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特許7461279樹脂発泡体、ローラ、および樹脂発泡体の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-26
(45)【発行日】2024-04-03
(54)【発明の名称】樹脂発泡体、ローラ、および樹脂発泡体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 9/04 20060101AFI20240327BHJP
   G03G 15/00 20060101ALI20240327BHJP
   G03G 15/16 20060101ALI20240327BHJP
   F16C 13/00 20060101ALI20240327BHJP
【FI】
C08J9/04 101
C08J9/04 CEQ
C08J9/04 CEZ
G03G15/00 551
G03G15/16 103
F16C13/00 A
F16C13/00 B
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020191387
(22)【出願日】2020-11-18
(65)【公開番号】P2022080374
(43)【公開日】2022-05-30
【審査請求日】2023-02-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000119232
【氏名又は名称】株式会社イノアックコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】船田 俊明
(72)【発明者】
【氏名】中村 昌樹
(72)【発明者】
【氏名】久野 晃稔
【審査官】深谷 陽子
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-134262(JP,A)
【文献】特開平04-163097(JP,A)
【文献】特開2008-058552(JP,A)
【文献】特開2005-181978(JP,A)
【文献】特開2001-109232(JP,A)
【文献】特開2004-322421(JP,A)
【文献】特開2011-195689(JP,A)
【文献】特開2006-145636(JP,A)
【文献】特開2019-128391(JP,A)
【文献】特開2019-108486(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 9/00- 9/42
B29C 44/00-44/60、67/20
F16C 13/00-15/00
G03G 13/00、13/02、13/14-13/16
G03G 15/00、15/02、15/14-15/16
G03G 21/00、21/04、21/10-21/12
G03G 21/16-21/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャフトを挿入するための貫通孔を有する円筒状の樹脂発泡体であって、
アクリロニトリルブタジエンゴム、及びエピクロルヒドリンゴムを含み、
前記アクリロニトリルブタジエンゴムの配合割合は、前記アクリロニトリルブタジエンゴムと前記エピクロルヒドリンゴムの総量を100質量部としたときに、45質量部以上65質量部以下であり、
前記樹脂発泡体の厚みを100%としたとき、内周面から23.5%の厚みの内側部分の比重から、前記樹脂発泡体の全体の比重を差し引いた値が0.100以上0.400以下であり、
硬さがアスカーC硬度計による測定で30度以上40度以下である、樹脂発泡体(ただし、4種以上のゴム材料を含有するものを除く)
【請求項2】
前記内側部分の比重は、0.560以上0.800以下である、請求項1に記載の樹脂発泡体。
【請求項3】
硬さがアスカーC硬度計による測定で34度以上40度以下である、請求項1又は請求項2に記載の樹脂発泡体。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の前記樹脂発泡体と、
前記貫通孔に挿入された前記シャフトと、
を備えたローラ。
【請求項5】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の樹脂発泡体の製造方法であって、
前記アクリロニトリルブタジエンゴム、及び前記エピクロルヒドリンゴムを含むゴム組成物を押出成形機によって筒状に押し出して筒状部材を形成し、
中実の仮芯が挿入された前記筒状部材を加硫釜内で加熱することで、前記筒状部材を発泡及び架橋させる、樹脂発泡体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、樹脂発泡体、ローラ、および樹脂発泡体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式のプリンターに使用される転写ローラは、樹脂発泡部材によって構成されるローラ本体を備えている。このようなローラ本体は、導電性、耐久性、汚染性、平滑性などの他に、適度な硬度(ニップ幅を確保するための硬度)と低圧縮永久歪みの両立が要求される。
【0003】
例えば、特許文献1には、ゴム基材を発泡させた発泡弾性体を、イソシアネート化合物と有機溶媒とを含有する処理液を用いて含浸処理した発泡ゴム部材が開示されている。特許文献2には、超臨界流体を液状ゴム(例えば液状ウレタンゴムなど)に導入し、超臨界流体の作用により液状ゴムを発泡させた発泡体が開示されている。特許文献3には、導電性基体と、弾性層と、を備える導電性部材が開示されている。弾性層は、イオン導電性ゴム(例えばエピクロルヒドリンとエチレンオキサイドからなる共重合体など)と、中空粒子と、を含有する。中空粒子は、エチレンオキサイド由来のユニットを有する樹脂を含有するシェルを有している。特許文献4には、導電性基体と、ゴム弾性層と、を備える導電性部材が開示されている。ゴム弾性層は、例えばエチレンプロピレンゴムなどによって構成されている。ゴム弾性層は、粒子(例えばアクリル樹脂など)を内包している独立空孔を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2010-039392号公報
【文献】特開2003-231769号公報
【文献】特開2012-220583号公報
【文献】特開2013-140343号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1~4に示すような特殊な方法を用いて樹脂発泡体を製造する場合、工数が多く、手間がかかるとともにコストの増大を招いてしまう。一方で、一般的な釜加硫工法を用いる場合、樹脂発泡体の硬度が低くなるに伴って、圧縮永久歪みが大きくなる傾向にある。そこで、樹脂発泡体は、適度な硬度を維持しつつ、圧縮永久歪みを低減することができる構成が求められている。
【0006】
本開示は、上述した課題の少なくとも一つを解決するためになされたものであり、適度な硬度を維持しつつ、圧縮永久歪みを低減し得る樹脂発泡体、ローラ、および樹脂発泡体の製造方法を提供することを目的とする。本開示は、以下の形態として実現することが可能である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
〔1〕シャフトを挿入するための貫通孔を有する円筒状の樹脂発泡体であって、
アクリロニトリルブタジエンゴム、及びエピクロルヒドリンゴムを含み、
前記樹脂発泡体の厚みを100%としたとき、内周面から23.5%の厚みの内側部分の比重から、前記樹脂発泡体の全体の比重を差し引いた値が0.100以上0.400以下である、樹脂発泡体。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、適度な硬度を維持しつつ、圧縮永久歪みを低減し得る樹脂発泡体、ローラ、および樹脂発泡体の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本開示のローラの斜視図である。
図2図1の樹脂発泡体の軸方向から見た断面図である。
図3】厚みが不均一である場合の樹脂発泡体の軸方向から見た断面図である。
図4】実施例および比較例の樹脂発泡体における、硬度と比重差の関係を示すグラフである。
図5】実施例および比較例の樹脂発泡体における、比重差と圧縮永久歪みの関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
ここで、本開示の望ましい例を示す。
〔2〕前記内側部分の比重は、0.560以上0.800以下である、〔1〕に記載の樹脂発泡体。
〔3〕硬さがアスカーC硬度計による測定で30度以上40度以下である、〔1〕又は〔2〕に記載の樹脂発泡体。
〔4〕〔1〕から〔3〕のいずれかに記載の前記樹脂発泡体と、前記貫通孔に挿入された前記シャフトと、を備えた導電性ローラ。
〔5〕アクリロニトリルブタジエンゴム、及びエピクロルヒドリンゴムを含むゴム組成物を押出成形機によって筒状に押し出して筒状部材を形成し、中実の仮芯が挿入された前記筒状部材を加硫釜内で加熱することで、前記筒状部材を発泡及び架橋させる、樹脂発泡体の製造方法。樹脂発泡体の内周面側に、樹脂発泡体全体の比重よりも大きい比重となる部分を形成することができる。これにより、適度な硬度を維持しつつ、圧縮永久歪みを低減し得る樹脂発泡体を製造することができる。
【0011】
以下、本発明を詳しく説明する。なお、"x~y"という範囲を示す表記は、特に断りが無い限り、当該範囲にxとyが入るものとする。
すなわち、数値範囲について「~」を用いた記載では、特に断りがない限り、下限値及び上限値を含むものとする。例えば、「10~20」という記載では、下限値である「10」、上限値である「20」のいずれも含むものとする。すなわち、「10~20」は、「10以上20以下」と同じ意味である。
【0012】
1.ローラの構成
ローラ10は、図1に示すように、シャフト11と、シャフト11の外周に設けられた樹脂発泡体12と、を備えている。樹脂発泡体12は、アクリロニトリルブタジエンゴムと、エピクロルヒドリンゴムと、を含む発泡体である。
【0013】
樹脂発泡体12は、ゴム成分が、アクリロニトリルブタジエンゴムとエピクロルヒドリンゴムの2種のみであってもよく、アクリロニトリルブタジエンゴムとエピクロルヒドリンゴムとともに他の種類のゴムを含んでいてもよい。本願では、アクリロニトリルブタジエンゴムとエピクロルヒドリンゴムの総量をゴム総量とする。
【0014】
アクリロニトリルブタジエンゴム(以下、NBRという。)は、それ自体が極性ゴムであるため、ローラ10のローラ抵抗値を微調整する作用を奏する。アクリロニトリルブタジエンゴムとしては、アクリロニトリル含量によって分類される低ニトリルNBR、中ニトリルNBR、中高ニトリルNBR、高ニトリルNBR、および極高ニトリルNBRがいずれも使用可能である。これらNBRの1種または2種以上を使用することができる。
【0015】
アクリロニトリルブタジエンゴムの配合割合は、樹脂発泡体12の加工性を担保するという観点から、ゴム総量を100質量部としたときに、35質量部以上が好ましく、45質量部以上であることがより好ましい。また、アクリロニトリルブタジエンゴムの配合割合は、オゾンクラックの発生を抑制するという観点から、ゴム総量を100質量部としたときに、75質量部以下が好ましく、65質量部以下であることがより好ましい。つまり、アクリロニトリルブタジエンゴムの配合割合は、ゴム総量を100質量部としたときに、35質量部以上75質量部以下が好ましく、45質量部以上65質量部以下であることがより好ましい。
【0016】
エピクロルヒドリンゴムは、イオン導電性ゴムであり、耐オゾン性を有する。エピクロルヒドリンゴムとしては、例えば、エピクロルヒドリン単独重合体(CO)、エピクロルヒドリン-エチレンオキサイド二元共重合体(ECO)、エピクロルヒドリン-プロピレンオキサイド二元共重合体、エピクロルヒドリン-アリルグリシジルエーテル二元共重合体(GCO)、エピクロルヒドリン-エチレンオキサイド-アリルグリシジルエーテル三元共重合体(以下、GECOという。)、エチレンオキサイド-プロピレンオキサイド-アリルグリシジルエーテルの三元共重合体等が挙げられる。これらイオン導電性ゴムの1種または2種以上を使用することができる。
【0017】
GECOにおいてエチレンオキサイドユニット含量は、樹脂発泡体12の抵抗値を下げるという観点から、20モル%以上であることが好ましく、30モル%以上であることがより好ましい。GECOにおいてエチレンオキサイドユニット含量は、エチレンオキサイドの結晶化を抑制するという観点から、80モル%以下であることが好ましく、75モル%以下であることがより好ましい。
【0018】
GECOにおけるアリルグリシジルエーテルユニット含量は、架橋密度を上げるという観点から、2.0モル%以上であることが好ましく、6.0モル%以上であることがより好ましい。
【0019】
樹脂発泡体12は、電子導電剤を含んでいてもよい。電子導電剤としては、カーボンブラック、グラファイトや、導電性酸化チタン、導電性酸化亜鉛、導電性酸化スズ等の導電性金属酸化物等が挙げられる。
【0020】
樹脂発泡体12の材料には発泡剤が含まれていてもよい。この発泡剤は、有機発泡剤でもよいし、無機発泡剤(重炭酸ナトリウムなど)でもよい。より好ましくは、熱分解により容易に発泡させることができる点や分解物がマトリックスゴムとの相溶性に優れるなどの観点から、有機発泡剤である。有機発泡剤としては、具体的には、例えば、アゾジカルボンアミド(ADCA)、4,4’-オキシビス(ベンゼンスルホニル)ヒドラジド(OBSH)、N,N’-ジニトロソペンタメチレンテトラミン(DPT)などを例示することができる。
【0021】
樹脂発泡体12の材料には、通常、ゴムを架橋させるための架橋剤成分が配合される。架橋剤成分としては、架橋剤(加硫剤)、架橋促進剤(加硫促進剤)等が挙げられる。樹脂発泡体12の材料には、さらに必要に応じて各種の添加剤を配合してもよい。かかる添加剤としては、例えば受酸剤、老化防止剤、充填剤、助剤、スコーチ防止剤、紫外線吸収剤、滑剤、顔料、帯電防止剤、難燃剤、中和剤、造核剤、共架橋剤等が挙げられる。
【0022】
樹脂発泡体12の硬さは、例えば給紙等に必要とされる充分な押圧力を確保するという観点から、アスカーC硬度計による測定で30度以上であることが好ましい。樹脂発泡体12の硬さは、充分なニップ厚を確保するという観点から、アスカーC硬度計による測定で40度以下であることが好ましい。つまり、樹脂発泡体12の硬さは、30度以上40度以下であることが好ましい。
【0023】
なお、アスカーC硬度は荷重500gfのときの反発硬度をさし、JIS K7312に準拠して計測される。
【0024】
樹脂発泡体12は、中心にシャフト11を挿入するためのシャフト挿入用孔(貫通孔)13を有する円筒状をなしている。ローラ10は、樹脂発泡体12の層を一層のみ有しているが、複数層の樹脂発泡体の層を有していてもよい。樹脂発泡体12の層厚は、例えば0.5mm以上15mm以下とすることができる。
【0025】
シャフト11は、略棒状の金属製のシャフトであり、鉄、ステンレス、アルミニウム等の導電性の良好な金属製のものが採用されている。シャフト11は、シャフト挿入用孔(貫通孔)13に挿入されている。シャフト11は、両端を除いて、外周面が樹脂発泡体12によって覆われている。なお、シャフト11として、金属製のシャフト以外に、樹脂製のシャフト等を採用することが可能である。樹脂製のシャフトとしては、高剛性であり、導電性を有するものを採用することが好ましく、樹脂製のシャフトは、例えば、高剛性樹脂に導電剤を添加・分散させて形成される。
【0026】
ローラ10は、導電性を有し、例えば、電子写真機器用導電部材の構成材料に用いられるものである。導電部材としては、例えば、帯電ロール、現像ロール、転写ロール、トナー供給ロール等の各種の導電性弾性ロールが挙げられる。ローラ10は、用途に応じて求められる機能に合わせて樹脂発泡体12の表面に塗装が施されてもよい。例えば、ローラ10が帯電ロールの場合には、帯電性が要求され、一方、現像ロールの場合には、トナー帯電性やトナー離型性、残留電荷減衰性などの機能が要求されるため、要求機能に応じた組成物を調製し、樹脂発泡体12の表面に塗装することができる。
【0027】
2.樹脂発泡体の比重
図2は、樹脂発泡体12の軸方向から見た断面を示している。樹脂発泡体12の厚みを100%としたとき、内周面から23.5%の厚みの部分を内側部分14とする。例えば、図2に示すように、樹脂発泡体12の断面を見たときの外周面が真円である場合、樹脂発泡体12の厚みは、内周面から外周面までの距離(最短距離)Xである。すなわち、樹脂発泡体12の厚みは、中心軸Gから径方向外側に直線を引いた時に内周面と外周面に交わる点を結ぶ距離である。樹脂発泡体12の断面を見たときの内周面も真円である場合、内周面から23.5%の厚みは、中心軸Gから径方向外側に向かう方向における、内周面からの距離Y(Xの23.5%)である。樹脂発泡体12の外径は、例えば20.5mmである。樹脂発泡体12の内径は、例えば12.0mmである。内側部分14の外径は、例えば14.0mmである。
【0028】
図3は、厚みが不均一である場合の樹脂発泡体12の軸方向から見た断面図である。図3に示すように、樹脂発泡体12の厚みが周方向で不均一である場合、以下のようにして、内側部分14を特定する。樹脂発泡体12の断面(中心軸Gに直交する断面)において、中心軸Gを通る直線を引く。例えば、直線L1を引いた時に、樹脂発泡体12の内周面と外周面に交わる点をそれぞれP11,P12とする。P11とP12の距離がX1である。直線L1に沿ったP11からの距離がX1の23.5%となる点をP13とする。同様に、直線L1とは異なる直線L2を引いた時に、樹脂発泡体12の内周面と外周面に交わる点をそれぞれP21,P22とする。P21とP22の距離がX2である。直線L1に沿ったP21からの距離がX2の23.5%となる点をP23とする。同様にして、P33,P43・・・が特定される。周方向に連続するように特定したP13,P23,P33・・・の集合が、内側部分14の境界線Bとなる。
【0029】
内側部分14の比重から、樹脂発泡体12の全体の比重を差し引いた値(比重差)は、0.100以上であることが好ましく、0.130以上であることがより好ましく、0.160以上であることがより一層好ましい。このような比重差の値とすることで、樹脂発泡体12の圧縮永久歪みを低い値とすることができる。比重差は、0.400以下であることが好ましく、0.350以下であることがより好ましく、0.260以下であることがより一層好ましい。比重差の上限をこのような値とすることで、現実的なコストを保ちつつ圧縮永久歪みを低い値とすることができる。つまり、比重差は、0.100以上0.400以下であることが好ましく、0.130以上0.350以下であることが好ましく、0.160以上0.260以下であることがより好ましい。
【0030】
内側部分14の比重は、0.560以上であることが好ましく、0.583以上であることがより好ましく、0.606以上であることがより一層好ましい。このような比重の値とすることで、樹脂発泡体12の圧縮永久歪みを低い値とすることができる。内側部分14の比重は、0.800以下であることが好ましく、0.744以下であることがより好ましく、0.687以下であることがより一層好ましい。比重の上限をこのような値とすることで、現実的なコストを保ちつつ圧縮永久歪みを低い値とすることができる。つまり、内側部分14の比重は、0.560以上0.800以下であることが好ましく、0.583以上0.744以下であることがより好ましく、0.606以上0.687以下であることがより一層好ましい。
【0031】
続いて、本実施形態の作用及び効果について説明する。本実施形態のローラ10の樹脂発泡体12によれば、適度な硬度を維持しつつ、圧縮永久歪みを低減することができる。圧縮永久歪みを低減することができる理由は次のように推測される。本実施形態において、樹脂発泡体12の内側部分14(内周面から23.5%の厚みの部分)が、外側部分15(内側部分14よりも外側(外周面側)に位置する部分)よりも発泡倍率が小さいためであると推測される。これにより、内側部分14は、外側部分15よりも比重が大きくなっていると考えられる。すなわち、樹脂発泡体12は内周側の方が密に(空隙の密度が少なく)構成されている。樹脂発泡体12の圧縮永久歪みは、内周面側の部分(内側部分14)の比重が寄与するため、樹脂発泡体12は内周面側の方が密に構成されることで、圧縮永久歪みを低減することができると推測される。
【0032】
樹脂発泡体12の内周面から例えば1mmの厚みの部分は、それより外側(外周面側)の部分よりも発泡倍率が小さくなっていることが推測される。このような部分(樹脂発泡体12の内周面から例えば1mmの厚みの部分)は、それより外側(外周面側)の部分よりも比重が大きくなっていることが推測される。なお、樹脂発泡体12の内部における比重は、径方向においてグラデーションのように連続的に変化すると考えられ、例えば樹脂発泡体12の内周面から1mm径方向外側の位置で急に変化していない。
【実施例
【0033】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明は下記の例に限定されるものではない。
【0034】
1.ゴム組成物の調製
ゴム分としてはNBR(JSR株式会社製、N250SL、低ニトリルNBR、アクリロニトリル含量:19.5%)、およびECO(GECO(大阪ソーダ社製、エピクロマー(登録商標)、CG102))を、下記表1に示す配合割合(単位:質量部)となるように配合した。NBRは、55質量部である。ECO(GECO)は、45質量部である。
【0035】
これらゴム分の総量100質量部に、発泡剤(発泡剤A、発泡剤B)を下記表1に示す配合割合(単位:質量部)で配合した。発泡剤Aは、ADCA(ビニホールAC#3 永和化成社製)である。発泡剤Bは、OBSH(ネオセルボンN#1000S 永和化成社製)である。さらに、ゴム分の総量100質量部に、下記に示す各成分を配合し、ゴム組成物を調製した。
充填剤:カーボン(N990 cancarb社製) 30重量部
重炭酸カルシウム(スーパー4S 丸尾カルシウム社製) 15重量部
加硫剤:硫黄(S-80 ランクセス社製) 2.5質量部
ジチオモルホリン(DTDM-80 ランクセス社製) 2.5質量部
加硫促進剤:チウラム系(TETD-75 ランクセス社製) 1.2質量部
スルフェンアミド系(サンセラーCM 三新化学工業社製) 0.4重量部
助剤:酸化亜鉛2種(ZnO#2 ハクスイテック社製) 5質量部
【0036】
【表1】
【0037】
2.ローラの作製
調製したゴム組成物を押出成形機に供給して、筒状に押出成形して筒状部材を形成する。筒状部材を所定の長さにカットし、架橋用の仮芯を内径側に挿入して、加硫釜において160℃で、30分間架橋・発泡させた。仮芯は、実施例では無垢(中実)の円柱形状のものを用い、比較例ではパイプ(中空)状のものを用いた。実施例1~実施例8は、発泡剤Aの質量部の値が異なっている。比較例1~比較例3は、発泡剤Aの質量部の値が異なっている。
【0038】
次に、架橋・発泡させた筒状体(樹脂発泡体)から仮芯を抜き、製品のシャフトをシャフト挿入用孔(貫通孔)に挿入した。次いで、外周面を、円筒研磨機を用いてトラバース研磨して、研磨後の外径が20.5mmであるローラを製造した。
【0039】
3.硬度の測定
実施例及び比較例のローラについて、樹脂発泡体の硬さを測定した。樹脂発泡体の硬さは、アスカーC硬度を、アスカーC硬度計を用いて測定した。アスカーC硬度は、荷重500gfのときの反発硬度をさし、JIS K7312に準拠して計測した。
【0040】
4.比重差の測定
実施例及び比較例のローラについて、樹脂発泡体の内側部分(内周面から23.5%の厚みの部分)の比重から、樹脂発泡体の全体の比重を差し引いた値(比重差の値)を導出した。アルキメデス法を用いた密度計により、樹脂発泡体の全体の比重と、内側部分の比重を測定した。内側部分の比重は、樹脂発泡体を内側部分が露出するまで(外径が14.0mmになるまで)研磨してから測定した。測定結果は、表1に示すとおりである。
【0041】
5.歪み試験
実施例及び比較例のローラについて、歪み試験を行った。歪み試験では、予め樹脂発泡体の表面(外周面)に軸方向に沿って白線を1本引いておき、その白線が真下になるように、ローラを金属板(SUS板)上に置く。ローラの両端にそれぞれ2.5kgfの荷重(ローラ全体に合計5kgfの荷重)をかけて、常温で24時間放置する。白線を真下にした状態において、レーザーマイクロ測定機(ミツトヨ製 LSM-6200)にて放置前後の外径の変化比を測定し、歪み(圧縮永久歪み)を評価した。評価基準は以下のとおりとした。結果は表1に示すとおりである。
「A」 :外径の変化割合(歪み)が1.0%以下
「B」 :外径の変化割合(歪み)が1.0%より大きい
【0042】
6.実施例の効果
実施例1~実施例8、比較例1~比較例3の樹脂発泡体の硬さは、アスカーC硬度でいずれも30度以上40度以下であった。
【0043】
実施例1~実施例8において、樹脂発泡体の内側部分(内周面から23.5%の厚みの部分)の比重は、0.590~0.659であった。比較例1~比較例3において、内側部分の比重は、0.481~0.555であった。
【0044】
実施例1~実施例8において、樹脂発泡体の内側部分(内周面から23.5%の厚みの部分)の比重から、樹脂発泡体の全体の比重を差し引いた値(比重差の値)は、0.115~0.259であった。比較例1~比較例3において、比重差の値は、0.070~0.095であった。
【0045】
図4に示すように、実施例1~実施例8は、比較例1~比較例3に対して、同程度の硬度(30度以上40度以下)であっても、比重差が大きくなっている。比較例1~比較例3では、架橋・発泡時の仮芯としてパイプ(中空)状のものを用いたことで、仮芯の内径側に蒸気などが回り込み易く、仮芯から筒状部材の内径側に熱が伝達され易いことが推察される。一方で、実施例1~実施例8では、仮芯として無垢(中実)の円柱形状のものを用いたことで、仮芯の内側まで熱が伝達され難く、仮芯から筒状部材の内径側に熱が伝達され難いことが推察される。そのため、実施例1~実施例8は、比較例1~比較例3に比べて、樹脂発泡体の内周面側の発泡倍率が小さくなり、樹脂発泡体の内周面側が密に(空隙の密度が少なく)形成されたことが推測される。
【0046】
実施例1~実施例8において、樹脂発泡体の歪み(圧縮永久歪み)が0.19%~0.61%であり、「A」の判定であった。比較例1~比較例3において、樹脂発泡体の歪み(圧縮永久歪み)が1.23%~1.59%であり、「B」の判定であった。図5に示すように、実施例1~実施例8は、比較例1~比較例3に対して、同程度の硬度(30度以上40度以下)であっても、比重差が大きく、歪み(圧縮永久歪み)が小さくなっている。実施例1~実施例8の比重差は、比較例1~比較例3の比重差よりも大きいため、比較例1~比較例3の歪み(圧縮永久歪み)よりも小さくなっている。

【0047】
実施例1~8では、適度な硬度を維持しつつ、圧縮永久歪みを低減し得る樹脂発泡体を製造できた。
【0048】
<他の実施形態>
本発明は、上記記述及び図面によって説明した実施例に限定されるものではなく、例えば次のような実施の形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
上記実施形態において、樹脂発泡体12は、イオン導電剤を含んでいてもよい。
【符号の説明】
【0049】
10…ローラ
11…シャフト
12…樹脂発泡体
13…シャフト挿入用孔(貫通孔)
14…内側部分
図1
図2
図3
図4
図5