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特許7461213静翼、静翼セグメント、軸流流体機械、静翼セグメントの製造補助装置、静翼セグメントの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-26
(45)【発行日】2024-04-03
(54)【発明の名称】静翼、静翼セグメント、軸流流体機械、静翼セグメントの製造補助装置、静翼セグメントの製造方法
(51)【国際特許分類】
   F01D 9/02 20060101AFI20240327BHJP
   F02C 7/00 20060101ALI20240327BHJP
【FI】
F01D9/02 101
F02C7/00 D
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020087313
(22)【出願日】2020-05-19
(65)【公開番号】P2021181763
(43)【公開日】2021-11-25
【審査請求日】2023-02-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】藤田 直也
(72)【発明者】
【氏名】塚田 将太
(72)【発明者】
【氏名】高橋 孝一
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 研人
(72)【発明者】
【氏名】田中 寛人
(72)【発明者】
【氏名】濱部 賢
(72)【発明者】
【氏名】佐伯 彰紀
(72)【発明者】
【氏名】刀根 直也
【審査官】高吉 統久
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第03829233(US,A)
【文献】特開2009-052559(JP,A)
【文献】特開2001-065499(JP,A)
【文献】特開2015-102037(JP,A)
【文献】特開2017-057831(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01D 9/02
F01D 9/04
F01D 25/00
F01D 25/28
F02C 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線に対する周方向に複数並べられる静翼において、
前記軸線に対する径方向に延びて、翼形を成す翼体と、
前記径方向における一方側である径方向第一側と他方側である径方向第二側とのうち、前記翼体の前記径方向第一側の端に設けられているシュラウドと、
を有し、
前記シュラウドは、
前記軸線が延びる軸線方向における一方側である軸線上流側と他方側である軸線下流側とのうち、前記軸線上流側を向く前端面と、
前記軸線下流側を向く後端面と、
前記軸線に対する周方向における一方側である周方向第一側と他方側である周方向第二側とのうち、前記周方向第一側を向く第一周方向端面と、
前記周方向第二側を向く第二周方向端面と、
前記径方向第一側を向く反ガスパス面と、
前記径方向第二側を向くガスパス面と、
を有し、
前記反ガスパス面は、前記周方向における前記第一周方向端面の位置から前記第二周方向端面の位置にわたって連続して、前記周方向に並ぶ複数の平面を有して構成され、
前記複数の平面は、第一平面と、第二平面と、第三平面と、を有し、
前記第一平面と前記第二平面とは、前記周方向で隣接し、前記第二平面と前記第三平面とは、前記周方向で隣接し、
前記第一平面と前記第二平面との境に形成される稜線と、前記第二平面と前記第三平面との境に形成される稜線とは、いずれも、前記軸線を中心とする前記仮想円上に位置する、
静翼。
【請求項2】
軸線に対する周方向に複数並べられる静翼において、
前記軸線に対する径方向に延びて、翼形を成す翼体と、
前記径方向における一方側である径方向第一側と他方側である径方向第二側とのうち、前記翼体の前記径方向第一側の端に設けられているシュラウドと、
を有し、
前記シュラウドは、
前記軸線が延びる軸線方向における一方側である軸線上流側と他方側である軸線下流側とのうち、前記軸線上流側を向く前端面と、
前記軸線下流側を向く後端面と、
前記軸線に対する周方向における一方側である周方向第一側と他方側である周方向第二側とのうち、前記周方向第一側を向く第一周方向端面と、
前記周方向第二側を向く第二周方向端面と、
前記径方向第一側を向く反ガスパス面と、
前記径方向第二側を向くガスパス面と、
を有し、
前記反ガスパス面は、前側反ガスパス面と、溝底面と、後側反ガスパス面とを有し、
前記軸線上流側から前記軸線下流側に向かって、前記前側反ガスパス面、前記溝底面、前記後側反ガスパス面の順に並び、
前記溝底面は、前記前側反ガスパス面及び前記後側反ガスパス面よりも、前記径方向第二側に位置し、
前記反ガスパス面の前記溝底面は、前記周方向における前記第一周方向端面の位置から前記第二周方向端面の位置にわたって連続して、前記周方向に並ぶ複数の平面を有して構成され、
前記複数の平面のうち、前記周方向で隣り合う二つの平面の境に形成される稜線は、前記軸線を中心とする仮想円上に位置する、
静翼。
【請求項3】
軸線に対する周方向に複数並べられる静翼において、
前記軸線に対する径方向に延びて、翼形を成す翼体と、
前記径方向における一方側である径方向第一側と他方側である径方向第二側とのうち、前記翼体の前記径方向第一側の端に設けられているシュラウドと、
を有し、
前記シュラウドは、
前記軸線が延びる軸線方向における一方側である軸線上流側と他方側である軸線下流側とのうち、前記軸線上流側を向く前端面と、
前記軸線下流側を向く後端面と、
前記軸線に対する周方向における一方側である周方向第一側と他方側である周方向第二側とのうち、前記周方向第一側を向く第一周方向端面と、
前記周方向第二側を向く第二周方向端面と、
前記径方向第一側を向く反ガスパス面と、
前記径方向第二側を向くガスパス面と、
を有し、
前記反ガスパス面は、前記周方向における前記第一周方向端面の位置から前記第二周方向端面の位置にわたって連続して、前記周方向に並ぶ複数の平面を有して構成され、
前記複数の平面のうち、前記周方向で隣り合う二つの平面の境に形成される稜線は、前記軸線を中心とする仮想円上に位置し、
前記径方向における径方向外側と径方向内側とのうち、前記径方向外側が前記径方向第一側であり、前記径方向内側が前記径方向第二側であり、
前記シュラウドは、前記翼体の前記径方向外側の端に設けられている外側シュラウドである、
静翼。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の静翼において、
前記稜線は、前記軸線に平行で、前記周方向に対して垂直な方向に延びている、
静翼。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の静翼を複数備え、
複数の前記静翼は、前記周方向に並び、
複数の前記静翼のうち、前記周方向で隣接する二つの静翼の前記シュラウドが相互に接触した状態で、複数の前記静翼が相互に連結されている、
静翼セグメント。
【請求項6】
複数の静翼と、
結バンドと、
を備え、
複数の前記静翼は、それぞれ、
軸線に対する径方向に延びて、翼形を成す翼体と、
前記径方向における一方側である径方向第一側と他方側である径方向第二側とのうち、前記翼体の前記径方向第一側の端に設けられているシュラウドと、
を有し、
前記シュラウドは、
前記軸線が延びる軸線方向における一方側である軸線上流側と他方側である軸線下流側とのうち、前記軸線上流側を向く前端面と、
前記軸線下流側を向く後端面と、
前記軸線に対する周方向における一方側である周方向第一側と他方側である周方向第二側とのうち、前記周方向第一側を向く第一周方向端面と、
前記周方向第二側を向く第二周方向端面と、
前記径方向第一側を向く反ガスパス面と、
前記径方向第二側を向くガスパス面と、
を有し、
前記反ガスパス面は、前記周方向における前記第一周方向端面の位置から前記第二周方向端面の位置にわたって連続して、前記周方向に並ぶ複数の平面を有して構成され、
前記複数の平面のうち、前記周方向で隣り合う二つの平面の境に形成される稜線は、前記軸線を中心とする仮想円上に位置し、
複数の前記静翼は、前記周方向に並び、
複数の前記静翼のうち、前記周方向で隣接する二つの静翼の前記シュラウドが相互に接触し、且つ、複数の前記静翼毎の前記稜線と前記連結バンドとが接触した状態で、複数の前記静翼のそれぞれと前記連結バンドとが接続されている、
静翼セグメント。
【請求項7】
請求項1から4のいずれか一項に記載の静翼を複数備えていると共に、
連結バンドを備え、
複数の前記静翼は、前記周方向に並び、
複数の前記静翼のうち、前記周方向で隣接する二つの静翼の前記シュラウドが相互に接触し、且つ、複数の前記静翼毎の前記稜線と前記連結バンドとが接触した状態で、複数の前記静翼のそれぞれと前記連結バンドとが接続されている、
静翼セグメント。
【請求項8】
請求項5から7のいずれか一項に記載の静翼セグメントと、
前記軸線を中心として回転するロータと、
前記ロータを覆うケーシングと、
を備え、
前記静翼セグメントは、前記ケーシングの内周側に配置され、前記ケーシングに取り付けられている、
軸流流体機械。
【請求項9】
軸線に対する周方向に並ぶ複数の静翼を備え、
前記複数の静翼は、いずれも、
前記軸線に対する径方向に延びて、翼形を成す翼体と、
前記径方向における一方側である径方向第一側と他方側である径方向第二側とのうち、前記翼体の前記径方向第一側の端に設けられているシュラウドと、
を有し、
前記シュラウドは、
前記軸線が延びる軸線方向における一方側である軸線上流側と他方側である軸線下流側とのうち、前記軸線上流側を向く前端面と、
前記軸線下流側を向く後端面と、
前記軸線に対する周方向における一方側である周方向第一側と他方側である周方向第二側とのうち、前記周方向第一側を向く第一周方向端面と、
前記周方向第二側を向く第二周方向端面と、
前記径方向第一側を向く反ガスパス面と、
前記径方向第二側を向くガスパス面と、
を有する、
静翼セグメントの製造補助装置において、
前記複数の静翼が前記周方向に並んだ状態で載置され、前記複数の静翼毎の前記シュラウドの前記前端面又は前記後端面が接触可能なベース板と、
前記ベース板に固定され、前記ベース板上に載置されている前記複数の静翼毎の前記シュラウドにおける前記反ガスパス面に接触可能に、前記周方向に広がる円弧面を有する径方向位置決めブロックと、
前記ベース板に取り付けられ、前記ベース板上に載置されている前記複数の静翼を、前記径方向であって前記径方向位置決めブロックの側に押す径方向押し装置と、
前記ベース板に固定され、前記ベース板上に載置されている前記複数の静翼のうちで、最も前記周方向第一側に配置される静翼である第一端部静翼における前記シュラウドの前記第一周方向端面に接触可能な周方向位置決めブロックと、
前記ベース板に取り付けられ、前記ベース板上に載置されている前記複数の静翼のうちで、最も前記周方向第二側に配置される静翼である第二端部静翼を、前記周方向であって前記周方向位置決めブロックの側に押す周方向押し装置と、
前記ベース板に取り付けられ、前記ベース板上に載置されている前記複数の静翼を、前記ベース板の側に押す軸線方向押し装置と、
を備える静翼セグメントの製造補助装置。
【請求項10】
請求項9に記載の静翼セグメントの製造補助装置において、
前記ベース板に固定され、前記ベース板上に載置されている前記複数の静翼のうち、前記第二端部静翼の前記第二周方向端面と、前記周方向で間隔をあけて対向する周長測定基準ブロックを、さらに備える、
静翼セグメントの製造補助装置。
【請求項11】
請求項10に記載の静翼セグメントの製造補助装置において、
長手方向を有し、前記長手方向の位置変化により前記長手方向に垂直な厚さが変化するゲージを、さらに備える、
静翼セグメントの製造補助装置。
【請求項12】
軸線に対する周方向に並ぶ複数の静翼を備え、
前記複数の静翼は、いずれも、
前記軸線に対する径方向に延びて、翼形を成す翼体と、
前記径方向における一方側である径方向第一側と他方側である径方向第二側とのうち、前記翼体の前記径方向第一側の端に設けられているシュラウドと、
を有し、
前記シュラウドは、
前記軸線が延びる軸線方向における一方側である軸線上流側と他方側である軸線下流側とのうち、前記軸線上流側を向く前端面と、
前記軸線下流側を向く後端面と、
前記軸線に対する周方向における一方側である周方向第一側と他方側である周方向第二側とのうち、前記周方向第一側を向く第一周方向端面と、
前記周方向第二側を向く第二周方向端面と、
前記径方向第一側を向く反ガスパス面と、
前記径方向第二側を向くガスパス面と、
を有する、
静翼セグメントの製造方法において、
前記複数の静翼を製造する静翼製造工程と、
前記複数の静翼を前記周方向に並べて、前記複数の静翼のうち、前記周方向で隣接する二つの静翼の前記シュラウドが相互に接触した状態で、前記複数の静翼毎の前記周方向の位置が目的の位置になり、前記径方向の位置が目的の位置になり、前記軸線方向の位置が目的の位置になるよう、前記複数の静翼のそれぞれを仮位置決めする静翼配置工程と、
前記複数の静翼が仮位置決めされている状態で、前記複数の静翼相互を連結する連結工程と、
前記連結工程後に、前記複数の静翼の仮位置決めを解除する仮位置決め解除工程と、
を実行し、
前記静翼製造工程では、
前記複数の静翼毎の前記シュラウドにおける前記反ガスパス面が、前記周方向における前記第一周方向端面の位置から前記第二周方向端面の位置にわたって連続して、前記周方向に並ぶ複数の平面を有し、前記複数の平面のうち、前記周方向で隣り合う二つの平面の境に形成される稜線は、前記軸線を中心とする仮想円上に位置するよう、前記静翼を製造する、
静翼セグメントの製造方法。
【請求項13】
請求項12に記載の静翼セグメントの製造方法において、
前記複数の静翼が前記周方向に並んでいる状態で、前記複数の静翼相互を連結するための連結バンドを製造するバンド製造工程をさらに実行し、
前記連結工程では、前記複数の静翼が仮位置決めされている状態で、前記複数の静翼毎の前記稜線と前記連結バンドとを接触させて、前記複数の静翼のそれぞれと前記連結バンドとを接続する、
静翼セグメントの製造方法。
【請求項14】
請求項12又は13に記載の静翼セグメントの製造方法において、
前記複数の静翼が仮位置決めされている状態で、前記複数の静翼のうち、最も前記周方向第一側の静翼である第一端部静翼における前記シュラウドの前記第一周方向端面から、前記複数の静翼のうち、最も前記周方向第二側の静翼である第二端部静翼における前記シュラウドの前記第二周方向端面までの前記周方向の長さである周長を測定する周長測定工程と、
前記仮位置決め解除工程後に、前記周長が目的の周長になるよう、前記第一端部静翼の前記第一周方向端面と、前記第二端部静翼の前記第二周方向端面とのうちの少なくとも一方の周方向端面を削る継ぎ手面加工工程と、
をさらに実行する、
静翼セグメントの製造方法。
【請求項15】
請求項12から14のいずれか一項に記載の静翼セグメントの製造方法において、
前記静翼配置工程では、請求項9から11のいずれか一項に記載の静翼セグメントの製造補助装置を用いて、前記複数の静翼毎の前記周方向の位置が目的の位置になり、前記径方向の位置が目的の位置になり、前記軸線方向の位置が目的の位置になるよう、前記複数の静翼を仮位置決めする、
静翼セグメントの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、静翼、この静翼を複数備える静翼セグメント、この静翼セグメントを備える軸流流体機械、静翼セグメントの製造補助装置、静翼セグメントの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
軸流流体機械としては、ガスタービンがある。このガスタービンは、空気を圧縮する圧縮機と、圧縮機で圧縮された空気で燃料を燃焼させて燃焼ガスを生成する燃焼器と、燃焼器からの燃焼ガスで駆動するタービンと、を備えている。圧縮機は、軸線を中心として回転する圧縮機ロータと、圧縮機ロータを覆う圧縮機ケーシングと、複数の静翼環と、を有する。タービンは、軸線を中心として回転するタービンロータと、タービンロータを覆うタービンケーシングと、複数の静翼環と、を有する。従って、圧縮機も軸流流体機械であり、タービンも軸流流体機械である。圧縮機の複数の静翼環は、軸線が延びる軸線方向に並んでいる。タービンの複数の静翼環も、軸線が延びる軸線方向に並んでいる。
【0003】
以下の特許文献1には、軸流流体機械の一種である圧縮機の静翼環について記載されている。この静翼環は、円弧状の複数の静翼セグメントを有している。この静翼セグメントは、軸線に対する周方向に並んでいる複数の静翼と、複数の静翼を連結するための外側連結部材及び内側連結部材と、を有する。複数の静翼は、いずれのも、軸線に対する径方向に延びる翼体と、翼体の径方向外側の端に設けられている外側シュラウドと、翼体の径方向内側の端に設けられている内側シュラウドと、を有する。
【0004】
複数の静翼の外側シュラウドには、外側連結部材が取り付けられる。また、複数の静翼の内側シュラウドには、内側連結部材が取り付けられる。外側シュラウドには、径方向外側から径方向内側に向かって凹み、周方向に延びる溝が形成されている。外側連結部材は、複数の静翼における外側シュラウドの溝底面に接するように配置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2013-209896号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
軸流流体機械のメーカーでは、この軸流流体機械の性能向上及び製造コスト削減のための開発を行っている。
【0007】
そこで、本開示は、静翼の製造が容易でその製造コストを抑えることができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための本開示に係る一態様としての静翼は、
軸線に対する周方向に複数並べられる静翼である。この静翼は、前記軸線に対する径方向に延びて、翼形を成す翼体と、前記径方向における一方側である径方向第一側と他方側である径方向第二側とのうち、前記翼体の前記径方向第一側の端に設けられているシュラウドと、を有する。前記シュラウドは、前記軸線が延びる軸線方向における一方側である軸線上流側と他方側である軸線下流側とのうち、前記軸線上流側を向く前端面と、前記軸線下流側を向く後端面と、前記軸線に対する周方向における一方側である周方向第一側と他方側である周方向第二側とのうち、前記周方向第一側を向く第一周方向端面と、前記周方向第二側を向く第二周方向端面と、前記径方向第一側を向く反ガスパス面と、前記径方向第二側を向くガスパス面と、を有する。前記反ガスパス面は、前記周方向における前記第一周方向端面の位置から前記第二周方向端面の位置にわたって連続して、前記周方向に並ぶ複数の平面を有して構成される。前記複数の平面は、第一平面と、第二平面と、第三平面と、を有する。前記第一平面と前記第二平面とは、前記周方向で隣接し、前記第二平面と前記第三平面とは、前記周方向で隣接している。前記第一平面と前記第二平面との境に形成される稜線と、前記第二平面と前記第三平面との境に形成される稜線とは、いずれも、前記軸線を中心とする前記仮想円上に位置する。
また、上記目的を達成するための本開示に係る他の一態様としての静翼は、
軸線に対する周方向に複数並べられる静翼である。この静翼は、前記軸線に対する径方向に延びて、翼形を成す翼体と、前記径方向における一方側である径方向第一側と他方側である径方向第二側とのうち、前記翼体の前記径方向第一側の端に設けられているシュラウドと、を有する。前記シュラウドは、前記軸線が延びる軸線方向における一方側である軸線上流側と他方側である軸線下流側とのうち、前記軸線上流側を向く前端面と、前記軸線下流側を向く後端面と、前記軸線に対する周方向における一方側である周方向第一側と他方側である周方向第二側とのうち、前記周方向第一側を向く第一周方向端面と、前記周方向第二側を向く第二周方向端面と、前記径方向第一側を向く反ガスパス面と、前記径方向第二側を向くガスパス面と、を有する。前記反ガスパス面は、前側反ガスパス面と、溝底面と、後側反ガスパス面とを有する。前記軸線上流側から前記軸線下流側に向かって、前記前側反ガスパス面、前記溝底面、前記後側反ガスパス面の順に並ぶ。前記溝底面は、前記前側反ガスパス面及び前記後側反ガスパス面よりも、前記径方向第二側に位置する。前記反ガスパス面の前記溝底面は、前記周方向における前記第一周方向端面の位置から前記第二周方向端面の位置にわたって連続して、前記周方向に並ぶ複数の平面を有して構成されている。前記複数の平面のうち、前記周方向で隣り合う二つの平面の境に形成される稜線は、前記軸線を中心とする仮想円上に位置する。
また、上記目的を達成するための本開示に係るさらに他の一態様としての静翼は、
軸線に対する周方向に複数並べられる静翼である。この静翼は、前記軸線に対する径方向に延びて、翼形を成す翼体と、前記径方向における一方側である径方向第一側と他方側である径方向第二側とのうち、前記翼体の前記径方向第一側の端に設けられているシュラウドと、を有する。前記シュラウドは、前記軸線が延びる軸線方向における一方側である軸線上流側と他方側である軸線下流側とのうち、前記軸線上流側を向く前端面と、前記軸線下流側を向く後端面と、前記軸線に対する周方向における一方側である周方向第一側と他方側である周方向第二側とのうち、前記周方向第一側を向く第一周方向端面と、前記周方向第二側を向く第二周方向端面と、前記径方向第一側を向く反ガスパス面と、前記径方向第二側を向くガスパス面と、を有する。前記反ガスパス面は、前記周方向における前記第一周方向端面の位置から前記第二周方向端面の位置にわたって連続して、前記周方向に並ぶ複数の平面を有して構成されている。前記複数の平面のうち、前記周方向で隣り合う二つの平面の境に形成される稜線は、前記軸線を中心とする仮想円上に位置する。前記径方向における径方向外側と径方向内側とのうち、前記径方向外側が前記径方向第一側であり、前記径方向内側が前記径方向第二側である。前記シュラウドは、前記翼体の前記径方向外側の端に設けられている外側シュラウドである。
【0009】
上記目的を達成するための本開示に係る一態様としての静翼セグメントは、
前記態様の静翼を複数備える。複数の前記静翼は、前記周方向に並ぶ。複数の前記静翼のうち、前記周方向で隣接する二つの静翼の前記シュラウドが相互に接触した状態で、複数の前記静翼が相互に連結されている。
【0010】
上記目的を達成するための本開示に係る一態様としての軸流流体機械は、
前記態様の静翼セグメントと、前記軸線を中心として回転するロータと、前記ロータを覆うケーシングと、を備える。前記静翼セグメントは、前記ケーシングの内周側に配置され、前記ケーシングに取り付けられている。
【0011】
上記目的を達成するための本開示に係る一態様としての製造補助装置は、以下の静翼セグメントの製造補助装置である。この静翼セグメントは、軸線に対する周方向に並ぶ複数の静翼を備える。前記複数の静翼は、いずれも、前記軸線に対する径方向に延びて、翼形を成す翼体と、前記径方向における一方側である径方向第一側と他方側である径方向第二側とのうち、前記翼体の前記径方向第一側の端に設けられているシュラウドと、を有する。前記シュラウドは、前記軸線が延びる軸線方向における一方側である軸線上流側と他方側である軸線下流側とのうち、前記軸線上流側を向く前端面と、前記軸線下流側を向く後端面と、前記軸線に対する周方向における一方側である周方向第一側と他方側である周方向第二側とのうち、前記周方向第一側を向く第一周方向端面と、前記周方向第二側を向く第二周方向端面と、前記径方向第一側を向く反ガスパス面と、前記径方向第二側を向くガスパス面と、を有する。
製造補助装置は、前記複数の静翼が前記周方向に並んだ状態で載置され、前記複数の静翼毎の前記シュラウドの前記前端面又は前記後端面が接触可能なベース板と、前記ベース板に固定され、前記ベース板上に載置されている前記複数の静翼毎の前記シュラウドにおける前記反ガスパス面に接触可能に、前記周方向に広がる円弧面を有する径方向位置決めブロックと、前記ベース板に取り付けられ、前記ベース板上に載置されている前記複数の静翼を、前記径方向であって前記径方向位置決めブロックの側に押す径方向押し装置と、前記ベース板に固定され、前記ベース板上に載置されている前記複数の静翼のうちで、最も前記周方向第一側に配置される静翼である第一端部静翼における前記シュラウドの前記第一周方向端面に接触可能な周方向位置決めブロックと、前記ベース板に取り付けられ、前記ベース板上に載置されている前記複数の静翼のうちで、最も前記周方向第二側に配置される静翼である第二端部静翼を、前記周方向であって前記周方向位置決めブロックの側に押す周方向押し装置と、前記ベース板に取り付けられ、前記ベース板上に載置されている前記複数の静翼を、前記ベース板の側に押す軸線方向押し装置と、を備える。
【0012】
上記目的を達成するための本開示に係る一態様としての製造方法は、以下の静翼セグメントの製造方法である。この静翼セグメントは、軸線に対する周方向に並ぶ複数の静翼を備える。前記複数の静翼は、いずれも、前記軸線に対する径方向に延びて、翼形を成す翼体と、前記径方向における一方側である径方向第一側と他方側である径方向第二側とのうち、前記翼体の前記径方向第一側の端に設けられているシュラウドと、を有する。前記シュラウドは、前記軸線が延びる軸線方向における一方側である軸線上流側と他方側である軸線下流側とのうち、前記軸線上流側を向く前端面と、前記軸線下流側を向く後端面と、前記軸線に対する周方向における一方側である周方向第一側と他方側である周方向第二側とのうち、前記周方向第一側を向く第一周方向端面と、前記周方向第二側を向く第二周方向端面と、前記径方向第一側を向く反ガスパス面と、前記径方向第二側を向くガスパス面と、を有する。
静翼セグメントの製造方法では、前記複数の静翼を製造する静翼製造工程と、前記複数の静翼を前記周方向に並べて、前記複数の静翼のうち、前記周方向で隣接する二つの静翼の前記シュラウドが相互に接触した状態で、前記複数の静翼毎の前記周方向の位置が目的の位置になり、前記径方向の位置が目的の位置になり、前記軸線方向の位置が目的の位置になるよう、前記複数の静翼のそれぞれを仮位置決めする静翼配置工程と、前記複数の静翼が仮位置決めされている状態で、前記複数の静翼相互を連結する連結工程と、前記連結工程後に、前記複数の静翼の仮位置決めを解除する仮位置決め解除工程と、を実行する。前記静翼製造工程では、前記複数の静翼毎の前記シュラウドにおける前記反ガスパス面が、前記周方向における前記第一周方向端面の位置から前記第二周方向端面の位置にわたって連続して、前記周方向に並ぶ複数の平面を有し、前記複数の平面のうち、前記周方向で隣り合う二つの平面の境に形成される稜線は、前記軸線を中心とする仮想円上に位置するよう、前記静翼を製造する。
【発明の効果】
【0013】
本開示の一態様では、静翼の製造が容易でその製造コストを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本開示に係る一実施形態におけるガスタービンの構成を示す模式図である。
図2】本開示に係る一実施形態における静翼環の正面図である。
図3】本開示に係る一実施形態における静翼セグメントの斜視図である。
図4図3におけるIV-IV線断面図である。
図5】本開示に係る一実施形態における静翼の斜視図である。
図6図3におけるVI矢視図である。
図7図6におけるVII-VII線断面図である。
図8】本開示に係る一実施形態における静翼セグメントの製造手順を示すフローチャートである。
図9】本開示に係る一実施形態における仮位置決め前の製造補助装置の側面図である。
図10図9におけるX矢視図である。
図11】本開示に係る一実施形態における仮位置決め状態の製造補助装置の側面図である。
図12図11におけるXII矢視図である。
図13】本開示に係る一実施形態における静翼の製造方法を示す説明図である。
図14】比較例における静翼の製造方法を示す説明図である。
図15】本開示に係る一実施形態の変形例における複数の静翼の平面図である。
図16】本開示に係る一実施形態の変形例における静翼セグメントの要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本開示に係る静翼、この静翼を複数備える静翼セグメント、この静翼セグメントを備える軸流流体機械、静翼セグメントの製造補助装置、静翼セグメントの製造方法の一実施形態について説明する。
【0016】
「静翼、静翼セグメント、及び軸流流体機械」
静翼、この静翼を複数備える静翼セグメント、この静翼セグメントを備える軸流流体機械の一実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0017】
図1に示すように、ガスタービン10は、外気Aを圧縮して圧縮空気を生成する圧縮機40と、燃料Fを圧縮空気中で燃焼させ燃焼ガスGを生成する複数の燃焼器20と、燃焼ガスGにより駆動するタービン30と、を備えている。
【0018】
圧縮機40は、ロータ軸線Arを中心として回転する圧縮機ロータ41と、圧縮機ロータ41を覆う圧縮機ケーシング45と、複数の静翼環46と、を有する。タービン30は、軸線Arを中心として回転するタービンロータ31と、タービンロータ31を覆うタービンケーシング35と、複数の静翼列36と、を有する。本実施形態の軸流流体機械は、この圧縮機40である。なお、以下では、軸線Arが延びる方向を軸線方向Da、この軸線方向Daの両側のうち一方側を軸線上流側Dau、他方側を軸線下流側Dadとする。
【0019】
圧縮機40は、タービン30に対して軸線上流側Dauに配置されている。圧縮機ロータ41とタービンロータ31とは、同一軸線Ar上に位置し、互いに接続されてガスタービンロータ11を成す。このガスタービンロータ11には、例えば、発電機GENのロータが接続されている。ガスタービン10は、さらに、圧縮機ケーシング45とタービンケーシング35との間に配置されている中間ケーシング14を備えている。この中間ケーシング14内には、圧縮機40からの圧縮空気が流入する。複数の燃焼器20は、軸線Arに対する周方向Dcに並んで、中間ケーシング14に取り付けられている。圧縮機ケーシング45と中間ケーシング14とタービンケーシング35とは、互いに接続されてガスタービンケーシング15を成す。
【0020】
圧縮機ロータ41は、軸線Arを中心として軸線方向Daに延びるロータ軸42と、このロータ軸42に取り付けられている複数の動翼列43と、を有する。複数の動翼列43は、軸線方向Daに並んでいる。各動翼列43は、いずれも、軸線Arに対する周方向Dcに並んでいる複数の動翼で構成されている。複数の動翼列43の各軸線下流側Dadには、複数の静翼環46のうちいずれか一の静翼環46が配置されている。各静翼環46は、圧縮機ケーシング45の内側に設けられている。各静翼環46は、いずれも、軸線Arに対する周方向Dcに並んでいる複数の静翼を有して構成されている。
【0021】
タービンロータ31は、軸線Arを中心として軸線方向Daに延びるロータ軸32と、このロータ軸32に取り付けられている複数の動翼列33と、を有する。複数の動翼列33は、軸線方向Daに並んでいる。各動翼列33は、いずれも、軸線Arに対する周方向Dcに並んでいる複数の動翼で構成されている。複数の動翼列33の各軸線上流側Dauには、複数の静翼列36のうちいずれか一の静翼列36が配置されている。各静翼列36は、タービンケーシング35の内側に設けられている。各静翼列36は、いずれも、軸線Arに対する周方向Dcに並んでいる複数の静翼を有して構成されている。
【0022】
圧縮機40の静翼環46は、図2に示すように、組立等の都合上、周方向Dcに分割されている。この周方向Dcに分割された各部分が静翼セグメント47を構成する。この静翼セグメント47は、静翼環46を構成する複数の静翼50のうちの一部の複数の静翼50が周方向Dcに並んで相互に連結されたものである。静翼環46を構成する複数の静翼セグメント47は、圧縮機ケーシング45の内周側に配置され、この圧縮機ケーシング45に取り付けられている。
【0023】
静翼セグメント47は、図3及び図4に示すように、周方向Dcに並んでいる複数の静翼50と、複数の静翼50の軸線Arに対する径方向内側Driの部分が装着される連結ホルダ(内側連結部材)92と、複数の静翼50の軸線Arに対する径方向外側Droの部分相互を周方向Dcに連結する連結バンド(外側連結部材)90と、を有する。
【0024】
静翼50は、図4及び図5に示すように、径方向Drに延びて翼形を成す翼体51と、翼体51の径方向内側Driの端に設けられている内側シュラウド52と、翼体51の径方向外側Droの端に設けられている外側シュラウド72と、を有する。
【0025】
内側シュラウド52は、シュラウド本体53と、上流側脚部65fと、上流側リップ部66fと、下流側脚部65bと、下流側リップ部66bと、を有する。シュラウド本体53は、翼体51の径方向内側Driの端に設けられ、周方向Dc及び軸線方向Daに広がっている板状の部材である。上流側脚部65fは、シュラウド本体53の軸線上流側Dauの部分から径方向内側Driに延びる。上流側リップ部66fは、上流側脚部65fの径方向内側Driの端から軸線上流側Dauに延びる。下流側脚部65bは、シュラウド本体53の軸線下流側Dadの部分から径方向内側Driに延びる。下流側リップ部66bは、下流側脚部65bの径方向内側Driの端から軸線下流側Dadに延びる。シュラウド本体53と上流側リップ部66fとの間は、軸線下流側Dadに凹む上流側係合溝67fを形成する。また、シュラウド本体53と下流側リップ部66bとの間は、軸線上流側Dauに凹む下流側係合溝67bを形成する。これら係合溝67f,67bの溝底部は、いずれも、脚部65f,65bにより形成される。
【0026】
内側シュラウド52のシュラウド本体53は、軸線上流側Dauを向く前端面54fと、軸線下流側Dadを向く後端面54bと、周方向第一側Dc1を向く第一周方向端面55aと、周方向第二側Dc2を向く第二周方向端面55bと、を有する。後端面54bは、前端面54fに対して実質的に平行である。第二周方向端面55bは、第一周方向端面55aに対して実質的に平行である。このため、シュラウド本体53を径方向Drから見た場合、このシュラウド本体53は平行四辺形の形状である。
【0027】
内側シュラウド52は、さらに、径方向外側Droを向くガスパス面56と、径方向内側Driを向く反ガスパス面57と、を有する。ガスパス面56は、シュラウド本体53の径方向外側Droを向く面である。反ガスパス面57は、シュラウド本体53の径方向内側Driを向く面である溝底面58と、上流側リップ部66fの径方向内側Driを向く面である前側反ガスパス面61fと、下流側リップ部66bの径方向内側Driを向く面である後側反ガスパス面61bと、を有して構成される。反ガスパス面57のうち、溝底面58は、前側反ガスパス面61f及び後側反ガスパス面61bに対して、径方向外側Droに位置している。
【0028】
外側シュラウド72は、シュラウド本体73と、上流側脚部85fと、上流側リップ部86fと、下流側脚部85bと、下流側リップ部86bと、を有する。シュラウド本体73は、翼体51の径方向外側Droの端に設けられ、周方向Dc及び軸線方向Daに広がっている板状の部材である。上流側脚部85fは、シュラウド本体73の軸線上流側Dauの部分から径方向外側Droに延びる。上流側リップ部86fは、上流側脚部85fの径方向外側Droの端から軸線上流側Dauに延びる。下流側リップ部86bは、下流側脚部85bの径方向外側Droの端から軸線下流側Dadに延びる。上流側脚部85fと下流側脚部85bとの間は、径方向外側Droから径方向内側Driに凹み、周方向Dcに延びるバンド溝88を形成している。
【0029】
外側シュラウド72のシュラウド本体73は、軸線上流側Dauを向く前端面74fと、軸線下流側Dadを向く後端面74bと、周方向第一側Dc1を向く第一周方向端面75aと、周方向第二側Dc2を向く第二周方向端面75bと、を有する。後端面74bは、前端面74fに対して実質的に平行である。第二周方向端面75bは、第一周方向端面75aに対して実質的に平行である。このため、シュラウド本体73を径方向Drから見た場合、このシュラウド本体73も、内側シュラウド52のシュラウド本体53と同様、平行四辺形の形状である。
【0030】
外側シュラウド72は、さらに、径方向内側Driを向くガスパス面76と、径方向外側Droを向く反ガスパス面77と、を有する。ガスパス面76は、シュラウド本体73の径方向内側Driを向く面である。反ガスパス面77は、シュラウド本体73の径方向外側Droを向く面である溝底面78と、上流側リップ部86fの径方向外側Droを向く面である前側反ガスパス面81fと、下流側リップ部86bの径方向外側Droを向く面である後側反ガスパス面81bと、を有して構成される。溝底面78は、バンド溝88の底面である。
【0031】
外側シュラウド72の溝底面78は、図5図7に示すように、周方向Dcにおける第一周方向端面75aの位置から第二周方向端面75bの位置にわたって連続して、周方向Dcに並ぶ三つの平面78a,78b,78cを有して構成される。ここで、三つの平面78a,78b,78cのうち、最も周方向第一側Dc1の平面を第一平面78a、第一平面78aの周方向第二側Dc2に隣接している平面を第二平面78b、第二平面78bの周方向第二側Dc2に隣接している平面を第三平面78cとする。第一平面78aと第二平面78bとの境に形成される第一稜線79aは、軸線Arと平行で周方向Dcに対して垂直な方向に延びている。第二平面78bと第三平面78cとの境に形成される第二稜線79bは、軸線Arと平行で周方向Dcに対して垂直な方向に延びている。第一稜線79a及び第二稜線79bは、いずれも軸線Arを中心とする仮想円上に位置する。
【0032】
連結ホルダ92は、図4に示すように、シール保持部93と、上流側脚部94fと、上流側フランジ部95fと、下流側脚部94bと、下流側フランジ部95bと、を有する。シール保持部93は、周方向Dcに延びる。上流側脚部94fは、シール保持部93の軸線上流側Dauの端から径方向外側Droに延びる。上流側フランジ部95fは、上流側脚部94fの径方向外側Droの端から軸線下流側Dadに延びる。この上流側フランジ部95fは、内側シュラウド52の上流側係合溝67fに入り込む。下流側脚部94bは、シール保持部93の軸線下流側Dadの端から径方向外側Droに延びる。下流側フランジ部95bは、下流側脚部94bの径方向外側Droの端から軸線上流側Dauに延びる。この下流側フランジ部95bは、内側シュラウド52の下流側係合溝67bに入り込む。シール保持部93の径方向内側Driには、圧縮機40のロータ軸42(図1参照)と連結ホルダ92との間をシールするシール装置96が設けられている。
【0033】
連結バンド90は、図3図4図6及び図7に示すように、径方向Drから見た形状が矩形板状を成す。また、この連結バンド90は、周方向Dcに垂直な断面が矩形の形状を成す。この連結バンド90の軸線方向Daの幅は、バンド溝88の軸線方向Daの幅に対応している。また、この連結バンド90の周方向Dcの長さは、静翼セグメント47を構成する複数の静翼50が周方向Dcに並んでいる状態で、各静翼50の溝底面78における周方向Dcの合計長さに対応している。
【0034】
「静翼セグメントの製造補助装置、静翼セグメントの製造方法」
まず、以上で説明した静翼セグメント47を製造する過程で使用する製造補助装置について、図9及び図10を参照して説明する。なお、図10は、図9のX矢視図である。
【0035】
この製造補助装置100は、ベース板101と、径方向位置決めブロック105と、径方向押し装置110と、周方向位置決めブロック115と、周方向押し装置120と、軸線方向押し装置125と、周長測定基準ブロック130と、ゲージ135と、を有する。
【0036】
ベース板101上には、周方向Dcに並べられた複数の静翼50が載せられる。この際、複数の静翼50毎の外側シュラウド72の前端面74f及び内側シュラウド52の前端面54fが、ベース板101に接する。ここで、以下の説明の都合上、ベース板101上に載置されている複数の静翼50のうちで、最も周方向第一側Dc1に配置される静翼50を第一端部静翼50aとし、最も周方向第二側Dc2に配置されている静翼50を第二端部静翼50bとし、第一端部静翼50aと第二端部静翼50bとの間に配置されている複数の静翼50を中間部静翼50cとする。
【0037】
ここで、静翼セグメント47を製造する過程での周方向Dc、軸線方向Da、径方向Drに対する基準となる軸線Arは、圧縮機ロータ41中の軸線Arではなく、仮想の軸線Arである。但し、この仮想の軸線Arとベース板101上で仮位置決めされた複数の静翼50との相対位置関係と、圧縮機ロータ41中の軸線Arと複数の静翼50との相対位置関係とは、同じである。このため、本実施形態の方法で製造した静翼セグメント47を圧縮機ケーシング45に取り付けた場合、前述の仮想の軸線Arが、圧縮機ロータ41中の軸線Arと一致する。また、仮想の軸線Arに対する周方向Dc、軸線方向Da、径方向Drの関係は、圧縮機ロータ41中の軸線Arに対する周方向Dc、軸線方向Da、径方向Drの関係と一致する。
【0038】
径方向位置決めブロック105は、ベース板101に固定されている。この径方向位置決めブロック105は、ベース板101上に載置されている複数の静翼50毎の外側シュラウド72における前側反ガスパス面81fに対向する径方向外側対向面106を有する。この径方向外側対向面106は、仮想の軸線Arを中心とした円弧面である。
【0039】
径方向押し装置110は、径方向内側対向面112を有する径方向押しブロック111と、この径方向押しブロック111を押す径方向押し機構113と、を有する。なお、図9では、この図を見易くするために、この径方向押し装置110を省略している。径方向内側対向面112は、仮想の軸線Arを中心とした円弧面であり、径方向位置決めブロック105の径方向外側対向面106と径方向Drで間隔をあけて対向する。よって、径方向内側対向面112は、ベース板101上に載置されている複数の静翼50毎の内側シュラウド52における前側反ガスパス面61fに径方向Drで対向する。径方向押し機構113は、ベース板101に取り付けられている。この径方向押し機構113は、径方向押しブロック111を径方向外側Droに押す。言い換えると、径方向押し装置110は、ベース板101上に載置されている複数の静翼50を径方向位置決めブロック105の側に押す。
【0040】
周方向位置決めブロック115は、ベース板101に固定されている。この周方向位置決めブロック115は、第一周方向対向面116を有する。この第一周方向対向面116は、ベース板101に対して傾斜した傾斜面である。この第一周方向対向面116は、ベース板101上に載置されている複数の静翼50のうちの第一端部静翼50aにおける外側シュラウド72の第一周方向端面75a及び内側シュラウド52の第一周方向端面55aに接触可能である。
【0041】
周方向押し装置120は、第二周方向対向面122を有する周方向押しブロック121と、この周方向押しブロック121を押す周方向押し機構123と、を有する。第二周方向対向面122は、ベース板101に対して傾斜した傾斜面である。この第二周方向対向面122は、周方向位置決めブロック115の第一周方向対向面116と周方向Dcで間隔をあけて対向する。よって、第二周方向対向面122は、ベース板101上に載置されている複数の静翼50のうちの第二端部静翼50bにおける外側シュラウド72の第二周方向端面75b及び内側シュラウド52の第二周方向端面55bと周方向Dcで対向する。周方向押し機構123は、ベース板101に取り付けられている。この周方向押し機構123は、周方向押しブロック121を周方向第一側Dc1に押す。言い換えると、周方向押し装置120は、ベース板101上に載置されている複数の静翼50を周方向位置決めブロック115の側に押す。
【0042】
軸線方向押し装置125は、軸線方向対向面127を有する軸線方向押しブロック126と、この軸線方向押しブロック126を押す軸線方向押し機構128と、を有する。軸線方向対向面127は、ベース板101上に載置されている複数の静翼50毎の外側シュラウド72の後端面74b及び内側シュラウド52の後端面54bに接触可能に形成されている。軸線方向押し機構128は、ベース板101に取り付けられている。この軸線方向押し機構128は、ベース板101上に載置されている複数の静翼50と接触した軸線方向押しブロック126を軸線上流側Dauに押す。言い換えると、軸線方向押し装置125は、ベース板101上に載置されている複数の静翼50をベース板101の側に押す。
【0043】
周長測定基準ブロック130は、ベース板101に固定されている。この周長測定基準ブロック130は、第二周方向対向面131を有する。この第二周方向対向面131は、周方向押しブロック121の第二周方向対向面122と同様、ベース板101に対して傾斜した傾斜面である。この第二周方向対向面131は、周方向位置決めブロック115の第一周方向対向面116と周方向Dcで間隔をあけて対向する。よって、第二周方向対向面131は、ベース板101上に載置されている複数の静翼50のうちの第二端部静翼50bにおける外側シュラウド72の第二周方向端面75b及び内側シュラウド52の第二周方向端面55bと周方向Dcで対向する。このため、この周長測定基準ブロック130における傾斜面中の径方向外側Droの部分と周方向位置決めブロック115における傾斜面の径方向外側Droの部分との間の周方向Dcの距離である外側周長は、静翼セグメント47の一部を構成する第一端部静翼50aにおける外側シュラウド72の第一周方向端面75aと、静翼セグメント47の他の一部を構成する第二端部静翼50bにおける外側シュラウド72の第二周方向端面75bとの間の周方向の設計長さである設計外側周長より長い。また、この周長測定基準ブロック130における傾斜面中の径方向内側Driの部分と周方向位置決めブロック115における傾斜面の径方向内側Driの部分との間の周方向Dcの距離である内側周長は、静翼セグメント47の一部を構成する第一端部静翼50aにおける内側シュラウド52の第一周方向端面55aと、静翼セグメント47の他の一部を構成する第二端部静翼50bにおける内側シュラウド52の第二周方向端面55bとの間の周方向Dcの設計長さである設計内側周長より長い。
【0044】
この周長測定基準ブロック130は、周方向Dcから見ると、門型を成している。周方向押し装置120の一部は、門型の周長測定基準ブロック130の内側に配置されている。よって、周方向押し装置120の一部は、軸線方向Daから見ると、周長測定基準ブロック130と重なっている。
【0045】
ゲージ135は、長手方向136を有し、この長手方向の位置変化により長手方向に垂直な厚さが変化する。
【0046】
次に、図8に示すフローチャートに従って、本実施形態における静翼セグメント47の製造方法について説明する。
【0047】
まず、静翼セグメント47を構成する複数の静翼50を製造する(S1:静翼製造工程)。この静翼製造工程(S1)では、まず、各静翼50の中間品を鍛造等で形成する。この中間品は、完成品の静翼50よりも各部の寸法が大きい。そこで、マシニングセンタ等の工作機械を用いて、中間品を切削する。具体的には、図13に示すように、中間品50mの外側シュラウド72mにおける前側反ガスパス面81fm及び後側反ガスパス面81bmを、平フライス等の工具150aで切削する。この際、工具軸151aを、完成品の外側シュラウド72における前側反ガスパス面81f及び後側反ガスパス面81bに平行になるようにして、この工具軸151aを中間品50mに対して周方向Dcに相対移動させる。この結果、切削後の前側反ガスパス面81f及び後側反ガスパス面81bは、軸線Arを基準にした円弧面になる。また、中間品50mの外側シュラウド72mにおける溝底面78mを正面フライス又は溝フライス等の工具150bで切削する。この際、工具軸151bを、完成品の外側シュラウド72における溝底面78を構成する複数の平面のうちの第一平面78aに垂直になるようにして、この工具軸151bを軸線方向Daに移動させる。この結果、この第一平面78aは、軸線Arに対して平行な平面になる。次に、工具軸151bを、完成品の外側シュラウド72における溝底面78を構成する複数の平面のうちの第二平面78bに垂直になるようにして、この工具軸151bを軸線方向Daに移動させる。この結果、この第二平面78bは、軸線Arに対して平行な平面になる。また、図6及び図7に示すように、第一平面78aと第二平面78bとの境に形成される第一稜線79aは、軸線Arと平行で周方向Dcに対して垂直な方向に延びる直線になる。さらに、工具軸151bを、完成品の外側シュラウド72における溝底面78を構成する複数の平面のうちの第三平面78cに垂直になるようにして、この工具軸151bを軸線方向Daに移動させる。この結果、この第三平面78cは、軸線Arに対して平行な平面になる。また、図6及び図7に示すように、第二平面78bと第三平面78cとの境に形成される第二稜線79bは、軸線Arと平行で周方向Dcに対して垂直な方向に延びる直線になる。以上のように、本実施形態では、面切削で中間品50mの溝底面78mを複数の平面78a,78b,78cに加工する。
【0048】
以上で説明した中間品50mの切削により、静翼製造工程(S1)が終了する。
【0049】
ところで、図14に示すように、完成品の外側シュラウド72xにおける溝底面78xを、軸線Arを基準にした円弧面にする場合には、中間品50mの前側反ガスパス面81fm及び後側反ガスパス面81bmと同様に、加工することはできない。つまり、平フライス等の工具150aの工具軸151aを完成品の外側シュラウド72xにおける溝底面78xに平行になるようにして、この工具軸151aを中間品50mに対して周方向Dcに相対移動させて、円弧状の溝底面78xを形成することはできない。これは、平フライス等の工具150aの工具軸151aを完成品の外側シュラウド72xにおける溝底面78xに平行になるようにすると、この工具軸151aが完成品の前側反ガスパス面81f又は後側反ガスパス面81bと干渉するためである。このため、完成品の外側シュラウド72xにおける溝底面78xを、軸線Arを基準にした円弧面にする場合には、例えば、エンドミル等の工具150cを用いる。この際、工具軸151cを、完成品の外側シュラウド72xにおける円弧状の溝底面78xに垂直になるようにして、この工具軸151cを軸線方向Daに移動させる。この結果、円弧状の溝底面78xの一部のみが形成される。次に、この工具軸151cを中間品50mに対して周方向Dcにわずかにズラしてから、この工具軸151cを軸線方向Daに移動させる。この結果、円弧状の溝底面78xの他の一部のみが形成される。以上の作業を繰り返して、円弧状の溝底面78xを形成する。すなわち、この場合には、線切削を繰り返して実行することで中間品50mの溝底面78mを円弧面に加工する。
【0050】
以上のように、外側シュラウド72xにおける溝底面78xを、軸線Arを基準にした円弧面にする場合には、線切削を繰り返して実行する必要があるため、静翼50xの製造が面倒でその製造コストがかさんでしまう。一方、本実施形態では、面切削で外側シュラウド72における溝底面78を複数の平面78a,78b,78cを形成するため、静翼50の製造が容易でその製造コストを抑えることができる。
【0051】
次に、連結バンド90を製造する(S2:バンド製造工程)。
【0052】
次に、連結ホルダ92を製造する(S3:ホルダ製造工程)。
【0053】
次に、静翼製造工程(S1)で製造された複数の静翼50を周方向Dcに並べる。そして、複数の静翼50のうち、周方向Dcで隣接する二つの静翼50の外側シュラウド72が相互に接触し且つ二つの静翼50の内側シュラウド52が相互に接触した状態で、複数の静翼50毎の周方向Dcの位置が目的の位置になり、径方向Drの位置が目的の位置になり、軸線方向Daの位置が目的の位置になるよう、複数の静翼50のそれぞれを仮位置決めする(S4:静翼配置工程)。
【0054】
この静翼配置工程(S4)では、まず、図9及び図10に示すように、製造補助装置100のベース板101上であって、径方向位置決めブロック105と径方向押し装置110と間、及び、周方向位置決めブロック115と周方向押し装置120と間に、静翼製造工程(S1)で製造された複数の静翼50を周方向Dcに並べて配置する。この際、複数の静翼50毎の外側シュラウド72の前端面74f及び内側シュラウド52の前端面54fをベース板101に接触させる。次に、径方向押し機構113を操作して、この径方向押し機構113で径方向押しブロック111を径方向外側Droに押す。この結果、図11及び図12に示すように、複数の静翼50毎の内側シュラウド52における前側反ガスパス面61fの全てが、径方向押しブロック111の径方向内側対向面112に接すると共に、複数の静翼50毎の外側シュラウド72における前側反ガスパス面81fの全てが、径方向位置決めブロック105の径方向外側対向面106にしっかりと接する。さらに、周方向押し機構123を操作して、この周方向押し機構123で周方向押しブロック121を周方向第一側Dc1に押す。この結果、複数の静翼50のうちの第二端部静翼50bにおける外側シュラウド72の第二周方向端面75b及び内側シュラウド52の第二周方向端面55bが、周方向押しブロック121の第二周方向対向面122に接すると共に、複数の静翼50のうちの第一端部静翼50aにおける外側シュラウド72の第一周方向端面75a及び内側シュラウド52の第一周方向端面55aが、周方向位置決めブロック115の第一周方向対向面116にしっかりと接する。さらに、複数の静翼50のうち、周方向Dcで隣り合う二つの静翼50の外側シュラウド72相互、及び二つの静翼50の内側シュラウド52相互が接する。次に、軸線方向押し機構128を操作して、この軸線方向押し機構128で軸線方向押しブロック126を軸線上流側Dauに押す。この結果、複数の静翼50毎の内側シュラウド52における後端面54bの全て、及び、複数の静翼50毎の外側シュラウド72における後端面74bの全てが、軸線方向押しブロック126の軸線方向対向面127に接すると共に、複数の静翼50毎の内側シュラウド52における前端面54fの全て、及び、複数の静翼50毎の外側シュラウド72における前端面74fの全てがベース板101にしっかりと接する。以上で、複数の静翼50のそれぞれが仮位置決めされる。なお、複数の静翼50のそれぞれの仮位置決めの状態を一時的にしっかりと保持するため、複数の静翼50毎の外側シュラウド72と軸線方向押しブロック126とを一時的にネジで連結してもよい。
【0055】
この静翼配置工程(S4)が実行された後、図11及び図12に示すように、周長測定基準ブロック130の第二周方向対向面131は、複数の静翼50のうちの第二端部静翼50bにおける外側シュラウド72の第二周方向端面75b及び内側シュラウド52の第二周方向端面55bと周方向Dcで間隔をあけて対向している。
【0056】
次に、製造補助装置100で仮位置決めされている複数の静翼50全体の周方向Dcの長さを測定する(S5:周長測定工程)。この周長測定工程(S5)では、図11及び図12に示すように、周長測定基準ブロック130における第二周方向対向面131中の径方向内側Driの部分と第二端部静翼50bにおける内側シュラウド52の第二周方向端面55bとの間にゲージ135を差し込む。そして、このゲージ135の差し込み量から、第一端部静翼50aにおける内側シュラウド52の第一周方向端面55aと、第二端部静翼50bにおける内側シュラウド52の第二周方向端面55bとの間の周方向Dcの長さである内側周長を測定する。さらに、周長測定基準ブロック130における第二周方向対向面131中の径方向外側Droの部分と第二端部静翼50bにおける外側シュラウド72の第二周方向端面75bとの間にゲージ135を差し込む。そして、このゲージ135の差し込み量から、第一端部静翼50aにおける外側シュラウド72の第一周方向端面75aと、第二端部静翼50bにおける外側シュラウド72の第二周方向端面75bとの間の周方向Dcの長さである外側周長を測定する。
【0057】
次に、製造補助装置100で仮位置決めされている複数の静翼50相互を連結する(S6:連結工程)。この連結工程(S6)では、製造補助装置100で仮位置決めされている複数の静翼50のバンド溝88内に、図3図4及び図7に示すように、連結バンド90を配置し、複数の静翼50の各稜線79a,79bに連結バンド90を接触させる。そして、複数の静翼50のそれぞれと連結バンド90とを溶接で接続する。なお、複数の静翼50のそれぞれと連結バンド90との接続は、溶接ではなく、ネジを用いてもよい。
【0058】
連結工程(S6)が終了すると、製造補助装置100による複数の静翼50の仮位置決めを解除する(S7:仮位置決め解除工程)。この仮位置決め解除工程(S7)では、製造補助装置100から連結バンド90で連結された複数の静翼50を外す。
【0059】
次に、連結バンド90で連結された複数の静翼50の周長が設計周長になるよう、第一端部静翼50aにおける第一周方向端面55a,75aと、第二端部静翼50bにおける第二周方向端面55b,75bとのうち、少なくとも一方の周方向端面を切削する(S8:継ぎ手面加工工程)。具体的に、この継ぎ手面加工工程(S8)では、連結バンド90で連結された複数の静翼50の内側周長が設計内側周長に対して予め定められた誤差範囲内に収まるよう、第一端部静翼50aにおける内側シュラウド52の第一周方向端面55aと、第二端部静翼50bにおける内側シュラウド52の第二周方向端面55bとのうち、少なくとも一方の周方向端面を切削する。さらに、連結バンド90で連結された複数の静翼50の外側周長が設計外側周長に対して予め定められた誤差範囲内に収まるよう、第一端部静翼50aにおける外側シュラウド72の第一周方向端面75aと、第二端部静翼50bにおける外側シュラウド72の第二周方向端面75bとのうち、少なくとも一方の周方向端面を切削する。なお、シュラウドの切削にあたり、例えば、第一端部静翼50aにおける内側シュラウド52の第一周方向端面55aを切削した場合には、第一端部静翼50aにおける外側シュラウド72の第一周方向端面75aを切削する。また、ここでは、内側シュラウド52の第一周方向端面55aと外側シュラウド72の第一周方向端面75aとの両方を切削する例を説明したが、一方の第一周方向端面のみを切削する場合もある。
【0060】
継ぎ手面加工工程(S8)が終了すると、連結バンド90で連結された複数の静翼50の表面にコーティングを施す(S9:コーティング工程)。このコーティング工程(S9)では、連結バンド90で連結された複数の静翼50の表面にコーティング剤を吹き付ける。
【0061】
コーティング工程(S9)が終了すると、連結バンド90で連結された複数の静翼50の内側シュラウド52に連結ホルダ92を組み付ける(S10:ホルダ組付け工程)。この連結ホルダ92の組付けでは、連結ホルダ92の上流側フランジ部95fが内側シュラウド52の上流側係合溝67fに入り込み、連結ホルダ92の下流側フランジ部95bが内側シュラウド52の下流側係合溝67bに入り込む。
【0062】
以上で静翼セグメント47が完成する。
【0063】
以上のように、本実施形態では、外側シュラウド72における溝底面78を複数の平面78a,78b,78cを平面切削で形成するため、静翼50及び静翼セグメント47の製造が容易でその製造コストを抑えることができる。
【0064】
また、本実施形態では、製造補助装置100を用いて、実質的に完成した複数の静翼50をしっかりと仮位置決めした状態で、複数の静翼50相互を接続している。このため、本実施形態では、複数の静翼50毎の周方向Dcの位置が目的の位置になり、径方向Drの位置が目的の位置になり、軸線方向Daの位置が目的の位置になる。なお、ここでの「目的の位置になる」とは、目的の位置に極めて近い位置になる、言い換えると、設計位置に対して予め定められた誤差範囲内に収まる、という意味である。
【0065】
また、本実施形態では、静翼セグメント47の周長が設計周長になるよう、この周長を調整する。このため、本実施形態では、複数の静翼セグメント47を周方向Dcに並べて静翼環46を組み上げる際、複数の静翼セグメント47のうちの一の静翼セグメント47を配置した後、周方向Dcで隣接する他の静翼セグメント47を容易に組み付けることができる。さらに、一の静翼セグメント47に対して、他の静翼セグメント47を、周方向Dcの正確な相対位置に配置することができる。
【0066】
「変形例」
以上の実施形態では、静翼製造工程(S1)後であって、ホルダ製造工程(S3)及び静翼配置工程(S4)の前に、バンド製造工程(S2)を実行する。しかしながら、このバンド製造工程(S2)は、連結バンド90を使用する連結工程(S6)の前であれば、いつ実行してもよい。また、以上の実施形態では、静翼製造工程(S1)及びバンド製造工程(S2)後であって、静翼配置工程(S4)の前に、ホルダ製造工程(S3)を実行する。しかしながら、このホルダ製造工程(S3)は、連結ホルダ92を使用するホルダ組付け工程(S10)の前であれば、いつ実行してもよい。
【0067】
以上の実施形態の静翼配置工程(S4)では、外側シュラウド72の前端面74f及び内側シュラウド52の前端面54fをベース板101に接触させる。しかしながら、外側シュラウド72の後端面74b及び内側シュラウド52の後端面54bをベース板101に接触させてもよい。
【0068】
本実施形態の製造補助装置100は、周長測定基準ブロック130及びゲージ135を有する。しかしながら、製造補助装置100は、周長測定基準ブロック130及びゲージ135が無くてもよい。但し、周長測定基準ブロック130及びゲージ135が無い場合、例えば、可撓性を有するメモリ付きのワイヤ等を複数の静翼50に沿わせて、複数の静翼50の周長を測定することになる。このため、この場合、周長の測定が面倒である上に、周長の測定値に含まれる誤差が大きくなる。従って、本実施形態のように、製造補助装置100は、周長測定基準ブロック130及びゲージ135を有することが好ましい。
【0069】
図6に示すように、本実施形態の外側シュラウド72の第一稜線79a及び第二稜線79bは、いずれも、軸線Arと平行で周方向Dcに対して垂直な方向に延び、且つ軸線Arを中心とする仮想円上に位置する。しかしながら、図15に示すように、外側シュラウド72の第一稜線79a及び第二稜線79bは、周方向Dcに垂直な方向に延びていなくてもよい。なお、図15に示す例では、第一稜線79a及び第二稜線79bは、いずれも、外側シュラウド72の第一周方向端面75a又は第二周方向端面75bと平行である。
【0070】
但し、この例のように、外側シュラウド72の第一稜線79a及び第二稜線79bが、周方向Dcに垂直な方向に延びていない場合、第一稜線79aの全体及び第二稜線79bの全体を、軸線Arを中心とする同一半径の仮想円上に位置させることができない。例えば、第一稜線79aの軸線上流側Dauの端と第一稜線79aの軸線下流側Dadの端とを、軸線Arを中心とする同一半径の仮想円上に位置させたとしても、第一稜線79a中で、第一稜線79aの軸線上流側Dauの端と第一稜線79aの軸線下流側Dadの端との間の中間部は、軸線Arを中心とする同一半径の仮想円上に位置しない。よって、この例のように、外側シュラウド72の第一稜線79a及び第二稜線79bが周方向Dcに垂直な方向に延びていない場合、第一稜線79aの全体及び第二稜線79bの全体を連結バンド90に接触させることができず、外側シュラウド72と連結バンド90との接続性が不安定になる。従って、稜線79a,79bは、軸線Arと平行で周方向Dcに対して垂直な方向に延びることが好ましい。
【0071】
図7に示すように、周方向Dcで隣接する二つの静翼50のうち、周方向第二側Dc2の静翼50bの第一平面78aと、周方向第一側Dc1の静翼50cの第三平面78cとは、周方向Dcで隣接している。周方向第二側Dc2の静翼50bの第一平面78aは、周方向第一側Dc1の静翼50cの第三平面78cに対して180°の角度であり、周方向第一側Dc1の静翼50cの第三平面78cと同一仮想平面上に位置する。しかしながら、周方向第二側Dc2の静翼50bの第一平面78aは、周方向第一側Dc1の静翼50cの第三平面78cと同一仮想平面上に位置しなくてもよい。例えば、図16に示すように、周方向第二側Dc2の静翼50bの第一平面78aは、周方向第一側Dc1の静翼50cの第三平面78cに対して180°未満の角度であり、周方向第一側Dc1の静翼50cの第三平面78cと同一仮想平面上に位置しなくてもよい。
【0072】
以上の実施形態の静翼セグメント47は、ガスタービン10の圧縮機40における静翼セグメント47である。しかしながら、静翼セグメント47は、他の軸流流体機械の静翼セグメントであってもよい。
【0073】
「付記」
以上の実施形態における静翼50は、例えば、以下のように把握される。
(1)第一態様における静翼50は、
軸線Arに対する周方向Dcに複数並べられる静翼50である。この静翼50は、前記軸線Arに対する径方向Drに延びて、翼形を成す翼体51と、前記径方向Drにおける一方側である径方向第一側Droと他方側である径方向第二側Driとのうち、前記翼体51の前記径方向第一側Droの端に設けられているシュラウド72と、を有する。
前記シュラウド72は、前記軸線Arが延びる軸線方向Daにおける一方側である軸線上流側Dauと他方側である軸線下流側Dadとのうち、前記軸線上流側Dauを向く前端面74fと、前記軸線下流側Dadを向く後端面74bと、前記軸線Arに対する周方向Dcにおける一方側である周方向第一側Dc1と他方側である周方向第二側Dc2とのうち、前記周方向第一側Dc1を向く第一周方向端面75aと、前記周方向第二側Dc2を向く第二周方向端面75bと、前記径方向第一側Droを向く反ガスパス面77と、前記径方向第二側Driを向くガスパス面76と、を有する。前記反ガスパス面77は、前記周方向Dcにおける前記第一周方向端面75aの位置から前記第二周方向端面75bの位置にわたって連続して、前記周方向Dcに並ぶ複数の平面78a,78b,78cを有して構成される。前記複数の平面78a,78b,78cのうち、前記周方向Dcで隣り合う二つの平面の境に形成される稜線79a,79bは、前記軸線Arを中心とする仮想円上に位置する。
【0074】
本態様の静翼50におけるシュラウド72の反ガスパス面77は、周方向Dcにおける第一周方向端面75aの位置から第二周方向端面75bの位置にわたって連続して、周方向Dcに並ぶ複数の平面78a,78b,78cを有して構成されている。したがって、本態様では、反ガスパス面77を構成する複数の平面78a,78b,78cを面切削で形成することができるため、静翼50の製造が容易でその製造コストを抑えることができる。
【0075】
(2)第二態様における静翼50は、
前記第一態様の静翼50において、前記複数の平面78a,78b,78cは、第一平面78aと、第二平面78bと、第三平面78cと、を有する。前記第一平面78aと前記第二平面78bとは、前記周方向Dcで隣接し、前記第二平面78bと前記第三平面78cとは、前記周方向Dcで隣接する。前記第一平面78aと前記第二平面78bとの境に形成される稜線79aと、前記第二平面78bと前記第三平面78cとの境に形成される稜線79bとは、いずれも、前記軸線Arを中心とする前記仮想円上に位置する。
【0076】
本態様では、周方向Dcにおける第一周方向端面55aの位置から第二周方向端面75bの位置にわたって連続して、周方向Dcに並ぶ二つの平面を有して反ガスパス面77を構成する場合よりも、各平面を、軸線Arを中心とする仮想円に沿わせることができる。
【0077】
(3)第三態様における静翼50は、
前記第一態様又は前記第二態様の静翼50において、前記稜線79a,79bは、前記軸線Arに平行で、前記周方向Dcに対して垂直な方向に延びている。
【0078】
本態様では、稜線79a,79bの全体を、軸線Arを中心として同一半径の仮想円上に位置させることができる。
【0079】
(4)第四態様における静翼50は、
前記第一態様から前記第三態様のいずれか一の静翼50において、前記反ガスパス面77は、前側反ガスパス面81fと、溝底面78と、後側反ガスパス面81bとを有する。
前記軸線上流側Dauから前記軸線下流側Dadに向かって、前記前側反ガスパス面81f、前記溝底面78、前記後側反ガスパス面81bの順に並ぶ。前記溝底面78は、前記前側反ガスパス面81f及び前記後側反ガスパス面81bよりも、前記径方向第二側Driに位置する。前記溝底面78が、前記複数の平面78a,78b,78cを有して構成されている。
【0080】
(5)第五態様における静翼50は、
前記第一態様から前記第四態様のいずれか一の静翼50において、前記径方向Drにおける径方向外側Droと径方向内側Driとのうち、前記径方向外側Droが前記径方向第一側であり、前記径方向内側Driが前記径方向第二側である。前記シュラウド72は、前記翼体51の前記径方向外側Droの端に設けられている外側シュラウドである。
【0081】
以上の実施形態における静翼セグメント47は、例えば、以下のように把握される。
(6)第六態様における静翼セグメント47は、
前記第一態様から前記第五態様のいずれか一の静翼50を複数備える。複数の前記静翼50は、前記周方向Dcに並ぶ。複数の前記静翼50のうち、前記周方向Dcで隣接する二つの静翼50の前記シュラウドが相互に接触した状態で、複数の前記静翼50が相互に連結されている。
【0082】
(7)第七態様における静翼セグメント47は、
前記第一態様から前記第五態様のいずれか一の静翼50を複数備える。さらに、連結バンド90を備える。複数の前記静翼50は、前記周方向Dcに並ぶ。複数の前記静翼50のうち、前記周方向Dcで隣接する二つの静翼50の前記シュラウドが相互に接触した状態で、
複数の前記静翼50のそれぞれと前記連結バンド90とが接続されている。
【0083】
以上の実施形態における軸流流体機械は、例えば、以下のように把握される。
(8)第八態様における軸流流体機械は、
前記第六態様又は前記第七態様の静翼セグメント47と、前記軸線Arを中心として回転するロータ41と、前記ロータ41を覆うケーシング45と、を備える。前記静翼セグメント47は、前記ケーシング45の内周側に配置され、前記ケーシング45に取り付けられている。
【0084】
以上の実施形態における静翼セグメント47の製造補助装置100は、例えば、以下のように把握される。
(9)第九態様における製造補助装置100は、以下の静翼セグメント47の製造補助装置である。この静翼セグメント47は、軸線Arに対する周方向Dcに並ぶ複数の静翼50を備える。前記複数の静翼50は、いずれも、前記軸線Arに対する径方向Drに延びて、翼形を成す翼体51と、前記径方向Drにおける一方側である径方向第一側Droと他方側である径方向第二側Driとのうち、前記翼体51の前記径方向第一側Droの端に設けられているシュラウド72と、を有する。前記シュラウド72は、前記軸線Arが延びる軸線方向Daにおける一方側である軸線上流側Dauと他方側である軸線下流側Dadとのうち、前記軸線上流側Dauを向く前端面74fと、前記軸線下流側Dadを向く後端面74bと、前記軸線Arに対する周方向Dcにおける一方側である周方向第一側Dc1と他方側である周方向第二側Dc2とのうち、前記周方向第一側Dc1を向く第一周方向端面75aと、前記周方向第二側Dc2を向く第二周方向端面75bと、前記径方向第一側Droを向く反ガスパス面77と、前記径方向第二側Driを向くガスパス面76と、を有する。
製造補助装置100は、前記複数の静翼50が前記周方向Dcに並んだ状態で載置され、前記複数の静翼50毎の前記シュラウド72の前記前端面74f又は前記後端面74bが接触可能なベース板101と、前記ベース板101に固定され、前記ベース板101上に載置されている前記複数の静翼50毎の前記シュラウド72における前記反ガスパス面77に接触可能に、前記周方向Dcに広がる円弧面106を有する径方向位置決めブロック105と、前記ベース板101に取り付けられ、前記ベース板101上に載置されている前記複数の静翼50を、前記径方向Drであって前記径方向位置決めブロック105の側に押す径方向押し装置110と、前記ベース板101に固定され、前記ベース板101上に載置されている前記複数の静翼50のうちで、最も前記周方向第一側Dc1に配置される静翼50である第一端部静翼50aにおける前記シュラウド72の前記第一周方向端面75aに接触可能な周方向位置決めブロック115と、前記ベース板101に取り付けられ、前記ベース板101上に載置されている前記複数の静翼50のうちで、最も前記周方向第二側Dc2に配置される静翼50である第二端部静翼50bを、前記周方向Dcであって前記周方向位置決めブロック115の側に押す周方向押し装置120と、前記ベース板101に取り付けられ、前記ベース板101上に載置されている前記複数の静翼50を、前記ベース板101の側に押す軸線方向押し装置125と、を備える。
【0085】
本態様では、静翼セグメント47を構成する複数の静翼50が周方向Dcに並び、複数の静翼50のうち、周方向Dcで隣接する二つの静翼50のシュラウドが相互に接触した状態で、複数の静翼50毎の周方向Dcの位置が目的の位置になり、径方向Drの位置が目的の位置になり、軸線方向Daの位置が目的の位置になるよう、複数の静翼50のそれぞれを容易且つ正確に仮位置決めすることができる。静翼セグメント47は、本態様の製造補助装置100を用いて、複数の静翼50のそれぞれを仮位置決めした状態で、複数の静翼50相互が連結されることで、製造される。このため、本態様の製造補助装置100を用いて、静翼セグメント47を製造すると、複数の静翼50毎の周方向Dcの位置が目的の位置になり、径方向Drの位置が目的の位置になり、軸線方向Daの位置が目的の位置になる。なお、このでの「目的の位置になる」とは、目的の位置に極めて近い位置になる、言い換えると、設計位置に対して予め定められた誤差範囲内に収まる、という意味である。
【0086】
(10)第十態様における製造補助装置100は、
前記第九態様の製造補助装置100において、前記ベース板101に固定され、前記ベース板101上に載置されている前記複数の静翼50のうち、前記第二端部静翼50bの前記第二周方向端面75bと、前記周方向Dcで間隔をあけて対向する周長測定基準ブロック130を、さらに備える。
【0087】
本態様では、静翼セグメント47を構成する複数の静翼50における第一端部静翼50aの第一周方向端面75aと第二端部静翼50bの第二周方向端面75bとの周方向Dcの長さである周長を、周長測定基準ブロック130を基準にして測定することができる。
【0088】
(11)第十一態様における製造補助装置100は、
前記第十態様の製造補助装置100において、長手方向136を有し、前記長手方向136の位置変化により前記長手方向136に垂直な厚さが変化するゲージ135を、さらに備える。
【0089】
本態様では、静翼セグメント47を構成する複数の静翼50における第二端部静翼50bの第二周方向端面75bと周長測定基準ブロック130との間に、ゲージ135を差し込むことで、このゲージ135の差し込み量から容易に前記周長を測定することができる。
【0090】
以上の実施形態における静翼セグメント47の製造方法は、例えば、以下のように把握される。
(12)第十二態様における製造方法は、以下の静翼セグメント47の製造方法である。
この静翼セグメント47は、軸線Arに対する周方向Dcに並ぶ複数の静翼50を備える。前記複数の静翼50は、いずれも、前記軸線Arに対する径方向Drに延びて、翼形を成す翼体51と、前記径方向Drにおける一方側である径方向第一側Droと他方側である径方向第二側Driとのうち、前記翼体51の前記径方向第一側Droの端に設けられているシュラウド72と、を有する。前記シュラウド72は、前記軸線Arが延びる軸線方向Daにおける一方側である軸線上流側Dauと他方側である軸線下流側Dadとのうち、前記軸線上流側Dauを向く前端面74fと、前記軸線下流側Dadを向く後端面74bと、前記軸線Arに対する周方向Dcにおける一方側である周方向第一側Dc1と他方側である周方向第二側Dc2とのうち、前記周方向第一側Dc1を向く第一周方向端面75aと、前記周方向第二側Dc2を向く第二周方向端面75bと、前記径方向第一側Droを向く反ガスパス面77と、前記径方向第二側Driを向くガスパス面76と、を有する。
静翼セグメント47の製造方法では、前記複数の静翼50を製造する静翼製造工程S1と、前記複数の静翼50を前記周方向Dcに並べて、前記複数の静翼50のうち、前記周方向Dcで隣接する二つの静翼50の前記シュラウド72が相互に接触した状態で、前記複数の静翼50毎の前記周方向Dcの位置が目的の位置になり、前記径方向Drの位置が目的の位置になり、前記軸線方向Daの位置が目的の位置になるよう、前記複数の静翼50のそれぞれを仮位置決めする静翼配置工程S4と、前記複数の静翼50が仮位置決めされている状態で、前記複数の静翼50相互を連結する連結工程S6と、前記連結工程S6後に、前記複数の静翼50の仮位置決めを解除する仮位置決め解除工程S7と、を実行する。前記静翼製造工程S1では、前記複数の静翼50毎の前記シュラウドにおける前記反ガスパス面77が、前記周方向Dcにおける前記第一周方向端面75aの位置から前記第二周方向端面75bの位置にわたって連続して、前記周方向Dcに並ぶ複数の平面78a,78b,78cを有し、前記複数の平面78a,78b,78cのうち、前記周方向Dcで隣り合う二つの平面の境に形成される稜線79a,79bは、前記軸線Arを中心とする仮想円上に位置するよう、前記静翼50を製造する。
【0091】
本態様では、反ガスパス面77を構成する複数の平面78a,78b,78cを面切削で形成することができるため、静翼50の製造が容易でその製造コストを抑えることができる。
【0092】
(13)第十三態様における製造方法は、
第十二態様の製造方法において、前記複数の静翼50が前記周方向Dcに並んでいる状態で、前記複数の静翼50相互を連結するための連結バンド90を製造するバンド製造工程S2をさらに実行する。前記連結工程S6では、前記複数の静翼50が仮位置決めされている状態で、前記複数の静翼50毎の前記稜線79a,79bと前記連結バンド90とを接触させて、前記複数の静翼50のそれぞれと前記連結バンド90とを接続する。
【0093】
(14)第十四態様における製造方法は、
前記第十二態様又は前記第十三態様の製造方法において、前記複数の静翼50が仮位置決めされている状態で、前記複数の静翼50のうち、最も前記周方向第一側Dc1の静翼50である第一端部静翼50aにおける前記シュラウド72の前記第一周方向端面75aから、前記複数の静翼50のうち、最も前記周方向第二側Dc2の静翼50である第二端部静翼50bにおける前記シュラウド72の前記第二周方向端面75bまでの前記周方向Dcの長さである周長を測定する周長測定工程S5と、前記仮位置決め解除工程S7後に、前記周長が目的の周長になるよう、前記第一端部静翼50aの前記第一周方向端面75aと、前記第二端部静翼50bの前記第二周方向端面75bとのうちの少なくとも一方の周方向端面を削る継ぎ手面加工工程S8と、をさらに実行する。
【0094】
本態様では、静翼セグメント47の周長を目的の周長にすることができる。なお、このでの「目的の周長にする」とは、周長が目的の周長に極めて近い、言い換えると、周長が設計周長に対して予め定められた誤差範囲内に収まる、という意味である。
【0095】
(15)第十五態様における製造方法は、
前記第十二態様から前記第十四態様のいずれか一の製造方法において、
前記静翼配置工程S4では、前記第九態様から前記第十一態様のいずれか一の静翼セグメント47の製造補助装置100を用いて、前記複数の静翼50毎の前記周方向Dcの位置が目的の位置になり、前記径方向Drの位置が目的の位置になり、前記軸線方向Daの位置が目的の位置になるよう、前記複数の静翼50を仮位置決めする。
【0096】
本態様では、製造補助装置100を用いて、静翼セグメント47を構成する複数の静翼50を仮位置決めすることで、複数の静翼50毎の周方向Dcの位置が目的の位置になり、径方向Drの位置が目的の位置になり、軸線方向Daの位置が目的の位置になる。なお、このでの「目的の位置になる」とは、目的の位置に極めて近い位置になる、言い換えると、設計位置に対して予め定められた誤差範囲内に収まる、という意味である。
【符号の説明】
【0097】
10:ガスタービン
11:ガスタービンロータ
14:中間ケーシング
15:ガスタービンケーシング
20:燃焼器
30:タービン
31:タービンロータ
32:ロータ軸
33:動翼列
35:タービンケーシング
36:静翼列
40:圧縮機
41:圧縮機ロータ
42:ロータ軸
43:動翼列
45:圧縮機ケーシング
46:静翼環
47:静翼セグメント
50:静翼
50a:第一端部静翼
50b:第二端部静翼
50c:中間部静翼
50m:中間品
51:翼体
52:内側シュラウド
53:シュラウド本体
54f:前端面
54b:後端面
55a:第一周方向端面
55b:第二周方向端面
56:ガスパス面
57:反ガスパス面
58:溝底面
61f:前側反ガスパス面
61b:後側反ガスパス面
65f:上流側脚部
66f:上流側リップ部
65b:下流側脚部
66b:下流側リップ部
67f:上流側係合溝
67b:下流側係合溝
72,72m:外側シュラウド
73:シュラウド本体
74f:前端面
74b:後端面
75a:第一周方向端面
75b:第二周方向端面
76:ガスパス面
77:反ガスパス面
78,78m:溝底面
78a:第一平面(又は単に平面)
78b:第二平面(又は単に平面)
78c:第三平面(又は単に平面)
79a:第一稜線(又は単に稜線)
79b:第二稜線(又は単に稜線)
81f,81fm:前側反ガスパス面
81b,81bm:後側反ガスパス面
85f:上流側脚部
86f:上流側リップ部
85b:下流側脚部
86b:下流側リップ部
88:バンド溝
90:連結バンド(外側連結部材)
92:連結ホルダ(内側連結部材)
93:シール保持部
94f:上流側脚部
95f:上流側フランジ部
94b:下流側脚部
95b:下流側フランジ部
96:シール装置
100:製造補助装置
101:ベース板
105:径方向位置決めブロック
106:径方向外側対向面(円弧面)
110:径方向押し装置
111:径方向押しブロック
112:径方向内側対向面
113:径方向押し機構
115:周方向位置決めブロック
116:第一周方向対向面
120:周方向押し装置
121:周方向押しブロック
122:第二周方向対向面
123:周方向押し機構
125:軸線方向押し装置
126:軸線方向押しブロック
127:軸線方向対向面
128:軸線方向押し機構
130:周長測定基準ブロック
131:第二周方向対向面
135:ゲージ
136:長手方向
150a,150b,150c:工具
151a,151b,151c:工具軸
A:外気
F:燃料
G:燃焼ガス
Ar:軸線
Da:軸線方向
Dau:軸線上流側
Dad:軸線下流側
Dc:周方向
Dc1:周方向第一側
Dc2:周方向第二側
Dr:径方向
Dro:径方向外側
Dri:径方向内側
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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図16