(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-26
(45)【発行日】2024-04-03
(54)【発明の名称】圧力調整弁
(51)【国際特許分類】
F16K 17/30 20060101AFI20240327BHJP
【FI】
F16K17/30 A
(21)【出願番号】P 2020060484
(22)【出願日】2020-03-30
【審査請求日】2022-12-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000143949
【氏名又は名称】株式会社鷺宮製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】新井 義久
【審査官】藤森 一真
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-145999(JP,A)
【文献】実開昭51-162359(JP,U)
【文献】実開昭62-084805(JP,U)
【文献】特開平03-005803(JP,A)
【文献】実開昭62-141628(JP,U)
【文献】特開平06-229481(JP,A)
【文献】特開平01-093676(JP,A)
【文献】特開2006-084004(JP,A)
【文献】特開2005-042859(JP,A)
【文献】実開昭61-168407(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 1/00 - 1/54
F16K 17/00 - 17/34
F16K 31/00 - 31/11
F16K 39/00 - 51/02
F25B 41/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁座により画定される入口ポートと、出口ポートと、前記入口ポート及び前記出口ポートと連通する弁室と、を有する弁ハウジングと、
前記弁室内にて軸方向に摺動可能に配置され、前記弁座に対して近接または離間可能な弁部を有する大径部と、前記大径部から軸方向に延びる小径部と、を有するニードル弁と、
内部空間が前記出口ポートと連通する感圧用ベローズと、
前記感圧用ベローズの外周側に軸方向に重ねて配置され、前記感圧用ベローズを介して、前記ニードル弁を前記弁座に対し近接する方向に付勢する付勢部材と、
を備えることを特徴とする圧力調整弁。
【請求項2】
前記感圧用ベローズは、一端側に開口部と、蛇腹部と、他端側に前記蛇腹部と一体的に形成される又は別部材により閉鎖される閉鎖部と、を有し、
前記感圧用ベローズの座屈防止手段は、前記小径部を前記蛇腹部の内周面と対向配置させることを特徴とする請求項1に記載の圧力調整弁。
【請求項3】
前記弁ハウジングは、軸方向に沿って、前記弁室、軸方向に貫通するニードル弁保持孔、前記弁室と連通する背圧室、及び、前記感圧用ベローズを収容するベローズ収容室を有し、
ガイド部は、前記背圧室と前記ベローズ収容室とを画定するとともに、軸方向に貫通する挿通孔を有しており、
前記ニードル弁の前記大径部及び前記小径部は、それぞれ、前記ニードル弁保持孔及び前記挿通孔内に軸方向に配設され、前記大径部と前記ニードル弁保持孔との間、及び、前記小径部と前記ガイド部の前記挿通孔との間には、それぞれ、第1の間隙及び第2の間隙が形成されており、
前記感圧用ベローズの座屈防止手段は、前記第1の間隙が、前記第2の間隙より小さく、前記ニードル
弁保持孔に挿通される前記大径部の軸方向の長さが、前記ニードル
弁保持孔の内径より大きいことを特徴とする請求項2に記載の圧力調整弁。
【請求項4】
前記座屈防止手段は、前記小径部を前記閉鎖部に当接させ、前記小径部及び前記付勢部材により、前記閉鎖部を軸方向に挟持することを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の圧力調整弁。
【請求項5】
前記付勢部材と前記感圧用ベローズとの間に、円板状の頭部、円筒状の胴部及びフランジ状の脚部を有する受け部材をさらに備え、
前記頭部及び前記脚部が、前記閉鎖部及び前記付勢部材のそれぞれに係合されており、
前記座屈防止手段は、前記胴部を前記蛇腹部の外周面と対向配置させることを特徴とする請求項2から4のいずれか一項に記載の圧力調整弁。
【請求項6】
前記閉鎖部と当接する前記小径部の端部に拡径部を設け、
前記座屈防止手段は、前記拡径部の外周面を前記蛇腹部の内周面と常時接触させることを特徴とする請求項2から5のいずれか一項に記載の圧力調整弁。
【請求項7】
前記座屈防止手段は、前記小径部の端部と前記閉鎖部とを固着させることを特徴とする請求項2から6のいずれか一項に記載の圧力調整弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感圧用ベローズを備える圧力調整弁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、圧力調整弁の開度が、二次側圧力の影響を受けることを回避するために、感圧用ベローズを採用し、弁体に対する二次側圧力の変動を打ち消し、一次側圧力の変動のみにより制御することが行われてきた。
【0003】
このような感圧用ベローズを採用した圧力調整弁(以下、「従来の圧力調整弁」という)は、例えば、
図3に示される。従来の圧力調整弁200は、流入管201と流出管202との間を連通する弁室204に設けられるボール弁205と、このボール弁205を上方から付勢する感圧用ベローズ211及び調整ばね216と、を備えるものである(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この感圧用ベローズ211には、その内部空間に大気圧が導入されるとともに、周囲に二次側圧力P2が導入されている。よって、二次側圧力P2が導入されている感圧用ベローズ211の周囲は気密状態となっている。また、感圧用ベローズ211の内部空間に大気圧を導入するために、感圧用ベローズ211の開口を調整ばね216側に開口させていることから、この感圧用ベローズ211を調整ばね216により下方に向けて付勢するためには、感圧用ベローズ211及び調整ばね216の収容室を軸方向に区画する必要があった。したがって、従来の圧力調整弁200においては、軸方向に大型化する問題点(以下、「軸方向への大型化」という)が生じていた。
【0006】
また、近年では、使用される冷媒が新冷媒へと切り換わっており、これに伴い使用する冷媒の圧力が高圧化している。そこで、従来の圧力調整弁200に高い耐圧強度を持たせるために、感圧用ベローズ211の肉厚化や、調整ばね216の線径の大径化を行うことも考えられるが、さらに軸方向への大型化を引き起こすおそれがあった。
【0007】
本発明の目的は、軸方向に小型化することができる圧力調整弁を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、圧力調整弁は、弁座により画定される入口ポートと、出口ポートと、前記入口ポート及び前記出口ポートと連通する弁室と、を有する弁ハウジングと、前記弁室内にて軸方向に摺動可能に配置され、前記弁座に対して近接または離間可能な弁部を有する大径部と、前記大径部から軸方向に延びる小径部と、を有するニードル弁と、内部空間が前記出口ポートと連通する感圧用ベローズと、前記感圧用ベローズの外周側に軸方向に重ねて配置され、前記感圧用ベローズを介して、前記ニードル弁を前記弁座に対し近接する方向に付勢する付勢部材と、を備えるものである。
【0009】
また、上記圧力調整弁であって、前記感圧用ベローズは、一端側に開口部と、蛇腹部と、他端側に前記蛇腹部と一体的に形成される又は別部材により閉鎖される閉鎖部と、を有し、前記感圧用ベローズの座屈防止手段は、前記小径部を前記蛇腹部の内周面と対向配置させることものとしてもよい。
【0010】
また、上記圧力調整弁であって、前記弁ハウジングは、軸方向に沿って、前記弁室、軸方向に貫通するニードル弁保持孔、前記弁室と連通する背圧室、及び、前記感圧用ベローズを収容するベローズ収容室を有し、ガイド部は、前記背圧室と前記ベローズ収容室とを画定するとともに、軸方向に貫通する挿通孔を有しており、前記ニードル弁の前記大径部及び前記小径部は、それぞれ、前記ニードル弁保持孔及び前記挿通孔内に軸方向に配設され、前記大径部と前記ニードル弁保持孔との間、及び、前記小径部と前記ガイド部の前記挿通孔との間には、それぞれ、第1の間隙及び第2の間隙が形成されており、前記感圧用ベローズの座屈防止手段は、前記第1の間隙が、前記第2の間隙より小さく、前記ニードル弁保持孔に挿通される前記大径部の軸方向の長さが、前記ニードル弁保持孔の内径より大きいものとしてもよい。
【0011】
また、上記圧力調整弁であって、前記座屈防止手段は、前記小径部を前記閉鎖部に当接させ、前記小径部及び前記付勢部材により、前記閉鎖部を軸方向に挟持するものとしてもよい。
【0012】
また、上記圧力調整弁であって、前記付勢部材と前記感圧用ベローズとの間に、円板状の頭部、円筒状の胴部及びフランジ状の脚部を有する受け部材をさらに備え、前記頭部及び前記脚部が、前記閉鎖部及び前記付勢部材のそれぞれに係合されており、前記座屈防止手段は、前記胴部を前記蛇腹部の外周面と対向配置させるものとしてもよい。
【0013】
また、上記圧力調整弁であって、前記閉鎖部と当接する前記小径部の端部に拡径部を設け、前記座屈防止手段は、前記拡径部の外周面を前記蛇腹部の内周面と常時接触させるものとしてもよい。
【0014】
また、上記圧力調整弁であって、前記座屈防止手段は、前記小径部の端部と前記閉鎖部とを固着させるものとしてもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、軸方向に小型化することができる圧力調整弁を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る圧力調整弁の弁閉状態を示す断面図であり、(a)は、圧力調整弁の全体図、(b)は、(a)の破線I(b)で囲まれる弁部及び弁座の拡大図を、それぞれ表す。
【
図2】
図1の破線II(a),(b)で囲まれる感圧用ベローズ及び小径部の拡大図であり、(a)は、第2の実施形態に係る圧力調整弁、(b)は、第3の実施形態に係る圧力調整弁を、それぞれ表す。
【
図3】従来技術における感圧用ベローズを採用した圧力調整弁を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施形態について、
図1から
図2を参照しながら詳細に説明する。ただし、本発明は本実施形態の態様に限定されるものではない。
【0018】
<用語について>
本明細書および特許請求の範囲の記載において、「一端」及び「他端」とは、図面における「下方」及び「上方」を示す。また、本明細書および特許請求の範囲の記載において、「感圧用ベローズの有効受圧面積」とは、蛇腹部における最小内径及び最大内径の平均内径に基づいて算出した受圧面積を示す。
【0019】
(第1の実施形態)
<圧力調整弁の構成について>
図1及び
図2を用いて、本発明の第1の実施形態に係る圧力調整弁100について説明する。圧力調整弁100は、バルブ本体5、ガイド部40、ニードル弁50、感圧用ベローズ60、受け部材70、圧縮コイルばね80、調整ねじ部材90から主に構成される。以下、圧力調整弁100のそれぞれの構成について説明する。ここで、詳細は後述するが、本実施形態において、圧縮コイルばね80を、感圧用ベローズ60の外周側に軸方向に重ねて配置させることにより、従来の圧力調整弁が有する問題点(軸方向への大型化)を解消させることができる。
【0020】
バルブ本体5は、流入管1及び流出管2に接続される弁ハウジング10と、この弁ハウジング10の他端部に一体に溶接、かしめ、あるいはねじ込み等により結合されたベローズケース20と、ベローズケース20の他端部に嵌合されたエンドキャップ30と、から構成される。このバルブ本体5は、真鍮、鉄、アルミニウム、ステンレス等の金属または合成樹脂材等で構成される。
【0021】
弁ハウジング10は、軸方向へ貫通する貫通孔を有する中空円筒状の部材で、貫通孔の区画には弁室13及び背圧室17が軸線方向に離間して設けられる。この弁室13と背圧室17との間にはこれらの室より小さい内径Dをニードル弁保持孔14(詳細は後述するが、ニードル弁50の大径部51よりわずかに大きい)が中心軸線Cに沿って連続して設けられる。また、弁室13と背圧室17とを流体連通する導通路16が中心軸線Cから半径方向に離間して設けられる。さらに、弁室13より下方に開口した貫通孔により流入管1と接続する入口ポート11が設けられる。この入口ポート11と弁室13との接続部周辺には環状溝として弁座15が設けられる。この環状溝の深さH(
図1(b)参照)は、ニードル弁50の開弁状態において、入口ポート11から下流側への流体抵抗が小さくなるように設定されている。弁ハウジング10は、弁室13から半径方向へと貫通する貫通孔をさらに有しており、この貫通孔により流出管2と接続する出口ポート12が設けられる。
【0022】
これにより、閉弁状態において、弁室13、導通路16及び背圧室17には、出口ポート12を介して二次側圧力P2が導入できるように構成される。
【0023】
ベローズケース20は、軸方向へ貫通する貫通孔を有する中空円筒状の部材で、ベローズ収容室21が設けられる。このベローズ収容室21と背圧室17とを画定するために、ガイド部40が、弁ハウジング10の他端側の環状凹部18内に配設されるともに、弁ハウジング10とベローズケース20との間に挟持される。このガイド部40には、ベローズ収容室21側に突出するボス部41と、中心軸線Cに沿って貫通する挿通孔42とが設けられる。また、ベローズケース20の他端側の内周には、雌ねじ部22が設けられ、調整ねじ部材90の外周側に設けられる雄ねじ部91と、軸方向に移動可能に螺合される。
【0024】
エンドキャップ30は、有蓋円筒形状の部材で、ベローズケース20の他端部に嵌合することにより、ベローズ収容室21を画定する。このエンドキャップ30とベローズケース20との嵌合状態は、ベローズ収容室21内を常時大気と連通させるようなものであればよい。なお、本実施形態において、エンドキャップ30とベローズケース20との嵌合状態により、ベローズ収容室21内を常時大気と連通させるものであるが、これに限らない。例えば、フェールセーフの観点から、ベローズ収容室21を密封構造とすることにより、仮に、感圧用ベローズ60の破損時においても、流体の外部への漏洩を防止することができる。
【0025】
次に、ニードル弁50について説明する。ニードル弁50は、軸方向の一端側へ延在する略円柱形状の大径部51と、大径部51から軸方向の他端側へ延在する円柱形状の小径部52と、を備える。大径部51と小径部52との接合部には、段差部53が形成されている。大径部51の先端には、
図1(b)に示されるように、円錐台形状の弁部51aが設けられている。
【0026】
ニードル弁50の大径部51及び小径部52は、それぞれ中心軸線Cに沿って同心上に貫通する弁ハウジング10のニードル弁保持孔14及びガイド部40の挿通孔42内に軸方向に配設される。この際、ニードル弁50の大径部51とニードル弁保持孔14との間、及び、ニードル弁50の小径部52とガイド部40の挿通孔42との間には、それぞれ、第1の間隙G1及び第2の間隙G2が形成される。
【0027】
ここで、第1の間隙G1は、第2の間隙G2より小さくなるように設定されており、より厳密な公差管理が行われている(感圧用ベローズの座屈防止手段)。また、ニードル弁保持孔14に挿通される大径部51の軸方向の長さLは、ニードル弁保持孔14の内径Dより大きくなるように設定されている(感圧用ベローズの座屈防止手段)。これらにより、ニードル弁50が、第1の間隙G1により、軸方向に安定した状態で案内されるため、感圧用ベローズ60の内部空間に流体を導入する場合であっても、ニードル弁50の軸ぶれにより、感圧用ベローズ60に座屈を生じさせてしまうことを抑制することができる。なお、第1の間隙G1が形成される領域の軸方向長さは、第2の間隙G2が形成される領域の軸方向長さより大きくなるように設定されていていてもよい。これにより、ニードル弁50の軸ぶれをより抑制することができ、感圧用ベローズ60に座屈を生じさせてしまうことをより一層、抑制することができる。
【0028】
一方、第2の間隙G2は、第1の間隙G1と比べ設定の自由度が高い。つまり、第2の間隙G2を、例えば、流路抵抗を減少させるなどの必要に応じて設定することにより、流体連通する感圧用ベローズ60の内部空間への流体の移動をスムーズにし、感圧用ベローズ60の圧力変動の応答性を高めることができる。
【0029】
ニードル弁50の軸方向への移動は、詳細は後述するが、一次側圧力と二次側圧力との圧力差や、小径部52の他端部52aに作用する感圧用ベローズ60及び圧縮コイルばね80の付勢力などにより生じる。これにより、弁部51aが弁座15に対して近接または離間可能に移動し、弁開度が決まる。なお、ニードル弁50の段差部53がガイド部40と当接することにより、ニードル弁50の最大のリフト量となる最大リフト状態が規定されている。本実施形態におけるニードル弁50は、着座状態から最大リフト状態までの全域に亘って、大径部51がニードル弁保持孔14に案内される長さLが、ニードル弁保持孔14の内径Dより大きくなるように設定されることが、より好ましい。
【0030】
続いて、感圧用ベローズ60について説明する。感圧用ベローズ60は、金属製やゴム製などであり、一端側に開口部61と、他端側に閉鎖部62と、開口部61及び閉鎖部62とを繋ぐ蛇腹部63と、を備える。感圧用ベローズ60の開口部61は、ガイド部40のボス部41に密着される。これにより、感圧用ベローズ60の内部空間は、第2の間隙G2を介して背圧室17と連通し、閉弁状態においては、二次側圧力P2が導入される。また、感圧用ベローズ60の内部空間には、ニードル弁50の小径部52が挿入されており、小径部52の他端部52aを閉鎖部62に係合させるとともに、小径部52の外周面を蛇腹部63の内周面と対向配置させる(感圧用ベローズの座屈防止手段)。これにより、感圧用ベローズ60の半径方向内側への変位が所定量を超えると、感圧用ベローズ60の内部において、小径部52の外周面と蛇腹部63の内周面とが接触する。この接触により、感圧用ベローズ60の横方向のずれに起因する座屈を防止するとともに、感圧用ベローズ60を軸方向へとスムーズに移動させることができる。
【0031】
なお、本実施形態の圧力調整弁100に用いた感圧用ベローズ60は、蛇腹部63と閉塞部62を一体的に形成したものとしたが、これには限らない。即ち、軸方向の両端側に開口を有する感圧用ベローズを用い、この感圧用ベローズの他端側の開口に対して、切削加工等で形成した蓋部材(別部材)を係合させ、この蓋部材(別部材)とベローズとを溶接等により気密に固定することで閉塞部を設けてもよい。また、軸方向の両端側に開口を有する感圧用ベローズの他端側の開口部に対して、受け部材70の頭部72(別部材)を係合させ、頭部72(別部材)とベローズとを溶接等により気密に固定することで頭部72を閉塞部として設けてもよい。
【0032】
さらに、受け部材70及び圧縮コイルばね80(付勢部材)について説明する。受け部材70は、金属製であり、一端側にフランジ状の脚部71と、他端側に円板状の頭部72と、脚部71及び頭部72とを繋ぐ円筒形状の胴部73と、を備える。また、圧縮コイルばね80は、金属製であり、受け部材70と調整ねじ部材90との間に挟持される。この調整ねじ部材90を軸方向に移動させることにより、圧縮コイルばね80の付勢力を調整することができる。
【0033】
受け部材70の脚部71は、圧縮コイルばね80の一端部と係合される。また、受け部材70の頭部72は、感圧用ベローズ60の閉鎖部62と係合される。この圧縮コイルばね80の付勢力は、感圧用ベローズ60の伸縮に追従できるように設定されている。よって、感圧用ベローズ60の閉鎖部62を、小径部52の他端部52a及び受け部材70の頭部72により、軸方向に挟持させる(感圧用ベローズの座屈防止手段)。これにより、半径方向へと変位量が比較的大きい感圧用ベローズ60の他端部(閉鎖部62)における、感圧用ベローズ60の横方向のずれに起因する座屈を防止することができる。
【0034】
受け部材70の胴部73の内周面を、蛇腹部63の外周面と対向配置させる(感圧用ベローズの座屈防止手段)。これにより、感圧用ベローズ60の半径方向外側への変位が所定量を超えると、感圧用ベローズ60の外部において、胴部73の内周面と蛇腹部63の外周面とが接触する。この接触により、感圧用ベローズ60の横方向のずれに起因する座屈を防止するとともに、感圧用ベローズ60を軸方向へとスムーズに移動させることができる。
【0035】
このように、本実施形態において、ベローズ収容室21内に圧縮コイルばね80及び受け部材70を配置させるとともに、圧縮コイルばね80を、感圧用ベローズ60の外周側に軸方向に重ねて配置させている。これにより、従来の圧力調整弁が有する問題点(軸方向への大型化)を解消させることができる。
【0036】
<圧力調整弁の動作について>
以上説明した構成を有する圧力調整弁100の動作について説明する。ここで、圧力調整弁100が用いられる対象を冷媒回路として説明するが、これに限らない。圧力調整弁100において、入口ポート11は、高圧(一次側圧力P1)側の流入管1と接続され、出口ポート12は、低圧(二次側圧力P2)側の流出管2と接続される。
【0037】
(一次側圧力P1が設定値よりも低い場合)
一次側圧力P1が設定値よりも低い場合(例えば、圧縮機の吐出圧力が低下した状態など)には、
図1(b)に示すように、弁部51aが弁座15に着座しており、閉弁状態となっている。その際、二次側圧力P2は、弁室13、導通路16、背圧室17、及び、小径部52と挿通孔42との第2の間隙G2を介して、感圧用ベローズ60の内部空間に導入される。
【0038】
まず、感圧用ベローズ60には、二次側圧力P2が内部空間に導入されているため、ニードル弁50が開弁する方向に作用する力として、二次側圧力P2×有効受圧面積S1が生じている。ここで、感圧用ベローズ60の有効受圧面積S1とは、蛇腹部63における最小内径及び最大内径の平均内径に基づいて算出した受圧面積である。
【0039】
次に、ニードル弁50の弁部51aには、
図1(b)に示すように、一次側圧力P1及び二次側圧力P2により、ニードル弁50が開弁する方向に作用する力として、一次側圧力P1×受圧面積S2、二次側圧力P2×受圧面積S3がそれぞれ生じている。ここで、受圧面積S3は、弁座15の外側における弁部51aの受圧面積、即ち、ニードル弁50の大径部51の軸方向と垂直な方向の断面積から弁座15の内側における弁部51aの受圧面積を引いた円環状部の断面積である。また、ニードル弁50の段差部53及び他端部52aには、二次側圧力P2により、ニードル弁50が閉弁する方向に作用する力として、二次側圧力P2×受圧面積S4、二次側圧力P2×受圧面積S5がそれぞれ生じている。さらに、ニードル弁50の他端部52aには、ニードル弁50が開弁する方向に作用する力として、感圧用ベローズ60による付勢力F1が付勢されるとともに、ニードル弁50が閉弁する方向に作用する力として、圧縮コイルばね80の付勢力F2が付勢される。ここで、感圧用ベローズ60は、無差圧状態において、自然長より軸方向に圧縮された状態で組み付けられているため、伸長方向の付勢力F1を生じている。
【0040】
したがって、
図1(a)に示す圧力調整弁100のニードル弁50に作用する外力の釣り合いは以下のように表すことができる。
P2×S1+P1×S2+P2×S3+F1=P2×S4+P2×S5+F2 (式1)
ここで、P1:一次側圧力[N/mm
2]
P2:二次側圧力[N/mm
2]
S1:感圧用ベローズ60の有効受圧面積[mm
2]
S2:弁座15の内側における弁部51aの受圧面積[mm
2]
S3:弁座15の外側における弁部51aの受圧面積[mm
2]
S4:段差部53の受圧面積[mm
2]
S5:他端部52aの受圧面積[mm
2]
F1:感圧用ベローズ60による付勢力[N]
F2:圧縮コイルばね80の付勢力[N]
【0041】
(式1)は、P1×S2=P2(S4+S5-(S1+S3))-F1+F2へと整理することができる。ここで、感圧用ベローズ60の有効受圧面積S1は、弁座15の内側における弁部51aの受圧面積S2と一致するように設定されている。また、ニードル弁50の大径部51の軸方向と垂直な断面積は、
図1(b)に示すように、S2+S3であるとともに、
図1(a)に示すように、S4+S5でもある。
【0042】
したがって、(式1)において、二次側圧力P2によりニードル弁50に作用する外力は、全て打ち消されることとなり、上式はさらに、P1×S2=-F1+F2へと整理することができる。本実施形態の圧力調整弁100は、内部空間に二次側圧力P2を導入する感圧用ベローズ60を備えることにより、二次側圧力P2の影響を打ち消すことができる。つまり、圧力調整弁100は、調整ねじ部材90を軸方向に移動させ、圧縮コイルばね80の付勢力F2を適切に設定することにより、一次側圧力に変動に応じて、開度を可変に制御することができる。
【0043】
(一次側圧力P1が設定値よりも高い場合)
一次側圧力P1が設定値((-F1+F2)/S2)よりも高い場合(例えば、圧縮機の吐出圧力が上昇した状態など)には、不図示であるが、弁部51aが弁座15に離間しており、開弁状態となっている。この際、一次側圧力P1の上昇にともない弁開度が大きくなるが、最大の弁開度は、ニードル弁50の段差部53とガイド部40とが当接することにより規定されている。
【0044】
このように、本実施形態の圧力調整弁100は、主に、以下の4つの感圧用ベローズの座屈防止手段を有する。各感圧用ベローズの座屈防止手段は、別途、特別な部品を用意する必要がないため、部品点数を増やすことなく、座屈防止を行うことできる。
【0045】
第1の感圧用ベローズの座屈防止手段として、小径部52の外周面を蛇腹部63の内周面と対向配置させている。これにより、例えば、感圧用ベローズ60の内部空間に導入される二次側圧力P2が低い場合には、感圧用ベローズ60は、軸方向及び半径方向内側に収縮するが、小径部52の外周面と蛇腹部63の内周面とが接触する。この接触により、感圧用ベローズ60の横方向のずれに起因する座屈を防止するとともに、感圧用ベローズ60を軸方向へとスムーズに移動させることができる。
【0046】
第2の感圧用ベローズの座屈防止手段として、受け部材70の胴部73の内周面を蛇腹部63の外周面と対向配置させている。これにより、例えば、感圧用ベローズ60の内部空間に導入される二次側圧力P2が高い場合には、感圧用ベローズ60は、軸方向及び半径方向外側に拡張するが、胴部73の内周面と蛇腹部63の外周面とが接触する。この接触により、感圧用ベローズ60の横方向のずれに起因する座屈を防止するとともに、感圧用ベローズ60を軸方向へとスムーズに移動させることができる。
【0047】
第3の感圧用ベローズの座屈防止手段として、半径方向へと変位量が比較的大きい感圧用ベローズ60の他端部(閉鎖部62)を軸方向に挟持している。これにより、感圧用ベローズ60の内部空間に導入される二次側圧力P2に関係なく、感圧用ベローズ60の横方向のずれに起因する座屈を防止することができる。
【0048】
第4の感圧用ベローズの座屈防止手段として、第1の間隙G1が、第2の間隙G2より小さくなるように設定されている。また、ニードル弁保持孔14に挿通される大径部51の軸方向の長さLが、ニードル弁保持孔14の内径Dより大きくなるように設定されている。これらにより、ニードル弁50は、第1の間隙G1により、軸方向に安定した状態で案内されるため、ニードル弁50の軸ぶれに起因する、感圧用ベローズ60に座屈を防止することができる。なお、第1の間隙G1が形成される領域の軸方向長さは、第2の間隙G2が形成される領域の軸方向長さより大きくなるように設定されていてもよい。これにより、ニードル弁50の軸ぶれをより抑制することができ、感圧用ベローズ60に座屈を生じさせてしまうことをより一層、抑制することができる。
【0049】
(第2の実施形態)
図2(a)を用いて、本発明の第2の実施形態に係る圧力調整弁100について説明する。ここで、図中の受け部材70については、説明の便宜上省略している。第2の実施形態に係る圧力調整弁100は、ニードル弁50の小径部52の他端側に拡径部52eを設けた点で、第1の実施形態の圧力調整弁100と主に相違するが、その他の基本構成は第1の実施形態と同一である。ここで、同一部材には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0050】
ニードル弁50の小径部52の他端側には、拡径部52eを設け、この拡径部52eの外径を蛇腹部63の最小内径よりも僅かに大きく設定する。これにより、拡径部52eの外周面と蛇腹部63の内周面とが常時接触するため、半径方向へと変位量が比較的大きい感圧用ベローズ60の他端部(閉鎖部62)において、感圧用ベローズ60の横方向のずれに起因する座屈を防止することができる。さらに、拡径部52eの外周面と蛇腹部63の内周面との常時接触により、感圧用ベローズ60を軸方向へとスムーズに移動させることができる。ここで、拡径部52eの軸方向長さは、自由に設定可能であるが、感圧用ベローズ60が所望の伸縮力を生じさせ得るように、所定の内部空間の容積を確保する必要がある。
【0051】
(第3の実施形態)
図2(b)を用いて、本発明の第3の実施形態に係る圧力調整弁100について説明する。ここで、図中の受け部材70については、説明の便宜上省略している。第3の実施形態に係る圧力調整弁100は、ニードル弁50の小径部52と感圧用ベローズ60の閉鎖部62とをスポット溶接等の固着手段により固着させた点で、第1の実施形態の圧力調整弁100と主に相違するが、その他の基本構成は第1の実施形態と同一である。ここで、同一部材には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0052】
ニードル弁50の小径部52の他端側と感圧用ベローズ60の閉鎖部62とを固着させている(図中のX印参照)。これにより、前述の第3の感圧用ベローズの座屈防止手段と同様に、半径方向へと変位量が比較的大きい感圧用ベローズ60の他端部(閉鎖部62)において、感圧用ベローズ60の横方向のずれに起因する座屈を防止することができる。したがって、第3の実施形態においては、小径部52と感圧用ベローズ60とを他端側において固着することにより、第2の実施形態の拡径部52eを用いることなく、同様の効果を得ることができる。
【0053】
<その他>
本実施形態の圧力調整弁100は、例示する冷媒回路だけでなく、あらゆる流体装置及び流体回路に適用可能であることは言うまでもない。また、本発明は、上述した各形態や、各実施形態、随所に述べた変形例に限られることなく、本発明の技術的思想から逸脱しない範囲で、適宜の変更や変形が可能である。
【符号の説明】
【0054】
100 圧力調整弁
1 流入管
2 流出管
5 バルブ本体
10 弁ハウジング
11 入口ポート
12 出口ポート
13 弁室
14 ニードル弁保持孔
15 弁座
16 導通路
17 背圧室
18 環状凹部
20 ベローズケース
21 ベローズ収容室
22 雌ねじ部
30 エンドキャップ
40 ガイド部
41 ボス部
42 挿通孔
50 ニードル弁
51 大径部
51a 弁部
52 小径部
52a 他端部
52e 拡径部
53 段差部
60 感圧用ベローズ
61 開口部
62 閉鎖部
63 蛇腹部
70 受け部材
71 脚部
72 頭部
73 胴部
80 圧縮コイルばね(付勢部材)
90 調整ねじ部材
91 雄ねじ部
D ニードル弁保持孔の内径
F1 感圧用ベローズによる付勢力
F2 圧縮コイルばねの付勢力
G1 大径部とニードル弁保持孔との間隙
G2 小径部と挿通孔との間隙
H 環状溝の深さ
L ニードル弁保持孔に挿通される大径部の軸方向の長さ
P1 一次側圧力
P2 二次側圧力
S1 感圧用ベローズの有効受圧面積
S2 弁座の内側における弁部の受圧面積
S3 弁座の外側における弁部の受圧面積
S4 段差部の受圧面積
S5 他端部の受圧面積