IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ディージル エス アーの特許一覧

特許7461303三次元粉砕機、それを実装する方法及びその使用
<>
  • 特許-三次元粉砕機、それを実装する方法及びその使用 図1
  • 特許-三次元粉砕機、それを実装する方法及びその使用 図2
  • 特許-三次元粉砕機、それを実装する方法及びその使用 図3
  • 特許-三次元粉砕機、それを実装する方法及びその使用 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-26
(45)【発行日】2024-04-03
(54)【発明の名称】三次元粉砕機、それを実装する方法及びその使用
(51)【国際特許分類】
   B02C 17/16 20060101AFI20240327BHJP
【FI】
B02C17/16 Z
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020567091
(86)(22)【出願日】2019-05-27
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-10-21
(86)【国際出願番号】 EP2019063656
(87)【国際公開番号】W WO2019228983
(87)【国際公開日】2019-12-05
【審査請求日】2022-03-14
(31)【優先権主張番号】1854592
(32)【優先日】2018-05-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】520464359
【氏名又は名称】ディージル エス アー
(74)【代理人】
【識別番号】100074734
【弁理士】
【氏名又は名称】中里 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100086265
【弁理士】
【氏名又は名称】川崎 仁
(74)【代理人】
【識別番号】100076451
【弁理士】
【氏名又は名称】三嶋 景治
(72)【発明者】
【氏名】ティエル ジュリアン
(72)【発明者】
【氏名】ラコスト フランソワ
(72)【発明者】
【氏名】レール ヴァランタン
(72)【発明者】
【氏名】アルルミ サミ
(72)【発明者】
【氏名】マルパルティダ イレーヌ
(72)【発明者】
【氏名】ムヴュ ブヌワ
【審査官】長谷部 智寿
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-181512(JP,A)
【文献】特表2018-513099(JP,A)
【文献】特開2011-161375(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0344204(US,A1)
【文献】特開2001-180933(JP,A)
【文献】特表2016-524777(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第04434940(DE,A1)
【文献】特表昭57-501783(JP,A)
【文献】特表平06-503372(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B02C 17/00-17/24
H01M 4/48
B01J 37/00-37/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
三次元ミル(100)であって、少なくとも、
長さ方向軸XXに沿って延び、且つ内部空間を画定する円筒形の壁を有する固定粉砕チャンバ(1)であって、液体媒質中の少なくとも1種の開始化合物を受け且つ混合して、初期混合物を形成することができ、少なくとも1種の粉砕体(6)またはマイクロビーズで部分的に満たされることが意図され、
第一の端部(2)における、前記少なくとも1種の開始化合物及び前記液体媒質を導入するための少なくとも1つの入口(4)と、第二の端部(3)における、前記固定粉砕チャンバ(1)内で形成された最終生成物を排出することができる出口(5)とを含む固定粉砕チャンバ(1)、
前記固定粉砕チャンバ(1)内に配置された撹拌(10)であって、前記長さ方向軸XXに沿った長いロッド(11)を含み、粉砕体および初期混合物ユニットを移動させるように旋回することができる撹拌(10)
を含み、前記固定粉砕チャンバ(1)は、前記内部空間において、前記固定粉砕チャンバ(1)の少なくとも1つの領域を加熱するために埋め込まれる少なくとも1つの加熱装置(20)を内蔵し、
前記加熱装置(20)、誘導加熱装置である三次元ミル(100)において、
前記誘導加熱装置(20)は、前記誘導加熱装置(20)を回転させるために前記撹拌機(10)の少なくとも一部によって担持されることを特徴とする三次元ミル(100)。
【請求項2】
前記誘導加熱装置(20)は、
磁場を発生させることができる少なくとも1つの誘導装置(21)と、
前記誘導装置(21)に結合され、且つ前記誘導装置(21)によって加熱され得る、導電性である少なくとも1つのサセプタ(22)と
を含む、請求項1に記載の三次元ミル(100)。
【請求項3】
前記固定粉砕チャンバ(1)は、前記加熱を前記初期混合物に向けるために前記誘導装置(21)と前記撹拌機(10)の前記長いロッド(11)との間に配置された磁気スクリーン(23)を内蔵する、請求項に記載の三次元ミル(100)。
【請求項4】
前記磁気スクリーン(23)は、前記撹拌機(10)の前記長いロッド(11)の長さの少なくとも一部に巻かれる第一の管状部分(24)と、前記第一の管状部分(24)に接続された第二のディスク状部分(25)であって、前記長いロッド(11)に垂直に配置される第二のディスク状部分(25)とを含む、請求項に記載の三次元ミル(100)。
【請求項5】
前記少なくとも1つの誘導装置(21)は、前記撹拌機(10)の前記ロッド(11)の一部を取り囲む巻回を有するコイル又はソレノイドであり、前記ロッド(11)の部分は、前記磁気スクリーン(23)によって保護される、請求項3または4に記載の三次元ミル(100)。
【請求項6】
前記少なくとも1つのサセプタ(22)は、前記撹拌機(10)及び前記長いロッド(11)に垂直に配置され、第一の混合部材に対応する、請求項2~5の何れか一項に記載の三次元ミル(100)。
【請求項7】
前記第一の混合部材(22)は、前記撹拌機(10)の前記長いロッド(11)と一体に製作された底部を含み、前記誘導装置(21)は、前記底部に埋め込まれる、請求項に記載の三次元ミル(100)。
【請求項8】
前記固定粉砕チャンバ(1)は、前記撹拌機(10)に垂直に配置されている、前記第一の混合部材(22)と異なる1つ又はいくつかの他の混合部材(26)を含む、請求項6又は7に記載の三次元ミル(100)。
【請求項9】
前記少なくとも1つの誘導加熱装置(20)は、前記固定粉砕チャンバ(1)の前記第一の端部(2)の付近に位置付けられる、請求項1~の何れか一項に記載の三次元ミル(100)。
【請求項10】
前記少なくとも1つの誘導加熱装置(20)は、前記固定粉砕チャンバ(1)の外部に配置された交流電流発電機に、少なくとも1つの電流供給手段(27)を通して接続される、請求項1~の何れか一項に記載の三次元ミル(100)。
【請求項11】
前記固定粉砕チャンバ(1)の外部に且つ前記第二の端部(3)の側に配置されている冷却手段(30)を含むことを特徴とする、請求項1~10の何れか一項に記載の三次元ミル(100)。
【請求項12】
三次元ミル(100)であって、少なくとも、
- 長さ方向軸XXに沿って延び、且つ内部空間を画定する円筒形の壁を有する固定粉砕チャンバ(1)であって、液体媒質中の少なくとも1種の開始化合物を受け且つ混合して、初期混合物を形成することができ、少なくとも1種の粉砕体(6)で部分的に満たされることが意図され、
第一の端部(2)における、前記少なくとも1種の開始化合物及び前記液体媒質を導入するための少なくとも1つの入口(4)と、第二の端部(3)における、前記固定粉砕チャンバ(1)内で形成された最終生成物を排出することができる出口(5)とを含む固定粉砕チャンバ(1)、
- 前記固定粉砕チャンバ(1)内に配置された撹拌(10)であって、前記長さ方向軸XXに沿った長いロッド(11)を含み、粉砕体および初期混合物ユニットを移動させるように旋回することができる撹拌(10)
を含み、前記固定粉砕チャンバ(1)は、前記内部空間において、前記固定粉砕チャンバ(1)の少なくとも1つの領域を加熱するために埋め込まれる、誘導加熱装置である少なくとも1つの加熱装置(20)を内蔵し、前記誘導加熱装置が、前記撹拌機(10)の少なくとも一部によって支持され、回転可能に設置されている、三次元ミル(100)の動作方法において、連続する以下のステップ:
(i)前記加熱装置を始動させ、且つ前記撹拌(10)を回転させるステップ、
(ii)前記液体媒質中の前記少なくとも1種の開始化合物を、前記固定粉砕チャンバ(1)の前記入口(4)を通して導入して、初期混合物を形成するステップ、
(iii)30分以下の滞留時間中、前記加熱装置(20)により、少なくとも60℃の温度まで加熱される前記初期混合物を粉砕するステップ、
(iv)前記固定粉砕チャンバ(1)の前記出口において、前記固定粉砕チャンバ(1)内で形成された前記最終生成物を捕集するステップ
を含むことを特徴とする動作方法。
【請求項13】
前記以下の追加のステップ:
(v)前記最終生成物を冷却するステップであって、それにより、前記最終生成物は、60℃以下の温度を有する、ステップ
を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
有機及び鉱物化学の合成反応を起こすため又は少なくとも1種の開始化合物を粉砕するための、請求項1~11の何れか一項に記載の三次元ミル(100)の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1種の原材料の微粉砕のための三次元ミルの分野に関する。特に、本願は、加熱装置、特に誘導加熱装置を含む三次元ミルに関する。
【0002】
本発明は、上記のミルの動作方法及び特に有機又は鉱物化学合成反応を起こすためのその使用にも関する。
【背景技術】
【0003】
従来技術から、液体媒質中での一般に粉末形態の生成物の粉砕のための三次元マイクロビーズ粉砕に関する出願米国特許第5,597,126号明細書が知られている。
【0004】
このミルは、長さ方向軸に沿って延び、マイクロビーズ及び液体媒質を受けることが意図される特に円筒形又は円錐形の粉砕チャンバを含む。チャンバは、一方の端部における生成物入口と、第一の端部とは反対の他方の端部における生成物出口とを含む。ミルは、チャンバの軸と同軸であり、液体媒質及びマイクロビーズを移動させるように旋回することができるミキサも含む。ミキサは、粉砕を支援するために、その長さにわたって分散された複数の混合部材をさらに含む。
【0005】
この種のミルは、特に医薬品分野において、生成物の直径を例えばマイクロメートルのオーダからナノメートルに縮小するために使用される。
【0006】
生成物の粒径の縮小は、実現され得るが、従来技術において、改善された特性を有する新規な三次元マイクロビーズミルに対する必要性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明は、産業的に利用可能であり、実装が容易である、特に少なくとも1種、好ましくは少なくとも2種の開始化合物を分散又は接触させることを改善できる新規な三次元ミルを提供するという目的を有する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そのため、本発明は、三次元ミルであって、少なくとも、
- 長さ方向軸XXに沿って延び、且つ内部空間を画定する概して円筒形の壁を有する固定粉砕チャンバであって、液体媒質中の少なくとも1種、一般には少なくとも2種の開始化合物を受け且つ混合して、初期混合物を形成することができ、少なくとも1種の粉砕体、好ましくはマイクロビーズで部分的に満たされることが意図され、
第一の端部における、前記少なくとも1種の開始化合物及び液体媒質を導入するための少なくとも1つの入口と、第二の端部における、前記固定粉砕チャンバ内で形成された最終生成物を排出することができる出口とを含む固定粉砕チャンバ、
- 前記固定粉砕チャンバ内に配置された撹拌器であって、長さ方向軸XXに沿った長いロッドを含み、粉砕体/初期混合物ユニットを移動させるように旋回することができる撹拌器
を含み、固定粉砕チャンバは、内部空間において、前記固定粉砕チャンバの少なくとも1つの領域を加熱するために埋め込まれる少なくとも1つの加熱装置を内蔵することを特徴とする三次元ミルに関する。
【0009】
特に、加熱装置は、誘導加熱装置である。
【0010】
これらの特徴により、本発明によるミルでは、誘導加熱装置等の加熱装置の存在のため、効率的なメカノシンセシス反応、特に連続的反応を生じさせることが可能である。実際に、このような装置により、例えば特定の反応温度を必要とする有機又は鉱物化学合成反応を起こすことが可能となり、その融点に応じて液体の形態となりやすい開始化合物の使用又は室温において不適当な粘度を有する開始化合物の使用が可能となる。本発明によるミルは、したがって、三次元マイクロビーズミルの一般的用途である粉末形態の開始化合物用としてのみ意図されている。
【0011】
したがって、本発明によるミルは、温度で動作可能であるため、化学的化合物の効率的な合成を可能にする反応器を形成し、これらの化学的合成の収率をさらに高め、同時に通常の反応時間を短縮する利点を有する。以下の実験部分に示すように、反応時間は、概して、3~13時間から1時間未満、典型的には1分未満(例えば、所望の変換速度による炭酸ジメチルのエステル交換反応)に短縮される。
【0012】
さらに、誘導加熱装置等の加熱装置により、液体流の形態の初期混合物を、たとえその流量が大きくても加熱でき、ミルからの放熱が生じない。実際に、固定チャンバの内部にある加熱装置により、固定チャンバを通る液体媒質中の開始化合物の連続流、すなわち連続流量に十分な熱エネルギーを提供することが可能となる。固定チャンバの周辺を単純に加熱した場合、このエネルギーの一部は、ボウルから散逸し得るため、全体的損失につながるが、本発明による加熱装置は、これに当てはまらない。
【0013】
最後に、本発明は、前記少なくとも1つの加熱装置、例えば誘導加熱装置を所望の反応に応じて位置付け(固定チャンバの入口及び/又は中央等)、調整する(所望の温度)ことができるという利点を有する。
【0014】
本発明による三次元ミルの個々に又は技術的に可能なあらゆる組合せにより得られる他の非限定的で有利な特徴は、以下の通りである。
- 前記誘導加熱装置は、前記誘導加熱装置を回転させるために前記撹拌器の少なくとも1つの部分によって担持され、
- 前記誘導加熱装置は、磁場を発生させることができる少なくとも1つの誘導装置と、前記誘導装置に結合され、且つ前記誘導装置によって加熱され得る、導電性である少なくとも1種のサセプタとを含み、
- 固定粉砕チャンバは、加熱を初期混合物に向けるために前記誘導装置と前記撹拌ロッドとの間に配置された磁気スクリーンを内蔵し、
- 前記磁気スクリーンは、前記撹拌ロッドの長さの少なくとも一部に巻かれる第一の管状部分と、第一の部分に接続された第二のディスク状部分であって、前記ロッドに垂直に配置される第二のディスク状部分とを含み、
- 前記少なくとも1つの誘導装置は、前記撹拌ロッドの一部、有利には上流区間を取り囲む巻回を有するコイル又はソレノイドであり、前記ロッド部分は、必要に応じて、前記磁気スクリーンによって保護され、
- 前記少なくとも1つのサセプタは、撹拌器に垂直に配置され、有利には固定粉砕チャンバの第一の端部に位置付けられた第一の混合部材に対応し、
- 第一の混合部材は、撹拌ロッドと一体形成された底部を含み、前記誘電物質は、前記底部に埋め込まれ、
- 固定粉砕チャンバは、撹拌器に垂直に配置されている、第一の混合部材と異なる1つ又はいくつかの他の混合部材を含み、
- 前記少なくとも1つの誘導加熱装置は、固定粉砕チャンバの第一の端部の付近に位置付けられ、
- 前記少なくとも1つの誘導加熱装置は、前記粉砕チャンバの外部に配置された交流電流発電機に、好ましくは撹拌ロッドと同軸である少なくとも1つの電流供給手段を通して接続され、
- 固定粉砕チャンバは、バルブ等の圧力制御手段を含み、
- ミルは、前記固定粉砕チャンバの外部に且つ第二の端部の側に配置されている、熱交換器などの冷却手段を含み、
- ミルは、固定粉砕チャンバの内部に少なくとも1つの温度制御手段及び/又は少なくとも1つの圧力制御手段を含む。
【0015】
本発明は、上で定義した三次元ミルの動作方法において、連続する以下のステップ:
(i)加熱装置、好ましくは誘導加熱装置を始動させ、且つ撹拌器を回転させるステップ、
(ii)液体媒質中の前記少なくとも1種、一般には少なくとも2種の開始化合物を、固定粉砕チャンバの入口を通して導入して、初期混合物を形成するステップ、
(iii)30分以下、好ましくは15分以下、詳細には1分以下、特に5~25秒の滞留時間中、加熱手段により、少なくとも60℃、好ましくは60~800℃、詳細には60~400℃の温度まで加熱される前記初期混合物を粉砕するステップ、
(iv)固定粉砕チャンバの出口において、前記チャンバ内で形成された最終生成物を捕集するステップ
を含むことを特徴とする動作方法も提供する。
【0016】
好ましくは、方法は、以下の追加のステップ:
(v)最終生成物を冷却するステップであって、それにより、最終生成物は、60℃以下、好ましくは50℃以下、典型的には30℃以下の温度を有する、ステップ
を含む。
【0017】
最後に、本発明は、有機及び鉱物化学合成反応を起こすため又は少なくとも1種の開始化合物を粉砕するための、上記の三次元ミルの使用に関する。
【0018】
以下の説明では、別段の断りがない限り、本発明における「X~Y」又は「XとYとの間」という数値範囲の指示は、X及びYの値を含むと理解されたい。
【0019】
「開始化合物」とは、液体、気体、固体(粉末等)の形態であり得るあらゆる化合物を意味し、開始化合物は、一般に、他の開始化合物及び/又は液体媒質と所望の反応に従って化学合成反応を起こすことが可能な試薬である。
【0020】
液体媒質とは、開始化合物と、粉砕体、例えばマイクロビーズとの混合を改善することができるあらゆる液体媒質を意味し、所望の反応に従い、この開始媒質は、余剰の試薬の1つにも対応し得る。
【0021】
「最終生成物」とは、特に中間反応生成物を含む、ミルの出口で得られる生成物を意味する。
【0022】
本発明は、本発明の非限定的な例示的実施形態の説明を、下記の添付の図面を参照して読むことでよりよく理解され、他の目的、詳細、特徴及び利点もより明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】特に誘導加熱装置を含む、本発明による第一の実施形態による三次元ミルの、縦方向軸XXを通る切断面に沿った断面図を示す。
図2】特に2つの誘導加熱装置を含む、本発明の第二の実施形態による三次元ミルの、長さ方向軸XXに沿った断面図を示す。
図3】それぞれ加熱装置と、他の混合部材を担持し得る少なくとも1つの撹拌機とを含む、本発明による三次元ミルの各種の変形形態を、長さ方向軸XX及び軸AAを通る切断面に沿って示し、(a)では、撹拌機は、図1のミルに従って複数の他の混合部材を含み、(b)では、撹拌機は、追加的に他の混合部材と協働可能なフィンガを含み、(c)では、撹拌機は、混合部材もフィンガも有さない。
図4】本発明によるミル及びそれに関連する動作方法を使用して、酢酸亜鉛を触媒として用い、加熱装置を使用した場合(温度93℃)に得られた亜鉛グリセロレート結晶のX線回折(DRX)スペクトルを示し、実施例4は、上部分に示されるディフラクトグラムであり、すなわち加熱装置を使用せず(温度23℃)、実施例3は、下部分に示されるディフラクトグラムである。亜鉛グリセロレートのICCD No.00-023-1975及び酸化亜鉛のICCD No.04-007-1614のDRXデータシートから得られた同定ディフラクトグラムも示されている。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本出願人は、産業規模での実装に適応された新規な改良型三次元ミルの開発に焦点を当ててきた。
【0025】
特に、本出願人は、最も多くの場合には1ステップにおいて、60℃以上の温度において極めて短い反応時間(一般に1時間未満、典型的には10分未満)で良好~優秀な変換速度を示し、またエネルギー消費量が比較的低い化学合成反応を起こすためのミルを開発した。
【0026】
本発明によるこのようなミルを図1~3に関して以下に説明する。
【0027】
三次元ミル100は、内部8を取り囲む概して円筒形の壁7を有する少なくとも1つの固定粉砕チャンバ1を含む。
【0028】
壁7は、長さ方向軸XXに沿って有利には水平に延びる。
【0029】
この固定粉砕チャンバ1は、液体媒質中の少なくとも1種、一般には少なくとも2種の開始化合物を受け且つ混合して、初期混合物を形成するように構成される。
【0030】
実際に、ミル100が粒子又は粉末の大きさを小さくするためのものである場合、チャンバ100は、1種の開始化合物を受けることができる。ミル100が化学合成を行うためのものである場合、チャンバは、少なくとも2種の異なる開始化合物を受けることができる。一般に、少なくとも2種の開始化合物が固定粉砕チャンバ1内に導入される。
【0031】
さらに、この固定粉砕チャンバ1は、少なくとも粉砕体6、例えばマイクロビーズ6等で部分的に満たされることも意図される。
【0032】
固定チャンバ1は、第一の(上流)端部2において入口4を含み、これは、固定粉砕チャンバ1内に開放し、開始化合物及び液体媒質を導入する役割を果たす。
【0033】
この入口4は、ミル100の動作前にマイクロビーズ6を導入する役割も果たすことができる。後にわかるように、マイクロビーズ6の大きさ及び性質は、所望の合成反応に依存し、その結果、調整可能である。
【0034】
粉砕チャンバ100は、第二の(下流)端部3において出口5を含み、これは、外部につながり、固定粉砕チャンバ1内で形成される最終生成物を排出するように構成される。
【0035】
出口5は、一般に、分離手段(図示せず)、例えばふるい又はグリッドを含み、これは、ミル100が動作中であるとき、最終生成物のみを排出し、したがってマイクロビーズ6を保持するようになされる。
【0036】
特に、入口4は、一般に、少なくとも1つのポンプ、例えば蠕動ポンプ(図示せず)に接続されている。このポンプにより、開始化合物又は事前に調製されている場合には初期混合物も入口4を介して固定粉砕チャンバ1内に供給することができる。
【0037】
開始化合物又は事前に調製された初期混合物は、例えば、ボウル等の少なくとも1つの容器に収容することができる。ポンプにより、三次元ミル100の動作中に開始混合物を調節可能な特定の流量で供給することがさらに可能となり、これを以下では「通過流量」と呼ぶ。この通過流量は、固定チャンバ1内で開始混合物を入口4から出口5に搬送することができる流れをさらに生じさせる。
【0038】
三次元ミル100は、撹拌機10も含み、これは、長さ方向軸XXに沿った長いロッド11を含み、主として第一の端部2の付近から固定チャンバ1の第二の端部3を越えて延びる。
【0039】
この長いロッド11は、有利には、上述の長さ方向軸XXに同軸に延びる。
【0040】
この撹拌機10は、特に、上述の通過の開始に加えて、粉砕体6及び初期混合物のユニットを移動させるように旋回するようになされる。
【0041】
特に、撹拌機10は、長さ方向軸XXの周囲で長いロッド11(又は回転シャフト)を介して回転し、固定チャンバ1の内部で初期混合物に渦流動作を与え、したがってこのチャンバ1の壁7の内面に沿って、この初期混合物と、チャンバ1内に存在するマイクロビーズ6との間の強力な撹拌を行うように構成される。
【0042】
特に、撹拌機10は、長いロッド11を介して毎分100回転以上、有利には毎分1000回転(rpm)以上、好ましくは毎分2000回転以上、典型的には毎分2500回転以上の回転速度を有することができる。
【0043】
本発明の意味において、「毎分100回転以上の回転速度」とは、以下の値、すなわち100、150、200、250、300、350、400、450、500、550、600、650、700、750、800、850、900、950、1000等、又はこれらの値間に含まれるすべての範囲を含み、「毎分1000回転以上の回転速度」とは、以下の値、すなわち1000、1100、1200、1300、1400、1500、1600、1700、1800、1900、2000、2100、2200、2300、2400、2500、2600、2700、2800、2900、3000、3100、3200、3300、3400、3500、3600、3700、3800、3900、4000、4500、5000、5500、6000等、又はこれらの値間に含まれるすべての範囲を含む。
【0044】
一般に、撹拌機10は、1000rpm~5000rpm、特に1500rpm~4500rpm、好ましくは2000rpm~4000rpm、典型的には2800~3200rpmの回転速度を有する。
【0045】
この撹拌を改善するために、撹拌機10は、チャンバ1の内壁7の内面と同様に、例えば図3に示される各種の考え得る構成を有することができる。
【0046】
図3aに示される第一の構成によれば、撹拌機10は、長いロッド11に沿って、これに垂直に配置された「回転」混合部材22、26を含む。
【0047】
後述のように、混合部材22(「第一の混合部材」と呼ぶ)は、本発明による加熱手段20のサセプタに対応することもでき、したがって他の混合部材26(「他の混合部材」と呼ぶ)と異なる。
【0048】
この第一の混合部材22及び他の混合部材26は、文献米国特許第5,597,126号明細書に記載されている混合部材に対応することができる。
【0049】
特に、これらは、粉砕体6(マイクロビーズ)を移動させるように構成された、相互に平行な少なくとも2つの円形ディスクを含むことができる。
【0050】
粉砕チャンバ1内のこれらの混合部材22、26の数は、2~8、好ましくは2~5で変化され得る。
【0051】
これらの混合部材22、26により、一方ではマイクロビーズ6をさらに撹拌することで初期懸濁液の粉砕を改善し、他方では反応時間を加速させることが可能となる。
【0052】
図3bに示される第二の構成によれば、撹拌機10も、そのロッド11に沿って1つ又はいくつかの「回転」混合部材22、26を含むことができ、これは、チャネル1の内壁7に垂直に配置された「固定」フィンガ28と協働するようになされる。
【0053】
フィンガ28は、特に壁7から垂直に延びるリングの形態である。
【0054】
この構成のために、混合部材22、26とフィンガ28は、相互に関して互い違いであり、すなわち、混合部材22、26とフィンガ28とは、チャンバ1内で交互に配置される。
【0055】
フィンガ28は、したがって、それぞれ2つの混合部材22、26間に配置される逆フィンガを形成する。
【0056】
さらに、ロッド11の太さは、前の構成(図3a)より太くなっており、それにより、混合部材22、26の周辺は、内壁7に近く、フィンガ28のそれは、撹拌機10のロッドの周辺に近い。
【0057】
したがって、この構成では、チャンバの容積は、前の構成より小さくなっており、したがって初期懸濁液、マイクロビーズ6及びチャンバ1の内壁7間でよりよい撹拌が可能となる。
【0058】
第三の構成によっても、図3cに示されるようにチャンバ1の容積が縮小され得る。
【0059】
このモードによれば、撹拌機10の外径は、チャンバ1の内径よりわずかに小さく、したがって撹拌機10の外壁とチャンバ1の内壁7との間に配置された小容量の環状チャンバ12が形成される。マイクロビーズ(図示せず)は、この環状チャンバ12内に配置される。この第三の構成の動作中、開始懸濁液は、入口4から特定の流量で導入され、その後、マイクロビーズ6により撹拌されながら、環状チャンバ12を通して出口5に移動する。
【0060】
粉砕チャンバ1及び撹拌機10の形状は、当業者により、所望の反応に応じて及び所望の反応時間に応じて調整され得る。例えば、粉砕チャンバ1は、初期混合物の粉砕を改善するための加速装置を含むことも可能である。この加速装置は、当業者の間で知られているため、以下で詳細に説明しない。
【0061】
一般に、固定チャンバは、直径が75mm~300mmであり、長さが80mm~900mmであり、撹拌機10の大きさは、65mm~260mmである。したがって、粉砕チャンバの容積は、0.35L~600L、好ましくは0.35L~400L、典型的には0.35L~62Lで変化され得る。
【0062】
本発明の意味において、「0.35L~600Lの固定チャンバ1の容積」とは、以下の値、すなわち0.35、0.5、0.8、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、80、85、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、300、350、400、450、500、550、600等、又はこれらの値間に含まれるすべての範囲を含む。
【0063】
好ましくは、ミル1の粉砕チャンバ3内にその動作中に格納されるマイクロビーズ6は、実質的に球形であり、その平均直径は、5mm以下、一般に0.05mm~4mm、好ましくは0.2~3mm、特に0.3~2mm、典型的に0.5~1mmのオーダである。好ましくは、マイクロビーズの直径は、1mm以下であり、典型的に0.05mm~1mmのオーダである。
【0064】
これらは、好ましくは、硬度が高く、研磨に対して比較良好な耐性を有するマイクロビーズから選択される。
【0065】
特に、EN ISO 6507-1(2005)規格に従って測定されたマイクロビーズ6のビッカーズ硬さは、900HV1以上、好ましくは900HV1~1600HV1、典型的に1000~1400HV1、特に110~1300HV1である。
【0066】
本発明の意味において、「900HV1以上のビッカーズ硬さ」とは、以下の値、すなわち900、910、920、930、940、950、960、970、980、990、1000、1010、1020、1030、1040、1050、1060、1070、1080、1090、1000、1110、1120、1130、1140、1150、1160、1170、1180、1190、1200、1300、1400、1500、1600、1700等、又はこれらの値間に含まれるすべての範囲を含む。
【0067】
有利には、これらの密度は、比較的高い。一般に、本発明によるマイクロビーズの真密度は、2g/cm以上、特に2~15g/cm、好ましくは3~12g/cm、典型的に4~10g/cmである。
【0068】
したがって、本発明によるマイクロビーズは、セラミックマイクロビーズ(酸化ジルコニウムZrO、ケイ酸ジルコニウムZrSiO)、スチールマイクロビーズ、タングステンカーバイドマイクロビーズ、ガラスマイクロビーズ又はこれらの組合せの1つであり得る。
【0069】
好ましくは、マイクロビーズは、セラミックから製作され、なぜなら、これらは、その摩耗により汚染物質を発生させないからである。
【0070】
特に、マイクロビーズは、酸化ジルコニウムから製作される。
【0071】
潜在的に、酸化ジルコニウムマイクロビーズは、他の酸化物、例えば酸化セリウム、酸化イットリウム及び/又はケイ素により安定化させることができる。
【0072】
例えば、下表1にまとめる以下の組成物は、本発明によるマイクロビーズを形成するのに適している。
【0073】
【表1】
【0074】
一般に、本発明に適したマイクロビーズ6は、ガラス又はガラスのみから製作されない。
【0075】
特に、マイクロビーズ6は、体積において、固定チャンバ2の総容積に関して50%~85%、好ましくは55%~70%を占める。
【0076】
本発明の意味において、「50~85%の体積」とは、以下の値、すなわち50、55、60、65、70、75、80、85等、又はこれらの値間に含まれるすべての範囲を含む。
【0077】
最後に、本発明によるミル100は、少なくとも1つの加熱装置、例えば特に図1及び2に示されている誘導加熱装置20を含む。
【0078】
特に、誘導加熱装置20は、固定粉砕チャンバ1の内部に内蔵され、それにより前記固定粉砕チャンバ1の少なくとも1つの領域を加熱できる。
【0079】
本発明のある特徴によれば、誘導加熱装置20は、チャンバ1の入口、すなわち第一の端部2の付近に埋め込まれて、初期混合物の流れをその導入から加熱し、且つ/又はしたがって化学合成を活性化させることができる。
【0080】
本発明の好ましい実施形態によれば、誘導加熱装置20は、前記撹拌機10の少なくとも一部によって担持され、それにより誘導加熱装置20を長さ方向軸XXの周囲で回転させることができる。
【0081】
この特徴には、初期混合物を形成する流れをよりよく加熱できるという利点がある。
【0082】
一般に、誘導加熱装置20は、
- 磁場を発生させることができる少なくとも1つの誘導装置21と、
- 前記誘導装置21に結合され、且つ前記誘導装置21によって加熱され得る、導電性である少なくとも1つのサセプタ22と
を含む。
【0083】
特に、誘導装置21は、撹拌機10の前記ロッド11の一部、有利には、図1に示されるように、第一の端部2の側に位置付けられた上流区間を取り囲む巻回を有するコイル又はソレノイドである。
【0084】
誘導装置21は、特に磁場を発生させることができ、それによりその環境の伝導物質、特にそれが結合されているサセプタ22を加熱することができる。実際に、サセプタは、導電性を有し、誘導装置により発せられた磁場をピックアップすることができる。
【0085】
好ましくは、誘導装置21は、マルチストランドリッツワイヤで製作され、したがってミル100のロッド11に巻き付けられる。例えば、IDPartner社の9.425mm、6×50×0.2mmの300ストランドリッツ銅線が本発明に適している。
【0086】
図3cに概略的に示される第一の実施形態によれば、三次元ミル100は、粉砕部材22又は26を有さず、初期混合物の撹拌は、低容量環状チャンバ12内で行われる。
【0087】
したがって、誘導加熱装置20は、好ましくは、チャンバ1の入口において、ロッド11と、より大きい直径の撹拌機10との接合部に配置される。
【0088】
この実施形態によれば、コイル等の誘導装置21は、ロッド11を取り囲むことができ、サセプタ22は、前記コイルを取り囲む、ロッド11に垂直なディスクの形態を有することができる。
【0089】
コイル及びサセプタのユニットは、ロッド11により回転され得る。
【0090】
図3a、3bに示され、図1及び2により詳細に示される第二の実施形態によれば、三次元ミル100は、混合部材22又は26を含む。
【0091】
この実施形態によれば、サセプタ22は、第一の端部2において埋め込まれた第一の混合部材、すなわち固定粉砕チャンバ1の端部2に最も近い混合部材に対応することができる。
【0092】
この第一の混合部材22は、したがって、サセプタを形成するための導電性材料で製作される。
【0093】
例えば、この第一の混合部材は、誘導装置により発せられる磁場に関する最大の結合を有するようにするために、炭素鋼等の抵抗材料で製作できる。
【0094】
さらに、この材料の選択は、好ましくは、800℃等の高温でのクリープ抵抗性を有する点でも望ましい。例えば、第一の混合部材22は、ArcelorMittal社のフェライト系ステンレス鋼Kara、グレードK44と同等のステンレス鋼Phyterm(登録商標)260で製作できる。この材料は、700℃まで加熱でき、それにより、その中を流れる液体流は、室温から所望の温度まで上昇できる。
【0095】
第一の混合部材22と異なる、すなわち必ずしも導電性を有するとは限らない他の混合部材26は、特にクロム鋳鉄又は酸化ジルコニウムタイプのセラミックから製作できる。
【0096】
図1を参照すると、この第一の混合部材22は、一般に、撹拌機10のロッド11と一体の底部を含む。好ましくは、誘導装置21は、この底部に埋め込まれる。
【0097】
一般に、誘導加熱装置20は、前記粉砕チャンバ1の外部に配置された交流電流発電機に、撹拌機10のロッド11と同軸である少なくとも1つの電流供給手段27を通して接続される。
【0098】
特に、発電機は、例えば、17~200kHzの周波数で5~15kW、好ましくは10kWの出力を有することができる。これは、並列又は直列であり得るキャパシティボックスを含む。例えば、直巻発電機、IDPartnerの参照番号IX3600、モデル8010は、本発明によるミルの製造に適している。
【0099】
電流供給手段27は、例えば、銅撚線、好ましくはコイルに至るフォワード電流供給撚線と、発電機に至るリターン電流供給撚線とに対応することができる。これらの撚線は、スイッチ29を介して発電機に接続できる。この供給手段により、撹拌機10のロッド11の重力中心が変化する可能性がある。しかしながら、これは、例えば、タングステン製のねじを挿入して補償することにより、バランスをとれる。
【0100】
一般に、スイッチ29も撹拌機10のロッド11と同軸である。この配置には、撹拌機10の回転中にコイルに電源供給できるという利点がある。
【0101】
したがって、発電機は、以下のユニット、すなわち発電機のキャパシティボックス、誘導装置21及び電流供給手段27からなるシステムの発振により定義される周波数を有する正弦波交流電流を提供する。発電機の電流は、したがって、誘導装置21に、それに電流供給手段27を介して接続されたスイッチ29によって供給される。誘導装置21は、電流の供給を受けると磁場を発生させることができ、それが第一の混合部材22によってピックアップされ、その加熱が可能となる。撹拌機10のロッド11によって回転されるこの第一の混合部材22は、したがって、熱伝導により、粉砕チャンバ1を通過する初期混合物(の流れ)を効率的に加熱できる。
【0102】
一般に、固定粉砕チャンバ1は、加熱を初期混合物に向けるために前記誘導装置21と撹拌機10の前記ロッド11との間に配置された磁気スクリーン23を内蔵する。
【0103】
実際に、撹拌機10又はそのロッド11は、導電材料から製作され得、したがって、撹拌機10のいかなる過熱も起こらないようにするために、撹拌機10又はロッド11のうち、少なくとも誘導装置21によって取り囲まれる部分を保護することが好ましい。
【0104】
特に、磁気スクリーン23(L字形の断面を有する)は、撹拌機1の前記ロッド11の長さの少なくとも一部、一般にはコイル21によって取り囲まれるロッド部分の周囲に取り付けられた第一の管状部分24と、第一の部分24に接続された第二のディスク型部分25又はクラウン型部分であって、前記ロッド11に垂直に配置される第二のディスク型部分25又はクラウン型部分とを有する。
【0105】
この磁気スクリーン23には、コイル21により発せられる磁場を第一の混合部材22に向け、それによりすべてのパワーが誘導装置の外部に集束され、特にロッド11に向かって方向付けられないという利点もある。したがって、加熱領域は、ロッド11の外周に限定され、特に第一の混合部材22に集中する。
【0106】
例えば、磁気スクリーンは、Fluxtrol(登録商標)で製作される円筒トーラスであり得る。
【0107】
図1に関して上で述べたように、ミル100は、誘導加熱装置20を含むことができる。
【0108】
しかしながら、変形形態として、ミル100は、図2に示されるように、2つの誘導加熱装置20を含むことが可能である。
【0109】
この図2に示されるように、2つの加熱装置20は、一般に直列に組み立てられ、すなわち前述の加熱装置と同じ第一の加熱装置が第二の加熱装置に接続される。
【0110】
第二の加熱装置も第一の加熱装置と同様であるが、それが第一の加熱装置と同じ発電機及び同じスイッチに接続される点が異なる。
【0111】
特に、第二の加熱装置の電流供給手段は、第一の混合部材と第二の混合部材との間に配置され、この第二の混合部材は、第二の加熱手段20のサセプタとして機能する。後者は、ロッド11に垂直に配置され、後者と一体の底部を含む。第二の加熱手段のコイルは、この底部においてロッド11も取り囲む。第二の加熱装置も磁気スクリーンを含み、これは、2つの部分、すなわち第一の加熱装置の磁気スクリーンのディスク25から、コイルにより取り囲まれる区間を含む第二の加熱装置のコイルに至るロッド11の部分の周囲に取り付けられる第一の管状部分と、第一の部分に接続された同じくディスク形状の第二の部分であって、ロッドに垂直に配置される第二の部分とを含む。
【0112】
この第二の部分により、特にコイルによって発せられる磁場を第二の混合部材に向けることができる。
【0113】
さらに、ミルの大きさ及び所望の化学合成反応に応じて、ミル100は、より多くの加熱装置20を含むことができる。しかしながら、一般には1つ又は2つの誘導加熱装置20が所望の合成反応を起こすのに十分である。
【0114】
特に、固定粉砕チャンバ1は、圧力制御手段、例えば少なくとも1つのバルブ(図示せず)を含むことができる。したがって、制御された雰囲気中で動作できる。
【0115】
さらに、ミル100は、少なくとも1つの温度制御手段、例えば粉砕チャンバ1の表面上に配置された1つ又はいくつかのサーモカップルを含むことができる。例えば、これらは、粉砕チャンバの入口及び出口において内蔵され得る。
【0116】
一般に、ミルは、前記固定粉砕チャンバ1の外部に且つ第二の端部3の側に配置されている、熱交換器などの最終生成物を冷却するための手段30も含む。
【0117】
この冷却手段30には、最終生成物の温度を下げて、熱暴走の可能性を回避するという利点がある。その目的のために、冷却手段は、最終生成物の温度を室温(すなわち15及び30℃)に到達できる温度又は少なくとも所望の合成反応を終了させることができる温度まで下げるようになされる。
【0118】
本発明は、本明細書に記載されている三次元ミル100、特に、
- 長さ方向軸XXに沿って延び、且つ内部空間を画定する概して円筒形の壁を有する固定粉砕チャンバ(1)であって、液体媒質中の少なくとも1種、一般には少なくとも2種の開始化合物を受け且つ混合して、初期混合物を形成することができ、少なくとも1種の粉砕体(6)、好ましくはマイクロビーズで部分的に満たされることが意図され、
第一の端部(2)における、前記少なくとも1種の開始化合物及び液体媒質を導入するための少なくとも1つの入口(4)と、第二の端部(3)における、前記固定粉砕チャンバ内で形成された最終生成物を排出することができる出口(5)とを含む固定粉砕チャンバ(1)、
- 前記固定粉砕チャンバ(1)内に配置された撹拌器(10)であって、長さ方向軸XXに沿った長いロッド(11)を含み、粉砕体/初期混合物ユニットを移動させるように旋回することができる撹拌器(10)
を含み、固定粉砕チャンバ(1)は、前記内部空間において、前記固定粉砕チャンバ(1)の少なくとも1つの領域を加熱するために埋め込まれる少なくとも1つの加熱装置(20)を内蔵する、三次元ミル(100)の動作方法にも関する。
【0119】
当然のことながら、前述のミルの特徴のすべてが動作方法の説明にも当てはまる。
【0120】
特に、方法は、連続する以下のステップ:
(i)加熱装置、好ましくは誘導加熱装置20を始動させ、且つ撹拌機10を回転させるステップ、
(ii)液体媒質中の前記少なくとも1種、一般には少なくとも2種の開始化合物を、固定粉砕チャンバ1の入口4を通して導入して、初期混合物を形成するステップ、
(iii)30分以下、好ましくは15分以下、詳細には1分以下、特に5~25秒の滞留時間中、加熱手段20により、少なくとも60℃、好ましくは60~800℃、詳細には60~400℃の温度まで加熱される前記初期混合物を粉砕するステップ、
(iv)固定粉砕チャンバ1の出口において、前記チャンバ内で形成された最終生成物を捕集するステップ
を含むことを特徴とする。
【0121】
好ましくは、方法は、以下の追加のステップ:
(v)最終生成物を冷却するステップであって、それにより、最終生成物は、60℃以下、好ましくは50℃以下、典型的には30℃以下の温度を有する、ステップ
を含む。
【0122】
第一に、本発明による方法は、特に加熱装置、例えば誘導加熱装置20を始動させるステップを含むステップ(i)を含む。
【0123】
その目的のために、発電機は、交流電流を発するために操作され、それがスイッチ及び電流供給手段からコイル21に伝送される。コイルは、したがって、可変磁場を発し、それが第一の混合部材22によってピックアップされる。この第一の混合部材22は、導電性を有し、特に一方では撹拌機10を保護し、他方では磁場をそれに向かわせる磁場によってこの磁場内に投じられる。これは、この第一の混合部材において、フーコー電流とも呼ばれる誘導電流を形成する。この誘導電流を形成する電子の移動は、第一の混合部材でジュール効果によって放熱させる。
【0124】
このステップ(i)中、撹拌機10のロッド11も回転される。
【0125】
したがって、例えば既に混合されていることができる開始化合物を導入して、液体媒質との初期混合物を形成するステップ(ii)に進む。
【0126】
初期混合物が調製されると、これは、一般に入口4を介して流量調節可能蠕動ポンプを通して三次元ミル100にもたらされる。蠕動ポンプにより、チャンバ1の入口の前まで初期混合物の混合を継続できる。さらに、前述のように、このポンプにより、開始懸濁液をチャンバ1内に制御された通過流量で導入することが可能となる。
【0127】
一般に、初期混合物は、10L/h以上の通過流量で導入される。
【0128】
本発明の意味において、「10L/h以上の通過流量」とは、以下の値、すなわち10L/h、15L/h、20L/h、25L/h、30L/h、35L/h、40L/h、45L/h、55L/h、60L/h、65L/h、70L/h、80L/h、85L/h、90L/h、95L/h、100L/h、110L/h、120L/h、130L/h、140L/h、150L/h、50L/h、55L/h、60L/h、65L/h、70L/h、75L/h、80L/h、85L/h、90L/h、95L/h、100L/h、105L/h、110L/h、115L/h、120L/h、125L/h、130L/h、135L/h、140L/h、145L/h、150L/h、155L/h、160L/h、165L/h、170L/h、175L/h、180L/h、200L/h、300L/h、400L/h、500L/h、600L/h、700L/h、800L/h、900L/h、1m/h、2m/h、3m/h、4m/h、5m/h、6m/h、7m/h、8m/h、9m/h、10m/h、11m/h、12m/h、13m/h、14m/h、15m/h等、又はこれらの値間に含まれるすべての範囲を含む。
【0129】
特に、初期混合物は、10~130L/h、好ましくは20~100L/h、典型的には30~90L/hの通過流量で導入される。
【0130】
当然のことながら、通過流量は、方法を実装するために使用される三次元マイクロビーズミルの大きさに応じて変化され得る。例えば、容積が0.5Lの固定チャンバ1を有する三次元マイクロビーズミルの場合、通過流量は、40~150L/hのオーダ、例えば45L/hである一方、特に60Lの固定チャンバ1を有するより大きいサイズのミルの場合、流量は、2~15m/hのオーダ、例えば4m/hであり得る。
【0131】
初期混合物がチャンバ1内に導入されると、粉砕ステップ(iii)が開始する。
【0132】
通過流量により生じる流れの効果の下で、開始懸濁液は、撹拌機10によって移動されながら、固定チャンバ1内を入口4から出口5に移動し、それは、チャンバ1の内壁7に沿ったこの懸濁液のマイクロビーズ6及び必要に応じて混合部材26、フィンガ28等による強力な撹拌を可能にする。
【0133】
誘導加熱手段20により、チャンバ1内を通る流れを、30分以下、好ましくは15分以下、詳細には1分以下、特に5~25秒の滞留時間中、少なくとも60℃、好ましくは60~800℃、詳細には60~400℃の温度まで加熱することができる。
【0134】
本発明によれば、「少なくとも60℃の温度」とは、以下の値、すなわち60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、75、75、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、250、300、350、400、450、500、550、600、650、700、750、800、850、900、950、1000、1500、2000、2500、3000、3500、4000、4500等、及びこれらの値間のすべての範囲を含む。
【0135】
同様に、本発明によれば、「30分以下の滞留時間」とは、以下の値、すなわち30分、29分、28分、27分、26分、25分、20分、15分、14分、13分、12分、11分、10分、9分、8分、7分、6分、5分、4分、3分、2分、1分、55秒、50秒、45秒、40秒、35秒、30秒、25秒、20秒、15秒、10秒、5秒等、又はこれらの値間のすべての範囲を含む。
【0136】
滞留時間は、一般に、マイクロビーズの見掛けの体積及び通過流量に固有である。
【0137】
例えば、マイクロビーズの見掛けの総体積が270cm(見掛けの密度が3.7g/cmのビーズ)、懸濁液導入の流量が45L/h、すなわち12.45cm/sである場合、懸濁液のチャンバ2内の滞留時間は、約20秒と推定される。したがって、滞留時間は、有利には、例えばマイクロビーズの見掛けの密度及び通過流量を制御することによって調節され得る。
【0138】
「見掛けの体積」とは、マイクロビーズの、ビーズ間に侵入した空気を含む体積を意味する。見掛けの密度は、マイクロビーズの質量と見掛けの体積との比である。
【0139】
撹拌機の回転速度は、例えば、4~20Pi rad/s、好ましくは4~8Pi rad/sで変化され得る。
【0140】
粉砕ステップは、1回又はいくつかの通過(振り子又は再循環モード)による連続モード又は不連続モードで行うことができる。
【0141】
不連続モードで行われる場合、初期混合物及び/又は粉砕チャンバに再導入される最終生成物の通過回数は、1~50、好ましくは1~10、特に1~5であり得る(すなわち1回目の通過後、出口5で得られた生成物は、捕集されて、ポンプによりチャンバ1に入口4から再び注入され、2回目の通過が可能となる)。
【0142】
本発明によれば、「1~50の通過回数」とは、以下の値、すなわち50、49、48、47、45、40、35、30、25、20、15、10、9、8、7、6、5、4、3、2、1を含む。
【0143】
特に、開始懸濁液の通過回数は、1~2、好ましくは1である。
【0144】
実際に、本出願人は、マイクロビーズミル内の1回の通過で、非常に短い滞留時間にもかかわらず、出口5において完全に満足できる最終生成物が得られることを認識した。
【0145】
したがって、この粉砕ステップは、好ましくは、連続モードで行われる。
【0146】
粉砕ステップが行われると(iii)、最終混合物がミル100の出口5で捕集される(iv)。
【0147】
好ましくは、ミル100の出口において、最終混合物は、熱交換器によって冷却される。この冷却により、特に必要に応じて、ミル内で行われる化学反応の暴走を回避することが可能となる。
【0148】
その目的のために、冷却手段は、最終生成物の温度を、室温(すなわち15及び30℃)に到達できる温度又は少なくとも所望の合成反応を終了できるようにする温度に下げるようになされる。
【0149】
特に、上述のように、最終生成物の冷却は、その温度が60℃以下、好ましくは50℃以下、典型的に30℃以下となるように行われる。
【0150】
潜在的に、所望の反応に従って最終混合物が洗浄、乾燥及び/又はか焼(calcined)される。
【0151】
本発明は、有機及び鉱物化学合成反応を起こすための、前述の三次元ミル100の使用にも関する。
【0152】
本発明は、有機及び鉱物化学合成反応を起こすため又は少なくとも1種の開始化合物を粉砕するための、前述の三次元ミル100の使用にも関する。
【0153】
同様に、上で定義されたミルの特徴のすべては、本明細書において、本発明による使用にも当てはまる。
【実施例
【0154】
以下の試験の説明は、純粋に例示的で非限定的な例として提供される。
【0155】
A.特徴付け:XRD
プライマリモノクロメータGe(111)(極限照射CuKα1(0.15406nm))を備える、PANalytical B.V.が販売する回折計X’Pert Pro MPDでX線回折(XRD)スペクトルを収集した。
【0156】
使用した検出器は、検出器X’Celeratorである。
【0157】
XRD測定は、5°~70°(スケール2θ)、ピッチ0.017°で行った。
【0158】
ソフトウェアX’Pert Highscore Plus(version 4.0)により、Rietveld 1方式を用いてXRDの結果を分析した。
【0159】
XRDによる試験を行うために、亜鉛グリセロレート結晶の懸濁液を事前に50℃の空気で乾燥させ、粉末を得た。
【0160】
B.本発明によるミル
・機器
マイクロビーズ1kgを含み、図1に示されるように本発明による加熱装置20を含むようになされた、Willy A.Bachofen AGが販売する三次元マイクロビーズミルDynomill ECM AP 2Lで試験を行った。すなわち、ミルは、固定チャンバの入口に位置付けられた加熱装置を含み、第一の混合部材は、サセプタとして機能する。
【0161】
特に、加熱装置は、以下の特徴を有する。
【0162】
【表2】
【0163】
マイクロビーズは、酸化ジルコニウム製であり、直径は、0.45/0.55mmである。試験に用いたマイクロビーズの特徴を下の表3にまとめる。
【0164】
【表3】
【0165】
0.45/0.55mmのマイクロビーズは、特にSaint-GobainによりZirmil(登録商標)Y Ceramic Beadsのブランド名で販売されている。
【0166】
ミルの粉砕チャンバは、容量が2000mLであり、体積において、その総容量に関して、試験に応じて上述のマイクロビーズの80%で満たす。
【0167】
動作において、マイクロビーズを、撹拌機を用いて2890rpmの回転速度で拡散する。撹拌機は、クロム鋳鉄製の混合ディスクをさらに含む。
【0168】
・原材料
試験のための開始原材料は、以下の通りである:Ampere Industriesが販売する純度99%の酸化亜鉛(ZnO)及びReactolabが販売する純度99.5%のグリセロール。
【0169】
C.試験のためにとられた一般的手順
以下の各試験を行うために、次のステップを行った。
- ビーカ中において、グリセロール対酸化亜鉛の質量比5.5の酸化亜鉛並びにグリセロール及び触媒(酢酸又は酢酸亜鉛)から開始懸濁液を調製し、その後、開始懸濁液を磁気撹拌機によって撹拌する。
- その後、流量調節可能蠕動ポンプを用いて、前述の改良型ミルDynomill ECM AP 2Lにそれを供給する。ミル内の通過流量は、最高数百L/hに到達し得る。この試験では、150L/hに固定し、これは、約20秒の滞留時間に対応する。
- 開始懸濁液を、その後、直径0.45~0.55mmのマイクロビーズを含むミルに特定の持続時間(これは、開始懸濁液の通過流量に依存する)にわたり室温(20~25℃)で通過させ、したがってミルの出口において亜鉛グリセロレート結晶の懸濁液が得られる。
- 最後に、亜鉛グリセロレート結晶の懸濁液を回収する。
【0170】
・比較試験
比較試験も行った。この試験は、従来技術による亜鉛グリセロレートの製造方法を用いて行った。この試験は、加熱可能なZ字形アームミキサ(2L)内において、亜鉛水亜鉛土(1692g)をグリセロール(428g)、湿潤剤Solsperse 21000(38g)及び触媒としての酢酸(3.6g)と共に120~130℃で4~5時間加熱することを含む(文献米国特許第7,074,959号明細書の例1)。
【0171】
D.結果
【0172】
【表4】
【0173】
したがって、実施例2及び4、特に本発明による実施例4に示されているように、本発明によるミルにより、所望の化学合成反応を非常に短い滞留時間で行うことが可能である。
【0174】
従来技術に記載されているものと同じ触媒を用いて、従来技術の4~5時間に対して20秒の滞留時間で行った実施例2において、得られた収率は、本発明による加熱装置を使用しない場合の10%に対して38%であった。当然のことながら、38%の収率は、例えば、固定チャンバ内の複数の通過又は1~2分の滞留時間で初期混合物の滞留時間を延長することによって改善できるが、依然として従来技術の4~5時間よりはるかに低い。
【0175】
従来技術に記載されているものと異なる触媒を用いて、わずか20秒間の滞留時間で行った実施例4において、従来技術の4~5時間に対して100%の収率が得られる(図4)。さらに、加熱装置を用いると、収率は、これを用いない場合のわずか50%に対して100%であり、ZnOの反応物質の残留の存在がディフラクトグラム上で実際に観察される(図4)。
図1
図2
図3
図4