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特許7461305遠心力による粒子の濃縮用のマイクロフルイディック装置、及び対応する遠心分離及び/又は検出装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-26
(45)【発行日】2024-04-03
(54)【発明の名称】遠心力による粒子の濃縮用のマイクロフルイディック装置、及び対応する遠心分離及び/又は検出装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 1/10 20060101AFI20240327BHJP
【FI】
G01N1/10 P
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020567790
(86)(22)【出願日】2019-06-05
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-09-27
(86)【国際出願番号】 IB2019054679
(87)【国際公開番号】W WO2019234654
(87)【国際公開日】2019-12-12
【審査請求日】2022-04-19
(31)【優先権主張番号】102018000006083
(32)【優先日】2018-06-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】518314084
【氏名又は名称】エルテック・ソチエタ・ペル・アツィオーニ
【氏名又は名称原語表記】ELTEK S.P.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100189555
【弁理士】
【氏名又は名称】徳山 英浩
(72)【発明者】
【氏名】マルコ・ピッツィ
(72)【発明者】
【氏名】ジョヴァンニ・メリオーリ
(72)【発明者】
【氏名】ヴァレンティーナ・ガッロ
(72)【発明者】
【氏名】マッシモ・ザニン
【審査官】西浦 昌哉
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2008/0317634(US,A1)
【文献】特開2011-069674(JP,A)
【文献】特開2003-202321(JP,A)
【文献】特開2004-109082(JP,A)
【文献】特開2014-103966(JP,A)
【文献】特開2011-075420(JP,A)
【文献】特開昭56-070462(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 1/00- 1/44
G01N 33/48-33/98
G01N 35/00-35/10
G01N 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体サンプル(FS)に含まれる粒子を濃縮して検出するためのマイクロフルイディック装置であって、
回転中心(5a)について回転するように構成される基板(11)を含み、
前記基板(11)は、前記基板(11)によって特定される平面に従って延びる少なくとも1つのマイクロフルイディック構成(12)が画定される面(11b)を有し、
前記少なくとも1つのマイクロフルイディック構成(12)は、第一の端部(13a)及び第二の端部(13b)をそれぞれ有する複数のマイクロチャネル(13)を含み、
前記複数のマイクロチャネル(13)それぞれは、その第一の端部(13a)及びその第二の端部(13b)の中間領域において、前記基板(11)の前記回転中心(5a)について、放射方向(R)に第一の距離(R1)にある、少なくとも1つの検出領域(15)を含み、
前記複数のマイクロチャネル(13)それぞれの前記第一の端部(13a)及び前記第二の端部(13b)は、前記基板(11)の前記回転中心(5a)について、放射方向(R)に第二の距離(R2)にあり、
前記第二の距離(R2)は互いに等しいことが望ましく、
放射方向(R)の前記第一の距離(R1)は、放射方向(R)の前記第二の距離よりも大きく、
前記検出領域(15)は、粒子蓄積のための領域であり、
前記少なくとも1つのマイクロフルイディック構成(12)は、第一のダクト又はチャンバ(14a)、および第二のダクト又はチャンバ(14b)のうちの少なくとも1つを含み、
前記複数のマイクロチャネル(13)は、第一のダクト又はチャンバ(14a)、および第二のダクト又はチャンバ(14b)にそれぞれ並列で接続された前記第一の端部(13a)及び前記第二の端部(13b)それぞれを有し、
第一のダクト又はチャンバ(14a)、および第二のダクト又はチャンバ(14b)のうちの1つは、前記流体サンプル(FS)が前記複数のマイクロチャネル(13)の一端から侵入でき、その中に収容される空気が第一のダクト又はチャンバ(14a)、および第二のダクト又はチャンバ(14b)のうちの別の1つにおいて徐々に換気されるように、前記流体サンプル(FS)を受けるようにあらかじめ手配され、
粒子蓄積のための前記検出領域(15)の少なくとも1つにおいて、前記複数のマイクロチャネル(13)はそれぞれ、実質的にV字形又はU字形である、又は実質的に収束する2つのマイクロチャネル分岐(13c、13d)を含み、前記複数のマイクロチャネル(13)それぞれの前記検出領域(15)の少なくとも1つには、前記流体サンプル(FS)のための出口がなく、前記複数のマイクロチャネル(13)の少なくとも1つ内に侵入する前記流体サンプル(FS)の流体の容積内に含まれる粒子(P)が、前記回転中心(5a)についての前記基板(11)の回転によって起こる遠心力の結果により前記少なくとも1つの検出領域(15)において濃縮する、マイクロフルイディック装置。
【請求項2】
前記複数のマイクロチャネル(13)は放射方向(R)に実質的に横並びに配置される、請求項1に記載のマイクロフルイディック装置。
【請求項3】
前記少なくとも1つのマイクロチャネル(13)又は各マイクロチャネル(13)が、それぞれの前記少なくとも1つの検出領域(15)において、少なくとも1つのサイフォン(13f、13g)及び少なくとも1つの壁(16)のうちの少なくとも1つを画定するような形状を有する、
請求項1に記載のマイクロフルイディック装置。
【請求項4】
前記複数のマイクロチャネル(13)それぞれが、実質的に放射方向に延び、それぞれの前記検出領域(15)につながる、少なくとも1つのマイクロチャネル分岐(13c、13d)を含む、及び又は、
前記複数のマイクロチャネル(13)それぞれが、少なくとも2つの電極(17)と関連し、
前記少なくとも2つの電極(17)は、前記検出領域(15)の1つにある、及び/又は前記検出領域(15)と、対応するマイクロチャネル(13)の前記第一の端部(13a)及び前記第二の端部(13b)のうちの1つとの間の位置にある、
請求項1に記載のマイクロフルイディック装置。
【請求項5】
前記複数のマイクロチャネル(13)それぞれが、親水性材料及び疎水性材料のうちの少なくとも1つによって画定される少なくとも1つの面部分を有し、
前記親水性材料及び/又は前記疎水性材料は、前記基板(11)及び各マイクロチャネル(13)の上に少なくとも部分的に延びる装置(10)のカバー要素(12a)の少なくとも1つに属し、及び/又は
前記装置(10)が少なくとも部分的に透明材料で作られ、
前記透明材料は、前記基板(11)、及び各マイクロチャネル(13)の上に少なくとも部分的に延びるカバー要素(12a)のうちの1つに属する、
請求項1に記載のマイクロフルイディック装置。
【請求項6】
前記基板(11)が、
遠心分離装置(1)の回転部材(5a)上に取り付けられるように構成され、及び/又は
実質的に円盤状である、
請求項1に記載のマイクロフルイディック装置。
【請求項7】
前記基板(11)の前記面(11b)上に画定されるのは、放射方向に互いに実質的に整列して配置される、及び/又は実質的に外周に沿って設定される複数の前記マイクロフルイディック構成(12)である、
請求項1に記載のマイクロフルイディック装置。
【請求項8】
請求項1-7のいずれか1つに記載のマイクロフルイディック装置(10)を回転させるように構成される回転部材(5a)を含む、遠心分離装置。
【請求項9】
検出装置(1)および請求項1-7のいずれか1つに記載のマイクロフルイディック装置(10)を含む検出システムであって、
前記検出装置(1)は、
マイクロフルイディック装置(10)に回転動をさせるように構成される回転部材(5a)と、
前記マイクロフルイディック装置(10)上で光学的検出を実施するように、及び/又は前記マイクロフルイディック装置(10)の少なくとも1つの検出領域(15)に蓄積した粒子(P)を検出するように構成される光センサ手段(21)を含み、
前記光センサ手段(21)は光信号又は前記マイクロフルイディック装置(10)の1つ又はそれ以上の検出領域(15)の画像を取得するように構成され、
前記検出装置(1)は、光信号又は前記光センサ手段(21)を介して取得される画像に基づいて、検出領域(15)に、又は前記マイクロフルイディック装置(10)のいくつかの検出領域(15)に蓄積した粒子の量を表す情報を処理するようにあらかじめ手配され、及び/又は
前記光センサ手段(21)は固定位置に、又は前記検出装置(1)の構造内に別途移動可能な方法で取り付けられる、検出システム。
【請求項10】
流体サンプル(FS)内に存在する粒子(P)を検出する方法であって、
a)請求項1-7のいずれか1つに記載のマイクロフルイディック装置(10)を提供するステップと、
b)前記流体サンプル(FS)のある量を、前記マイクロフルイディック装置(10)の少なくとも1つのマイクロフルイディック構成(12)の前記複数のマイクロチャネル(13)それぞれの内に導入するステップと、
c)前記マイクロフルイディック装置(10)の、対応する前記回転中心(5a)についての遠心分離速度での回転を起こすステップと、
d)前記複数のマイクロチャネル(13)それぞれの、検出領域(15)に蓄積した前記粒子(P)を検出するステップとを含む、方法。
【請求項11】
ステップb)が、少なくとも1つの細菌株の微生物又は細菌を含む液体媒体を前記流体サンプル(FS)を獲得するために提供するステップを含み、
ステップd)が、前記複数のマイクロチャネル(13)それぞれの検出領域(15)に蓄積した微生物又は細菌の数を定量するステップとを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
i)前記複数のマイクロチャネル(13)の第一のマイクロチャネルを、少なくとも1つの第一の抗生物質で前処理するステップと、
ii)微生物又は細菌の塊を取得するステップと、
iii)前記塊の少なくとも一部を前記液体媒体に植え付けるステップと、
iv)ある量の前記液体媒体を前記第一のマイクロチャネルに導入するステップと、
v)前記マイクロフルイディック装置(10)を遠心分離にかけるステップと、
vi)前記第一のマイクロチャネルの前記検出領域(15)に蓄積した微生物又は細菌の数を定量するステップと、を含む、
請求項11に記載の方法。
【請求項13】
ステップvi)が、
前記少なくとも1つの第一の抗生物質に対する前記微生物又は細菌の感受性プロファイルを得るために、前記第一のマイクロチャネルと、前記少なくとも1つの第一の抗生物質で前処理されていない前記複数のマイクロチャネル(13)の第二のマイクロチャネルの間の相対的な定量を実行するステップを含む、
請求項12に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、流体サンプル中に存在する粒子の量、特に低濃度で少量の粒子の量、を検出または推定するための技術に関する。
【0002】
本発明は、遠心分離支持体または基板、および遠心分離を受けるように設計されたマイクロフルイディック構成(microfluidic arrangement)または装置、ならびに細菌または微生物を含む流体サンプル上で検査または分析を、例えば抗バイオグラム(antibiograms)を迅速に実行するためなどで実施するための装置および方法に特に関連して開発された。本発明は、いかなる場合においても、流体サンプル中に存在し得る他のタイプの粒子の検出にも適用され得て、必ずしも有機または生体流体または粒子である必要はない。
【背景技術】
【0003】
流体、例えば生体流体のサンプル中に存在する粒子、例えば細胞を計数するための様々な技術が知られている。最も一般的に使用されているシステムは、光学式(蛍光の有無にかかわらず)、インピーダンスメトリー(impedancemetry)式、または画像認識による静的なものである。これらの既知のシステムは一般的に、比較的大量の試料を必要とし、測定の効率的な並列化(parallelisation)ができない、すなわち、これらのシステムは、多くの測定を並行して、及び/又は同時に行えるためには、かなりの量の初期サンプルが必要となる。画像認識技術に基づく既知のシステムは、少量の流体サンプルの分析に使用することができるが、多くのサンプルの並列化を可能にすることはできず、その結果、しばしば非経済的となる初期投資が無い限り、測定回数が増加してしまう。
【発明の概要】
【0004】
簡略に述べると、本発明の目的は、流体試料中に低濃度及び/又は少量で存在する粒子の分離、及び/又は蓄積、定量、及び/又は特定を、簡単かつ迅速かつ安価な方法で行うことを可能にする装置および方法を提示することであり、所要時間およびコストの面での利点、ならびに感度および再現性の面での効率の観点による利点を備えた、いくつかの試料間の並列化を同様に簡単かつ安価な方法で行うことを可能とする。
【0005】
本発明のさらなる目的は、(微生物が測定されているときに)抗バイオグラムを実行することを可能にする方法、すなわち、抗生物質に対する微生物または細菌の感受性のプロファイルを、指標的に数時間単位のレベルの比較的短い時間で得ることを可能にする方法を示すことであり、本発明の補助的な目的は、複数の抗バイオグラムを同時に実行することを可能にする方法を示すことである。
【0006】
上記の目的は、本発明によれば、遠心分離を介して粒子を濃縮するためのマイクロフルイディック装置、および対応する支持体および方法によって達成され、これは、添付の請求項に規定される特徴を提示する。
【0007】
特に、本発明は、その量の評価または検出を目的として、流体サンプル中に存在する粒子の濃縮を目指した少なくとも1つのマイクロフルイディック構成を有する基板を含む、遠心分離可能なマイクロフルイディック装置に関する。マイクロフルイディック構成は、少なくとも1つのマイクロチャネル、好ましくは、互いに実質的に整列しているか、または放射方向に並んで配置されている複数のマイクロチャネルを含み、サンプルの流体を受け取ることができ、かつ、基板の遠心分離の結果として、マイクロチャネル自体の正確で限定された部分への粒子の蓄積を可能にするような形状を有する。マイクロチャネルの上述部分に蓄積された粒子は、その後、検出、すなわち、例えば、光学タイプの検出手段及び/又は電気タイプの検出手段を使用して、直接的又は間接的な定量化及び/又は特定の対象とすることができる。好ましくは、遠心分離に続いて、流体サンプルの少なくともかなりの部分が、マイクロチャネル内に、または少なくともその蓄積部分に残り、したがって蓄積粒子は、液体中に浸漬されたままである。
【0008】
本発明は、上述のマイクロフルイディック装置と組み合わせて使用することができる遠心分離及び/又は検出装置、ならびにそのような装置の使用に基づく分析方法にも関する。
【0009】
以下に明らかになるように、本発明によれば、目的とする流体の比較的少量の試料中の粒子の量を簡単かつ迅速に効果的に検出することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
本発明のさらなる目的、特徴、および利点は、純粋に非限定的な例として提供される添付の図面を参照して、下の詳細な説明から明らかになるであろう。
【0011】
図1図1は、本発明で可能な実施形態に係る遠心分離装置及びマイクロフルイディック装置の模式的斜視図である。
図2図2は、本発明で可能な実施形態に係るマイクロフルイディック装置の模式的斜視図である。
図3図3は、本発明で可能な実施形態に係るマイクロフルイディック装置の模式的斜視図である。
図4図4は、本発明で可能な実施形態に係るマイクロフルイディック装置の模式的斜視図である。
図5図5は、本発明で可能な実施形態に係るマイクロフルイディック構成の模式的正面図である。
図6図6は、本発明で可能な実施形態に係るマイクロフルイディック構成の端部の模式的斜視図である。
図7図7は、本発明で可能な実施形態に係るマイクロフルイディック構成の中央部の模式的正面図である。
図8図8は、本発明で可能な実施形態に係るマイクロフルイディック構成の模式的正面図である。
図9図9は、本発明で可能な実施形態に係るマイクロフルイディック構成に流体サンプルを載せるステップの例示を目的とする模式的斜視図である。
図10図10は、本発明で可能な実施形態に係るマイクロフルイディック構成に流体サンプルを載せるステップの例示を目的とする模式的斜視図である。
図11図11は、本発明で可能な実施形態に係るマイクロフルイディック装置の使用結果の例示を目的とするマクロ写真である。
図12図12は、本発明で可能な実施形態に係るマイクロフルイディック装置及び構成に関連する、図3と類似した図である。
図13図13は、本発明で可能な実施形態に係るマイクロフルイディック装置及び構成に関連する、図4と類似した図である。
図14図14は、本発明で可能な実施形態に係るマイクロフルイディック装置及び構成に関連する、図5と類似した図である。
図15図15は、本発明で可能な実施形態に係るマイクロフルイディック装置及び構成に関連する、図6と類似した図である。
図16図16は、本発明で可能な実施形態に係るマイクロフルイディック構成の一部の模式的斜視図である。
図17図17は、本発明で可能な実施形態に係るマイクロフルイディック構成の模式的正面図である。
図18図18は、本発明で可能な実施形態に係るマイクロフルイディック構成の対応する詳細拡大図である。
図19図19は、本発明で可能な実施形態に係るマイクロフルイディック構成の模式的正面図である。
図20図20は、本発明で可能な実施形態に係るマイクロフルイディック構成の対応する詳細拡大図である。
図21図21は、本発明で可能な実施形態に係るマイクロフルイディック構成の模式的正面図である。
図22図22は、本発明で可能な実施形態に係るマイクロフルイディック構成の対応する詳細拡大図である。
図23図23は、本発明で可能な実施形態に係るマイクロフルイディック装置の模式的斜視図である。
図24図24は、図23の装置の模式的分解図である。
図25図25は、図23に示されるタイプの装置の部分断面斜視図である。
図26図26は、本発明で可能な実施形態に係る遠心分離及び/又は検出装置の模式的斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書の枠組みの中での「ある実施形態」または「1つの実施形態」への言及は、実施形態に関連して記載された特定の構成、構造、または特性が少なくとも1つの実施形態に含まれていることを示すことを意図している。したがって、本明細書の様々なポイントに存在し得る「ある実施形態において」、「1つの実施形態において」、「様々な実施形態において」などのフレーズは、必ずしも1つ且つ同一の実施形態を指すものではない。さらに、本明細書の枠組みの中で定義された特定の態様、構造、または特性は、表現されたものとは異なるものであっても、1つ以上の実施形態において、任意の適切な方法で組み合わせられ得る。本明細書で使用される参照番号および空間参照(「上」、「下」、「上」、「下」など)は、単に便宜上提供されるものであり、したがって、保護領域または実施形態の範囲を定義するものではない。図中では、互いに類似または技術的に等価な要素を指定するために、同じ参照番号が使用されている。
【0013】
図1を最初に参照して、全体として符号1と指定される装置は、処理または遠心分離チャンバ3を定義する構造2を有する遠心分離装置である。様々な実施形態において、装置1は、チャンバ3を閉鎖するための蓋またはドア4を含み、好ましくは構造2にヒンジで固定されている。装置1は、遠心分離支持体、すなわち遠心分離可能な装置を回転させるように設計されたチャンバ3内の回転部材5aを含む駆動または移動システム5を有する。可能性として、蓋4には、遠心分離支持体の位置決め及び/又はガイドシステムの対応する部品4aが関連付けられていてもよい。上述の作動システム5は、好ましくは、電動モータを含み、可能性として、モータ減速機及び/又は電子制御回路を備えている。遠心分離速度は、検出される粒子が細菌または小さい寸法の微生物である場合には指標的に5000rpmより高く、検出される粒子が血液細胞または体細胞である場合には指標的に1200rpmより高くてもよい。
【0014】
様々な実施形態において、装置1は、チャンバ3内の温度及び/又は湿度を制御するためのシステムを含む。様々な実施形態では、このシステムは、25℃より高い温度、好ましくは36℃と38℃の間の温度、及び/又は好ましくは95%より高い湿度を維持するように構成される。様々な好適な実施形態において、装置1は、遠心分離領域またはチャンバ3を周囲圧力よりも低い圧力に保つために、及び/又は上述の領域またはチャンバからの出力時の空気の流れを、潜在的に汚染されたエアロゾルの環境への拡散を防止するように構成されるフィルタリングシステムに強制的に流入させるように予め手配される吸引システム及び/又は圧力を調節するためのシステムを含む。
【0015】
様々な実施形態において、装置1は、遠心分離、及び/又は調整、及び/又は圧力調節、及び/又は検出のプロセスを開始及び/又は停止するための適切な制御要素6a、および場合によっては上述のプロセスのパラメータ(例えば、遠心分離速度及び/又は時間、及び/又は温度、及び/又は湿度、及び/又はチャンバ3内の圧力)を設定するための適切な制御要素6aがその上に配置される制御パネル6を含む。上述の制御要素は、任意の適切なタイプ(プッシュボタン、ノブ、スライダ、タッチディスプレイ等)であってもよい。
【0016】
図1において、符号10で指定されるのは、本発明の可能な実施形態に係る遠心分離可能な装置である。様々な好適な実施形態において、装置10は、流体物質のサンプル中に含まれる粒子を遠心分離を介して濃縮するように設計された構成を統合または収容するように構成されており、この目的のために、少なくとも1つのマイクロフルイディック構成12を備えた基板11を含む。このために、以下では、装置10を「マイクロフルイディック装置」と呼ぶ。
【0017】
装置10の基板11は、ここでは装置1の部材5aによって識別されると想定される回転中心についてたとえ高速であっても回転させられるように構成される。この目的のために、様々な好適な実施形態において、装置10は円盤状であり、好ましくは、対応する遠心分離装置の作動システム、例えば図1の装置1の部材5aに結合するための手段11aを含む。例示される実施例では、上述の結合手段11aは、円盤状基板11の中央通路または穴を含む。見てとれるように、他方では、基板11の円盤形状は本質的な特徴を構成するものではないが、これは、基板が回転中心について回転させられるという事実を軽視するものでもない。
【0018】
様々な実施形態では、基板11は、比較的小さな厚みを有し、例えば0.5から4ミリメートルの間で構成される。基板は、例えば、ガラスまたはプラスチック(例えば、ポリカーボネート、またはポリエチレン、またはシクロオレフィンコポリマつまりCOC)で作られていてもよく、指標的に10から30センチメートルの間、または6から30センチメートルの間、好ましくは8から10センチメートルの間で構成される直径を有してもよく、それゆえに、古典的なコンパクトディスクに類似している可能性がある。使用される材料は、好ましくは電気絶縁性の材料であり、非常に好ましくは少なくとも部分的に透明である材料である。
【0019】
図2も参照して、基板11は、上述の少なくとも1つのマイクロフルイディック構成12がそこに画定される表面11b(本明細書では慣習的に「上面」と呼ばれる)を有する。様々な好適な実施形態において、表面11b上に画定される複数のマイクロフルイディック構成12は、好ましくは互いに同じであるが、必ずしも同じである必要はない。様々な実施形態において、いくつかのマイクロフルイディック構成は、例えば図2の符号12および12によって指定された構成のように、放射方向に互いに実質的に整列しており、及び/又は多数のマイクロフルイディック構成は、例えば図2の符号12および12によって指定された構成、または図2の符号12および12によって指定された構成のように、外周に沿って、または回転中心11aまたは5aから1つ且つ同じ距離で実質的に設定される。
【0020】
少なくとも1つのマイクロフルイディック構成12、又は各マイクロフルイディック構成12は、好ましくは、基板11によって特定される平面に従って延び、この目的のために、例えばマイクロエッチング、またはモールディング、または紫外線による樹脂のポリマ化を介して、適切な技術を介して表面11b上に画定されてもよい。基板11上への材料の付着を介したマイクロチャネルの形成は、本発明の範囲から除外されない。
【0021】
少なくとも1つのマイクロフルイディック構成12は、サンプル流体を受けるために予め手配される2つの対向する端部を有する少なくとも1つのマイクロチャネル13を含む。必須ではないが、好ましくは、構成12はまた、少なくとも1つのマイクロチャネル13の上述の2つの端部のうちの1つに流体連通した少なくとも1つのチャンバ14aまたは14b(これはまた、ダクトまたはチャネルの形態をとってもよい)を含む。様々な好適な実施形態において、2つのチャンバ14aおよび14bが設けられ、少なくとも1つのマイクロチャネル13のそれぞれの端部にそれぞれ流体連通する。
【0022】
様々な好適な実施形態において、各構成12は、複数のマイクロチャネル13を含み、これらのマイクロチャネル13は、必須ではないが、好ましくは、それぞれの第一の端部、及び、例えば第一のチャンバ14aおよび第二のチャンバ14bのうちの1つと流体連通するそれぞれの第二の端部のうちの1つを有する。上述のチャンバの1つと流体的に通信可能に接続されている。以下の内容において、マイクロチャネル13の1つの上述の複数のマイクロチャネル13を含む実施形態が参照される。
【0023】
様々な実施形態において、複数のマイクロチャネル13の第一の又は第二の端部は、例えばチャンバ14aまたはチャンバ14bなどの1つ且つ同じチャンバに流体連通する。好ましくは、複数のマイクロチャネル13の第一の端部は、第一のチャンバ、例えばチャンバ14aに並列に接続され、複数のマイクロチャネル13の第二の端部は、第二のチャンバ、例えばチャンバ14bに並列に接続される:しかし、これは、以下に説明する理由により、本発明の本質的な特徴を構成するものではない。様々な実施形態では、チャンバ14a、及び14bは、マイクロチャネル13がそれらの間の中間の位置で少なくとも部分的に延びるように、概して相互に対向する位置にある。
【0024】
上述の複数のマイクロチャネルは、好ましくは、少なくとも部分的に互いに同じであり、及び/又は少なくとも部分的に互いに実質的に平行または等距離に延び、好ましくは、基板の放射方向に互いに平行または等距離に延びる。様々な実施形態において、マイクロチャネルは、形状およびサイズに関して互いに実質的に等しく提供され、他の実施形態では、マイクロチャネルは、実質的に1つ且つ同じパターンを有するが、互いに異なる長さを有して提供される。
【0025】
様々な実施形態において、マイクロフルイディック構成12または各マイクロフルイディック構成は、対応するマイクロチャネル13を少なくとも部分的に覆うカバー要素12aを含む。好ましくは、カバー要素12aは、光学的検出の目的で下にあるマイクロチャネル13を見ることができるように、例えばガラスまたはプラスチック材料などの少なくとも一部が透明な材料で作られる。
【0026】
そのようなカバー要素12aは、例えば図3に、放射方向(基板11の回転の中心に関して)に整列する3つのマイクロフルイディック構成12が1つ且つ同じ装置10上に提供されて明確に示される。各構成12は、対応するカバー要素12aを含み、それは、対応するマイクロチャネル13を覆って、代わりに、側方チャンバ14a、14bの少なくとも1つ、好ましくは両方を露出させたままにしておく。マイクロチャネル13は、カバー要素12aの表示を省略した図4で見ることができる。
【0027】
カバー要素12a、または各カバー要素12aが作られる材料は、各マイクロチャネル13内の毛細管現象による流体の進入を容易にするために、親水性の材料であることが望ましい。また、マイクロチャネル13が作られる材料、または基板11の材料は、この場合には疎水性材料であってもよい。また、マイクロチャネル13の全長にわたって延びるマイクロチャネル13の少なくとも1つの面が親水性材料で作られていることが望ましく、例えば、長方形または台形断面を有するマイクロチャネル13において、マイクロチャネルの断面を規定する4つの壁のうちの少なくとも1つ、例えばカバー要素12a、が親水性材料で作られることが望ましい。
【0028】
また、基板11は、マイクロチャネルが見えるようにするために(例えば、要素12aが不透明である場合)、及び/又はマイクロチャネルの背面照明を可能とするために(例えば、要素12aが透明である場合)、少なくとも一部が透明な材料で作られてもよい。結果として、基板11および被覆要素12aの両方が透明であってもよい。
【0029】
様々な実施形態において、各マイクロチャネルは、その全体の範囲を通して、親水性特性を有する内表面の少なくとも連続した部分を有する。マイクロチャネルの内壁に沿った親水性部分の連続性は、充填ステップにおいて有用であり、これは、例えばチャンバ14aなどの2つのチャンバ14のうちの1つ内にサンプル液体の滴を付着させることを例えば想定する。親水性部分との接触は、毛細管現象によるマイクロチャネルの充填を起こす。各マイクロチャネルが完全に充填されると、底部において(すなわち、チャンバ14bに到達したときに)流体が疎水性の表面に遭遇する限り、その内部を液体が流れることはもはやなく、この方法によれば、たとえ連続するマイクロチャネルが異なる速度でサンプル液体で満たされたとしても、最初に満たされたマイクロチャネルは、後者が底部に到達すると、どのような場合でも液体の流れを止めることになり、液体が完全に満たされる前に隣接する1つの又は複数のマイクロチャネルに液体が侵入するのを防ぐことになる(これは、液体がまだ完全に満たされていないマイクロチャネルを閉じてしまい、気泡を捕捉することになるので避けられるべきである)。この効果を得るための1つの方法は、例えば、マイクロチャネル13及びチャンバ14の底壁及び側壁を単一の疎水性材料とし、マイクロチャネルの上壁(例えば、カバー要素12aによって形成される壁)を例えばガラスなどの親水性材料とすることであり、例えばチャンバ14bのなどの液体が到着するチャンバの少し前で上述の上壁(例えばガラスで作られるカバー要素12aによって形成される)を終わらせるようにして、マイクロチャネルの側壁を少なくとも数マイクロメートルの間カバーせずに残しておく。代わりに、上壁(例えば、カバー要素12a)が、液体が到達するチャンバ14bと部分的に重なって終端する場合、毛細管現象によって最初に満たされたマイクロチャネルは、親水性の経路を見つけて、隣接するチャネルに侵入することができ、後者がまだ液体で満たされていない場合、流れは停止され、充填は完了しない。
【0030】
前述したように、装置10の基板11は、必ずしも円盤状である必要はない。そのような場合は、実際に、図3および図4に例示されており、ここでは、符号11によって指定される基板は、実質的に、好ましくは平面状の平行六面体形状を有する(明確さのために、図4では、要素12aの表示が省略されている)。この種類の、すなわち円盤状のものではない基板は、中間支持体上に、または市販のタイプの遠心分離装置のラック内に、または図1の装置1の回転部材5aに結合されるべき汎用の円盤状支持体上に、例えば適切なアダプタ要素を介して、収容または固定されるように、有利に予め手配されてもよい。
【0031】
しかし、図3および図4は、例えば、図2に図示されたタイプの円盤状支持体の長方形の部分などの、より大きな装置10の一部を表すと理解されてもよい。
【0032】
図5において、マイクロフルイディック構成12が、対応するカバー要素12aが無い状態の模式的正面図で表され、ここで、符号13aおよび13bによって指定されるのは、側方のチャンバ14aおよび14bでそれぞれ開口するいくつかのマイクロチャネル13の端部である。この特徴は、チャンバ14aを図示する図6からも明らかであるが、チャンバ14bが同様の方法で構築されることが好ましいことは当然である。それゆえ、図6から、様々な好適な実施形態において、側方チャンバ14a(および14b)およびマイクロチャネル13の両方が、基板11に作られる凹部または表面エッチングによって得られ、マイクロチャネル13は特に、マイクログルーブの形態であることに留意されたい。
【0033】
概略して述べると、各マイクロチャネル13は、5から200ミクロンの間、好ましくは15から50ミクロンの間の幅、及び/又は2から100ミクロン、好ましくは5から40ミクロンの間の深さまたは高さを有してもよい。2つの端部13a、13bの間の距離として理解される各マイクロチャネル13の長さは、指標的に5から50ミリメートルの間であってもよい。マイクロチャネルは、分析の均質性のために、不変の通過断面を有することが好ましい。
【0034】
図7は、マイクロフルイディック構成12の中間領域、特にマイクロチャネル13の中央領域の詳細を示しており、壁、または基板11のレリーフ11dの部分によって画定または分離される。
【0035】
様々な好適な実施形態において、各マイクロチャネル13は、図7においてそれぞれ符号13cおよび13dによって指定される、少なくとも2つの概して収束するマイクロチャネルの分岐を含む。この好ましい特徴は、より明確にする目的のため、マイクロチャネル12の長さを著しく短くした図8に示される構成13の模式的な例からも明らかである。例において、2つのマイクロチャネル分岐13c、13dは、実質的に鏡像の配置で、反対方向に傾斜する。様々な実施形態において、2つのマイクロチャネル分岐13c、13dは、液体通路の1つ且つ同じ断面を有する。
【0036】
再び図8を参照して、本発明の一態様によれば、少なくとも1つのマイクロチャネル13、または各マイクロチャネルは、その端部13a、13bの間の中間の領域において、基板11の回転中心からの放射方向の距離R1が、マイクロチャネルの2つの端部13a、13bの再び回転中心からの放射方向の距離R2よりも大きい、少なくとも1つの検出または蓄積領域(符号15によって指定される)を含む。例として提供される図8の概略図において、回転中心は、後者が図1の部材5aによって表されると仮定して、符号5aによって指定され;基板の回転方向は符号rによって指定され、放射方向は矢印Rによって模式的に表される。領域15は、ここで検出または蓄積領域と定義され、その領域では、マイクロチャネル13に浸透する流体の容量の中に存在し得る濃縮粒子であるように設計され、それは、後続の検出、特に定量化及び/又は特定及び/又は上述の粒子の挙動の研究を目的とした検出のためである。
【0037】
蓄積領域15と第一の端部13aとの間の距離は、蓄積領域15と第二の端部13bとの間の距離と等しいか、または実質的に等しいことが望ましい;すなわち、蓄積領域15は、マイクロチャネル13の実質的に中央の領域である。したがって、2つのマイクロチャネル分岐13c、13dは、同じ長さを有していてもよい。
【0038】
好ましくは、少なくとも1つのマイクロチャネル13の、または各マイクロチャネルの2つの端部13aおよび13bは、これが本質的な特徴を構成するものではないとしても、基板11の回転中心5aから放射方向に実質的に1つ且つ同じ第二の距離に位置している。例えば、図8から、各マイクロチャネル13の端部13aおよび13bが、回転中心5aから放射方向に実質的に同じ距離R2で配置されていてもよいことがわかる。端部13aおよび13bは、特に、装置10を遠心分離する過程においてマイクロチャネル13内に存在する流体がそこから出る可能性を防ぐために、回転中心5aから放射方向に実質的に1つ且つ同じ距離R2で配置されていることが好ましい。マイクロチャネル13は、その端部のみで開いていることが好ましい。
【0039】
したがって、上記で参照した構成の恩恵により、マイクロチャネル13内に浸透する流体の容量に含まれている可能性のあるあらゆる粒子は、基板11が回転中心5aについて回転することによって生じる遠心力の結果として、蓄積領域15内で濃縮する傾向がある。簡単のために、遠心力の効果は、図8において、放射方向を示す同じ矢印Rで表されると理解されてもよい。
【0040】
マイクロチャネル13の蓄積領域15は、遠心分離に続いて、粒子が上述の領域15に存在する液体中にいかなる場合も濃縮するように、液体のための出口がないことが好ましい。
【0041】
様々な好適な実施形態において、1つ且つ同じマイクロフルイディック構成12のマイクロチャネル13は、基板11の放射方向Rに、好ましくは互いに近接して、少なくとも部分的に実質的に整列または横並びに設定される。壁、またはチャネルを互いに分離するレリーフ11dの部分は、指標的に5から200ミクロン、好ましくは15から100ミクロンの間の幅を有してもよい。
【0042】
様々な好適な実施形態において、チャンバ14a及び/又は14bは、マイクロチャネル13の深さと等しいか、またはそれに近い深さを有し、例えば、2から100ミクロン、好ましくは5から40ミクロンの間の深さを有する。
【0043】
好適な実施形態において、1つ且つ同じマイクロフルイディック構成12のマイクロチャネル13は、2つの端部チャンバ14a及び14bを接続し、後者が基板11の回転中心5aから放射方向に実質的に1つ且つ同じ距離に位置し、特に平行に接続されることが好ましい:この場合、後者が実質的に互いに平行であり、マイクロチャネルは、2つのチャンバの間の中間の位置に実質的に延びている。2つのチャンバ14a、14bは、マイクロチャネル13を介してのみ一緒に接続されることが望ましい。
【0044】
様々な好適な実施形態では、上述の蓄積領域15において、対応するマイクロチャネル13は、実質的にV字形またはU字形であるか、またはマイクロチャネルの2つの概して収束する直線部分(stretch)を含み、特に、それらの間に角(angle)を形成する、又は湾曲された部分によって丸い角を形成する(radiused)ように設計されたマイクロチャネルの2つの直線部分を含む:ここまでに例示された場合において、領域15は、2つの分岐13cおよび13dの間の接合領域において定義される。
【0045】
図からわかるように、様々な好適な実施形態において、マイクロチャネル13は、再現性を確かにするために、実質的に同一であり、その全長に沿って互いに平行に配置される。
【0046】
図9および10は、本発明の可能な実施形態に係るマイクロフルイディック装置内での流体サンプル導入の、あり得るモードの模式図である。例示されたケースでは、適切なツールT(指標的に数マイクロリットルまたは数十マイクロリットルのオーダーの制御された量の流体を注ぐように設計されたピペットなど)を介して、検査を受けるべき流体のサンプルFSが、マイクロフルイディック構成の側方チャンバ14aまたは14bの少なくとも1つに、好ましくは1つだけに付着させられる。サンプルFSは、例示されているように、マイクロ流路13を満たすのに十分な量であれば、流体の単純な滴であってもよいし、たとえ大きな量であってもよい。
【0047】
使用される側方チャンバは、流体サンプルのマイクロフルイディック構成12への導入を容易にする。さらに、この構成12が、例示された実施例のように、複数のマイクロチャネル13を含む場合、使用される側方チャンバは、実質的に、流体を複数のマイクロチャネルに並列に導入するためのコレクタとして機能する。言い換えれば、いくつかのマイクロチャネル13の相同性のある端部が並列に接続された少なくとも1つの側方チャンバ14a及び/又は14bを提供することは、個々のマイクロチャネルに、試料の個々の分量を導入する必要性を回避するという利点を与える。上述のとおり、チャンバ14a、または14a及び14bの各チャンバは、流体サンプルがマイクロチャネルの入口端部または各マイクロチャネルの入口端部に送達されるときに介在する、ダクトまたはチャネルによって取得可能であることに留意すべきである。
【0048】
いくつかのマイクロチャネルを1つ且つ同じ入口に接続することが可能であることは、それがチャンバであれダクトであれ、検出の統計的根拠、すなわち利用可能な同じ見かけの条件の反復数を増加させることを可能にする。好適な実施形態において、マイクロチャネルは、少なくとも2つのグループに分けられ、各グループは、少なくとも1つの対応する充填チャンバ14aまたは14bを有する。
【0049】
同じ見かけの条件で使用されるマイクロチャネルの数は、装置使用のタイプと各マイクロチャネルの容積に依存する:例えば、マイクロチャネル13の2つの対向する分岐13c、13dがそれぞれ1センチメートルの長さで、幅50ミクロン、深さ5ミクロンであった場合、総体積は5x10立方ミクロンである。バクテリアの濃度が10個/mLだとすると、1立方ミクロンあたり10-7個のバクテリアが存在することになる。これは各マイクロチャネルに平均0.5個のバクテリアがいることを意味する。これはまた、少なくとも1つのバクテリアを含むマイクロチャネルでは、増殖の場合には非常に短い時間(約20-40分)の後に信号(signal)は2倍になり、増殖がない場合には一定のままであることを意味する。
【0050】
このタイプの使用は、「デジタル抗バイオグラム」と呼ばれ得る。マイクロチャネルは非常に小さく、非常に近い位置に同じようなパターンで定義されているので、非常に限られた領域(例えば、1枚の顕微鏡スライドのような)に、多数のチャネル、例えば250から500のマイクロチャネルを持つことが可能である。
【0051】
上述のような濃度では、十分な統計的根拠を得るためには、同じ見かけの濃度の各n-タプリケート(tuplicate)(すなわち、同じ見かけの条件で使用されるn個のマイクロチャネルの集合)に100から200の間で構成されるマイクロチャネルの数を割り当てることが好都合である。1台の遠心分離が可能な装置、例えば円盤状の装置で、多数の(様々な数十の)異なる条件を試験することが可能であり、それぞれの条件はn-タプリケートされており、nは100から200の間で構成される。より高い濃度の場合は、代わりに、より少ない数のチャネルで見かけの上では同じ条件をグループ化することが可能となる。例えば、1ミリリットルあたり100万個のバクテリアの濃度の場合、各見かけが同一の条件に対して10-20個のマイクロチャンネルのn-タプル(tuple)を使用することができる。
【0052】
特に、マイクロチャネル13の上にセットされているのが、既に符号12aで指定されたタイプのカバー要素である場合(したがって、流体は、マイクロチャネルの一方の端部から浸透することができ、後者に含まれる空気は、他方の端部で漸進的に換気されることができる)、各マイクロチャネル13の端部13aおよび13bの両方が開いていることが好ましい。様々な実施形態では、各マイクロチャネル13は、毛細管性によって、またはマイクロチャネル自体を区切る壁または面の少なくとも1つにおける親水性を利用して充填される。他方では、他の実施形態(図示せず)では、流体サンプルは、正圧または負圧を介して、例えば、入口での過圧または出口での負圧(常に周囲圧力に関して)を使用して、マイクロチャネル内に強制的に入れられてもよい。
【0053】
すでに述べたように、装置10の回転に続いて、遠心力の結果として、マイクロチャネル13を占める液体の容量内に存在する粒子は、液体のための出口のないそれぞれの蓄積領域15に蓄積する傾向がある。これは、図11のマクロ写真で明らかに見えるが、そこから、少なくともいくつかの蓄積領域15のそれぞれにおける粒子Pの質量が、対応するマイクロチャネル13に含まれる液体の中で、どのように濃縮されるかがわかるかもしれない。
【0054】
当然、マイクロチャネル13の寸法は、対象の粒子Pをその中に注入することを可能にするのに十分でなければならない。一般的には、比較的浅いマイクロチャネルが好ましく、すなわち、対象の粒子の大きさと近い高さまたは深さを有するもの、またはわずかに大きいものが好ましい。これは、粒子の数とサイズが同じであると仮定して、浅いマイクロチャネル13の領域15では、粒子が互いに並んで蓄積された粒子の量が、粒子が互いに重なり得る、より深いマイクロチャネルの場合よりも広い面積を持つ平面画像を形成するためであり、粒子の濃度が非常に低い場合には、粒子の量及び/又はそのタイプの検出がある程度誤ったものになり得るからである。ほぼ長方形の断面を有することが好ましい、浅いマイクロチャネルを使用することは、光学システムを使用した量及び/又はタイプの読取を容易にし、品質を向上させる。
【0055】
例えば、装置10が全血中の異なるタイプの細胞を分離するために使用されなければならない場合、マイクロチャネル13の高さ(深さ)は、10から40ミクロン、好ましくは10から20ミクロンの高さ(深さ)を有することが好ましい。分析対象が代わりに細菌である場合、マイクロチャネルの高さ(深さ)は3から10ミクロン、好ましくは4から8ミクロンであってもよい。繰り返すと、測定対象がイースト菌の場合、マイクロチャネルの高さ(深さ)は、好ましくは5から20ミクロン、より好ましくは8から12ミクロンである。
【0056】
検出または読取は、遠心分離の結果、各集積部15に形成される粒子の質量の大きさを光学的方法で定量化することにより行うことができる。また、このような量及び/又はタイプの検出は、粒子が予め蛍光色素でマークされている場合には、蛍光の強度を測定することにより行うことも可能である。
【0057】
図12および図13は、図3および図4のものと同様の図で、四角形の遠心分離支持体10(または円盤状または異なる形状を有する遠心分離支持体10の四角形部分)の可能な変形例を示す。この種の実施形態においては、各マイクロフルイディック構成12は、放射方向に少し離れて配置される複数のセットのマイクロチャネル13を含み、それらはそれぞれの側方チャンバ14aおよび14bに接続されるが、図示された例では、そして図14および図15からも明らかなように、各マイクロフルイディック構成12に提供されるのは、3セットのマイクロチャネル13であり、したがって、3つの側方チャンバ14aおよび3つの側方チャンバ14bである。マイクロフルイディック装置の動作原理は、先に説明したものと同様である。
【0058】
この種の実施形態では、各マイクロフルイディック構成12は、互いに分離した複数のセットのマイクロチャネル13を想定しており、好ましくは複数のそれぞれが少なくとも1つのそれぞれの側方チャンバ14a及び/又は14bに関連付けられているという事実は、分析の目的に有用であり得て、特に、異なる検出条件を同時に利用可能にする(したがって並列化する)ことと、同じ見かけの条件でいくつかのセットを使用することが選択された場合に統計的根拠を増加させることとの両方に有用である。
【0059】
様々な実施形態において、構成12のマイクロチャネルは、流体サンプルに含まれる対象の粒子を検出するためのみに使用されるが、他の実施形態では、マイクロチャネルは、特に検出されるべき粒子が増殖可能な微生物である場合には、培養ウェルとしても利用することができる。代わりに、いくつかのマイクロチャネルには、装置の外で増殖するように誘導されているか、または抗生物質によって阻害されている生体物質(例えば、細菌)が「搭載」されてもよい。
【0060】
図16に模式的に表されているのは、マイクロ流路13の蓄積領域15における、マイクロフルイディック構成12の中間部分である。気づくかもしれないが、様々な実施形態において、この領域15は、好ましくはマイクロチャネルの分岐13cと13dの間の交差部において、少なくとも1つの凹部または空洞を画定するように形成されてもよく、培養ウェルとして使用することができるウェル16を実質的に形成する。マイクロチャネル13の少なくとも一部を培養ウェルとしても使用する可能性は、分析される流体が培養ブロスであるか、または構成12が培養媒体を含む場合に特に有利であることがわかる。この観点から、本発明に係るマイクロフルイディック装置は、以下にも説明するように、抗バイオグラム、特に高速抗バイオグラムを実行する目的のために特に有利である。
【0061】
様々な実施形態において、マイクロフルイディック構成12の少なくとも1つのマイクロチャネル13、または各マイクロチャネルは、少なくとも1つのサイフォンを含んでもよい。この種の実施形態が、図17および18に例示される。
【0062】
この種の様々な実施形態では、領域15において、2つのマイクロチャネル分岐13cおよび13dは、2つの対向するサイフォン13eおよび13f(すなわち、二重サイフォン)によって一緒に接続されてもよく、これらは、基本的に、それぞれの分岐13cおよび13dのために1つずつ、2つの蓄積サブ領域を形成する。これらの2つのサブ領域の存在は、遠心力の異なる成分(例えば、二重サイフォンを介して接続された実質的に鏡像のV字形分岐を有するマイクロチャネルの場合)及び/又はマイクロチャネルの2つの収束する分岐の異なる形状または長さ(例えば、一方の分岐が垂直であり、他方の分岐が傾いている)の入射に起因する、粒子とマイクロチャネルの壁との間の摩擦及び/又は付着が分析に影響を与える可能性がある、2つの枝13cおよび13d間にあり得る粒子濃度の違いを検証するために有用であるかもしれない。
【0063】
特に後者の場合を参照して、図19-20は、各マイクロチャネル13が、放射方向Rに対して実質的に直角に延びるそれぞれの端部部分13a、13bを含み、そこから分岐するのが、それらの間に蓄積領域15を画定する概して収束する分岐13c、13dである実施形態を例示する。例において、分岐13dは、放射方向Rに実質的に延びており、斜めの分岐13cは、2つの対向するサイフォン13eおよび13f(または二重サイフォン)によって分岐13dの最下点に接続されており、好ましくは、サイフォン13eは、斜めの部分13cから来る粒子を遮断する機能を有しており、サイフォン13fは、蓄積領域として動作する。
【0064】
この解決策は、マイクロチャネル13の壁に付着する傾向のある粒子の場合に好ましい。垂直分岐13dは、遠心分離の間、粒子が分岐13dの壁に実質的に平行な加速度を受ける限りにおいて、この影響を最小化する。一方、斜めの分岐13cに含まれる流体中に位置する粒子は、分岐13cの壁に向かってそれらを押す傾向のある加速度の成分を有することになる。マイクロチャネルの壁への粒子の付着は、これらの粒子の少なくとも一部が計数に含まれないことの原因となる:サイフォン13eは、斜めの分岐13cの壁に付着しない一部の粒子が、計数の目的のための検出領域(ここではサイフォン13fによって表される)に到達することを防止し、到着する量のばらつきのために検出を無効にする可能性を防止する。
【0065】
その結果、様々な実施形態において、また、1つ以上のサイフォンの存在の可能性にかかわらず、特に、粒子の付着リスクを最小化するために、それぞれの蓄積領域につながるマイクロチャネルの分岐の少なくとも1つの部分は、放射方向に実質的に延びる。
【0066】
図21および図22に例示されているのは、各マイクロチャネル13が、互いにある距離をおいて、または離れた位置に設定される2つの異なる蓄積領域15を画定する実施形態である。この場合も、各マイクロチャネル13は、放射方向Rに実質的に直角に延びるそれぞれの端部13a、13bを含み、そこから分岐するのは、実質的に放射方向Rに設定される分岐13c、13dである。上述のとおり、このような配置は、マイクロチャネルの壁への粒子付着のリスクを最小限に抑え、したがって、蓄積領域における粒子の濃度を最大化する。
【0067】
分岐13c及び13dの低いポイントに提供されるのは、考慮されるマイクロチャネル13のそれぞれの蓄積領域を形成する2つの対向するサイフォン13eおよび13fである。2つのサイフォン13eおよび13f、すなわち2つの領域15は、マイクロフルイディック装置の回転中心から実質的に同じ放射方向距離に位置しており、マイクロチャネルの中間直線部分13gによって一緒に接続され、ここでは概して放射方向に湾曲する(凹状)。
【0068】
サイフォン13eおよび13fによって構成される2つの蓄積領域15の存在は、例えば、使用されるマイクロチャネル13の同じ数のマイクロチャネル13が使われると仮定して統計的基礎を増加(2倍)させるために、2つの異なる検出領域を利用可能にすることを可能とする。
【0069】
既に示されているように、複数のマイクロチャネルは、好ましくは互いに同一でなければならないが、それらの対向する分岐(右及び左)は、互いに異なるものであってもよい。
【0070】
様々な実施形態において、少なくとも1つのマイクロチャネルに、または各マイクロチャネルに、少なくとも2つの電極が、特に少なくともそれぞれの蓄積領域15に、またはその端部と蓄積領域との間にあるマイクロチャネルの位置に、関連付けられてもよい。これらの電極は、粒子を検出するための電極であってもよいし、別途粒子を操作する電極であってもよい。
【0071】
例えば、様々な実施形態において、電気インピーダンスの検出を介して粒子の量の読取を実行するために、蓄積領域15の少なくとも一対の電極を使ってもよい。また、粒子によって表される電気インピーダンスへの貢献と、試料の流体によって表される貢献とを区別することを可能にするために、対応する端部13a、13bと蓄積領域15との間に構成されるマイクロチャネルの部分に、さらに一対の電極を配置することによって、差動読取(differential reading)を実施することも可能である。流体サンプルが培養媒体または生理溶液である場合、流体中に溶解しているイオンを考慮して電気伝導度が相対的に高くなるが、このような場合には、流体中に溶解しているイオンの影響により電気伝導度が相対的に高くなる。
【0072】
マイクロチャネルの上部(すなわち、蓄積領域よりも対応する端部に近い位置)にある電極の対はまた、マイクロチャネルが、計数される粒子を含む流体で適切に充填されているかどうかの確認を可能にする(この確認は、流体が一般的に絶縁体である空気よりもはるかに高い導電性を有することを考慮すると、比較的容易である)。
【0073】
図23-25は、それぞれの蓄積領域に電極17が設けられたマイクロチャネル13を備える四角形の装置10(または円盤状または異なる形状を有する装置10の四角形の部分)の概略図である。
【0074】
図24からわかるように、様々な実施形態において、装置10、すなわち基板11は、互いに重なるいくつかの層によって形成されてもよい。例示的に提供されるのは、下層11であり、例えば、基板について先に述べた電気的絶縁性材料の1つで作られ、少なくとも1つのマイクロフルイディック構成12、すなわち、対応するチャンバ14a及び/又は14bを有する対応するマイクロチャネル13が定義される下層11が提供される。次に、好ましくは透明な電気的絶縁性材料、例えばポリマで作られる上部層11が設けられ、これは、層11のチャンバ14aおよび14bに対応する位置に窓または開口部18を備え、さらに層11の様々なマイクロチャネル13の蓄積領域15に対応する位置に一連のマイクロ開口部またはマイクロ窓19を備える。電気的に絶縁された層11上には、一対の電極17が設けられており、ここでは2つの窓18の間の中間の位置にあり、電極17は、マイクロチャネル13の蓄積領域15にそれぞれの検出端を有するような形状を有する。
【0075】
これは、例えば、図25に示され、ここで、符号19で指定されたものは、上述のマイクロ開口部のいくつかであり、符号17aで指定されたものは、様々な電極17の検出端である。明らかに、基本的に、各集積領域において、層11上に定義されるのは、2つの概して平行なマイクロ開口部19であり、それらの各々は、対応する電極17の検出端17aの上に設定されている:この方法によれば、これらの検出端17aの一部は、電気的なタイプ(インピーダンス、または抵抗率、または導電率など)の必要な検出のために、マイクロチャネル13の内部に面する。
【0076】
図23-24に戻ると、様々な実施形態において、電極17は、少なくとも部分的に、同様に電気的絶縁され、好ましくは透明な材料で作られた、対応するカバー要素12aによって上部で保護される。しかしながら、様々な実施形態において、電極17の少なくとも一部分は、例えば図23に見られるように、電極17の使用を管理するシステムへの電気的接続を目的として、露出している。様々な実施形態において、上述の電気的接続は、電極17の上述の露出した部分に接触するように構成される遠心分離及び/又は検出装置1に設けられた摺動接点を介して得られる。測定が静的な状態、例えば遠心分離の開始時および終了時に行われる場合には、接触部は、例えばばね接触または他のタイプの接触接続部によって構成されてもよい。
【0077】
また、電極17は、少なくとも一部が導電性の透明材料で作られることが望ましい。
【0078】
本発明に係る装置10は、細胞を正確な位置に(すなわち、領域15に)蓄積させるために使用可能であることを考えると、参照されるタイプの電極は、細胞自体の操作、例えば電気穿孔(electroporation)を行うために、または例えば誘電泳動(dielectrophoresis)の手段によって、細胞を所定の位置に保持するためにも使用することができる。
【0079】
前述したように、様々な実施形態において、マイクロチャネル13の領域15に蓄積する粒子の検出は、光学的な方法で行われる。
【0080】
この目的のために、様々な実施形態において、遠心分離装置1自体は、光センサ手段を組み込むことができる。センサ手段は、検出される様々な点の間を移動する単一のセンサを含んでもよいし、そうでなければ(例えば、光学スキャナのように)センサのアレイを含んでもよい。一般的には、次に、1つ且つ同じ装置1は、特に、前述の遠心分離のため、及びセンサ手段を用いた読取操作のための両方の装置10の回転を利用して、遠心分離の機能と、検出または読取の機能とを統合することができる。
【0081】
例えば、図26は、単一の光センサ21を含む検出または読取ユニット20(ここでは蓋4に関連している)を有する遠心分離装置1を例示する(他方では、それ自体が光センサのアレイによって構成されてもよい)。センサ21は、透明な材料で作られていてもよく、いかなる場合でも画像の取得の妨げにならないような形状を有する対応するガイド21a上に、例えば、言及されていないそれ自体のアクチュエータを介して移動可能に取り付けられる。例示されたケースでは、センサ21によって表される検出ユニットは、装置10上に放射方向に整列した多数のマイクロフルイディック構成12上で必要な光学的検出を行うために、装置10に対して上記放射方向に動くことができる。当然、装置1によって装置10を回転させることができることを考慮すると、センサ21を介して、装置10上に外周に沿って並んで配置されるいくつかのマイクロフルイディック構成12に対しても光学的検出を行うことが可能である。
【0082】
一方、装置1の制御システムは、光学的検出が実施される度に、センサ21の放射方向の位置を制御するように予め手配されていてもよい。この制御システムはまた、遠心分離ステップの終了後に、様々な角度読取位置において装置10を毎回駆動及び停止させることによって、光学的検出を実行するように予め手配されていてもよく、あるいは他の方法で、装置10を移動させた状態で、好ましくは、検出中の速度や読取中の速度などの遠心分離速度よりも低い速度で、すなわち読取と回転を同期させることによって、光学的検出を実行するように、予め手配されていてもよい。
【0083】
本発明の様々な実施形態において、参照されるタイプの遠心分離及び/又は検出装置の光センサ手段21は、マイクロフルイディック装置の複数の蓄積領域の累積光信号または累積画像、すなわち、対応するマイクロフルイディック構成12のマイクロチャネル13のすべての蓄積領域15に関する信号または画像を取得するように構成されている。次に、遠心分離及び/又は検出装置は、例えば、適切なソフトウェアを介して、上述の光信号または画像に基づいて、1つ且つ同じマイクロフルイディック構成の様々なマイクロチャネルの個々の蓄積領域15のそれぞれに蓄積された粒子の量を表す情報を、特に個々のマイクロチャネル13についての粒子の数を推定することを可能にする処理を行うために、予め手配される。
【0084】
他の実施形態において、例えば、光センサ21が光学スキャナのようなセンサのアレイを含む場合、センサ自体は、対応するマイクロフルイディック構成12の各個別のマイクロチャネル13の蓄積領域15の個別の光信号または個別の画像を取得するように構成されていてもよい。また、この場合、遠心分離及び/又は検出装置は、上述の光信号または画像に基づいて、マイクロフルイディック構成の様々なマイクロチャネルの個々の蓄積領域15のそれぞれに蓄積された粒子の量を表す情報を処理するように予め配置されている。
【0085】
当然、装置1はまた、参照された光学的検出の技術(すなわち、集合的および個別的)の両方を採用することができるように工夫されてもよい。
【0086】
図27は、装置1の場合を示しており、そのうちの検出または読取ユニット20は、例えば光センサのアレイによって形成された2つの静止した光センサ21を含み、これらは、装置10の回転動の過程で、必要な光学的検出のために、少なくとも対応するマイクロフルイディック構成12の蓄積領域15がセンサ自体の下に周期的に配置されるように設定されている。装置10の基板は、好ましくは透明材料で作られているので、入射および反射の両方で動作する、または粒子の異なる方向への散乱を測定する光学的構成が可能になる。
【0087】
既に述べたように、本発明に係るマイクロフルイディック装置10は、単純な計数及び/又は流体サンプル中に含まれる粒子の種類の検出の目的のために使用することができ、また、例えば抗バイオグラムの実行のためのより複雑な分析機能のために使用することもできる(この場合、マイクロチャネルはまた、例えばそこに抗生物質を導入することなどで、前処理されてもよい)。
【0088】
本発明に係る支持体またはマイクロフルイディック装置および遠心分離及び/又は検出装置は、細菌および微生物の増殖能力の評価の目的のために有利に使用することができ、また従属的には、短時間で、かつ少量の流体サンプルで、抗生物質に対するそれらの感受性のプロファイル(抗バイオグラム)を決定する目的のために、使用することができる。
【0089】
この目的のために知られている方法は、その増殖に適した培地中でコロニーを形成する微生物のまたは細菌の能力の評価に、または微生物の増殖後の培養ブロスの濁度の評価に基づく。微生物や細菌の増殖を抑制する抗生物質の能力は、古典的に、微生物や細菌の抗生物質に対する感受性の関数として変化する特性であるコロニーの計数や培養液の濁度レベルによって評価される。
【0090】
この感受性は、細菌株の効率的な増殖を防止する抗生物質の能力にリンクされており、このタイプの分析にリンクした時間は、微生物または細菌が増殖する速度に依存することは明らかである。先行技術に従って踏襲される手法は、本質的には、細菌または微生物の「二次元」層(コロニー)が肉眼で見えるようになるまで成長することができるという事実に基づいて、または液体中の細菌または微生物の増殖が、統計的に有意な方法で液体自体の濁度を変更するようなことができるという事実に基づいており、この濁度は、濁度範囲の測光法によって測定可能である(読取は、通常、500から600ナノメートルの間の波長で行われている)。
【0091】
ここで提案される前述のマイクロフルイディック装置を利用した技術は、代わりに、細菌または微生物の層の二次元的な成長または濁度の増加として読まれる液体中の成長のいずれかを考慮しないいくつかのパラメータに基づいている。
【0092】
より具体的には、ここで提案される方法は、以下のステップを想定している。
i)成長因子(例えば、BHなどの細菌培養ブロス)の添加の有無にかかわらず、生体物質(例えば、患者によって直接採取された尿)の短期的な成長を得るステップ。
ii)前のステップで得られた培養物を、同じ濃度の生体物質及び/又は培養媒体で種付けされたマイクロチャネル13に導入するステップ(この目的のために、マイクロチャネル13に、図16において符号16で指定されたようなウェルを提供することが特に有利である場合がある)。
iii)マイクロチャネル13内の細菌の増殖を測定するステップ。
iv)1つまたはそれ以上の「陰性」マイクロチャネル13、すなわち、培養媒体のみが添加される(例えば、50%のPBS緩衝液または生理溶液を用いて)マイクロチャネル13を特定するステップ。
v)1つまたはそれ以上の「陽性」マイクロチャネル13、すなわち、マイクロチャネル13のシステム内に存在する細菌または微生物株の増殖能力を検証することができるものを特定するステップ;および
vi)抗生物質を含む一連のマイクロチャネル13を、種付けされた生体物質中に存在する細菌または微生物株の抗生物質に対する耐性または感受性を検証するような方法で特定するステップ。
【0093】
抗生物質に対する感受性の測定は、異なる方策を用いて実施することができ、マイクロチャネル13の蓄積領域15における細菌または微生物の増殖後の堆積から始まり、これは、上述のとおり、装置10の遠心分離を介して得ることができる。この手法は、以下の事項の間の必要な比較を行うことを、有利に可能にする。
- 初期物質中に存在する細菌または微生物の量。
- 潜伏期(incubation)終了時に存在する細菌または微生物の量;および
- 抗生物質で処理されたマイクロチャネル13内に存在する細菌または微生物の量;適切な蛍光色素の使用により、生きた細菌と死んだ細菌との選択的特定を可能にし得る。
【0094】
この種の分析のために、特に有利なのは、図12-15の装置のようないくつかの一連のマイクロチャネル13を含むマイクロフルイディック構成を備えた装置10かもしれない。これらのマイクロフルイディック技術は、遠心分離が小さな空間に微生物を「濃縮」し、それゆえに、入射および反射の両方において、可視光によるクリアな視野で、またはマーキングされた細胞上を蛍光で見ることのいずれかでそれらが可視化されることを考慮すると、他の技術(例えば、濁度)と比較して、より高い感度を有する。提案された濃縮技術と画像の適切な分析により、線形アレイのセンサによって、又は長方形アレイのセンサ(例えば、CCDカメラやCMOSカメラ、または画像取得のために使用される他の技術)によってのいずれかで、細胞の数の+/-20%の変化が、信頼性の高い正確な方法で測定される。この程度の変化は、代わりの古典的な濁度技術を用いて検出できないが、提案された方法を用いて検出することができ、短い成長時間、例えば20-40分の間であっても決定することが可能である。定量化または推定は、上述のように、少なくとも対象のマイクロチャネル13の蓄積領域15において、光学的検出を介して行われてもよい。
【0095】
加えて、または代わりに、細菌体の計数は、細菌または微生物の「増殖」集団を含む電界のインピーダンスの変化を検出するために、蓄積領域15に設けられた電極を用いて実施することができる:この変化は、検査対象の細菌株の感受性(または耐性)の信号として使用することができる。また、この場合、検出時間が非常に短いかもしれない。
【0096】
上述した方法は、臨床的な立場から見て極めて異なる状況において、有益に使用することができる。
【0097】
例えば、比較的一般的な生体物質(例えば、尿培養のための尿)のサンプル中の細菌または微生物の「絶対数」を測定することが可能である。例えば1ミリリットルあたり100000個よりも高い細菌数が尿路の感染を示している場合、細菌量の単なる「数値」の記載は、非常に正確に病理学的状況であることを示している。
【0098】
また、微生物や細菌の特定がない場合(いずれにしても標準的な技術で実行可能)、抗生物質パネルに対する感受性/耐性のプロファイルは容易に評価可能であり、患者に「非試験的」な、しかし実際の抗生物質感受性の研究に基づいた治療を受ける機会を提供する。この場合、尿検査陽性の大部分は単一の孤立した微生物によって特徴づけられるのに対し、多微生物性(polymicrobism)は、入院中の患者や、サンプリング技術に関連した理由で複雑な状況の患者における分析前の原因により、頻繁に見られることを再認識することが重要である。
【0099】
より複雑な状況(例えば、入院患者の場合)では、細菌の特定は、患者だけでなく、それに関連する院内感染の治療戦略の改善につながる。一方で、既に述べたように、尿のようなあまり「高貴」でない物質については、病原体の特定は、異なる経路をたどることができ、一方で、極めて短い時間で実施されない抗生物質に対する感受性のプロファイルは、救命のための抗生物質治療の設定の遅れをもたらす可能性がある。この理由から、装置10(特に、図16で符号16によって指定されるようなタイプのマイクロウェルを有するもの)には、まだ特定されていないが、即時の治療手法が必要になる単一のコロニー(例えば、血液培養から単離された)を装填することが可能である。この後者の場合、複雑な材料から単離された細菌を種付けしてもよく、数十分以内に抗バイオグラムが利用可能になり得る。
【0100】
前述の説明から、本発明の特徴、及びその利点が明らかである。
【0101】
提案された装置と方法は、サンプルの比較的少量の開始量、例えば0.05から 1ミリリットルの間での実行を可能とする。例えば、小児科において、小動物に実施する研究、物質(生体および試薬)の量を減らすことが有用なその他すべての場合、また経済的な理由から、比較的少量の試料使用ですむことが有利である。血球コンポーネント(corpusculated component)の測定は、再現性の問題が事実上なくなるような数の粒子が計数された時点で終了する:一般的に16000個の粒子が計数され、全体の1-5%で表される部分集団の正確な推定値が得られる。したがって、例えば、1ミリリットル当たり10万個の粒子の濃度から始めると仮定した場合、本発明によれば、0.2から0.4ミリリットルの間の開始サンプル量で十分であるのに対し、より高い濃度、例えば1ミリリットル当たり100万個の粒子の場合、開始サンプル量は、例えば0.02から0.06ミリリットルの間まで低下する可能性がある。
【0102】
本発明に係る装置は、抗バイオグラムを実施するために特に有利である。
【0103】
一般的に述べると、この目的のために、装置10の少なくとも1つの構成12のマイクロチャネル13に細菌培養物を植え付けてもよい。次いで、装置10は、遠心分離を受け(例えば、上述の装置1の1つを使用して)、マイクロチャネル13の領域15に蓄積した細菌の数を定量化または推定する。この種の応用において、比較すべき異なる条件での増殖が、通常の実験装備および装置を用いて以前に得られ得る限りにおいて、マイクロフルイディック装置10は、微生物、例えば細菌の定量のため専用に使用されてもよい。
【0104】
他の応用において、抗バイオグラムは、固体支持体上の細菌の二次元培養から開始して実施することができる。この場合、方法は、以下のステップを想定してもよい。
i)固体培養皿から細菌のコロニーを採取するステップ。
ii)コロニーまたはその一部を液体媒体、例えば培養ブロスに植え付け、好ましくは均質な分散液を形成するステップ。
iii)装置10の少なくとも1つの構成12のマイクロチャネル13に細菌を含む液体培地を装填し、上述のマイクロチャネルの少なくとも一部に抗生物質、好ましくは異なるタイプ及び/又は異なる濃度の凍結乾燥された(lyophilised)抗生物質、および抗生物質を装填していない他のマイクロチャネルを装填するステップ。
iv)10分から6時間、好ましくは1時間から2時間の間の期間培養するステップ。
v)装置10を遠心分離するステップ;および
vi)マイクロチャネル13の領域15に蓄積した細菌を定量するステップ、特に、抗生物質または使用された抗生物質に対する当該細菌の感受性のプロファイルを得るために、抗生物質で前処理されたマイクロチャネル13と前処理されていないマイクロチャネル13との間の相対的な定量を行うことによって、当該細菌を定量するステップ。
【0105】
さらに他の応用において、本発明に係る装置は、有利には、一次サンプル、すなわち、被験体または宿主生物(ヒトまたは動物)から直接採取されたサンプルから開始する抗バイオグラムを実施するために使用することができる。この場合、方法は以下のステップを想定してもよい。
i)例えば尿などの一次サンプルから細菌の濃縮物または塊(またはペレット)を得るステップ;この目的のために、例えば、一次サンプルは、上述の細菌塊を界面活性剤から分離するために、通常の実験装備および装置を使用して遠心分離を受けてもよい;遠心分離は、好ましくは、2つのステップで実行される:細胞を除去するために低速で行う第一のステップ;および細菌を濃縮するために高速で行う第二のステップ;代わりに、第一の遠心分離ステップは、細胞を除去するための濾過で置き換えることができる。
ii)得られた細菌塊またはその一部を液体媒体、例えば培養ブロスに植え付け、好ましくは均質な分散液を形成するステップ。
iii)装置10の少なくとも1つの構成12のマイクロチャネル13に細菌を含む液体培地を装填し、上述のマイクロチャネルの少なくとも一部に抗生物質、好ましくは異なるタイプ及び/又は異なる濃度の凍結乾燥された(lyophilised)抗生物質、および抗生物質を装填していない他のマイクロチャネルを装填するステップ。
iv)10分から6時間、好ましくは1時間から2時間の期間培養するステップ。
v)装置10を遠心分離するステップ;および
vi)マイクロチャネル13の領域15に蓄積した細菌を定量するステップ、特に、抗生物質または使用された抗生物質に対する当該細菌の感受性のプロファイルを得るために、抗生物質で前処理されたマイクロチャネル13と前処理されていないマイクロチャネル13との間の相対的な定量を行うことによって、当該細菌を定量するステップ。
【0106】
本発明の範囲から逸脱することなく、当業者であれば、本明細書に例示的に記載された支持体および基板、装置、および方法に対して多数のバリエーションを行うことができることは明らかであろう。1つの実施形態に関連して記載された個々の特徴が、前の実施例とは異なるものであっても、本明細書に記載された他の実施形態で使用され得ることは、当技術に熟練した当業者には同様に明らかであろう。
【0107】
本発明の適用は、医療または獣医学の分野に限定されるものではなく、任意の種類の流体中に存在する粒子の濃縮及び/又は定量化のために記載された支持体および装置を、例えば工業または農業の分野でも使用することが可能である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
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図20
図21
図22
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図26
図27