(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-26
(45)【発行日】2024-04-03
(54)【発明の名称】動作補助装置
(51)【国際特許分類】
A61H 3/00 20060101AFI20240327BHJP
A45B 3/00 20060101ALI20240327BHJP
【FI】
A61H3/00 Z
A45B3/00 B
(21)【出願番号】P 2020140580
(22)【出願日】2020-08-24
【審査請求日】2023-06-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000110479
【氏名又は名称】ナカ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126620
【氏名又は名称】石井 豪
(72)【発明者】
【氏名】飛川 哲生
(72)【発明者】
【氏名】石川 朝之
【審査官】岡本 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-059453(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0084578(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61H 3/00
A45B 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
設置対象箇所に回動自在に取り付け可能な取付部と、
把持可能な
把持部を有する杖部材と、
杖部材を支持する支持部と、
取付部を中心に回動自在に設けられているとともに、杖部材が直立した状態を維持するように取付部と支持部とを連結する連結部と、
杖部材の下端が接地面から浮き上がる方向に付勢する付勢部材と、を備え
、
支持部は、杖部材を、杖部材の下端が接地面に設置する位置と接地面から浮き上がった位置とに移動可能に支持し、
浮き上がっている杖部材を、付勢部材の付勢力に抗して接地面に向けて押圧することで、杖部材の下端が接地面に接地可能であり、
連結部は、互いに連結された複数の連結部材によって構成され、
複数の連結部材は、取付部に設けられた第1連結部材と、支持部を介して杖部材を取り付けられた第2連結部材とを含み、
連結部は、取付部と支持部との距離を所定の最短距離である第1距離から所定の最長距離である第2距離までの範囲内で可変可能に構成されており、
杖部材は、第1距離における杖部材の回動軌跡と第2距離における杖部材の回動軌跡との間の範囲内を移動することを特徴とする動作補助装置。
【請求項2】
複数の連結部材は、互いに回動自在に連結されていることを特徴とする請求項1記載の動作補助装置。
【請求項3】
隣接する連結部材のうち、杖部材側の連結部材が、取付部側の連結部材に対して水平に移動可能に設けられていることを特徴とする請求項
1記載の動作補助装置。
【請求項4】
連結部は、第1連結部材と第2連結部材とを連結する第3連結部材を備えていることを特徴とする請求項1、2又は3記載の動作補助装置。
【請求項5】
杖部材は、支持部に対して回転自在に支持されていることを特徴とする請求項1、2
、3
又は4記載の動作補助装置。
【請求項6】
複数の連結部材は、板状又は枠状に形成されていることを特徴とする請求項1、2、3、4又は5記載の動作補助装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高齢者等の使用者による移動等の動作を補助する動作補助装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に開示されているように、天井に設けられたレールと、このレールに沿って移動可能な連結棒と、この連結棒に対して、上下方向に伸縮自在に設けられた手摺とを有し、使用者の移動を補助する動作補助装置が知られている。この動作補助装置においては、手摺を伸縮自在とすることで、使用者の身長等に応じた適切な位置に把持部を位置させることができ、また、レールに沿った方向への移動の補助も行えるものとなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の動作補助装置では、レールに沿った直線的な移動しか行えず移動方向に制限があり、使用者の利便性に乏しいものであった。また、レールの設置に手間がかかるため、動作補助装置の設置が容易に行えないものであった。
【0005】
本発明は、上述した事情に鑑み、自由度の高い移動が可能となり使用者の利便性の向上を図ることができるとともに、設置が容易な動作補助装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した目的を達成するために、本発明は次のように構成されている。
以下、本発明の特徴点を図面に示した発明の実施の形態を用いて説明する。なお、下記の符号及び記載は、本発明の構成に相当する発明の実施の形態における構成の符号及び名称を示したものであり、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【0007】
本発明に係る動作補助装置10は、設置対象箇所に回動自在に取り付け可能な取付部35と、把持可能な把持部27を有する杖部材15と、杖部材15を支持する支持部36と、取付部35を中心に回動自在に設けられているとともに、杖部材15が直立した状態を維持するように取付部35と支持部36とを連結する連結部17と、杖部材15の下端が接地面から浮き上がる方向に付勢する付勢部材(スプリング40)と、を備え、支持部36は、杖部材15を、杖部材15の下端が接地面に設置する位置と接地面から浮き上がった位置とに移動可能に支持し、浮き上がっている杖部材15を、付勢部材の付勢力に抗して接地面に向けて押圧することで、杖部材15の下端が接地面に接地可能であり、連結部17、50は、互いに連結された複数の連結部材によって構成され、複数の連結部材は、取付部35に設けられた第1連結部材(第1板29、回動板51)と、支持部36を介して杖部材15を取り付けられた第2連結部材(第3板33、第2スライド板53)とを含み、連結部17は、取付部35と支持部36との距離を所定の最短距離である第1距離から所定の最長距離である第2距離までの範囲内で可変可能に構成されており、杖部材15は、第1距離における杖部材15の回動軌跡と第2距離における杖部材15の回動軌跡との間の範囲内を移動することを特徴とする。
この動作補助装置によれば、連結部が、杖部材が直立した状態を維持するように取付部と支持部とを連結しているため、杖部材を杖や手すりのように用いることができる。このため、使用者に対し、直立した杖部材をつかんで体を支える等といった動作の補助が可能となる。また、杖部材は、回動自在な取付部に連結部を介して連結された支持部に支持されて、取付部を回動中心として回動可能となるため、使用者は杖部材につかまった状態で、杖部材の回動軌跡上に沿って移動することができ、杖部材による移動の補助が可能となる。本発明に係る動作補助装置によれば、自由度の高い移動が可能となるとともに、使用者の体を支持する動作の補助と、使用者の移動の補助との両方を行うことができ、使用者の利便性の向上を図ることができる。また、取付部を設置対象箇所に取り付けるだけで動作補助装置が設置されるため、動作補助装置の設置が容易となる。
【0008】
また、この動作補助装置によれば、使用者が杖部材に体重をかけている(使用者が杖部材を接地面に向けて押圧している)使用時においては、杖部材の下端が接地面に圧接されることによって、杖部材が安定して直立した状態になるため、杖部材を杖のように用いる使用者の動作の補助を充分に行うことができる。一方、使用者が杖部材に体重をかけていない(杖部材を地面に向けて押圧していない)未使用時においては、杖部材の下端が接地面から浮き上がっているため、杖部材を移動させる際において、杖部材の下端と接地面とが擦れることを防止でき、杖部材の移動を容易に行うことができる。
さらに、この動作補助装置によれば、取付部と支持部との距離は、所定の最短距離である第1距離から所定の最長距離である第2距離までの範囲内となり、杖部材が第1距離にあるときの杖部材の回動軌跡と、杖部材が第2距離にあるときの杖部材の回動軌跡との間の範囲内において、杖部材を移動自在とすることができ、自由度の高い移動が可能となるとともに、使用者の利便性の向上をさらに図ることができる。
【0009】
また、複数の連結部材(第1板29、第2板31、第3板33)はそれぞれ、互いに回動自在に連結してもよいし、また、複数の連結部材(回動板51、第1スライド板52、第2スライド板53)における隣接する連結部材のうち、杖部材15側の連結部材が、取付部35側の連結部材に対して水平に移動可能に構成してもよい。
また、連結部17、50は、第1連結部材と第2連結部材とを連結する第3連結部材(第2板31、第1スライド板52)を備えるようにしてもよい。
また、杖部材15は、支持部36に対して回転自在に支持されているようにしてもよい。
また、複数の連結部材は、板状又は枠状に形成されているようにしてもよい。
【0010】
また、上述の杖部材15は、把持可能であるとともに、円盤状に形成されている把持部27を備えているようにしてもよい。
このようにすることで、使用者が、杖部材の把持部に対して左右前後のどの位置にいたとしても、把持部の形状が一定となるため、どの位置から把持部を把持したとしても同じような負荷で把持部を把持することができ、把持部に対する使用者の位置に応じて使用者の負荷が変化することを防止することができる。また、どの位置にいても把持部の形状が一定であるため、使用者は迷うことなく把持部を把持することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る動作補助装置によれば、使用者の利便性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の第1実施形態における動作補助装置を示す正面図である。
【
図2】本発明の第1実施形態における動作補助装置を示す斜視図である。
【
図3】本発明の第1実施形態における動作補助装置の動作を説明するための平面図である。
【
図4】本発明の第1実施形態における動作補助装置の動作を説明するための平面図である。
【
図5】本発明の第1実施形態における動作補助装置の杖部材の可動範囲を説明するための平面図である。
【
図6】本発明の第1実施形態における動作補助装置の動作を説明するための平面図である。
【
図7】本発明の第1実施形態における動作補助装置の動作を説明するための平面図である。
【
図8】本発明の第1実施形態における動作補助装置の動作を説明するための平面図である。
【
図9】本発明の第1実施形態における動作補助装置の動作を説明するための平面図である。
【
図10】本発明の第2実施形態における動作補助装置を示す斜視図である。
【実施するための形態】
【0013】
(本発明の第1実施形態)
以下、
図1~
図9を参照しながら本発明の第1実施形態を説明する。
図1および
図2に示すように、動作補助装置10は、大別して、室内や屋外における所望の設置対象箇所への取り付けが可能な取付部35,35と、高齢者等の使用者が把持可能な杖部材15と、この杖部材15を支持する支持部36,36と、杖部材15が直立した状態を維持するように取付部35,35と支持部36,36とを連結する連結部17とを備えている。
【0014】
本形態における取付部35,35は、室内における天井面Tおよび接地面Gに対して取り付け可能な突っ張り棒19(設置対象箇所)に回動自在に取り付けられるようになっている。突っ張り棒19は、管状の第1管部21と管状の第2管部23とにより、長手方向(
図1における上下方向)に二分されている。第1管部21の一端部(換言すれば、突っ張り棒19の一端部であり、
図1における上端)には、天井面Tに圧接される第1圧接部22が設けられ、第2管部23の他端部(換言すれば、突っ張り棒19の他端部であり、
図1における下端)には、接地面Gに圧接されるゴム等からなる第2圧接部24が取り付けられている。
【0015】
杖部材15は、円柱状に形成されているとともに下端部にゴム等の緩衝部26が設けられた円柱部25と、この円柱部25の上端部に設けられた円盤状の把持部27とを有している。把持部27を円盤状とすることで、使用者が、杖部材15の把持部27に対して左右前後のどの位置にいたとしても、把持部27の形状が一定となるため、どの位置から把持部27を把持したとしても同じような負荷で把持部27を把持することができ、把持部27に対する使用者の位置に応じて使用者の負荷が変化することを防止できる。また、どの位置にいても把持部27の形状が一定であるため、使用者は迷うことなく把持部27を把持することができる。なお、把持部27の形状は、円盤状に限定されず、仕様等に応じて、平面視で四角形状、三角形状等の形状を適宜適用可能である。また、把持部27については、把持しやすいように角部に面取りを施して円弧状に形成することが好ましい。
【0016】
また、取付部35,35と支持部36,36とを連結する連結部17は、木製の板状に形成された第1板29、第2板31および第3板33を有している。本実施形態では、第1板29が取付部35,35に対して回動自在に設けられ、第3板33に支持部36,36を介して杖部材15が直立可能に取り付けられている。また、本実施形態では、第1板29、第2板31および第3板33は同一形状となっている。なお、各板の材質としては、上述の木製に限定されず、金属製や樹脂製等を適宜用いることが可能である。また、各連結部17は、板状に限定されず、枠状に形成してもよい。
【0017】
取付部35,35は管状となっており、第1板29の側部(
図1における右側部)における上部と下部とにネジ等の締結具によって固定されている。そして、この取付部35,35に、突っ張り棒19の第2管部23を挿通することで、動作補助装置10が設置される。このように、取付部35,35に第2管部23を挿通するだけで動作補助装置10を設置することができるため、動作補助装置10の設置が容易となっている。また、管状の取付部35,35を介して第1板29が突っ張り棒19の第2管部23に取り付けられることによって、第1板29は、突っ張り棒19の第2管部23に対して回動可能となっている。換言すれば、第1板29を有する連結部17が取付部35,35を中心として回動自在となる。なお、第2管部23の外周面には、取付部35,35が所定位置より下がらないようにするための図示しないストッパが設けられており、このストッパによって、第1板29の上下の位置決めがされている。
【0018】
また、支持部36,36も管状となっており、第3板33の側部(
図1における左側部)における上部と下部とにネジ等の締結具によって固定されている。そして、この支持部36,36に杖部材15の円柱部25を挿通することで、支持部36,36が杖部材15を支持するようになっている。これによって、杖部材15は、支持部36,36に対して回転自在となっているとともに、直立した状態を維持するようになっている。
【0019】
杖部材15の円柱部25における上側の支持部36の上方の箇所には、ストッパ28が設けられており、また、この支持部36とストッパ28との間には、スプリング40(付勢部材)が設けられており、このスプリング40によって、杖部材15は、その下端部の緩衝部26が接地面Gから浮き上がる方向に常時付勢されるようになっている。この状態で、使用者が杖部材15の把持部27を把持して自らの体重をかけることにより、杖部材15がスプリング40の付勢力に抗して、下方に下がって杖部材15の緩衝部26が接地面Gに押圧されることとなる。このようにすることで、杖部材15の使用時においては、杖部材15の緩衝部26が接地面Gに押圧されることによって、杖部材15の緩衝部26と接地面Gとの間に充分な摩擦が発生して、杖部材15が安定して直立した状態になる。この結果、使用者のとっさのよろめき等にも充分に対応することができ、杖部材15を杖や手すりのように用いる使用者の動作の補助を充分に行うことができる。一方、杖部材15の未使用時においては、杖部材15の緩衝部26が接地面Gから浮き上がっているため、連結部17に連結された杖部材15を回動させる際において、杖部材15の緩衝部26と接地面Gとが擦れることを防止でき、杖部材15の回動を容易に行うことができる。
【0020】
また、第1板29と第2板31とは、上下に間隔をおいて設けられた第1ヒンジ39,39によって互いに回動自在に設けられ、第2板31と第3板33とは、上下に間隔をおいて設けられた第2ヒンジ41,41によって互いに回動自在に設けられている。また、
図2に示すように、第1ヒンジ39,39と、第2ヒンジ41,41とは互いに反対側に設けられている。具体的には、第1ヒンジ39,39は、第1板29および第2板31の一方の面(
図1における手前側の面)側に設けられ、第2ヒンジ41,41は、第2板31および第3板33において、上述の一方の面とは反対側の他方の面に設けられている。
【0021】
このように、第1ヒンジ39,39と第2ヒンジ41,41とを互いに反対側になるように設けることで、第1ヒンジ39,39によって第1板29の一方の面と第2板31の一方の面とが互いに対面するように重なる重なり位置とした状態で、さらに、第2ヒンジ41,41によって第2板31の他方の面と第3板33の他方の面とが互いに対面するように重なる重なり位置(換言すれば、重なり位置にある連結部17)とすることができ、
図3に示すように、第1板29、第2板31および第3板33がコンパクトに折りたたまれることとなる。動作補助装置10の未使用時においては、このようにコンパクトに折りたたむことで、動作補助装置10が邪魔にならないようにすることができる。
【0022】
なお、本実施形態では、図示しないが、第1板29と第2板31との接合部S、第2板31と第3板33との接合部Sには、ゴム等の可撓性を有する緩衝材が当該接合部Sに介在するように設けられており、上述の重なり位置となったときに接合部Sが緩衝されるようになっている。
【0023】
一方、上述の状態から、第1ヒンジ39,39を介して、互いに対面した第1板29の一方の面と第2板31の一方の面とが互いに離間するように、第1板29および第2板31を回動し、第2ヒンジ41,41を介して、互いに対面した第2板31の他方の面と第3板33の他方の面とが互いに離間するように、第2板31および第3板33を回動することで、
図4に示すように、第1板29、第2板31および第3板33すべてが一直線状となった回動位置(換言すれば、回動位置にある連結部17)とすることができる。
【0024】
ここで、突っ張り棒19が挿通された取付部35,35と杖部材15が挿通された支持部36,36との距離(換言すれば、取付部35,35の中心軸線と支持部36,36の中心軸線との距離)は、連結部17が重なり位置にあるときが最短となり、連結部17が回動位置にあるときが最大となる。すなわち、取付部35,35と支持部36,36との距離は、連結部17が重なり位置にあるときの第1距離から連結部17が回動位置にあるときの第2距離までの範囲内となる。このため、杖部材15が第1距離にあるときにおける杖部材15の回動軌跡K1(
図3参照)と、杖部材15が第2距離にあるときにおける杖部材15の回動軌跡K2(
図4参照)との範囲内(
図5の斜線部分参照)において、杖部材15を移動自在とすることができる。この結果、前後左右のいずれの方向へも杖部材15を移動させることができ、移動方向に制限がないため、自由な移動が可能となり使用者の利便性の向上を図ることができる。さらに、動作補助装置10の移動方向に制限がないことから、動作補助装置10の設置箇所も制限されず、室内の間取りに関係なく所望の位置に設置することができる。
【0025】
なお、
図3~
図5は、本実施形態における動作補助装置10の動作を説明するための平面図であり、本実施形態に係る動作補助装置10を便器Bが据え付けられたトイレ内に配置した状態を示している。この
図3~
図5に示すように、トイレ内における便器Bとは反対側の隅部に取付部13が取り付けられている。
【0026】
次に、上述した構成の動作補助装置10の具体的な使用例について、
図6~
図9を参照しながら説明する。この動作補助装置10は、筋力の衰えた高齢者や足や手等が不自由な障がい者等の使用者による移動や立ち座り等の動作を行う際に使用するものであり、
図6~
図9は、動作補助装置10の動作を説明するための平面図であり、
図6および
図7は、トイレ内に入室してから便座Bに着座するまでにおける動作補助装置10の動作を示し、
図8および
図9は、便座Bに着座した状態からトイレ外に退室するまでにおける動作補助装置10の動作を示している。
【0027】
まず、使用者がトイレに入る場合には、
図6(a)に示すように、トイレの入り口E付近に位置している杖部材15の把持部27を片手(図では左手)で把持して寄りかかることで自らの体を支える。この状態で、
図6(b)に示すように、杖部材15の把持部27を少し浮かして杖部材15の緩衝部26が接地面Gから浮き上がった状態で少し前に進んだ後に、再び杖部材15の把持部27に体重をかけて杖部材15を接地面Gに押圧して体を支えるという動作を繰り返すといったように、杖部材15を杖のように用いることでトイレ内を進む。このようにして便器Bの前まで進んだ後は、
図7(a)に示すように、杖部材15の把持部27を片手で把持して自らの体を支えながら、便器Bにそのまま座れる位置まで体の向きを変えた後、杖部材15により体を支えながら脱衣する。その後、
図7(b)に示すように、杖部材15の把持部27を左手で把持して自らの体重を支えながら便器Bに座る。
【0028】
次に、便座Bに座った状態からでトイレを退室する場合について説明する。
図8(a)及び(b)に示すように、便座Bに座った状態からトイレを退室する場合には、杖部材15の把持部27を片手(図では右手)で把持して自らの体を支えつつ立ち上がった後、着衣する。その後、
図9(a)に示すように、杖部材15の把持部27を片手で把持して自らの体を支えながら、トイレの入り口Eから退室できるように(トイレの入り口Eに対向するように)体の向きを変える。そして、
図9(b)に示すように、杖部材15の把持部27を少し浮かして杖部材15の緩衝部26が接地面Gから浮き上がった状態で前に進んだ後に、再び杖部材15の把持部27に体重をかけて杖部材15を接地面Gに押圧して体を支える動作を繰り返すといったように、杖部材15を杖のように用いることでトイレの入り口Eに向けて進む。そして、トイレの入り口Eに到達した後は、トイレの入り口E付近に位置している杖部材15の把持部27を片手で把持して寄りかかることで自らの体を支えつつトイレから退室する。
【0029】
このように、本実施形態の動作補助装置10は、前後左右のどの方向でも移動可能であり、その移動方向に制限がないため、自由度の高い移動が可能となる。また、杖部材15を把持した片手から別の片手に持ち替える(例えば、左手で把持して右手で持ち替える等)必要がなく、杖部材15を片手で把持した状態のまま、使用者の移動の補助および使用者の動作の補助を行うことができ、使用者の利便性の向上を図ることができる。
このため、本実施形態の動作補助装置10は、右手又は左手の一方がマヒしている人も使用しやすいものとなっている。例えば、右手がマヒしている右マヒの人は比較的自由の利く左手のみで、左手がマヒしている左マヒの人は比較的自由の利く右手のみで動作補助装置10を使用することで、移動の補助および動作の補助を受けることができる。
【0030】
以上説明したように、本実施形態の動作補助装置10によれば、直立した杖部材15の把持部27をつかんで体を支える等といった動作を補助することができる。また、連結部17によって、杖部材15が取付部35,35を中心として回動可能であるため、使用者は杖部材15につかまった状態で、杖部材15を杖や手すりのように用いつつ杖部材15の回動軌跡上に沿って移動することができ、自由度の高い移動が可能となるとともに、使用者の移動を補助することができる。その結果、本実施形態の動作補助装置10は、使用者の体を支持する動作の補助と、使用者の移動の補助との両方を行うことができ、使用者の利便性の向上を図ることができる。
【0031】
次に、本発明の第2実施形態を説明するが、その説明にあたり、上述と同様の構成には、同一の符号を付することによって、その説明を省略または簡略化するものとする。また、第2実施形態では、第1実施形態との相違点を主に説明するものとする。
【0032】
図10に示すように、第2実施形態における動作補助装置10は、第1実施形態の回動可能な連結部17に代えて、伸縮自在な連結部50とした点で相違する。この連結部50は、突っ張り棒19の第2管部23に取付部35,35を介して回動可能に支持された回動板51(連結部材)と、この回動板51の内部空間に収納可能でかつ回動板51に対してスライド可能(回動板51に対して突没可能)な第1スライド板52(連結部材)と、この第1スライド板52の内部空間に収納可能でかつ第1スライド板52に対してスライド可能(第1スライド板52に対して突没可能)な第2スライド板53(連結部材)とを有している。この連結部50の
第1スライド板52および
第2スライド板53がスライドすることで、連結部50全体が伸縮自在となっている。なお、
第2スライド板53の下面には、接地面Gと接地可能であって、かつ
第2スライド板53の移動を補助するキャスター44が設けられている。
このような連結部50であっても、上述の第1実施形態と同様の作用効果を奏する。
【0033】
本発明は、上述した各実施形態に限定されず、その要旨を逸脱しない範囲内において種々の変形が可能である。
例えば、第1実施形態では、第1板29、第2板31および第3板33の3つの板部材を設けたが、この板の数は、単数であってもよいし、3つ以外の複数であってもよく、動作補助装置10の仕様に応じて適宜変更可能である。同様に、第2実施形態におけるスライド板の数も、動作補助装置10の仕様に応じて適宜変更可能である。
【0034】
また、第1板29、第2板31、第3板33(第2実施形態における回動板51、第1スライド板52、第2スライド板53)の表面に、使用者の眼鏡やメモ帳等といった小物や荷物を収納可能なポケットあるいは袋等の収納部を設けるようにすることで、使用者が動作補助装置10を使用する際に、自らの荷物を一時的に収納可能としてもよい。
このようにすることで、使用者は手ぶらの状態で、杖部材15の把持部27につかまることができ、荷物を抱えたままの移動を防止できる。
【0035】
さらに、第1板29、第2板31、第3板33(第2実施形態における回動板51、第1スライド板52、第2スライド板53)の表面には、筆記具による筆記や消去が可能なホワイドボード等の筆記部が設けられているようにしてもよい。
このようにすることで、使用者に対する注意事項や、使用者の介護者等に対する注意事項等を明示することができるとともに、注意事項等の書き換えも容易に行うことができる。
また、第1板29、第2板31、第3板33(回動板51、第1スライド板52、第2スライド板53)の表面に、所定の意匠をあしらったパネル等を設けることで、動作補助装置10の意匠性を向上させるようにしてもよい。
【0036】
また、上述した各実施形態では、動作補助装置10を室内で用いた例にて説明したが、室外で用いるようにしてもよい。
また、上述した各実施形態では、突っ張り棒19に取付部35,35を取り付けて(挿通させて)動作補助装置10を設置する例にて説明したが、突っ張り棒19に代えて、例えば、接地面Gに埋設可能な杭部材(図示せず)に取付部35,35を取り付けて動作補助装置10を設置してもよい。また、取付部35,35は、接地面Gから立設する杭部材や壁面等に予め設置されたフック等に引っ掛けることが可能な係止部、壁面等に予め設置された手摺等に嵌め込むことが可能な嵌合部等としてもよい。すなわち、設置対象箇所(突っ張り棒19、杭部材、手摺、壁面、これらに設けられたフック等)への取り付けおよび取り外しが可能であれば、取付部35,35の態様(取り付け構造)は特に限定されない。
【符号の説明】
【0037】
10 動作補助装置 15 杖部材 17 連結部
19 突っ張り棒 21 第1管部 22 第1圧接部
23 第2管部 24 第2圧接部 25 円柱部
26 緩衝部 27 把持部 28 ストッパ
29 第1板 31 第2板 33 第3板
35 取付部 36 支持部 39 第1ヒンジ
40 スプリング 41 第2ヒンジ 44 キャスター
50 連結部 51 回動板 52 第1スライド板
53 第3スライド板