(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-26
(45)【発行日】2024-04-03
(54)【発明の名称】誘電加熱装置
(51)【国際特許分類】
H05B 6/62 20060101AFI20240327BHJP
H05B 6/54 20060101ALI20240327BHJP
【FI】
H05B6/62
H05B6/54
(21)【出願番号】P 2020163187
(22)【出願日】2020-09-29
【審査請求日】2023-03-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147304
【氏名又は名称】井上 知哉
(74)【代理人】
【識別番号】100148493
【氏名又は名称】加藤 浩二
(72)【発明者】
【氏名】友村 佳伸
(72)【発明者】
【氏名】倉持 優理
【審査官】木村 麻乃
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-045714(JP,A)
【文献】実開昭55-001109(JP,U)
【文献】特開2017-182885(JP,A)
【文献】特開平01-255186(JP,A)
【文献】再公表特許第2009/011111(JP,A1)
【文献】特開昭57-189491(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 6/62
H05B 6/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
間隔を空けて上下方向に対向する二つの加熱電極と、
前記二つの加熱電極に高周波電力を供給する高周波電源と、
前記二つの加熱電極の間に設けられ、少なくとも二つの被加熱物を配置可能な空間である加熱室と、
前記二つの被加熱物の上下方向位置が互いに異なるように、且つ上側の前記加熱電極と上側の前記被加熱物の下面との距離と、下側の加熱電極と下側の前記被加熱物の上面との距離との距離が等しくなるように、前記加熱室内に配置された前記二つの被加熱物の少なくとも一つを支持する支持部と、
を備え
、
前記支持部は、
前記二つの被加熱物の少なくとも一つが載せられる絶縁性のトレーと、
前記加熱室内に配置された前記トレーを受けて、前記トレーを前記上下方向に位置決めする棚受けと、を含み、
前記棚受けは、前記二つの加熱電極の中間を通る水平面よりも下側のみに設けられる、
誘電加熱装置。
【請求項2】
間隔を空けて上下方向に対向する二つの加熱電極と、
前記二つの加熱電極に高周波電力を供給する高周波電源と、
前記二つの加熱電極の間に設けられ、少なくとも二つの被加熱物を配置可能な空間である加熱室と、
前記二つの被加熱物の上下方向位置が互いに異なるように、且つ上側の前記加熱電極と上側の前記被加熱物の下面との距離と、下側の加熱電極と下側の前記被加熱物の上面との距離との距離が等しくなるように、前記加熱室内に配置された前記二つの被加熱物の少なくとも一つを支持する支持部と、
を備え、
前記支持部は、
前記二つの被加熱物の少なくとも一つが載せられる絶縁性のトレーと、
前記加熱室内に配置された前記トレーを受けて、前記トレーを前記上下方向に位置決めする棚受けと、を含み、
前記棚受けは、前記二つの加熱電極の中間を通る水平面よりも上側のみに設けられる、
誘電加熱装置。
【請求項3】
前記高周波電源は、前記二つの加熱電極に印加される電圧の位相差が180°となるように、前記二つの加熱電極に電圧を印加する、
請求項1
または2に記載の誘電加熱装置。
【請求項4】
前記棚受けは、前記加熱室の側方を覆う側壁に設けられる、
請求項
1から
3の何れかに記載の誘電加熱装置。
【請求項5】
間隔を空けて上下方向に対向する二つの加熱電極と、
前記二つの加熱電極に高周波電力を供給する高周波電源と、
前記二つの加熱電極の間に設けられ、少なくとも二つの被加熱物を配置可能な空間である加熱室と、
前記二つの被加熱物の上下方向位置が互いに異なるように、且つ上側の前記加熱電極と上側の前記被加熱物の下面との距離と、下側の加熱電極と下側の前記被加熱物の上面との距離との距離が等しくなるように、前記加熱室内に配置された前記二つの被加熱物の少なくとも一つを支持する支持部と、
を備え、
前記支持部は、
前記二つの被加熱物の少なくとも一つが載せられる絶縁性のトレーと、
前記加熱室内に配置された前記トレーを昇降させて、前記トレーを前記上下方向に位置決めする昇降機構と、を含み、
前記昇降機構は、前記二つの加熱電極の中間を通る水平面よりも下側のみで、前記トレーを昇降させる
、
誘電加熱装置。
【請求項6】
間隔を空けて上下方向に対向する二つの加熱電極と、
前記二つの加熱電極に高周波電力を供給する高周波電源と、
前記二つの加熱電極の間に設けられ、少なくとも二つの被加熱物を配置可能な空間である加熱室と、
前記二つの被加熱物の上下方向位置が互いに異なるように、且つ上側の前記加熱電極と上側の前記被加熱物の下面との距離と、下側の加熱電極と下側の前記被加熱物の上面との距離との距離が等しくなるように、前記加熱室内に配置された前記二つの被加熱物の少なくとも一つを支持する支持部と、
を備え、
前記支持部は、
前記二つの被加熱物の少なくとも一つが載せられる絶縁性のトレーと、
前記加熱室内に配置された前記トレーを昇降させて、前記トレーを前記上下方向に位置決めする昇降機構と、を含み、
前記昇降機構は、前記二つの加熱電極の中間を通る水平面よりも上側のみで、前記トレーを昇降させる
、
誘電加熱装置。
【請求項7】
間隔を空けて上下方向に対向する二つの加熱電極と、
前記二つの加熱電極に高周波電力を供給する高周波電源と、
前記二つの加熱電極の間に設けられ、少なくとも二つの被加熱物を配置可能な空間である加熱室と、
前記二つの被加熱物の上下方向位置が互いに異なるように、前記加熱室内に配置された前記二つの被加熱物の少なくとも一つを支持する支持部と、
を備え、
前記支持部は、
前記二つの被加熱物の少なくとも一つが載せられる絶縁性のトレーと、
前記加熱室内に配置された前記トレーを受けて、前記トレーを前記上下方向に位置決めする棚受けと、を含み、
前記上下方向における前記二つの加熱電極間の中心位置を視覚的に示す第一指標、を備えた
、
誘電加熱装置。
【請求項8】
間隔を空けて上下方向に対向する二つの加熱電極と、
前記二つの加熱電極に高周波電力を供給する高周波電源と、
前記二つの加熱電極の間に設けられ、少なくとも二つの被加熱物を配置可能な空間である加熱室と、
前記二つの被加熱物の上下方向位置が互いに異なるように、前記加熱室内に配置された前記二つの被加熱物の少なくとも一つを支持する支持部と、
を備え、
前記支持部は、
前記二つの被加熱物の少なくとも一つが載せられる絶縁性のトレーと、
前記加熱室内に配置された前記トレーを受けて、前記トレーを前記上下方向に位置決めする棚受けと、を含み、
前記二つの加熱電極の各々から等距離にある位置の組合せを視覚的に示す第二指標、を備えた
、
誘電加熱装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誘電加熱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
二つの対向電極の少なくとも一つに電圧を印加して、加熱室内に配置された被加熱物を加熱する誘電加熱装置が知られている。このような誘電加熱装置において、対向電極を含む負荷側回路として正負時における電界分布が等しい平衡回路を用いる技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。これによれば、二つの対向電極にそれぞれ位相差180°の電圧を印加することで、被加熱物内の電界強度の差を抑制して、被加熱物の全体を均一に加熱可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
二つの対向電極(例えば上側電極及び下側電極)の位置が固定された誘電加熱装置において、加熱時間及び作業工数の低減を目的として、例えば二つの被加熱物を上下に重ねて加熱室内に配置する場合がある。この場合、下側の被加熱物と下側電極との距離が、上側の被加熱物と上側電極との距離よりも小さくなりやすい。その結果、上述した平衡回路を用いた加熱制御を行っても、上側の被加熱物内の電界強度が下側の被加熱物内の電界強度よりも相対的に弱くなりやすい。このような電界強度の差が発生すると、下側の被加熱物が解凍完了しても、上側の被加熱物が解凍完了できていないために、上側の被加熱物のみを再加熱する手間を生じるおそれがある。
【0005】
本開示の一態様は、複数の被加熱物を加熱室内に配置する場合でも、複数の被加熱物を均等に加熱可能な誘電加熱装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様の誘電加熱装置は、間隔を空けて対向する二つの加熱電極と、前記二つの加熱電極に高周波電力を供給する高周波電源と、前記二つの加熱電極の間に設けられ、複数の被加熱物を配置可能な空間である加熱室と、前記複数の被加熱物の上下方向位置が互いに異なるように、且つ前記二つの加熱電極を両端面とする仮想的な直方体の中心点から、前記複数の被加熱物の各々までの距離が等しくなるように、前記加熱室内に配置された前記複数の被加熱物の少なくとも一つを支持する支持部と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図3A】上側電極及び下側電極に印加される電極電圧の変化を示すグラフである。
【
図3B】上側電極と下側電極との間に発生する電極間電圧の変化を示すグラフである。
【
図4A】第一実施形態において、被加熱物が配置された加熱庫を示す図である。
【
図4B】第一実施形態において、被加熱物が配置された加熱庫を示す図である。
【
図5】第二実施形態において、被加熱物が配置された加熱庫を示す図である。
【
図6A】第三実施形態において、被加熱物が配置された加熱庫を示す図である。
【
図6B】第三実施形態において、被加熱物が配置された加熱庫を示す図である。
【
図7A】第四実施形態において、被加熱物が配置されていない加熱庫を示す図である。
【
図7B】第四実施形態において、被加熱物が配置された加熱庫を示す図である。
【
図7C】第四実施形態において、被加熱物が配置された加熱庫を示す図である。
【
図8A】第五実施形態において、被加熱物が配置された加熱庫を示す図である。
【
図8B】第五実施形態において、被加熱物が配置された加熱庫を示す図である。
【
図9A】第六実施形態において、被加熱物が配置された加熱庫を示す図である。
【
図9B】第六実施形態において、被加熱物が配置された加熱庫を示す図である。
【
図10A】第七実施形態において、被加熱物が配置された加熱庫を示す図である。
【
図10B】第七実施形態において、被加熱物が配置された加熱庫を示す図である。
【
図11】変形例に係る誘電加熱装置の装置構成を示す図である。
【
図12A】変形例に係る誘電加熱装置の全体構成を示す図である。
【
図12B】変形例に係る整合回路の構成を示す図である。
【
図13】他の変形例に係る誘電加熱装置の全体構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、図面については、同一又は同等の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0009】
<第一実施形態>
第一実施形態に係る誘電加熱装置100を説明する。
図1は、誘電加熱装置100の全体構成を示す図である。
図2は、整合回路104A,104Bの構成を示す図である。誘電加熱装置100は、食品などの被加熱物に高周波電界を印加して、被加熱物の加熱処理、解凍処理などを行う。
【0010】
図1に示すように、誘電加熱装置100は、加熱庫101、駆動回路102、制御部105を含む。加熱庫101は、金属製の箱状であり、被加熱物を収容可能な内部空間を有する。加熱庫101の内部空間は、前方に開口しており、図示外の開閉扉によって開閉可能である。
図1は、前方から視た加熱庫101を模式的に示す。
図1の上側、下側、左側、右側、紙面手前側、及び紙面奥側は、誘電加熱装置100(即ち加熱庫101)の上側、下側、左側、右側、前側、及び後側に夫々対応する。金属製の加熱庫101は、接地線109等によって接地されている。
【0011】
加熱庫101の内部空間には、二つの加熱電極110、加熱室113、支持部114等が設けられている。二つの加熱電極110は、互いに間隔を空けて対向する。一例として、二つの加熱電極110は、上下方向に対向する上側電極111及び下側電極112である。上側電極111及び下側電極112は、前後左右方向に延びる四角形の平板状であり、互いに平行になるように配置されている。
【0012】
加熱室113は、二つの加熱電極110(上側電極111及び下側電極112)に挟まれた、複数の被加熱物を配置可能な空間である。支持部114は、加熱室113に配置された複数の被加熱物の少なくとも一つを支持する部材であり、詳細は後述する。
【0013】
駆動回路102は、高周波電源103、及び整合回路104A,104Bを含む。高周波電源103は、二つの加熱電極110に供給する高周波電力を生成する電源回路である。高周波電源103は、発振器131、移相器132、可変アッテネータ133A,133B、アンプ134A,134Bを含む。発振器131は、先述の接地線109に接続されている。
【0014】
発振器131は、HFからVHFまでの帯域の周波数の電圧信号を発信する。発振器131が発信した電圧信号は、発振器131に対して並列に接続された可変アッテネータ133A,133Bに夫々入力される。ただし、可変アッテネータ133Bに入力される電圧信号は、可変アッテネータ133Bと高周波電源103との間に接続された移相器132によって180°位相が変換される。従って、可変アッテネータ133A,133Bに夫々入力される電圧信号の移相差は180°となる。
【0015】
可変アッテネータ133Aによって適切なレベルに減衰された電圧信号は、アンプ134Aによって所望の電力まで増幅されて、整合回路104Aに送信される。可変アッテネータ133Bによって適切なレベルに減衰された電圧信号は、アンプ134Bによって所望の電力まで増幅されて、整合回路104Bに送信される。これにより、整合回路104A,104Bに夫々送信される電圧信号は、互いに同程度の電力に増幅されており、且つ互いの位相差が180°となる。
【0016】
図2に示すように、整合回路104Aは、入力側がアンプ134Aに接続され、出力側が上側電極111に接続されている。整合回路104Aは、可変コイル201及び可変コンデンサ202,203を含む。整合回路104Aでは、可変コイル201及び可変コンデンサ202が高周波電源103の出力と直列に接続され、可変コンデンサ203が高周波電源103の出力と並列に接続されている。可変コンデンサ203は、先述の接地線109に接続されている。
【0017】
整合回路104Aは、可変コイル201及び可変コンデンサ202,203の値を調整することにより、整合回路104Aの入力インピーダンスとアンプ134Aの出力インピーダンスとを一致させる。これにより、高周波電源103(詳細にはアンプ134A)から視た上側電極111側のインピーダンスを一定にして、上側電極111側に効率的に電圧信号を供給できる。
【0018】
整合回路104Bは、入力側がアンプ134Bに接続され、出力側が下側電極112に接続されている。整合回路104Bは、整合回路104Aと同様の構成によって、整合回路104Bの入力インピーダンスとアンプ134Bの出力インピーダンスとを一致させる。これにより、高周波電源103(詳細にはアンプ134B)から視た下側電極112側のインピーダンスを一定にして、下側電極112側に効率的に電圧信号を供給できる。
【0019】
駆動回路102では、整合回路104A,104Bによってインピーダンス整合が施された電圧が、上側電極111と下側電極112とで形成されるコンデンサへ供給される。これにより、上側電極111と下側電極112との間に高周波電界が発生し、上側電極111と下側電極112との間に配置された被加熱物が誘電加熱される。
【0020】
図3Aは、上側電極111及び下側電極112に印加される電極電圧の変化を示すグラフである。
図3Aの例では、高周波電源103が上側電極111及び下側電極112に印加する電圧の変化は、一周期において「-0.5」~「+0.5」の振幅で変位する正弦波を示す。ただし、上側電極111の印加電圧と、下側電極112の印加電圧とは、互いの移相が180°異なる。
【0021】
図3Bは、上側電極111と下側電極112との間に発生する電極間電圧の変化を示すグラフである。電極間電圧は、上側電極111の印加電圧と下側電極112の印加電圧との差である。
図3Bは、
図3Aに示す上側電極111及び下側電極112の電極間電圧の変化を示す。この電極間電圧の変化は、その振幅が上側電極111及び下側電極112の印加電圧の二倍となるため、一周期において「-1.0」~「+1.0」の振幅で変位する正弦波を示す。
【0022】
このように誘電加熱装置100では、高周波電源103は、二つの加熱電極110に印加される電圧の位相差が180°となるように、二つの加熱電極110に電圧を印加する。このような平衡回路方式の加熱制御によれば、二つの加熱電極110の一方に電圧印加する不平衡回路方式の加熱制御と比べて、一つの加熱電極110に印加される最大電圧を抑止しつつ、より大きな電極間電圧を発生させることができる。
【0023】
第一実施形態に係る支持部114の詳細を説明する。
図1に示すように、支持部114は、トレー141と棚受け142とを含む。トレー141は、複数の被加熱物の少なくとも一つが載せられる絶縁性の板状部材である。棚受け142は、加熱室113内に配置されたトレー141を受けて、トレー141を上下方向に位置決めする。
【0024】
例えば、棚受け142は、加熱室113の側方を覆う側壁に設けられる。具体的には、棚受け142は、加熱室113の左右両側を覆う加熱庫101内の右壁及び左壁に設けられた、複数の受部を有する。複数の受部の各々は、左右一対に設けられた、トレー141の両端部を下方から支持可能な部品や突起などである。複数の受部は、等間隔で上下方向に並んで配置され、互いに異なる上下方向位置でトレー141を支持可能である。
【0025】
棚受け142では、トレー141が複数の受部の何れに載置されるかによって、トレー141の上下方向位置が変わる。つまり棚受け142は、トレー141の上下方向位置(即ち、トレー141上にある被加熱物の上下方向位置)を、複数の受部によって段階的に変更可能である。なお、棚受け142は、トレー141を支持する一つの受部が設けられ、この受部の上下方向位置を人間が手動で変更可能に構成されてもよい。
【0026】
第一実施形態では、被加熱物がトレー141上のみに配置されることを想定して、棚受け142が直方体Rの中心点Oを通る水平面V1よりも下側のみに設けられている。したがって、棚受け142で支持されるトレー141は、複数の受部の何れで支持されていても、水平面V1の下方に配置される。
【0027】
支持部114は、複数の被加熱物の上下方向位置が互いに異なるように、且つ二つの加熱電極110を両端面とする仮想的な直方体Rの中心点Oから、複数の被加熱物の各々までの距離が等しくなるように、加熱室113内に配置された複数の被加熱物の少なくとも一つを支持する。以下、具体的に説明する。
【0028】
図4A及び
図4Bは、第一実施形態において、被加熱物が配置された加熱庫101を示す図である。例えば、誘電加熱装置100で二つの被加熱物T1,T2を同時に加熱する場合、ユーザは被加熱物T1,T2を上下に重ねて加熱室113内に配置する。一例として、被加熱物T1,T2は、互いに大きさ、形状、材質、内容物等がほぼ同じであるものとする。
【0029】
図4Aに示す例では、被加熱物T1,T2が、トレー141を用いずに下側電極112上に重ねて配置されている。しかしながら、この例では、中心点Oから被加熱物T1,T2の各々までの距離が異なる。詳細には、中心点Oから視て、上側の被加熱物T1のほうが下側の被加熱物T2よりも近い。上側電極111と上側の被加熱物T1との距離L1は、下側電極112と下側の被加熱物T2との距離L2よりも大きい。
【0030】
誘電加熱装置100では、被加熱物が中心点Oに近づくほど、被加熱物に作用する電界強度が小さくなりやすい。換言すると、被加熱物が加熱電極110から離れるほど、被加熱物に作用する電界強度が小さくなりやすい。従って、
図4Aに示す例で加熱制御が実行されると、被加熱物T1に作用する電界強度が被加熱物T2に作用する電界強度よりも小さくなり、被加熱物T1,T2を均等に加熱できないおそれがある。
【0031】
図4Bに示す例では、被加熱物T1,T2が、棚受け142で支持されたトレー141上に重ねて配置されている。棚受け142が有する複数の受部のうち、トレー141を相対的に高い位置で支持する上端の受部によって、トレー141が支持されている。トレー141上で重なる被加熱物T1,T2の境界は、中心点Oよりも上側に配置されている。
【0032】
この例でも、中心点Oから被加熱物T1,T2の各々までの距離が異なる。詳細には、中心点Oから視て、上側の被加熱物T1のほうが下側の被加熱物T2よりも遠い。距離L1は距離L2よりも小さい。従って、加熱制御が実行されると、被加熱物T1に作用する電界強度が被加熱物T2に作用する電界強度よりも大きくなり、被加熱物T1,T2を均等に加熱できないおそれがある。
【0033】
図1に示す例では、被加熱物T1,T2が、棚受け142で支持されたトレー141上に重ねて配置されている。棚受け142が有する複数の受部のうち、トレー141を標準的な高さで支持する中段の受部によって、トレー141が支持されている。中心点Oは、トレー141上で重なる被加熱物T1,T2の境界付近にある。この例では、被加熱物T1,T2の上下方向位置が互いに異なり、且つ中心点Oから被加熱物T1,T2の各々までの距離が等しい。即ち、距離L1と距離L2とが等しい。従って、加熱制御が実行されると、被加熱物T1に作用する電界強度が被加熱物T2に作用する電界強度とが等しくなり、被加熱物T1,T2を均等に加熱できる。
【0034】
第一実施形態によれば、例えば被加熱物T1,T2の厚みに応じてトレー141を支持する棚受け142の受部を切り替えることで、中心点Oが被加熱物T1,T2の中間に配置されるように、トレー141上にある被加熱物T1,T2の上下方向位置を調整できる。これにより、加熱室113内に配置された被加熱物T1,T2を均等に加熱できる。
【0035】
<第二実施形態>
第二実施形態に係る誘電加熱装置100を説明する。以下の各実施形態では、第一実施形態と実質的に共通の機能を有する構成を共通の符号で参照して説明を省略し、第一実施形態と異なる点のみを説明する。
図5は、第二実施形態において、被加熱物が配置された加熱庫101を示す図である。
【0036】
第二実施形態に係る支持部114は、第一実施形態と同様の構造であるが、以下の点が異なる。
図5に示すように、第二実施形態では、複数の被加熱物がトレー141上と下側電極112上とに分散して配置されることを想定して、棚受け142が直方体Rの中心点Oを通る水平面V1よりも上側のみに設けられている。したがって、棚受け142で支持されるトレー141は、複数の受部の何れで支持されていても、水平面V1の上方に配置される。
【0037】
図5に示す例では、上側の被加熱物T1がトレー141上に配置され、下側の被加熱物T2が下側電極112上に配置されている。棚受け142が有する複数の受部のうち、トレー141を標準的な高さで支持する中段の受部によって、トレー141が支持されている。中心点Oは、被加熱物T1と被加熱物T2との中間位置付近にある。この例では、被加熱物T1,T2の上下方向位置が互いに異なり、且つ中心点Oから被加熱物T1,T2の各々までの距離が等しいため、距離L1と距離L2とが等しい。加熱制御が実行されると、第一実施形態と同様に、被加熱物T1,T2を均等に加熱できる。
【0038】
第二実施形態によれば、例えば被加熱物T1,T2の厚みに応じてトレー141を支持する棚受け142の受部を切り替えることで、中心点Oが被加熱物T1,T2の中間に配置されるように、トレー141上にある上側の被加熱物T1の上下方向位置を調整できる。これにより、加熱室113内に配置された被加熱物T1,T2を均等に加熱できる。
【0039】
<第三実施形態>
第三実施形態に係る誘電加熱装置100を説明する。
図6A及び
図6Bは、第三実施形態において、被加熱物が配置された加熱庫101を示す図である。
図6A及び
図6Bに示すように、第三実施形態に係る誘電加熱装置100は、第一実施形態と同様の構造であるが、第一指標600を備える点で異なる。第一指標600は、上下方向における二つの加熱電極110間の中心位置を視覚的に示す。
【0040】
先述したように、被加熱物T1,T2を均等に加熱するためには、中心点Oが被加熱物T1,T2の境界付近に配置されるように、トレー141の上下方向位置を調整することが好ましい。しかしながら、中心点Oは仮想的な点であるため、人間は視覚的に認識できない。第一指標600は、ユーザが中心点Oを認識しなくても、トレー141を最適な位置に配置可能にする。
【0041】
例えば第一指標600は、加熱庫101内の壁面のうち、前方の開口とは反対側にある後壁に設けられる。第一指標600は、加熱室113の後方において、中心点Oと同じ上下方向位置で左右方向に延びるマーカである。第一指標600は、加熱庫101内の奥壁に印刷又は溶着されてもよいし、奥壁から前方に突出する構造体でもよい。
【0042】
ユーザが加熱庫101内を正面側から視た場合、第一指標600は中心点Oと重複した位置に表れる。
図6A及び
図6Bに示すように、正面視でトレー141上にある被加熱物T1,T2の境界付近に第一指標600が配置されるように、棚受け142が支持するトレー141の上下方向位置が調整されればよい。
【0043】
図6Bの例は、
図6Aの例と比べて、被加熱物T1,T2の厚みが大きいため、棚受け142がトレー141を支持する位置が低い。しかしながら、
図6A及び
図6Bは何れも、被加熱物T1,T2の境界付近に第一指標600が配置されているため、被加熱物T1,T2を均等に加熱できる。以上説明したように、ユーザは第一指標600を参照してトレー141の上下方向位置を調整することで、被加熱物T1,T2を均等に加熱可能な位置へ容易且つ正確に配置できる。
【0044】
<第四実施形態>
第四実施形態に係る誘電加熱装置100を説明する。
図7Aは、第四実施形態において、被加熱物が加熱室113内に配置されていない加熱庫101を示す図である。
図7B及び
図7Cは、第四実施形態において、被加熱物が配置された加熱庫101を示す図である。
図7Aに示すように、第四実施形態に係る誘電加熱装置100は、第二実施形態と同様の構造であるが、第二指標700を備える点で異なる。第二指標700は、二つの加熱電極110の各々から等距離にある位置の組合せを視覚的に示す。
【0045】
先述したように、被加熱物T1,T2を均等に加熱するためには、距離L1と距離L2とが等しくなるように、トレー141の上下方向位置を調整することが好ましい。しかしながら、人間は距離L1,L2を視覚的に認識できない。第二指標700は、ユーザが距離L1,L2を認識しなくても、トレー141を最適な位置に配置可能にする。
【0046】
例えば第二指標700は、第一指標600と同様に、加熱庫101内の後壁に設けられる。第二指標700は、距離L1,L2が互いに等しくなる被加熱物T1,T2の上下方向位置を示す複数組のマーカである。複数組のマーカは、夫々異なる厚みの被加熱物T1,T2に対応している。
【0047】
第二指標700において、複数組のマーカの各々(即ち一組のマーカ)は、上側の被加熱物T1の下端位置を示す上マーカと、下側の被加熱物T2の上端位置を示す下マーカとからなる。一組のマーカ(上マーカ及び下マーカ)は、同じ組をなすことを視覚的に認識し易いように、互いに同じ表示態様(太さ、長さ等)で表される。複数組のマーカは、夫々異なる組をなすことが視覚的に区別できるように、互いに異なる表示態様(太さ、長さ等)で表される。
【0048】
図7Bに示す例では、ユーザが被加熱物T2を下側電極112上に配置すると、正面視で被加熱物T2の上端は、第二指標700のうちで下から二番の下マーカの近傍に位置する。ユーザは、この下マーカと同じ表示態様である上マーカ(即ち、上から二番目の上マーカ)を特定し、被加熱物T1の下端がこの上マーカの近傍に位置するように、棚受け142が支持するトレー141の上下方向位置を調整する。
【0049】
図7Cに示す例では、
図7Bと比べて、被加熱物T1,T2の厚みが大きい。下側電極112上に配置された被加熱物T2の上端は、正面視で下から三番の下マーカの近傍に位置する。被加熱物T1の下端が、この下マーカと同じ表示態様である上マーカ(即ち、上から三番目の上マーカ)の近傍に位置するように、ユーザは棚受け142が支持するトレー141の上下方向位置を調整する。
【0050】
図7B及び
図7Cは何れも、距離L1と距離L2と等しいため、被加熱物T1,T2を均等に加熱できる。以上説明したように、ユーザは第二指標700を参照してトレー141の上下方向位置を調整することで、被加熱物T1,T2を均等に加熱可能な位置へ容易且つ正確に配置できる。
【0051】
<第五実施形態>
第五実施形態に係る誘電加熱装置100を説明する。
図8A及び
図8Bは、第五実施形態において、被加熱物が配置された加熱庫101を示す図である。
図8Aに示すように、第五実施形態に係る誘電加熱装置100は、支持部114が可動式である点で、第一実施形態と異なる。
【0052】
図8Aに示すように、第五実施形態に係る支持部114は、絶縁性のトレー141と昇降機構143とを含む。昇降機構143は、加熱室113内に配置されたトレー141を昇降させて、トレー141を上下方向に位置決めする。例えば、昇降機構143は、加熱庫101内の底壁から上方に延びる左右一対の可動脚であり、その上端に設置されたトレー141を支持する。
【0053】
昇降機構143は、図示外のモータから駆動力を受けて、トレー141を昇降可能である。ユーザは、誘電加熱装置100に設けられた昇降ボタンを操作することで、モータを駆動して昇降機構143を任意の高さに昇降できる。本実施形態では、昇降機構143は、仮想的な直方体Rの中心点Oを通る水平面V1よりも下側のみで、トレー141を昇降させる。
【0054】
ユーザは、被加熱物T1,T2を上下に重ねてトレー141上に配置し、昇降ボタンを操作して昇降機構143を駆動させる。このときユーザは、中心点Oが被加熱物T1,T2の境界付近に配置されるように、トレー141を上下方向に位置決めする。これにより、加熱室113内に配置された被加熱物T1,T2を均等に加熱できる。本実施形態において、先述した第一指標600が設けられてもよい。この場合、第三実施形態と同様に、被加熱物T1,T2が均等に加熱可能な位置へ配置されるように、昇降するトレー141を容易且つ正確に位置決めできる。
【0055】
なお、
図8Bに示すように、一つの被加熱物Tが加熱室113内で加熱される場合、昇降機構143はトレー141をその可動範囲の下端(例えば、下側電極112の上面)まで移動させてもよい。これにより、例えば被加熱物Tの厚みが大きい場合でも、被加熱物Tをトレー141と干渉することなく加熱室113内に配置して加熱できる。また本実施形態において、昇降機構143は例えばユーザの指示に応じて、トレー141を水平面V1よりも上側に移動させてもよい。
【0056】
<第六実施形態>
第六実施形態に係る誘電加熱装置100を説明する。
図9A及び
図9Bは、第六実施形態において、被加熱物が配置された加熱庫101を示す図である。
図9Aに示すように、第六実施形態に係る誘電加熱装置100は、支持部114が可動式である点で、第二実施形態と異なる。
【0057】
図9Aに示すように、第六実施形態に係る支持部114は、第五実施形態と同様に、トレー141と昇降機構143とを含む。例えば、昇降機構143は、加熱庫101内の天壁から下方に延びる左右一対の可動腕であり、その下端に設置されたトレー141を支持する。本実施形態では、昇降機構143は、仮想的な直方体Rの中心点Oを通る水平面V1よりも上側のみで、トレー141を昇降させる。
【0058】
ユーザは、被加熱物T1をトレー141上に配置し、且つ被加熱物T1を下側電極112上に配置して、昇降ボタンを操作して昇降機構143を駆動させる。このときユーザは、距離L1と距離L2とが等しくなるように、トレー141を上下方向に位置決めする。これにより、加熱室113内に配置された被加熱物T1,T2を均等に加熱できる。本実施形態において、先述した第二指標700が設けられてもよい。この場合、第四実施形態と同様に、被加熱物T1,T2が均等に加熱可能な位置へ配置されるように、昇降するトレー141を容易且つ正確に位置決めできる。
【0059】
なお、
図9Bに示すように、一つの被加熱物Tが加熱室113内で加熱される場合、昇降機構143はトレー141をその可動範囲の上端(例えば、上側電極111の下面)まで移動させてもよい。これにより、例えば被加熱物Tの厚みが大きい場合でも、被加熱物Tをトレー141と干渉することなく加熱室113内に配置して加熱できる。また本実施形態において、昇降機構143は例えばユーザの指示に応じて、トレー141を水平面V1よりも下側に移動させてもよい。
【0060】
<第七実施形態>
第七実施形態に係る誘電加熱装置100を説明する。
図10A及び
図10Bは、第七実施形態において、被加熱物が配置された加熱庫101を示す図である。
図10A及び
図10Bに示すように、第七実施形態に係る誘電加熱装置100は、二つの加熱電極110が左右方向に対向する左側電極1011及び右側電極1012である点で、第一~第六実施形態と異なる。
【0061】
本実施形態では、加熱庫101は、その内部に設けられた加熱室113を取り囲む内壁1000が設けられる。内壁1000は、非絶縁性の樹脂材料からなる。内壁1000は加熱室113の前方を覆っていないため、加熱室113は前方に開口している。左側電極1011は、内壁1000を挟んで加熱室113の左側に配置されている。右側電極1012は、内壁1000を挟んで加熱室113の右側に配置されている。左側電極1011及び右側電極1012は、前後上下方向に延びる四角形の平板状であり、互いに平行になるように配置されている。
【0062】
図10Aに示す例では、支持部114は第一実施形態と同様であるが、棚受け142は内壁1000に設けられる。棚受け142は、水平面V1よりも下側のみに設けられ、被加熱物T1,T2が配置されたトレー141を支持する。第一実施形態と同様に、中心点Oが被加熱物T1,T2の中間に配置されるように、トレー141の上下方向位置を調整できる。
【0063】
図10Bに示す例では、支持部114は第二実施形態と同様であるが、棚受け142は内壁1000に設けられる。棚受け142は、水平面V1よりも上側のみに設けられ、上側の被加熱物T1が配置されたトレー141を支持する。下側の被加熱物T1は、加熱室113の底面に配置される。第二実施形態と同様に、中心点Oが被加熱物T1,T2の中間に配置されるように、トレー141の上下方向位置を調整できる。
【0064】
図10A及び
図10Bに示す例では、被加熱物T1,T2の上下方向位置が互いに異なり、且つ中心点Oから被加熱物T1,T2の各々までの距離が等しいため、距離L1と距離L2とが等しい。これにより、加熱制御が実行されると、被加熱物T1,T2を均等に加熱できる。
【0065】
本開示は、上記実施形態に限定されるものではなく、上記実施形態で示した構成と実質的に同一の構成、同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成で置き換えてもよい。
【0066】
(1)上記実施形態では、支持部114が、被加熱物T1,T2の上下方向位置が互いに異なり、且つ中心点Oから複数の被加熱物の各々までの距離が等しくなるように、複数の被加熱物の少なくとも一つを支持する場合を例示した。さらに支持部114は、仮想的な直方体Rの中心点Oを通る直線(又は平面)から複数の被加熱物の各々までの距離が等しくなるように、加熱室113内に配置された複数の被加熱物の少なくとも一つを支持してもよい。
【0067】
第一~第七実施形態は、支持部114は上記の条件を満たすように、複数の被加熱物の少なくとも一つを支持可能であることを開示する。
図1に示す例では、中心点Oを通る水平線(及び水平面V1)から被加熱物T1,T2の各々までの距離が等しくなるように、支持部114は被加熱物T1,T2の両方を支持している。
図5に示す例では、中心点Oを通る水平線(及び水平面V1)から被加熱物T1,T2の各々までの距離が等しくなるように、支持部114は上側の被加熱物T1を支持している。
【0068】
なお、仮想的な直方体Rの中心点Oを通る直線は、水平線に限定されず、水平線と交差するように傾斜する直線でも良い。仮想的な直方体Rの中心点Oを通る平面は、水平面V1に限定されず、水平面V1と交差するように傾斜する平面でも良い。
【0069】
(2)上記実施形態で説明したように、トレー141の最適な上下方向位置は、被加熱物T1,T2の厚みに応じて変化する。従って誘電加熱装置100は、以下に例示するように、トレー141の最適な位置をユーザに報知してもよい。
【0070】
図11は、変形例に係る誘電加熱装置100の装置構成を示す図である。
図11に示すように、変形例に係る誘電加熱装置100は、ディスプレイ1101とバーコードリーダ1102とを有する。被加熱物Tには、被加熱物Tに関する情報を示すバーコード1103が設けられている。
【0071】
例えば、バーコード1103が被加熱物Tの識別情報を示す場合、誘電加熱装置100の制御部105は、バーコードリーダ1102がバーコード1103から読み取った識別情報に基づいて、トレー141の最適な位置を特定する。一例として、誘電加熱装置100の制御部は、読み取った識別情報に対応するトレー141の最適な位置を、図示外のサーバに問い合わせて特定すればよい。
【0072】
バーコード1103が被加熱物Tの厚み情報を示す場合、誘電加熱装置100の制御部105は、バーコードリーダ1102がバーコード1103から読み取った厚み情報に基づいて、トレー141の最適な位置を特定する。一例として、誘電加熱装置100の制御部は、読み取った厚み情報に対応するトレー141の最適な位置を、予め誘電加熱装置100に記憶されているテーブルを参照して特定すればよい。
【0073】
制御部105は、特定したトレー141の最適な位置を、ディスプレイ1101に表示する。本変形例の誘電加熱装置100は、第一又は第二実施形態と同様の構成である。
図11に示す例では、トレー141の最適な位置として、棚受け142が有する3つの受部(下段、中段、上段)の一つである「中段」が、ディスプレイ1101に表示されている。ユーザはディスプレイ1101を参照して、棚受け142の中段にトレー141を設置することで、二つの被加熱物Tを均等に加熱可能な位置に配置できる。
【0074】
誘電加熱装置100が第三又は第四実施形態と同様の構成である場合、トレー141の最適な位置を示す数値が、ディスプレイ1101に表示されてもよい。ユーザは昇降ボタンを操作して昇降機構143を駆動し、ディスプレイ1101に表示された数値に対応する位置まで、トレー141を昇降させる。この場合も、二つの被加熱物Tを均等に加熱可能な位置に配置できる。
【0075】
なお、制御部105は、被加熱物Tの数量に関係なく、バーコード1103から読み取られた場合に、トレー141の最適な位置を表示してもよい。これに代えて、制御部105は、二つの被加熱物Tが同時加熱される場合にのみ、トレー141の最適な位置を表示してもよい。
【0076】
例えば、ユーザから二つの被加熱物Tの同時加熱が指示された場合に、トレー141の最適な位置を表示してもよい。あるいは、制御部105は、一つの被加熱物Tの加熱時における整合回路104A,104Bの整合状態と、二つの被加熱物Tの同時加熱時における整合回路104A,104Bの整合状態とを予め記憶しておけば、加熱制御中の整合状態に基づいて被加熱物Tの数量を特定できる。制御部105は、二つの被加熱物Tが同時加熱されていると判断した場合に、トレー141の最適な位置を表示してもよい。
【0077】
(3)上記実施形態では、ユーザが手動で棚受け142がトレー141を支持する位置を調整しているが、誘電加熱装置100がトレー141の上下方向位置を調整してもよい。例えば、第三又は第四実施形態の誘電加熱装置100において、ユーザがトレー141の上下方向位置を指定した場合、制御部105が昇降機構143を駆動して、トレー141を指定された位置まで昇降させればよい。
【0078】
先述したように制御部105は、バーコードリーダ1102がバーコード1103から読み取った情報に基づいて、トレー141の最適な位置を特定できる。この場合、制御部105が昇降機構143を駆動し、トレー141を特定した位置まで昇降させればよい。
【0079】
(4)駆動回路102の構成は、上記実施形態に限定されず、各種構成を適用できる。
図12Aは、変形例に係る誘電加熱装置100の全体構成を示す図である。
図12Bは、変形例に係る整合回路104の構成を示す図である。
図13は、他の変形例に係る誘電加熱装置100の全体構成を示す図である。
【0080】
上記実施形態の駆動回路102(
図1参照)において、二つの加熱電極110の特性が一致する場合、加熱制御時に接地線109に電流が流れない。この場合、
図1に示す駆動回路102は、接地線109を省略し、且つ整合回路104A,104Bを一つに統合することで、
図12Aに示す駆動回路102と等価になる。従って、二つの加熱電極110の特性が一致する場合は、駆動回路102を
図12Aのように構成してもよい。
【0081】
この場合、高周波電源103は、一つの整合回路104と接続される。
図12Bに示すように、整合回路104は、可変コイル201A,201B、可変コンデンサ202A,202B,及び可変コンデンサ203を含む。可変コイル201A及び可変コンデンサ202Aは、アンプ134Aと直列に接続される。可変コイル201B及び可変コンデンサ202Bは、アンプ134Bと直列に接続される。可変コンデンサ203は、高周波電源103の出力と並列に接続される。
【0082】
図13に示す他の変形例の駆動回路102では、高周波電源103と整合回路104とが、不平衡-平衡回路1300を介して接続される。高周波電源103では、発振器131、可変アッテネータ133、アンプ134が直接に接続される。整合回路104は、
図12Bと同じ構成である。不平衡-平衡回路(バラン)1300は、高周波電源103から入力される電圧信号を、平衡電圧に変換して整合回路104に入力する。これにより、駆動回路102は上記実施形態と同様に、平衡回路方式の加熱制御を実行できる。
【符号の説明】
【0083】
100 誘電加熱装置、103 高周波電源、110 加熱電極、113 加熱室、114 支持部、141 トレー、142 棚受け、143 昇降機構