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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-26
(45)【発行日】2024-04-03
(54)【発明の名称】フィルムシート取付部材
(51)【国際特許分類】
   A01G 9/14 20060101AFI20240327BHJP
【FI】
A01G9/14 L
A01G9/14 A
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020198417
(22)【出願日】2020-11-30
(65)【公開番号】P2022086421
(43)【公開日】2022-06-09
【審査請求日】2023-03-20
(73)【特許権者】
【識別番号】305024008
【氏名又は名称】サンキンB&G株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117374
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 真一
(72)【発明者】
【氏名】西田 達
【審査官】田辺 義拓
(56)【参考文献】
【文献】実開昭63-155343(JP,U)
【文献】実開平03-123106(JP,U)
【文献】特表昭60-502267(JP,A)
【文献】実開平01-101331(JP,U)
【文献】特開2001-211758(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 9/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
温室用のフィルムシートを張設するシート受部材と前記シート受部材に嵌合して前記フィルムシートを挟持し固定するシート押さえ部材とを備える温室用フィルムシートの取付部材であって、
前記シート受部材は底面と両側壁を有し上面に開口部を有する長尺状の溝状本体の両側壁上端部に内方に向けて曲折する突部を備え、
前記シート押さえ部材は、長尺状の天面の一端部を下方に湾曲して形成される湾曲部と
前記天面の他端部には断面において凹部と凸部とを形成するように略S字状に下方に向けて湾曲して形成される略S字状湾曲部とを備え、
前記シート押さえ部材の幅方向は、前記開口部の幅方向長さより長いが、前記開口部に斜めに挿入可能な長さを備え、
前記シート押さえ部材を前記シート受部材の奥隅に突入させて、前記略S字状湾曲部を前記シート受部材の前記長尺状の溝状本体内において、前記凹部が前記突出部に嵌め込まれ、前記突出部を前記凹部と前記凸部とによって挟持するように遊嵌させ、前記フィルムシートを引っ張ることにより、前記シート押さえ部材を前記突出部側にスライド移動させ、前記フィルムシートを張設した状態において、前記略S字状湾曲部と前記突出部とにより、前記フィルムシートを張設固定させてなる
ことを特徴とするフィルムシートの取付部材。
【請求項2】
前記側壁の一方の外面に沿ってネジを螺合する断面略V字状の長尺状のネジ保持溝を形成してなることを特徴とする請求項1に記載のフィルムシートの取付部材。
【請求項3】
請求項1又または2に記載のフィルムシートの取付部材を備えることを特徴とする温室。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農業用温室等に張設されるフィルムシートの取付部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、農業用温室に張設されるフィルムシートは、フッ素樹脂またはPET樹脂を使用した硬質系シートと、塩化ビニールまたはポリフィルムを使用した軟質系シートがあり、軟質系シートでは、一般的に溝型の保持具にシートを挿入してシートの上からバネ材を溝に嵌合してシートを定着する方法が採用されており、他方、硬質系シートでは、一般的に長尺の溝形保持具に両面テープなどで仮止めされたシートを、概略200mmの等間隔に貫通穴の開いたレール状のシート押え材を、シート上方から溝形の保持具に嵌合し貫通穴毎にビスで挟持して固定している方法が採用されている。
【0003】
前記従来のフィルムシートの取付部材としては、例えば、図8に示すような、特開2019-62820号公報(特許文献1)記載のものが公知である。前記特許公報1に記載のフィルムシートの取付部材は、透明シートに強風等の強い外力が作用してもシートの定着が解消されず、雨水の侵入を防止でき、シートの破断も防止できるように、上端の開口部3を幅狭に形成した長尺な蟻溝フレーム1と、上記蟻溝フレーム1の開口端部に着脱自在に嵌合するシート押えキャップ2とからなり、蟻溝フレーム2内に透明シートS1を押し込みながら透明シートS1を蟻溝フレーム1とシート押えキャップ2とで挟持するシートの定着装置において、シート押えキャップ2を板フレーム4と、板フレーム4の一端に設けた上下一対の二股状の支持片5と、板フレーム4の他端近傍に下方に向け起立した垂直又は傾斜した押え片6bとで構成している。
【0004】
これにより、 シート押えキャップが板フレームと、板フレームの端部に設けた二股状の支持片と、上記板フレームの他端近傍に下方に向け起立した垂直又は傾斜した押え片とで構成させたので、これらの部材の作用で蟻溝フレームと協働して透明シートにテンションを付与しながら当該シートを定着でき、併せて、シートに強風等に強い外力が作用してもシート押えキャップが蟻溝フレームから外れるのが防止でき、また、シートの定着操作時に手を痛めず、操作性を向上させ、シートを破断させるのも防止できるとしている。
【0005】
前記発明においては、単一の押え片6bがあれば、前記発明の目的は達成されるが、上記押え片6bに対向して垂直なガイド片6aを起立し二つの押え片6bとガイド片6aとでソケット6を構成させ、更に、板フレーム4を貫通してソケット6内に嵌入するソケット拡径部材を設けても良いとしているが、実施例においては、フランジ7aとこのフランジ7aから延びるネジ棒からなるビス7から構成されるソケット拡径部材を設けたもののみが記載されており、シートの定着時には、硬質の透明シートS1を蟻溝フレーム1上に載置させ、両面粘着テープXに貼付しておいて仮止めし、板フレーム4の右側支持片5をシートS1を押え込みながら蟻溝フレーム1の右側側壁1bの上端湾曲部1cに嵌合させ、ソケット6をシートS1を下方に押し込んでテンションを掛けながら蟻溝フレーム1の開口部3内に嵌合させ、ソケット6内にビス7を螺合させて圧入させて、それにより、ビス7の太さに対応してソケット6を拡げ、突起6cによりシートS1にテンションを付与しながら蟻溝フレーム1の左側側壁1bの内周に圧接させるている。すなわち、シートS1は蟻溝フレーム1とシート押えキャップ2とで強制的にテンションを付与されながら挟持され、屋根面上に均一に展張されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平7-207953号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前記従来のフィルムシートの取付部材においては、蟻溝フレーム1上に両面粘着テープで仮止め載置した透明シートS1を下方に押し込んでテンションを掛けながら蟻溝フレーム1の開口部3内に右側支持片5を嵌合させ、ビス7の螺合によりソケット6を拡げテンションを付与して挟持しているだけなので、フィルムシートの定着は、実質的にビス7の螺合によるソケット6の拡径の押圧力だけで行われている状態である。このため、ビス7が入っている部分周辺は、ある程度、蟻溝フレーム1の板フレーム4に対する保持力があるものの、ビス7とビス7間においては保持力が弱くなる。すなわち、シートの定着を点で保持している状態であり、したがって、ビス7とビス7間においては、シートS1の谷樋に面した端部が風でめくり上がったりする場合は、フィルムシートの定着が好適に行われない場合が生じる。
【0008】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであって、フィルムシート取付部材において、フィルムシートの保持を点ではなく、線で保持を行い、より定着力に優れるフィルムシートの取付部材を提供することを目的とする。
【0009】
また本発明の他の目的は、より定着力に優れるフィルムシート取付部材を備える温室を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に記載のフィルムシートの取付部材は、温室用のフィルムシートを張設するシート受部材と前記シート受部材に嵌合して前記フィルムシートを挟持し固定するシート押さえ部材とを備える温室用フィルムシートの取付部材であって、前記シート受部材は底面と両側壁を有し上面が開口する長尺状の溝状本体の両側壁上端部に内方に向けて曲折する突設部を備え、前記シート押さえ部材は、長尺状の天面の一端部を下方に湾曲して形成される湾曲部と前記天面の他端部には断面において凹部と凸部とを形成するように略S字状に下方に向けて湾曲して形成される略S字状湾曲部とを備え、前記シート押さえ部材の幅長は、前記シート受部材の溝に斜めに嵌め込めるが、スライド移動させた場合に前記シート受部材の突設部によって抜出が規制される幅長を備えることを特徴とする。
【0011】
請求項1に記載のフィルムシートの取付部材にあっては、温室用のフィルムシートを張設するシート受部材と前記シート受部材に嵌合して前記フィルムシートを挟持し固定するシート押さえ部材とを備える温室用フィルムシートの取付部材であって、前記シート受部材は底面と両側壁を有し上面が開口する長尺状の溝状本体の両側壁上端部に内方に向けて曲折する突設部を備え、前記シート押さえ部材は、長尺状の天面の一端部を下方に湾曲して形成される湾曲部と前記天面の他端部には断面において凹部と凸部とを形成するように略S字状に下方に向けて湾曲して形成される略S字状湾曲部とを備え、前記シート押さえ部材の幅長は、前記シート受部材の溝に斜めに嵌め込めるが、スライド移動させた場合に前記シート受部材の突設部によって抜出が規制される幅長を備えているので、フィルムシートを載置した状態で、前記シート押さえ部材を前記シート受部材の前記開口部に前記湾曲部を斜めから奥隅に向けて突入させて、前記断面略S字状部を前記シート受部材内において、前記凹部を前記突出部に嵌め込むようにして、前記突出部を前記凹部と前記凸部によって挟持し、その状態で、前記湾曲部側の前記フィルムシートを引っ張ると、前記湾曲部は上方に持ち上げられ、前記突出部に当接し規制されると共に、前記突出部側にスライド移動し、前記断面略S字状部は前記突出部に挟持され固定されるので、前記フィルムシートは、前記断面略S字状部と前記突出部により嵌合固定され、前記フィルムシートは、前記断面略S字状部と前記突出部とによる嵌合固定及び前記湾曲部と前記突出部との挟持固定により、前記シート押さえ部材を前記シート受部材の長手方向の全長に亘り、線状に固定されることとなり、部分的に固定状態に強弱が生じることはなく、また、前記シート押さえ部材は、前記シート受部材の溝に、スライド代をもって遊嵌されるため、張設される前記フィルムシートの厚さが限定されず、また、嵌合状態における組み付け精度も厳密には要求されず、設計の自由度が増すこととなる。
【0012】
請求項2に記載のフィルムシートの取付部材は、請求項1に記載のフィルムシートの取付部材において、前記側壁の一方の外面に沿ってネジを螺合する断面略V字状の長尺状のネジ保持溝を形成してなることを特徴とする。
【0013】
請求項2に記載のフィルムシートの取付部材にあっては、前記フィルムシートが嵌合固定された状態で、ビスにより、前記シート押さえ部材を前記シート受部材に対して位置固定することができるので、前記シート押さえ部材と前記シート受部材の嵌合がしっかりと固定することができる。
【0014】
請求項3に記載の農業用温室は、請求項1又または2に記載の温室用フィルムシートの取付部材を備えることを特徴とする。
【0015】
請求項3に記載の農業用温室にあっては、前記フィルムシートを、前記シート押さえ部材と前記シート受部材の長手方向の全長に亘り線状に固定されるので、部分的に固定状態に強弱が生じることはなく、また、前記シート押さえ部材は、前記シート受部材の溝に、スライド代をもって遊嵌されるため、張設される前記フィルムシートの厚さが限定されず、また、嵌合状態における組み付け精度も厳密には要求されず、設計の自由度が増すこととなる。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に記載のフィルムシートの取付部材に依ると、温室用のフィルムシートを張設するシート受部材と前記シート受部材に嵌合して前記フィルムシートを挟持し固定するシート押さえ部材とを備える温室用フィルムシートの取付部材であって、前記シート受部材は底面と両側壁を有し上面が開口する長尺状の溝状本体の両側壁上端部に内方に向けて曲折する突設部を備え、前記シート押さえ部材は、長尺状の天面の一端部を下方に湾曲して形成される湾曲部と前記天面の他端部には断面において凹部と凸部とを形成するように略S字状に下方に向けて湾曲して形成される略S字状湾曲部とを備え、前記シート押さえ部材の幅長は、前記シート受部材の溝に斜めに嵌め込めるが、スライド移動させた場合に前記シート受部材の突設部によって抜出が規制される幅長を備えているので、フィルムシートを載置した状態で、前記シート押さえ部材を前記シート受部材の前記開口部に前記湾曲部を斜めから奥隅に向けて突入させて、前記断面略S字状部を前記シート受部材内において、前記凹部を前記突出部に嵌め込むようにして、前記突出部を前記凹部と前記凸部によって挟持し、その状態で、前記湾曲部側の前記フィルムシートを引っ張ると、前記湾曲部は上方に持ち上げられ、前記突出部に当接し規制されると共に、前記突出部側にスライド移動し、前記断面略S字状部は前記突出部に挟持され固定されるので、前記フィルムシートは、前記断面略S字状部と前記突出部により嵌合固定され、前記フィルムシートは、前記断面略S字状部と前記突出部とによる嵌合固定及び前記湾曲部と前記突出部との挟持固定により、前記シート押さえ部材を前記シート受部材の長手方向の全長に亘り、線状に固定されることとなり、部分的に固定状態に強弱が生じることはなく、また、前記シート押さえ部材は、前記シート受部材の溝に、スライド代をもって遊嵌されるため、張設される前記フィルムシートの厚さが限定されず、また、嵌合状態における組み付け精度も厳密には要求されず、設計の自由度が増すこととなる。
【0017】
請求項2に係るフィルムシートの取付部に依ると、請求項1に記載のフィルムシートの取付部材において、前記側壁の一方の外面に沿ってネジを螺合する断面略V字状の長尺状のネジ保持溝を形成しているので、前記フィルムシートが嵌合固定された状態で、ビスにより、前記シート押さえ部材を前記シート受部材に対して位置固定することができるので、前記シート押さえ部材と前記シート受部材の嵌合がしっかりと固定することができることとなる。
【0018】
請求項3に係る農業用温室に依ると、請求項1又または2に記載の温室用フィルムシートの取付部材を備えているので、前記フィルムシートを、前記シート押さえ部材と前記シート受部材の長手方向の全長に亘り線状に固定されるので、部分的に固定状態に強弱が生じることはなく、また、前記シート押さえ部材は、前記シート受部材の溝に、スライド代をもって遊嵌されるため、張設される前記フィルムシートの厚さが限定されず、また、嵌合状態における組み付け精度も厳密には要求されず、設計の自由度が増すこととなる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明にかかるフィルムシート取付部材の分解斜視図である。
図2】フィルムシートの取付手順を示す工程図である。
図3】農業用温室の要部斜視図である。
図4】農業用温室の屋根の要部拡大図である。
図5】(a)は図4のA-A部分拡大図であり、(b)は同B-B部分拡大図である。
図6】(a)はフィルムシートの取付機構を示す要部拡大断面図であり、(b)は(a)の要部拡大平面図である。
図7】フィルムシートの取付手順を示す工程図である。
図8】従来のフィルムシート取付部材の縦断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための最良の形態を図面に基づいて具体的に説明する。
【0021】
図1は本発明にかかるフィルムシートの取付部材を示す図であり、(a)は分解斜視図であり、(b)は横拡大断面図である。
【0022】
図1において、10は本発明にかかるフィルムシート取付部材であり、前記フィルムシート取付部材10は、シート受部材20と、それに嵌合するシート押さえ部材30とを備える。
【0023】
前記シート受部材20は、上部に開口部21を有する長尺の溝状体に形成されており、前記シート受部材20は、底面22と前記底面22の幅方向の両端から起立する側壁23,24と前記側壁23,24の上端から内方に向けて突出する突出部25,26を有し、一方の前記側壁24の外方には前記側壁24に沿って略V字状のネジ保持溝27を形成している。
【0024】
前記シート押さえ部材30は、前記シート受部材20と符合するように長尺状に形成されており、下方に向けて、前記シート受部材20の前記開口部21に遊嵌する嵌合部31を形成し、また、前記嵌合部31と連接され、前記シート受部材20と嵌合固定した状態で前記ネジ保持溝27の上面を覆うネジ取付部32を備えている。
【0025】
そして、前記嵌合部31の幅方向先端部は下方内方に向けて湾曲させ湾曲部33として形成し、一方、幅方向基端部においては、凹部34aと凸部34bを連続して断面略S字状部34となるように形成し、前記凹部34aと前記凸部34bによって前記突出部26を嵌合固定時において挟持できるように形成している。
【0026】
また、前記嵌合部31の幅方向長さXは、前記開口部21の幅方向長さYより長いが、前記開口部21に斜めに挿入可能な長さに設定している。
【0027】
上記のように形成されるフィルムシート取付部材10使用して前記フィルムシートFSを張設するには、図2(a)~(d)に示す工程により行うと良い。
【0028】
図2(a)~(d)は前記フィルムシート取付部材10使用して前記フィルムシートFSを農業用温室に張設する工程を示す要部拡大端面図である。
【0029】
図2に示すように、前記フィルムシート取付部材10使用して前記フィルムシートFSを農業用温室に張設するには、まず、図2(a)に示すように、農業用温室に前記シート受部材20を取り付け、その上に前記フィルムシートFSを載置する。
【0030】
次に図2(b)に示すように、前記シート押さえ部材30を前記シート受部材20の前記開口部21に前記湾曲部33を斜めから突入させる。
【0031】
そして、図2(c)に示すように、前記シート押さえ部材30を前記シート受部材20の奥隅に突入させて、前記断面略S字状部34を前記シート受部材20の溝内において、前記凹部34aが前記突出部26に嵌め込まれ、前記突出部26を前記凹部34aと前記凸部34bによって挟持するように嵌め込むのである。
【0032】
この状態においては、前記シート押さえ部材30は、前記シート受部材20の溝内において、遊嵌されている状態であり、前記シート押さえ部材30は、前記シート受部材20の溝内において幅方向にスライド可能な状態である。
【0033】
そして、その状態で、図2(c)の矢印の方向に、前記湾曲部33側の前記フィルムシートFSを引っ張ると、図2(d)に示すように、前記シート押さえ部材30は前記突出部26側にスライド移動し、前記フィルムシートFSは、前記断面略S字状部34と前記突出部26により嵌合固定されると共に、前記湾曲部33は、前記突出部25に当接し規制されて、その状態で固定される。
【0034】
そして、その前記フィルムシートFSが嵌合固定された状態で、タッピンビスBを前記ネジ取付部32に開けられたネジ孔(図示せず)から前記ネジ保持溝27にねじ込み、前記シート押さえ部材30を前記シート受部材20に対して位置固定するのである。
【0035】
本発明に係るフィルムシート取付部材10は以上のように取り付けられるので、前記フィルムシートFSは、前記断面略S字状部34と前記突出部26とによる嵌合固定及び前記湾曲部33と前記突出部25との挟持固定により、前記シート押さえ部材30を前記シート受部材20の長手方向の全長に亘り、線状に固定されることとなり、部分的に固定状態に強弱が生じることはない。また、前記シート押さえ部材30は、前記シート受部材20の溝に、スライド代をもって遊嵌されるため、張設される前記フィルムシートFSの厚さが限定されず、また、硬質シート及び軟質シートのいずれにも対応できる。さらに、嵌合状態における組み付け精度も厳密には要求されず、設計の自由度が増すこととなる。
【0036】
上記のように形成されるフィルムシート取付部材10を使用して前記フィルムシートFSを農業用温室の屋根に張設する場合においては、例えば、次のような構造の農業用温室が好適である。
【0037】
図3は本発明にかかる農業用温室の要部斜視図であり、図4は同農業用温室の屋根面の要部拡大図であり、図5(a)は図4のA-A部分拡大図であり、(b)は同B-B部分拡大図である。また、図6(a)はフィルムシートの取付機構を示す要部拡大断面図であり、(b)は(a)の要部拡大平面図である。
【0038】
図3乃至図5において、50は間口方向に連設している連棟型の農業用温室であり、51は支柱である。前記支柱51は、奥行方向および間口方向に複数本が夫々立設されている。前記支柱51の上部には間口方向に向けてトラス梁58を架設している。
【0039】
前記支柱51の上部には、複数の合掌材52を頂部において山型となるように突合状態で奥行方向に向けて並設している。また、前記合掌材52の頂部には、奥行方向に向けて、長尺状の棟材53を架設している。前記棟材53を支点として開閉自在の天窓54を設けている。前記天窓54の下部を支持すべく前記合掌材52の上部に奥行方向に向けて母屋材56架設される。前記母屋材56は、図6(a)及び(b)にも詳細に示すとおり、前記合掌材52に取り付けられる。前記母屋材56は前記合掌材52よりも幅の広い略L字状のアングル材55により、ボルトBとナットNにより螺設され取り付けられており、前記母屋材56は、二組の前記ボルトBとナットNの螺合により、前記合掌材52の斜面上を上下移動して位置調整を行うことができる。また、連棟部を支持する支柱51上部には谷樋57を、奥行方向に向けて架設している。
【0040】
そして、前記母屋材56の上面には前記フィルムシート取付部材10を取り付けると共に、前記谷樋57の上面にも前記フィルムシート取付部材10を取り付けて、この間にフィルムシートFSを張設するのである。
【0041】
図7は、上記のように構成される農業用温室50に、前記フィルムシート取付部材10によって前記フィルムシートFSを張設する工程を示す。
【0042】
まず、前記母屋材56を、図6の破線で示すように、前記ボルトBと前記ナットNの螺合を緩めて、下方に位置するように調整しておく。
【0043】
次に、図7(a)に示すように、前記母屋材56の上面に取り付けられた前記シート受部材20と前記谷樋57の上面に取り付けられた前記シート受部材20との間に前記フィルムシートFSを載置する。このとき、前記シート受部材20,20は、前記湾曲部33が互いに向かい合うように取り付けられている。
【0044】
なお、このとき、図3に示すように、巻回された前記フィルムシートFSを一方の妻面から、他方の妻面に向けて巻き外すようにして載置すると作業性が良好となる。前記フィルムシートFSは通常巻回された状態で販売されており、前記フィルムシートFSの幅と前記母屋材56と前記谷樋57間の幅長を一致させると、前記フィルムシートFSを前記農業温室50における所要の寸法に幅長を裁断することなく、巻回状態のまま使用することができるので、さらに作業性が高まる。
【0045】
次に、図7(b)に示すように、前記シート押さえ部材30を前記シート受部材20の前記開口部21に前記湾曲部33を斜めから突入させ、前記シート押さえ部材30を前記シート受部材20の奥隅に突入させて、前記断面略S字状部34を前記シート受部材20の溝内において、前記凹部34aが前記突出部26に嵌め込まれ、前記突出部26を記凹部34aと前記凸部34bによって挟持するように嵌め込む。
【0046】
次に、前記母屋材56を、予め緩めてあった前記ボルトBと前記ナットNを締めて、図6の実線で示すように、上方に移動させ、前記フィルムシートを上方に引っ張り上げて、図7(c)に示すように、前記フィルムシート取付部材10において、前記湾曲部33を上方に持ち上げ、前記突出部25に当接させて前記フィルムシートFSを挟持すると共に、前記突出部26側にスライド移動させ、前記断面略S字状部34と前記突出部26に前記フィルムシートFSを挟持して固定させる。
【0047】
そして、前記フィルムシートFSが嵌合固定された状態で、タッピングビスTBを前記ネジ取付部32に開けられたネジ孔(図示せず)から前記ネジ保持溝27にねじ込み、前記シート押さえ部材30を前記シート受部材20に対して位置固定するのである。
【0048】
以上の農業用温室50によると、前記シート押さえ部材30を前記シート受部材20の長手方向の全長に亘り、線状に固定されることとなり、部分的に固定状態に強弱が生じることはない。また、前記シート押さえ部材30は、前記シート受部材20の溝に、スライド代をもって遊嵌されるため、張設される前記フィルムシートFSの厚さが限定されず、また、硬質シート及び軟質シートのいずれにも対応できる。さらに、嵌合状態における組み付け精度も厳密には要求されず、設計の自由度が増すこととなる。
【0049】
さらに、前記農業用温室50においては、垂木材を必要としないため、構造を簡略化することができる。
【0050】
なお、前記フィルムシートFSを張設する機構としては、図6に示すように、前記合掌材52の上部に取り付けた略L字状のアングル材55と、前記アングル材55にボルトBとナットNにより螺設された前記母屋材56とにより構成したが、これに限定されないことは言うまでもない。
【0051】
また、前記フィルムシート取付部材10が取り付けられる温室は農業用に限定されず、他の用途に用いられるものであっても良い。
【符号の説明】
【0052】
10・・・フィルムシート取付部材
20・・・シート受部材
21・・・開口部
22・・・底面
23,24・・側壁
25,26・・突出部
27・・ネジ保持溝

30・・・シート押さえ部材
31・・・嵌合部
32・・・ネジ取付部
33・・・湾曲部
34・・・断面略S字状部
34a・・凹部
34b・・凸部

X・・・嵌合部の幅方向長さ
Y・・・開口部の幅方向長さ
FS・・・フィルムシート
TB・・・タッピングビス

50・・・農業用温室
51・・・支柱
52・・・合掌材
53・・・棟材
54・・・天窓
55・・・アングル材
56・・・母屋材
57・・・谷樋
58・・・トラス梁

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8