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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-26
(45)【発行日】2024-04-03
(54)【発明の名称】半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20240327BHJP
   H01L 21/301 20060101ALI20240327BHJP
   H01L 21/60 20060101ALI20240327BHJP
   C09D 201/00 20060101ALI20240327BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20240327BHJP
【FI】
H01L21/304 622N
H01L21/304 631
H01L21/304 622J
H01L21/78 Q
H01L21/92 602K
C09D201/00
C09J7/38
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020553323
(86)(22)【出願日】2019-10-18
(86)【国際出願番号】 JP2019041004
(87)【国際公開番号】W WO2020085220
(87)【国際公開日】2020-04-30
【審査請求日】2022-08-09
(31)【優先権主張番号】P 2018198582
(32)【優先日】2018-10-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田久 真也
(72)【発明者】
【氏名】山田 忠知
(72)【発明者】
【氏名】根本 拓
(72)【発明者】
【氏名】森下 友尭
【審査官】宮久保 博幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-064228(JP,A)
【文献】特開2002-016022(JP,A)
【文献】特開2015-092594(JP,A)
【文献】国際公開第2016/195061(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/077809(WO,A1)
【文献】特開2009-260230(JP,A)
【文献】特開2018-107425(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
H01L 21/301
H01L 21/60
C09D 201/00
C09J 7/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記工程(A)~(E)をこの順で含む、半導体装置の製造方法。
(A)下記工程(A1)及び(A2)をこの順で含み、バンプを備える半導体ウエハのバンプ形成面に、硬化性樹脂層を形成する工程
(A1)前記バンプを備える半導体ウエハの前記バンプ形成面に、支持シートと硬化性樹脂層とが積層された積層構造を有する保護膜形成用積層体を、前記硬化性樹脂層を貼付面として貼付する工程
(A2)前記支持シートを前記保護膜形成用積層体から剥離して、前記バンプを備える半導体ウエハの前記バンプ形成面に、前記硬化性樹脂層を形成する工程
(B)前記硬化性樹脂層を硬化させて、保護膜を形成する工程
(C)前記バンプを備える半導体ウエハの前記保護膜の形成面に、バックグラインドテープを貼付する工程
(D)前記バックグラインドテープを貼付した状態で、前記バンプを備える半導体ウエハの前記バンプ形成面とは反対面の研削を行う工程
(E)前記研削後の前記バンプを備える半導体ウエハから前記バックグラインドテープを剥離する工程
【請求項2】
前記支持シートが、第一支持基材、第一緩衝層、及び第一粘着剤層がこの順で積層された積層構造を有する、請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記硬化性樹脂層が、熱硬化性樹脂層である、請求項1又は2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記熱硬化性樹脂層が、重合体成分(XA)及び熱硬化性成分(XB)を含有する熱硬化性樹脂層形成用組成物から形成され、
前記重合体成分(XA)はポリビニルアセタール及びアクリル系樹脂から選ばれる少なくとも1種であり、
前記熱硬化性成分(XB)は、エポキシ系熱硬化性樹脂である、請求項3に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記工程(A)で用いる前記半導体ウエハの厚さが、300μm以上である、請求項1~4のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記工程(A)の前、前記工程(A)と前記工程(B)との間、前記工程(B)と前記工程(C)との間、及び前記工程(C)と前記工程(D)との間のいずれかにおいて、前記バンプを備える半導体ウエハを個片化するための分割起点を形成する、請求項1~5のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項7】
前記工程(B)と前記工程(C)との間、及び前記工程(E)の後のいずれかにおいて、前記バンプの頂部を覆う前記保護膜又は前記バンプの頂部の一部に付着した前記保護膜を除去して、前記バンプの頂部を露出させる露出処理を行う、請求項1~6のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項8】
前記露出処理が、プラズマエッチング処理である、請求項7に記載の半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、いわゆるフェースダウン方式と呼ばれる実装法を用いた半導体装置の製造が行われている。フェースダウン方式においては、回路面にバンプを備える半導体チップ(以下、単に「チップ」ともいう)とチップ搭載用の基板とを、当該チップの回路面と当該基板とが対向するように積層することによって、当該チップを当該基板上に搭載する。
なお、当該チップは、通常、回路面にバンプを備える半導体ウエハを個片化して得られる。
以降の説明では、半導体ウエハのことを単に「ウエハ」ともいう。また、回路面にバンプを備える半導体ウエハのことを「バンプ付きウエハ」ともいう。さらに、バンプ付きウエハの回路面のことを「バンプ形成面」ともいう。
【0003】
ところで、バンプ付きウエハには、バンプとウエハとの接合部分(以下、「バンプネック」ともいう)を保護する目的で、保護膜が設けられることがある。
例えば、特許文献1には、支持基材と、粘着剤層と、熱硬化性樹脂層とがこの順で積層された積層体を、熱硬化性樹脂層を貼り合せ面にして、バンプ付きウエハのバンプ形成面に圧着して貼り合わせた後、当該熱硬化性樹脂層を加熱して硬化させることで保護膜を形成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-092594号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、電子機器の高性能化やIoT(Internet of Things)市場の拡大に伴い、チップを高密度に実装することが要求されている。
かかる要求への対応策の一つとして、チップの軽薄化が挙げられる。チップを軽薄化する方法の一つとして、バンプ付きウエハの裏面を研削し、バンプ付きウエハを薄化する方法が挙げられる。特許文献1では、バンプ付きウエハのバンプ形成面に前記積層体を貼付した状態で、バンプ付きウエハの裏面を研削し、前記積層体の支持基材と粘着剤層とを熱硬化性樹脂層から剥離した後、熱硬化性樹脂層を加熱して硬化させることが記載されている。
なお、本明細書において、「バンプ付きウエハの裏面」とは、バンプ付きウエハのバンプ形成面とは反対面を意味する。
【0006】
しかしながら、近年、半導体製造工程において用いられるウエハは、バッチ処理効率を高める観点から、大口径化されつつある。また、チップを軽薄化する観点から、ウエハが薄化される傾向にある。そのため、特許文献1に記載の技術のように、熱硬化性樹脂層を加熱して硬化させる工程をバンプ付きウエハの裏面研削後に行うと、熱硬化性樹脂層の収縮に伴い、バンプ付きウエハに反りが生じやすい。バンプ付きウエハに反りが生じると、ウエハキャリア、ウエハカセット、及びウエハボート等へのバンプ付きウエハの収納不良が起こりやすくなり、バンプ付きウエハの破損の要因になる。また、バンプ付きウエハの搬送において、さらにはバンプ付きウエハを個片化してチップにした後の当該チップの搬送において、当該ウエハや当該チップの吸着時に不具合が生じやすくなり、搬送不良が起こりやすくなる。
【0007】
なお、上記問題は、熱硬化性樹脂層を加熱し硬化させることで保護膜を形成する場合に限らず、硬化時に収縮し得る硬化性樹脂層全般から保護膜を形成する場合において生じ得る。
【0008】
本発明は、かかる問題に鑑みてなされたものであって、硬化性樹脂層から形成された保護膜によってバンプを備える半導体ウエハのバンプネックを保護しながらも、当該半導体ウエハの薄化と当該半導体ウエハの反りの抑制との両立を図ることが可能な半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、鋭意検討の結果、下記工程(A)~(E)をこの順で含む半導体装置の製造方法が、上記課題を解決し得ることを見出した。
すなわち、本発明は、以下の[1]~[7]に関する。
[1] 下記工程(A)~(E)をこの順で含む、半導体装置の製造方法。
(A)バンプを備える半導体ウエハのバンプ形成面に、硬化性樹脂層を形成する工程
(B)前記硬化性樹脂層を硬化させて、保護膜を形成する工程
(C)前記バンプを備える半導体ウエハの前記保護膜の形成面に、バックグラインドテープを貼付する工程
(D)前記バックグラインドテープを貼付した状態で、前記バンプを備える半導体ウエハの前記バンプ形成面とは反対面の研削を行う工程
(E)前記研削後の前記バンプを備える半導体ウエハから前記バックグラインドテープを剥離する工程
[2] 前記工程(A)が、下記工程(A1)及び(A2)をこの順で含む、上記[1]に記載の半導体装置の製造方法。
(A1)前記バンプを備える半導体ウエハの前記バンプ形成面に、支持シートと前記硬化性樹脂層とが積層された積層構造を有する保護膜形成用積層体を、前記硬化性樹脂層を貼付面として貼付する工程
(A2)前記支持シートを前記保護膜形成用積層体から剥離して、前記バンプを備える半導体ウエハの前記バンプ形成面に、前記硬化性樹脂層を形成する工程
[3] 前記硬化性樹脂層が、熱硬化性樹脂層である、上記[1]又は[2]に記載の半導体装置の製造方法。
[4] 前記工程(A)で用いる前記半導体ウエハの厚さが、300μm以上である、上記[1]~[3]のいずれか1つに記載の半導体装置の製造方法。
[5] 前記工程(A)の前、前記工程(A)と前記工程(B)との間、前記工程(B)と前記工程(C)との間、及び前記工程(C)と前記工程(D)との間のいずれかにおいて、前記バンプを備える半導体ウエハを個片化するための分割起点を形成する、上記[1]~[4]のいずれか1つに記載の半導体装置の製造方法。
[6] 前記工程(B)と前記工程(C)との間、及び前記工程(E)の後のいずれかにおいて、前記バンプの頂部を覆う前記保護膜又は前記バンプの頂部の一部に付着した前記保護膜を除去して、前記バンプの頂部を露出させる露出処理を行う、上記[1]~[5]のいずれか1つに記載の半導体装置の製造方法。
[7] 前記露出処理が、プラズマエッチング処理である、上記[6]に記載の半導体装置の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明の半導体装置に製造方法によれば、硬化性樹脂層から形成された保護膜によってバンプを備える半導体ウエハのバンプネックを保護しながらも、当該半導体ウエハの薄化と当該半導体ウエハの反りの抑制との両立を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】バンプ付きウエハの一例を示す概略断面図である。
図2】本発明の半導体装置の製造方法の工程(A)~(E)を示す概略図である。
図3】本発明の一態様の半導体装置の製造方法の工程(A1)及び(A2)を示す概略図である。
図4】本発明の一態様の半導体装置の製造方法において、分割起点を形成して個片化する態様の一例を示す概略図である。
図5】本発明の一態様の半導体装置の製造方法において、分割起点を形成して個片化する態様の他の例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[本発明の半導体装置の製造方法]
本発明の半導体装置の製造方法は、下記工程(A)~(E)をこの順で含む。
(A)バンプを備える半導体ウエハのバンプ形成面に、硬化性樹脂層を形成する工程
(B)前記硬化性樹脂層を硬化させて、保護膜を形成する工程
(C)前記半導体ウエハの前記保護膜の形成面に、バックグラインドテープを貼付する工程
(D)前記バックグラインドテープを貼付した状態で、前記半導体ウエハの前記バンプ形成面とは反対面の研削を行う工程
(E)前記研削後の前記半導体ウエハから前記バックグラインドテープを剥離する工程
以下、本発明の半導体装置の製造方法において用いられる、バンプを備える半導体ウエハについて詳述した後、本発明の半導体装置の製造方法について、工程毎に詳述する。
なお、本明細書において、「保護膜」は「保護層」と言い換えてもよい。
【0013】
<バンプを備える半導体ウエハ>
本発明の半導体装置の製造方法において用いられる、バンプを備える半導体ウエハの一例を図1に示す。バンプを備える半導体ウエハ10は、半導体ウエハ11の回路面11aにバンプ12を備える。バンプ12は、通常、複数備えられる。
なお、上記の略称の定義と同様、以降の説明においても、「バンプを備える半導体ウエハ」は、「バンプ付きウエハ」ともいう。「半導体ウエハ」は、「ウエハ」ともいう。「回路面」は、「バンプ形成面」ともいう。
【0014】
バンプ12の形状は、特に限定されず、チップ搭載用の基板上の電極等に接触させて固定させることが可能であれば、いかなる形状であってもよい。例えば、図1では、バンプ12を球状としているが、バンプ12は回転楕円体であってもよい。当該回転楕円体は、例えば、ウエハ11のバンプ形成面11aに対して垂直方向に引き延ばされた回転楕円体であってもよいし、ウエハ11のバンプ形成面11aに対して水平方向に引き延ばされた回転楕円体であってもよい。
バンプ12の高さは、特に限定されず、例えば30μm~300μm、好ましくは60μm~250μm、より好ましくは80μm~200μmである。
なお、「バンプ12の高さ」とは、1つのバンプに着目したときに、バンプ形成面11aから最も高い位置に存在する部位での高さを意味する。
【0015】
ウエハ11は、例えば、配線、キャパシタ、ダイオード、及びトランジスタ等の回路が表面に形成された半導体ウエハである。当該ウエハの材質は特に限定されず、例えば、シリコンウエハ、シリコンカーバイドウエハ、化合物半導体ウエハ、及びサファイアウエハ等が挙げられる。
ウエハ11のサイズは、バッチ処理効率を高める観点から、通常8インチ(直径200mm)以上であり、好ましくは12インチ(直径300mm)以上である。なお、ウエハの形状は、円形には限定されず、例えば正方形や長方形等の角型であってもよい。角型のウエハの場合、ウエハ11のサイズは、バッチ処理効率を高める観点から、最も長い辺の長さが、上記サイズ(直径)以上であることが好ましい。
ウエハ11の厚みは、上記工程(B)において、硬化性樹脂層を硬化させることに伴うウエハ11の反りを抑制する観点から、例えば300μm以上、好ましくは400μm以上、より好ましくは500μm以上、更に好ましくは600μm以上である。なお、ウエハ11は、裏面研削による薄化加工が行われていないことが好ましい。
ウエハ11のサイズ(直径:単位mm)と厚さ(単位mm)との比[ウエハサイズ(直径)/ウエハ厚さ]は、好ましくは1000以下、より好ましくは700以下、更に好ましくは500以下、より更に好ましくは400以下、更になお好ましくは300以下である。また、ウエハ11のサイズ(直径:単位mm)と厚さ(単位mm)との比[ウエハサイズ(直径)/ウエハ厚さ]は、通常100以上、好ましくは200以上である。
【0016】
<工程(A)>
工程(A)では、図2(A)に示すように、バンプ付きウエハ10のバンプ形成面11aに、硬化性樹脂層20を形成する。硬化性樹脂層20の形成方法は、特に限定されず、例えば、バンプ付きウエハ10のバンプ形成面11aに、後述する硬化性樹脂組成物を塗布した後、乾燥する方法等が挙げられる。
【0017】
ここで、本発明の一態様において、硬化性樹脂層20の形成は、支持シートと硬化性樹脂層とを積層した積層構造を有する保護膜形成用積層体を用いて行うことが好ましい。
具体的には、工程(A)が、下記工程(A1)及び(A2)をこの順で含むことが好ましい。
(A1)前記バンプを備える半導体ウエハの前記バンプ形成面に、支持シートと硬化性樹脂層とが積層された積層構造を有する保護膜形成用積層体を、前記硬化性樹脂層を貼付面として貼付する工程
(A2)前記支持シートを前記保護膜形成用積層体から剥離して、前記バンプを備える半導体ウエハの前記バンプ形成面に、前記硬化性樹脂層を形成する工程
以下、工程(A1)及び工程(A2)について詳述する。
【0018】
(工程(A1))
工程(A1)において、保護膜形成用積層体を構成する支持シートは、硬化性樹脂層を支持できるシート状の部材であれば、特に限定されない。例えば、支持シートは、支持基材であってもよいし、支持基材の一方の面に剥離処理が施された剥離フィルムであってもよいし、支持基材と粘着剤層とを有する積層体であってもよい。
支持シートが剥離フィルムである場合、硬化性樹脂層は、支持基材の剥離処理面に形成される。
また、支持シートが支持基材と粘着剤層との積層体である場合、硬化性樹脂層は、当該支持シートの粘着剤層と貼り合わされる。
【0019】
ここで、本発明の一態様では、図3(A1)に示すように、支持シート30aが、第一支持基材31、第一緩衝層32、及び第一粘着剤層33がこの順で積層された積層構造を有することが好ましい。そして、保護膜形成用積層体30は、第一支持基材31、第一緩衝層32、第一粘着剤層33、及び硬化性樹脂層20がこの順で積層された積層構造を有することが好ましい。
保護膜形成用積層体30を、硬化性樹脂層20を貼り合せ面にしてバンプ付きウエハ10のバンプ形成面11aに圧着させると、保護膜形成用積層体30の硬化性樹脂層20、第一粘着剤層33、及び第一緩衝層32は、バンプ12により加圧される。そのため、圧着初期は、硬化性樹脂層20、第一粘着剤層33、及び第一緩衝層32が、バンプ12の形状に追随した凹状に変形する。そして、バンプ12からの加圧が持続すると、最終的にはバンプ12の頂部が硬化性樹脂層20を突き抜けて支持シート30aに接する。この際、バンプ12にかかる圧力が支持シート30aの第一粘着剤層33及び第一緩衝層32によって分散され、バンプ12へのダメージが抑制される。
但し、バンプ12は、必ずしも支持シート30a側に突出させずともよく、硬化性樹脂層20の内部に埋め込まれた状態であってもよい。このような状態であっても、後述する露出処理等によって、バンプ12の頂部を、保護膜40から露出させることができる。
【0020】
ここで、工程(A1)において用いられる、保護膜形成用積層体を構成する支持シートには、バンプに対する良好な埋め込み性と、工程(A2)における保護膜形成用積層体からの支持シートの易剥離性とが要求される。
本発明の一態様において、支持シート30aが有する第一緩衝層32は、バンプに対する良好な埋め込み性を確保し易くする観点から、厚さが100~500μmであることが好ましく、150~450μmであることがより好ましく、200~400μmであることが更に好ましい。
同様の観点から、支持シート30aが有する第一粘着剤層33は、厚さが5~50μmであることが好ましく、5~30μmであることがより好ましく、5~15μmであることが更に好ましい。
【0021】
また、本発明の一態様において、支持シート30aが有する第一緩衝層32は、工程(A2)における保護膜形成用積層体からの支持シートの易剥離性を確保し易くする観点から、常温(23℃)におけるせん断貯蔵弾性率G’(23℃)が200MPa以下であることが好ましく、180MPa以下であることがより好ましく、150MPa以下であることが更に好ましい。なお、第一緩衝層32のせん断貯蔵弾性率G’(23℃)は、第一支持基材31による硬化性樹脂層20の常温での保持性を十分に確保する観点から、通常80MPa以上である。
なお、本明細書において、常温(23℃)におけるせん断貯蔵弾性率G’(23℃)は、第一緩衝層32を形成する組成物と同一の組成物から形成した直径8mm×厚さ3mmの試験サンプルを作製し、粘弾性測定装置(Anton Paar社製、装置名「MCR300」)を用いて、試験開始温度:-20℃、試験終了温度:150℃、昇温速度:3℃/分、周波数:1Hzの条件で、ねじりせん断法によって、測定される値である。
【0022】
なお、工程(A1)において用いられる、保護膜形成用積層体を構成する支持シートには、上記のように、バンプに対する良好な埋め込み性と、工程(A2)における保護膜形成用積層体からの支持シートの易剥離性とが要求される一方で、バックグラインドテープに要求されるような、裏面研削時の昇温に対する被着体の固定性能(換言すれば、裏面研削時の昇温に対する粘着剤層の粘着力の維持性)は要求されない。また、裏面研削時のディンプル抑制を考慮した緩衝層の設計は要求されない。したがって、本発明の一態様において、支持シート30aが有する第一緩衝層32は、バンプに対する良好な埋め込み性と、工程(A2)における保護膜形成用積層体からの支持シートの易剥離性とを考慮して形成することができるため、一般的なバックグラインドテープと比較して、第一緩衝層32の設計自由度を向上させることができる利点を有する。
【0023】
(工程(A2))
工程(A2)では、支持シートを保護膜形成用積層体から剥離し、バンプ付きウエハのバンプ形成面に、硬化性樹脂層を形成する。例えば、図3(A2)に示すように、第一支持基材31、第一緩衝層32、及び第一粘着剤層33がこの順で積層された積層構造を有する支持シート30aを、硬化性樹脂層20から剥離し、保護膜形成用積層体30から分離する。これにより、バンプ付きウエハ10のバンプ形成面11aに、硬化性樹脂層20が形成される。硬化性樹脂層20のバンプ形成面11a側とは反対の表面は露出した状態である。
なお、本発明の一態様において、上記のように、支持シート30aが有する第一緩衝層32の常温(23℃)におけるせん断貯蔵弾性率G’(23℃)を200MPa以下とすることで、保護膜形成用積層体30から支持シート30aを常温で容易に剥離し得る。但し、保護膜形成用積層体30から支持シート30aを剥離する方法は、この方法には限定されない。例えば、第一粘着剤層33が、エネルギー線硬化型の粘着剤、加熱発泡型の粘着剤、又は水膨潤型の粘着剤から形成された粘着剤層である場合には、エネルギー線硬化、加熱発泡、又は水膨潤によって保護膜形成用積層体30から支持シート30aを剥離してもよい。
【0024】
上記工程(A)により、バンプ形成面11aに硬化性樹脂層20が形成されたバンプ付きウエハ10は、次工程(B)に供される。
【0025】
<工程(B)>
工程(B)では、バンプ付きウエハのバンプ形成面に形成された硬化性樹脂層を硬化させて、保護膜を形成する。例えば図2(B)に示すように、硬化性樹脂層20を硬化させて保護膜40を形成することで、バンプ付きウエハ10のバンプ形成面11a及びバンプネックが保護される。
硬化性樹脂層を硬化することにより形成される保護膜は、常温において、硬化性樹脂層よりも強固になる。そのため、保護膜を形成することによって、バンプネックが良好に保護される。
【0026】
硬化性樹脂層の硬化は、硬化性樹脂層に含まれている硬化性成分の種類に応じて、熱硬化及びエネルギー線の照射による硬化のいずれかにより行うことができる。
なお、本明細書において、「エネルギー線」とは、電磁波又は荷電粒子線の中でエネルギー量子を有するものを意味し、その例として、紫外線、電子線等が挙げられ、好ましくは紫外線である。
熱硬化を行う場合の条件としては、硬化温度が好ましくは90℃~200℃であり、硬化時間が好ましくは1時間~3時間である。
エネルギー線照射による硬化を行う場合の条件としては、使用するエネルギー線の種類により適宜設定される、例えば、紫外線を用いる場合、照度は好ましくは170mw/cm~250mw/cmであり、光量は好ましくは600mJ/cm~1500mJ/cmである。
なお、保護膜を形成するための硬化性樹脂層の詳細については後述する。
【0027】
ここで、本発明の一態様において、硬化性樹脂層を硬化させて保護膜を形成する過程において、熱硬化時の加熱によって硬化性樹脂層を流動させて保護膜の平坦性を向上させる観点から、硬化性樹脂層は、熱硬化性樹脂層であることが好ましい。また、硬化性樹脂層が熱硬化性樹脂層である場合、工程(A)において、バンプが硬化性樹脂層から完全に突き抜けることなく内部に埋め込まれた状態で硬化性樹脂層が形成された場合であっても、熱硬化時の加熱によって硬化性樹脂を流動させることで、バンプの頂部を保護膜40から露出させることもできる。かかる観点からも、硬化性樹脂層は、熱硬化性樹脂層であることが好ましい。
【0028】
工程(B)に供される、バンプ付きウエハを構成するウエハは、バッチ処理効率向上の観点から大口径化されている一方で、上記のように十分な厚みが確保されている。本発明の一態様では、半導体ウエハの厚みは、300μm以上とされている。そのため、硬化性樹脂層の硬化による収縮に伴うウエハの反りが抑制される。よって、以降の工程において、ウエハの反りにより生じる弊害が抑制される。
具体的には、ウエハキャリア、ウエハカセット、及びウエハボート等へのバンプ付きウエハの収納不良が抑制され、バンプ付きウエハの破損が抑えられる。また、バンプ付きウエハの搬送不良、さらにはバンプ付きウエハを個片化してチップにした後の当該チップの搬送不良を抑えることができる。また、ウエハの反りが抑制されることで、工程(D)における裏面研削を高精度に行うこともできる。
【0029】
上記工程(B)により、硬化性樹脂層20が硬化されてバンプ形成面11aに保護膜40が形成されたバンプ付きウエハ10は、次工程(C)に供される。
なお、本発明の半導体装置の製造方法では、硬化性樹脂層が熱硬化性樹脂層である場合、保護膜形成用積層体を構成する支持シートやバックグラインドテープが熱硬化性樹脂層を硬化させるための加熱処理の際に熱に晒されることがない。したがって、熱硬化性樹脂層を硬化する際の熱に対する耐熱性が当該支持シートやバックグラインドテープに要求されないため、当該支持シートやバックグラインドテープの設計自由度が大幅に向上する利点を有する。
【0030】
<工程(C)>
工程(C)では、保護膜の表面にバックグラインドテープを貼付する。
工程(C)において使用するバックグラインドテープは、特に限定されず、保護膜が形成されたバンプ付きウエハの裏面研削の際に用いられる一般的なバックグラインドテープを用いることができる。
ここで、本発明の一態様において、バックグラインドテープは、例えば、図2(C)に示すバックグラインドテープ50のように、第二支持基材51、第二緩衝層52、及び第二粘着剤層53がこの順で積層された積層構造を有することが好ましい。
バックグラインドテープ50を、第二粘着剤層53を貼り合せ面にして、バンプ付きウエハ10に形成された保護膜40の表面に圧着させると、バックグラインドテープ50の第二粘着剤層53及び第二緩衝層52は、バンプ12により加圧される。そのため、第二粘着剤層53及び第二緩衝層52が、バンプ12の形状に追随した凹状に変形し、バンプ12を埋め込んで保護する。
これにより、保護膜40が形成されたバンプ付きウエハ10がバックグラインドテープ50に固定され、裏面研削を良好に実施し得る。
【0031】
ここで、工程(C)において保護膜の表面に貼付されるバックグラインドテープには、バンプに対する良好な埋め込み性と、保護膜が形成されたバンプ付きウエハを裏面研削時に固定する固定性能とが要求される。
本発明の一態様において、バックグラインドテープ50が有する第二緩衝層52は、バンプに対する良好な埋め込み性を確保し易くする観点から、厚さが50~450μmであることが好ましく、100~400μmであることがより好ましく、150~350μmであることが更に好ましい。
同様の観点から、バックグラインドテープ50が有する第二粘着剤層53は、厚さが5~50μmであることが好ましく、5~30μmであることがより好ましく、5~15μmであることが更に好ましい。
【0032】
また、本発明の一態様において、バックグラインドテープ50が有する第二緩衝層52は、tanδのピーク値が1.2以上であることが好ましく、1.3以上であることがより好ましく、1.4以上であることが更に好ましい。また、tanδのピーク値は、通常5.0以下、好ましくは4.0以下である。
第二緩衝層52のtanδのピーク値が上記範囲にあることで、裏面研削時に生じる熱によって保護膜40の柔軟性が高まった場合であっても、バンプ付きウエハ10の動きを抑えることができる。裏面研削時にバンプ付きウエハ10が動くと、研削した面に凹凸が生じ易くなり、バンプ形成部位に対応した部位で凹部(ディンプル)が発生すると、当該凹部を起点としてクラックが生じる恐れがある。第二緩衝層52のtanδのピーク値が上記範囲にあることで、ディンプルの発生が抑えられるため、ディンプルを起点とするクラックの発生が抑制される。
なお、本明細書において、tanδのピーク値は、第二緩衝層52を形成する組成物と同一の組成物から形成した直径8mm×厚さ3mmの試験サンプルを作製し、粘弾性測定装置(Anton Paar社製、装置名「MCR300」)を用いて、試験開始温度:-20℃、試験終了温度:150℃、昇温速度:3℃/分、周波数:1Hzの条件で、ねじりせん断法によって、測定される値である。
【0033】
ここで、本発明の一態様において、保護膜40が形成されたバンプ付きウエハ10に対するバックグラインドテープ50の貼り付け方向と、工程(A1)におけるバンプ付きウエハ10への保護膜形成用積層体30の貼り付け方向とを異ならせることが好ましい。具体的には、工程(A1)におけるバンプ付きウエハ10への保護膜形成用積層体30の貼り付け方向に対して、保護膜40が形成されたバンプ付きウエハ10に対するバックグラインドテープ50の貼り付け方向を30°~90°ずらすことが好ましく、45°~90°ずらすことがより好ましく、60°~90°ずらすことが更に好ましく、90°ずらすことがより更に好ましい。
このように、保護膜40が形成されたバンプ付きウエハ10に対するバックグラインドテープ50の貼り付け方向を、工程(A1)におけるバンプ付きウエハ10への保護膜形成用積層体30の貼り付け方向に対して変更することで、バンプ付きウエハ10に保護膜形成用積層体30を圧着する際に加えられた力によって生じたバンプ付きウエハ10の微小な反りを、バンプ付きウエハ10にバックグラインドテープ50を圧着する際に加えられる力によって相殺することができ、バンプ付きウエハ10の反りを更に抑制し得る。
【0034】
<工程(D)>
工程(D)では、バックグラインドテープを貼付した状態で、バンプ付きウエハのバンプ形成面とは反対面を研削する。つまり、バンプ付きウエハ10を裏面研削し、ウエハ11を薄化する。
バンプ付きウエハ10の裏面研削は、例えば、ダイシングテープが貼付されたバンプ付きウエハ10の表面側をチャックテーブルなどの固定テーブル上に固定し、ウエハ11の裏面11bをグラインダー等により研削することで行う。
本発明において、バンプ付きウエハ10の研削後の厚みは、250μm以下とすることができる。このように、本発明では、ウエハ11の厚みを薄くした場合であっても、ウエハ11の反りは抑制されている。そのため、ウエハキャリア、ウエハカセット、及びウエハボート等へのバンプ付きウエハ10の収納不良が抑制され、バンプ付きウエハ10の破損が抑えられる。また、バンプ付きウエハ10の搬送不良、さらにはバンプ付きウエハを個片化してチップにした後の当該チップの搬送不良を抑えることができる。
【0035】
<工程(E)>
工程(E)では、前記研削後の前記半導体ウエハから前記バックグラインドテープを剥離する。
バックグラインドテープ50は常温で剥がしてもよいが、本発明の一態様では、バックグラインドテープ50を加熱して、バックグラインドテープ50が有する第二粘着剤層53の流動性を高めることによって粘着力を低下させ、バックグラインドテープ50を剥離するようにしてもよい。但し、バックグラインドテープ50の剥離方法は、これらの方法には限定されない。例えば、第二粘着剤層53が、エネルギー線硬化型の粘着剤、加熱発泡型の粘着剤、又は水膨潤型の粘着剤から形成された粘着剤層である場合には、エネルギー線硬化、加熱発泡、又は水膨潤によってバックグラインドテープ50を剥離してもよい。
【0036】
<分割起点の形成>
本発明の一態様では、前記工程(A)の前、前記工程(A)と前記工程(B)との間、前記工程(B)と前記工程(C)との間、及び前記工程(C)と前記工程(D)との間のいずれかにおいて、バンプ付き半導体ウエハを個片化するための分割起点を形成する工程を有することが好ましい。
バンプ付き半導体ウエハを個片化するための分割起点を形成する方法としては、例えば、先ダイシング法及びステルスダイシング(登録商標)法等が挙げられる。
なお、個片化するための分割起点を形成済みであるバンプ付き半導体ウエハに対し、本発明の一態様の半導体装置の製造方法を適用してもよく、この場合には、分割起点を形成する工程は省略してもよい。
【0037】
(先ダイシング法)
先ダイシング法は、例えば図4に示すように、分割予定のラインに沿ってバンプ付きウエハ10のバンプ形成面11aに溝61を形成し、バンプ付きウエハ10の裏面11bを研削して少なくとも溝61に到達するまで、バンプ付きウエハ10の薄化処理を行い、バンプ付きウエハ10を個片体CPに個片化する方法である。
先ダイシング法において、バンプ付きウエハ10を個片化するための分割起点は溝61である。
ここで、本発明の一態様において、溝61の形成は、工程(B)の後、すなわち、バンプ付きウエハ10のバンプ形成面11aに保護膜40を形成した後に行うことが好ましい。この場合、溝61は、図4に示すように、保護膜40の表面からバンプ付きウエハ10のウエハ11の内部に向けて形成することが好ましい。これにより、保護膜40が形成されたバンプ付きウエハ10を、保護膜が付いたままの状態で容易に個片化することができる。
なお、バンプ付きウエハ10のバンプ形成面11aからウエハ11の内部に向けて溝61を形成した後、バンプ付きウエハ10のバンプ形成面11aに保護膜40を形成した場合も、保護膜40が形成されたバンプ付きウエハ10を、保護膜40が付いたままの状態で個片化することは可能である。すなわち、バンプ付きウエハ10の裏面11bを研削して少なくとも溝61に到達するまで、バンプ付きウエハ10の薄化処理を行った後、加圧力等の外力を付与することで、溝61を分割起点として、バンプ付きウエハ10と共に保護膜40も割断し、保護膜40が形成されたバンプ付きウエハ10を、保護膜40が付いたままの状態で個片化することができる。
【0038】
(ステルスダイシング法)
ステルスダイシング法とは、レーザー光によりバンプ付きウエハのウエハ内部に改質領域を形成し、当該改質領域を分割起点としてバンプ付きウエハを個片化する方法である。
具体的には、図5に示すように、バンプ付きウエハ10のウエハ11に、当該ウエハの内部に集光点を合わせてレーザー光を照射することにより、多光子吸収による改質領域71を分割起点として形成する。そして、この改質領域71によって、バンプ付きウエハ10の分割予定ラインに沿って前記レーザー光入射面から所定距離内側に切断起点領域を形成する。そして、バンプ付きウエハ10を裏面研削して薄化した後、研削砥石等の加工圧力で割断して、個々のチップに分割し、個片化する。
工程(A)の前に改質領域71を形成する場合、レーザー光入射面は、バンプ付きウエハのバンプ形成面であっても裏面であってもよいが、バンプ付きウエハのバンプ形成面に形成されている回路等への影響を抑える観点から、レーザー光入射面は、バンプ付きウエハの裏面であることが好ましい。
また、工程(A)の後は、バンプ付きウエハ10のバンプ形成面11aには、保護膜40が形成されている。また、バックグラインドテープ50等が保護膜40の表面に貼付されていることもある。したがって、工程(A)の後に改質領域71を形成する場合にも、レーザー光入射面は、バンプ付きウエハの裏面であることが好ましい。
【0039】
<露出処理>
本発明の一態様において、前記工程(B)と前記工程(C)の間、及び前記工程(E)の後のいずれかにおいて、前記バンプの頂部を覆う前記保護膜又は前記バンプの頂部の一部に付着した前記保護膜を除去して、前記バンプの頂部を露出させる露出処理を行うことが好ましい。
バンプの頂部を露出させる露出処理としては、例えばウェットエッチング処理やドライエッチング処理等のエッチング処理が挙げられる。
ここで、ドライエッチング処理としては、例えばプラズマエッチング処理等が挙げられる。プラズマエッチング処理は高温条件下で実施される場合もあるが、前記工程(B)と前記工程(C)の間、及び前記工程(E)のいずれかにおいて、プラズマエッチング処理を高温条件下で実施する場合、硬化性樹脂層は既に硬化されて保護膜が形成されているため、プラズマエッチング処理の高温条件によって硬化性樹脂層の硬化収縮は起こらず、したがって、硬化性樹脂層の硬化収縮に伴うウエハの反りは生じない。
なお、露出処理は、保護膜の表面にバンプの頂部が露出していない場合、バンプの頂部が露出するまで保護膜を後退させる目的で実施してもよい。
【0040】
次に、本発明の半導体装置の製造方法において用いられる保護膜形成用積層体及びバックグラインドテープについて、これらを構成する各部材の詳細を説明する。
【0041】
[硬化性樹脂層]
本発明の一態様の半導体装置の製造方法では、保護膜形成用積層体が用いられる。当該保護膜形成用積層体は、硬化性樹脂層を有する。
硬化性樹脂層は、加熱処理により硬化反応が進行する熱硬化性樹脂層であってもよいし、エネルギー線照射により硬化反応が進行するエネルギー線硬化性樹脂層であってもよい。
熱硬化性樹脂層及びエネルギー線硬化性樹脂層は、特に限定されず、公知の熱硬化性樹脂層及びエネルギー線硬化性樹脂層を適宜採用することができる。
【0042】
ここで、上述したように、硬化時の加熱処理によって硬化性樹脂層を流動させて保護膜の平坦性を向上させる観点等から、本発明の一態様において、硬化性樹脂層は、熱硬化性樹脂層であることが好ましい。
以下、本発明の一態様で用いられる、熱硬化性樹脂層について詳述する。
【0043】
<熱硬化性樹脂層>
本発明の一態様で用いられる熱硬化性樹脂層は、例えば、重合体成分(XA)及び熱硬化性成分(XB)を含有する熱硬化性樹脂層形成用組成物(以下、単に「樹脂層形成用組成物(X)」ともいう)から形成される。
【0044】
(重合体成分(XA))
重合体成分(XA)は、熱硬化性樹脂層に造膜性や可撓性等を付与するための重合体化合物であり、重合性化合物が重合反応して形成されたとみなせる成分である。なお、本明細書において重合反応には、重縮合反応も含まれる。
樹脂層形成用組成物(X)及び熱硬化性樹脂層が含有する重合体成分(XA)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよい。2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0045】
重合体成分(XA)としては、例えば、ポリビニルアセタール、アクリル系樹脂、ポリエステル、ウレタン系樹脂、アクリルウレタン樹脂、シリコーン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂(例えば、ゴム系樹脂等)、フェノキシ樹脂、熱可塑性ポリイミド等が挙げられる。なお、熱硬化させる過程の温度範囲である、90℃~200℃におけるせん断粘度の調整が容易であること、及び、熱硬化性樹脂層をバンプ付きウエハのバンプ形成面に貼付し、熱硬化させたときに、半導体ウエハの表面のハジキを抑制する効果が高くなってハジキによる保護膜形成不良を抑制しやすいことから、これらの中でもポリビニルアセタール、アクリル系樹脂が好ましい。
以下、重合体成分(XA)として好ましい、ポリビニルアセタール及びアクリル系樹脂を例に挙げて説明する。
【0046】
なお、本明細書において、「90℃~200℃におけるせん断粘度の調整が容易」の意味は、90℃~200℃(好ましくは90℃~130℃)において硬化前の熱硬化性樹脂層を10℃/minで昇温させたときの最低せん断粘度を、好ましくは500Pa・s以上に調整できること、より好ましくは1,000Pa・s以上に調整できること、更に好ましくは2,000Pa・s以上に調整できることを意味している。90℃~200℃(好ましくは90℃~130℃)における最低せん断粘度を上記範囲に調整することで、ハジキによる保護膜形成不良を抑制しやすい。
なお、本明細書において、硬化性樹脂層の90℃~200℃(好ましくは90℃~130℃)における最低せん断粘度は、実施例に記載の方法より測定される。
【0047】
(ポリビニルアセタール)
重合体成分(XA)として用いるポリビニルアセタールとしては、特に限定されず、例えば、公知のポリビニルアセタールを用いることができる。
ここでポリビニルアセタールの中でも、例えば、ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラール等が挙げられ、ポリビニルブチラールがより好ましい。
ポリビニルブチラールとしては、下記式(i-1)、(i-2)、及び(i-3)で表される構成単位を有するものが、熱硬化させる過程の温度範囲である、90℃~200℃におけるせん断粘度の調整が容易であること、及び、熱硬化性樹脂層をバンプ付きウエハのバンプ形成面に貼付し、熱硬化させたときに、半導体ウエハの表面のハジキを抑制する効果がより高くなることから好ましい。
【0048】
【化1】

上記式(i-1)、(i-2)、及び(i-3)中、p、q、及びrは、それぞれの構成単位の含有割合(モル%)である。
【0049】
ポリビニルアセタールの重量平均分子量(Mw)は、5,000~200,000であることが好ましく、8,000~100,000であることがより好ましく、9,000~80,000であることが更に好ましく、10,000~50,000であることが特に好ましい。ポリビニルアセタールの重量平均分子量がこのような範囲であることで、90℃~200℃におけるせん断粘度の調整がより容易となり、熱硬化性樹脂層をバンプ付きウエハのバンプ形成面に貼付し、熱硬化させたときに、半導体ウエハの表面のハジキを抑制する効果がより高くなる。また、バンプの上部(バンプの頂部とその近傍領域)での熱硬化性樹脂層の残存を抑制する効果がより高くなる。
本明細書において、重合体(樹脂)の重量平均分子量は、テトラヒドロフラン(THF)を溶媒とするゲル・パーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、標準ポリスチレン換算値として測定することができる。
【0050】
上記式(i-1)で表されるブチラール基の構成単位の含有割合p(ブチラール化度)は、重合体成分(XA)の全構成単位基準で、40~90モル%が好ましく、50~85モル%がより好ましく、60~76モル%が特に好ましい。
【0051】
上記式(i-2)で表されるアセチル基を有する構成単位の含有割合qは、重合体成分(XA)の全構成単位基準で、0.1~9モル%が好ましく、0.5~8モル%がより好ましく、1~7モル%が特に好ましい。
【0052】
上記式(i-3)で表される水酸基を有する構成単位の含有割合rは、重合体成分(XA)の全構成単位基準で、10~60モル%が好ましく、10~50モル%がより好ましく、20~40モル%が特に好ましい。
【0053】
ポリビニルアセタールのガラス転移温度(Tg)は、40~80℃であることが好ましく、50~70℃であることがより好ましい。ポリビニルアセタールのTgがこのような範囲であることで、熱硬化性樹脂層をバンプ付きウエハのバンプ形成面に貼付したときに、バンプの前記上部での熱硬化性樹脂層の残存を抑制する効果がより高くなり、また、熱硬化性樹脂層を熱硬化することで形成される保護膜の硬さを十分なものとできる。
なお、本明細書において、重合体(樹脂)のガラス転移温度(Tg)は、後述する実施例に記載の方法により測定される値である。
【0054】
ポリビニルブチラールを構成する上記3種の構成単位の含有比率は、所望の物性に応じて任意に調整してもよい。
また、ポリビニルブチラールは、上記3種の構成単位以外の構成単位を有していてもよいが、上記3種の構成単位の含有量は、ポリビニルブチラールの全量基準で、好ましくは80~100モル%、より好ましくは90~100モル%、更に好ましくは100モル%である。
【0055】
(アクリル系樹脂)
重合体成分(XA)における前記アクリル系樹脂としては、特に限定されず、例えば、公知のアクリル重合体を用いることができる。
アクリル系樹脂の重量平均分子量(Mw)は、10,000~2,000,000であることが好ましく、100,000~1,500,000であることがより好ましい。アクリル系樹脂の重量平均分子量がこの範囲であることにより、90℃~200℃におけるせん断粘度の調整がより容易となり、熱硬化性樹脂層をバンプ付きウエハのバンプ形成面に貼付し、熱硬化させたときに、半導体ウエハの表面のハジキを抑制する効果がより高くなる。また、形状安定性に優れ、被着体の凹凸面へ熱硬化性樹脂層が追従し易くなり、被着体と熱硬化性樹脂層との間でボイド等の発生がより抑制される。
【0056】
アクリル系樹脂のガラス転移温度(Tg)は、-50~70℃であることが好ましく、-30~50℃であることがより好ましい。アクリル系樹脂のTgが前記下限値以上であることで、熱硬化性樹脂層と支持シートとの接着力が抑制されて、支持シートの剥離性が向上する。また、アクリル系樹脂のTgが前記上限値以下であることで、熱硬化性樹脂層の被着体との接着力が向上する。
【0057】
アクリル系樹脂としては、例えば、1種又は2種以上の(メタ)アクリル酸エステルの重合体;(メタ)アクリル酸エステル以外に、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、酢酸ビニル、アクリロニトリル、スチレン及びN-メチロールアクリルアミド等から選択される1種又は2種以上のモノマーが共重合してなる共重合体等が挙げられる。
なお、本明細書において、「(メタ)アクリル酸」とは、「アクリル酸」及び「メタクリル酸」の両方を包含する概念とする。(メタ)アクリル酸と類似の用語につても同様であり、例えば、「(メタ)アクリレート」とは、「アクリレート」及び「メタクリレート」の両方を包含する概念であり、「(メタ)アクリロイル基」とは、「アクリロイル基」及び「メタクリロイル基」の両方を包含する概念である。
【0058】
アクリル系樹脂を構成する前記(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸sec-ブチル、(メタ)アクリル酸tert-ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸n-オクチル、(メタ)アクリル酸n-ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル((メタ)アクリル酸ラウリル)、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル((メタ)アクリル酸ミリスチル)、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル((メタ)アクリル酸パルミチル)、(メタ)ア
クリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル((メタ)アクリル酸ステアリル)等の、アルキルエステルを構成するアルキル基が、炭素数が1~18の鎖状構造である(メタ)アクリル酸アルキルエステル;
(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル等の(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル;
(メタ)アクリル酸ベンジル等の(メタ)アクリル酸アラルキルエステル;
(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニルエステル等の(メタ)アクリル酸シクロアルケニルエステル;
(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニルオキシエチルエステル等の(メタ)アクリル酸シクロアルケニルオキシアルキルエステル;
(メタ)アクリル酸イミド;
(メタ)アクリル酸グリシジル等のグリシジル基含有(メタ)アクリル酸エステル; (メタ)アクリル酸ヒドロキシメチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル等の水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル;
(メタ)アクリル酸N-メチルアミノエチル等の置換アミノ基含有(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。ここで、「置換アミノ基」とは、アミノ基の1個又は2個の水素原子が水素原子以外の基で置換されてなる基を意味する。
【0059】
アクリル系樹脂を構成するモノマーは、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0060】
アクリル系樹脂は、ビニル基、(メタ)アクリロイル基、アミノ基、水酸基、カルボキシ基、イソシアネート基等の他の化合物と結合可能な官能基を有していてもよい。アクリル系樹脂の前記官能基は、後述する架橋剤(XF)を介して他の化合物と結合してもよいし、架橋剤(XF)を介さずに他の化合物と直接結合していてもよい。アクリル系樹脂が前記官能基により他の化合物と結合することで、保護膜形成用積層体を用いて形成される保護膜を有するパッケージの信頼性が向上する傾向がある。
【0061】
本発明の一態様においては、例えば、重合体成分(XA)として、ポリビニルアセタール及びアクリル系樹脂以外の熱可塑性樹脂(以下、単に「熱可塑性樹脂」と略記することがある)を、ポリビニルアセタール及びアクリル系樹脂を用いずに単独で用いてもよいし、ポリビニルアセタール又はアクリル系樹脂と併用してもよい。前記熱可塑性樹脂を用いることで、熱硬化性樹脂層の支持シートからの剥離性が向上したり、被着体の凹凸面へ熱硬化性樹脂層が追従したり易くなり、被着体と熱硬化性樹脂層との間でボイド等の発生がより抑制されることがある。
【0062】
前記熱可塑性樹脂の重量平均分子量は1,000~100,000であることが好ましく、3,000~80,000であることがより好ましい。
【0063】
前記熱可塑性樹脂のガラス転移温度(Tg)は、-30~150℃であることが好ましく、-20~120℃であることがより好ましい。
【0064】
前記熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエステル、ポリウレタン、フェノキシ樹脂、ポリブテン、ポリブタジエン、ポリスチレン等が挙げられる。
【0065】
樹脂層形成用組成物(X)及び熱硬化性樹脂層が含有する前記熱可塑性樹脂は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0066】
樹脂層形成用組成物(X)において、溶媒以外の全ての成分の総含有量に対する重合体成分(XA)の含有量の割合(すなわち、熱硬化性樹脂層の重合体成分(XA)の含有量)は、重合体成分(XA)の種類によらず、5~85質量%であることが好ましく、5~80質量%であることがより好ましく、例えば、5~70質量%、5~60質量%、5~50質量%、5~40質量%、及び5~30質量%のいずれかであってもよい。ただし、樹脂層形成用組成物(X)におけるこれら含有量は一例である。
【0067】
ここで、重合体成分(XA)は、熱硬化性成分(XB)にも該当する場合がある。本発明の一態様においては、樹脂層形成用組成物(X)が、このような重合体成分(XA)及び熱硬化性成分(XB)の両方に該当する成分を含有する場合、樹脂層形成用組成物(X)は、重合体成分(XA)及び熱硬化性成分(XB)を含有するとみなす。
【0068】
(熱硬化性成分(XB))
熱硬化性成分(XB)は、熱硬化性樹脂層を加熱処理により硬化させて、硬質の保護膜を形成するための成分である。
樹脂層形成用組成物(X)及び熱硬化性樹脂層が含有する熱硬化性成分(XB)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0069】
熱硬化性成分(XB)としては、例えば、エポキシ系熱硬化性樹脂、熱硬化性ポリイミド、ポリウレタン、不飽和ポリエステル、シリコーン樹脂等が挙げられ、これらの中でもエポキシ系熱硬化性樹脂が好ましい。
【0070】
(エポキシ系熱硬化性樹脂)
エポキシ系熱硬化性樹脂は、エポキシ樹脂(XB1)及び熱硬化剤(XB2)からなる。
樹脂層形成用組成物及び熱硬化性樹脂層が含有するエポキシ系熱硬化性樹脂は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0071】
エポキシ樹脂(XB1)としては、特に限定されず、例えば、公知のエポキシ樹脂を用いることができる。例えば、多官能系エポキシ樹脂、ビフェニル化合物、ビスフェノールAジグリシジルエーテル及びその水添物、オルソクレゾールノボラックエポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェニレン骨格型エポキシ樹脂等、2官能以上のエポキシ化合物が挙げられる。
【0072】
エポキシ樹脂(XB1)としては、不飽和炭化水素基を有するエポキシ樹脂を用いてもよい。不飽和炭化水素基を有するエポキシ樹脂は、不飽和炭化水素基を有しないエポキシ樹脂よりもアクリル系樹脂との相溶性が高い。そのため、不飽和炭化水素基を有するエポキシ樹脂を用いることで、保護膜形成用積層体を用いて形成される保護膜を有するパッケージの信頼性が向上する。
【0073】
不飽和炭化水素基を有するエポキシ樹脂としては、例えば、多官能系エポキシ樹脂のエポキシ基の一部が不飽和炭化水素基を有する基に変換されてなる化合物が挙げられる。このような化合物は、例えば、エポキシ基へ(メタ)アクリル酸又はその誘導体を付加反応させることにより得られる。
また、不飽和炭化水素基を有するエポキシ樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂を構成する芳香環等に、不飽和炭化水素基を有する基が直接結合した化合物等が挙げられる。
不飽和炭化水素基は、重合性を有する不飽和基であり、その具体的な例としては、エテニル基(ビニル基)、2-プロペニル基(アリル基)、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリルアミド基等が挙げられ、アクリロイル基が好ましい。
【0074】
エポキシ樹脂(XB1)の重量平均分子量は、15,000以下であることが好ましく、10,000以下であることがより好ましく、5,000以下であることが特に好ましい。エポキシ樹脂(XB1)の重量平均分子量が前記上限値以下であることで、90℃~200℃におけるせん断粘度の調整がより容易となり、熱硬化性樹脂層をバンプ付きウエハのバンプ形成面に貼付し、熱硬化させたときに、半導体ウエハの表面のハジキを抑制する効果がより高くなる。また、バンプの頭頂部において、保護膜残留物の残存を抑制する効果がより高くなる。
【0075】
エポキシ樹脂(XB1)の重量平均分子量の下限値は、特に限定されない。ただし、熱硬化性樹脂層の硬化性、並びに保護膜の強度及び耐熱性がより向上する点では、エポキシ樹脂(XB1)の重量平均分子量は、300以上であることが好ましく、500以上であることがより好ましい。
【0076】
エポキシ樹脂(XB1)の重量平均分子量は、上述の好ましい下限値及び上限値を任意に組み合わせて設定される範囲内となるように、適宜調節できる。
例えば、本発明の一態様において、エポキシ樹脂(XB1)の重量平均分子量は、好ましくは300~15,000、より好ましくは300~10,000、特に好ましくは300~3,000である。また、一実施形態において、エポキシ樹脂(XB1)の重量平均分子量は、好ましくは500~15,000、より好ましくは500~10,000、特に好ましくは500~3,000である。ただし、これらは、エポキシ樹脂(XB1)の好ましい重量平均分子量の一例である。
【0077】
エポキシ樹脂(XB1)のエポキシ当量は、100~1,000g/eqであることが好ましく、130~800g/eqであることがより好ましい。
なお、本明細書において、「エポキシ当量」とは、1グラム当量のエポキシ基を含むエポキシ化合物のグラム数(g/eq)を意味し、JIS K 7236:2009に準拠して測定される値である。
【0078】
エポキシ樹脂(XB1)は、室温で液状であるもの(本明細書においては、単に「液状のエポキシ樹脂(XB1)」と称することがある)が好ましい。室温で液状のエポキシを使用すると、せん断粘度を調整しやすい。また、被着体の凹凸面へ熱硬化性樹脂層が追従し易くなり、被着体と熱硬化性樹脂層との間でボイド等の発生がより抑制される。なお、ここでいう「室温で液状」とは、「25℃で液状」であることを意味し、以降の説明においても同様である。
【0079】
エポキシ樹脂(XB1)は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよく、2種以上を併用する場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0080】
樹脂層形成用組成物(X)及び熱硬化性樹脂層が含有する、エポキシ樹脂(XB1)のうち、室温で液状のエポキシ樹脂(XB1)の割合は、40質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがより好ましく、55質量%以上であることが特に好ましく、例えば、60質量%以上、70質量%以上、80質量%以上及び90質量%以上のいずれかであってもよい。前記割合が前記下限値以上であることで、硬化前の熱硬化性樹脂フィルムを10℃/minで昇温させたとき、90℃~200℃におけるせん断粘度の最小値を500Pa・s以上に容易に調整可能となり、熱硬化性樹脂層をバンプ付きウエハのバンプ形成面に貼付し、熱硬化させたときに、半導体ウエハの表面のハジキを抑制する効果がより高くなる。また、バンプの頭頂部において、保護膜残留物の残存を抑制する効果がより高くなる。
前記割合の上限値は特に限定されず、前記割合は100質量%以下であればよい。
【0081】
熱硬化剤(XB2)は、エポキシ樹脂(XB1)に対する硬化剤として機能する。
熱硬化剤(XB2)としては、例えば、1分子中にエポキシ基と反応し得る官能基を2個以上有する化合物が挙げられる。前記官能基としては、例えば、フェノール性水酸基、アルコール性水酸基、アミノ基、カルボキシ基、酸基が無水物化された基等が挙げられ、フェノール性水酸基、アミノ基、又は酸基が無水物化された基であることが好ましく、フェノール性水酸基又はアミノ基であることがより好ましい。
【0082】
熱硬化剤(XB2)のうち、フェノール性水酸基を有するフェノール系硬化剤としては、例えば、多官能フェノール樹脂、ビフェノール、ノボラック型フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂、アラルキル型フェノール樹脂等が挙げられる。
熱硬化剤(XB2)のうち、アミノ基を有するアミン系硬化剤としては、例えば、ジシアンジアミド等が挙げられる。
【0083】
熱硬化剤(XB2)は、不飽和炭化水素基を有するものでもよい。
不飽和炭化水素基を有する熱硬化剤(XB2)としては、例えば、フェノール樹脂の水酸基の一部が、不飽和炭化水素基を有する基で置換されてなる化合物、フェノール樹脂の芳香環に、不飽和炭化水素基を有する基が直接結合してなる化合物等が挙げられる。
熱硬化剤(XB2)における前記不飽和炭化水素基は、上述の不飽和炭化水素基を有するエポキシ樹脂における不飽和炭化水素基と同様のものである。
【0084】
熱硬化剤(XB2)としてフェノール系硬化剤を用いる場合には、熱硬化性樹脂層の支持シートからの剥離性が向上する点から、熱硬化剤(XB2)は軟化点又はガラス転移温度が高いものが好ましい。
【0085】
熱硬化剤(XB2)のうち、例えば、多官能フェノール樹脂、ノボラック型フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂、アラルキル型フェノール樹脂等の樹脂成分の数平均分子量は、300~30,000であることが好ましく、400~10,000であることがより好ましく、500~3,000であることが特に好ましい。
熱硬化剤(XB2)のうち、例えば、ビフェノール、ジシアンジアミド等の非樹脂成分の分子量は、特に限定されないが、例えば、60~500であることが好ましい。
【0086】
熱硬化剤(XB2)は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよく、2種以上を併用する場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0087】
樹脂膜形成用組成物(X)及び熱硬化性樹脂層において、熱硬化剤(XB2)の含有量は、エポキシ樹脂(XB1)の含有量100質量部に対して、0.1~500質量部であることが好ましく、1~200質量部であることがより好ましく、例えば、1~150質量部、1~100質量部、1~75質量部、1~50質量部、及び1~30質量部のいずれかであってもよい。熱硬化剤(XB2)の前記含有量が前記下限値以上であることで、熱硬化性樹脂層の硬化がより進行し易くなる。また、熱硬化剤(XB2)の前記含有量が前記上限値以下であることで、熱硬化性樹脂層の吸湿率が低減されて、保護膜形成用積層体を用いて形成された保護膜を有するパッケージの信頼性がより向上する。
【0088】
樹脂膜形成用組成物(X)及び熱硬化性樹脂層において、熱硬化性成分(XB)の含有量(例えば、エポキシ樹脂(XB1)及び熱硬化剤(XB2)の総含有量)は、重合体成分(XA)の含有量100質量部に対して、50~1,000質量部であることが好ましく、60~950質量部であることがより好ましく、70~900質量部であることが特に好ましい。熱硬化性成分(XB)の前記含有量がこのような範囲であることで、熱硬化性樹脂層と支持シートとの接着力が抑制されて、支持シートの剥離性が向上する。
【0089】
(硬化促進剤(XC))
樹脂層形成用組成物(X)及び熱硬化性樹脂層は、硬化促進剤(XC)を含有していてもよい。硬化促進剤(XC)は、熱硬化性樹脂層の硬化速度を調整するための成分である。
好ましい硬化促進剤(XC)としては、例えば、トリエチレンジアミン、ベンジルジメチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール等の第3級アミン;2-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール等のイミダゾール類(1個以上の水素原子が水素原子以外の基で置換されたイミダゾール);トリブチルホスフィン、ジフェニルホスフィン、トリフェニルホスフィン等の有機ホスフィン類(1個以上の水素原子が有機基で置換されたホスフィン);テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、トリフェニルホスフィンテトラフェニルボレート等のテトラフェニルボロン塩等が挙げられる。
【0090】
樹脂層形成用組成物(X)及び熱硬化性樹脂層が含有する硬化促進剤(XC)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0091】
硬化促進剤(XC)を用いる場合、樹脂層形成用組成物(X)及び熱硬化性樹脂層において、硬化促進剤(XC)の含有量は、熱硬化性成分(XB)の含有量100質量部に対して、0.01~10質量部であることが好ましく、0.1~5質量部であることがより好ましい。硬化促進剤(XC)の前記含有量が前記下限値以上であることで、硬化促進剤(XC)を用いたことによる効果がより顕著に得られる。また、硬化促進剤(XC)の含有量が前記上限値以下であることで、例えば、高極性の硬化促進剤(XC)が、高温・高湿度条件下で熱硬化性樹脂層中において被着体との接着界面側に移動して偏析することを抑制する効果が高くなり、保護膜形成用積層体を用いて形成された保護膜を有するパッケージの信頼性がより向上する。
【0092】
(充填材(XD))
樹脂層形成用組成物(X)及び熱硬化性樹脂層は、充填材(XD)を含有していてもよい。熱硬化性樹脂層が充填材(XD)を含有することにより、熱硬化性樹脂層を硬化して得られた保護膜は、熱膨張係数の調整が容易となる。そして、この熱膨張係数を保護膜の形成対象物に対して最適化することで、保護膜形成用積層体を用いて形成された保護膜を有するパッケージの信頼性がより向上する。また、熱硬化性樹脂層が充填材(XD)を含有することにより、保護膜の吸湿率を低減したり、放熱性を向上させたりすることもできる。
【0093】
充填材(XD)は、有機充填材及び無機充填材のいずれでもよいが、無機充填材であることが好ましい。
好ましい無機充填材としては、例えば、シリカ、アルミナ、タルク、炭酸カルシウム、チタンホワイト、ベンガラ、炭化ケイ素、窒化ホウ素等の粉末;これら無機充填材を球形化したビーズ;これら無機充填材の表面改質品;これら無機充填材の単結晶繊維;ガラス繊維等が挙げられる。
これらの中でも、無機充填材は、シリカ又はアルミナであることが好ましい。
【0094】
樹脂層形成用組成物(X)及び熱硬化性樹脂層が含有する充填材(XD)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0095】
充填材(XD)の平均粒径は、1μm以下であることが好ましく、0.5μm以下であることがより好ましく、0.1μm以下であることが特に好ましい。充填材(XD)の平均粒径が前記上限値以下であることで、90℃~200℃におけるせん断粘度の調整がより容易となり、熱硬化性樹脂層をバンプ付きウエハのバンプ形成面に貼付し、熱硬化させたときに、半導体ウエハの表面のハジキを抑制する効果がより高くなる。また、バンプの頭頂部において、保護膜残留物の残存を抑制する効果がより高くなる。
なお、本明細書において「平均粒子径」とは、特に断りのない限り、レーザー回折散乱法によって求められた粒度分布曲線における、積算値50%での粒子径(D50)の値を意味する。
【0096】
充填材(XD)の平均粒径の下限値は、特に限定されない。例えば、充填材(XD)の平均粒径は、充填材(XD)の入手がより容易である点では、0.01μm以上であることが好ましい。
【0097】
充填材(XD)を用いる場合、樹脂層形成用組成物(X)において、溶媒以外の全ての成分(以下、「有効成分」ともいう)の総含有量に対する充填材(XD)の含有量の割合(すなわち、熱硬化性樹脂層の充填材(XD)の含有量)は、3~60質量%であることが好ましく、3~55質量%であることがより好ましい。充填材(XD)の含有量がこのような範囲であることで、90℃~200℃におけるせん断粘度の調整がより容易となり、熱硬化性樹脂層をバンプ付きウエハのバンプ形成面に貼付し、熱硬化させたときに、半導体ウエハの表面のハジキを抑制することができる。また、バンプの頭頂部において、保護膜残留物の残存を抑制する効果がより高くなるとともに、上記の熱膨張係数の調整がより容易となる。
【0098】
(カップリング剤(XE))
樹脂層形成用組成物(X)及び熱硬化性樹脂層は、カップリング剤(XE)を含有していてもよい。カップリング剤(XE)として、無機化合物又は有機化合物と反応可能な官能基を有するものを用いることにより、熱硬化性樹脂層の被着体に対する接着性及び密着性を向上させることができる。また、カップリング剤(XE)を用いることで、熱硬化性樹脂層を硬化して得られた保護膜は、耐熱性を損なうことなく、耐水性が向上する。
【0099】
カップリング剤(XE)は、重合体成分(XA)、熱硬化性成分(XB)等が有する官能基と反応可能な官能基を有する化合物であることが好ましく、シランカップリング剤であることがより好ましい。
好ましい前記シランカップリング剤としては、例えば、3-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシジルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシジルオキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシジルオキシメチルジエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-(2-アミノエチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、3-(2-アミノエチルアミノ)プロピルメチルジエトキシシラン、3-(フェニルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、3-アニリノプロピルトリメトキシシラン、3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルファン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリ
アセトキシシラン、イミダゾールシラン等が挙げられる。
【0100】
樹脂層形成用組成物(X)及び熱硬化性樹脂層が含有するカップリング剤(XE)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0101】
カップリング剤(XE)を用いる場合、樹脂層形成用組成物(X)及び熱硬化性樹脂層において、カップリング剤(XE)の含有量は、重合体成分(XA)及び熱硬化性成分(XB)の総含有量100質量部に対して、0.03~20質量部であることが好ましく、0.05~10質量部であることがより好ましく、0.1~5質量部であることが特に好ましい。カップリング剤(XE)の前記含有量が前記下限値以上であることで、充填材(XD)の樹脂への分散性の向上や、熱硬化性樹脂層の被着体との接着性の向上など、カップリング剤(XE)を用いたことによる効果がより顕著に得られる。また、カップリング剤(XE)の前記含有量が前記上限値以下であることで、アウトガスの発生がより抑制される。
【0102】
(架橋剤(XF))
重合体成分(XA)として、上述のアクリル系樹脂等の、他の化合物と結合可能なビニル基、(メタ)アクリロイル基、アミノ基、水酸基、カルボキシ基、イソシアネート基等の官能基を有するものを用いる場合、樹脂層形成用組成物(X)及び熱硬化性樹脂層は、架橋剤(XF)を含有していてもよい。架橋剤(XF)は、重合体成分(XA)中の前記官能基を他の化合物と結合させて架橋するための成分であり、このように架橋することにより、熱硬化性樹脂層の初期接着力及び凝集力を調節できる。
【0103】
架橋剤(XF)としては、例えば、有機多価イソシアネート化合物、有機多価イミン化合物、金属キレート系架橋剤(金属キレート構造を有する架橋剤)、アジリジン系架橋剤(アジリジニル基を有する架橋剤)等が挙げられる。
【0104】
前記有機多価イソシアネート化合物としては、例えば、芳香族多価イソシアネート化合物、脂肪族多価イソシアネート化合物及び脂環族多価イソシアネート化合物(以下、これら化合物をまとめて「芳香族多価イソシアネート化合物等」と略記することがある);前記芳香族多価イソシアネート化合物等の三量体、イソシアヌレート体及びアダクト体;前記芳香族多価イソシアネート化合物等とポリオール化合物とを反応させて得られる末端イソシアネートウレタンプレポリマー等が挙げられる。前記「アダクト体」は、前記芳香族多価イソシアネート化合物、脂肪族多価イソシアネート化合物又は脂環族多価イソシアネート化合物と、エチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン又はヒマシ油等の低分子活性水素含有化合物との反応物を意味する。前記アダクト体の例としては、後述するようなトリメチロールプロパンのキシリレンジイソシアネート付加物等が挙げられる。
【0105】
前記有機多価イソシアネート化合物として、より具体的には、例えば、2,4-トリレンジイソシアネート;2,6-トリレンジイソシアネート;1,3-キシリレンジイソシアネート;1,4-キシレンジイソシアネート;ジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート;ジフェニルメタン-2,4’-ジイソシアネート;3-メチルジフェニルメタンジイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート;イソホロンジイソシアネート;ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネート;ジシクロヘキシルメタン-2,4’-ジイソシアネート;トリメチロールプロパン等のポリオールのすべて又は一部の水酸基に、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート及びキシリレンジイソシアネートのいずれか1種又は2種以上が付加した化合物;リジンジイソシアネート等が挙げられる。
【0106】
前記有機多価イミン化合物としては、例えば、N,N’-ジフェニルメタン-4,4’-ビス(1-アジリジンカルボキシアミド)、トリメチロールプロパン-トリ-β-アジリジニルプロピオネート、テトラメチロールメタン-トリ-β-アジリジニルプロピオネート、N,N’-トルエン-2,4-ビス(1-アジリジンカルボキシアミド)トリエチレンメラミン等が挙げられる。
【0107】
架橋剤(XF)として有機多価イソシアネート化合物を用いる場合、重合体成分(XA)としては、水酸基含有重合体を用いることが好ましい。架橋剤(XF)がイソシアネート基を有し、重合体成分(XA)が水酸基を有する場合、架橋剤(XF)と重合体成分(XA)との反応によって、熱硬化性樹脂層に架橋構造を簡便に導入できる。
【0108】
樹脂層形成用組成物(X)及び熱硬化性樹脂層が含有する架橋剤(XF)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0109】
架橋剤(XF)を用いる場合、樹脂層形成用組成物(X)において、架橋剤(XF)の含有量は、重合体成分(XA)の含有量100質量部に対して、0.01~20質量部であることが好ましく、0.1~10質量部であることがより好ましく、0.5~5質量部であることが特に好ましい。架橋剤(XF)の前記含有量が前記下限値以上であることで、架橋剤(XF)を用いたことによる効果がより顕著に得られる。また、架橋剤(XF)の前記含有量が前記上限値以下であることで、架橋剤(XF)の過剰使用が抑制される。
【0110】
(他の成分)
樹脂層形成用組成物(X)及び熱硬化性樹脂層は、本発明の効果を損なわない範囲内において、上述の重合体成分(XA)、熱硬化性成分(XB)、硬化促進剤(XC)、充填材(XD)、カップリング剤(XE)、及び架橋剤(XF)以外の、他の成分を含有していてもよい。
前記他の成分としては、例えば、エネルギー線硬化性樹脂、光重合開始剤、着色剤、汎用添加剤等が挙げられる。前記汎用添加剤は、公知のものであり、目的に応じて任意に選択でき、特に限定されないが、好ましいものとしては、例えば、可塑剤、帯電防止剤、酸化防止剤、着色剤(染料、顔料)、ゲッタリング剤等が挙げられる。
【0111】
樹脂層形成用組成物(X)及び熱硬化性樹脂層が含有する前記他の成分は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
樹脂層形成用組成物(X)及び熱硬化性樹脂層の前記他の成分の含有量は、特に限定されず、目的に応じて適宜選択すればよい。
【0112】
樹脂層形成用組成物(X)及び熱硬化性樹脂層は、重合体成分(XA)及び熱硬化性成分(XB)を含有し、重合体成分(XA)としてポリビニルアセタールを含有し、かつエポキシ樹脂(XB1)として室温で液状のものを含有することが好ましく、これら成分以外に、さらに、硬化促進剤(XC)及び充填材(XD)を含有するものがより好ましい。そして、この場合の充填材(XD)は、上述の平均粒径を有することが好ましい。このような樹脂層形成用組成物(X)及び熱硬化性樹脂層を用いることで、90℃~200℃におけるせん断粘度の調整がさらに容易となり、熱硬化性樹脂層をバンプ付きウエハのバンプ形成面を有する表面に貼付し、熱硬化させたときに、半導体ウエハの表面のハジキを抑制することができる。また、バンプの頭頂部において、保護膜残留物の残存を抑制する効果がより高くなる。
【0113】
(溶媒)
樹脂層形成用組成物(X)は、さらに溶媒を含有することが好ましい。溶媒を含有する樹脂層形成用組成物(X)は、取り扱い性が良好となる。
前記溶媒は特に限定されないが、好ましいものとしては、例えば、トルエン、キシレン等の炭化水素;メタノール、エタノール、2-プロパノール、イソブチルアルコール(2-メチルプロパン-1-オール)、1-ブタノール等のアルコール;酢酸エチル等のエステル;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン;テトラヒドロフラン等のエーテル;ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドン等のアミド(アミド結合を有する化合物)等が挙げられる。
樹脂層形成用組成物(X)が含有する溶媒は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0114】
樹脂層形成用組成物(X)が含有する溶媒は、樹脂層形成用組成物(X)中の含有成分をより均一に混合できる点から、メチルエチルケトン等であることが好ましい。
【0115】
樹脂層形成用組成物(X)の溶媒の含有量は、特に限定されず、例えば、溶媒以外の成分の種類に応じて適宜選択すればよい。
【0116】
[基材]
本発明の一態様の半導体装置の製造方法において用いられる、保護膜形成用積層体が有する支持シートに使用される第一支持基材は、シート状又はフィルム状であり、その構成材料としては、例えば、各種樹脂が挙げられる。
また、本発明の一態様の半導体装置の製造方法において用いられる、バックグラインドテープに使用される第二支持基材もまた、シート状又はフィルム状であり、その構成材料としては、例えば、各種樹脂が挙げられる。
前記樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)等のポリエチレン;ポリプロピレン、ポリブテン、ポリブタジエン、ポリメチルペンテン、ノルボルネン樹脂等のポリエチレン以外のポリオレフィン;エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体、エチレン-ノルボルネン共重合体等のエチレン系共重合体(モノマーとしてエチレンを用いて得られた共重合体);ポリ塩化ビニル、塩化ビニル共重合体等の塩化ビニル系樹脂(モノマーとして塩化ビニルを用いて得られた樹脂);ポリスチレン;ポリシクロオレフィン;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリエチレン-2,6-ナフタレンジカルボキシレート、すべての構成単位が芳香族環式基を有する全芳香族ポリエステル等のポリエステル;2種以上の前記ポリエステルの共重合体;ポリ(メタ)アクリル酸エステル;ポリウレタン;ポリウレタンアクリレート;ポリイミド;ポリアミド;ポリカーボネート;フッ素樹脂;ポリアセタール;変性ポリフェニレンオキシド;ポリフェニレンスルフィド;ポリスルホン;ポリエーテルケトン等が挙げられる。
また、前記樹脂としては、例えば、前記ポリエステルとそれ以外の樹脂との混合物等のポリマーアロイも挙げられる。前記ポリエステルとそれ以外の樹脂とのポリマーアロイは、ポリエステル以外の樹脂の量が比較的少量であるものが好ましい。
また、前記樹脂としては、例えば、ここまでに例示した前記樹脂の1種又は2種以上が架橋した架橋樹脂;ここまでに例示した前記樹脂の1種又は2種以上を用いたアイオノマー等の変性樹脂も挙げられる。
【0117】
第一支持基材及び第二支持基材を構成する樹脂は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0118】
第一支持基材及び第二支持基材は1層(単層)のみでもよいし、2層以上の複数層でもよく、複数層である場合、これら複数層は、互いに同一でも異なっていてもよく、これら複数層の組み合わせは特に限定されない。
なお、本明細書においては、第一支持基材及び第二支持基材の場合に限らず、「複数層が互いに同一でも異なっていてもよい」とは、「すべての層が同一であってもよいし、すべての層が異なっていてもよく、一部の層のみが同一であってもよい」ことを意味し、さらに「複数層が互いに異なる」とは、「各層の構成材料及び厚さの少なくとも一方が互いに異なる」ことを意味する。
【0119】
第一支持基材及び第二支持基材の厚さは、5~1000μmであることが好ましく、10~500μmであることがより好ましく、15~300μmであることがさらに好ましく、20~150μmであることが特に好ましい。
ここで、「第一支持基材の厚さ」及び「第二支持基材の厚さ」とは、第一支持基材全体の厚さ及び第二支持基材全体の厚さを意味し、例えば、複数層からなる第一支持基材の厚さとは、第一支持基材を構成するすべての層の合計の厚さを意味する。同様に、複数層からなる第二支持基材の厚さとは、第二支持基材を構成するすべての層の合計の厚さを意味する。
【0120】
ここで、バックグラインドテープに用いられる第二支持基材は、裏面研削の精度をより向上させる観点から、厚さの精度が高いもの、すなわち、部位によらず厚さのばらつきが抑制されたものが好ましい。上述の構成材料のうち、このような厚さの精度が高い第二支持基材を構成するのに使用可能な材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリエチレン以外のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、エチレン-酢酸ビニル共重合体等が挙げられる。
【0121】
また、バックグラインドテープに用いられる第二支持基材は、バンプ付きウエハの支持性能を向上させて、裏面研削の精度をより向上させる観点から、ヤング率が600MPa以上であることが好ましく、800MPa以上であることがより好ましく、1,000MPa以上であることが更に好ましい。また、バックグラインドテープを剥離する際に、バンプ付きウエハやその個片化物等の被着体に作用する応力を緩和する観点から、第二支持基材のヤング率は、30,000MPa以下であることが好ましく、20,000MPa以下であることがより好ましく、10,000MPa以下であることが更に好ましい。
一方で、保護膜形成用積層体が有する支持シートに用いられる第一支持基材に対しては、裏面研削の精度向上を考慮する必要がないため、硬化性樹脂層からの支持シートの剥離性を考慮して第一支持基材のヤング率を設定することができる。かかる観点から、第一支持基材のヤング率は、10,000MPa以下であることが好ましく、5,000MPa以下であることがより好ましく、1,000MPa未満であることが更に好ましく、600MPa未満であることがより更に好ましい。なお、第一支持基材のヤング率は、通常100MPa以上、好ましくは200MPa以上である。
基材のヤング率は、JISK-7127(1999)に準拠して測定した値である。
【0122】
第一支持基材及び第二支持基材は、前記樹脂等の主たる構成材料以外に、充填材、着色剤、帯電防止剤、酸化防止剤、有機滑剤、触媒、軟化剤(可塑剤)等の公知の各種添加剤を含有していてもよい。
【0123】
第一支持基材及び第二支持基材は、透明であってもよいし、不透明であってもよく、目的に応じて着色されていてもよいし、他の層が蒸着されていてもよい。
前記熱硬化性樹脂フィルムがエネルギー線硬化性である場合、第一支持基材及び第二支持基材はエネルギー線を透過させるものが好ましい。
【0124】
第一支持基材及び第二支持基材は、公知の方法で製造できる。例えば、樹脂を含有する第一支持基材及び第二支持基材は、前記樹脂を含有する樹脂組成物を成形することで製造できる。
【0125】
[緩衝層]
本発明の一態様の半導体装置の製造方法において用いられる、保護膜形成用積層体が有する支持シートに使用される第一緩衝層は、バックグラインドテープに一般的に用いられる緩衝層であれば特に制限されないが、バンプに対する良好な埋め込み性と、上記工程(A2)における保護膜形成用積層体からの支持シートの易剥離性とを確保しやすくする観点から、上記のように、第一緩衝層の常温(23℃)におけるせん断貯蔵弾性率G’(23℃)は200MPa以下であることが好ましく、180MPa以下であることがより好ましく、150MPa以下であることが更に好ましい。なお、第一緩衝層のせん断貯蔵弾性率G’(23℃)は、第一支持基材による硬化性樹脂層の常温での保持性を十分に確保する観点から、通常80MPa以上である。
【0126】
また、本発明の一態様の半導体装置の製造方法において用いられる、バックグラインドテープに使用される第二緩衝層は、バックグラインドテープに一般的に用いられる緩衝層であれば特に制限されないが、バンプに対する良好な埋め込み性と、バンプ付きウエハを裏面研削時に固定する良好な固定性能とを確保しやすくする観点から、上記のように、第二緩衝層のtanδのピーク値が1.2以上であることが好ましく、1.3以上であることがより好ましく、1.4以上であることが更に好ましい。また、tanδのピーク値は、通常5.0以下、好ましくは4.0以下である。
【0127】
また、第一緩衝層及び第二緩衝層の厚さは、上記のとおりである。
ここで、本発明の一態様の半導体装置の製造方法では、保護膜形成用積層体とバックグラインドテープとを使い分けており、バックグラインドテープを用いる際にはバンプ付きウエハのバンプネックは保護膜によって保護されている。そのため、バックグラインドテープのバンプ埋め込み性能は、保護膜形成用積層体のバンプ埋め込み性能よりも低くてもよい。そのため、第二緩衝層の厚さは、第一緩衝層の厚さよりも薄くすることができる。具体的には、第一緩衝層の厚さに対する第二緩衝層の厚さの比[(第二緩衝層の厚さ)/第一緩衝層の厚さ]が、好ましくは0.9以下、より好ましくは0.8以下、更に好ましくは0.7以下である。また、通常0.5以上である。
【0128】
ここで、本発明に一態様において、第一緩衝層及び第二緩衝層は、せん断貯蔵弾性率(23℃)及びtanδを上記範囲に調整しやすくする観点から、ウレタン(メタ)アクリレート及びチオール基含有化合物を含む樹脂組成物から形成されることが好ましい。
以下、第一緩衝層及び第二緩衝層を形成するための樹脂組成物(以下、「緩衝層形成用樹脂組成物」ともいう)に含まれる各成分の詳細について説明する。
【0129】
<ウレタン(メタ)アクリレート>
ウレタン(メタ)アクリレートは、少なくとも(メタ)アクリロイル基及びウレタン結合を有する化合物であり、エネルギー線照射により重合する性質を有するものである。
ウレタン(メタ)アクリレート中の(メタ)アクリロイル基数は、単官能、2官能、もしくは3官能以上でもよいが、せん断貯蔵弾性率G’(23℃)やtanδが上記範囲に調整された緩衝層を形成する観点から、単官能ウレタン(メタ)アクリレートを含むことが好ましい。
単官能ウレタン(メタ)アクリレートを製膜用組成物中に含むと、単官能ウレタン(メタ)アクリレートは重合構造において3次元網目構造の形成に関与しないために、3次元網目構造が形成されにくくなり、特に、せん断貯蔵弾性率G’(23℃)やtanδが上記範囲に調整された緩衝層を形成しやすくなる。
緩衝層形成用樹脂組成物中に用いられるウレタン(メタ)アクリレートとしては、例えば、ポリオール化合物と、多価イソシアネート化合物とを反応させて得られる末端イソシアネートウレタンプレポリマーに、ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリレートを反応させて得ることができる。
なお、ウレタン(メタ)アクリレートは、1種又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0130】
(ポリオール化合物)
ポリオール化合物は、ヒドロキシ基を2つ以上有する化合物であれば特に制限されない。
具体的なポリオール化合物としては、例えば、アルキレンジオール、ポリエーテル型ポリオール、ポリエステル型ポリオール、ポリカーボネート型ポリオール等が挙げられる。
これらの中でも、ポリエーテル型ポリオールが好ましい。
なお、ポリオール化合物としては、2官能のジオール、3官能のトリオール、4官能以上のポリオールのいずれであってもよいが、入手の容易性、汎用性、反応性等の観点から、2官能のジオールが好ましく、ポリエーテル型ジオールがより好ましい。
【0131】
ポリエーテル型ジオールは、下記式(1)で表される化合物が好ましい。
【化2】
【0132】
上記式(1)中、Rは、2価の炭化水素基であるが、アルキレン基が好ましく、炭素数1~6のアルキレン基がより好ましい。炭素数1~6のアルキレン基の中でも、エチレン基、プロピレン基、テトラメチレン基が好ましく、プロピレン基、テトラメチレン基がより好ましい。
また、nは、アルキレンオキサイドの繰り返し単位数であり、好ましくは10~250、より好ましくは25~205、更に好ましくは40~185である。nが上記範囲であれば、得られるウレタン(メタ)アクリレートのウレタン結合濃度を適度にし、緩衝層のtanδを上記範囲に調整しやすい。
上記式(1)で表される化合物の中でも、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールが好ましく、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールがより好ましい。
ポリエーテル型ジオールと多価イソシアネート化合物との反応により、エーテル結合部〔-(-R-O-)n-〕が導入された末端イソシアネートウレタンプレポリマーを生成する。このようなポリエーテル型ジオールを用いることで、ウレタン(メタ)アクリレートは、ポリエーテル型ジオールから誘導される構成単位を含有する。
【0133】
ポリエステル型ポリオールの製造に用いられる多塩基酸成分としては、一般にポリエステルの多塩基酸成分として知られている化合物を使用することができる。
具体的な多塩基酸成分としては、例えば、アジピン酸、マレイン酸、コハク酸、シュウ酸、フマル酸、マロン酸、グルタル酸、ピメリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、スベリン酸等の二塩基酸;フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸等の二塩基酸や、トリメリット酸、ピロメリット酸等の多塩基酸等の芳香族多塩基酸、これらに対応する無水物やその誘導体及びダイマー酸、水添ダイマー酸等が挙げられる。
これらの中でも、適度な硬度を有する塗膜を形成する観点から、芳香族多塩基酸が好ましい。
ポリエステル型ポリオールを製造するためのエステル化反応には、必要に応じて各種公知の触媒を使用してもよい。
当該触媒としては、例えば、ジブチルスズオキサイド、オクチル酸第一スズ等のスズ化合物、テトラブチルチタネート、テトラプロピルチタネート等のアルコキシチタン等が挙げられる。
ポリカーボネート型ポリオールとしては、特に限定されず、例えば、前述したグリコール類とアルキレンカーボネートとの反応物等が挙げられる。
【0134】
ポリオール化合物の水酸基価から算出した数平均分子量としては、好ましくは1,000~10,000、より好ましくは2,000~9,000、更に好ましくは3,000~7,000である。当該数平均分子量が1,000以上であれば、過剰な量のウレタン結合の生成に起因して緩衝層のせん断貯蔵弾性率の制御が困難になるという事態が回避されるため好ましい。一方、当該数平均分子量が10,000以下であれば、得られる緩衝層が過度に軟化することを防ぐことができるため好ましい。
なお、ポリオール化合物の水酸基価から算出した数平均分子量は、〔ポリオール官能基数〕×56.11×1,000/〔水酸基価(単位:mgKOH/g)〕から算出された値である。
【0135】
(多価イソシアネート化合物)
多価イソシアネート化合物としては、例えば、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族系ポリイソシアネート類;イソホロンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン-2,4’-ジイソシアネート、ω,ω’-ジイソシアネートジメチルシクロヘキサン等の脂環族系ジイソシアネート類;4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、テトラメチレンキシリレンジイソシアネート、ナフタレン-1,5-ジイソシアネート等の芳香族系ジイソシアネート類等が挙げられる。
これらの中でも、取り扱い性の観点から、イソホロンジイソシアネートやヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネートが好ましい。
【0136】
(ヒドロキシ基を有する(メタ)アクリレート)
ヒドロキシ基を有する(メタ)アクリレートとしては、少なくとも1分子中にヒドロキシ基及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物であれば、特に限定されない。
具体的なヒドロキシ基を有する(メタ)アクリレートとしては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、5-ヒドロキシシクロオクチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェニルオキシプロピル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;N-メチロール(メタ)アクリルアミド等のヒドロキシ基含有(メタ)アクリルアミド;ビニルアルコール、ビニルフェノール、ビスフェノールAのジグリシジルエステルに(メタ)アクリル酸を反応させて得られる反応物等が挙げられる。
これらの中でも、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートが好ましく、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートがより好ましい。
末端イソシアネートウレタンプレポリマー及びヒドロキシ基を有する(メタ)アクリレートを反応させる条件としては、必要に応じて添加される溶剤、触媒の存在下、60~100℃で、1~4時間反応させる条件が好ましい。
【0137】
このようにして得られる緩衝層形成用樹脂組成物用のウレタン(メタ)アクリレートは、オリゴマー、高分子量体、又はこれらの混合物のいずれであってもよいが、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーが好ましい。
該ウレタン(メタ)アクリレートの重量平均分子量は、好ましくは1,000~100,000、より好ましくは3,000~80,000、更に好ましくは5,000~65,000である。当該重量平均分子量が1,000以上であれば、ウレタン(メタ)アクリレートと後述する重合性単量体との重合物において、ウレタン(メタ)アクリレート由来の構造同士の分子間力に起因して、緩衝層に適度な硬さが付与されるため好ましい。
緩衝層形成用樹脂組成物中のウレタン(メタ)アクリレートの配合量は、好ましくは20~70質量%、より好ましくは25~60質量%、更に好ましくは30~50質量%、より更に好ましくは33~47質量%である。ウレタン(メタ)アクリレートの配合量がこのような範囲にあれば、
緩衝層のせん断貯蔵弾性率(23℃)やtanδを上記範囲に調整することがより容易となる。
【0138】
<チオール基含有化合物>
チオール基含有化合物としては、分子中に少なくとも1つのチオール基を有する化合物であれば、特に制限されないが、tanδが上記範囲に調整された緩衝層を形成しやすくする観点から、多官能のチオール基含有化合物が好ましく、4官能のチオール基含有化合物がより好ましい。
具体的なチオール基含有化合物としては、例えば、ノニルメルカプタン、1-ドデカンチオール、1,2-エタンジチオール、1,3-プロパンジチオール、トリアジンチオール、トリアジンジチオール、トリアジントリチオール、1,2,3-プロパントリチオール、テトラエチレングリコール-ビス(3-メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキスチオグルコレート、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3-メルカプトプロピオネート)、トリス[(3-メルカプトプロピオニロキシ)-エチル]-イソシアヌレート、1,4-ビス(3-メルカプトブチリルオキシ)ブタン、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)、1,3,5-トリス(3-メルカプトブチルオキシエチル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6-(1H,3H,5H)-トリオン等が挙げられる。
なお、これらのチオール基含有化合物は、1種又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0139】
チオール基含有化合物の分子量は、好ましくは200~3,000、より好ましくは300~2,000である。当該分子量が上記範囲であれば、ウレタン(メタ)アクリレートとの相溶性が良好となり、製膜性を良好にすることができる。
チオール基含有化合物の配合量は、ウレタン(メタ)アクリレート及び後述する重合性単量体の合計100質量部に対して、好ましくは1.0~4.9質量部、より好ましくは1.5~4.8質量部である。
当該配合量が1.0質量部以上であれば、tanδが上記範囲に調整された緩衝層を形成しやすくなる。一方、当該配合量が4.9質量部以下であれば、ロール状に巻き取った際の緩衝層の浸み出しを抑制することができる。
【0140】
(重合性単量体)
本発明で用いる緩衝層用樹脂組成物には、製膜性を向上させる観点から、更に、重合性単量体を含むことが好ましい。
重合性単量体は、上記のウレタン(メタ)アクリレート以外の重合性化合物であって、エネルギー線の照射により他の成分と重合可能な化合物であって、樹脂成分を除くものであって、少なくとも1つの(メタ)アクリロイル基を有する化合物が好ましい。
なお、本明細書において、「樹脂成分」とは、構造中に繰り返し構造を有するオリゴマー又は高分子量体を指し、重量平均分子量が1,000以上の化合物をいう。
【0141】
重合性単量体としては、例えば、炭素数1~30のアルキル基を有する(メタ)アクリレート、水酸基、アミド基、アミノ基、エポキシ基等の官能基を有する(メタ)アクリレート、脂環式構造を有する(メタ)アクリレート、芳香族構造を有する(メタ)アクリレート、複素環式構造を有する(メタ)アクリレート、スチレン、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、N-ビニルホルムアミド、N-ビニルピロリドン、N-ビニルカプロラクタム等のビニル化合物等が挙げられる。
【0142】
炭素数1~30のアルキル基を有する(メタ)アクリレートとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、n-ペンチル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクレート、ドデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、エイコシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0143】
官能基を有する(メタ)アクリレートとしては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の水酸基含有(メタ)アクリレート;(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N-ブチル(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N-メチロールプロパン(メタ)アクリルアミド、N-メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド等のアミド基含有化合物;第1級アミノ基含有(メタ)アクリレート、第2級アミノ基含有(メタ)アクリレート、第3級アミノ基含有(メタ)アクリレート等のアミノ基含有(メタ)アクリレート;グリシジル(メタ)アクリレート、メチルグリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル等のエポキシ基含有(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0144】
脂環式構造を有する(メタ)アクリレートとしては、例えば、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシ(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、アダマンタン(メタ)アクリレート等が挙げられる。
芳香族構造を有する(メタ)アクリレートとしては、例えば、フェニルヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
複素環式構造を有する(メタ)アクリレートとしては、例えば、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、モルホリン(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0145】
これらの中でも、上記ウレタン(メタ)アクリレートとの相溶性の観点からは、比較的嵩高い基を有するものが好ましく、より具体的には、脂環式構造を有する(メタ)アクリレート、芳香族構造を有する(メタ)アクリレート、複素環式構造を有する(メタ)アクリレートが好ましく、脂環式構造を有する(メタ)アクリレートがより好ましい。また、tanδが上記範囲に調整された緩衝層を形成しやすい緩衝層形成用樹脂組成物を得る観点から、重合性単量体として、官能基を有する(メタ)アクリレート及び脂環式構造を有する(メタ)アクリレートを含むことが好ましく、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート及びイソボルニル(メタ)アクリレートを含むことがより好ましい。
【0146】
緩衝層形成用樹脂組成物中の脂環式構造を有する(メタ)アクリレートの配合量は、上記観点から、好ましくは32~53質量%、より好ましくは35~51質量%、更に好ましくは37~48質量%、より更に好ましくは40~47質量%である。
また、緩衝層形成用樹脂組成物中に含まれる重合性単量体の全量に対する、脂環式構造を有する(メタ)アクリレートの配合量は、上記観点から、好ましくは52~87質量%、より好ましくは55~85質量%、更に好ましくは60~80質量%、より更に好ましくは65~77質量%である。脂環式構造を有する(メタ)アクリレートの配合量がこのような範囲であると、緩衝層のせん断貯蔵弾性率(23℃)を、上述した範囲に調整することがより容易となる。
【0147】
また、緩衝層形成用樹脂組成物中の重合性単量体の配合量は、好ましくは30~80質量%、より好ましくは40~75質量%、更に好ましくは50~70質量%、より更に好ましくは53~67質量%である。重合性単量体の配合量がこのような範囲にあれば、緩衝層中における重合性単量体が重合してなる部分の運動性が高いために、緩衝層が柔軟となる傾向があり、tanδが上記範囲に調整された緩衝層を形成することや、せん断貯蔵弾性率が上記範囲に調整された緩衝層を形成することがより容易となる。
また、同様の観点から、緩衝層形成用樹脂組成物中のウレタン(メタ)アクリレートと重合性単量体との質量比〔ウレタン(メタ)アクリレート/重合性単量体〕は、好ましくは20/80~60/40、より好ましくは30/70~50/50、更に好ましくは35/65~45/55である。
【0148】
(エネルギー線重合開始剤)
紫外線等をエネルギー線として使用して、緩衝層形成用樹脂組成物からなる塗膜を硬化させ、緩衝層を形成する場合、緩衝層形成用樹脂組成物には、更にエネルギー線重合開始剤を含むことが好ましい。エネルギー線重合開始剤は、一般的に、「光重合開始剤」ともいうため、本明細書では、以下、単に「光重合開始剤」ともいう。
光重合開始剤としては、例えば、ベンゾイン化合物、アセトフェノン化合物、アシルフォスフィノキサイド化合物、チタノセン化合物、チオキサントン化合物、パーオキサイド化合物等の光重合開始剤、アミンやキノン等の光増感剤等が挙げられ、より具体的には、例えば、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン等が挙げられる。
これらの光重合開始剤は、1種又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
光重合開始剤の配合量は、ウレタン(メタ)アクリレート及び重合性単量体の合計100質量部に対して、好ましくは0.05~15質量部、より好ましくは0.1~10質量部、更に好ましくは0.3~5質量部である。
【0149】
(その他の添加剤)
緩衝層形成用樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲において、その他の添加剤を含有させてもよい。
その他の添加剤としては、例えば、架橋剤、酸化防止剤、軟化剤(可塑剤)、充填剤、防錆剤、顔料、染料等が挙げられる。
これらの添加剤を配合する場合、その他の添加剤の配合量は、ウレタン(メタ)アクリレートびチオール基含有化合物の合計100質量部に対して、好ましくは0.01~6質量部、より好ましくは0.1~3質量部である。
なお、緩衝層形成用樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲において、ウレタン(メタ)アクリレート以外の樹脂成分を含有してもよいが、樹脂成分としてウレタン(メタ)アクリレートのみを含有することが好ましい。
緩衝層形成用樹脂組成物中に含まれるウレタン(メタ)アクリレート以外の樹脂成分の含有量は、好ましくは5質量%以下、より好ましくは1質量%以下、更に好ましくは0.1質量%以下、より更に好ましくは0質量%である
【0150】
また、緩衝層は、tanδが上記範囲に調整された緩衝層を形成することや、せん断貯蔵弾性率が上記範囲に調整された緩衝層を形成することがより容易となる場合には、上記の緩衝層形成用樹脂組成物から形成する以外にも、非反応性のウレタンポリマー又はオリゴマーと、重合性単量体とを含む硬化性組成物の硬化物や、エチレン-α-オレフィン共重合体を用いて形成してもよい。非反応性のウレタンポリマー又はオリゴマーは、公知のものを用いればよく、重合性単量体としては、上述したものと同じものを用いることができる。このような硬化性組成物は、上述したエネルギー線重合開始剤を含有していてもよい。
【0151】
エチレン-α-オレフィン共重合体は、エチレンとα-オレフィンモノマーとを重合して得られる。α-オレフィンモノマーとしては、プロピレン、1-ブテン、2-メチル-1-ブテン、2-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、2,2-ジメチル-1-ブテン、2-メチル-1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘプテン、3-メチル-1-ヘキセン、2,2-ジメチル-1-ペンテン、3,3-ジメチル-1-ペンテン、2,3-ジメチル-1-ペンテン、3-エチル-1-ペンテン、2,2,3-トリメチル-1-ブテン、1-オクテン、2,2,4-トリメチル-1-オクテンなどが挙げられる。これらのα-オレフィンモノマーは、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、エチレン-α-オレフィン共重合体には、上記モノマー以外に、他の重合性単量体を用いることもできる。他の重合性単量体としては、例えば、酢酸ビニル、スチレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、ビニルケトン等のビニル化合物;アクリル酸、メタクリル酸等の不飽和カルボン酸;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸-n-プロピル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸-n-プロピル等の不飽和カルボン酸エステル;アクリルアミド、メタクリルアミド等の不飽和カルボン酸アミド等が挙げられる。これらの重合性単量体は、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0152】
[粘着剤層]
本発明の一態様の半導体装置の製造方法において用いられる、保護膜形成用積層体が有する支持シートに使用される第一粘着剤層は、上記工程(A2)を実施する前までは支持シート状に硬化性樹脂層を保持することができ、上記工程(A2)において、バンプ付きウエハに硬化性樹脂層を貼り付けた状態を維持しながら、支持シートを硬化性樹脂層から剥離して分離することが可能であれば特に制限されない。
また、本発明の一態様の半導体装置の製造方法において用いられる、バックグラインドテープに使用される第二粘着剤層は、保護膜が形成されたバンプ付きウエハを固定して保護することが可能であれば特に制限されない。
【0153】
第一粘着剤層及び第二粘着剤層を形成する粘着剤は、特に限定されず、従来、バックグラインドテープに用いられてきた種々の粘着剤を使用できる。具体的には、ゴム系、アクリル系、シリコーン系、ポリビニルエーテル系等の粘着剤が用いられる。また、エネルギー線硬化型、加熱発泡型、水膨潤型の粘着剤も用いてもよい。
また、第一粘着剤層及び第二粘着剤層の厚さは、上記のとおりである。
なお、粘着剤層は、さらに剥離フィルムが貼り合わされて剥離フィルムにより保護されていてもよい。剥離フィルムは、特に限定されず、フィルムや紙等のシートに、剥離剤で剥離処理したものを使用することができる。
【0154】
[保護膜形成用積層体の製造方法]
本発明の一態様で用いる保護膜形成用積層体の製造方法としては、特に制限されず、公知の方法により製造することができる。
具体的には、例えば、第一支持基材上に第一緩衝層を形成し、その後、第一粘着剤層を形成することにより、支持シートを作製する。そして、剥離材上に樹脂膜形成用組成物(X)を塗布して硬化性樹脂層を形成し、支持シートの第一粘着剤層と硬化性樹脂層とを貼り合せることにより、保護膜形成用積層体を製造することができる。
第一支持基材上に第一緩衝層を形成する方法としては、第一支持基材の一方の面に、緩衝層形成用樹脂組成物を塗布し塗布膜を形成した後、硬化処理を行って、第一緩衝層を形成する方法や、剥離材の剥離処理面に、緩衝層形成用樹脂組成物を塗布し塗布膜を形成した後、半硬化処理を行って、剥離材上に半硬化層を形成し、当該半硬化層と第一支持基材とを貼り合わせ、剥離材を除去する前、又は除去した後、半硬化層を完全に硬化させて第一緩衝層を形成させる方法等が挙げられる。
第一緩衝層上に第一粘着剤層を形成する方法としては、第一緩衝層上に第一粘着剤層を形成するための粘着剤組成物を塗布する方法や、剥離材の剥離処理面に当該粘着剤組成物を塗布し剥離材上に第一粘着剤層を形成し、第一粘着剤層を第一緩衝層と貼り合わせる方法が挙げられる。
【0155】
緩衝層形成用樹脂組成物、粘着剤組成物、又は樹脂膜形成用組成物(X)を、第一支持基材又は剥離材上に、塗布する方法としては、例えば、スピンコート法、スプレーコート法、バーコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ダイコート法、グラビアコート法等が挙げられる。
なお、緩衝層形成用樹脂組成物、粘着剤組成物、又は樹脂膜形成用組成物(X)が有機溶媒を含む溶液の形態の場合は、これを塗布した後、80~150℃の温度で30秒~5分間加熱して乾燥処理を行うことが好ましい。なお、樹脂膜形成用組成物(X)に対して行う当該加熱処理は、本発明の半導体装置の製造方法における硬化性樹脂層の硬化処理には含まれない。
【0156】
緩衝層形成用樹脂組成物を塗布し塗布膜を形成した後の硬化処理としては、形成した塗布膜に、紫外線等のエネルギー線を照射して、重合硬化させる方法が好ましい。また、硬化処理は、一度に完全に硬化させてもよいし、複数回に分けて硬化させてもよい。
エネルギー線としては、例えば、紫外線、電子線等が挙げられ、紫外線が好ましい。
また、エネルギー線の照射量は、エネルギー線の種類によって適宜変更される。例えば、紫外線を用いる場合、照射する紫外線の照度は、好ましくは50~500mW/cm、より好ましくは100~340mW/cmであり、紫外線の照射量は、好ましくは100~2,500mJ/cm、より好ましくは150~2,000mJ/cmである。
【0157】
[バックグラインドテープの製造方法]
本発明の一態様で用いるバックグラインドテープの製造方法としては、特に制限されず、公知の方法により製造することができる。
具体的には、例えば、保護膜形成用積層体を構成する支持シートの製造方法と同様の方法で、第二支持基材上に第二緩衝層を形成し、その後、第二粘着剤層を形成する方法が挙げられる。
【実施例
【0158】
本発明について、以下の実施例により具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0159】
[各種物性値の測定方法]
以下の実施例及び比較例における物性値は、以下の方法により測定した値である。
【0160】
<重量平均分子量>
ゲル浸透クロマトグラフ装置(東ソー株式会社製、製品名「HLC-8020」)を用いて、下記の条件下で測定し、標準ポリスチレン換算にて測定した値を用いた。
(測定条件)
・カラム:「TSK guard column HXL-L」「TSK gel G2500HXL」「TSK gel G2000HXL」「TSK gel G1000HXL」(いずれも東ソー株式会社製)を順次連結したもの
・カラム温度:40℃
・展開溶媒:テトラヒドロフラン
・流速:1.0mL/min
【0161】
<各層の厚さの測定>
株式会社テクロック製の定圧厚さ測定器(型番:「PG-02J」、標準規格:JIS K6783、Z1702、Z1709に準拠)を用いて測定した。
【0162】
<ガラス転移温度>
後述する重合体成分(XA)のガラス転移温度(Tg)は、パーキンエルマー株式会社製示差走査熱量計(PYRIS Diamond DSC)を用い、昇降温速度10℃/分で-70℃から150℃の温度プロファイルでの測定を実施し、変曲点を確認して求めた。
【0163】
<エポキシ当量>
JIS K 7236:2009に準拠して測定した。
【0164】
<平均粒径>
測定対象となる粒子を水中で超音波により分散させ、動的光散乱法式粒度分布測定装置(株式会社堀場製作所製、LB-550)により、粒子の粒度分布を体積基準で測定し、そのメディアン径(D50)を平均粒径とした。
【0165】
[樹脂層形成用組成物(X)の調製]
以下の実施例及び比較例で使用した保護膜形成用積層体の製造に用いる樹脂層形成用組成物(X)は、以下の方法により調製した。
【0166】
<樹脂層形成用組成物(X)の調製に用いた成分>
樹脂層形成用組成物(X)の調製に用いた成分を以下に示す。
【0167】
(重合体成分(XA))
下記式(i-1)、下記式(i-2)、及び下記式(i-3)で表される構成単位を有するポリビニルブチラール(積水化学工業株式会社製、エスレック(登録商標)B BL-10、重量平均分子量25,000、ガラス転移温度59℃、下記式中、pは68~74モル%、qは1~3モル%、rは約28モル%である。)を用いた。
【化3】
【0168】
(エポキシ樹脂(XB1))
以下の2種のエポキシ樹脂を用いた。
・エポキシ樹脂(XB1-1):液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂(DIC株式会社製、EPICLON(登録商標) EXA-4850-1000、エポキシ当量404~412g/eq)
・エポキシ樹脂(XB1-2):ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(DIC株式会社製、EPICLON(登録商標) HP-7200、エポキシ当量254~264g/eq)
【0169】
(熱硬化剤(XB2))
ノボラック型フェノール樹脂(昭和電工株式会社製、ショウノール(登録商標) BRG-556)を用いた。
【0170】
(硬化促進剤(XC))
2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール(四国化成工業株式会社製、キュアゾール(登録商標) 2PHZ)を用いた。
【0171】
(充填材(XD))
エポキシ基で修飾された球状シリカ(株式会社アドマテックス製、アドマナノ(登録商標) YA050C-MKK、平均粒径0.05μm)を用いた。
【0172】
<樹脂層形成用組成物(X)の調製>
重合体成分(XA)、エポキシ樹脂(XB1-1)、エポキシ樹脂(XB1-2)、熱硬化剤(XB2)、硬化促進剤(XC)、及び充填材(XD)を、樹脂層形成用組成物(X)の全量(100質量%)基準で、下記含有量となるように、メチルエチルケトンに溶解又は分散させて、23℃で撹拌することにより、有効成分(固形分)濃度が55質量%である樹脂層形成用組成物(X)を調製した。
・重合体成分(XA):9.9質量%
・エポキシ樹脂(XB1-1):37.9質量%
・エポキシ樹脂(XB1-2):24.7質量%
・熱硬化剤(XB2):18.3質量%
・硬化促進剤(XC):0.2質量%
・充填材(XD):9.0質量%
【0173】
[保護膜形成用積層体の製造]
以下の実施例及び比較例で使用した保護膜形成用積層体は、以下の方法により製造した。
まず、シリコーンによる剥離処理が施された剥離処理面を有するポリエチレンテレフタレート製の剥離材(リンテック株式会社製、SP-PET381031、厚さ38μm)の前記剥離処理面に、樹脂層形成用組成物(X)を塗布し、120℃で2分間加熱乾燥させて、熱硬化性樹脂層と剥離材とが積層された積層体を作製した。
次に、支持シートとして、第一基材(厚さ:100μm)と、第一緩衝層(厚さ:400μm)と、第一粘着剤層(厚さ:10μm)とを、この順で積層してなる貼付テープ(リンテック株式会社製、E-8510HR)を用い、この貼付テープの第一粘着剤層と、熱硬化性樹脂層と剥離材との積層体の熱硬化性樹脂層とを貼り合せて、支持シート、熱硬化性樹脂層、及び剥離材がこの順に積層された、保護膜形成用積層体を製造した。
【0174】
[熱硬化性樹脂層の最低せん断粘度評価]
熱硬化性樹脂層と剥離材とが積層された積層体から剥離材を剥がし、熱硬化性樹脂層を複数枚積層することにより、厚さ500μmの熱硬化性樹脂層を形成した。これから直径25mm、厚さ500μmの円柱形状の評価用試料を作製し、この試料をせん断粘度測定装置に設置した。このとき、測定装置の設置箇所に前記試料を載置して、試料の上面から測定治具を押し当てることで、試料を前記設置箇所に固定して設置した。
周波数:1Hz、昇温速度:10℃/minの測定条件で、常温(23℃)から150℃までのせん断粘度を測定し、このうち90℃~130℃におけるせん断粘度の最小値を求めた。
【0175】
[実施例1]
(実施例1)
保護膜形成用積層体から剥離材を取り除き、これにより露出した熱硬化性樹脂層の表面(露出面)を、8インチφバンプ付きウエハのバンプ形成面に圧着させることで、半導体ウエハのバンプ形成面に保護膜形成用積層体を貼付した。このとき、保護膜形成用積層体の貼付は、貼付装置(ローラー式ラミネータ、リンテック株式会社製「RAD-3510 F/12」)を用いて、テーブル温度90℃、貼付速度2mm/sec、貼付圧力0.5MPaの条件で、熱硬化性樹脂層を加熱しながら行った。8インチφバンプ付きウエハとしては、バンプの高さが210μmであり、バンプの幅が250μmであり、隣り合うバンプ間の距離が400μmである、0.4mm pich BGAの半導体ウエハ(Walts製WLPTEG M2、ウエハ厚さ700μm)を用いた。
以上により、半導体ウエハのバンプ形成面に、保護膜形成用積層体が貼付されて構成された、積層構造体を得た。
次いで、紫外線照射を行い、保護膜形成用積層体の支持シートを剥離してから(リンテック株式会社製、RAD-2700)、熱硬化性樹脂層が貼付されたバンプ付きウエハを加圧オーブン(リンテック株式会社製 RAD-9100)にて、温度:130℃、時間:2h、炉内圧力:0.5MPaの加熱条件で熱処理して、熱硬化性樹脂層を熱硬化させ、保護膜を形成した。
そして、保護膜形成面に、バックグラインドテープとして、リンテック社製、E-8510HRを貼付した後、裏面研削を行ってウエハ厚さを200μmとしてから、バックグラインドテープを剥がし、ウエハの反りを目視で確認した。
その結果、ウエハの反りは殆ど見られなかった。
また、保護膜形成後、デジタル顕微鏡にてバンプ面を走査した結果、ウエハのバンプ形成面が露出したピンホール等の点は検出されず、ハジキも生じていないことが明らかとなった。また、熱硬化性樹脂層の最低せん断粘度は2,700Pa・sであった。
【符号の説明】
【0176】
10 バンプを備える半導体ウエハ
11 半導体ウエハ
11a バンプ形成面
11b 裏面
12 バンプ
20 硬化性樹脂層
30 保護膜形成用積層体
30a 支持シート
40 保護膜
50 バックグラインドテープ
61 分割起点(溝)
71 分割起点(改質領域)

図1
図2
図3
図4
図5