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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-26
(45)【発行日】2024-04-03
(54)【発明の名称】ヒータおよびヒータの使用方法
(51)【国際特許分類】
   H05B 3/00 20060101AFI20240327BHJP
   H05B 3/14 20060101ALI20240327BHJP
【FI】
H05B3/00 310G
H05B3/14 F
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020150624
(22)【出願日】2020-09-08
(65)【公開番号】P2022045116
(43)【公開日】2022-03-18
【審査請求日】2023-04-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000004617
【氏名又は名称】日本車輌製造株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000005119
【氏名又は名称】日立造船株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110847
【弁理士】
【氏名又は名称】松阪 正弘
(74)【代理人】
【識別番号】100136526
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 勉
(74)【代理人】
【識別番号】100136755
【弁理士】
【氏名又は名称】井田 正道
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 智広
(72)【発明者】
【氏名】今村 佑介
(72)【発明者】
【氏名】石田 大雅
(72)【発明者】
【氏名】山口 和将
(72)【発明者】
【氏名】成瀬 功
(72)【発明者】
【氏名】川上 陽子
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 徹
(72)【発明者】
【氏名】大工 博之
(72)【発明者】
【氏名】山下 智也
【審査官】川口 聖司
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-109721(JP,A)
【文献】実開昭60-19178(JP,U)
【文献】国際公開第2020/170991(WO,A1)
【文献】特開平5-54956(JP,A)
【文献】特公昭48-33232(JP,B1)
【文献】米国特許第5119215(US,A)
【文献】特開平5-133673(JP,A)
【文献】実開平6-56997(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 1/00-3/18
H05B 3/40-3/82
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒータであって、
電源に接続される一対の電極と、
前記一対の電極間を接続し、電力を供給されることにより発熱する発熱体と、
前記発熱体の温度に基づいて前記一対の電極と前記電源との接続をON/OFFすることにより、前記発熱体の温度を調節するサーモスタット部と、
を備え、
前記サーモスタット部は、
第1サーモスタットと、
前記第1サーモスタットと並列に接続され、前記第1サーモスタットの高温動作温度よりも高温動作温度が低く、かつ、前記第1サーモスタットの低温動作温度よりも低温動作温度が低い第2サーモスタットと、
を備え
前記第1サーモスタットは、故障時にはOFF状態で維持されることを特徴とするヒータ。
【請求項2】
請求項1に記載のヒータであって、
前記第1サーモスタットおよび前記第2サーモスタットを前記電源および前記一対の電極に選択的に接続する接続切替部を備えておらず、
前記第1サーモスタットが正常に作動している状態では前記第2サーモスタットは作動しないことを特徴とするヒータ。
【請求項3】
請求項1または2に記載のヒータであって、
前記発熱体は、シート状のカーボンナノチューブ成形体である接続シート部であることを特徴とするヒータ。
【請求項4】
請求項3に記載のヒータであって、
前記接続シート部を内部に収容する収容部と、
前記収容部の外面に設けられて前記接続シート部からの熱を均等化して放熱面から放熱する放熱部と、
をさらに備え、
前記第1サーモスタットおよび前記第2サーモスタットは、前記放熱部に取り付けられることを特徴とするヒータ。
【請求項5】
請求項4に記載のヒータであって、
前記収容部が、前記接続シート部の主面に沿って広がるシート状の部材であり、
前記放熱部は、前記収容部上において前記接続シート部の前記主面に平行に広がり、前記接続シート部の前記主面に垂直な方向において前記接続シート部全体と重なることを特徴とするヒータ。
【請求項6】
請求項5に記載のヒータであって、
他の一対の電極と、
前記他の一対の電極間を接続するシート状のカーボンナノチューブ成形体であり、電力を供給されることにより発熱する発熱体である他の接続シート部と、
をさらに備え、
前記他の接続シート部は、前記接続シート部の側方に隣接して配置され、
前記放熱部は、前記接続シート部の前記主面に垂直な方向において、前記接続シート部全体、および、前記他の接続シート部全体と重なることを特徴とするヒータ。
【請求項7】
請求項4ないしのいずれか1つに記載のヒータであって、
前記接続シート部の温度が所定温度以上になると前記一対の電極と前記電源との接続を遮断する過熱遮断部をさらに備え、
前記過熱遮断部は、前記放熱部に取り付けられることを特徴とするヒータ。
【請求項8】
請求項1ないしのいずれか1つに記載のヒータであって、
前記発熱体の温度が所定温度以上になると前記一対の電極と前記電源との接続を遮断する過熱遮断部をさらに備えることを特徴とするヒータ。
【請求項9】
請求項1ないしのいずれか1つに記載のヒータであって、
前記サーモスタット部は、
前記第1サーモスタットおよび前記第2サーモスタットと並列に接続され、前記第2サーモスタットの高温動作温度よりも高温動作温度が低く、かつ、前記第2サーモスタットの低温動作温度よりも低温動作温度が低い第3サーモスタットをさらに備えることを特徴とするヒータ。
【請求項10】
電源に接続される一対の電極と、前記一対の電極間を接続し、電力を供給されることにより発熱する発熱体と、前記発熱体の温度に基づいて前記一対の電極と前記電源との接続をON/OFFすることにより、前記発熱体の温度を調節するサーモスタット部と、を備え、前記サーモスタット部は、第1サーモスタットと、前記第1サーモスタットと並列に接続され、前記第1サーモスタットの高温動作温度よりも高温動作温度が低く、かつ、前記第1サーモスタットの低温動作温度よりも低温動作温度が低い第2サーモスタットと、を備えるヒータの使用方法であって、
前記第1サーモスタットは、故障時にはOFF状態で維持され、
前記第1サーモスタットが故障してOFF状態で維持されると、前記第2サーモスタットが作動し、前記第2サーモスタットにより前記発熱体の温度が設定温度範囲内に維持されることを特徴とするヒータの使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒータおよびヒータの使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、対象物を加熱するヒータには、発熱体の温度を設定温度の近傍に保つためにサーモスタットが設けられることが多い。例えば、特許文献1では、乗員が着座するシートクッションに、シートヒータと、サーモスタットとが設けられている。
【0003】
また、特許文献2のヒータユニットでは、動作温度が異なる2つの温度制御サーモスタットが、切替スイッチを介して採暖ヒータに接続されている。採暖ヒータは、切替スイッチにより、2つの温度制御サーモスタットのうち一方と選択的に接続される。これにより、ヒータユニットの温度設定を、HighとLowとの間で切り替え可能としている。特許文献3のシートヒータでも同様に、切替スイッチにより、採暖ヒータを2つのサーモスタットのうち一方と選択的に接続することにより、多段階の温度制御を可能としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-176847号公報
【文献】特開2011-198652号公報
【文献】特開2002-272556号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1のようなシートヒータでは、サーモスタットがON/OFFの切り替えの耐用回数を超過するなどして壊れた場合、シートヒータの温度調節が不能となり、シートヒータを使用することができなくなる。このため、サーモスタット以外の部分に故障がなくても、シートヒータの寿命となる。特許文献2のヒータユニットでも同様に、2つのサーモスタットのうち一方が壊れると、壊れたサーモスタットに対応する温度域での温度制御は不可能となるため、ヒータユニットが使用できなくなる。特許文献3についても同様である。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、ヒータを長寿命化することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、ヒータであって、電源に接続される一対の電極と、前記一対の電極間を接続し、電力を供給されることにより発熱する発熱体と、前記発熱体の温度に基づいて前記一対の電極と前記電源との接続をON/OFFすることにより、前記発熱体の温度を調節するサーモスタット部とを備え、前記サーモスタット部は、第1サーモスタットと、前記第1サーモスタットと並列に接続され、前記第1サーモスタットの高温動作温度よりも高温動作温度が低く、かつ、前記第1サーモスタットの低温動作温度よりも低温動作温度が低い第2サーモスタットとを備え、前記第1サーモスタットは、故障時にはOFF状態で維持される。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のヒータであって、前記第1サーモスタットおよび前記第2サーモスタットを前記電源および前記一対の電極に選択的に接続する接続切替部を備えておらず、前記第1サーモスタットが正常に作動している状態では前記第2サーモスタットは作動しない。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載のヒータであって、前記発熱体は、シート状のカーボンナノチューブ成形体である接続シート部である。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載のヒータであって、前記接続シート部を内部に収容する収容部と、前記収容部の外面に設けられて前記接続シート部からの熱を均等化して放熱面から放熱する放熱部とをさらに備え、前記第1サーモスタットおよび前記第2サーモスタットは、前記放熱部に取り付けられる。
【0011】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載のヒータであって、前記収容部が、前記接続シート部の主面に沿って広がるシート状の部材であり、前記放熱部は、前記収容部上において前記接続シート部の前記主面に平行に広がり、前記接続シート部の前記主面に垂直な方向において前記接続シート部全体と重なる。
【0013】
請求項に記載の発明は、請求項5に記載のヒータであって、他の一対の電極と、前記他の一対の電極間を接続するシート状のカーボンナノチューブ成形体であり、電力を供給されることにより発熱する発熱体である他の接続シート部とをさらに備え、前記他の接続シート部は、前記接続シート部の側方に隣接して配置され、前記放熱部は、前記接続シート部の前記主面に垂直な方向において、前記接続シート部全体、および、前記他の接続シート部全体と重なる。
【0014】
請求項に記載の発明は、請求項4ないしのいずれか1つに記載のヒータであって、前記接続シート部の温度が所定温度以上になると前記一対の電極と前記電源との接続を遮断する過熱遮断部をさらに備え、前記過熱遮断部は、前記放熱部に取り付けられる。
【0015】
請求項に記載の発明は、請求項1ないしのいずれか1つに記載のヒータであって、前記発熱体の温度が所定温度以上になると前記一対の電極と前記電源との接続を遮断する過熱遮断部をさらに備える。
【0016】
請求項に記載の発明は、請求項1ないしのいずれか1つに記載のヒータであって、前記サーモスタット部は、前記第1サーモスタットおよび前記第2サーモスタットと並列に接続され、前記第2サーモスタットの高温動作温度よりも高温動作温度が低く、かつ、前記第2サーモスタットの低温動作温度よりも低温動作温度が低い第3サーモスタットをさらに備える。
請求項10に記載の発明は、電源に接続される一対の電極と、前記一対の電極間を接続し、電力を供給されることにより発熱する発熱体と、前記発熱体の温度に基づいて前記一対の電極と前記電源との接続をON/OFFすることにより、前記発熱体の温度を調節するサーモスタット部と、を備え、前記サーモスタット部は、第1サーモスタットと、前記第1サーモスタットと並列に接続され、前記第1サーモスタットの高温動作温度よりも高温動作温度が低く、かつ、前記第1サーモスタットの低温動作温度よりも低温動作温度が低い第2サーモスタットと、を備えるヒータの使用方法であって、前記第1サーモスタットは、故障時にはOFF状態で維持され、前記第1サーモスタットが故障してOFF状態で維持されると、前記第2サーモスタットが作動し、前記第2サーモスタットにより前記発熱体の温度が設定温度範囲内に維持される。
【発明の効果】
【0017】
本発明では、ヒータを長寿命化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】一の実施の形態に係るCNTヒータの側面図である。
図2】CNTヒータの平面図である。
図3】CNTヒータの各構成の電気的な接続状態を示す概念図である。
図4】サーモスタットの断面図である。
図5】サーモスタットの断面図である。
図6】サーモスタット部の動作を示す図である。
図7】他のCNTヒータの平面図である。
図8】CNTヒータの各構成の電気的な接続状態を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は、本発明の一の実施の形態に係るヒータ1を示す側面図である。ヒータ1は、カーボンナノチューブを利用したカーボンナノチューブヒータであり、以下、「CNTヒータ1」とも呼ぶ。図2は、CNTヒータ1を示す平面図である。図3は、CNTヒータ1の各構成の電気的な接続状態を示す概念図である。図3では、CNTヒータ1が接続される電源91も併せて示す。
【0020】
CNTヒータ1は、例えば、対象物の加熱に利用される比較的薄型のシート状のヒータである。以下の説明では、図1中の左右方向を「長手方向」とも呼び、図1中の上下方向を単に「上下方向」とも呼ぶ。また、図1における紙面に垂直は方向(すなわち、長手方向および上下方向に垂直な方向)を「幅方向」とも呼ぶ。なお、上述の上下方向は、実際の重力方向と一致してもよく、一致しなくてもよい。
【0021】
CNTヒータ1は、カーボンナノチューブデバイス2(以下、「CNTデバイス2」とも呼ぶ。)と、収容部31と、放熱部34と、サーモスタット部35と、過熱遮断部36とを備える。図2に示す例では、CNTヒータ1の平面視における形状は、長手方向に長い略矩形である。CNTデバイス2、収容部31および放熱部34の平面視における形状も、長手方向に長い略矩形である。CNTヒータ1、CNTデバイス2、収容部31および放熱部34の平面視における形状は、様々に変更されてよい。例えば、当該形状は、略正方形であってもよく、幅方向に長い略矩形であってもよく、略台形であってもよい。
【0022】
CNTデバイス2は、電力を供給されることにより発熱する略シート状の発熱デバイスである。本明細書におけるシート状とは、縦横の長さに対して厚さが薄い形状を意味し、可撓性を有していても有していなくてもよい。また、本明細書におけるシート状とは、フィルム状と呼ばれる形状も含む概念である。
【0023】
CNTデバイス2は、接続シート部21と、一対の電極22とを備える。一対の電極22は、長手方向において離間しつつ対向して配置され、電源91に電気的に接続される。図2に示す例では、一対の電極22はそれぞれ、幅方向に沿って略直線状に延びる略矩形帯状の薄板状部材である。各電極22は、導電体であり、例えば銅(Cu)等により形成された金属箔である。各電極22の厚さは、例えば、20μm~300μmであり、好ましくは50μm~100μmである。電極22の形状、材料および大きさは、様々に変更されてよい。
【0024】
接続シート部21は、一方の電極22から他方の電極22まで長手方向に延び、一対の電極22間を電気的に接続する。接続シート部21は、導電性のシート部材である。図2に示す例では、接続シート部21の平面視における形状は、一対の電極22間にて広がる長手方向に長い略矩形である。接続シート部21の形状は、様々に変更されてよい。
【0025】
接続シート部21の長手方向の両端部は、一対の電極22に固定される。例えば、電極22上に配置された接続シート部21の端部を金属箔により覆い、当該金属箔と電極22とを接合する(例えば、ハンダ接合する)ことにより、接続シート部21が電極22に固定される。あるいは、電極22が、接続シート部21の端部を間に挟んで折り畳まれて押圧されることにより、接続シート部21と電極22とが固定されてもよい。または、2枚の金属箔(例えば、銅箔)により接続シート部21の端部を挟み、当該2枚の金属箔をハンダ接合することにより、電極22の形成および電極22に対する接続シート部21の固定が同時に行われてもよい。電極22に対する接続シート部21の固定は、上記以外の固定方法により行われてもよい。
【0026】
接続シート部21は、多数のカーボンナノチューブにより形成された可撓性を有するシート状のカーボンナノチューブ成形体(以下、「CNT成形体」とも呼ぶ。)である。接続シート部21は、例えば、複数のカーボンナノチューブシート(以下、「CNTシート」とも呼ぶ。)が厚さ方向(すなわち、上下方向)に積層された積層シート状の部材である。接続シート部21におけるCNTシートの積層数は、CNTデバイス2に求められる性能により様々に変化するが、例えば10層~100層である。
【0027】
接続シート部21におけるカーボンナノチューブの向き(すなわち、カーボンナノチューブが延びる方向)は、例えば、長手方向に略平行である。換言すれば、接続シート部21を構成する複数層のCNTシートにおいて、各CNTシートを構成する多数のカーボンナノチューブは、長手方向に略平行に延びる。当該多数のカーボンナノチューブは、幅方向に略平行に延びていてもよく、長手方向および幅方向に対して傾斜する方向に延びていてもよい。当該多数のカーボンナノチューブは、略同じ方向に延びていてもよく、異なる方向に延びていてもよい。
【0028】
接続シート部21の大きさは、CNTヒータ1に求められる性能により様々に変化する。接続シート部21の長手方向の長さ(以下、単に「長さ」とも呼ぶ。)は、例えば10mm~1000mmである。接続シート部21の幅方向の幅(以下、単に「幅」とも呼ぶ。)は、例えば10mm~1000mmである。接続シート部21の長さおよび幅は、例えば、200mmおよび60mmである。また、接続シート部21の長さおよび幅は、例えば、94mmおよび180mmである。好ましくは、接続シート部21は、対角線の長さが200mm以上である略矩形状である。
【0029】
CNTデバイス2では、例えば、接続シート部21を構成する多数のカーボンナノチューブが、ポリビニルアルコール(PVA)水溶液等を主成分とする接着剤により互いに接着されてもよい。当該接着剤は、エポキシ系、アクリル系またはシリコーンゴム系の接着剤であってもよい。当該接着剤は、導電性添加材を含んでいてもよい。当該導電性添加材は、例えば、銀(Ag)等の金属微粒子、グラフェン(具体的には、シート状グラフェンを粉砕した粉体)、ミルドファイバー、または、カーボンナノチューブの粉体である。当該導電性添加材の直径は、好ましくは10μm以下であり、より好ましくは1μm未満である。なお、上記接着剤は、導電性添加材を含んでいなくてもよい。
【0030】
収容部31は、CNTデバイス2の全体を内部に収容して(すなわち、被覆して)固定する外装部材である。図1および図2に示す例では、収容部31は、可撓性を有する絶縁性のシート状部材であり、接続シート部21の主面に沿って広がる。収容部31は、例えば、樹脂または弾性高分子材料により形成される。収容部31は、例えば、透明または半透明の部材である。なお、収容部31は、必ずしも可撓性を有する必要はなく、硬質部材であってもよい。
【0031】
図1および図2に示す例では、収容部31は、下部材32と、上部材33とを備える。下部材32は、CNTデバイス2を下側から支持して被覆する。上部材33は、CNTデバイス2を間に挟んで下部材32の上面上に固定されることにより、CNTデバイス2を上側から被覆する。換言すれば、CNTデバイス2は、下部材32と上部材33とにより封止される。
【0032】
下部材32および上部材33は、例えば、シリコーン樹脂により形成されたシート部材(すなわち、シリコーンシート)である。下部材32と上部材33とは、例えば、接着剤や両面テープ等で接合される。下部材32および上部材33は、例えば、樹脂フィルムの表面に接着剤層が設けられたラミネートフィルムであってもよい。あるいは、下部材32は、剥離紙上にシリコーン樹脂を膜状に塗布して硬化させることにより形成されてもよく、上部材33は、下部材32上にシリコーン樹脂を膜状に塗布して硬化させることにより形成されてもよい。
【0033】
CNTヒータ1は、さらに、図示省略の一対の端子を備える。当該一対の端子は、収容部31の内部において、一対の電極22とそれぞれ電気的に接続される。また、当該一対の端子は、一対の電極22から収容部31を貫通して収容部31の外部へと延びる。CNTデバイス2への電力の供給は、当該一対の端子を介して行われる。CNTデバイス2では、当該一対の端子および一対の電極22を介して接続シート部21に電力が供給されることにより、発熱体である接続シート部21が発熱する。
【0034】
CNTヒータ1では、収容部31は、必ずしもCNTデバイス2の全体を内部に収容する必要はなく、少なくとも接続シート部21を内部に収容していればよい。換言すれば、CNTヒータ1では、各電極22の一部または全体が、収容部31から外部に露出していてもよい。例えば、収容部31の上部材33を下部材32よりも小さくすることにより、下部材32上に配置された電極22の一部または全体が、上部材33から露出する。この場合、上述の一対の端子は省略され、収容部31から露出している一対の電極22に電線が直接的に接続されてもよい。
【0035】
放熱部34は、収容部31の外面に設けられる膜状または薄板状の部材である。図1に示す例では、放熱部34は、収容部31の上面(すなわち、上側の主面)に設けられる。放熱部34は、例えば、収容部31の上面に接着剤等で固定された金属箔または金属製のシート部材である。当該金属として、例えば、アルミニウム(Al)や銅が利用可能である。放熱部34は、例えば、収容部31の上面に蒸着等により形成された金属製の薄膜であってもよい。
【0036】
放熱部34は、収容部31上において、接続シート部21の主面に沿って当該主面に略平行に広がる。放熱部34は、接続シート部21の主面に垂直な方向において、接続シート部21の略全体と重なる。換言すれば、放熱部34は、平面視において、接続シート部21の略全体を覆う。放熱部34の上面(すなわち、収容部31と反対側の主面)は、CNTデバイス2の接続シート部21からの熱を均等化して放熱する放熱面である。
【0037】
サーモスタット部35は、放熱部34に取り付けられる。図1および図2に示す例では、サーモスタット部35は、放熱部34の上面(すなわち、放熱面)において、長手方向の一方の端部かつ幅方向の中央部に取り付けられる。サーモスタット部35は、例えば、放熱部34の長手方向および幅方向の中央部に取り付けられてもよい。サーモスタット部35の位置は、様々に変更されてよい。図3に示すように、サーモスタット部35は、一方の電極22と電源91との間に電気的に接続される。換言すれば、当該一方の電極22は、サーモスタット部35を介して電源91に電気的に接続される。
【0038】
サーモスタット部35は、接続シート部21の温度に基づいて、一対の電極22と電源91との電気的接続をON/OFFする。換言すれば、サーモスタット部35は、接続シート部21の温度に基づいて、一対の電極22と電源91との電気的接続を、「ON(すなわち、接続)」と「OFF(すなわち、非接続)」との間で切り替える。これにより、発熱体である接続シート部21の温度が調節される。
【0039】
具体的には、接続シート部21により加熱された放熱部34の温度が所定の温度(すなわち、上限温度)以上になると、サーモスタット部35により、一対の電極22と電源91との電気的接続が、ONからOFFに切り替えられる。そして、接続シート部21および放熱部34の温度が下がり、放熱部34の温度が所定の温度(すなわち、下限温度)以下になると、一対の電極22と電源91との電気的接続がOFFからONに切り替えられ、接続シート部21および放熱部34の温度が上がる。これにより、接続シート部21の温度が調節され、所定の温度範囲(以下、「設定温度範囲」とも呼ぶ。)内に維持される。
【0040】
過熱遮断部36は、サーモスタット部35と同様に、放熱部34に取り付けられる。図1および図2に示す例では、過熱遮断部36は、放熱部34の上面(すなわち、放熱面)において、長手方向の一方の端部かつ幅方向の中央部に取り付けられる。過熱遮断部36は、例えば、放熱部34の長手方向および幅方向の中央部に取り付けられてもよい。過熱遮断部36の位置は、様々に変更されてよい。図3に示すように、過熱遮断部36は、一方の電極22と電源91との間において、サーモスタット部35と直列に電気的に接続される。換言すれば、当該一方の電極22は、サーモスタット部35および過熱遮断部36を介して電源91に電気的に接続される。
【0041】
過熱遮断部36は、接続シート部21の温度が所定温度以上になると、一対の電極22と電源91との電気的接続を遮断する。図1および図2に示す例では、過熱遮断部36は、接続シート部21により加熱された放熱部34の温度が、接続シート部21の上記所定温度に対応する温度以上になると、当該電気的接続を遮断する。上記所定温度は、サーモスタット部35により維持される接続シート部21の上記設定温度範囲の上限よりも高温である。すなわち、過熱遮断部36は、何らかの異常等により、接続シート部21が、サーモスタット部35による温度調節の範囲を超えて過剰に高温になった場合に、接続シート部21への電力の供給を遮断する。過熱遮断部36としては、例えば、過剰な高温で溶断する温度ヒューズ、あるいは、過剰高温から温度が下がっても接続の自動復帰が行われないワンショット型サーモスタットまたは手動復帰型サーモスタットが利用可能である。
【0042】
図3に示すように、サーモスタット部35は、第1サーモスタット351と、第2サーモスタット352とを備える。第1サーモスタット351および第2サーモスタット352は、上記一方の電極22と電源91との間に、電気的に並列に接続される。換言すれば、当該一方の電極22は、第1サーモスタット351および第2サーモスタット352の双方を介して電源91に電気的に接続される。なお、図3に示す例では、第1サーモスタット351および第2サーモスタット352の一方と、電源91とを選択的に接続するための切替スイッチ等の接続切替部は設けられていない。また、第1サーモスタット351および第2サーモスタット352の一方と、CNTデバイス2の上記一方の電極22とを選択的に接続するための切替スイッチ等の接続切替部も設けられていない。換言すれば、図3に例示するCNTヒータ1では、第1サーモスタット351および第2サーモスタット352の一方と、電源91および一対の電極22との意図的な選択的接続は行われない。
【0043】
第1サーモスタット351および第2サーモスタット352としては、バイメタル式、電子式、液体膨張式またはサーマルリード磁力式等、様々な種類のサーモスタットが使用可能である。第1サーモスタット351の種類と第2サーモスタット352の種類とは、同じであってもよく、異なっていてもよい。本実施の形態では、第1サーモスタット351および第2サーモスタット352は、バイメタル式のサーモスタットである。また、第1サーモスタット351および第2サーモスタット352は、放熱部34(例えば、放熱部34の上面)に取り付けられる。
【0044】
図4は、第1サーモスタット351の構造の一例を示す縦断面図である。図4に示す例では、第1サーモスタット351は、ケース41と、カバー42と、バイメタル台43と、バイメタル44と、移動子45と、弾性部材46と、可動接点47と、固定接点48とを備える。以下の説明では、図4中の上下方向を単に「上下方向」とも呼ぶ。なお、当該上下方向は、実際の重力方向と一致してもよく、一致しなくてもよい。
【0045】
ケース41は、上下方向に延びる有底略円筒状の部材である。カバー42は、上下方向に延びる有蓋略円筒状の部材であり、ケース41の上端部に取り付けられてケース41の上部開口を閉鎖する。バイメタル台43、バイメタル44、移動子45、弾性部材46、可動接点47および固定接点48は、ケース41およびカバー42により形成される内部空間に収容される。
【0046】
バイメタル台43は、上下方向に略垂直に広がる略円環板状の部材であり、ケース41の内部に固定される。バイメタル台43とカバー42の天蓋部との間の空間には、バイメタル44が収容される。バイメタル44は、上下方向に垂直な方向に広がる略円板状の部材であり、熱膨張率が異なる複数の金属板を積層および接合することにより形成される。図4に示す状態では、バイメタル44は、上側に凸となるように湾曲している。移動子45は、上下方向に延びる略円柱状または略円筒状の部材であり、バイメタル台43の中央部の貫通孔に挿入されている。移動子45の上端部は、バイメタル44の中央部に接触しており、移動子45の下端部は、弾性部材46に接触している。
【0047】
弾性部材46は、バイメタル台43とケース41の底部との間に圧縮状態で収容されている。図4に示す例では、弾性部材46は、側面視において90°回転した略U字状の板バネである。弾性部材46の下部は、ケース41の底部に固定される。弾性部材46の上部は、弾性部材46が弾性変形することにより上下方向に移動可能な可動部461である。移動子45は、弾性部材46の可動部461に接触しており、弾性部材46の復元力により、バイメタル44の方向に付勢されている。
【0048】
弾性部材46の可動部461の先端部上面には、可動接点47が設けられている。可動接点47は、バイメタル台43の下面に設けられた固定接点48と上下方向に対向する。図4に示す状態では、可動接点47と固定接点48とが接触して電気的に接続されている。すなわち、第1サーモスタット351はON状態である。
【0049】
第1サーモスタット351の温度が上昇して所定の高温動作温度に達すると、バイメタル44の湾曲方向が、図5に示すように反転する。具体的には、バイメタル44は、熱膨張することにより、下側に凸となるように湾曲する。これにより、移動子45が下方へと移動し、弾性部材46の可動部461が下方へと押し下げられる。その結果、可動接点47が固定接点48から下方に離間し、第1サーモスタット351はOFF状態となる。
【0050】
図5に示す状態から、第1サーモスタット351の温度が下降して所定の低温動作温度に達すると、バイメタル44の湾曲方向が、図4に示すように反転する。具体的には、バイメタル44は、上側に凸となるように湾曲する。これにより、移動子45が上方へと移動し、弾性部材46の可動部461が上方へと移動する。その結果、可動接点47が固定接点48に接触し、第1サーモスタット351はON状態となる。なお、上述の低温動作温度は、高温動作温度よりも低い温度である。
【0051】
第2サーモスタット352は、バイメタル44の種類が異なる点を除き、第1サーモスタット351と同様の構造を有する。第2サーモスタット352の高温動作温度は、第1サーモスタット351の高温動作温度よりも低い。また、第2サーモスタット352の低温動作温度は、第1サーモスタット351の低温動作温度よりも低い。以下の説明では、第1サーモスタット351の高温動作温度および低温動作温度をそれぞれ、「第1高温動作温度TH1」および「第1低温動作温度TL1」とも呼ぶ。また、第2サーモスタット352の高温動作温度および低温動作温度をそれぞれ、「第2高温動作温度TH2」および「第2低温動作温度TL2」とも呼ぶ。
【0052】
本実施の形態では、第1高温動作温度TH1は、例えば54℃であり、第1低温動作温度TL1は、例えば29℃である。また、第2高温動作温度TH2は、例えば47℃であり、第2低温動作温度TL2は、例えば22℃である。この場合、第2高温動作温度TH2は、第1低温動作温度TL1よりも高い。
【0053】
次に、CNTヒータ1におけるサーモスタット部35の動作を、図6を参照しつつ説明する。図6中の横軸は、CNTヒータ1の使用開始からの経過時間を示し、図6中の縦軸は、CNTヒータ1のサーモスタット部35の温度を示す。また、図6中では、グラフの各位置における第1サーモスタット351および第2サーモスタット352の状態(ON/OFF)を、矩形枠内の模式図にて示す。当該模式図では、上側の丸が第1サーモスタット351の状態を示し、下側の丸が第2サーモスタット352の状態を示す。
【0054】
CNTヒータ1の使用が開始される際には、図6中の状態(a)に示すように、第1サーモスタット351および第2サーモスタット352はON状態であり、第1サーモスタット351および第2サーモスタット352を介して、CNTデバイス2に電力が供給される。
【0055】
CNTヒータ1では、CNTデバイス2の昇温に伴ってサーモスタット部35も昇温し、サーモスタット部35の温度が第2高温動作温度TH2まで上昇すると、状態(b)に示すように、第2サーモスタット352がON状態からOFF状態に切り替わる。状態(b)では、ON状態の第1サーモスタット351を介してCNTデバイス2に電力が供給されており、第2サーモスタット352を介しての電力供給は行われていない。
【0056】
CNTデバイス2がさらに昇温し、サーモスタット部35の温度が第1高温動作温度TH1まで上昇すると、状態(c)に示すように、第1サーモスタット351がON状態からOFF状態に切り替わる。状態(c)では、第1サーモスタット351および第2サーモスタット352がOFF状態であるため、CNTデバイス2への電力の供給が停止されている。したがって、CNTデバイス2の温度は低下する。
【0057】
CNTヒータ1では、CNTデバイス2の降温に伴ってサーモスタット部35も降温し、サーモスタット部35の温度が第1低温動作温度TL1まで下降すると、状態(b)に示すように、第1サーモスタット351がOFF状態からON状態に切り替わる。これにより、第1サーモスタット351を介してCNTデバイス2への電力の供給が再開され、CNTデバイス2の温度が上昇する。なお、上述のように、状態(b)では、第2サーモスタット352を介しての電力供給は行われていない。
【0058】
CNTデバイス2の昇温に伴ってサーモスタット部35の温度が第1高温動作温度TH1まで上昇すると、上記と同様に、第1サーモスタット351がON状態からOFF状態に切り替わる(状態(c))。状態(c)では、上述のように、第1サーモスタット351および第2サーモスタット352がOFF状態であるため、CNTデバイス2への電力の供給が停止され、CNTデバイス2の温度は低下する。
【0059】
CNTヒータ1では、サーモスタット部35において状態(b)および状態(c)が交互に繰り返され、CNTデバイス2の接続シート部21の温度が、上述の設定温度範囲内に維持される。
【0060】
サーモスタット部35では、第1サーモスタット351のON/OFFの切り替えが、所定の耐用回数(例えば、10万回)を超えると、第1サーモスタット351が故障する可能性がある。当該耐用回数は、通常、第1サーモスタット351の弾性部材46の強度等に基づいて設定されており、第1サーモスタット351の故障時には、弾性部材46が損傷(例えば、塑性変形や割れ)して可動部461が下方に移動し、可動接点47が固定接点48から下方に離間する。このため、第1サーモスタット351は、故障時にはOFF状態となる。CNTヒータ1では、状態(d)に示すように、第1サーモスタット351および第2サーモスタット352がOFF状態となるため、CNTデバイス2への電力の供給が停止され、CNTデバイス2の温度は低下する。なお、第2サーモスタット352は、第1サーモスタット351が故障してOFF状態となるまでは、CNTヒータ1に対する電力供給開始時(状態(a))を除き、OFF状態で維持される。
【0061】
CNTヒータ1では、CNTデバイス2の降温に伴ってサーモスタット部35も降温し、サーモスタット部35の温度が第2低温動作温度TL2まで下降すると、状態(e)に示すように、第2サーモスタット352がOFF状態からON状態に切り替わる。これにより、第2サーモスタット352を介してCNTデバイス2への電力の供給が再開され、CNTデバイス2の温度が上昇する。なお、上述のように、第1サーモスタット351は故障してOFF状態であるため、状態(e)では、第1サーモスタット351を介しての電力供給は行われていない。
【0062】
CNTデバイス2の昇温に伴ってサーモスタット部35の温度が第2高温動作温度TH2まで上昇すると、第2サーモスタット352がON状態からOFF状態に切り替わる(状態(d))。状態(d)では、上述のように、第1サーモスタット351および第2サーモスタット352がOFF状態であるため、CNTデバイス2への電力の供給が停止され、CNTデバイス2の温度は低下する。
【0063】
CNTヒータ1では、CNTデバイス2の降温に伴ってサーモスタット部35も降温し、サーモスタット部35の温度が第2低温動作温度TL2まで下降すると、上述のように、第2サーモスタット352がOFF状態からON状態に切り替わる(状態(e))。これにより、第2サーモスタット352を介してCNTデバイス2への電力の供給が再開され、CNTデバイス2の温度が上昇する。なお、上述のように、状態(e)では、故障している第1サーモスタット351を介しての電力供給は行われていない。
【0064】
CNTヒータ1では、サーモスタット部35において状態(d)および状態(e)が交互に繰り返され、CNTデバイス2の接続シート部21の温度が、上述の設定温度範囲内に維持される。サーモスタット部35によるCNTデバイス2の温度調節は、第2サーモスタット352のON/OFFの切り替えが所定の耐用回数(例えば、10万回)を超えて、第2サーモスタット352が故障するまで継続可能である。なお、上述のように、第2高温動作温度TH2は第1高温動作温度TH1よりも低く、第2低温動作温度TL2は第1低温動作温度TL1よりも低いため、接続シート部21の平均温度は、第1サーモスタット351の故障前よりも故障後の方が少し低くなる。
【0065】
以上に説明したように、ヒータ1(上記例では、CNTヒータ1)は、一対の電極22と、発熱体(上記例では、接続シート部21)と、サーモスタット部35とを備える。一対の電極22は、電源91に接続される。発熱体は、一対の電極22間を接続し、電力を供給されることにより発熱する。サーモスタット部35は、発熱体の温度に基づいて一対の電極22と電源91との接続をON/OFFすることにより、発熱体の温度を調節する。サーモスタット部35は、第1サーモスタット351と、第2サーモスタット352とを備える。第2サーモスタット352は、第1サーモスタット351と並列に接続される。第2サーモスタット352の高温動作温度(すなわち、第2高温動作温度TH2)は、第1サーモスタット351の高温動作温度(すなわち、第1高温動作温度TH1)よりも低い。また、第2サーモスタット352の低温動作温度(すなわち、第2低温動作温度TL2)は、第1サーモスタット351の低温動作温度(すなわち、第1低温動作温度TL1)よりも低い。
【0066】
これにより、上述のように、第1サーモスタット351が正常に作動している状態では、第2サーモスタット352は実質的に作動せず、第1サーモスタット351により発熱体の温度が設定温度範囲内に維持される。この状態では、第2サーモスタット352のON/OFFの切り替え回数はほとんど増加しないため、第2サーモスタット352の使用による劣化は実質的に生じない。そして、第1サーモスタット351が故障してOFF状態になると、第2サーモスタット352が作動し、第2サーモスタット352により発熱体の温度が設定温度範囲内に維持される。したがって、サーモスタット部35を長寿命化することができ、その結果、ヒータ1を長寿命化することができる。
【0067】
上述のように、ヒータ1は、第1サーモスタット351および第2サーモスタット352を電源91および一対の電極22に選択的に接続する接続切替部を備えないことが好ましい。これにより、ヒータ1の構造を簡素化することができる。また、第1サーモスタット351が正常に作動している状態において、第2サーモスタット352を誤って作動させることが防止される。その結果、サーモスタット部35およびヒータ1の上記長寿命化を好適に実現することができる。
【0068】
上記発熱体は、シート状のCNT成形体である接続シート部21であることが好ましい。これにより、カーボンナノチューブを利用したヒータであるCNTヒータ1を長寿命化することができる。
【0069】
上述のように、CNTヒータ1は、接続シート部21を内部に収容する収容部31と、収容部31の外面に設けられて接続シート部21からの熱を均等化して放熱面から放熱する放熱部34と、をさらに備えることが好ましい。そして、第1サーモスタット351および第2サーモスタット352は、放熱部34に取り付けられることが好ましい。放熱部34では、位置による温度の差が小さい(すなわち、均熱性が高い)ため、第1サーモスタット351と発熱体である接続シート部21との相対位置を変更した場合であっても、当該相対位置の差異により第1サーモスタット351の温度が変化することを抑制することができる。第2サーモスタット352についても同様である。また、第1サーモスタット351と第2サーモスタット352との位置の違いにより、第1サーモスタット351の温度と第2サーモスタット352の温度とに差異が生じることを抑制することもできる。その結果、サーモスタット部35により接続シート部21の温度を精度良く調節しつつ、第1サーモスタット351および第2サーモスタット352の配置の自由度を向上することができる。
【0070】
より好ましくは、収容部31は、接続シート部21の主面に沿って広がるシート状の部材であり、放熱部34は、収容部31上において接続シート部21の当該主面に平行に広がり、接続シート部21の主面に垂直な方向において接続シート部21全体と重なる。これにより、サーモスタット部35が放熱部34上のいずれの位置に配置される場合であっても、接続シート部21からの熱がサーモスタット部35に好適に伝わるため、サーモスタット部35による接続シート部21の温度調節の精度を向上することができる。
【0071】
さらに好ましくは、接続シート部21は、一対の電極22間にて広がる矩形状であり、接続シート部21の対角線の長さは200mm以上である。接続シート部21の対角線の長さが200mm以上の場合、接続シート部21の中央部と周縁部との温度差が比較的大きくなる。具体的には、当該温度差は、例えば10℃以上となる。上述のように、CNTヒータ1では、放熱部34を利用することによって、サーモスタット部35による接続シート部21の温度調節を高精度に行うことができる。したがって、CNTヒータ1の構造は、接続シート部21の対角線の長さが200mm以上のCNTヒータに特に適している。
【0072】
なお、出願人が試験を行った結果では、接続シート部21の長さ、幅および対角線長さが200mm、60mmおよび209mmであり、接続シート部21の中央部の温度を約92℃まで昇温させた場合、接続シート部21の中央部と周縁部との温度差は約14℃であった。また、接続シート部21の長さ、幅および対角線長さが94mm、180mmおよび203mmであり、接続シート部21の中央部の温度を約92℃まで昇温させた場合、接続シート部21の中央部と周縁部との温度差は約23℃であった。一方、接続シート部21の長さ、幅および対角線長さが62mm、145mmおよび158mmであり、接続シート部21の中央部の温度を約92℃まで昇温させた場合、接続シート部21の中央部と周縁部との温度差は約9℃であった。
【0073】
上述のように、CNTヒータ1は、接続シート部21の温度が所定温度以上になると一対の電極22と電源91との接続を遮断する過熱遮断部36をさらに備えることが好ましい。これにより、接続シート部21が、何らかの異常等によって上記設定温度範囲(すなわち、サーモスタット部35による温度調節の範囲)を超えて過剰に高温になった場合に、接続シート部21への電力の供給を遮断することができる。その結果、CNTヒータ1の過熱を防止することができる。また、過熱遮断部36は、放熱部34に取り付けられることが好ましい。これにより、過熱遮断部36と接続シート部21との相対位置を変更した場合であっても、当該相対位置の差異により過熱遮断部36の温度が変化することを抑制することができる。したがって過熱遮断部36の配置の自由度を向上することができる。
【0074】
図2に例示したCNTヒータ1では、収容部31に収容されるCNTデバイス2は1つであるが、2つ以上のCNTデバイス2が収容部31に収容されてもよい。図7に例示するCNTヒータ1aでは、上記CNTデバイス2に加えて、当該CNTデバイス2と同様の構造を有する他のCNTデバイス2aが収容部31の内部に収容される。換言すれば、CNTヒータ1aは、CNTデバイス2(すなわち、接続シート部21および一対の電極22)に加えて、他の一対の電極22aと、他の接続シート部21aとをさらに備える。接続シート部21aは、一対の電極22a間を接続するCNT成形体であり、電力が供給されることにより発熱する発熱体である。
【0075】
接続シート部21aは、接続シート部21の側方(すなわち、幅方向)に隣接して配置される。放熱部34は、接続シート部21の主面に垂直な方向において、接続シート部21全体、および、接続シート部21a全体と重なる。これにより、複数の接続シート部(すなわち、接続シート部21および接続シート部21a)からの熱を均等化して放熱することができる。また、放熱部34に取り付けられたサーモスタット部35により接続シート部21,21aの温度調節を行う場合、第1サーモスタット351および第2サーモスタット352(図3参照))の配置の自由度を向上することができる。さらに、放熱部34に取り付けられた過熱遮断部36により接続シート部21,21aへの電力の供給を遮断することにより、CNTヒータ1aの過熱を防止することができる。また、放熱部34上において、過熱遮断部36の配置の自由度を向上することもできる。
【0076】
なお、CNTヒータ1aでは、CNTデバイス2およびCNTデバイス2aとそれぞれ重なる2つの放熱部34が設けられてもよい。この場合、例えば、CNTデバイス2,2aにそれぞれ対応する2つのサーモスタット部35および2つの過熱遮断部36が設けられる。
【0077】
サーモスタット部35は、図3に示す例では、第1サーモスタット351および第2サーモスタット352の2つのサーモスタットを備えるが、3つ以上のサーモスタットを備えていてもよい。例えば、図8に示すサーモスタット部35bは、上述の第1サーモスタット351および第2サーモスタット352に加えて、第3サーモスタット353を備える。第3サーモスタット353は、第1サーモスタット351および第2サーモスタット352と共に、上記一方の電極22と電源91との間に、電気的に並列に接続される。なお、図8に示す例では、第1サーモスタット351、第2サーモスタット352および第3サーモスタット353のいずれかと、電源91および/または電極22とを選択的に接続するための切替スイッチは設けられていない。
【0078】
第3サーモスタット353は、第1サーモスタット351および第2サーモスタット352と同様に、様々な種類のサーモスタットが使用可能である。第3サーモスタット353の種類は、第1サーモスタット351および第2サーモスタット352の種類と同じであってもよく、異なっていてもよい。本実施の形態では、第3サーモスタット353は、第1サーモスタット351および第2サーモスタット352と同じくバイメタル式のサーモスタットである。第3サーモスタット353は、第1サーモスタット351および第2サーモスタット352と同様に、放熱部34(図2参照)の上面等に取り付けられる。
【0079】
第3サーモスタット353の高温動作温度は、第1サーモスタット351および第2サーモスタット352の高温動作温度よりも低い。また、第3サーモスタット353の低温動作温度は、第1サーモスタット351および第2サーモスタット352の低温動作温度よりも低い。
【0080】
これにより、上述の例と略同様に、第1サーモスタット351および第2サーモスタット352が正常な状態では、第3サーモスタット353は実質的に作動せず、第1サーモスタット351または第2サーモスタット352により発熱体の温度が設定温度範囲内に維持される。この状態では、第3サーモスタット353のON/OFFの切り替え回数はほとんど増加しないため、第3サーモスタット353の使用による劣化は実質的に生じない。そして、第1サーモスタット351および第2サーモスタット352が故障してOFF状態になると、第3サーモスタット353が作動し、第3サーモスタット353により発熱体の温度が設定温度範囲内に維持される。したがって、サーモスタット部35bをさらに長寿命化することができ、その結果、ヒータ1をさらに長寿命化することができる。
【0081】
なお、図8に例示するサーモスタット部35bでは、第1高温動作温度TH1は、例えば54℃であり、第1低温動作温度TL1は、例えば29℃である。また、第2高温動作温度TH2は、例えば47℃であり、第2低温動作温度TL2は、例えば22℃である。第3高温動作温度は、例えば40℃であり、第3低温動作温度は、例えば15℃である。この場合、第2高温動作温度TH2は、第1低温動作温度TL1よりも高い。また、第3高温動作温度も、第1低温動作温度TL1よりも高い。
【0082】
上述のCNTヒータ1,1aでは、様々な変更が可能である。
【0083】
例えば、過熱遮断部36は、必ずしも放熱部34に取り付けられる必要はなく、放熱部34または接続シート部21の温度を検知可能であれば、放熱部34以外の位置に設けられてよい。また、過熱遮断部36は省略されてもよい。
【0084】
第1サーモスタット351および第2サーモスタット352は、必ずしも放熱部34に取り付けられる必要はなく、放熱部34または接続シート部21の温度を検知可能であれば、放熱部34以外の位置に設けられてよい。サーモスタット部35,35bでは、第2高温動作温度TH2は、第1低温動作温度TL1以下であってもよい。また、サーモスタット部35bでは、第3サーモスタット353の高温動作温度は、第1サーモスタット351の低温動作温度(すなわち、第1低温動作温度TL1)以下であってもよい。第3サーモスタット353の高温動作温度は、第2サーモスタット352の低温動作温度(すなわち、第2低温動作温度TL2)よりも高くてもよく、第2低温動作温度TL2以下であってもよい。
【0085】
CNTヒータ1では、放熱部34は、必ずしも接続シート部21全体と重なる必要はなく、例えば、接続シート部21と部分的に重なっていてもよい。CNTヒータ1aでも同様に、放熱部34は、接続シート部21,21aと部分的に重なっていてもよい。
【0086】
CNTヒータ1では、収容部31の放熱部34とは反対側の主面、および/または、側面に、CNTデバイス2からの熱を反射する反射部が設けられてもよい。当該反射部は、例えば、断熱シートの内面に金属箔を設けたシート状部材である。これにより、CNTデバイス2からの熱を効率良く放熱部34に集めることができる。あるいは、CNTヒータ1では、収容部31の上下両面に放熱部34が設けられてもよい。なお、CNTヒータ1から放熱部34が省略されてもよい。また、収容部31の材質や形状は様々に変更されてよく、収容部31が省略されてもよい。CNTヒータ1aにおいても同様である。
【0087】
接続シート部21の大きさ、および、平面視における形状は様々に変更されてよい。例えば、接続シート部21の対角線の長さは、200mm未満であってもよい。また、接続シート部21の平面視における形状は、正方形、菱形、台形、三角形、五角形以上の多角形、円形または楕円形であってもよい。接続シート部21は、立体的に湾曲されてもよい。接続シート部21aについても同様である。
【0088】
CNTヒータ1が複数のCNTデバイス2を備える場合、当該複数のCNTデバイス2の一対の電極22が共通化され、一対の共通電極により複数の接続シート部21に電力が供給されてもよい。
【0089】
CNTヒータ1,1aの発熱体は、必ずしもシート状のCNT成形体である必要はなく、例えば、線状(すなわち、ワイヤ状)のCNT成形体であってもよい。また、当該発熱体は、必ずしもCNT成形体である必要はなく、カーボンナノチューブを含まない発熱体であってもよい。
【0090】
ヒータ1は、必ずしも薄型のシート状ヒータである必要はなく、比較的厚くてもよい。
【0091】
上記実施の形態および各変形例における構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わされてよい。
【符号の説明】
【0092】
1,1a CNTヒータ
21,21a 接続シート部
22,22a 電極
31 収容部
34 放熱部
35,35b サーモスタット部
36 過熱遮断部
91 電源
351 第1サーモスタット
352 第2サーモスタット
353 第3サーモスタット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8