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特許7461296電池で使用するためのナノコンポジットカソード材料
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-26
(45)【発行日】2024-04-03
(54)【発明の名称】電池で使用するためのナノコンポジットカソード材料
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/60 20060101AFI20240327BHJP
   H01M 4/583 20100101ALI20240327BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20240327BHJP
   H01M 4/38 20060101ALI20240327BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20240327BHJP
   H01M 4/13 20100101ALI20240327BHJP
   H01M 4/133 20100101ALI20240327BHJP
   H01M 4/137 20100101ALI20240327BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20240327BHJP
   C08L 101/12 20060101ALI20240327BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20240327BHJP
   C08L 25/06 20060101ALI20240327BHJP
   C08L 33/12 20060101ALI20240327BHJP
   C08K 7/24 20060101ALI20240327BHJP
   C01B 32/198 20170101ALI20240327BHJP
【FI】
H01M4/60
H01M4/583
H01M4/36 A
H01M4/36 E
H01M4/38 Z
H01M4/62 Z
H01M4/13
H01M4/133
H01M4/137
H01M10/052
C08L101/12
C08K3/04
C08L25/06
C08L33/12
C08K7/24
C01B32/198
【請求項の数】 21
(21)【出願番号】P 2020537633
(86)(22)【出願日】2018-08-24
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-04-01
(86)【国際出願番号】 IB2018056450
(87)【国際公開番号】W WO2019138272
(87)【国際公開日】2019-07-18
【審査請求日】2021-08-20
(31)【優先権主張番号】15/866,122
(32)【優先日】2018-01-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】599130449
【氏名又は名称】サウジ アラビアン オイル カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】アルサラン, ムハメッド
(72)【発明者】
【氏名】アルシャラエ, エドリース
(72)【発明者】
【氏名】アーメッド, ファヒーム
(72)【発明者】
【氏名】アルドサリ, ヤズィード ファハド
【審査官】多田 達也
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第107286491(CN,A)
【文献】特表2012-533862(JP,A)
【文献】特開2014-007141(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第106398179(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0218352(US,A1)
【文献】ALSHARAEH, Edreese H et al.,Microwave Irradiation Synthesis and Characterization of RGO-AgNPs/Polystyrene Nanocomposites,Polymer Composites,John Wiley and Sons Inc.,2014年01月27日,Vol.35, Issue 12,pp.2018-2323,DOI:10.1002/pc.22897
【文献】ALSHARAEH, Edreese et al.,Novel synthesis of holey reduced graphene oxide(HRGO) by microwave irradiation method for anode in lithium-ion batteries,SCIENTIFIC REPORTS,Nature Portfolio,2016年07月26日,Vol.6,pp.1-13,DOI:10.1038/srep29854
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00-4/98
H01M10/05-10/0587
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)非導電性ポリマーおよび(b)カーボンフィラーを含むナノコンポジットを含むカソードであって、前記カーボンフィラーが多孔質炭素材料の複数の超薄シートを含み、ここで、前記多孔質炭素材料が、還元型酸化グラフェンを含み、前記複数の超薄シートの各シートの厚さが1~5個の単一原子であり、
ここで、前記ナノコンポジットが、前記カーボンフィラーを0.1%~2%の範囲の重量パーセントで含み、そして前記重量パーセントは、前記非導電性ポリマーと前記カーボンフィラーの総重量に基づき;
前記多孔質炭素材料の複数の超薄シートの各シートの少なくとも一部が、平均径が2nm~5nmの範囲の複数の細孔を含み;そして
前記多孔質炭素材料の複数の超薄シートの少なくとも一部の平均シート厚さが、1nm~4nmの範囲である、
カソード。
【請求項2】
前記多孔質炭素材料のBET表面積が、200m/gまたはそれを超える、請求項1に記載のカソード。
【請求項3】
前記非導電性ポリマーが、ポリスチレン、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)、およびポリスチレンとポリ(メチルメタクリレート)のコポリマーからなる群から選択されるメンバーであるか、またはそれを含む、請求項1から2のいずれか一項に記載のカソード。
【請求項4】
前記ナノコンポジットの導電率が、10-4S/cmまたはそれを超える、請求項1から3のいずれか一項に記載のカソード。
【請求項5】
前記ナノコンポジットのガラス転移温度が、90℃またはそれを超える、請求項1から4のいずれか一項に記載のカソード。
【請求項6】
前記ナノコンポジットが、(i)結合剤、(ii)導電性添加剤、または(i)と(ii)の両方をさらに含む、請求項1から5のいずれか一項に記載のカソード。
【請求項7】
前記ナノコンポジット中の前記結合剤および前記導電性添加剤の合計重量パーセントが、5%~20%の範囲である、請求項6に記載のカソード。
【請求項8】
前記ナノコンポジットが、50μm~200μmの範囲の厚さのフィルムである、請求項6または7に記載のカソード。
【請求項9】
前記ナノコンポジットが、硫黄をさらに含む、請求項6~8のいずれか一項に記載のカソード。
【請求項10】
前記ナノコンポジット中の前記硫黄の重量パーセントが、40%~80%の範囲である、請求項9に記載のカソード。
【請求項11】
請求項6~8のいずれか一項に記載のカソードを含むリチウムイオン電池。
【請求項12】
(i)前記リチウムイオン電池の比容量が、25℃で100~600mAh/gの範囲であり;かつ
(ii)前記リチウムイオン電池の比容量が、100℃で5~20mAh/gの範囲である、請求項11に記載のリチウムイオン電池。
【請求項13】
前記リチウムイオン電池の25℃での可逆容量が、50~200mAh/gの範囲であり、100℃での可逆容量が、5~20mAh/gの範囲である、請求項11または請求項12に記載のリチウムイオン電池。
【請求項14】
最初の充電サイクルの初期の比充電容量と比較して、25℃で100回の充電/放電サイクルの後、前記リチウムイオン電池がその比容量の少なくとも90%を保持している、請求項11~13のいずれか一項に記載のリチウムイオン電池。
【請求項15】
最初の充電サイクルの初期の比充電容量と比較して、100℃で100回の充電/放電サイクルの後、前記リチウムイオン電池がその比充電容量の少なくとも90%を保持している、請求項11~14のいずれか一項に記載のリチウムイオン電池。
【請求項16】
アノード;および
電解質
をさらに含む請求項11~15のいずれか一項に記載のリチウムイオン電池。
【請求項17】
請求項9または請求項10に記載のカソードを含むリチウム硫黄電池。
【請求項18】
アノード;および
電解質
をさらに含む、請求項17に記載のリチウム硫黄電池。
【請求項19】
ナノコンポジットを調製する方法であって、前記方法が、
各シートの厚さが1~5個の単一原子である、還元型酸化グラフェンを含む多孔質炭素材料の複数の超薄シートの少なくとも一部を、非導電性ポリマーマトリックス前駆体および重合開始剤をとともに接触させ、それによりナノコンポジット混合物を形成するステップと;
前記ナノコンポジット混合物をマイクロ波で照射するステップと;
前記ナノコンポジット混合物を加熱して前記ポリマーマトリックス前駆体を重合させ、それによりナノコンポジットを形成するステップとを含み;
ここで、前記ナノコンポジットが、ーボンフィラーを0.1%~2%の範囲の重量パーセントで含み、そして前記重量パーセントは、前記非導電性ポリマーと前記カーボンフィラーの総重量に基づき;
前記多孔質炭素材料の複数の超薄シートの各シートの少なくとも一部が、平均径が2nm~5nmの範囲の複数の細孔を含み;そして
前記多孔質炭素材料の複数の超薄シートの少なくとも一部の平均シート厚さが、1nm~4nmの範囲である、
方法。
【請求項20】
前記多孔質炭素材料の前記複数の超薄シートが、
マイクロ波照射下、鋳型前駆体と還元剤の存在下で酸化グラフェンを還元して、鋳型化された複数の還元型酸化グラフェン(RGO)シートを得るステップであって、各鋳型化されたRGOシートがその底面上の複数の鋳型化された領域を覆う複数の鋳型を含むステップと;
少なくとも一部の前記複数の鋳型を前記RGOシートから除去して、前記多孔質炭素材料の前記複数の超薄シートを形成するステップとを含む方法によって調製される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記ナノコンポジット混合物を形成するステップの後に、前記ナノコンポジット混合物を硫黄と接触させるステップを含む、請求項19または請求項20に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本願は、2018年1月9日付で出願された米国特許出願第15/866,122の利益を主張し、その全内容は参照によりその全文が本明細書に組み込まれる。
【0002】
分野
本開示は一般に、ナノコンポジット、より詳細には、高圧での動作に耐えるように設計された電池(例えば、リチウムイオン電池、リチウム硫黄電池、または両方)のカソード材料に関する。
【背景技術】
【0003】
背景
充電式電池は、電気自動車および携帯用電子デバイスなどの幅広い消費者向けデバイスに電力を供給するために使用される。しかし、これらの電池は、故障の影響を受けやすく、バッテリーが過充電、過放電、または高温で動作する場合などの「悪用条件」では安全ではない可能性がある。例えば、臨界温度よりも高い温度で動作すると、充電式電池は熱暴走を起こす可能性がある。熱暴走の間、高温が電池内で一連の発熱反応を引き起こし、電池の温度を急速に上昇させる。熱暴走は、電池の故障、デバイスの損傷、ユーザーへの害を引き起こす可能性がある。熱暴走の間、電極材料(例えば、アノードおよびカソード材料)は反応性が高く、不安定である可能性があるため、充電式電池は火災および爆発を起こす可能性がある。熱暴走が起こらない場合でも、リチウムイオン電池で使用されるカソード材料は、高温で動作させると性能の低下の影響を特に受けやすい。例えば、リチウム金属酸化物系のカソード材料は、容量が失われる可能性がある。したがって、熱暴走に耐性があり、高温で動作させた場合に、より安全で、より信頼性が高く、より安定している、改良されたカソード材料が必要とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
要旨
本開示では、熱暴走に耐性があり、高温での動作に耐える充電式電池のカソード材料として使用することができる、ナノコンポジットおよび電池が提示される。ナノコンポジットには、非導電性ポリマーと、多孔質炭素材料の複数の超薄シートを含むカーボンフィラーが含まれる。非導電性ポリマーとカーボンフィラーは相乗的に作用して、熱安定性の向上、表面積の増大、およびナノコンポジットに対する電気化学的性質の向上をもたらす。例えば、ナノコンポジットを電極材料として含む電池は、室温から高温(例えば、100℃またはそれを超える温度)までの広い温度範囲にわたって、性能および安定性が向上していることが示された。これらの電池は、石油産業で使用されるダウンホール機器などの高温で動作するデバイスに、安全で信頼性の高い電源を提供することにより、重要なニーズを満たす。
【0005】
本開示は、低濃度の多孔質炭素材料の超薄シートの存在下で、非導電性ポリマーの電気化学活性を改善することができるという認識を包含する。例えば、特定の実施形態では、ナノコンポジットは超薄シートをたった2%またはそれ未満の重量パーセントで含む場合がある。さらに、多孔質炭素材料の超薄シートの電気化学活性は、シートが非導電性ポリマー中に分散している場合に(炭素材料の単位重量あたりに)改善することができるため、高温での動作に耐えることができる充電式電池用の高性能ナノコンポジットカソード材料が得られる。特定の理論に縛られることを望むものではないが、非導電性ポリマー中に均一に分布している超薄多孔質炭素シートは、Li挿入の活性サイトの増加、ナノコンポジット内のLiの有効拡散距離の低下、ナノコンポジットへの導電率の向上、充電および放電中の電荷移動抵抗の低下、およびLi挿入および抽出中の局所的な体積変化に対する構造安定性の向上をもたらすと考えられる。さらに、ナノコンポジットには非導電性ポリマーが含まれているが、コンポジットの導電率は予想外に高いので(例えば、10-4ジーメンス/センチメートル(S/cm)またはそれを超える)、ナノコンポジットをカソード材料として使用することができる。
【0006】
本開示に記載される利点を達成するために、ナノコンポジットに比較的少量のカーボンフィラーが必要とされる。例えば、カーボンフィラーを1%の重量パーセントで含むナノコンポジットは、カーボンフィラーのみよりも熱的に安定している。カーボンフィラーは、非導電性ポリマーの熱安定性も向上させる。例えば、ナノコンポジットのガラス転移温度は、非導電性ポリマーのみの場合よりも高い。カーボンフィラーを添加すると、非導電性ポリマーの電気化学的活性は向上する。例えば、カソード材料として使用する場合、カーボンフィラーを1%の重量パーセントで含むナノコンポジットは、カーボンフィラーのみの比容量(約420mAh/g)の40%以上(約180ミリアンペア時/グラム(mAh/g))を保持する。言い換えれば、使用するカーボンフィラーの量が100倍低下しても、電池の容量の40%は保持される。そのため、カーボンフィラーはナノコンポジット内の非導電性ポリマーと組み合わせると、単位重量あたりの効果が高くなる。必要とされるカーボンフィラーは少ないため、カソード材料を低コストで調製することができる。
【0007】
特定の実施形態では、本開示に記載されるナノコンポジットは、従来のリチウム金属酸化物に基づくなどのカソード材料よりも、性能がよく、より安定しており、コストが低い場合がある。例えば、本開示に記載されるナノコンポジットは、高温(例えば、90℃超)で安定していることができ、高温での100回またはそれを超える充電/放電サイクルの後でさえ一貫した電気化学的性質を有し得る。例えば、本開示に記載されるナノコンポジットは、高温での数回の充電/放電サイクル後に、従来のリチウム金属酸化物に基づくカソード材料の特徴的な容量減衰の影響を受けない可能性がある。本開示に記載される方法は、マイクロ波照射に基づいており、多くの既存の方法よりも必要とする化学添加物が少ない。よって、本開示に記載される方法は、カソード材料を調製するための既存の方法よりも費用がかからない可能性がある。その上、本開示に記載されるカソード材料は、多くの既存の代替物よりも安全で毒性が低い。
【0008】
特定の実施形態では、本開示に記載される電池(例えば、リチウムイオン電池およびリチウム硫黄電池)は、高温で動作する場合、従来の電池よりも安全である。例えば、本開示に記載される電池では、1または複数の短絡が高温で発生しない可能性があり、電池が高温で熱暴走しない可能性がある。したがって、本開示に記載されるナノコンポジットおよび電池は、安全なエネルギー蓄積デバイスおよび高温で動作するデバイスで使用することができる。例えば、本開示に記載される電池は、石油産業において、高温に直面する油井およびその他の石油関連用途の状態を監視するために使用されるようなダウンホール機器に電力を供給するために使用され得る。
【0009】
一態様では、本開示は、(a)非導電性ポリマー(例えば、ポリスチレン、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)、またはポリスチレンとPMMAのコポリマーなどの電気絶縁ポリマー)および(b)カーボンフィラーを含むナノコンポジットに関する。カーボンフィラーには、多孔質炭素材料の複数の超薄シートが含まれる。各シートの厚さは約1~約5個の単一原子である。
【0010】
特定の実施形態では、多孔質炭素材料には、多孔質の還元型酸化グラフェン(例えば、穴のある(holey)還元型酸化グラフェン(HRGO))が含まれる。
【0011】
特定の実施形態では、多孔質炭素材料の超薄シートの少なくとも一部の各々には、平均径が2ナノメートル(nm)から5nmの範囲の複数の細孔(例えば、穴)が含まれる。
【0012】
特定の実施形態では、ナノコンポジットは、カーボンフィラーを0.1%~2%の範囲の重量パーセントで含む。重量パーセントは、非導電性ポリマーとカーボンフィラーの総重量に基づく。
【0013】
特定の実施形態では、多孔質炭素材料の複数のシートの少なくとも一部の平均シート厚さは、1nm~4nmの範囲である。例えば、平均シート厚さは、走査型電子顕微鏡法を使用して評価することができる。
【0014】
特定の実施形態では、多孔質炭素材料は、約200平方メートル/グラム(m/g)またはそれを超えるブルナウアー-エメット-テラー(BET)表面積を有する。
【0015】
特定の実施形態では、非導電性ポリマーは、ポリスチレン、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)、またはポリスチレンとPMMAのコポリマーであるか、またはこれらを含む。特定の実施形態では、非導電性ポリマーはポリスチレンである。
【0016】
特定の実施形態では、ナノコンポジットの導電率は、約10-4ジーメンス/センチメートル(S/cm)またはそれを超える。
【0017】
特定の実施形態では、多孔質炭素材料は、マイクロ波照射を、例えば、900ワット(W)またはそれを超える電力で使用して調製される。
【0018】
特定の実施形態では、ナノコンポジットのガラス転移温度は約90℃またはそれを超える温度である。
【0019】
特定の実施形態では、ナノコンポジットには、(i)結合剤(例えば、ポリフッ化ビニリデン)、(ii)導電性添加剤(例えば、カーボンブラック)、または(i)と(ii)の両方も含まれる。
【0020】
特定の実施形態では、ナノコンポジット中の結合剤と導電性添加剤の合計重量パーセントは、5%~20%の範囲である。例えば、ナノコンポジット中の結合剤と導電性添加剤の合計重量パーセントは、約10%であってよい。合計重量パーセントは、(i)非導電性ポリマー、(ii)カーボンフィラー、および(iii)ナノコンポジットに存在する結合剤、導電性添加剤または両方の総重量に基づく。ナノコンポジット中の結合剤の量はゼロであってよい;または、ナノコンポジット中の導電性添加剤の量はゼロであってよい;またはナノコンポジットは、結合剤と導電性添加剤の両方を含んでよい。
【0021】
特定の実施形態では、ナノコンポジットは、50マイクロメートル(μm)~200μmの範囲の厚さのフィルムである。特定の実施形態では、ナノコンポジットは、10μm~20μmの範囲の厚さのフィルムである。
【0022】
特定の実施形態では、ナノコンポジットは、硫黄(例えば、硫黄元素、硫黄含有塩、硫黄とリチウムを含有する塩、硫黄/グラフェンコンポジット、またはこれらの組合せ)をさらに含む。
【0023】
特定の実施形態では、硫黄の重量パーセントは40%~80%の範囲である。例えば、硫黄の重量パーセントは、60%~80%または70%~80%であってよい。重量パーセントは、(i)非導電性ポリマー、(ii)カーボンフィラー、(iii)ナノコンポジットに存在する結合剤、導電性添加剤、または両方、および(iv)硫黄の総重量に基づく。
【0024】
一態様では、本開示は、カソードを含むリチウムイオン電池に関する。カソードには、前述のナノコンポジットが含まれる。
【0025】
特定の実施形態では、リチウムイオン電池の比容量(例えば、比充電/放電容量)は、約25℃で100~600ミリアンペア時/グラム(mAh/g)(例えば、比充電容量が190mAh/g、比放電容量が177mAh/g)である。例えば、比容量は、100ミリアンペア/グラム(mA/g)の電流密度で測定することができる。リチウムイオン電池の比容量(例えば、比充電/放電容量)は、約100℃で5~20mAh/g(例えば、比充電容量が13.5mAh/g、比放電容量が14.5mAh/g)である。例えば、比容量は、100mA/gの電流密度で測定することができる。
【0026】
特定の実施形態では、リチウムイオン電池の約25℃での可逆容量が、50~200mAh/gの範囲であり、約100℃での可逆容量が、5~20mAh/gの範囲である。例えば、可逆容量は、100mA/gの電流密度で測定することができる。
【0027】
特定の実施形態では、最初の充電サイクルの初期の比充電容量と比較して、25℃で100回の充電/放電サイクルの後、リチウムイオン電池がその比容量(例えば、比充電/放電容量)の少なくとも90%を保持している。
【0028】
特定の実施形態では、最初の充電サイクルの初期の比充電容量と比較して、約100℃で100回の充電/放電サイクルの後、リチウムイオン電池がその比充電容量(例えば、比充電/放電容量)の少なくとも90%を保持している。
【0029】
特定の実施形態では、リチウムイオン電池は、アノード(例えば、リチウム金属、リチウム金属酸化物、または炭素材料)および電解質[例えば、有機溶媒(例えば、エチレンカーボネートまたはジメチルカーボネート)中のリチウム含有塩(例えば、六フッ化リン酸リチウム)]をさらに含む。
【0030】
一態様では、本開示は、カソードを含むリチウム硫黄電池に関する。カソードには、前述のナノコンポジットが含まれる。
【0031】
特定の実施形態では、リチウム硫黄電池は、アノード(例えば、リチウム金属またはリチウム金属酸化物)および電解質[例えば、塩(例えば、有機溶媒(例えば、1,2-ジメトキシエタン(DME)または1,3-ジオキソラン(DOL))中のビス(トリフルオロメタン)スルホンイミドリチウム塩(LiTFSI))]をさらに含む。
【0032】
一態様では、本開示は、ナノコンポジットを調製する方法に関する。この方法は、多孔質炭素材料の複数の超薄シートの少なくとも一部を、非導電性ポリマーマトリックス前駆体(例えば、スチレンまたはメタクリル酸メチル)および重合開始剤(例えば、過酸化ベンゾイル)とともに接触させ、それによりナノコンポジット混合物を形成することを含む。超薄シートの各々の厚さは約1~約5個の単一原子である。この方法は、ナノコンポジット混合物をマイクロ波で(例えば、少なくとも900Wのマイクロ波電力で)照射することを含む。この方法は、ナノコンポジット混合物を(例えば、少なくとも70℃の温度で、または70℃~90℃の範囲の温度で)加熱して、ポリマーマトリックス前駆体を重合させ、それによりナノコンポジットを形成することを含む。
【0033】
特定の実施形態では、多孔質炭素材料の複数の超薄シートは、マイクロ波照射下(例えば、少なくとも900Wのマイクロ波電力で少なくとも2分間)、鋳型前駆体と還元剤の存在下で酸化グラフェンを還元して、鋳型化された複数の還元型酸化グラフェン(RGO)シートを得ることを含む方法を使用して調製される。例えば、鋳型前駆体は、少なくとも10%の重量パーセントで水に溶解したAgNOであってよく、この重量パーセントは、AgNOと水の重量に基づく(9重量部の水ごとに少なくとも1重量部のAgNO)。さらに、例えば、還元剤はヒドラジン水和物であってよく、少なくとも2.5%の重量パーセント(鋳型前駆体、水、および還元剤の総重量に基づく)で、例えば、2.5%~7.5%の範囲の重量パーセントで添加されてよい。鋳型化された各RGOシートは、RGOシートの基底面上の複数の鋳型化された領域を覆う複数の鋳型(例えば、Agナノ粒子)を含む。この方法は、複数の鋳型の少なくとも一部をRGOシートから除去することを含む。例えば、鋳型は、鋳型およびその下にある鋳型化された領域をマイクロ波照射下で硝酸に溶解し、多孔質炭素材料の複数の超薄シート(例えば、複数の穴のある還元型酸化グラフェン(HRGO)シート)を形成することにより除去することができる。例えば、マイクロ波照射は、少なくとも900Wのマイクロ波電力で印加することができる。例えば、マイクロ波照射は、900W~1800Wの範囲のマイクロ波電力で印加することができる。複数の細孔の位置は、各鋳型化されたRGOシートの基底面上の複数の鋳型化された領域の位置に対応し得る。
【0034】
特定の実施形態では、ナノコンポジット混合物が形成された後、それを硫黄と接触させる。例えば、ナノコンポジット混合物は、硫黄元素、硫黄含有塩、硫黄とリチウムを含有する塩、硫黄/グラフェンコンポジット、またはこれらの組合せと接触させてよい。ナノコンポジット中の硫黄の重量パーセントは、50%~80%の範囲であってよい。例えば、硫黄の重量パーセントは、60%~80%、または70%~80%の範囲であってよい。重量パーセントは、ナノコンポジット(硫黄を含む)の総重量に基づく。
【図面の簡単な説明】
【0035】
本開示の前述およびその他の目的、実施態様、特徴、および利点は、添付の図面と併せて以下の説明を参照することにより、より明らかになり、よりよく理解されるであろう。
図1A図1Aは、例示的な実施形態によるナノコンポジットを調製するための方法を示すブロック図である。
図1B図1Bは、例示的な実施形態によるHRGOを調製するための方法を示すブロック図である。
図2図2は、例示的な実施形態によるナノコンポジットを示すブロック図である。
図3図3は、例示的な実施形態による電池を示すブロック図である。
図4図4は、例示的な実施形態によるサンプルの例のX線回折(XRD)パターンのプロットである。
図5図5Aは、例示的な実施形態によるAgNPs/RGOサンプルの例の走査型電子顕微鏡写真である。図5Bは、例示的な実施形態によるHRGOサンプルの例の走査型電子顕微鏡写真である。図5Cは、例示的な実施形態による1%HRGO/PSナノコンポジットの例の走査型電子顕微鏡写真である。図5Dは、例示的な実施形態によるポリスチレン(PS)の走査型電子顕微鏡写真である。
図6図6Aは、例示的な実施形態によるHRGOサンプルの例の透過型電子顕微鏡写真である。図6Bは、例示的な実施形態による、1%HRGO/PSナノコンポジットの例の低倍率での透過型電子顕微鏡写真である。図6Cは、例示的な実施形態による、1%HRGO/PSナノコンポジットの例の拡大された倍率での透過型電子顕微鏡写真である。
図7図7Aは、例示的な実施形態によるHRGOサンプルの例の窒素吸着-脱着等温線のプロットである。図7Bは、例示的な実施形態によるHRGOサンプルの例のBarrett-Joyner-Halenda(BJH)の細孔直径分布のプロットである。
図8図8は、例示的な実施形態による、HRGO/PSナノコンポジットの例におけるHRGOの導電率と重量パーセントのプロットである。
図9図9は、例示的な実施形態による、ポリスチレンおよび、異なる量のHRGOを含有するHRGO/ポリスチレンナノコンポジットの例の、ポリスチレンの示差走査熱量測定(DSC)(熱流対温度)曲線である。
図10図10は、例示的な実施形態による、1%HRGO/PSナノコンポジットの例を用いて調製したリチウムイオン電池の、室温(約25℃)での電圧と比容量のプロットである。
図11図11は、例示的な実施形態による、1%HRGO/PSナノコンポジットの例を用いて調製したリチウムイオン電池の、室温(約25℃)での比容量と充電/放電サイクル数のプロットである。
図12図12は、例示的な実施形態による、1%HRGO/PSナノコンポジットの例を用いて調製したリチウムイオン電池の、約100℃での電圧と比容量のプロットである。
図13図13は、例示的な実施形態による、1%HRGO/PSナノコンポジットの例を用いて調製したリチウムイオン電池の、約100℃での比容量と充電/放電サイクル数のプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本開示の特徴および利点は、同様の参照文字が全体を通して対応する要素を識別する図面と併せて解釈されると、以下に示される詳細な説明から、より明らかになるであろう。図面中、同様の参照番号は、一般に、同一要素、機能上類似する要素、または構造上類似する要素を示す。
【0037】
定義
約、およそ: 本開示で使用される、「約」または「およそ」という用語は、数字に関して、特に明記しない限り、または文脈から明白でない限り、数のいずれかの方向(大きい方向または小さい方向)に20%、10%、5%、1%、または0.5%の範囲内にある数を含むために使用される(そのような数が可能な値の100%を超える場合を除く)。
【0038】
アノード: 本開示で使用される、「アノード」という用語は、電池のアノードを指す。酸化反応はアノードで起こる。
【0039】
カソード: 本開示で使用される、「カソード」という用語は、電池のカソードを指す。還元反応はカソードで起こる。
【0040】
容量、比容量、比充電容量: 本開示で使用される、「容量」という用語は、所与負荷での電池の放電電流(例えば、単位はアンペア(A)またはミリアンペア(mA))と放電時間(例えば、単位は時間(h))の積を意味する。例えば、「容量」はアンペア時(Ah)またはミリアンペア時(mAh)で表すことができる。本開示で使用される、「比容量」という用語は、所与重量の電極材料についての(例えば、電池のアノード材料として使用される所与重量のナノコンポジットについての)所与負荷の電池の放電電流と放電時間の積を意味する。例えば、「比容量」はアンペア時/グラム(Ah/g)またはミリアンペア時/グラム(mAh/g)で表すことができる。特定の実施形態では、「比容量」は、「比放電容量」とも呼ばれる。本開示で使用される、「比充電容量」という用語は、所与重量の電極材料についての(例えば、アノード材料として使用される所与重量のナノコンポジットについての)所与負荷の電池の充電電流と充電時間の積を意味する。例えば、「比充電容量」は、Ah/gまたはmAh/gで表すことができる。
【0041】
充電/放電サイクル、サイクル: 本開示で使用される、「充電/放電 サイクル」および「サイクル」という用語は、電池の充電、放電、またはその両方のプロセスを指す。例えば、単一の充電/放電サイクルには、電池を充電することと放電することが含まれる。特定の実施形態では、電池は、放電サイクル中に完全にまたは部分的に放電されてよい。例えば、充電サイクル中に、電池の容量の100%、90%、80%、70%、またはそれ未満が放電され得る。同様に、特定の実施形態では、電池は、充電サイクル中に完全にまたは部分的に充電されてよい。例えば、電池は、充電サイクル中にその全容量の100%、90%、80%、70%、またはそれ未満まで充電され得る。
【0042】
充電/放電率: 本開示で使用される、「充電/放電率」という用語は、電池が充電および放電される割合の尺度を指す。例えば、「充電/放電率」は、電流または電流密度として表すことができる。例えば「充電/放電率」は、電池の最大充電容量に対していわゆるCレートとして表すことができる。
【0043】
ダウンホール機器: 本開示で使用される、「ダウンホール機器」という用語は、油井の内部の状態を測定するために使用される装置を指す。例えば、ダウンホール機器 には、油井の内部の圧力を測定するための圧力センサ、または油井の内部の温度を測定するための温度センサが含まれ得る。本開示で使用される、「油井」という用語は、地下の炭化水素貯留層から地表に炭化水素(例えば、油)を運ぶように設計された、地球のボーリング(例えば、ドリル穴またはトンネル)を意味する。
【0044】
酸化グラフェン: 本開示で使用される、「酸化グラフェン」という用語は、炭素、酸素、および水素の化合物の超薄シートから実質的になる材料を指し、各シートの厚さは炭素環の単層によって定義される(例えば、炭素環の1層は、およそ1原子の厚さであり、炭素環の端部には、炭素環の面の上方、炭素環の面の下方、またはこれらの組合せに酸素含有部分が結合している)。特定の実施形態では、炭素、酸素、および水素は、さまざまな比率で存在し得る。酸化グラフェンは、例えば、グラファイトを強い酸化剤で処置することによって得ることができる。特定の実施形態では、酸化グラフェンにはドーパントが含まれてよい;特定の実施形態ではドーパントは存在しない。ドーパントの例には、ホウ素および窒素が挙げられる。
【0045】
高圧: 本開示で使用される、「高圧」という用語は、気圧(1気圧)よりも高い圧力を指す。例えば、油井は、一般に、油井の高い温度、坑井から含油層へと延びる水柱からの静水圧、貯油層にポンプで流体を注入および排出することによって起こる圧力、ならびに、貯油層内のガスおよび流体などからの内部圧力源のために、石油の回収中は高圧の条件下にある。高圧の例は、例えば、少なくとも1気圧、少なくとも10ポンド/平方インチゲージ(psig)、少なくとも50psig、少なくとも100psig、少なくとも200psig、少なくとも500psig、少なくとも1000psig、少なくとも2000psig、少なくとも3000psig、または少なくとも5000psigである。
【0046】
高温: 本開示で使用される、「高温」という用語は、約80℃~約100℃の温度を指す。例えば、貯油層は、掘削または石油の回収中に、80℃~100℃ またはそれを超える温度であり得る。
【0047】
改善、増加、低下、減少: 本開示で使用される、「改善」、「増加」、「低下」、「減少」という用語、またはそれらの文法的に同等の用語は、ベースラインまたは他の基準測定値に対する値を示す。特定の実施形態では、適切な基準測定値は、これらの条件の特定の変化(例えば、温度の上昇)が存在しない(例えば、以前の)特定の基準条件下での(例えば、平均周囲温度に近い温度での)測定であるか、またはそれを含むことができる。
【0048】
非導電性ポリマー: 本開示で使用される、「非導電性ポリマー」という用語は、電気を伝導しないポリマー材料を指す。例えば、「非導電性ポリマー」は、電気絶縁体の機能を果たすことができる。例えば、非導電性ポリマーの導電率は、約10-14S/mまたはそれ未満であり得る。対照的に、ポリアセチレン、ポリピロール、およびポリアニリンなどの「導電性ポリマー」は導電性であり、導電体の機能を果たすことができる。
【0049】
多孔質: 本開示で使用される、「多孔質」とは、複数の細孔または穴を含むことを意味する。例えば、本開示に記載される多孔質炭素材料の超薄シートには複数の細孔が含まれ、これは、一部の実施形態では、2nm~5nmの範囲の平均細孔直径を有する。
【0050】
安定した: 本開示で使用される、「安定した」という用語は、物理的性質が実質的に変化しないこと、または使用可能な寿命にわたって性能が実質的に低下しないことを指す。例えば、安定したナノコンポジットは、ナノコンポジットが使用される製品の所定の使用可能な寿命の間、実質的な物理的変化を受けない。例えば、充電式電池用の安定した電極は、繰り返し使用した後もその充電容量を実質的に保持する。
【0051】
実質的に: 本開示で使用される、「実質的に」という用語は、特徴または特性の合計またはほぼ合計の範囲または程度を示す定性的な状態を指し、ここで「ほぼ合計」とは、全体の20%、10%、5%、1%、または0.5%以内(いずれの方向も)を指す。
【0052】
二次元(2D)材料: 本開示で使用される、「2D材料」という用語は、およそ1原子の厚さの単層によって規定される厚さを有する超薄シートから実質的に構成される材料を指す。例えば、グラフェン、還元型酸化グラフェン、および六方晶窒化ホウ素は二次元材料である。特定の実施形態では、2D材料にはドーパントが含まれてよい;特定の実施形態ではドーパントは存在しない。ドーパントの例には、炭素、ホウ素および窒素が挙げられる。
熱安定性: 本開示で使用される、「熱安定性」という用語は、材料が高温で安定している程度の尺度を指す。例えば、熱安定性の優れた電極材料は、高温で安定したままであるが、熱安定性の劣った電極材料は、変化(例えば、化学的または構造的変換)を受けて、性能の低下を導く可能性がある。
【0053】
超薄: 本開示で使用される、「超薄」という用語は、単一原子の厚さの1桁または2桁の範囲内の単層によって定義される厚さを有することを指す。例えば、超薄シートの平均シート厚さは、20nm以下、例えば、5nm~20nmの範囲であり得る。その他の実施形態では、超薄シートは、10原子以下、5原子以下、3原子以下、2原子以下、または約1原子の直径に等しい平均厚さを有してよい。例えば、超薄シートは、約0.3nm~1.5nmの厚さであってよい。
【0054】
詳細な説明
本開示に記載されるシステム、アーキテクチャ、デバイス、方法、およびプロセスは、本開示に記載される実施形態からの情報を用いて開発された変形形態および適応形態を包含することが企図される。本開示に記載されるシステム、アーキテクチャ、デバイス、方法、およびプロセスの適応、修正、または両方は、本明細書に企図されるように実行されてよい。
【0055】
本明細書を通して、物品、デバイス、システム、およびアーキテクチャが、特定の成分を有する、含む(including)、または含む(comprising)と記載されている場合か、またはプロセスおよび方法が特定のステップを有する、含む、または含むと記載されている場合には、列挙される成分から本質的に構成されるかまたは構成される本開示の物品、デバイス、システム、およびアーキテクチャが存在すること、ならびに、列挙されるプロセスステップから本質的に構成されるかまたは構成される本開示によるプロセスおよび方法が存在することがさらに企図される。
【0056】
ステップの順序または特定のアクションを実行するための順序は、本開示が使用可能である限り、重要ではないことを理解されたい。さらに、2またはそれを超えるステップまたはアクションは、同時に実行されてよい。
【0057】
本開示における、例えば背景技術の節における任意の刊行物への言及は、その刊行物が、本開示において提示される特許請求の範囲に関して先行技術として役立つことを認めるものではない。背景技術の節は、明確にするために提示されるものであり、特許請求の範囲に関する先行技術の説明を意味するものではない。
【0058】
ヘッダーは読者の便宜のために設けている。ヘッダーの存在、配置、またはその両方は、本開示に記載される主題の範囲を制限することを意図するものではない。
【0059】
特定の実施形態では、本開示は、多孔質炭素材料の複数の超薄シートと非導電性ポリマーの組合せによって達成される相乗効果の認識を包含する。例えば、非導電性ポリマーと、多孔質炭素材料の超薄シートを含むカーボンフィラーの両方を含むナノコンポジットは、カソード材料として使用すると、熱特性および電気化学的性質の向上をもたらすことがある。例えば、カーボンフィラーの重量パーセントが0.1%~2%の範囲であるナノコンポジット(またはナノコンポジットを含有する電池)は、ナノコンポジットのみの成分材料よりも室温(例えば、約25℃)と高温(例えば、約100℃またはそれを超える温度)の両方で、導電率の向上、熱安定性の増加、比充電/放電容量の増加、およびより安定したサイクル性能を示すことができる。
【0060】
本開示に記載される電池(例えば、リチウムイオン電池またはリチウム硫黄電池)は、特定の実施形態において、油井内の状態を測定するか、その他の石油関連の操作中、例えば石油の発見や回収中などに使用されるダウンホール機器に電力を供給するために使用することができる。ダウンホール機器には、掘削および石油の回収中の油井において、圧力および温度をそれぞれ測定するための圧力センサおよび温度センサが含まれ得る。油井の状態は、80℃~100℃またはそれを超える範囲の温度で変化する可能性がある。これらの状態をモニターする機能により、掘削および石油の回収をより効果的に行うことができ、潜在的な安全上の懸念(例えば、温度、圧力、または両方の急な上昇に起因)を早期に特定し、機器の損傷および人身への傷害のリスクを大幅に削減できる。例えば、本開示に記載される電池は、ダウンホール機器に電力を供給するために使用される従来の電池と比較して、改善された安全性、電気化学的性質、および安定性を有し得る。例えば、本開示に記載されるリチウムイオン電池およびリチウム硫黄電池は、従来のカソード材料を採用した電池よりもエネルギー密度、サイクル寿命、および構造安定性が向上した軽量電源を提供する。
【0061】
特定の実施形態では、本開示に記載される電池は、そうでなければ熱暴走の可能性を制限する試みで使用され得る複雑な工学技術および安全装置の必要性を不要にする(または減少させる)。例えば、安全装置は、電池における高圧を緩和して熱暴走を防ぐのに役立つことがあるが、そのような装置は100%効果的ではないか、または完全に信頼できない。代わりに、本開示に記載される電池は、複雑な安全装置に頼らずに熱暴走を防止するための、より高い費用効果およびより安全な選択肢を提供する。
【0062】
ナノコンポジット
多孔質炭素材料の調製
図1Aは、ナノコンポジットを調製するための方法100の実例となる例を示す。方法100は、必要に応じて、ステップ110で多孔質炭素材料の複数の超薄シートを調製することで始まる。ステップ110で調製した多孔質炭素材料の超薄シートは、1原子の厚さであってもよいし、約2~5個の単一原子の厚さであってもよい。多孔質炭素材料は、穴のある還元型酸化グラフェン(HRGO)などの多孔質の還元型酸化グラフェンであってよい。
【0063】
図1Bは、HRGOを調製するための方法102の実例となる例を示す。図1Bのステップ112では、硝酸銀(AgNO)を鋳型前駆体として、酸化グラフェンを含む水性混合物に添加する。水性酸化グラフェン混合物は、酸化グラフェンを少なくとも2ミリグラム/ミリリットル(mg/mL)の濃度で含有する。例えば、水性酸化グラフェン混合物は、酸化グラフェンを2mg/mL~10mg/mLの範囲の濃度で含有することがあり得る。特定の実施形態では、水性酸化グラフェン混合物中の酸化グラフェンの濃度は、混合物の総重量に基づいて80%~95重量%である。AgNOの溶液は、少なくとも1:250の体積比(AgNO溶液の体積:酸化グラフェン混合物の体積)で添加される。AgNO溶液の濃度は、AgNOの重量と使用する溶媒(例えば、水)の重量に基づいて、少なくとも5重量%(例えば、5重量%~20重量%)である。
【0064】
ステップ114では、還元剤を使用して、AgNO鋳型前駆体の存在下で酸化グラフェンを還元する。例えば、還元剤は、ヒドラジン水和物を含む溶液であってよい。ステップ114では、この還元剤溶液を、少なくとも0.012:50の体積比(還元剤溶液の体積:酸化グラフェンとAgNO混合物の体積)で添加する。
【0065】
ステップ116では、サンプルをマイクロ波に曝露して複数の鋳型化された還元型酸化グラフェン(RGO)シートを得る。マイクロ波電力は少なくとも900Wであり、サンプルはマイクロ波に少なくとも2分間曝される。例えば、マイクロ波電力は、900W~1800Wの範囲であり得る。鋳型化された各RGOシートは、RGOシートの基底面上のいくつかの鋳型化された領域を覆う複数のAgナノ粒子鋳型を含む。鋳型化されたRGOサンプルの例の走査型電子顕微鏡写真を図5Aに示す。
【0066】
ステップ118では、ステップ116の混合物が洗浄される。混合物中の固体は密度に基づいて(例えば、遠心分離および上清の除去によって)液体から分離される。次に、固体を洗浄流体に再分散させて、鋳型化されたRGOシートから残留材料を除去する。このプロセスは、複数回繰り返すことができる。洗浄流体には、蒸留水、別の溶媒(例えば、有機溶媒)、1またはそれを超える塩、酸(例えば、希塩酸)、またはこれらの組合せが含まれてよい。鋳型化されたRGOシートを洗浄した後、それらを洗浄流体から分離し、乾燥させて鋳型化されたRGOシートの粉末を得る。次に、材料を室温または30℃、40℃、50℃、または60℃の温度で乾燥させる。次に、生成物を、1時間、2時間、6時間、12時間、24時間、または同様の期間、乾燥させる。
【0067】
ステップ120では、鋳型化されたRGOシートを(例えば、炉内で)少なくとも2時間、少なくとも250℃(例えば、250℃~350℃)の温度に加熱して、その後の酸化グラフェンシートでの細孔の形成のためにAg鋳型の触媒活性を向上させる。
【0068】
ステップ122およびステップ124では、マイクロ波照射下で硝酸溶液に鋳型を溶解し、それによって下にある鋳型化された領域を除去することにより、鋳型化されたRGOシートから少なくとも一部のAgナノ粒子鋳型を削除する。硝酸溶液は、硝酸を少なくとも1モル/リットル(mol/L)(例えば、1mol/L~3mol/L)の濃度で含む。例えば、硝酸溶液は、硝酸を2.6mol/Lの濃度で含むことができる。鋳型化されたRGOシートは、硝酸溶液に少なくとも2mg/mLの濃度で添加される。マイクロ波照射に使用するマイクロ波電力は、少なくとも900Wである。例えば、マイクロ波電力は、900W~1800Wの範囲であり得る。サンプルはマイクロ波に少なくとも2分間曝される。Agナノ粒子の鋳型を除去した後、複数の穴のある還元型酸化グラフェン(HRGO)シートが得られる。各HRGOシートは、孔の位置がそれらの除去前のAgナノ粒子テンプレートの位置に対応するように複数の孔を含む。HRGOサンプルの例の走査型電子顕微鏡写真を図5Bに示す。
【0069】
ステップ126では、ステップ122およびステップ124の生成物が洗浄される。例えば、固体は密度に基づいて(例えば、遠心分離および上清の除去によって)液体から分離される。次に、固体を洗浄流体に再分散させて、HRGOシートから残留材料を除去する。このプロセスは、複数回繰り返すことができる。洗浄流体には、蒸留水、別の溶媒(例えば、有機溶媒)、1またはそれを超える塩、酸(例えば、希塩酸)、またはこれらの組合せが含まれてよい。HRGOシートを洗浄した後、それらを洗浄流体から分離し、乾燥させてHRGOシートの粉末を得る。次に、材料を室温または30℃、40℃、50℃、または60℃の温度で乾燥させる。生成物を、1時間、2時間、6時間、12時間、24時間、または同様の期間、乾燥させる。
【0070】
多孔質炭素材料とポリマーマトリックス前駆体の組合せ
図1Aに戻ると、ナノコンポジット混合物が方法100のステップ130で形成される。ステップ130では、多孔質炭素材料の複数の超薄シート(ステップ110または他の方法で得たもの)を非導電性ポリマーマトリックス前駆体(例えば、スチレン、メタクリル酸メチル、または両方)および重合開始剤(例えば、過酸化ベンゾイル)と接触させる(例えば、組み合わせるかまたは混合する)。開始剤は、1:5~1:20の範囲の重合開始剤:非導電性ポリマー前駆体の重量比で添加される。カーボンフィラーは、0.1%~2%の範囲の重量パーセントで添加され、ここで重量パーセントは、非導電性ポリマーとカーボンフィラーの総重量に基づく。例えば、カーボンフィラーは、約1%の重量パーセントで添加されてよい。
【0071】
超音波処理およびマイクロ波処理
ステップ140では、ステップ130のナノコンポジット混合物が超音波処理され、マイクロ波照射されてナノコンポジットを形成する。超音波処理は、25キロヘルツ(kHz)~45kHzの範囲の周波数と少なくとも60Wの電力(例えば、60Wから120W)で少なくとも30分間実行される。マイクロ波照射は、少なくとも900Wの電力で少なくとも2分間実行される。例えば、マイクロ波電力は、900W~1800Wの範囲である。超音波処理およびマイクロ波照射の後には、前述の洗浄および乾燥ステップが続く場合がある。
【0072】
ポリマーマトリックス前駆体の重合
方法100のステップ150では、ナノコンポジット混合物を少なくとも70℃の温度で加熱してポリマーマトリックス前駆体を重合する。例えば、ナノコンポジット混合物は、70℃~90℃の範囲の温度で加熱されてよい。ナノコンポジットは、ステップ150の完了後に形成される。例えば、スチレンを重合させてポリスチレンを形成することができる。例えば、メタクリル酸メチルを重合させてポリ(メタクリル酸メチル)(PMMA)を形成することができる。例えば、ポリスチレンとPMMAの混合物、またはポリスチレン-PMMAのハイブリッドモノマーを重合させて、ポリスチレンとPMMAのコポリマーを形成することができる。重合の後には、前述の洗浄および乾燥ステップが続く場合がある。
【0073】
図2は、例示的な実施形態によるナノコンポジット200を示すブロック図である。例えば、ナノコンポジット200には、非導電性ポリマー210およびカーボンフィラー220が含まれる。非導電性ポリマー210は、ポリスチレン、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)、ポリスチレンとPMMAのブレンド、またはポリスチレンとPMMAのコポリマーであってよい。
【0074】
ナノコンポジット200中のカーボンフィラー220の重量パーセントは、0.1%~2%の範囲であり、ここで重量パーセントは、非導電性ポリマーとカーボンフィラーの総重量に基づく。カーボンフィラー220には、多孔質炭素材料の複数の超薄シートが含まれる。例えば、多孔質炭素材料には、多孔質の還元型酸化グラフェンまたは穴のある還元型酸化グラフェンが含まれ得る。カーボンフィラー220中の多孔質炭素材料の超薄シートの少なくとも一部には、平均径が2nm~5nmの範囲の複数の細孔(例えば、穴)が含まれる。カーボンフィラー220中の多孔質炭素材料の複数のシートの少なくとも一部の平均シート厚さは、1nm~4nmの範囲である。カーボンフィラー220中の多孔質炭素材料のブルナウアー-エメット-テラー(BET)表面積は、約200m/gまたはそれを超える。ナノコンポジットサンプルの例の走査型電子顕微鏡写真を図5Cに示す。
【0075】
ナノコンポジット200の導電率は、約10-4S/cmまたはそれを超え、ガラス転移温度(T)は、約90℃またはそれを超える。ナノコンポジットの例の導電率を図8に示し、Tを計算するために使用され得るナノコンポジットサンプルの例の示差走査熱量測定(DSC)曲線を図9に示す。特定の理論に縛られることを望むものではないが、カーボンフィラーは、非導電性ポリマーと組み合わせると、ナノコンポジットに導電率の増加をもたらすと同時に、その熱安定性を向上させる(例えば、非導電性ポリマーのガラス転移温度を上昇させることによる)と考えられる。ナノコンポジットサンプルおよび非導電性ポリマーのさまざまな例について測定したガラス転移温度を表1に示す。
【0076】
リチウムイオン電池およびリチウム硫黄電池
前述のナノコンポジットは、高温での動作に耐えるように設計された電池(例えば、リチウムイオンおよびリチウム硫黄電池)のカソード材料として使用することができる。図3は、この目的で設計された電池300の実例となる例を示す。電池300には、カソード320、電解質330、セパレータ340、およびアノード350が含まれる。カソードは、カソード材料301を含み、これはカーボンフィラー/非導電性ポリマーナノコンポジット305(例えば、図1Aに示される方法100のステップ150で得たナノコンポジット)と、その他の1または複数の添加剤310を含む。1または複数の添加剤310は、溶媒中で調製することができ、結合剤、導電性添加剤、硫黄、またはこれらの組合せを含むことができる。結合剤は、例えば、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレンオキシド(PEO)またはポリ(テトラフルオロエチレン)(PTFE)であってよい。導電性添加剤は、例えば、カーボンブラックまたはカーボンナノチューブ(CNT)系の添加剤であってよい。溶媒は、例えば、N-メチル-2-ピロリドンまたはテトラヒドロフランであってよい。
【0077】
ナノコンポジット中の結合剤と導電性添加剤の合計重量パーセントは、5%~20%の範囲であってよく、ここで重量パーセントは、(i)非導電性ポリマー、(ii)多孔質炭素材料の複数の超薄シート、および(iii)ナノコンポジットに存在する結合剤、導電性添加剤または両方の総重量に基づく。ナノコンポジット中の結合剤の量はゼロであってよい;または、ナノコンポジット中の導電性添加剤の量はゼロであってよい。あるいは、ナノコンポジットは、結合剤と導電性添加剤の両方を含んでよい。特定の実施形態では、ナノコンポジット中の結合剤と導電性添加剤の合計重量パーセントは、約10%である。
【0078】
特定の実施形態では、ナノコンポジットは、50マイクロメートル(μm)~200μmの範囲の厚さのフィルムであり、一方、その他の実施形態では、ナノコンポジットは、厚さが10μm~20μmの範囲のフィルムである。ナノコンポジットのフィルムは、銅箔などの集電体の上に作製されてよい。例えば、ナノコンポジットの均一なスラリーを溶媒中で調製し、銅箔の上に広げ、乾燥させる。
【0079】
特定の実施形態では、電池300はリチウムイオン電池である。リチウムイオン電池に関して、カソード350は、例えば、リチウム金属またはリチウム金属酸化物であってよい。リチウムイオン電池に関して、電解質330は、例えば、1またはそれを超える有機溶媒に溶解した1またはそれを超えるリチウム塩であってよい。例えば、1またはそれを超えるリチウム塩には、六フッ化リン酸リチウムが含まれ得る。有機溶媒には、例えば、エチレンカーボネートまたはジメチルカーボネートが含まれ得る。アノード350とカソード320の間に置かれているセパレータ340はポリプロピレン膜である。
【0080】
リチウムイオン電池は、室温(例えば、約25℃)と高温(例えば、100℃またはそれを超える温度)の両方で改良された電気化学的性能を示すことができる。例えば、リチウムイオン電池の比容量(例えば、比充電/放電容量)は、約25℃で100mAh/g~600mAh/gまたはそれを超える範囲であり得る。例えば、リチウムイオン電池の比容量(例えば、比充電/放電容量)は、約約100℃で5mAh/g~20mAh/gまたはそれを超える範囲であり得る。リチウムイオン電池は、約25℃で50mAh/g~200mAh/gの範囲の可逆容量を有し得る。リチウムイオン電池は、約100℃で5mAh/g~20mAh/gの範囲の可逆容量を有し得る。
【0081】
本開示に記載されるナノコンポジットを含むリチウムイオン電池は、安定したままであり、室温(例えば、約25℃)と高温(例えば、100℃またはそれを超える温度)の両方で複数回の充電/放電サイクル後にその有用な電気化学的性質を保持することができる。例えば、約25℃または100℃での100回の充電/放電サイクルの後、リチウムイオン電池は、同じ温度での最初の充電サイクルで測定された初期比容量と比較して、その比容量の少なくとも90%を保持し得る。例えば、100℃での100回の充電/放電サイクルの後、リチウムイオン電池のクーロン効率は、90%であるかまたはそれを超え得る。
【0082】
特定の実施形態では、電池300はリチウム硫黄電池である。リチウム硫黄電池のカソード材料を調製するため、ナノコンポジットは、例えば、1または複数の添加剤310の1つとして硫黄をさらに含んでよい。ナノコンポジット301には、硫黄元素、硫黄含有塩、硫黄とリチウムを含有する塩、硫黄/グラフェンコンポジット、またはこれらの組合せの形態で硫黄が含まれてよい。硫黄を含むナノコンポジットの場合、ナノコンポジット中の硫黄の重量パーセントは、40%~80%の範囲であり、ここで重量パーセントは、(i)非導電性ポリマー、(ii)多孔質炭素材料の複数の超薄シート、および(iii)ナノコンポジットに存在する結合剤、導電性添加剤または両方、および(iv)添加した硫黄の総重量に基づく。例えば、ナノコンポジット中の硫黄の重量パーセントは、60%~80%の範囲であってよい。例えば、ナノコンポジット中の硫黄の重量パーセントは、70%~80%の範囲であってよい。
【0083】
リチウム硫黄電池に関して、カソード350は、例えば、リチウム金属またはリチウム金属酸化物であってよい。リチウム硫黄電池に関して、電解質330は、例えば、1またはそれを超える有機溶媒に溶解した1またはそれを超えるリチウム塩であってよい。例えば、リチウム塩は、ビス(トリフルオロメタン)スルホンイミドリチウム塩(LiTFSI)を含み得る。例えば、有機溶媒は、1,2-ジメトキシエタン(DME)または1,3-ジオキソラン(DOL)を含み得る。アノード350とカソード320の間に置かれているセパレータ340はポリプロピレン膜である。
【0084】
実験例
実施例1:ナノコンポジットのX線回折
CuKα放射線(1.54430オングストローム(Å))を30キロボルト(kV)および40ミリアンペア(mA)で使用して、Philips-PW 1729 X線回折計(Holland)でサンプルのX線回折(XRD)研究を行った。図4は、未変性ポリスチレン(PS)、銀ナノ粒子鋳型を含む還元型酸化グラフェンシート(AgNPs/RGO)、HRGO、ポリスチレン中に0.1重量パーセント(重量%)のHRGOを含有するナノコンポジット(0.1%HRGO/PS)、ポリスチレン中に1重量%のHRGOを含有するナノコンポジット(1%HRGO/PS)、ポリスチレン中に2重量%のHRGOを含有するナノコンポジット(2%HRGO/PS)、およびポリスチレン中に4重量%のHRGOを含有するナノコンポジット(4%HRGO/PS)のX線回折パターンを示す。
【0085】
図4に示されるように、ポリスチレンマトリックスに対応する約2θ=20°でのX線回折ピークの強度は、ポリスチレン中のHRGOの重量パーセントが増加するにつれて低下した。この約2θ=20°でのピーク強度の低下は、HRGOシートがポリスチレンマトリックスに均一に分散していたことを示した。HRGOシートがポリスチレンマトリックスに均一に分散していたため、ナノコンポジットは、HRGOの望ましい電気的、電気化学的、熱的、および機械的性質(例えば、HRGOの電子移動度、電気伝導率/導電率、および熱伝導率の向上)を保持する可能性が高かった。
【0086】
実施例2:ナノコンポジットの微細構造
ナノコンポジットおよびそれらの成分材料を、走査型電子顕微鏡法(SEM、FEI QUANTA(商標)200、米国)を使用して観察した。サンプルを試料台に取り付け、スパッタリングシステム(POLARON(商標)E6100、Bio-Rad、米国)によって金でコーティングした。
【0087】
図5Aは、その表面にAgナノ粒子鋳型を含む還元型酸化グラフェンシート(AgNPs/RGO)の走査型電子顕微鏡写真を示す。SEM顕微鏡写真に帯電がないことにより、RGOシートのネットワークと個々のシート自体の両方が導電性であることが示された。
【0088】
図5Bは、その表面にAgナノ粒子鋳型を含む還元型酸化グラフェンシート(AgNPs/RGO)の走査型電子顕微鏡写真を示す。図5Bの差し込み図は、同じHRGOサンプルの高倍率の顕微鏡写真を示す。図5Bに示す顕微鏡写真によると、HRGOサンプルは多孔質構造を有していた。さらに、前述のAgNPs/RGOサンプルと同様に、SEM顕微鏡写真に帯電がないことにより、RGOシートおよびのネットワークと個々のシートの両方が導電性であることが示された。
【0089】
図5Cは、1%HRGO/PSナノコンポジットサンプルの走査型電子顕微鏡写真を示す。画像内の明るい点は、ポリスチレン(PS)で覆われたナノコンポジット領域に対応している。画像内の垂直の割れ目は、複数の(例えば、2またはそれを超える)HRGOシートの積み重ねに対応する。比較のために、未変性PSの微細組織を図5Dに示す。PSのみ(図5D)はチェーン状の構造であったが、1%HRGO/PSナノコンポジット(図5C)には超薄HRGOシートを覆うPSコーティングが含まれていた。
【0090】
高解像度透過型電子顕微鏡法(HRTEM)を、JEOL JSM-2100F 透過型電子顕微鏡(米国)を使用して200kVで行った。透過型電子顕微鏡法用のサンプルを調製するために、画像化する各サンプルをエタノールに分散させた。次に、各1滴の混合物を銅グリッド上に置き、画像化する前に乾燥させた。
【0091】
図6Aは、AgNPs/RGOサンプルのマイクロ波照射と、硝酸溶液中でのサンプルの還流の後に得られたHRGOサンプルの透過型電子顕微鏡写真を示す。図6Aに示されるように、HRGOシートは、その基底面に沿って細孔を含む。残留するAgナノ粒子鋳型は、透過型電子顕微鏡写真では観察されなかった。これは、Agナノ粒子がマイクロ波照射および硝酸での還流中に完全に除去されたことを示している。これらの観察は、Agの存在に関連するHRGOのX線回折パターンにピークがないことと一致した(図4参照)。全体として、図6Aおよび図4に示す結果の組合せは、Agナノ粒子鋳型がマイクロ波照射および硝酸溶液中での還流によって完全に除去されたことを裏付ける。
【0092】
図6Aに示す大部分の細孔の場合、各々の細孔は単一のAgナノ粒子鋳型に関連付けられている。しかし、鋳型の除去の間に、一部のAgナノ粒子はHRGOシートの表面に沿ってトラックを作製した。これらのトラックは、マイクロ波照射および硝酸での還流を受けて鋳型を除去する間に、RGO表面に沿ったAgナノ粒子鋳型の動きによって引き起こされた可能性がある。Agナノ粒子鋳型が大きいほど、一般に、直径の大きな細孔(または幅の広いトラック)が生成される。一部の細孔(またはトラック)は、RGOシート上で互いに近接していた複数のAgナノ粒子鋳型を除去したことに起因している可能性がある。例えば、隣接する鋳型が融合して、分岐したトラックまたは図6Aに示すような大きな単一の細孔を形成している可能性がある。全体として、これらの結果は、Agナノ粒子鋳型が鋳型に接触している炭素原子の酸化とその後の除去を触媒し、結果として細孔(およびトラック)が形成されることを裏付ける。一方、Agナノ粒子鋳型から十分に離れていたRGOシートの炭素原子は酸化されず、これらの領域に細孔は形成されなかった。
【0093】
図6Bおよび図6Cは、それぞれ低倍率および高倍率での1%HRGO/PSナノコンポジットサンプルの透過型電子顕微鏡写真を示す。特に、このサンプルでは、HRGOシートが均等に分散され、ポリスチレンマトリックスに埋め込まれている。図6Bおよび図6Cに示されるように、マイクロ波照射および硝酸での還流によって調製されたHRGOシートは、大きい比表面積を有していた、これは、HRGOシートのポリスチレンマトリックスへの接着によって増加した可能性がある。この接着(およびその後の表面積の増加)は、π-πスタッキングを介したポリスチレンマトリックスのフェニル基とHRGOシート間の相互作用によって促進された可能性がある。
【0094】
図6Bおよび図6Cに示す透過型電子顕微鏡写真も、HRGOシートのほとんどの細孔が、HRGOシートの厚さ全体に広がっていたことを明らかにした。HRGOシートは、電解質が各スタックの各HRGOシートにより簡単にアクセスできるようにスタックされ、リチウムイオン電池とリチウム硫黄電池の両方のカソード材料としてのイオン輸送および性能が改良された。したがって、HRGOシートのスタック構造のために、電解質は、各HRGOシートの細孔およびトラックを介してだけでなく、拡張されたHRGOシート(例えば、HRGOシートのスタック)間に形成された大きな連続的なチャネルを通して、より多くのカソード材料にアクセスできた。これらの特徴は、ナノコンポジットでのリチウムイオン輸送およびインターカレーションを、特に高い充電/放電率で(例えば、100mA/gまたはそれを超える電流密度で)促進する上で重要な役割を果たす可能性がある。
【0095】
実施例3:HRGOのBET表面積およびBJH細孔直径
図7Aは、HRGOサンプルの例の窒素吸着-脱着等温線を示す。この等温線を使用して、HRGOサンプルのブルナウアー-エメット-テラー(BET)表面積を計算した。HRGOシートは、457m/gという大きいBET表面積を示し、これは、天然グラファイト(8.5m/g)、元のグラフェン(275m/g)、および未修飾HRGOフォーム(131m/g)よりも大きかった。
【0096】
図7Bは、HRGOサンプルの細孔直径分布のプロットを示す。細孔直径分布は細孔直径に対する微分細孔容積(differential pore volume)とプロットされ、Barrett-Joyner-Halenda(BJH)の理論を用いて計算された。BJH計算により、HRGOシートが多孔質構造を有することが確認され、2nm~5nmの範囲の平均細孔直径が明らかになった。
【0097】
実施例4:ナノコンポジットの電気的性質
リチウムイオン電池およびリチウム硫黄電池のカソード材料として有用であるために、ナノコンポジットは、その他のカソード材料と同等の最小導電率を有していなければならない。LiCoO、LiMn、およびLiFePOなどのその他の一般に使用されるカソード材料の導電率は、約10-4~10-9S/cmの範囲である。導電率の増加はカソード材料に望ましい。したがって、ナノコンポジットのサンプルの例の導電率(および抵抗)を測定して、そのカソード材料としての有用性を確認した。図8は、0.1重量%~2重量%の異なる量のHRGOを含有するナノコンポジットサンプルの例の導電率(および抵抗)を示す。ナノコンポジットの導電率は、最初に、ナノコンポジットのHRGO含量が0.1重量%から1重量%に増加するとともに増加した(抵抗は減少した)。次に、HRGO含量がさらに2重量%に増加するとき、ナノコンポジットの導電率は減少した(抵抗は増加した)。約10-4S/cmの最大導電率は、1重量%のナノコンポジットで観察された。この導電率は、カソード材料として使用される材料に適切である。
【0098】
実施例5:ナノコンポジットの熱安定性
示差走査熱量測定(DSC)は、HITACHI、DSC 7020を使用して行った。図9は、ポリスチレンおよび0.1重量%~4重量%の異なる量のHRGOを含有するHRGO/ポリスチレンナノコンポジットのDSC曲線(つまり、熱流対温度のプロット)を示す。DSC曲線で高い温度にシフトしたピークを示す材料は、熱安定性のより大きい材料に一致した。最適な熱安定性は、1重量%のHRGO(1%HRGO/PS)を含有するHRGO/ポリスチレンナノコンポジットについて観察され、このナノコンポジットの例が、高温での動作に耐えるように設計された電池(例えば、リチウムイオン電池またはリチウム硫黄電池)での使用に望ましい熱特性を有していたことを示す。
【0099】
各々の材料のガラス転移温度(T)は、図9に示すデータから計算された。さまざまなナノコンポジット配合物のT値を表1に示す。Tの値は、ナノコンポジットカソードの効果的な熱動作限界(つまり、適切な動作温度の範囲)を決定する。一般に、ナノコンポジットカソードは、約Tの温度まで機能し続けることになる。
【0100】
【表1】
【0101】
実施例6:ナノコンポジットの電気化学的性質
この実験例では、10mg/mLのN-メチル-2-ピロリドン溶媒中で90重量%の1%HRGO/PSサンプルを5重量%の導電剤カーボンブラックと、5重量%の結合剤ポリフッ化ビニリデンと混合することによってカソードを作製した。この混合物の均一なスラリーを調製し、集電体として機能する銅箔基板上にフィルムとして広げた。次に、このフィルムを真空下60℃で乾燥させた。
【0102】
ポリプロピレン膜セパレータ(Celgard 2325、Celgard、Inc.、米国)およびリチウム金属(純度 99.9%)アノードを備えた2電極コインハーフセルにカソードを使用した。電解質は、エチレンカーボネート(EC):ジメチルカーボネート(DMC)の体積で1:1の混合物中の1.2mol/Lヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF)であった。セルを乾燥室で組み立て、マルチチャネル電池テスター(TOYO TOSCAT-3100U、米国)を使用して、0.005ボルト(V)~3Vの電位範囲で100mA/gの電流密度で定電流充電/放電した。
【0103】
図10は、25℃で100mA/gの電流密度でのコインセル電池の初期の定電流充電/放電曲線を示す。この実験例では、典型的な充電/放電サイクルを、(i)充電サイクル(この間、0.005Vの下限電圧に達するまでLi挿入が起こる)および(ii)放電サイクル(この間、3Vのカットオフ電圧に達するまでLi抽出が起こる)と定義した。図10に示す充電および放電の電圧プロフィールは、Liがカソード構造にうまく挿入されたことを示した。充電サイクルの間、電圧プラトーが約0.9Vで観察された。このプラトーは、電圧が着実に0.005Vに下がるまで維持された(0.5Vから3Vの電圧ウィンドウの結果がここに示す)。
【0104】
図10に示した結果に基づいて、この充電/放電サイクルの間、コインセル電池の比充電容量は190mAh/g、比放電容量は177mAh/gであった。サイクル中に観察された不可逆的な容量損失(つまり、充電容量と放電容量の差)は、主にカソード材料の表面での固体電解質界面(SEI)層の形成、リチウムイオンと、酸素を含むカソード材料の残留官能基との反応、またはその両方に起因する。
【0105】
図11は、約25℃で100mA/gの電流密度での最初の25サイクルのコインセル電池の比容量を示す。100mA/gの電流密度で、コインセル電池は、100サイクルの間、181mAh/gの比充電容量および173mAh/gの比放電容量を保持した。
【0106】
表2に示すように、コインセル電池の比容量は、LiCoO(155mAh/g)およびLiFePO(170mAh/g)などのその他の一般的に使用されるカソード材料を含む電池の比容量と比較して、大幅に増加した。表2に示すように、HRGO/PSナノコンポジットを含むカソード材料を含有するコインセル電池も、同様の電位窓で機能し、その他の一般的なカソード材料と比較して、優れたサイクル寿命、広い温度範囲、優れた熱安定性、毒性の低減、およびコストの低減を示した。
【0107】
【表2】
【0108】
図12は、100℃で100mA/gの電流密度でのコインセル電池の初期の定電流充電/放電曲線を示す。電池は、それぞれ13.5mAh/gおよび14.1mAh/gの許容可能な比充電および放電容量を示した。この電池は、既存の電池と比較して、容量が増加し、熱安定性が向上した。本発明者らの知る限り、これが、高温リチウムイオン電池のカソード材料としてのナノコンポジットの最初の証拠であった。
【0109】
図13は、100mA/gおよび100℃での最初の100回の充電/放電サイクルの間のコインセル電池の比容量を示す。100サイクルの後、電池の比充電容量および比放電容量はそれぞれ12.5mAh/gおよび11.8mAh/gであった。したがって、電池は、100℃で100回の充電/放電サイクルの後に、その比容量(例えば、比充電容量、比放電容量、または両方)の少なくとも90%を保持した。
図13は、各サイクルでのコインセル電池のクーロン効率も示している。クーロン効率(CE)は以下のように計算した。
CE(%)=(比放電容量/比充電容量)×100 式1
【0110】
コインセル電池は、100℃で100サイクルで100%またはそれを超えるクーロン効率を示した。100%よりも大きいクーロン効率は、いわゆるアノードの「オーバーハング」に起因し得る。
【0111】
本開示に記載されるさまざまな実施の要素は、以前に具体的に明記されていないその他の実施を形成するために組み合わせることができる。要素は、その動作に悪影響を与えることなく、本開示に記載されるプロセスから除外されてもよい。さらに、図に示された論理フローは、望ましい結果を達成するために、必ずしも示された特定の順序または順番を必要としない。さまざまな別個の要素を1またはそれを超える個々の要素に組み合わせて、本開示に記載される機能を実行することができる。
【0112】
本明細書を通して、ナノコンポジット、材料、およびシステムが、特定の成分を有する、含む(including)、または含む(comprising)と記載されている場合か、またはプロセスおよび方法が特定のステップを有する、含む、または含むと記載されている場合には、列挙される成分から本質的に構成されるかまたは構成される本開示の装置およびシステムが存在すること、ならびに、列挙されるプロセスステップから本質的に構成されるかまたは構成される本開示によるプロセスおよび方法が存在することがさらに企図される。
【0113】
ステップの順序または特定のアクションを実行するための順序は、本開示に記載されるアプローチが使用可能である限り、重要ではないことを理解されたい。さらに、2またはそれを超えるステップまたはアクションは、同時に実行されてよい。
【0114】
本開示に記載されるアプローチは、特定の好ましい実施形態に関して特に示され、記載されているが、添付される特許請求の範囲により定義される本開示の精神および範囲から逸脱することなく、形態および詳細におけるさまざまな変更がそこで行われ得ることは、当業者に当然理解される。
本発明の好ましい実施形態によれば、例えば、以下が提供される。
(項1)
(a)非導電性ポリマーおよび(b)カーボンフィラーを含むナノコンポジットであって、前記カーボンフィラーが多孔質炭素材料の複数の超薄シートを含み、各シートの厚さが約1~約5個の単一原子である、ナノコンポジット。
(項2)
前記多孔質炭素材料が、多孔質の還元型酸化グラフェンを含む、上記項1に記載のナノコンポジット。
(項3)
多孔質炭素材料の超薄シートの少なくとも一部の各々が、平均径が2nm~5nmの範囲の複数の細孔を含む、上記項1または2に記載のナノコンポジット。
(項4)
前記ナノコンポジットが、前記カーボンフィラーを0.1%~2%の範囲の重量パーセントで含む、上記項1から3のいずれか一項に記載のナノコンポジット。
(項5)
前記多孔質炭素材料の前記複数のシートの少なくとも一部の平均シート厚さが、1nm~4nmの範囲である、上記項1から4のいずれか一項に記載のナノコンポジット。
(項6)
前記多孔質炭素材料のBET表面積が、約200m /gまたはそれを超える、上記項1から5のいずれか一項に記載のナノコンポジット。
(項7)
前記非導電性ポリマーが、ポリスチレン、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)、およびポリスチレンとポリ(メチルメタクリレート)のコポリマーからなる群から選択されるメンバーであるか、またはそれを含む、上記項1から6のいずれか一項に記載のナノコンポジット。
(項8)
前記ナノコンポジットの導電率が、約10 -4 S/cmまたはそれを超える、上記項1から7のいずれか一項に記載のナノコンポジット。
(項9)
前記多孔質炭素材料が、マイクロ波照射を使用して調製される、上記項1から8のいずれか一項に記載のナノコンポジット。
(項10)
前記ナノコンポジットのガラス転移温度が、約90℃またはそれを超える、上記項1から9のいずれか一項に記載のナノコンポジット。
(項11)
前記ナノコンポジットが、(i)結合剤、(ii)導電性添加剤、または(i)と(ii)の両方をさらに含む、上記項1から10のいずれか一項に記載のナノコンポジット。
(項12)
前記ナノコンポジット中の前記結合剤および前記導電性添加剤の合計重量パーセントが、5%~20%の範囲である、上記項11に記載のナノコンポジット。
(項13)
前記ナノコンポジットが、50μm~200μmの範囲の厚さのフィルムである、上記項11または12に記載のナノコンポジット。
(項14)
硫黄をさらに含む、上記項11~13のいずれか一項に記載のナノコンポジット。
(項15)
前記硫黄の重量パーセントが、40%~80%の範囲である、上記項14に記載のナノコンポジット。
(項16)
カソードを含むリチウムイオン電池であって、前記カソードが、上記項11~13のいずれか一項に記載のナノコンポジットを含む、リチウムイオン電池。
(項17)
(i)前記リチウムイオン電池の比容量が、約25℃で100~600mAh/gの範囲であり;かつ
(ii)前記リチウムイオン電池の比容量が、約100℃で5~20mAh/gの範囲である、上記項16に記載のリチウムイオン電池。
(項18)
前記リチウムイオン電池の約25℃での可逆容量が、50~200mAh/gの範囲であり、約100℃での可逆容量が、5~20mAh/gの範囲である、上記項16または上記項17に記載のリチウムイオン電池。
(項19)
最初の充電サイクルの初期の比充電容量と比較して、25℃で100回の充電/放電サイクルの後、前記リチウムイオン電池がその比容量の少なくとも90%を保持している、上記項16~18のいずれか一項に記載のリチウムイオン電池。
(項20)
最初の充電サイクルの初期の比充電容量と比較して、約100℃で100回の充電/放電サイクルの後、前記リチウムイオン電池がその比充電容量の少なくとも90%を保持している、上記項16~19のいずれか一項に記載のリチウムイオン電池。
(項21)
アノード;および
電解質
をさらに含む上記項16~20のいずれか一項に記載のリチウムイオン電池。
(項22)
カソードを含むリチウム硫黄電池であって、前記カソードが上記項14または上記項15に記載の前記ナノコンポジットを含む、リチウム硫黄電池。
(項23)
アノード;および
電解質
をさらに含む、上記項22に記載のリチウム硫黄電池。
(項24)
ナノコンポジットを調製する方法であって、前記方法が、
各シートの厚さが約1~約5個の単一原子である、多孔質炭素材料の複数の超薄シートの少なくとも一部を、非導電性ポリマーマトリックス前駆体および重合開始剤をとともに接触させ、それによりナノコンポジット混合物を形成するステップと;
前記ナノコンポジット混合物をマイクロ波で照射するステップと;
前記ナノコンポジット混合物を加熱して前記ポリマーマトリックス前駆体を重合させ、それによりナノコンポジットを形成するステップとを含む方法。
(項25)
前記多孔質炭素材料の前記複数の超薄シートが、
マイクロ波照射下、鋳型前駆体と還元剤の存在下で酸化グラフェンを還元して、鋳型化された複数の還元型酸化グラフェン(RGO)シートを得るステップであって、各鋳型化されたRGOシートがその前記基底面上の複数の鋳型化された領域を覆う複数の鋳型を含むステップと;
少なくとも一部の前記複数の鋳型を前記RGOシートから除去して、前記多孔質炭素材料の前記複数の超薄シートを形成するステップとを含む方法によって調製される、上記項24に記載の方法。
(項26)
前記ナノコンポジット混合物を形成するステップの後に、前記ナノコンポジット混合物を硫黄と接触させるステップを含む、上記項24または上記項25に記載の方法。
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図5D
図6A
図6B
図6C
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13