール。
【請求項9】
前記光源は、1kW/cm以上のパワー密度を有するレーザ光を出力する、請求項又はに記載のレーザモジュール。
【請求項10】
前記金属層の厚さは、前記レーザ光の波長よりも大きい、請求項のいずれか一項に記載のレーザモジュール。
【請求項11】
前記金属層の厚さは、前記レーザ光の波長の2倍よりも大きい、請求項10のいずれか一項に記載のレーザモジュール。
【請求項12】
請求項11のいずれか一項に記載のレーザモジュールにより構成され、前記レーザ光を出力するレーザヘッドと、
前記レーザヘッドを保持する保持部と、
前記レーザヘッドからの前記レーザ光が照射される加工対象物を支持する支持部と、
前記保持部及び前記支持部の少なくとも一方を動作させる制御部と、を備える、レーザ加工装置。
【請求項13】
請求項1~6のいずれか一項に記載のプリズムロッドホルダと、
前記プリズムロッドホルダによって保持された前記プリズムロッドと、を備え、
前記保持部材は、前記プリズムロッドの前記一部を挟み込むことにより、前記金属層が前記プリズムロッドの前記一部の前記側面に面接触した状態で、前記プリズムロッドを保持している、保持構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリズムロッドホルダ、レーザモジュール及びレーザ加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
関連技術として、例えば、投影表示装置におけるロッドインテグレータの保持構造が挙げられる(特許文献1~3を参照)。特許文献1,2に記載の保持構造では、ロッドインテグレータが保持部材に接着剤により固定されている。特許文献3に記載の保持構造では、保持部材に螺合されたネジによってロッドインテグレータの側面を押さえることにより、ロッドインテグレータが保持されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2004-94115号公報
【文献】特開平11-326727号公報
【文献】特開2007-187932号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えばレーザ加工装置等において、光源からのレーザ光を導光するためにプリズムロッドが用いられる場合がある。このようなプリズムロッドには、入力された光を高効率で導光することが求められる。また、このようなプリズムロッドに入力されるレーザ光は、上述したような投影表示装置においてロッドインテグレータに入力される光と比べて、極めて高いパワー密度を有する。そのため、プリズムロッドを保持部材に接着剤により固定すると、接触箇所においてプリズムロッドから接着剤へ漏れ出た光が接着剤により吸収されることによる導光効率の低下が問題となる。また、漏れ出た光が接着剤により吸収されて熱が生じることで、接着剤又はプリズムロッドに不具合が生じるおそれがある。プリズムロッドを保持部材にネジにより固定した場合についても同様に、導光効率が低下するおそれや、ネジ又はプリズムロッドに不具合が生じるおそれがある。
【0005】
本発明は、高強度の光がプリズムロッドに入力される場合でも、プリズムロッドによる導光効率を高めることができると共に、プリズムロッドを安定的に保持することができるプリズムロッドホルダ、並びに、そのようなプリズムロッドホルダを備えるレーザモジュール及びレーザ加工装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のプリズムロッドホルダは、所定の軸線上に位置する入射端面及び出射端面と、軸線を包囲する側面とを有する棒状のプリズムロッドを保持するためのプリズムロッドホルダであって、軸線に平行な方向におけるプリズムロッドの一部の側面に接触してプリズムロッドを保持する保持部材を備え、保持部材は、本体部と、本体部の表面上に形成され、プリズムロッドの一部の側面に接触する金属層と、を有し、金属層は、Au及びAgからなる群より選択される少なくとも一種の元素を合計で99質量%以上含有し、1.0μm以上の厚さを有している。
【0007】
このプリズムロッドホルダでは、保持部材が、Au及びAgからなる群より選択される少なくとも一種の元素を合計で99質量%以上含有する金属層を有しており、当該金属層が、プリズムロッドの一部の側面に接触する。これにより、光に対する反射率が高く且つ吸収率が低い金属層をプリズムロッドの側面に接触させてプリズムロッドを保持することができ、光の損失を低減してプリズムロッドによる導光効率を高めることができる。また、プリズムロッドとの接触箇所において金属層に熱が生じるのを抑制することができ、その結果、熱に起因する不具合の発生を抑制することができる。更に、金属層が1.0μm以上の厚さを有している。金属層で光が反射される際には光の一部が金属層にしみ出すが(エバネッセント光)、金属層が厚く形成されていることで、しみ出した光が金属層を透過して本体部に至るのを抑制することができる。この効果は、金属層の厚さが光の波長よりも大きい場合に特に顕著となる。これは、金属層に光がしみ出す深さは、一波長程度であるためである。しみ出した光が本体部に至るのを抑制することで、光の吸収により本体部に熱が生じるのを抑制することができ、その結果、熱に起因する不具合の発生を抑制することができる。以上により、このプリズムロッドホルダによれば、高強度の光がプリズムロッドに入力される場合でも、プリズムロッドによる導光効率を高めることができると共に、プリズムロッドを安定的に保持することができる。
【0008】
金属層の厚さは、1.5μm以上であってもよい。この場合、しみ出した光が金属層を透過することを一層確実に抑制することができる。
【0009】
保持部材は、プリズムロッドの一部を挟み込むことにより、金属層がプリズムロッドの一部の側面に面接触した状態で、プリズムロッドを保持してもよい。この場合、プリズムロッドを確実に保持することができる。また、上述した関連技術のようにネジにより押さえて固定する場合と比べて、高強度の光が入力されてプリズムロッドが熱膨張した場合でも、プリズムロッドを確実に保持することができる。また、プリズムロッドの形状には公差が存在するが、金属層をプリズムロッドの一部の側面に面接触させることで、公差が存在する場合でもプリズムロッドを確実に保持することができる。また、プリズムロッドの一部を挟み込む際に金属層がプリズムロッドの側面に密着するように変形するため、金属層をプリズムロッドに確実に面接触させることができる。
【0010】
金属層は、本体部の表面上に直接に形成されていてもよい。例えば本体部の表面と金属層との間に下地層が存在する場合、金属層を透過した光が下地層により吸収されて熱が生じるおそれがある。これに対して、このプリズムロッドホルダでは、そのような事態の発生を抑制することができる。
【0011】
本体部は、銅により形成されていてもよい。この場合、本体部の熱伝導率を高めることができ、保持部材の熱を効果的に放熱することができる。
【0012】
本発明のプリズムロッドホルダは、保持部材が取り付けられたジャケット部材を更に備え、ジャケット部材には、保持部材の熱を放熱するための放熱構造が設けられていてもよい。この場合、保持部材の熱を一層効果的に放熱することができる。
【0013】
放熱構造は、ジャケット部材内に形成され、冷媒が流れる流路であってもよい。この場合、保持部材の熱をより一層効果的に放熱することができる。
【0014】
本発明のレーザモジュールは、上記プリズムロッドホルダと、レーザ光を出力する光源と、プリズムロッドホルダによって保持され、光源からのレーザ光を導光するプリズムロッドと、を備える。このレーザモジュールでは、上述した理由により、高強度の光がプリズムロッドに入力される場合でも、プリズムロッドによる導光効率を高めることができると共に、プリズムロッドを安定的に保持することができる。
【0015】
光源は、JIS C 6802に規定されるクラス4のレーザ光を出力してもよいし、1kW/cm以上のパワー密度を有するレーザ光を出力してもよい。このように高いパワー密度を有する高強度のレーザ光がプリズムロッドに入力される場合でも、このレーザモジュールでは、プリズムロッドによる導光効率を高めることができると共に、プリズムロッドを安定的に保持することができる。
【0016】
金属層の厚さは、レーザ光の波長よりも大きくてもよい。この場合、しみ出した光が金属層を透過することを一層確実に抑制することができる。
【0017】
金属層の厚さは、レーザ光の波長の2倍よりも大きくてもよい。この場合、しみ出した光が金属層を透過することをより一層確実に抑制することができる。
【0018】
本発明のレーザ加工装置は、レーザモジュールにより構成され、レーザ光を出力するレーザヘッドと、レーザヘッドを保持する保持部と、レーザヘッドからのレーザ光が照射される加工対象物を支持する支持部と、保持部及び支持部の少なくとも一方を動作させる制御部と、を備える。このレーザ加工装置では、上述した理由により、高強度の光がプリズムロッドに入力される場合でも、プリズムロッドによる導光効率を高めることができると共に、プリズムロッドを安定的に保持することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、高強度の光がプリズムロッドに入力される場合でも、プリズムロッドによる導光効率を高めることができると共に、プリズムロッドを安定的に保持することができるプリズムロッドホルダ、並びに、そのようなプリズムロッドホルダを備えるレーザモジュール及びレーザ加工装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】実施形態に係るレーザ加工装置の構成図である。
図2図1のレーザヘッドの構成図である。
図3図2の光源の構成図である。
図4】(a)は、図2のプリズムロッドの斜視図であり、(b)は、図2のプリズムロッドの断面図である。
図5】プリズムロッド及びプリズムロッドホルダを示す斜視図である。
図6図5の軸線AXに沿っての斜視断面図である。
図7図5の軸線AXに沿っての断面図である。
図8】プリズムロッドホルダの一部を示す斜視図である。
図9】保持部材の第1部分を示す斜視図である。
図10】保持部材の第1部分及び第2部分によってプリズムロッドが挟み込まれた状態を示す斜視図である。
図11】プリズムロッド及びプリズムロッドホルダを軸線方向から見た図である。
図12】保持部材の第1部分及び第2部分によってプリズムロッドが挟み込まれた状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の説明において、同一又は相当要素には同一符号を用い、重複する説明を省略する。
[レーザ加工装置の構成]
【0022】
図1に示されるように、レーザ加工装置100は、レーザヘッド(レーザモジュール)1と、保持ロボット(保持部)101と、支持ステージ(支持部)102と、電源103と、冷却機104と、制御部105と、を備えている。レーザ加工装置100は、例えば、金属材料からなるワーク(加工対象物)Wにレーザ光Lを照射することで、ワークWに焼入れ加工を施す装置である。なお、焼入れとは、鋼等の金属をオーステナイト領域まで加熱し適当な冷媒中で急冷し、マルテンサイト組織として硬化させる熱処理である。
【0023】
レーザヘッド1は、ワークWにレーザ光Lを照射する。保持ロボット101は、レーザヘッド1を保持する。支持ステージ102は、ワークWを支持する。電源103は、レーザヘッド1が備える複数の半導体レーザアレイに電流を供給する。冷却機104は、レーザヘッド1が備える複数の半導体レーザアレイを冷却するために、冷却水を循環させる。
【0024】
制御部105は、保持ロボット101を動作させる。制御部105は、レーザ光Lの照射領域がワークWの表面に沿って移動するように(すなわち、ワークWに対して相対移動するように)、保持ロボット101を動作させる。このような保持ロボット101の制御は、例えば、レーザヘッド1に取り付けられた距離センサからの出力に基づいて実施される。なお、制御部105は、保持ロボット101だけでなく、レーザ加工装置100の各部を制御する。
【0025】
図2に示されるように、レーザヘッド1は、光源2と、集光素子3と、集光素子4と、プリズムロッド5と、筐体6と、を有している。光源2、集光素子3、プリズムロッド5及び集光素子4は、筐体6に収容されており、X軸方向に沿ってこの順に配列されている。これにより、レーザヘッド1は、直接集光型半導体レーザ(DDL)として構成されている。
【0026】
図2及び図3に示されるように、光源2は、複数(例えば30個)の半導体レーザアレイ21と、複数のコリメートレンズ22と、複数のヒートシンク23と、を有している。複数の半導体レーザアレイ21は、例えば数mmの等間隔で、Z軸方向に沿ってスタック(積層)されている。1つの半導体レーザアレイ21には、複数(例えば30個)の発光部21aが形成されている。1つの半導体レーザアレイ21においては、複数の発光部21aが例えば数百μmの等間隔で、Y軸方向に沿って1次元的に配列されている。発光部21aは、Y軸方向をスロー方向とすると共にZ軸方向をファースト方向とする半導体レーザ素子である。発光部21aは、X軸方向に沿ってレーザ光Laを出射する。なお、上述したレーザ光Lは、光源2から出射された複数のレーザ光Laの集合である。
【0027】
各コリメートレンズ22は、各半導体レーザアレイ21の光出射側に配置されている。コリメートレンズ22は、半導体レーザアレイ21の複数の発光部21aからX軸方向に沿って出射された複数のレーザ光Laをコリメートする。より具体的には、コリメートレンズ22は、Z軸方向(すなわち、ファースト方向)へのレーザ光Laの広がりをコリメートする。各ヒートシンク23は、各半導体レーザアレイ21と熱的に接続されている。ヒートシンク23には、冷却機104によって冷却水が循環させられる。これにより、ヒートシンク23は、半導体レーザアレイ21を冷却する。
【0028】
光源2においては、1つの発光部21a、及びその光出射側に配置されたコリメートレンズ22によって、1つの光出力部24が構成されている。つまり、光源2は、互いに交差する(この例では直交する)Y軸方向及びZ軸方向に沿って2次元的に(すなわち、マトリックス状に)配列された複数の光出力部24を有している。この例では、光出力部24は、Y軸方向及びZ軸方向を含む四角形状の領域R1に配列されている。領域R1は、一例として正方形状であるが、長方形状であってもよい。
【0029】
光源2は、Y軸方向及びZ軸方向に交差する(この例では直交する)X軸方向に沿って複数の光出力部24からレーザ光Laを出射する。これにより、集光素子3に入射する複数のレーザ光Laの光軸の位置は、Y軸方向及びZ軸方向に沿って2次元に(すなわち、マトリックス状に)配列された状態となる。
【0030】
光源2から出力されるレーザ光Lは、JIS C 6802に規定されるクラス4のパワーを有する。レーザ光Lは、1kW/cm以上のパワー密度(22.5W以上の出力)を有する。レーザ光Lの波長は、例えば940nmである。レーザ光Lの波長は、400nm以上1100nm以下であってもよい。
【0031】
図2に示されるように、集光素子3は、Y軸方向及びZ軸方向の両方について、光源2からのレーザ光Laの各々を、プリズムロッド5の入射端面5aに向けて集光する。入射端面5aにおけるレーザ光のスポット(複数のレーザ光Laのスポットの集合)は、四角形状である。この例では、入射端面5aにおけるレーザ光のスポットは、正方形状であるが、長方形状であってもよい。集光素子3は、例えばレンズである。なお、集光素子3は、レーザ光のスポットを入射端面5a上に位置させてもよいし、或いは、レーザ光のスポットを入射端面5aの手前若しくは奥(すなわち、プリズムロッド5内)に位置させてもよい。
【0032】
集光素子4は、プリズムロッド5の出射端面5bから出射されたレーザ光Lの照射領域がワークWの表面上に位置するようにレーザ光Lを集光する。そのために、集光素子4は、第1素子41と、第2素子42と、を含んでいる。第1素子41及び第2素子42は、X軸方向に沿ってこの順に配列されている。第1素子41は、Y軸方向及びZ軸方向の両方について、出射端面5bから出射されたレーザ光Lをコリメートする。第2素子42は、第1素子41からのレーザ光Lを集光し、ワークWの表面上にレーザ光Lの照射領域を形成する。
【0033】
プリズムロッド5は、集光素子3と集光素子4との間に配置されている。プリズムロッド5は、入射端面5aに入射したレーザ光Laを導光し、出射端面5bからレーザ光Lとして出射する。図4(a)に示されるように、プリズムロッド5は、棒状(柱状)に形成され、X軸方向に平行な軸線(所定の軸線)AXに沿って延在している。一例として、プリズムロッド5は、ガラス等の光透過性材料により、1.5mm×1.5mm×60mm程度の寸法で形成されている。
【0034】
プリズムロッド5は、入射端面5a、出射端面5b及び側面50を有している。入射端面5a及び出射端面5bは、軸線AX上に位置している。入射端面5aは、集光素子3と向かい合っており、出射端面5bは、集光素子4と向かい合っている。側面50は、入射端面5aと出射端面5bとの間において軸線AXを包囲している。
【0035】
図4(b)に示されるように、側面50には、一対の第1凹部51,52及び一対の第2凹部53,54が形成されている。第1凹部51,52及び第2凹部53,54の各々は、軸線AXに沿って延在しており、入射端面5aと出射端面5bとの間に渡って形成されている。第1凹部51は、軸線AXに対して第2凹部53とは反対側に位置しており、第1凹部52は、軸線AXに対して第2凹部54とは反対側に位置している。軸線AXに平行な軸線方向(X軸方向)から見た場合に、第1凹部51の内面51a、第1凹部52の内面52a、第2凹部53の内面53a及び第2凹部54の内面54aの各々は、軸線AX側に凸となるように湾曲している。
【0036】
プリズムロッド5は、一対の第1角部55,56及び一対の第2角部57,58を有している。第1角部55は、第1凹部51の内面51aと第1凹部52の内面52aとの間に形成されている。第1角部56は、第2凹部53の内面53aと第2凹部54の内面54aとの間に形成されており、軸線AXに対して第1角部55とは反対側に位置している。第2角部57は、第1凹部52の内面52aと第2凹部53の内面53aとの間に形成されている。第2角部58は、第1凹部52の内面52aと第2凹部54の内面54aとの間に形成されており、軸線AXに対して第2角部57とは反対側に位置している。第1角部55,56の表面及び第2角部57,58の表面の各々は、軸線AXとは反対側に凸となるように湾曲している。プリズムロッド5の側面50は、内面51a~54a、並びに第1角部55,56の表面及び第2角部57,58の表面によって構成されている。
【0037】
なお、上述したように、プリズムロッド5は棒状(柱状)に形成されており、光ファイバとは区別される。すなわち、典型的には、光ファイバは、コア、コアを囲むクラッド、及びクラッドを覆う被覆等から構成されている。光ファイバは、コアとクラッドとの屈折率差によってコアに光を閉じ込めて導光する。これに対して、プリズムロッド5は、例えば実質的に単一の屈折率の領域からなる。プリズムロッド5は、空気等の周囲の雰囲気との屈折率差によって、光を閉じ込めて導光する。ただし、入射端面5aには、反射防止膜が形成される場合があり、側面50には、反射膜が形成される場合がある。
【0038】
また、光ファイバは、全体としての剛性が比較的小さく、可撓性を有する。このため、光ファイバは、例えば片持ち状態で姿勢及び形状を維持することが困難である(自重で変形する)。すなわち、光ファイバは、全体として一定の形状を有していない。これに対して、プリズムロッド5は、全体としての剛性が比較的大きく、可撓性を有していない。このため、プリズムロッド5は、例えば片持ち状態で姿勢及び形状を維持可能である。すなわち、プリズムロッド5は、全体として一定の形状(棒状)を有する。この点でも、プリズムロッド5は、光ファイバと区別される。
【0039】
以上のように構成されたレーザ加工装置100では、例えば、レーザヘッド1から出射されたレーザ光LがワークWの表面に集光させられた状態で、レーザ光Lの照射領域がワークWの表面に対して相対的に移動させられる。これにより、ワークWの表面部分のうち選択された所望の部分に焼入れ加工が施される。レーザヘッド1から出射されたレーザ光Lの照射領域は、保持ロボット101によって、ワークWの表面に対して位置調整されると共に移動させられる。ワークWの表面Wsに照射されるレーザ光Lの照射領域の形状は、プリズムロッド5の断面形状(軸線AXに垂直な断面形状)に対応した形状となり、例えば、プリズムロッド5の断面形状と相似の形状となる。
[プリズムロッドの保持構造]
【0040】
図5図12を参照しつつ、プリズムロッドホルダ7によるプリズムロッド5の保持構造について説明する。図5に示されるように、プリズムロッド5は、プリズムロッドホルダ7によって保持されている。すなわち、図2には示されていないが、レーザヘッド1は、プリズムロッドホルダ7を更に備えている。プリズムロッドホルダ7は、筐体6に収容されている。
【0041】
図5図12に示されるように、プリズムロッドホルダ7は、複数(この例では3つ)の保持部材70A,70B,70Cと、ジャケット部材80と、複数(この例では6つ)の締結部材90と、を備えている。プリズムロッドホルダ7は、各保持部材70A~70Cによってプリズムロッド5の一部を挟み込むことにより、プリズムロッド5を保持している。保持部材70A~70Cの構成については後述する。以下、プリズムロッド5の軸線AXに平行な方向を軸線方向Dとすると共に、軸線方向Dにおいて出射端面5bに対して入射端面5aが位置する側を第1の側S1とし、第1の側S1とは反対の側を第2の側S2として説明する。軸線方向Dは、X軸方向に平行である。
【0042】
複数の保持部材70A~70Cは、ジャケット部材80に取り付けられている。ジャケット部材80は、例えばアルミニウム等の金属材料により略円筒状に形成され、プリズムロッド5を包囲している。ジャケット部材80の中心線は、プリズムロッド5の軸線AX上に位置している。ジャケット部材80は、第1部分81と、第2部分82と、を有している。第1部分81及び第2部分82は、中心線を含む平面で筒状体を分割したような形状に形成されており、互いに同一の形状を有している。後述するように、第1部分81と第2部分82とは、締結部材90の締結力により互いに固定されている。
【0043】
第1部分81は、軸線方向Dに沿って延在する一対の平坦な表面81aを有している(図8,11)。表面81aは、第1部分81と第2部分82とが互いに固定された状態において、第2部分82と向かい合う表面である。表面81aには、締結部材90が締結される複数(この例では6つ)の締結穴81cが形成されている。複数の締結穴81cのうち、3つの締結穴81cは、軸線方向Dに沿って等間隔で並ぶように一方の表面81aに形成されており、残りの3つの締結穴81cは、軸線方向Dに沿って等間隔で並ぶように他方の表面81aに形成されている。
【0044】
第1部分81には、軸線方向Dに沿って延在する凹部81dが形成されている。凹部81dは、一対の表面81aの間に位置しており、第2部分82側に開口している。凹部81dは、軸線方向Dから見た場合に、例えば長方形状を呈している。凹部81dには、後述する保持部材70A~70Cの第1部分71が配置される。
【0045】
第1部分81には、冷媒を流すための流路(放熱構造)83が形成されている。流路83は、第1部分81の内部に形成され、軸線方向Dに沿って延在している。この例では、流路83は、第1部分81における第2の側S2の端面(後述する出射側部80bにおける第2の側S2の端面80bs)に開口した穴83aの開口が閉塞部材83bによって閉塞されることにより、構成されている。閉塞部材83bは、例えばボルトである。
【0046】
第1部分81には、流路95aを形成する流路形成部材95と、流路96aを形成する流路形成部材96と、が接続されている。流路95aは、第1の側S1において流路83に接続されている。流路96aは、第2の側S2において流路83に接続されている。流路95aには、冷媒供給装置(不図示)から冷媒が供給される。流路95aに供給された冷媒は、流路83を流れた後、流路96aへ流れ込む。このように、流路83には、第1の側S1から第2の側S2へ向けて流れるように、冷媒が供給される。冷媒は、流路96aにおいて外部に排出される。冷媒は、例えば水である。
【0047】
第2部分82は、軸線方向Dに沿って延在する一対の平坦な表面82aを有している(図11)。表面82aは、第1部分81と第2部分82とが互いに固定された状態において、第1部分81と向かい合う表面である。表面82aには、締結部材90が挿通される複数(この例では6つ)の挿通穴(不図示)が形成されている。各挿通穴は、軸線方向Dに垂直な方向に沿って第2部分82を貫通している。複数の挿通穴は、それぞれ、第1部分81の複数の締結穴81cの位置に対応した位置に配置されている。
【0048】
第2部分82には、軸線方向Dに沿って延在する凹部82dが形成されている。凹部82dは、一対の表面82aの間に位置しており、第1部分81側に開口している。凹部82dは、軸線方向Dから見た場合に、例えば長方形状を呈している。凹部82dには、後述する保持部材70A~70Cの第2部分72が配置される。
【0049】
第2部分82には、冷媒を流すための流路(放熱構造)84が形成されている。流路84は、第2部分82の内部に形成され、軸線方向Dに沿って延在している。この例では、流路84は、第2部分82における第2の側S2の端面(後述する出射側部80bにおける第2の側S2の端面80bs)に開口した穴84aの開口が閉塞部材84bによって閉塞されることにより、構成されている。閉塞部材84bは、例えばボルトである。
【0050】
第2部分82には、流路97aを形成する流路形成部材97と、流路98aを形成する流路形成部材98と、が接続されている。流路97aは、第1の側S1において流路84に接続されている。流路98aは、第2の側S2において流路84に接続されている。流路97aには、冷媒供給装置(不図示)から冷媒が供給される。流路97aに供給された冷媒は、流路84を流れた後、流路98aへ流れ込む。このように、流路84には、第1の側S1から第2の側S2へ向けて流れるように、冷媒が供給される。冷媒は、流路98aにおいて外部に排出される。冷媒は、例えば水である。
【0051】
第1部分81及び第2部分82は、表面81aと表面82aとが互いに向かい合った状態で、締結部材90の締結力により互いに固定されている。締結部材90は、例えばボルトである。第2部分82側から第2部分82の上記挿通穴に挿通された各締結部材90が第1部分81の締結穴81cに締結されることにより、第1部分81及び第2部分82には、互いに近づく方向の締結力が作用する。第1部分81及び第2部分82の固定状態の詳細については後述する。
【0052】
ジャケット部材80は、第1の側S1の端部である入射側部80aと、第2の側S2の端部である出射側部80bと、を有している。入射側部80aは、プリズムロッド5の入射端面5aに入射するレーザ光Lが通過する入射開口80cを画定している。出射側部80bは、プリズムロッド5の出射端面5bから出射したレーザ光Lが通過する出射開口80dを画定している。入射開口80c及び出射開口80dの各々は、第1部分81の凹部81d及び第2部分82の凹部82dにより構成され、矩形状を呈している。入射側部80aにおける第1の側S1の端面80as、及び出射側部80bにおける第2の側S2の端面80bsの各々は、軸線方向Dに垂直な平坦面である。
[保持部材の構成]
【0053】
図9図12を参照しつつ、保持部材70A~70Cについて説明する。以下、保持部材70Aについて説明するが、保持部材70B及び保持部材70Cについても保持部材70Aと同様に構成されている。
【0054】
保持部材70Aは、第1部分71と、第2部分72と、を有している。第1部分71及び第2部分72は、互いに別体に(別の部材として)形成されており、互いに同一の形状を有している。第1部分71は、第1本体部73と、一対の第1金属層74と、を有しており、第2部分72は、第2本体部75と、一対の第2金属層76と、を有している。第1部分71及び第2部分72は、軸線方向Dにおけるプリズムロッド5の一部5Aを、軸線方向Dと交差する(この例では直交する)Z軸方向に沿って互いの間に挟み込む。
【0055】
第1本体部73は、例えば銅(純銅)等の金属材料により略直方体状(ブロック状)に形成されている。第1本体部73は、第1対向面73aと、一対の表面73bと、一対の表面73cと、を有している。第1対向面73aは、第1部分71及び第2部分72によってプリズムロッド5が挟み込まれた状態において第2部分72と向かい合う面であり、Z軸方向に垂直な面である。一対の表面73bは、軸線方向Dに垂直な面である。一対の表面73cは、軸線方向D及びZ軸方向に垂直なY軸方向に垂直な面である。第1本体部73には、第1本体部73を軸線方向Dに沿って貫通し、各表面73bに開口する一対の貫通穴73hが形成されている。
【0056】
第1対向面73aには、一対の凹部73dが形成されている。各凹部73dは、表面73cに至っている。各凹部73dの底面には、Z軸方向に沿って第1本体部73を貫通する挿通穴73eが形成されている。図8に示されるように、第1部分71は、ジャケット部材80の第1部分81の凹部81dに配置されている。第1部分71は、挿通穴73eに挿通されたネジ77が凹部81dの底面に形成された締結穴(不図示)に締結されることにより、ジャケット部材80に固定されている。
【0057】
第1対向面73aには、軸線方向Dに沿って延在する凹部73fが形成されている。凹部73fの底部には、軸線方向Dに沿って延在する凹部(溝部)73gが形成されている。凹部73f,73gは、一対の表面73bの間に渡って形成されている。凹部73fは、Y軸方向において互いに向かい合う一対の内面73fsを有している。一対の内面73fsは、軸線方向Dから見た場合に、第1対向面73aから遠ざかるほど互いに近づくように、Z軸方向に対して傾斜している。凹部73gは、一対の内面73fsの間に位置しており、軸線方向Dから見た場合に、例えば底面が湾曲した略矩形状を呈している(図12)。
【0058】
一対の第1金属層74は、一対の内面73fs上にそれぞれ設けられている。この例では、第1金属層74は、内面73fsの全体にわたって設けられている。図9では、第1金属層74が形成された領域がハッチングで示されている。各第1金属層74は、軸線方向Dに沿って延在し、一対の表面73bに至るように形成されている。各第1金属層74は、例えば蒸着により内面73fs上に直接に形成されたメッキ層である。各第1金属層74は、Au及びAgからなる群より選択される少なくとも一種の元素を合計で99質量%以上含有している。この例では、各第1金属層74は、金により形成され、Auを99質量%以上含有している。
【0059】
各第1金属層74を構成する金属材料のヤング率は、第1本体部73を構成する金属材料のヤング率よりも低い。この例では、各第1金属層74を構成する金属材料は金及び銀の少なくとも一方であり、第1本体部73を構成する金属材料は銅又はアルミニウムである。金のヤング率及び銀のヤング率の各々は、銅及びアルミニウムのヤング率の各々よりも低い。
【0060】
各第1金属層74は、2.0μm以上の厚さを有している。この例では、各第1金属層74の厚さは、2.0μmである。各第1金属層74の厚さは、レーザ光Lの波長の2倍よりも大きい。第1金属層74の厚さとは、第1金属層74の表面に垂直な方向に沿っての厚さである。第1金属層74の厚さが一様でない場合、第1金属層74の厚さとは、第1金属層74の最小厚さである。これらの点は後述する第2金属層76についても同様である。
【0061】
各第1金属層74は、第1部分71及び第2部分72によってプリズムロッド5の一部5Aが挟み込まれる際に、プリズムロッド5の一部5Aの側面50に面接触する。すなわち、各第1金属層74の表面は、プリズムロッド5の側面50に接触する第1接触面74aを構成している。
【0062】
各第1接触面74aは、軸線AX側に凸となるように湾曲している。各第1接触面74aは、例えば、軸線AX側に凸となるように湾曲した内面73fs上に形成されることにより、軸線AX側に凸となるように湾曲している。第1部分71及び第2部分72によってプリズムロッド5の一部5Aが挟み込まれる前の状態において、軸線方向Dから見た場合に、一方の第1接触面74aの曲率は、プリズムロッド5の第1凹部51の内面51aの曲率よりも大きく、他方の第1接触面74aの曲率は、プリズムロッド5の第1凹部52の内面52aの曲率よりも大きい。後述する保持状態において、一方の第1接触面74aは、内面51aに面接触し、他方の第1接触面74aは、内面52aに面接触する。この例では、一対の第1接触面74aの曲率は互いに等しく、内面51a,52aの曲率は互いに等しい。
【0063】
第2本体部75は、例えば銅(純銅)等の金属材料により略直方体状(ブロック状)に形成されている。第2本体部75は、第2対向面75aと、一対の表面75bと、一対の表面75cと、を有している。第2対向面75aは、第1部分71及び第2部分72によってプリズムロッド5が挟み込まれた状態において第1部分71と向かい合う面であり、Z軸方向に垂直な面である。一対の表面75bは、軸線方向Dに垂直な面である。一対の表面75cは、軸線方向D及びZ軸方向に垂直なY軸方向に垂直な面である。第2本体部75には、第2本体部75を軸線方向Dに沿って貫通し、各表面75bに開口する一対の貫通穴75hが形成されている。
【0064】
第2対向面75aには、一対の凹部75dが形成されている。各凹部75dは、表面75cに至っている。各凹部75dの底面には、Z軸方向に沿って第2本体部75を貫通する挿通穴75eが形成されている。第2部分72は、ジャケット部材80の第2部分82の凹部82dに配置されている。第2部分72は、挿通穴75eに挿通されたネジ(付図示)が凹部81dの底面に形成された締結穴(不図示)に締結されることにより、ジャケット部材80に固定されている。
【0065】
第2対向面75aには、軸線方向Dに沿って延在する凹部75fが形成されている。凹部75fの底部には、軸線方向Dに沿って延在する凹部(溝部)75gが形成されている。凹部75f,75gは、一対の表面75bの間に渡って形成されている。凹部75fは、Y軸方向において互いに向かい合う一対の内面75fsを有している。一対の内面75fsは、軸線方向Dから見た場合に、第2対向面75aから遠ざかるほど互いに近づくように、Z軸方向に対して傾斜している。凹部75gは、一対の内面75fsの間に位置しており、軸線方向Dから見た場合に、例えば底面が湾曲した略矩形状を呈している(図12)。
【0066】
一対の第2金属層76は、一対の内面75fs上にそれぞれ設けられている。この例では、各第2金属層76は、内面75fsの全体にわたって設けられている。各第2金属層76は、軸線方向Dに沿って延在し、一対の表面75bに至るように形成されている。各第2金属層76は、例えば蒸着により内面75fs上に直接に形成されたメッキ層である。各第2金属層76は、Au及びAgからなる群より選択される少なくとも一種の元素を合計で99質量%以上含有している。この例では、各第2金属層76は、金により形成され、Auを99質量%以上含有している。
【0067】
各第2金属層76を構成する金属材料のヤング率は、第2本体部75を構成する金属材料のヤング率よりも低い。この例では、各第2金属層76を構成する金属材料は金及び銀の少なくとも一方であり、第2本体部75を構成する金属材料は銅又はアルミニウムである。金のヤング率及び銀のヤング率の各々は、銅及びアルミニウムのヤング率の各々よりも低い。
【0068】
各第2金属層76は、2.0μm以上の厚さを有している。この例では、各第2金属層76の厚さは、2.0μmである。各第2金属層76の厚さは、レーザ光Lの波長の2倍よりも大きい。
【0069】
第2金属層76は、第1部分71及び第2部分72によってプリズムロッド5の一部5Aが挟み込まれる際に、プリズムロッド5の一部5Aの側面50に面接触する。すなわち、第2金属層76の表面は、プリズムロッド5の側面50に接触する第2接触面76aを構成している。
【0070】
各第2接触面76aは、軸線AX側に凸となるように湾曲している。各第2接触面76aは、例えば、軸線AX側に凸となるように湾曲した内面75fs上に形成されることにより、軸線AX側に凸となるように湾曲している。第1部分71及び第2部分72によってプリズムロッド5の一部5Aが挟み込まれる前の状態において、軸線方向Dから見た場合に、一方の第2接触面76aの曲率は、プリズムロッド5の第2凹部53の内面53aの曲率よりも大きく、他方の第2接触面76aの曲率は、プリズムロッド5の第2凹部54の内面54aの曲率よりも大きい。後述する保持状態において、一方の第2接触面76aは、内面53aに面接触し、他方の第2接触面76aは、内面54aに面接触する。この例では、一対の第2接触面76aの曲率は互いに等しく、内面51a,52aの曲率は互いに等しい。
【0071】
図5図12に示されるように、複数の保持部材70A~70Cは、プリズムロッド5を挟み込んで保持する。より具体的には、保持部材70Aがプリズムロッド5の一部5Aを挟み込んで保持し、保持部材70Bがプリズムロッド5の一部5Bを挟み込んで保持し、保持部材70Cがプリズムロッド5の一部5Cを挟み込んで保持する。プリズムロッド5において、一部5Aは、一部5Cに対して第2の側S2に位置しており、一部5Bは、一部5A,5Cの間に位置している。保持部材70A(第2保持部材)は、保持部材70C(第1保持部材)に対して第2の側S2に配置されており、保持部材70Bは、保持部材70Aと保持部材70Cとの間に配置されている。保持部材70A~70Cは、互いに離間するように等間隔で並んで配置されている。以下、保持部材70Aによりプリズムロッド5の一部5Aが保持される態様について説明するが、保持部材70B,70Cによりプリズムロッド5の一部5B,5Cが保持される態様についても同様である。
【0072】
保持部材70Aによりプリズムロッド5の一部5Aを保持する際には、保持部材70Aの第1部分71及び第2部分72に締結部材90の締結力を作用させつつ、第1部分71及び第2部分72によってプリズムロッド5の一部5Aを挟み込む。上述したとおり、第1部分71はジャケット部材80の第1部分81の凹部81dに配置されてジャケット部材80に固定されており、第2部分72はジャケット部材80の第2部分82の凹部82dに配置されてジャケット部材80に固定されている。締結部材90の締結力は、ジャケット部材80の第1部分81及び第2部分82を介してプリズムロッドホルダ7の第1部分71及び第2部分72に作用する。
【0073】
第1部分71及び第2部分72に締結部材90の締結力を作用させつつ第1部分71及び第2部分72によってプリズムロッド5の一部5Aを挟み込むことにより、各第1金属層74の第1接触面74a及び各第2金属層76の第2接触面76aがプリズムロッド5の一部5Aの側面50に面接触し、且つ、第1対向面73aと第2対向面75aとが互いの間に隙間Gをもって互いに向かい合った保持状態で、プリズムロッド5の一部5Aが保持される(図12)。より具体的には、保持状態においては、一方の第1接触面74aがプリズムロッド5の第1凹部51の内面51aに面接触し、他方の第1接触面74aがプリズムロッド5の第1凹部52の内面52aに面接触し、一方の第2接触面76aがプリズムロッド5の第2凹部53の内面53aに面接触し、他方の第2接触面76aがプリズムロッド5の第2凹部54の内面54aに面接触する。この挟み込みの際には、例えば、締結部材90の締結力(締結トルク)が所定の大きさとなるようにトルク管理を行うことで、締結力の大きさを調整する。
【0074】
図12に示されるように、保持状態においては、第1部分71の凹部73gにプリズムロッド5の第1角部55が配置され、第1角部55が凹部73gの内面から離間している。第2部分72の凹部75gにプリズムロッド5の第1角部56が配置され、第1角部56が凹部75gの内面から離間している。プリズムロッド5の一部5Aの側面50が、第1対向面73aと第2対向面75aとの間の隙間Gに露出している。プリズムロッド5の第2角部57,58は、隙間Gに配置されており、第1対向面73a及び第2対向面75aから離間している。すなわち、プリズムロッド5の一部5Aの側面50は、第2角部57,58において隙間Gに露出している。Z軸方向における隙間Gの間隔は、0.1mm~0.01mm程度である。
【0075】
保持状態においては、締結部材90の締結力により、ジャケット部材80の第1部分81と第2部分82とが互いに固定されている。保持部材70Aの第1部分71と第2部分72との間と同様に、ジャケット部材80の第1部分81と第2部分82の間にも隙間が形成されている。すなわち、第1部分81の表面81aと第2部分82の表面82aとは、互いの間に隙間をもって向かい合っている。
【0076】
図7に示されるように、保持状態においては、プリズムロッド5の入射端面5aは、保持部材70A~70Cのうち最も第1の側S1に位置する保持部材70Cにおける第1の側S1の端面70Caよりも第1の側S1に位置している。端面70Caは、保持部材70Cの第1部分71の表面73b、及び第2部分72の表面75bにより形成される面である。入射端面5aは、ジャケット部材80の入射側部80aにおける第1の側S1の端面80asよりも第2の側S2に位置している。
【0077】
図7に示されるように、保持状態においては、プリズムロッド5の出射端面5bは、保持部材70A~70Cのうち最も第2の側S2に位置する保持部材70Aにおける第2の側S2の端面70Aaよりも第2の側S2に位置している。端面70Aaは、保持部材70Aの第1部分71の表面73b、及び第2部分72の表面75bにより形成される面である。出射端面5bは、ジャケット部材80の出射側部80bにおける第2の側S2の端面80bsよりも第1の側S1に位置している。
[作用及び効果]
【0078】
プリズムロッドホルダ7では、保持部材70A~70Cが、Au及びAgからなる群より選択される少なくとも一種の元素を合計で99質量%以上含有する第1金属層74及び第2金属層76を有しており、第1金属層74及び第2金属層76が、プリズムロッド5の一部5A~5Cの側面50に接触する。これにより、光に対する反射率が高く且つ吸収率が低い第1金属層74及び第2金属層76をプリズムロッド5の側面50に接触させてプリズムロッド5を保持することができ、光の損失を低減してプリズムロッド5による導光効率を高めることができる。また、プリズムロッド5との接触箇所において第1金属層74及び第2金属層76に熱が生じるのを抑制することができ、その結果、熱に起因する不具合の発生を抑制することができる。更に、第1金属層74及び第2金属層76が、1.0μm以上の厚さを有している。第1金属層74及び第2金属層76で光が反射される際には光の一部が第1金属層74及び第2金属層76にしみ出すが(エバネッセント光)、第1金属層74及び第2金属層76が厚く形成されていることで、しみ出した光が第1金属層74及び第2金属層76を透過して第1本体部73及び第2本体部75に至るのを抑制することができる。この効果は、第1金属層74及び第2金属層76層の厚さがレーザ光Lの波長よりも大きい場合に特に顕著となる。これは、第1金属層74及び第2金属層76に光がしみ出す深さは、一波長程度であるためである。しみ出した光が第1本体部73及び第2本体部75に至るのを抑制することで、光の吸収により第1本体部73及び第2本体部75に熱が生じるのを抑制することができ、その結果、熱に起因する不具合の発生を抑制することができる。以上により、プリズムロッドホルダ7によれば、高強度の光がプリズムロッド5に入力される場合でも、プリズムロッド5による導光効率を高めることができると共に、プリズムロッド5を安定的に保持することができる。
【0079】
なお、通常、金又は銀からなる金属層は、300nm以下の厚さに形成される。メッキにより形成される場合、金属層の厚さは厚くとも300nm程度である。箔として形成される場合にも、金属層の厚さは300nm以下である。通常、金メッキは金属光沢を与えるために用いられるが、厚さが1μmを超えると、金属光沢が著しく減少する(無くなる)。
【0080】
第1金属層74及び第2金属層76の厚さが、1.5μm以上である。これにより、しみ出した光が第1金属層74及び第2金属層76を透過することを一層確実に抑制することができる。
【0081】
保持部材70A~70Cが、プリズムロッド5の一部5A~5Cを挟み込むことにより、第1金属層74及び第2金属層76がプリズムロッド5の一部5A~5Cの側面50に面接触した状態で、プリズムロッド5を保持する。これにより、プリズムロッド5を確実に保持することができる。また、上述した関連技術のようにネジにより押さえて固定する場合と比べて、高強度の光が入力されてプリズムロッド5が熱膨張した場合でも、プリズムロッド5を確実に保持することができる。また、プリズムロッド5の形状には公差が存在するが、第1金属層74及び第2金属層76をプリズムロッド5の一部5A~5Cの側面50に面接触させることで、公差が存在する場合でもプリズムロッド5を確実に保持することができる。また、プリズムロッド5の一部を挟み込む際に第1金属層74及び第2金属層76がプリズムロッド5の側面50に密着するように変形するため、第1金属層74及び第2金属層76をプリズムロッド5に確実に面接触させることができる。
【0082】
第1金属層74及び第2金属層76が、第1本体部73及び第2本体部75の表面(内面73fs,75fs)上に直接に形成されている。例えば第1本体部73の表面と第1金属層74との間、又は第2本体部75の表面と第2金属層76との間に下地層が存在する場合、第1金属層74及び第2金属層76を透過した光が下地層により吸収されて熱が生じるおそれがある。これに対して、プリズムロッドホルダ7では、そのような事態の発生を抑制することができる。
【0083】
第1本体部73及び第2本体部75が、銅により形成されている。これにより、第1本体部73及び第2本体部75の熱伝導率を高めることができ、保持部材70A~70Cの熱を効果的に放熱することができる。
【0084】
ジャケット部材80に、保持部材70A~70Cの熱を放熱するための放熱構造(冷却構造)が設けられている。この例では、放熱構造は、ジャケット部材80内に形成され、冷媒が流れる流路83,84である。これにより、保持部材70A~70Cの熱を一層効果的に放熱することができる。その結果、保持部材70A~70Cで発生した熱が伝熱によりジャケット部材80へ移動して拡散され、プリズムロッド5の温度が破壊温度以下に維持される。特に、プリズムロッドホルダ7では、冷媒が、入射端面5aに近い第1の側S1から、出射端面5bに近い第2の側S2へ向けて、流路83,84内を流れる。これにより、熱が生じ易い入射端面5aに近い部分の熱を効果的に放熱することができる。
【0085】
光源2が、JIS C 6802に規定されるクラス4のレーザ光Lを出力する。また、光源2が、1kW/cm以上のパワー密度を有するレーザ光Lを出力する。このように高いパワー密度を有する高強度のレーザ光Lがプリズムロッド5に入力される場合でも、レーザヘッド1では、プリズムロッド5による導光効率を高めることができると共に、プリズムロッド5を安定的に保持することができる。
【0086】
第1金属層74及び第2金属層76の厚さが、レーザ光Lの波長よりも大きい。より具体的には、第1金属層74及び第2金属層76の厚さが、レーザ光の波長の2倍よりも大きい。これにより、しみ出した光が第1金属層74及び第2金属層76を透過することを一層確実に抑制することができる。
【0087】
隙間Gにおいて、プリズムロッド5の一部5A~5Cの側面50が空気に接している。これにより、光の損失を一層低減することができる。また、プリズムロッド5のうち、第1接触面74a及び第2接触面76aと接触する部分を除く部分(例えば第1角部55,56及び第2角部57,58)が、空気に接している。これにより、光の損失をより一層低減することができる。また、プリズムロッド5の確実な保持、及び適切な締付けを行うことができる。
【0088】
Z軸方向における隙間Gの間隔が、0.1mm~0.01mmである。これにより、プリズムロッド5から外部に光が漏れ出すことを抑制しつつ、プリズムロッド5を好適に保持することができる。
【0089】
プリズムロッド5が保持部材70A~70Cに接着されていない。これにより、締結部材90を取り外してプリズムロッド5を取り外すことが可能となっている。
【0090】
本発明は、上記実施形態に限られない。例えば、各構成の材料及び形状には、上述した材料及び形状に限らず、様々な材料及び形状を採用することができる。ジャケット部材80には、流路83,84に加えて又は代えて、放熱フィンにより構成された放熱構造が設けられていてもよい。すなわち、放熱構造は、水冷式及び空冷式のいずれであってもよい。保持部材70A~70C及びジャケット部材80は、互いに一体に(単一の部材として)形成されてもよい。
【0091】
第1金属層74及び第2金属層76の厚さは、少なくとも1.0μm以上であればよく、1.5μm以上であってもよい。第1金属層74及び第2金属層76をより厚く形成することで、しみ出した光が第1金属層74及び第2金属層76を透過することをより確実に抑制することができる。第1金属層74及び第2金属層76の厚さは、レーザ光Lの波長(一波長)よりも大きくてもよく、レーザ光Lの波長の1.5倍よりも大きくてもよい。第1金属層74及び第2金属層76の厚さをレーザ光Lの波長と比べてより大きくすることで、しみ出した光が第1金属層74及び第2金属層76を透過することをより確実に抑制することができる。
【0092】
第1金属層74及び第2金属層76が十分に厚い場合、第1本体部73の表面と第1金属層74との間、又は第2本体部75の表面と第2金属層76との間に、例えばニッケルからなる下地層が形成されてもよい。すなわち、第1金属層74及び第2金属層76は、第1本体部73及び第2本体部75の表面上に他の層を介して形成されていてもよい。
【0093】
上記実施形態では、プリズムロッド5の一部5A~5Cの側面50が、第2角部57,58において隙間Gに露出していたが、プリズムロッド5の一部5A~5Cの側面50は、角部以外(例えば辺部)において隙間Gに露出していてもよい。上記実施形態の保持状態では、一対の第1接触面74a及び一対の第2接触面76aがプリズムロッド5の一部5A~5Cの側面50に面接触していたが、第1接触面及び第2接触面は、それぞれ1つずつ設けられてもよい。例えば、保持状態では、一の第1接触面及び一の第2接触面がプリズムロッド5の一部5A~5Cの側面50に面接触してもよい。
【0094】
第1接触面74aの面積は、上記実施形態のように第2接触面76aの面積と等しくてもよいし、或いは、第2接触面76aの面積と異なっていてもよい。第1対向面73aと第2対向面75aとの間に隙間Gが形成されていればよく、第1対向面73aと第2対向面75aとは部分的に接触していてもよい。この場合、第1対向面73aと第2対向面75aとの接触箇所は、プリズムロッド5(第1接触面74a及び第2接触面76a)から離間していることが好ましい。これにより、プリズムロッド5の確実な保持、及び適切な締付けを行うことができる。
【符号の説明】
【0095】
1…レーザヘッド(レーザモジュール)、2…光源、5…プリズムロッド、5a…入射端面、5b…出射端面、50…側面、7…プリズムロッドホルダ、70A…保持部材(第2保持部材)、70B…保持部材、70C…保持部材(第1保持部材)、73…第1本体部、74…第1金属層、75…第2本体部、76…第2金属層、80…ジャケット部材、83,84…流路(放熱構造)、100…レーザ加工装置、101…保持ロボット(保持部)、102…支持ステージ(支持部)、105…制御部、AX…軸線、L…レーザ光、W…ワーク(加工対象物)。
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