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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-26
(45)【発行日】2024-04-03
(54)【発明の名称】接着剤組成物
(51)【国際特許分類】
   C09J 175/04 20060101AFI20240327BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20240327BHJP
   C09J 11/04 20060101ALI20240327BHJP
   C08G 18/32 20060101ALI20240327BHJP
   C08G 18/76 20060101ALI20240327BHJP
【FI】
C09J175/04
C09J11/06
C09J11/04
C08G18/32 003
C08G18/76 014
C08G18/76 057
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020546131
(86)(22)【出願日】2019-02-21
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-06-17
(86)【国際出願番号】 US2019018890
(87)【国際公開番号】W WO2019173058
(87)【国際公開日】2019-09-12
【審査請求日】2022-02-18
(31)【優先権主張番号】62/639,675
(32)【優先日】2018-03-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519415100
【氏名又は名称】ディディピー スペシャルティ エレクトロニック マテリアルズ ユーエス,エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100128484
【弁理士】
【氏名又は名称】井口 司
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】ウー、ホアン
(72)【発明者】
【氏名】グルンダー、セルジオ
(72)【発明者】
【氏名】シュマトロッホ、ステファン
(72)【発明者】
【氏名】クンツ、ジョエル
【審査官】藤田 雅也
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-295868(JP,A)
【文献】国際公開第2016/205254(WO,A1)
【文献】特表2013-541630(JP,A)
【文献】特開2017-218539(JP,A)
【文献】特表2015-531020(JP,A)
【文献】特表2015-534590(JP,A)
【文献】特表2015-529259(JP,A)
【文献】特開2012-251053(JP,A)
【文献】特開2012-233143(JP,A)
【文献】特開2003-2946(JP,A)
【文献】特表2018-524429(JP,A)
【文献】特開2017-82118(JP,A)
【文献】国際公開第2016/204978(WO,A1)
【文献】特表2019-506519(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00- 5/10
C09J 7/00- 7/50
C09J 9/00-201/10
C08G 18/00- 18/87
C08G 71/00- 71/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)
(ai)2.3未満の官能基数を有する少なくとも1種の第1の芳香族ポリイソシアネート化合物と、
(aii)2.3以上の官能基数を有する少なくとも1種の第2の芳香族ポリメリックポリイソシアネート化合物と、
含むイソシアネート成分;及び
(b)少なくとも1種のポリオール成分;
を含有し、
8分より長いオープンタイム;23℃、相対湿度50%で1時間後に1.0メガパスカルを超える重ねせん断強度;及び150パーセントを超える破断点伸びを有する、2液型接着剤組成物。
【請求項2】
前記少なくとも1種の第2の芳香族ポリメリックポリイソシアネート化合物が2.7の官能基数を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記少なくとも1種の第2の芳香族ポリメリックポリイソシアネート化合物がポリメリックメチレンジフェニルイソシアネートである、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
少なくとも1種の触媒を更に含み、前記少なくとも1種の触媒が少なくとも1種のスズ含有有機触媒である、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
少なくとも1種のフィラーを更に含み、前記少なくとも1種のフィラーが、無機フィラー粒子、金属粒子、熱硬化性ポリマー粒子、熱可塑性粒子、カーボンブラック、炭素粒子、及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記少なくとも1種のイソシアネート成分(a)が0.01重量パーセント~60重量パーセントの濃度で前記組成物中に存在し、前記少なくとも1種のポリオール成分(b)が0.1重量パーセント~20重量パーセントの濃度で前記組成物中に存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
2液型ポリウレタン接着剤を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
2液型ポリウレタン接着剤組成物を調製するプロセスであって、
(a)
(ai)2.3未満の官能基数を有する少なくとも1種の第1の芳香族ポリイソシアネート化合物と、(aii)2.3以上の官能基数を有する少なくとも1種の第2の芳香族ポリメリックポリイソシアネート化合物と、を含むイソシアネート成分;及び
(b)少なくとも1種のポリオール成分;
を混合することを含み、
8分より長いオープンタイム;23℃、相対湿度50%で1時間後に1.0メガパスカルを超える重ねせん断強度;及び150パーセントを超える破断点伸びを有する、2液型ポリウレタン接着剤組成物を調製するプロセス方法。
【請求項9】
(I)少なくとも第1の基材を請求項1に記載の組成物と接触させること;
(II)前記少なくとも第1の基材上に存在する前記組成物に前記少なくとも第2の基材を接触させること;及び
(III)5℃~80℃の温度で前記少なくとも第1と第2の基材を前記組成物と共に硬化させること;
を含む、少なくとも第1の基材を少なくとも第2の基材に接着させる方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着剤組成物に関し、より具体的には、本発明は、自動車用途で特に有用な2成分形ポリウレタン接着剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
性能上の利点と軽量車両の要求のため、最新の車両設計では強化複合材料の使用が増加してきている。結合は複合構造を破壊しないため(例えばねじ込みやリベット打ちなどの機械的固定以外)、接着接合は複合材料の最も好ましい組み立て技術である。典型的には、部品の組み立てに接着剤技術を使用することは、接着剤の迅速な塗布、迅速な強度の増加、及び取り扱い強度の迅速な発現を達成するように製造プロセスを最適化することを目的とする。場合によっては、接着剤の塗布の促進、接着強度の増加、及び接着剤取り扱い強度の発現は、加熱プロセスによって達成することができる。例えば、従来の対流式オーブンを使用する熱硬化とは対照的に、赤外線に基づく加熱プロセスでは、例えば1~3分(min)の非常に短いサイクル時間で、1.0メガパスカル(MPa)より大きい(>)重ねせん断強度を実現することができる。
【0003】
また、接着剤の強度を迅速に増加させるプロセスでは、プロセスの柔軟性が必要とされる。プロセスの柔軟性は、オープンタイムが長いこととして定義される。「オープンタイム」は、第1の基材上への接着剤の塗布と、第1の基材への第2の基材の接合との間の経過時間である。更に、洗浄間隔を減らし、結果としてプロセスで発生する材料の無駄を減らすためには、ミキサー独立時間が長い必要がある。「ミキサー独立時間」とは、混合された2液形又は2成分形(2K)の接着剤を、2K接着剤の2つの連続する塗布の間に接着剤のゲル化なしにミキサーユニット(静的又は動的)内に保持できる時間である。2K接着剤の2つの成分が混合された後、接着剤は、接着剤が基材に結合することができるようにできるだけ長く機能を維持することが望まれる。長いオープンタイムに加えて、2K接着剤が室温(約25℃)でそのオープンタイムに到達した後、短時間(例えば1時間以下)で接着剤の取り扱い強度を得られるように、迅速な強度発現を示す接着剤が望まれる。前述した接着剤は一般的には潜在性接着剤である。「潜在性接着剤」とは、長いオープンタイム(例えば8分超)に続いて速い硬化時間(例えば60分より速い)を有する2K接着剤を意味する。
【0004】
ポリウレタン(PU)は、2K型のよく知られているタイプの接着剤であり、これは、オープンタイムと速い硬化時間に関連する上述したいくつかの利点を付与する可能性を有している。2KのPU接着剤が様々な用途で使用できることも知られており、一実施形態では、2KのPU接着剤は、特に乗用車の組み立て中に2つの異種材料の溶接を行うことが困難であるか更には不可能である場合に、乗用車の組み立てにおいて有利に使用することができる。一般的には、2KのPU接着剤配合物は、第1液:1種以上のポリイソシアネート化合物を含む樹脂成分と、第2液:1種以上のポリオール化合物を含む硬化性成分とからなる。2つの成分が混合されると、ポリイソシアネート化合物とポリオール化合物とが反応して、硬化したポリウレタン接着剤が形成される。ポリウレタン接着剤は、室温で、又は特定の条件(その例は高温である)にさらされた時に硬化するように処方することができる。接着剤が硬化すると、接着剤は多くの種類の基材に対して強力な接着結合を形成することができる。2KのPU接着剤などの2成分形接着剤組成物は、用途のために迅速な硬化が必要とされる場合、特に2つの成分が互いと接触した際に貯蔵安定性を有さない場合に特に有用な場合がある。「貯蔵安定性」とは、組成物が貯蔵中に硬化しないことを意味する。
【0005】
公知の2KのPU接着剤組成物及びそのような接着剤を調製するためのプロセスが存在する。例えば、2KのPU接着剤配合物は、米国特許第4,876,308号明細書及び国際公開第2014029891A1号パンフレットに開示されている。従来の組成物及び先行技術の方法を使用して長いオープンタイム(8分超)を達成できることも周知であるが、そのような長いオープンタイムでは、室温で1時間後に望ましくない低い強度の発現(例えば0.8MPa未満(<)の重ねせん断強度)が生じる可能性がある。或いは、先行技術の公知の組成物及びプロセスを使用すると、大きい1時間室温重ねせん断強度(例えば0.8MPa超)を達成できるものの、このような高強度の発現では、望ましくない短いオープンタイム(例えば8分未満)が得られる。そのため、オープンタイムと室温での強度の発現は正反対に相関することが知られている。言い換えると、公知の2KのPU接着剤組成物は、接着剤の機械的特性を損なわずにオープンタイムの増加と周囲温度での迅速な硬化速度を示さない。したがって、増加した潜在性を示す2KのPU接着剤、すなわち長いオープンタイム及び迅速な取り扱い強度の発現を有すると同時に、その機械的特性を維持する接着剤が産業界で依然として求められている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、(a)(ai)少なくとも第1のポリイソシアネート化合物と(aii)少なくとも第2のポリイソシアネート化合物とを含む少なくとも1種のイソシアネート成分であって、第2のポリイソシアネート化合物が約2.3以上(≧)の官能基数を有する高官能性ポリイソシアネートであるイソシアネート成分;及び(b)1種以上のポリオール化合物を含む少なくとも1種のポリオール成分;を含有する2成分形ポリウレタン(2K PU)接着剤組成物(又は配合物)に関する。好ましい一実施形態では、接着剤組成物は、(c)任意選択的な少なくとも1種の触媒を含有していてもよく、また別の好ましい実施形態では、接着剤組成物は、(d)任意選択的な少なくとも1種のフィラーを含有していてもよい。任意選択的な触媒又は任意選択的なフィラーは、イソシアネート成分(a)及び/又はポリオール成分(b)に添加されてもよい。
【0007】
本発明の1つの目的は、本発明の2KのPU接着剤の機械的特性を損なうことなしに潜在性が改善された新規な2KのPU接着剤配合物を提供することである。本発明は、(1)接着剤を用いて作業するための増加したオープンタイムを示し;(2)周囲温度で硬化可能であり;(3)アルミニウム、マグネシウム、シート成形コンパウンド、炭素繊維複合材料、及び被覆された金属などの様々な材料に結合可能であり;(4)異種材料を結合可能である;2KのPU接着剤組成物も提供する。
【0008】
有益な特性を示す本発明の2KのPU接着剤組成物は、イソシアネート成分(a)の官能基数を増加させることによって得ることができる。イソシアネート成分(a)の官能基数は、例えば、イソシアネート成分(a)に高官能性ポリイソシアネート化合物(例えば約2.3以上の官能基数を有する化合物を添加することにより増加させることができる。本発明の方法は、2KのPU接着剤組成物を調製する従来のプロセスとは大きく異なっており、驚くべきことに、本明細書に記載のイソシアネート成分(a)の官能基数を増加させることにより、室温でのオープンタイムと強度発現の両方の改善を達成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書において、「イソシアネート成分(a)」又は略して「IsoC」は、ポリイソシアネート化合物の分子のうちの少なくとも1つが少なくとも1つのイソシアネート(NCO)官能基を有する、1種以上のイソシアネート官能性ポリイソシアネート化合物を含む成分を指す。IsoCは、モノマー化合物であってもポリマー化合物であってもよく、或いはそのような化合物の混合物であってもよい。
【0010】
本明細書において、「ポリオール成分(b)」又は略して「PolC」は、ポリオール官能性化合物の分子のうちの少なくとも1つが少なくとも1つのポリオール官能基を有する1種以上のポリオール官能性化合物を含む成分を指す。PolCは、モノマー化合物であってもポリマー化合物であってもよく、或いはそのような化合物の混合物であってもよい。
【0011】
一般的な一実施形態では、本発明は、(a)(ai)1より大きい官能基数を有する少なくとも第1のポリイソシアネートと、(aii)2より大きい官能基数を有する少なくとも第2のポリイソシアネートとを含む少なくとも1種のイソシアネート成分;及び(b)少なくとも1種のポリオール成分;を含有するポリウレタン接着剤組成物、より具体的には2KのPU接着剤を含む。本発明の新規な接着剤は、第2のポリイソシアネート化合物(aii)としての高官能性ポリイソシアネート化合物(例えば2より大きい官能基数を有するポリイソシアネート化合物)の使用に関し、より長いオープンタイムやより迅速な強度発現などの接着剤の有益な特性を提供するように合わせられている。本発明の接着剤の改善された潜在性は、接着剤の破断点伸びの減少をもたらす増加した架橋密度から得ることができる。
【0012】
驚くべきことに、大きい官能基数を有する第2のポリイソシアネート化合物をIsoCに添加して本発明の接着剤組成物を形成すると、接着剤組成物の潜在性が改善され、接着剤組成物の機械的特性が損なわれないことが判明した。また、本発明において高官能性の第2のポリイソシアネート化合物が使用される場合、2KのPU接着剤組成物が、破断点伸びなどの2KのPU接着剤の機械的特性を損なうことなしにより長いオープンタイム及びより迅速な強度の発現を示すことも予想外に見出された。
【0013】
本発明の2KのPU接着剤配合物は、配合物の成分(a)として少なくとも1種のイソシアネート成分を含む。すなわち、本発明において有用なイソシアネート成分(a)は、1種以上のイソシアネート含有化合物又はポリイソシアネート化合物を含み得る。本発明において有用なイソシアネート成分(a)は、ポリオール成分(b)との反応に適した1種以上の化合物であってもよい。好ましい一実施形態では、本発明の接着剤配合物のイソシアネート成分である成分(a)は、(ai)少なくとも第1のポリイソシアネート化合物及び(aii)少なくとも第2のポリイソシアネート化合物を含み、第2のポリイソシアネート化合物は第1のポリイソシアネート化合物とは異なり、第2のポリイソシアネート化合物は、約2.3以上の官能基数を有する高官能性ポリイソシアネート化合物である。
【0014】
第1のポリイソシアネート化合物である成分(ai)として有用なポリイソシアネート化合物としては、(1)少なくとも1種のイソシアネート含有モノマー化合物、(2)混合物中の少なくとも1種のポリイソシアネート化合物がイソシアネート含有モノマー化合物である化合物の混合物、(3)少なくとも1種のイソシアネート含有ポリマー化合物、又は(4)イソシアネート含有モノマー化合物とイソシアネート含有ポリマー化合物との混合物、のうちの1つ以上を挙げることができる。例えば、本発明の接着剤配合物において有用な第1のポリイソシアネート化合物(ai)は、任意の従来の芳香族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート、又はそれらの混合物を含んでいてもよく;第1のポリイソシアネート化合物は、モノマー化合物として、又はポリマー(又はプレポリマー)化合物として接着剤配合物に添加されてもよい。
【0015】
第1のポリイソシアネート化合物として有用なポリイソシアネート化合物、成分(ai)は、通常、例えば一実施形態では25℃で約10ミリパスカル秒(mPa-s)~約1,000mPa-s、別の実施形態では約200mPa-s~約800mPa-sの粘度を有し得る。
【0016】
本発明において有用な第1のポリイソシアネート化合物(ai)を含む芳香族ポリイソシアネート化合物のいくつかの実施形態としては、例えば、m-フェニレンジイソシアネート;メチレンジフェニルジイソシアネート(MDI);4,4’-メチレン-ジフェニルジイソシアネート;2,2’-メチレンジフェニル-ジイソシアネート;2,4-メチレン-ジフェニルジイソシアネート;トルエンジイソシアネート(TDI);トルエン-2,4-ジイソシアネート;トルエン-2,6-ジ-イソシアネート;ナフチル-エン-1,5-ジイソシアネート;メトキシフェニル-2,4-ジイソシアネート;ジフェニル-メタン-4,4’-ジイソシアネート;ジフェニルメタン-2,4’-ジイソシアネート;4,4’-ビフェニレンジイソシアネート;3,3’-ジメトキシ-4,4’-ビフェニルジイソシアネート;3,3’-ジメチル-4-4’-ビフェニルジイソシアネート;3,3’-ジメチル-ジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート;4,4’,4”-トリフェニルメタントリイソシアネート;ポリメチル-エンポリフェニルイソシアネート(PMDI);トルエン-2,4,6-トリイソシアネート;4,4’-ジメチル-ジ-フェニルメタン-2,2’,5,5’-テトライソシアネート;及びこれらの混合物が挙げられる。ウレタン、尿素、ビウレット、カルボジイミド、ウレトンイミン、アロホネート、及び/又はイソシアネート基の反応により形成されるその他の基を含む上のポリイソシアネートのいずれか1つ以上の誘導体などの変性芳香族ポリイソシアネートも、本発明において有用である。
【0017】
好ましい実施形態では、本発明に有用な芳香族ポリイソシアネート化合物としては、例えば、モノメリックMDI;モノメリックPMDI;ポリメリックMDI(一般に「ポリメリックMDI」と呼ばれるMDIとPMDIとの混合物);並びに、ビウレット、カルボジイミド、ウレトンイミン、及び/又はアロホネート結合を有するMDIとMDI誘導体との混合物であるいわゆる「液体MDI」製品;を挙げることができる。第1のポリイソシアネート化合物としての芳香族ポリイソシアネート化合物の例は、2.2の官能基数及び40mPa-sの粘度を有する液化MDIであるIsonate(登録商標)143などのモノメリックMDIであってもよい。IsonateはThe Dow Chemical Companyの商標であり、Isonate製品はThe Dow Chemical Companyから入手可能である。上の芳香族ポリイソシアネートの2種以上の混合物も、本発明の接着剤配合物において使用することができる。
【0018】
本発明において有用な第1のポリイソシアネート化合物(ai)を含む脂肪族ポリイソシアネート化合物のいくつかの実施形態としては、例えば、シクロヘキサンジイソシアネート;1,3-及び/又は1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン;1-メチル-シクロヘキサン-2,4-ジイソシアネート;1-メチル-シクロヘキサン-2,6-ジイソシアネート;メチレンジシクロヘキサンジイソシアネート;イソホロンジイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI);イソホロンジイソシアネート(IPDI);及びそれらの混合物が挙げられる。
【0019】
好ましい一実施形態では、本発明に有用な脂肪族ポリイソシアネート化合物としては、Desmodur N3400及びDesmodur N3300などのHDIに基づく脂肪族ポリイソシアネートを挙げることができる。Desmodur N3400はHDI-ウレトジオンであり、HDI二量体とも呼ばれ、Desmodur N3300はHDI-イソシアネートであり、HDI-三量体とも呼ばれる。DesmodurはCovestroの商標であり、Desmodur製品はCovestroから入手可能である。上の脂肪族ポリイソシアネートの2種以上の混合物も、本発明の接着剤配合物において使用することができる。
【0020】
別の実施形態では、本発明の接着剤における第1のポリイソシアネート化合物(ai)として有用なポリイソシアネート化合物としては、例えば、ポリイソシアネートとポリオールとの反応生成物であってもよいポリマー(又はプレポリマー)化合物であって、得られる反応生成物が他のポリオールと更に反応することができる反応性イソシアネート部位をその化学構造中に有するポリマー(又はプレポリマー)化合物を挙げることができる。第1のイソシアネート化合物(ai)として有用な場合があるそのようなイソシアネート含有プレポリマー(又はイソシアネート末端プレポリマー)は、
ポリイソシアネート化合物とポリオール化合物とを反応させることにより調製することができる。
【0021】
プレポリマーの調製に有用なポリイソシアネート化合物は、上述したポリイソシアネート化合物のいずれかであってもよく、またプレポリマーの調製に有用なポリオール化合物は、当該技術分野で公知の様々なポリオール化合物から選択することができる。例えば、ポリオール成分(b)に関して本明細書の以降で記載される従来のポリオール化合物のうちの任意の1種以上;及び参照により組み込まれる国際公開第2016205252(A1)号パンフレットに記載の任意のポリオール;を本発明において使用することができる。イソシアネート末端プレポリマーの製造に使用されるポリ(プロピレンオキシド)などのポリオール化合物は、一実施形態では約800~約10,000の分子量(MW)、別の実施形態では約800~約8,000のMW、また別の実施形態では、約800~約6,000のMWを有し得る。更に、ポリオールは、一実施形態では約2~約3の公称官能基数、別の実施形態では2の公称官能基数を有し得る。
【0022】
1種以上のポリイソシアネート化合物と1種以上のポリオール化合物との上の反応により、ポリイソシアネートでキャップされたポリエーテルセグメントを有するイソシアネート含有プレポリマー分子を生成することができ、そのため分子は末端イソシアネート基を有する。それぞれのプレポリマー分子は、ヒドロキシル基を除去した後の、プレポリマー形成反応で使用されるポリオールの構造に対応するポリエーテルセグメントを含む。ポリオールの混合物がプレポリマーの製造に使用される場合には、プレポリマー分子の混合物を形成することができる。例えば、ポリオールでエンドキャップされていてもよい上述したプレポリマーに加えて、別の実施形態では、分子量を増加させることにより本発明で有用な多様な他のプレポリマーを製造することができる。例えば、プレポリマーは、プレポリマーの化学構造の中央に1つのジイソシアネートを有し、イソシアネートでエンドキャップすることが可能な2つのポリオール基がその構造末端に結合していてもよい。
【0023】
一実施形態では、例えば、プレポリマーは、ジオール、トリオール、又はそれらの混合物などのEO(エチレンオキシド)及び/又はPO(プロピレンオキシド)に基づくポリオールから形成されるMDIでエンドキャップされたプレポリマーを含んでいてもよい。得られるプレポリマーは、一実施形態では最大約5,000、別の実施形態では約1,000~約4,000、また別の実施形態では約2,000~約3,500の当量(EW)を有し得る。
【0024】
別の実施形態では、プレポリマーは、(1)ポリオール又はポリオールの混合物(任意の数のポリオールを有する)と、(2)低い当量(例えば350未満のEW)を有するポリイソシアネート又は2種以上の低EWポリイソシアネートの混合物と、を混合することによって調製することができる。低EWポリイソシアネート化合物は、通常、一実施形態では最大約350、別の実施形態では約80~約350、更に別の実施形態では約80~約250、また別の実施形態では約80~約200、また更に別の実施形態では約80~約180のイソシアネートEWを有する。本発明で使用可能なそのような低EWポリイソシアネートの量は、ポリオールをイソシアネート部位で単純にキャップするのに必要な量よりも大幅に多くてもよい。
【0025】
反応後、上の混合により、プレポリマーと未反応の出発物質である低EWポリイソシアネート化合物との混合物を製造することができる。その後、必要に応じて、このプレポリマー/未反応低EWポリイソシアネート混合物の中に、追加の量のポリイソシアネート化合物がブレンドされてもよい。例えば、混合物は、ヘキサメチレンジイソシアネートに基づく脂肪族ポリイソシアネートなどの1種以上の脂肪族ポリイソシアネートと混合することができる。
【0026】
別の実施形態では、プレポリマーは、2種以上のポリイソシアネート化合物の混合物を混合することにより調製されてもよい。ポリイソシアネートの混合物が接着剤配合物中に存在する場合、ポリイソシアネートの混合物は、例えば、一実施形態では1分子あたり平均約2個~約4個のイソシアネート基、又は1分子あたり約2.3個~約3.5個のイソシアネート基を有し得る。ポリイソシアネート化合物の全部又は一部は、上述した芳香族ポリイソシアネート化合物のいずれかに由来する芳香族イソシアネート基を有し得る。また、ポリイソシアネート化合物の全部又は一部は、上述した脂肪族ポリイソシアネート化合物のいずれかに由来する脂肪族イソシアネート基を有し得る。
【0027】
更に別の実施形態では、第1のポリイソシアネート化合物(ai)として有用なプレポリマーは、(1)1分子あたり少なくとも2個のイソシアネート基及び約700~約3,500のイソシアネートEWを有する1種以上のプレポリマーと、(2)上述した低EWポリイソシアネートのうちの1種以上との混合物を含んでいてもよい。そのようなプレポリマー/低EWポリイソシアネート混合物が調製される場合、そのような混合物を含むプレポリマーは、一般的な一実施形態ではイソシアネート成分(a)の重量の約20重量パーセント(重量%)~約80重量%を構成し得る。別の実施形態では、プレポリマーは、イソシアネート成分(a)の重量の約20重量%~約70重量%、約20重量%~約65重量%、又は約30重量%~約60重量%を構成し得る。そのような混合物が存在する場合、低EWポリイソシアネートは、イソシアネート成分(a)の重量の約1重量%~約50重量%を構成し得る。ポリイソシアネート成分(a)中のイソシアネート含有量は、約1重量%以上、約6重量%以上、約8重量%以上、又は約10重量%以上であってもよい。プレポリマー中のイソシアネート含有量は、約35重量%以下、約30重量%以下、約25重量%以下、又は約15重量%以下であってもよい。
【0028】
また別の実施形態では、プレポリマーは、最大約350のイソシアネートEWを有する1種以上のジイソシアネートと、(1)約700~約3,000のEWを有し、一実施形態では約2~約4の公称ヒドロキシル官能基数、及び別の実施形態では約2~約3の公称官能基数を有する、ポリ(プロピレンオキシド)の少なくとも1種のホモポリマー若しくは他の任意のポリオール(例えばポリエステルポリオールやポリブチレンオキシドなど);又は(2)上の成分(1)と、約2,000~約8,000のMWを有するポリエーテルポリオールとの混合物;との反応生成物であってもよい。好ましい実施形態では、成分(1)の重量部あたり最大約3重量部の上のポリエーテルポリオール成分(2)を使用することができる。ポリエーテルポリオールは、約70重量%~約99重量%のプロピレンオキシドと約1重量%~約30重量%のエチレンオキシドとのコポリマーを含んでいてもよく、コポリマーは、一実施形態では約2~約4の公称ヒドロキシル官能基数、別の実施形態では約2~約3の公称官能基数を有していてもよい。コポリマーは、更に別の実施形態では、約3,000~約5,500のMWも有し得る。
【0029】
ポリイソシアネート成分(a)中に存在するポリイソシアネート基の少なくともいくつかは、芳香族イソシアネート基であってもよい。芳香族イソシアネート基と脂肪族イソシアネート基との混合物がイソシアネート成分(a)中に存在する場合、一実施形態では基の数の約50%以上が芳香族イソシアネート基であり、別の実施形態では基の数の約75%以上が芳香族イソシアネート基である。更に別の実施形態では、イソシアネート基の数の約80%~約98%が芳香族であってもよく、基の数の約2%~約20%が脂肪族イソシアネート基であってもよい。
【0030】
プレポリマーのイソシアネート基は、芳香族イソシアネート基、脂肪族イソシアネート基(脂環式を含む)、又は芳香族イソシアネート基と脂肪族イソシアネート基との混合物であってもよい。好ましい実施形態では、プレポリマー分子のイソシアネート基は芳香族であってもよい。一実施形態では、例えば、プレポリマーの全てのイソシアネート基が芳香族であってもよく、低EWポリイソシアネート化合物のイソシアネート基は、約80%~約95%の芳香族イソシアネート基と約5%~約20%の脂肪族イソシアネート基との混合物であってもよい。
【0031】
通常、本発明の接着剤配合物の成分(ai)として有用なプレポリマーは、一実施形態では約700~約3,500、別の実施形態では約700~約3,000、更に別の実施形態では約1,000~約3,000のイソシアネートEWを有する。本発明の目的のためのEWは、プレポリマーの調製に使用されたポリオールの重量(a)と、ポリオールとの反応で消費されたポリイソシアネートの重量を加え、得られたプレポリマー中のイソシアネート基のモル数で割ることにより計算される。更に、プレポリマーは、一実施形態では1分子あたり約2個以上のイソシアネート基、別の実施形態では1分子あたり約2~約4個のイソシアネート基、更に別の実施形態では1分子あたり約2~約3個のイソシアネート基を有し得る。
【0032】
通常、接着剤配合物において有用なプレポリマーの量は、配合物中の成分の総重量を基準として、一実施形態では約0.01重量%~約80重量%;別の実施形態では約1重量%~約70重量%;更に別の実施形態では約1重量%~約60重量%;また別の実施形態では約1重量%~約55重量%の範囲であってもよい。プレポリマーの量が80重量%を超えると、配合物の粘度が低すぎて、配合物中の成分が互いに混合できない可能性がある。プレポリマーの量が0.01重量%未満であると、接着剤配合物は、使用可能な接着剤が得られるように機能しない可能性がある。
【0033】
本発明の接着剤配合物における第2のポリイソシアネート化合物、成分(aii)として有用なポリイソシアネート化合物としては、1種以上のポリイソシアネート化合物を挙げることができる。すなわち、第2のポリイソシアネート化合物(aii)には、第2のポリイソシアネート化合物の官能基数が約2.3以上であることを条件として、単一の第2のポリイソシアネート化合物又は2種以上の第2のポリイソシアネート化合物の混合物が含まれ得る。第2のポリイソシアネート化合物としては、芳香族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート、又はそれらの混合物を挙げることができ、第2のポリイソシアネート化合物は、モノマー化合物として又はポリマー化合物として接着剤配合物に添加することができる。本発明において有用な第2のポリイソシアネート化合物は、例えば、ポリメリックMDI、変性ポリメリックMDI、純粋なMDIとポリメリックMDIとの混合物、及びそれらの混合物などの、約2.3以上の官能基数を有する様々なポリイソシアネート化合物から選択することができる。
【0034】
通常、第2のポリイソシアネート化合物の粘度は、例えば一実施形態では25℃で約10mPa-s~約1,000mPa-s、別の実施形態では約200mPa-s~約800mPa-sであってもよい。一実施形態では、例えば、第2のポリイソシアネート化合物(aii)は、以下のうちの1つ以上から選択することができる:(1)The Dow Chemical Companyから入手可能なVORANATE M220などの、2.7の官能基数及び205mPa-sの粘度を有するポリメリックMDI;(2)The Dow Chemical Companyから入手可能なISONATE M 304などの、2.4の官能基数及び95mPa-sの粘度を有する変性MDI;(3)The Dow Chemical Companyから入手可能なVORANTE M229などの、2.7の官能基数及び190mPa-sの粘度を有するポリメリックMDI;(4)The Dow Chemical Companyから入手可能なVORANATE M 590などの、2.9の官能基数及び600mPa-sの粘度を有するポリメリックMDI;BASFから入手可能なLupranate 224などの、2.7の官能基数及び150mPa-sの粘度を有するポリメリックMDI;The Dow Chemical Companyから入手可能なIsonate 220などの、2.7の官能基数及び220mPa-sの粘度を有するポリメリックMDI;及びこれらの混合物。
【0035】
通常、第2のポリイソシアネート化合物のNCO%は、例えば、一実施形態では約10%~約45%、別の実施形態では約20%~約40%、また更に別の実施形態では約25%~約34%であってもよい。例えば、一実施形態では、第2のポリイソシアネート化合物は、32%のNCO%、2.3の官能基数、及び65mPa-sの粘度を有するBASF Lupranate 78;32%のNCO%、2.3の官能基数、及び70mPa-sの粘度を有するBASF Lupranate M10;31%のNCO%、3の官能基数、及び700mPa-sの粘度を有するBASF Lupranate M70L;32.3%のNCO%、2.4の官能基数、及び49mPa-sの粘度を有するBASF Lupranate TF2115 M70L;31.5%のNCO%、2.0~2.8の官能基数、及び22.5mPa-sの粘度を有するCovestro Desmodur VK10;31.5%のNCO%、2.8超の官能基数、及び200mPa-sの粘度を有するCovestro Desmodur VKS20;31%のNCO%、2.8超の官能基数、及び300mPa-sの粘度を有するCovestro Desmodur 44V40L;並びに31.5%のNCO%及び90mPa-sの粘度を有するCovestro Desmodur VLから選択することができる。
【0036】
VORANATE M220などの第2のイソシアネート化合物は、一実施形態では約2重量%~約25重量%、別の実施形態では約2重量%~約21重量%、更に別の実施形態では約3重量%~約14重量%、また別の実施形態では約7重量%~約14重量%、また更に別の実施形態では約10重量%~約14重量%の範囲の濃度で接着剤配合物中に存在し得る。第2のポリイソシアネート化合物の量が25重量%を超える場合には接着剤配合物の機械的特性が損なわれる可能性があり、また第2のイソシアネート化合物の量が2重量%未満である場合には、接着剤配合物の潜在性が損なわれる可能性がある。
【0037】
上述したように、本発明で有用なポリオール成分(b)としては、参照により組み込まれる国際公開第2016205252(A1)号パンフレットに記載されている任意のポリオールなどの公知のポリオールから選択できる1種以上のポリオール化合物を挙げることができる。例えば、ポリオール成分(b)は、ポリエーテルポリオール又はポリエーテルポリオールの混合物であってもよい。一般的な一実施形態では、各ポリエーテルポリオールは、約400~約3,000のヒドロキシルEWを有する。いくつかの実施形態における各ポリオールのヒドロキシルEWは、少なくとも約500、少なくとも約800、又は少なくとも約1,000であってもよく、いくつかの実施形態では、ヒドロキシルEWは、最大約3,000、最大約2,500、又は最大約2,000であってもよい。そのような各ポリエーテルポリオールは、2~3の名目ヒドロキシル官能基数を有する。ポリエーテルポリオールの「名目官能基数」とは、ポリエーテルポリオールを形成するためにアルコキシ化される開始剤化合物のオキシアルキル化可能な水素原子の平均数を意味する。ポリエーテルポリオールの実際の官能基数は、アルコキシル化プロセス中に発生する副反応のために、名目官能基数よりもいくらか低い場合がある。ポリエーテルポリオールの混合物の場合、数平均公称官能基数は、一実施形態では約2~約3、別の実施形態では約2.5~約3であってもよい。
【0038】
本発明における成分(b)として有用なポリエーテルポリオールは、プロピレンオキシドのホモポリマー、及び約70重量%~約99重量%のプロピレンオキシドと約1重量%~約30重量%のエチレンオキシドとのコポリマーから選択されてもよい。単一のポリエーテルポリオールが存在する場合には、プロピレンオキシドとエチレンオキシドとのそのようなコポリマーが通常好ましい。2種以上のポリエーテルポリオールが存在する場合には、ポリオールのうちの少なくとも1種が、プロピレンオキシドとエチレンオキシドとのそのようなコポリマーであることが好ましい。コポリマーの場合、プロピレンオキシド及びエチレンオキシドは、ランダムに共重合していてもよく、ブロック共重合していてもよく、又はその両方であってもよい。いくつかの実施形態では、ポリエーテルポリオール又はポリエーテルポリオールの混合物のヒドロキシル基の約50%以上が一級ヒドロキシルであり、ヒドロキシル基の残りは二級ヒドロキシル基である。別の実施形態では、ポリエーテルポリオール又はそれらの混合物中のヒドロキシル基の約70%以上が一級ヒドロキシル基であってもよい。ポリエーテルポリオールは、一実施形態ではポリオール成分(b)の約35重量%以上、別の実施形態では約40重量%以上、更に別の実施形態では約50重量%以上を構成し得る。別の実施形態では、ポリオール成分(b)のポリエーテルポリオールは、一実施形態では約80重量%以下、別の実施形態では約65重量%以下、更に別の実施形態では約55重量%以下を構成し得る。
【0039】
好ましい実施形態では、ポリオールは、例えば、約200g/molより大きいEW及び約1より大きい官能基数を有するポリエーテルポリオール又はポリエステルポリオールであってもよい。本発明におけるポリオール成分(b)として有用な他の適切なポリオールとしては、例えば、約500g/molのEWを有するVoranolTM1010L、約1,000g/molのEWを有するVoranolTM2000Lなどのポリプロピレンに基づくジオール、約1,600g/molの平均EWを有するグリセリンにより開始されたエチレンオキシドに基づくプロポキシル化トリオールであるVoranolTMCP4610;及びこれらの混合物を挙げることができる。
【0040】
「高官能性ポリオール」、すなわち約2.3より大きい(例えば約3より大きい)官能基数を有するポリオールも、本発明においてポリオール成分(b)として使用することができる。例えば、本発明において有用な高官能性ポリオールとしては、Voranol280を挙げることができる。Voranol280は、280のヒドロキシル価を有するスクロースで開始されたオキシプロピレン-オキシエチレンポリオールである。VoranolはThe Dow Chemical Companyの商標であり、Voranol製品はThe Dow Chemical Companyから入手可能である。
【0041】
別の実施形態では、ポリオール成分(b)は、約2より大きい官能基数と約200未満のEWを有する様々なポリオールから選択することができる。ポリオール成分(b)としては、例えば、1,2,3-プロパントリオール(グリセリンとしても知られている)又はグリセリンの他の異性体;1,2,4-ブタントリオール(又は1,2,4-ブタントリオールの他の異性体);約3個以上のヒドロキシル基を有し約600g/mol未満のMWを有する任意の他のポリオール化合物;及びそれらの混合物を挙げることができる。
【0042】
本発明の接着剤配合物は、任意選択的に少なくとも1種の鎖延長剤を含んでいてもよい。任意選択的な鎖延長剤は、イソシアネート成分(a)及び/又はポリオール成分(b)中に存在することができる。鎖延長剤は、1種以上の脂肪族ジオール鎖延長剤であってもよい。脂肪族ジオール鎖延長剤は、それぞれ、一実施形態では約200以下、別の実施形態では約100以下、更に別の実施形態では約75以下、また更に別の実施形態では約60以下のヒドロキシルEWを有し得る。脂肪族ジオール鎖延長剤は、1分子あたり2個の脂肪族ヒドロキシル基を有し得る。また、本発明において有用な鎖延長剤は、約10~約59のEWを有する短鎖延長剤ジオールを含んでいてもよい。一実施形態では、脂肪族ジオール鎖延長剤の例としては、モノエチレングリコール(MEG)、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、2,3-ジメチル-1,3-プロパンジオール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、最大約20個の炭素原子を有する他の直鎖又は分岐のアルキレンジオール、及びそれらの混合物を挙げることができる。好ましい実施形態では、脂肪族ジオール鎖延長剤は、モノエチレングリコール、1,4-ブタンジオール、及びそれらの混合物を含み得る。
【0043】
脂肪族ジオール鎖延長剤又はそれらの混合物は、一実施形態では、配合物中の成分の重量を基準として約0.1重量%以上、別の実施形態では約1.0重量%以上、更に別の実施形態では約2.0重量%以上、また別の実施形態では約3.0重量%以上の量で存在し得る。鎖延長剤は、一実施形態では約10重量%以下、別の実施形態では約9重量%以下、更に別の実施形態では約8重量%以下、また別の実施形態では約7重量%、また更に別の実施形態では6重量%以下の量で存在し得る。
【0044】
2kのPU接着剤の第2液は「ポリオール」成分(b)に関して説明されているが、他のイソシアネート反応性化合物を本発明において使用できることはよく知られている。本明細書において使用される「イソシアネート反応性化合物」という用語には、名目上少なくとも2個のイソシアネート反応性部位を有する任意の有機化合物が含まれる。本明細書における「イソシアネート反応性部位」は、活性水素含有部位であってもよい部位を指し、本明細書における「活性水素含有部位」とは、水素原子を含む部位が、分子内でのその位置のため、Journal of the American Chemical Society,Vol.49,p.3181(1927)中でWohlerにより述べられているZerewitinoff試験に従って有意な活性を示すことを指す。活性水素含有部位などのそのようなイソシアネート反応性部位の例は、-COOH、-OH、-NH、-NH-、-CONH、-SH、及び-CONH-である。本発明において有用な例示的な活性水素含有化合物、すなわちイソシアネート反応性部位含有化合物としては、ポリオール、ポリアミン、ポリメルカプタン、及びポリ酸を挙げることができる。好ましい実施形態では、本発明において有用なイソシアネート反応性化合物はポリオール化合物であり、別の好ましい実施形態では、ポリオール化合物はポリエーテルポリオール化合物であってもよい。
【0045】
通常、接着剤配合物中のポリオール成分(b)の量は、配合物中の成分の総重量を基準として、一実施形態では約0.1重量%~約90重量%;別の実施形態では約1重量%~約80重量%;更に別の実施形態では約2重量%~約70重量%;また別の実施形態では約5重量%~約60重量%;また更に別の実施形態では約7重量%~約50重量%の範囲であってもよい。ポリオールの量が90重量%を超える場合、得られる配合物の粘度が低すぎる可能性がある、及び/又は接着剤配合物の機械的特性が損なわれる可能性がある。ポリオールの量が0.1重量%未満である場合、ポリオール成分(b)のOHの数は、適切な潜在性の付与に十分ではない可能性がある、及び/又は接着剤配合物の機械的特性が損なわれる可能性がある。
【0046】
本発明の接着剤配合物は、任意選択的に少なくとも1種の触媒を含んでいてもよい。任意選択的な触媒は、イソシアネート成分(a)及び/又はポリオール成分(b)中に存在していてもよい。本発明においては触媒は任意選択的であるが、触媒は、通常、ポリオール成分とイソシアネート成分との反応を促進するために組成物中に存在する。触媒としては、例えば、1種以上の潜在性の室温(約25℃)の有機金属触媒を挙げることができる。潜在性の室温の有機金属触媒は、スズ、亜鉛、又はビスマスを含み得る。例えば、潜在性の室温の有機金属触媒としては、アルカン酸亜鉛、アルカン酸ビスマス、アルカン酸ジアルキルスズ、ジアルキルスズメルカプチド、ジアルキルスズビス(アルキルメルカプトアセテート)、ジアルキルスズチオグリコレート、及びそれらの混合物の群からの1種以上の触媒を挙げることができる。
【0047】
一実施形態では、本発明で有用な触媒は、ジアルキルスズメルカプチド、ジアルキルスズビス(アルキルメルカプトアセテート)、ジアルキルスズチオグリコレート、及びそれらの混合物の群から選択される前述した1種以上の触媒などのスズを含有する(又はスズを主体とする)潜在性の室温の有機金属触媒であってもよい。例えば、本発明の接着剤組成物において有用な潜在性スズ含有有機金属触媒としては、ジオクチルスズメルカプチド;ジブチルメルカプチド(dibutylmercaptidem);ジブチルメルカプチド;ビス(ドデシルチオ)ジメチルスタンナン;ジメチルスズ(dimethytin)ビス(2-エチルヘキシルメルカプトアセテート);ジオクチルカルボキシレート;ジオクチルスズネオデカノエート;及びそれらの混合物から選択される1種以上のスズ系触媒を挙げることができる。
【0048】
本発明の接着剤配合物において有用な別の触媒としては、例えば、更に熱で活性化することができる任意の触媒(「感熱性触媒」と呼ばれる)が挙げられる。例えば、一実施形態では、そのような熱感受性触媒としては、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデク-7-エン(DBU);1,5-ジアザビ-シクロ[4.3.0]ノン-5-エン;及びそれらの混合物の群から選択される1種以上の環状アミジン触媒化合物などのアミン系固体アミン触媒を挙げることができる。
【0049】
別の実施形態では、本発明の接着剤配合物は、少なくとも1種の上の潜在性スズ含有触媒と、少なくとも1種の上の感熱性アミン系触媒との組み合わせを含んでいてもよい。スズ含有有機触媒とアミン系触媒は、共に、本発明の2KのPU接着剤を形成するために、イソシアネート成分(b)、ポリオール成分(c)、又はイソシアネート成分(b)とポリオール成分(c)の両方に容易に配合することができる。
【0050】
更に別の実施形態では、上述したスズ系触媒と同様の硬化速度/プロファイルを示す任意の非スズ系金属-有機触媒が、本発明の接着剤配合物中の触媒成分として使用されてもよい。例えば、有用なビスマス系触媒としてはネオデカン酸ビスマス(III)を挙げることができ、有用な亜鉛系触媒としてはネオデカン酸亜鉛を挙げることができ;またこれらの触媒の混合物も挙げることができる。
【0051】
また別の実施形態では、本発明において有用な非スズ系触媒又は非アミン系触媒としては、DBUカルボン酸でブロック化された触媒などのカルボン酸でブロック化された触媒を挙げることができる。例えば、本発明において有用なDBUカルボン酸でブロック化された触媒としては、TOYOCAT DB41(TOSOHから入手可能なカルボン酸DBU塩)、POLYCAT SA-102/10(Air Productsから入手可能なカルボン酸DBU塩)、及びそれらの混合物を挙げることができる。本発明において有用な他の触媒としては、例えばTOSOHから入手可能なTOYOCAT DB40、TOYOCAT DB60、及びTOYOCAT DB70のような、第三級アミンと有機酸に基づく触媒などの酸でブロックされたアミン;TOSOHから入手可能なTOYOCAT DB30などの1H-1,2,4-トリアゾール系アミン触媒;並びにこれらの混合物を挙げることができる。本発明では、TOSOHから入手可能なTOYOCAT F22;トリエチレンジアミン(TEDA)など;及びこれらの混合物のような任意の他の公知の感熱性アミン触媒も使用することができる。好ましい一実施形態では、本発明で有用な触媒は、例えば、ジ-n-オクチルスズビス[イソオクチルメルカプトアセテート]などのスズ触媒;POLYCAT SA 1/10及びTOYOCAT DB60などのアミン触媒;並びにこれらの混合物から選択することができる。第三級アミン活性剤が接着剤配合物に添加されてもよい。アミン活性化剤としては、例えばAir Productsから入手可能なAncamine K54などの2,4,6-トリ(ジメチル-アミノメチル)フェノールを挙げることができる。別の好ましい実施形態では、ジアザビシクロウンデセン(DABCO)又はトリエチレンジアミン(TEDA)を触媒として使用することができる。
【0052】
通常、接着剤配合物中の触媒の量は、配合物中の成分の総重量を基準として、一実施形態では約0.005重量%~約2.0重量%、別の実施形態では約0.01重量%~約1.0重量%、更に別の実施形態では約0.015重量%~約0.065重量%の範囲であってもよい。
【0053】
例示的な一実施形態では、例えば、ジ-n-オクチルスズビス[イソオクチル-メルカプトアセテート]などのスズ触媒が接着剤配合物中で使用される場合、配合物中のそのような触媒の濃度は、スズ触媒であるジ-n-オクチルスズビス[イソオクチルメルカプトアセテート]のMWを基準として、一実施形態では約0.005重量%~約1.0重量%;別の実施形態では約0.02重量%~約0.08重量%;更に別の実施形態では約0.03重量%~約0.05重量%であってもよい。
【0054】
別の例示的な実施形態では、例えば、POLYCAT SA 1/10などの感熱性アミン触媒が接着剤配合物中で使用される場合、配合物中のそのような触媒の濃度は、POLYCAT SA 1/10のMWを基準として、一実施形態では約0.01重量%~約2.0重量%;別の実施形態では約0.01重量%~約1.0重量%;更に別の実施形態では約0.015重量%~約0.025重量%であってもよい。
【0055】
更に別の例示的な実施形態では、例えば、TOYOCAT DB60などの触媒が接着剤配合物中で使用される場合、配合物中のそのような触媒の濃度は、TOYOCAT DB60のMWを基準として、一実施形態では約0.01重量%~約2.0重量%;別の実施形態では約0.01重量%~約1.0重量%;更に別の実施形態では0.045重量%~約0.065重量%であってもよい。
【0056】
触媒の濃度が約0.005重量%より低い場合、使用される触媒は配合物において活性が有効ではなく、得られる配合物の貯蔵安定性が「不十分」な可能性がある。すなわち、例えば配合物中に存在する残留水が少量の触媒を失活させる可能性がある。触媒の濃度が約2.0重量%を超える場合、配合物中に存在する成分の反応が速すぎて、オープンタイムが短くなる可能性がある。すなわち、例えば3分未満のオープンタイムになる可能性がある。更に、配合物中で触媒が高レベル(例えば2.0重量%超)であると、得られる配合物の取り扱い性及び配合コストが増加する可能性がある。
【0057】
本発明の接着剤配合物は、任意選択的に、少なくとも1種のフィラーを含んでいてもよい。任意選択的なフィラーは、少なくとも1種の粒子状フィラーであってもよい。粒子状フィラーは、室温で固体材料であり、ポリイソシアネート成分(a)の他の成分又はポリオール成分(b)又はそれらの任意の他の原料中に溶解しない。フィラーは、ポリオール成分とポリイソシアネート成分との間の硬化反応の条件下で溶融、揮発、又は分解しない材料である。フィラーは、例えば、ガラス、シリカ、ヒュームドシリカ、酸化ホウ素、窒化ホウ素、酸化チタン、窒化チタン、フライアッシュ、炭酸カルシウム、及び様々なアルミナケイ酸塩(ウォラストナイトやカオリンなどの粘土を含む)などの無機フィラー;鉄、チタン、アルミニウム、銅、真鍮、青銅などの金属粒子;ポリウレタン、エポキシやフェノール-ホルムアルデヒドやクレゾール-ホルムアルデヒド樹脂の硬化粒子、架橋ポリスチレンなどの熱硬化性ポリマー粒子;ポリスチレン、スチレンアクリロニトリルコポリマー、ポリイミド、ポリアミド-イミド、ポリエーテルケトン、ポリエーテル-エーテルケトン、ポリエチレンイミン、ポリ(p-フェニレンスルフィド)、ポリオキシメチレン、ポリカーボネートなどの熱可塑性樹脂;並びに活性炭、黒鉛、カーボンブラックなどの様々なタイプの炭素;並びにそれらの混合物であってもよい。
【0058】
粒子状フィラーは、一般的な一実施形態では約50ナノメートル(nm)~約100マイクロメートル(μm)のサイズを有する粒子形態であってもよい。別の実施形態では、フィラーは、一実施形態では約250nm以上、別の実施形態では約500nm以上、更に別の実施形態では約1μm以上の粒径(d50)を有し得る。別の実施形態では、フィラーは、一実施形態では約50μm以下、別の実施形態では約25μm以下、更に別の実施形態では約10μm以下の粒径(d50)を有し得る。粒子サイズは、動的光散乱法、又は約100nm未満のサイズを有する粒子に対するレーザー回折法を使用して都合よく測定される。
【0059】
いくつかの実施形態では、粒子状のフィラー粒子は、例えば、一実施形態では最大約5のアスペクト比、別の実施形態では最大約2のアスペクト比、更に別の実施形態では最大約1.5のアスペクト比を有し得る。別の実施形態では、フィラー粒子の一部又は全ては、ポリオール成分の1種以上のポリエーテルポリオール上にグラフトされていてもよい。
【0060】
通常、フィラーが接着剤配合物中に存在する場合、フィラーは一実施形態では接着剤配合物の総重量の約80重量%以下を構成する。別の実施形態では、接着剤配合物中に存在するフィラーの量は、配合物中の成分の総重量を基準として、通常、一実施形態では約0.1重量%~約80重量%;別の実施形態では約0.1重量%~約70重量%;更に別の実施形態では約0.1重量%~約60重量%;また別の実施形態では約0.1重量%~約50重量%;また更に別の実施形態では約0.1重量%~約40重量%;また更に別の実施形態では約0.1重量%~約30重量%;また更に別の実施形態では約0.1重量%~約25重量%;また更に別の実施形態では約0.1重量%~約20重量%の範囲であってもよい。
【0061】
任意選択的なフィラーは、イソシアネート成分(a)及び/又はポリオール成分(b)中に存在することができる。例えば、本発明の例示的な一実施形態では、フィラーはカーボンブラックであってもよく、所定の濃度のカーボンブラックがイソシアネート成分(a)中に存在していてもよい。イソシアネート成分(a)中にカーボンブラックが存在し他のフィラーが存在しない場合、カーボンブラックフィラーは、例えば、イソシアネート成分(a)の重量を基準として、一実施形態ではイソシアネート成分(a)の約1重量%~約50重量%;別の実施形態では約2重量%~約40重量%;更に別の実施形態では約5重量%~約30重量%;また別の実施形態では約10重量%~約25重量%を構成することができる。
【0062】
本発明の別の例示的な実施形態では、所定の濃度のフィラーがポリオール成分(b)中に存在していてもよい。フィラーがポリオール成分(b)中に存在する場合、フィラーは、例えば、ポリオール成分(a)の総重量を基準として、一実施形態ではポリオール成分(b)の約1重量%~約80重量%;別の実施形態では約5重量%~約70重量%;更に別の実施形態では約10重量%~約60重量%;また別の実施形態では約20重量%~約60重量%を構成することができる。
【0063】
ポリオール成分(b)中に存在するフィラーは、イソシアネート成分(a)中のフィラーと同じであってもよく、或いは、ポリオール成分(b)中に存在するフィラーは、イソシアネート成分(a)中のフィラーと異なっていてもよい。例えば、好ましい一実施形態では、カーボンブラックフィラーは、例えば約15重量%~約20重量%の濃度でイソシアネート成分(a)中で使用することができ、また、焼成粘土、炭酸カルシウム、又はタルクは、例えば約30重量%~約60重量%の量でポリオール成分(b)中で使用されてもよい。フィラーは、本発明の2KのPU接着剤を形成するために、イソシアネート成分(a)、ポリオール成分(b)、又はイソシアネート成分(a)とポリオール成分(b)の両方に容易に配合することができる。
【0064】
本発明の接着剤配合物は、ポリオール成分及び/又はイソシアネート成分中に存在し得る1種以上の他の任意選択的な成分を更に含んでいてもよい。例えば、本発明において有用な別の任意選択的な成分としては、フィラー粒子の表面を濡らしてポリエーテルポリオール中への分散を助ける1種以上の分散助剤を挙げることができる。これらは粘度を下げる効果も有し得る。これらの分散助剤の中でも、例えば、低分子量ポリカルボン酸ポリマーのアルキルアンモニウム塩や不飽和ポリアミンアミドと低分子量の酸性ポリエステルとの塩などのBYK ChemieからBYK、DISPERBYK、及びANTI-TERRA-Uの商品名で販売されている様々な分散剤、並びに3M CorporationのFC-4430、FC-4432、及びFC-4434などのフッ素化界面活性剤が挙げられる。ポリオール成分中に存在する場合、上の分散助剤は、例えば、一実施形態では最大約2重量%のポリオール成分を構成していてもよく、別の実施形態では最大約1重量%のポリオール成分を構成していてもよい。
【0065】
本発明において有用な別の有用な任意選択的な成分としては、特にポリオール成分中で使用される場合、ヒュームドシリカ、疎水的に修飾されたヒュームドシリカ、シリカゲル、エアロゲル、様々なゼオライト、モレキュラーシーブなどの乾燥剤;並びにそれらの混合物を挙げることができる。例えば、ポリオール成分中に存在する場合、1種以上の乾燥剤は、一実施形態ではポリオール成分の重量を基準として約1重量%以上、別の実施形態ではポリオール成分の約5重量%以下、更に別の実施形態ではポリオール成分の約4重量%以下を構成し得る。別の実施形態では、乾燥剤は、ポリオール成分又は接着剤組成物に存在しなくてもよい。
【0066】
任意選択的には、本発明の接着剤配合物は、本発明の接着剤製品の優れた利点/特性を維持しながらも特定の機能の性能を可能にするために、様々な他の任意選択的な添加剤を用いて配合されてもよい。例えば、一実施形態では、配合物において有用な任意選択的な添加剤としては、接着剤の更なる水の取り込みを回避し、NCOと水との反応を回避するためのガス及び水の捕捉剤を挙げることができる。そのような望ましくない反応は、NCOと水との反応によって生じるCO放出のために、接着剤に膨れを形成する可能性がある。別の実施形態では、濡れ性能を更に改善するために、及びポリオール成分とイソシアネート成分との間の混合を改善するために、相溶化剤が配合物中で使用されてもよい。
【0067】
更に別の実施形態では、化学的レオロジー調整剤が配合物中で使用されてもよい。通常、例えば、様々なMW及び官能基数を有する様々なグレードのポリアミン化合物を本発明で使用することができる。一実施形態では、ポリアミン化合物としては、例えば、以下の化合物のうちの任意の1種以上を挙げることができる:403g/molのMWを有する三量体Jeffamine T403、400g/molのMWを有する二量体Jeffamine D400、200g/molのMWを有する二量体Jeffamine D200、及びこれらの混合物。化学的レオロジー調整剤は、本発明では、配合物を迅速に初期ゲル化させるために使用することができ、これにより、優れたタレ抵抗性の利点が付与される。加えて、配合物を硬化する際の粘度の急激な増加により、熱促進硬化プロセスでのCO形成のリスクが減少する。必要に応じて、追加の任意選択的な化合物又は添加剤の混合物が本発明の接着剤配合物に添加されてもよい。
【0068】
任意選択的な成分は、接着剤配合物中で使用される場合、一実施形態では0重量%~約15重量%;別の実施形態では、約0.1重量%~約10重量%;更に別の実施形態では約1重量%~約5重量%の範囲の量で通常存在することができる。好ましい一実施形態では、モレキュラーシーブが使用される場合、モレキュラーシーブの量は、例えば約1重量%~約5重量%であってもよい。別の好ましい実施形態では、Jeffamine製品などのアミン製品が使用される場合、Jeffamineの量は、例えば約0.1重量%~約2重量%であってもよい。
【0069】
1つの幅広い実施形態では、本発明の2KのPU接着剤配合物を調製するためのプロセスは、上述したように、少なくとも1種のイソシアネート成分(a)を用意すること、及び少なくとも1つのポリオール成分(b)を用意することを含む。基材を一体に結合するために本発明の接着剤を使用する準備が整った時に、上の成分(a)と(b)を一緒に混合(mix、admix)又はブレンドすることができ、これは成分(a)と(b)との組み合わせが硬化すると反応生成物になる。必要に応じて、1種以上の追加の任意選択的な成分が配合物に添加されてもよい。例えば、少なくとも1種の触媒及び/又は少なくとも1種のフィラーは、成分(a)と(b)が一緒に混合される前に、又は成分(a)と(b)が一緒に混合された後に、成分(a)、成分(b)又はその両方のいずれかで接着剤配合物中に添加されてもよい。
【0070】
接着剤配合物を構成する反応生成物の製造に有用なイソシアネート成分(a)の量及びポリオール成分(b)の量は様々であってもよく、イソシアネート成分(a)とポリオール成分(b)が(別々且つ個別に)配合され、2つの成分が反応生成物である接着剤を形成するために混合される準備が整うと、イソシアネート成分(a)とポリオール成分(b)は通常1:1の体積比で混合される。例えば、イソシアネート成分(a)対ポリオール成分(b)の比は、一実施形態では約2:198~約198:2、別の実施形態では約5:195~約195:5、更に別の実施形態では約10:190~約190:10、また別の実施形態では約20:180~約180:20であってもよく、好ましい実施形態では、比率は約100:100であってもよい。イソシアネート成分対ポリオール成分の濃度比が約2:198未満である場合、接着剤配合物は有効な接着力を示さない可能性があり、或いは接着力が不十分であるか存在しない可能性がある。イソシアネート成分対ポリオール成分の濃度比が約198:2を超える場合には、配合物は優れた機械的特性又は優れたレオロジー特性を示さない可能性がある、及び/又は配合物中に多量のNCOが形成される可能性があり、このNCOの形成は、問題となる脆い製品、すなわち破断点伸び特性が低い製品をもたらす可能性がある。
【0071】
成分(a)と成分(b)の別々且つ個別の製造において、必須成分と任意選択的な成分は、上述した望ましい濃度で、一実施形態では約5℃~約80℃;別の実施形態では約10℃~約60℃;更に別の実施形態では約15℃~約50℃の温度で一緒に混合することができる。好ましい一実施形態では、成分(a)及び(b)を形成するための上の成分の混合は、真空下で行われてもよい。成分の混合の順序は重要ではなく、2種以上の化合物を一緒に混合してから残りの成分が添加されてもよい。成分(a)及び(b)を構成する接着剤配合物成分は、任意の公知の混合プロセス及び装置によって一緒に混合することができる。
【0072】
別の幅広い実施形態では、本発明は、2つの基材間の結合界面に2KのPU接着剤の層を形成し、結合界面で層を硬化して各基材に結合された硬化した接着剤を形成することを含む、2つの基材の結合方法を含む。例えば、方法は、2成分形ポリウレタン接着剤のポリイソシアネート成分(a)をポリオール成分(b)と混合すること、2つの基材間の結合界面に接着剤の層を形成すること、室温で又は組立体の一部に熱若しくは赤外線を照射することにより結合界面で接着剤層を部分的に硬化させること、及びその後の別の硬化工程で接着剤層の硬化を完了させること、を含み得る。
【0073】
一体に接着される基材への2KのPU接着剤の塗布は、所定量のポリイソシアネート成分(a)とポリオール成分(b)との(接着剤としての)組み合わせを基材の選択的な部分に塗布できる計量/混合/分配装置などの任意の公知の装置によって行うことができる。例えば、自動車の製造プロセスでは、成分(a)と(b)は2つの別々の数ガロンの大きさのタンクコンテナで供給される。その後、成分(a)が1つのタンクから抜き出され、それと同時に成分(b)がもう1つのタンクから抜き出され、混合された接着剤成分(a)と(b)が基材に塗布される際に、公知の静的又は動的ミキサーを使用して両方の流れが1つに混合される。部分硬化工程は、組立体の1つ以上の所定の局所的な部分のみに熱をかけることにより、接着剤層の1つ以上の所定の局所的な部分のみを結合界面で硬化して、少なくとも部分的に硬化した部分と未硬化の部分とを有する接着剤層を製造することにより行うことができ、接着剤層の未硬化の部分は、その後、後続の別の硬化工程において硬化させることができる。
【0074】
一般的な一実施形態では、少なくとも第1の基材を少なくとも第2の基材に接着する方法は、(1)本明細書に開示のポリオール成分(b)とイソシアネート成分(a)とを接触させ、成分を混合して均一な接着剤混合物を形成する工程;(2)接着剤混合物を第1の基材の少なくとも一部に塗布する工程;(3)混合物が第1の基材と第2の基材との間に配置されて結合界面を形成するように、第2の基材を第1の基材と接触させる工程;及び(4)第1と第2の基材が十分に、すなわち十分な強度で結合するように混合物が部分的に十分に硬化するような条件下で、基材を動かすことができるように混合物の少なくとも一部を熱にさらす工程;を含み得る。この方法は、2つの基材が完全に一体に結合するように2つの部分的に硬化した基材をある温度である時間加熱して混合物を完全に硬化させる工程(5)を更に含み得る。熱は、工程(4)において、赤外線加熱などの任意の公知の加熱手段によって加えることができる。工程(4)と(5)との間の時間は、一実施形態では約1時間以上、別の実施形態では約24時間以上であってもよく、更に他の実施形態では上2つの時間の間の任意の時間又はそれ以上であってもよい。
【0075】
本発明の2kのPU接着剤組成物を硬化させることにより、本明細書に開示の硬化性接着剤組成物に基づく硬化した接着剤と一体に結合された2つ以上の基材を含む構造体が形成され、硬化した接着剤は各基材の部分の間に配置される。一実施形態では、基材は、異種基材、すなわち、金属、ガラス、プラスチック、熱硬化性樹脂、繊維強化プラスチック、又はそれらの混合物などの材料から選択される異なる材料の基材を含んでいてもよい。好ましい一実施形態では、基材の一方又は両方が繊維強化プラスチックであってもよい。
【0076】
本発明の配合物の利点の1つは、配合物の機械的特性を維持しながらも、優れた潜在性が得られることである。例えばVoranol280などの他の成分を使用することにより潜在性を増加させる他の手法が以前に試みられているが、そのような以前の試みは、例えば破断点伸びが150%未満になるなど、接着剤の機械的特性の犠牲につながる。他方で、本発明の配合物は、一実施形態では、150%より大きい破断点伸びを有しながらも、8分間より長いオープンタイム、1h RT後の2MPaより大きい重ねせん断強度を達成することができる。
【0077】
本発明の方法により製造される本発明の接着剤配合物は、従来の接着剤配合物と比較して複数の有利な特性及び利点を有する。例えば、接着剤配合物により示される複数の特性としては、潜在性の増加、より長いオープンタイム、及びより迅速な取り扱い強度の発現を挙げることができる。潜在性の周囲温度での硬化のための2成分形ポリウレタン接着剤は、潜在性を改善するために使用することができ、また接着剤配合物の系の安定性を増加させるために使用することができる。
【0078】
例えば、接着剤はより長いオープンタイムを示すことができ、オープンタイムは、通常、一実施形態では約8分超、別の実施形態では約9分超、更に別の実施形態では約10分超であってもよい。別の実施形態では、本発明の配合物により示されるオープンタイムは、一実施形態では約8分より長く約20分まで;別の実施形態では約9分~約20分;更に別の実施形態では約10分~約20分の範囲であってもよい。
【0079】
本発明の接着剤は、高い塗布せん断強度値を有することが有利である。例えば、1h RT後の重ねせん断強度によって測定される、本発明の接着剤配合物の取り扱い強度の発現は、通常、一実施形態では約1MPa超、別の実施形態では約1.5MPa超、更に別の実施形態では約2MPa超であってもよい。また別の実施形態では、1h RT後の接着剤配合物の重ねせん断強度は、一実施形態では約1MPa~約4MPa、別の実施形態では約1.5MPa~約4MPa、別の実施形態では約2MPa~約3MPaであってもよい。
【0080】
本発明の接着剤配合物に対しては、有利には、上述した取り扱い強度の発現及び増加した重ねせん断強度を迅速に得るために、熱により促進される硬化(例えば3分の加熱サイクル後)が行われてもよい。基材組立体は、一実施形態では約80℃~約120℃で約5秒(s)~約30秒;別の実施形態では約100℃~約110℃で約10秒~約20秒の接着剤温度に到達するために、熱源(例えばIR源)にさらされて120秒の硬化プロセス中に加熱されてもよい。
【0081】
本発明の2成分形ポリウレタン接着剤は、有利には、高い強度及び伸び性を有し、機械的特性は硬化温度にほとんど依存しない。例えば、本発明の接着剤配合物は、一実施形態では約150%超、別の実施形態では約170%超、更に別の実施形態では約200%超の破断点伸びを示す接着剤を提供することができる。別の実施形態では、接着剤の破断点伸びは、例えば約150%超~約600%未満、別の実施形態では約150%超~約300%、更に別の実施形態では約170%~約200%であってもよい。
【0082】
別の実施形態では、本発明の2KのPU接着剤は、約20MPa(23℃)~約100MPa、更に別の実施形態では約30MPa~約90MPaの縦弾性係数を有し得る。本発明の2KのPU接着剤は、一実施形態では約-30℃及び約90℃、別の実施形態では約-35℃及び80℃の温度範囲で少ない縦弾性係数の損失も示す。
【0083】
有利には、本発明の2KのPU接着剤は、構造用接着剤として適切なものとすることができる。本発明の2KのPU接着剤は、例えば、複合材料;eコーティングされた鋼、eコーティングされたアルミニウムなどの被覆金属;及びシート成形コンパウンド(SMC);及びそのような材料の混合物を一体に結合させるために使用することができる。したがって、本発明の2KのPU接着剤は、様々な基材の結合が必要とされる様々な用途において、特に2つの異種基材の結合が必要とされる場合において有用である。好ましい一実施形態では、本発明の接着剤は、自動車製造用途での様々な基材(又は部品)の結合において使用される。
本願発明には以下の態様が含まれる。
項1.
(a)
(ai)少なくとも1種の第1のポリイソシアネート化合物と、
(aii)約2.3以上の官能基数を有する少なくとも1種の第2のポリイソシアネート化合物と、
を含む少なくとも1種のイソシアネート成分;及び
(b)少なくとも1種のポリオール成分;
を含有する接着剤組成物。
項2.
前記少なくとも1種の第2のポリイソシアネート化合物が約2.7の官能基数を有する、項1に記載の組成物。
項3.
前記少なくとも1種の第2のポリイソシアネート化合物がポリメリックメチレンジフェニルイソシアネートである、項1に記載の組成物。
項4.
少なくとも1種の触媒を更に含み、前記少なくとも1種の触媒が少なくとも1種のスズ含有有機触媒である、項1に記載の組成物。
項5.
少なくとも1種のフィラーを更に含み、前記少なくとも1種のフィラーが、無機フィラー粒子、金属粒子、熱硬化性ポリマー粒子、熱可塑性粒子、カーボンブラック、炭素粒子、及びこれらの混合物からなる群から選択される、項1に記載の組成物。
項6.
前記少なくとも1種のイソシアネート成分(a)が約0.01重量パーセント~約60重量パーセントの濃度で前記組成物中に存在し、前記少なくとも1種のポリオール成分(b)が約0.1重量パーセント~約20重量パーセントの濃度で前記組成物中に存在する、項1に記載の組成物。
項7.
8分より長いオープンタイム;23℃、相対湿度50%で1時間後に約1.0メガパスカルを超える重ねせん断強度;及び約150パーセントを超える破断点伸びを有する、項1に記載の組成物。
項8.
2成分形ポリウレタン接着剤を含む、項1に記載の組成物。
項9.
3成分ポリウレタン接着剤組成物を調製するプロセスであって、
(a)
(ai)少なくとも1種の第1のポリイソシアネート化合物と、(aii)約2.3以上の官能基数を有する少なくとも1種の第2のポリイソシアネート化合物と、を含む少なくとも1種のイソシアネート成分;及び
(b)少なくとも1種のポリオール成分;
を混合することを含む、2成分形ポリウレタン接着剤組成物の調製方法。
項10.
(I)少なくとも第1の基材を項1に記載の接着剤組成物と接触させること;
(II)前記少なくとも第1の基材上に存在する前記接着剤組成物に前記少なくとも第2の基材を接触させること;及び
(III)約5℃~約80℃の温度で前記少なくとも第1と第2の基材を前記接着剤組成物と共に硬化させること;
を含む、少なくとも第1の基材を少なくとも第2の基材に接着させる方法。
【実施例
【0084】
以下の実施例は、詳細に本発明を更に例示するために示されるが、特許請求の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。特に明記しない限り、全ての部及び百分率は重量による。
【0085】
実施例で使用されている様々な原料について以下で説明する:
Covestroから入手可能なDesmodur N3400は、ヘキサメチレンビスイソシアネートに基づく脂肪族ポリイソシアネートである。
Isonate M143は、官能基数が2.2であり40mPa-s粘度の粘度を有する液化MDIである。Isonate M143は、The Dow Chemical Company(Dow)から入手可能である。
Isonate M342は、Dowから入手可能な、官能基数が2であり580mPa-sの粘度を有するポリメリックMDIである。
VORANATE M220は、Dowから入手可能な、官能基数が2.7であり205mPa-sの粘度を有するポリメリックMDIである。
Metatin T713は、スズ系のジブチルスズメルカプチド触媒であり、ACIMAから入手可能である。
スズ系ジオクチルスズメルカプチド触媒であるジ-n-オクチルスズビス[イソオクチルメルカプトアセテート]。
POLYCAT SA-1/10は、フェノール性の対イオンを有する固体のDBU(1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデク-7-エン)系の固体アミン触媒であり、ACIMAから入手可能である。
2,4,6-トリ(ジメチルアミノメチル)フェノールであるAncamine K54は、Air Productsから入手可能な第三級アミン活性化剤である。
Voranol 2000Lは、平均MWが1,000g/molでありOH価が約55mg KOH/gであるポリプロピレンホモポリマーであり、Dowから入手可能である。
Voranol CP4610は、平均MWが1,800g/molでありOH価が約35mg KOH/gである、グリセリンで開始されたエチレンオキシドに基づくプロポキシル化トリオールであり、Dowから入手可能である。
1,4ブタンジオールはArco Chemicalから入手可能であり、Schweizerhall Chemieにより販売されている。
Polestar 200Rは、約2マイクロメートル(μm)(90%>10μm)の平均粒径、8.5m/gのBET表面、及び6.0~6.5のpHを有する焼成カオリン(SiO55%、Al45%)である。Polestar 200RはIMERYSから入手可能である。
Aerosil R 202は、疎水性に修飾されたポリジメチルシロキサンで被覆されたヒュームドシリカであり、Evonik Industriesから入手可能である。
Printex 30は、Alzchemから供給されているカーボンブラックフィラーである。
Toyocat DB60は、第三級アミンと有機酸の塩に基づく触媒であり、Tosohから市販されている。
Vestinol 9は、100%のフタル酸ジイソノニルであり、T-715のプレポリマー技術において可塑剤として使用されており、Evonikから入手可能である。
Voranol 280は、ヒドロキシル価が280であり、官能基数が7であり、MWが400g/molであり、EWが200である、スクロースで開始されたオキシプロピレン-オキシエチレンポリオールである。VORANOL 280はDowから入手可能である。
VORAFORCETM 5300は、Dowから入手可能な、RTMプロセスにおいて炭素繊維強化複合材(CFRP)部品を製造するためのDowの樹脂グレードである。
BETAWIPETM 4800は、Dow Automotive Systemsから入手可能な溶剤系接着促進剤である。
【0086】
以下の試験を、当業者に公知の手順に従って行った。
【0087】
オープンタイム
長さ30cm~50cmの接着剤ビーズを手作業でポリエチレン箔の上に押し出した。2Kポリウレタン接着剤の手作業による塗布は、例えば、直径8ミリメートル(mm)又は10mm、24段の混合エレメント、最低6barの塗布圧力のスタティックミキサーユニットが取り付けられたKroegerTS 400などのダブルカートリッジアプリケーターガンから行った。塗布した接着剤ビーズを、接着剤が木製のスパチュラの木の表面に貼りつかなくなるまで、木製のスパチュラで連続的に押し付ける。測定された時間を、接着剤の「オープンタイム」として定義する。
【0088】
反応性
2K PU接着剤の反応性は、直径20mm、プレート間隔設定1mmの平行プレートを使用した振動モードでのレオロジーによって測定する。反応性の測定は、0.062%の一定の変形で10ヘルツ(Hz)で行う。複素粘度を時間に対してプロットし、粘度の勾配が30°を超えて変化する時を「反応性」とみなす。
【0089】
せん断強度
せん断強度測定は、例えば、FHM 8606.00.00又は8606.04.00取り付け装置を有するせん断強度装置Zwick1435などの適切なせん断強度測定装置でDIN EN 1465(2009年7月)に従って行った。eコーティングされた基材は、100mm×25mm×0.8mmの寸法のeコーティングされた鋼製パネルであるCathoguard 500であった。eコーティングされた基材を、BETACLEANTM 3350(ヘプタン)洗浄溶剤溶液で洗浄した。接着剤塗布前の洗浄後の溶剤のフラッシュオフ時間は5分であった。CFRP基材は、100mm×45mm×2.2mmの寸法を有するDowからのVORAFORCETMグレードのパネル(CFRP VORAFORCETM 5300)であった。CFRP基材は、洗浄又は機械的前処理なしで研磨又は使用した。研磨を行う場合には、均一な光学的外観が得られるまで、濡れたCFRPパネル上で320の研磨パッドを使用して、研磨を手作業で行った。パネルは引き続いて80℃で8時間乾燥される。重ねせん断試験片のために、10mm×25mm×1.5mmの接着剤結合寸法を使用した。重ねせん断試験片は、23℃/50%r.h.で1時間の硬化時間後に、又はそれぞれ以下に説明する熱促進硬化プロセスの後に試験した。
【0090】
熱促進硬化
熱促進硬化では、KTL-KTLの重ねせん断試験片の組立体などのeコーティングされた鋼基材(KTL)の組立体を、組み立て後にIR硬化装置の中に入れる。この試験に有用な重ねせん断試験片としては、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)の組立体、CFRP-CFRP組立体、又はCFRP-eコーティングされた鋼の組立体も挙げることができる。
【0091】
重ねせん断試験片は、1.5mmの結合高さと45mmx10mmの重ね領域から構成される。IR源に曝露したCFRP基材を、120秒の硬化プロセス中に100℃~110℃の接着剤温度に10秒間~20秒間到達するように加熱する。
【0092】
引張試験
引張試験は、DIN527-2(2012年6月)に記載の試験に従って、室温で7日間硬化させた厚さ2mmの試験片(Dogbones 5Aと呼ぶ)を使用して行った。
【0093】
以下の実施例は、2KのPU接着剤組成物のポリオール成分(b)における高官能性ポリオール(例えばVoranol280)の使用;及び2KのPU接着剤組成物のイソシアネート成分(a)における高官能性ポリイソシアネート化合物の使用を例示する。高官能性ポリイソシアネート化合物を使用すると、接着剤組成物のオープンタイム及び1時間の硬化強度が予想外にも増加する。
【0094】
実施例1~8及び比較例A~D
以下の表Iは、比較例A~D及び実施例1~8の処方並びに接着剤組成物を試験した後の性能データの結果を表している。比較例A~D及び実施例1~8の接着剤組成物のオープンタイムは、上述したレオロジー反応性試験により測定した。重ねせん断強度は、eコーティングされた鋼基材を用いて、1時間及び7日間の室温で測定した。重ねせん断(「1h-重ねせん断」)強度は、15mm×25mm×1.5mmの接着寸法を有するeコーティングされた鋼基材で測定した。引張試験は、上述したDogbones 5A試験サンプルで行った。様々な接着剤を使用してDogbones 5Aサンプルで行った試験の結果を表Iに示す。実験室でのせん断IR熱硬化実験は、180秒の加熱サイクルで、45mm×15×1.5mmの接着寸法を有するCFK基材(Dowから入手可能)を用いて行った。引張特性は、厚さ2mmの試験片で測定した。
【0095】
予期しなかったことには、且つ驚くべきことには、2KのPU接着剤のイソシアネート成分(a)で高官能性ポリイソシアネート化合物を使用することが、オープンタイム及び1-hr硬化強度(重ねせん断強度)に対してより効果的な影響を与えることが見出された。比較例と実施例の結果は表Iにまとめられている。比較例Aのイソシアネート成分は2.2の官能基数を有するポリイソシアネート化合物であるIsonate 143を含み;比較例Bは2.0の官能基数を有するポリイソシアネート化合物であるIsonate 342を含む。比較例Cは単一のポリイソシアネート化合物を含む。比較例Dは、高官能性ポリオール成分を含み、2016年4月1日に出願された米国仮特許出願第62/316680号明細書(出願人の代理人整理番号78710)に記載されている通りに調製した接着剤配合物である。
【0096】
実施例は、成分(a)としてイソシアネート成分を含み、これは、2.7の官能基数を有するIsonate 220とプレポリマーT-715-UKとの組み合わせである。芳香族イソシアネート官能基の寄与により、2種のポリイソシアネート化合物の組み合わせからイソシアネート成分(a)全体として2~約2.6の範囲の官能基数が得られる。イソシアネート成分(IsoC)中には、比較例においてDesmodur N3400(2官能性)により供給される5重量%の脂肪族イソシアネート官能基も存在する。
【0097】
表Iに記載の結果は、比較例Aの470秒から実施例1の1,310秒まで、Isonate 220の含有量の増加に伴い反応時間が大幅に増加することを示している。1-hr硬化重ねせん断強度(1h LS)は、1.2MPa(比較例A)から2.2MPa(実施例1)まで、Isonate 220の含有量と共に増加する。実施例1は、反応性及び1h LSの優れた性能と許容できる破壊ひずみ特性との組み合わせを示す。表Iに記載の結果は、接着剤組成物の成分(a)として1種の高官能性ポリイソシアネート化合物のみが使用される場合に、破壊ひずみなどの機械的性質が損なわれることも示している(比較例Cを参照)。
【0098】
破壊ひずみ特性の改善などの接着剤配合物特性の更なる改善は、本発明の実施例5及び6に示されているように、Isonate 342をIsoCに配合することによって達成することができる。本発明の接着剤配合物における高官能性IsoC(例えば実施例1を参照)は、反応性及び1h LSに関して従来の接着剤配合物に匹敵する。
【0099】
上の2つのアプローチを組み合わせると、本発明の接着剤組成物の反応性及び1h LSに関して更なる改善が観察された。例えば、実施例8では、反応性が610秒から960秒に増加し、1h LSが1.6MPaから2.2MPaに増加した。
【0100】
比較例のIR硬化強度は、IR硬化サイクル中の実際の接着剤温度に依存し、結果として生産ラインにおいて接着剤が信頼性を欠く硬化強度になることが判明した。IR加熱は、通常、接着剤とは反対側の基材の面に行われる。そのため、接着剤を確実に完全に硬化させるためには、熱は、基材の厚さを通って伝わって接着剤に到達するだけでなく、接着結合の厚さを通って伝わる必要がある。所定の温度が設定点として設けられると、設定点を一定に保つことができ、基材の材料の種類及び/又は基材の厚さの変化は、実際の接着剤温度の変動を生じ得る。そのため、接着剤は設定温度よりもわずかに低い温度で適切に硬化することが望ましい。
【0101】
【表1】
【0102】
【表2】
【0103】
本発明の配合物の熱硬化性能を調べるために、標準のIR硬化プロファイルを通常の設定点より5℃及び10℃低く調整した。比較例B、実施例6、及び実施例7の接着剤配合物のIsoCは、各接着剤配合物において同じポリオール成分(PolC)である成分(b)と組み合わせて使用した。表IIに示されているように、IR硬化温度の低下に伴って比較例Bの配合物では重ねせん断強度の大幅な低下が観察された一方で、実施例6及び実施例7の配合物では、調べた温度範囲にわたって約2MPaより大きい重ねせん断強度が維持される。
【0104】
【表3】
【0105】
上述した実施例から示されるように、少なくとも2種のポリイソシアネート化合物(第1と第2のポリイソシアネート化合物)を含む接着剤配合物のイソシアネート成分(a)に少なくとも1種の高官能性ポリイソシアネート化合物を添加することにより、本発明の接着剤配合物は室温で硬化することができ、(1)接着剤配合物のオープンタイムの増加(遅延した粘性の開始により観察され、レオロジー反応性により測定される);及び(2)接着剤配合物の高い1-hr重ねせん断強度;が得られることが見出された。本発明の接着剤配合物の使用により発見された追加の利点には、IR加熱による温度が下げられる場合のIR硬化の信頼性の改善が含まれる。従来、本発明の接着剤配合物が開発されるまで、1-hr重ねせん断強度の改善と組み合わされた反応性の改善は、過去に他の手段によっては達成されていなかった。