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特許7461197サッシ止水構造、サッシ枠、サッシ止水ユニット、及びサッシ止水ユニットの取付方法
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  • 特許-サッシ止水構造、サッシ枠、サッシ止水ユニット、及びサッシ止水ユニットの取付方法 図1
  • 特許-サッシ止水構造、サッシ枠、サッシ止水ユニット、及びサッシ止水ユニットの取付方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-26
(45)【発行日】2024-04-03
(54)【発明の名称】サッシ止水構造、サッシ枠、サッシ止水ユニット、及びサッシ止水ユニットの取付方法
(51)【国際特許分類】
   E06B 7/16 20060101AFI20240327BHJP
   E06B 5/00 20060101ALI20240327BHJP
【FI】
E06B7/16 Z
E06B5/00 Z
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020060878
(22)【出願日】2020-03-30
(65)【公開番号】P2021161614
(43)【公開日】2021-10-11
【審査請求日】2023-03-22
(73)【特許権者】
【識別番号】303046244
【氏名又は名称】旭化成ホームズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100186015
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 靖之
(72)【発明者】
【氏名】山田 浩光
【審査官】小澤 尚由
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-199845(JP,A)
【文献】特開2015-081442(JP,A)
【文献】特開2016-186208(JP,A)
【文献】特開2016-065409(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 5/00, 7/16
E04H 9/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上枠、下枠及び左右一対の縦枠を有するサッシ枠と、
前記サッシ枠に囲まれるサッシ開口部の少なくとも一部を屋外側から覆うように、前記下枠から前記左右一対の縦枠の所定の高さまで配置される止水シートと、
前記サッシ枠と前記止水シートとの間の水密性を確保するためのシール部と、
前記サッシ枠との間に前記止水シート及び前記シール部を挟み込んだ状態で前記サッシ枠に対して着脱可能に締結固定される固定部材と、を備え、
前記サッシ枠に、締結部材を係合させるためのホルダ部が形成されており、
前記下枠の下面に、前記ホルダ部が形成されていることを特徴とするサッシ止水構造。
【請求項2】
前記下枠及び前記左右一対の縦枠はそれぞれ、前記シール部を支持する支持面を有し、
それぞれの前記支持面は、相互に平行となるように構成されている、請求項1に記載のサッシ止水構造。
【請求項3】
前記固定部材は、前記止水シートの上部を固定する上フレーム部と、前記止水シートの下部を固定する下フレーム部と、前記止水シートの左右両側を固定する左右一対の縦フレーム部とを有する、請求項1又は2に記載のサッシ止水構造。
【請求項4】
上枠、下枠及び左右一対の縦枠を有するサッシ枠であって、
サッシ枠に囲まれるサッシ開口部の少なくとも一部を屋外側から覆うサッシ止水ユニットを締結部材により取付可能に構成されており、
少なくとも前記下枠及び前記左右一対の縦枠に、前記締結部材を係合させるためのホルダ部が形成されており、
前記ホルダ部は、前記左右一対の縦枠の前記屋外側を向く面と、前記下枠の下面と、に形成されていることを特徴とするサッシ枠。
【請求項5】
前記ホルダ部は、前記締結部材としてのボルトのヘッド部を挿入するための大径部と、挿入した前記ボルトのヘッド部を係合保持するための小径部と、を有するボルト保持孔で構成される、請求項に記載のサッシ枠。
【請求項6】
前記ホルダ部は、前記サッシ枠の屋外側部分に形成されている、請求項又はに記載のサッシ枠。
【請求項7】
請求項4~6の何れか一項に記載のサッシ枠を有する建物。
【請求項8】
前記サッシ枠は、前記建物の1階の出入口である開口部のみに使用されている、請求項に記載の建物。
【請求項9】
サッシ枠に囲まれるサッシ開口部の少なくとも一部を屋外側から覆うように、前記サッシ枠の下枠から左右一対の縦枠の所定の高さまで配置される止水シートと、
前記サッシ枠と前記止水シートとの間の水密性を確保するためのシール部と、
前記サッシ枠との間に前記止水シート及び前記シール部を挟み込んだ状態で前記サッシ枠に対して着脱可能に締結固定可能な固定部材と、を備え
前記固定部材は、少なくとも前記サッシ枠の前記下枠の下面に形成されているホルダ部に係合している締結部材により、前記サッシ枠に対して締結固定可能であることを特徴とする、サッシ止水ユニット。
【請求項10】
請求項に記載のサッシ止水ユニットの取付方法であって、
前記サッシ枠に形成された前記ホルダ部に前記締結部材を係合させる工程と、
前記サッシ枠と前記固定部材との間に、前記止水シート及び前記シール部を挟み込んだ状態で、前記ホルダ部に係合する前記締結部材を用いて前記サッシ枠に前記固定部材を締結固定する工程と、を含む、サッシ止水ユニットの取付方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の開口部からの浸水を防止するためのサッシ止水構造、サッシ枠、サッシ止水ユニット、及びサッシ止水ユニットの取付方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建物の外周壁に設けられる窓等の開口部には、例えば引違い形式の窓部を有するサッシが設けられている。例えば特許文献1には、サッシ枠と、サッシ枠の内側で水平方向にスライド可能に支持される2枚の引違い窓とを備えたサッシが開示されている。当該サッシは、ガラス板及びガラス板を保持する障子枠を有する障子と、当該障子を取り囲んで支持するサッシ枠と、を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-211156号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のようなサッシによれば、通常の雨水の屋内への浸入を抑制することができる。しかしながら、例えば大雨による河川の氾濫や、地震時の津波の発生等によって、開口部の高さまで建物が浸水する場合、上記のような引違い形式のサッシでは屋内への水の浸入を防ぐことは困難である。そのため、建物の開口部からの浸水を防ぐためには、一般的に、窓やドアを外開きもしくは内開き等の開き構造としなければならなかった。
【0005】
また、引違い形式のサッシの止水性能を高めることによって上記のような洪水時の浸水を抑制しようとした場合には、部材間の水密性を高めるために、サッシの施工時に複雑な調整が必要となったり、日常の使い勝手が不便な構造となったりして、実用的ではなくなるという問題がある。
【0006】
それゆえ本発明は、簡易な構成でありながらも、洪水時における建物開口部からの浸水を抑制することが可能なサッシ止水構造、サッシ枠、サッシ止水ユニット、及びサッシ止水ユニットの取付方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、本発明のサッシ止水構造は、上枠、下枠及び左右一対の縦枠を有するサッシ枠と、
前記サッシ枠に囲まれるサッシ開口部の少なくとも一部を屋外側から覆うように、前記下枠から前記左右一対の縦枠の所定の高さまで配置される止水シートと、
前記サッシ枠と前記止水シートとの間の水密性を確保するためのシール部と、
前記サッシ枠との間に前記止水シート及び前記シール部を挟み込んだ状態で前記サッシ枠に対して着脱可能に締結固定される固定部材と、を備え、
前記サッシ枠に、締結部材を係合させるためのホルダ部が形成されていることを特徴とするものである。
【0008】
なお、本発明のサッシ止水構造において、前記下枠及び前記左右一対の縦枠は、前記シール部を支持する支持面を有し、
前記支持面は、全体が同一平面上に位置するように構成されていることが好ましい。
【0009】
また、本発明のサッシ止水構造にあっては、前記下枠の下面に、前記ホルダ部が形成されていることが好ましい。
【0010】
また、本発明のサッシ止水構造において、前記固定部材は、前記止水シートの上部を固定する上フレーム部と、前記止水シートの下部を固定する下フレーム部と、前記止水シートの左右両側を固定する左右一対の縦フレーム部とを有することが好ましい。
【0011】
また、本発明のサッシ枠は、上枠、下枠及び左右一対の縦枠を有するサッシ枠であって、
少なくとも前記左右一対の縦枠に、締結部材を係合させるためのホルダ部が形成されていることを特徴とするものである。
【0012】
なお、本発明のサッシ枠において、前記ホルダ部は、前記締結部材としてのボルトのヘッド部を挿入するための大径部と、挿入した前記ボルトのヘッド部を係合保持するための小径部と、を有するボルト保持孔で構成されることが好ましい。
【0013】
また、本発明のサッシ枠において、前記ホルダ部は、前記サッシ枠の屋外側部分に形成されていることが好ましい。
【0014】
また、本発明の建物は、上記何れかのサッシ枠を有することを特徴とするものである。
【0015】
なお、前記サッシ枠は、前記建物の1階の出入口である開口部のみに使用されていることが好ましい。
【0016】
また、本発明のサッシ止水ユニットは、サッシ枠に囲まれるサッシ開口部の少なくとも一部を屋外側から覆うように、前記サッシ枠の下枠から左右一対の縦枠の所定の高さまで配置される止水シートと、
前記サッシ枠と前記止水シートとの間の水密性を確保するためのシール部と、
前記サッシ枠との間に前記止水シート及び前記シール部を挟み込んだ状態で前記サッシ枠に対して着脱可能に締結固定可能な固定部材と、を備えることを特徴とするものである。
【0017】
また、本発明におけるサッシ止水ユニットの取付方法は、
前記サッシ枠に形成されたホルダ部に締結部材を係合させる工程と、
前記サッシ枠と前記固定部材との間に、前記止水シート及び前記シール部を挟み込んだ状態で、前記ホルダ部に係合する締結部材を用いてサッシ枠に前記固定部材を締結固定する工程と、を含むものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、簡易な構成でありながらも、洪水時における建物開口部からの浸水を抑制することが可能なサッシ止水構造、サッシ枠、サッシ止水キット、及び止水部材取付方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施形態としてのサッシ止水構造を示す正面図である。
図2図1のサッシ止水構造からサッシ止水ユニットを取り外した状態のサッシ枠の一部を示す正面図である。
図3図1のサッシ止水構造のA-A断面を示す断面図である。
図4図1のサッシ止水構造のB-B断面を示す断面図である。
図5図1のサッシ止水構造の変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0021】
図1は、本発明の一実施形態としてのサッシ止水構造1を示している。サッシ止水構造1を構成するサッシは、例えば住宅等の建物における外周壁に形成された窓等の開口部に設置される。
【0022】
ここで、サッシ止水構造1を設置可能な建物としては、例えば、鉄骨造の骨組みを有する工業化住宅とすることができる。なお、工業化住宅としては例えば、鉄筋コンクリート造の基礎などの下部構造体と、柱や梁などの部材で構成される架構を有し、下部構造体の上方に設けられた上部構造体と、で構成される。下部構造体は、地盤上に設置され、上部構造体を支持する。具体的に、下部構造体を構成する基礎としては、断面T字状の布基礎とすることができ、フーチング部と、基礎梁としての立ち上がり部とを備える。上部構造体は、複数の柱及び柱間に架設された複数の梁から構成される架構と、この架構の外周部に配置される外壁(外周壁)と、架構の梁上に固定される床部材と、を備えており、外壁はサッシを備える。外装材及び床部材は、例えば軽量発泡コンクリート(以下、「ALC」と記載する。「ALC」とは「autoclaved light weight concrete」の略である。)のパネル(ALCパネル)により構成することができる。また、架構を構成する部材は、予め規格化(標準化)されたものとすることができ、その場合、予め工場にて製造された後、建築現場に搬入されて組み立てられる。
【0023】
サッシ止水構造1を構成するサッシは、サッシ枠10と、サッシ枠10の内側で水平方向にスライド可能に支持される引違い窓を構成する2枚の障子20を有する。障子20は、ガラス板21と、ガラス板21を保持する矩形枠状の障子枠22とを有する。サッシ枠10は、障子20を取り囲んで支持している。具体的に、サッシ枠10は、2枚の障子20を厚さ方向に互いにずらした位置でスライド可能に支持する。
【0024】
サッシ枠10は、上枠11、下枠12及び左右一対の縦枠13、14を有する。上枠11と下枠12とは互いに平行であり、水平方向に延在している。一対の縦枠を構成する左縦枠13及び右縦枠14は互いに平行であり、鉛直方向に延在している。サッシ枠10の内側には、サッシ開口部15が形成され、サッシ開口部15に障子20が配置される。
【0025】
なお、本例のサッシ枠10は、上枠11及び下枠12の端面(小口面)が左右の縦枠13、14の側面に突き当たる所謂「縦勝ち」の構成となっているが、これに限られず、例えば縦枠13、14の端面(小口面)が上枠11及び下枠12の側面に突き当たる所謂「横勝ち」の構成であってもよい。
【0026】
サッシ枠10には、サッシ止水ユニット30を設置する際にボルト又はナット等の締結部材を係合保持するためのホルダ部が形成されている。
【0027】
本例では、下枠12及び左右一対の縦枠13、14に、ホルダ部としてのボルト保持孔16及びホルダ空間Sが形成されている。ボルト保持孔16は、図1に示すようにボルトのヘッド部を挿入するための大径部16aと、挿入したボルトのヘッド部を係合保持するための小径部16bを有する。ホルダ空間Sは、サッシ枠10の内部に区画形成された空間であり、ボルト保持孔16を通して外部に連通する。ホルダ空間Sは、例えばボルトのヘッド部が配置される。なお、ホルダ部は図示例に限定されず、例えばボルトを締結可能な雌ねじが内周面に形成されたねじ穴であってもよいし、サッシ止水ユニット30側に設けた孔等に引っ掛けて係合することが可能な突起等であってもよい。また、ホルダ部の形状、数及びその位置は適宜変更可能である。
【0028】
本例では、下枠12、左縦枠13及び右縦枠14にそれぞれ複数のボルト保持孔16が形成されているが、ボルト保持孔16の位置は適宜変更可能である。
【0029】
また、本例では、下枠12における屋外側を向く面にボルト保持孔16が形成されているが、これに限られず、例えば図5に示すように、下枠12における下向きの面に設けてもよい。
【0030】
また、本例では、ボルト保持孔16が縦枠13、14において屋外側を向く面に形成されているが、これに限られず、例えば外側面(サッシ開口部15と逆側の側面)に形成してもよい。
【0031】
図2に示すように、サッシ枠10は、後述する防水パッキン32を支持する支持面17a、17bを有する。本例では、下枠12の屋外側を向く面に設けられた支持面17aと、左右一対の縦枠13、14の屋外側を向く面に設けられた支持面17bとを有する。本例では支持面17a、支持面17bにボルト保持孔16が設けられているが、これに限られず、支持面17a、支持面17bとは異なる位置にボルト保持孔16を設けてもよい。
【0032】
本例では、下枠12の支持面17aと、縦枠13、14の支持面17bとが、全て同一平面上に設けられている。なお、本例の支持面17a、17bは、鉛直方向に延在する平坦面で構成されているが、これに限られるものではなく、鉛直方向に対して傾斜していてもよいし、湾曲部、屈曲部を有する面であってもよい。
【0033】
サッシ枠10には、サッシ止水ユニット30を取り付けることができる。サッシ止水ユニット30は、例えば洪水時等において、サッシ開口部15の少なくとも下部を屋外側から覆うことにより、当該サッシ開口部15を介した屋内への浸水を防止するためのユニットである。
【0034】
サッシ止水ユニット30は、サッシ枠10に対して着脱可能に構成されており、通常時(非使用時)には、サッシ枠10から取り外した状態で保管される。
【0035】
サッシ止水ユニット30は、止水シート31と、シール部を構成する防水パッキン32と、固定部材33とを備える。
【0036】
止水シート31は、サッシ枠10に囲まれるサッシ開口部15の少なくとも一部を屋外側から覆うように、下枠12から左右一対の縦枠13、14の所定の高さHまで配置される。止水シート31は、防水性を有する矩形のシート部材で構成される。なお、「サッシ開口部15の少なくとも一部」とは、サッシ開口部15全体のうち、下枠12に接する下部領域を少なくとも含んでいればよく、サッシ開口部15全体も含む。
【0037】
防水パッキン32は、サッシ枠10と止水シート31との間に挟持され、サッシ枠10と止水シート31との間の水密性を確保する。防水パッキン32は、ゴム、エラストマ等の軟質材で形成することができる。防水パッキン32は、サッシ枠10の支持面17a、17bの形状に応じた形状を有する。防水パッキン32は、薄い帯状の軟質部材で構成されている。防水パッキン32は、支持面17a、17bの形状に応じたコ字状に全体が一体物として形成された部材とすることができるが、これに限られず、3本の一直線状に延びる帯状部材をコ字状に並べて配置するようにしてもよい。
【0038】
本例の防水パッキン32は、止水シート31及びサッシ枠10とは別に形成され、サッシ止水ユニット30をサッシ枠10に取り付ける際に、サッシ枠10と止水シート31との間に挟み込んで固定部材33で押さえるように固定する構成としているが、これに限られない。例えば、シール部を止水シート31と一体成形してもよいし、止水シート31とは別に成形した後で止水シート31に接着、溶着等により予め固定してもよい。あるいは、サッシ枠10の支持面17a、17bに予め接着等により防水パッキン32を固定するなど、サッシ枠10側にシール部を設けておいてもよい。
【0039】
固定部材33は、サッシ枠10との間に止水シート31及び防水パッキン32を挟んだ状態でサッシ枠10に固定される。本例の固定部材33は、上フレーム部34、下フレーム部35及び左右の縦フレーム部36、37で構成されている。上フレーム部34、下フレーム部35及び左右の縦フレーム部36、37は、アルミ等の金属製とすることができるが、これに限られず、樹脂製であってもよい。また、本例では、上フレーム部34、下フレーム部35及び左右の縦フレーム部36、37をそれぞれ独立した部材としているが、全体を一体物として形成してもよいし、あるいは、何れかの複数の部材を一体物として形成してもよい。
【0040】
ここで、図3は、図1のA-A断面を示している。上フレーム部34は、屋外側に位置する第1フレーム34aと屋内側に位置する第2フレーム34bとで構成されている。ここで、上フレーム部34に止水シート31を固定する方法としては、例えば、図3に示すように、第1フレーム34aと第2フレーム34bとの間に止水シート31を挟持し、ボルト34cとナット34d等の締結部材で締結する方法があるが、これに限定されるものではない。例えば、上フレーム部34と止水シート31とを予め、接着又は溶着等により固定しておいてもよい。第1フレーム34aは、断面がL字形状のアングル材であり、これにより、平板形状に比べて強度が高くなり、外力を受けた場合にも変形し難くなる。第2フレーム34bは、第1フレーム34aよりも長さが短く、少なくともサッシ枠10に締結固定される第1フレーム34aの両端部には第2フレーム34bが存在しない。第1フレーム34aと縦枠13、14の支持面17bとで止水シート31及び防水パッキン32を挟持する。第1フレーム34aと第2フレーム34bには、ボルト34c等の締結部材を通すための孔が形成されている。
【0041】
上フレーム部34は、サッシ枠10の縦枠13、14に対して着脱可能に締結固定される。上フレーム部34は、例えば図1に示すように、一方側の端部を左縦枠13に締結固定し、他方側の端部を右縦枠14に締結固定することができる。なお、上フレーム部34をサッシ枠10に締結固定する箇所は図示例に限られず、1箇所のみでも3箇所以上であってもよい。また、上フレーム部34は、上枠11に固定するようにしてもよい。
【0042】
下フレーム部35は、下枠12に重なるように配置された状態で、下枠12に対して着脱可能に締結固定される。なお、下フレーム部35は、下枠12にではなく縦枠13、14の下部に締結固定してもよい。図3に示すように、下フレーム部35は、断面がL字形状のアングル材で構成することができる。下フレーム部35は、下枠12の支持面17aとの間に止水シート31及び防水パッキン32を挟み込んだ状態で、ボルト35c及びナット35d等の締結部材を用いて、下枠12に対して着脱可能に締結固定される。本例では、下フレーム部35の長手方向の両端部に位置する合計2箇所において、下枠12に対して締結固定されているが、締結固定する箇所は図示例に限られず、1箇所のみでも3箇所以上であってもよい。
【0043】
ここで、図5は、本実施形態の変形例を示している。図5に示すサッシ枠10は、下枠12の下面にボルト保持孔16が形成されている。ボルト保持孔16は、下枠12の支持面17aとは異なる位置に設けられている。下枠12の支持面17aは、ボルト保持孔16よりも下方の屋外側を向く面に設けられている。図5に示す下フレーム部35は、中空の角筒部35aを有する。下フレーム部35は、角筒部35aの屋内側の側面35bと下枠12の支持面17aとの間に止水シート31及び防水パッキン32を挟み込んだ状態で、下枠12に対して着脱可能に締結固定される。角筒部35aには、ボルト35c等の締結部材を通すための孔が形成されている。
【0044】
縦フレーム部36、37はそれぞれ、縦枠13、14に重なるように配置された状態で、縦枠13、14に対して着脱可能に締結固定される。なお、縦フレーム部36、37をサッシ枠10に締結固定する箇所は図示例のような上下2箇所に限られず、1箇所のみでも3箇所以上であってもよい。また、縦フレーム部36、37は、上フレーム部34及び下フレーム部35に重なるように配置してもよいし、重ならないように配置してもよい。
【0045】
図4に示すように、縦フレーム部36は、断面がL字形状のアングル材で構成することができる。縦フレーム部36は、左縦枠13の支持面17bとの間に止水シート31及び防水パッキン32を挟み込んだ状態で、ボルト36c及びナット36d等の締結部材を用いて、左縦枠13に対して着脱可能に締結固定される。なお、縦フレーム部37も、同様の方法で右縦枠14に対して着脱可能に締結固定される。
【0046】
サッシ止水ユニット30の取付方法は、サッシ枠10に形成されたホルダ部(ボルト保持孔16)に締結部材を係合させる工程(締結部材設置工程)と、サッシ枠10と固定部材33との間に、止水シート31及びシール部(防水パッキン32)を挟み込んだ状態で、ホルダ部(ボルト保持孔16)に係合する締結部材を用いてサッシ枠10に固定部材33を締結固定する工程(締結工程)と、を含む。
【0047】
上記締結部材設置工程においては、例えば下枠12のボルト保持孔16及び縦枠13、14のボルト保持孔16に対してボルトを係合させる。これにより、ボルトはサッシ枠10に保持される。なお、サッシ枠10のホルダ部にナットを係合させ、保持させるようにしてもよい。
【0048】
そして、上記締結工程においては、例えばサッシ枠10の支持面17a、17bに防水パッキン32を密着させ、止水シート31でサッシ枠10及び防水パッキン32を屋外側から覆うように配置するとともに固定部材33を止水シート31の屋外側に配置して、固定部材33をサッシ枠10に締結固定する。このようにして、サッシ止水ユニット30をサッシ枠10に対して容易に取り付けることができる(図1参照)。なお、防水パッキン32は、サッシ枠10の支持面17a、17b又は止水シート31に予め接着等により固定しておいてもよい。また、止水シート31は、予め固定部材33に対して固定しておいてもよい。
【0049】
サッシ止水ユニット30は、サッシ枠10に対して着脱可能である。したがって、洪水等の虞がある時にサッシ枠10に設置し、通常時には取り外して保管することができる。
【0050】
以上のように、本実施形態のサッシ止水構造1は、上枠11、下枠12及び左右一対の縦枠13、14を有するサッシ枠10と、サッシ枠10に囲まれるサッシ開口部15の少なくとも一部を屋外側から覆うように、下枠12から左右一対の縦枠13、14の所定の高さHまで配置される止水シート31と、サッシ枠10と止水シート31との間の水密性を確保するためのシール部(防水パッキン32)と、サッシ枠10との間に止水シート31及びシール部を挟み込んだ状態でサッシ枠10に対して着脱可能に締結固定される固定部材33と、を備え、サッシ枠10に、締結部材を係合させるためのホルダ部(ボルト保持孔16)が形成されていることを特徴とする。このような構成とすることにより、例えば大雨による河川の氾濫や、地震時の津波の発生等によって、建物開口部(サッシ開口部15)の高さまで浸水する場合であっても、止水シート31及びシール部の働きにより止水性を確保することができるので、サッシ開口部15を通した屋内への水の浸入を抑制することができる。また、止水シート31、シール部、及び固定部材33によって止水性を確保できるため、障子20には止水のための特殊な構成を設ける必要ない。また、止水シート31、シール部、及び固定部材33の構造も複雑ではなく、製造が容易である。さらに、洪水等が発生しない通常時には、止水シート31をサッシ枠10から取り外すことができるので、通常時の窓の操作には影響がない。よって、日常の使い勝手が不便になることがない。
【0051】
このように、本実施形態のサッシ止水構造1、及びサッシ止水構造1を備える建物によれば、簡易な構成でありながらも、洪水時における建物開口部からの浸水を抑制することができる。
【0052】
なお、本実施形態のサッシ止水構造1にあっては、下枠12及び左右一対の縦枠13、14がそれぞれ、シール部を支持する支持面17a、17bを有し、それぞれの支持面17a、17bは、相互に平行となるように構成されている。このような構成により、止水シート31及びシール部の取付が容易となり、また、支持面17a、17bとシール部との間の止水性を確保し易くなる。なお、同様の観点から、より好適には、下枠12及び左右一対の縦枠13、14に設けられた支持面17a、17b全体が、同一平面上に位置するように構成されていることが望ましい。
【0053】
また、本実施形態のサッシ止水構造1にあっては、図5に示すように、下枠12の下面にホルダ部(ボルト保持孔16)が形成されている場合には、ホルダ部が屋外側から視認され難くなり、サッシ枠10の意匠性の低下を抑制することができる。また、下枠12の下面にホルダ部(ボルト保持孔16)が形成されている場合には、雨水等がホルダ部に浸入し難くなる。
【0054】
また、本実施形態のサッシ止水構造1にあっては、固定部材33が、止水シート31の上部を固定する上フレーム部34と、止水シート31の下部を固定する下フレーム部35と、前記止水シートの左右両側を固定する左右一対の縦フレーム部36、37とを有する。このような構成により、止水シート31及びシール部(防水パッキン32)をサッシ枠10に対して強固に固定することができ、止水性を高めることができる。
【0055】
また、本実施形態のサッシ枠10は、上枠11、下枠12及び左右一対の縦枠13、14を有し、少なくとも左右一対の縦枠13、14に、締結部材を係合させるためのホルダ部(ボルト保持孔16)が形成されている。このように、サッシ枠10にボルト保持孔16等のホルダ部を形成するだけで、サッシ止水ユニット30が取り付け可能となり、洪水時における止水性を確保することができる。
【0056】
また、本実施形態のサッシ枠10において、ホルダ部は、締結部材としてのボルトのヘッド部を挿入するための大径部16aと、挿入したボルトのヘッド部を係合保持するための小径部16bと、を有するボルト保持孔16で構成される。このような構成により、容易に、且つ確実にボルトをサッシ枠10に係合させることができる。
【0057】
また、本実施形態のサッシ枠10において、ホルダ部は、サッシ枠10の屋外側部分(サッシ枠10の厚さ方向の中心よりも屋外側の部分)に形成されていることが好ましい。このような構成により、ホルダ部に対する締結部材の係合作業が容易となるため、サッシ止水ユニット30がさらに取り付け易くなる。
【0058】
なお、サッシ枠10は、建物の1階の出入口である開口部のみに使用されていることが好ましい。1階の1/3程度の浸水しか予想されない場合には、このように、出入り口のみにサッシ止水ユニット30を取り付ければ十分である場合があるため、最小限のサッシ止水ユニットで対策できることとなる。
【0059】
また、本実施形態のサッシ止水ユニット30は、サッシ枠10に囲まれるサッシ開口部15の少なくとも一部を屋外側から覆うように、サッシ枠10の下枠12から左右一対の縦枠13、14の所定の高さHまで配置される止水シート31と、サッシ枠10と止水シート31との間の水密性を確保するためのシール部(防水パッキン32)と、サッシ枠10との間に止水シート31及びシール部を挟み込んだ状態でサッシ枠10に対して着脱可能に締結固定可能な固定部材33と、を備える。このような構成により、簡易な構成で、サッシ枠10の止水性を確保することができる。また、サッシ止水ユニット30は、固定部材33とサッシ枠10との間に止水シート31及びシール部を挟み込んだ状態で固定部材33をサッシ枠10に締結する構成であるため、サッシ枠10に対する着脱作業も容易である。
【0060】
また、本実施形態のサッシ止水ユニット30の取付方法は、サッシ枠10に形成されたホルダ部(ボルト保持孔16)に締結部材を係合させる工程と、サッシ枠10と固定部材33との間に、止水シート31及びシール部を挟み込んだ状態で、ホルダ部に係合する締結部材を用いてサッシ枠10に固定部材33を締結固定する工程と、を含む。このような構成により、サッシ枠10に対してサッシ止水ユニット30を容易に取り付けることができる。
【0061】
本発明は、上述した実施形態の構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲で記載された内容を逸脱しない範囲で、様々な構成により実現することが可能である。例えば、先の実施形態では、引違い形式の窓を例に説明したが、本発明は引違い形式の窓に限られるものではなく様々な種類のサッシに適用可能であり、例えば外開き形式又は内開き形式の窓等にも適用することができる。
【符号の説明】
【0062】
1:サッシ
10:サッシ枠
11:上枠
12:下枠
13:左縦枠(縦枠)
14:右縦枠(縦枠)
15:サッシ開口部
16:ボルト保持孔(ホルダ部)
16a:大径部
16b:小径部
17a、17b:支持面
20:障子
21:ガラス板
22:障子枠
30:止水ユニット
31:止水シート
32:防水パッキン(シール部)
33:固定部材
34:上フレーム部
34a:第1フレーム
34b:第2フレーム
34c:ボルト
34d:ナット
35:下フレーム部
35a:角筒部
35c:ボルト
35d:ナット
36、37:縦フレーム部
36c:ボルト
36d:ナット
S:ホルダ空間
図1
図2
図3
図4
図5