(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-26
(45)【発行日】2024-04-03
(54)【発明の名称】タイヤ空気圧監視システムおよびタイヤ空気圧監視プログラム
(51)【国際特許分類】
B60C 23/04 20060101AFI20240327BHJP
【FI】
B60C23/04 160A
(21)【出願番号】P 2020174380
(22)【出願日】2020-10-16
【審査請求日】2023-04-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】市川 洋光
(72)【発明者】
【氏名】福森 肇
【審査官】池田 晃一
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-168457(JP,A)
【文献】国際公開第2016/103453(WO,A1)
【文献】特開2006-071642(JP,A)
【文献】特開2017-171464(JP,A)
【文献】特開2017-087941(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0091720(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 23/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一定の検出周期ごとにタイヤ空気圧データを取得するデータ取得部と、
新たに取得した空気圧データP(0)と、該空気圧データP(0)より1~N(但し、Nは2以上の自然数)周期前に取得した
空気圧データP(1)~P(N)を記憶する記憶部と、
前記空気圧データに基づいて、空気圧の低下状態を判定する判定部と、
前記判定部の判定結果を外部装置に送信する通信部と、
を備え、
前記判定部が空気圧データP(k)(但し、kは1~Nの自然数)と前記空気圧データP(0)との減少値によりタイヤ空気圧が低下していると判定した場合に、前記空気圧データP(k+1)~P(N)が、すべて前記空気圧データP(0)と予め設定した第2閾値の和より大きい場合には、タイヤ空気圧が低下していると判定するタイヤ空気圧監視システム。
【請求項2】
前記判定部が前記空気圧データP(k)と前記空気圧データP(0)との減少値によりタイヤ空気圧が低下していると判定した場合に、空気圧が前記空気圧データP(k)~P(0)まで一定割合で減少したと仮定した場合の仮想空気圧データP’について、空気圧データP(k-1)~P(1)と前記仮想空気圧データP’(k-1)~P’(1)とを同一周期で比較したときに、すべて一定の範囲内である場合には、タイヤ空気圧が低下していると判定する請求項
1に記載のタイヤ空気圧監視システム。
【請求項3】
一定の検出周期ごとにタイヤ空気圧データを取得するステップと、
新たに取得した空気圧データP(0)と、該空気圧データP(0)より1~N(但し、Nは2以上の自然数)周期前に取得した空気圧データP(1)~P(N)を記憶するステップと、
前記空気圧データに基づいて、空気圧の低下状態を判定するステップと、
判定結果を外部装置に送信するステップと、
を有し、
前記空気圧の低下状態を判定するステップで空気圧データP(k)(但し、kは1~Nの自然数)と前記空気圧データP(0)との減少値によりタイヤ空気圧が低下していると判定した場合に、前記空気圧データP(k+1)~P(N)が、すべて前記空気圧データP(0)と予め設定した第2閾値の和より大きい場合には、タイヤ空気圧が低下していると判定するタイヤ空気圧監視システムが備えるコンピュータで実行されるタイヤ空気圧監視プログラム。
【請求項4】
前記空気圧の低下状態を判定するステップで前記空気圧データP(k)と前記空気圧データP(0)との減少値によりタイヤ空気圧が低下していると判定した場合に、空気圧が前記空気圧データP(k)~P(0)まで一定割合で減少したと仮定した場合の仮想空気圧データP’について、空気圧データP(k-1)~P(1)と前記仮想空気圧データP’(k-1)~P’(1)とを同一周期で比較したときに、すべて一定の範囲内である場合には、タイヤ空気圧が低下していると判定する請求項
3に記載のタイヤ空気圧監視プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気入りタイヤの空気圧を監視するタイヤ空気圧監視システムおよびタイヤ空気圧監視プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、タイヤ空気圧の低下を検出して報知(警報)する技術が種々提案されている。 特に、車両の走行に伴うタイヤ内の空気圧の変化に追従した警報閾値に基づいて、より確実にタイヤ空気圧の低下を報知する技術が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、従来技術に係るタイヤ空気圧の低下を報知する技術では、一定周期で検出した空気圧の値が一定以上の割合で低下したときに、タイヤ空気圧が低下したと判断していた。
【0005】
しかしながら、従来技術では、タイヤ空気圧の検出周期が短く、且つ空気圧の低下速度が緩やかな場合には空気圧の低下の検出が困難であるという問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、タイヤ空気圧の検出周期が短い場合、或いは空気圧の低下速度が緩やかな場合であっても正確に空気圧低下を検出できるタイヤ空気圧監視システムおよびタイヤ空気圧監視プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係るタイヤ空気圧監視システム(S1a)は、一定の検出周期ごとにタイヤ空気圧データを取得するデータ取得部と、新たに取得した空気圧データP(0)と、該空気圧データP(0)より1~N(但し、Nは2以上の自然数)周期前に取得した空気圧データP(1)~P(N)を記憶する記憶部と、前記空気圧データに基づいて、空気圧の低下状態を判定する判定部と、前記判定部の判定結果を外部装置に送信する通信部と、を備え、前記判定部は、前記空気圧データP(1)~P(n)(但し、nは1~Nの自然数)と前記空気圧データP(0)とをそれぞれ比較して減少値を算出し、該減少値を予め設定した第1閾値と比較し、少なくとも1つの減少値が前記第1閾値以上である場合には、タイヤ空気圧が低下していると判定することを要旨とする。
【0008】
このような構成によれば、タイヤ空気圧の検出周期が短い場合、或いは空気圧の低下速度が緩やかなスローリークの場合であっても正確に空気圧低下を検出することが可能となる。
【0009】
本発明の他の態様に係るタイヤ空気圧監視システム(S1b)は、 一定の検出周期ごとにタイヤ空気圧データを取得するデータ取得部と、新たに取得した空気圧データP(0)と、該空気圧データP(0)より1~N(但し、Nは2以上の自然数)周期前に取得したデータP(1)~P(N)を記憶する記憶部と、前記空気圧データに基づいて、空気圧の低下状態を判定する判定部と、前記判定部の判定結果を外部装置に送信する通信部と、を備え、前記判定部が空気圧データP(k)(但し、kは1~Nの自然数)と前記空気圧データP(0)との減少値によりタイヤ空気圧が低下していると判定した場合に、前記空気圧データP(k+1)~P(N)が、すべて前記空気圧データP(0)と予め設定した第2閾値の和より大きい場合には、タイヤ空気圧が低下していると判定することを要旨とする。
【0010】
このような構成によれば、タイヤが縁石に乗り上げた場合のような一時的な圧力低下の影響を抑制して、より正確に空気圧低下を検出することが可能となる。
【0011】
また、前記判定部が前記空気圧データP(k)と前記空気圧データP(0)との減少値によりタイヤ空気圧が低下していると判定した場合に、空気圧が前記空気圧データP(k)~P(0)まで一定割合で減少したと仮定した場合の仮想空気圧データP’について、空気圧データP(k-1)~P(1)と前記仮想空気圧データP’(k-1)~P’(1)とを同一周期で比較したときに、すべて一定の範囲内である場合には、タイヤ空気圧が低下していると判定する構成とすることもできる。
【0012】
この場合には、誤判定を防止して、より正確に空気圧低下を検出することが可能となる。
【0013】
また、本発明の他の態様に係るタイヤ空気圧監視システムが備えるコンピュータで実行されるタイヤ空気圧監視プログラムは、一定の検出周期ごとにタイヤ空気圧データを取得するステップと、新たに取得した空気圧データP(0)と、該空気圧データP(0)より1~N(但し、Nは2以上の自然数)周期前に取得した空気圧データP(1)~P(N)を記憶するステップと、前記空気圧データに基づいて、空気圧の低下状態を判定するステップと、判定結果を外部装置に送信するステップと、を有し、前記空気圧の低下状態を判定するステップは、前記空気圧データP(1)~P(n)(但し、nは1~Nの自然数)と前記空気圧データP(0)とをそれぞれ比較して減少値を算出し、該減少値を予め設定した第1閾値と比較し、少なくとも1つの減少値が前記第1閾値以上である場合には、タイヤ空気圧が低下していると判定することを要旨とする。
【0014】
これによれば、タイヤ空気圧の検出周期が短い場合、或いは空気圧の低下速度が緩やかなスローリークの場合であっても正確に空気圧低下を検出することが可能となる。
【0015】
また、本発明の他の態様に係るタイヤ空気圧監視システムが備えるコンピュータで実行されるタイヤ空気圧監視プログラムは、一定の検出周期ごとにタイヤ空気圧データを取得するステップと、新たに取得した空気圧データP(0)と、該空気圧データP(0)より1~N(但し、Nは2以上の自然数)周期前に取得した空気圧データP(1)~P(N)を記憶するステップと、前記空気圧データに基づいて、空気圧の低下状態を判定するステップと、判定結果を外部装置に送信するステップと、を有し、前記空気圧の低下状態を判定するステップで空気圧データP(k)(但し、kは1~Nの自然数)と前記空気圧データP(0)との減少値によりタイヤ空気圧が低下していると判定した場合に、前記空気圧データP(k+1)~P(N)が、すべて前記空気圧データP(0)と予め設定した第2閾値の和より大きい場合には、タイヤ空気圧が低下していると判定することを要旨とする。
【0016】
これによれば、タイヤが縁石に乗り上げた場合のような一時的な圧力低下の影響を抑制して、より正確に空気圧低下を検出することが可能となる。
【0017】
また、前記空気圧の低下状態を判定するステップで前記空気圧データP(k)と前記空気圧データP(0)との減少値によりタイヤ空気圧が低下していると判定した場合に、空気圧が前記空気圧データP(k)~P(0)まで一定割合で減少したと仮定した場合の仮想空気圧データP’について、空気圧データP(k-1)~P(1)と前記仮想空気圧データP’(k-1)~P’(1)とを同一周期で比較したときに、すべて一定の範囲内である場合には、タイヤ空気圧が低下していると判定するようにしてもよい。
【0018】
この場合には、誤判定を防止して、より正確に空気圧低下を検出することが可能となる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、タイヤ空気圧の検出周期が短い場合、或いは空気圧の低下速度が緩やかな場合であっても正確に空気圧低下を検出できるタイヤ空気圧監視システムおよびタイヤ空気圧監視プログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】第1の実施形態に係るタイヤ空気圧監視システムの概略構成を示す概略構成図である。
【
図2】第1の実施形態に係るタイヤ空気圧監視システムの機能構成を示す機能ブロック図である。
【
図3】第1の実施形態に係るタイヤ空気圧監視システムで実行される判定処理(その1)の処理手順を示すフローチャートである。
【
図4A】第2の実施形態に係るタイヤ空気圧監視システムで実行される判定処理(その2)の処理手順を示すフローチャートである。
【
図4B】第2の実施形態に係るタイヤ空気圧監視システムで実行される判定処理(その2)の処理手順の続きを示すフローチャートである。
【
図5】判定処理(その2)の処理内容を補足するグラフ(a)、(b)である。
【
図6】判定処理(その3)の処理手順を示すフローチャートである。
【
図7】実施の形態に係るタイヤ空気圧監視システムの変形例を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
[第1の実施形態]
図1~
図3を参照して、本発明の第1の実施形態に係るタイヤ空気圧監視システムS1aについて説明する。
【0022】
なお、以下の図面の記載において、同一または類似の部分には、同一または類似の符号を付している。但し、図面は模式的なものであり、各寸法の比率などは現実のものとは異なることに留意すべきである。
【0023】
したがって、具体的な寸法などは以下の説明を参酌して判断すべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0024】
(タイヤ空気圧監視システムの概略構成)
図1の概略構成図を参照して、第1の実施形態に係るタイヤ空気圧監視システムS1aの概略構成について説明する。
【0025】
タイヤ空気圧監視システムS1aは、空気入りタイヤ(以下、単にタイヤと呼称する)10側に設けられるセンサユニットSUで構成される。
【0026】
図1では、リムホイール90に組み付けられたタイヤ10のタイヤ幅方向に沿った断面形状が示されている。
【0027】
また、トレッド部20は、図示しない車両に装着されたタイヤ10が路面を転動する際に路面と接する部分である。トレッド部20には、車両の種別及び要求される性能に応じたトレッドパターンが形成される。
【0028】
そして、タイヤ空気圧監視システムS1aを適用可能なタイヤ10の内面10aには、タイヤ10の内圧情報を検出するセンサユニットSUが設けられている。なお、本実施形態には直接関係しないが、センサユニットSUは、温度情報等を取得できるようにしてもよい。
【0029】
図1に示す構成例では、センサユニットSUは、トレッド部20と対向する内面10aに設けられている。より具体的には、センサユニットSUは、リムホイール90に組み付けられた空気入りタイヤ10の内部空間に充填された空気などの気体の漏れを防止するインナーライナー(図示省略)の表面に取り付けられる。
【0030】
なお、センサユニットSUは、トレッド部20と対向する内面10aに限らず、タイヤ10のサイドウォール30側の内面に設けるようにしてもよい。
【0031】
センサユニットSUは、車両に装着される各タイヤ10に設けられることが好ましい。車両の安全性確保には各タイヤ10のリーク状況等を監視することが望ましいためである。
【0032】
また、センサユニットSUは、必ずしもタイヤ10の内側面に貼付されていなくてもよく、例えば、センサユニットSUの一部または全部がタイヤ10の内部に埋設される構成としてもよい。
【0033】
また、センサユニットSUは、タイヤ10を装着するホイールに取り付けるようにしてもよい。
【0034】
(タイヤ空気圧監視システムの機能構成)
図2の機能ブロック図に示すように、センサユニットSUは、タイヤ10の内圧(空気圧)を検出する内圧センサSNと、外部装置(車載器(ECU)等)に一定の検出周期(例えば、12sec、30sec、60sec等)ごとに、検出データを送信する送信器150と、処理装置100と、内圧センサSNおよび処理装置100および送信器150に給電するバッテリ151とを備える。
【0035】
センサユニットSUに処理装置100を設けることで、消費電力の激しいデータの送信頻度をあげることなく、処理効率とのバランスよく空気圧の低下状態を判定することができる。
【0036】
処理装置100は、新たに取得した空気圧データP(0)と、この空気圧データP(0)より1~N(但し、Nは2以上の自然数)周期前に取得した空気圧データP(1)~P(N)を記憶するフラッシュメモリ等で構成される記憶部102を備える。
【0037】
なお、P(N)の「N」は、3~5とすることができる。これにより、空気圧の緩やかなリークへの対応と、処理効率とのバランスをとることができる。
【0038】
さらに、空気圧データに基づいて、空気圧の低下状態を判定するCPU等で構成される判定部103を備える。
【0039】
また、送信器150は、判定部103の判定結果をECU等の外部装置250に通信回線N1を介して送信する。
【0040】
ここで、判定部103は、空気圧データP(1)~P(n)(但し、nは1~Nの自然数)と空気圧データP(0)とをそれぞれ比較して減少値を算出する。
【0041】
次いで、減少値を予め設定した第1閾値th1と比較し、少なくとも1つの減少値が第1閾値th1以上である場合には、タイヤ空気圧が低下していると判定する。
【0042】
これにより、タイヤ空気圧の検出周期が短い場合、或いは空気圧の低下速度が緩やかなスローリークの場合であっても正確に空気圧低下を検出することができる。
【0043】
なお、上記の処理を実現する判定処理の例については後述する。
【0044】
(判定処理(その1)について)
図3に示すフローチャートを参照して、タイヤ空気圧監視システムS1aで実行される判定処理(その1)の処理手順について説明する。
【0045】
この処理が開始されると、ステップS10で、一定の検出周期ごとにタイヤ空気圧データを取得してステップS11に移行する。
【0046】
ステップS11では、新たに取得した空気圧データP(0)と、この空気圧データP(0)より1~N(但し、Nは2以上の自然数)周期前に取得した空気圧データP(1)~P(N)を記憶部102で記憶して、ステップS12に移行する。
【0047】
ステップS12では、空気圧データP(1)~P(n)(但し、nは1~Nの自然数)と空気圧データP(0)とをそれぞれ比較して減少値(例えば、P(0)-P(1)等)を算出して、ステップS13に移行する。
【0048】
ステップS13では、予め設定した第1閾値(th1)と比較して、ステップS14に移行する。
【0049】
ここで、第1閾値th1は、内圧センサSNを構成するセンサ素子の誤差を考慮して、有意な差分があるとみなすセンサのLSB差分の閾値である。なお、第1閾値th1以上低下する場合には内圧の急激低下と判定できることが分かっている。
【0050】
第1閾値th1は、測定周期に依存し、例えば30sec以下で3LSB(3~10kPa程度)、60secで4LSB(5~15kPa程度)とすることができる。
【0051】
ステップS14では、少なくとも1つの減少値が第1閾値(th1)以上である場合(即ち、例えばP(0)-P(1)≧th1である場合等)には、タイヤ空気圧が低下していると判定して、ステップS15に移行する。
【0052】
ステップS15では、判定結果を外部装置(ECU等)250に送信して処理を終了する。
【0053】
これにより、タイヤ空気圧の検出周期が短い場合、或いは空気圧の低下速度が緩やかなスローリークの場合であっても正確に空気圧低下を検出することができる。
【0054】
[第2の実施形態]
図1、
図2、
図4A、
図4B、
図5を参照して、本発明の第2の実施形態に係るタイヤ空気圧監視システムS1bについて説明する。
【0055】
ここで、第2の実施形態に係るタイヤ空気圧監視システムS1bの機能構成等は、第1の実施形態に係るタイヤ空気圧監視システムS1aと同様であるので、重複した説明は割愛する。
【0056】
タイヤ空気圧監視システムS1bでは、判定部103が空気圧データP(k)(但し、kは1~Nの自然数)と空気圧データP(0)との減少値によりタイヤ空気圧が低下していると判定した場合に、空気圧データP(k+1)~P(N)が、すべて空気圧データP(0)と予め設定した第2閾値の和より大きい場合には、タイヤ空気圧が低下していると判定する。
【0057】
これにより、タイヤが縁石に乗り上げた場合のような一時的な圧力低下の影響を抑制して、より正確に空気圧低下を検出することが可能となる。
【0058】
また、判定部103が空気圧データP(k)と空気圧データP(0)との減少値によりタイヤ空気圧が低下していると判定した場合に、空気圧が空気圧データP(k)~P(0)まで一定割合で減少したと仮定した場合の仮想空気圧データP’について、空気圧データP(k-1)~P(1)と仮想空気圧データP’(k-1)~P’(1)とを同一周期で比較したときに、すべて一定の範囲内である場合には、タイヤ空気圧が低下していると判定するようにできる。
【0059】
この場合には、誤判定を防止して、より正確に空気圧低下を検出することが可能となる。
【0060】
(判定処理(その2)について)
図4A、
図4Bに示すフローチャートを参照して、タイヤ空気圧監視システムS1bで実行される判定処理(その2)の処理手順について説明する。
【0061】
この判定処理は、空気圧が緩やかにリークする場合の圧力低下の検出に加えて、タイヤが縁石に乗り上げた場合の一時的な圧力低下の影響を低減して、より確実に空気圧低下を報知(警告)できるようにする処理である。
【0062】
より具体的には、空気圧の低下状態を判定する際に、空気圧データP(k)(但し、kは1~Nの自然数)と空気圧データP(0)との減少値によりタイヤ空気圧が低下している場合であって、空気圧データP(k+1)~P(N)が、すべて空気圧データP(0)と予め設定した第2閾値(th2)の和より大きい場合には、タイヤ空気圧が低下していると判定している。
【0063】
この処理が開始されると、ステップS101で、P(0)-P(1)≧th1か否かが判定される。
【0064】
より具体的には、前出の判定処理(その1)におけるステップS10~S15と同様の処理が実行される。
【0065】
そして、空気圧が低下していると判定された場合(「Yes」の場合)にはステップS102に移行する。
【0066】
ステップS102では、P(2~5)>P(0)+th2であるか否かが判定される。
【0067】
ここで、第2閾値th2は、内圧センサSNを構成するセンサ素子の誤差の上限であり、実際の値に対する誤差LSBの概ね2倍程度の値(即ち、圧力変化なしのときの測定サンプル間での最大差LSB)とすることができる。
【0068】
なお、第2閾値th2は、例えば5~10kPa程度とすることができる。
【0069】
そして、ステップS102の判定結果が「No」の場合には、ステップS111に移行して、警報を行うことなく処理を終了する。
【0070】
また、判定結果が「Yes」の場合には、ステップS110に移行して、縁石乗り越え等により、タイヤ圧力の急激な低下が発生した旨の警報を行って処理を終了する。
【0071】
一方、ステップS101で「No」と判定された場合には、ステップS103に移行する。
【0072】
ステップS103では、P(0)-P(2)≧th1 且つ P(1)が所定範囲内であるか否かが判定される。
【0073】
ここで、P(0)-P(2)≧th1であるとは、例えば
図5(a)に示すグラフ(縦軸:LSB、横軸測定周期)における範囲R1(>th1)にあるような場合をいう。
【0074】
また、P(1)が所定範囲内であるとは、例えば
図5(a)に示すグラフにおいて、P(1)が、範囲R2内にあるような場合をいう。
【0075】
そして、ステップS103で「Yes」と判定された場合にはステップS104に移行する。
【0076】
ステップS104では、P(3~5)>P(0)+th2であるか否かが判定される。
【0077】
判定結果が「No」の場合には、ステップS111に移行して、警報を行うことなく処理を終了する。
【0078】
また、判定結果が「Yes」の場合には、ステップS110に移行して、縁石乗り越え等により、タイヤ圧力の急激な低下が発生した旨の警報を行って処理を終了する。
【0079】
一方、ステップS103で「No」と判定された場合には、ステップS105に移行する。
【0080】
ステップS105では、P(0)-P(3)≧th1 且つ P(1、2)が所定範囲内であるか否かが判定される。
【0081】
ここで、P(0)-P(3)≧th1であるとは、例えば
図5(b)に示すグラフ(縦軸:LSB、横軸測定周期)における範囲R4内にあるような場合をいう。
【0082】
また、P(1、2)が所定範囲内であるとは、例えば
図5(b)に示すグラフにおいて、P(1、2)が、範囲R8またはR7内にあるような場合をいう。
【0083】
そして、ステップS105で「Yes」と判定された場合には、ステップS106に移行する。
【0084】
ステップS106では、P(4,5)>P(0)+th2であるか否かが判定される。
【0085】
判定結果が「No」の場合には、ステップS111に移行して、警報を行うことなく処理を終了する。
【0086】
また、判定結果が「Yes」の場合には、ステップS110に移行して、縁石乗り越え等により、タイヤ圧力の急激な低下が発生した旨の警報を行って処理を終了する。
【0087】
一方、ステップS105で「No」と判定された場合には、ステップS107に移行する。
【0088】
ステップS107では、P(0)-P(4)≧th1 且つ P(1~3)が所定範囲内であるか否かが判定される。
【0089】
ここで、P(0)-P(4)≧th1であるとは、例えば
図5(b)に示すグラフにおける範囲R4内にあるような場合をいう。
【0090】
また、P(1~3)が所定範囲内であるとは、例えば
図5(b)に示すグラフにおいて、P(1~3)が、範囲R6~R8内にあるような場合をいう。
【0091】
そして、ステップS107の判定結果が「Yes」の場合にはステップS108に移行する。
【0092】
ステップS108では、P(5)>P(0)+th2であるか否かが判定される。
【0093】
判定結果が「No」の場合には、ステップS111に移行して、警報を行うことなく処理を終了する。
【0094】
また、判定結果が「Yes」の場合には、ステップS110に移行して、縁石乗り越え等により、タイヤ圧力の急激な低下が発生した旨の警報を行って処理を終了する。
【0095】
一方、ステップS107で「No」と判定された場合には、ステップS109に移行する。
【0096】
ステップS109では、P(0)-P(5)≧th1 且つ P(1~4)が所定範囲内であるか否かが判定される。
【0097】
ここで、P(0)-P(5)≧th1であるとは、例えば
図5(b)に示すグラフにおける範囲R4内にあるような場合をいう。
【0098】
また、P(1~4)が所定範囲内であるとは、例えば
図5(b)に示すグラフにおいて、P(1~4)が、範囲R5~R8内にあるような場合をいう。
【0099】
そして、判定結果が「No」の場合には、ステップS111に移行して、警報を行うことなく処理を終了する。
【0100】
また、判定結果が「Yes」の場合には、ステップS110に移行して、縁石乗り越え等により、タイヤ圧力の急激な低下が発生した旨の警報を行って処理を終了する。
【0101】
以上述べたように、本処理によれば、タイヤ10の空気圧が緩やかにリークする場合でも圧力低下を検知することができる。
【0102】
また、タイヤ10が縁石に乗り上げた場合のような一時的な圧力低下の影響を抑制して、より正確に空気圧低下を検出することが可能となる。
【0103】
また、誤判定を防止して、より正確に空気圧低下を検出することが可能となるというメリットもある。
【0104】
さらに、タイヤ空気圧の検出周期が短い場合、或いは空気圧の低下速度が緩やかなスローリークの場合であっても正確に空気圧低下を検出することが可能となるという効果も得られる。
【0105】
(判定処理(その3)について)
図6に示すフローチャートを参照して、タイヤ空気圧監視システムS1a(S1b)で実行される判定処理(その3)の処理手順について説明する。
【0106】
この処理が開始されると、ステップS201で、P(0)-P(1)≧th3か否かが判定される。ここで、P(0)は新たに取得した空気圧データ、P(1)は1周期前の空気圧データ、th3は予め設定した第3閾値である。
【0107】
第3閾値th3は、縁石乗り越し等があったとしても、確実に急激低下が起こる内圧センサSNのLSB差分の閾値である。なお、第3閾値th3以上低下する場合には内圧の急激低下と判定できることが分かっている。
【0108】
第3閾値th3は、例えば10~30kPa程度とすることができる。
【0109】
そして、判定結果が「Yes」の場合には、ステップS202に移行する。ステップS202では、例えば「タイヤの圧力が低下しています。タイヤのメンテナンスを行ってください」等の警報を運転者等に報知して処理を終了する。
【0110】
これにより、タイヤ空気圧の低下をより確実に報知することが可能となる。特に、タイヤ空気圧の検出周期が短い場合、或いは空気圧の低下速度が緩やかなスローリークの場合であっても正確に空気圧低下を検出して、報知することが可能となる。
【0111】
一方、ステップS201で、「No」と判定された場合には、ステップS203に移行し、警報を行うことなく処理を終了する。
【0112】
これにより、タイヤ10のバースト等を検知して報知(警告)することができる。
【0113】
なお、
図2に示す判定部103は、空気圧データP(1)とP(0)とを比較して減少値を算出し、減少値を第3閾値th3と比較し、減少値が第3閾値th3以上の場合に、タイヤ空気圧が低下していると判定するようにしてもよい。
【0114】
これにより、バーストのような一定の閾値以上の圧力低下を早期に検知することが可能となる。
【0115】
上述のように、判定処理を実行するタイヤ空気圧監視プログラムは、一定の検出周期ごとにタイヤ空気圧データを取得するステップと、新たに取得した空気圧データP(0)と、空気圧データP(0)より1~N(但し、Nは2以上の自然数)周期前に取得した空気圧データP(1)~P(N)を記憶するステップと、空気圧データに基づいて、空気圧の低下状態を判定するステップと、判定結果を外部装置(ECU等)250に送信するステップとを有するようにできる。
【0116】
そして、空気圧の低下状態を判定するステップは、空気圧データP(1)~P(n)(但し、nは1~Nの自然数)と空気圧データP(0)とをそれぞれ比較して減少値を算出し、減少値を予め設定した第1閾値th1と比較し、少なくとも1つの減少値が第1閾値th1以上である場合には、タイヤ空気圧が低下していると判定するようにできる。
【0117】
これにより、タイヤ空気圧の検出周期が短い場合、或いは空気圧の低下速度が緩やかなスローリークの場合であっても正確に空気圧低下を検出することが可能となる。
【0118】
また、他の構成に係るタイヤ空気圧監視プログラムは、一定の検出周期ごとにタイヤ空気圧データを取得するステップと、新たに取得した空気圧データP(0)と、空気圧データP(0)より1~N(但し、Nは2以上の自然数)周期前に取得した空気圧データP(1)~P(N)を記憶するステップと、空気圧データに基づいて、空気圧の低下状態を判定するステップと、判定結果を外部装置(ECU等)250に送信するステップとを有するようにできる。
【0119】
そして、空気圧の低下状態を判定するステップにおいて、空気圧データP(k)(但し、kは1~Nの自然数)と空気圧データP(0)との減少値によりタイヤ空気圧が低下していると判定した場合に、空気圧データP(k+1)~P(N)が、すべて空気圧データP(0)と予め設定した第2閾値th2の和より大きい場合には、タイヤ空気圧が低下していると判定するようにできる。
【0120】
これにより、タイヤ10が縁石に乗り上げた場合のような一時的な圧力低下の影響を抑制して、より正確に空気圧低下を検出することが可能となる。
【0121】
また、空気圧の低下状態を判定するステップで、空気圧データP(k)と空気圧データP(0)との減少値によりタイヤ空気圧が低下していると判定した場合に、空気圧が空気圧データP(k)~P(0)まで一定割合で減少したと仮定した場合の仮想空気圧データP’について、空気圧データP(k-1)~P(1)と仮想空気圧データP’(k-1)~P’(1)とを同一周期で比較したときに、すべて一定の範囲内である場合には、タイヤ空気圧が低下していると判定するようにしてもよい。
【0122】
これにより、誤判定を防止して、より正確に空気圧低下を検出することが可能となる。
【0123】
また、検出周期の速度を変更するようにしてもよい。これにより、状況に応じて圧力低下を早期に検知することができる。
【0124】
また、検出周期の変更時に、P(1)~P(N)にP(0)の値をコピーするようにしてもよい。これにより、記憶値のリセットにより誤判定を防止することができる。
【0125】
また、第2閾値th2は、検出周期に応じて変更するようにしてもよい。
【0126】
(変形例)
図7を参照して、変形例に係るタイヤ空気圧監視システムS1cについて説明する。
【0127】
図7は、変形例に係るタイヤ空気圧監視システムS1cの概略構成図である。
【0128】
図7に示すように、タイヤ空気圧監視システムS1cでは、各車両に搭載される外部装置(ECU等)250は、空気入りタイヤ10に装着されたセンサユニットSUと無線回線N1を介して無線通信を行うと共に、無線回線N2を介して外部のクラウドシステム300と通信を行うように構成されている。また、クラウドシステム300は、管理サーバ200に接続されている。
【0129】
そして、各車両の外部装置は、センサユニットSUから取得した温度データ、内圧データ等をクラウドシステム300に対して送信する。
また、センサユニットSUは直接外部のクラウドシステム300と通信を行うように構成されていてもよい。
【0130】
これにより、センサユニットSUで実行される上述の判定処理の一部または全部をクラウドシステム300または管理サーバ200で行うようにできる。これにより、センサユニットSUの処理負担を軽減することができる。
【0131】
以上、本発明のタイヤ空気圧監視システムおよびタイヤ空気圧監視プログラムを図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、各部の構成は、同様の機能を有する任意の構成のものに置き換えることができる。
【0132】
例えば、本実施の形態におけるセンサユニットSUが有する処理機能の一部を外部装置250内に搭載するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0133】
S1a、S1b、S1c タイヤ空気圧監視システム
SU センサユニット
SN 内圧センサ
100 処理装置
101 データ取得部
102 記憶部
103 判定部
150 送信器
151 バッテリ
250 外部装置