(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-26
(45)【発行日】2024-04-03
(54)【発明の名称】銀ペースト
(51)【国際特許分類】
B22F 1/00 20220101AFI20240327BHJP
C08K 3/105 20180101ALI20240327BHJP
C08L 79/08 20060101ALI20240327BHJP
C08L 83/04 20060101ALI20240327BHJP
H01C 1/142 20060101ALI20240327BHJP
H01G 4/30 20060101ALI20240327BHJP
【FI】
B22F1/00 K
C08K3/105
C08L79/08
C08L83/04
H01C1/142
H01G4/30 201G
H01G4/30 516
(21)【出願番号】P 2020057147
(22)【出願日】2020-03-27
【審査請求日】2023-03-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000004293
【氏名又は名称】株式会社ノリタケカンパニーリミテド
(74)【代理人】
【識別番号】100117606
【氏名又は名称】安部 誠
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 夕子
(72)【発明者】
【氏名】西部 香帆
【審査官】坂本 薫昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-145011(JP,A)
【文献】特開2007-217490(JP,A)
【文献】特開平06-279680(JP,A)
【文献】特許第4855077(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F 1/00,7/04
C08K 3/105
C08L 79/08
C08L 83/04
H01C 1/142
H01G 4/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
銀粒子と、樹脂成分と、有機溶剤とを含む銀ペーストであって、
前記銀粒子は、タップ密度が3g/cm
3未満であり、比表面積が1m
2/g以上であり、かつ、平均粒子径が3μm以上である、第1の銀粒子(A1)を含み、
前記銀粒子の全量を100質量%としたときに、前記第1の銀粒子(A1)の含有割合は5%以上60%以下であり、
前記樹脂成分は、5%の重量が減少する熱分解温度(Td
5)が300℃以上であり、かつ、重量平均分子量が30,000以上である、ポリイミド樹脂(B1)を含み、
前記ポリイミド樹脂(B1)は、溶剤可溶型ポリイミド樹脂であり、
前記樹脂成分の全量を100質量%としたときに、前記ポリイミド樹脂(B1)の含有割合は50質量%以上100質量%以下であり、
ここで、前記銀粒子を100質量部としたとき、前記樹脂成分は5質量部以上20質量部以下の割合で含まれる、銀ペースト。
【請求項2】
銀粒子と、樹脂成分と、有機溶剤とを含む銀ペーストであって、
180℃以上300℃以下の環境下で使用されるものであり、
前記銀粒子は、タップ密度が3g/cm
3
未満であり、比表面積が1m
2
/g以上であり、かつ、平均粒子径が3μm以上である、第1の銀粒子(A1)を含み、
前記銀粒子の全量を100質量%としたときに、前記第1の銀粒子(A1)の含有割合は5%以上60%以下であり、
前記樹脂成分は、5%の重量が減少する熱分解温度(Td
5
)が300℃以上であり、かつ、重量平均分子量が30,000以上である、ポリイミド樹脂(B1)を含み、
前記樹脂成分の全量を100質量%としたときに、前記ポリイミド樹脂(B1)の含有割合は50質量%以上100質量%以下であり、
ここで、前記銀粒子を100質量部としたとき、前記樹脂成分は5質量部以上20質量部以下の割合で含まれる、銀ペースト。
【請求項3】
前記銀粒子は、タップ密度が3g/cm
3以上である第2の銀粒子(A2)を含み、
前記銀粒子の全量を100質量%としたときに、前記第2の銀粒子(A2)の含有割合は40質量%以上である、請求項1
または2に記載の銀ペースト。
【請求項4】
前記樹脂成分は、シリコーン樹脂を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の銀ペースト。
【請求項5】
セラミック電子部品の外部電極を形成するために用いられる、請求項1~
4のいずれか一項に記載の銀ペースト。
【請求項6】
セラミック素地と前記セラミック素地内に配設された内部電極とを含む部品本体と、
前記部品本体の表面に備えられる外部電極と、
を備え、
前記外部電極は、請求項
5に記載の銀ペーストの乾燥膜を少なくとも一部に含む、積層セラミック電子部品。
【請求項7】
セラミック素地と前記セラミック素地内に配設された内部電極とを含む部品本体と、
前記部品本体の表面に備えられる外部電極と、
を備え、
前記外部電極は、セラミック電子部品の外部電極を形成するために用いられる銀ペーストの乾燥膜を少なくとも一部に含み、
前記銀ペーストは、銀粒子と、樹脂成分と、有機溶剤とを含み、
前記銀粒子は、タップ密度が3g/cm
3
未満であり、比表面積が1m
2
/g以上であり、かつ、平均粒子径が3μm以上である、第1の銀粒子(A1)を含み、
前記銀粒子の全量を100質量%としたときに、前記第1の銀粒子(A1)の含有割合は5%以上60%以下であり、
前記樹脂成分は、5%の重量が減少する熱分解温度(Td
5
)が300℃以上であり、かつ、重量平均分子量が30,000以上である、ポリイミド樹脂(B1)を含み、
前記樹脂成分の全量を100質量%としたときに、前記ポリイミド樹脂(B1)の含有割合は50質量%以上100質量%以下であり、
ここで、前記銀粒子を100質量部としたとき、前記樹脂成分は5質量部以上20質量部以下の割合で含まれる、積層セラミック電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銀ペーストに関する。より詳しくは、セラミック電子部品の未焼成電極を形成するのに好適な銀ペーストに関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器の小型化や高性能化に伴い、電子機器に実装されるセラミック電子部品にも小型化および高性能化が求められている。とりわけ、車載用の電子部品については、車両のコネクティッド化により、小型化に加えて高耐熱化と高い信頼性とを兼ね備えることが求められる。
【0003】
セラミック電子部品は、一般に、部品本体と、部品本体の対向する一対の端面に形成される外部電極とを備え、外部電極を基板に半田付けすることによって基板に実装される。ここで、車載用電子機器等においては、セラミック電子部品を実装した基板が急激な温度変化によって撓み得ることが知られている。このとき、セラミック電子部品と基板とでは熱膨張係数が異なることから、基材に実装されているセラミック電子部品には熱衝撃が生じ、脆性なセラミック電子部品がクラック等により破損することが懸念される。そこで、セラミック電子部品の外部電極に、樹脂成分を含む導電性膜(樹脂電極層)を介在させ、この樹脂電極層でセラミック電子部品に加わる熱衝撃を緩和させることが行われている。
【0004】
ところで、従来の樹脂成分を含む導電性膜を形成するための導電性ペーストには、樹脂成分として、エポキシ樹脂やウレタン樹脂等の熱硬化性樹脂が使用されている。しかしながら、これらのエポキシ樹脂やウレタン樹脂は、高温で連続使用する場合の耐熱温度が150℃程度であり、これ以上の温度環境に晒されると樹脂成分が劣化するという課題がある。
また、近年では、電子機器の小型化および高性能化の観点から、SiC半導体やGaN半導体の普及が始まっている。このような半導体は、180℃以上の高温で使用されることが想定されており、上記のような樹脂成分を含む導電性ペーストにも高い耐熱性が要求されている。高い耐熱性を有する樹脂成分としては、例えばポリイミド樹脂、ポリテトラフルオロエチレンおよびPEEK(ポリエーテルエーテルケトン)樹脂に代表されるスーパーエンプラ(スーパーエンジニアリングプラスチック)が知られている。このようなスーパーエンプラのなかでも、特に高い耐熱性を有するポリイミド樹脂の使用について、研究開発が精力的に行われている(例えば特許文献1~5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第6015234号公報
【文献】国際公開2015―099049号
【文献】特許第4855077号公報
【文献】特開2018―119023号
【文献】特許第5830288号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のようなセラミック電子部品の外部電極の形成には、部品本体の少なくとも一部に導電性膜を形成することと、導電性膜の表面に金属層(金属電極層)を形成することとが含まれる。セラミック電子部品を大量生産するためには、好適な導電性膜の形成が容易であることと、導電性膜の接着性(例えば導電性膜と金属層との接着性)を向上させることとが求められている。
【0007】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、導電性粒子として銀粒子を含む構成の導電性ペースト(即ち、銀ペースト)において、高い耐熱性に加えて、導電性膜の形成容易性、および、導電性膜の接着性を向上させる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するため、銀ペーストに含まれる銀粒子と樹脂成分に着目し、検討を行った。本発明者らの知見によると、銀粒子として、タップ密度が比較的小さい銀粒子を使用すると、導電性膜表面に金属層を形成すること、およびこれらの接着性は向上し得ることが見出された。しかしながら、タップ密度が比較的小さい銀粒子を使用するだけでは、導電性膜を形成するのに好ましい銀ペーストのレオロジーを好適な状態とすることができず、さらなる検討が必要であることがわかった。そこで、本発明者らは、銀ペーストに含まれるために好ましい樹脂成分や銀粒子の性状を詳細に検討することによって、銀ペーストに好ましいレオロジー特性(例えば粘度)を付与し、好適な導電性膜の形成をより容易にすることを目指して鋭意研究を重ねた。その結果、好適な導電性膜の形成容易性を向上させ、それに加えて、導電性膜の接着性を顕著に向上させ得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
ここで開示される技術によると、銀粒子と、樹脂成分と、有機溶剤とを含む銀ペーストが提供される。
上記銀粒子は、タップ密度が3g/cm3未満であり、比表面積(surface area:SA)が1m2/g以上であり、かつ、平均粒子径が3μm以上である、第1の銀粒子(A1)を含む。上記銀粒子の全量を100質量%としたときに、上記第1の銀粒子(A1)の含有割合は5%以上60%以下である。
上記樹脂成分は、5%の重量が減少する熱分解温度(Td5)が300℃以上であり、かつ、重量平均分子量が30,000以上である、ポリイミド樹脂(B1)を含む。上記樹脂成分の全量を100質量%としたときに、上記ポリイミド樹脂(B1)の含有割合は50質量%以上100質量%以下である。
ここで、上記銀粒子を100質量部としたとき、上記樹脂成分は5質量部以上20質量部以下の割合で含まれる。
【0010】
本明細書において「タップ密度」とは、所定容器内で銀粒子を所定回数タップした後の粉末の見掛け密度を示す指標である。タップ密度の測定は、JIS Z2512:2012に規定される金属粉-タップ密度測定方法に準じて測定することができる。
本明細書において「比表面積」とは、ガス吸着法によって測定された銀粒子のガス分子吸着等の特性を、BET法に基づき解析して得られる比表面積である。この比表面積は、JIS Z8830:2013(ISO 9277:2010)に規定されるガス吸着による粉体(固体)の比表面積測定方法に準じて測定することができる。
【0011】
かかる構成によると、導電性膜の形成容易性が向上し、導電性膜の接着性が顕著に向上し得る。
タップ密度が比較的小さく、比表面積と平均粒子径が上記範囲を満たす第1の銀粒子(A1)はペースト材料中で沈殿しにくい。導電性膜の表面における銀粒子の露出面積を増加することができる。これによって、当該表面上に、例えばメッキによって金属層を形成させやすくなり、導電性膜との接着性も顕著に向上し得る。また、第1の銀粒子(A1)の含有割合を所定範囲内とすることによって、銀ペーストに好適なレオロジー特性を実現することができる。
樹脂成分として上記ポリイミド樹脂(B1)を所定量含ませると、第1の銀粒子(A1)を含む構成であっても、銀ペーストのレオロジー特性を好適なものとすることができる。また、ポリイミド樹脂の使用により、高い耐熱性(例えば180℃以上300℃以下程度)を実現することができる。
【0012】
好ましい一態様では、上記銀粒子は、タップ密度が3g/cm3以上である第2の銀粒子(A2)を含む。上記銀粒子の全量を100質量%としたときに、上記第2の銀粒子(A2)の含有割合40質量%以上である。
タップ密度が相対的に大きい第2の銀粒子(A2)は、銀ペーストにおける好適なレオロジー特性の実現に寄与し得る。かかる第2の銀粒子(A2)を所定量含むことによって、好適な導体膜の形成が容易になり得る。
【0013】
さらに好ましくは、上記ポリイミド樹脂(B1)は、溶剤可溶型ポリイミド樹脂である。
かかる構成によると、上記の効果に加えて、導電性膜の、より容易な形成が実現され得る。
【0014】
ここで開示される銀ペーストの好適な一態様では、上記樹脂成分は、シリコーン樹脂を含む。
かかる構成によると、銀ペーストに、より好ましいレオロジー特性を付与することができ、導電性膜のより容易な形成が実現され得る。また、導電性膜表面における銀粒子の露出を大きくすることができ、導電性膜と金属層との接着性を向上させることができる。
【0015】
ここで開示される銀ペーストは、上記のとおり、高い耐熱性と接着性とを両立する導電性膜を形成することができる。このような特性は、例えば、高温で振動が発生する環境で使用されるセラミック電子部品の外部電極に含まれる樹脂電極層や、ボンディング用導電性樹脂を形成するために用いることで、その利点を如何無く発揮させることができる。例えば、ここに開示される銀ペーストの好ましい一態様では、180℃以上300℃以下の環境下で使用される。また、他の好ましい一態様では、セラミック電子部品の外部電極の樹脂電極層を形成するために用いられる。
【0016】
他の観点から、ここに開示されるセラミック電子部品は、セラミック素地と上記セラミック素地内に配設された内部電極とを含む部品本体と、前記部品本体の表面に備えられる外部電極と、を備える。そして上記外部電極は、上記銀ペーストから形成される導電性膜(典型的には乾燥膜)を少なくとも一部に含む。これにより、高温環境においても、外部からの振動で剥離や破損が生じにくい高い信頼性を有するセラミック電子部品が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る積層セラミックコンデンサを模式的に示す断面図である。
【
図2】接着性の評価試験において、「◎」と評価されたFE-SEM観察画像の一例である。
【
図3】接着性の評価試験において、「〇」と評価されたFE-SEM観察画像の一例である。
【
図4】接着性の評価試験において、「△」と評価されたFE-SEM観察画像の一例である。
【
図5】接着性の評価試験において、「×」と評価されたFE-SEM観察画像の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の好適な実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項(例えば、銀ペーストの構成)以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄(例えば、銀ペーストの調製方法やセラミック電子部品の構成等)は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。
【0019】
なお、以下の説明では、銀ペーストを基材上に付与して、銀ペーストに含まれる樹脂成分の熱分解温度以下の温度で(例えば300℃以下で)乾燥した未焼成の膜状体(乾燥膜)を、「導電性膜」という。本明細書において「導電性膜」は、「樹脂電極膜」や「ボンディング用導電性樹脂」等の意味を包含する。また、本明細書において「重量平均分子量」とは、ゲルクロマトグラフィー(Gel Permeation Chromatography:GPC)によって測定し、標準ポリスチレン検量線を用いて換算した重量基準の平均分子量をいう。
なお、本明細書において数値範囲を示す「A~B」の表記は、A以上B以下を意味し、Aを上回るもので、Bを下回るものを包含する。
【0020】
<銀ペースト>
ここで開示される導電性銀ペースト(以下、単に「銀ペースト」あるいは「ペースト」ということがある。)は、乾燥させることによって導電性粒子として銀粒子を含む導電性膜を形成することができる。ここで開示される銀ペーストは、銀粒子(A)と、樹脂成分(B)と、有機溶剤(C)と、を含んでいる。なお、本明細書において「ペースト」とは、組成物、インク、スラリー、サスペンション等を包含する用語である。以下、各成分について順に説明する。
【0021】
(A)銀粒子
銀粒子は、典型的には粉末の形態で用意される。銀粒子は、乾燥後に得られる導電性膜に電気伝導性を付与する成分である。
銀(Ag)は、金(Au)ほど高価ではなく、酸化され難くかつ導電性に優れるため好ましい。銀粒子は、銀を主成分としていれば、その組成は特に制限されず、所望の導電性やその他の物性を備える銀粒子を用いることができる。ここで主成分とは、銀粒子を構成する成分のうちの最大成分であることを意味する。銀粒子としては、例えば、銀および銀合金ならびにそれらの混合物または複合体等から構成されたものが一例として挙げられる。銀合金としては、例えば、銀-パラジウム(Ag-Pd)合金、銀-白金(Ag-Pt)合金、銀-銅(Ag-Cu)合金等が好ましい例として挙げられる。例えば、コアが銀以外の銅や銀合金等の金属から構成され、コアを覆うシェルが銀からなるコアシェル粒子等を用いることもできる。銀粒子は、その純度(含有量)が高いほど導電性が高くなる傾向があることから、純度の高いものを使用することが好ましい。銀粒子は、純度95%以上が好ましく、97%以上がより好ましく、99%以上が特に好ましい。ここに開示される技術によると、例えば、純度が99.5%程度以上(例えば99.8%程度以上)の銀粒子を使用することでも、好適な導電性膜を形成することが可能とされる。なお、かかる観点において、ここに開示される技術においては、例えば、純度99.99%以下(99.9%以下)の銀粒子を用いても、好適な導電性膜を形成することが可能である。
【0022】
銀粒子の形状は、例えば、球形あるいは非球形であってよい。非球形とは、例えば、板状、鱗片状、フレーク状、不定形状等であってよい。銀粒子の充填密度を高め易いとの観点から、球形の銀粒子としては、例えば、アスペクト比が1.2以下、好ましくは1.15以下、例えば1.1以下のものを好ましく用いることができる。また、銀粒子の接触面積を増大させ易いとの観点からは、非球形の銀粒子は、例えば、アスペクト比が1.2超過、好ましくは1.3以上、1.5以上、例えば1.7以上、さらに好ましくは2以上のものを用いるとよい。上記効果を相乗させる観点から、銀粒子は、球形のものと非球形のものとが混合されていてもよい。なお、アスペクト比は、電子顕微鏡観察に基づき、銀粒子の最小外接長方形の(長辺÷短辺)により算出される値である。
銀粒子を構成する粒子の性状、例えば粒子のサイズや形状等は、所望の導電性膜の断面における最小寸法(典型的には、導電性膜の厚みおよび/または幅)に収まる限りにおいて、特に限定されない。銀粒子の平均粒子径(レーザ回折式の粒度分布測定装置により求められる体積基準の粒度分布において、小粒子径側から累積50%に相当する粒子径。以下同じ。)は、概ね数10nm~数十μm程度、例えば0.1μm~10μmであるとよい。
【0023】
ここで開示される技術において、銀粒子は、タップ密度、比表面積、平均粒子径、および含有割合が所定の範囲となるように定められた、第1の銀粒子(A1)を含む。第1の銀粒子(A1)は、導電性膜の表面における銀粒子の露出を増加させる一成分となり得る。導電性膜の表面において、銀粒子の露出面積率が所定以上であると、例えばメッキによって金属層(金属電極層)を形成することが容易になり得る。また、導電性膜と金属層との接着性を向上させることができる。このような効果を実現すべく、第1の銀粒子(A1)のタップ密度、比表面積、平均粒子径、および含有割合が規定されている。
なお、第1の銀粒子(A1)は下記に詳述される性質を有する銀粒子1種類のみで構成されてもよく、2以上の種類で構成されてもよい。
【0024】
タップ密度は、容器に自然充填された粉体の凝集による空隙を、所定のタッピング条件による衝撃によって解消したときの、軽い圧密状態における嵩密度を示す指標である。ここでは、タッピングの条件を、タップ高さ:5cm、タップ速度:120回/分、タッピング回数:1000回としたときのタップ密度を採用している。
銀粒子のタップ密度が低いと、基材上に供給したときの銀粒子の配列が空隙の大きいものとなりやすく、充填性が高まり難くなる傾向がある。そのため、従来では、この種の銀ペーストを作製する際には、タップ密度が比較的高い銀粒子が用いられている。しかしながら、基材上では、このような銀粒子は銀ペースト中で沈澱する傾向があり、導電性膜と金属層との接着性を低下させる要因となり得た。
【0025】
ここで開示される技術によると、第1の銀粒子(A1)のタップ密度を3g/cm3未満に規定している。タップ密度は、例えば2.8g/cm3以下であってよく、2.6g/cm3以下であってもよい。タップ密度は、例えば0.5g/cm3以上、0.8g/cm3以上、1.0g/cm3以上としてもよい。
【0026】
比表面積は、銀粒子が備える表面積を単位重量当たりで示した値であり、銀粒子を構成する銀粒子の大きさと表面形態とを反映した指標であり得る。一般に平均粒子径が同じ粉体については、比表面積が大きいほど粒子の形状が真球形から遠ざかる傾向にあり得る。
ここで開示される技術においては、銀粒子が真球でなくてもよく、表面に凸凹があってもよい。第1の銀粒子(A1)の比表面積は、1m2/g以上(例えば1.1m2/g以上)であることが好ましい。これにより、導電性膜表面における銀粒子の露出が増加する傾向がある。
【0027】
第1の銀粒子(A1)の平均粒子径は、導電性膜と金属層との接着性の観点から、平均粒子径は3μm以上であることが好ましい。導電性膜の表面における銀粒子の露出面積を大きくすることができる。
【0028】
ここで開示される銀ペーストにおいては、第1の銀粒子(A1)の含有割合は、銀ペーストのレオロジー特性や導電性膜における銀粒子の露出度が好適なものとなるように、最適な範囲内に調整されている。銀粒子の全量を100質量%としたときに、第1の銀粒子(A1)の含有割合は5質量%以上60質量%以下の範囲内に調整される。
【0029】
ここで開示される銀ペーストは、銀粒子として、タップ密度が第1の銀粒子(A1)よりも大きい第2の銀粒子(A2)を含み得る。
第2の銀粒子(A2)は、銀ペーストのレオロジー特性を好適な状態に調整するための一成分であり得る。第2の銀粒子(A2)については、タップ密度および含有量が所定の範囲となるように定められている。
なお、第2の銀粒子(A2)は下記に詳述される性質を有する銀粒子1種類のみで構成されてもよく、2以上の種類で構成されてもよい。
【0030】
第2の銀粒子(A2)のタップ密度は、3g/cm3以上であることが好ましく、3.5g/cm3以上、4g/cm3以上、4.5g/cm3以上、または5g/cm3以上であってもよい。第2の銀粒子(A2)について、タップ密度の上限は特に限定されないが、例えば6.5g/cm3程度とすることができる。
一方、第2の銀粒子(A2)の比表面積は特に限定されず、例えば0.1m2/g以上6m2/g以下の範囲において適宜設定することができる。
第2の銀粒子(A2)の平均粒子径については特に限定されず、上記のような範囲から適宜設定すればよい。
【0031】
上記のとおり、第2の銀粒子(A2)が所定量含まれることによって、銀ペーストのレオロジー特性を調整することができる。第2の銀粒子(A2)の含有割合は40質量%以上95質量%以下であることが好ましい。
【0032】
なお、ここで開示される銀ペーストは、必須の銀粒子として上記第1の銀粒子(A1)と上記第2の銀粒子(A2)とを含むが、本発明の効果が実現される限りは、上記第1の銀粒子(A1)と上記第2の銀粒子(A2)とのいずれとも異なる第3の銀粒子(A3)を含んでもよい。第3の銀粒子(A3)の性質および含有割合は、特に限定されない。
【0033】
銀粒子の含有割合は特に限定されないが、銀ペーストの全体を100質量%としたときに、概ね30質量%以上、典型的には40~95質量%、例えば50~85質量%であるとよい。上記範囲を満たすことで、電気伝導性や緻密性の高い導電性膜を好適に実現することができる。また、ペーストのハンドリング性や、成膜時の作業性を向上することができる。そして、導電性膜表面における銀粒子の露出を大きくすることができる。導電性膜と金属層との接着性を向上することができる。
【0034】
(B)樹脂成分
樹脂成分は、ポリイミド樹脂を含む。
ポリイミド樹脂は、繰返し単位にイミド結合を含む高分子である。高分子とは、分子量が大きい(例えば、重量平均分子量が1000以上の)分子で、分子量が小さい(例えば、重量平均分子量が500以下の)分子から実質的または概念的に得られる単位(繰返し単位と同意)の多数回(例えば5回以上)の繰り返しで構成した構造を有する。ポリイミド樹脂は、典型的には、以下の式(1)で表される繰り返し単位構造を含む。ここで、式中のR,R’は独立して、任意の有機官能基、または酸素原子である。
上記任意の有機官能基は、特に限定されない。上記任意の有機官能基は、例えば、Siを含まないものであってよい。ここで開示される銀ペーストは、樹脂成分としてポリイミドシリコーン樹脂を含まなくてもよい。
【0035】
【0036】
ポリイミド樹脂は、典型的にはイミド結合を含む繰り返し単位が主鎖を構成する結晶性または非結晶性の高分子である。より付着性の高い電極を形成するとの観点からは、結晶性の高分子であってよい。また、より高い耐熱性を備えるとの観点からは、非結晶性の高分子であってよい。さらに、ポリイミド樹脂は、ホモポリマーの状態で、耐熱温度が250℃以上であるとよく、例えばガラス転移点については200℃以上であってよく、好ましくは210℃以上、より好ましくは220℃以上であり得る。ポリイミド樹脂において、全繰返し単位のモル数に占める、イミド結合を含む繰り返し単位のモル数の割合は、通常は50%以上(例えば50%~95%)であり、好ましくは65%以上、より好ましくは75%以上、例えば85%以上である。例えば、全繰返し単位が脂肪族又は環状脂肪族を含む単位から構成されていてもよい。
【0037】
ポリイミド樹脂としては、熱硬化型ポリイミド樹脂と溶剤可溶型ポリイミド樹脂とが挙げられる。
熱硬化型ポリイミド樹脂は、まず酸無水物とジアミンとを出発原料としてポリアミック酸を得て、次いで該ポリアミック酸を加熱することによって脱水縮合反応を起こすことによって得られるポリイミド樹脂である。
溶剤可溶型ポリイミド樹脂は、典型的には、テトラカルボン酸二無水物とジイソシアナートを反応溶液中で反応させることによって得られるポリイミド樹脂である。溶剤可溶型ポリイミド樹脂は、有機溶媒(例えば下記の(C)有機溶剤に記載する種々の有機溶剤)に溶解可能であるため、比較的容易に取り扱うことができる。
【0038】
ポリイミド樹脂において、イミド結合の繰返し単位の種類は特に限定されない。イミド結合を含む単位としては、これに限定されるものではないが、例えば、s-ODPA、i-ODPA、a-ODPA、2,2’-BAPB、4,4’-BAPB、1,5-NBOA、2,3-NBOA、3,3’-ODA、4,4’-ODA、PMDA、BPDA、BPADA、BTDA、BAFL、2,2-TFMB、1,3,3-APB、1,3,4-APB、DDS等が例示される。これらはいずれか1種が単独であってもよいし、2種以上の任意の組み合わせであってもよい。
【0039】
ここで開示される銀ペーストは、ポリイミド樹脂(B1)を含む。ポリイミド樹脂(B1)は、ここで開示される技術の効果を実現するために、以下の特徴を有するように設計されている。以下、ポリイミド樹脂(B1)の特徴について説明する。
【0040】
ここで開示される銀ペーストを用いて作製される導電性膜において高い耐熱性を実現するために、ポリイミド樹脂(B1)は、5%の重量が減少する熱分解温度(Td5)が300℃以上(例えば350℃以上、370℃以上、400℃以上、または430℃以上)であることが好ましい。
熱分解温度は、例えば示差熱分析(Differential Thermal Analysis: DTA)により求めることができる。導電性膜に含まれるポリイミド樹脂(B1)として、熱分解温度(Td5)が300℃以上の樹脂を用いることにより、使用温度が180℃以上(約200℃以上、かつ、約350℃以下または約300℃以下)の電子部品の製造にも適用することが可能となる。
【0041】
ポリイミド樹脂(B1)の重量平均分子量は、例えば銀ペーストのレオロジー特性を調整するための一要素であり得る。上述したように、第1の銀粒子(A1)を使用すると、導電性膜を形成するための銀ペーストのレオロジー特性に調整する必要が生じ得る。ポリイミド樹脂(B1)の重量平均分子量を、例えば30,000以上(例えば31,000以上、32,000以上)とすることが好ましい。上限は特に限定されないが、例えば100万以下、50万以下、例えば30万以下、20万以下、10万以下であってもよい。
【0042】
ここで開示される銀ペーストは、樹脂成分の全量がポリイミド樹脂(B1)で構成されていてもよいが、ポリイミド樹脂(B1)とは異なる他のポリイミド樹脂(B2)を含んでもよい。
ポリイミド樹脂(B2)の種類は特に限定されず、熱硬化型ポリイミド樹脂であってもよく、溶剤可溶型ポリイミド樹脂であってもよい。ポリイミド樹脂(B2)のTd5の好適範囲は、ポリイミド樹脂(B1)のTd5の好適範囲と同様である。ポリイミド樹脂(B2)の重量平均分子量は必ずしも上記範囲を満たす必要はなく、上記範囲を満たさないポリイミド樹脂をポリイミド樹脂(B2)としてもよい。
【0043】
銀ペーストのレオロジー特性の観点からは、樹脂成分の全量を100質量%としたときに、ポリイミド樹脂(B1)の含有割合は、50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上、70質量%以上、80質量%以上、あるいは90質量%以上としてもよい。また、ポリイミド樹脂(B1)の含有割合は、100質量%以下、90質量%以下、80質量%以下、70質量%以下、あるいは60質量%としてもよい。また、樹脂成分をポリイミド樹脂(B1)からなる構成としてもよく、この場合であっても銀ペーストのレオロジー特性は好適なものに調整され得る。
【0044】
このようなポリイミド樹脂は、例えば、JFEケミカル株式会社、京セラケミカル株式会社、サビック社製、PI技術研究所製のポリイミド材料のなかから、所望の用途に応じて上記特徴を満たすものを適宜選択して入手することができる。
【0045】
ここで開示される銀ペーストは、樹脂成分として、さらにシリコーン樹脂(B3)を含んでもよい。
シリコーン樹脂(B3)としては、ケイ素(Si)と酸素(O)とからなるシロキサン結合(Si-O-Si)による主骨格を有する高分子有機化合物のうち、分岐鎖を含む高分子有機化合物を用いることができる。すなわち、いわゆるシリコーンオイル、シリコーンラバー、シリコーンレジンと呼ばれるシロキサン化合物のうち、直鎖型のシリコーンオイルを除く、シリコーンラバーおよび/またはシリコーンレジンであってよい。シリコーンゴムは、分岐度(架橋度)が低く、室温(例えば25℃)でゴム弾性を有するエラストマーである。シリコーンレジンは、分岐度(架橋度)が高く、三次元ポリマー構造が発達している。シリコーンラバーとシリコーンレジンのうち、シリコーン樹脂(B3)としてはシリコーンレジンを用いることがより好ましい。シリコーン樹脂(B3)は、室温(例えば25℃)において、固体状であってもよいし、液体状であってもよい。
【0046】
主骨格部分を形成するシリコーン樹脂としては、例えば、一般式:HO[-Si(R)2O-]nH、Rは水素または任意の官能基;で示されるシロキサン単位を含むポリシロキサンや、Rが任意のアルキル基であるポリアルキルシロキサン、または、シロキサン単位とこれとは異なるケイ素含有モノマーとが重合されてなるポリマーであってよい。具体的には、シリコーン樹脂(B3)としては、ポリジメチルシロキサン,ポリジエチルシロキサン,ポリメチルエチルシロキサン等のポリジアルキルシロキサン、ポリアルキルアリールシロキサン、ポリ(ジメチルシロキサン-メチルシロキサン)等が挙げられる。特に好適な主骨格を構成する高分子は、例えば、ポリジメチルシロキサンであり得る。また、シリコーン樹脂(B3)としては、ポリエーテル基、エポキシ基、アミン基、カルボキシル基、アルキル基、水酸基等の他の置換基を主骨格の側鎖、末端、または両者に導入した直鎖変性シリコーンであってもよい。
【0047】
また、シリコーン樹脂には、付加硬化型のシリコーン樹脂と、脱水縮合硬化型のシリコーン樹脂とがあることが知られている。このうち、脱水縮合硬化型のシリコーン樹脂の場合、反応副生成物としての水が形成される電極膜に悪影響を与える虞がある。したがって、必ずしもこれに限定されるものではないが、シリコーン樹脂(B3)としては、付加硬化型のシリコーン樹脂であることがより好ましい。
【0048】
このようなシリコーン樹脂は、例えば、信越化学工業社、旭化成ワッカーシリコーン社製のシリコーンレジンまたはシリコーンゴムから、所望の用途に応じて上記特徴を満たすものを適宜選択して入手することができる。
【0049】
ポリイミド樹脂とシリコーン樹脂とは、ポリイミド樹脂にごく少量でもシリコーン樹脂がブレンドされることで、ポリイミド樹脂の接着性の向上効果を得ることができる。例えば、樹脂成分としてポリイミド樹脂とシリコーン樹脂とが含まれる場合、これらの合計を100質量%としたとき、シリコーン樹脂の割合が、0.5質量%を超過するとよく、1質量%以上であってよく、1.5質量%以上としてもよい。ポリイミド樹脂の優れた特性を発揮させる観点から、シリコーン樹脂の割合は、例えば50質量%以下、30質量%以下、さらには20質量%以下と設定することができる。
【0050】
また、(A)銀粒子100質量部に対する(B)樹脂成分の割合が多いほど、この導電性膜に加えられる外部からの振動や熱衝撃を、より多く緩衝して低減し得るため、好ましい。樹脂成分の割合は、例えば5質量部以上であるとよく、8質量部以上や例えば10質量部以上であるとより好ましい。しかしながら、樹脂成分の割合が過剰な場合は、銀粒子間に存在する樹脂成分が抵抗となり得るために好ましくない。樹脂成分の割合は、例えば30質量部以下であるとよく、25質量部以下が好ましく、例えば20質量部以下であってよい。
【0051】
(C)有機溶剤
有機溶剤としては、上記のポリイミド樹脂を好適に溶解し得る溶剤を特に制限なく用いることができる。有機溶剤は、成膜時の作業性や保存安定性等の観点からは、沸点が概ね200℃以上、例えば200~300℃の高沸点有機溶剤を主成分(50体積%以上を占める成分。)とするとよい。有機溶剤の一好適例としては、ターピネオール、テキサノール、ジヒドロターピネオール、ベンジルアルコール等の、-OH基を有するアルコール系溶剤;エチレングリコール、ジエチレングリコール等の、グリコール系溶剤;ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ブチルカルビトール(ジエチレングリコールモノブチルエーテル)、トリエチレングリコールジメチルエーテル等の、グリコールエーテル系溶剤;イソボルニルアセテート、エチルジグリコールアセテート、ブチルグリコールアセテート、ブチルジグリコールアセテート、ブチルセロソルブアセテート、ブチルカルビトールアセテート(ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセタート)、γ-ブチロラクトン、安息香酸メチル等の、エステル結合基(R-C(=O)-O-R’)を有するエステル系溶剤;トルエン、キシレン等の炭化水素系溶剤;N-メチルピロリドン(NMP)等の非プロトン性極性溶媒、ミネラルスピリット等が挙げられる。なかでも、上記樹脂成分を好適に溶解するとの観点から、NMPやγ-ブチロラクトン等の有機溶剤を好ましく用いることができる。これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を適宜混合して用いることができる。
【0052】
有機溶剤(C)の含有割合は特に限定されないが、銀ペーストの全体を100質量%としたときに、概ね70質量%以下、典型的には5~60質量%、例えば10~50質量%程度であるとよい。上記範囲を満たすことで、ペーストに適度な流動性を付与することができ、成膜時の作業性を向上することができる。また、ペーストのセルフレベリング性を高めて、より滑らかな表面の導電性膜を実現することができる。
【0053】
(D)その他の成分
ここで開示されるペーストは、上記(A)~(C)の成分のみで構成されていてもよく、上記(A)~(C)の成分に加えて、必要に応じて種々の添加成分を含んでいてもよい。添加成分としては、ここに開示される技術の効果を著しく損なわない限りにおいて、一般的な導電性ペーストに使用し得ることが知られているものを適宜用いることができる。
【0054】
添加成分は、無機添加剤(D1)と有機添加剤(D2)とに大別される。無機添加剤(D1)の一例としては、焼結助剤や無機フィラー、ガラスフリット等が挙げられる。無機添加剤(D1)は、平均粒子径が、概ね10nm~10μm程度であり、導電性膜の算術平均粗さRaを小さく抑える観点からは、例えば0.3μm以下であることが好ましい。また、有機添加剤(D2)の一例としては、レベリング剤、消泡剤、増粘剤、可塑剤、pH調整剤、安定剤、酸化防止剤、防腐剤、着色剤(顔料、染料等)等が挙げられる。なお、有機添加剤(D2)は、酸価を有していても良く、酸価を有していなくても良い。添加成分の含有割合は特に限定されないが、銀ペーストの全体を100質量%としたときに、概ね20質量%以下、典型的には10質量%以下、例えば5質量%以下であってもよい。
【0055】
このようなペーストは、上述した材料を所定の含有割合(質量比)となるよう秤量し、均質に撹拌混合することで調製し得る。材料の撹拌混合は、従来公知の種々の攪拌混合装置、例えばロールミル、マグネチックスターラー、プラネタリーミキサー、ディスパー等を用いて行うことができる。また、基材へのペーストの付与は、例えば、チップインディップ法や、ディスペンサー供給法、スクリーン印刷、グラビア印刷、オフセット印刷およびインクジェット印刷等の印刷法、スプレー塗布法等を用いて行うことができる。積層セラミック電子部品の外部電極の樹脂電極層を形成する用途では、例えば、ディップ法が好適である。また、積層セラミック電子部品を基板に実装する際のボンディング用途では、例えば、ディスペンサー供給法が好適である。
【0056】
<ペーストの性能>
(1)耐熱性
ここで開示される銀ペーストは、耐熱性が向上されている。ここで開示される銀ペーストの耐熱性は、例えば下記実施例に記載のとおり、市販の熱重量測定装置を用いて試料の重量減少率(%)を測定し、この結果に基づいて評価することができる。
ここで開示される銀ペーストは、その乾燥膜を試料としたときに、重量減少率が0%以上30%未満であることが好ましい。
【0057】
(2)レオロジー特性
ここで開示される銀ペーストは、導電性膜の形成にとって好適なレオロジー特性を有している。ここで開示される銀ペーストのレオロジー特性を示す指標として、例えば当該銀ペーストの粘度が挙げられる。具体的な粘度の測定方法の一例としては、下記実施例に記載しているとおり、回転粘度計(ブルックフィールド粘度計)を用いた方法が挙げられる。
25℃の環境下において、回転粘度計を用いて回転速度1rpmで測定される銀ペーストの粘度V1(Pa・s)と、回転速度100rpmで測定される銀ペーストの粘度V2(Pa・s)の比(V1/V2)は、1以上18以下であることが好ましい。上記比(V1/V2)は、9以下であることがより好ましい。ここで開示される銀ペーストはこのようなレオロジー特性を実現するように調製されており、かかるレオロジー特性を有することによって、成膜時の作業性が向上されている。
上記のようなレオロジー特性を有する銀ペーストは、特に、導電性膜をディップ法によって形成する場合において好適である。ディップ法によって導電性膜を形成する場合、ペーストのレオロジー特性が適当でないと、例えばツノの発生等、フラットな導電性膜が形成されないことがある。
【0058】
(3)金属層との接着性
ここで開示される銀ペーストは、該銀ペーストを用いて形成した導電性膜と、金属層(典型的には、金属電極層、メッキ層)との接着性が向上されている。金属層との接着性は、例えば下記実施例に記載しているとおり、導電性膜の表面における樹脂浮き率(%)あるいは銀粒子の露出面積率(%)を測定することによって評価することができる。
基材の表面に銀ペーストを塗膜して熱処理を行うことによって得られた導電性膜の表面について、電界放出型走査電子顕微鏡(FE―SEM)を用いた観察(例えば倍率2,000倍)を行い、観察画像を取得する。当該観察画像における樹脂の面積率と銀粒子の面積率を算出する。そして、複数(例えば5以上、10以上、15以上、20以上、25以上、またはそれ以上)の観察画像を取得して上記面積率をそれぞれ算出し、その平均値を得る。当該平均値を樹脂浮き率(%)あるいは銀粒子の露出面積率(%)とする。
上記樹脂浮き率(%)は、70%以下(0%以上70%以下)であることが好ましく、50%以下であることがより好ましく、50%未満であることがさらに好ましい。換言すれば、銀粒子の露出面積率(%)は30%以上(例えば30%超)であることが好ましく、50%以上であることが好ましく、50%より大きいことがさらに好ましい。銀粒子の露出面積率(%)は、典型的には100%以下である。ここで開示される銀ペーストはこのような樹脂浮き率(%)あるいは銀粒子の露出面積率(%)を実現するように調製されており、かかる銀ペーストは、金属層との接着性が顕著に向上されている。
【0059】
<ペーストの用途>
ここに開示される銀ペーストによれば、任意の基材上に耐熱性と接着性とに優れた導電性膜を形成することができる。この導電性膜は、乾燥によって硬化され、未焼成の状態で導電性膜を構成する。そのため、ここで開示されるペーストは、焼成などの温度変化に弱いセラミック電子部品の樹脂電極層等を形成するための銀ペースト等として好ましく用いることができる。その他、セラミック電子部品を基板実装する際に、半田に代わる接着のためのボンディング用導電性樹脂を形成するために用いることもできる。
【0060】
なお、本明細書において、「セラミック電子部品」とは、非晶質のセラミック基材(ガラスセラミック基材)あるいは結晶質(すなわち非ガラス)のセラミック基材を有する電子部品一般を指す用語である。例えば、セラミック製の基材を有するチップインダクタ、高周波フィルター、セラミックコンデンサ、低温焼成積層セラミック基材(Low Temperature Co-fired Ceramics Substrate:LTCC基材)、高温焼成積層セラミック基材(High Temperature Co-fired Ceramics Substrate:HTCC基材)等は、ここでいう「セラミック電子部品」に包含される典型例である。
【0061】
図1は、セラミック電子部品1としての積層セラミックコンデンサ(MLCC)の構成を模式的に示す断面図である。セラミック電子部品1は、典型的には、部品本体10と、部品本体10の対向する一対の端面に形成されている外部電極30とを備えている。
【0062】
部品本体10では、複数の内部電極20が誘電体層12を介して積層されている。各誘電体層12は、例えばセラミック誘電体を含むセラミックグリーンシートの積層焼結体から構成される。実際のMLCCにおいては、誘電体層12の間の接合境界が視認できない程度に一体化されている。ここで、内部電極20の一部は、部品本体10の端面(
図1では左右の端部)に露出されている。
【0063】
外部電極30は、部品本体10の外表面上に配設されている。外部電極30は、基板2の配線3と、半田付け層4を介して接続されている。外部電極30は、部品本体10の対向する一対の端面(
図1では左右の端部)のそれぞれに形成されている。外部電極30は、第1の金属電極層32と、導電性膜(樹脂電極層)34と、第2の金属電極層36と、第3の金属電極層38とを有している。
【0064】
第1の金属電極層32は、卑金属である銅(Cu)を主成分として含有しており、内部電極20と物理的且つ電気的に接続されている。第1の金属電極層32は、部品本体10の左右の一対の端面と、そこに連なる4つの側面の外表面に連続して形成されている。第1の金属電極層32は、Cu粉末を含有する導電性ペーストを、部品本体10の一対の端面およびそこに連なる4つの側面の外表面に、塗布して焼き付けることによって形成されている。第1の金属電極層32の厚みは、例えば、10~30μmである。
【0065】
導電性膜34は、金属(Ag)粉末を導電性粒子として含有しており、ここに開示される銀ペーストを乾燥により硬化させてなる層である。導電性膜34は、第1の金属電極層32の周縁を残して、部品本体10の一対の端面およびそこに連なる4つの側面の外表面に、ここに開示される銀ペーストを塗布して乾燥させることによって形成されている。ここで、乾燥の温度は、使用するイミド樹脂およびシリコーン樹脂によって変わり得るものの、おおよそ180℃以上300℃以下である。導電性膜34の厚みは、例えば、20~100μmである。これによりここに開示される銀ペーストを硬化させて、外部電極30の一部としての導電性膜34を形成することができる。
【0066】
第2の金属電極層36は、NiあるいはNi合金を主成分として含む。第2の金属電極層36は、例えば第1の導電性膜34の表面をNiめっきすることによって形成されている。第2の金属電極層36の厚みは、例えば、1~5μmである。
第3の金属電極層38は、SnあるいはSn合金を主成分として含む。第3の金属電極層38は、第2の金属電極層36の表面をSnまたはSn合金でめっき処理することによって形成されている。第3の金属電極層38の厚みは、例えば、1~5μmである。
【0067】
以上のようにして、セラミック電子部品1を製造することができる。ここで、外部電極30は、部品本体10の両方の端面に露出された内部電極20に電気的に接続されている。これにより、外部から、一方の外部電極30を通じて内部電極20に送られた電流を、そのまま他方の外部電極30に送ることなく、MLCC内に蓄えて絶縁することができる。また、外部負荷に電流を流すときは、MLCC内に蓄えられた電荷が、順次、外部電極30を通じて外部回路に送られる。このとき、MLCCがあることによって、電源電圧が不安定な場合であっても、安定して外部回路に電荷を供給することができる。このようなMLCCは、外部電極30に高耐熱性と接着性とに優れた導電性膜34を含む。このことにより、MLCCが搭載された電子機器が、連続走行する車両等の高温環境に晒されて、MLCCが実装された基板が撓んだ場合であっても、導電性膜34が第2の金属電極層36に密着性よく接着し、例えばかかる撓みを緩衝し、部品本体10との電気的接続を安定して維持することができる。これにより、高温環境においても高い信頼性を有するセラミック電子部品1が提供される。
なお、かかる銀ペーストは、セラミック電子部品1(積層セラミック部品、MLCC)を基板2に実装する場合のボンディングペーストとしても利用できる。
【0068】
以下、本発明に関するいくつかの実施例を説明するが、本発明を係る実施例に示すものに限定することを意図したものではない。
【0069】
<銀ペーストの作製>
下記実施例および比較例に係る銀ペーストを作製するための材料として、銀粒子と、樹脂成分と、有機溶剤とを準備した。
銀粒子としては、表1に示す7種類の銀粒子を用意した。なお、銀粒子のタップ密度、比表面積、平均粒子径(D50)は、下記の手順で測定した。
【0070】
【0071】
[タップ密度]
各銀粒子を20g(20.00±0.02g)ずつ秤量し、容量20mLのメスシリンダーに投入したのち、タッピング装置(セイシン企業社製、タップデンサーKYT-4000)によりタップした。タッピングの条件は、タップ高さ:5cm、タップ速度:120回/min、タップ回数:1000回とした。そしてタップ後の粉末体積を測定し、銀粒子の質量をタップ後の粉末体積(見かけ体積)で除することでタップ密度を算出した。なお、タップ密度の測定は、JIS Z2512:2012に規定される金属粉-タップ密度測定方法に準じて行った。
【0072】
[比表面積]
各銀粒子の比表面積を、自動比表面積・細孔分布測定装置((株)マウンテック製、Macsorb HM model-1210)を用いて測定した。吸着ガスとしては、窒素ガスを用いた。また、比表面積は、BET1点法により算出した。
[平均粒子径]
各銀粒子の平均粒子径を、レーザ回折・散乱式粒度分布測定装置(株式会社堀場製作所製、LA-920)を用いて測定した。平均粒子径は、粒度分布測定により得られた体積基準の粒度分布における累積50%粒子径とした。
【0073】
樹脂成分としては、以下に示される3種類のポリイミド樹脂と、シリコーン樹脂と、ブチラール樹脂とを用意した。
「ポリイミド樹脂1」:溶剤可溶型フッ素含有ポリイミド樹脂(Td5:460℃、Mw:33,000)
「ポリイミド樹脂2」:溶剤可溶型ポリエーテルイミド樹脂(Td5:450℃、Mw:63,000)
「ポリイミド樹脂3」:熱硬化型ポリイミド樹脂(Td5:440℃、Mw:950)
「シリコーン樹脂」:付加硬化型シリコーンレジン(Mw:2500)
「ブチラール樹脂」:ブチラール樹脂(Mw:200,000)
溶剤としては、γ-ブチロラクトンを用意した。
【0074】
実施例1~12
表2に示す配合で、導電性粒子と、樹脂成分とを混合し、実施例1~12に係る銀ペーストをそれぞれ作製した。
比較例1~9
表2に示す配合で、導電性粒子と、樹脂成分とを混合し、比較例1~9に係る銀ペーストをそれぞれ作製した。
なお、実施例1~12および比較例1~9に係る銀ペーストの調製において、有機溶剤としてγ-ブチロラクトンを使用した。各例におけるγ-ブチロラクトンの使用量は、銀ペーストの粘度に合わせて調整した。
【0075】
<接着性の評価>
上記各実施例および比較例に係る銀ペーストの導電性膜と金属層との接着性を、導電性膜の表面における銀粒子の露出度に基づいて評価した。
具体的には、用意した各例の銀ペーストを、硬化後の膜厚(即ち、乾燥膜の膜厚)が30μm程度となるようにアプリケータで基材の表面に塗膜した。銀ペーストを塗膜した基材を、130℃で15分間乾燥させた。
次いで、実施例1~12および比較例1~8に係る銀ペーストを塗膜した基材については、180℃で30分間、次いで、280℃で45分間の熱処理を行い、銀ペーストを硬化させ、乾燥膜(硬化膜)を得た。比較例9に係る銀ペーストを塗膜した基材については、200℃で30分間の熱処理を行い、銀ペーストを硬化させ乾燥膜を得た。
このようして得られた硬化膜を、2cm×2cm程度に切り出し、FE-SEM観察を行った。観察条件は、加速電圧1kV、倍率2000倍であった。画像解析ソフトを用いて、観察画像における銀の露出面積、および銀の露出面積を除く部分の面積(樹脂部分の面積)をそれぞれ算出した。全体の面積を100%としたときの樹脂部分の面積率(%)を「樹脂浮き率(%)」として算出した。20視野のFE-SEM観察を行い、その平均値を得た。
【0076】
上記結果に基づき、下記の指標で評価を行った。結果を、表2の「接着性」の欄に示す。
「◎」:樹脂浮き率(%)が50%以下であった。
「〇」:樹脂浮き率(%)が50%より大きく、かつ、70%以下であった。
「△」:樹脂浮き率(%)が70%より大きく、かつ、80%以下であった。
「×」:樹脂浮き率(%)が80%より大きかった。
なお、「◎」と評価されたFE-SEM観察画像の例を
図2に示す。「〇」と評価されたFE-SEM観察画像の例を
図3に示す。「△」と評価されたFE-SEM観察画像の例を
図4に示す。「×」と評価されたFE-SEM観察画像の例を
図5に示す。
【0077】
<レオロジー特性の評価>
上記各実施例および比較例に係る銀ペーストのレオロジー特性を評価した。
具体的には、ブルックフィールド粘度計(ブルックフィールド社製、DV-III ULTRA スピンドルSC4-14)を用いて、各々の銀ペーストについて、25℃の環境下において、銀ペースト中で回転子を回転速度1rpmで回転させたときの粘度V1(mPa.s)および回転速度100rpmで回転させたときの粘度V2(mPa.s)を測定し、比(V1/V2)を算出した。
【0078】
上記結果に基づき、下記の指標でレオロジー特性を評価した。結果を、表2の「レオロジー特性」の欄に示す。
「◎」:比(V1/V2)が1以上9以下であった。
「〇」:比(V1/V2)が9より大きく、かつ、18以下であった。
「△」:比(V1/V2)が18より大きく、かつ、26以下であった。
「×」:比(V1/V2)が26より大きかった。
【0079】
<耐熱性の評価>
上記各実施例および比較例に係る銀ペーストを用いて作製した導電性膜(乾燥膜)の耐熱性を評価した。
具体的には、上記「接着性の評価」に記載の方法で各例に係る銀ペーストの乾燥膜を得た。熱重量測定装置(リガク社製品、TG-DTA/H)を用い、約15mgの該乾燥膜を試料として、300℃で2時間保持した時の重量減少率(%)を測定した。
【0080】
上記結果に基づき、下記の指標で耐熱性を評価した。結果を、表2の「耐熱性」の欄に示す。
「〇」:重量減少率が0%以上30%未満であった。
「△」:重量減少率が30%以上40%未満であった。
「×」:重量減少率が40%以上であった。
【0081】
【0082】
実施例1~12は、銀粒子の種類および含有量と、ポリイミド樹脂の種類および含有量とを変化させて銀ペーストを作製した例である。
実施例1~12の銀ペーストを用いて得られる導電性膜は、例えば300℃まで加熱保持した時の重量減少率が30%未満と少なく、少なくとも300℃における耐熱性を備えることが確認された。実施例1~12の銀ペーストはレオロジー特性に優れていた。実施例1~12の銀ペーストを用いて作製した乾燥膜では、樹脂浮き率が減少しており、適度に銀粒子が露出していることがわかった。
銀ペーストに、タップ密度が3g/cm3以上の銀粒子(Ag4~Ag7)を含ませ、その含有割合を大きくしていくと、乾燥膜において好適な銀粒子の露出度を維持しつつ、銀ペーストのレオロジー特性を向上させることができるとわかった。
【0083】
樹脂成分全体におけるポリイミド樹脂1またはポリイミド樹脂2の含有割合を大きくしていくと、銀ペーストのレオロジー特性と該銀ペーストを用いて作製した導電性膜の接着性とが向上する傾向にあった。
【0084】
実施例7,8,9を比較すると、樹脂成分にシリコーン樹脂を含ませると、銀ペーストのレオロジー特性の向上効果がより高められることがわかった。樹脂成分としてポリイミドの単体を含む導電性膜は比較的剛性が高いが、シリコーン樹脂がポリイミド樹脂の分子間に入り込むと、ポリイミド樹脂に適度な粘性が実現され得る。
さらに、樹脂成分や銀粒子の組成を調製することで、導電性膜の接着性が向上することが確認された(実施例12)。
【0085】
これに対し、比較例1,3~6に示されるように、タップ密度が3g/cm3未満の銀粒子が所定範囲の含有量で含まれない銀ペーストを用いて作製された乾燥膜では、良好なレオロジー特性と、好ましい銀粒子の露出度の両立は実現されなかった。比較例2,9に示されるように、銀ペーストに重量平均分子量が30,000以上であるポリイミド樹脂が所定量含まれないと、良好なレオロジー特性は実現されなかった。比較例7,8に示されるように、銀粒子100質量部に対して樹脂成分が5質量部以上20質量部以下の割合とならないと、良好なレオロジー特性と、好ましい銀粒子の露出度の両立は実現されなかった。
【0086】
以上より、タップ密度が3g/cm3未満、比表面積が1m2/g以上、かつ、平均粒子径が3μm以上である、銀粒子を含み、銀粒子の全量を100質量%としたときに、当該銀粒子の含有割合は5%以上60%以下であり、樹脂成分として、Td5が300℃以上であり、かつ、重量平均分子量が30,000以上である、ポリイミド樹脂を含み、樹脂成分の全量を100質量%としたときに、該ポリイミド樹脂の含有割合が50質量%以上100質量%以下であり、銀粒子100質量部に対して樹脂成分は5質量部以上20質量部以下の割合で含まれる銀ペーストは、耐熱性を有し、優れたレオロジー特性、および、高い導電性膜の接着性の両立を実現することができる。
【0087】
以上、本発明を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、本発明はその主旨を逸脱しない範囲で種々変更を加え得るものである。
【符号の説明】
【0088】
1 セラミック電子部品
2 基板
3 配線
4 半田付け層
10 部品本体
20 内部電極
30 外部電極
32 第1の金属電極層
34 導電性膜
36 第2の金属電極層
38 第3の金属電極層