(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-26
(45)【発行日】2024-04-03
(54)【発明の名称】ガスの需要予測方法、システム、プログラム、記録媒体およびサーバー
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/06 20240101AFI20240327BHJP
G06Q 10/04 20230101ALI20240327BHJP
G16Y 10/35 20200101ALI20240327BHJP
G16Y 40/10 20200101ALI20240327BHJP
G16Y 20/30 20200101ALI20240327BHJP
【FI】
G06Q50/06
G06Q10/04
G16Y10/35
G16Y40/10
G16Y20/30
(21)【出願番号】P 2020132559
(22)【出願日】2020-08-04
【審査請求日】2023-02-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000220262
【氏名又は名称】東京瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083725
【氏名又は名称】畝本 正一
(74)【代理人】
【識別番号】100140349
【氏名又は名称】畝本 継立
(74)【代理人】
【識別番号】100153305
【氏名又は名称】畝本 卓弥
(72)【発明者】
【氏名】増田 智紀
(72)【発明者】
【氏名】塩野 直志
(72)【発明者】
【氏名】土岐 爽真
【審査官】大野 朋也
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-162276(JP,A)
【文献】国際公開第2018/056436(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/087470(WO,A1)
【文献】特開2015-228073(JP,A)
【文献】特開2016-115289(JP,A)
【文献】特開2019-087027(JP,A)
【文献】特開2006-011715(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
G16Y 10/00-40/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータが実行する、
ガスを消費する機器情報を含む顧客情報を取得する工程と、
ガスの検針データを収集し、顧客ごとに検針データ蓄積量を集計する工程と、
前記顧客情報および前記検針データ蓄積量に基づいて、需要予測データベースから顧客ごとにガス需要予測モデルを選択する工程と、
選択した前記ガス需要予測モデルを前記顧客情報に関連付けて登録する工程と、
前記ガス需要予測モデルによりガス需要予測値を算出する工程と、
を含むことを特徴とするガスの需要予測方法。
【請求項2】
さらに、
前記コンピュータが実行する、
前記検針データ蓄積量の増加に応じて、顧客ごとに新たなガス需要予測モデルを選択する工程と、
新たに選択した前記ガス需要予測モデルに切換えて登録する工程と、
を含むことを特徴とする請求項1に記載のガスの需要予測方法。
【請求項3】
前記コンピュータが実行する、
前記顧客ごとに、想定される前記検針データ蓄積量に応じて、複数の異なる前記ガス需要予測モデルを生成する工程と、
想定した前記検針データ蓄積量に関係付けて、生成された前記ガス需要予測モデルを前記需要予測データベースに格納する工程と、
を含むことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のガスの需要予測方法。
【請求項4】
前記コンピュータが実行する、
収集したガスの検針データを読み出す工程と、
前記検針データと、前記ガス需要予測モデルにより算出したガス需要予測値とを対比する工程と、
前記検針データに対して、前記ガス需要予測値が設定された閾値の範囲外となる場合は、前記需要予測データベースにアクセスして、前記検針データ蓄積量に基づいて他のガス需要予測モデルを選択し、登録する工程と、
を含むことを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかの請求項に記載のガスの需要予測方法。
【請求項5】
前記コンピュータが実行する、
前記顧客情報の変化を契機に、前記需要予測データベースから前記ガス需要予測モデルを選択する工程を含むことを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかの請求項に記載のガスの需要予測方法。
【請求項6】
ガスの需要予測システムであって、
ガスの検針データを収集し、顧客ごとに検針データ蓄積量を集計する検針情報取得手段と、
顧客情報および前記検針データ蓄積量に関係付けてガス需要予測モデルを格納する需要予測データベースと、
ガスを消費する機器情報を含む顧客情報を取得し、前記顧客情報および前記検針データ蓄積量に基づいて、前記需要予測データベースから顧客ごとに前記ガス需要予測モデルの選択および前記顧客情報に関連付けて前記ガス需要予測モデルを登録し、前記ガス需要予測モデルによりガス需要予測値を算出するサーバーと、
を備えることを特徴とするガスの需要予測システム。
【請求項7】
前記サーバーは、さらに、前記検針データ蓄積量の増加に応じて、顧客ごとに新たなガス需要予測モデルを選択し、新たに選択した前記ガス需要予測モデルに切換えて登録することを特徴とする請求項6に記載のガスの需要予測システム。
【請求項8】
前記サーバーは、前記顧客ごとに、想定される前記検針データ蓄積量に応じて、複数の異なる前記ガス需要予測モデルを生成し、想定した前記検針データ蓄積量に関係付けて、生成された前記ガス需要予測モデルを前記需要予測データベースに格納することを特徴とする請求項6または請求項7に記載のガスの需要予測システム。
【請求項9】
前記サーバーは、収集したガスの検針データを読み込み、前記検針データと、前記ガス需要予測モデルにより算出したガス需要予測値とを対比し、前記検針データに対して、前記ガス需要予測値が設定された閾値の範囲外となる場合は、前記需要予測データベースにアクセスして、前記検針データ蓄積量に基づいて他のガス需要予測モデルを選択し、登録することを特徴とする請求項6ないし請求項8のいずれかの請求項に記載のガスの需要予測システム。
【請求項10】
前記サーバーは、前記顧客情報の変化を契機に、前記需要予測データベースから前記ガス需要予測モデルを選択することを特徴とする請求項6ないし請求項9のいずれかの請求項に記載のガスの需要予測システム。
【請求項11】
コンピュータに実行させるためのプログラムであって、
ガスを消費する機器情報を含む顧客情報を取得する機能と、
ガスの検針データを収集し、顧客ごとに検針データ蓄積量を集計する機能と、
前記顧客情報および前記検針データ蓄積量に基づいて、需要予測データベースから顧客ごとにガス需要予測モデルを選択する機能と、
選択した前記ガス需要予測モデルを前記顧客情報に関連付けて登録する機能と、
前記ガス需要予測モデルによりガス需要予測値を算出する機能と、
前記コンピュータに実行させるためのプログラム。
【請求項12】
さらに、前記検針データ蓄積量の増加に応じて、顧客ごとに新たなガス需要予測モデルを選択する機能と、
新たに選択した前記ガス需要予測モデルに切換えて登録させる機能と、
を前記コンピュータに実行させることを特徴とする請求項11に記載のプログラム。
【請求項13】
前記顧客ごとに、想定される前記検針データ蓄積量に応じて、複数の異なる前記ガス需要予測モデルを生成する機能と、
想定した前記検針データ蓄積量に関係付けて、生成された前記ガス需要予測モデルを前記需要予測データベースに格納させる機能と、
を前記コンピュータに実行させることを特徴とする請求項11または請求項12に記載
のプログラム。
【請求項14】
収集したガスの検針データを読み出し、前記検針データと、前記ガス需要予測モデルにより算出したガス需要予測値とを対比する機能と、
前記検針データに対して、前記ガス需要予測値が設定された閾値の範囲外となる場合は、前記需要予測データベースにアクセスして、前記検針データ蓄積量に基づいて他のガス需要予測モデルを選択し、登録させる機能と、
を前記コンピュータに実行させることを特徴とする請求項11ないし請求項13のいずれかの請求項に記載のプログラム。
【請求項15】
前記顧客情報の変化を契機に、前記需要予測データベースから前記ガス需要予測モデルを選択させる機能を前記コンピュータに実行させることを特徴とする請求項11ないし請求項14のいずれかの請求項に記載のプログラム。
【請求項16】
請求項11ないし請求項15のいずれかの請求項に記載のプログラムが記録されたことを特徴とする記録媒体。
【請求項17】
ガスの需要予測を実行するサーバーであって、
ガスの検針データを収集し、顧客ごとに検針データ蓄積量を集計する検針情報取得手段と
顧客情報および前記検針データ蓄積量に関係付けてガス需要予測モデルを格納する需要予測データベースを備える記憶手段と、
ガスを消費する機器情報を含む顧客情報を取得し、前記顧客情報および前記検針データ蓄積量に基づいて、前記需要予測データベースから顧客ごとに前記ガス需要予測モデルの選択および前記顧客情報に関連付けて前記ガス需要予測モデルを登録し、前記ガス需要予測モデルによりガス需要予測値を算出する処理部と、
を備えることを特徴とするサーバー。
【請求項18】
前記処理部は、さらに、前記検針データ蓄積量の増加に応じて、顧客ごとに新たなガス需要予測モデルを選択し、新たに選択した前記ガス需要予測モデルに切換えて登録することを特徴とする請求項17に記載のサーバー。
【請求項19】
前記処理部は、前記顧客ごとに、想定される前記検針データ蓄積量に応じて、複数の異なる前記ガス需要予測モデルを生成し、想定した前記検針データ蓄積量に関係付けて、生成された前記ガス需要予測モデルを前記需要予測データベースに格納することを特徴とする請求項17または請求項18に記載のサーバー。
【請求項20】
前記処理部は、収集したガスの検針データを読み込み、前記検針データと、前記ガス需要予測モデルにより算出したガス需要予測値とを対比し、前記検針データに対して、前記ガス需要予測値が設定された閾値の範囲外となる場合は、前記需要予測データベースにアクセスして、前記検針データ蓄積量に基づいて他のガス需要予測モデルを選択し、登録することを特徴とする請求項17ないし請求項19のいずれかの請求項に記載のサーバー。
【請求項21】
前記処理部は、前記顧客情報の変化を契機に、前記需要予測データベースから前記ガス需要予測モデルを選択することを特徴とする請求項17ないし請求項20のいずれかの請求項に記載のサーバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえばLPG(Liquefied Petroleum Gas:液化石油ガス)など、ガス供給先である顧客ごとに設定した予測モデルによるガス需要の予測技術に関する。
【背景技術】
【0002】
ガス事業者は、契約したガス供給先に対してLPGが封入されたガス容器を配送し、使用中もしくは使用済みのガス容器と交換することで、継続的なガス供給を実現している。ガス容器の交換タイミングは、ガス供給先に設置されたガスメーターによる検針値に基づいて算出されるが、早すぎると交換したガス容器内の残留ガス量が多いために、交換や配送作業の負荷が大きくなる。また遅すぎるとガス容器内のガス切れを生じさせるおそれがある。
【0003】
ガス容器の交換管理では、ユーザーによるガスの需要状態を予測してガス容器の交換時期を算出する手法がある。従来、ガスメーターの検針処理は、たとえば月に1回程度のペースで行われ、その検針値を参考にガス容器の交換日が策定されていた。このような検針処理では、検針データの取得頻度が低いために、ユーザーのガス需要予測の精度を高めることは困難である。これに対し、通信技術の向上や通信費用の低減などにより、遠隔日間検針を導入することで、ガスメーターの検針頻度を高くし、詳細なガスの使用傾向を把握するものがある。そのほか、需要状態の算出において、ガス需要値を算出するための予測モデルを用いるものがある。
【0004】
このような予測モデルを利用した需要量の予測処理に関し、発電所もおける気象実績と、出力実績を用いた数理モデルを利用して、数理モデルの精度を計算し、この精度に応じて予測に用いる数理モデルを算出することが開示されている(たとえば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、ガスの需要予測モデルを用いることで、過去のガス使用傾向などデータを詳細に収集および検討処理を行わずに、ガス需要値の予測算出を行うことが可能となっている。しかしながら、顧客ごとのガスの使用年数による検針データの蓄積量の違いは、ガス需要予測値の算出結果に大きな影響を与える。検針データを高頻度で検出しても、ガスの使用年数の違いによる検針データの蓄積量はユーザー間で異なる。そのため画一的な予測モデルに対して各ユーザーの検針データを適用しても、ガスの需要予測精度は一定にならないという課題がある。
また、検針データが蓄積されるほど、ガスの使用年数が長くなり、顧客の家族構成の変化、使用するガス機器の経年劣化、またはガス機器の交換などにより、顧客におけるガスの消費状態の変化が生じる。このような変化に対して継続的に同じガス需要予測モデルを適用できず、ガス需要予測精度が低下するという課題がある。
【0007】
本発明の発明者は、検針データの蓄積量が顧客によって異なるという需要形態を踏まえて、需要予測の精度を上げるためには、検針データの蓄積量と予測モデルの関係を見直していることが必要であるとの知見を得ている。
斯かる課題について、特許文献1には開示や示唆はなく、特許文献1に開示された構成では斯かる課題を解決することができない。
そこで、本発明は、斯かる課題および知見に基づき、ガス供給先である顧客ごとに最適な需要予測を更新していき、高度な需要予測によるガス配送効率を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明のガスの需要予測方法の一側面は、コンピュータが実行する、ガスを消費する機器情報を含む顧客情報を取得する工程と、ガスの検針データを収集し、顧客ごとに検針データ蓄積量を集計する工程と、前記顧客情報および前記検針データ蓄積量に基づいて、需要予測データベースから顧客ごとにガス需要予測モデルを選択する工程と、選択した前記ガス需要予測モデルを前記顧客情報に関連付けて登録する工程と、前記ガス需要予測モデルによりガス需要予測値を算出する工程とを含む。
【0009】
上記需要予測方法において、さらに、前記コンピュータが実行する、前記検針データ蓄積量の増加に応じて、顧客ごとに新たなガス需要予測モデルを選択する工程と、新たに選択した前記ガス需要予測モデルに切換えて登録する工程とを含んでよい。
上記需要予測方法において、前記コンピュータが実行する、前記顧客ごとに、想定される前記検針データ蓄積量に応じて、複数の異なる前記ガス需要予測モデルを生成する工程と、想定した前記検針データ蓄積量に関係付けて、生成された前記ガス需要予測モデルを前記需要予測データベースに格納する工程とを含んでよい。
上記需要予測方法において、前記コンピュータが実行する、収集したガスの検針データを読み出す工程と、前記検針データと、前記ガス需要予測モデルにより算出したガス需要予測値とを対比する工程と、前記検針データに対して、前記ガス需要予測値が設定された閾値の範囲外となる場合は、前記需要予測データベースにアクセスして、前記検針データ蓄積量に基づいて他のガス需要予測モデルを選択し、登録する工程とを含んでよい。
上記需要予測方法において、前記コンピュータが実行する、前記顧客情報の変化を契機に、前記需要予測データベースから前記ガス需要予測モデルを選択する工程を含んでよい。
【0010】
上記目的を達成するため、本発明の需要予測システムの一側面は、ガスの検針データを収集し、顧客ごとに検針データ蓄積量を集計する検針情報取得手段と、顧客情報および前記検針データ蓄積量に関係付けてガス需要予測モデルを格納する需要予測データベースと、ガスを消費する機器情報を含む顧客情報を取得し、前記顧客情報および前記検針データ蓄積量に基づいて、前記需要予測データベースから顧客ごとに前記ガス需要予測モデルの選択および前記顧客情報に関連付けて前記ガス需要予測モデルを登録し、前記ガス需要予測モデルによりガス需要予測値を算出するサーバーを備える。
【0011】
上記需要予測システムにおいて、前記サーバーは、さらに、前記検針データ蓄積量の増加に応じて、顧客ごとに新たなガス需要予測モデルを選択し、新たに選択した前記ガス需要予測モデルに切換えて登録してよい。
上記需要予測システムにおいて、前記サーバーは、前記顧客ごとに、想定される前記検針データ蓄積量に応じて、複数の異なる前記ガス需要予測モデルを生成し、想定した前記検針データ蓄積量に関係付けて、生成された前記ガス需要予測モデルを前記需要予測データベースに格納してよい。
上記需要予測システムにおいて、前記サーバーは、収集したガスの検針データを読み込み、前記検針データと、前記ガス需要予測モデルにより算出したガス需要予測値とを対比し、前記検針データに対して、前記ガス需要予測値が設定された閾値の範囲外となる場合は、前記需要予測データベースにアクセスして、前記検針データ蓄積量に基づいて他のガス需要予測モデルを選択し、登録してよい。
上記需要予測システムにおいて、前記サーバーは、前記顧客情報の変化を契機に前記需要予測データベースから前記ガス需要予測モデルを選択してよい。
【0012】
上記目的を達成するため、本発明のプログラムの一側面は、コンピュータに実行させるためのプログラムであって、ガスを消費する機器情報を含む顧客情報を取得する機能と、ガスの検針データを収集し、顧客ごとに検針データ蓄積量を集計する機能と、前記顧客情報および前記検針データ蓄積量に基づいて、需要予測データベースから顧客ごとにガス需要予測モデルを選択する機能と、選択した前記ガス需要予測モデルを前記顧客情報に関連付けて登録する機能と、前記ガス需要予測モデルによりガス需要予測値を算出する機能と、を前記コンピュータに実行させる。
【0013】
上記プログラムにおいて、さらに、前記検針データ蓄積量の増加に応じて、顧客ごとに新たなガス需要予測モデルを選択する機能と、新たに選択した前記ガス需要予測モデルに切換えて登録させる機能とを前記コンピュータに実行させてよい。
上記プログラムにおいて、前記顧客ごとに、想定される前記検針データ蓄積量に応じて、複数の異なる前記ガス需要予測モデルを生成する機能と、想定した前記検針データ蓄積量に関係付けて、生成された前記ガス需要予測モデルを前記需要予測データベースに格納させる機能とを前記コンピュータに実行させてよい。
上記プログラムにおいて、収集したガスの検針データを読み出し、前記検針データと、前記ガス需要予測モデルにより算出したガス需要予測値とを対比する機能と、前記検針データに対して、前記ガス需要予測値が設定された閾値の範囲外となる場合は、前記需要予測データベースにアクセスして、前記検針データ蓄積量に基づいて他のガス需要予測モデルを選択し、登録させる機能とを前記コンピュータに実行させてよい。
上記プログラムにおいて、前記顧客情報の変化を契機に、前記需要予測データベースから前記ガス需要予測モデルを選択させる機能を前記コンピュータに実行させてよい。
【0014】
上記目的を達成するため、本発明の記録媒体の一側面は、上記プログラムのうちいずれかが記録されている。
【0015】
上記目的を達成するため、本発明のサーバーの一側面は、ガスの需要予測を実行するサーバーであって、ガスの検針データを収集し、顧客ごとに検針データ蓄積量を集計する検針情報取得手段と、顧客情報および前記検針データ蓄積量に関係付けてガス需要予測モデルを格納する需要予測データベースを備える記憶手段と、ガスを消費する機器情報を含む顧客情報を取得し、前記顧客情報および前記検針データ蓄積量に基づいて、前記需要予測データベースから顧客ごとに前記ガス需要予測モデルの選択および前記顧客情報に関連付けて前記ガス需要予測モデルを登録し、前記ガス需要予測モデルによりガス需要予測値を算出する処理部とを備える。
【0016】
上記サーバーにおいて、前記処理部は、さらに、前記検針データ蓄積量の増加に応じて、顧客ごとに新たなガス需要予測モデルを選択し、新たに選択した前記ガス需要予測モデルに切換えて登録してよい。
上記サーバーにおいて、前記処理部は、前記顧客ごとに、想定される前記検針データ蓄積量に応じて、複数の異なる前記ガス需要予測モデルを生成し、想定した前記検針データ蓄積量に関係付けて、生成された前記ガス需要予測モデルを前記需要予測データベースに格納してよい。
上記サーバーにおいて、前記処理部は、収集したガスの検針データを読み込み、前記検針データと、前記ガス需要予測モデルにより算出したガス需要予測値とを対比し、前記検針データに対して、前記ガス需要予測値が設定された閾値の範囲外となる場合は、前記需要予測データベースにアクセスして、前記検針データ蓄積量に基づいて他のガス需要予測モデルを選択し、登録してよい。
上記サーバーにおいて、前記処理部は、前記顧客情報の変化を契機に、前記需要予測データベースから前記ガス需要予測モデルを選択してよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、次のいずれかの効果が得られる。
(1) ガス利用の需要値に関係付けられたガス需要予測モデルについて、顧客の検針データの蓄積量に基づいて選択することで、顧客のガス使用傾向に合わせた需要予測が可能となる。
(2) ガスの使用状態が異なる顧客ごとに、適したガス需要予測モデルを設定できる。
(3) 顧客ごとのガス需要予測の精度を高めることで、ガス容器の交換処理において作業効率の向上、残ガス量低減による作業負荷の軽減、配送頻度の低減などが図れる。
【0018】
そして、本発明の他の目的、特徴および利点は、添付図面および各実施形態を参照することにより、一層明確になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】第1の実施形態に係る需要予測処理例を示すフローチャートである。
【
図3】顧客情報データベースの構成例を示す図である。
【
図5】ガス需要予測モデルデータベースの一例を示す図である。
【
図6】検針データ蓄積量に応じたガス需要予測値の一例を示す図である。
【
図7】管理サーバーのハードウェア構成例を示す図である。
【
図8】第2の実施形態に係る需要予測処理例を示すフローチャートである。
【
図9】ガス需要予測モデルの適合判断処理の一例を示すフローチャートである。
【
図10】ガス管理システムの構成例を示す図である。
【
図11】管理サーバーの機能構成例を示す図である。
【
図12】検針データ蓄積量に応じたガス需要予想処理の一例を示す図である。
【
図13】需要予測値を利用したガス配送管理処理の一例を示す図である。
【
図14】第3の実施形態に係る需要予測処理例を示すフローチャートである。
【
図16】顧客情報データベースの修正処理例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
〔第1の実施形態〕
図1は、第1の実施形態に係るガスの需要予測処理例を示している。
図1に示す処理内容、処理工程などは一例であり、斯かる構成に本発明が限定されない。
このガスの需要予測処理は、本発明のガス需要予測方法、およびそのプログラムの一例であり、たとえば
図1に示すように、ガス供給先の特定(S101)、顧客情報データベースの読込み(S102)、検針タイミング判断(S103)、検針データの取得処理(S104)、検針データの記憶処理(S105)、ガス需要予測の開始判断処理(S106)、検針データ蓄積量の集計処理(S107)、ガス需要予測モデルの選択(S108)、ガス需要予測値の算出処理(S109)等を含んでいる。
【0021】
ガス供給先の特定(S101): ガス供給先10-1、10-2、・・・、10-N(
図2、以下単に「ガス供給先10」と称する)は、ガス事業者と契約し、たとえば、軒先などにガス容器が設置され、このガス容器からLPGを消費する顧客である。このガス供給先10は、個人宅または商店などの法人(業者)のいずれかを問わないが、顧客情報として、たとえばガスの使用状態に関係する情報が登録されている。この顧客情報は、たとえばガス供給先の住所やガス機器使用人数、使用器具などの情報が含まれており、顧客ごとに顧客情報DB22(
図3)が生成されている。ガスの使用量はガスメーターの指針情報により把握される。
顧客情報データベースの読込み(S102): ガスの需要予測処理を行う管理サーバー4(
図2)は、記憶部に格納された顧客情報DB22にアクセスし、特定されたガス供給先の登録されている顧客のデータを読み込む。
【0022】
検針タイミング判断(S103): 検針タイミングは、たとえばガス供給先10ごとに設置されたガスメーターで計測した検針値を取得するタイミングか否かの判断の一例である。検針タイミングは、たとえばガスメーターまたは管理サーバー4に設置された図示しないタイマーなどによって管理されており、1日に複数回、または数日に1回などの所定の間隔を開けて計測される。そして、ガスメーターは、検針タイミングに達したとき(S103のYES)にガスメーターの指針情報を計測して記憶する。また、検針タイミングに達していない場合(S103のNO)は、検針タイミングになるまで待機状態とする。
検針データの取得処理(S104): 管理サーバー4は、ガス供給先10側からガスメーターによって検針した指針情報を取得する。この指針情報は、たとえばガス供給先10のガスメーターに設置された通信部62(
図10)を通じて取得する。そのほか管理サーバー4は、図示しない外部の指針情報源から、ガス供給先10を特定する情報とともに指針情報を取得してもよい。この指針情報源は、たとえば複数のガス供給先10からガスメーターで指針した検針データを収集し、管理サーバー4側に所定のタイミングまたは管理サーバー4からのアクセスに応じて検針データを提供する手段の一例であり、ガス供給先10と管理サーバー4を繋ぐ、中継手段として機能する。
【0023】
検針データの記憶処理(S105): 管理サーバー4は、取得した検針データを記憶部14(
図2)に格納する。記憶部14には、たとえば検針情報ファイル30(
図4)が格納されており、顧客ごとの検針データを格納する。
ガス需要予測の開始判断処理(S106): 管理サーバー4は、たとえば設定されたガス需要予測処理の実行タイミングか否かを判断する。この実行タイミングは、たとえば前回のガスメーター検針タイミング、またはガス需要予測処理の実行タイミングから所定時間が設定されてもよく、またはガス容器の交換などを契機に行ってもよい。
検針データ蓄積量の集計処理(S107): 管理サーバー4は、ガス供給先10から取得した指針値とともに、検針情報ファイル30に格納された過去の検針データを読み出し、検針データの蓄積量を集計する。この検針データの蓄積量は、顧客ごとの過去の検針回数やガス使用の契約年数、その他の顧客のガス使用状況を把握可能な情報を含むものである。
ガス需要予測モデルの選択(S108): 管理サーバー4は、集計した検針データの蓄積量に応じて、ガス需要予測モデル20(
図2)を選択し、顧客情報に関連付けて検針情報ファイル30などに登録する。ガス需要予測モデル20は、顧客ごとに設定してガスの需要予測を割り出す算出モデルの一例である。ガス需要予測では、対象となる顧客のガス使用傾向の情報が予測精度に大きく影響するため、過去に蓄積された検針データの蓄積量が多い程、精度の高い予測が可能となる。つまり、ガス需要予測モデル20は、たとえば短期間の検針データに基づいて選択された場合、季節の変動や顧客の生活スタイルの変動などに対する対応性が低くなる可能性がある。これに対し、ガス需要予測モデル20は、たとえば複数年分の検針データの蓄積量があれば、これらの生活スタイルの変動を考慮した高度な需要予測が可能となる。
ガス需要予測値の算出処理(S109): 管理サーバー4は、たとえば検針情報ファイル30に登録したガス需要予測モデルを利用して、次の検針タイミングまでのガス使用量、またはガス容器内のガス残量が所定値になる期間などの予測値を算出する。
【0024】
<ガス管理システム2>
図2のAは、ガス管理システムの一例を示している。
図2のAに示す構成は一例であり、本発明が斯かる構成に限定されるものではない。
ガス管理システム2は、たとえば
図2のAに示すように管理サーバー4、情報提示部6、情報入力部8を備えており、ガス供給先10ごとに設定したガス需要予測モデルを利用して所定期間またはガス切れまでのガス使用量(需要値)の予測算出機能を備えており、本発明のガス需要予測システム、サーバー装置の一例である。管理サーバー4は、コンピュータで構成されており、各ガス供給先10に有線または無線通信を介して接続されており、管理サーバー4と各ガス供給先10に設置されたガスメーターとの間で、制御指示やデータの送受信が行える。
情報提示部6は、管理サーバー4から出力された処理情報を画面や音声などで提示する手段の一例であり、たとえばLCD(Liquid Crystal Display)などで構成されるモニタや音声情報を出力するスピーカで構成される。そのほか情報提示部6は、たとえばガス供給先10の顧客が利用可能な情報端末装置、またはガス容器を配送する業者や配送員が所持する情報端末装置などに対してガス需要予測情報などを通知する通信機能部であってもよい。
情報入力部8は、管理サーバー4に対して制御情報プログラムや新たなガス需要予測モデルデータ、その他顧客情報を入力する手段の一例であり、たとえばキーボードやマウス、タッチパネルなどの入力装置で構成される。そのほか、情報入力部8は、管理サーバー4の通信機能の一例であり、ガス供給先10からネットワークを介して顧客情報の更新データの入力を可能にするほか、図示しない外部データベースとの接続によってガス需要予測モデルを取得してもよい。
【0025】
この管理サーバー4には、たとえば検針情報取得手段12、記憶部14、処理部16を備える。
検針情報取得手段12は、各ガス供給先10のガスメーターで検針された指針値情報を取込む機能部の一例であり、ガスメーターと通信する通信部で構成される。またこの検針情報取得手段12は、各ガス供給先10から取得した指針情報または検針値とともに過去の検針値データと合せて検針データ蓄積量を集計する機能を備える。
記憶部14は、検針データや顧客情報などのデータや管理サーバー4を動作させるプログラムを記憶する手段の一例である。この記憶部14は、たとえば
図2のAに示すように、検針データ蓄積値に関連付けられた複数のガス需要予測モデル20を格納する需要予測データベース(DB)18を備える。このガス需要予測モデルDB18には、たとえばガス供給先10のガス使用状態に応じたモデルを選択可能にするため、複数のガス需要予測モデル20が格納されている。そのほか、記憶部14には、顧客情報データベース(DB)22や検針情報ファイル30などが格納される。
【0026】
<顧客情報DB22について>
図3は、顧客情報DBの構成例を示している。
図3に示す構成は一例である。
顧客情報DB22は、ガス供給先10に関する契約者やガスの利用者に関する情報や、ガス容器の交換処理に利用する情報である顧客情報部24、ガスの消費負荷の情報を含む使用器具情報部26、点検履歴情報部28などが含まれており、顧客ごとの複数のデータベース22-1、22-2、・・・22-Nで構成されている。
顧客情報部24には、顧客名部24-1、ボンベ設置場所部24-2、利用人数部24-3、種別部24-4などで構成される。
顧客名部24-1は、たとえばガス供給サービスの契約者などの情報が登録されている。
ボンベ設置場所部24-2は、ガス供給先10に対するガス容器配送情報の一例であり、ガス容器の交換処理において、配送担当者に通知される情報のほか、ガス容器配送処理に必要な時間情報などが格納される。
利用人数部24-3は、ガス供給先10においてガス機器を使用し、ガスを消費させる処理を実行する人数情報が格納される。この利用人数部24-3に格納される情報は、顧客の同居人数もしくはガス機器の利用人数など、ガス消費傾向に影響を与える情報の一例である。
種別部24-4は、顧客またはガス供給先10を峻別する情報の一例であり、たとえば顧客のガス使用量や使用形態などの情報が格納される。この種別部24-4に登録される情報は、たとえばガス供給先10が住居であるか、またはガス使用量が大きい飲食店かなどの情報のほか、一世帯のみの住宅または複数世帯が入る集合住宅かの情報や、火力を必要とする料理店か否かなどの情報が格納される。
【0027】
使用器具情報部26には、たとえば種別部26-1、機種名部26-2、消費量部26-3、設置年月日部26-4などが含まれる。
種別部26-1は、ガスを消費する器具名やその種類などを特定する情報を格納する領域であり、たとえば給湯器、ガスエアコン、ガスコンロなど情報が登録されればよい。
機種名部26-2は、設置されているガス消費負荷の製品を特定する情報の一例であり、メーカー名や機器の名称のほか、識別コード情報などが登録される。
消費量部26-3は、各器具のガス消費量情報として、たとえば機器ごとに示されている必要ガス消費量などの情報が登録されればよい。この消費量情報は、たとえば顧客が有している機器の全体ガス使用量の概算予測などに利用すればよい。
設置年月日部26-4は、機器の使用開始時期を表す情報である。この設置年月日の情報は、たとえば機器の計時情報のほか、ガスの消費効率などの監視処理、顧客に対する機器の交換アドバイスなどに利用してもよい。
点検履歴情報部28は、顧客のガス器具やガスメーター、その他配管などの点検履歴情報が記録されている。
【0028】
<検針情報ファイル30>
図4は、検針情報ファイルの一例を示している。
この検針情報ファイル30は、ガス供給先10で収集した今回の検針データ、管理サーバー4に蓄積された検針データのほか、ガス需要予測値などの情報を格納するデータベースの一例であり、ガス供給先10ごとに複数のデータベース30-1、30-2、・・・30-Nが含まれる。
この検針情報ファイル30には、たとえば検針日時部32、ガスメーター指針部33、前回からのガス使用量部34、ガス需要予測モデル部35、ガス需要予測値部36が含まれており、ガス使用開始時または検針情報記録開始時から最新のガス検針処理までの検針データが蓄積されている。ガス需要予測処理では、この検針情報ファイル30に記録された情報を利用し、検針期間やこの期間内のガス使用量を組み合せて検針データ蓄積量を抽出し、ガス需要予測モデルの選択に利用する。すなわち検針データ蓄積量は、ガスの検針期間に該当する値である。
なお、短期間に多頻度でガス使用量を収集して得られた検針データの蓄積量は、たとえば顧客のガス使用傾向(トレンド)の推測処理に利用することができる。
【0029】
検針日時部32は、ガスメーターに設定され、または管理サーバー4からガスメーターに対して出力した指示情報によって行ったガス指針値の収集時期、または管理サーバー4がガスメーターから検針情報を取得した時期情報などが格納される。
ガスメーター指針部33には、検針タイミングでガスメーターが取得した指針値情報が格納される。
前回からのガス使用量部34には、今回の検針タイミングにおけるガス使用量の算出値が格納される。すなわち管理サーバー4の処理部16は、今回取得したガスメーターの指針値と前回の検針タイミングで取得したガスメーターの指針値との差分をとることで、ガス使用量を算出する。
ガス需要予測モデル部35には、すでに登録されているガス需要予測モデル、または今回のガス検針結果に基づいて新たに選択されたガス需要予測モデルが登録される。
ガス需要予測値部36は、登録されているガス需要予測モデルを利用して算出した、次回のガス検針タイミングのガス使用量の予測値、またはガス切れが発生する予測日などが登録される。
【0030】
<ガス需要予測モデルDB18について>
図5は、ガス需要予測モデルデータベースの一例を示している。
図5に示すデータ項目やデータの内容、データベースの構成は一例である。
ガス需要予測モデルDB18は、過去の検針データ蓄積量に関連づけられたガス需要予測モデル20が格納されたデータベースの一例である。このガス需要予測モデル20は、たとえばデータ蓄積量の多少により顧客の所定期間におけるガス使用量の値や変化傾向などを算出可能な計算式、またはそれらを表す経過グラフなどで構成されている。このガス需要予測モデルDB18には、たとえばガス需要予測モデル20に関連付けられた情報として、データ蓄積量部40、ガス使用傾向情報部41、ガス使用形態部42などが含まれる。
データ蓄積量部40は、過去にガスメーターにより検針されたデータ量であり、ガス使用期間を表す情報が格納される。データ蓄積量は、たとえば月、年単位で区分されるほか、ガス容器の交換回数や使用本数などで区分されてもよい。
ガス使用傾向情報部41は、顧客のガス使用傾向を表す情報の一例であり、たとえば「多い」または「少ない」などのほか、数段階に設定されたレベル表記で表してもよい。このガス使用傾向情報は、ガス需要予測モデル20の細分化要素の一例であり、たとえば図示しない基準情報が設定され、この基準情報に対して、前回の検針時または今回の検針時のガス使用量が多いか少ないかなどで判別してもよい。
ガス使用形態部42は、ガスの使用量の多少を判断するための要素であり、たとえば住居、店舗の選択により、ガス使用量の多少を分別している。このガス使用形態部42には、たとえば顧客情報DB22の種別部24-4に登録した情報を基準に判断すればよい。
なお、このガス需要予測モデルDB18では、データ蓄積量部40、ガス使用傾向情報部41、ガス使用形態部42の情報に対して、1つずつのガス需要予測モデル20が設定されている場合を示したが、これに限らない。ガス需要予測モデル20は、同一のデータ蓄積量やガス使用傾向またはガス使用形態に対して、異なる複数のモデルが設定されればよく、実際の検針結果に対してガス需要予測値が一致しない場合には、別のガス需要予測モデル20の再選択を可能にするため、複数のガス需要予測モデル20が設定される。
【0031】
<需要予測値の算出例>
図6は、検針データ蓄積量に応じたガス需要予測値例を示している。
図6のAは、横軸に算定時点、縦軸に指針情報を取り、算定時点に対する指針情報の推移を示している。
ガス使用量の検針タイミングTn-4、Tn-3、Tn-2、Tn-1、Tnは、現時点をTnとし、Tnから一定の時間間隔で過去に遡る時点を示している。この検針タイミングは、たとえば月単位で設定される。
指針情報Sn-4、Sn-3、Sn-2、Sn-1、Snは、検針タイミングTn-4、Tn-3、Tn-2、Tn-1、Tnでガスメーターから取得した指針値の一例である。そして、検針タイミングで算出されるガス使用量は、現時点の指針値から前回の指針値を減算した値である。
すなわち、検針タイミングTn-3、Tn-2、Tn-1、Tnで算定されるガス使用量Gn-3、Gn-2、Gn-1、Gnはそれぞれ次式から算出される。
[Gn-3]=[Sn-3]-[Sn-4] ・・・(1)
[Gn-2]=[Sn-2]-[Sn-3] ・・・(2)
[Gn-1]=[Sn-1]-[Sn-2] ・・・(3)
[Gn]=[Sn]-[Sn-1] ・・・(4)
【0032】
次回の検針タイミングTx時点の予測指針値Sxは、現時点Tnまでの検針データ蓄積量に基づいて選択されたガス需要モデルにより算出される。このときのガス使用量Gxは、以下の式で算出できる。
[Gx]=[Sx]-[Sn] ・・・(5)
【0033】
また、
図6のBは、
図6のAに示すガス検針処理よりも少ないデータ蓄積量に基づいて算出したガス需要予測値の例を示している。ここでは、たとえば同じ検針タイミングとして、現時点Tnを基準に、1回前の検針タイミングTn-1の間の検針データ蓄積量に基づくガス需要予測例を示す。このときの指針情報S1、S2、・・・、Smは検針時点t1、t2、・・・、tmでガスメーター50から取得される指針データである。
ガス需要予測処理では、1回の検針タイミングで得られた検針データ蓄積量に基づいて、ガス需要予測モデルを選択し、次回の検針タイミングTxの予測指針値Sxを算出する。
この
図6のA、
図6Bの検針処理では、検針データ蓄積量の多少により、異なるガス需要予測モデルが選択されるため、次回の指針情報の予測指針値Sxが異なる結果となる。これは、検針データ蓄積量が多い程、ガス消費のトレンドを加味した、詳細な需要予測が可能となることを表している。なお、検針データ蓄積量の多少が需要予測の算出結果の精度を表すものとは限らない。検針データ蓄積量が多いほど、ガス消費の変化や使用傾向に沿った詳細な需要予測値の算出が可能となることを表している。
【0034】
<管理サーバー4について>
図7は、管理サーバー4のハードウェア構成例を示している。
管理サーバー4は、通信機能を備えるコンピュータで構成される。管理サーバー4にはたとえばプロセッサ44、記憶部46、通信部48、入出力部(I/O)49を備える。
プロセッサ44は、記憶部46にあるOS(Operating System)や、ガス需要予測処理を行うプログラムなどによって既述の情報処理を行う処理部16として機能する。記憶部46にはOSの他、需要予測処理を行うプログラムや、ガス需要予測モデルDB18、顧客情報DB22、検針情報ファイル30などのデータベースが格納されている。この記憶部46には各種情報の記憶手段としてROM(Read-Only Memory)やRAM(Random-Access Memory)などを備え、記録媒体の一例である。
通信部48は、プロセッサ44で制御されてガス供給先10に設置されたガスメーターとの間で有線接続または無線接続により通信が可能である。
I/O49は、プロセッサ44と情報提示部6または情報入力部8との情報の授受に用いられる。
【0035】
<第1の実施形態の効果>
斯かる構成によれば、次のいずれかの効果が得られる。
(1) ガス使用期間を表すデータ蓄積量に応じてガス需要予測モデル20を選択することで、顧客のガス使用傾向に沿ったガスの需要予測処理を実現することができる。
(2) また、ガス使用期間が少ない顧客に対し、予め設定されたガス需要予測モデル20を適用し、需要予測値を算出することで、ガス利用管理を行うことができ、需要予測やガス容器の配送処理の精度を高めることができる。
(3) ガス需要モデルを利用したガス使用量の予測処理を実行することで、顧客ごとに複雑な使用傾向の解析処理が不要であり、管理サーバー4の処理負荷の軽減が図れるほか、高性能なコンピュータを導入しなくても、ガス管理処理が可能となる。
(4) ガスの使用状態が異なる顧客ごとに、適したガス需要予測モデル20を設定できる。
(5) 顧客ごとのガス需要予測の精度を高めることで、ガス容器の交換処理において作業効率の向上、残ガス量低減による作業負荷の軽減、配送頻度の低減などが図れる。
【0036】
〔第2の実施形態〕
図8は、第2の実施形態に係る需要予測処理例を示している。また
図9は、ガス需要予測モデルの適合性判断処理例を示している。
図8、
図9に示す処理内容、処理工程などは一例であり、斯かる構成に本発明が限定されない。
このガスの需要予測処理は、本発明のガス需要予測方法、およびそのプログラムの一例である。
ガス需要予測処理では、たとえば顧客データの読み込み処理(S201)、検針データ蓄積量の読み込み処理(S202)、ガス需要予測モデル20の適用判断処理(S203)、ガス需要予測モデル20の適合性判断処理(S204)、需要予測値の算出処理(S205、S207)、ガス需要予測モデル20の選択処理(S206)を含んでいる。
【0037】
顧客データの読み込み処理(S201):管理サーバー4の処理部16は、検針タイミングとなった顧客について、記憶部46から顧客情報DB22を読み込む。
検針データ蓄積量の読み込み処理(S202):管理サーバー4は、ガスメーターにアクセスして、顧客ごとに指針値を取込むとともに、その指針値および記憶部46の検針情報ファイル30を読み出して、検針データ蓄積量を読み込む。
ガス需要予測モデル20の適用判断処理(S203):管理サーバー4は、顧客の検針情報ファイル30にガス需要予測モデル20が適用されているかを判断する。つまり、検針タイミングとなった顧客が新規登録者もしくは過去にガス需要予測処理を実行していない場合には、ガス需要予測モデルが適用されていない。この判断処理により、ガス需要予測モデルが適用されている場合(S203のYES)には、そのガス需要予測モデル20の適合性判断処理(S204)に移行する。また、ガス需要予測モデルが適用されていない場合(S203のNO)、ガス需要予測モデル20の選択処理(S206)に移行する。
【0038】
ガス需要予測モデル20の適合性判断処理(S204):管理サーバー4は、この顧客に登録されているガス需要予測モデル20がガス使用状態に適合しているかを判断し、適合していると判断した場合(S204のYES)は、設定されているガス需要予測モデル20を利用して、ガス需要予測値を算出する(S205)。
また、管理サーバー4は、ガス需要予測モデル20がガス使用状態に適合していないと判断した場合(S204のNO)、読み出した検針データ蓄積量に応じて、顧客情報DB22から新たなガス需要予測モデル20を選択し(S206)、需要予測値を算出する(S207)。
【0039】
<ガス需要予測モデル20の適合判断について>
S204のガス需要予測モデル20の適合判断は、たとえば
図9に示すように、適合判断のタイミング確認処理(S301)、ガス使用量算出処理(S302)、需要予測値の読み出し処理(S303)、適合判断処理(S304)、適合判断の結果(S305、S306)、出力処理(S307)、を含む。
適合判断のタイミング確認処理(S301): 管理サーバー4は、たとえばガスメーターからの指針値の取得処理の完了後など、設定された適合判断のタイミングが到来したか否かを確認する。この適合判断は、検針タイミングごとに実行してもよく、または複数回の検針タイミングが到来したときや、ガス容器の交換処理を行ったときなどに実行するように設定してよい。
ガス使用量算出処理(S302): 管理サーバー4は、検針情報ファイル30に格納されている検針値を読み出し、所定期間のガス使用量を算出する。適合判断処理では、たとえば1または複数回の検針タイミングのガス使用量を利用すればよい。
需要予測値の読み出し処理(S303): 管理サーバー4は、読み出したガス使用量の検針期間と同じ期間、同じ時期に算出した需要予測値を読み出す。
【0040】
適合判断処理(S304): 適合判断処理では、たとえば読み出した需要予測値とガス使用量との差分を算出し、この差分が設定された閾値の範囲内かを判断する。
適合判断の結果(S305、S306): 管理サーバー4は、算出した差分が閾値の範囲内の場合(S304のYES)、ガス需要予測モデル20が適合と判断する(S305)。また、管理サーバー4は、算出した差分が閾値の範囲内にない場合(S304のNO)、ガス需要予測モデル20が不適合と判断する(S305)。
出力処理(S307):そして管理サーバー4は、たとえば適合判断の結果を情報提示部6に表示させるほか、検針情報ファイル30に格納してよい。
【0041】
<ガス管理システム2について>
図10は、第2の実施形態に係るガス管理システム2の構成例を示している。
図10において、
図2と同一部分には同一符号を付してある。
各ガス供給先10には、ガス事業者から提供される複数のガス容器52-1、52-2が設置されている。ガス容器52-1、52-2は、ガスメーター50を介してガス機器54(54-1、54-2・・・)に接続されている。またガス容器52-1、52-2とガスメーター50との間にガス切替部63が設置されており、ガス容器52-1、52-2のいずれかによりLPGがガス機器54に供給される。ガス機器54はガス給湯器、ガスコンロなど、ガスを消費する機器である。
ガスメーター50はたとえば、マイコンメーターであり、LPGの通過量を計測部58で計測しており、この通過量が指針情報Sとなる。処理部60は、たとえばプロセッサなどで構成されており、計測部58で計測した情報に対して検針日情報やデータ変換などを行い、通信部62を介して管理サーバー4に向けて指針情報を送信させる。
通信部62はガスメーター50に接続され、ガスメーター50から提供される指針情報Sを管理サーバー4に向けて送信する。管理サーバー4とガスメーター50はインターネットなどのネットワークに有線接続または無線接続により接続されている。
【0042】
<管理サーバー4について>
図11は、管理サーバー4の機能構成例を示している。
この管理サーバー4には、たとえばガス需要予測モデル20の適合性判断機能として、DB64、適合判断処理部68、タイマー部70、ガス需要予測モデル選択部72を備えている。
DB64は、たとえば管理サーバー4の記憶部14に形成されるデータベースの一例であり、ガス需要予測モデル20やガスメーターの検針処理により取得した検針データである検針データ蓄積量66が格納される。
適合判断処理部68は、管理サーバー4の処理部16で構成されており、検針データと需要予測値との差分算出や、その差分が閾値内か否かを判断する機能部の一例である。
タイマー部70は、計時手段の一例であり、管理サーバー4による検針タイミングの計時とともに、ガス需要予測モデル20の適合判断タイミングを計時する機能部である。
ガス需要予測モデル選択部72は、ガス使用量の算出処理において、DB64から検針データ蓄積量66に基づき、ガス需要予測モデル20を選択する機能部の一例である。また、このガス需要予測モデル選択部72は、ガス需要予測モデル20が不適合であると判断された場合に、DB64にアクセスし、他のガス需要予測モデル20を再選出して、管理サーバー4に登録する。この再選出では、たとえば同じ検針データ蓄積量66の情報に加え、ガスの使用状態や顧客の家族構成などの情報を加味して他のガス需要予測モデル20を選択してよい。
【0043】
図12は、検針データ蓄積量に応じたガス需要予測値の一例を示している。
図12のAに示すガス需要予測処理では、たとえばガス容器の交換処理を少なくとも1回行った場合のデータ蓄積量dAに基づいて選択したガス需要予測モデル20を利用して、ガス需要予測値Guxαを算出する場合を示している。管理サーバー4は、たとえばガス容器の交換時点の検針タイミングt1の検針値を基準とする。このときのガス容器は、ガスが満杯またはそれに近い状態であり、基準の残ガス量GR0となっている。管理サーバー4は、次の検針タイミングt2のときの検針値と検針タイミングt1のときの検針値の差分からガス使用量Gu1を算出する。この検針タイミングt2のときのガス容器内の残ガス量GR1は、基準の残ガス量GR0とガス使用量Gu1から算出できる。
また
図12のBに示す処理では、たとえば初めての検針タイミングにおいて、少ないデータ蓄積量dBに基づいて選択した汎用のガス需要予測モデル20を利用して需要予測値Guxβを算出した場合を示している。この汎用のガス需要予測モデル20は、たとえばテータ蓄積量が無い、または少ない顧客に適用されるガス需要予測モデルの一例である。
このガス需要予測処理の結果、データ蓄積量の多少が顧客のガス使用傾向の予測に影響を与えるため、たとえば、ガス需要予測モデルの違いにより、同じ検針タイミングであっても、需要予測値に差が生じる場合がある。
【0044】
<ガス需要予測モデル20の適合性判断>
図13は、需要予測値を利用したガス配送管理処理の一例を示している。
管理サーバー4は、ガスメーター50の指針値を利用してガス使用量を算出し、ガス容器内のガス切れ日の予測や、ガス容器の配送管理処理を行う。
ガス容器の配送管理処理において、管理サーバー4は、たとえば
図13のAに示すように、ガス容器交換後、もしくは所定の管理開始の検針タイミングt1のガス容器内の残ガス量を基準とし、次の検針タイミングt2までの指針値の差分によりガス使用量LG1を算出し、さらに次の検針タイミングt3の指針値の差分によりガス使用量LG2を算出する。また、管理サーバー4は、たとえば検針タイミングt2、t3において設定されたガス需要予測モデルを利用して、次の検針タイミングの需要予測値を算出する。
図13では、実線でガスの検針値に基づくガス使用量を示し、破線で需要予測値を示している。
【0045】
管理サーバー4は、たとえばガス需要予測モデル20を利用してガス容器内の残ガス量が0になるガス切れ日を予測し、その前にガス容器の交換指示を出力するガス配送管理処理を行う。管理サーバー4は、たとえばガス配送日の調整処理として、ガス切れ予測日txを基準とし、それよりも数日前にガス配送日を設定する。また管理サーバー4は、ガス容器の残ガス量LGrに対する残ガス量閾値LGEを設定しており、ガス切れ予測日txを基準に残ガス量LGrが残ガス量閾値LGE以下になる日を予測して、ガス配送日を設定してよい。
【0046】
管理サーバー4は、ガス容器の配送管理処理を行うとともに、ガス需要予測モデル20の適合判断処理を行う。この適合判断処理では、所定の検針タイミングにおいて、ガス需要予測モデル20により算出した需要予測値と、ガスメーター50の指針値に基づいて予測したガス使用量に基づく予測残ガス量との差分ΔLを利用する。
管理サーバー4は、たとえば
図13のAに示すように、算出した差分ΔLAが所定の閾値の範囲内であれば、設定されているガス需要予測モデル20が顧客のガス使用状態に対して適合すると判断し、このガス需要予測モデル20で算出したガス需要予測値を利用してガス切れ予測日txの算出や残ガス量閾値LGEになるタイミングを算出すればよい。
また、管理サーバー4は、たとえば
図13のBに示すように、算出した差分ΔLBが所定の閾値の範囲内に無い程検針値と相違している場合、設定されているガス需要予測モデル20が顧客のガス使用状態に対して不適合であると判断する。すなわち、ガス配送管理では、たとえばガスの使用量がガス需要予測モデル20よりも大きい場合には、需要予測値により推測するガス切れ予測日txよりも早期にガス容器が空となるため、ガス切れを生じさせてしまうおそれがある。また逆に図示しない例として、ガス配送管理では、たとえばガスの使用量がガス需要予測モデル20よりも小さい場合には、需要予測値によって算出したガス切れ予測日tx時点では容器内にガスが残ってしまい、ガス容器交換時の作業負荷を増大させるおそれがある。
そこで、管理サーバー4は、適合判断処理により、選択されているガス需要予測モデル20が不適合であると判断した場合はガス需要予測モデルDB18から他のガス需要予測モデル20を選択して顧客の検針情報ファイル30などに登録して、需要予測、残ガス量管理を実行する。
【0047】
<第2の実施形態の効果>
この第2の実施形態によれば、以下のいずれかのような効果が得られる。
(1) 検出したガス使用量と、ガス需要予測モデル20を利用して算出または読み出した需要予測値とを対比することで、顧客のガス使用傾向に対するガス需要予測モデル20の適合性が判断できる。
(2) ガス需要予測モデル20の適合性判断により、ガス容器内の残ガス管理やガス容器交換処理の処理精度が向上する。
(3) 顧客ごとにガス使用量の予測精度を高めることで、ガス容器交換時の残ガス量を低減することができ、ガス容器の配送負荷を低減できる。
【0048】
〔第3の実施形態〕
図14は、第3の実施形態に係る需要予測処理例を示している。
図14に示す処理内容、処理工程などは一例であり、斯かる構成に本発明が限定されない。
このガスの需要予測処理は、本発明のガス需要予測方法、およびそのプログラムの一例であり、ガス需要予測モデル20の適用性の確認とともに、残ガス管理および顧客情報の更新処理を含む。需要予測処理では、たとえば検針データと需要予測値の読み出し処理(S401)、適合性判断処理(S402)、ガス需要予測モデル20または検針頻度の変更処理(S403)、顧客情報の確認および更新処理(S404)を含む。
【0049】
検針データと需要予測値の読み出し処理(S401):管理サーバー4は、所定の検針タイミング、または所定期間のガス使用量の検針データと、その期間に対応したガス需要予測値を読み出す。この読み出し処理は、たとえば
図9に示すガス使用量算出処理(S302)および需要予測値の読み出し処理(S303)と同様の処理を行えばよい。
適合性判断処理(S402):管理サーバー4は、読み出した検針データと需要予測値との差分が所定の閾値の以上か否かの判断により、顧客のガス使用状態に対するガス需要予測モデルの適合性を判断する。この判断の結果、閾値以上の場合(S402のYES)は、ガス需要予測モデル20または検針頻度の変更処理(S403)に移行し、閾値未満の場合(S402のNO)はガス需要予測モデル20を変更せずに、設定されているガス需要予測モデル20を継続して適用すればよい。
ガス需要予測モデル20または検針頻度の変更処理(S403):この処理では、選択したガス需要予測モデル20が継続して適用できないか否かの判断とともに、ガス切れを防止するための処理例である。すなわち、管理サーバー4は、たとえば算出した差分の値が所定の判断閾値よりも大きく相違する場合、顧客のガス使用傾向に対して他のガス需要予測モデル20を選択させる処理を行う。また、管理サーバー4は、算出した差分の値が判断閾値に対して一定の範囲内の場合、顧客によるガス使用量の変動による誤差として、ガス需要予測モデル20を継続して利用するとともに、ガス使用量の検針頻度を変更させる。これにより、管理サーバー4は、たとえば継続して検針値と需要予測値との差分が閾値以上となっている場合には、ガス需要予測モデル20の再選択処理を行えばよく、また次回の検針において検針値と需要予測値の差分が閾値の範囲内になれば、設定されたガス需要予測モデル20を継続して利用すればよい。
顧客情報の確認および更新処理(S404):管理サーバー4は、ガス需要予測モデル20が適合しない結果となった原因を抽出するために、顧客に対し、顧客情報の変更があったか否かを確認し、変更があれば顧客情報DB22の更新処理を行えばよい。顧客情報の変更は、たとえば家族構成の変更によるガス利用人数の増減、所有する機器の増減や変更によるガス消費量の変更などが含まれる。
【0050】
図15は、需要予測値を利用したガス配送管理処理の一例を示している。
管理サーバー4は、たとえば所定間隔で検針タイミングt1、t2、t3・・・を設定し、ガスメーター50の指針値から算出したガス使用量に基づいてガス容器内の残ガス量LGrを管理している。また管理サーバー4は、選択したガス需要予測モデルを利用し、次回の検針タイミングにおける予測ガス量を算出するとともに、ガス切れ予測日tXを算出し、そのガス切れ予測日tXに基づいてガス容器の配送・交換の処理タイミングを設定する。
管理サーバー4は、たとえば
図15のAに示すように、所定の検針タイミングとして、タイミングt3で検出した残ガス量と、設定したガス需要予測モデル20で算出した予測ガス量に基づく予測残ガス量とを対比し、これらの差分ΔLAを算出する。そして管理サーバー4は、差分ΔLAが閾値の範囲内であることから、ガス需要予測モデルが顧客のガス使用傾向に適合すると判断し、現在設定されているガス需要予測モデル20を継続させ、予め設定した検針タイミングt4A、t5A・・・でガスの使用量に基づく配送管理を継続する。さらに管理サーバー4は、たとえば所定の検針タイミング、または別途設定したタイミングにおいて、設定されているガス需要予測モデル20により、ガス切れ予測日tXAを算出する。そして管理サーバー4は、ガス切れ予測日tXAに基づいて、ガス容器の配送管理を行えばよい。
【0051】
これに対し、管理サーバー4は、たとえば
図15のBに示すように、所定の検針タイミングt3において、実際の検針値から算出した残ガス量と、設定されているガス需要予測モデル20で算出した予測ガス量に基づく予測残ガス量とを対比して、ガス需要予測モデル20の適合判断処理を行う。管理サーバー4は、検出した残ガス量と予測ガス量に基づく予測残ガス量の差分ΔLBが閾値以上となっていることから、適用されているガス需要予測モデル20が不適合であると判断し、他のガス需要予測モデル20を再選択する。さらに、管理サーバー4は、たとえば変更したガス需要予測モデル20の適合性を確認するために、検針間隔を短くするとともに検針回数を増加させるなどの検針タイミングの変更処理を行う。つまり、管理サーバー4は、たとえば顧客によるガス使用量の一時的な変動により需要予測値の誤差が生じた場合を想定し、または再選択した新たなガス需要予測モデルの適合性を確認するために、間隔を狭めて検針回数を増加させる新たな検針タイミングt1、t2、・・・・t4B、t5B、t6B・・・を設定すればよい。
管理サーバー4は、新たに設定したガス需要予測モデル20に基づいてガス切れ予測日tXBを算出し、このガス切れ予測日tXAに基づいて、ガス容器の配送管理を行えばよい。
なお、管理サーバー4は、たとえばガス需要予測モデル20が不適合となる結果が出た場合でも、直ちに別のガス需要予測モデル20に変更せず、元のガス需要予測モデル20を継続して利用しつつ、新たに検針間隔の短縮や検針回数の増加処理を設定してもよい。
【0052】
<顧客情報DB22の更新>
管理サーバー4は、たとえば
図16に示すように、ガス需要予測モデルが適合しないと判断した場合、適合性判断を行ったときの検針タイミングまたはその他のタイミングにおいて、顧客に対し、顧客情報の変更の有無を確認する。管理サーバー4は、たとえば登録された顧客の連絡先に対して予め設定された確認情報を通知すればよい。顧客情報の変更処理は、たとえば管理サーバー4に対して顧客が所有する情報処理装置から直接アクセスさせて情報を入力させてもよく、または必要な情報を管理サーバー4に通知させてもよい。
これにより顧客情報DB22は、たとえば利用人数部24-3に対して人数を増加させる更新処理X1が行われるほか、古いガス器具の廃棄による情報削除の更新処理X2、また新たなガス器具の追加による新規登録の更新処理X3が行われる。
【0053】
<第3の実施形態の効果>
斯かる構成によれば、以下のいずれかの効果が得られる。
(1) ガス需要予測モデルが適合しないと判断された場合に、検針タイミングの頻度を増加させることで、ガス需要予測モデルを利用したガス配送管理精度を高めることができる。
(2) 検針データ蓄積量が少ない顧客に設定されたガス需要予測モデルなど、ガス使用傾向との適合性が低い場合でも、ガス需要予測モデルの再選択の回数を低減でき、管理サーバー4に対する処理負荷の低減が図れる。
(3) ガス需要予測モデルの適合性判断を契機に顧客情報DBの内容変更確認や更新処理を行うことで、顧客のガス使用傾向に対応したガス需要予測モデルの選択が行える。
【0054】
〔他の実施形態〕
上記実施形態には次のバリエーションが含まれる。
【0055】
(1) 上記実施形態では、ガス需要予測モデル20は、検針データ蓄積量の多少により分別される場合を示したがこれに限らない。ガス需要予測モデル20には、たとえば季節や適合する時期情報、気温情報などが含まれてもよい。顧客のガス使用形態は、寒い時期と暖かい時期で異なってくる。そのため、このガス使用形態に対応した情報として、季節や適合する時期情報、気温情報などをガス需要予測モデル20のパラメータとして設定すればよい。
【0056】
(2) ガス需要予測モデル20は、たとえば1つの需要予測パターンや1つの算出式で構成されるものに限らない。ガス需要予測モデル20は、たとえば適合する時期や季節情報ごとに複数のパターンや算出式を含んで構成されてもよい。
なお、ここでは、たとえば季節の1シーズンを通して顧客のガス使用傾向を予測したガス需要予測モデル20を用いることを排除するものではない。
【0057】
(3) 上記実施形態では、管理サーバー4の記憶部に格納されたガス需要予測モデル20を選択する場合を示したがこれに限らない。管理サーバー4は、たとえば顧客ごとに蓄積した検針データを利用して、新たなガス需要予測モデル20を生成してもよく、または既存のガス需要予測モデル20を顧客に対応するようにカスタマイズしてもよい。
【0058】
(4) 上記の実施形態では、ガスメーターで計測した検針値を取得するタイミングや、ガス需要予測処理の実行タイミング、ガス需要予測モデルの適合判断のタイミングについて、日を基準に算出する場合を示したがこれに限らない。これらの判断や実行の処理タイミングは、所定の時刻情報や前回からの経過時間などの時間情報に基づいて設定されてもよい。これにより、管理サーバー4は、たとえば検針値を取得や、ガス需要予測処理、ガス需要予測モデルの適合判断などの処理を1日の間に複数回実行する場合もある。
【0059】
以上説明したように、本発明の最も好ましい実施形態等について説明した。本発明は、上記記載に限定されるものではない。特許請求の範囲に記載され、または発明を実施するための形態に開示された発明の要旨に基づき、当業者において様々な変形や変更が可能である。斯かる変形や変更が、本発明の範囲に含まれることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明によれば、検針データ蓄積量に応じて、ガスを供給する顧客のガス使用傾向に応じたガス需要予測モデルを適用して、ガス需要予測やガス切れ予測を行うことができるとともに、ガス配送管理処理において、残ガス量を低減させて、ガス交換や配送における負荷の低減を図ることができ、有用である。
【符号の説明】
【0061】
2 ガス管理システム
4 管理サーバー
6 情報提示部
8 情報入力部
10、10-1、10-2、10-3 N・・・ガス供給先
12 検針情報取得手段
14、46 記憶部
16、60 処理部
18 ガス需要予測モデルDB
20 ガス需要予測モデル
22、22-1、22-2、・・・22-N 顧客情報DB
24 顧客情報部
24-1 顧客名部
24-2 ボンベ設置場所部
24-3 利用人数部
24-4、26-1 種別部
26 使用器具情報部
26-2 機種名部
26-3 消費量部
26-4 設置年月日部
28 点検履歴情報部
30、30-1、30-2、・・・30-N 検針情報ファイル
32 検針日時部
33 ガスメーター指針部
34 前回からのガス使用量部
35 ガス需要予測モデル部
36 ガス需要予測値部
40 データ蓄積量部
41 ガス使用傾向情報部
42 ガス使用形態部
44 プロセッサ
48、62 通信部
49 I/O
50 ガスメーター
52-1、52-2 ガス容器
54-1、54-2 ガス機器
56 ガス供給路
58 計測部
63 ガス切替部
64 DB
66 検針データ蓄積量
68 適合判断処理部
70 タイマー部
72 ガス需要予測モデル選択部