(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-26
(45)【発行日】2024-04-03
(54)【発明の名称】紙葉類識別装置、紙葉類処理装置及び紙葉類識別方法
(51)【国際特許分類】
G07D 7/004 20160101AFI20240327BHJP
G07D 7/04 20160101ALI20240327BHJP
【FI】
G07D7/004
G07D7/04
(21)【出願番号】P 2020071012
(22)【出願日】2020-04-10
【審査請求日】2023-01-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000001432
【氏名又は名称】グローリー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】近森 雅文
(72)【発明者】
【氏名】池田 泰
(72)【発明者】
【氏名】川戸 良昭
(72)【発明者】
【氏名】仙石 知之
【審査官】永安 真
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-199460(JP,A)
【文献】特開2013-206439(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G07D 7/00 - 7/207
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性体を含むセキュリティ要素を備え
、搬送路を搬送される紙葉類を識別する紙葉類識別装置であって、
紙葉類の面に対して垂直な第1磁場及び平行な第2磁場を印加する磁場印加部と、
前記第1磁場が印加された前記紙葉類の磁性体の第1磁気特性と、前記第2磁場が印加された前記紙葉類の前記磁性体の第2磁気特性とを検出する磁気検出部と、
前記磁気検出部により検出された前記第1磁気特性及び前記第2磁気特性に基づいて前記紙葉類の識別処理を行う制御部と、を備え
、
前記磁場印加部は、前記第1磁場を印加する第1磁石と、前記第2磁場を印加する第2磁石とを含み、
前記磁気検出部は、前記第1磁気特性を検出する第1磁気センサと、前記第2磁気特性を検出する第2磁気センサとを含み、
前記第1磁石、前記第1磁気センサ、前記第2磁石及び前記第2磁気センサは、前記搬送路を搬送される前記紙葉類の搬送方向にこの順に配置される
ことを特徴とする紙葉類識別装置。
【請求項2】
磁性体を含むセキュリティ要素を備え、搬送路を搬送される紙葉類を識別する紙葉類識別装置であって、
紙葉類の面に対して垂直な第1磁場及び平行な第2磁場を印加する磁場印加部と、
前記第1磁場が印加された前記紙葉類の磁性体の第1磁気特性と、前記第2磁場が印加された前記紙葉類の前記磁性体の第2磁気特性とを検出する磁気検出部と、
前記磁気検出部により検出された前記第1磁気特性及び前記第2磁気特性に基づいて前記紙葉類の識別処理を行う制御部と、を備え、
前記磁場印加部は、前記第1磁場を印加する第1磁石と、前記第2磁場を印加する第2磁石とを含み、
前記磁気検出部は、前記第1磁気特性を検出する第1磁気センサと、前記第2磁気特性を検出する第2磁気センサとを含み、
前記第2磁石、前記第2磁気センサ、前記第1磁石及び前記第1磁気センサは、前記搬送路を搬送される前記紙葉類の搬送方向にこの順に配置される
ことを特徴とする紙葉類識別装置。
【請求項3】
前記第1磁気センサ及び前記第2磁気センサは、それぞれ、磁気抵抗素子を備え、前記紙葉類の搬送面と垂直な方向に設定された感知軸を有する
ことを特徴とする請求項1又は2記載の紙葉類識別装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記第1磁気特性及び前記第2磁気特性に基づいて前記紙葉類の真偽判定処理を行う
ことを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の紙葉類識別装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記磁気検出部の出力波形が前記第1磁気特性の検出時と前記第2磁気特性の検出時との間で相違する場合は前記磁性体が異方性媒体であると判定し、前記磁気検出部の出力波形が前記第1磁気特性の検出時と前記第2磁気特性の検出時との間で相似する場合は前記磁性体が等方性媒体であると判定する
ことを特徴とする請求項4記載の紙葉類識別装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記第1磁気特性及び前記第2磁気特性に基づいて前記紙葉類の金種判定処理を行う
ことを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の紙葉類識別装置。
【請求項7】
前記セキュリティ要素は、磁気スレッドである
ことを特徴とする請求項1~6のいずれかに記載の紙葉類識別装置。
【請求項8】
請求項1~7のいずれかに記載の紙葉類識別装置を備えることを特徴とする紙葉類処理装置。
【請求項9】
磁性体を含むセキュリティ要素を備え
、搬送路を搬送される紙葉類を識別する紙葉類識別方法であって、
紙葉類の面に対して垂直な第1磁場を
第1磁石により印加するステップと、
前記第1磁場が印加された前記紙葉類の磁性体の第1磁気特性を
第1磁気センサにより検出するステップと、
前記紙葉類の面に対して平行な第2磁場を
第2磁石により印加するステップと、
前記第2磁場が印加された前記紙葉類の前記磁性体の第2磁気特性を
第2磁気センサにより検出するステップと、
前記第1磁気センサ及び前記第2磁気センサにより
それぞれ検出された前記第1磁気特性及び前記第2磁気特性に基づいて前記紙葉類の識別処理を行うステップと、を備え
、
前記第1磁石、前記第1磁気センサ、前記第2磁石及び前記第2磁気センサは、前記搬送路を搬送される前記紙葉類の搬送方向にこの順に配置される
ことを特徴とする紙葉類識別方法。
【請求項10】
磁性体を含むセキュリティ要素を備え、搬送路を搬送される紙葉類を識別する紙葉類識別方法であって、
紙葉類の面に対して垂直な第1磁場を第1磁石により印加するステップと、
前記第1磁場が印加された前記紙葉類の磁性体の第1磁気特性を第1磁気センサにより検出するステップと、
前記紙葉類の面に対して平行な第2磁場を第2磁石により印加するステップと、
前記第2磁場が印加された前記紙葉類の前記磁性体の第2磁気特性を第2磁気センサにより検出するステップと、
前記第1磁気センサ及び前記第2磁気センサによりそれぞれ検出された前記第1磁気特性及び前記第2磁気特性に基づいて前記紙葉類の識別処理を行うステップと、を備え、
前記第2磁石、前記第2磁気センサ、前記第1磁石及び前記第1磁気センサは、前記搬送路を搬送される前記紙葉類の搬送方向にこの順に配置される
ことを特徴とする紙葉類識別方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙葉類識別装置、紙葉類処理装置及び紙葉類識別方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、紙葉類の偽造防止のために様々なセキュリティ特徴が付与されることがあり、例えば、多くの国の紙幣では、セキュリティ要素としてセキュリティスレッドが設けられている。セキュリティスレッドは、一般に、金属製又は樹脂製の細い帯状体であり、基材に貼り付けられたり、漉き込まれたりして設けられる。セキュリティスレッドの中には磁気スレッドと呼ばれるものも存在しており、磁気スレッドは、スレッド部分に磁気情報が付与されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、磁気ヘッド表面に平行となる磁界を発生させて磁気パターンを磁化させる方法が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、紙葉類の搬送方向と垂直かつ紙葉類の搬送面と平行な向きの磁界で磁界強度が搬送方向に進むに連れて減少してゼロに達した後に磁界の向きを逆向きにして再び磁界強度が増加する磁界を発生させる磁気質検出装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第6209674号
【文献】特許第5945627号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、近年、着磁方向が決まっている、すなわち、ある特定の方向のみ強く着磁(磁化)する異方性媒体と、着磁方向が決まっていない、すなわち、あらゆる方向で着磁(磁化)する等方性媒体とが磁気スレッドの長さ方向に混在して用いられることがある。このように、異方性媒体は、紙葉類の面に対して当該異方性媒体の着磁方向である所定の方向に着磁しなければならないという特徴を持つ。したがって、紙葉類の面に対して垂直な方向に着磁する異方性媒体を磁気スレッドが備える場合、紙葉類識別装置に搭載された磁場印加部の着磁方向が紙葉類の面に対して平行であると、紙葉類識別装置に搭載された磁気検出部の当該磁気スレッドに係る磁気出力が安定しないという課題がある。
【0007】
また、特許文献1、2は、いずれも紙葉類の面に対して平行な方向に着磁する技術を開示しており、上述のように、異方性媒体の着磁方向が紙葉類の面に対して垂直な方向である場合は、安定的に当該異方性媒体を検出することが困難である。
【0008】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、紙葉類に設けられた異方性媒体を検出可能な紙葉類識別装置、紙葉類処理装置及び紙葉類識別方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、磁性体を含むセキュリティ要素を備える紙葉類を識別する紙葉類識別装置であって、紙葉類の面に対して垂直な第1磁場及び平行な第2磁場を印加する磁場印加部と、前記第1磁場が印加された前記紙葉類の磁性体の第1磁気特性と、前記第2磁場が印加された前記紙葉類の前記磁性体の第2磁気特性とを検出する磁気検出部と、前記磁気検出部により検出された前記第1磁気特性及び前記第2磁気特性に基づいて前記紙葉類の識別処理を行う制御部と、を備えることを特徴とする。
【0010】
また、本発明は、上記発明において、前記磁場印加部は、前記第1磁場を印加する第1磁石と、前記第2磁場を印加する第2磁石とを含むことを特徴とする。
【0011】
また、本発明は、上記発明において、前記磁気検出部は、前記第1磁気特性を検出する第1磁気センサと、前記第2磁気特性を検出する第2磁気センサとを含むことを特徴とする。
【0012】
また、本発明は、上記発明において、前記制御部は、前記第1磁気特性及び前記第2磁気特性に基づいて前記紙葉類の真偽判定処理を行うことを特徴とする。
【0013】
また、本発明は、上記発明において、前記制御部は、前記磁気検出部の出力波形が前記第1磁気特性の検出時と前記第2磁気特性の検出時との間で相違する場合は前記磁性体が異方性媒体であると判定し、前記磁気検出部の出力波形が前記第1磁気特性の検出時と前記第2磁気特性の検出時との間で相似する場合は前記磁性体が等方性媒体であると判定することを特徴とする。
【0014】
また、本発明は、上記発明において、前記制御部は、前記第1磁気特性及び前記第2磁気特性に基づいて前記紙葉類の金種判定処理を行うことを特徴とする。
【0015】
また、本発明は、上記発明において、前記セキュリティ要素は、磁気スレッドであることを特徴とする。
【0016】
また、本発明は、紙葉類処理装置であって、前記紙葉類処理装置は、前記紙葉類識別装置を備えることを特徴とする。
【0017】
また、本発明は、磁性体を含むセキュリティ要素を備える紙葉類を識別する紙葉類識別方法であって、紙葉類の面に対して垂直な第1磁場を印加するステップと、前記第1磁場が印加された前記紙葉類の磁性体の第1磁気特性を検出するステップと、前記紙葉類の面に対して平行な第2磁場を印加するステップと、前記第2磁場が印加された前記紙葉類の前記磁性体の第2磁気特性を検出するステップと、前記磁気検出部により検出された前記第1磁気特性及び前記第2磁気特性に基づいて前記紙葉類の識別処理を行うステップと、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明の紙葉類識別装置、紙葉類処理装置及び紙葉類識別方法によれば、紙葉類に設けられた異方性媒体を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】異方性媒体及び等方性媒体を説明するための模式図である。
【
図2】(a)は、実施形態1に係る紙幣処理装置の外観を示した斜視図であり、(b)は、実施形態1に係る紙幣処理装置の内部構造を示した断面図である。
【
図3】実施形態1に係る紙幣識別装置の構成を説明する模式図であり、(a)が断面図であり、(b)が平面図である。
【
図4】実施形態1に係る磁気ラインセンサの構成を説明する断面模式図である。
【
図5】実施形態1に係る磁気ラインセンサの構成を説明する平面模式図である。
【
図6】実施形態1に係る紙幣識別装置の構成を説明するブロック図である。
【
図7】実施形態1に係る磁気検出部(第1磁気センサ及び第2磁気センサ)の出力波形の一例を示す模式図である。
【
図8】実施形態1に係る紙幣識別装置で行われる処理の手順の一例を示すフローチャートである。
【
図9】変形形態に係る磁気ラインセンサの一例の構成を説明する断面模式図である。
【
図10】変形形態に係る磁気ラインセンサの他の例の構成を説明する断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る紙葉類識別装置、紙葉類処理装置及び紙葉類識別方法の好適な実施形態を、図面を参照しながら説明する。本発明の対象となる紙葉類としては、紙幣、小切手、商品券、手形、帳票、有価証券、カード状媒体等の様々な紙葉類が適用可能であるが、以下においては、紙幣を対象とする装置及び方法を例として、本発明を説明する。なお、以下の説明は、紙葉類識別装置、紙葉類処理装置及び紙葉類識別方法の一例である。
【0021】
<本実施形態の概要>
まず、実施形態1における紙幣識別の手法の概要について説明する。本実施形態は、磁性体を含むセキュリティ要素として、磁気スレッドを備える紙幣から異方性媒体及び等方性媒体をそれぞれ検出し、当該検出結果に基づいて当該紙幣を識別する手法を提供する。対象となるセキュリティ要素(磁気スレッド)は、磁性体として、異方性媒体及び等方性媒体を含むものでもよいし、異方性媒体のみを含むものでもよいし、等方性媒体のみを含むものでもよいが、なかでも、磁性体として、異方性媒体及び等方性媒体を含むものと、異方性媒体のみを含むとが好ましく、特に、磁性体として、異方性媒体及び等方性媒体を含むものが好ましい。
【0022】
まず、異方性媒体及び等方性媒体について説明する。異方性媒体とは、ある特定の方向のみ強く着磁(磁化)する特徴を持つ磁性体(例えば異方性磁石)であり、当該方向は磁化容易方向と呼ばれる。他方、等方性媒体は、あらゆる方向に着磁(磁化)する特徴を持つ磁性体である。紙幣の磁気スレッドに含まれる異方性媒体及び等方性媒体は、一般に、いずれも高高保磁力を有する。
【0023】
より詳細には、
図1に示すように、異方性媒体及び等方性媒体は、いずれも多数の粒子の集合体であり、各粒子は、同じ方向の磁化容易軸(当該結晶が磁化され易い方向、図中の各黒矢印)を持つ無数の原子磁石から構成されている。異方性媒体では、各粒子の磁化容易軸が一方向に揃っており、当該方向が着磁方向(磁化容易方向)となる。他方、等方性媒体では、各粒子の磁化容易軸が互いに異なることから、あらゆる方向に着磁する。
【0024】
そして、紙幣の磁気スレッドに含まれる異方性媒体では、通常、その磁化容易方向は、当該紙幣の面に対して垂直又は水平な方向に向いている。そこで、本実施形態では、紙幣の面に対して垂直な第1磁場(以下、垂直磁場と言う)と、紙幣の面に対して平行な第2磁場(以下、水平磁場と言う)とを紙幣に印加する。これにより、垂直磁場又は水平磁場により磁気スレッドに含まれる異方性媒体を着磁させることが可能となり、異方性媒体を磁気センサにて安定的に検出することができる。他方、磁気スレッドに含まれる等方性媒体については、垂直磁場及び水平磁場のいずれによっても着磁可能であることから、これも磁気センサにて安定的に検出することができる。
【0025】
以下、紙幣の磁気スレッドに含まれる異方性媒体において、磁化容易方向が紙幣の面に対して垂直及び平行な方向に向いている異方性媒体を、それぞれ、垂直異方性媒体及び水平異方性媒体とも言う。
【0026】
<紙幣処理装置の構成>
次に、
図2を用いて、本実施形態に係る紙幣処理装置の構成について説明する。本実施形態に係る紙幣処理装置200は、例えば、
図1(a)及び(b)に示す構成を有する。
図1(a)及び(b)に示す紙幣処理装置200は、複数の紙幣を載置可能なホッパ210と、ホッパ210に載置された紙幣を1枚ずつ繰り出す繰出部211と、繰出部211から繰り出された紙幣を搬送する搬送路212と、紙幣の識別処理を行う紙幣識別装置100と、紙幣識別装置100で識別された正常な紙幣を集積する集積部213と、所定条件を満たさない異常な紙幣を集積するリジェクト部214と、紙幣処理装置200に入力された情報や、処理された結果等を表示する表示部215と、紙幣を搬送路212に沿って1枚ずつ搬送する搬送部(図示せず)と、を備える。搬送部は、複数のローラ等の搬送手段と、搬送手段を駆動する、モータ等の駆動装置とを有している。紙幣処理装置200は更に、装置内における紙幣の搬送状態を検知するため、図中の三角印で示される各位置に透過型又は反射型の光学センサを備えている。これらの光学センサの検知結果から、紙幣の形状と斜行状態を推定してもよい。紙幣識別装置100をこのような紙幣処理装置200に内蔵して利用することにより、ホッパ210に載置された複数の紙幣を連続して処理し、偽券、損券又は真偽不確定券と判定された紙幣をリジェクト部214に返却し、分別することができる。
【0027】
<紙幣識別装置の構成>
次に、
図3を用いて、紙幣識別装置100の構成について説明する。
図3(a)及び(b)に示すように、本実施形態に係る紙幣識別装置100は、紙幣処理装置200において紙幣BNが搬送される搬送路212を挟んだ上側のユニットと下側のユニットとから構成されている。
図3(b)は、紙幣識別装置100の上側のユニットを下から見た平面図に相当する。紙幣識別装置100は、紙幣BNの搬送路212に沿って、紙幣識別装置100に順次搬送されてくる紙幣BNを検出し、紙幣識別装置100における紙幣BNの検出開始のタイミングを決定するための紙幣検出信号を生成するフォトセンサ11と、CCD、CMOS等の撮像素子をライン状に並べた画像センサ、及び光源やレンズ等の撮像光学系で構成され、搬送路212を搬送される紙幣BNの画像データを検出する光学ラインセンサ(密着イメージセンサ)20と、搬送路212を挟んで対向するローラの一方における紙幣BN通過時の変位量をセンサによって検出することによって紙幣BNの厚みを検出する厚み検出センサ30と、搬送路212を搬送される紙幣BNに含まれる磁気情報や磁気パターンを検出する磁気ラインセンサ40と、紙幣BNが通過したことを検出するフォトセンサ12とが並んで配置された構成を有する。光学ラインセンサ20、厚み検出センサ30及び磁気ラインセンサ40は、搬送路212の幅に対して充分に長く、紙幣BNの全面を検出できる。また、紙幣識別装置100には、搬送路212内を紙幣BNが移動できるように、搬送機構13が設けられている。搬送機構13としては特に限定されず、例えば、ローラ、ベルト等をモータ等の駆動装置で駆動するものが用いられる。更に、磁気ラインセンサ40の下方には、紙幣BNを磁気ラインセンサ40の磁気検出面に密着させることができるように、外周表面に毛状の材料が設けられた毛ローラ14が配置されている。
【0028】
紙幣識別装置100は、これらのセンサによって取得されたデータ(情報)を利用して紙幣BNの識別処理を行う。識別処理の内容は特に限定されず、例えば、紙幣の場合は金種の識別、紙幣の真偽や正損の判定、紙幣の外形情報や通過位置情報の取得、紙幣に印字された数字、文字等の記号の読み取りといったといった各種機能が挙げられる。
【0029】
紙幣BNには、磁性体を含むセキュリティ要素として、磁気スレッドMTが設けられている。磁気スレッドMTは、磁気情報が付与された金属製又は樹脂製の細い帯状体であり、紙幣BNの基材に貼り付けられたり、漉き込まれたりして設けられている。磁気スレッドMTは、例えば、紙幣BNの短手方向の一端から他端にかけて設けられている。
【0030】
<磁気ラインセンサの構成>
次に、
図4を用いて、磁気ラインセンサ40の構成について説明する。なお、
図4は、
図3(a)で示した磁気ラインセンサ40を上下反転して示している。磁気ラインセンサ40は、
図4に示すように、第1磁石41a及び第2磁石41bを含む磁場印加部41と、複数の第1磁気センサ42a及び複数の第2磁気センサ42bを含む磁気検出部42とを備えている。第1磁石41a、第1磁気センサ42a、第2磁石41b及び第2磁気センサ42bは、搬送路212近傍に配置されており、搬送路212を搬送される紙幣BNの搬送方向にこの順に配置されている。
【0031】
第1磁石41a及び第2磁石41bは、主走査方向(紙幣BNの搬送方向と直交する方向)に各々延在して配置されており、各磁石41a、41bの周囲には、
図4に示すようなループ状の磁束が形成され、特に搬送面216の近傍では、第1磁石41aによって搬送面216に対して垂直な磁場が形成されるとともに、第2磁石41bによって搬送面216に対して平行な磁場が形成されている。このため、第1磁石41a及び第2磁石41bは、それぞれ、搬送路212を搬送される紙幣BNに垂直磁場及び水平磁場を印加する。垂直磁場を通過した紙幣BNは、紙幣BNの面に対して垂直な方向に着磁され、水平磁場を通過した紙幣BNは、紙幣BNの面に対して平行な方向に着磁される。すなわち、垂直異方性媒体は、第1磁石41aによる垂直磁場によって着磁されるが、第2磁石41bによる水平磁場によって着磁されない。水平異方性媒体は、第1磁石41aによる垂直磁場によって着磁されないが、第2磁石41bによる水平磁場によって着磁される。等方性媒体は、第1磁石41aによる垂直磁場及び第2磁石41bによる水平磁場のいずれによって着磁される。
【0032】
第1磁石41aのN極及びS極は、紙幣BNが搬送される搬送面216に直交する方向に並んで配置されており、第2磁石41bのN極及びS極は、紙幣BNの搬送方向に平行な方向に並んで配置されている。
【0033】
第1磁石41a及び第2磁石41bは、永久磁石又は電磁石であり、直流磁場を発生する。第1磁石41a及び第2磁石41bの一方が永久磁石で他方が電磁石であってもよい。
【0034】
第1磁気センサ42aは、主走査方向に一定のピッチで配置されており、第2磁気センサ42bは、主走査方向において第1磁気センサ42aと同じ位置に、第1磁気センサ42aと同じ数だけ配置されている。すなわち、第2磁気センサ42bは、主走査方向に第1磁気センサ42aと同じピッチで配置されている。また、各磁気センサ42a、42bは、互いに独立して検出信号を出力する。これにより、磁気ラインセンサ40は、紙幣BNを各磁気センサ42a、42bに対応する領域に分割して、各領域で紙幣BNの磁気特性を計測することができる。
【0035】
以下、主走査方向において同じ位置に存在する一対の第1磁気センサ42a及び第2磁気センサ42bを、同一チャンネルの磁気センサとして扱う。
【0036】
複数の第1磁気センサ42aのうち、磁気スレッドMTが近傍を通過する第1磁気センサ42aは、第1磁石41aにより垂直磁場が印加された紙幣BNの磁気スレッドMTの磁性体の第1磁気特性を検出する。ここで、磁気スレッドMTが垂直異方性媒体を含む場合、垂直異方性媒体は、第1磁石41aにより着磁されることから、磁気スレッドMTが近傍を通過する第1磁気センサ42aは、垂直異方性媒体の磁気特性を第1磁気特性として安定的に検出できる。他方、磁気スレッドMTが水平異方性媒体を含む場合、水平異方性媒体は、第1磁石41aにより着磁されないことから、磁気スレッドMTが近傍を通過する第1磁気センサ42aは、水平異方性媒体の磁気特性を安定的に検出できない。
【0037】
複数の第2磁気センサ42bのうち、磁気スレッドMTが近傍を通過する第2磁気センサ42b(通常は、第1磁気特性を検出した第1磁気センサ42aと同一チャンネルの第2磁気センサ42b)は、第2磁石41bにより水平磁場が印加された紙幣BNの磁気スレッドMTの磁性体の第2磁気特性を検出する。ここで、磁気スレッドMTが水平異方性媒体を含む場合、水平異方性媒体は、第2磁石41bにより着磁されることから、磁気スレッドMTが近傍を通過する第2磁気センサ42bは、水平異方性媒体の磁気特性を安定的に検出できる。他方、磁気スレッドMTが垂直異方性媒体を含む場合、垂直異方性媒体は、第2磁石41bにより着磁されないことから、磁気スレッドMTが近傍を通過する第2磁気センサ42bは、垂直異方性媒体の磁気特性を安定的に検出できない。
【0038】
このように、本実施形態は、磁気スレッドMTの異方性媒体が垂直異方性媒体及び水平異方性媒体のいずれであったとしても、少なくとも一つの第1磁気センサ42aと、少なくとも一つの第2磁気センサ42bとのいずれか一方によって安定的に検出することができる。
【0039】
また、磁気スレッドMTが等方性媒体を含む場合は、等方性媒体は、垂直磁場及び水平磁場のいずれによっても着磁することから、少なくとも一つの第1磁気センサ42aと、少なくとも一つの第2磁気センサ42bとのいずれによっても安定的に検出することができる。
【0040】
すなわち、磁気スレッドMTが近傍を通過する第1磁気センサ42a及び第2磁気センサ42b(通常は、同一チャンネルの第1磁気センサ42a及び第2磁気センサ42b)の出力波形(出力信号)は、磁気スレッドMTが垂直異方性媒体又は水平異方性媒体を含む場合は、互いに異なる形状のものとなるが、磁気スレッドMTが等方性媒体を含む場合は、互いに相似する形状のものとなる。したがって、本実施形態では、異方性媒体及び等方性媒体をそれぞれ区別して検出することが可能である。そのため、異方性媒体及び等方性媒体を含むセキュリティ要素を備える紙幣BNについて、第1磁気センサ42a及び第2磁気センサ42bの検出結果に基づいて、すなわち第1磁気特性及び第2磁気特性に基づいて、真偽を精度良く判定することができる。
【0041】
各磁気センサ42a、42bは、感知軸を有するものでも有さないものでもよい。感知軸は、例えば、紙幣BNの搬送方向と平行、かつ紙幣BNの搬送面216と垂直な面内で各磁気センサ42a、42bから放射状に広がるように設定されてもよいし、紙幣BNの搬送面216と垂直な方向に設定されてもよい。
【0042】
各磁気センサ42a、42bは、1以上の磁気検出素子(図示せず)を備えている。磁気検出素子としては、被検出対象である磁気スレッドMTの磁性体の磁束密度の変化を信号として出力するもの(微分型磁気検出素子)が好適に用いられる。具体的には、磁気抵抗素子(MR素子)、フラックスゲート(FG素子)、磁気インピーダンス(MI素子)等が挙げられる。磁気抵抗素子(MR素子)の種類は、異方性磁気抵抗素子(AMR素子)、巨大磁気抵抗素子(GMR素子)、トンネル磁気抵抗素子(TMR素子)等であってもよい。また、磁気検出素子は、被検出対象の磁束密度の強さ(絶対値)を出力するものであってもよく、例えば、ホール素子等を用いてもよい。
【0043】
例えば、各磁気センサ42a、42bは、紙幣BNの搬送方向と平行な方向に配置された2つのAMR素子と、2つのAMR素子に接続された配線パターンと、配線パターンに接続された複数の外部接続端子と、各外部接続端子に接続端子が接続された回路基板とを備えている。
【0044】
<紙幣識別装置の機能ブロック>
次に、
図4を用いて、紙幣識別装置100の機能ブロックについて説明する。
図4に示すように、紙幣識別装置100は、紙幣識別装置100の各構成要素を制御する制御部(演算処理部)50と、記憶部60とを更に備えている。制御部50には、各センサや記憶部60等が接続されている。
【0045】
記憶部60は、揮発性又は不揮発性のメモリ等の記憶装置から構成されており、紙幣識別装置100を制御するための各種プログラムと各種データとを記憶している。また、記憶部60は、識別処理に利用される基準情報となるテンプレートが各種の識別処理毎に記憶している。
【0046】
制御部50は、例えば、各種の処理を実現するためのソフトウェアプログラムと、該ソフトウェアプログラムを実行するCPUと、該CPUによって制御される各種ハードウェア等によって構成されている。制御部50の動作に必要なソフトウェアプログラムやデータは記憶部60に記憶される。
【0047】
本実施形態では、制御部50は、磁気検出部42により検出された第1磁気特性及び第2磁気特性に基づいて、すなわち第1磁気センサ42aにより検出された第1磁気特性と第2磁気センサ42bにより検出された第2磁気特性に基づいて、紙幣BNの識別処理を行う。以下、制御部50による紙幣BNの識別処理について更に説明する。
【0048】
制御部50は、光学ラインセンサ20によって採取された紙幣BNの画像の特徴パターンと、紙幣BNの金種ごとの特徴パターンである金種判定用のテンプレートとを比較して、紙幣BNの金種を判定する。
【0049】
制御部50は、第1磁気特性及び第2磁気特性に基づいて紙幣BNの金種を判定してもよい。紙幣BNの磁気スレッドMTが有する磁気情報には、通常、当該紙幣の金種を示すコードである金種コードが含まれるためである。より詳細には、紙幣BNの磁気スレッドMTは、通常、磁性体が存在する高高保磁力部と、磁性体が存在しない非磁性部とを交互に備え、これらの各部の配置及び長さによって金種コードを表している。本実施形態では、少なくとも1つの高高保磁力部が異方性媒体であったとしても、少なくとも一つの第1磁気センサ42aと、少なくとも一つの第2磁気センサ42bとのいずれか一方により当該高高保磁力部を検出することができる。すなわち、磁気スレッドMTが異方性媒体を含んでいても、その金種コードを読み取ることができる。
【0050】
なお、第1磁気特性及び第2磁気特性に基づいて紙幣BNの金種を判定する場合、制御部50は、紙幣BNの画像に基づく金種判定の結果と、第1磁気特性及び第2磁気特性に基づく金種判定の結果とを総合判定し、紙幣BNの最終的な金種を判定する。
【0051】
また、制御部50は、紙幣BNの画像に基づいて、当該紙幣BNの方向、表裏、位置及び斜行の大きさを含む搬送状態を判定する。
【0052】
また、制御部50は、紙幣BNの金種判定結果及び搬送状態に基づいて、磁気スレッドMTが存在する領域を特定する。例えば、磁気スレッドMTの有無や位置を示した情報を金種毎にテンプレートに含めておき、特定した金種に対応する当該情報と、当該紙幣BNの搬送状態とに基づいて、磁気スレッドMTが存在する領域を特定する。
【0053】
また、制御部50は、特定した磁気スレッドMTの領域に基づいて、複数の第1磁気センサ42a及び複数の第2磁気センサ42bのなかから磁気スレッドMTが近傍を通過する第1磁気センサ42a及び第2磁気センサ42bを特定する。
【0054】
また、制御部50は、各センサによって採取されたデータを利用して紙幣BNの真偽を判定する。詳細には、制御部50は、紙幣BNについて複数種の真偽判定処理を行い、全ての判定結果が真のときに紙幣が真券であると判定し、いずれか一つの判定結果を偽のときに紙幣が偽造券であると判定する。
【0055】
好ましくは、制御部50は、複数の第1磁気センサ42aのうち、磁気スレッドMTが近傍を通過する第1磁気センサ42aによって検出された第1磁気特性と、複数の第2磁気センサ42bのうち、磁気スレッドMTが近傍を通過する第2磁気センサ42b(通常は、第1磁気特性を検出した第1磁気センサ42aと同一チャンネルの第2磁気センサ42b)によって検出された第2磁気特性とに基づいて、紙幣BNの真偽判定処理を行う。これにより、異方性媒体を含むセキュリティ要素を備える紙幣BNの真偽判定を、当該セキュリティ要素の有無に基づき精度良く判定することができる。
【0056】
より好ましくは、制御部50は、磁気検出部42の出力波形が第1磁気特性の検出時と第2磁気特性の検出時との間で相違する場合は、紙幣BNの磁性体が異方性媒体であると判定し、磁気検出部42の出力波形が第1磁気特性の検出時と第2磁気特性の検出時との間で相似する場合は、紙幣BNの磁性体が等方性媒体であると判定する。これにより、異方性媒体及び等方性媒体をそれぞれ区別して検出できるため、異方性媒体及び等方性媒体を含むセキュリティ要素を備える紙幣BNの真偽を高精度で判定することができる。
【0057】
より詳細には、制御部50は、磁気スレッドMTが近傍を通過する第1磁気センサ42aの第1磁気特性の検出時の出力波形を、磁気スレッドMTが近傍を通過する第2磁気センサ42b(通常は、第1磁気特性を検出した第1磁気センサ42aと同一チャンネルの第2磁気センサ42b)の出力波形と比較し、両者が異なる場合は磁気スレッドMTの磁性体が異方性媒体であると判定し、両者が相似する場合は紙幣BNの磁性体が等方性媒体であると判定する。
【0058】
なお、2つの出力波形が相違する場合としては、具体的には、2つの出力波形間において対応する位置に存在するピークの向きが互いに相違する場合、2つの出力波形間において対応する位置に一方の波形のみにピークが存在する場合等が挙げられる。他方、2つの出力波形が相似する場合としては、具体的には、2つの出力波形間において対応する位置に同じ向きのピークが存在する場合等が挙げられる。
【0059】
ここで、
図7を用いて、第1磁気センサ42a及び第2磁気センサ42bが微分型磁気検出素子を含む場合の磁気検出部42の出力波形の一例について説明する。ここでは、
図7に示すように、紙幣BNの磁気スレッドMTは、磁性体が存在する高高保磁力部HCと、磁性体が存在しない非磁性部NMとを交互に備え、高高保磁力部HCとして、垂直異方性媒体を含む高高保磁力部VAと、水平異方性媒体を含む高高保磁力部HAと、等方性媒体を含む高高保磁力部IMとを備えているものとする。この場合、垂直磁場により着磁された磁気スレッドMTの磁性体の第1磁気特性を検出する第1磁気センサ42aの出力波形では、高高保磁力部VA及びIMについてはエッジ部に対応してピークが現れるが、高高保磁力部HAのエッジ部に対応してピークは現れず、高高保磁力部HAの検出時は出力値が下がったままか0付近となる。それに対して、水平磁場により着磁された磁気スレッドMTの磁性体の第2磁気特性を検出する第2磁気センサ42bの出力波形では、高高保磁力部HA及びIMについてはエッジ部に対応してピークが現れるが、高高保磁力部VAのエッジ部に対応してピークは現れず、高高保磁力部VAの検出時は出力値が下がったままか0付近となる。したがって、第1磁気センサ42a及び第2磁気センサ42bの出力波形を互いに比較することによって、高高保磁力部HCの有無のみならず、当該高高保磁力部HCが垂直異方性媒体、水平異方性媒体又は等方性媒体のいずれを含むのかも判定することが可能である。
【0060】
また、磁気スレッドMTは、高高保磁力部HC及び非磁性部NMの配置と、各高高保磁力部HCの長さL1、L2、L3・・・と、各非磁性部NMの長さl1、l2、l3・・・とによって当該紙幣BNの金種コードを表している。すなわち、紙幣BNの金種毎に、高高保磁力部HC及び非磁性部NMの配置と、各高高保磁力部HCの長さL1、L2、L3・・・と、各非磁性部NMの長さl1、l2、l3・・・とが設定されている。
【0061】
<紙幣識別の手順>
次に、
図8を用いて、紙幣識別装置100で行われる処理の手順について説明する。
【0062】
図8に示すように、まず、磁場印加部41(第1磁石41a)が、紙幣の面に対して垂直磁場を印加する(ステップS11)。
【0063】
次に、磁気検出部42(第1磁気センサ42a)が、ステップS11で垂直磁場が印加された紙幣の磁性体の第1磁気特性を検出する(ステップS12)。
【0064】
次に、磁場印加部41(第2磁石41b)が、紙幣の面に対して水平磁場を印加する(ステップS13)。
【0065】
次に、磁気検出部42(第2磁気センサ42b)が、ステップS13で水平磁場が印加された紙幣の磁性体の第2磁気特性を検出する(ステップS14)。
【0066】
ステップS11及びS12と、ステップS13及びS14とは、互いに順番を入れ替えてもよい。すなわち、ステップS13、S14、S11及びS12の順に実行してもよい。
【0067】
次に、制御部50が、紙幣BNの画像(並びに第1磁気特性及び第2磁気特性)に基づいて紙幣BNの金種及び搬送状態を判定する(ステップS15)。
【0068】
次に、制御部50が、ステップS15での判定結果に基づいて、磁気スレッドMTが存在する領域を特定する(ステップS16)。
【0069】
そして、制御部50が、磁気検出部42により検出された第1磁気特性及び第2磁気特性に基づいて紙幣BNの真偽を判定する(ステップS17)。より詳細には、ステップS15で特定した磁気スレッドMTの領域に対応する第1磁気センサ42a及び第2磁気センサ42bにより検出された第1磁気特性及び第2磁気特性に基づいて紙幣BNの真偽を判定する。
【0070】
以上説明したように、上記実施形態では、紙幣に対して垂直磁場及び水平磁場を印加し、垂直磁場が印加された紙幣の磁性体の第1磁気特性と、水平磁場が印加された紙幣の磁性体の第2磁気特性とを検出し、検出した第1磁気特性及び第2磁気特性に基づいて紙幣の識別処理を行うことから、異方性媒体を検出することができる。
【0071】
なお、上記実施形態では、磁場印加部41が第1磁石41a及び第2磁石41bを含み、磁気検出部42が第1磁気センサ42a及び第2磁気センサ42bを含む場合について説明したが、磁場印加部41及び磁気検出部42の構成は特に限定されない。
【0072】
例えば、
図9に示すように、磁場印加部41が1つの磁石41cを含み、第1磁気センサ42a及び第2磁気センサ42bが磁石41cの両側に配置され、第2磁気センサ42b、磁石41c及び第1磁気センサ42aは、搬送路212を搬送される紙幣BNの搬送方向にこの順に配置されてもよい。磁石41cは、主走査方向に延在して配置されている。磁石41cの周囲には、
図9に示すようなループ状の磁束が形成され、特に、搬送面216の近傍において、磁石41cの上方では搬送面216に対して垂直な磁場が形成され、磁石41cの両側では搬送面216に対して平行な磁場と垂直な磁場が形成されている。このため、磁石41cは、搬送路212を搬送される紙幣BNに対して、第2磁気センサ42bを通過する前に水平磁場を印加し、第2磁気センサ42bを通過して第1磁気センサ42aを通過する前に垂直磁場を印加する。したがって、第2磁気センサ42bは、水平磁場を通過して紙幣BNの面に対して平行な方向に着磁された紙幣BNの磁性体の第2磁気特性を検出でき、第1磁気センサ42aは、垂直磁場を通過して紙幣BNの面に対して垂直な方向に着磁された紙幣BNの磁性体の第1磁気特性を検出することが可能である。
【0073】
また、例えば、
図10に示すように、磁気検出部42が1つの磁気センサ42cを含み、第1磁石41a及び第2磁石41bが磁気センサ42cの両側に配置され、紙幣BNがこれらの近傍を往復するように搬送されてもよい。これにより、往路において、搬送路212を搬送される紙幣BNに対して、第1磁石41aにより垂直磁場を印加し、紙幣BNの面に対して垂直な方向に着磁された紙幣BNの磁性体の第1磁気特性を磁気センサ42cにより検出することが可能である。また、復路では、搬送路212を搬送される紙幣BNに対して、第2磁石41bにより水平磁場を印加し、紙幣BNの面に対して平行な方向に着磁された紙幣BNの磁性体の第2磁気特性を磁気センサ42cにより検出することが可能である。
【0074】
また、上記実施形態では、本発明に係る磁気センサが、搬送路212の幅方向の全域において紙幣BNの磁気データ(磁気特性)を取得する磁気ラインセンサ40を構成する場合について説明したが、本発明に係る磁気センサは、搬送路212の幅方向の一地点において紙幣の磁気データ(磁気特性)を取得するポイントセンサであってもよい。
【0075】
また、上記実施形態では、磁気スレッドMTが、高高保磁力部HCとして、垂直異方性媒体を含む高高保磁力部VAと、水平異方性媒体を含む高高保磁力部HAと、等方性媒体を含む高高保磁力部IMとを備える場合について説明したが、磁気スレッドMTは、高高保磁力部HCとして、高高保磁力部VAのみ、高高保磁力部HAのみ、高高保磁力部IMのみ、高高保磁力部VA及びHAのみ、高高保磁力部VA及びIMのみ、又は高高保磁力部HA及びIMのみ、を含むものであってもよい。なかでも、磁気スレッドMTが高高保磁力部HCとして、高高保磁力部VA及びHAの少なくとも一方を含む場合、並びに高高保磁力部VA又はHAと、高高保磁力部IMとを含む場合が好適である。
【0076】
また、上記実施形態では、磁性体を含むセキュリティ要素が磁気スレッドMTである場合について説明したが、磁性体を含むセキュリティ要素は、例えば、磁気インクやホログラムであってもよい。
【0077】
また、上記実施形態では、紙幣BNが、紙幣処理装置200内の搬送路212を短手方向に搬送される場合について説明したが、紙幣BNは、本発明に係る紙幣処理装置内の搬送路を長手方向に搬送されてもよい。
【0078】
以上、図面を参照しながら本発明の実施形態を説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。また、各実施形態の構成は、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜組み合わされてもよいし、変更されてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0079】
以上のように、本発明は、紙葉類に設けられた異方性媒体を検出するのに有用な技術である。
【符号の説明】
【0080】
11、12:フォトセンサ
13:搬送機構
14:毛ローラ
20:光学ラインセンサ
30:厚み検出センサ
40:磁気ラインセンサ
41:磁場印加部
41a:第1磁石
41b:第2磁石
41c:磁石
42:磁気検出部
42a:第1磁気センサ
42b:第2磁気センサ
42c:磁気センサ
50:制御部
60:記憶部
100:紙幣識別装置(紙葉類識別装置)
200:紙幣処理装置(紙葉類処理装置)
210:ホッパ
211:繰出部
212:搬送路
213:集積部
214:リジェクト部
215:表示部
215:搬送面
BN:紙幣
MT:磁気スレッド
HC:高高保磁力部
NM:非磁性部
VA:垂直異方性媒体を含む高高保磁力部
HA:水平異方性媒体を含む高高保磁力部
IM:等方性媒体を含む高高保磁力部