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  • 特許-配位錯体およびそれを有する電子素子 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-26
(45)【発行日】2024-04-03
(54)【発明の名称】配位錯体およびそれを有する電子素子
(51)【国際特許分類】
   H10K 50/17 20230101AFI20240327BHJP
   H10K 50/15 20230101ALI20240327BHJP
   H10K 50/18 20230101ALI20240327BHJP
   H10K 50/10 20230101ALI20240327BHJP
   H10K 85/60 20230101ALI20240327BHJP
   H10K 71/16 20230101ALI20240327BHJP
   H10K 50/19 20230101ALI20240327BHJP
   C07F 3/06 20060101ALI20240327BHJP
   C07F 3/02 20060101ALI20240327BHJP
   C07F 13/00 20060101ALI20240327BHJP
   C09K 11/06 20060101ALI20240327BHJP
【FI】
H10K50/17
H10K50/15
H10K50/18
H10K50/10
H10K85/60
H10K71/16 164
H10K50/19
C07F3/06
C07F3/02 Z
C07F13/00 A
C09K11/06 690
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020534453
(86)(22)【出願日】2018-12-20
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-02-25
(86)【国際出願番号】 EP2018086085
(87)【国際公開番号】W WO2019122071
(87)【国際公開日】2019-06-27
【審査請求日】2021-12-01
(31)【優先権主張番号】17209023.5
(32)【優先日】2017-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】503180100
【氏名又は名称】ノヴァレッド ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】フンメルト,マルクス
(72)【発明者】
【氏名】ヘゲマン,ウルリッヒ
(72)【発明者】
【氏名】ローゼノー,トーマス
(72)【発明者】
【氏名】シュリーベ,ウルリーケ
【審査官】小久保 州洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-144125(JP,A)
【文献】特表2009-542893(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2010-0093076(KR,A)
【文献】欧州特許出願公開第03133663(EP,A1)
【文献】欧州特許出願公開第03133664(EP,A1)
【文献】MA, Yuguang, et al.,A blue electroluminescent molecular device from a tetranucluear zinc(II) compound [Zn4O(AID)6] (AID = 7-azaindolate),Chem. Commun.,英国,Royal Society of Chemistry,1998年12月31日,1998,2491-2492
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10K 50/17
H10K 50/15
H10K 50/18
H10K 50/10
H10K 85/60
H10K 71/16
H10K 50/19
C07F 3/06
C07F 3/02
C07F 13/00
C09K 11/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正孔注入層および/または正孔輸送層および/または正孔発生層を含む電子素子であって、前記正孔注入層、前記正孔輸送層、および前記正孔発生層のうちの少なくとも1つは、2.4未満のアレンによる電気陰性度値を有する少なくとも1つの陽性原子Mと、以下の構造を有する少なくとも1つの配位子Lとを含む配位錯体を含み、
【化1】

式中、RおよびRは、C~C30ヒドロカルビル基およびC~C30複素環基からなる群から独立して選択され、Rおよび/またはRは、CN、F、Cl、Br、およびIのうちの少なくとも1つで任意に置換され得、
前記配位錯体は、
(i)1つの原子または共有結合クラスタを形成する複数の原子からなるコアと;
(ii)少なくとも4つの陽性原子Mからなる第1の配位球と;
を含む逆配位錯体であり、
すべてのコア原子は、前記第1の配位球中の前記陽性原子Mのいずれよりも高いアレンによる電気陰性度を有し、前記少なくとも1つの配位子Lは、第1の配位球の少なくとも1つの原子に配位される、電子素子。
【請求項2】
前記配位錯体は、一般式(I)を有し、
(I)
式中、QはLとは異なる配位子であり;
nは1~4であり;
mは1~6であり;
pは0~6であり;
lは0または1である、請求項1に記載の電子素子。
【請求項3】
Mは、二価および/または三価のカチオンを形成する金属から選択される、請求項1または2に記載の電子素子。
【請求項4】
および/またはRは、CN、F、Cl、Br、およびIからなる群から選択される置換基で置換され、RおよびRの少なくとも1つにおいて、置換基:水素の数比率が≧1である、請求項1~3のいずれか1項に記載の電子素子。
【請求項5】
mは2~4である、請求項2~4のいずれか1項に記載の電子素子。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の電子素子の製造方法であって、
前記配位錯体を加熱する工程を含む、方法。
【請求項7】
(ii)一般式(I)で表される前記配位錯体を気化する工程と;
(iii)固体支持体上に前記配位錯体の蒸気を堆積させる工程と;
をさらに含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記気化する工程および前記堆積させる工程は、それぞれ、マトリックス材料との前記配位錯体の、同時気化および共堆積を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
化学式C424813Znを有する化合物であって、逆配位錯体である化合物からなる、固体結晶相。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、配位錯体を有する電子素子、それぞれの配位錯体、その調製方法、配位錯体を含む半導体材料、および、配位錯体からなる固体結晶相に関する。
【0002】
[従来の技術]
自己発光素子である有機発光ダイオード(OLED)は、広い視野角、優れたコントラスト、迅速な応答性、高輝度、優れた駆動電圧特性および色再現性を有している。典型的なOLEDは、アノード、正孔輸送層(HTL)、発光層(EML)、電子輸送層(ETL)、およびカソードを含み、これらは基板上に順次積層される。この点に関して、HTL、EML、およびETLは、有機および/または有機金属化合物から形成された薄膜である。
【0003】
アノードおよびカソードに電圧を印加すると、アノード電極から注入された正孔は、HTLを介してEMLに移動し、カソード電極から注入された電子は、ETLを介してEMLに移動する。正孔および電子は、EML内で再結合して励起子を生成する。励起子が励起状態から基底状態に落ちると、光が放出される。正孔および電子の注入とフローはバランスさせる必要があり、その結果、上述の構造を有するOLEDが優れた効率を有するようになる。
【0004】
トリフルオロメタンスルホンイミド(TFSI)金属錯体を含む有機電子素子は、当技術分野で知られている。さらに、例えば、US 6,528,137 B1は、有機発光ダイオードの発光層または電子輸送層に使用するためのスルホニルアミド錯体を開示している。
【0005】
しかしながら、電子素子の性能を改善する必要性は、依然として存在し、特に、有機正孔輸送層、有機正孔注入層または正孔発生材料を含むべき適切な材料を選択することは、それぞれの電子素子の性能を改善するのに役立つ。
【0006】
したがって、本発明の目的は、従来技術の欠点を克服する電子素子およびその製造方法を提供することであり、特に、有機正孔輸送材料、有機正孔注入材料、または正孔発生材料を含む電子素子を提供することであり、電子素子は、特にOLEDにおいて、改善された性能、特に低減された動作電圧および/または改善された効率を有する。
【0007】
[発明の概要]
上記目的は、正孔注入層および/または正孔輸送層および/または正孔発生層を含む電子素子であって、前記正孔注入層、前記正孔輸送層、および前記正孔発生層のうちの少なくとも1つは、2.4未満のアレンによる電気陰性度値を有する少なくとも1つの陽性原子Mと、以下の構造を有する少なくとも1つの配位子Lとを含む配位錯体を含み、
【0008】
【化1】
【0009】
式中、RおよびRは、C~C30ヒドロカルビル基およびC~C30複素環基からなる群から独立して選択され、Rおよび/またはRは、CN、F、Cl、Br、およびIのうちの少なくとも1つで任意に置換され得る、電子素子によって達成される。
【0010】
驚くべきことに、本発明者らによって、電子素子であって、その正孔注入層、正孔輸送層、または正孔発生層中に上記で定義した配位錯体を含む電子素子は、特に動作電圧および量子効率に関して、従来技術のデバイスよりも優れた特性を示すことが見出された。さらなる利点は、本明細書に提示した実施例から明らかである。
【0011】
本発明の電子素子では、前記配位錯体は、一般式(I)を有し、
(I)
式中、QはLとは異なる配位子であり;nは1~4であり;mは1~6であり;pは0~6であり;lは0または1であってもよい。それぞれの選択は、本発明の配位錯体の電子構造の微調整を可能にして、電子素子の正孔注入層、正孔輸送層、または正孔発生層におけるそのユーザビリティを改善する。
【0012】
電子素子において、Mは、2価および/または3価のカチオンを形成する金属から選択されてもよい。この点に関して、用語「2価および/または3価のカチオンを形成する」は、標準状態下で安定であるカチオンの形成を指す。
【0013】
より具体的には、二価のカチオンを形成する金属が、2.4未満のアレンによる電気陰性度を有する元素であることが理解されている。前記元素は、温度25℃で熱力学的および/または動力学的に十分に安定している少なくとも一つの化合物における前記元素の酸化状態(+II)において生じることが知られている。前記元素は調製可能であり、かつ、前記元素の酸化状態(+II)は証明可能である。同様に、三価カチオンを形成する金属は、2.4未満のアレンによる電気陰性度を有する元素であることが理解されている。前記元素は、温度25℃で熱力学的および/または動力学的に十分に安定している少なくとも一つの化合物における前記元素の酸化状態(+III)を生じることが知られている。前記元素は調製可能であり、かつ、前記元素の酸化状態(+III)は証明可能である。二価のカチオンを形成する典型的な元素としては、周期表の第2群および第12群の元素、遷移金属、SnおよびPbが考えられ得る。3価のカチオンを形成する典型的な元素としては、周期表の第3群、第13群の元素、内部遷移金属、SbおよびBiが考えられ得る。それぞれの選択は、本発明の配位錯体の電子構造を微調整して、電子素子の正孔注入層、正孔輸送層、または正孔発生層におけるその有用性を向上させることができる。
【0014】
Mは、二価のカチオンを形成する金属から選択することができる。それぞれの選択は、本発明の配位錯体の電子構造の微調整を可能にして、電子素子の正孔注入層、正孔輸送層または正孔発生層におけるその有用性を改善する。
【0015】
Mは、Ti、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Zn、および銅からなる群から選択することができる。それぞれの選択は、本発明の配位錯体の電子構造の微調整を可能にして、電子素子の正孔注入層、正孔輸送層または正孔発生層におけるその有用性を改善する。
【0016】
Mは、Mn、Fe、Co、Ni、およびZnからなる群から選択することができ、それぞれの選択は、本発明の配位錯体の電子構造の微調整を可能にして、電子素子の正孔注入層、正孔輸送層、または正孔発生層におけるその有用性を改善する。
【0017】
本発明の電子素子において、Rおよび/またはRは、CN、F、Cl、Br、およびIからなる群から選択される置換基で置換されてもよく、RおよびRの少なくとも1つにおいて、置換基:水素の数の比率は≧1であるか、あるいは≧2であるか、あるいは≧3であるか、あるいは≧4であるか、あるいは≧9である。それぞれの選択は、本発明の配位錯体の電子構造の微調整を可能にして、電子素子の正孔注入層、正孔輸送層または正孔発生層におけるその有用性を改善する。
【0018】
本発明の電子素子において、Rおよび/またはRの両方は、CN、F、Cl、BrおよびIからなる群から選択される置換基で置換されてもよく、ここで、RおよびRの各々において、置換基:水素の数の比率は≧1であるか;あるいは≧2であるか;あるいは≧3であるか;あるいは≧4であるか;あるいは≧9である。それぞれの選択は、本発明の配位錯体の電子構造の微調整を可能にして、電子素子の正孔注入層、正孔輸送層または正孔発生層におけるその有用性を改善する。
【0019】
本発明の電子素子において、Rおよび/またはRは、CN、F、Cl、BrおよびIからなる群から選択される置換基で完全に置換されていてもよい。それぞれの選択は、本発明の配位錯体の電子構成の微調整を可能にして、電子素子の正孔注入層、正孔輸送層または正孔発生層におけるその有用性を改善する。
【0020】
本発明の電子素子において、Rおよび/またはRは、過ハロゲン化されていてもよい。それぞれの選択は、本発明の配位錯体の電子構造の微調整を可能にして、電子素子の正孔注入層、正孔輸送層または正孔発生層におけるその有用性を改善する。
【0021】
本発明の電子素子において、Rおよび/またはRは、過フッ素化されていてもよい。それぞれの選択は、本発明の配位錯体の電子構造の微調整を可能にして、電子素子の正孔注入層、正孔輸送層または正孔発生層におけるその有用性を改善する。
【0022】
本発明の電子素子において、Rは、飽和ヒドロカルビル基;あるいはハロゲン化アルキル基もしくはハロゲン化シクロアルキル基;あるいは過ハロゲン化アルキル基もしくは過ハロゲン化シクロアルキル基;あるいは過フッ素化アルキル基もしくは過フッ素化シクロアルキル基から選択することができる。それぞれの選択は、本発明の配位錯体の電子構造の微調整を可能にして、電子素子の正孔注入層、正孔輸送層または正孔発生層におけるその有用性を改善する。
【0023】
本発明の電子素子において、Rは、CからC30の芳香族基およびCからC30のヘテロ芳香族基、からなる群から選択されてもよく、Rは、任意に、1つ以上のハロゲン原子で置換されていてもよく;あるいはRは、過ハロゲン化されたCからC30の芳香族基もしくは過ハロゲン化されたCからC30ヘテロ芳香族基、から選択され、あるいはRは、過フッ素化されたCからC30の芳香族基もしくはCからC30ヘテロ芳香族基から選択される。それぞれの選択は、本発明の配位錯体の電子構造の微調整を可能にして、電子素子の正孔注入層、正孔輸送層または正孔発生層におけるその有用性を改善する。
【0024】
本発明の電子素子において、mは2であってもよく、あるいはnは3であり、あるいはnは4である。それぞれの選択は、本発明の配位錯体の電子構造の微調整を可能にして、電子素子の正孔注入層、正孔輸送層または正孔発生層におけるその有用性を改善する。
【0025】
本発明の電子素子において、配位錯体は(i)共有結合クラスタを形成する1つの原子または複数の原子からなるコアと、(ii)少なくとも4つの陽性原子Mからなる第1の配位球とを含む逆配位錯体であってもよく、ここで、すべてのコア原子は、第1の配位球中の陽性原子Mのいずれよりもアレンによる電気陰性度が高く、少なくとも1つの配位子Lは、第1の配位球の少なくとも1つの原子に配位される。それぞれの選択は、本発明の配位錯体の電子構造の微調整を可能にして、電子素子の正孔注入層、正孔輸送層または正孔発生層におけるその有用性を改善する。
【0026】
3つの特徴(i)~(iii)および上記の構造を有するこの配位錯体は、ここでは「逆配位錯体」と呼ばれる。典型的には相互作用する原子間の平衡距離によって反映される原子間相互作用に関して、逆配位錯体におけるコアと第1の配位球との間の関係は、通常の配位錯体におけるものと同じである。換言すれば、錯体全体の最も近い原子の対において、対の第1の原子がコアに属し、対の第2の原子が第1の配位球に属し、第1の原子と第2の原子との間の距離は、第1の原子および第2の原子のファンデルワールス半径の合計以下である。用語「逆」は、通常の錯体では、電気的に陽性な中心の原子が、それぞれの配位子における電気的により陰性な原子によって囲まれるのに対して、逆配位錯体では、コアにおける電気的に陰性な原子が、第1の配位球における電気的により陽性な原子によって囲まれる状況を包含する。
【0027】
逆配位錯体は、電気的に中性であってもよい。
【0028】
逆配位錯体において、陽性原子は、独立して、2.4未満、あるいは2.3未満、あるいは2.2未満、あるいは2.1未満、あるいは2.0未満、あるいは1.9未満のアレンによる電気陰性度を有する元素から選ばれてもよい。
【0029】
陽性原子は、独立して、酸化状態(II)における金属原子から、あるいは元素の周期表の第4周期の酸化状態(II)における遷移金属から、あるいは酸化状態(II)におけるTi、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、ZnおよびCoから、あるいはそれぞれ酸化状態(II)におけるMn、Fe、Co、Ni、Znから選ばれてよく、あるいはZn(II)である。
【0030】
逆配位錯体において、コアは、1.7よりも高い、あるいは1.8よりも高い、あるいは1.9よりも高い、あるいは2.0よりも高い、あるいは2.1よりも高い、あるいは2.2よりも高い、あるいは2.3よりも高い、あるいは2.4よりも高い、アレンによる電気陰性度を有する原子からなっていてもよい。
【0031】
逆配位錯体では、コアは、負の酸化状態における1つの原子、あるいは酸化状態(-II)におけるカルコゲン原子、あるいは酸化状態(-II)におけるO、S、SeおよびTeから選択され得るカルコゲン原子、あるいはO(-II)およびS(-II)からからなってよく、あるいはコアは、単一のO(-II)原子である。
【0032】
逆配位錯体では、第1の配位球は、コアに対して四面体配位の、酸化状態(II)における4個の金属原子からなっていてもよい。
【0033】
逆配位錯体において、第2の配位球は、構造Lを有する複数の配位子からなっていてもよい。
【0034】
逆配位錯体において、第2の配位球の少なくとも1つの配位子Lは、第1の配位球の2つの異なる金属原子に配位されていてもよい。
【0035】
逆配位錯体において、コアは、酸化状態(-II)におけるO、S、SeおよびTeから選択される1つのカルコゲン原子からなっていてよく、第1の酸化球は、コアに四面体配位の酸化状態(II)における4つの金属原子からなっていてよく、そして、第2の配位球は、構造Lを有する6つの配位子からなっていてよい。
【0036】
逆配位錯体において、各配位子Lは、第1の配位球の2つの異なる金属原子に配位されていてもよい。
【0037】
逆配位錯体において、各配位子Lのスルホニルアミド群のN原子、S原子およびO原子の1つ、は、第1の配位球の2つの金属原子MおよびM’と、1つのコア原子Xと、以下の式(Ia)を有する6員環を形成してもよい。
【0038】
【化2】
【0039】
逆配位錯体において、RおよびRは、上記のように定義されるようであってよい。
【0040】
逆配位錯体に関する前述の実施形態のすべてにおいて、それぞれの選択は、有機電子素子の有機半導体層における逆配位複合体の有用性を改善するために、逆配位錯体の電子構造の微調整に役立ち得る。
【0041】
上記目的は、本発明の逆配位錯体を調製するための方法であって、一般式(ML)を有する錯体を加温することを含む方法によってさらに達成される。
【0042】
本発明の配位錯体を調製するための本発明の方法は、減圧下での当該錯体の蒸発を含んでもよい。
【0043】
この方法は、蒸発した錯体を固体支持体上に堆積させる工程をさらに含んでもよい。
【0044】
上記目的は、一般式(I)を有する配位錯体によってさらに達成される。
【0045】
(I)
【0046】
【化3】
【0047】
式中、nは1であり、mは2または3であり;
およびRは、CからC30のヒドロカルビルおよびCからC30の複素環基からなる群から独立して選択され、RおよびRは、CN、F、Cl、BrおよびIからなる群から選択される置換基でそれぞれ置換され、そしてRおよびRのそれぞれにおける置換基:水素の比率は≧1である。
【0048】
驚くべきことに、本発明者らは、それぞれの配位錯体が電子素子、特にその正孔輸送/正孔注入または正孔発生部分に使用される場合に、電子素子の性能を改善するのに適していることを見出した。
【0049】
本発明の配位錯体では、RおよびRのそれぞれにおける置換基:水素の比率は≧2であってもよく、あるいは≧3であってもよく、あるいは≧4であってもよく、あるいは≧9であってもよい。それぞれの選択は、本発明の配位錯体の電子構造の微調整を可能にして、電子素子の正孔注入層、正孔輸送層または正孔発生層におけるその有用性を改善する。
【0050】
本発明の配位錯体において、Rおよび/またはRは、CN、F、Cl、Brおよび/またはIから独立して選択される置換基で完全に置換されていてもよい。それぞれの選択は本発明の配位錯体の電子構造の微調整を可能にして、電子素子の正孔注入層、正孔輸送層または正孔発生層におけるその有用性を改善する。
【0051】
本発明の配位錯体において、Rおよび/またはRは、過ハロゲン化されていてもよい。それぞれの選択は、本発明の配位錯体の電子構造の微調整を可能にして、電子素子の正孔注入層、正孔輸送層または正孔発生層におけるその有用性を改善する。
【0052】
本発明の配位錯体では、Rおよび/またはRは、過フッ素化されていてもよい。それぞれの選択は、本発明の配位錯体の電子構造の微調整を可能にして、電子素子の正孔注入層、正孔輸送層または正孔発生層におけるその有用性を改善する。
【0053】
本発明の配位錯体において、mは2であってもよい。それぞれの選択は、本発明の配位錯体の電子構造の微調整を可能にして、電子素子の正孔注入層、正孔輸送層または正孔発生層におけるその有用性を改善する。
【0054】
本発明の配位錯体において、Mは、Ti、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Zn、およびCuからなる群から選択されてもよい。それぞれの選択は、本発明の配位錯体の電子構造の微調整を可能にして、電子素子の正孔注入層、正孔輸送層、または正孔発生層におけるその有用性を改善する。
【0055】
本発明の配位錯体において、Mは、Mn、Fe、Co、Ni、およびZnからなる群から選択されてもよく;あるいはMは、Znであってもよい。それぞれの選択は本発明の配位錯体の電子構造の微調整を可能にして、電子素子の正孔注入層、正孔輸送層または正孔発生層におけるその有用性を改善する。
【0056】
上記目的は、上記で規定される配位錯体を加熱する工程を含む、本発明の電子素子を調製するための方法によってさらに達成される。
【0057】
電子素子を準備するための方法は、以下のステップをさらに含むことができる。
【0058】
(ii)配位錯体を蒸発させる;および
(iii)固体支持体上に配位錯体の蒸気を堆積させる。
【0059】
さらに、上記蒸発および上記堆積は、それぞれ、配位錯体とマトリックス材料との共気化および組成を含んでもよい。
【0060】
上記目的は、本発明の電子素子を調製するための方法によって得られる電子素子によってさらに達成される。本発明のこの実施形態は、化合物E2およびE3の実施例で以下に実証されるように、少なくとも1つのスルホニルアミド配位子Lを含む配位錯体の組成および/または構造が、錯体の加熱中、特にその気化中に変化し得る、という事実を反映する。
【0061】
さらに、上記目的は、正孔輸送マトリックス材料と、上記で規定される配位錯体または上記で規定される逆配位錯体であるp-ドーパントとを含む半導体材料によって達成される。
【0062】
さらに、上記目的は、化学式C424813Znを有する化合物E3からなる固体結晶相により達成される。
【0063】
当該固体結晶相は、空間群P1 21 1に属する単斜晶格子を有していてもよい。
【0064】
温度296.15Kにおいて、固体結晶相は以下の単位セルの寸法を有していてもよい:
a=14.1358(5)Å、α=90°;b=16.0291(6)Å、β=113.2920(10);c=15.9888(6)Å;γ=90°。
【0065】
固体結晶相において、化学式C424813Znを有し、結晶格子の単位セルに含まれている分子の個数は、Z=2であってもよい。
【0066】
固体結晶相において、296.15Kでの単位セルの体積は、3327.6(2)Åであってよく、算出される密度は、2.158g/cmであってよい。
【0067】
最後に、上記目的は、化学式C54185413Znを有する化合物E5からなる固体結晶相によって達成される。
【0068】
固体結晶相は、空間群P 21/cに属する単斜晶格子を有していてもよい。
【0069】
温度170Kにおいて、固体結晶相は、以下の単位セルの寸法を有していてもよい:
a=15.5665(3)Å、α=90°;b=18.1036(4)Å、β=100.610(1);c=29.0763(6)Å;γ=90°。
【0070】
固体結晶相において、化学式C54185413Znを有し、結晶格子の単位セルに含まれる分子の数は、Z=4であってもよい。
【0071】
固体結晶相において、温度170Kでの単位セルの体積は、8053.9(3)Åであってよく、算出される密度は、2.011g/cmであってもよい。
【0072】
本発明によれば、nが1、2または3であり、Lが上記の構造Lを有する配位子であり、かつRがN、PおよびAsから選択される三価のヘテロ原子またはO、S、SeもしくはTeから選択される二価のヘテロ原子を含む複素環基である組成MLを有する配位錯体は、本発明の範囲から除外されることが規定されてもよい。
【0073】
あるいは、金属錯体は、本発明から除外されてもよく、当該金属錯体は、組成MLを有する。ここで、nは1、2または3であり、Lは、上記の構造Lを有する配位子であり、Rを有する。Rは、ヘテロ原子が錯体のM原子に配位して5-、6-または7-員のキレート環を形成する位置に三価または二価のヘテロ原子を含む複素環基である。あるいは、n=2である前記金属錯体は、本発明の範囲から除外されてもよい。あるいは、MがZnである前記金属錯体は、除外されてもよい。あるいは、Lが置換されている、または置換されていないキノリン-8-イルである前記金属錯体は、除外されていてもよい。あるいは、Lがキノリン-8-イルである前記金属錯体は、除外されていてもよい。以下、本発明を、1つの特定の実施形態を参照して、より詳細に説明する。
【0074】
[発明の詳細な説明]
組成物Mを有し、かつ、ペルフルオロフェニル基が窒素に結合した電子吸引配位子Lを備えた推定構造E2を有する亜鉛錯体を調製した。しかし、E2についてのさらなる詳細な研究は、昇華した錯体がその構造および組成物において出発材料とは異なるため、その昇華が実際に化学変化を伴うことを明らかにした。より具体的には、昇華した材料が部分的にX線回折(XRD)に適したサイズおよび性質の単結晶を形成し;この材料の構造および組成物は、本明細書においてE3として割り当てられ、この方法によって完全に分析された。
【0075】
上述のXRDは、昇華した材料が予期しない組成物ZnOLおよび図4に示すクラスタ構造E3を有することを明らかにした。
【0076】
【化4】
【0077】
要約化学式C424813Znを有するこの分子E3は複雑であるため、次の段落では、その構造をガイドの形で記載する:
この分子は、中心酸化物ジアニオンからなる。中心酸化物ジアニオンは、4つのZnジカチオンで四面体配位されており、その中心Zn四面体の各端において、1つのLがそのNおよびO原子を介して2つのZnカチオンとそれぞれ結合するように6つのモノアニオン配位子L(それ自体は式E2と構造的に同一である)で架橋され、その結果、2つのZnカチオンおよび中心酸化物ジアニオンで6員-Zn-O-Zn-N-S-O環を形成する。
【0078】
本願において、先行技術である化合物B2は、先行技術では有機発光ダイオードにおける用途、特にその正孔注入材料またはp-ドーパントとしての用途が知られており、本発明の材料の優位性を示すために参照材料として使用されている。
【0079】
【化5】
【0080】
[さらなる層]
本発明によれば、電子素子は、既に上述した層に加えて、さらなる層を含んでもよい。以下、各層の典型的な実施形態について説明する。
【0081】
[基板]
基板は、有機発光ダイオードなどの電子素子の製造に一般的に使用される任意の基板であってもよい。光が基板を通して放出される場合、基板は、透明または半透明の材料、例えばガラス基板または透明プラスチック基板である。光が上面を通って放出される場合、基板は透明および不透明材料の両方であってもよく、例えば、ガラス基板、プラスチック基板、金属基板またはシリコン基板であってもよい。
【0082】
[アノード電極]
第1の電極または第2の電極のいずれかは、アノード電極であってもよい。アノード電極は、アノード電極を形成するために使用される材料を蒸着またはスパッタリングすることによって形成されてもよい。アノード電極を形成するために使用される材料は、正孔注入を促進するように、高仕事関数材料であってもよい。アノード材料はまた、低仕事関数材料(すなわち、アルミニウム)から選択されてもよい。アノード電極は、透明または反射電極であってもよい。アノード電極を形成するために、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化インジウム亜鉛(IZO)、二酸化スズ(SnO)、酸化アルミニウム亜鉛(AlZO)および酸化亜鉛(ZnO)などの透明導電性酸化物を使用することができる。アノード電極は、金属、典型的には銀(Ag)、金(Au)、または金属合金を使用して形成することもできる。
【0083】
[正孔注入層]
本発明によれば、正孔注入層は、上記で非常に詳細に説明したような配位錯体(それぞれ逆配位錯体)を含むか、またはそれらからなってもよい。正孔注入層(HIL)は、真空蒸着、スピンコーティング、プリンティング、キャスティング、スロット-ダイコーティング、Langmuir-Blodgett(LB)蒸着などによってアノード電極上に形成されてもよい。HILが真空蒸着を使用して形成される場合、蒸着条件は、HILを形成するために使用される化合物、ならびにHILの所望の構造および熱特性に従って変更してもよい。しかし、一般に、真空蒸着の条件は、100℃から500℃の蒸着温度、10-8から10-3Torr(1Torrは133.322Paと等しい)の圧力、および0.1から10nm/秒の蒸着速度を含んでもよい。
【0084】
HILがスピンコーティングまたはプリンティングを使用して形成される場合、コーティング条件は、HILを形成するために使用される化合物、ならびにその所望の構造および熱特性に従って変更してもよい。例えば、コーティング条件は、約2000rpmから約5000rpmのコーティング速度、および約80℃から約200℃の熱処理温度を含んでもよい。熱処理はコーティングが行われた後に溶媒を除去する。
【0085】
電子素子がさらに(逆)配位錯体を含む正孔注入層および/または正孔発生層、並びに、(逆)配位錯体を含む正孔輸送層および/または正孔発生層を含む場合、HILは、HILを形成するために一般に使用される任意の化合物から形成されてもよい。HILを形成するために使用することができる化合物の例には、フタロシアニン化合物、例えば銅フタロシアニン(CuPc)、4,4’,4’’-トリス(3-メチルフェニルフェニルアミノ)トリフェニルアミン(m-MTDATA)、TDATA、2T-NATA、ポリアニリン/ドデシルベンゼンスルホン酸(Pani/DBSA)、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(4-スチレンスルホネート)(PEDOT/PSS)、ポリアニリン/カンファースルホン酸(Pani/CSA)、およびポリアニリン)/ポリ(4-スチレンスルホネート(PANI/PSS)が含まれる。
【0086】
そのような場合、HILは、p-ドーパントの純粋な層であってもよく、またはp-ドーパントでドープされた正孔輸送マトリックス化合物から選択されてもよい。公知の酸化還元ドープされた正孔輸送材料の典型的な例は:LUMOレベルが約-5.2eVであるテトラフルオロ-テトラシアノキノンジメタン(F4TCNQ)でドープされた、HOMOレベルが約-5.2eVである銅フタロシアニン(CuPc);F4TCNQでドープされた亜鉛フタロシアニン(ZnPc)(HOMO=-5.2eV);F4TCNQでドープされたα-NPD(N,N’-ビス(ナフタレン-1-イル)-N,N’-ビス(フェニル)-ベンジジン)である。2,2’-(ペルフルオロナフタレン-2,6-ジイリデン)ジマロノニトリル(PD)でドープされたα-NPD。2,2’,2''-(シクロプロパン-1,2,3-トリイリデン)トリス(2-(p-シアノテトラフルオロフェニル)アセトニトリル)(PD)でドープされたα-NPD。ドーパント濃度は、1から20wt.-%まで、より好ましくは3wt.-%から10wt.-%までから選択することができる。
【0087】
HILの厚さは、約1nmから約100nmの範囲であってよく、例えば、約1nmから約25nmであってもよい。HILの厚さがこの範囲内にある場合、HILは駆動電圧に実質的な損失を与えることなく、優れた正孔注入特性を有し得る。
【0088】
[正孔輸送層]
本発明によれば、正孔輸送層は、上記に詳細に記載されるように、配位錯体、それぞれ逆配位錯体、を含むか、またはそれらからなってもよい。
【0089】
正孔輸送層(HTL)は、真空蒸着、スピンコーティング、スロット-ダイコーティング、プリンティング、キャスティング、Langmuir-Blodgett(LB)蒸着などによってHIL上に形成してもよい。HTLが真空蒸着またはスピンコーティングによって形成される場合、蒸着およびコーティングのための条件は、HILの形成のための条件と同様であってもよい。しかし、真空または溶液蒸着のための条件は、HTLを形成するために使用される化合物に従って変更してもよい。
【0090】
HTLが本発明による(逆)配位錯体を含まないが、(逆)配位錯体がHILおよび/またはCGLに含まれる場合、HTLは、HTLを形成するために一般に使用される任意の化合物によって形成されてもよい。好適に使用できる化合物は、例えば、Yasuhiko ShirotaおよびHiroshi Kageyama、Chem.Rev.2007、107、953-1010に開示され、そして参考として援用される。HTLを形成するために使用することができる化合物の例は:N-フェニルカルバゾールまたはポリビニルカルバゾールなどのカルバゾール誘導体;N,N’-ビス(3-メチルフェニル)-N,N’-ジフェニル-[1,1-ビフェニル]-4,4’-ジアミン(TPD)、またはN,N’-ジ(ナフタレン-1-イル)-N,N’-ジフェニルベンジジン(アルファ-NPD)などのベンジジン誘導体;および4,4’,4’’-トリス(N-カルバゾリル)トリフェニルアミン(TCTA)などのトリフェニルアミン系化合物である。これらの化合物の中で、TCTAは正孔を輸送し、そして励起子がEML中に拡散するのを抑制することができる。
【0091】
HTLの厚さは、約5nmから約250nmの範囲であってよく、好ましくは約10nmから約200nm、さらに約20nmから約190nm、さらに約40nmから約180nm、さらに約60nmから約170nm、さらに約80nmから約160nm、さらに約100nmから約160nm、さらに約120nmから約140nmの範囲であってもよい。HTLの好ましい厚さは、170nmから200nmであってもよい。
【0092】
HTLの厚さがこの範囲内にある場合、HTLは駆動電圧に実質的な損失を与えることなく、優れた正孔輸送特性を有し得る。
【0093】
(電子ブロッキング層)
電子ブロッキング層(EBL)の機能は、放出層から正孔輸送層に電子が移動することを防止し、それによって電子を放出層に閉じ込めることである。これにより、効率、動作電圧および/または寿命が改善される。典型的には、電子ブロッキング層はトリアリールアミン化合物を含む。トリアリールアミン化合物は、正孔輸送層のLUMOレベルよりも真空レベルに近いLUMOレベルを有していてもよい。電子ブロッキング層は、正孔輸送層のHOMOレベルと比較して、真空レベルからさらに離れたHOMOレベルを有していてもよい。電子ブロッキング層の厚さは、2および20nmの間で選択されてもよい。
【0094】
電子ブロッキング層は、下記(Z)の式Zの化合物を含んでもよい。
【0095】
【化6】
【0096】
式Zにおいて、CY1およびCY2は互いに同一または異なり、互いに独立にベンゼン環またはナフタレン環を表し、Ar1からAr3は互いに同一または異なるものであり、互いに独立に水素;置換または非置換の6から30個の炭素原子を有するアリール基;および置換または非置換の5から30個の炭素原子を有するヘテロアリール基からなる群から選択され、Ar4は置換または非置換のフェニル基、置換または非置換のビフェニル基、置換または非置換のテルフェニル基、置換または非置換のトリフェニレン基、および5から30個の炭素原子を有する置換または非置換のヘテロアリール基からなる群から選択され、Lは6から30個の炭素原子を有する置換または非置換のアリーレン基である。
【0097】
電子ブロッキング層が高い三重項レベルを有する場合、それは三重項制御層とも記載され得る。
【0098】
緑色または青色の燐光の放出層が使用される場合、三重項制御層の機能は三重項の消光を減少させることである。これにより、燐光の放出層からの高い発光効率が達成できる。三重項制御層は、隣接する放出層における燐光のエミッタの三重項レベルより上の三重項レベルを有するトリアリールアミン化合物から選択される。三重項制御層、特にトリアリールアミン化合物に好適な化合物は、EP 2 722 908 A1に記載されている。
【0099】
[放出層(EML)]
EMLは、真空蒸着、スピンコーティング、スロット-ダイコーティング、プリンティング、キャスティング、LB蒸着などによって、HTL上に形成されてもよい。EMLが真空蒸着またはスピンコーティングを使用して形成される場合、蒸着およびコーティングのための条件は、HILの形成のための条件と同様であってもよい。しかし、蒸着およびコーティングのための条件は、EMLを形成するために使用される化合物に従って変更してもよい。
【0100】
放出層(EML)は、ホストおよびエミッタのドーパントとの組み合わせから形成されてもよい。ホストの例は、Alq3、4,4’-N,N’-ジカルバゾール-ビフェニル(CBP)、ポリ(n-ビニルカルバゾール)(PVK)、9,10-ジ(ナフタレン-2-イル)アントラセン(ADN)、4,4’,4’’-トリス(カルバゾール-9-イル)-トリフェニルアミン(TCTA)、1,3,5-トリス(N-フェニルベンズイミダゾール-2-イル)ベンゼン(TPBI)、3-tert-ブチル-9,10-ジ-2-ナフチルアントラセン(TBADN)、ジスチリルアリーレン(DSA)、ビス(2-(2-ヒドロキシフェニル)ベンゾ-チアゾラト)亜鉛(Zn(BTZ))、下記のG3、AND、下記の化合物1、および下記の化合物2である。
【0101】
【化7】
【0102】
【化8】
【0103】
【化9】
【0104】
【化10】
【0105】
エミッタドーパントは、燐光または蛍光のエミッタであってもよい。燐光エミッタおよび熱的活性化遅延蛍光(TADF)メカニズムを介して光を放出するエミッタは、それらのより高い効率のために好ましいこともある。エミッタは、低分子またはポリマーであってもよい。
【0106】
赤色エミッタドーパントの例は、PtOEP、Ir(piq)、およびBtplr(acac)であるが、これらに限定されない。これらの化合物は燐光エミッタであるが、赤色蛍光エミッタドーパントも使用することができる。
【0107】
【化11】
【0108】
緑色燐光エミッタドーパントの例は、以下に示すIr(ppy)(ppy=フェニルピリジン)、Ir(ppy)(acac)、Ir(mpyp)である。化合物3は緑色蛍光エミッタの一例であり、その構造を以下に示す。
【0109】
【化12】
【0110】
青色燐光エミッタドーパントの例はFIrpic、(Fppy)Ir(tmd)およびIr(dfppz)、ter-フルオレンであり、構造を以下に示す。4.4’-ビス(4-ジフェニルアミオスチリル)ビフェニル(DPAVBi)、2,5,8,11-テトラ-tert-ブチルペリレン(TBPe)、および以下の化合物4は、青色蛍光エミッタドーパントの例である。
【0111】
【化13】
【0112】
エミッタドーパントの量は、ホスト100重量部に対して約0.01から約50重量部の範囲であってよい。あるいは、放出層が発光ポリマーからなっていてもよい。EMLは約10nm~約100nm、例えば、約20nm~約60nmの厚さを有することができる。EMLの厚さがこの範囲内にある場合、EMLは、駆動電圧に実質的な損失を与えることなく、優れた発光を有し得る。
【0113】
[正孔ブロッキング層(HBL)]
正孔ブロッキング層(HBL)はETLへの正孔の拡散を防止するために、真空蒸着、スピンコーティング、スロット-ダイコーティング、プリンティング、キャスティング、LB蒸着などを使用することによって、EML上に形成され得る。EMLが燐光ドーパントを含む場合、HBLは三重項励起子ブロッキング機能をも有し得る。
【0114】
HBLが真空蒸着またはスピンコーティングを使用して形成される場合、蒸着およびコーティングのための条件は、HILの形成のための条件と同様であってもよい。しかし、蒸着およびコーティングのための条件は、HBLを形成するために使用される化合物に従って変更してもよい。HBLを形成するために一般に使用される任意の化合物を使用してもよい。HBLを形成する化合物の例は、オキサジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、およびフェナントロリン誘導体を含む。
【0115】
HBLは約5nmから約100nmの範囲の厚さを有していてもよく、例えば、約10nmから約30nmであってもよい。HBLの厚さがこの範囲内にある場合、HBLは、駆動電圧に実質的な損失を与えることなく、優れた正孔-ブロッキング特性を有し得る。
【0116】
[電子輸送層(ETL)]
本発明によるOLEDは、電子輸送層(ETL)を含んでいてもよい。
【0117】
様々な実施形態によれば、OLEDは、電子輸送層、または、少なくとも第1の電子輸送層および少なくとも第2の電子輸送層を含む電子輸送層スタック(stack)、を含んでいてもよい。
【0118】
ETLの特定の層のエネルギーレベルを好適に調整することによって、電子の注入および輸送を制御してもよく、正孔を効率的にブロックすることができる。したがって、OLEDは、長い寿命を有し得る。
【0119】
電子素子の電子輸送層は、有機電子輸送マトリックス(ETM)材料を含んでもよい。さらに、電子輸送層は、1つまたはそれ以上のn-ドーパントを含んでもよい。ETMに好適な化合物は特に限定されない。一実施形態では、電子輸送マトリックス化合物が共有結合した原子からなる。好ましくは、電子輸送マトリックス化合物が少なくとも6個、より好ましくは少なくとも10個の非局在化電子の共役系を含む。一実施形態では、非局在化電子の共役系が、例えば文書EP 1 970 371 A1またはWO 2013/079217 A1に開示されているように、芳香族またはヘテロ芳香族の構造的部分に含まれていてもよい。
【0120】
[電子注入層(EIL)]
カソードからの電子の注入を促進し得る任意のEILは、ETL上に形成してもよく、好ましくは電子輸送層上に直接形成してもよい。EILを形成するための材料の例は、当技術分野で知られているリチウム8-ヒドロキシキノリノレート(LiQ)、LiF、NaCl、CsF、LiO、BaO、Ca、Ba、Yb、Mgを含む。EILを形成するための蒸着およびコーティングの条件は、HILの形成のための条件と同様であるが、蒸着およびコーティングの条件はEILを形成するために使用される材料に従って変更してもよい。
【0121】
EILの厚さは、約0.1nmから約10nmの範囲であってよく、例えば、約0.5nmから約9nmの範囲であってよい。EILの厚さがこの範囲内である場合、EILは駆動電圧において実質的な損失なしに、十分な電子-注入特性を有し得る。
【0122】
[カソード電極]
カソード電極は、存在するならばEIL上に形成される。カソード電極は、金属、合金、導電性化合物、またはそれらの混合物から形成されてもよい。カソード電極は、低仕事関数を有し得る。例えば、カソード電極は、リチウム(Li)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、アルミニウム(Al)-リチウム(Li)、カルシウム(Ca)、バリウム(Ba)、イッテルビウム(Yb)、マグネシウム(Mg)-インジウム(In)、マグネシウム(Mg)-銀(Ag)などで形成することができる。あるいは、カソード電極がITOまたはIZOなどの透明導電性酸化物から形成されてもよい。
【0123】
カソード電極の厚さは、約5nmから約1000nmの範囲であってよく、例えば、約10nmから約100nmの範囲であってよい。カソード電極の厚さが約5nmから約50nmの範囲にあるとき、カソード電極は、金属または金属合金から形成されても透明または半透明であり得る。
【0124】
カソード電極は電子注入層または電子輸送層の一部ではないと理解される。
【0125】
[電荷発生層/正孔発生層]
電荷発生層(CGL)は、二重層で構成されてもよい。
【0126】
典型的には、電荷発生層がn型電荷発生層(電子発生層)と正孔発生層とを接合するpn接合である。pn接合のn側は電子を発生させ、アノードの方向に隣接する層にそれらを注入する。同様に、p-n接合のp側は正孔を発生させ、そしてカソードの方向に隣接する層にそれらを注入する。
【0127】
電荷発生層はタンデム素子において使用され、例えば、2つの電極の間で、2つまたはそれ以上の放出層を含むタンデムOLEDにおいて使用される。2つの放出層を含むaaタンデムOLEDにおいて、n型電荷発生層はアノードの近くに配置された第1の発光層のための電子を提供し、一方、正孔発生層は、第1の発光層とカソードとの間に配置された第2の発光層に正孔を提供する。
【0128】
本発明によれば、正孔注入層および正孔発生層を含む電子素子が提供されてもよい。正孔注入層が(逆)配位錯体を含む場合、正孔発生層もまた(逆)配位錯体を含むことは必須ではない。このような場合、正孔発生層は、p型ドーパントでドープされた有機マトリックス材料を含むことができる。正孔発生層のための好適なマトリックス材料は、正孔注入および/または正孔輸送マトリックス材料として従来使用される材料であってもよい。また、正孔発生層に使用されるp型ドーパントは、従来の材料を採用することができる。例えば、p型ドーパントは、テトラフルオロ-7,7,8,8-テトラシアノキノジメタン(F-TCNQ)、テトラシアノキノジメタンの誘導体、ラジアレン誘導体、ヨウ素、FeCl、FeF、およびSbClからなる群から選択される1つであり得る。また、ホストは、N,N’-ジ(ナフタレン-1-イル)-N,N-ジフェニル-ベンジジン(NPB)、N,N’-ジフェニル-N,N’-ビス(3-メチルフェニル)-1,1-ビフェニル-4,4’-ジアミン(TPD)およびN,N’,N’-テトラナフチル-ベンジジン(TNB)からなる群から選択される1つであり得る。
【0129】
好ましい実施形態では、正孔発生層は、上で詳細に定義した配位錯体または逆配位錯体からなる。
【0130】
n型電荷発生層は、純粋なnドーパントの層であることができ、例えば陽性金属の層であってもよく、またはnドーパントでドープされた有機マトリックス材料からなっていてもよい。一実施形態では、n型ドーパントがアルカリ金属、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属、またはアルカリ土類金属化合物であり得る。別の実施形態では、金属はLi、Na、K、Rb、Cs、Mg、Ca、Sr、Ba、La、Ce、Sm、Eu、Tb、Dy、およびYbからなる群から選択される1つであり得る。より具体的には、n型ドーパントはCs、K、Rb、Mg、Na、Ca、Sr、EuおよびYbからなる群から選択される1つであり得る。電子発生層のための好適なマトリックス材料は、電子注入または電子輸送層のためのマトリックス材料として従来使用される材料であってもよい。マトリックス材料は例えば、オフトリアジン化合物、トリス(8-ヒドロキシキノリン)アルミニウムのようなヒドロキシキノリン誘導体、ベンザゾール誘導体、およびシロール誘導体からなる群から選択される1つであり得る。
【0131】
一実施形態では、n型電荷発生層が以下の化学式Xの化合物を含んでもよい。
【0132】
【化14】
【0133】
ここで、A1からA6のそれぞれは、水素、ハロゲン原子、ニトリル(-CN)、ニトロ(-NO)、スルホニル(-SOR)、スルホキシド(-SOR)、スルホンアミド(-SONR)、スルホネート(-SOR)、トリフルオロメチル(-CF)、エステル(-COOR)、アミド(-CONHRまたは-CONRR’)、置換または非置換の直鎖または分岐鎖のC1~C12アルコキシ、置換または非置換の直鎖または分岐鎖のC1~C12アルキル、置換または非置換の直鎖または分岐鎖のC2~C12アルケニル、置換または非置換の芳香族または非芳香族のヘテロ環、置換または非置換のアリール、置換または非置換のモノ-またはジ-アリールアミン、置換または非置換のアラルキルアミンなどであってもよい。ここで、上記のRおよびR’のそれぞれは、置換または非置換のC1~C60アルキル、置換または非置換のアリール、または置換または非置換の5~7員ヘテロ環などであってもよい。
【0134】
そのようなn型電荷発生層の例は、CNHATを含む層であってもよい。
【0135】
【化15】
【0136】
正孔発生層は、n型電荷発生層の上部に配置される。
【0137】
[有機発光ダイオード(OLED)]
本発明の一態様によれば、基板;基板上に形成されたアノード電極;正孔注入層、正孔輸送層、放出層、およびカソード電極:を含む有機発光ダイオード(OLED)が提供される。
【0138】
本発明の別の態様によれば、基板;基板上に形成されたアノード電極;正孔注入層、正孔輸送層、電子ブロッキング層、放出層、正孔ブロッキング層およびカソード電極:を含むOLEDが提供される。
【0139】
本発明の別の態様によれば、基板;基板上に形成されたアノード電極;正孔注入層、正孔輸送層、電子ブロッキング層、放出層、正孔ブロッキング層、電子輸送層、およびカソード電極:を含むOLEDが提供される。
【0140】
本発明の別の態様によれば、基板;基板上に形成されたアノード電極;正孔注入層、正孔輸送層、電子ブロッキング層、放出層、正孔ブロッキング層、電子輸送層、電子注入層、およびカソード電極:を含むOLEDが提供される。
【0141】
本発明の様々な実施形態によれば、上述した層の間、基板上、または上部電極上に配置されたOLED層が提供されてもよい。
【0142】
一態様によると、OLEDはアノード電極に隣接して配置される基板の層構造を含むことができ、アノード電極は第1の正孔注入層に隣接して配置され、第1の正孔注入層は第1の正孔輸送層に隣接して配置され、第1の正孔輸送層は第1の電子ブロッキング層に隣接して配置され、第1の電子ブロッキング層は第1の放出層に隣接して配置され、第1の放出層は第1の電子輸送層に隣接して配置され、第1の電子輸送層はn型電荷発生層に隣接して配置され、n型電荷発生層は正孔発生層に隣接して配置され、正孔発生層は第2の正孔輸送層に隣接して配置され、第2の正孔輸送層は第2の電子ブロッキング層に隣接して配置され、第2の電子ブロッキング層は第2の放出層に隣接して配置され、第2の放出層とカソード電極との間には任意の電子輸送層および/または任意の注入層が配置される。
【0143】
例えば、図2に記載のOLEDはプロセスによって形成されてもよく、ここでは、基板(110)上に、アノード(120)、正孔注入層(130)、正孔輸送層(140)、電子ブロッキング層(145)、放出層(150)、正孔ブロッキング層(155)、電子輸送層(160)、電子注入層(180)およびカソード電極(190)が続いて、その順に形成される。
【0144】
[発明の詳細および定義]
本発明は、電子素子に関する。当該素子は、第1の電極および第2の電極を含む。第1の電極と第2の電極との間には、少なくとも1つの正孔注入層および/または少なくとも1つの正孔輸送層および/または少なくとも1つの正孔発生層が配置される。すなわち、電子素子は、第1の電極と第2の電極との間に正孔注入層のみを含んでいてもよい。同様に、本発明の電子素子は、第1の電極と第2の電極との間に正孔輸送層のみを含んでもよい。同様に、本発明の電子素子は、第1の電極と第2の電極との間に正孔発生層のみを含んでもよい。同様に、電子素子は第1の電極と第2の電極との間に、上記の正孔注入層、正孔輸送層、または正孔発生層のうちの2つのみ、または3つ全てを含んでもよい。電子素子が正孔注入層(そして正孔発生層ではない)のみを含む場合、(逆)配位錯体からなる正孔注入層が提供される。同様に、電子素子が正孔発生層(そして正孔注入層ではない)のみを含む場合、(逆)配位錯体からなる正孔発生層が提供される。電子素子が正孔注入層および正孔発生層の両方を含む場合には、正孔注入層のみが(逆)配位錯体からなるもの、正孔発生層のみが(逆)配位錯体からなるもの、または正孔注入層と正孔発生層の両方が(逆)配位錯体からなるものが提供されてもよい。
【0145】
本発明の上記定義において、Allenによる電気陰性度値を参照する。Allenによれば、原子の電気陰性度は、その自由原子中の価電子の平均エネルギーに関連する。Allenによる電気陰性度値は以下の通りである。ランタニド元素La-Ybについては、Allen電気陰性度は1.15未満であると推定され、ThおよびUについては、Allen電気陰性度は1.5未満であると推定される。
【0146】
【表1】
【0147】
ここで使用される用語の「ヒドロカルビル基」は、炭素原子を含む任意の有機基、特に、例えばアルキル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロアルキルなどの有機基、特に有機エレクトロニクスにおいて通常の置換基であるそのような基、を包含すると理解されるべきである。
【0148】
ここで使用される用語の「アルキル」は、線形ならびに分枝鎖および環状アルキルを包含するものとする。例えば、C-アルキルは、n-プロピルおよびイソ-プロピルから選択されてもよい。同様に、C-アルキルは、n-ブチル、sec-ブチルおよびt-ブチルを包含する。同様に、C-アルキルは、n-ヘキシルおよびシクロ-ヘキシルを包含する。
【0149】
中の添え字数nは、アルキル基、アリーレン基、ヘテロアリーレン基またはアリール基のそれぞれが有する炭素原子の総数に関する。
【0150】
ここで使用される用語の「アリール」は、フェニル(C-アリール)、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、テトラセンなどのような縮合芳香族を包含するものとする。さらに包含されるものは、例えばテルフェニルなどの、ビフェニルおよびオリゴ-またはポリフェニルである。さらに包含されるものは、例えばフルオレニルなどの任意のさらなる芳香族炭化水素置換基とする。アリーレン、それぞれのヘテロアリーレンは、2つのさらなる部分が結合している基を指す。
【0151】
ここで使用される用語の「ヘテロアリール」は、少なくとも1個の炭素原子が、好ましくはN、O、S、BまたはSiから選択されるヘテロ原子によって置換されているアリール基を指す。
【0152】
用語の「ハロゲン化」とは、その1個の水素原子がハロゲン原子に置換された有機化合物を指す。用語の「過ハロゲン化」は、その全ての水素原子がハロゲン原子に置換された有機化合物を指す。用語の「フッ素化」および「過フッ素化」も同様に理解されるべきである。
【0153】
-ヘテロアリールにおける添え字数nは、単に、ヘテロ原子の数を除く炭素原子の数を指す。この文脈において、Cヘテロアリーレン基は、ピラゾール、イミダゾール、オキサゾール、チアゾールなどの3個の炭素原子を含む芳香族化合物であることが明らかである。
【0154】
本発明の用語において、1つの層が2つの他の層の間にあることに関する「間」という表現は、1つの層と2つの他の層の一方との間に配置してもよいさらなる層の存在を排除するものではない。本発明の用語において、2つの層が互いに直接接触していることに関する「直接接触している」という表現は、さらなる層がそれらの2つの層の間に配置されないことを意味する。一方の層の上部に蒸着された1つの層は、この層と直接接触していると判断される。
【0155】
本発明の有機半導体層に関して、および、本発明の化合物に関しては、化合物は実験部で述べたものが最も好ましい。
【0156】
本発明の電子素子は有機エレクトロルミネセント素子(OLED)、有機光起電素子(OPV)、または有機電界効果トランジスタ(OFET)であってもよい。
【0157】
別の態様によれば、本発明による有機エレクトロルミネセント素子は、1より多くの放出層を含むことができ、好ましくは2つまたは3つの放出層を含むことができる。1より多くの放出層を含むOLEDは、タンデムOLEDまたはスタックOLEDとしても記載される。
【0158】
有機エレクトロルミネセント素子(OLED)は、底部発光素子または頂部発光素子であってもよい。
【0159】
別の態様は、少なくとも1つの有機エレクトロルミネセント素子(OLED)を含む素子を示す。有機発光ダイオードを含む素子は、例えば、ディスプレイまたは照明パネルである。
【0160】
本発明において、以下の定義された用語、これらの定義は、異なる定義が特許請求の範囲または本明細書の他の場所に与えられない限り、適用されるものとする。
【0161】
本明細書の文脈において、マトリックス材料に関連している用語の「異なる」または「異なっている」は、マトリックス材料がその構造式において異なっていることを意味する。
【0162】
HOMOとも呼ばれる、最高被占分子軌道のエネルギーレベル、およびLUMOとも呼ばれる、最低空分子軌道のエネルギーレベルは、電子ボルト(eV)で測定される。
【0163】
用語の「OLED」および「有機発光ダイオード」は同時に使用され、そして同じ意味を有する。ここで使用される用語の「有機エレクトロルミネセント素子」は有機発光ダイオードおよび有機発光トランジスタ(OLETs)の両方を含んでもよい。
【0164】
ここで使用される場合、「重量パーセント」、「wt.-%」、「重量パーセント」、「重量%」およびそれらの変形型は、組成物、成分、物質または薬剤について、各電子輸送層の成分、物質または薬剤の重量を、各電子輸送層の成分、物質および薬剤の総重量で除して100を掛けたもの、とみなす。電子輸送層および電子注入層それぞれのすべての成分、物質および薬剤の総重量パーセント量は、100wt.-%を超えないように選択されると理解される。
【0165】
ここで使用される場合、「体積パーセント」、「vol.-%」、「体積パーセント」、「体積%」およびそれらの変形型は、組成物、成分、物質または薬剤について、各電子輸送層の成分、物質または薬剤の体積を各電子輸送層の成分、物質および薬剤の総体積で除して100を掛けたもの、とみなす。カソード層のすべての成分、物質および薬剤の総体積パーセント量は、100vol.-%を超えないように選択されると理解される。
【0166】
ここでは、全ての数値が明示的に示されているか否かにかかわらず、用語の「約」によって修正されると推定される。ここで使用される場合、用語の「約」は生じ得る数量の変更を指す。用語の「約」によって修正されるか否かにかかわらず、特許請求の範囲はその数量と同等のものを含む。
【0167】
なお、本明細書および添付の特許請求の範囲で使用されるように、単数形「a」、「an」、および「the」は別段の明確な指示を文章内でしない限り、複数の指示対象を含む。
【0168】
「~がない」、「~含有しない」、「~を含まない」という用語は、不純物を除外するものではない。不純物は、本発明によって達成される目的に関して技術的効果を有さない。
【0169】
[図面の簡単な説明]
本発明のこれらおよび/または他の態様および利点は、添付の図面と併せて、例示的な実施形態の以下の説明から明らかになり、より容易に理解されるであろう:
図1は、本発明の一実施形態による有機発光ダイオード(OLED)の概略断面図である;
図2は、本発明の例示的な実施形態によるOLEDの概略断面図である。
【0170】
図3は、本発明の例示的な実施形態による、電荷発生層を含むタンデムOLEDの概略断面図である。
【0171】
図4は、要約式C424813Znを有する本発明の逆配位錯体E3の結晶構造を示す。
【0172】
[発明素子の実施形態]
ここで、本発明の例示的な実施形態を詳細に参照し、その例を添付の図面に示し、同様の参照番号は、全体を通して同様の要素を指す。本実施例は図を引用して本発明の諸態様を説明するために、以下に説明する。
【0173】
ここで、第1の要素が第2の要素「上」に形成されるか、または配置されると言及される場合、第1の要素は、第2の要素上に直接配置されることができ、または1つ以上の他の要素がそれらの間に配置されることができる。第1の要素が第2の要素上に形成されるか、または「直接上に」配置されると言及される場合、それらの間に他の要素は配置されない。
【0174】
図1は、本発明の一実施形態による有機発光ダイオード(OLED)100の概略断面図である。OLED100は、基板110と、アノード120と、正孔注入層(HIL)130と、正孔輸送層(HTL)140と、放出層(EML)150と、電子輸送層(ETL)160とを含む。電子輸送層(ETL)160は、EML150上に直接形成される。電子輸送層(ETL)160上には、電子注入層(EIL)180が配置されている。陰極190は、電子注入層(EIL)180上に直接配置される。
【0175】
単一の電子輸送層160の代わりに、電子輸送積層(ETL)を任意に使用することができる。
【0176】
図2は、本発明の別の例示的な実施形態によるOLED100の概略断面図である。図2は、図2のOLED100は、電子ブロッキング層(EBL)145および正孔ブロッキング層(HBL)155を含む点で図1と異なる。
【0177】
図2を参照すると、OLED100は、基板110と、アノード120と、正孔注入層(HIL)130と、正孔輸送層(HTL)140と、電子ブロッキング層(EBL)145と、放出層(EML)150と、正孔ブロッキング層(HBL)155と、電子輸送層(ETL)160と、電子注入層(EIL:)180と、カソード電極190とを含む。
【0178】
図3は、本発明の別の例示的な実施形態によるタンデムOLED200の概略断面図である。図3は、図3のOLED100が電荷発生層および第2の放出層をさらに含む点で、図2と異なる。
【0179】
図3を参照すると、OLED200は、基板110、アノード120、第1の正孔注入層(HIL)130、第1の正孔輸送層(HTL)140、第1の電子ブロッキング層(EBL)145、第1の放出層(EML)150、第1の正孔ブロッキング層(HBL)155、第1の電子輸送層(ETL)160、n型電荷発生層(n型CGL)185、正孔発生層(p型電荷発生層;p型GCL)135、第2の正孔輸送層(HTL)141、第2の電子ブロッキング層(EBL)146、第2の放出層(EML)151、第2の正孔ブロッキング層(EBL)156、第2の電子輸送層(ETL)161、第2の電子注入層(EIL)181、およびカソード190を含む。
【0180】
図1図2及び図3には示されていないが、OLED100及び200をシールするために、カソード電極190上にシール層がさらに形成されていてもよい。また、他の種々の変形が可能である。
【0181】
以下、本発明の一以上の例示的な実施形態を、以下の実施例を参照して詳細に説明する。しかしながら、これらの実施例は、本発明の1つ以上の例示的な実施形態の目的および範囲を限定することを意図するものではない。
【0182】
[実験部]
[本発明の金属錯体の調製]
[例示的な化合物E2]
化合物をスキーム1に従って調製した。
【0183】
【化16】
【0184】
[1. 工程1:1,1,1-トリフルオロ-N-(ペルフルオロフェニル)メタンスルホンアミドの合成]
250mLのシュレンクフラスコを真空中で加熱し、冷却後、窒素でパージした。ペルフルオロアニリンを100mLのトルエンに溶解し、溶液を-80℃に冷却した。1.7Mのt-ブチルリチウム溶液を、シリンジを介して10分間かけて滴下した。反応溶液は透明から白濁に変化し、-80℃で1時間撹拌した。その後、溶液を-60℃に温め、1.1当量のトリフルオロメタンスルホン酸無水物を溶液に滴下した。次いで、冷却浴を除去し、反応混合物を周囲温度までゆっくりと温め、一晩撹拌し、それによって色が明るい橙色に変化した。さらに、白色固体が形成された。沈殿した副生成物であるトリフルオロメタンスルホン酸リチウムを、焼結ガラスフィルター上での吸引濾過によって濾過し、2×30mLのトルエンおよび30mLのn-ヘキサンで洗浄した。橙色の濾液を蒸発させ、高真空中で乾燥させて、結晶を形成した。次いで、粗生成物をバルブ-トゥ-バルブ蒸留(135℃@1.2×10-1mbar)によって精製し、結晶性無色固体(主画分)を得た。
【0185】
H NMR[d-DMSO、ppm]δ:13.09(s、1H、N-H)。
【0186】
13C{H}NMR[d-DMSO、ppm]δ:116.75(m、C-C)、120.74(q、CF=325Hz、CF)、136.39、138.35(2m、CF=247Hz、m-C)、137.08、139.06(2m、CF=247Hz、p-C)、142.98、144.93(2m、CF=247、Hz o-C)。
19F NMR[d-DMSO、ppm]δ:-77.45(m、CF)、-148.12(m、C)、-160.79(m、p-C)、-164.51(m、C)。
【0187】
ESI-MS:m/z-neg=314(M-H)。
【0188】
EI-MS:m/z=315(M)、182(M-SOCF)、69(CF)。
【0189】
[工程2:ビス((1,1,1-トリフルオロ-N-(ペルフルオロフェニル)メチル)-スルホンアミド)亜鉛の合成]
100mLのシュレンクフラスコを真空中で加熱し、冷却後、窒素でパージした。1,1,1-トリフルオロ-N-(ペルフルオロフェニル)メタンスルホンアミドを10mLのトルエンに溶解し、ヘキサン中の0.5当量のジエチル亜鉛を、周囲温度でシリンジを介して溶液に滴下した。添加中、霧が形成され、反応溶液はゼリー状になり、白濁した。溶液をこの温度でさらに30分間撹拌した。その後、30mLのn-ヘキサンを加えると白色沈殿が形成され、これを不活性雰囲気下で焼結ガラスフィルター(細孔4)上で濾過した。濾過ケークを15mLのn-ヘキサンで2回洗浄し、高真空中100℃で2時間乾燥させた。
【0190】
収率:白色固体として660mg(0.95mmol、1,1,1-トリフルオロ-N-ペルフルオロフェニル)メタンスルホンアミドに対して60%)。
【0191】
13C{H}NMR[d-DMSO、ppm]δ:121.68(q、CF=328Hz、CF)、123.56(m、C-C)、133.98、135.91(2m、CF=243Hz、p-C)、136.15、138.13(2m、CF=249Hz、m-C)、142.33、144.24(2m、CF=240、Hz o-C)。
【0192】
19F NMR[d-DMSO、ppm]δ:-77.52(m、CF)、-150.43(m、C)、-166.77(m、C)、-168.23(m、p-C)。
【0193】
ESI-MS:m/z-neg=314(M-Zn-L)。
【0194】
EI-MS:m/z=692(M)、559(M-SOCF)315(CNHSOCF)、182(CNH)、69(CF)。
【0195】
[例示的な化合物E3]
9.1gのEを温度240℃および圧力10-3Paで昇華させた。
【0196】
収率5.9g(65%)。
【0197】
昇華した材料は無色の結晶を形成した。適当な形と大きさ(0.094×0.052×0.043mm)の1つの結晶をガラスキャピラリーにアルゴン雰囲気中で封入し、モリブデンカソード(λ=71.073pm)から供給される線源からの単色X線放射を用いてKappa Apex II回折計(Bruker-AXS、Karlsruhe、Germany)で分析した。全体で37362回の反射をシータ範囲1.881~28.306°内で収集した。
【0198】
構造は、直接法(SHELXS-97、Sheldrick、2008)によって解析され、完全行列最小二乗法(SHELXL-2014/7、Olex2(Dolomanov、2017)によって精密化された。
【0199】
[例示的な化合物E4]
[工程1:N-(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)-1,1,1-トリフルオロメタンスルホンアミドの合成]
【0200】
【化17】
【0201】
100mLのシュレンクフラスコを真空中で加熱し、冷却後、窒素でパージした。3,5-ビス(トリフルオロメチル)アニリンを40mLのトルエンに溶解し、溶液を-80℃に冷却した。t-ブチルリチウム溶液を、シリンジを介して15分間かけて滴下した。得られた黄色溶液を-80℃で1.5時間撹拌した。トリフルオロメタンスルホン酸無水物を-80℃で加えた。冷却浴を除去し、反応混合物をゆっくりと周囲温度まで温め、一晩撹拌した。次に、反応物を氷浴中で<10℃に冷却し、10%HSO水溶液70mLをゆっくり加えた。水相を75mLのジエチルエーテルで3回抽出し、合わせた有機相を100mLの水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、溶媒を減圧下で除去した。得られた褐色がかった油を120℃および2e-02mbarで、バルブトゥバルブから蒸留した。
【0202】
収率:5,23g(無水物に対して83%);微黄色油、ゆっくりと結晶化する。
【0203】
[工程2:ビス((N-(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)-1,1,1-トリフルオロメチル)スルホンアミド)亜鉛の合成]
【0204】
【化18】
【0205】
N-(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)-1,1,1-トリフルオロメタンスルホンアミドを乾燥したシュレンクフラスコ中のトルエンに溶解した。ジエチル亜鉛の1Mトルエン溶液を滴下し、得られた濃厚懸濁液を一晩撹拌した。固体を不活性条件下で濾過し、20mLの乾燥ヘキサンで洗浄し、高真空下で一晩乾燥された。
【0206】
収率:1.12g(69%);白色固体
真空昇華により、E4は、組成物C54185413Znを有する化合物E5に変換され、上述した結晶相を形成する。
【0207】
本発明の化合物のさらなる例を同様に調製した:
E6、スキーム4に従って、1,1,1-トリフルオロ-N-(ペルフルオロピリジン-4-イル)メタンスルホン-アミドに対する収率99%
【0208】
【化19】
【0209】
E8、スキーム5に従って、1,1,1-トリフルオロ-N-(2,5,6-トリフルオロ-ピリミジン-4-イル)メタンスルホンアミドに基づく収率81%
【0210】
【化20】
【0211】
E10、スキーム6に従って、1,1,2,2,2-ペンタフルオロ-N-(ペルフルオロ-ピリジン-4-イル)エタン-1-スルホンアミドに対する収率92%
【0212】
【化21】
【0213】
E12、スキーム7に従って、収率80%
【0214】
【化22】
【0215】
E14、スキーム8に従って、収率90%
【0216】
【化23】
【0217】
E16、スキーム9に従って、収率85%
【0218】
【化24】
【0219】
E18、スキーム10に従って、収率76%
【0220】
【化25】
【0221】
E20、スキーム11に従って、収率82%
【0222】
【化26】
【0223】
E22、スキーム12に従って、収率68%
【0224】
【化27】
【0225】
E24、スキーム13に従って、収率67%
【0226】
【化28】
【0227】
[装置実験]
[一般的な手順]
90nmのITOを有する15Ω/cmガラス基板(コーニング社から入手可能)を150mm×150mm×0.7mmの大きさに切断し、イソプロピルアルコールで5分間、次いで純水で5分間、超音波洗浄し、紫外線オゾンで30分間再度洗浄して、第1の電極を調製した。
【0228】
有機層は、10-5PaでITO層上に連続的に堆積される。組成物および層の厚さについては表1および2を参照のこと。表1~表3において、cは濃度、dは層の厚さを示す。
【0229】
次に、10-7mbarの超高真空下でアルミニウムを蒸着し、有機半導体層上に直接アルミニウム層を堆積させることにより、カソード電極層を形成する。5~1000nmの厚さを有する均質なカソード電極を生成するために、1つまたはいくつかの金属の熱単一共蒸着が、0、1~10nm/s(0.01~1Å/s)の速度で行われる。カソード電極層の厚さは100nmである。
【0230】
素子は、ガラススライドでの素子の封入によって周囲条件から保護される。それによって、さらなる保護のためのゲッター材料を含む空洞が形成される。
【0231】
電流電圧測定は、Keithley 2400 ソースメータを使用して温度20℃で行われ、Vで記録される。
【0232】
[実験結果]
[装置実験で使用される材料]
下記の表のどちらにも記載されている支持材料の化学式は、以下の通りである:
F1は
【0233】
【化29】
【0234】
ビフェニル-4-イル(9,9-ジフェニル-9H-フルオレン-2-イル)-[4-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)フェニル]-アミン、CAS 1242056-42-3である;
F2は
【0235】
【化30】
【0236】
(3-(ジベンゾ[c,h]アクリジン-7-イル)フェニル)ジフェニルホスフィンオキシド、CAS 1440545-22-1である;
F3は
【0237】
【化31】
【0238】
2,4-ジフェニル-6-(3’-(トリフェニレン-2-イル)-[1,1’-ビフェニル]-3-イル)-1,3,5-トリアジン、CAS 1638271-85-8である;
F4は
【0239】
【化32】
【0240】
1,3-ビス(9-フェニル-1,10-フェナントロリン-2-イル)ベンゼン、CAS 721969-94-4である;
PD-2は
【0241】
【化33】
【0242】
4,4’,4’’-((1E,1’E,1’’E)-シクロプロパン-1,2,3-トリイリデントリス(シアノメタニルイリデン))トリス(2,3,5,6-テトラフルオロベンゾニトリル)、CAS 1224447-88-4である。
【0243】
LiQはリチウム8-ヒドロキシキノリノラートであり、ZnPcは亜鉛フタロシアニンである;
ABH-113はエミッタのホストであり、NUBD-370およびDB-200は青色蛍光エミッタのドーパントであり、すべて韓国のSFCから市販されている。
【0244】
ITOは酸化インジウムスズである。
【0245】
[標準的な手順]
[電圧安定度:]
OLEDは定電流回路によって駆動される。これらの回路は、所定の電圧範囲にわたって一定の電流を供給することができる。電圧範囲が広いほど、そのような素子の電力損失は広くなる。したがって、駆動時の駆動電圧の変化を最小限に抑える必要がある。
【0246】
OLEDの駆動電圧は温度依存性である。したがって、電圧安定性は熱平衡状態で判断する必要がある。熱平衡状態には、駆動1時間後に達する。
【0247】
電圧安定性は、定電流密度で50時間駆動後と1時間駆動後との駆動電圧の差をとって測定される。ここでは、30mA/cmの電流密度が使用される。測定は室温で行う。
【0248】
dU[V]=U(50h、30mA/cm)-U(1h、30mA/cm
[実施例1]
[青色OLEDにおける何も混合されていない(neat)正孔注入層としてのスルホニルアミド配位錯体の使用]
表1aは、モデル素子を概略的に示す。
【0249】
【表2】
【0250】
結果を表1bに示す。
【0251】
【表3】
【0252】
E3の何も混合されていない層(neat layer)はより良い電圧安定性という利点を提供する。
【0253】
[実施例2]
[青色OLEDに含まれる正孔注入層におけるp型-ドーパントとしてのスルホニルアミド配位錯体の使用]
表2aは、モデル素子を概略的に示す。
【0254】
【表4】
【0255】
結果を表2bに示す。
【0256】
【表5】
【0257】
正孔輸送マトリックスを含むHILのp-ドーパント、錯体E3は、先行技術の化合物B2よりも有利であることが示されている。
【0258】
具体的には、E3でp-ドープされたHILは、より良い電圧安定性という利点を提供する。B2でドープしたHILで観察されたより高い効率は、そのような装置の非実用的に高い動作電圧のため、実用的には役に立たない。この点に関し、上記結果は、B2が何も混合されていない(neat)薄い正孔注入層でのみ使用可能であるのに対して、E3はp-ドーパントとしても良好に適用可能であることを示している。
【0259】
[実施例3]
[何も混合されていない(neat)正孔発生層としてスルホニルアミド配位錯体を含む青色タンデムOLED]
表3aは、モデル素子を概略的に示す。
【0260】
【表6】
【0261】
結果を表3bに示す
【0262】
【表7】
【0263】
結果は、何も混合されていない(neat)B2 CGLを有する素子は不十分であるのに対して、E3が何も混合されていない(neat)CGLとして適切であることを示している。
【0264】
[実施例4]
[正孔発生層中のp-ドーパントとしてスルホニルアミド配位錯体を含む青色タンデムOLED]
表4aは、モデル素子を概略的に示す。
【0265】
【表8】
【0266】
結果を表4bに示す。
【0267】
【表9】
【0268】
結果は、E3が、B2と比較してp-ドーパントとして有意に優れた性能を示している実施例2と同様である。
【0269】
前述の詳細な説明および実施例から、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、本発明の組成物および方法に改良および変更を加えることができることは明らかであろう。したがって、本発明の精神および範囲から逸脱することなく本発明になされるすべての改良は、添付の特許請求の範囲内に入ることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0270】
図1】本発明の一実施形態による有機発光ダイオード(OLED)の概略断面図である。
図2】本発明の例示的な実施形態によるOLEDの概略断面図である。
図3】本発明の例示的な実施形態による、電荷発生層を含むタンデムOLEDの概略断面図である。
図4】要約式C424813Znを有する本発明の逆配位錯体E3の結晶構造を示す。
図1
図2
図3
図4