(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-26
(45)【発行日】2024-04-03
(54)【発明の名称】正極活物質層形成用材料および該正極活物質層形成用材料を用いた非水電解質二次電池
(51)【国際特許分類】
H01M 4/131 20100101AFI20240327BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20240327BHJP
H01M 4/62 20060101ALI20240327BHJP
H01M 10/0569 20100101ALI20240327BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20240327BHJP
【FI】
H01M4/131
H01M4/36 C
H01M4/62 Z
H01M10/0569
H01M10/052
(21)【出願番号】P 2021011049
(22)【出願日】2021-01-27
【審査請求日】2022-02-03
(73)【特許権者】
【識別番号】520184767
【氏名又は名称】プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117606
【氏名又は名称】安部 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100136423
【氏名又は名称】大井 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100130605
【氏名又は名称】天野 浩治
(72)【発明者】
【氏名】横江 健次
【審査官】森 透
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-088297(JP,A)
【文献】国際公開第2019/168035(WO,A1)
【文献】特開2014-177722(JP,A)
【文献】特開2018-190720(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第107275619(CN,A)
【文献】特開2007-005267(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0346337(US,A1)
【文献】国際公開第2018/051667(WO,A1)
【文献】特表2018-533174(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00-4/62
H01M 10/0569
H01M 10/052
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極活物質と、カーボンナノチューブと、を含む正極活物質層形成用材料であって、
前記正極活物質は、
リチウム遷移金属複合酸化物を含むコア部と、
該コア部の表面の少なくとも一部を被覆するコート部と、
を備えており、
前記コート部は、球状、板状、針状または不定形状のTiO
2粒子を含み、
ここで、前記TiO
2粒子の被覆量を、XPS分析により算出される、前記正極活物質の表面におけるチタン(Ti)の元素割合(原子%)と、前記コア部を構成する金属元素のうちアルカリ金属以外の金属元素(Me)の元素割合(原子%)とを用いて、下記式(I)から算出されるTi被覆率として示すと、該Ti被覆率は
12.7~13.1%であ
り、
Ti被覆率(%)={Tiの元素割合/(Tiの元素割合+Meの元素割合)}×100・・・(I)
前記正極活物質層形成用材料の全固形分量を100質量%としたとき、前記カーボンナノチューブの含有量は1~5質量%である、正極活物質層形成用材料。
【請求項2】
前記カーボンナノチューブは、マルチウォールカーボンナノチューブを含む、請求項1に記載の正極活物質層形成用材料。
【請求項3】
正極と、
負極と、
カーボネート類、エーテル類、エステル類、ニトリル類、スルホン類、およびラクトン類から選択される少なくとも一種の非水溶媒と、支持塩と、を含む非水電解質と、
を備える非水電解質二次電池であって、
該正極は、請求項1
または2に記載の正極活物質層形成用材料から構成された正極活物質層を含む、非水電解質二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、正極活物質層形成用材料に関する。本発明はまた、当該正極活物質層形成用材料を用いた非水電解質二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池等の非水電解質二次電池は、パソコン、携帯端末等のポータブル電源や、電気自動車(EV)、ハイブリッド自動車(HV)、プラグインハイブリッド自動車(PHV)等の車両駆動用電源などに好適に用いられている。かかる非水電解質二次電池は、典型的には、正極と、負極と、非水電解質とを備えている。そして、このような正極は、一般的に、電荷担体となるイオンを吸蔵および放出可能な正極活物質を含んでいる。
【0003】
ところで、近年、非水電解質二次電池のさらなる高性能化が要求されている。かかる要求を実現する方法の一例として、正極活物質の表面に金属酸化物等を被覆する方法が挙げられる。例えば、下記特許文献1には、粒子表面に、チタン(Ti)元素が活物質に対して0.2~1.5質量%存在するように二酸化チタン(TiO2)の被膜層が形成された、正極活物質が開示されている。かかる正極活物質を用いたリチウムイオン二次電池によると、高率放電性能(さらには、出力特性)が向上する旨、記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、出力特性をさらに向上させる方法として、例えば正極活物質の表面におけるTiO2の被覆量を増大させる方法が考えられる。しかしながら、TiO2そのものは電子絶縁性を有するため、反応抵抗(即ち、電荷移動抵抗)が増大することで出力特性が低減することを防止する等の観点から、TiO2の被覆量の増大には限度があった(例えば、上記特許文献1の実施例を参照すると、Ti元素が活物質に対して3.0質量%以上存在する場合、出力特性が低下することが分かる)。即ち、TiO2の被覆量が増大された正極活物質を含む態様においても、反応抵抗の低減を好適に実現することができる正極材料の開発が求められている。
【0006】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされてものであり、その主な目的は、TiO2を含む被覆部(以下、「コート部」ともいう)を有する正極活物質を含み、かつ、反応抵抗を好適に低減することができる正極活物質層形成用材料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる目的を実現するべく、本発明は、正極活物質と、カーボンナノチューブとを含む正極活物質層形成用材料を提供する。上記正極活物質は、リチウム遷移金属複合酸化物を含むコア部と、該コア部の表面の少なくとも一部を被覆するコート部とを備えており、該コート部はTiO2を含むことを特徴とする。
【0008】
本発明者らは、TiO2を含むコート部を備えた正極活物質に、導電材としてカーボンナノチューブを添加した正極活物質形成用材料によると、TiO2の被覆量を従来よりも増大させた場合においても、出力特性に優れた非水電解質二次電池を得ることができることを見出し、本発明を完成するに至った。特に限定解釈されるものではないが、TiO2の被覆量を増大させた場合においても、正極活物質にカーボンナノチューブが絡みつくことによって電子伝導性を好適に担保することができるため、かかる効果を得ることができるものと考えられ得る。また、カーボンナノチューブの存在により、正極活物質とTiO2との接触面積が増大することも、出力特性の向上に寄与しているものと考えられ得る。
【0009】
ここで開示される正極活物質層形成用材料の好ましい一態様では、XPS分析により算出される、上記正極活物質の表面におけるチタン(Ti)の元素割合(原子%)と、上記コア部を構成する金属元素のうちアルカリ金属以外の金属元素(Me)の元素割合(原子%)とを用いて、下記式(I)から算出されるTi被覆率は、5~21%である。
Ti被覆率(%)={Tiの元素割合/(Tiの元素割合+Meの元素割合)}×100
・・・(I)
Ti被覆率が5~21%と高い正極活物質は、ここで開示される技術を適用する対象として好適である。
【0010】
ここで開示される正極活物質層形成用材料の好ましい一態様では、上記カーボンナノチューブは、マルチウォールカーボンナノチューブを含む。
カーボンナノチューブのなかでも、マルチウォールカーボンナノチューブは、熱的・化学的安定性に優れているため、ここで開示される技術に好ましく用いることができる。
【0011】
ここで開示される正極活物質層形成用材料の好ましい一態様では、上記正極活物質層形成用材料の全固形分量を100質量%としたとき、上記カーボンナノチューブの含有量は、5質量%以下である。
かかる構成の正極活物質層形成用材料によると、電池容量が好適に維持された非水電解質二次電池を得ることができるため好ましい。
【0012】
また、本発明は、他の側面として、ここで開示されるいずれかの正極活物質層形成用材料から構成される正極活物質層を含む正極と、負極と、非水電解質とを備える非水電解質二次電池を提供する。かかる構成の非水電解質二次電池は、出力特性に優れるため好ましく用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】一実施形態に係るリチウムイオン二次電池の内部構造を模式的に示す断面図である。
【
図2】一実施形態に係るリチウムイオン二次電池が備える捲回電極体の構成を模式的に示す図である。
【
図3】一実施形態に係る正極活物質層形成用材料の構成を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、ここで開示される正極活物質層形成用材料および該正極活物質層形成用材料を用いた非水電解質二次電池に関する好適な一実施形態について、適宜図面を参照しつつ詳細に説明する。本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって実施に必要な事柄は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。なお、以下の実施形態は、ここで開示される技術を限定することを意図したものではない。また、本明細書にて示す図面では、同じ作用を奏する部材・部位に同じ符号を付して説明している。さらに、各図における寸法関係(長さ、幅、厚さ等)は実際の寸法関係を反映するものではない。
なお、本明細書および特許請求の範囲において、所定の数値範囲をA~B(A、Bは任意の数値)と記すときは、A以上B以下の意味である。したがって、Aを上回り且つBを下回る場合を包含する。
【0015】
本明細書において、「非水電解質二次電池」とは、電解質として非水系の電解液を用いた繰り返し充放電可能な電池一般をいう。かかる非水電解質二次電池の典型例として、リチウムイオン二次電池が挙げられる。リチウムイオン二次電池は、電解質イオン(電荷担体)としてリチウム(Li)イオンを利用し、正極と負極との間をリチウムイオンが移動することによって充放電を行う二次電池である。また、本明細書において「活物質」とは、電荷担体を可逆的に吸蔵・放出する材料をいう。
【0016】
先ず、本実施形態に係る正極活物質層形成用材料1を用いたリチウムイオン二次電池について説明する。なお、以下の説明では、扁平形状の捲回電極体20を備える角形のリチウムイオン二次電池100について説明するが、ここで開示される非水電解二次電池をかかる態様に限定することを意図したものではない。ここで開示される非水電解質二次電池は、積層型電極体(すなわち、複数の正極と、複数の負極とが交互に積層された電極体)を備えるリチウムイオン二次電池として構成することもできる。また、ここで開示される非水電解質二次電池は、コイン型リチウムイオン二次電池、ボタン型リチウムイオン二次電池、円筒形リチウムイオン二次電池、ラミネート型リチウムイオン二次電池として構成することもできる。また、ここで開示される非水電解質二次電池は、公知方法に従い、リチウムイオン二次電池以外の非水電解質二次電池として構成することもできる。
【0017】
図1は、一実施形態に係るリチウムイオン二次電池の内部構造を模式的に示す断面図である。本実施形態に係るリチウムイオン二次電池100は、扁平形状の捲回電極体20と非水電解質(図示せず)とが扁平な角形の電池ケース(即ち外装容器)30に収容されることによって構築される密閉型電池である。電池ケース30には、外部接続用の正極端子42および負極端子44と、電池ケース30の内圧が所定レベル以上に上昇した場合に該内圧を開放するように設定された薄肉の安全弁36とが設けられている。正負極端子42,44はそれぞれ正負極集電板42a,44aと電気的に接続されている。電池ケース30の材質には、例えば、アルミニウム等の軽量で熱伝導性の良い金属材料が用いられる。
【0018】
図1および
図2に示すように、捲回電極体20は、正極シート50と、負極シート60とが、2枚の長尺状のセパレータシート70を介して重ね合わされて長手方向に捲回された形態を有する。正極シート50は、長尺状の正極集電体52の片面または両面(ここでは両面)に長手方向に沿って正極活物質層54が形成された構成を有する。負極シート60は、長尺状の負極集電体62の片面または両面(ここでは両面)に長手方向に沿って負極活物質層64が形成されている構成を有する。正極活物質層非形成部分52a(すなわち、正極活物質層54が形成されずに正極集電体52が露出した部分)および負極活物質層非形成部分62a(即ち、負極活物質層64が形成されずに負極集電体62が露出した部分)は、捲回電極体20の捲回軸方向(即ち、上記長手方向に直交するシート幅方向)の両端から外方にはみ出すように形成されている。正極活物質層非形成部分52aおよび負極活物質層非形成部分62aには、それぞれ正極集電板42aおよび負極集電板44aが接合されている。
【0019】
正極集電体52としては、リチウムイオン二次電池に用いられる従来公知の正極集電体を用いることができ、その例としては、導電性の良好な金属(例えば、アルミニウム、ニッケル、チタン、ステンレス鋼等)製のシートまたは箔が挙げられる。正極集電体52としては、アルミニウム箔が好ましい。正極集電体52の寸法は特に限定されず、電池設計に応じて適宜決定すればよい。正極集電体52としてアルミニウム箔を用いる場合には、その厚みは、特に限定されないが、例えば5μm以上35μm以下であり、好ましくは7μm以上20μm以下である。
【0020】
正極活物質層54は、ここで開示される正極活物質層形成用材料1から構成される(正極活物質層形成用材料1については、後述する)。正極活物質層54の厚みは、特に限定されないが、例えば、10μm以上300μm以下であり、好ましくは20μm以上200μm以下である。
【0021】
負極集電体62としては、リチウムイオン二次電池に用いられる公知の負極集電体を用いてよく、その例としては、導電性の良好な金属(例えば、銅、ニッケル、チタン、ステンレス鋼等)製のシートまたは箔が挙げられる。負極集電体52としては、銅箔が好ましい。負極集電体62の寸法は特に限定されず、電池設計に応じて適宜決定すればよい。負極集電体62として銅箔を用いる場合には、その厚みは、特に限定されないが、例えば5μm以上35μm以下であり、好ましくは7μm以上20μm以下である。
【0022】
負極活物質層64は負極活物質を含有する。当該負極活物質としては、例えば黒鉛、ハードカーボン、ソフトカーボン等の炭素材料を使用し得る。黒鉛は、天然黒鉛であっても人造黒鉛であってもよく、黒鉛が非晶質な炭素材料で被覆された形態の非晶質炭素被覆黒鉛であってもよい。
【0023】
負極活物質の平均粒子径(メジアン径:D50)は、特に限定されないが、例えば、0.1μm以上50μm以下であり、好ましくは1μm以上25μm以下であり、より好ましくは5μm以上20μm以下である。
なお、本明細書において「平均粒子径」とは、例えば、レーザー回折・散乱法に基づく体積基準の粒度分布において、粒径の小さい側から積算値50%に相当する粒径を意味する。
【0024】
負極活物質層64は、活物質以外の成分、例えばバインダや増粘剤等を含み得る。バインダとしては、例えばスチレンブタジエンラバー(SBR)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)等を使用し得る。増粘剤としては、例えばカルボキシメチルセルロース(CMC)等を使用し得る。
【0025】
負極活物質層中の負極活物質の含有量は、90質量%以上が好ましく、95質量%以上99質量%以下がより好ましい。負極活物質層中のバインダの含有量は、0.1質量%以上8質量%以下が好ましく、0.5質量%以上3質量%以下がより好ましい。負極活物質層中の増粘剤の含有量は、0.3質量%以上3質量%以下が好ましく、0.5質量%以上2質量%以下がより好ましい。
【0026】
負極活物質層64の厚みは、特に限定されないが、例えば、10μm以上300μm以下であり、好ましくは20μm以上200μm以下である。
【0027】
セパレータ70としては、例えばポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエステル、セルロース、ポリアミド等の樹脂から成る多孔性シート(フィルム)が挙げられる。かかる多孔性シートは、単層構造であってもよく、二層以上の積層構造(例えば、PE層の両面にPP層が積層された三層構造)であってもよい。セパレータ70の表面には、耐熱層(HRL)が設けられていてもよい。
【0028】
非水電解質は、典型的には、非水溶媒と支持塩(電解質塩)とを含有する。非水溶媒としては、一般的なリチウムイオン二次電池の電解液に用いられる各種のカーボネート類、エーテル類、エステル類、ニトリル類、スルホン類、ラクトン類等の有機溶媒を、特に限定なく用いることができる。具体例として、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、モノフルオロエチレンカーボネート(MFEC)、ジフルオロエチレンカーボネート(DFEC)、モノフルオロメチルジフルオロメチルカーボネート(F-DMC)、トリフルオロジメチルカーボネート(TFDMC)等が例示される。このような非水溶媒は、1種を単独で、あるいは2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
【0029】
支持塩としては、例えば、LiPF6、LiBF4、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)等のリチウム塩(好ましくはLiPF6)を好適に用いることができる。支持塩の濃度は、0.7mol/L以上1.3mol/L以下が好ましい。
【0030】
なお、上記非水電解質は、本発明の効果を著しく損なわない限りにおいて、上述した成分以外の成分、例えば、オキサラト錯体等の被膜形成剤;ビフェニル(BP)、シクロヘキシルベンゼン(CHB)等のガス発生剤;増粘剤;等の各種添加剤を含んでいてもよい。
【0031】
リチウムイオン二次電池100は、以下で説明する正極活物質層形成用材料1を用いること以外は、公知方法と同様にして作製することができる。
【0032】
次に、正極活物質形成用材料1について説明する。
図3は、一実施形態に係る正極活物質層形成用材料1の構成を模式的に示す図である。本実施形態に係る正極活物質形成用材料1は、大まかにいって、正極活物質10と、カーボンナノチューブ16とを含む。以下、各構成要素について説明する。
【0033】
(正極活物質10)
図3に示すように、本実施形態に係る正極活物質10は、コア部12と、該コア部の表面の少なくとも一部を被覆するコート部14とを備えている。また、コート部14は、TiO
2を含むことを特徴とする。
【0034】
(a)コア部12
コア部12は、リチウム遷移金属複合酸化物を含有する粒子である。リチウム遷移金属複合酸化物の結晶構造は、特に限定されず、層状構造、スピネル構造、オリビン構造等であってよい。リチウム遷移金属複合酸化物としては、遷移金属元素として、Ni、Co、Mnのうち、少なくとも1種を含むリチウム遷移金属複合酸化物が好ましく、具体的には、リチウムニッケル系複合酸化物、リチウムコバルト系複合酸化物、リチウムマンガン系複合酸化物、リチウムニッケルマンガン系複合酸化物、リチウムニッケルコバルトマンガン系複合酸化物、リチウムニッケルコバルトアルミニウム系複合酸化物、リチウム鉄ニッケルマンガン系複合酸化物等が挙げられる。
【0035】
なお、本明細書において、「リチウムニッケルコバルトマンガン系複合酸化物」とは、Li、Ni、Co、Mn、Oを構成元素とする酸化物の他に、それら以外の1種または2種以上の添加的な元素を含んだ酸化物をも包含する用語である。かかる添加的な元素の例として、Mg、Ca、Al、V、Cr、Y、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、W、Na、Fe、Zn、Sn等の遷移金属元素や典型金属元素等が挙げられる。また、添加的な元素は、B、C、Si、P等の半金属元素や、S、F、Cl、Br、I等の非金属元素であってもよい。このことは、上述したリチウムニッケル系複合酸化物、リチウムコバルト系複合酸化物、リチウムマンガン系複合酸化物、リチウムニッケルマンガン系複合酸化物、リチウムニッケルコバルトマンガン系複合酸化物、リチウムニッケルコバルトアルミニウム系複合酸化物、リチウム鉄ニッケルマンガン系複合酸化物等をコア部12として使用した場合でも同様である。
【0036】
リチウムニッケルコバルトマンガン系複合酸化物としては、下記式(II)で表される組成を有するものが好ましい。
Li1+xNiyCozMn(1-y-z)MαO2-βQβ・・・(II)
【0037】
式(I)中、x、y、z、αおよびβはそれぞれ、0≦x≦0.7、0.1<y<0.9、0.1<z<0.4、0≦α≦0.1、0≦β≦0.5を満たす。Mは、Zr、Mo、W、Mg、Ca、Na、Fe、Cr、Zn、SnおよびAlからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素である。Qは、F、ClおよびBrからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素である。エネルギー密度および熱安定性の観点から、yおよびzはそれぞれ、0.3≦y≦0.5、0.2≦z≦0.4を満たすことが好ましい。xは、0≦x≦0.25を満たすことが好ましく、0≦x≦0.15を満たすことがより好ましく、さらに好ましくは0である。αは、0≦α≦0.05を満たすことが好ましく、より好ましくは0である。βは、0≦β≦0.1を満たすことが好ましく、より好ましくは0である。
【0038】
コア部12の形状は、ここで開示される技術の効果が発揮される限りにおいて特に制限されないが、例えば、球状、板状、針状、不定形状等であってよい。また、コア部12は、一次粒子が凝集した二次粒子の形態であってよく、中空の形態であってもよい。コア部12の平均粒子径は、例えば、0.05μm以上20μm以下であり、1μm以上20μm以下が好ましく、3μm以上15μm以下がより好ましい。
【0039】
コア部12の製造方法としては、例えば、リチウム遷移金属複合酸化物の前駆体(例えば金属水酸化物)を晶析法等によって作製し、該前駆体にリチウムを導入する方法等が挙げられる(後述の実施例を参照)。
【0040】
(b)コート部14
コア部12の表面の少なくとも一部には、コート部14が形成されている。また、コート部14は、TiO2を含む。ここで、TiO2の結晶構造としては、アナターゼ型(正方晶)、ルチル型(正方晶)、ブルッカイト型(斜方晶)等が知られている。コート部14は、ここで開示される技術の効果が発揮される限りにおいて、上述したような結晶構造を有するTiO2のうち、1種類または2種類以上を含んでいてもよい。TiO2は、例えば市販のものを購入して用いることができる。
【0041】
TiO2の形状は、ここで開示される技術の効果が発揮される限りにおいて特に制限されないが、例えば、球状、板状、針状、不定形状等であってよい。TiO2の平均粒子径としては、ここで開示される技術の効果が発揮される限りにおいて特に制限されないが、概ね0.1~200nm(例えば、100nm程度)とすることができる。
【0042】
正極活物質10の表面におけるTiO2の被覆量(換言すると、正極活物質10の表面におけるTi被覆率)は、ここで開示される技術の効果が発揮される限りにおいて特に制限されないが、典型的には、0.01~30%とすることができる。反応抵抗低減効果を好適に実現するという観点から、かかるTi被覆率は、好ましくは0.1%以上、より好ましくは0.5%以上、1.0%以上、2.0%以上、3.0%以上、さらに好ましくは5.0%以上とすることができる。一方、Ti被覆率が高すぎると、TiO2自体が絶縁体であるために、被覆による反応抵抗低減効果が小さくなる傾向にある。したがって、かかる被覆率は、好ましくは25%以下、より好ましくは21%以下(例えば20%以下)であり、さらに好ましくは15%以下(例えば、14%以下等)とすることができる。
【0043】
なお、かかるTi被覆率は、X線電子分光(XPS)による分析によって正極活物質粒子表面の元素の割合を定量することにより、求めることができる。具体的には、正極活物質粒子表面の、チタン(Ti)の元素割合、および、コア部を構成する金属元素のうちのLi以外の金属元素(Me)の元素割合を、「原子%」を単位として算出し、Ti被覆率を、「原子%」で表されるTiの元素割合の値と、「原子%」で表されるMeの元素割合の値とを用いて、下記式(I)に基づいて算出することができる。
Ti被覆率(%)={Tiの元素割合/(Tiの元素割合+Meの元素割合)}×100・・・(I)
【0044】
コート部14の厚みは、ここで開示される技術の効果が発揮される限り特に制限されないが、概ね0.1nm~500nm(例えば、1nm~200nmや10nm~100nm)の範囲とすることができる。コート部14の厚みは、例えば、正極活物質10の断面を、透過型電子顕微鏡を用いたエネルギー分散型X線分光分析(TEM-EDX)によって観察することで求めることができる。
【0045】
(カーボンナノチューブ16)
カーボンナノチューブは、炭素六角網をなすグラフェンが筒状に丸められた構造を有する繊維状の炭素である。カーボンナノチューブは、アスペクト比が高く、電子伝導性に優れた性質を有している。カーボンナノチューブの種類としては、例えば1層のグラフェンにより形成されるシングルウォールカーボンナノチューブ(SWCNT)や、2層以上のグラフェンにより形成されるマルチウォールカーボンナノチューブ(MWCNT)等が挙げられる。このなかでも、マルチウォールカーボンナノチューブは、熱的・化学的安定性に優れているため、ここで開示される技術に好ましく用いることができる。
【0046】
カーボンナノチューブ16の平均長さは、ここで開示される技術の効果が発揮される限りにおいて特に制限されないが、概ね、1~1000μm(例えば、10~500μm等)とすることができる。また、カーボンナノチューブの長さ分布は、概ね1μm~1000μm(例えば、10~50μm等)とすることができ、BET比表面積は、概ね100m2/g~500m2/gとすることができる。また、カーボンナノチューブ16の平均直径は、ここで開示される技術の効果が発揮される限りにおいて特に制限されないが、概ね0.1~100nm(例えば、10nm程度)とすることができる。
【0047】
カーボンナノチューブ16の炭素純度は、高い方が結晶構造に含まれる欠損が少なく、導電性に優れていることから、純度が高いものを使用することが好ましい。カーボンナノチューブの純度は、95%以上が好ましく、97%以上がより好ましく、99%以上(例えば、99.5%や99.9%等)が特に好ましい。
【0048】
カーボンナノチューブ16の含有量は、ここで開示される技術の効果が発揮される限りにおいて特に制限されないが、正極活物質層形成用材料1の全固形分量を100質量%としたとき、概ね0.01~10質量%とすることができる。反応抵抗を好ましく低減するするという観点から、かかる含有量は、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、さらに好ましくは1質量%以上等とすることができる。また、リチウムイオン二次電池100におけるエネルギー密度を好適に担保するという観点から、かかる含有量は、好ましくは8質量%以下、より好ましくは5質量%以下等とすることができる。
【0049】
カーボンナノチューブ16は、市販のものを購入して用いてもよいし、従来公知のカーボンナノチューブの製造方法によって作製したものを使用してもよい。かかる方法としては、例えば、化学気相成長法(CVD)、アーク放電法、レーザー蒸発法等を挙げることができる。
【0050】
正極活物質層形成用材料1は、ここで開示される技術の効果が発揮される限りにおいて、正極活物質10、カーボンナノチューブ16以外の成分を含んでいてもよい。かかる成分としては、例えば、例えば、リン酸三リチウム、導電材、バインダ等を挙げることができる。導電材としては、例えばアセチレンブラック(AB)等のカーボンブラックやその他(例、グラファイトなど)の炭素材料を好適に用いることができる。バインダとしては、例えばポリフッ化ビニリデン(PVDF)等を用いることができる。
【0051】
正極活物質層形成用材料1中の正極活物質10の含有量は、ここで開示される技術の効果が発揮される限りにおいて特に制限されないが、概ね70質量%以上であり、好ましくは80~97質量%であり、さらに好ましくは85~96質量%以下とすることができる。また、正極活物質形成用材料1中のリン酸三リチウムの含有量は、ここで開示される技術の効果が発揮される限りにおいて特に制限されないが、概ね1~15質量%であり、例えば2~12質量%とすることができる。正極活物質層形成用材料1中の導電材の含有量は、ここで開示される技術の効果が発揮される限りにおいて特に制限されないが、概ね1~15質量%であり、例えば3~13質量%とすることができる。正極活物質層形成用材料中のバインダの含有量は、ここで開示される技術の効果が発揮される限りにおいて特に制限されないが、概ね1~15質量%であり、例えば1.5~10質量%とすることができる。
【0052】
正極活物質10の製造方法としては、例えば、コア部12と、TiO2と、乳鉢等を用いて混合する方法等が挙げられる(後述の実施例を参照)。なお、Ti被覆率は、例えば、コア部12に対するTiO2の添加量を変更する等によって、変更することができる。これに限定されないが、例えば、Ti被覆率がX%の正極活物質は、コア部と、TiO2とを、質量比が100:X+1程度となるように用意し、混合することによって得ることができる。なお、ここで開示される正極活物質は、所定量のコア部と、TiO2とをメカノケミカル装置に投入し、メカノケミカル処理(例えば、6000rpmの回転数で30分間)を行うことによっても、作製することができる。
【0053】
以上のように構成される正極活物質層形成用材料1を用いたリチウムイオン二次電池100は、各種用途に利用可能である。例えば、車両に搭載されるモーター用の高出力動力源(駆動用電源)として好適に用いることができる。車両の種類は特に限定されないが、典型的には自動車、例えばプラグインハイブリッド自動車(PHV)、ハイブリッド自動車(HV)、電気自動車(EV)等が挙げられる。リチウムイオン二次電池100は、複数個が電気的に接続された組電池の形態で使用することもできる。
【0054】
以下、本発明に関する実施例を説明するが、本発明をかかる実施例に示すものに限定することを意図したものではない。
【0055】
<正極活物質の作製>
(コア部の作製)
Li以外の金属の硫酸塩を水に溶解させた水溶液を調製した。例えば、コア部として層状構造を有するLiNi1/3Co1/3Mn1/3O2粒子を作製する場合、硫酸ニッケル、硫酸コバルトおよび硫酸マンガンを、NiとCoとMnのモル比が1:1:1となるように含有する水溶液を調製した。そこへNaOHおよびアンモニア水を添加して中和することにより、コア部の前駆体である、Li以外の金属を含む複合水酸化物を析出させた。得られた複合水酸化物と炭酸リチウムとを、所定の割合で混合した。例えば、正極活物質粒子として層状構造を有するLiNi1/3Co1/3Mn1/3O2粒子を作製する場合、Ni、Co、Mnの合計と、Liとのモル比が1:1となるように、複合水酸化物と炭酸リチウムとを混合した。混合物を電気炉内において870℃で15時間焼成した。室温(25℃±5℃)まで電気炉内で冷却した後、焼成物を解砕処理して、一次粒子が凝集した球状のコア部(平均粒子径:5.0μm)を得た。
【0056】
このようにして、コア部として、LiNi1/3Co1/3Mn1/3O2、LiCoO2、LiMn2O4、LiNiO2、LiNi0.5Mn1.5O4、およびLiNi0.8Co0.15Al0.05O2を作製した。
【0057】
(サンプル1および7に係る正極活物質)
上記のとおり作製したコア部(LiNi1/3Co1/3Mn1/3O2)を、そのままサンプル1および7に係る正極活物質とした。
【0058】
(サンプル2~6,8~13に係る正極活物質)
上記のとおり作製したコア部(LiNi1/3Co1/3Mn1/3O2)と、TiO2(ルチル型,平均粒子径:100nm程度)とを、乳鉢を用いて30分間混合した。このとき、上記コア部に対するTiO2の添加量を変更することにより、TiO2の被覆率を変更した。一例として、サンプル8に係る正極活物質は、コア部と、TiO2とを、質量比が100:6程度となるように用意し、混合することで作製した。このようにして、サンプル2~6,8~13に係る正極活物質を作製した。
【0059】
<正極活物質の表面におけるTi被覆率の測定>
グローブボックス中において、上記のとおり作製した各正極活物質100mgを、アルミニウム製のサンプルパンに入れ、錠剤成形機によりプレスして測定試料を作製した。これを、XPS分析ホルダーに貼り付け、XPS分析装置「PHI 5000 VersaProbe II」(ULVACPHI社製)を用いて、下記に示す条件でXPS測定を行った。測定元素の組成分析を行い、各元素の割合を「Atomic%」で算出した。この値を用いて、式:{Tiの元素割合/(Tiの元素割合+Meの元素割合)}×100より、被覆率(%)を算出した。なお、式中、Meは正極活物質のLi以外の金属元素である(例えば、LiNi1/3Co1/3Mn1/3O2の場合、Meは、NiとCoとMnである)。結果を、表1の「Ti被覆率」の欄に示した。
X線源:AlKα単色光
照射範囲φ100μmHP(1400×200)
電流電圧:100W、20kV
中和銃:ON
パスエネルギー:187.85eV(ワイド)、46.95-117.40eV(ナロー)
ステップ:0.4eV(ワイド)、0.1eV(ナロー)
シフト補正:C-C,C-H (C1s、284.8eV)
ピーク情報:Handbook of XPS (ULVAC-PHI)
【0060】
<評価用リチウムイオン二次電池の作製>
上記のとおり作製したサンプル1~13に係る正極活物質と、導電材としてのカーボンナノチューブ(マルチウォールカーボンナノチューブ,長さ:10~50μm,直径:10nm)、および、アセチレンブラック(AB)と、バインダとしてのポリフッ化ビニリデン(PVDF)とを準備した(正極活物質層形成用材料の準備)。これらを、分散媒としてのN-メチルピロリドン(NMP)とを、ディスパーを用いて混合して、正極活物質層形成用ペーストを調製した。このとき、活物質とABとPVDFとの質量比は、90:5:5とし、かかる全固形分量100質量%としたときに、カーボンナノチューブを表1の該当欄に示す質量%となるように添加した。また、固形分濃度は56質量%とした。このペーストを、ダイコータを用いてアルミニウム箔の両面に塗布し、80℃で10分間乾燥した後、30tでプレスすることにより正極シートを作製した。
【0061】
また、負極活物質としての天然黒鉛(C)と、バインダとしてのスチレンブタジエンラバー(SBR)と、増粘剤としてのカルボキシメチルセルロース(CMC)とを、C:SBR:CMC=98:1:1の質量比で、イオン交換水中において混合して、負極活物質層形成用ペーストを調製した。このペーストを、ダイコータを用いて銅箔の両面に塗布し、乾燥した後、プレスすることにより負極シートを作製した。
【0062】
また、セパレータシートとして、PP/PE/PPの三層構造を有し、厚みが24μmの多孔性ポリオレフィンシートを2枚用意した。
【0063】
作製した正極シートと負極シートと用意した2枚のセパレータシートとを重ね合わせ、捲回して捲回電極体を作製した。作製した捲回電極体の正極シートと負極シートにそれぞれ電極端子を溶接により取り付け、これを、注液口を有する電池ケースに収容した。
【0064】
続いて、電池ケースの注液口から非水電解液を注入し、当該注液口を、封口蓋により気密に封止した。なお、非水電解液には、エチレンカーボネート(EC)とジメチルカーボネート(DMC)とエチルメチルカーボネート(EMC)とを1:1:1の体積比で含む混合溶媒に、支持塩としてのLiPF6を1.0mol/Lの濃度で溶解させたものを用いた。以上のようにして、サンプル1~13に係る評価用リチウムイオン二次電池を得た。
【0065】
<反応抵抗測定>
各評価用リチウムイオン二次電池を活性化した後、電圧を3.7Vに調製した。この各評価用リチウムイオン二次電池を-10℃の温度環境下に置き、周波数範囲0.01Hz~100,000Hzで電圧振幅5mVの交流電圧を印加した状態でインピーダンス測定を行った。そして、得られたCole-Coleプロットの円弧の直径Rを反応抵抗(Rct)として求めた。サンプル1のRctを1とした場合の各サンプルおよびその他の各比較例のRctの比を求めた。結果を表1の「反応抵抗比」の欄に示した。
【0066】
【0067】
<コア部の種類の検討>
(サンプル14,16,18,20,22)
上記のとおり作製したコア部LiCoO2、LiMn2O4、LiNiO2、LiNi0.5Mn1.5O4、およびLiNi0.8Co0.15Al0.05O2を、それぞれサンプル14,16,18,20,22に係る正極活物質とした。
【0068】
(サンプル15,17,19,21,23)
上記のとおり作製したコア部LiCoO2、LiMn2O4、LiNiO2、LiNi0.5Mn1.5O4、およびLiNi0.8Co0.15Al0.05O2を、それぞれルチル型のTiO2と、乳鉢を用いて30分間混合した。このようにして、サンプル15,17,19,21,23に係る正極活物質を作製した。
【0069】
上記サンプル14~23に係る正極活物質を用いて、上記と同様にして評価用リチウムイオン二次電池を作製し、上記と同様にして反応抵抗(Rct)を評価した。そして、サンプル14,16,18,20,22に係る評価用リチウムイオン二次電池のRctをそれぞれ1とした場合の、サンプル15,17,19,21,23のRctの比を求めた。結果を表2の「反応抵抗比」の欄に示した。
【0070】
【0071】
表1に示すように、TiO2を含むコート部を備えた正極活物質、および、カーボンナノチューブを含む正極活物質層形成用材料を用いたサンプル8~12に係るリチウムイオン二次電池によると、サンプル1(コア部のみを含む正極活物質層形成用材料を用いたリチウムイオン二次電池)、サンプル2~6(正極活物質のみを含む正極活物質層形成用材料を用いたリチウムイオン二次電池)、サンプル7(コア部と、カーボンナノチューブとを含む正極活物質形成用材料を用いたリチウムイオン二次電池)と比較して、反応抵抗が好適に低減することが確認された。
また、Ti被覆率が大きい態様(例えば、5~21%)において、カーボンナノチューブを添加したサンプル8~13に係るリチウムイオン二次電池では、反応抵抗が効果的に低減することが確認された。
【0072】
そして、表2に示すように、サンプル1,14,16,18,20,22に係るリチウムイオン二次電池では、それぞれサンプル10,15,17,19,21,23に係るリチウムイオン二次電池と比較して、反応抵抗が好適に低減されることが確認された。このことから、正極活物質のコア部の組成および結晶構造にかかわらず、反応抵抗低減効果が得られることが分かる。
【0073】
以上より、ここで開示される正極活物質層形成用材料によると、反応抵抗を好適に低減することができ、これを用いた非水電解質二次電池の出力特性を向上できることが分かる。
【0074】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、請求の範囲を限定するものではない。請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
【符号の説明】
【0075】
1 正極活物質層形成用材料
10 正極活物質
12 コア部
14 コート部
16 カーボンナノチューブ
20 捲回電極体
30 電池ケース
36 安全弁
42 正極端子
42a 正極集電板
44 負極端子
44a 負極集電板
50 正極シート(正極)
52 正極集電体
52a 正極活物質層非形成部分
54 正極活物質層
60 負極シート(負極)
62 負極集電体
62a 負極活物質層非形成部分
64 負極活物質層
70 セパレータシート(セパレータ)
100 リチウムイオン二次電池