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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-26
(45)【発行日】2024-04-03
(54)【発明の名称】接着剤容器
(51)【国際特許分類】
   B65D 41/04 20060101AFI20240327BHJP
【FI】
B65D41/04 200
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020072940
(22)【出願日】2020-04-15
(65)【公開番号】P2021169321
(43)【公開日】2021-10-28
【審査請求日】2023-01-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】305044143
【氏名又は名称】積水フーラー株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000228442
【氏名又は名称】日本クロージャー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
(72)【発明者】
【氏名】水上 正之
(72)【発明者】
【氏名】久保 喜弘
(72)【発明者】
【氏名】阪上 祥平
(72)【発明者】
【氏名】田中 幸雄
(72)【発明者】
【氏名】梅永 健登
【審査官】矢澤 周一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-306436(JP,A)
【文献】特開2014-015254(JP,A)
【文献】特開2013-107677(JP,A)
【文献】特開2003-261155(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 41/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部に開口を有する容器本体と、
前記開口を封止する蓋体と、を備え、
前記蓋体は第1の突起部と、前記第1の突起部の外側に設けられた第2の突起部と、を有しており、
前記第1の突起部は、前記蓋体の中心軸と平行に形成され、
前記第1の突起部の内周面は、前記蓋体の中心軸と平行に形成され、
前記第1の突起部は、前記蓋体側に配置された第1部分と、前記第1部分の前記蓋体とは反対側に配置された第2部分と、を有し、
前記第1部分の外周面は、前記中心軸と平行に形成され、
前記第2部分の外周面は、前記蓋体とは反対側に向かうに従って前記中心軸側に位置するように傾斜した傾斜面であり、
前記第1部分の外周面および前記第2部分の外周面は、前記内周面と、前記中心軸に対して垂直な方向において対向し、
封止状態において、前記第1の突起部の前記第1部分の外周面は、前記開口の縁に形成されている縁部の内側側板部に当接する、接着剤容器。
【請求項2】
前記蓋体は、天井面と、前記天井面の周囲から前記天井面に対して垂直な方向に形成された側部と、を有し、
前記側部は、
円筒状の本体部と、
前記本体部の前記天井面とは反対側の端部の外周縁に沿って設けられた、円筒状のネジ形成部と、
前記第1の突起部と前記第2の突起部を含み、前記本体部の前記端部の内周縁に沿って設けられたシール部と、を有し、
前記シール部は、
前記本体部の前記端部から前記蓋体の中心軸に平行に突出するように形成された基端部を更に有し、
前記第1の突起部の前記第1部分は、前記基端部の前記天井面とは反対側の端から突出し、
前記第2の突起部は、前記基端部の前記天井面とは反対側の端から突出している、
請求項1に記載の接着剤容器
【請求項3】
前記封止状態において前記第2の突起部は、前記縁部の天板部に当接する、
請求項1または2に記載の接着剤容器。
【請求項4】
前記蓋体は、PP(polypropylene)を主成分として含む、
請求項1~3のいずれか1項に記載の接着剤容器。
【請求項5】
前記第1の突起部は、前記第2の突起部よりも長い、
請求項1~4のいずれか1項に記載の接着剤容器。
【請求項6】
前記封止状態において前記第1の突起部の前記傾斜面ではない前記第1部分の外周面のみが前記内側側板部に当接する、
請求項に記載の接着剤容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着剤容器に関する。
【背景技術】
【0002】
硬質ポリ塩化ビニル配管用接着剤とは、MEK(methyl ethyl ketone)やアセトンやTHF(tetrahydrofuran)等の有機溶剤、塩化ビニルや塩ビ酢ビ等の樹脂、安定剤や着色剤等のその他添加剤からなる有機溶剤系溶液である(非特許文献1参照)。
【0003】
上記の接着剤は硬質ポリ塩化ビニル管と継手を接着接合する際に使用するものである。
上記の接着剤用容器としてはブリキ等の缶、馬毛やナイロン糸等の刷毛を取り付けたPP(polypropylene)やPE(polyethylene)のキャップの2部材で構成される容器である(例えば、特許文献1、2、3、4参照)。この接着剤容器は、保管・運搬時に中の接着剤が揮発しないことや漏れないことが要求されることから十分な気密性を確保する必要がある。従来は缶側に平行な天板を設け且つキャップ側にはその天板に接する突起状のシール部を設けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】意匠登録第1031875号公報
【文献】意匠登録第1142528号公報
【文献】特開2005-306436号公報
【非特許文献】
【0005】
【文献】エスロン接着剤カタログ(積水化学工業、ツールコードNo.05143、1997年9月)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記PPやPEキャップは射出成形にて得ることが一般的であるが成形条件のわずかな変動によりキャップシール部の寸法バラツキが発生する。
【0007】
そのため、寸法バラツキのあるキャップを使用するとシール性が弱い部分が発生し容器が横倒しになった状態で雰囲気温度が高くなると、接着剤中の有機溶剤成分の気化により容器内の内圧が上昇し接着剤が漏れることがある。
【0008】
本発明は、キャップシール部の寸法バラツキが発生している状態において雰囲気温度が高い場合でも、接着剤が漏れることを防ぐことが可能な接着剤容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の発明にかかる接着剤容器は、容器本体と、蓋体と、を備える。容器本体は、上部に開口を有する。蓋体は、開口を封止する。蓋体は第1の突起部と、第1の突起部の外側に設けられた第2の突起部と、を有する。封止状態において、第1の突起部は、開口の縁に形成された縁部の内側側板部に当接する。
【0010】
このように第1の突起部が開口の縁に形成された縁部の内側側板部に当接するように構成されているため、第1の突起部に例えば上下方向の寸法バラツキが多少発生したとしても当接によってシール性を確保することができ、雰囲気温度が高い場合でも接着剤の漏れを防ぐことが可能となる。
【0011】
また、雰囲気温度が高い場合には内容物の接着剤中の有機溶剤成分の気化により容器内の内圧が上昇するため、第1の突起部が開口の縁に形成された縁部の内側側板部に押し当てられる応力を受けることによりセルフシール機能が発現する。
【0012】
第2の発明にかかる接着剤容器は、第1の発明にかかる接着剤容器であって、第1の突起部は、内側側板部に当接する外周面を有する。外周面は、第1の突起部の先端に向かうに従って内側に位置するような傾斜面を含む。
【0013】
これにより、第1の突起部の外周面先端の傾斜面が、開口の縁部に摺動しながら挿入されるため、蓋体が開口に対しセンタリングされながら封止することができる。
【0014】
第3の発明にかかる接着剤容器は、第1の発明にかかる接着剤容器であって、封止状態において第2の突起部は、縁部の天板部に当接する。
【0015】
万が一、第1の突起部に異常が生じた場合であっても、第2の突起部を有することでダブルシール機構となり内容物の漏れを防ぐことが出来る。また第2の突起部が天板部に当接したときに締め込みトルクが著しく上昇する為、使用者が締め込みの完了を体感できる効果も発揮できる。
【0016】
第4の発明にかかる接着剤容器は、第1~3のいずれかの発明にかかる接着剤容器であって、蓋体は、PP(polypropylene)を主成分として含む。
【0017】
このようにPPを主成分として含むことにより、第1の突起部および第2の突起部を容易に形成することができる。
【0018】
第5の発明にかかる接着剤容器は、第1~4のいずれかの発明にかかる接着剤容器であって、第1の突起部は、第2の突起部よりも長い。
【0019】
これにより、第1の突起部を縁部の内側側板部に当接させながら、第2の突起部を縁部の天板部に当接させることができる。
【0020】
第6の発明にかかる接着剤容器は、第2の発明にかかる接着剤容器であって、封止状態において第1の突起部の傾斜面ではない垂直面のみが内側側板部に当接する。
【0021】
これにより、開口に形成された縁部の内側側板部と第1の突起の垂直面が面接触するため、上下方向および横方向の寸法バラつきの影響を低減するとともに、シール面積が増加するため、気密性が向上する。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、キャップシール部の寸法バラツキが発生している状態において雰囲気温度が高い場合でも、接着剤が漏れることを防ぐことが可能な接着剤容器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明にかかる実施の形態における接着剤容器の外観を示す斜視図。
図2図1の接着剤容器からキャップを外した状態を示す斜視図。
図3図2の容器本体の部分断面図。
図4図1の蓋体を示す斜視図。
図5】(a)図4の蓋体の部分断面図、(b)図5(a)のG部拡大図。
図6】(a)図1の容器本体を蓋体で封止する際に第1の突起部が蓋体に当接した状態を示す断面構成図、(b)図6(a)のB部拡大図。
図7図6(b)に示す第2の突起部が蓋体に当接した状態を示す断面構成図。
図8】(a)比較例1の接着剤容器において容器本体を蓋体で封止する際の状態を示す断面構成図、(b)図8(a)のC部拡大図。
図9】(a)実施例2の接着剤容器において容器本体を蓋体で封止する際の状態を示す断面構成図、(b)図9(a)のE部拡大図。
図10】(a)比較例3の接着剤容器において容器本体を蓋体で封止する際の状態を示す断面構成図、(b)図10(a)のF部拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照しながら本発明にかかる実施の形態の接着剤容器について説明する。
<1.構成>
(1-1.接着剤容器1の外観)
図1は、本発明にかかる実施の形態における接着剤容器1の外観を示す斜視図である。
【0025】
本実施の形態に係る接着剤容器1は、例えば、硬質ポリ塩化ビニル配管用接着剤を保管や運搬するために用いられる。接着剤容器1は、図1に示すように、容器本体2と蓋体3(蓋体の一例)を備える。容器本体2は、略円筒状であり、蓋体3によって密閉される。蓋体3は、容器本体2の中心軸よりも端よりに配置される。
【0026】
(1-2.容器本体2)
容器本体2の材質は錫メッキ鋼板(ブリキ)である。容器本体2を形成する錫メッキ鋼板の板厚みが0.2~0.3mmである。なお、容器本体2の材質としては、ブリキに限らず、ブリキの内面に樹脂コーティングしたものであってもよいし、SUSであってもよい。
【0027】
図2は、本実施の形態の接着剤容器1から蓋体3を取外した状態を示す図であり、容器本体2の外観を示す斜視図である。図3は、容器本体2の部分断面図である。
【0028】
容器本体2は、円筒状の容器である。容器本体2は、下蓋21と、胴板22と、上蓋23の3つの部材を有している。
【0029】
胴板22は、両端が開口した円筒状である。下蓋21は、その外径が円状の板部材であり、胴板22の一方の端の開口を塞ぐように配置されている。下蓋21は、接着剤容器1の底面を形成する。
【0030】
上蓋23は、シール性を確保するために、天板41と、ネジ部42(縁部の一例)と、を有する。上蓋23は、胴板22の他方の開口を塞ぐように、下蓋21に対向して配置されている。
【0031】
天板41は、その外径が円形であり、図3に示すように開口41aを有する。開口41aは、天板41の外周端寄りに形成されている。
【0032】
ネジ部42は、略円筒状であり、天板41の開口41aの縁から立設している。ネジ部42には、蓋体3が被せられる。ネジ部42(縁部の一例)は、天板41の下蓋21とは反対側の面に設けられている。
【0033】
ネジ部42は、図3に示すように、筒部51と、外周部52と、内周部53と、内側側板部54と、を有する。
【0034】
筒部51は、天板41の開口41aの縁から天板41に対して垂直に立設されている。筒部51の先端の開口51b(開口の一例)が示されている。開口51bと開口41aが、筒部51の両端の開口に相当する。
【0035】
筒部51の外周側面にネジ形状51aが形成されている、後述する蓋体3のネジ形状と螺合する。筒部51の中心軸Oが示されている。なお、本明細書において、垂直とは、社会通念上垂直と認められる範囲をいい、設計誤差なども含む。また、本明細書において、平行とは、社会通念上平行と認められる範囲をいい、設計誤差なども含む。また、本明細書において、中心軸Aに沿うとは、社会通念上中心軸Aに沿っていると認められる範囲をいい、設計誤差なども含む。
【0036】
外周部52は、円環状の部分であり、筒部51の端(上端ともいえる)から筒部51の中心軸O側に向かって形成されている。外周部52は、天板41と平行に配置されている。
【0037】
内周部53は、円環状の部分であり、外周部52の中心側の端から筒部51の中心側に向かって形成されている。内周部53は、天板41と平行に配置されているが、中心側に向かうに従って開口41aに向かって若干傾斜している。内周部53は、外周部52よりも下蓋21側(天板41若しくは開口41a側ともいえる)に配置されている。すなわち、外周部52と内周部53は、その間に段差が形成されるように繋がっている。外周部52と内周部53が、ネジ部42の天板部55を形成する。
【0038】
内側側板部54は、円筒状である。内側側板部54は、内周部53の中心軸O側の端から下蓋21に向かって形成されている。内側側板部54は、角部54cと、側板部54dと、を有する。側板部54dは、中心軸Oに沿って形成されている。角部54cは、側板部54dと内周部53を繋ぐように湾曲して形成されている。
【0039】
(1-3.蓋体3)
図4は、蓋体3の外観を示す斜視図である。
【0040】
蓋体3の材質はPP(ポリプロピレン)樹脂(曲げ弾性率1000~2500[MPa])であり、先端に馬毛を束ねた刷毛が固定されたPP軸62と、容器本体2と嵌合するネジ形状を有する本体部61と、を備えた刷毛付きPP製キャップである。なお、蓋体3の材質としては、PE(ポリエチレン)やナイロン等であってもよく、内容物である有機溶剤等に侵されない樹脂であればよい。
【0041】
図5(a)は、蓋体3の部分断面図である。軸Aは、蓋体3の中心軸を示し、蓋体3を容器本体2に装着した際には、軸Oと一致する。図5(b)は、図5(a)のG部拡大図である。
【0042】
本体部61は、天井面71と、側部72と、接続部73と、を有している。
天井面71は、略円状である。側部72は、略円筒状であって、天井面71の周囲から天井面71に対して垂直な方向に形成されている。側部72の外周側の外周面72aは、蓋体3の側面を構成する。
【0043】
PP軸62は、側部72の中心軸A側(内側ともいえる)に配置されている。PP軸62は、天井面71に対して垂直に設けられている。
【0044】
接続部73は、円環状であって、側部72とPP軸62の間を接続する。接続部73は、天井面71に沿って配置されている。接続部73は、側部72の天井面71側の端部72eとPP軸62の天井面71側の端部62eを接続する。
【0045】
側部72は、本体部81と、ネジ形成部82と、シール部83と、を有している。
本体部81は、円筒状である。ネジ形成部82は、円筒状であって、本体部81の天井面71とは反対側の端部81eに設けられている。なお、本体部81の天井面71側の端部は、端部72eである。
【0046】
ネジ形成部82は、本体部81の端部81eの外周縁81ea(中心軸Aと反対側の縁)に沿って設けられている。ネジ形成部82は、端部81eから中心軸Aと平行に突出するように形成されている。ネジ形成部82の中心軸A側の面(内側の面ともいえる)には、ネジ形状82bが形成されている。ネジ形状82bは、筒部51の外周側面のネジ形状51aと螺合可能である。ネジ形成部82の中心軸Aと反対側の外周面82aは、本体部81の中心軸Aと反対側の外周面81aと段差なく連続して繋がっており、外周面82aと外周面81aにより側部72の外周面72aが構成される。
【0047】
シール部83は、円筒状であり、本体部81の端部81eの内周縁81ebに沿って設けられている。シール部83は、端部81eから中心軸Aと平行に突出するように形成されている。シール部83は、ネジ形成部82よりも中心軸A側(内側ともいえる)に配置されている。
【0048】
シール部83は、基端部90と、第1の突起部91と、第2の突起部92と、を有する。
【0049】
基端部90は、本体部81の端部81eから中心軸Aに平行に突出するように形成されている。基端部90は、内周側(中心軸A側)の内周面90bと、外周側(中心軸Aと反対側)の外周面90aと、を有する。
【0050】
内周面90bは、本体部81の中心軸A側の内周面81bと段差なく連続して繋がっている。内周面90bは、中心軸Aと平行に形成されている。
【0051】
外周面90aは、本体部81の端部81eから中心軸Aと平行に形成されている。
第1の突起部91は、略円筒状である。第1の突起部91は、基端部90の天井面71とは反対側の端から中心軸Aと平行に突出している。
【0052】
第1の突起部91は、第1部分93と、第2部分94と、を有する。
第1部分93は、基端部90の天井面71と反対側の端から中心軸Aに沿って設けられている。第1部分93は、内周側(中心軸A側)の内周面93bと、外周側(中心軸Aと反対側)の外周面93aと、を有する。内周面93bと外周面93aは、中心軸Aと平行に設けられ、外周面93aは略垂直面である。第1部分93の厚みは略一定に形成されており、内周面93bと外周面93aの間隔は略一定に形成されている。
【0053】
第2部分94は、第1部分93の天井面71と反対側の端から中心軸Aに沿って設けられている。第2部分94は、内周側(中心軸A側)の内周面94bと、外周側(中心軸Aと反対側)の外周面94aと、を有する。外周面93aと外周面94aによって、第1の突起部91の外周面91aが形成されている。また、内周面93bと内周面94bによって、第1の突起部91の内周面91bが形成されている。
【0054】
内周面94bは、中心軸Aと平行に設けられている。
外周面94aは、第1の突起部91の先端91eに向かうに従って内側に位置するように傾斜している。いいかえると、外周面94aは、先端91eと反対側に向かうに従って外側に位置するように傾斜している。このように、第1の突起部91の外周面94aは、テーパー形状に形成されている。このように、第1の突起部91の外周面94aは、外側に向けて斜めに延伸するように設けられていることが好ましい。
【0055】
外周面94aは、先端91eに向かうに従って径が小さくなるように傾斜しているともいえる。また、先端91eに向かうとは、基端部90から離れるともいえるし、中心軸Aと平行であって天井面71とは反対側に向かうともいえる。
【0056】
なお、外周面94aと中心軸Aの方向(ADと示す)との成す傾斜角度がθ1と示されている。
【0057】
第2部分94の厚みは、先端91eに向かうに従って小さくなっている。第1の突起部91は、テーパー状の外周面94aが形成されている部分において厚みが小さくなっている。
【0058】
なお、基端部90の内周面90bと、第1部分93の内周面93bと、第2部分94の内周面94bは、同一面上に形成されている。
【0059】
第2の突起部92は、円筒状に形成されている。第2の突起部92は、第1の突起部91の外側(中心軸Aの反対側)に設けられている。
【0060】
第2の突起部92は、第1部分95と、第2部分96と、を有する。
第1部分95は、基端部90の天井面71と反対側の端から中心軸Aに沿って設けられている。第1部分95は、内周側(中心軸A側)の内周面95bと、外周側(中心軸Aと反対側)の外周面95aと、を有する。外周面95aは、中心軸Aと平行に設けられている。内周面95bは、第2の突起部92の先端92eに向かうに従って外側に位置するように傾斜している。内周面95bは、先端92eに向かうに従って径が大きくなるように傾斜しているともいえる。第1部分95の厚みは、先端92eに向かうに従って狭くなっている。
【0061】
第2部分96は、第1部分93の天井面71と反対側の端から中心軸Aに沿って設けられている。第2部分96は、内周側(中心軸A側)の内周面96bと、外周側(中心軸Aと反対側)の外周面96aと、を有する。内周面96bと外周面96aは、中心軸Aと平行に設けられている。第2部分96の厚みは略一定に形成されており、内周面96bと外周面96aの間隔は略一定に形成されている。
【0062】
また、基端部90の外周面90aと、第1部分95の外周面95aと、第2部分96の外周面96aは、同一面上に設けられている。
【0063】
なお、第1の突起部91は、第2の突起部92よりも長く形成されている方が好ましい。第1の突起部91の先端91eの位置は、第2の突起部92の先端92eの位置よりも天井面71と反対側方向に設けられている方が好ましい。
【0064】
<2.作用>
次に、蓋体3を容器本体2に取り付けた際の作用について説明する。図6(a)は、容器本体2に蓋体3を取り付ける際の締め込み途中の状態を示す図である。図6(b)は、図6(a)のB部拡大図である。
【0065】
図6(a)に示すように、容器本体2のネジ部42に被せるように蓋体3を配置し、所定方向に回転させることによって、蓋体3のネジ形成部82のネジ形状82bと、容器本体2の筒部51のネジ形状51aが螺合する。
【0066】
蓋体3をネジ部42に被せるように配置した際、もしくは所定量回転することにより、図6(a)に示すように、第1の突起部91の外周面94aが、蓋体3の内側側板部54に接触する。外周面94aが傾斜してテーパー形状に形成されているため、蓋体3を回転させるにつれて、蓋体3の内側側板部54の湾曲した角部54cと外周面94aが互いに摺動しながら、第1の突起部91が内側側板部54の内側に入り込む。また、図6(a)に示すように、蓋体3の天板部55が第1の突起部91とネジ形成部82の間に嵌まり込む。
【0067】
これによって、第1の突起部91の第2部分94の外周面94aがテーパー形状になっていることから、開口51bの内側側板部54に摺動しながら挿入されるため、蓋体3が側板部54dに対しセンタリングされる。第1の突起部91の外周面94aが内側側板部54に接触して封止され、容器本体2内の接着剤の漏れを防ぐことができる。
【0068】
図7は、図6の状態から更に回転させた締め込み完了の状態を示す部分拡大図である。図7は、図6(a)のB部分に相当する。
【0069】
図7に示すように、図6(b)の状態から更に蓋体3を容器本体2に対して回転させると、外周面94aが側板部54dの下端を超え、第1部分93の垂直面である外周面93aと側板部54dが面接触する。外周面93aは側板部54dよりも中心軸方向Aの長さが長く、封止完了時には外周面93aの下端93aeは側板部54dの下端54deよりも下方にあり、外周面94aも側板部54dよりも下方に位置する。この位置関係となることから、外周面93aと側板部54dで確実に面接触が得られ、上下方向および横方向の寸法バラつきの影響を低減するとともに、シール面積が増加するため、気密性が向上する。なお、実際には、第1部分93と側板部54dは接触しているだけで重ならないが、図7では、蓋体3と容器本体2が接触する部分を示すために、外周面93aと側板部54dを重ねて示している。
【0070】
次いで第2の突起部92が天板部55に当接し、天板部55の形状に沿って変形する。本実施例では、第2の突起部92の第2部分96が、天板部55のうち内周部53に当接している。この当接により、締め込みトルクが著しく上昇する為、使用者が締め込みの完了を体感できる。
【0071】
<3.特徴等>
(1)
本実施の形態の接着剤容器1は、接着剤容器1は、容器本体2と、蓋体3と、を備える。容器本体2は、上部に開口51bを有する。蓋体3は、開口51bを封止する。蓋体3は第1の突起部91と、第1の突起部91の外側に設けられた第2の突起部92と、を有する。封止状態において、第1の突起部91は、開口51bの縁に形成されているネジ部42の内側側板部54に当接する。
【0072】
このように第1の突起部91が開口51bのネジ部42の内側側板部54に当接するように構成されているため、第1の突起部91に例えば上下方向の寸法バラツキが多少発生したとしても当接によってシール性を確保することができ、雰囲気温度が高い場合でも接着剤の漏れを防ぐことが可能となる。
【0073】
また、雰囲気温度が高い場合には内容物の接着剤中の有機溶剤成分の気化により容器内の内圧が上昇するため、第1の突起部91が開口51bの縁に形成されているネジ部42の内側側板部54に押し当てられる応力を受けることによりセルフシール機能が発現する。
【0074】
(2)
本実施の形態の接着剤容器1では、第1の突起部91は、内側側板部54に当接する外周面91aを有する。外周面91aは、第1の突起部91の先端91eに向かうに従って内側に位置するようなテーパー状の外周面94aを含む。
【0075】
これにより、第1の突起部91のテーパ-状の外周面94aが、開口51bの内側側板部54に摺動しながら挿入されるため、蓋体3が側板部54dに対しセンタリングされながら封止することができる。
【0076】
(3)
本実施の形態の接着剤容器1では、封止状態において第2の突起部92は、開口51bの縁に形成されているネジ部42の天板部55に当接する。
【0077】
万が一、第1の突起部91に異常が生じた場合であっても、第2の突起部92を有することでダブルシール機構となり内容物の漏れを防ぐことが出来る。また第2の突起部92は天板部55に当接したときに締め込みトルクが著しく上昇する為、使用者が締め込みの完了を体感できる効果も発揮できる。
【0078】
(4)
本実施の形態の接着剤容器1では、蓋体3は、PP(polypropylene)を主成分として含む。
【0079】
このようにPPを主成分として含むことにより、第1の突起部91および第2の突起部92を容易に形成することができる。
【0080】
(5)
本実施の形態の接着剤容器1では、第1の突起部91は、第2の突起部92よりも長い。
【0081】
これにより、第1の突起部91をネジ部42の内側側板部54に当接させながら、第2の突起部92をネジ部42の天板部55に当接させることができる。
【0082】
(6)
本実施の形態の接着剤容器1では、封止状態において第1の突起部91の傾斜面ではない垂直面である外周面93aのみが内側側板部54の側板部54dに当接する。
これにより、開口51bに形成された内側側板部54の側板部54dと第1の突起部91の垂直面である外周面93aが面接触するため、上下方向および横方向の寸法バラつきの影響を低減するとともに、シール面積が増加するため、気密性が向上する。
【0083】
<4.他の実施の形態>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0084】
(A)
上記実施の形態の蓋体3では、テーパー面である外周面94aが、第1の突起部91の先端91e近傍に設けられているが、先端91eの近傍に限らず、第1の突起部91の途中に設けられていてもよい。
【0085】
(B)
上記実施の形態の蓋体3では、天板部55の外周部52は、天井面71に対して平行に形成されているが、傾斜していてもよい。また、内周部53が若干傾斜せずに天井面71と平行であってもよい。
【0086】
また、内周部53と外周部52の間には、段差が形成されているが、段差が設けられていなくてもよい。
【0087】
上記実施の形態では、第2の突起部92は、封止した状態において天板部55の内周部53に当接しているが、外周部52に当接してもよい。
【0088】
(C)
上記実施の形態の蓋体3は、PP軸62を有しているが、PP軸62を有していなくてもよい。
【0089】
(D)
上記実施の形態の接着剤容器1は、硬質ポリ塩化ビニル配管用接着剤を保管・搬送するために用いられると記載したが、この接着剤に限られるものではない。
【0090】
<5.実施例>
以下、実施例を用いて実施の形態の接着剤容器について詳しく説明する。
(評価方法)
本実施例における気密性の評価は、接着剤(エスロン接着剤No.73S[積水化学製])を入れた容器を60℃のオーブン中で横倒しにし24時間放置後、接着剤の漏れの有無を目視で確認した。(このときの内圧は0.06MPaとなる。)また、作業者が蓋の締め込み完了の確認をできるか否かも評価した。
【0091】
(比較例1(従来品))
図8(a)は、比較例1の接着剤容器1001において容器本体2に蓋体1003を取り付ける際の締め込み途中の状態を示す図である。図8(b)は、図8(a)のC部拡大図である。
【0092】
図8(a)に示すように、接着剤容器1001は、上述した容器本体2と、蓋体1003と、を有する。比較例1の蓋体1003は、PP製のキャップである。図8(b)に示すように、実施の形態の蓋体3と比較して、第1の突起部91が設けられていないシール部1083を有している。実施の形態の蓋体3と比較して、比較例1のシール部1083は、第2の突起部92および基端部90は有しているが、第1の突起部を有していない。
【0093】
また、容器本体2は、実施の形態と同様の構成であり、ブリキ製の缶である。
評価結果:×接着剤の漏れが発生
締め込み確認:×締め込み完了確認が曖昧
【0094】
(実施例1)
上述した実施の形態の接着剤容器1の蓋体3としてPP製キャップを使用した。また、容器本体2は、上述した実施の形態と同様の構成であり、ブリキ製の缶である。
【0095】
すなわち、第1の突起部91以外の構成は、比較例1と同様である。
評価結果:〇接着剤の漏れなし
締め込み確認:○締め込み完了確認できる
【0096】
(比較例2)
図9(a)は、比較例2の接着剤容器2001において容器本体2に蓋体2003を取り付ける際の締め込み途中の状態を示す図である。図9(b)は、図9(a)のE部拡大図である。
【0097】
図9(a)に示すように、比較例2では、上述した容器本体2と、蓋体2003が用いられる。比較例2の蓋体2003は、PP製のキャップである。図6(b)に示す実施例1の蓋体3と比較して、比較例1のシール部2083は、テーパー形状の面が形成されていない第1の突起部2091を有している。第1の突起部2091は、内周面2091bと、外周面2091aとを有する。内周面2091bおよび外周面2091aは、中心軸Aと平行に形成されている。外周面2091aと内周面2091bの間隔は一定に形成されており、第1の突起部2091は厚みが一定である。比較例2では、第1の突起部2091は、内側側板部54に当接していない。
評価結果:×漏れ発生
締め込み確認:○締め込み完了確認ができる
【0098】
(比較例3)
図10(a)は、比較例3の接着剤容器3001において容器本体2に蓋体3003を取り付ける際の締め込み途中の状態を示す図である。図10(b)は、図10(a)のF部拡大図である。
【0099】
図10(a)に示すように、比較例3では、上述した容器本体2と、蓋体3003が用いられる。比較例3の蓋体3003は、PP製のキャップである。図10(b)に示すように、実施例1の蓋体3と比較して、比較例3のシール部3083は、第1の突起部91および基端部90は有しているが、第2の突起部を有していない。
評価結果:○漏れなし
締め込み確認:×締め込み完了確認が出来ない
【符号の説明】
【0100】
接着剤容器 1
容器本体 2
蓋体 3
第1の突起部 91
第2の突起部 92
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10