(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-26
(45)【発行日】2024-04-03
(54)【発明の名称】SCR触媒コンバータ、排ガス後処理システム及び内燃機関
(51)【国際特許分類】
F01N 3/08 20060101AFI20240327BHJP
F01N 3/28 20060101ALI20240327BHJP
B01D 53/86 20060101ALI20240327BHJP
B01D 53/94 20060101ALI20240327BHJP
【FI】
F01N3/08 B ZAB
F01N3/28 301C
F01N3/28 301U
B01D53/86 222
B01D53/94 400
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020058278
(22)【出願日】2020-03-27
【審査請求日】2022-11-25
(31)【優先権主張番号】10 2019 108 091.6
(32)【優先日】2019-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】510153962
【氏名又は名称】マン・エナジー・ソリューションズ・エスイー
【氏名又は名称原語表記】MAN ENERGY SOLUTIONS SE
【住所又は居所原語表記】Stadtbachstr.1 86153 Augsburg,GERMANY
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】プラーメン・トシェフ
(72)【発明者】
【氏名】フランシス・ナナ
【審査官】畔津 圭介
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0178263(US,A1)
【文献】特開2014-66219(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 3/08
F01N 3/28
B01D 53/86
B01D 53/94
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の排ガス後処理システム(3)、すなわちSCR排ガス後処理システムのためのSCR触媒コンバータ(9)であって、
前記SCR触媒コンバータ(9)は、排ガスが貫流可能であるハニカム構造体(25)のための支持構造(24)を有しており、前記
ハニカム構造体(25)は、金属製のハウジング(26)によって部分的に包囲されており、
前記支持構造(24)は、第1の開口部(31)を有する第1のプレート状の支持体(27)と、第2の開口部(32)を有する第2のプレート状の支持体(28)と、前記支持体(27、28)の間に延在するブレース(29)と、を有しており、前記ブレースは、共に、前記ハニカム構造体(25)のための受容領域(30)を画定しており、
前記ハニカム構造体(25)のそれぞれは、前記ハウジング(26)それぞれによって包囲された前記ハニカム構造体(25)よりも大きな横断面面積を有する、前記第1の支持体(27)の前記第1の開口部(31)を備え、前記ハニカム構造体(25)それぞれのための前記受容領域(30)それぞれに導入可能であり、前記第2の支持体(28)の前記第2の開口部(32)それぞれは、前記ハウジング(26)それぞれによって包囲された前記ハニカム構造体(25)よりも小さい横断面面積を有しているので、前記ハニカム構造体(25)それぞれは、専ら前記第1の開口部(31)それぞれを通じて、前記受容領域(30)それぞれに導入可能であると共に、前記受容領域(30)それぞれから取り出し可能であり、
前記受容領域(30)それぞれに配置された前記ハニカム構造体(25)を、前記支持構造(24)内に固定するために、1つ以上の前記ハニカム構造体(25)のための枠状保持手段(33)が、前記第1の支持体(27)と接続されている、SCR触媒コンバータ(9)。
【請求項2】
前記枠状保持手段(33)が、前記ハニカム構造体(25)それぞれの前記ハウジング(26)を覆っており、前記枠状保持手段と、前記ハニカム構造体それぞれの前記ハウジングと、の間には、シール要素(36)が配置されていることを特徴とする、請求項1に記載のSCR触媒コンバータ。
【請求項3】
前記枠状保持手段(33)と、前記ハニカム構造体(25)の前記ハウジング(26)と、の間の前記シール要素(36)それぞれが、ガラス繊維材料から成るシールコードであることを特徴とする、請求項2に記載のSCR触媒コンバータ。
【請求項4】
前記枠状保持手段(33)それぞれが、固定ネジ又は固定ボルト(34)を通じて、前記第1の支持体(27)と接続されており、前記固定ネジ又は固定ボルト(34)の少なくともいくつかは、前記第1のバネ要素(35)を貫いて延在しており、前記第1のバネ要素は、第1の端部で前記枠状保持手段(33)に、かつ、第2の端部で前記固定ネジ又は固定ボルト(34)それぞれに支持されていることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載のSCR触媒コンバータ。
【請求項5】
前記固定ネジ又は固定ボルト(34)それぞれが、前記第1のバネ要素(35)を貫いて延在していることを特徴とする、請求項4に記載のSCR触媒コンバータ。
【請求項6】
前記第2の支持体(28)と、前記ハウジングによって包囲された前記ハニカム構造体(25)と、の間には、第2のバネ要素(37)が配置されていることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載のSCR触媒コンバータ。
【請求項7】
前記第2のバネ要素(37)が、第1の端部で前記第2の支持体(28)に、かつ、第2の端部で前記ハニカム構造体(25)それぞれの前記ハウジング(26)に支持されていることを特徴とする、請求項6に記載のSCR触媒コンバータ。
【請求項8】
内燃機関の排ガス後処理システム(3)、すなわちSCR排ガス後処理システムであって、
反応チャンバ(10)内に受容されたSCR触媒コンバータ(9)と、
前記反応チャンバ(10)に、及び、従って前記SCR触媒コンバータ(9)に至る排ガス供給管(8)、並びに、前記反応チャンバ(10)から、及び、従って前記SCR触媒コンバータ(9)から遠ざかる排ガス排出管(11)と、
還元剤を排ガスに導入するための、前記排ガス供給管(8)に配設された導入装置(16)と、
前記排ガスに前記還元剤を、前記反応チャンバ(10)又は前記SCR触媒コンバータ(9)の上流において混合するための、前記排ガス供給管(8)から、前記導入装置(16)の下流に供給された混合区間(18)と、を有する排ガス後処理システムにおいて、
前記SCR触媒コンバータ(9)が、請求項1から7のいずれか一項に従って構成されていることを特徴とする排ガス後処理システム(3)。
【請求項9】
請求項8に記載の排ガス後処理システム(3)を有する、内燃機関(1)。
【請求項10】
高圧タービン(6)を含む第1の排ガスターボチャージャ(4)と、低圧タービン(7)を含む第2の排ガスターボチャージャ(5)と、を備えた多段排ガス過給システム(2)を有しており、前記排ガス後処理システム(3)は、前記高圧タービン(6)と前記低圧タービン(7)との間に接続されていることを特徴とする、請求項9に記載の内燃機関。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の排ガス後処理システムのためのSCR触媒コンバータに関する。本発明はさらに、SCR触媒コンバータを有する排ガス後処理システムと、排ガス後処理システムを有する内燃機関と、に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば発電所において用いられるような定置された内燃機関における燃焼プロセス、及び、例えば船舶において用いられるような定置されていない内燃機関における燃焼プロセスでは、窒素酸化物が発生し、これらの窒素酸化物は、典型的には、石炭、瀝青炭、褐炭、石油、重油、又は、ディーゼル燃料、のような硫黄を含有する化石燃料の燃焼に際して発生する。従って、このような内燃機関には、内燃機関から排出される排ガスの浄化、特に脱窒に用いられる排ガス後処理システムが配設されている。
【0003】
排ガス中の窒素酸化物を還元するために、実践から知られた排ガス後処理システムでは、まず第一に、いわゆるSCR触媒コンバータが使用される。SCR触媒コンバータでは、窒素酸化物の選択的触媒還元が行われ、窒素酸化物の還元のために、還元剤としてアンモニア(NH3)が必要とされる。このために、アンモニア又はアンモニア前駆物質である尿素等は、SCR触媒コンバータの上流で、液体の形において排ガスに導入され、アンモニア又はアンモニア前駆物質は、SCR触媒コンバータの上流において、排ガスと混合される。このために、実践によると、アンモニア又はアンモニア前駆物質の導入部とSCR触媒コンバータとの間に、混合区間が設けられている。
【0004】
実践から知られたSCR触媒コンバータと、SCR触媒コンバータを含む、実践から知られた排ガス後処理システムと、を用いて、排ガス後処理、特に窒素酸化物の還元が、すでに成功裏に実施可能ではあるが、SCR触媒コンバータ及び排ガス後処理システムをさらに改善する必要性が存在する。特に、このようなSCR触媒コンバータ及び排ガス後処理システムの構造を小型化する必要性が存在する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような必要性を基点にして、本発明の課題は、新型のSCR触媒コンバータと、内燃機関の新型の排ガス後処理システムと、このような排ガス後処理システムを有する内燃機関と、を創出することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本課題は、請求項1に記載の内燃機関の排ガス後処理システムのためのSCR触媒コンバータによって解決される。本発明に係るSCR触媒コンバータは、排ガスが貫流可能であるハニカム構造体のための支持構造を有しており、当該支持構造は、金属製のハウジングによって部分的に包囲されている。当該支持構造は、第1の開口部を有する第1のプレート状の支持体と、第2の開口部を有する第2のプレート状の支持体と、当該支持体の間に延在するブレースと、を有しており、当該ブレースは、共に、ハニカム構造体のための受容領域を画定している。各ハニカム構造体は、各ハウジングによって包囲されたハニカム構造体よりも大きな横断面面積を有する第1の支持体の各第1の開口部を通じて、各ハニカム構造体のための各受容領域に導入可能であり、第2の支持体の各第2の開口部は、各ハウジングによって包囲されたハニカム構造体よりも小さい横断面面積を有しているので、各ハニカム構造体は、専ら各第1の開口部を通じて、各受容領域に導入可能であると共に、各受容領域から取り出し可能である。各受容領域に配置されたハニカム構造体を、支持構造内に固定するために、1つ以上のハニカム構造体のための枠状保持手段が、第1の支持体と接続されている。
【0007】
このようなSCR触媒コンバータは、小型な構造を特徴としている。各ハニカム構造体は、小型な構造の場合、容易かつ確実に、SCR触媒コンバータの支持構造に取り付けられ得る。必要な場合には、各ハニカム構造体は、交換され得る。
【0008】
有利なさらなる発展形態によると、各枠状保持手段は、固定ネジ又は固定ボルトを通じて、第1の支持体と接続されており、少なくともいくつか、好ましくは全ての固定ネジ又は固定ボルトは、第1のバネ要素を貫いて延在しており、第1のバネ要素は、第1の端部で、枠状保持手段に、かつ、第2の端部で、各固定ネジ又は各固定ボルトに支持されている。第2の支持体と、ハウジングによって包囲されたハニカム構造体と、の間には、好ましくは第2のバネ要素が配置されており、第2のバネ要素は、第1の端部で、第2の支持体に、かつ、第2の端部で、各ハニカム構造体のハウジングに支持されている。これらのさらなる発展形態は、SCR触媒コンバータの小型構造の提供に役立つ。当該特徴のさらなる利点は、支持構造及びハニカム構造体の領域における、熱に起因する長さの変化が補償され得ることにある。
【0009】
有利なさらなる発展形態によると、枠状保持手段は、各ハニカム構造体のハウジングを覆っており、枠状保持手段と、各ハニカム構造体のハウジングとの間には、シール要素が配置されており、当該シール要素は、好ましくは、ガラス繊維材料から成るシールコードである。このようなシール要素は、小型構造の提供を支援する。特に、バネ要素との組み合わせで、シール要素は、熱に起因する長さの変化が生じた場合にも、支持構造及びハニカム構造体の領域において、SCR触媒コンバータのハニカム構造体の良好な密閉を保証する。
【0010】
本発明に係る排ガス後処理システムは、請求項8に規定されている。本発明に係る内燃機関は、請求項9に規定されている。
【0011】
本発明の好ましいさらなる発展形態は、従属請求項及び以下の説明から明らかになる。本発明の実施例を、図面を用いて詳細に説明するが、それに限定されるものではない。示されているのは以下の図である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】排ガス後処理システムを有する内燃機関の概略的斜視図である。
【
図2】
図1の排ガス後処理システムの詳細を示す図である。
【
図3】SCR触媒コンバータの領域における、
図1及び
図2の排ガス後処理システムの詳細を示す図である。
【
図4】SCR触媒コンバータの領域における、排ガス後処理システムのさらなる詳細を示す図である。
【
図5】SCR触媒コンバータの部分的横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、排ガス後処理システムのためのSCR触媒コンバータと、内燃機関、例えば発電所内の定置された内燃機関、又は、船舶において用いられるような定置されていない内燃機関の排ガス後処理システムと、に関する。特に、当該排ガス後処理システムは、重油で動作する船舶用ディーゼル内燃機関で用いられる。
【0014】
図1は、排ガス過給システム2及び排ガス後処理システム3を有する内燃機関1の配置を示している。内燃機関1は、定置されていない内燃機関、又は、定置された内燃機関であってよいが、特に定置されずに運転される船舶用内燃機関である。
【0015】
内燃機関1のシリンダから離れた排ガスは、排ガス過給システム2において、排ガスの熱エネルギーから、内燃機関1に供給されるべき給気を圧縮するための力学的エネルギーを得るために用いられる。
【0016】
図1は、排ガス過給システム2を有する内燃機関1を示しており、排ガス過給システム2は、複数の排ガスターボチャージャ、つまり第1の、高圧側排ガスターボチャージャ4と、第2の、低圧側ターボチャージャ5と、を含んでいる。内燃機関1のシリンダから離れた排ガスは、まず、第1の排ガスターボチャージャ4の高圧タービン6を通って流れ、高圧タービン6内で膨張し、その際に得られたエネルギーは、第1の排ガスターボチャージャ4の高圧圧縮機内で、給気を圧縮するために用いられる。排ガスの流れる方向に見て、第1の排ガスターボチャージャ4の下流には、第2の排ガスターボチャージャ5が配置されており、第2の排ガスターボチャージャ5を通って、第1の排ガスターボチャージャ4の高圧タービン6をすでに貫流した排ガスが導かれ、すなわち第2の排ガスターボチャージャ5の低圧タービン7を通るように導かれる。第2の排ガスターボチャージャ5の低圧タービン7内で、排ガスはさらに膨張し、その際に得られたエネルギーは、第2の排ガスターボチャージャ5の低圧圧縮機内で、同様に内燃機関1のシリンダに供給されるべき給気を圧縮するために用いられる。
【0017】
両方の排ガスターボチャージャ4及び5を有する排ガス過給システム2に加えて、内燃機関1は、排ガス後処理システム3を含んでおり、排ガス後処理システム3は、SCR排ガス後処理システムである。SCR排ガス後処理システム3は、好ましくは第1の圧縮機5の高圧タービン6と、第2の排ガスターボチャージャ5の低圧タービン7との間に接続されているので、第1の排ガスターボチャージャ4の高圧タービン6を離れた排ガスは、第2の排ガスターボチャージャ5の低圧タービン7の領域に到達する前に、まずSCR排ガス後処理システム3を通るように導かれ得る。
【0018】
図1には、排ガス後処理システム3が、内燃機関1の上方に直立して配置されている。排ガス後処理システム3は、代替的に、例えば内燃機関1の上方又は横に、水平に配置されていてもよい。
【0019】
図1は、排ガス供給管8を示しており、排ガス供給管8を通って、排ガスが、第1の排ガスターボチャージャ4の高圧タービン6から、反応チャンバ10内に配置されたSCR触媒コンバータ9の方向に誘導され得る。
【0020】
さらに、
図1は、排ガス排出管11を示しており、排ガス排出管11は、SCR触媒コンバータ9から、第2の排ガスターボチャージャ5の低圧タービン7の方向に排ガスを排出するために用いられる。低圧タービン7から、排ガスは、導管21を通って、特に屋外へと流れる。
【0021】
反応チャンバ10に、従って反応チャンバ10内に配置されたSCR触媒コンバータ9に至る排ガス供給管8、及び、反応チャンバ10から、従ってSCR触媒コンバータ9から遠ざかる排ガス排出管11は、バイパス12を通じて連結されており、バイパス12には、遮断要素13が組み込まれている。遮断要素13が閉じている場合、バイパス12は閉じているので、バイパス12を通って排ガスが流れることはできない。これに対して、遮断要素13が開いている場合、排ガスは、バイパス12を通り、反応チャンバ10を通過して、従って反応チャンバ10内に配置されたSCR触媒コンバータ9を通過して流れることができる。
図2は、矢印14で、バイパス12が遮断要素13によって閉じられている場合の、排ガス後処理システム3を通る排ガスの流れを明らかにしており、
図2からは、排ガス供給管8が、下流側端部15で、反応チャンバ10内に開口していることが認識可能であり、排ガス供給管8の当該端部15の領域における排ガスは、約180°又は180°に近い角度において流れる方向を転換しており、排ガスは、流れを方向転換した後で、SCR触媒コンバータ9を通るように誘導される。
【0022】
排ガス後処理システム3の排ガス供給管8には、導入装置16が配設されており、当該導入装置によって、排ガスフローに、特にアンモニア又はアンモニア前駆物質等の、SCR触媒コンバータ9の領域において、排ガスの窒素酸化物を決められた通り変換するために必要な還元剤が導入され得る。排ガス後処理システム3の導入装置16は、好ましくは噴射ノズルであり、当該噴射ノズルによって、アンモニア又はアンモニア前駆物質が、排ガス供給管8内で排ガスフローに注入される。
図2は、円錐17によって、排ガス供給管8の領域における排ガスフローへの還元剤の注入を示している。排ガスの流れる方向に見て、導入装置16の下流かつSCR触媒コンバータ9の上流に位置している排ガス後処理システム3の区間は、混合区間と称される。特に、排ガス供給管8は、導入装置16の下流において、混合区間18を供給しており、当該混合区間においては、排ガスが、SCR触媒コンバータ9の上流において、還元剤と混合され得る。
【0023】
排ガス供給管8は、下流側端部15で、反応チャンバ10内に開口している。この排ガス供給管8の下流側端部15には、バッフル要素20が配設されており、バッフル要素20は、排ガス供給管8の下流側端部15に対して変位可能である。図示された例では、バッフル要素20は、反応チャンバ10内に開口している排ガス供給管8の端部15に対して、直線的に変位可能である。バッフル要素20は、排ガス供給管8の下流側端部15に対して変位可能であり、それによって、排ガス供給管8が下流側端部15で遮断されるか、又は、排ガス供給管8が下流側端部15で開放される。バッフル要素20が、排ガス供給管8を、下流側端部15で遮断する場合、好ましくは、排ガスを完全に、SCR触媒コンバータ9又はSCR触媒コンバータ9を受容する反応チャンバ10を通過させるために、バイパス12の遮断要素13が開かれる。バッフル要素20が、排ガス供給管8の下流側端部15を開放する場合、バイパス12の遮断要素13は、完全に閉じられるか、又は、少なくとも部分的に開かれていてよい。
【0024】
バッフル要素20が、排ガス供給管8の下流側端部15を開放する場合、バッフル要素20の、排ガス供給管8の下流側端部15に対する相対位置は、特に排ガス供給管8を通る排ガス質量流量、及び/又は、排ガス供給管8内の排ガスの排ガス温度、及び/又は、導入装置16によって排ガスフローに導入される還元剤の量に依存する。
【0025】
排ガス供給管8の下流側端部15が開放されている場合におけるバッフル要素20のさらなる機能は、場合によっては排ガスフロー内に存在する液状還元剤の液滴が、バッフル要素20に到達し、バッフル要素20において捕集され、噴霧され、それによって、このような液状還元剤の液滴が、SCR触媒コンバータ9の領域に到達することが回避されることにある。下流側端部15が開放されている場合におけるバッフル要素20の、排ガス供給管8の下流側端部15に対する相対位置を通じて、特に、排ガス供給管8の下流側端部15の領域において、バッフル要素20の領域で方向転換される排ガスを、SCR触媒コンバータ9の径方向内側に位置するセクションの方向により強く、又は、SCR触媒コンバータ9の径方向外側に位置するセクションの方向により強く誘導する若しくは方向付けるかが決定され得る。
【0026】
バッフル要素20は、好ましくは、排ガス供給管8に対向する面20aにおいて、排ガスのための流路を形成しながら湾曲しており、好ましくは鐘状に湾曲している。従って、排ガス供給管8の下流側端部15に対向するバッフル要素20の面20aは、バッフル要素20の径方向内側部分において、その径方向外側部分におけるよりも、排ガス供給管8の下流側端部15に対して小さい間隔を有している。従って、バッフル要素20は、面20aの中心で、排ガス供給管8の下流側端部15の方向において、排ガスの流れる方向に反して引っ込んでいるか、又は、湾曲している。
【0027】
すでに述べたように、排ガス供給管8は、その下流側端部15で、SCR触媒コンバータ9を受容する反応チャンバ10内に開口している。その際、
図2によると、排ガス供給管8は、SCR触媒コンバータ9のリセスを貫通し、その下流側端部15で、反応チャンバ10の上側の面23に隣接して終端しており、すでに述べたように、排ガス供給管を下流側端部15で離れる排ガスは、その後でSCR触媒コンバータ9を通って流れる前に、180°方向を転換される。
【0028】
SCR触媒コンバータ9は、複数のハニカム構造体25のための支持構造24を有している。その際、図示された実施例では、ハニカム構造体25は、好ましくは長方形の横断面を有しており、ハニカム構造体25は、ハニカムとも呼ばれる。ハニカム構造体25は、動作中に排ガスによって貫流され、排ガスは、ハニカム構造体25の第1の端面において、ハニカム構造体25に流入し、反対側の第2の端面において、ハニカム構造体25から流出する。端面の間に延在するハニカム構造体25の長側面において、ハニカム構造体25は、金属製のハウジングによって部分的に包囲されており、この金属製のハウジング26は、キャニングとも呼ばれる。
【0029】
図3に詳細に示されたSCR触媒コンバータ9の支持構造24は、第1のプレート状支持体27、第2のプレート状支持体28、及び、これらのプレート状支持体27、28の間に延在するブレース29を有しており、当該ブレースは共に、SCR触媒コンバータ9のハニカム構造体25のための受容領域30を画定している。
【0030】
SCR触媒コンバータ9の支持構造24の第1の支持体27は、第1の開口部31を有している。第1の開口部31は、各ハウジング26によって包囲されたハニカム構造体25よりも大きい横断面を有しているので、金属製のハウジング26によって部分的に包囲されたハニカム構造体25のそれぞれは、第1の開口部31を通って、各受容領域30に導入され得る。
【0031】
支持構造24の第2の支持体28は、第2の開口部32を有しており、第2の開口部32の横断面面積は、ハウジングによって包囲されたハニカム構造体25の横断面面積よりも小さい。従って、各ハウジング26によって包囲されているハニカム構造体25は、専ら各第1の開口部31を通って、各ハニカム構造体25のための各受容領域30に導入されるか、又は、各受容領域30から取り出され得るが、各第2の開口部32を通じてではない。
【0032】
受容領域30にはめ込まれたハニカム構造体25を、支持構造24に固定するために、枠状保持手段33が用いられ、各枠状保持手段33は、1つ以上のハニカム構造体25の支持構造24への固定のために用いられる。特に、各枠状保持手段33は、複数のハニカム構造体25を支持構造24へ共に固定するために用いられる。
【0033】
各枠状保持手段33は、支持構造24の第1の支持体27と、固定ネジ又は固定ボルト34を通じて接続されており、各枠状保持手段33は、各ハニカム構造体25のハウジング26を、第1のプレート状支持体27の領域において覆っている。
【0034】
固定ネジ34は、第1のバネ要素35を貫いて延在しており、各第1のバネ要素35は、第1の端部で、枠状保持手段33に、かつ、反対側の第2の端部で、各固定ネジ又は各固定ボルト34に支持されている。動作中に例えば、熱に起因する長さの変化が、支持構造24又はハニカム構造体25の領域において生じた場合、長さの変化は、第1のバネ要素25を通じて、補償され得る。
【0035】
すでに述べたように、各枠状保持手段33は、各保持手段33によって支持構造24に固定された1つ又は各ハニカム構造体25のハウジング26を覆っており、枠状保持手段33と各ハニカム構造体25のハウジング26との間には、シール要素36が配置されている。当該シール要素36は、好ましくはガラス繊維材料から成るシールコードである。
【0036】
支持構造24の第2の支持体28と、ハニカム構造体25、すなわちハニカム構造体25のハウジング26との間には、第2のバネ要素37が位置しており、第2のバネ要素37は、第1の端部で、支持構造24の第2の支持体28に、第2の端部で、各ハニカム構造体25のハウジング26に支持されている。この第2のバネ要素37は、ハニカム構造体25又はそのハウジング26を、シール要素36に対して、枠状保持手段33の方向に押し付ける。この第2のバネ要素37によっても、熱に起因する長さの変化が補償され得る。
【0037】
SCR触媒コンバータ9は、従って、複数のハニカム構造体25を受容する支持構造24を有しており、各ハニカム構造体25は、部分的に、金属製のハウジング26によって包囲されており、その際、ハニカム構造体25の端面は開放されており、当該端面を通って、排ガスは、各ハニカム構造体25に流入、又は、各ハニカム構造体25から流出する。
【0038】
支持構造24は、ブレース29によって互いに離間した、互いに対して平行に延在するプレート状の支持体27及び28を有しており、当該支持体は、開口部31及び32を有している。ハニカム構造体25は、第1の支持体27の第1の開口部31を通って、各受容領域30に導入され、次に、枠状保持手段33を通じて、支持構造24に固定され得る。
【0039】
その際、枠状保持手段33は、それぞれ好ましくは、複数のハニカム構造体25の固定に用いられ、各保持手段33は、各ハニカム構造体25のハウジング26を、第1の支持体27の領域において覆っている。
【0040】
各保持手段33と、各保持手段33によって固定された1つ又は各ハニカム構造体25との間には、好ましくはシール要素36が配置されている。第1のバネ要素35と第2のバネ要素37とは、熱に起因する長さの変化の補償に用いられ、第1のバネ要素35は、各枠状保持手段33及び固定ネジ又は固定ボルト34に支持されており、第2のバネ要素37は、SCR触媒コンバータ9又は支持構造24又はハニカム構造体25の反対側の面において、一方ではハニカム構造体25に、他方では第2のプレート状支持体28に支持されている。
【符号の説明】
【0041】
1 内燃機関
2 排ガス過給システム
3 排ガス後処理システム
4 排ガスターボチャージャ
5 排ガスターボチャージャ
6 高圧タービン
7 低圧タービン
8 排ガス供給管
9 SCR触媒コンバータ
10 反応チャンバ
11 排ガス排出管
12 バイパス
13 遮断要素
14 排ガス流路
15 端部
16 導入装置
17 噴射円錐
18 混合区間
19 壁
20 バッフル要素
21 導管
22 面
23 面
24 支持構造
25 ハニカム構造体
26 ハウジング
27 支持体
28 支持体
29 ブレース
30 受容領域
31 開口部
32 開口部
33 保持手段
34 固定ネジ/固定ボルト
35 第1のバネ要素
36 シール要素
37 第2のバネ要素