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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-26
(45)【発行日】2024-04-03
(54)【発明の名称】止水構造及び止水方法
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/684 20060101AFI20240327BHJP
   E04D 13/15 20060101ALI20240327BHJP
【FI】
E04B1/684 A
E04D13/15 501A
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020103900
(22)【出願日】2020-06-16
(65)【公開番号】P2021195815
(43)【公開日】2021-12-27
【審査請求日】2023-03-22
(73)【特許権者】
【識別番号】303046244
【氏名又は名称】旭化成ホームズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100186015
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 靖之
(72)【発明者】
【氏名】前田 洋介
【審査官】土屋 保光
(56)【参考文献】
【文献】実開昭59-120203(JP,U)
【文献】特開昭56-124763(JP,A)
【文献】米国特許第04548002(US,A)
【文献】特開2009-079400(JP,A)
【文献】実開昭59-115009(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/62 - 1/99
E04D 13/04,13/15
E04B 1/38 - 1/61
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被固定部材を貫通する貫通部材の鍔部により前記被固定部材が固定部材に対して締め付け固定されている固定部の止水構造であって、
前記被固定部材と前記固定部材との間に挟み込まれ、前記貫通部材が貫通する第1止水部材と、
前記被固定部材と前記固定部材との間に挟み込まれ、前記第1止水部材の周囲に配置される第2止水部材と、
前記貫通部材の前記鍔部と前記被固定部材との間に挟み込まれる第3止水部材と、を備え
前記第1止水部材は、前記貫通部材に当接しており、
前記第1止水部材の弾性率は、前記第2止水部材の弾性率より大きい、止水構造。
【請求項2】
前記貫通部材の中心軸方向において、前記第2止水部材の自然状態に対する圧縮率は、前記第1止水部材の自然状態に対する圧縮率より大きい、請求項に記載の止水構造。
【請求項3】
前記第2止水部材の自然状態での空隙率は、前記第1止水部材の自然状態での空隙率より大きい、請求項に記載の止水構造。
【請求項4】
被固定部材を貫通する貫通部材の鍔部により前記被固定部材が固定部材に対して締め付け固定されている固定部の止水構造であって、
前記被固定部材と前記固定部材との間に挟み込まれ、前記貫通部材が貫通する第1止水部材と、
前記被固定部材と前記固定部材との間に挟み込まれ、前記第1止水部材の周囲に配置される第2止水部材と、
前記貫通部材の前記鍔部と前記被固定部材との間に挟み込まれる第3止水部材と、を備え、
前記第1止水部材及び前記第2止水部材のうち一方の止水部材の弾性率は、他方の止水部材の弾性率より大きく、
前記貫通部材の中心軸方向において、前記他方の止水部材の自然状態に対する圧縮率は、前記一方の止水部材の自然状態に対する圧縮率より大きい、止水構造。
【請求項5】
前記第2止水部材は、前記第1止水部材の周囲全域を取り囲んでいる、請求項1からのいずれか1つに記載の止水構造。
【請求項6】
前記固定部材は、建物の外部床面から上方に突出した壁パネルに対して取り付けられている下地部材であり、
前記被固定部材は、笠木部材を支持すると共に、前記下地部材に対して前記貫通部材の前記鍔部により締め付け固定される笠木受けブラケットであり、
前記下地部材と前記笠木受けブラケットとの間に介在する防水部材を更に備え、
前記笠木受けブラケットは、前記貫通部材が前記防水部材を貫通した状態で、前記下地部材に対して締め付け固定されている、請求項1からのいずれか1つに記載の止水構造。
【請求項7】
被固定部材を貫通する貫通部材の鍔部により前記被固定部材が固定部材に対して締め付け固定されている固定部の止水方法であって、
前記被固定部材と前記固定部材との間に、前記貫通部材が貫通する第1止水部材と、前記第1止水部材の周囲に配置される第2止水部材と、を挟み込むと共に、前記貫通部材の前記鍔部と前記被固定部材との間に第3止水部材を挟み込み、
前記第1止水部材は、前記貫通部材に当接しており、
前記第1止水部材の弾性率は、前記第2止水部材の弾性率より大きい、止水方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は止水構造及び止水方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、部材の貫通孔の周辺の止水構造として、貫通孔の周辺に各種シール材を配置する止水構造が知られている。特許文献1には、この種の止水構造が開示されている。具体的に、特許文献1には、パラペットの水抜き孔に水抜き管が通されており、水抜き孔と水抜き管との間は、シール材により水密にされている。更に、特許文献1には、水抜き管の押さえ鍔と防水シートとの間を水密にする構成についても開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2002-097760号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ビス、ボルト等の貫通部材を用いて部材同士を締め付け固定する固定部においても、特許文献1のように、貫通部材が貫通する貫通孔の周辺について止水処理が求められることがある。
【0005】
本発明は、貫通部材を用いて部材同士が締め付け固定される固定部において、貫通部材が貫通する貫通孔の周辺を簡易かつ確実に止水可能な止水構造及び止水方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様としての止水構造は、被固定部材を貫通する貫通部材の鍔部により前記被固定部材が固定部材に対して締め付け固定されている固定部の止水構造であって、前記被固定部材と前記固定部材との間に挟み込まれ、前記貫通部材が貫通する第1止水部材と、前記被固定部材と前記固定部材との間に挟み込まれ、前記第1止水部材の周囲に配置される第2止水部材と、前記貫通部材の前記鍔部と前記被固定部材との間に挟み込まれる第3止水部材と、を備える。
【0007】
本発明の1つの実施形態として、前記第1止水部材は、前記貫通部材に当接しており、
前記第1止水部材の弾性率は、前記第2止水部材の弾性率より大きい。
【0008】
本発明の1つの実施形態として、前記貫通部材の中心軸方向において、前記第2止水部材の自然状態に対する圧縮率は、前記第1止水部材の自然状態に対する圧縮率より大きい。
【0009】
本発明の1つの実施形態として、前記第2止水部材の自然状態での空隙率は、前記第1止水部材の自然状態での空隙率より大きい。
【0010】
本発明の1つの実施形態として、前記第1止水部材及び前記第2止水部材のうち一方の止水部材の弾性率は、他方の止水部材の弾性率より大きく、前記貫通部材の中心軸方向において、前記他方の止水部材の自然状態に対する圧縮率は、前記一方の止水部材の自然状態に対する圧縮率より大きい。
【0011】
本発明の1つの実施形態として、前記第2止水部材は、前記第1止水部材の周囲全域を取り囲んでいる。
【0012】
本発明の1つの実施形態として、前記固定部材は、建物の外部床面から上方に突出した壁パネルに対して取り付けられている下地部材であり、前記被固定部材は、笠木部材を支持すると共に、前記下地部材に対して前記貫通部材の前記鍔部により締め付け固定される笠木受けブラケットであり、前記下地部材と前記笠木ブラケットとの間に介在する防水部材を更に備え、前記笠木受けブラケットは、前記貫通部材が前記防水部材を貫通した状態で、前記下地部材に対して締め付け固定されている。
【0013】
本発明の第2の態様としての止水方法は、被固定部材を貫通する貫通部材の鍔部により前記被固定部材が固定部材に対して締め付け固定されている固定部の止水方法であって、前記被固定部材と前記固定部材との間に、前記貫通部材が貫通する第1止水部材と、前記第1止水部材の周囲に配置される第2止水部材と、を挟み込むと共に、前記貫通部材の前記鍔部と前記被固定部材との間に第3止水部材を挟み込む。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、貫通部材を用いて部材同士を締め付け固定する場合において、部材の貫通孔の周辺を簡易かつ確実に止水可能な止水構造及び止水方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態としての止水構造を含む壁体構造を示す断面図である。
図2図1に示す止水構造を拡大して示す拡大断面図である。
図3図3(a)~図3(c)は図1に示す止水構造の形成方法の一例の概要を示す図である。
図4図1に示す被固定部材としての笠木受けブラケットに取り付けられている第1止水部材及び第2止水部材の配置関係を示す図である。
図5図4に示す第1止水部材及び第2止水部材の配置関係の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る止水構造及び止水方法の実施形態について図面を参照して例示説明する。各図において共通する部材・部位には同一の符号を付している。
【0017】
図1は、本発明の一実施形態としての止水構造100を含む壁体構造1を示す断面図である。図1では、壁体構造1の厚さ方向に沿う断面を示している。
【0018】
図1に示す壁体構造1は、建物の外部床面から上方に突出する壁体構造である。具体的に、図1に示す壁体構造1は、建物のバルコニーなどの占有屋外空間に設けられる腰壁である。但し、本発明に係る止水構造を適用可能な壁体構造は、建物の陸屋根に設けられるパラペットなど、別の壁体構造であってもよい。更に、本発明に係る止水構造は、壁体構造への適用に限られず、例えば、屋外空間に露出する各種の外装材、装飾材、装置、設備などが建物本体側に固定されている固定部や、外構における各種の固定部など、においても適用可能である。本明細書では、本発明に係る止水構造を適用可能な固定部の一例として、壁体構造1の固定部について例示説明する。
【0019】
また、本明細書では、壁体構造1を含む建物において、建物の高さ方向と平行な方向を「高さ方向」と称し、壁体構造1に用いられる壁パネル2の表面において、高さ方向と直交する方向を「幅方向」と称し、壁パネル2の表面に垂直な方向を「厚さ方向」と称する。さらに、壁体構造1の厚さ方向において、平面視で建物の屋外側を「屋外側」と称し、反対に平面視で建物の屋内側を「屋内側」と称する。なお、本明細書において、「平行」、「直交」、「垂直」という記載は、それぞれ実質的に平行、直交、垂直である状態をも含むものとする。
【0020】
本実施形態の壁体構造1は、建物の内外を区画するとともに建物の外部床面から上方に突出した壁パネル2と、壁パネル2のパネル上面2Aを覆う防水構造3と、笠木受けブラケット4と、パネル上面2Aを防水構造3及び笠木受けブラケットよりも上方から覆い、笠木受けブラケット4に支持される笠木部材5と、を備えている。壁パネル2のパネル上面2Aは、壁パネル2の、高さ方向上側に位置する小口面である。
【0021】
防水構造3は、壁パネル2のパネル上面2Aの少なくとも一部を覆う下地部材31、下地部材31を覆う防水部材32、及び防水部材32とパネル上面2Aとの間を止水する湿式シーリング材33を含む。
【0022】
下地部材31は、壁パネル2のパネル上面2Aの少なくとも一部を覆うように構成されている。下地部材31は、後述する笠木部材5を取り付ける笠木受けブラケット4を固定するための下地である。本実施形態では、下地部材31は、壁パネル2のパネル上面2Aの少なくとも一部を覆うように延在する略矩形板状の上片31Aと、上片31Aの屋内側の端部から垂下して壁パネル2の屋内側表面の少なくとも一部を覆う略矩形板状の側片31Bとを含む、壁体構造1の厚さ方向断面でL字型の部材である。本実施形態では、下地部材31は、1枚の長尺な板状の部材が折り曲げられて形成されている。しかしながら、下地部材31は、例えば、溶接、接着、又は締結等、複数の部材を任意の方法により接合をすることで形成されていてもよい。また、下地部材31は、複数の部材を層状に重ねて構成されていてもよい。
【0023】
下地部材31は、建物の外部床面から上方に突出した壁パネル2に対して取り付けられている。具体的に、下地部材31の側片31Bにはボルト挿通孔が設けられている。ボルト50が側片31Bのボルト挿通孔から壁パネル2を屋外側まで貫通しており、下地部材31が壁パネル2に締結されている。つまり、下地部材31は、上片31Aではなく側片31Bにおいて、ボルト50により壁パネル2に固定されている。下地部材31が壁パネル2に取り付けられた状態において、下地部材31の上片31Aと壁パネル2のパネル上面2Aとの間には、空間が区画されている。これにより、笠木受けブラケット4を下地部材31に固定するために用いられる貫通部材13としてのビス41の先端が壁パネル2のパネル上面2Aを傷つける恐れを低減させることができる。
【0024】
防水部材32は、下地部材31を覆うように構成されており、下地部材31と笠木受けブラケット4との間に介在している。防水部材32は、例えば、防水塗料を施された鋼板などの、防水性を有する板状の部材である。防水部材32は、下地部材31の上片31Aを覆うように延在する略矩形板状の上片32Aと、上片31Aの屋内側の端部から垂下して下地部材31の側片31Bを覆う略矩形板状の側片32Bとを含む、壁体構造1の厚さ方向断面でL字型の部材である。防水部材32は、さらに、上片32Aの屋外側の端部から屋内側に折り返され、且つ、壁パネル2のパネル上面2Aに向かって垂下する、屋外側折り返し片32Cと、側片32Bの高さ方向下側の端部から壁パネル2の屋内側表面に向かって折り返された、屋内側折り返し片32Dとを有している。詳細は後述するが、屋外側折り返し片32C及び屋内側折り返し片32Dのそれぞれと、壁パネル2と、の間には、湿式シーリング材33が充填されている。本実施形態では、防水部材32は、1枚の長尺な板状の部材が折り曲げられて形成されている。しかしながら、防水部材32は、例えば、溶接、接着、又は締結等、複数の部材を任意の方法により接合をすることで形成されていてもよい。
【0025】
湿式シーリング材33は、例えば、シリコン、モルタルなどであるが、止水可能な任意の材料とされてもよい。湿式シーリング材33は、防水部材32の屋外側折り返し片32Cと壁パネル2の表面との間の隙間に充填された湿式シーリング材33Aと、防水部材32の屋内側折り返し片32Dと壁パネル2の表面との間の隙間に充填された湿式シーリング材33Bとを含む。湿式シーリング材33Aは、防水部材32とパネル上面2Aとの間を屋外側から止水する。湿式シーリング材33Bは、防水部材32と壁パネル2の屋内側表面との間を壁体構造1の高さ方向下側から止水する。
【0026】
防水構造3の屋外側の端部は、壁パネル2のパネル上面2Aの屋外側の端部よりも屋内側に位置している。即ち、防水構造3は、壁パネル2のパネル上面2Aの屋外側の少なくとも一部が露出するように壁パネル2に取り付けられている。かかる構成を有することによって、防水構造3を覆って化粧する笠木部材5をより屋内側に配置することが可能となる。なお、本実施形態では、湿式シーリング材33Aの屋外側の端部が、防水構造3の屋外側の端部である。
【0027】
笠木受けブラケット4は、笠木部材5を支持する。また、笠木受けブラケット4は、防水構造3の下地部材31に対して貫通部材13により締め付け固定される。より具体的に、笠木受けブラケット4は、防水構造3の下地部材31の上片31Aに対して、貫通部材13の鍔部13Aとしてのビス41の頭部41Aにより締め付け固定される。この固定部の詳細は後述する(図2参照)。
【0028】
本実施形態の笠木受けブラケット4は、壁体構造1の厚さ方向断面でL字型の部材であって、笠木部材5とともに防水構造3を高さ方向上側及び屋内側から覆っている。ただし、笠木受けブラケット4は、笠木部材5に応じて、任意の形状及び寸法とされてもよい。
【0029】
笠木部材5は、笠木受けブラケット4を高さ方向上側及び屋内側から覆うようにして、笠木受けブラケット4に支持された状態で、笠木受けブラケット4に固定されている。具体的に、本実施形態の笠木部材5は、壁パネル2のパネル上面2Aを防水構造3よりも上方から覆う略矩形板状の上片5Aと、上片5Aの屋内側の端部から垂下して防水構造3の屋内側を覆う略矩形板状の第1側片5Bと、を備える。
【0030】
笠木部材5の上片5Aの上面は、屋外側に向かって下る傾斜面を備える。上片5Aに傾斜面が設けられることで、笠木部材5の上片5Aに塵埃が堆積しにくくなる。さらに、上片5Aの傾斜面が屋外側に向かって下っていることで、雨水を壁体構造1の屋外側に向かって流すことができる。本実施形態では、笠木部材5の上片5Aは、さらに、屋内側に向かって下る傾斜面も有しているが、有していなくてもよい。また、笠木部材5の第1側片5Bが、防水構造3の屋内側を覆っている。これにより、壁パネル2のパネル上面2A及び防水構造3に対する屋内側からの視認性が低下して、壁体構造1の意匠性が向上する。
【0031】
さらに、笠木部材5は、上片5Aの屋外側の端部から垂下した第2側片5Cと、この第2側片5Cの下端から屈曲して屋内側に延びる下片5Dと、を備える。笠木部材5の下片5Dは、壁パネル2のパネル上面2Aよりも上方に位置している。そして、笠木部材5の下片5Dの少なくとも一部は、壁パネル2のパネル上面2Aの少なくとも一部と対向する位置に配置されている。より具体的に、本実施形態の下片5Dの少なくとも一部は、防水構造3の屋外側の端部である湿式シーリング材33Aの屋外側の端部よりも屋外側で、パネル上面2Aとの間に他の部材が介在することなく、パネル上面2Aと対向して配置されている。これによって、笠木部材5の下片5Dと壁パネル2のパネル上面2Aのとの間には、空間6が区画されている。かかる構成を有することによって、笠木部材5は、上片5A等から流れてきた雨水を、下片5Dから壁パネル2のパネル上面2Aに落とすことができる。これによって、防水構造3の屋外側の端部を、壁パネル2のパネル上面2Aの屋外側の端部よりも屋内側に配置した場合であっても、壁パネル2のパネル上面2Aに塵埃が堆積しにくくなり、壁体構造1が汚れにくくなる。なお、本実施形態のように、笠木部材5の下片5Dの最下端(本実施形態では下片5Dの下面全域)の少なくとも一部が、壁パネル2のパネル上面2Aと対向する位置に配置されていることが好ましい。かかる構成を有することによって、上片5A等から流れてきた雨水は、下片5Dから壁パネル2のパネル上面2A上に、より落下し易くなる。
【0032】
壁パネル2は、例えば、軽量気泡コンクリート(ALC)等、鉄筋コンクリート製のパネルである。しかしながら、壁パネル2は、ALCに限られず、木製のパネル等、任意の材料で構成されたパネルであってもよい。
【0033】
壁パネル2のパネル上面2Aの空間6に露出する部分は、屋外側に向かって下る傾斜面を有している。これによって、笠木部材5の下片5Dからパネル上面2Aに落とされた雨水を壁体構造1の屋外側に向かって流すことができる。このため、壁パネル2のパネル上面2Aに塵埃が堆積しにくくなり、壁体構造1が汚れにくくなる。
【0034】
次に、本実施形態に係る止水構造100について説明する。図2は、図1に示す壁体構造1のうち止水構造100の近傍を拡大して示す拡大断面図である。
【0035】
止水構造100は、被固定部材11を貫通する貫通部材13の鍔部13Aにより被固定部材11が固定部材12に対して締め付け固定されている固定部10の止水構造である。本実施形態の被固定部材11は笠木受けブラケット4である。本実施形態の固定部材12は下地部材31である。本実施形態の貫通部材13はビス41である。つまり、本実施形態の固定部10では、笠木受けブラケット4を貫通するビス41の頭部41Aにより、笠木受けブラケット4が下地部材31に対して締め付け固定されている。より具体的に、本実施形態の笠木受けブラケット4は、ビス41の頭部41Aと、ビス41の軸部41Bとねじ接合される下地部材32と、に挟み込まれることで、下地部材32に対して締め付け固定されている。但し、被固定部材11及び固定部材12は、本実施形態の笠木受けブラケット4及び下地部材31に限られず、貫通部材13により締め付け固定される2つの部材であればよい。また、貫通部材13についても、本実施形態のビス41に限られない。貫通部材13は、例えば、ボルト、ボルト及びナットの組み合わせ等、少なくとも被固定部材11を貫通し、固定部材12に対して締め付け固定される部材であればよい。したがって、貫通部材13の鍔部13Aは、ビス41の頭部41Aに限られず、例えばボルトの頭部、ボルトに螺合、溶接等されて取り付けられているナットであってもよい。なお、本実施形態のビス41はドリルビスであり、下穴が形成されていない下地部材31を貫通し、下地部材31に対してねじ接合されているが、この構成に限られない。つまり、下地部材31に予めネジ穴が形成されていてもよい。また、本実施形態の貫通部材13は、固定部材12としての下地部材31を貫通しているが、貫通していなくてもよい。
【0036】
止水構造100は、第1止水部材14と、第2止水部材15と、第3止水部材16と、を備える。第1止水部材14、第2止水部材15及び第3止水部材16はそれぞれ別体で構成されている。第1止水部材14は、被固定部材11と固定部材12との間に挟み込まれており、貫通部材13が貫通している。第2止水部材15は、被固定部材11と固定部材12との間に挟み込まれており、第1止水部材14の周囲に配置されている。第3止水部材16は、貫通部材13の鍔部13Aと被固定部材11との間に挟み込まれている。
【0037】
止水構造100は、第1止水部材14、第2止水部材15及び第3止水部材16を備えることで、例えば雨水などの液体が、貫通部材13の軸部13Bの収容空間(本実施形態では、非固定部材11の貫通孔11A、及び、固定部材12の貫通したねじ穴)を通じて固定部材12側へと浸入することを抑制できる。
【0038】
具体的に、第3止水部材16があることで、液体が、貫通部材13の鍔部13Aと被固定部材11との間から、被固定部材11の貫通孔11Aに浸入することを抑制できる。また、液体が、貫通部材13の鍔部13Aと被固定部材11との間から、被固定部材11の貫通孔11Aに浸入したとしても、第1止水部材14があることで、液体が更に固定部材12側へと浸入することを抑制できる。つまり、貫通部材13の鍔部13Aと被固定部材11との間からの液体の浸入に対して、第3止水部材16が一次止水部となり、第1止水部材14が二次止水部となることで、いずれか1つの止水部材のみを配置する場合と比較して、液体が貫通部材13の軸部13Bの収容空間から固定部材12側へと浸入する可能性を低減できる。
【0039】
更に、第2止水部材15があることで、液体が、被固定部材11及び固定部材12の周囲から、被固定部材11と固定部材12との間の隙間内へと浸入し、貫通部材13の軸部13Bの収容空間側へと侵入することを抑制できる。また、液体が、第2止水部材15を超えて貫通部材13の軸部13Bの収容空間に向かって浸入したとしても、第1止水部材14があることで、液体が更に貫通部材13の軸部13Bの収容空間に向かって浸入することを抑制できる。つまり、被固定部材11と固定部材12との間の隙間からの液体の浸入に対して、第2止水部材15が一次止水部となり、第1止水部材14が二次止水部となることで、いずれか1つの止水部材のみを配置する場合と比較して、液体が貫通部材13の軸部13Bの収容空間から固定部材12側へと浸入する可能性を低減できる。
【0040】
このように、止水構造100では、第1止水部材14が、別の位置に配置された第2止水部材15及び第3止水部材16の両方の二次止水部となることで、被固定部材11の貫通孔11Aの周辺を簡易かつ確実に止水することができる。
【0041】
なお、本実施形態では、下地部材31を覆う防水部材32と、笠木受けブラケット4と、の間に第1止水部材14及び第2止水部材15を挟み込み、笠木受けブラケット4は、貫通部材13としてのビス41が防水部材32を貫通した状態で、下地部材31に対して締め付け固定されている。そのため、本実施形態では、第1止水部材14、第2止水部材15及び第3止水部材16が、防水部材32の貫通孔から防水部材32の内側に液体が浸入することを抑制する。これにより、貫通部材13が防水部材32を貫通して締結されることによる、防水構造3の防水効果の低減を抑制することができる。このように、被固定部材11(本実施形態では笠木受けブラケット4)と固定部材12(本実施形態では下地部材31)との間に、第1止水部材14及び第2止水部材15の他に、別の部材(本実施形態では防水部材32)が介在していてもよい。なお、本実施形態のビス41は上述したようにドリルビスであり、予め貫通孔が形成されていない防水部材32を貫通し、下地部材31に対してねじ接合されているが、この構成に限られない。つまり、防水部材32に予め貫通孔が形成されていてもよい。
【0042】
図2に示すように、本実施形態の第1止水部材14は、貫通部材13としてのビス41に当接している。より具体的に、本実施形態の第1止水部材14は、貫通部材13の軸部13Bとしてのビス41の軸部41Bの軸回りの周囲を取り囲み、軸部41Bを中心軸とする軸回り方向の少なくとも一部、好ましくは略全域に亘って、軸部41Bの側面に当接している。このようにすることで、被固定部材11の貫通孔11A周辺での第1止水部材14による止水性能を、より高めることがきる。なお、第1止水部材14とビス41の軸部41Bの側面との当接は、例えば、予め挿通孔が形成されていない第1止水部材14を、非固定部材11及び固定部材12の間に挟み込み、非固定部材11を固定部材12に対して締め付け固定する際にビス41により第1止水部材14を刺通することで、実現することができる。
【0043】
また、本実施形態において、第1止水部材14の弾性率は、第2止水部材15の弾性率より大きい。つまり、本実施形態において、第1止水部材14は、第2止水部材15と比較して硬く、変形し難い。このようにすることで、貫通部材13を回転させながら貫通部材13の軸部13Bを第1止水部材14に対して刺通する際に、軸部13Bの側面との摩擦力で第1止水部材14が破損又は変形してシール性能が低下することを抑制できると共に、貫通部材13が刺通しない第2止水部材15は、被固定部材11と固定部材12との間に挟み込まれて柔軟に圧縮変形し、被固定部材11及び固定部材12の表面凹凸に追従して密着性が高まりシール性を向上させることができる。つまり、第1止水部材14の弾性率を、第2止水部材15の弾性率より大きい構成とすることで、止水構造100の止水性能を、より高めることができる。
【0044】
また、本実施形態では、貫通部材13の中心軸方向において、第2止水部材15の自然状態に対する圧縮率は、第1止水部材14の自然状態に対する圧縮率より大きい。ここで、「自然状態」とは、被固定部材11と固定部材12との間に挟み込まれて圧縮されている止水部材の圧縮を解除した状態を意味する。要するに、本実施形態において、第2止水部材15は、第1止水部材14よりも貫通部材13の中心軸方向に圧縮された状態で、被固定部材11としての笠木受けブラケット4と、固定部材12としての下地部材31と、の間に挟み込まれている。第1止水部材14及び第2止水部材15の弾性率及び圧縮率を上述のような関係とすることで、貫通部材13が刺通しない第2止水部材15は、第1止水部材14と比較して、軟らかい部材が高い圧縮率で圧縮された状態で、被固定部材11と固定部材12との間に挟み込まれる。そのため、被固定部材11と固定部材12との間の第2止水部材15による閉塞性を高め、止水構造100の止水性能を、より一層高めることができる。
【0045】
更に、本実施形態のように、弾性率が小さい第2止水部材15の圧縮率を大きくした状態で配置することで、第2止水部材15の圧縮率を、弾性率の大きい第1止水部材14の厚さを調整することにより、容易に調整できる。換言すれば、弾性率が小さい第2止水部材15は、弾性率が大きい第1止水部材14により、安定した圧縮率を容易に実現でき、第2止水部材15による止水性能が、例えば作業者の能力等によりばらつくことを抑制できる。なお、本実施形態では、上述したように、第1止水部材14の弾性率が第2止水部材15の弾性率より大きく、第2止水部材15の圧縮率が第1止水部材14の圧縮率より大きいが、弾性率の小さい部材の安定した圧縮率を容易に実現するという観点では、この構成に限られない。つまり、この観点では、第2止水部材15の弾性率を第1止水部材14の弾性率より大きくし、第1止水部材14の圧縮率を第2止水部材15の圧縮率より大きくしてもよい。但し、本実施形態では、上述したように、貫通部材13との関係を加味した別の観点により、第1止水部材14の弾性率が第2止水部材15の弾性率より大きく、第2止水部材15の圧縮率が第1止水部材14の圧縮率より大きいことが好ましい。
【0046】
図3(a)~図3(c)は図2に示す止水構造100の形成方法の一例の概要を示す図である。図3(a)は、第1止水部材14及び第2止水部材15が被固定部材11及び固定部材12の間に挟み込まれる前、かつ、第3止水部材16が貫通部材13の鍔部13Aと被固定部材11との間に挟み込まれる前、の状態を示している。図3(b)は、第1止水部材14及び第2止水部材15が被固定部材11及び固定部材12の間に挟み込まれており、かつ、第3止水部材16が貫通部材13の鍔部13Aと被固定部材11との間に挟み込まれる前、の状態を示している。図3(c)は、第1止水部材14及び第2止水部材15が被固定部材11及び固定部材12の間に挟み込まれており、かつ、第3止水部材16が貫通部材13の鍔部13Aと被固定部材11との間に挟み込まれている状態を示している。
【0047】
図3(a)に示すように、被固定部材11と固定部材12との間に挟み込む前の状態において、第2止水部材15は、第1止水部材14よりも厚い。図3(a)に示す状態において、第1止水部材14の厚さは、例えば、2mm程度である。これに対して、図3(a)に示す状態において、第2止水部材15の厚さは、例えば、10mm程度である。本実施形態では、このように厚さの異なる第1止水部材14及び第2止水部材15を、被固定部材11と固定部材12との間で、略同じ厚さ(例えば1.5mm以下の厚さ)になるまで挟み込んで圧縮しており(図3(b)、図3(c)参照)、これにより第1止水部材14及び第2止水部材15の上述した圧縮率の関係を実現している。なお、被固定部材11と固定部材12との間で圧縮される前の状態での厚さ(以下、「圧縮前厚さ」と記載する。)の異なる第1止水部材14及び第2止水部材15は、弾性率が大きく圧縮前厚さが薄い第1止水部材14の圧縮前厚さ以下の所望の厚さとなるまで圧縮されればよい。
【0048】
第1止水部材14及び第2止水部材15の材料としては、例えば、フッ素ゴム、ブチルゴム、エチレンプロピレンジエンゴムなどの各種ゴムや、アクリル樹脂などの各種樹脂など、を用いることができる。但し、第2止水部材15の自然状態での空隙率は、第1止水部材14の自然状態での空隙率より大きいことが好ましい。ここで言う「自然状態」についても、上記同様、被固定部材11と固定部材12との間に挟み込まれて圧縮されている止水部材の圧縮を解除した状態を意味する。このようにすることで、第1止水部材14よりも柔らかく、第1止水部材14よりも高い圧縮率で圧縮可能な、第2止水部材15を実現しやすい。このような空隙率の大きい第2止水部材15は、例えば、エチレンプロピレンジエンゴムの発泡体とすることで実現可能である。
【0049】
図4は、図3(a)において、第1止水部材14及び第2止水部材15が取り付けられている笠木受けブラケット4の下面の一部を示す平面図である。したがって、図4では、貫通部材13(図2等参照)が刺通される前の第1止水部材14を示している。そのため、貫通部材13により刺通される前の状態の第1止水部材14は、貫通孔11Aの全域を覆っている。図4では、説明の便宜上、被固定部材11としての笠木受けブラケット4の貫通孔11Aの位置を、破線により示している。
【0050】
図4に示す平面視で、本実施形態の第2止水部材15は、第1止水部材14の周囲全域を覆っていない。本実施形態では、本実施形態の第2止水部材15は、第1止水部材14に対して少なくとも屋外側(図4では左側)に配置されていればよい。このようにすることで、笠木部材5の第2側片5Cの下端位置が高くなって、強風時に雨水が空間6内に入り込んでも、高い止水性を維持できる。但し、第1止水部材14及び第2止水部材15の配置関係は、図4に示す配置に限られない。図5は、図4に示す第1止水部材14及び第2止水部材15の配置の変形例を示す。図5に示すように、第2止水部材15は、第1止水部材14の周囲全域を取り囲んで配置されていてもよい。このようにすることで、止水構造100の止水性能を、より高めることができる。
【0051】
また、第3止水部材16は、被固定部材11としての笠木受けブラケット4の貫通孔11Aを取り囲むようにして、貫通部材13の鍔部13Aとしてのビス41の頭部41Aと、笠木受けブラケット4と、の間で挟み込まれている。第3止水部材16は、例えば、本実施形態のワッシャーや、Oリングなどを使用することができる。第3止水部材16の材料は特に限定されず、例えば、上述した第1止水部材14及び第2止水部材15と同様の材料を使用することができる。
【0052】
なお、本実施形態の第1止水部材14、第2止水部材15及び第3止水部材16は、いずれも乾式の止水部材である。そのため、湿式シーリング材などの湿式の止水部材を用いる場合と比較して、作業者の能力による止水性能のばらつきを抑制できる。また、湿式の止水部材を用いる場合と比較して、笠木受けブラケット4等の交換作業が容易になる。
【0053】
更に、図2図4に示すように、本実施形態の第1止水部材14及び第2止水部材15は、相互に当接せずに離間して配置されているが、別部材で構成されていればよく、相互に当接して配置されていてもよい。
【0054】
本発明に係る止水構造及び止水方法は、上述した実施形態で示す具体的な構造及び方法に限られず、特許請求の範囲の記載を逸脱しない限り、種々の変形・変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明は止水構造及び止水方法に関する。
【符号の説明】
【0056】
1:壁体構造
2:壁パネル
2A:パネル上面
3:防水構造
4:笠木受けブラケット(被固定部材)
5:笠木部材
5A:上片
5B:第1側片
5C:第2側片
5D:下片
6:空間
10:固定部
11:被固定部材
11A:貫通孔
12:固定部材
13:貫通部材
13A:鍔部
13B:軸部
14:第1止水部材
15:第2止水部材
16:第3止水部材
31:下地部材(固定部材)
31A:上片
31B:側片
32:防水部材
32A:上片
32B:側片
32C:屋外側折り返し片
32D:屋内側折り返し片
33、33A、33B:湿式シーリング材
41:ビス(貫通部材)
41A:頭部(貫通部材の鍔部)
41B:軸部
50:ボルト
100:止水構造
図1
図2
図3
図4
図5