(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-26
(45)【発行日】2024-04-03
(54)【発明の名称】3次元情報推定システム、3次元情報推定方法、及びコンピュータが実行可能なプログラム
(51)【国際特許分類】
G01S 13/86 20060101AFI20240327BHJP
【FI】
G01S13/86
(21)【出願番号】P 2020028737
(22)【出願日】2020-02-21
【審査請求日】2023-02-13
(73)【特許権者】
【識別番号】318006365
【氏名又は名称】JRCモビリティ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】星 将広
(72)【発明者】
【氏名】時枝 幸伸
【審査官】山下 雅人
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-211403(JP,A)
【文献】特開2016-153775(JP,A)
【文献】特開2016-176736(JP,A)
【文献】特開平09-264954(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0292468(US,A1)
【文献】国際公開第2014/195994(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/208318(WO,A1)
【文献】特開2013-002927(JP,A)
【文献】特開2015-105836(JP,A)
【文献】特開2014-153874(JP,A)
【文献】特開2005-071204(JP,A)
【文献】特開2006-047057(JP,A)
【文献】特開2019-158692(JP,A)
【文献】特開2007-263986(JP,A)
【文献】特開平02-061581(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0120842(US,A1)
【文献】国際公開第2005/026769(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/00- 7/42
G01S 13/00-13/95
G08G 1/00-99/00
G01B 11/00-11/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
周辺にレーダ波を送信して、対象物によって反射された反射波を受信してレーダ信号を取得するレーダと、
周辺を撮像して画像情報を取得するカメラと、
前記カメラから出力される画像情報の輪郭情報を抽出する輪郭情報抽出手段と、
前記レーダから出力されるレーダ信号について、各方位の最高強度点をサーチし
、前記カメラから出力される画像情報上にレーダ信号をプロットする場合は、各レーダ信号はそれぞれの反射距離における高さゼロからの反射信号であると仮定して、物標が路面と接地している画像情報上の点にレーダ信号の各方位の最高強度点をプロットすることにより、前記カメラから出力される画像情報上での最近傍反射点を検出する物標検出手段と、
各方位の最近傍反射点を極座標系データ(r、θ)から直交座標系データ(X,Y)に変換し、各方位
の距離情報を同方位の画像の輪郭情報に付与する距離情報付与手段と、
算出した各方位の画像の輪郭成分までの距離における画像の解像度(m/pix)を計算し、解像度の情報を用いて高さ情報を計算し、前記画像情報の輪郭情報に高さ情報を付与する高さ情報付与手段と、
前記輪郭情報、前記距離情報及び前記高さ情報に従って3次元情報を推定する3次元情報推定手段と、
を備えたことを特徴とする3次元情報推定システム。
【請求項2】
前記カメラは、単眼カメラであることを特徴とする請求項1に記載の3次元情報推定システム。
【請求項3】
前記距離情報付与手段は、前記最近傍反射点について、隣り合う方位ビン間の距離情報は線形的に変化するものと仮定して、不足する方位の距離情報を補間することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の3次元情報推定システム。
【請求項4】
前記物標検出手段は、
前記レーダから出力されるレーダ信号について、各方位をサーチして、各方位における
最高強度点を決定し、
前記カメラから出力される画像情報上に各方位における前記最高強度点をプロットし、画像情報上の各最高強度点の近傍の輝度特性値を算出し、
算出された前記輝度特性値に基づいて、画像情報上の各最高強度点が実像か偽像かを判定して、実像と判定した場合には、当該最高強度点を前記最近傍反射点とし、
偽像と判定した場合には、当該方位の次に強度の高い信号点を取得し、実像と判定されるまで、処理を繰り返し、対象の信号がなくなった場合は、当該方位の実像なしと判断することを特徴とする請求項1~請求項3のいずれか1つに記載の3次元情報推定システム。
【請求項5】
前記レーダは、ミリ波レーダであることを特徴とする請求項1~請求項4のいずれか1つに記載の3次元情報推定システム。
【請求項6】
レーダが、周辺にレーダ波を送信して、対象物によって反射された反射波を受信してレーダ信号を取得する工程と、
カメラが、周辺を撮像して画像情報を取得する工程と、
前記カメラから出力される画像情報の輪郭情報を抽出する工程と、
前記レーダから出力されるレーダ信号について、各方位の最高強度点をサーチし
、前記カメラから出力される画像情報上にレーダ信号をプロットする場合は、各レーダ信号はそれぞれの反射距離における高さゼロからの反射信号であると仮定して、物標が路面と接地している画像情報上の点にレーダ信号の各方位の最高強度点をプロットすることにより、前記カメラから出力される画像情報上での最近傍反射点を検出する工程と、
各方位の最近傍反射点を極座標系データ(r、θ)から直交座標系データ(X,Y)に変換し、各方位
の距離情報を同方位の画像の輪郭情報に付与する工程と、
算出した各方位の画像の輪郭成分までの距離における画像の解像度(m/pix)を計算し、解像度の情報を用いて高さ情報を計算し、前記画像情報の輪郭情報に高さ情報を付与する工程と、
前記輪郭情報、前記距離情報及び前記高さ情報に従って3次元情報を推定する工程と、
を含むことを特徴とする3次元情報推定方法。
【請求項7】
コンピュータを、
周辺にレーダ波を送信して、対象物によって反射された反射波を受信してレーダ信号を取得するレーダから出力されるレーダ信号について、各方位の最高強度点をサーチ
し、周辺を撮像して画像情報を取得するカメラから出力される画像情報上にレーダ信号をプロットする場合は、各レーダ信号はそれぞれの反射距離における高さゼロからの反射信号であると仮定して、物標が路面と接地している画像情報上の点にレーダ信号の各方位の最高強度点をプロットすることにより、前記カメラから出力される画像情報上での最近傍反射点を検出する物標検出手段と、
各方位の最近傍反射点を極座標系データ(r、θ)から直交座標系データ(X,Y)に変換し、各方位
の距離情報を同方位の画像の輪郭情報に付与する距離情報付与手段と、
算出した各方位の画像の輪郭成分までの距離における画像の解像度(m/pix)を計算し、解像度の情報を用いて高さ情報を計算し、前記画像情報の輪郭情報に高さ情報を付与する高さ情報付与手段と、
前記輪郭情報、前記距離情報及び前記高さ情報に従って3次元情報を推定する3次元情報推定手段と、
して機能させるためのコンピュータが実行可能なプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3次元情報推定システム、3次元情報推定方法、及びコンピュータが実行可能なプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、3次元情報の推定では、ステレオカメラ単体で左右の画像の視差を利用する技術やLiDAR(Laser Imaging Detection and Ranging)を用いて計測する技術が提案されている。上述のステレオカメラやLiDARを用いた場合は、センサ自体が高額であるため、システムが高コストとなる。
【0003】
他方、近時、ミリ波レーダと単眼カメラを用いた周辺環境認識技術の研究が盛んに行われているが、動態のみをターゲットにした研究が多く、構造物の3次元情報を正確に認識する方法は提案されていない。安価なレーダと単眼カメラを用いて構造物の3次元情報が推定できれば、コストの面で優位となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、構造物の3次元情報を低コストな構成で推定することが可能な3次元情報推定システム、3次元情報推定方法、及びコンピュータが実行可能なプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、周辺にレーダ波を送信して、対象物によって反射された反射波を受信してレーダ信号を取得するレーダと、周辺を撮像して画像情報を取得するカメラと、前記カメラから出力される画像情報の輪郭情報を抽出する輪郭情報抽出手段と、前記レーダから出力されるレーダ信号について、各方位の最高強度点をサーチして、前記カメラから出力される画像情報上での最近傍反射点を検出する物標検出手段と、各方位の最近傍反射点の距離情報を同方位の前記画像情報の輪郭情報に付与する距離情報付与手段と、前記画像情報の輪郭情報に高さ情報を付与する高さ情報付与部と、前記輪郭情報、前記距離情報及び前記高さ情報に従って3次元情報を推定する3次元情報推定手段と、を備えたことを特徴とする。
【0007】
また、本発明の一態様によれば、前記カメラは、単眼カメラであることにしてもよい。
【0008】
また、本発明の一態様によれば、前記距離情報付与手段は、前記最近傍反射点について、隣り合う方位ビン間の距離情報は線形的に変化するものと仮定して、不足する方位の距離情報を補間することにしてもよい。
【0009】
また、本発明の一態様によれば、前記物標検出手段は、前記レーダから出力されるレーダ信号について、各方位をサーチして、各方位における最高強度点を決定し、前記カメラから出力される画像情報上に各方位における前記最高強度点をプロットし、画像情報上の各最高強度点の近傍の輝度特性値を算出し、算出された前記輝度特性値に基づいて、画像情報上の各最高強度点が実像か偽像かを判定して、実像と判定した場合には、当該最高強度点を前記最近傍反射点とし、偽像と判定した場合には、当該方位の次に強度の高い信号点を取得し、実像と判定されるまで、処理を繰り返し、対象の信号がなくなった場合は、当該方位の実像なしと判断することにしてもよい。
【0010】
また、本発明の一態様によれば、前記レーダは、ミリ波レーダであることにしてもよい。
【0011】
また、上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、レーダが、周辺にレーダ波を送信して、対象物によって反射された反射波を受信してレーダ信号を取得する工程と、カメラが、周辺を撮像して画像情報を取得する工程と、前記カメラから出力される画像情報の輪郭情報を抽出する工程と、前記レーダから出力されるレーダ信号について、各方位の最高強度点をサーチして、前記カメラから出力される画像情報上での最近傍反射点を検出する工程と、各方位の最近傍反射点の距離情報を同方位の前記画像情報の輪郭情報に付与する工程と、前記画像情報の輪郭情報に高さ情報を付与する工程と、前記輪郭情報、前記距離情報及び前記高さ情報に従って3次元情報を推定する工程と、を含むことを特徴とする。
【0012】
また、上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、コンピュータを、周辺にレーダ波を送信して、対象物によって反射された反射波を受信してレーダ信号を取得するレーダから出力されるレーダ信号について、各方位の最高強度点をサーチして、周辺を撮像して画像情報を取得するカメラから出力される画像情報上での最近傍反射点を検出する前記物標検出手段と、前記カメラから出力される画像情報の輪郭情報を抽出する輪郭情報抽出手段と、各方位の最近傍反射点の距離情報を同方位の前記画像情報の輪郭情報に付与する輪郭情報付与手段と、前記画像情報の輪郭情報に高さ情報を付与する高さ情報付与手段と、前記輪郭情報、前記距離情報及び前記高さ情報に従って3次元情報を推定する3次元情報推定手段と、して機能させるためのコンピュータが実行可能なプログラムであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、構造物の3次元情報を低コストな構成で推定することが可能になるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、本実施の形態に係る3次元情報推定システムの概略の構成例を示す図である。
【
図2】
図2は、本実施の形態に係る3次元情報システムの概略の動作を示すフローの一例を示す図である。
【
図3】
図3は、解像度の計算方法を説明するための図である。
【
図4】
図4は、カメラで撮像した画像にレーダ信号の最近傍の反射点と輝度分散値をプロットした例を示す図である。
【
図5】
図5は、解析に使用する信号と除外する信号を説明するための図である。
【
図6】
図6は、画像の輪郭情報と距離情報の紐付けを説明するための図である。
【
図7】
図7は、作成した3次元マップの一例を示す図である(第1のアングル)。
【
図8】
図8は、作成した3次元マップの一例を示す図である(第2のアングル)。
【
図9】
図9は、作成した3次元マップの一例を示す図である(第3のアングル)。
【
図10】
図10は、作成した3次元マップの一例を示す図である(第4のアングル)。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、この発明にかかる3次元情報推定システム、3次元情報推定方法、及びコンピュータが実行可能なプログラムの実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施の形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるものまたは実質的に同一のものが含まれる。本発明の構成要素は、本明細書の図面に一般に示してあるが、様々な構成で広く多様に配置して設計してもよいことは容易に理解できる。したがって、本発明のシステム及び装置の実施形態についての以下のより詳細な説明は、特許請求の範囲に示す本発明の範囲を限定するものではなく、単に本発明の選択した実施形態の一例を示すものである。本明細書は、参照により公知技術が組み込まれる。そのため、当業者は、公知技術を援用することで、特定の細目の1つ以上が無くても、または他の方法、部品、材料でも本発明を実現できることが理解できる。
【0016】
[1.本発明の原理]
本発明では、構造物の3次元情報を低コストな構成で推定するために、レーダと単眼カメラを使用し、レーダによって得られる距離・方位情報と、単眼カメラで撮像した画像によって得られる方位・高さ情報を用いて、周辺の構造物の3次元情報を推定する方法を提案する。
【0017】
レーダ信号を抽出する際、動態である歩行者や車両の信号と比較して、静態である構造物のレーダ信号は、クラッタや偽像等のノイズ成分の影響を受けやすく、レーダ信号の選別が困難になる。そこで、本発明では、所望の構造物信号を抽出する手法として、画像情報を用いることでレーダ信号のクラッタ成分を抑圧する。
【0018】
具体的には、レーダ信号により検知した偽像位置と同位置の画像上には不要な成分が写り込む可能性が低いという性質を利用して、検出した各方位のレーダ信号を画像上にプロットすることで、各信号が物標からの信号か否かを判別する。より具体的には、撮像した画像上にレーダ信号をプロットする場合は、各レーダ信号はそれぞれの反射距離における高さゼロからの反射信号であると仮定して、物標が路面と接地している画像上の点にレーダ信号をプロットする。画像上にプロットした各レーダ信号付近で画像の輝度分散値を取得し、取得した輝度分散値から各レーダ信号が実像であるか偽像であるかを分類する。レーダ信号が実像である場合は、画像上で物標と路面の切り替わり部分の輝度を評価することになるので、輝度分散値が大きい傾向となる。他方、偽像のレーダ信号をプロットしても画像上では何もない路面部分の輝度評価をする確率が高まるため、輝度分散値が小さい傾向となる。このように、各レーダ信号に紐づく画像上の輝度分散値を評価することで、実像と偽像を区別することが可能となる。このようにして、各方位毎に最も近傍にある物体までの距離を精度よく得ることができる。
【0019】
この際、物体が存在しない方位については信号を検出しない(除外する)。信号を検出した方位の距離情報を用いて、各方位における構造物の3次元情報を算出する。
【0020】
このように、本発明では、画像は水平軸に方位情報を持つ特性があるため、水平座標が同じであれば同方位の物体であると見なすことができる点に着目した。画像の方位情報とレーダの方位情報を統合し、レーダで信号を検出した方位の信号距離を、同方位の画像の輪郭情報に紐付する。これにより、一定の方位の画像情報に対して距離情報を付与することが可能となる。
【0021】
但し、画像の水平角分解能に対して、レーダの水平角分解能は非常に低いため、レーダの各方位ビンの間にあたる方位の距離情報を推定する必要が生じる。そこで、隣り合う方位ビン間の距離情報は線形的に変化するものと仮定し、不足する方位の距離情報を補間する。
【0022】
画像の水平軸(地面)の各画素成分に対して距離情報を付与し、方位に対応する距離毎に解像度を計算する。ここで求めた解像度を用いることで、各方位の輪郭成分のそれぞれの高さ情報を計算する。以上の手法を適用することで、周辺の構造物の3次元情報を推定することが可能となる。
【0023】
また、動態の検出をレーダと単眼カメラで行っているシステムに、本実施の形態の周辺構造物の3次元情報推定の技術を適用した場合、静態の情報が追加されることになるので、従来困難であった自己位置推定まで実現できる可能性がある。GPSに代表されるGNSSの発達により、自己位置のみであれば高精度に認識が可能となってきているが、瞬間的に絶対方位を導くことはできない。周辺の構造物との位置関係を正確に把握できれば、観測者の絶対方位を単一の計測で認識することが可能となる。
【0024】
[2.本実施の形態の3次元情報推定システムの構成例及び動作例]
図1~
図3を参照して、本実施の形態の3次元情報推定システムの構成例及び動作例を説明する。
図1は、本実施の形態に係る3次元情報推定システム1の概略の構成例を示す図である。
図2は、本実施の形態に係る3次元情報推定システム1の概略の動作を示すフローの一例を示す図である。
【0025】
図1を参照して、本実施の形態に係る3次元情報推定システム1の構成を説明する。
図1に示すように、本実施の形態に係る3次元情報推定システム1は、3次元情報推定装置10と、レーダ20と、カメラ30とを備えている。
【0026】
レーダ20は、周囲にレーダ波を送信して、対象物によって反射された反射波を受信して、レーダ信号として3次元情報推定装置10に出力する。レーダ20は、例えば、FM-CW方式のミリ波レーダ(79GHz帯、帯域幅4GHz、MIMOレーダ(送信アンテナ3個、受信アンテナ6個)であり、検出範囲は、水平角が-75度~75度、仰角が-3度~3度である。レーダ20は、複数の送信アンテナを備える送信器からレーダ波を周囲に送信し、対象物によって反射された反射波を複数の受信アンテナを備える受信器で受信することによって対象物の距離、相対速度、角度、及び信号強度を検知するためのセンサである。
【0027】
レーダ20から出力されるレーダ信号は、例えば、レーダ20が備える信号処理回路において反射波が処理された対象物の1または複数の代表位置を示す点または点列からなる信号であっても良く、あるいは、未処理の反射波を示す信号であっても良い。本例では、レーダ20から出力されるレーダ信号は、上述の信号処理回路において、公知のFM-CW方式で算出した対象物の距離、方位、及び相対速度、信号強度の情報を含んでいるものとする。なお、未処理の受信波がレーダ信号として用いられる場合には、3次元情報推定装置10においてこれらの信号処理が実行される。
【0028】
カメラ30は、周囲を撮像した画像情報を3次元情報推定装置10に出力する。カメラ30は、可視光や赤外光を受光することによって対象物の外形情報である画像情報として出力するためのセンサである。カメラ30は、例えば、単眼カメラであり、例えば、CMOSグローバルシャッタセンサ(例えば、有効画素数:1920ピクセル×1200ピクセル,フレームレート:41.6fps、インターフェース:USB3.0)とメガピクセル対応CCTVレンズ(例えば、画角:86.71度×61.44度、焦点距離6mm)の組み合わせで構成することができ、例えば、検出範囲は、水平角が-43.36度~43.36度、仰角が-30.72度~30.72度である。
【0029】
カメラ30から出力される画像情報は、時系列的に連続する複数のフレーム画像によって構成されており、各フレーム画像は画素データにより表されている。画素データは、モノクロの画素データまたはカラーの画素データである。
【0030】
3次元情報推定装置10は、物標検出部11と、輪郭抽出部12と、距離情報付与部13と、高さ情報付与部14と、3次元情報推定部15とを備えている。
【0031】
物標検出部11は、レーダ20から出力されるレーダ信号について、各方位の最高強度点をサーチして、カメラ30から出力される画像情報上での最近傍反射点を検出する。物標検出部11は、動態成分(歩行者等)については、各方位の最近傍反射点として検出しない。
【0032】
物標検出部11は、例えば、しきい値処理部40と、ピークサーチ部41と、プロット部42と、輝度特性値算出部43と、実像・偽像判定部44と、を備えている。
【0033】
しきい値処理部40は、レーダ20から出力されるレーダ信号に対して、CFAR等のしきい値処理を施す。ピークサーチ部41は、しきい値処理後のレーダ信号について、各方位における最高強度点を決定する。実像・偽像判定部44で、最高強度点が偽像と判定された場合には、当該方位についての次に強度の高い信号点を取得する。
【0034】
プロット部42は、カメラ30から出力される画像上にレーダ信号の各方位における最高強度点をプロットする。画像上に最高強度点をプロットする場合は、レーダ信号はそれぞれの反射距離における高さゼロからの反射信号であると仮定して(レーダの仰角が小さいため)、物標が路面と接地している画像上の対応座標を算出して、レーダ信号点(最高強度点)をプロットする。プロット部42は、ピークサーチ部41で、当該方位の次に強度の高い信号点が取得された場合には、当該方位における次に強度の高い信号点をプロットする。
【0035】
輝度特性値算出部43は、画像上の各最高強度点の近傍の輝度特性値(例えば、輝度分散値、輝度勾配)を算出する。輝度特性値算出部43は、プロット部42で、当該方位の次に強度の高い信号点がプロットされた場合には、当該次に強度の高い信号点の近傍の輝度特性値を算出する。
【0036】
実像・偽像判定部44は、輝度特性値に基づいて、画像上の最高強度点が実像か偽像かを判定して、実像の結果を出力する。具体的には、実像・偽像判定部44は、実像と判定した場合には、当該最高強度点を最近傍の反射点とし、偽像と判定した場合には、当該方位の次に強度の高い信号点を判定し、実像と判定されるまで、処理を繰り返し実行する。但し、対象の信号がなくなった場合は、当該方位の実像なしと判断する。
例えば、輝度特性値がしきい値以上の場合は、最高強度点が実像であると判定し、輝度特性値がしきい値以上でない場合には、当該最高強度点が偽像であると判定することができる。
【0037】
輪郭抽出部12は、カメラ30から出力される画像情報の輪郭情報を抽出して、距離情報付与部13及び高さ情報付与部14に出力する。
【0038】
距離情報付与部13は、各方位の距離情報を同方位の画像の輪郭情報に付与する。距離情報付与部13は、最近傍反射点について、隣り合う方位ビン間の距離情報は線形的に変化するものと仮定して、不足する方位の距離情報を補間することにしてもよい。
【0039】
高さ情報付与部14は、画像の輪郭情報に高さ情報(Z)を付与する。
【0040】
3次元情報推定部15は、画像の輪郭情報に、算出した距離情報(X,Y)及び高さ情報(Z)に従って、3次元プロットして3次元情報を推定(描画)し、3次元マップを出力する。
【0041】
3次元情報推定装置10は、CPU(プロセッサ)、DSP、RAM、ROMやフラッシュメモリ等の不揮発性メモリ、I/O、モニタ等を搭載している。3次元情報推定装置10の各機能は、CPUがROMまたはフラッシュメモリ等の不揮発メモリに記憶されているプログラムを実行することにより実現される。このプログラムが実行されることにより、プログラムに対応する方法が実行される。
【0042】
CPUがプログラムを実行することにより、物標検出部11と、輪郭抽出部12と、距離情報付与部13と、高さ情報付与部14と、3次元情報推定部15の機能を実現する。
【0043】
3次元情報推定装置10を構成するこれらの要素を実現する手法は、ソフトウェアに限るものではなく、その一部または全部の要素を、論理回路やアナログ回路等を組み合わせたハードウェアを用いて実現してもよい。
【0044】
図2を参照して、
図1の3次元情報推定システム1の全体の処理を説明する。
【0045】
図2において、レーダ20は、周囲にレーダ波を送信して、その反射波を受信してレーダ信号を取得し、3次元情報推定装置10に出力する(ステップS1)。カメラ30は、周囲を撮像して2次元の画像情報を取得して、3次元情報推定装置10に出力する(ステップS2)。レーダ信号と画像情報のフレームは同期しているものとする。
【0046】
物標検出部11は、カメラ30から出力される画像情報とレーダ20から出力されるレーダ信号に基づいて、レーダ信号の各方位における画像上の最近傍反射点を検出する(ステップS3)。物標検出部11は、動態成分(歩行者等)については、各方位の最近傍反射点として検出しない。具体的には、物標検出部11は、レーダ20から出力されるレーダ信号について、各方位をサーチして、各方位における最高強度点を決定し、カメラ30から出力される画像情報上に各方位における最高強度点をプロットし、画像情報上の各最高強度点の近傍の輝度特性値を算出し、算出された輝度特性値に基づいて、画像情報上の各最高強度点が実像か偽像かを判定して、実像と判定した場合には、当該最高強度点を最近傍の反射点とし、偽像と判定した場合には、当該方位の次に強度の高い信号点を取得し、実像と判定されるまで、処理を繰り返し実行する(各方位の最高強度点が実像と判定されるまで(最近傍の反射点を取得するまで)、同じ処理を繰り返し実行する)。但し、対象の信号がなくなった場合は、当該方位の実像なしと判断する。
【0047】
輪郭抽出部12は、カメラ30から出力される画像情報の輪郭情報を抽出する(ステップS4)。輪郭抽出部12は、動態成分(歩行者等)については輪郭情報を抽出しない。画像中の動態成分は公知の方法で検出できるので、その説明は省略する。
【0048】
距離情報付与部13は、各方位の距離情報を同方位の画像の輪郭情報に付与する(ステップS5)。具体的には、例えば、距離情報付与部13は、各方位の最近傍反射点を極座標系データ(r、θ)から直交座標系データ(X,Y)に変換し、隣接方位ビンの信号を確認し、隣接信号間を補間した後、各方位の距離情報を同方位の画像の輪郭情報に付与する。ここで、隣接信号間を補間しているのは、画像の水平角分解能に対して、レーダの水平角分解能は非常に粗いため、レーダ信号の各方位ビンの間にあたる方位の距離情報を推定する必要が生じる。そこで、隣り合う方位ビン間の距離情報は線形的に変化するものと仮定し、不足する方位の距離情報を補間する。
【0049】
なお、過去フレーム(例えば、過去5フレーム分)における同方位の距離情報を加味して、各物標までの距離を平滑化することで、測距誤差を抑制することにしてもよい。
【0050】
高さ情報付与部14は、画像の輪郭情報に高さ情報(Z)を付与する(ステップS6)。ここで、高さ情報(Z)の計算方法の一例を説明する。各方位の画像の輪郭成分までの 距離を算出したので、算出した距離における画像の解像度(m/pix)を計算し、解像度の情報を用いて高さ情報を計算する。
図3は、解像度の計算方法を説明するための図である。
【0051】
(1)下式(1)により、距離Y(m)における画像の垂直方向解像度を求める。
垂直方向解像度vReso(m/pix)=Y*7.13/6/1200
・・・(1)
ここで、7.13(mm)は、CMOSセンササイズ、6(mm)は、CCTVレンズの焦点距離、1200(pix)は画素数である。
【0052】
(2)下式(2)により、距離Y(m)の路面高さにおける画像上の路面座標を求める。
路面座標rCol(pix)=ColCross+(CamHgt/vReso)
・・・(2)
ここでは、ColCross(pix)は、垂直成分の消失点座標、CamHgt(m)はカメラ設置高さである。
【0053】
消失点とは遠近法において、実際のものでは平行線になっているものを平行でなく描く際に、その線が交わる点である。例えば、本来平行な通路も、画像上ではある一点で収束する。消失点とはこの収束する点を指す。消失点と画像中心が一致するように予めキャリブレーションした場合、消失点=無限遠距離におけるカメラ設置高さの座標という等式が成り立つ。この前提より、消失点座標から各距離におけるカメラ設置高さ(pix)を引くことで、該当距離における路面座標rCol(pix)が式(2)により求めることができる。
【0054】
(3)下式(3)により、各輪郭成分までの高さを求める。
注目点高さZ(m)=(TgtCol(pix)-rCol(pix))*vReso
・・・(3)
ここでは、TgtCol(pix)は、高さ算出の対象となる画素の垂直成分座標である。
【0055】
図2に戻り、3次元情報推定部15は、輪郭情報、算出した距離情報及び高さ情報に従い、3次元プロットすることで3次元情報を推定し、3次元マップを作成する(ステップS7)。
【0056】
[3.本実施の形態の3次元情報推定装置の検証例(実施例)]
図4~
図10を参照して、本実施の形態の
図1の3次元情報推定システム1の検証例(実施例)を説明する。
図4に示すような周辺環境において3次元マップを作成する例を説明する。
【0057】
図4において、左側の図はカメラ30で撮像した画像に最近傍反射点と輝度分散値をプロットした例を示す図であり、右側の図は、画像中の移動物標を説明するための図である。
図4において、折れ線は輝度分散値、縦の点線はレーダ20の方位、□は最近傍反射点を示している。上述の
図2のフローのステップS3に従って、最近傍反射点を検出する。
【0058】
図4において、歩行者のような移動物標が存在する方位では、その物標からの信号に大きく影響を受けるので、移動物標が存在する方位を除く信号を用いて構造物(静止物全般)の3次元マップを作成する。
【0059】
図5は、解析に使用する信号と除外する信号を説明するための図である。同図において、構造物は解析に使用し、歩行者は除外する。解析に用いる信号の全点までの距離及び方位を算出し、上述の
図2のフローのステップS4,S5に従って、画像の輪郭情報を抽出し、各方位の距離情報を同方位の画像の輪郭情報に付与する。
【0060】
図6は、画像の輪郭情報と距離情報の紐付けを説明するための図である。
図6において、画像は、横軸が方位となるので、縦に並ぶ一列の輪郭ピクセル群全てを該当方位における距離の成分であると仮定する。画像の輪郭情報の縦軸毎に距離情報を紐付けする。なお、
図6において、移動物標(歩行者)が示されているが、これは参考用に示したものであり、実際には、移動物標(歩行者)の輪郭情報は抽出しない。
【0061】
上述の
図2のフローのステップS6に従って画像の輪郭情報の高さ情報を算出する。そして、上述の
図2のフローのステップS7に従って、輪郭情報、算出した距離及び高さに従い、3次元プロットした3次元マップを作成する。
図7~
図10は、作成した3次元マップを各アングルで示す図である。近距離の成分と、遠距離の成分を識別表示してもよい(例えば、近距離の成分を赤、遠距離の成分を緑で表示してもよい)。なお、
図7~
図10において、移動物標(歩行者)が3次元表示されているが、これは参考用に示したものであり、実際には移動物標(歩行者)は描画されない。
図7~
図10に示すように、レーダ信号の各方位で検出した最高強度点の情報を使用し、また、物体距離が線形的に変化するという推定情報(補間情報)を加味することで、ビルや倉庫等の静止物体の3次元情報を推定することができた。
【0062】
以上の検証結果により、本実施の形態の3次元情報推定システム1は、安価な単眼カメラとレーダの組み合わせで、周辺構造物の3次元情報を推定でき、周辺環境認識を実現するのに有用であることが確認された。
【0063】
以上説明したように、本実施の形態の3次元情報推定システム1によれば、周辺にレーダ波を送信して、対象物によって反射された反射波を受信してレーダ信号を取得するレーダ20と、周辺を撮像して画像情報を取得する単眼のカメラ30と、カメラ30から出力される画像情報の輪郭情報を抽出する輪郭抽出部12と、レーダ20から出力されるレーダ信号について、各方位の最高強度点をサーチして、カメラ30から出力される画像情報上での最近傍反射点を検出する物標検出部11と、各方位の最近傍反射点の距離情報を同方位の前記画像情報の輪郭情報に付与する距離情報付与部13と、画像情報の輪郭情報に高さ情報を付与する高さ情報付与部14と、輪郭情報、距離情報及び高さ情報に従って3次元情報を推定する3次元情報推定部15と、を備えているので、構造物の3次元情報を低コストな構成で推定することが可能となる。
【0064】
本実施の形態の3次元情報推定システム1は、例えば、車載用レーダシステム、先進運転支援システム(ADAS)、及び周辺監視システム等の各種用途で好適に使用可能である。
【符号の説明】
【0065】
1 3次元情報推定システム
10 3次元情報推定装置
11 物標検出部
12 輪郭抽出部
13 距離情報付与部
14 高さ情報付与部
15 3次元情報推定部(3次元マップ生成部)
20 レーダ
30 カメラ
41 ピークサーチ部
42 プロット部
43 輝度特性値算出部
44 実像・偽像判定部