(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-26
(45)【発行日】2024-04-03
(54)【発明の名称】電気回路遮断装置
(51)【国際特許分類】
H01H 39/00 20060101AFI20240327BHJP
【FI】
H01H39/00 C
(21)【出願番号】P 2020219386
(22)【出願日】2020-12-28
【審査請求日】2023-10-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000002901
【氏名又は名称】株式会社ダイセル
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤原 友秀
【審査官】片岡 弘之
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-239411(JP,A)
【文献】特開2014-067618(JP,A)
【文献】特開昭48-045869(JP,A)
【文献】特開2014-049300(JP,A)
【文献】特開2018-006082(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 39/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングに設けられた点火器と、
前記ハウジング内に形成されると共に一方向に延在する収容空間に配置された発射体であって、前記点火器から受けるエネルギーにより前記収容空間に沿って発射される発射体と、
前記ハウジングに設けられると共に電気回路の一部を形成する導体片であって、その一部に前記収容空間を横切るように配置されると共に前記発射体によって切除される被切除部を、有する導体片と、
前記収容空間に設けられると共にクーラント材が配置され、切除後の前記被切除部を受けるための消弧領域と、
を備え、
前記発射体は、
前記点火器から受けるエネルギーにより発射されることで前記導体片から前記被切除部を切除する第1発射体と、前記第1発射体によって切除された前記被切除部を前記消弧領域に押し込む第2発射体と、
を有する、
電気回路遮断装置。
【請求項2】
前記第2発射体は、前記点火器の作動前において前記第1発射体に装着され、前記点火器から受けるエネルギーにより前記第1発射体から発射される、
請求項1に記載の電気回路遮断装置。
【請求項3】
前記第2発射体は、前記第1発射体よりも小型である、請求項2に記載の電気回路遮断装置。
【請求項4】
前記第2発射体は、前記第1発射体よりも横断面積が小さい、請求項2又は3に記載の電気回路遮断装置。
【請求項5】
前記第2発射体は、前記点火器の作動前において、前記第1発射体と同軸に位置するように当該第1発射体に装着される、
請求項2から4の何れか一項に記載の電気回路遮断装置。
【請求項6】
前記第2発射体は、前記点火器の作動前において、前記第2発射体の中心軸が前記被切除部の平面中央部近傍を通るように第1発射体に装着される、
請求項2から4の何れか一項に記載の電気回路遮断装置。
【請求項7】
前記第1発射体は、前記点火器の作動前において前記被切除部に面して配置されると共に前記被切除部を切除するための切除面と、当該切除面に開口すると共に前記第2発射体を装着するための装着凹部と、前記装着凹部に装着された前記第2発射体の受圧部に前記点火器から受けるエネルギーを導くための連通路と、
を有する、
請求項2から6の何れか一項に記載の電気回路遮断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気回路遮断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電気回路には、その電気回路を構成する機器の異常時や、該電気回路が搭載されたシステムの異常時に作動することによって該電気回路での導通を緊急に遮断する遮断装置が設けられる場合がある。その一態様として、点火器等から付与されるエネルギーによって発射体を高速で移動させて、電気回路の一部を形成する導体片を強制的に且つ物理的に切断する電気回路遮断装置が提案されている(例えば、特許文献1、2等を参照)。また、近年では、高電圧の電源を搭載する電気自動車に適用される電気回路遮断装置の重要性が益々高まっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-49300号公報
【文献】特開2018-6082号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電気回路遮断装置において、電気回路の一部を形成する導体片を切断した際にアークが発生し易いのが実情である。アークが発生してしまうと電気回路を迅速に遮断することができないため、電気回路遮断装置においては発生したアークを迅速に消弧することが要求される。
【0005】
本開示の技術は、上記した実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、作動時にアークを迅速に消弧することの可能な電気回路遮断装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示に係る電気回路遮断装置は、点火器から受けるエネルギーによりハウジング内に形成された収容空間に沿って発射される発射体を、点火器から受けるエネルギーにより発射されることで導体片から被切除部を切除する第1発射体と、第1発射体によって切除された被切除部を、クーラント材が配置された収容空間の消弧領域に押し込む第2発射体と、を含むように構成した。
【0007】
より詳しくは、本開示に係る電気回路遮断装置は、ハウジングに設けられた点火器と、前記ハウジング内に形成されると共に一方向に延在する収容空間に配置された発射体であって、前記点火器から受けるエネルギーにより前記収容空間に沿って発射される発射体と、前記ハウジングに設けられると共に電気回路の一部を形成する導体片であって、その一部に前記収容空間を横切るように配置されると共に前記発射体によって切除される被切除部を、有する導体片と、
前記収容空間に設けられると共にクーラント材が配置され、切除後の前記被切除部を受けるための消弧領域と、を備え、前記発射体は、前記点火器から受けるエネルギーにより発射されることで前記導体片から前記被切除部を切除する第1発射体と、前記第1発射体によって切除された前記被切除部を前記消弧領域に押し込む第2発射体と、を有する。
【0008】
ここで、前記第2発射体は、前記点火器の作動前において前記第1発射体に装着され、前記点火器から受けるエネルギーにより前記第1発射体から発射されても良い。
【0009】
また、前記第2発射体は、前記第1発射体よりも小型であっても良い。
【0010】
また、前記第2発射体は、前記第1発射体よりも横断面積が小さくても良い。
【0011】
また、前記第2発射体は、前記点火器の作動前において、前記第1発射体と同軸に位置するように当該第1発射体に装着されても良い。
【0012】
また、前記第2発射体は、前記点火器の作動前において、前記第2発射体の中心軸が前記被切除部の平面中央部近傍を通るように第1発射体に装着されても良い。
【0013】
また、前記第1発射体は、前記点火器の作動前において前記被切除部に面して配置されると共に前記被切除部を切除するための切除面と、当該切除面に開口すると共に前記第2発射体を装着するための装着凹部と、前記装着凹部に装着された前記第2発射体の受圧部に前記点火器から受けるエネルギーを導くための連通路と、を有していても良い。
【発明の効果】
【0014】
本開示によれば、作動時に発生したアークを迅速に消弧することの可能な電気回路遮断装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、遮断装置の内部構造を説明する図である。
【
図4】
図4は、遮断装置の作動状況を説明する図である。
【
図5】
図5は、遮断装置の変形例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、図面を参照して本開示の実施形態に係る電気回路遮断装置について説明する。なお、実施形態における各構成及びそれらの組み合わせ等は、一例であって、本開示の主旨から逸脱しない範囲内で、適宜、構成の付加、省略、置換、及びその他の変更が可能である。本開示は、実施形態によって限定されることはなく、特許請求の範囲によってのみ限定される。
【0017】
<構成>
図1は、実施形態に係る電気回路遮断装置(以下、単に「遮断装置」という)1の内部構造を説明する図である。遮断装置1は、例えば、自動車や家庭電化製品等に含まれる電気回路や、当該電気回路のバッテリー(例えば、リチウムイオンバッテリー)を含むシステムの異常時に、電気回路を遮断することで大きな被害を未然に防止するための装置である。本明細書においては、
図1に示す高さ方向(後述する収容空間13が延在する方向)に沿った断面を遮断装置1の縦断面といい、縦断面に直交する方向の断面を遮断装置1の横断面という。
図1は、遮断装置1の作動前の状態を示している。
【0018】
遮断装置1は、外殻部材としてのハウジング10、点火器20、発射体30、導体片50、クーラント材等を含んでいる。ハウジング10は、上端側の第1端部11から下端側の第2端部12の方向に延在する収容空間13を有している。この収容空間13は、発射体30が移動可能なように直線状に形成された空間であり、遮断装置1の上下方向に沿って延在している。
図1に示すように、ハウジング10の内部に形成された収容空間13には、発射体30が収容されている。なお、詳しくは後述するが発射体30は、遮断装置1を作動させる前の作動前初期状態において、第1ピストン40と、当該第1ピストン40
に装着された第2ピストン70を含んで構成されている。但し、本明細書において遮断装置1の上下方向とは、実施形態の説明の便宜上、遮断装置1における各要素における相対的な位置関係を示すものに過ぎない。
【0019】
[ハウジング]
ハウジング10は、ハウジング本体100、トップホルダ110、ボトム容器120を含む。ハウジング本体100には、トップホルダ110およびボトム容器120が結合されており、これによって一体のハウジング10が形成されている。
【0020】
ハウジング本体100は、例えば、概略角柱形状の外形を有している。但し、ハウジング本体100の形状は特に限定されない。また、ハウジング本体100には、上下方向に沿って空洞部が貫通するように形成されており、この空洞部は収容空間13の一部を形成している。更に、ハウジング本体100は、トップホルダ110のフランジ部111が固定される上面101と、ボトム容器120のフランジ部121が固定される底面102を有する。本実施形態においては、ハウジング本体100における上面101の外周側には、当該上面101から上方に向けて筒状の上筒壁103が立設されている。本実施形態において、上筒壁103は、例えば角筒形状を有しているが、他の形状を有していても良い。また、ハウジング本体100における下面102の外周側には、当該下面102から下方に向けて筒状の下筒壁104が垂設されている。本実施形態において、下筒壁104は、例えば角筒形状を有しているが、他の形状を有していても良い。以上のように構成されるハウジング本体100は、例えば、合成樹脂等といった絶縁部材によって形成することができる。例えば、ハウジング本体100は、ポリアミド合成樹脂の一種であるナイロンによって形成されていても良い。
【0021】
[トップホルダ]
次に、トップホルダ110について説明する。トップホルダ110は、例えば、段付き円筒形状を有するシリンダ部材であり、内側が空洞状になっている。トップホルダ110は、上側(第1端部11側)に位置する小径シリンダ部112と、下側に位置する大径シリンダ部113と、これらを接続する接続部114と、大径シリンダ部113の下端から外側に向かって延在するフランジ部111等を含んで構成されている。例えば、小径シリンダ部112および大径シリンダ部113は同軸に配置された円筒形状を有し、大径シリンダ部113は小径シリンダ部112よりも直径が一回り大きい。また、接続部114は、小径シリンダ部112および大径シリンダ部113の径方向に延在することでこれらを接続している。
【0022】
また、トップホルダ110におけるフランジ部111の輪郭は、ハウジング本体100における上筒壁103の内側に収まるような概略四角形を有している。フランジ部111は、例えば、上筒壁103の内側に配置された状態で、ハウジング本体100における上面101にネジ等を用いて一体に締結されていても良いし、リベット等によって固定されていても良い。また、ハウジング本体100の上面101とトップホルダ110におけるフランジ部111の下面との間にシーラントを塗布した状態でトップホルダ110をハウジング本体100に結合しても良い。これにより、ハウジング10内に形成される収容空間13の気密性を高めることができる。また、シーラントの代わりに、或いはシーラントと併用してハウジング本体100の上面101とトップホルダ110のフランジ部111との間にOリングを介在させることによって収容空間13の気密性を高めるようにしても良い。
【0023】
トップホルダ110における小径シリンダ部112の内側に形成される空洞部は、
図1に示すように点火器20の一部を収容する収容空間として機能する。また、トップホルダ110における大径シリンダ部113の内側に形成される空洞部は、下方に位置するハウ
ジング本体100の空洞部と連通しており、収容空間13の一部を形成している。上記のように構成されるトップホルダ110は、例えば、強度、耐久性に優れたステンレス、アルミニウム等といった適宜の金属製部材によって形成することができる。但し、トップホルダ110を形成する材料は特に限定されない。また、トップホルダ110の形状についても上記態様は一例であり、他の形状を採用しても良い。
【0024】
[ボトム容器]
次に、ボトム容器120について説明する。ボトム容器120は、内部が空洞状の概略有底筒形状を有し、側壁部122、側壁部122の下端に接続される底壁部123、側壁部122の上端に接続されるフランジ部121等を含んで構成されている。側壁部122は、例えば円筒形状を有しており、フランジ部121は側壁部122における上端から外側に向かって延在している。ボトム容器120におけるフランジ部121の輪郭は、ハウジング本体100における下筒壁104の内側に収まるような概略四角形を有している。フランジ部121は、例えば、下筒壁104の内側に配置された状態で、ハウジング本体100における下面102にネジ等を用いて一体に締結されていても良いし、リベット等によって固定されていても良い。ここで、ハウジング本体100の下面102とボトム容器120におけるフランジ部121の上面との間にはシーラントが塗布された状態でボトム容器120がハウジング本体100に結合されても良い。これにより、ハウジング10内に形成される収容空間13の気密性を高めることができる。また、シーラントの代わりに、或いはシーラントと併用してハウジング本体100の下面102とボトム容器120のフランジ部121との間にOリングを介在させることによって収容空間13の気密性を高めるようにしても良い。
【0025】
なお、ボトム容器120の形状に関する上記態様は一例であり、他の形状を採用しても良い。また、ボトム容器120の内側に形成される空洞部は、上方に位置するハウジング本体100と連通しており、収容空間13の一部を形成している。上記のように構成されるボトム容器120は、例えば、強度、耐久性に優れたステンレス、アルミニウム等といった適宜の金属製部材によって形成することができる。但し、ボトム容器120を形成する材料は特に限定されない。また、ボトム容器120は複層構造となっていても良い。例えば、ボトム容器120は、外部に面する外装部を強度、耐久性に優れたステンレス、アルミニウム等といった適宜の金属製部材によって形成し、収容空間13側に面する内装部を合成樹脂等といった絶縁部材によって形成しても良い。勿論、ボトム容器120の全体を絶縁部材によって形成しても良い。
【0026】
上記のように、実施形態におけるハウジング10は、一体に組み付けられるハウジング本体100、トップホルダ110、およびボトム容器120を含んで構成され、その内側に第1端部11から第2端部12の方向に延在する収容空間13が形成される。この収容空間13には、以下に詳述する点火器20、発射体40、導体片50における被切除部53、第1のクーラント材60および第2のクーラント材70等が収容される。
【0027】
[点火器]
次に、点火器20について説明する。点火器20は、点火薬を含む点火部21と、点火部21に接続された一対の導電ピン(図示せず)を有する点火器本体22を備えた電気式点火器である。点火器本体22は、例えば、絶縁樹脂によって包囲されている。また、点火器本体22における一対の導電ピンの先端側は外部に露出しており、遮断装置1の使用時に電源と接続される。
【0028】
点火器本体22は、トップホルダ110における小径シリンダ部112の内部に収容された概略円柱状の本体部221と、本体部221の上部に位置するコネクタ部222を備えている。点火器本体22は、例えば、本体部221を小径シリンダ部112の内周面に
圧入することによって小径シリンダ部112に固定されている。また、本体部221の軸方向中間部には、外周面が他所に比べて窪んだ括れ部が本体部221の周方向に沿って環状に形成されており、この括れ部にOリング223が嵌め込まれている。Oリング223は、例えば、ゴム(例えばシリコーンゴム)や合成樹脂によって形成されており、小径シリンダ部112における内周面と本体部221との間の気密性を高めるように機能する。
【0029】
点火器20におけるコネクタ部222は、小径シリンダ部112の上端に形成された開口部112Aを通じて外部に突出して配置されている。コネクタ部222は、例えば、導電ピンの側方を覆う円筒形状を有しており、電源側のコネクタと接続できるように構成されている。
【0030】
図1に示すように、点火器20の点火部21は、ハウジング10の収容空間13(より詳しくは、大径シリンダ部113の内側に形成される空洞部)を臨むようにして配置されている。点火部21は、例えば、点火器カップ内に点火薬を収容する形態として構成されている。例えば、点火薬は、一対の導電ピンの基端同士を連結するように連架されたブリッジワイヤ(抵抗体)に接触した状態で点火部21における点火器カップ内に収容されている。点火薬としては、例えば、ZPP(ジルコニウム・過塩素酸カリウム)、ZWPP(ジル
コニウム・タングステン・過塩素酸カリウム)、THPP(水素化チタン・過塩素酸カリウム)、鉛トリシネート等を採用しても良い。
【0031】
点火器20を作動させる際、点火薬を点火するための作動電流が電源から導電ピンに供給されると、点火部21におけるブリッジワイヤが発熱する結果、点火器カップ内の点火薬が着火、燃焼し、燃焼ガスが生成される。そして、点火部21の点火器カップ内における点火薬の燃焼に伴って当該点火器カップ内の圧力が上昇し、点火器カップの開裂面21Aが開裂し、点火器カップから燃焼ガスが収容空間13へと放出される。より具体的には、点火器カップからの燃焼ガスは、収容空間13内に配置された発射体40の後述するピストン部41における窪み部411に放出される。
【0032】
[導体片]
次に、導体片50について説明する。
図2は、実施形態に係る導体片50の上面図である。導体片50は、遮断装置1の構成要素の一部を構成すると共に、遮断装置1を所定の電気回路に取り付けたときに当該電気回路の一部を形成する導電性の金属体であり、バスバー(bus bar)と呼ばれる場合がある。導体片50は、例えば、銅(Cu)等の金属に
よって形成することができる。但し、導体片50は、銅以外の金属で形成されていても良いし、銅と他の金属との合金で形成されても良い。なお、導体片50に含まれる銅以外の金属としては、マンガン(Mn)、ニッケル(Ni)、白金(Pt)等が例示できる。
【0033】
図2に示す一態様において、導体片50は全体として細長い平板片として形成されており、両端側の第1接続端部51および第2接続端部52と、これらの中間部分に位置する被切除部53等を含んでいる。導体片50における第1接続端部51および第2接続端部52には、それぞれ接続孔51A,52Aが設けられている。これら接続孔51A,52Aは、電気回路において他の導体(例えば、リードワイヤ)と接続するために使用される。なお、
図1においては、導体片50における接続孔51A,52Aの図示を省略している。また、導体片50の被切除部53は、遮断装置1が適用される電気回路に過大電流等の異常が生じた場合に、後から詳述する発射体30(第1発射体40)によって強制的に且つ物理的に切断され、第1接続端部51および第2接続端部52から切除される部位である。導体片50における被切除部53の両端には、被切除部53が切断されて切除され易いように、切り込み(スリット)54が形成されている。
【0034】
ここで、導体片50は種々の形態を採用することができ、その形状は特に限定されない
。
図2に示す例では、第1接続端部51、第2接続端部52および被切除部53の表面が同一面を形成しているが、これには限られない。例えば、導体片50は、第1接続端部51および第2接続端部52に対して被切除部53が直交、或いは、傾斜した姿勢で接続されていても良い。また、導体片50における被切除部53の平面形状についても特に限定されない。勿論、導体片50における第1接続端部51、第2接続端部52の形状も特に限定されない。また、導体片50における切り込み54は適宜、省略することができる。
【0035】
ここで、実施形態に係るハウジング本体100には、一対の導体片保持孔105A,105Bが形成されている。一対の導体片保持孔105A,105Bは、ハウジング本体100の上下方向(軸方向)に直交する横断面方向に延在している。より詳しくは、一対の導体片保持孔105A,105Bが、ハウジング本体100の空洞部(収容空間13)を挟んで一直線上に延在している。上記のように構成される導体片50は、ハウジング本体100に形成された一対の導体片保持孔105A,105Bに挿通された状態でハウジング本体100に保持されている。
図1に示す例では、導体片50の第1接続端部51が導体片保持孔105Aに挿通された状態で保持され、第2接続端部52が導体片保持孔105Bに挿通された状態で保持されている。また、この状態において、導体片50の被切除部53はハウジング本体100の空洞部(収容空間13)に位置付けられている。上記のように、ハウジング本体100に装着された導体片50は、被切除部53が収容空間13を横切るようにして、当該収容空間13の延在方向(軸方向)に直交する姿勢に保持される。なお、
図2に示す符号L1は、遮断装置1のハウジング本体100に装着された状態における導体片50の上部に位置するロッド部42の外周位置を示す。本実施形態においては、導体片50は、ロッド部42の外周位置L1が被切除部53の両端に位置する切り込み54の位置と概ね重なるように設置される。本実施形態においては、例えば、収容空間13の横断面積は、被切除部53の横断面積に比べて大きいため、被切除部53の側方には隙間が形成されている。
【0036】
[クーラント材]
次に、ハウジング10における収容空間13に配置されるクーラント材60について説明する。ここで、
図1に示すように、遮断装置1(点火器20)の作動前において、ハウジング本体100における一対の導体片保持孔105A,105Bに保持された状態の導体片50の被切除部53は、ハウジング10の収容空間13を横切るように横架されている。以下、ハウジング10における収容空間13のうち、導体片50の被切除部53を挟んで発射体30が配置されている方の領域(空間)を「発射体初期配置領域R1」と呼び、発射体30とは反対側に位置する領域(空間)を「消弧領域R2」と呼ぶ。なお、本実施形態においては、収容空間13の横断面積は、被切除部53の横断面積に比べて大きく、被切除部53の側方には隙間が形成されている。そのため、収容空間13における発射体初期配置領域R1および消弧領域R2は被切除部53によって完全に隔離されているのではなく、双方は上記隙間を介して互いに連通している。勿論、被切除部53の形状および大きさ次第では、発射体初期配置領域R1および消弧領域R2が被切除部53によって完全に隔離されていても良い。
【0037】
収容空間13の消弧領域R2は、遮断装置1(点火器20)の作動時に発射される発射体30によって切除された被切除部53を受けるための領域(空間)である。この消弧領域R2には、消弧材としてのクーラント材60が配置されている。クーラント材60は、発射体30が導体片50の被切除部53を切除した際に生じたアークおよび被切除部53の熱エネルギーを奪い、冷却することによって電流遮断時におけるアーク発生の抑制、或いは、発生したアークを消弧(消滅)させるための冷却材である。
【0038】
遮断装置1における消弧領域R2は、導体片50における第1接続端部51および第2接続端部52から切除された被切除部53を受け入れるための空間であると同時に、被切
除部53の切除時に生じたアークを効果的に消弧するための空間としての意義を有する。そして、導体片50から被切除部53を切除する際に生じたアークを効果的に消弧するために、消弧領域R2に消弧材としてクーラント材60が配置されている。実施形態の一態様として、クーラント材60は、固体状である。クーラント材60は、例えば、概略円盤形状に成形されおり、ボトム容器120の底部に配置されている。例えば、クーラント材60は、編み込まれた金属繊維を所望の形状に成形することによって形成されていても良い。クーラント材60を形成する金属繊維としては、スチールウールおよび銅ウールの少なくとも何れか一方を含む態様が挙げられる。但し、クーラント材60における上記態様は一例であり、これらに限定されるものではない。例えば、クーラント材60は粉末状、或いは、粒状、或いはこれらを圧縮成形したものであっても良い。また、クーラント材60は固体状ではなく、液体状、ゲル状であっても良い。
【0039】
[発射体]
次に、発射体30について説明する。発射体30は、第1発射体40および第2発射体70を含んで構成されている。
図3は、発射体30の分解図であり、第1発射体40および第2発射体70が分離した状態で示されている。第1発射体40および第2発射体70は、例えば、合成樹脂等の絶縁部材によって形成されている。また、
図3に示すように、第2発射体70は、第1発射体40よりも小型である。
【0040】
まず、
図1および
図3を参照して発射体30を説明すると、第1発射体40は、ピストン部41と、当該ピストン部41に接続されたロッド部42を含んで構成されている。ピストン部41は概略円柱形状を有し、トップホルダ110における大径シリンダ部113の内径と概ね対応する外径を有している。例えば、ピストン部41の直径は、大径シリンダ部113の内径に比べて僅かに小さくても良い。ピストン部41の形状は大径シリンダ部113の形状等に応じて適宜変更することができる。
【0041】
第1発射体40のロッド部42は、例えば、ピストン部41に比べて小径の外周面を有するロッド状部材であり、ピストン部41の下端側に一体に接続されている。ロッド部42の下端面は、遮断装置1の作動時に導体片50から被切除部53を切除するための切除面421として形成されている。第1発射体40における切除面421は、第1発射体40が
図1に示す初期位置に配置された状態で、被切除部53に面して配置されている。ここで、本実施形態におけるロッド部42は概略円柱形状を有しているが、その形状は特に限定されない。なお、第1発射体40は、
図1に示す初期位置において、ロッド部42における切除面421を含む先端側の領域がハウジング本体100の空洞部(収容空間13の一部を形成する)に位置付けられている。ロッド部42の直径は、例えば、ハウジング本体100の内周面の内径よりも僅かに小さく、遮断装置1の作動時にロッド部42の外周面がハウジング本体100の内周面に沿ってガイドされる。
【0042】
また、第1発射体40におけるピストン部41の上面には、例えば、円柱形状を有する凹部である窪み部44が形成されており、この窪み部44に点火部21を受け入れ可能に構成されている。窪み部44の底面は、点火器20の作動時に当該点火器20から受けるエネルギーを受圧する第1受圧部44Aとして形成されている。また、ピストン部41の軸方向中間部には、外周面が他所に比べて窪んだ括れ部がピストン部41の周方向に沿って環状に形成されており、この括れ部にOリング43が嵌め込まれている。Oリング43は、例えば、ゴム(例えばシリコーンゴム)や合成樹脂によって形成されており、大径シリンダ部113における内周面とピストン部41との間の気密性を高めるように機能する。
【0043】
第1発射体40の下端側には、第2発射体70を収容して装着するための装着凹部45が設けられている。この装着凹部45は、第1発射体40におけるロッド部42の切除面
421に開口する態様で形成されている。
図1および
図3に示す例で、装着凹部45は円柱形状を有している。また、第1発射体40の窪み部44および装着凹部45は、第1発射体40の中心軸を通るように同軸に配置されている。更に、
図1および
図3に示すように、第1発射体40には、窪み部44および装着凹部45を接続(連通)する連通路46が設けられている。第1発射体40の連通路46は、当該第1発射体40の中心軸を通るように形成されており、窪み部44および装着凹部45の双方に対して連通路46も同軸に配置されている。
【0044】
次に、第2発射体70について説明する。第2発射体70は、第1発射体40の装着凹部45に収容可能な形状および大きさを有しており、本実施形態では円柱形状のピストン形態として構成されている。また、
図3に示すように、本実施形態に係る第2発射体70は、第1発射体40よりも小型であり、且つ、第1発射体40よりも横断面積が小さい。例えば、第2発射体70の直径は、例えば、第1発射体40における装着凹部45の直径よりも僅かに小さくても良い。また、第2発射体70の軸方向中間部には、外周面が他所に比べて窪んだ括れ部が第2発射体70の周方向に沿って環状に形成されており、この括れ部にOリング71が嵌め込まれている。Oリング71は、例えば、ゴム(例えばシリコーンゴム)や合成樹脂によって形成されている。
図1および
図3に示す例では、第2発射体70の外周面にOリング71が2段にわたって配置されているが、Oリング71の段数は特に限定されない。
【0045】
第2発射体70の上面は、遮断装置1(点火器20)の作動時に点火器20から受けるエネルギーを受圧する第2受圧部71として形成されている。また、第2発射体70の下面は、遮断装置1(点火器20)の作動時に、第1発射体40によって切除された被切除部53を消弧領域R2に押し込むための押圧部72として形成されている。ここで、第2発射体70を第1発射体40に装着する際には、第2受圧部71(上面)側から第1発射体40の装着凹部45に第2発射体70が挿入される。その結果、
図1に示すように、第2発射体70における第2受圧部71が第1発射体40における連通路46および窪み部44に面する一方、押圧部72が装着凹部45の開放端45A側に配置されるように第2発射体70が第1発射体40に装着される。本実施形態において、第2発射体70は、装着凹部45に装着された状態で、第1発射体40と同軸に配置される。但し、第2発射体70が第1発射体40に装着された状態で、第2発射体70が第1発射体40に対して偏心していても良い。
【0046】
また、例えば、第1発射体40の装着凹部45に第2発射体70を装着する際、Oリング73が装着凹部45の内周面と第2発射体70の外周面との間に挟まれることによってOリング73が圧縮変形されても良い。そして、圧縮変形した状態のOリング71の反発力によって、第2発射体70が自重に起因して装着凹部45から脱落することを抑制するための保持力が発揮されても良い。また、本実施形態においては、第1発射体40における装着凹部45の軸方向深さは、第2発射体70の軸方向長さよりも僅かに大きい。また、第1発射体40における装着凹部45の軸方向深さは、第2発射体70の軸方向長さと寸法が等しくても良い。このようにすることで、第1発射体40における装着凹部45の開放端45Aから第2発射体70の押圧部72を含む下端部が突出しないように、第2発射体70を装着凹部45に収容することができる。
【0047】
上記のように構成された発射体30は、
図1に示す作動前初期状態において、第1発射体40の装着凹部45に第2発射体70が装着された状態で収容空間13の発射体初期配置領域R1に配置される。
図1に示す例では、第1発射体40のピストン部41が収容空間13における第1端部11側(上端側)に位置付けられている。また、第1発射体40のロッド部42は、導体片50上に切除面421が載置された状態で配置されている。ここで、
図2に示す符号L1は、遮断装置1のハウジング本体100に装着された状態にお
ける導体片50の上部に位置する第1発射体40におけるロッド部42の外周位置を示している。遮断装置1の作動前初期状態において、第1発射体40におけるロッド部42の外周位置L1は、被切除部53の両端に位置する切り込み54の位置と概ね重なっている。
【0048】
また、
図2に示す符号L2は、第1発射体40に装着された第2発射体70の外周位置を示している。
図2に示すように、遮断装置1の作動前初期状態において、第1発射体40に装着された状態における第2発射体70は、その外周位置L2に囲まれた平面領域の少なくとも一部が被切除部53の平面領域の少なくとも一部と重なるように設けられている。より具体的には、点火器20の作動前において、第2発射体70は、その中心軸C1が被切除部53の中心位置近傍を通るように第1発射体40に装着される。また、本実施形態においては、第1発射体40における装着凹部45の軸方向深さが第2発射体70の軸方向長さよりも僅かに大きい。そのため、遮断装置1の作動前初期状態においては、被切除部53を基準として、第2発射体70の押圧部72が、第1発射体40の切除面421に比べて僅かに後退して配置される結果、押圧部72と被切除部53との間に隙間が形成された状態となる。
【0049】
<動作>
次に、遮断装置1を作動させて電気回路を遮断する際の動作内容について説明する。
図4は、実施形態に係る遮断装置1の作動状況を説明する図である。
図4の上段には遮断装置1の作動途中の状況を示し、
図4の下段には遮断装置1の作動が完了した状況を示す。以下では、
図3および
図4を参照して、遮断装置1の作動時における動作内容を説明する。
【0050】
本実施形態に係る遮断装置1は、電気回路の異常電流を検知する異常検知センサー(図示せず)、および、点火器20の作動を制御する制御部(図示せず)を更に備えている。異常検知センサーは、導体片50を流れる電流の他に、電圧や導体片50の温度を検出することができても良い。また、遮断装置1の制御部は、例えば所定の制御プログラムを実行することで所定の機能を発揮できるコンピュータである。制御部による所定の機能は、対応するハードウェアで実現することもできる。そして、遮断装置1が適用される電気回路の一部を形成する導体片50に過大な電流が流れると、その異常電流が異常検知センサーによって検出される。検出された異常電流に関する異常情報は、異常検知センサーから制御部に引き渡される。例えば、制御部は、異常検知センサーによって検出された電流値に基づいて、点火器20の導電ピンに接続された外部電源(図示せず)から通電を受け、点火器20を作動させる。ここで、異常電流とは、所定の電気回路の保護のために設定された所定の閾値を超える電流値であっても良い。なお、上述した異常検知センサーおよび制御部は、遮断装置1の構成要素に含まれていなくても良く、例えば遮断装置1とは別の装置に含まれていても良い。また、上記異常検知センサーや制御部は、遮断装置1に必須の構成ではない。
【0051】
例えば、電気回路の異常電流を検知する異常検知センサーによって電気回路の異常電流が検知されると、遮断装置1の制御部は点火器20を作動させる。すなわち、外部電源(図示せず)から点火器20の導電ピンに作動電流が供給される結果、点火部21内の点火薬が着火、燃焼し、燃焼ガスが生成される。そして、点火部21内の圧力上昇に起因して開裂面21Aが開裂し、点火部21内から点火薬の燃焼ガスが収容空間13へと放出される。
【0052】
上記の通り、遮断装置1における発射体30は、第1発射体40および第2発射体70を含み、作動時に点火器20から受けるエネルギー、より具体的には点火部21における点火薬が燃焼することで生成された燃焼ガスのエネルギーを受けることによって初期位置
から発射され、収容空間13に沿って移動可能に構成されている。そして、発射体30における第1発射体40および第2発射体70はそれぞれ機能(役割)が異なっている。具体的には、第1発射体40は、遮断装置1(点火器20)の作動時において、点火器20における点火薬の燃焼ガスから受けるエネルギーにより収容空間13を第2端部12側に向かって発射されることで導体片50から被切除部53を切除するように機能する。一方、第2発射体70は、遮断装置1(点火器20)の作動時において、点火器20における点火薬の燃焼ガスから受けるエネルギーにより収容空間13を第2端部12側に向かって発射されることで、第1発射体40によって切除された被切除部53を消弧領域R2に押し込むように機能する。以下、遮断装置1(点火器20)の作動時における第1発射体40および第2発射体70の動作内容について詳しく説明する。
【0053】
図1に示すように、点火器20の点火部21は第1発射体40のピストン部41における窪み部411に受け入れられており、点火部21の開裂面21Aは、第1発射体40における窪み部411の第1受圧部44Aに対向して配置されている。そのため、点火部21からの燃焼ガスが第1発射体40の窪み部411に向かって放出され、当該燃焼ガスの圧力(燃焼エネルギー)が受圧面411Aを含むピストン部41の上面へと伝達される。これにより、第1発射体40における受圧面411Aを含むピストン部41の上面が押圧され、第1発射体40が下方(第2端部12側)に向かって勢い良く付勢される。その結果、第1発射体40におけるロッド部42の下端側に形成された切除面421が、導体片50における第1接続端部51および第2接続端部52と被切除部53との間の各境界部(切り込み54が形成されている部位)に強く押し付けられる。このようにして、例えば、剪断によって導体片50の被切除部53が押し切られることにより、導体片50から被切除部53を切除することができる。
【0054】
第1発射体40は、
図4の上段に示すように、ハウジング本体100の上面101にピストン部41の下端面411が当接(衝突)するまで、所定のストロークだけ収容空間13の延在方向(軸方向)に沿って下方(第2端部12側)に移動する。このように、ハウジング本体100の上面101におけるストッパー部101Aにピストン部41の下端面411が当接(衝突)することによってそれ以上の下方(第2端部12側)への第1発射体40の移動が規制された状態を「移動規制状態」という。
図4の上段に示すように、本実施形態に係る遮断装置1においては、作動時に第1発射体40が初期位置から発射されて移動規制状態に至った際に、ロッド部42における切除面421が、消弧領域R2のうちの比較的上側の領域に位置付けられるように、ロッド部42の長さ、或いは、消弧領域R2の上下方向における寸法が設定されている。
【0055】
なお、遮断装置1の作動時に第1発射体40におけるピストン部41の下端面411がストッパー部101Aに衝突した際、当該ピストン部41の下端面411がストッパー部101Aに当接した状態に保持するための保持部がピストン部41の下端面411およびストッパー部101Aの少なくとも何れか一方に設けられていても良い。このような保持部とは特に限定されないが、例えば、ピストン部41の下端面411やストッパー部101Aに設けられた突起によって保持部が形成されていても良い。例えば、ピストン部41の下端面411がストッパー部101Aに衝突した際、ピストン部41の下端面411に設けられた突起がストッパー部101Aに突き刺さることによって、或いは、ストッパー部101Aに設けられた突起がピストン部41の下端面411に突き刺さることによって、ピストン部41の下端面411がストッパー部101Aに当接した状態に保持することができる。或いは、上記のような突起を積極的に設けるのではなく、
図1に示すようにピストン部41の下端面411とロッド部42の外周面との境界部に形成されたラウンド入隅部47と、ハウジング本体100における101A(上面101)と内周面とが直角に接続されることで形成された直角出隅部106との係合によって上記保持部が形成されていても良い。この場合、遮断装置1の作動時にピストン部41の下端面411がストッパ
ー部101Aに衝突した際、ラウンド入隅部47に直角出隅部106が喰い込む(突き刺さる)ことによってこれらが相互に係合し、ピストン部41の下端面411がストッパー部101Aに当接した状態に保持されても良い。
【0056】
次に、遮断装置1(点火器20)の作動時における第2発射体70の動作について説明する。上記のように、遮断装置1の作動前初期状態においては、第2発射体70が第1発射体40の装着凹部45に装着されている。上記のように第1発射体40における窪み部44および装着凹部45は、連通路46を介して連通しており、第1発射体40に装着された状態における第2発射体70の第2受圧部71は連通路46の下端に対向して配置されている。そのため、遮断装置1(点火器20)の作動時に第1発射体40の窪み部411に向かって放出された点火部21からの燃焼ガスの一部は、連通路46を通じて第2発射体70の第2受圧部71へと導かれ、その結果、当該燃焼ガスの圧力(燃焼エネルギー)が第2発射体70の第2受圧部71へと伝達される。これにより、第1発射体40の装着凹部45に装着(収容)されている第2発射体70の第2受圧部71が押圧され、第2発射体70が下方(第2端部12側)に向かって勢い良く付勢される。その結果、第1発射体40の装着凹部45に格納されている第2発射体70が、装着凹部45の開放端45Aから下方に飛び出し、発射される。これにより、
図4の上段に示すように第1発射体40のロッド部42によって導体片50から切除された被切除部53を、第1発射体40から発射された第2発射体70の押圧部72によって下方に押圧することによって、
図4の下段に示すように被切除部53を消弧領域R2の底部側(すなわち第2端部12側)に押し込むことができる。
【0057】
以上のように、本実施形態における遮断装置1の発射体30によれば、点火器20の作動時に点火部21の点火薬が燃焼することで生成された燃焼ガスのエネルギーを受けて2段階に発射される第1発射体40および第2発射体70を備える。すなわち、点火器20の作動時に点火薬の燃焼ガスから受けるエネルギーによって発射される第1発射体40が収容空間13の第2端部12側に向かって押し下げられることで、切除面421によって被切除部53を押し切り、導体片50から当該被切除部53を切除することができる。その結果、導体片50の両端に位置する第1接続端部51および第2接続端部52は電気的に不通状態となり、遮断装置1が適用される所定の電気回路を強制的に遮断することができる。
【0058】
そして、第1発射体40と同様、点火器20の作動時に生成された点火薬の燃焼ガスから受けるエネルギーによって、第1発射体40から第2発射体70が第2端部12側に向かって発射される。これにより、第2発射体70の押圧部72によって、例えば、第1発射体40の切除面421から被切除部53を引き離し、消弧領域R2の底部側(第2端部12側)に被切除部53を速やかに押し込むことができる。その結果、第2発射体70によって消弧領域R2の底部側に押し込まれた被切除部53が消弧領域R2に配置されたクーラント材60によって急速に冷却されることで、第1接続端部51および第2接続端部52から被切除部53が切除される際に発生したアークを迅速に消弧することができる。その結果、遮断装置1が適用される電気回路に異常が検知された場合等に、当該電気回路を迅速に遮断できる。すなわち、電気回路を遮断する際に発生したアークの消弧が長引くことを効果的に抑制することで、電気回路の遮断が長引くことを抑制できる。また、遮断装置1によれば、電気回路の遮断時に大きな火花や火炎が生じたり、大きな衝撃音が発生することを好適に抑制できる。また、これらに起因して遮断装置1のハウジング10等が破損することも抑制できる。
【0059】
上記のように、遮断装置1によれば、点火器20の作動時に、導体片50から被切除部53を切除するための第1発射体40とは別に、第1発射体40によって切除された被切除部53を消弧領域R2の底部側(第2端部12側)に押し込むべく第1発射体40から
発射される第2発射体70を備えている。発射体30がこのような2段構成の機構を採用することで、第1発射体40におけるロッド部42の軸方向長さを短く設計しても、第2発射体70によって第1発射体40の切除面421から被切除部53を引き離し、消弧領域R2の底部側(第2端部12側)に被切除部53を押し込むことができる。これにより、導体片50における第1接続端部51および第2接続端部52から切除後の被切除部53を速やかに遠ざけ、電気回路の遮断時におけるアークを低減し、その絶縁性能を向上させることができる。
【0060】
一方、発射体の2段発射機構を有しない従来の遮断装置においては、導体片と被切断部の距離を離すためには、通常、導体片から被切断部を引き離すべき距離に応じた発射体の移動ストロークが必要となるため、当該移動ストロークに応じてその軸方向長さも大きくせざるを得ない。これに対して、本実施形態に係る第1発射体40におけるロッド部42の軸方向長さは、点火器20の作動時にロッド部42によって被切除部53の切除に足りる長さを有していれば足り、消弧領域R2の底部側まで被切除部53をロッド部42によって押し込む必要が無い。例えば、第1発射体40におけるロッド部42の軸方向長さは、点火器20の作動時にピストン部41が移動規制状態に至った際に、作動前初期状態のときにおける被切除部53の下面(消弧領域R2を臨む方の面)位置よりも切除面421の位置が下方に位置するような長さに設定されていれば良い。これにより、第1発射体40におけるロッド部42の軸方向長さを短くしつつ、発射時に被切除部53を切除すると共に、切除後の被切除部53を速やかに第1接続端部51および第2接続端部52から遠くに引き離すことができる。このように、ロッド部42の軸方向長さ、ひいては第1発射体40の軸方向長さを短くできるということは、以下のような利点がある。
【0061】
すなわち、遮断装置1の作動前初期状態においては、
図1に示すように、発射体1は発射体初期配置領域R1、すなわち収容空間13において導体片50の被切除部53よりも上方に配置される。従って、第1発射体40の軸方向長さが長くなる程、発射体初期配置領域R1の軸方向長さを大きくする必要があり、ハウジング10の高さ寸法を大きくする必要がある。これに対して、本実施形態における遮断装置1によれば、第1発射体40(ロッド部42)の軸方向長さを短くすることができるため、ハウジング10の高さ寸法を小さくすることができる。以上より、本実施形態における遮断装置1によれば、ハウジング10全体のコンパクト化を実現しつつも、電気回路の遮断時における絶縁性能の向上効果(アークの低減効果)が得られる。
【0062】
なお、遮断装置1において、点火器20の作動時に第1発射体40から第2発射体70が発射されるタイミングは特に限定されない。例えば、第1発射体40の切除面421によって被切除部53を削除した瞬間に、第1発射体40から第2発射体70が発射されても良いし、
図4の上段に示すように、ハウジング本体100のストッパー部101Aにピストン部41の下端面411が当接(衝突)した移動規制状態に至った後のタイミングで第1発射体40から第2発射体70が発射されても良い。或いは、点火器20の作動時に第1発射体40が被切除部53を削除した後、移動規制状態に至る過程(途中)のタイミングで第1発射体40から第2発射体70が発射されても良い。
【0063】
更に、遮断装置1によれば、上記のように第2発射体70が、点火器20の作動前(作動前初期状態)において第1発射体40に装着され、点火器20から受けるエネルギーにより第1発射体40から発射されるように構成されている。これによれば、第2発射体70を、切除後における被切除部53を第1発射体40の切除面421から引き離して消弧領域R2の底部側(第2端部12側)に押し込むために適した合理的な配置態様とすることができる。
【0064】
更に、本実施形態においては、第2発射体70は、第1発射体40よりも横断面積が小
さな発射体として構成されているため、遮断装置1の作動前初期状態において第2発射体70を第1発射体40に装着するのに適した態様とすることができる。また、第2発射体70は、第1発射体40よりも小型であるため、遮断装置1の作動時に切除された被切除部53がボトム容器120の底壁部123に衝突する際の衝撃を低減することができる。故に、ボトム容器120における底壁部123の厚さを薄くしても、当該底壁部123の変形、損傷などを抑制することができる。但し、第2発射体70は、点火器20の作動時に第1発射体40によって切除された被切除部53を消弧領域R2に押し込むことができる限りにおいて、その態様は特に限定されない。例えば、作動前初期状態において第2発射体70が第1発射体40に装着されずに、第1発射体40と離間した状態で配置されても良い。また、第2発射体70は、必ずしも第1発射体40より小型である必要は無く、第2発射体70が第1発射体40と同等の大きさを有し、或いは、第2発射体70が第1発射体40よりも大きくても良い。
【0065】
また、遮断装置1によれば、前記第1発射体40と同軸に位置するように当該第1発射体40に装着される。これによれば、第1発射体40から第2発射体70が発射された際に、第1発射体40によって切除された被切除部53を第2発射体70がバランス良く消弧領域R2の底部側(第2端部12側)に押し込むことができる。特に、本実施形態においては、点火器20の作動前において、第2発射体70の中心軸C1が被切除部53の平
面中央部近傍を通るように第2発射体70が第1発射体40に装着される。これによれば、第1発射体40から第2発射体70が発射された際に、第1発射体40によって切除された被切除部53の平面中央部近傍を第2発射体70によって押圧することができ、これによって被切除部53を円滑に消弧領域R2の底部側(第2端部12側)へと押し込むことができる。なお、第2発射体70の中心軸C1が被切除部53の平面中央部を通るよう
に第2発射体70が第1発射体40に装着することで、点火器20の作動時に第1発射体40によって切除された被切除部53を、第2発射体70によって一層円滑に消弧領域R2の底部側(第2端部12側)へと押し込むことができる。
【0066】
また、本実施形態における第1発射体40は、点火器20の作動前において被切除部53に面して配置されると共に被切除部53を切除するための切除面421と、当該切除面421に開口すると共に第2発射体70を装着するための装着凹部45と、装着凹部45に装着された第2発射体70の第2受圧部71に点火器20から受けるエネルギーを導くための連通路46と、を有している。これによれば、点火器20の作動時に生成された燃焼ガスを、第1発射体40の装着凹部45に装着された第2発射体70の第2受圧部71へと連通路46を介して好適に導入することができる。そして、第2受圧部71に対して導入された燃焼ガスの圧力(燃焼エネルギー)によって、第1発射体40から第2発射体70を円滑に発射させることができる。
【0067】
なお、上記実施形態において、
図4に示す例では、遮断装置1の作動時に第1発射体40から第2発射体70が完全に離脱するように発射される態様を例に説明したが、これには限られない。例えば、
図5に示す変形例のように、遮断装置1の作動時に第1発射体40から発射された第2発射体70は、その一部が第1発射体40における装着凹部45内に留まるような仕様を採用することができる。
図5は、変形例に係る遮断装置1の作動が完了した状況を示す。
【0068】
以上、本開示に係る電気回路遮断装置の実施形態について説明したが、本明細書に開示された各々の態様は、本明細書に開示された他のいかなる特徴とも組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0069】
1 :遮断装置
10 :ハウジング
13 :収容空間
20 :点火器
30 :発射体
40 :第1発射体
50 :導体片
53 :被切除部
60 :クーラント材
70 :第2発射体