(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-26
(45)【発行日】2024-04-03
(54)【発明の名称】把持機構を備えた医療デバイス
(51)【国際特許分類】
A61B 17/04 20060101AFI20240327BHJP
【FI】
A61B17/04
(21)【出願番号】P 2020557139
(86)(22)【出願日】2019-01-08
(86)【国際出願番号】 US2019012732
(87)【国際公開番号】W WO2019136458
(87)【国際公開日】2019-07-11
【審査請求日】2022-01-06
(32)【優先日】2018-01-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520248760
【氏名又は名称】セーフパス メディカル インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001656
【氏名又は名称】弁理士法人谷川国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】レーン,ジョセフ,ピー.
(72)【発明者】
【氏名】ボス,マイケル,ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】ドラン,デビッド,ピー
(72)【発明者】
【氏名】ロドリゲス,ブランドン,ジェイ
【審査官】宮崎 敏長
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第3901244(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0245646(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2004/0068253(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/04 - A61B 17/062
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
デバイスであって、
ハウジングを有するハンドルであって、前記ハンドルが、少なくとも第1の動作を実行するように構成されている、ハンドルと、
前記ハンドルに連結されており、かつ縫合糸で組織を縫合するように構成されている縫合機構と、
縫合糸把持機構であって、前記ハンドルの一部を形成し、第1の部分と、前記第1の部分および前記ハウジングに対して移動可能である第2の部分と、を含み、前記第1の動作とは異なる第2の動作を実行し、前記縫合糸把持機構が、前記縫合糸を受容するための開放位置と、前記第1の部分と前記第2の部分との間で前記縫合糸を把持および保持するための閉鎖位置と、を有することを可能にする、縫合糸把持機構と、を含むものであり、
前記縫合機構が、前記縫合糸把持機構の前記第1の部分および前記第2の部分のそれぞれから離れており、前記第1の部分および前記第2の部分のそれぞれと離間している、デバイス。
【請求項2】
前記縫合機構が、前記組織を通して駆動され得る縫合針を含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記縫合機構が、前記ハンドルの第1の端に配置されており、前記縫合糸把持機構が、反対側の第2の端に、またはそれに近接して配置されている、請求項1に記載のデバイス。
【請求項4】
前記縫合機構が、前記ハウジングの前記縫合糸把持機構と同じ側に沿って配置されている、アクチュエータを含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項5】
前記縫合機構が、前記ハウジングの前記縫合糸把持機構と反対側に沿って配置されている、アクチュエータを含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項6】
前記縫合糸把持機構が、第1のジョーと、前記第1のジョーに対して移動する第2のジョーと、を含み、前記開放位置では、前記第1のジョーおよび前記第2のジョーが、互いに離間し、前記閉鎖位置では、前記第1のジョーが、前記第2のジョーに当接する
、請求項1に記載のデバイス。
【請求項7】
前記第1のジョーが、前記ハウジングに移動可能に連結されている移動可能なジョーを含み、前記第2のジョーが、前記ハウジングに連結されている固定されたジョーを含む、請求項6に記載のデバイス。
【請求項8】
前記第1のジョーが、前記第1のジョーおよび前記ハウジングに連結されている
付勢部材によって付勢される、請求項6に記載のデバイス。
【請求項9】
前記
付勢部材が、第1の端で前記第1のジョーに、かつ第2の端で前記ハウジングに取り付けられているばねを含む、請求項8に記載のデバイス。
【請求項10】
前記第1のジョーが、前記縫合糸把持機構の静止時位置を含む開放位置に付勢される、請求項8に記載のデバイス。
【請求項11】
前記第1のジョーが、前記縫合糸把持機構の静止時位置を含む閉鎖位置に付勢される、請求項8に記載のデバイス。
【請求項12】
前記縫合糸把持機構が、アクチュエータを含み、前記アクチュエータが、作動するとき、前記第1のジョーを前記閉鎖位置から前記開放位置に移動させ、それにより、前記
付勢
部材が、エネルギーを蓄積する、請求項11に記載のデバイス。
【請求項13】
前記縫合糸把持機構が、第1のジョーと、前記第1のジョーに対して移動する第2のジョーと、を含み、前記ハンドルに沿って配置されており、かつアクセス可能であり、第2のジョーを移動させるように構成されている、ボタンまたはレバーのうちの少なくとも1つを含む、アクチュエータをさらに含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項14】
前記第1のジョーおよび前記第2のジョーの各々が、移動可能なジョーを含む、請求項6に記載のデバイス。
【請求項15】
前記第1のジョーおよび前記第2のジョーが、ヒンジ点の周りで曲がる、請求項14に記載のデバイス。
【請求項16】
前記第1のジョーおよび前記第2のジョーが、静止時位置において前記閉鎖位置を採り、前記第1のジョーおよび前記第2のジョーがその周りを移動する一対の弾性ヒンジ点を含む、請求項14に記載のデバイス。
【請求項17】
前記縫合糸を受容するために前記ハウジング内に形成されたスロットを含む縫合糸カッターをさらに含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項18】
前記縫合糸把持機構の一部が、前記縫合糸カッターの一部も形成し、前記スロット内に配置されている前記縫合糸を切断するように構成されている、請求項17に記載のデバイス。
【請求項19】
前記縫合糸カッターの前記一部を形成する前記縫合糸把持機構の前記一部が、ブレードを担持する前記縫合糸把持機構の移動可能なジョーを含み、それにより、前記移動可能なジョーの移動により、前記縫合糸カッターが、切断位置に移動し、少なくとも部分的に前記スロット内に配置されるようにし、また同時に、前記縫合糸把持機構が前記開放位置と前記閉鎖位置の間で移動するようにする、請求項18に記載のデバイス。
【請求項20】
前記縫合糸把持機構が、前記ハウジングの一部である固定されたジョーをさらに含み、前記閉鎖位置では、前記移動可能なジョーが、前記固定されたジョーに向かう方向に移動し、前記移動可能なジョーが、前記縫合糸を受容するように構成されている前記縫合糸カッターの開口部に入るブレードを担持する、請求項19に記載のデバイス。
【請求項21】
前記移動可能なジョーが、前記移動可能なジョーと、前記ハウジングおよび前記固定されたジョーのうちの少なくとも1つとの間に延在する付勢部材によって付勢される、請求項20に記載のデバイス。
【請求項22】
前記第1のジョーおよび前記第2のジョーのうちの少なくとも1つが、前記縫合糸を受容するための内部に形成された溝を有する、請求項6に記載のデバイス。
【請求項23】
前記第1のジョーおよび前記第2のジョーのうちの少なくとも1つが、前記縫合糸と接触するための鋸歯状の表面を有する、請求項6に記載のデバイス。
【請求項24】
前記縫合機構が、
第1の尖端と反対側の第2の端とを有する縫合針と、
前記ハンドルに連結されている第1の針グリッパーであって、前記第1の針グリッパーが、前記縫合針がそれに対して自由に移動できる開放位置と、前記縫合針が第1の針グリッパーによって保持される閉鎖位置とを有する、第1の針グリッパーと、
前記ハンドルに連結されている第2の針グリッパーであって、前記第2の針グリッパーが、前記ハンドルに対して移動可能であり、前記縫合針がそれに対して自由に移動できる開放位置と、前記縫合針が前記第2の針グリッパーによって保持される閉鎖位置とを有する、第2の針グリッパーと、
前記第2の針グリッパーに動作可能に連結されているアクチュエータであって、前記アクチュエータの作動により、前記ハンドルに対して第2の針グリッパーが回転し、第1の針グリッパーが前記開放位置と前記閉鎖位置のうちの一方を採り、前記第2の針グリッパーが前記開放位置と前記閉鎖位置のうちの他方を採るようにする、アクチュエータと、を含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項25】
前記アクチュエータが、前記ハウジングの一方の側に沿って位置する枢動可能な部材であり、前記縫合機構が、前記ハウジングの遠位端に配置されており、前記縫合糸把持機構が、前記ハウジングの近位端に配置されている、請求項24に記載のデバイス。
【請求項26】
前記縫合糸把持機構が、前記ハウジングに対する退縮位置と延伸位置との間で移動する、請求項1に記載のデバイス。
【請求項27】
前記縫合糸把持機構が、第1のジョーと、前記第1のジョーに対して移動する第2のジョーと、を含み、前記開放位置では、前記第1のジョーおよび前記第2のジョーが、互いに離間し、前記閉鎖位置では、前記第1のジョーが前記第2のジョーに当接
し、前記退縮位置では、前記第1のジョーおよび前記第2のジョーの両方が少なくとも実質的に前記ハウジングの中空内部に含まれる、請求項26に記載のデバイス。
【請求項28】
前記第1のジョーが、前記ハウジング内に配置されている1つ以上のガイドレールに沿って延伸するベース部分と、突出部分と、を含み、前記第2のジョーが、前記第1のジョーの前記ベース部分に枢動可能に装着されている、請求項27に記載のデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年1月8日に出願された米国仮特許出願第62/614,946号に基づき、かつその優先権を主張するものであり、その内容全体は、あたかもその全体が本明細書に明示的に記載されているかのように、参照によって本明細書に組み込まれている。
【背景技術】
【0002】
針および縫合糸は、創傷や切開の閉鎖、カテーテルの固定、埋め込み型メッシュ、弁輪形成リング、および他の医療機器の固着などの適応症のために医療業界全体で使用される。これらの縫合糸は、患者の皮膚の表面だけでなく、腹腔鏡検査、内視鏡検査、および手術処置を通して使用される。手持ち式針ドライバは、様々なこれらの縫合用途で縫合糸の結び目を結ぶことを容易にするためによく使用される。縫合糸を結ぶことは迅速かつ簡単でなければならないため、直感的に結び目を結ぶ特徴を備えた縫合デバイスを作製する必要がある。組織を簡単に縫合し、縫合糸の結び目を作るために使用される医療機器は、医師、外科医、看護師、医師助手、軍人、および縫合糸の他の臨床および非臨床ユーザにとって価値がある。
【発明の概要】
【0003】
一実施形態では、本発明による組織を縫合するためのデバイスは、遠位端および反対側の近位端を有するハウジングを含むハンドルを含む。本デバイスはまた、針および縫合糸または縫合糸のみに影響を与えるための少なくとも1つのアクチュエータ、およびユーザが縫合糸の結び目を作るのを支援する縫合糸把持機構(デバイス)を含む。この把持機構は、ハウジングに連結または一体化することができ、何らかの有益な方法で縫合糸を把持し、解放し、結び、または影響を与えるように設計されている。それは、デバイスの近位端またはユーザに対して他の何らかの機能的位置に位置し得る。縫合デバイスは、事前に装填された針および縫合糸、またはユーザが装填した針および縫合糸を利用してもよい。それはまた、再利用可能なハンドルおよび使い捨て針または針カートリッジを利用する使い捨てデバイスまたはシステムであってもよい。デバイスはまた、縫合糸をトリミングするためのカッターを特徴とし得る。
【0004】
第2の実施形態では、組織を縫合するためのデバイスは、遠位端および反対側の近位端を有するハウジングを含むハンドルと、組織を通して縫合糸を前進させるための縫合針とを含む。縫合針は、第1の尖端および反対側の第2の端を有する。デバイスは、針に影響を与えるための少なくとも1つのアクチュエータと、縫合糸を把持し、解放し、結び、および影響を与えるための縫合糸把持機構とを含む。デバイスはまた、縫合糸をトリミングするためのカッターを特徴とし得る。
【0005】
第3の実施形態では、針ベースの縫合デバイスではないが、組織を縫合することを伴う処置で使用される医療デバイスが、縫合糸を把持し、解放し、結び、および影響を与える縫合糸把持機構と、医療処置で利用されている縫合糸を切断するのに有用なカッター機構も用いて構成され得る。
【0006】
上述の3つの実施形態における縫合糸把持機構は、細長い固定されたジョーと、ユーザによって作動されると、固定されたジョーに接触し、ジョー面の間で縫合糸を把持する細長い移動可能なジョーと、を含む。作動力が取り除かれるかまたは逆にされると、移動可能なジョーは固定されたジョーから分離し、それにより縫合糸を解放する。ジョーの細長い性質は、ユーザが、結び目を結ぶために有益であるループを縫合糸で作製することを可能にする。移動可能なジョーが、ジョーを作動させるためにユーザが接触する特徴を有する一方で、固定されたジョーはまた、ハウジングと一体化され得る。ジョー要素は、縫合糸を把持する目的でのみ利用されてもよく、または、例えば、縫合糸カッターとして作用するなど、複数の目的を果たす働きをすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1A】第1の実施形態による外科用ツールの側面図であり、第1の開放位置にある縫合糸把持機構が示されている。
【
図1B】外科用ツールの側面図であり、第2の閉鎖位置にある縫合糸把持機構が示されており、それによって縫合糸が把持される。
【
図1C】外科用ツールの側面図であり、第1の開放位置に戻った縫合糸把持機構が示されている。
【
図2A】部分的に透明な側面図であり、第1の開放位置にある
図1Aの縫合糸把持機構の構成要素を示している。
【
図2B】部分的に透明な側面図であり、第2の閉鎖位置にある縫合糸把持機構の構成要素を示している。
【
図3A】第2の実施形態による外科用ツールの側面図であり、第1の閉鎖位置にある縫合糸把持機構が示されている。
【
図3B】
図3Aの外科用ツールの側面図であり、第2の開放位置にある縫合糸把持機構が示されている。
【
図3C】
図3Aの外科用ツールの側面図であり、縫合糸把持機構が内部に縫合糸を捕捉するために第1の閉鎖位置にある。
【
図3D】
図3Aの外科用ツールの側面図であり、縫合糸把持機構が縫合糸を解放するために第2の開放位置にある。
【
図4A】部分的に透明な側面図であり、第1の閉鎖位置にある
図3Aの縫合糸把持機構の構成要素を示している。
【
図4B】部分的に透明な側面図であり、第2の開放位置にある縫合糸把持機構の構成要素を示している。
【
図5A】第3の実施形態による外科用ツールの側面図であり、第1の開放位置にある縫合糸把持機構が示されている。
【
図5B】
図5Aの外科用ツールの側面図であり、第2の閉鎖位置にある縫合糸把持機構が示されている。
【
図6A】第4の実施形態による外科用ツールの側面図であり、第1の開放位置にある縫合糸把持機構が示されている。
【
図6B】
図6Aの外科用ツールの側面図であり、第2の閉鎖位置にある縫合糸把持機構が示されている。
【
図7A】開放位置で示されている一体型カッターを含む縫合糸把持機構を備えた外科用ツールの側面図である。
【
図7B】
図7Aの外科用ツールの部分的に透明な側面図であり、開放位置にあるカッターを示している。
【
図7C】
図7Aの外科用ツールの部分的に透明な側面図であり、閉鎖位置にあるカッターを示している。
【
図8A】一実施形態による外科用ツールの側面図であり、縫合糸把持機構の周りに緩く巻かれた縫合糸を示している。
【
図8B】開放位置にある縫合糸把持機構を示す部分側面図である。
【
図8C】縫合糸把持機構によって把持され、結び目を形成するように操作される縫合糸を示す部分側面図である。
【
図9A】
図9A~
図9Eは鋸歯および様々なテクスチャ加工されたジョーを備える様々な例示的な縫合糸把持機構を示す。
【
図10A】
図10~
図10Dは縫合糸を捕捉してループなどの所望の形態に操作するための例示的な縫合糸把持機構を含む例示的な溝付きジョーを示す。
【
図11A】別の実施形態による外科用ツールの側面図であり、退縮位置で示されている退縮可能/延伸可能な縫合糸把持機構を含む。
【
図11B】
図11Aの外科用ツールの側面図であり、縫合糸把持器が開放位置にある状態で、延伸位置にある縫合糸把持機構が示されている。
【
図11C】
図11Aの外科用ツールの側面図であり、縫合糸把持器が閉鎖位置にある状態で、延伸位置にある縫合糸把持機構が示されている。
【
図12A】部分的に透明な側面図であり、退縮位置にある
図11Aの縫合糸把持機構の構成要素を示している。
【
図12B】部分的に透明な側面図であり、縫合糸把持器が開放位置にある状態で、延伸位置にある
図11Bの縫合糸把持機構の構成要素を示している。
【
図12C】部分的に透明な側面図であり、縫合糸把持器が閉鎖位置にある状態で、延伸位置にある
図11Cの縫合糸把持機構の構成要素を示している。
【
図13A】外科用デバイスの一端の部分左側面図であり、退縮位置にある縫合糸把持機構を示している。
【
図13B】外科用デバイスの一端の部分左側面図であり、延伸位置にある縫合糸把持機構を示している。
【
図14】本発明の別の実施形態による外科用ツールの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本明細書では、全身の組織、皮膚、筋肉、靭帯、腱および同様の構造内およびその近傍の縫合糸を管理するためのデバイスの概念および方法が開示される。現在の処置は、典型的に、ユーザが止血器、針ドライバ、鉗子、または人工縫合デバイスと共に針と縫合糸を利用して、次いで患者の組織に穴をあけることからなる。よくこれらの器具は、針を組織に通すことに加えて、縫合糸を管理および結ぶために使用される。
【0009】
例示的な一実施形態によるデバイスは、縫合糸の結び目を操作し、結ぶために使用することができる把持機構を備えた手持ち式縫合デバイスである。デバイスは、事前に装填された針と縫合糸、またはユーザが装填した針と縫合糸を利用する。さらに、それは、針および縫合糸アセンブリに影響を与えるためのアクチュエータ機構(「針移送機構」または「針シャトル機構」)、ならびに縫合糸把持機構を特徴とする。
【0010】
縫合デバイスのための多くの設計は、商業および公用、特許および出願、ならびに文献で容易に見られる。いくつかのものは、結び目スライドと縫合糸結び機構を有するが、他のものは有さない。本明細書で説明する縫合糸把持機構は、縫合を含む処置または部門で使用される任意の縫合デバイスまたはデバイスのハウジングに連結され得るか、および/または、ハウジングに一体化され得る。
【0011】
縫合糸把持機構は、細長い固定されたジョーと、作動するときに、固定されたジョーに接触し、ジョー面の間で縫合糸を把持する細長い移動可能なジョーと、を含むことができる。作動力が取り除かれるかまたは逆にされるときに、移動可能なジョーは固定されたジョーから分離し、それにより縫合糸を解放する。ジョーの細長い性質により、ユーザが縫合糸を正確に把持および操作して、結び目を結ぶために有益であるループを縫合糸で作製することを可能にする。固定されたジョーはまた、ハウジングと一体化されてもよく、移動可能なジョーは、ユーザが接触してジョーを作動させる特徴を有する。ジョー要素は、縫合糸を把持および管理する目的でのみ利用されてもよいか、または、例えば、縫合糸カッターとしても作用するなど、複数の目的を果たす働きをし得る。
【0012】
代替の形態では、細長い固定されたジョーおよび移動可能なジョーは、それらの静止時状態で接合してもよく、作動力は、ジョーを分離し、縫合糸を受容するために利用可能としてもよい。
【0013】
さらに別の形態では、細長いジョーは、両方とも移動可能であり、分離状態または接合状態に付勢されてもよい。ユーザは、縫合糸を把持し、解放し、結び、または影響を与えるために、いずれの構成でもジョーに影響を与えることができる。
【0014】
図に示される例示的な一実施形態をさらに詳しく見ると、縫合デバイス100は、ハウジング111からなるハンドル110と、針210および縫合糸220を含む、事前に装填またはユーザに装填される針および縫合糸アセンブリ200と、縫合糸把持機構130と、を含む。
【0015】
多数の市販の縫合デバイスを表すことができるハンドル110は、ハウジング111、アクチュエータ112などの1つ以上の構成要素で構成され、ポリマーまたは金属を含むがこれらに限定されない様々な材料から成形、鋳造または押し出しされてもよい。ハンドルの製造に適したポリマーの例は、ポリスチレン、アクリル、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリエステル、ポリエーテルイミド、ポリスルホン、ポリ乳酸、ポリ塩化ビニル、ポリオレフィン、ポリウレタン、フルオロポリマー、それらのコポリマーおよびアロイなどの熱可塑性および熱硬化性材料である。これらの材料は、それらの機械的特性を高めるために、ガラスまたは他の有用な補強剤で充填されてもよい。適切な金属は、チタン合金およびステンレス鋼を含むグループに由来するがこれらに限定されない。選択した材料は、物理的および機械的性能要件を満たし、エチレンオキシドやガンマ線照射などの医療デバイス業界で採用されている滅菌方法に耐えることができなければならない。ハンドルの設計は、線形および長手方向、非平面、角度付き、弓形、またはこれらの構造の組み合わせとなるように構築され得る。
【0016】
針アセンブリ200は、一般に、針210およびそれに取り付けられた縫合糸220からなる。針210は、組織を刺し通すのに適した遠位尖端211と、縫合糸を固着するのに適した近位鈍端212と、遠位端と近位端との間の本体と、を含む。代替的には、針が、遠位端および近位端の両方で尖っていることを特徴としてもよい。縫合針210は、真っ直ぐなものから湾曲したものまで、様々な構成で製造することができ、モノリシック、チャネルボディ、またはマルチパート構築物にすることができる。針の外径は、円形もしくは非円形、テーパ状であるか、または針の前進および把持を支援する特徴、すなわち、平坦部、リブ、隅部を有することができる。針の外径に見られる縦リブまたはくぼみまたは他の特徴が、追加の剛性、把持性を提供し、組織を効果的に横断する針の能力を高めてもよい。針は一般的にステンレス鋼および関連する合金から作製されるが、十分に剛性があり、機能的に鋭い遠位点を保持および維持でき、縫合糸に取り付けることができる他の金属、ポリマーおよびセラミック材料から作製することができる。従来、縫合糸は、かしめ、圧着、結び目、および接着剤によって金属針の近位端に固着される。縫合糸の取り付けはまた、縫合糸が近位端ではなく、針の他の領域に固着するように構成され得る。この設計のバリエーションは、縫合糸の管理とデバイスハンドル内の針を把持するための追加の自由度を提供する。これらの構成では、縫合の取り付けは、かしめ、圧着、結び目、接着剤などによって作製され得る。シリコン、ポリエチレングリコール、および/またはグリセリンを含むがこれらに限定されない針のコーティングは、針の潤滑性を高め、組織貫通力を低くする働きをする。
【0017】
縫合糸220は、内部および外部の創傷および切開を治療し、カテーテルまたは他の構成要素を患者に固定するために使用される糸状の材料である。それは、所望の特性および意図される用途に応じて、様々な直径、テクスチャ、形態、すなわち、一本鎖または編組、および材料に由来する。縫合糸220は、吸収性、すなわち、コラーゲン、ポリグラクチン、ポリジオキサノン、ポリグリコリド-ラクチドコポリマー、または非吸収性、すなわち、絹、ナイロン、ポリエステル、ポリプロピレン、ステンレス鋼であり得る。それらは、抗菌剤(例えば、クロルヘキシジン、銀、トリクロサン)、生体吸収剤(例えば、グリコリド/トリメチレンカーボネート、ヒドロゲル、ポリエチレンオキシド)、親水剤(例えば、ポリカプロラクトン、ポリエチレンオキシド)、潤滑剤(例えば、シリコン、ポリエチレングリコール、グリセリン)または他の機能性添加剤で処理および/またはコーティングできる。加えて、それらは、縫合糸が組織を通って一方向に円滑に引き込まれるが、反対方向に引っ張られるときには、組織に引っ掛かることを可能にする表面特徴、例えば、棘を有することができる。これは、ユーザが従来の結び目を結ぶ必要がなく、組織を一時的または永続的に接近させたいときに有利である。
【0018】
針アセンブリ200は、針210を用いた組織の縫合を実施するように動作することができる縫合機構の一部とすることができると理解されよう。本明細書に開示されている縫合デバイスの1つの一部として、任意の数の縫合機構が使用され得ると理解されよう。
【0019】
例えば、縫合デバイス100のための例示的な縫合機構は、共有に係る米国特許第9,125,644号、同第9,326,765号、同第9,554,793号、同第9,743,924、および米国特許出願公開第2018/0153540号に開示されており、各々が全体として本明細書に明示的に組み込まれている。
【0020】
縫合糸把持機構130は、細長い固定されたジョー131と、ユーザによって作動されるときに、固定されたジョー131に接触して、ジョー面133とジョー面134との間で縫合糸220を把持する細長い移動可能なジョー132と、を含むことができる。移動可能なジョー132は、作動力が取り除かれるか、または逆にされるとき(すなわち、ユーザがジョー132を解放するとき)、固定されたジョー131から分離し(離れて)、それによって縫合糸122を解放する。ジョー131、132の細長い性質により、ユーザが、結び目227を結ぶために有益なループを縫合糸220で作製することを可能にする(
図8D)。固定されたジョー131はハウジング111に連結されているが、移動可能なジョー132は、ジョー132を作動させるためにユーザが接触する、ボタン、パッド、レバーなどの特徴135を有する。この作動は、回転、線形、またはユーザによる作動に適した他の何らかの配向であるように構成され得る。一例では、移動可能なジョー132は、ピボット136を介してハウジング111に回転可能に連結されており、ばね137または同様の手段によって、開放の縫合糸受容および解放状態に付勢される。
【0021】
細長いジョー131、132は、縫合糸220に複数の方法で影響を与えるように設計されており、何よりもまず、接合および把持、開放および解放、ならびに巻き付き、ねじれまたはループを形成するように設計されている。これらの操作は、ジョー131、132に存在する設計特徴によって容易にされる。縫合糸220の触覚的把持は、ジョー面133、134上の鋸歯138、139(
図9A)によって高められる。これらの鋸歯138、139は、相互係止していてもしていなくてもよい。把持強度は、ユーザが加えた作動力によって形成され、ジョー131、132の材料剛性によって高められる。移動可能なジョー132の移動が完了する前にジョー面133、134が互いに接触するように、ジョー131、132を事前に装填することにより、把持強度も増加し得る。この早めの接触点は、一般に剛性のジョー131、132が増大する接触荷重を受けると、縫合糸220を把持するためのより大きな力を形成する。当業者はまた、ジョーの把持強度を増加させるために、てこ比および機械的利点を形成するために使用することができる、例えば、カム、リードスクリュー、レバー、ギアなどの多数の方法を理解するであろう。
【0022】
図1Aを参照すると、縫合デバイス100は、ハウジング111と、細長い固定されたジョー131および細長い移動可能なジョー132を含む縫合糸把持機構130と、を含み、開放位置に付勢され、縫合糸220に影響を与える準備ができていることが示されている。以降の図を明確にするために、針210に取り付けられた縫合糸220は示されない。
図1Bは、ユーザが特徴135およびハウジング111を使用して2つのジョー131、132を一緒に圧搾した結果として、縫合糸220が移動可能なジョー132と固定されたジョー131との間で把持されていることを示す。これにより、移動可能なジョー132が固定されたジョー131に向かって回転またはスライドする。鋸歯138、139(
図9Aに示す)は、縫合糸220に及ぼされる把持力を高めるために採用され得る。
図1Cでは、力が移動可能なジョー132から取り除かれるときに、ばね137(
図2Aに示す)または他の付勢手段が移動可能なジョー132を固定されたジョー131から離れたその原点に戻し、開放位置に戻し、縫合糸220を解放する。
図1Cに示される付勢力は、縫合糸把持機構を
図1Aに示す状態に戻す。
【0023】
付勢要素は、ハウジングまたはアクチュエータの特徴として成形される板ばねなどの、ハウジングと一体に形成される構造(例えば、回転レバーなど)を含むがこれに限定されない任意の数の異なる構造で提供され得ると理解されよう。
【0024】
ここで
図2Aを見ると、
図1A~
図1Cに描いた把持機構の内部要素が示されている。固定されたジョー131は、縫合デバイス100のハウジング111に堅固に連結されており、移動可能なジョー132は、枢動位置136でハウジング111に枢動可能に装着されている。ばね137は、移動可能なジョー132をデフォルトの開放位置に付勢する。
図2Bは、ユーザが特徴135およびハウジング111を介してジョー131、132を一緒に圧搾し、それによって縫合糸220を捕捉するときの接合状態の移動可能なジョー132および固定されたジョー131を示す。圧搾力を解放すると、移動可能なジョー132を固定されたジョー131から離れるように並進させる圧縮ばね137を介してジョー131、132が開放状態に戻ると、縫合糸が解放される。
【0025】
図2Aおよび
図2Bは、ばね137の例示的な取り付け点を示し、特に、ばね137(付勢力)が、一端で移動可能なジョー132に取り付けられ、反対側の端でハウジング111(すなわち、固定点)に取り付けられる。ユーザが移動可能なジョー132を圧搾するときに、ばね137が圧縮してエネルギーを蓄積し、ユーザが移動可能なジョー132を解放すると、エネルギーが解放され、移動可能なジョー132はその静止時(開放)位置に戻る。
【0026】
代替の形態では、細長い固定されたジョー132および移動可能なジョー131は、そのデフォルトの静止時状態で接合され、作動力は、ジョー131、132を分離させ、縫合糸220の受容に利用可能にする。
図3A~
図3Dは、この設計の変形を示している。
図3Aでは、ジョー131、132は静止時状態にあり、ばね137(
図2A)によってこの閉鎖状態に付勢されている。ユーザが特徴135、したがって移動可能なジョーをハウジング111に対して圧搾すると、移動可能なジョー132は固定されたジョー131から離れるように移動し、縫合糸220を受容することができる開放ジョー位置を形成する(
図3Bを参照)。次に
図3Cにおいて、ユーザは、特徴135から力を取り除き、ばね137は、ジョー131、132を、縫合糸220を把持することができるデフォルトの閉鎖状態に強制する。
図3Dを参照すると、特徴135を再度押すと、ジョー131、132を開放し、縫合糸220を解放する。
【0027】
本明細書で説明されるように、特徴135は、移動可能なジョーの移動を引き起こすために接触および操作される構造の形態をとることができる。
【0028】
図3A~
図3Dの実施形態は、縫合糸把持機構のジョーの反対のアレンジメントを示し、この実施形態では、ジョーは、第1の実施形態とは対照的に、静止時位置で閉鎖位置に付勢されており、移動可能なジョーは、静止時位置では開放位置にある。
【0029】
ここで
図4Aを見ると、代替の把持機構の内部要素が示されている。固定されたジョー131は、縫合デバイス100のハウジング111に堅固に連結されており、移動可能なジョー132は、枢動位置136でハウジング111に枢動可能に装着されている。ばね137は、移動可能なジョー132を、縫合糸を把持するに適したデフォルトの閉鎖位置に付勢する。
図4Bは、ユーザが特徴135(例えば、ボタンまたは接触面など)およびハウジング111を介してジョー131、132を一緒に圧搾するときに、縫合糸を受容または解放するのに適した、開放状態の移動可能なジョー132および固定されたジョー131を示す。このシーケンスは、縫合糸を意図的に操作するために、ユーザが繰り返すことができる。
【0030】
実施形態のさらに別のセットでは、上述のようなジョー131、132が両方とも、縫合糸220を把持し、解放し、および影響を与えるために、移動する、すなわち、いずれのジョーも固定されていないように構成され得る。
図5A~
図5Bおよび
図6A~
図6Bは、圧搾の作用または圧搾力の除去を通して開放または接合され得る一対の移動可能な半剛性ジョー141、142を示す。これらのジョーは、縫合糸に対して対称的または非対称的に開閉する様々な方法で構築され得る。
【0031】
特に
図5Aを見ると、ジョー141、142の1つのバージョンが示されている。これらのジョーは、ハウジング111に連結されており、デフォルトでジョー開放状態になる。それらは、ユーザがそれらを容易に操作することができ、そしてジョー面143とジョー面144との間で縫合糸220をしっかりと把持することができるように製造される。
図5Bでは、作動表面145、146に同時に加えられる力は、ジョーを接合し、縫合糸を把持する働きをする。この力を取り除くと、ジョー141、142がそれらのデフォルトの開放状態にスプリングバックすることを可能にする。このばねのような作用は、ばねまたはジョーの設計および材料の弾性特性などの付勢手段を使用することを通して達成できる。例えば、ジョーは、ハウジング111に一体化または連結されることができ、ジョー141、142をそれらの静止時構成に戻すことができる可撓性ヒンジ点148を特徴とする。この設計および類似の設計の他の変形に関して、例えば、ジョーの間の圧縮ばね、または個々のジョーがそれぞれのヒンジ式継手の周りで枢動可能であるものを容易に想定することができる。ハウジングおよび/またはジョーの典型的な構築材料は、ポリマー、例えば、ポリプロピレン、ナイロン、アクリロニトリルブタジエンスチレンなど、および金属、例えば、ばね鋼、ステンレス鋼、ニッケルチタン合金などである。
【0032】
一対の移動可能なジョー141、142の別のバージョンが
図6Aおよび
図6Bに示されており、ジョーはデフォルトで接合状態になるように設計されている。
図6Aは、ジョーを開いて縫合糸220を受容または解放する作動表面145、146に力が同時に加えられた瞬間のこの特定の実施形態を表している。これは、ジョーのそれぞれの面143、144、作動表面145、146、および一対の弾性ヒンジ点148、149を示す。この力を取り除くことにより、ジョー141、142は、
図6Bにあるように、それらのデフォルトの接合状態にスプリングバックすることを可能にする。ここで、一対のジョー141、142は、そのデフォルトで接合状態にある。このばねのような作用は、ばねまたはジョーの設計および材料の弾性特性などの付勢手段を使用することを通して達成できる。例えば、ジョーは、ハウジング111と一体であるか、または連結されていてもよく、ジョー141、142をそれらの静止時構成に戻すことができる可撓性ヒンジ点148、149を特徴とすることができる。典型的な構築材料は、ポリマー、例えばポリプロピレン、ナイロン、アクリロニトリルブタジエンスチレンなど、および金属、例えば、ばね鋼、ステンレス鋼、ニッケルチタン合金などである。
【0033】
上述のように、ジョー131、132は、縫合糸を把持、解放、および結び目を作ることに加えて、他の目的を果たす働きをし得る。縫合糸カッター170は、並行機構の例として参照される。縫合糸切断機構170が縫合糸把持ジョー131、132の1つと一体化された
図7A~
図7Cを検討する。一例として、縫合糸カッター本体171は、移動可能なジョー132の一体化部分として詳述され、以降では、それらは複合部として参照される。
図7Aを参照すると、縫合糸カッター機構170は、ピボット136(図示せず)でハウジング111に枢動可能に取り付けられたカッター本体171を含む。カッター本体171は、ハウジング111に向かって内向きに面し、ハウジング111内のスロット113を通って、これまたハウジングによって形成された縫合糸受容ノッチ115を潜在的に横切るブレード175(図示せず)を保持する。ブレード175は、ブレードがスロット113を通ってノッチ115を横切るときに、縫合糸受容ノッチ115内に位置する縫合糸220を切断できることに留意されたい。ばね137(次の図に示される)のような付勢部材は、ハウジング111内に配置され、この例では、複合のジョー132および縫合糸カッター本体171をデフォルトでは開放状態に付勢している。この状態では、ユーザは、カッター本体171およびハウジング111を圧搾することによって、縫合糸がノッチ115に位置するときに縫合糸を切断するか、または2つのジョー131、132の間で縫合糸を把持するかのいずれかを行うことができる。
図7Bは、デフォルトで開いた縫合糸受容状態にある複合の移動可能なジョー132および縫合糸カッター本体171の内部図を示す。ブレード175はスロット113に隣接しており、その遠位部分はノッチ115の縁部に位置付けられている。明確にするために、スロット113は、ブレードと平行であり、ブレードがハウジング内を移動すると、ブレードに対するガイドチャネルとしての働きをする。前の段落で述べたように、移動可能なジョー132は、デバイスが静止時にあるときに、固定されたジョー131から変位している。スプリング137およびカッター本体のピボット136もまた、この図において視認可能である。さらに、
図7Cは、ユーザが複合のジョー132および縫合糸カッター本体171に力を加え、それがピボット136の周りを回転するときの内部機構の構成を示している。この実施形態は、ジョー132および本体135の回転移動を説明しているが、同じ目的を達成するための線形トラックおよび作動の使用を想定することは容易であると留意されたい。ブレード175がスロット113に沿って縫合糸受容ノッチ115を横切るとき、付勢ばね137はカッター本体171の移動の間圧縮され、移動可能なジョー132は固定されたジョー131と接合する。ここでは、2つのセグメントに切断された縫合糸が示されている。ユーザの力を取り除くと、複合のジョー132および縫合糸カッター本体171は、そのデフォルトの開放状態に戻ることができる。
【0034】
細長いジョー131、132の別の使用が
図8A~
図8Dに提示されている。例えば、縫合糸の結び目227を結ぶのに適したループ225を形成するために、縫合糸220の一端221が
図8Aに示されており、ユーザによって接合したジョー131、132の周りに緩く巻かれている。
図8Bは、ユーザがジョーから圧搾力を除去し、付勢要素137が移動可能なジョー132を固定されたジョー131から離すように並進させたことによる、開放状態のジョー131、132を示す。ジョー131、132は、縫合糸220の別の端223を把持する準備ができている。
図8Cに示されるように、ユーザは、特徴135およびハウジング111を介してジョー131、132を一緒に圧搾し、縫合糸端223を把持し、結び目227を形成するために、ループ(複数可)225を通してそれを引っ張り、結び目227は、
図8Dに見ることができる。この一連のステップは、例えば、特定の結び目の安全性と強度を高めるため、または別のノットを形成するために繰り返すことができる。
【0035】
具体的にジョーの設計を見ると、縫合糸の把持強度を高めるために、鋸歯138、139、および/またはテクスチャ153を、ジョー面133、134の一方または両方に組み込むことができる。当然のことながら、ジョーの面は、平坦かつ平滑であり得る。鋸歯は、物理的な山および谷の使用を通して縫合糸220を係止、またはつまむ働きをする。テクスチャは、ジョー面の摩擦の性質を高めるために使用される。多くの可能な鋸歯およびテクスチャのいくつかの例を
図9A~
図9Eに示す。それぞれ、これらの図は、非相互係止する、相互係止する、丸みを帯びた、正方形の、およびテクスチャ加工された鋸歯を表す。これらの鋸歯は、成形、スタンピング、ローレット加工、またはこれらの特徴を形成することが可能な他の動作を通じて形成され得る。テクスチャ加工することは、コーティング、例えば、ゴム、エラストマー、接着剤などの成形、ディッピング、吹付け、または成形、エンボス加工、機械加工、化学エッチングなどによる粗面の形成を通して達成することができる。
【0036】
結び目227を結ぶことを容易にすることができるジョー設計の追加の態様は、一方または両方のジョー131、132の長さに沿って位置する溝160、162などの特徴を組み込むことである。溝160、162は、ループ225の形成および結び目を結ぶプロセス中に縫合糸220の位置を配置および制御する働きをする。これは、ループが誤ってジョー131、132から外れる機会を最小化することにより、縫合糸を取り扱うときにより優れた器用さをユーザに提供する。一実施形態では、
図10Aに最初に提示されているように、溝は円周状であってもよい。それは、浅いまたは深い、狭いまたは広い、丸みを帯びているまたは隅部があってもよい。ここで
図10Bを見ると、縫合糸端221がジョーの周りに巻き付けられてループ225を形成し、溝(複数可)160、162内に位置付けられている。特徴は、単一または複数の溝(
図10C)または隆起またはリブ165(
図10D)のような隆起構造とすることができると注意されたい。これらは、縫合に影響を与えるための可能な構成および形状のほんの一部である。
【0037】
本発明と結び目を結ぶことは、ジョーの開放がデフォルトであるか、またはジョーの閉鎖がデフォルトであるかのいずれかによって、および1つ以上の移動可能なジョーのいずれかで容易にされ得ると理解されたい。また、各ジョー131、132、141、142の間、およびハウジング111の間の相対運動は、回転、線形、またはこれら2つの何らかの組み合わせであり得ることも理解されたい。さらに、ジョーの設計、長さ、外観、および剛性は、特定の用途により良好に対処するために、様々な方法で構築することができる。
【0038】
図11A~
図13Bは、外科用デバイス100を含む、本明細書で説明する任意の外科用デバイスに組み込むことができる1つの例示的な縫合糸把持機構400を示す。特に、
図11A~
図13Bは、ハンドル110に組み込まれた縫合糸把持機構400を示す。前の実施形態と共通である、
図11A~
図13Bに示される外科用デバイスの他の要素は、同様の番号付けがされ、特に、アクチュエータ112および針210が含まれている。
【0039】
縫合糸把持機構400は、ハウジング110に対して退縮可能/延伸可能なタイプのものである。縫合糸把持機構400は、固定された(第1の)ジョー410(
図11Bに示される)(固定された(動かない)ジョー131と同様)と、移動可能な(第2の)ジョー420(移動可能なジョー132と同様)と、を含むことができる。より具体的には、
図11Aは、移動可能なジョー420が閉鎖位置にある、退縮位置(デバイスの格納状態)にある縫合糸把持機構400を示す。
図11Bは、移動可能なジョー420が固定されたジョー410に対して開放位置にある、延伸(引き出し)位置にある縫合糸把持機構400を示す。したがって、
図11Bは、移動可能なジョー420および固定されたジョー410の両方の伸張位置への並進を示し、移動可能なジョー420は、開放位置に付勢されて示されており、縫合糸に影響を与える準備ができている。
【0040】
図11Cは、移動可能なジョー420に(矢印で示される)力が加えられている延伸位置にある縫合糸把持機構400を示し、移動可能なジョー420の閉鎖および2つのジョー410、420間の縫合要素220の捕捉をもたらす。この作用は、ユーザがアクチュエータ(例えば、レバー)450および固定されたジョー410を使用して2つのジョー410、420を圧搾した結果として達成される。力が移動可能なジョー420から取り除かれるときに、ばね(この図には示さず)または他の付勢手段が移動可能なジョー420をその開放位置に戻す。
【0041】
図12A~
図12Cは、ハンドル110に対して縫合糸把持機構400を延伸および退縮させるための1つの例示的な方法を示す。より具体的には、ハンドル110のハウジングは、内部に形成された開口部を含み、そこで縫合糸把持機構400が移動することができる。示される実施形態では、ハンドル110は、その近位端に沿って開放している。ハンドル110の内部には、縫合糸把持機構400の移動をガイドするための1つ以上のガイドレール401などがあり得る。固定されたジョー410は、基部411と、基部411から延伸する指部412と、を含むことができる。基部411は、ガイドレール401に沿って乗る部分とすることができる。縫合糸把持機構400の移動を制御および制限するために、ハンドル110の設計に1つまたは複数の止め具を組み込むことができると理解されよう。例えば、第1の止め具は、ハンドルハウジング内での下向きの移動を制限し、第2の止め具は、ハンドルハウジング内での上向きの移動を制限し、ハンドル110からの縫合糸把持機構400の分離を防止する。戻り止めのような他の機械的特徴を含めて、縫合糸把持機構400がハンドルの内部で制御された方法で移動することを適切に確実にすることができる。
【0042】
図12A~
図12Cは、縫合糸把持機構400の直線運動を示すが、他のタイプの運動が想定されている。移動可能なジョー420は、ピボット413で基部411に枢動可能に連結されることにより、固定されたジョー410に移動可能に連結されている。移動可能なジョー420はまた、圧縮ばねなどのばねの形態であり得る付勢要素430によって付勢される。付勢要素430は、一端が移動可能なジョー420に連結されており、反対側の端がベース部分411またはハンドル110のハウジングなどの別の構造に連結されている。示される実施形態では、付勢要素430は、
図12Bに示すように、移動可能なジョー420を固定されたジョー410に対する開放位置に付勢する働きをする。しかしながら、前述のように、付勢要素は、反対の動作を実行し、移動可能なジョーを閉鎖位置(静止時に閉鎖)に付勢するように構成され得る。
【0043】
図12Aでは、縫合糸把持機構400は完全な退縮位置にあり、移動可能なジョー420は閉鎖されている。付勢要素430は、この位置でエネルギーを蓄積している。
【0044】
次いで、ユーザは、(
図13Aおよび
図13Bに関して以下で説明するように)アクチュエータ450を使用するなどにより機構400に駆動力を加え、機構400をハウジングから延伸および突出させることにより、縫合糸把持機構400を完全延伸位置に移動させる。機構400がこの方向に移動するときに、2つのジョー410、420が徐々に明らかになり、付勢要素の蓄積エネルギーが解放されて、
図12Bに示すように移動可能なジョー420をその開放位置に枢動させる。縫合要素220は、2つのジョー410、420の間に挿入することができる。したがって、
図12Bは、ユーザが遠位方向にスライド力を加えている間に2つのジョー410、420を案内する内部ガイドレールを使用した2つのジョー410、420の併進を示す。移動可能なジョー420は、付勢要素を使用することによって付勢されて開放状態で示されている。
【0045】
機構400を閉鎖するために、移動可能なジョー420は、
図12Cに示されるように、ジョー420に内向きの力を加えることにより(方向矢印を参照)、移動可能なジョー420がジョー410に向かって移動してジョーと接触することにより、縫合要素220がそれらの間で固定されるように、固定されたジョー410に向かって引き寄せられる。エネルギーは、この位置で付勢要素430に蓄積される。したがって、
図12Cは、ユーザが2つのジョー420、410を圧搾し、レバー特徴450を使用して付勢要素430を圧縮した結果として、移動可能なジョー420と固定されたジョー410との間で把持されている縫合糸220を示す。圧搾力を解放すると、移動可能なジョー420を固定されたジョー410から離れるように並進させる圧縮された付勢要素430を介してジョー420、410が開放状態に戻り、縫合糸を解放する。
【0046】
機構400を退縮させるために、ユーザはユニットに下向きの力を加えるだけであり、機構400はハンドル110の内部に移動する。
【0047】
戻り止めおよび相補的構造などの機械的特徴が、機構400を完全退縮位置および任意に完全延伸位置で解放可能に固定する働きをし得ると理解されよう。機構400のこの直線運動は、万能ナイフのブレードの移動に類似している。
【0048】
図13Aおよび
図13Bは、一端におけるハンドル110の側面図を示す。機構400が位置しているこの端では、スロット405がハンドルハウジングに形成されており、一方の端で開放され、反対側の端で閉鎖されることができる。アクチュエータ450は、通過してスロット405内に収容されるサイズのステム部分452を含むことができ、拡大ヘッド部分454は、ステム部分452の外端に形成され、ユーザによって接触されるアクチュエータの部分を含む(この意味で、アクチュエータ450はT字形を有することができる)。ヘッド部分454は、アクチュエータ450をスロット405内で直線的に移動させることにより、機構400の直線運動を引き起こすために、ユーザの親指または指が接触するように設計されている。他のタイプのアクチュエータも同様に使用され得ると理解されよう。
図13Aは、アクチュエータ450が最近位位置にある格納状態を反映している。
図13Bでは、機構400は伸張されており、移動可能なジョー420は、伸張位置で示されており、アクチュエータ450にはスロット405がない。したがって、
図13Bは、退縮位置に並進した2つのジョー410、420を示し、アクチュエータ(レバー)は最遠位位置に並進している。並進は、ユーザがレバー(アクチュエータ450)に近位方向にスライド力を加えるときに発生する。2つのジョー410、420を格納状態に配置させるために、ユーザは、レバーがハウジングによって形成されたストップに接触するまで、遠位方向にスライド力を加える。
【0049】
【0050】
さらに、
図11A~
図13Bは第1のジョー410を固定(fixed)または固定された(stationary)ジョーとして示しているが、前の実施形態に示されているものと同様に移動可能なジョー420のように移動するように構成することができることも理解されよう。さらに、第1のジョー410および第2のジョー420のデフォルトの位置は変動し得る。例えば、様々な実施形態には、(1)第1のジョー410は固定されているが、第2のジョー420は、デフォルトで開放位置にされる移動可能なジョーであること、(2)第1のジョー410は固定されているが、第2のジョー420は、デフォルトで閉鎖位置にされる移動可能なジョーであること、(3)第1および第2のジョー410、420が、デフォルトで開放位置にされる移動可能なジョーであること、ならびに(4)第1および第2のジョー410、420が、デフォルトで閉鎖位置にされる移動可能なジョーであることを含むが、これらに限定されない。
【0051】
図14は、縫合デバイス100と同様の縫合デバイス300を示し、したがって、同様の要素には同様の番号が付されている。
【0052】
縫合デバイス300と縫合デバイス100との間の1つの違いは、縫合デバイス300では、アクチュエータ112が、縫合糸把持機構130とハウジング111の同じ側に沿って形成されていることである。加えて、縫合デバイス300の(1つ以上の部品から形成される)縫合機構310は、共有の米国特許第9,125,644号、同第9,326,765号、同第9,554,793号、同第9,743,924号および米国特許出願公開第2018/0153540号に開示されているようものであり、これらの各々は、参照により以前に組み込まれている。縫合機構310は、縫合針210、ならびにハンドル110(ハウジング111)に連結されている第1の針グリッパー320およびハンドル110(ハウジング111)に連結されている第2の針グリッパー330を含む。
【0053】
第1の針グリッパー320は、縫合針210がそれに対して自由に移動することができる開放位置と、縫合針210が第1の針グリッパー320によって保持されている閉鎖位置と、を有する。
【0054】
第2の針グリッパー330は、ハンドル110に対して移動可能であり、縫合針210がハンドル110に対して自由に移動することができる開放位置と、縫合針210が第2の針グリッパー330によって保持されている閉鎖位置とを有する。
【0055】
アクチュエータ112は、第2の針グリッパー330に動作可能に連結されており、アクチュエータ112の作動により、第2の針グリッパー330がハンドル110に対して回転し、第1の針グリッパー320に開放位置および閉鎖位置のうちの一方を採らせ、第2の針グリッパー330に開放位置および閉鎖位置のうちの他方を採らせる。縫合機構310の追加の詳細および動作は、本明細書で以前に特定された共有に係る米国特許および米国公開出願に見られる。
【0056】
図14はまた、本明細書に開示されるもののいずれかなどの縫合糸把持機構を示す。例えば、示された縫合糸把持機構は、
図7Aおよび
図7Bに関して説明したものと同じまたは同様であり、スロット115、固定された(動かない)ジョー131および移動可能なジョー132を含む。
図7Bのように、移動可能なジョー132は、縫合糸220を切断するブレードを担持する。
図1Aに示されるもの(縫合糸カッター機構に組み込まれていないもの)などの他の縫合糸把持機構のいずれも等しく使用できると理解されよう。縫合糸把持機構は、ハンドルの一端に示され、一方、縫合機構310は、反対側の端にある。
【0057】
本明細書に開示される任意の縫合糸把持機構の一部として追加の特徴を含めることができるとも理解されるであろう。例えば、把持ジョーは、係止および係止解除するように構成され得る。係止機能は、縫合糸把持機構を係止位置に配置することにより、一時的に無効にすることができる。任意の数の異なるタイプの係止機構が使用され得る。例えば、係止ピン、ラチェット、ヨークなどを使用して、把持ジョーを適所に係止することができる。
【0058】
縫合糸把持機構は、少なくとも縫合針を含む縫合機構も有するデバイスの一部であるとして本明細書で説明されているが、縫合糸把持機構は、縫合機構を含まない(例えば、縫合機構は別の別個の外科用デバイスの一部であり得る)ハンドヘルドデバイス(外科用ツールまたは器具)の一部であり得ることが理解される。
【0059】
使い捨てデバイスとして企図されているが、デバイスを再滅菌し、追加の針および縫合糸またはブレードで再装填し、再利用できるようにする設計および材料にわずかな変更を加えることができると理解される。
【0060】
本発明は、例示的な実施形態を参照して説明されてきたが、当業者であれば、本発明の範囲から逸脱しない限り、様々な変更を行なうことができ、均等物を実施形態の要素の代わりに用いることができることを理解できるであろう。加えて、本発明の基本的な範囲から逸脱せずに、特定の状況または材料を本発明の教示に適合させるための多くの変形がなされてもよい。したがって、本発明は、本発明を実施するために想到される最良の形態として開示される特定の実施形態に限定されることがなく、本発明は、添付の特許請求の範囲に収まる全ての実施形態を含むことが意図される。