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特許7461286鋼管杭・鋼管矢板に着脱可能な保護キャップ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-26
(45)【発行日】2024-04-03
(54)【発明の名称】鋼管杭・鋼管矢板に着脱可能な保護キャップ
(51)【国際特許分類】
   E02D 5/24 20060101AFI20240327BHJP
   E02D 5/60 20060101ALI20240327BHJP
   E02D 13/10 20060101ALI20240327BHJP
【FI】
E02D5/24 103
E02D5/60
E02D13/10
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020208512
(22)【出願日】2020-12-16
(65)【公開番号】P2022095281
(43)【公開日】2022-06-28
【審査請求日】2023-06-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】山本 浩之
(72)【発明者】
【氏名】杉原 宏英
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 崇志
【審査官】五十幡 直子
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-20113(JP,A)
【文献】特開2000-319874(JP,A)
【文献】特開2008-223409(JP,A)
【文献】特開2020-186568(JP,A)
【文献】米国特許第4668119(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D5/22-5/80
E02D7/00-13/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼管の端部に振り分けて備えられたボックス継手及びピン継手によって長手方向に連結可能に構成され、かつ前記ボックス継手に設けられたボックス側配設部と前記ピン継手に設けられたピン側配設部とから構成されるキー配設部に回転抑止キーを配設することによって前記ボックス継手及び前記ピン継手の回り止めが可能に構成された鋼管杭・鋼管矢板の打ち込み施工時に用いられ、当該打ち込まれる鋼管杭・鋼管矢板に備えられた前記ピン継手に着脱可能な保護キャップであって、
前記ピン継手を連結し得るキャップ継手を備え、
前記キャップ継手は、前記連結されるピン継手に設けられているピン側配設部に対応する位置に、前記回転抑止キーを収容可能な収容部が設けられ、
前記キャップ継手には、当該キャップ継手の外周面から前記収容部に連通する開口部が設けられ、
前記収容部に前記回転抑止キーを収容した状態であるときに、前記開口部から挿入可能な止めピンによって、前記回転抑止キーが前記収容部から脱落することが防止されるように構成されていることを特徴とする保護キャップ。
【請求項2】
前記開口部には、前記止めピンを挿通した後に、当該止めピンが前記開口部から脱落することを防止するストップリングが設けられていることを特徴とする請求項1に記載の保護キャップ。
【請求項3】
前記止めピンがボルトから構成され、
前記開口部には当該ボルトの雄ネジと螺合可能な雌ネジが形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の保護キャップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼管の端部に振り分けて備えられたピン継手及びボックス継手によって、長手方向に連結可能に構成された鋼管杭・鋼管矢板の打ち込み施工時に、打ち込まれる鋼管杭・鋼管矢板に備えられた前記ピン継手に着脱可能な保護キャップに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鋼管杭・鋼管矢板は施工現場に搬入された各単管を現地で溶接接合することによって連結されていた。近年、鋼管杭・鋼管矢板の連結には、溶接接合に替えて急速施工が可能な機械式継手が採用されている。
【0003】
この機械式継手は、特許文献1に開示されるように、鋼管の端部に振り分けて備えられたピン継手、ボックス継手、荷重伝達キー及び回転抑止キー等から構成されている。
【0004】
上側に設けられた鋼管のボックス継手と、下側の鋼管に設けられたピン継手とが、荷重伝達キー及び回転抑止キーによって抜け止め状態、かつ、回り止め状態で連結される。
【0005】
鋼管杭・鋼管矢板は振動工法、回転工法、中掘り工法及びプレボーリング工法等によって打ち込み施工される。
【0006】
例えば振動工法においては、バイブロハンマーによって振動を付与しつつ地盤に圧入することから、クレーンに吊設されたバイブロチャックで鋼管杭・鋼管矢板に設けられている機械式継手を直接把持すると、機械式継手が変形し、正常な連結に支障をきたすおそれがある。
【0007】
そこでこれを避けるために保護キャップが用いられる。保護キャップは、ボックス継手と同様に荷重伝達キー及び回転抑止キーによってピン継手に対して抜け止め状態、かつ、回り止め状態で連結される。なお、保護キャップは、打設の完了後に取り外される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2000-319874号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、上述のような打ち込み施工時において、回転抑止キーを当該ピン継手に固定するボルトには大きな負荷がかかり、ボルトが破損した場合には、回転抑止キーが脱落してしまい、保護キャップとピン継手に回り止めができなくなる虞があった。
【0010】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであって、回転抑止キーの脱落の虞がない保護キャップを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述の目的を達成するための、本発明の保護キャップの特徴構成は、鋼管の端部に振り分けて備えられたボックス継手及びピン継手によって長手方向に連結可能に構成され、かつ前記ボックス継手に設けられたボックス側配設部と前記ピン継手に設けられたピン側配設部とから構成されるキー配設部に回転抑止キーを配設することによって前記ボックス継手及び前記ピン継手の回り止めが可能に構成された鋼管杭・鋼管矢板の打ち込み施工時に用いられ、当該打ち込まれる鋼管杭・鋼管矢板に備えられた前記ピン継手に着脱可能な保護キャップであって、前記ピン継手を連結し得るキャップ継手を備え、前記キャップ継手は、前記連結されるピン継手に設けられているピン側配設部に対応する位置に、前記回転抑止キーを収容可能な収容部が設けられ、前記キャップ継手には、当該キャップ継手の外周面から前記収容部に連通する開口部が設けられ、前記収容部に前記回転抑止キーを収容した状態であるときに、前記開口部から挿入可能な止めピンによって、前記回転抑止キーが前記収容部から脱落することが防止されるように構成されている点にある。
【0012】
上述の構成によると、バイブロハンマーを使用して鋼管杭を打ち込み施工する際に、回転抑止キーを保護キャップに固定するための止めピンが、開口部から脱落したとしても、保護キャップからピン継手が抜けない限り、回転抑止キーが脱落することがない。
【0013】
数の多いピン継手ではなく、使いまわして用いられる保護キャップに対する加工のみによって、保護キャップとピン継手との相対回転を防止することができる構成が実現されるため、加工の手間が少ない。
【0014】
本発明においては、前記開口部には、前記止めピンを挿通した後に、当該止めピンが前記開口部から脱落することを防止するストップリングが設けられていると好適である。
【0015】
上述の構成によると、開口部に設けられたストップリングにより、止めピンが当該開口部から脱落することが防止される。
【0016】
本発明においては、前記止めピンがボルトから構成され、前記開口部には当該ボルトの雄ネジと螺合可能な雌ネジが形成されていると好適である。
【0017】
上述の構成によると、止めピンを開口部に対して螺着することができるため、止めピンが当該開口部から脱落する虞が低減される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】鋼管杭の説明図である。
図2】鋼管杭及び保護キャップの説明図である。
図3】鋼管杭及び保護キャップの要部の説明図である。
図4】鋼管杭及び保護キャップの説明図である。
図5】鋼管杭及び保護キャップの要部の説明図である。
図6】回転抑止キー及びボルトの要部の説明図である。
図7】回転抑止キー及びボルトの要部の説明図である。
図8】回転抑止キー及びキー配設部の説明図である。
図9】回転抑止キー及びキー配設部の説明図である。
図10】回転抑止キー及びキー配設部の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に本発明に係る鋼管杭・鋼管矢板の保護キャップの実施形態を図面に基づいて説明する。図1には、本発明に係る保護キャップが着脱可能な鋼管杭・鋼管矢板の一例として鋼管杭1が示されている。
【0020】
鋼管杭1は複数の鋼管2が機械式継手10によって連結されて構成されている。機械式継手10は、ボックス継手11、ピン継手12、荷重伝達キー13及び回転抑止キー14等を備えている。
【0021】
各鋼管2は、下端部にボックス継手11が溶接されるともに、上端部にピン継手12が溶接されて構成されており、上側の鋼管2の下端部に溶接されているボックス継手11と、下側の鋼管2の上端部に溶接されているピン継手12とが、荷重伝達キー13及び回転抑止キー14によって抜け止め状態、かつ、回り止め状態で連結される。
【0022】
ボックス継手11やピン継手12は、鋼製の筒状体を加工することによって作成される。ボックス継手11には、当該ボックス継手11の内周面15に一条の内向き溝部16が備えられ、当該ボックス継手11の外周面から内向き溝部16に連通する開口部17が設けられている。ピン継手12には、当該ピン継手12の外周面18に一条の外向き溝部19が備えられている。内向き溝部16や外向き溝部19の数はこの限りではなく、それぞれ複数条であってもよい。
【0023】
ボックス継手11にピン継手12を差し込んだ状態であるときに、開口部17からねじ込んだ挿入固定ボルト20によって、内向き溝部16と外向き溝部19とに跨るように荷重伝達キー13を配置させることにより、ボックス継手11とピン継手12とが抜け止め状態に維持される。
【0024】
さらにボックス継手11とピン継手12には、当該ボックス継手11及びピン継手12との外周面における継ぎ目において、それぞれボックス側配設部21及びピン側配設部22が形成されている。
【0025】
ピン側配設部22には、キー配設部23に当該回転抑止キー14を固定するためのボルト24を挿通するために、鋼管杭の径方向に沿って配設部貫通孔25が設けられている。なお、回転抑止キー14にも、配設部貫通孔25と対応するようにキー貫通孔26が設けられている。
【0026】
ボックス継手11にピン継手12を差し込んだ状態であるときに、ボックス側配設部21及びピン側配設部22から構成されるキー配設部23に回転抑止キー14を配設し、ボルト24の雄ネジ27と、配設部貫通孔25に設けられている雌ネジ28とを螺合させることによって、回転抑止キー14がキー配設部23から脱落することが防止される。
【0027】
回転抑止キー14に設けられているキー貫通孔26は、ボルト24の外径より大きなキリ穴29と、ボルト24の頭部を収容可能な座ぐり30とから構成されている。
【0028】
このような鋼管杭1を、バイブロハンマーによって振動を付与しつつ地盤に圧入する振動工法によって打ち込み施工するにあたり、クレーンに吊設されたバイブロチャックで鋼管杭1のボックス継手11やピン継手12を直接把持することを避けるために、本発明に係る保護キャップ3が用いられる(図2参照)。
【0029】
鋼管杭1は打ち込み施工するにあたり、ボックス継手11が進行方向の前方側になるように打ち込むこともできるし、ピン継手12が進行方向の前方側になるように打ち込むこともできる。本実施形態においては、保護キャップ3は、ボックス継手11が進行方向の前方側になるように打ち込む場合に、打ち込み方向の後方側となるピン継手12に着脱可能に構成されている場合について説明する。
【0030】
図2に示すように、保護キャップ3は、ボックス継手11と同様の材質から構成された部材である。保護キャップ3は筒状のキャップ継手31を有する。キャップ継手31は、ピン継手12の外向き溝部19が設けられている部分を外囲し得る大きさに形成されている。
【0031】
キャップ継手31の内周面32のうち、ピン継手12の外向き溝部19に相対する位置に、内向き溝部33が設けられている。キャップ継手31には内向き溝部33に連通する開口部34が設けられている。
【0032】
キャップ継手31に対してピン継手12が挿入させられた状態で、開口部34を介して抜止キー35を、内向き溝部33と外向き溝部19とに跨るように配置させることによって、キャップ継手31とピン継手12とが抜け止め状態で連結される。なお、抜止キー35は荷重伝達キー13と同様の構成である。したがって荷重伝達キー13を用いてもよい。
【0033】
図3に示すように、キャップ継手31は、キャップ継手31における下向きの端面36に、ピン継手12に設けられているピン側配設部22に対応する位置に、回転抑止キー14の収容部37が形成されている。なお、収容部37の深さは、当該収容部37に収容された回転抑止キー14が、ピン継手12のピン側配設部22に係合可能な程度に出るような深さである。
【0034】
当該キャップ継手31には、キャップ継手31の外周面から収容部37に連通する開口部38が形成されている。開口部38は、キャップ継手31の外周面から止めピン39が挿入可能に構成されている。止めピン39は中実の軸状部材から構成され、開口部38に挿入したときに当該止めピン39の先端が、収容部37に収容された回転抑止キー14のキー貫通孔26に接触可能なように構成されている。
【0035】
キャップ継手31の収容部37に回転抑止キー14を、当該回転抑止キー14に設けられているキー貫通孔26が収容部37に収容されるように収容して、キャップ継手31の外周面から開口部38を介して止めピン39によって、当該回転抑止キー14のキー貫通孔26に接触させることによって、当該回転抑止キー14が収容部37から下方に脱落することが防止される。なお、開口部38には、止めピン39が当該開口部38から脱落することを防止するためにストップリング40が取り付けられている。
【0036】
上述の構成により、バイブロハンマーを使用して鋼管杭1を打ち込み施工する際に、回転抑止キー14をキャップ継手31に固定するための止めピン39が、開口部38から脱落したとしても、キャップ継手31からピン継手12が抜けない限り、収容部37とピン側配設部22とから構成されるキー配設部23から回転抑止キー14が脱落することがない。
【0037】
当該鋼管杭1が十分に打ち込まれると、抜止キー35を取り外して、ピン継手12とキャップ継手31との抜け止めを解除し、キャップ継手31からストップリング40及び止めピン39を外して回転抑止キー14を回収し、当該回転抑止キー14を当該キャップ継手31が取り外された鋼管杭1のピン継手12と、次に打ち込まれる鋼管杭1のボックス継手11との回り止めのためにキー配設部23にボルト24を用いて取り付けることができる。
【0038】
上述した実施形態においては、当該回転抑止キー14がキャップ継手31の収容部37から下方に脱落することを防止するために、止めピン39とストップリング40とが用いられる構成について説明したが、この限りではない。
【0039】
例えば、開口部38に雌ネジを形成し、当該雌ネジに螺合するボルト24の先端を回転抑止キーのキー貫通孔26に係合させることによって当該回転抑止キー14がキャップ継手31の収容部37から下方に脱落するように構成されていてもよい。
【0040】
また、ボルト24の先端を回転抑止キー14の表面に単に押圧させることによって当該回転抑止キー14がキャップ継手31の収容部37から下方に脱落するように構成されていてもよい。
【0041】
上述した実施形態においては、キャップ継手31とピン継手12との回り止めのために回転抑止キー14が用いられる構成について説明したが、この限りではない。例えば、回転抑止キー14と同様に構成された部材を、キャップ継手31に常時取り付けた構成であってもよい。また、このような部材は、キャップ継手31と別部材である構成に限らず、一体的な構成であってもよい。いずれにせよ、数の多いピン継手12ではなく、使いまわして用いられる保護キャップ3に対する加工のみによって、保護キャップ3とピン継手12との相対回転を防止することができる構成が実現されるため、加工の手間が少ない。
【0042】
上述した実施形態においては、各鋼管2は、下端部にボックス継手11が溶接されるともに、上端部にピン継手12が溶接されて構成されていたが、この限りではない。各鋼管2は、上端部にボックス継手11が溶接されるともに、下端部にピン継手12が溶接されて構成されていてもよい。したがってこの場合は、ボックス側配設部21が下側配設部を構成し、ピン側配設部22が上側配設部を構成する。したがって、この場合は、キャップ継手31は、ボックス継手11と抜け止め状態、かつ、回り止め状態で連結されるように構成されていればよく、その際、回り止めのために上述の実施形態と同様に回転抑止キー14の収容部や、止めピンを挿通するための開口部が形成されていればよい。
【0043】
図4及び図5に示すように、回転抑止キー14は、キャップ継手31に設けられたキャップ側配設部41及びピン継手12側に設けられたピン側配設部22から構成されるキー配設部23にボルト24によって固定されるように構成することが考えられる。
【0044】
この場合、キャップ側配設部41において、回転抑止キー14と対向する、当該キャップ継手31の径方向の外方を向いた外向面42が存在していると、上述のような打ち込み施工時においてはキャップ側配設部41の当該外向面42から回転抑止キー14に対して当該キャップ継手31の径方向の外向きの大きな負荷がかかり、これによってボルト24が破損する虞がある。ボルト24が破損した場合には、回転抑止キー14が脱落してしまい、キャップ継手31とピン継手12に回り止めができなくなる虞がある。
【0045】
当該虞を解決するためには、キャップ継手31は、少なくともピン継手12を連結し得るキャップ継手31を備え、キャップ継手31は、連結されるピン継手12に設けられているピン側配設部22に対応する位置に、当該ピン側配設部22とから回転抑止キー14が配設されるキー配設部23を構成するキャップ側配設部41が設けられ、キャップ側配設部41は、当該キャップ継手31を厚み方向に貫通するように形成されていればよい。
【0046】
上述の構成によると、バイブロハンマーを使用して鋼管杭を打ち込み施工する際に、キャップ側配設部41は、当該キャップ継手31を厚み方向に貫通するように形成されていることから、したがって外向面42が存在せず、キャップ継手31のキャップ側配設部41から回転抑止キー14へは、径方向の外向きの負荷がかからないため、ボルト24が破損する虞がない。
【0047】
図1に示すように、ボックス継手11にピン継手12を差し込んだ状態であるときに、ボックス側配設部21及びピン側配設部22から構成されるキー配設部23に回転抑止キー14を配設し、ボルト24の雄ネジ27とキー配設部23に設けられた雌ネジ28とを螺合させることによって、回転抑止キー14がキー配設部23から脱落することが防止されるのである。
【0048】
しかし、例えば、当該鋼管杭1の打ち込み施工時の振動などが回転抑止キー14を介して、当該回転抑止キー14をキー配設部23に固定するボルト24に伝達されて、当該ボルト24が緩んで脱落した場合には、回転抑止キー14がキー配設部23から脱落する虞がある。そこで、回転抑止キー14を固定するボルト24の緩み止めが可能な構成が求められている。
【0049】
例えば、図6及び図7に示すように、回転抑止キー14に設けられているキー貫通孔26の座ぐり30と、ボルト24の頭部50との間に、当該座ぐり24と当該頭部50との隙間を埋めて一体化させる一体化部材60が設けられている。
【0050】
なお、一体化部材60は、ゴム(生ゴム、硬質ゴム)、アクリル、ウレタン、鉛合金、銅合金等から構成され、座ぐり24から頭部50へ伝達される衝撃の緩和が可能となっている。
【0051】
このような一体化部材60によって、回転抑止キー14の座ぐり30に対してボルト24が一体化させられるため、ボルト24が緩む虞が回避される。
【0052】
なお、一体化部材60は、環状部材から構成され、当該環状部材の内周にボルト24の頭部50と係合可能な内周係合部61が設けられ、当該環状部材の外周に複数の係合凸部62が設けられている。
【0053】
なお、座ぐり30には、当該係合凸部62が係合可能な係合凹部63が設けられている。
【0054】
本実施形態においては、ボルト24は六角穴付きボルトから構成されている。一方、内周係合部61は二複合六角形から構成されており、ボルト24の頭部50の周囲に係合可能となっている。ただし、内周係合部61の形状はこの限りではない。当該ボルト24の頭部50の周囲に係合可能な六角形等の多角形であってもよい。また、内周係合部61は円形であってもよい。
【0055】
内周係合部61が、ボルト24の頭部50の周囲の特に角部と係合することによって、ボルト24の頭部50が一体化部材60の内周に対して滑る虞が回避される。
【0056】
また、一体化部材60の外周に係合凸部62が設けられ、座ぐり30に当該係合凸部62が係合可能な係合凹部63が設けられている。係合凸部62及び係合凹部63の形状は、図7の平面視において矩形であってもよいし、丸められた形状であってもよい。いずれにせよ、係合凸部62と係合凹部63とが係合することによって、一体化部材60が座ぐり30に対して滑る虞が回避される。
【0057】
さらに、座ぐり30には、少なくとも一体化部材60が当該座ぐり30から脱落することを防止するストップリング64が設けられている。
【0058】
上述した実施形態においては、一体化部材60の外周に係合凸部62が設けられ、座ぐり30に当該係合凸部62が係合可能な係合凹部63が設けられている場合について説明したが、この限りではない。一体化部材60の外周に係合凹部63が設けられ、座ぐり30に当該係合凹部63に係合可能な係合凸部62が設けられていてもよいし、それぞれに係合凸部62及び係合凹部63が設けられていてもよい。また、係合凸部62や係合凹部63が備えられていなくてもよい。
【0059】
ところで、図1及び図8に示すように、ボックス継手11の下端側に突条70が備えられている。ボックス継手11の内周面15の上端側には、周溝71が備えられている。ピン継手12には、ボックス継手11に備えられた突条70が嵌合可能な周溝72と、ボックス継手11に備えられた周溝71に嵌合可能な突条73とが備えられている。
【0060】
したがって、以下に説明するように、回転抑止キー14をキー配設部23に固定するボルト24が設けられていない構成とすることができる。すなわち、図9に示すように、回転抑止キー14に貫通孔74が形成され、当該貫通孔74に脱落防止キー75が挿通可能に構成されている。
【0061】
図10に示すように、貫通孔74に差し込まれた脱落防止キー75が、ピン継手12の周溝72の縁に係合することによって、回転抑止キー14がキー配設部23から脱落することが防止される。
【0062】
なお、脱落防止キー75をピン継手12の周溝72の縁に係合させた状態で、ボックス継手11とピン継手12とを連結できるように、ボックス継手11に備えられた突条70は、当該脱落防止キー75を収容可能なように切り欠かれている(図9参照)。
【0063】
回転抑止キー14に貫通孔74を形成し、当該貫通孔74に脱落防止キー75を挿通させることによって、ピン継手12の周溝72の縁に係合させることができる構成であるため、加工が容易である。
【0064】
脱落防止キー75が破損しない限り、回転抑止キーがキー配設部23から脱落することがない。
【0065】
ピン継手12の周溝72の縁に係合させる構成であるため、ピン継手12に脱落防止キー75を係合させるための凹部を別途形成する必要がない。したがって、凹部を形成するための加工費が不要である。
【0066】
脱落防止キー75は、ピン継手12の周溝72の縁に係合可能であれば、断面形状が多角形、円形又は楕円形であってもよいし、外形が直線状又は円弧状であってもよい。回転抑止キー14に形成される貫通孔74は、脱落防止キー75が挿通可能であればどのような形状であってもよい。
【0067】
上述した実施形態においては、脱落防止キー75は、回転抑止キー14とは別体物を後から当該回転抑止キー14に形成された貫通孔74に挿入して取り付ける構成について説明した。当該脱落防止キー75は、貫通孔74に、取り外し可能に取り付けてもよいし、取り外し不可能に取り付けてもよい。また、脱落防止キー75は回転抑止キー14と一体物であってもよい
【0068】
上述した実施形態は、いずれも本発明の一例であり、該記載により本発明が限定されるものではなく、各部の具体的構成は本発明の作用効果が奏される範囲で適宜変更設計可能である。
【符号の説明】
【0069】
1 :鋼管杭
2 :鋼管
3 :保護キャップ
10 :機械式継手
11 :ボックス継手
12 :ピン継手
13 :荷重伝達キー
14 :回転抑止キー
15 :内周面
16 :内向き溝部
17 :開口部
18 :外周面
19 :外向き溝部
20 :挿入固定ボルト
21 :ボックス側配設部
22 :ピン側配設部
23 :キー配設部
24 :ボルト
25 :配設部貫通孔
26 :キー貫通孔
27 :雄ネジ
28 :雌ネジ
29 :キリ穴
30 :座ぐり
31 :キャップ継手
32 :内周面
33 :内向き溝部
34 :開口部
35 :抜止キー
36 :端面
37 :収容部
38 :開口部
39 :止めピン
40 :ストップリング
41 :キャップ側配設部
42 :外向面
50 :頭部
60 :一体化部材
61 :内周係合部
62 :係合凸部
63 :係合凹部
64 :ストップリング
70 :突条
71 :周溝
72 :周溝
73 :突条
74 :貫通孔
75 :脱落防止キー
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10