(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-26
(45)【発行日】2024-04-03
(54)【発明の名称】スクロオキシ水酸化鉄含有顆粒及び医薬組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 33/26 20060101AFI20240327BHJP
A61K 9/20 20060101ALI20240327BHJP
A61P 3/00 20060101ALI20240327BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20240327BHJP
【FI】
A61K33/26
A61K9/20
A61P3/00
A61P13/12
(21)【出願番号】P 2020535899
(86)(22)【出願日】2019-08-09
(86)【国際出願番号】 JP2019031548
(87)【国際公開番号】W WO2020032227
(87)【国際公開日】2020-02-13
【審査請求日】2022-08-01
(31)【優先権主張番号】P 2018151684
(32)【優先日】2018-08-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000104560
【氏名又は名称】キッセイ薬品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100151231
【氏名又は名称】柳 伸子
(74)【代理人】
【識別番号】100196807
【氏名又は名称】飯塚 雅人
(72)【発明者】
【氏名】倉嶋 誉
(72)【発明者】
【氏名】大森 浩明
(72)【発明者】
【氏名】一色 信行
【審査官】梅田 隆志
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-538299(JP,A)
【文献】特表2011-503148(JP,A)
【文献】国際公開第2013/046453(WO,A1)
【文献】特表2013-536251(JP,A)
【文献】特表2012-516299(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 33/00-33/44
A61K 9/00-9/72
A61P 1/00-43/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スクロオキシ水酸化鉄を含有し、最長寸法が1.0~4.0m
mであり、引張強度が1.0~5.5N/mm
2であることを特徴とする、
略球形状の圧縮成形されたミニタブレッ
ト。
【請求項4】
略球形状において、円柱の高さに対する厚さの比が1.6~1.9である、請求項1から
3のいずれか一項に記載のミニタブレット。
【請求項5】
摩損度が1.0%以下であることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の
ミニタブレット。
【請求項6】
崩壊時間が30分以内であることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の
ミニタブレット。
【請求項9】
一包装容器あたり200mg~600mgの鉄を含有する、請求項
8に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スクロオキシ水酸化鉄を含有する顆粒及び医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
これまでスクロオキシ水酸化鉄を含有する医薬品として、「ピートル(登録商標)チュアブル錠250mg」及び「ピートル(登録商標)チュアブル錠500mg」が販売されている。両者はその外径がそれぞれ16.5mm及び20.5mmであるドーナツ型のチュアブル錠であり口腔内で噛み砕いて服用する透析中の慢性腎臓病患者における高リン血症の改善のための錠剤である。
【0003】
口腔内で、咀嚼などにより崩壊させて服用するチュアブル錠は、水がなくても服用できるため携帯に便利であり、また、手間なく服用できるという利点がある。しかし、一般的にチュアブル錠は、大型でそのままでは飲みにくく、高齢者や、咀嚼力の低下した患者の服用が容易でない場合もある。また、咀嚼に伴う薬剤の味や口腔内の着色が気になる患者も少なくない(特許文献1または非特許文献1)。また、錠剤を粉状の顆粒剤に変更する場合もあるが、単なる顆粒剤は口中での広がりやのどへの付着、義歯の間への入り込みによって不快感を訴える高齢者が多いことが報告されており必ずしも満足のいくものではなかった(非特許文献1)。
【0004】
これまで粒剤としては、コレスチミドを有効成分とする約3mm径の高コレステロール血症治療剤コレバイン(登録商標)ミニが販売されている(非特許文献2)。
【0005】
これまで、スクロオキシ水酸化鉄を含有する製剤はチュアブル錠しか知られておらず、咀嚼しなくても服用することが可能な新規な製剤の提供が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2017-178829号公報
【文献】大嶋耐之、「Pharm Stage」、2007年、7巻、6号、p.16-20
【文献】山之内製薬、“ニュースリリース 山之内製薬 高コレステロール血症治療剤 「コレバイン ミニ83%」を新発売”、[online]、2002年10月7日、[2018年7月30日検索]、インターネット<https://www.astellas.com/jp/corporate/news/yamanouchi/021007.html>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、スクロオキシ水酸化鉄を含有する新規な製剤、特に、咀嚼しなくても服用することが可能な製剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、スクロオキシ水酸化鉄を含有する新規な製剤を提供すべく鋭意検討した結果、特定の大きさ及び形状、並びに特定の物理化学的性質を有する顆粒が、咀嚼せずとも服用しやすく、工業的に製造する上で適切な製剤特性を有することを見出し、本発明を完成させた。すなわち、本発明は、下記の〔1〕から〔7〕等に関する。
〔1〕スクロオキシ水酸化鉄を含有し、最長寸法が1.0~4.0mmの略球形状であり、引張強度が1.0~5.5N/mm2であることを特徴とする、顆粒。
〔2〕略球形状が、円柱とその上下面から凸状に膨出成形したキャップ部とからなり、円柱の直径が1.0~4.0mmである、前記〔1〕に記載の顆粒。
〔3〕略球形状において、厚さに対する直径の比率が0.7~1.2、円柱の高さに対する厚さの比が1.05~3.0である、前記〔1〕又は〔2〕に記載の顆粒。
〔4〕崩壊時間が30分以内であり、摩損度が1.0%以下であることを特徴とする、前記〔1〕から〔3〕のいずれかに記載の顆粒。
〔5〕顆粒が、圧縮成形体の形態をとる、〔1〕から〔4〕のいずれかに記載の顆粒。
〔6〕前記〔1〕から〔5〕のいずれかに記載の顆粒を含む医薬組成物。
〔7〕一包装容器あたり200mg~600mgの鉄を含有する、前記〔6〕に記載の医薬組成物。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、スクロオキシ水酸化鉄を含有する新規な製剤を提供する。本発明の顆粒並びに医薬組成物により、咀嚼困難な患者の服用性や製造性に優れた新規な製剤を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】顆粒の最短寸法と最長寸法の一例を示す概略図である。
【
図2】本発明の顆粒としての実施形態の一例を示す図である。
【
図3】本発明の顆粒としての他の実施形態の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0011】
Lmin 最短寸法
Lmax 最長寸法
(A) 平面図
(B) 側面図
(1) 直径
(2) 厚さ
(3) 円柱の高さ
(4) キャップ部
(5) 硬度を測定する時の力をかける方向
F 硬度を測定する時の力
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態についてより詳細に説明する。
【0013】
本発明において、各用語は、特に断らない限り、以下の意味を有する。
【0014】
「顆粒」という用語は、造粒されたものを意味し、圧縮成形されたミニタブレット若しくはミクロタブレットも含まれる。
【0015】
「略球形状」という用語は、球形、卵型、円柱とその上下面から凸状に膨出成形したキャップ部とからなる形状等、外形がおよそ球状の形状及びそれらの形状に類似した形状であり、水平面上に投影した際の最長寸法と最短寸法の比(最長寸法/最短寸法)が1.0~1.5であるものを意味する。本発明の顆粒は、最長寸法が1.0~4.0mmであるものをいい、好ましくは、1.5~3.0mmであり、より好ましくは、2.1~2.5mmである。最長寸法と最短寸法の比は、好ましくは、1.0~1.2であり、より好ましくは、1.0である。最長寸法と最短寸法の決定方法については、顆粒を水平面上に投影した際に一番短い寸法を最短寸法として設定し、それと直交する直線のうち一番長い寸法を最長寸法として測定する。例えば、
図1に示すキャップ部を有する円柱形の顆粒では、直径及び厚みのうち、一番短い寸法の直径を最短寸法、それと直交する厚みを最長寸法とする。
【0016】
略球形状の顆粒としては、例えば、本発明の実施の形態の一例を示す
図2又は
図3に基づいて説明すると、所定の直径(1)、厚さ(2)及び円柱の高さ(3)を有し、その円柱の両面が凸状に膨出成形したキャップ部(4)から構成され、そのキャップ部(4)は頭頂部が平面である円錐台形状である場合と、頭頂部が曲面であるドーム状である場合があり、キャップ部が所定の曲率半径を有するドーム状である場合とを含む。ここで厚さに対する直径の比率は「(1)の値/(2)の値」で、円柱の高さに対する厚さの比率は「(2)の値/(3)の値」で、それぞれ算出される。
【0017】
略球形状の顆粒の実施態様の一つとして、例えば、直径(1)が1.0~4.0mm、好ましくは1.5~3.0mm、より好ましくは2.0~2.5mmで、キャップ部(4)が頭頂部を平面成形した円錐台形状の凸面、好ましくはキャップ部(4)の両面に曲率半径0.5~5.0mm、より好ましくは曲率半径1~4mmの凸曲面を有し、厚さ(2)に対する直径(1)の比率が0.7~1.2、好ましくは、0.9~1.1、より好ましくは0.95~1.05で、円柱の高さ(3)に対する厚さ(2)の比が1.05~3.0、好ましくは、1.4~2.5、より好ましくは1.6~1.9で、比重が1.0~2.0mg/mm3、好ましくは1.4~1.8mg/mm3、より好ましくは1.5~1.7mg/mm3で、引張強度が1.0~5.5N/mm2、好ましくは1.0~4.7N/mm2、より好ましくは1.0~3.9N/mm2であることが挙げられる。この時、厚さ(2)に対する直径(1)の比率が0.7~1.2であると、生産性や服用性の点で好ましい。また、円柱の高さ(3)に対する厚さ(2)の比が1.05~3.0であると、割れ欠けや摩損が生じにくく好ましい。引張強度が1.0N/mm2以上であると崩壊時間と顆粒の耐久性の点で好ましく、例えば、包装容器に充填する際に摩損する顆粒が増加しにくい。一方、引張強度が5.5N/mm2以下であると崩壊性の点で好ましく、例えば、日本薬局方の一般試験法「崩壊試験法」において30分以内に崩壊しやすい。
【0018】
スクロオキシ水酸化鉄(一般名)(sucroferric oxyhydroxide)は水酸化鉄(III)/スクロース/デンプン混合物として公知の化合物であり、文献記載の方法に従い製造することができ、例えば、国際公開第97/22266号又は国際公開第2015/078900号等に記載の方法に従い製造することもできる。
【0019】
スクロオキシ水酸化鉄において、オキシ水酸化鉄(III)、スクロースおよびデンプンの特に好ましい混合物は、スクロオキシ水酸化鉄の総乾燥重量(すなわち、100重量%)基準で、約25~40重量%のオキシ水酸化鉄(III)、約25~40重量%のスクロースおよび約25~40重量%のデンプンを含む。オキシ水酸化鉄(III)、スクロースおよびデンプンの特に好ましい混合物は、前記混合物に基づくスクロオキシ水酸化鉄の総乾燥重量(すなわち、100重量%)基準で、約30~35重量%のオキシ水酸化鉄(III)、約30~35重量%のスクロースおよび約30~35重量%のデンプンを含み、オキシ水酸化鉄(III)が好ましくはβ-オキシ水酸化鉄(III)を含む。
【0020】
スクロオキシ水酸化鉄に含まれるデンプンは、1種、2種又はそれ以上のデンプン、例えば、天然デンプンのみ又はα化デンプンのみ又は天然デンプンとα化デンプン混合物のいずれでもよい。天然デンプンとα化デンプンの混合物を含むスクロオキシ水酸化鉄が好ましい。
【0021】
本発明の顆粒は、スクロオキシ水酸化鉄に1種又は複数の薬学的に許容される添加剤、例えば、賦形剤、崩壊剤、結合剤、滑沢剤などを添加することで製造することができる。好ましい実施形態では、滑沢剤を含み、例えば、コロイドシリカ、軽質無水ケイ酸、三ケイ酸マグネシウム、タルク、第三リン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸、フマル酸ステアリルナトリウム、ポリエチレングリコールおよびベヘン酸グリセロール等が挙げられ、これらのうち一つを若しくは複数組み合わせて使用することができる。より好ましくは、ステアリン酸マグネシウム、軽質無水ケイ酸及びタルクをそれぞれ単独、又はそれぞれ、0.1~2重量%:0~4重量%:0~4重量%の比で組み合わせて使用することを含む。好ましくは、顆粒中に添加剤が0.1~10重量%存在し、より好ましくは、1~6重量%である。
【0022】
さらなる実施形態では、本発明の顆粒は経口製剤に薬学的に許容される1種又は複数の香料又は着色剤などを含む。香料としては、例えば、アップルフレーバー、オレンジフレーバー、キャラメルフレーバー、コウチャフレーバー、ココアフレーバー、ゴマフレーバー、ストロベリーフレーバー、バナナフレーバー、バニラフレーバー、マッチャフレーバー、メントール、ヨーグルトフレーバー、レモンフレーバー、チョコレートフレーバー等が挙げられ、着色剤としては、三二酸化鉄,黄色三二酸化鉄,黒酸化鉄,カラメル等が挙げられる。
【0023】
本発明の顆粒の製造方法は特に制限されず、公知の方法で製造することができる。例えば、単発打錠機、ロータリー打錠機、外部滑沢打錠機等、通常の打錠機を用いて、本発明の略球形状の顆粒の製造に適した杵(例えば、シングルチップ杵、マルチチップ杵等)を使用する方法等により製造することができ、本発明の略球形状及び製剤特性(流動性、摩損耐性、崩壊性、製造性、服用性等)を発揮させるための圧力で成形する方法が挙げられる。
【0024】
本発明の医薬組成物の実施態様として、顆粒剤が挙げられる。
【0025】
本発明の医薬組成物は経口的に投与される。例えば、透析中の慢性腎臓病患者における高リン血症の改善の為に使用する場合、1回あたりの投与量が鉄として200mg~600mgとなるよう本発明の複数の顆粒を包装容器に充填した医薬組成物として投与される。
【0026】
前記包装容器は特に限定されず、ピロー包装、スティック包装等の一般的に医薬品の包装容器として用いられているものが挙げられる。患者が服用しやすい形状として注目されている入口の幅が20mm前後、長さが70mm~120mm程度のスティック包装の包装容器が好ましい。
【0027】
本発明の顆粒の「引張強度」は、顆粒の硬度を破断面積で除した値として算出できる。硬度を破断面積で除することにより算出される当該引張強度は、顆粒の大きさ、厚さ、形状等の影響を排除し直接的な強度の比較、評価として用いることができる。詳細は後述する。
【0028】
本発明の顆粒の「摩損度」は、衝撃に対する製剤の磨耗性やもろさを示す値をいい、具体的には、第十七改正日本薬局方に収載される錠剤の摩損度試験法を参考に、内径約287mm、深さ約38mmの透明で内面は滑らかなプラスチック性ドラム型の試験器に顆粒を6.5gとなるよう複数入れ、24~26回転/1分間の回転速度で100回転または500回転させたのち全顆粒の質量を精密に量り、初期質量に対する減少質量の質量百分率を算出することにより求められる値をいう。好ましい実施形態において、前記100回転で試験した際の本発明の顆粒の摩損度は1.0%以下である。より好ましくは、本発明の顆粒の摩損度は0.8%以下であり、さらに好ましくは0.7%以下、特に好ましくは0.5%以下である。
【0029】
本発明の顆粒の形状とその物理化学的性質により、耐久性と適切な流動性を有するので、製造時に摩損、欠け、破損の発生率が少ないため充填精度が向上する。特に、顆粒を包装容器に充填する際に顆粒同士が衝突することによる割れ欠けが生じにくいため、発生する微粉による機械の目詰まりが起こりにくく、流動性に優れているため、必要な顆粒の数量を正確に量り取り、充填装置からこぼれ落ちることなく、顆粒自身の破損を最小限にとどめながら入口が狭い細長いスティック包装容器にも充填できるため、包装容器への充填効率が向上する。さらには、包装容器に充填してから患者の下へ届ける移送の過程で割れ欠けによる微粉の発生が抑えられるため、服用時に微粉による口腔内の着色、のどへの付着、義歯へ微粉が詰まるというようなことも起こりにくく、包装容器からもスムーズに顆粒が出てくるので服用性が向上する。
【0030】
さらに別の局面として、本発明の顆粒の形とその物理化学的性質は、顆粒の連続製造性に優れるという特性を発揮するという特徴を有する。また、長時間製造を連続しても、製造される顆粒の質量のばらつきが小さく、崩壊時間への影響も少なく、割れ欠けの発生率が大きくなっていくことも無いので成形装置の清掃が少なくて済むため、顆粒の質量並びに含量均質性の偏差が極めて小さい顆粒を製造することが可能であり、品質の高い製剤を連続的にすなわち工業的に製造するのに適している。
【0031】
本発明の顆粒は優れた崩壊性を示し、例えば、日本薬局方の一般試験法「崩壊試験法」において30分以内に崩壊するのが好ましく、20分以内に崩壊するのがより好ましい。
【実施例】
【0032】
本発明の内容を以下の試験例、実施例及び参考例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明の内容はこれに限定されるものではない。
実施例1:顆粒の製造
以下の表1に示す量に従ってスクロオキシ水酸化鉄、賦形剤(軽質無水ケイ酸、タルク、ステアリン酸マグネシウム)及び香料を一緒に混合し、得られた混合物を篩過した後、直径2.3mm及び曲率半径1.5mmで丸く窪んだ杵と臼を有する打錠機にて厚さ2.3mmとなるよう圧縮成形し、直径2.3mm、凸部の曲率半径1.5mm、厚さ2.3mm、円柱部の高さ1.3mmであるキャップ部を有する円柱形の顆粒を得た。
【0033】
【0034】
実施例2~14、参考例1~2:顆粒の製造
実施例1と同様の方法で、表1に示すスクロオキシ水酸化鉄、軽質無水ケイ酸、タルク、ステアリン酸マグネシウム、香料の混合物を、それぞれ直径及び窪みの曲率半径が異なる杵と臼を有する打錠機にて厚さを調整しながら打錠し、実施例2~14及び参考例1~2の形状の顆粒を製造した。
医薬組成物の製造
実施例1~14で得られた顆粒を一包装容器あたりの鉄含量が250mgとなるように複数量り取り、一包装容器あたり250mgの鉄を含有する医薬組成物を得た。
試験例1:硬度測定
実施例1~14及び参考例1~2の顆粒の硬度を、硬度計(岡田精工製、PC-30)を用いて
図4に示した方向で力を加え、顆粒を一定速度で圧裂破断させたときの圧力(N:ニュートン)として測定した。測定結果を表2に示した。
試験例2:引張強度の計算
実施例1~14及び参考例1~2の顆粒の引張強度を、試験例1で測定した各顆粒の硬度をその破断面積で除する下記(式1)にて算出した。算出結果を表2に示した。
【0035】
「引張強度」=2F/(π×(1)×(2))・・・・・・・・(式1)
式中、Fは顆粒の硬度(N:ニュートン)、(1)は顆粒の直径(mm)、(2)は顆粒の厚さ(mm)を指す。
試験例3:崩壊試験
第一七改正日本薬局方の一般試験法「崩壊試験法」に従って崩壊試験を実施した。具体的には、試験液は水を用い、実施例1~3、6~14及び参考例1~2の顆粒をそれぞれ約1.3g量り取り、崩壊試験法の即放性製剤の錠剤(素錠)の項と同様の試験方法に従い試験を行った。試験結果を表2に示した。
試験例4:摩損度試験
第一七改正日本薬局方の「錠剤の摩損度試験法」に従って実施した。一定速度(25回転/1分間)で回転する円筒中に、実施例1~5、7、9~10、12~13及び参考例1~2の顆粒をそれぞれ合計6.5gとなるよう複数個秤り入れ、中板により顆粒の落下を繰り返した。4分間回転させ、円筒内の顆粒を取り出した。破損分離した粉及び小粒子を篩別除去して全顆粒の質量を測定し、質量減を初期質量に対する百分率を算出することにより求めた。試験結果を表2に示した。
【0036】
【0037】
試験例5:顆粒の連続製造性
実施例4又は実施例5の顆粒をロータリー打錠機を用いてそれぞれ連続的に製造し、連続製造時間毎に、含量、硬度および摩損度を測定した。なお、摩損度は、試験例4と同様
に測定した。それら測定結果を表3に示した。実施例4又は実施例5の顆粒は、連続して製造しても、顆粒の含量、硬度および摩損度に問題となる大きな変化は見られないことが示された。
【0038】
【0039】
試験例6:顆粒の包装材への充填性
実施例4又は実施例5の顆粒を、幅20mm、長さ90mmの包装容器に、一包装容器当たりの鉄含量が250mgとなるよう連続して充填していった。充填毎に、平均充填質量、平均充填質量の変動係数を測定していき、それら結果を表4に示した。実施例4又は実施例5の顆粒は流動性に優れており、必要な顆粒の数量を正確に量り取り、充填装置からこぼれ落ちることなく、入口が狭い包装容器に一定量をばらつきなく、顆粒の破損数(割れたり欠けたりした顆粒の数)を最小限に抑えながら充填できることが示された。なお、平均充填量の変動係数は充填質量のばらつきを意味し、平均充填質量の変化量の標準偏差を平均充填質量で除した時の割合(%)で算出した。
【0040】
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明は、咀嚼する必要のない新規なスクロオキシ水酸化鉄を含有する製剤として有用である。