(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-26
(45)【発行日】2024-04-03
(54)【発明の名称】配線用遮断器
(51)【国際特許分類】
H01H 73/02 20060101AFI20240327BHJP
H01H 73/18 20060101ALI20240327BHJP
H01H 33/08 20060101ALI20240327BHJP
【FI】
H01H73/02 C
H01H73/18 Z
H01H33/08
(21)【出願番号】P 2020118153
(22)【出願日】2020-07-09
【審査請求日】2023-05-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000227401
【氏名又は名称】日東工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001977
【氏名又は名称】弁理士法人クスノキ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】谷 昇悟
【審査官】井上 信
(56)【参考文献】
【文献】実開昭63-129944(JP,U)
【文献】特開平7-220612(JP,A)
【文献】特開2020-77561(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 73/00 ー 73/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定接点を備えた固定接触子と、固定接点と接触可能な可動接点を備えた可動接触子と、可動接点が固定接点と接触する方向に可動接触子を押圧可能な押圧部を備えたクロスバと、可動接触子を下方から付勢するばね部と、を備えた配線用遮断器であって、
壁部を有する遮蔽部材を、
壁部が、押圧部の真下とばね部の間の位置で、可動接触子の下方の空間の少なくとも一部を遮蔽するように、クロスバに取り付けた配線用遮断器。
【請求項2】
遮蔽部材をばね部側からクロスバに取り付けた請求項1に記載の配線用遮断器。
【請求項3】
遮蔽部材は、アークの熱により消弧ガスが発生する熱可塑性樹脂からなる請求項2に記載の配線用遮断器。
【請求項4】
遮蔽部材を下方から支持する支持部をクロスバに備えた請求項2又は3に記載の配線用遮断器。
【請求項5】
遮蔽部材は、1対の腕部を備え、腕部はクロスバに対して係止される請求項4に記載の配線用遮断器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線用遮断器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載されているように、クロスバを備えた配線用遮断器が知られている。一般的に、クロスバには、可動接触子を挿通する挿通孔を備えている。ところで、可動接触子の先端は接点部として可動接点を備えているため、その部分は可動接点分の厚みが加わる。このため、挿通孔は、組付け時に、可動接点周りの部分を挿通可能な程度に、大きくする必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【0004】
このような構造であるため、可動接触子を挿通孔に挿通した状態では挿通孔には大きな隙間が生じてしまう。短絡時に接点が解放されると、接点間にアークが生じるが、この隙間を通ってクロスバを付勢するばね部までアークが到達すると、ばね部が劣化し、ひいては、遮断性能が落ちる虞があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本件の発明者は、この点について鋭意検討することにより、解決を試みた。本発明が解決しようとする課題は、短絡時に発生するアークが、可動接触子を付勢するばね部に到達しにくいようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、固定接点を備えた固定接触子と、固定接点と接触可能な可動接点を備えた可動接触子と、可動接点が固定接点と接触する方向に可動接触子を押圧可能な押圧部を備えたクロスバと、可動接触子を下方から付勢するばね部と、を備えた配線用遮断器であって、壁部を有する遮蔽部材を、壁部が、押圧部の真下とばね部の間の位置で、可動接触子の下方の空間の少なくとも一部を遮蔽するように、クロスバに取り付けた配線用遮断器とする。
【0007】
また、遮蔽部材をばね部側からクロスバに取り付けた構成とすることが好ましい。
【0008】
また、遮蔽部材は、アークの熱により消弧ガスが発生する熱可塑性樹脂からなる構成とすることが好ましい。
【0009】
また、遮蔽部材を下方から支持する支持部をクロスバに備えた構成とすることが好ましい。
【0010】
また、遮蔽部材は、1対の腕部を備え、腕部はクロスバに対して係止される構成とすることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明では、短絡時に発生するアークが、可動接触子を付勢するばね部に到達しにくいようにすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施形態における配線用遮断器の斜視図である。
【
図2】
図1に示す配線用遮断器を部分的に切断した状態を表す図である。
【
図3】
図1に示す配線用遮断器の断面図である。ただし、可動接点が固定接点と離れている状態を表している。
【
図4】
図1に示す配線用遮断器の断面図である。ただし、可動接点が固定接点と接している状態を表している。
【
図5】
図3における固定接点及び可動接点周りの部分拡大図である。ただし、押圧部を通過する破線は、押圧部が可動接触子と接する個所を基準にばね部側であるのか固定接点側であるのかを表すものである。
【
図7】
図6とは異なる方向から見た、クロスバと遮蔽部材の斜視図である。
【
図8】
図6のクロスバの中央部付近のVIII-VIII断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に発明を実施するための形態を示す。
図1乃至
図5に示されていることから理解されるように、本実施形態の配線用遮断器1は、固定接点24を備えた固定接触子25と、固定接点24と接触可能な可動接点21を備えた可動接触子22と、可動接点21が固定接点24と接触する方向に可動接触子22を押圧可能な押圧部31を備えたクロスバ30と、可動接触子22を下方から付勢するばね部13と、を備えている。また、この配線用遮断器1は、壁部51を有する遮蔽部材50を、壁部51が、押圧部31の真下とばね部13の間の位置で、可動接触子22の下方の空間の少なくとも一部を遮蔽するように、クロスバ30に取り付けている。このため、短絡時に発生するアークが、可動接触子22を付勢するばね部13に到達しにくいようにすることが可能となる。遮蔽部材50がアークをばね部13まで到達することを防ぐことで、ばね部13の劣化を防ぎ、遮断性能の低下を防ぐことが可能となる。また、壁部51を設けることで、開極時に可動接触子22が振動することを抑制することができ、接点間の短絡性能が落ちるのを防ぐことができる。
【0014】
ところで、接点が消耗した状態では押圧部31よりばね部13寄りでは、ばね部13による上方向への付勢により可動接触子22は僅かに上方向へ移動し、反対側は下方向へ移動する。このため、壁部51が押圧部31の真下と固定接点24の間に位置する場合、壁部51が可動接触子22に接する恐れがあり、壁部51が可動接触子22に接することで可動接点21と固定接点24の接触ができなくなることがあり得るが、本発明のように、壁部51を押圧部31の真下とばね部13の間の配置することで、可動接点21と固定接点24の接触ができなくなることを防ぐことができる。
【0015】
ここで、本明細書における上下方向について説明する。本明細書においては、配線用遮断器1のオンとオフを切り替えるために操作されるハンドル11が位置する側が上側であり、その反対側の面であり、分電盤などに配線用遮断器1を固定する際に使用する面が位置する側が下側である。
【0016】
実施形態の配線用遮断器1は、ケース12の内部に、移動可能な可動接触子22を備えている。この可動接触子22は先端に可動接点21を備えており、可動接点21の位置を変えるように可動接触子22を動かすことで、固定接点24と接続する状態と接続していない状態を選択することができる。固定接点24は固定接触子25の一端に備えられており、ケース12の外側に位置することになる固定接触子25の他端は、配線などが接続される端子部26となる。
【0017】
実施形態の配線用遮断器1は、クロスバ30を下方向に向けて移動させることで、可動接点21と固定接点24が離れている状態から接している状態へと切り替えることができる。このようなことを可能とするため、クロスバ30に設けた挿通孔32に可動接触子22を挿通している。
【0018】
実施形態のクロスバ30には、複数の可動接触子22を操作できるように、複数の挿通孔32が設けられている。これらの挿通孔32は各々可動接触子22が挿通される。このため、一つのクロスバ30を動かすだけで複数の可動接触子22を動かすことができる。
【0019】
また、可動接触子22を上方に向けて移動させようとする力を発生させるために、実施形態の配線用遮断器1は、ばね部13を備えている。ばね部13はクロスバ30に対して可動接点21がある側とは反対側に配置されている。
【0020】
固定接点24と可動接点21が引き剥がされた際に生じるアークが、このばね部13を焼損することを抑制するため、クロスバ30には遮蔽部材50が取り付けられる。遮蔽部材50は壁部51が備えられており、この壁部51が、押圧部31からばね部13寄りの位置で、可動接触子22の下方の空間の少なくとも一部を遮蔽する。また、遮蔽部材50をばね部13側からクロスバ30に取り付けている。そのようにすることで、容易に壁部51を押圧部31からばね部13寄りに位置させることができる。
【0021】
実施形態の壁部51は挿通孔32の一部を塞ぐように配置されるものであり、アークが挿通孔32を通過してばね部13に到達することを抑制することができる。なお、実施形態では、可動接点21と固定接点24が接した状態において、固定接点24とばね部13を結ぶ直線上に壁部51が位置している。
【0022】
実施形態の遮蔽部材50は、アークの熱により消弧ガスが発生する熱可塑性樹脂からなる構成としているため、アークの経路を狭めるだけではなく、積極的にアークを消すように働く。したがって、ばね部13が劣化する可能性をより低減させることができる。
【0023】
また、実施形態の遮蔽部材50は、挿通孔32の下側の部分からアークがばね部13に到達することを抑制するように、取り付けられている。アークは固定接点24と可動接点21の間で生成されるため、可動接触子22の下側からアークが挿通孔32を通過するのを防げば、効果的に、アークがクロスバ30の反対側に移動することを抑制することができる。
【0024】
ところで、実施形態の遮蔽部材50は、クロスバ30の下部に取り付けられており、可動接触子22の下方に位置する。可動接点21と固定接点24を接触させる際には、クロスバ30の押圧部31が可動接触子22を上側から押圧するため、可動接触子22の傾きが変わるなど、可動接触子22が動く。この際、遮蔽部材50には下方向に向けて力が掛けられる場合がある。本実施形態では、このように力が掛けられた場合であっても遮蔽部材50がクロスバ30から外れにくいように、遮蔽部材50を下方から支持する支持部33をクロスバ30に備えた構成としている。
【0025】
ここで、実施形態の遮蔽部材50について、更に説明をする。遮蔽部材50には、可動接触子22の下方の空間の少なくとも一部を遮断する壁部51を備えているが、この壁部51の下方に取付部52を備えている。取付部52は1対の腕部53を備えている。また、腕部53に先端に爪部54を備えている。
【0026】
また、実施形態のクロスバ30について説明する。実施形態のクロスバ30は、可動接触子22を挿通する挿通孔32を備えている。また、可動接触子22を押圧することで可動接触子22の動作を制御する押圧部31を備えている。また、載置した遮蔽部材50を下方向から支持する支持部33を備えている。なお、支持部33は挿通孔32の下方に設けられている。また、遮蔽部材50を取り付けるための被取付部34を備えている。
【0027】
実施形態の遮蔽部材50をクロスバ30に取り付ける際には、クロスバ30の下部に形成した支持部33に載置し、この状態でクロスバ30の下部に形成した被取付部34に爪部54を係止すればよい。このため、組付け時に可動接触子22をクロスバ30に挿通させた状態でも、容易に遮蔽部材50を取り付けることが可能となる。また、一対の腕部53がクロスバ30に対して前後方向に係止されることで、遮蔽部材50をクロスバ30との間で位置規制をすることができ、遮蔽部材50がクロスバ30から前後方向に抜けることを防止している。また、爪部54がクロスバ30の被取付部34に対して左右方向に係止されることで、遮蔽部材50をクロスバ30との間で位置規制をすることができ、遮蔽部材50がクロスバ30から左右方向に抜けることを防止している。
【0028】
以上、実施形態を例に挙げて本発明について説明してきたが、本発明は上記実施形態に限定されることはなく、各種の態様とすることが可能である。例えば、可動接触子を挿通する挿通孔ではなく、押圧部の下方が解放されている構造であってもよい。
【符号の説明】
【0029】
1 配線用遮断器
13 ばね部
21 可動接点
22 可動接触子
24 固定接点
25 固定接触子
30 クロスバ
31 押圧部
33 支持部
50 遮蔽部材
51 壁部