(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-26
(45)【発行日】2024-04-03
(54)【発明の名称】液体検知センサ
(51)【国際特許分類】
G01F 23/22 20060101AFI20240327BHJP
G01F 23/00 20220101ALI20240327BHJP
H01M 12/06 20060101ALI20240327BHJP
【FI】
G01F23/22 Z
G01F23/00 D
H01M12/06 A
H01M12/06 F
(21)【出願番号】P 2020029666
(22)【出願日】2020-02-25
【審査請求日】2022-10-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000005175
【氏名又は名称】藤倉コンポジット株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004185
【氏名又は名称】インフォート弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100121049
【氏名又は名称】三輪 正義
(72)【発明者】
【氏名】高橋 昌樹
(72)【発明者】
【氏名】瀬下 真弘
【審査官】羽飼 知佳
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-132307(JP,A)
【文献】実開昭55-061972(JP,U)
【文献】実開昭54-137732(JP,U)
【文献】実開昭51-058313(JP,U)
【文献】特開2015-197392(JP,A)
【文献】特開2018-124163(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01F 23/00-23/80等
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気極と、金属極と、を有し、液体の水位の増減方向に
沿って配置された複数の金属空気電池と、
前記液体と接触する前記金属空気電池の個数に基づいて変化する電気特性を検知する検知部と、
空気室を有する支持体と、
を有し、
共通の前記支持体の側面に前記液体の水位の増減方向に沿って、各金属空気電池が支持されており、
前記支持体の側面には複数の窓があり、各窓は、各金属空気電池の前記空気極にて塞がれており、各空気極の一方の面は、前記空気室に露出しており、前記空気極の他方の面に、前記金属極が対向していることを特徴とする液体検知センサ。
【請求項2】
複数の前記金属空気電池は、前記検知部に個別に接続されていることを特徴とする請求項1に記載の液体検知センサ。
【請求項3】
複数の前記金属空気電池は、前記検知部に並列に接続されていることを特徴とする請求項1に記載の液体検知センサ。
【請求項4】
前記金属空気電池は、前記空気極と前記金属極とが筐体に固定された構造であり、前記筐体が前記支持体に支持されていることを特徴とする請求項1に記載の液体検知センサ。
【請求項5】
前記空気極と前記金属極は、空間を介して対向していることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の液体検知センサ。
【請求項6】
前記空気極と前記金属極は、セパレータを介して対向していることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の液体検知センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属空気電池を備えた液体検知センサに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、下記特許文献には、河川などの水位を検知可能な水位センサが開示されている。
【0003】
特許文献1に記載の発明には、本体パイプ内にリードスイッチ基板が設けられ、フロートの水位に応じて、フロートの高さ位置に対応するリードスイッチを導通させる。リードスイッチ基板への電力供給は、ソーラーパネル及び無線機基板で行われる。無線機基板は、マイクロコンピュータ、無線機、及び充電池を備えて構成される。ソーラーパネルからの電力は充電池に供給され蓄積される。ソーラーパネル及び充電池が、水位センサの電源部を構成している。
【0004】
また、特許文献2に記載の発明には、支柱に、水に浮かぶフロート部が挿通されており、水に浮かんだフロート部の高さを、センサ部で検出することで、水位を計測する。また電源部は、電池からなる電源Vccと、リードスイッチからなる電源スイッチSWで構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2018-194363号公報
【文献】特開2018-189505号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、これら特許文献に記載の発明における水位センサは、外部電源として充電池を必要とし、水位測定の際に十分に充電されていることを要する。このため、例えば、特許文献1のように、ソーラーパネルにより、充電池を充電する方式では、使用状況によっては、充電池が十分に充電されていないことがあり、適切に水位測定を行うことができない。また、これら特許文献では、水位測定の有無に係らず、常に電池への充電がされていなければならず長寿命化を図りにくく、またメンテナンス等も必要と考えられる。
【0007】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、外部電源を必要とすることなく、適切に水位を検知することが可能な水を含有する液体を検知するセンサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の液体検知センサは、空気極と、金属極と、を有し、液体の水位の増減方向に沿って配置された複数の金属空気電池と、前記液体と接触する前記金属空気電池の個数に基づいて変化する電気特性を検知する検知部と、空気室を有する支持体と、を有し、共通の前記支持体の側面に前記液体の水位の増減方向に沿って、各金属空気電池が支持されており、前記支持体の側面には複数の窓があり、各窓は、各金属空気電池の前記空気極にて塞がれており、各空気極の一方の面は、前記空気室に露出しており、前記空気極の他方の面に、前記金属極が対向していることを特徴とする。
【0009】
本発明では、複数の前記金属空気電池は、前記検知部に個別に接続されている構成とすることができる。
【0010】
本発明では、複数の前記金属空気電池は、前記検知部に並列に接続されている構成とすることができる。
【0012】
本発明では、前記金属空気電池は、前記空気極と前記金属極とが筐体に固定された構造であり、前記筐体が前記支持体に支持されている構成とすることができる。
【0013】
本発明では、前記空気極と前記金属極は、空間を介して対向している構成とすることができる。
【0014】
本発明では、前記空気極と前記金属極は、セパレータを介して対向している構成とすることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の液体検知センサによれば、液体と接触する金属空気電池の個数に基づいて変化する電気特性を検知することで、液体の水位を、外部電源を必要とすることなく、簡単な構造にて適切に検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、第1の実施の形態における液体検知センサの縦断面図である。
【
図2】
図2は、低い水位の液体検知状態を示す液体検知センサの縦断面図である。
【
図3】
図3は、高い水位の液体検知状態を示す液体検知センサの縦断面図である。
【
図4】
図4は、第2の実施の形態における液体検知センサの縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施の形態(以下、「実施の形態」と略記する。)について、詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0018】
図1に示す液体検知センサ1は、空気極(正極)2と、空気極2とX方向に空間を介して対向する金属極(負極)3と、を有する複数の金属空気電池7を具備する。なお、各金属空気電池7に配置される空気極2及び金属極3は、特に限定されるものではないが、ほぼ同じ大きさ(対向面積)であることが好ましい。
【0019】
図1に示すように、複数の金属空気電池7は、Y方向(高さ方向)に間隔を空けて並設されている。これら金属空気電池7は、空気室5aを有する支持体5の側面に固定支持されている。
【0020】
限定されるものではないが、空気極2は、集電体と触媒層(反応部)とを有して構成される。集電体に求められる特性は、金属極3から放出される電子を、触媒層へ伝える導電性と、酸素を透過させる通気性である。集電体の構成を限定するものでないが、例えば、金網や発泡金属等、既存のものを用いることができる。また、触媒層に求められる特性は、液体を外部に放出しない疎水性及び、酸素を透過させる通気性である。触媒層には既存の材質を用いることができる。
【0021】
金属極3は、マグネシウム(Mg)、Mg合金、亜鉛(Zn)、Zn合金、アルミニウム(Al)、或いは、Al合金のうちいずれかであることが好ましい。このうち、金属極3を構成する金属は、Mg、或いは、Mg合金であることがより好ましい。
【0022】
支持体5は、図示Y方向に長く延出する有底の筒状体である。各金属空気電池7を固定支持する側部5bには、各金属空気電池7の空気極2と対向する部分に、空気極2よりも一回り小さい複数の窓が設けられており、各窓は、各空気極2により塞がれる。空気極2は、窓の外枠に接着剤等を介して接合されている。これにより、空気極2の一方の面2aは、空気室5a側に露出している。また、空気極2の他方の面2bは、金属極3と対向している。
図1に示すように、空気室5aの上端は開放端であり、このように、空気室5aは、支持体5の側部5bに各金属空気電池7を配置することにより、上端を除いて閉塞空間とされている。したがって、空気は、空気室5a内を満たし、各金属空気電池7の空気極2と接触している。
【0023】
図1示す金属空気電池7は、空気極2と金属極3とが筐体6に保持されたセル構造を構成している。
図1に示すように、各筐体6の下端には、給水口6aが形成されており、液体が給水口6aを通じて、筐体6の内部に流入できるようになっている。これにより、空気極2と金属極3の間の空間を液体で満たすことができる。
図1に示すように、金属極3の下部は、自由端であることが好ましい。このように自由端とすることで、金属極3の下部を揺動させることができる。このため、空気極2と金属極3との間に生成物が堆積したときに、金属極3を撓らせることができ、生成物による押圧力を緩和でき、金属極3及び空気極2の破損を抑制することが出来る。
【0024】
図1に示すように、各金属空気電池7には、検知部4が電気的に接続されている。接続方式を限定するものではないが、例えば、各金属空気電池7は、個別にて接続されており、このように個別に接続された電池ユニットに検知部4が電気的に接続されている。なお、図示しないが回路には、負荷(抵抗)が接続されており、検知部4では、電池ユニットの電気特性を検知することができる。「電気特性」を限定するものではないが、例えば、電圧値や、電流値である。
【0025】
図1に示す液体検知センサ1では、水を含有する液体が、金属空気電池7の空気極2と金属極3間に供給されると、例えば、金属極3を構成する金属が、Mgであるとき、金属極3側では、下記(1)で示す酸化反応が生じる。また、空気極2においては、下記(2)で示す還元反応が生じる。したがって、全体としては、下記(3)に示す反応が起こり、放電(発電)が行われる。
(1)2Mg →2Mg
2++4e
-
(2)O
2+2H
2O+4e
- →4OH
-
(3)2Mg+O
2+2H
2O →2Mg(OH)
2
【0026】
上記の電池反応による放電時に電流が生じ、検知部4にて、電圧値、或いは電流値を測定することで放電レベルを知ることができる。
【0027】
図2に示すように、液体8の水位が低い状態では、液体8に浸る金属空気電池7の数が少ない。例えば、
図2では、発電する金属空気電池7の数は1つであり、このため、検知部4にて検知される電圧値、或いは、電流値は小さくなる。
【0028】
一方、
図3に示すように、液体8の水位が高い状態では、液体8に浸る金属空気電池7の数が多い。例えば、
図2では、発電する金属空気電池7の数は3つであり、このため、検知部4にて検知される電圧値、或いは、電流値は、
図2よりも大きくなる。
【0029】
このように、本実施の形態の液体検知センサ1では、複数の金属空気電池7を、液体8の水位の増減方向に向けて配置することで、液体8の水位により変化する、液体8に浸る金属空気電池7の数に応じた電気特性(電圧値や電流値等)を検知部4にて検知することができる。
【0030】
特に、本実施の形態の液体検知センサ1は、外部電源を必要とせずに発電が可能であるので、簡単な構造にて液体8の水位を適切に測定することができる。このように、本実施の形態の液体検知センサ1は、使い勝手が良く、また外部環境の影響も受けにくい。例えば、特許文献1のような構成では、外部環境により、充電池に十分な充電がされていない可能性があり、その場合、水位測定を適切に行うことができない。これに対して、本実施の形態では、特に定期的なメンテナンス等も必要とせず、水位測定を行いたい場所に液体検知センサ1を設置しておくことで、液体検知センサ1への液体の流入により、金属空気電池の発電により水位測定を開始させることができ、使用環境に左右されにくく、適切な水位測定を行うことが可能である。
【0031】
ここで、限定するものではないが、「液体の水位」とは、例えば、河川、海水、ダム、貯水槽、浴槽、汚水槽、屋内や自動車内への浸水による水位を例示することができる。雨や上方から液体が降り注ぐ使用環境下では、空気室5a内に雨や液体が入らないように、空気室5a内への空気の供給を確保しつつ、空気室5aの上方を塞ぐことが好ましい。
【0032】
本実施の形態の液体検知センサ1では、上記のように、外部電源を必要とせず、長期間、屋内や屋外に、液体検知センサ1を設置しておいても、液体8が、金属空気電池7に供給されると、電池反応が生じて、水位測定が開始される。なお、「外部電源」とは、液体検知センサ1を作動させるために、液体検知センサ1とは別に設けられた電力源を指す。
【0033】
上記のように、検知部4から出力される電気特性は、例えば、電圧値や電流値であり、電気特性に基づいて、水位を知ることができる。制御部(図示しない)により、電気特性から水位を換算することが可能である。例えば、利用者は、算出された水位を、液体検知センサ1の設置場所から離れた場所で知ることが可能である。このように、水位は、検知部4にて、或いは無線報知で認識することが可能である。例えば、この電圧変化に基づく検知信号を送信部(図示せず)から無線で受信部(図示せず)に送信する。受信部では検知信号を受信して、水位を液体検知センサ1から遠隔の位置で報知することができる。無線方式を限定するものでなく、無線LAN、Bluetooth(登録商標)、Wi-Fi等、既存の方式を用いることができる。
【0034】
また、本実施の形態において、給水口6aの位置は限定されるものではない。例えば、給水口6aを、筐体6の底部以外に側部に設けることもできる。各金属空気電池7に設けられる給水口6aの位置は、全て同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0035】
また、筐体6の液室の上部近傍に空気口を有していることが好ましい。例えば、液室の開口部が給水口6aのみの場合、河川増水により、空気交換が出来ずに、液体8が液室内に入りにくくなるため、液室に空気口を設けることが好適である。
【0036】
図1では、各金属空気電池7を個別に接続したが、並列に接続することもできる。各金属空気電池7を個別に接続することで、水位の変動に対する検知部4で検知される電気特性変化を大きくでき、水位の検知を精度良く且つ簡単に行うことが可能になる。一方、各金属空気電池7を並列に接続することで、検知部の入力ポートを減らすことができ、液体検知センサ1の低価格化を図ることができる。
【0037】
また、
図4に示す第2の実施の形態では、各金属空気電池7を構成する空気極2と金属極3との間に、セパレータ11を介在させた。
【0038】
なお、限定するものではないが、空気極2とセパレータ11間、及び金属極3とセパレータ11間を、粘着層を介して固定することができる。粘着層は、空気極2及び金属極3の縁部に部分的に設けられることが好ましい。
セパレータ11は、電気的に絶縁性且つイオン透過性を有する材質で形成される。例えば、不織布、織布、多孔性薄膜等である。
【0039】
図5では、セパレータ11を、空気極2と金属極3の間にのみ介在させたが、例えば、セパレータ11を、
図4の状態から金属極3の外面3a側にまで延出させることも可能である。
【0040】
本実施の形態の液体検知センサ1、10では、液体8の接触により、自己発電するが、このように、自己発電させるには、必ずしも必要ではないが、液体8内に塩が存在している方が望ましい。塩を限定するものではないが、例えば、塩化ナトリウムを挙げることができる。したがって、液体8が塩を含まない成分である場合、液体8が液体検知センサ1、10に接触した際に、液体8内に塩を供給可能な塩供給手段を備えることが好ましい。例えば、
図4に示すように、空気極2と金属極3との間にセパレータ11を介在させた構成では、セパレータ11内に塩を含ませておくことが可能である。
【0041】
本実施の形態の液体検知センサ1、10を用いることで、液体の水位を検知することができる。特に本実施の形態では、複数の金属空気電池7の個数や、設置間隔を自由に設定することができ、使用用途に応じて、簡単な構造で精度良く水位測定を行うことができる。例えば、水位が浅い部分より、水位が深い部分できめ細かく水位を測定した場合は、下方から上方に向けて、金属空気電池7の間隔を一定にせず、上方に金属空気電池7を集中的に配置することで、高い水位を適切に測定することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明の液体検知センサによれば、外部電源を必要とせず、また、屋内、屋外問わず、水位を測定したい場所に設置することができる。このように、液体検知センサを作動させるにあたり、下準備や定期的なメンテナンス等が必要なく、使い勝手に優れ、また、外部環境の影響も受けにくく、簡単な構造にて水位測定を精度良く行うことができる。
【符号の説明】
【0043】
1、10 :液体検知センサ
2 :空気極
3 :金属極
4 :検知部
5 :支持体
5a :空気室
5b :側部
6 :筐体
6a :給水口
7 :金属空気電池
8 :液体
11 :セパレータ