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特許7461335溶融フィラメント造形製造方法とそこで使用されるポリマーブレンド
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-26
(45)【発行日】2024-04-03
(54)【発明の名称】溶融フィラメント造形製造方法とそこで使用されるポリマーブレンド
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/106 20170101AFI20240327BHJP
   B29C 64/118 20170101ALI20240327BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20240327BHJP
   B33Y 70/00 20200101ALI20240327BHJP
   C08L 23/06 20060101ALI20240327BHJP
   C08L 23/08 20060101ALI20240327BHJP
【FI】
B29C64/106
B29C64/118
B33Y10/00
B33Y70/00
C08L23/06
C08L23/08
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021503821
(86)(22)【出願日】2019-07-12
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-11-25
(86)【国際出願番号】 US2019041645
(87)【国際公開番号】W WO2020028013
(87)【国際公開日】2020-02-06
【審査請求日】2022-06-28
(31)【優先権主張番号】62/712,302
(32)【優先日】2018-07-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/743,164
(32)【優先日】2018-10-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【弁理士】
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100208225
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 修二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100144417
【弁理士】
【氏名又は名称】堂垣 泰雄
(72)【発明者】
【氏名】ゴーリン、クレイグ エフ.
(72)【発明者】
【氏名】ビスワス、サンジブ
(72)【発明者】
【氏名】アレン、シャロン
(72)【発明者】
【氏名】マテウッチ、スコット ティー.
(72)【発明者】
【氏名】ダーモディ、ダニエル エル.
(72)【発明者】
【氏名】シン、ハープリード
(72)【発明者】
【氏名】ピジック、アレクサンダー ジェイ.
【審査官】坂本 薫昭
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-093010(JP,A)
【文献】特表2012-521632(JP,A)
【文献】特開2017-217881(JP,A)
【文献】国際公開第2012/063764(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/182917(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第105295175(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C
B33Y 10/00,70/00
C08L 23/06,23/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
付加製造の方法であって、
(i)高密度ポリエチレンおよび第2の熱可塑性ポリマーを含む熱可塑性ブレンドを提供することであって、前記第2の熱可塑性ポリマーは、エチレン/アクリル酸コポリマー、エチレン/メタクリル酸コポリマーまたはそれらの組み合わせであり、重量による第2の熱可塑性ポリマーの量に対する高密度ポリエチレンの量は、1.5/1~20/1の比率である、提供することと、
(ii)前記熱可塑性ブレンドを、ノズルを通して加熱および分注して、基材上に堆積された押出物を形成することと、
(iii)所定のパターンで前記基材とノズルとの間に水平変位が存在するように、前記熱可塑性ブレンドを分注しながら前記基材、前記ノズルまたはそれらの組み合わせを移動させ、前記基材上に材料の初期層を形成することと、
(iv)ステップ(ii)および(iii)を繰り返して、前記初期層上に接着した前記材料の連続層を形成して、付加製造部品を形成することと、を行う方法。
【請求項2】
前記方法が、複数の連続層が接着および積み上げられて、前記付加製造部品を形成するように、ステップ(iv)を繰り返すステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記比率が、10/1~20/1である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記高密度ポリエチレンが溶融温度を有し、前記第2の熱可塑性ポリマーが溶融温度を有し、高密度ポリエチレンの溶融温度が前記第2の熱可塑性ポリマーの前記溶融温度よりも高い、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記高密度ポリエチレンがメルトインデックスを有し、前記第2の熱可塑性ポリマーがメルトインデックスを有し、前記高密度ポリエチレンの前記メルトインデックスおよび前記第2の熱可塑性ポリマーのメルトインデックスが、0.1~5の前記高密度ポリエチレンのメルトインデックス/第2の熱可塑性ポリマーのメルトインデックスのメルトインデックス比を有する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記メルトインデックス比が、0.2~1である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記高密度ポリエチレンおよび第2の熱可塑性ポリマーが、前記ノズルを通して分注される前に溶融される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記高密度ポリエチレンおよび第2の熱可塑性ポリマーが、前記ノズル内に引き込まれ、前記ノズル内で溶融されるフィラメントに形成される、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性ポリマー粉末を、例えば、ノズルを通して前進および加熱され、プラテン上に堆積されるフィラメントを使用して溶融および押し出す付加製造の方法に関する(一般に溶融フィラメント造形と呼ばれる)。特に、本発明は、付加製造プロセスにおける不十分な反りおよび接着のために使用できない、主に高密度ポリエチレンを含む熱可塑性ポリマーを可能にするものである。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性ポリマー(典型的にはナイロン)の付加製造はよく知られている。例えば、一般にプラスチックジェット印刷とも呼ばれる溶融フィラメント造形(FFF)は、ノズルに引き込まれ、加熱され、溶融され、次いで押し出される熱可塑性フィラメントを使用することによって3D部品を形成するために使用されており、押し出されたフィラメントは、冷却時に一緒に融着する(例えば、米国特許第5,121,329号を参照されたい)。この技術は、フィラメントの溶融および押し出しを必要とするため、材料は熱可塑性ポリマー(典型的にはナイロン)および複雑な装置に限定されていた。さらに、この技術は、部品を形成するのに必要な高温に耐えなければならない複雑な部品を作製する際に同じく押し出される支持構造を必要とし、これはまた、例えば溶解することによって、またはそれと米国特許第5,503,785号に記載されているような最終物品との間の層を溶解することによってそれを解放することによって、容易に除去される。
【0003】
3dプリント部品の形成中に堆積された層間の適切な結合(z方向の接着の欠如)を確実にするために、極性基を有するナイロンまたは他のポリマーの使用が必要とされてきた。同様に、高密度ポリエチレン(HDPE)等の特定の配向で結晶形成を示すポリマーも反り、適切に印刷されない傾向がある。これらの理由により、HDPEは商業的にFFF3dプリントに成功していない。少量のHDPEを含むポリマーのブレンドは、WO2016/080573に記載されているように印刷されることが報告されている。同様に、HDPEの有害な結晶化を減らすために高レベルのフィラー固体フィラーが使用されているが(例えば、CN104629152AおよびCN105295175)、適切な印刷を可能にするために必要なフィラーのレベルは、HDPEで形成されたそのような部品の望ましい機械的特性を大幅に低下させる。
【0004】
1つ以上の従来技術の3D印刷HDPE問題を回避しながら、HDPEの望ましい特性を維持するHDPEを含むポリマーを印刷する方法を提供することが望ましいであろう。
【発明の概要】
【0005】
我々は、溶融フィラメント造形付加製造の改良された方法を発見し、本方法は、
(i)高密度ポリエチレン(HDPE)および第2の熱可塑性ポリマー(STP)を含む熱可塑性ブレンドを提供することと、ここで、第2のポリマーは、低密度ポリエチレン、官能化ポリオレフィン、またはそれらの組み合わせであり、重量による第2の熱可塑性ポリマーの量に対する高密度ポリエチレンの量は、1.5/1~20/1の比率であり、
(ii)前記熱可塑性ブレンドを、ノズルを通して加熱および分注して、基材上に堆積された押出物を形成することと、
(iii)所定のパターンで基材とノズルとの間に水平変位が存在するように、熱可塑性ブレンドを分注しながら基材、ノズルまたはそれらの組み合わせを移動させ、基材上に材料の初期層を形成することと、
(iv)ステップ(ii)および(iii)を繰り返して、初期層上に接着した材料の連続層を形成して、付加製造部品を形成することと、を含む。
【0006】
本発明の第2の態様は、高密度ポリエチレンおよび第2の熱可塑性ポリマーのブレンドを含む複数の押出物の少なくとも2つの層を含む付加製造物品であって、第2のポリマーは、低密度ポリエチレン、官能化ポリオレフィンまたはそれらの組み合わせであり、重量による第2の熱可塑性ポリマーの量に対する高密度ポリエチレンの量は、1.5/1~20/1の比率である。
【0007】
本発明の第3の態様は、高密度ポリエチレンおよび第2の熱可塑性ポリマーを含む熱可塑性ブレンドを含むフィラメントを含む、付加製造に有用なフィラメントであって、第2の熱可塑性ポリマーは、低密度ポリエチレン、官能化ポリオレフィンまたはそれらの組み合わせであり、重量による第2の熱可塑性ポリマーの量に対する高密度ポリエチレンの量は、1.5/1~20/1の比率である。
【0008】
改良された付加製造法は、反り、z方向(高さ)の接着力の欠如等、HDPEの印刷に関連する3D印刷の問題を回避しながら、高密度ポリエチレン(HDPE)の望ましい特性を備えた付加製造ポリマー部品を形成するのに使用することができる。この方法は、FFFで使用される溶融温度または3D印刷温度で固体であるフィラー等の添加剤を含まないHDPEを主に含むFFF法で熱可塑性部品を作製するのに特に適している。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の方法によって造形された本発明の付加製造物品の側面図である。
図2】本発明の方法で形成される初期層の押出物の端面図である。
図3】本発明の方法の完成した初期層の端面図である。
図4】HDPEのみを使用した付加製造物品の比較例と、本発明の第2の熱可塑性ポリマーと共にHDPEを使用した付加製造物品の3つの実施例の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
付加製造法は、以前に作製され、次に既知のFFF印刷装置にロードされたフィラメントを利用して、上記のように当技術分野で知られているもの等の部品のFFF造形に適した任意の装置および方法(すなわち、加熱、分注、繰り返し、および除去の方法ステップ)を使用することができる。この方法はまた、ノズルまたはその前で材料を溶融ブレンドし、次のように付加製造を形成しながら、より従来の方法で押出物を押し出すことができる。
【0011】
図1~3を参照すると、この方法は、熱可塑性ブレンドをノズルアセンブリ110に取り付けられたノズル100を通して加熱し分注することを含む。材料を分注すると、基材150上に初期層130および連続層140を形成する押出物120を形成する。ノズルアセンブリ110は、基材に直交するように描かれているが、押出物を形成するための任意の有用な角度に設定することができ、押出物120およびノズルアセンブリ110は鈍角を形成し、押出物120は基材に対して平行である。さらに、図1~3に示すように、ノズルアセンブリ110は、例えばノズル100の開口の形状を再配向させて、基材150と異なる関係を有する押出物120を生成するために、その長手方向軸の周りに回転させることができる。
【0012】
基材150とノズルアセンブリ110との相対的な動きも示されているが、基材150、ノズルアセンブリ110、またはそれらの両方を移動させて、任意の水平方向または垂直方向の相対運動を生じさせることができることが理解される。動作は所定の様式で行われ、これは任意の知られたCAD/CAM方法および装置、例えば当技術分野において周知のもの、および容易に入手可能なロボットまたはコンピュータ化された工作機械のインタフェースによって達成され得る。そのようなパターン形成は、例えば、米国特許第5,121,329号に記載されている。
【0013】
押出物120は、連続的に分注されてもよく、または中断されて初期層130および連続層140を形成してもよい。中断された押出物120が望ましい場合、ノズルは、材料の流れを遮断するための弁(図示せず)を備えてもよい。そのような弁機構は、パターンと関連して任意のCAD/CAM方法により容易に制御することができる任意の知られた電気機械弁等の任意の好適なものであってもよい。
【0014】
材料は接着性であり得るため、基材150は、Teflon(登録商標)等のフッ素化ポリマー等の低表面エネルギー材料であってもよい。代替として、基材は、ポリウレタン反応射出成形技術において知られているもの等の離型剤を有してもよく、または、基材は、付加製造部品を分注および形成する前にその上に設置された低エネルギー材料の紙またはフィルムのシートを有してもよい。
【0015】
2つ以上のノズルアセンブリ110を用いて、付加製造部品内に複合構造または勾配構造を作製することができる。同様に、米国特許第5,503,785号に記載されているように、より複雑な幾何構造を形成させるため、後に除去され得る支持構造を分注するように第2のノズルアセンブリ110が使用されてもよい。支持体材料は、支持体を追加し、容易に除去することができる任意のもの、例えばワックス等の当技術分野において知られているものであってもよい。
【0016】
この方法は、高密度ポリエチレン(HDPE)と第2の熱可塑性ポリマーを含む熱可塑性ブレンドを使用し、第2のポリマーは、低密度ポリエチレン、官能化ポリオレフィン、またはそれらの組み合わせである。重量による第2の熱可塑性ポリマーの量に対するHDPEの量は、1.5/1~20/1の比率である。
【0017】
HDPEは、市販されているもの等の任意の既知のHDPEであり得る。HDPEは当技術分野で共通の理解を有しており、HDPEは、フィリップスクロム触媒、チーグラー触媒またはメタロセン触媒等、それらを作製するために使用される触媒によって特徴付けられる。HDPEは密度がわずかに高く、低密度ポリエチレンよりも結晶性が高く、分岐がほとんどまたは本質的にないため、LDPEよりも結晶性の高いポリマーになる。HDPEは、LDPEと比較して強度と重量の比率が高いという特徴がある。典型的には、HDPEは、約9.4~9.65の密度および約0.1~約50、好ましくは約0.25~40のメルトインデックスを有する(ASTM D1238)。例示的な市販のHDPEは、これらに限定されないが、全てThe Dow Chemical Companyから入手可能なDMDA-8007 NT 7(メルトインデックス8.3、密度0.965)、DMDC-8910 NT 7(メルトインデックス10、密度0.943)、DMDA-1210 NT 7(メルトインデックス10、密度0.952)、HDPE 17450N(メルトインデックス17、密度0.950)、DMDA-8920 NT 7(メルトインデックス20、密度0.954)、DMDA 8940 NT 7(メルトインデックス44、密度0.951)、DMDA-8950 NT 7(メルトインデックス50、密度0.942)、DMDA-8965-NT 7(メルトインデックス66、密度0.952)、DMDC-1210 NT7(メルトインデックス10、密度0.952)を含む。他の例示的なHDPEは、全てExxon Mobilから入手可能なHDPE HD6601.29(メルトインデックス5、密度0.948)およびHDPE HD6733.17(メルトインデックス33、密度0.950);全てLyondell Basellから入手可能なAlathon H5220(メルトインデックス20、密度0.952)およびAlathon M4661(メルトインデックス6.1、密度0.946);LG Chemから入手可能なLutene H Me8000(メルトインデックス8.0、密度0.957);Sabicから入手可能なHDPE CC254(メルトインデックス2.1、密度0.953)を含み得る。
【0018】
熱可塑性ブレンドを形成するためにHDPEと共に使用される第2の熱可塑性ポリマー(STP)は、低密度ポリエチレン(LDPE)、官能化ポリオレフィン、またはそれらの組み合わせである。LDPEとは、高圧で根本的に重合され、HDPEおよび線状低密度ポリエチレン(LLDPE)と比較して実質的な分岐をもたらすポリエチレンを意味する。典型的には、LDPEは、約0.91~約0.93の密度および約0.1~50の、より典型的には約0.5~40のメルトインデックスを有する。適切であり得る例示的な市販のLDPEは、LDPE 150E((メルトインデックス0.25、密度0.921)LDPE 421E((メルトインデックス3.2、密度0.930)LDPE 780E((メルトインデックス20、密度0.923)LDPE 722((メルトインデックス8、密度0.918)、AGILITY 1021(メルトインデックス1.9、密度0.919)等のThe Dow Chemical Company(Midland MI)から入手可能なもの、SabicからのHP7023(メルトインデックス7.0、密度0.932)、Lyondell BasellからのLupolen 1800S(メルトインデックス20、密度0.917)、Exxon MobilからのLDPE LD 102.LC(メルトインデックス(6.8、密度0.921)およびLDPE LD 136.MN(メルトインデックス2.0、密度0.912)を含む。
【0019】
官能化ポリオレフィンは、炭素および水素以外の原子を含むポリオレフィンであり、例えば、官能化ポリオレフィンは、ヒドロキシル、アミン、アルデヒド、エポキシド、エトキシレート、カルボン酸、エステル、無水物基、またはそれらの組み合わせで修飾され得る。一般に、官能化ポリオレフィンは、エチレン/アクリル酸コポリマー(例えば、PRIMACOR(商標)(The Dow Chemical Company(「Dow」)の商標の商品名で販売されているポリマー)、NUCREL(商標)(E.I. du Pont de Nemours and Companyの商標)およびESCOR(商標)(ESCORはExxon Corporationの商標である))、エチレン/メタクリル酸コポリマー(例えば、NUCREL(商標)の商品名で販売されているポリマー)、無水マレイン酸変性ポリオレフィン(例えば、LICOCENE(商標)(Clariant AG Corporationの商標)の商品名で販売されているポリマー、EPOLENE(商標)(EPOLENEはWestlake Chemical Corporationの商標)およびMORPRIME(商標)(Rohm and Hass Chemicals LLCの商標))を含むプロトン化(-COOH)または非プロトン化(-COO-)酸基または酸性塩等の官能基を含む。酢酸ビニルで修飾されたもの(ELVAX、E.I. du Pont de Nemours and Company、Wilmington DE(「DuPont」))、修飾されたアクリレート(DuPontから入手可能なELVALOY)およびAMPLIFY(Dow)等のエチレンエステルコポリマー。同様に、官能化ポリオレフィンの後続のアイオノマーは、Zn、Na、Mg、またはK等の金属からのカチオンによる中和によって形成され、例としては、Dupontから入手可能なSURLYNがある。
【0020】
熱可塑性ブレンド中のHDPEおよび第2の熱可塑性ポリマーの重量比は、熱可塑性ブレンドの大部分がHDPEである比率であり、HDPE/熱可塑性ポリマーの比率は1.5/1~20/1である。好ましくは、HDPE/(STP)の量は、2/1、5/1または10/1~15/1である。一実施形態では、熱可塑性ブレンドは、ブレンド中に他の成分を有さず、それが好ましい。
【0021】
一実施形態では、熱可塑性ブレンドはペレットの形態であり、その後、付加製造プロセス中に加熱されて押し出される。別の実施形態では、熱可塑性ブレンドはフィラメントの形態である。これらのそれぞれは、当技術分野で知られているプロセスによって作製され得る。特定のSTPでHDPEを使用する場合のフィラメントは、驚くべきことに、HDPEの望ましい機械的特性を持ち、優れたz方向の密着性と最小限の反りを可能にする、付加製造物品の形成を可能にすると考えられる微細構造を実現する。
【0022】
一実施形態では、HDPEは連続マトリックスであり、STPは、フィラメントまたは印刷物内のHDPEの連続マトリックス内に不連続に分散している(本明細書では「粒子」と呼ばれる)。一般的かつ望ましくは、STPの特徴のスケールは、フィラメントの直径のサイズよりも実質的に小さいスケールである(例えば、粒子のサイズは、フィラメントの直径より少なくとも5倍または10倍小さい)。例示的に、STP粒子は、約5マイクロメートル未満であり、いくつかの実施形態では、HDPE連続相に分散されたサブミクロン粒子(例えば、約1マイクロメートル未満)である。粒子は任意の形状を有し得るが、球形になる傾向がある。これらの特徴は、均一に分散させることも、濃度勾配を持たせることもできる。フィラメントまたは造形物品のSTP粒子および微細構造は、原子間力顕微鏡法または走査型電子顕微鏡法等の顕微鏡法によって観察され得る。
【0023】
一実施形態では、熱可塑性ブレンドは、ブレンドの大部分がHDPEである限り、顔料、フィラー、潤滑剤、スリップ剤、または難燃剤等の1つ以上の任意成分を有する。他の成分は、HDPEとSTPの相溶化、または最終物品の機械的特性等、1つ以上の特性または機能を改善するための添加剤を含み得る。収縮特性をさらに改善するために、MillikenからのHPN-20E等の核剤も添加され得る。内部潤滑剤または加工助剤は、Dynamar FX5911(3M)、Kynar PPA(Arkema)またはLicolub H 12またはLicowax pe 520(Clariant)等を含み得る。熱可塑性ブレンドは、典型的にはフィラーと呼ばれる無機粒子、および染料および固結防止/流動制御剤(例えば、ヒュームドシリカ)を含み得る。染料は、無機(例えば、カーボンブラックまたは混合金属酸化物顔料)または有機染料、例えば、イノアニリン、オキソノール、ポルフィン誘導体、アンタキノン、メソスチリル、ピリリウムおよびスクアリリウム誘導体化合物であり得る。フィラーは、炭酸カルシウム、ケイ酸塩、酸化物(石英、アルミナまたはチタニア)等のプラスチックに使用される一般的なフィラーであり得る。
【0024】
HDPEおよびSTPは典型的には、示差走査熱量測定(DSC)によって決定された2つのポリマーの開始溶融温度の差によって定義されるように溶融する温度が異なる。典型的には、HDPEおよびSTPの溶融温度は互いに20℃または10℃以内であるが、必ずしもそうとは限らない。例えば、例として、特定の材料の最適な溶融温度は、単一の温度ではなく、数℃を超える範囲であり得る。STPの溶融温度はHDPEの溶融温度よりも低いことが望ましい。
【0025】
この方法は、部品が層間に接着された押出物の少なくとも2つの層からなる、新規の付加製造部品を生成し、STPは、形成に使用されるフィラメント直径または押出ノズル開口よりも小さいスケールでHDPE内に散在し、押出物とHDPE/STPの重量比は1.5/1~20/1である。スケールは、フィラメント内の粒子について上記で説明したものに類似する。特定の実施形態では、STPは、HDPEの連続マトリックスに分散され、STP粒子は、約5マイクロメートル未満であり、いくつかの実施形態では、直径が1マイクロメートル(球相当径)未満である。
【実施例
【0026】
材料:
付加製造物品を作製するための材料を表1に示す。
【表1】
【0027】
HDPE DMDC 1250およびHDPE DMDA 8940 NT-7は付属品として使用された。HDPEとLDPE、LLDPE、またはPRIMACORコポリマーのブレンドは、ペレットを生成するために単軸押出機で溶融ブレンドすることによって形成された。次に、所望のペレットを、スクリューを10rpmで回転させながら190℃に加熱された一軸押出機に供給することによってペレットをフィラメントに形成し、ポリマー溶融物を1.8mmのノズルから押し出し、本質的に同じ直径を有するフィラメントを形成した。造形される部品のサイズおよび特定の3D印刷能力に応じて、他の直径を作製することができ、フィラメントは、1mm(~0.5mm)10mm未満の範囲のサイズのオーダーであることが一般的である。
【0028】
印刷:
部品は、Stratasys Ltd, Minneapolis, MN (USA)から市販されているMakerBot Replicator 2Xで印刷された。層の高さが0.2mmで、完全に充填された小さな3次元ボックス(寸法2cmx2cmx1mm)が印刷された。プリンターベッド温度は110℃、ノズル温度は210℃であった。印刷の結果は、表2に示される。印刷品質は、フラットからコーナーのコーナーギャップの高さを測定することによって部分的に決定された。部品が完全に印刷されなかった場合は、印刷中の大きな歪みとギャップが原因で、それ以上の印刷が役に立たなくなった。印刷された実施例および比較例の部品の結果は、表2に示される。同様に、比較例3および実施例3~5の印刷物品の写真は、図4に示される。
【表2】
【0029】
表2および図4から、HDPEで少量の第2の熱可塑性ポリマーを使用すると、反り、穴、その他の歪みのないHDPEの印刷が可能になることがすぐにわかる。
図1
図2
図3
図4