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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-26
(45)【発行日】2024-04-03
(54)【発明の名称】可動セプタムを備えるセプタムホルダ
(51)【国際特許分類】
   A61J 1/20 20060101AFI20240327BHJP
【FI】
A61J1/20 314C
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021505758
(86)(22)【出願日】2019-08-01
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-12-02
(86)【国際出願番号】 IL2019050871
(87)【国際公開番号】W WO2020031174
(87)【国際公開日】2020-02-13
【審査請求日】2022-06-02
(31)【優先権主張番号】261024
(32)【優先日】2018-08-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IL
(73)【特許権者】
【識別番号】515215911
【氏名又は名称】エクアシールド メディカル リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100098626
【弁理士】
【氏名又は名称】黒田 壽
(74)【代理人】
【識別番号】100128691
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 弘通
(72)【発明者】
【氏名】クリヘリ、マリノ
(72)【発明者】
【氏名】シェム-トーヴ、エリック
(72)【発明者】
【氏名】タヴォール、ラーナン
【審査官】村上 勝見
(56)【参考文献】
【文献】特表平02-500092(JP,A)
【文献】国際公開第2017/183031(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/181320(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/150578(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61J 1/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
体移送装置用のコネクタ部であって、
シリンジに取り付けられるように適合された近位端と開放遠位端とを有する外側本体と;
前記コネクタ部の本体の近位端に固定して取り付けられた少なくとも1つの中空針であって、針の外部と中空内部との間の流体連通を可能にするその尖っている遠位先端に隣接するその下端に少なくとも1つのポートを有する針と;
前記コネクタ部の前記外側本体の内側に配置され少なくとも2つの部分で構成されたセプタムホルダと;
を備え、
前記セプタムホルダの少なくとも2つの部分は、互いに近づく方向および互いに離れる方向に移動可能な本体部分およびセプタムサポートと、前記セプタムサポートに取り付けられたセプタムとを含み、
前記本体部分と前記セプタムサポートは、前記互いに近づく方向の移動の終端で互いに係合することにより前記互いに離れる方向の移動をロックする構成要素をそれぞれ含み、
前記セプタムサポートは、少なくとも1つの中空針の尖った遠位先端に隣接する下端の少なくとも1つのポートが適合して針弁を形成する少なくとも1つのボアを含むインサートを収容するための開口部を含み、
前記本体部分は、前記少なくとも1つのポートが前記インサートのボアの外側にあり、液体が前記中空針を通って流れることを可能にする非ブロック状態で、前記セプタムサポートを解放可能に保持し、
前記少なくとも1つのポートが前記インサートのボアの内側にあり、前記中空針を通る液体の流れを遮断するブロック状態で、前記本体部分および前記セプタムサポートの互いに離れる方向の移動がロックされ、
前記コネクタ部の前記外側本体の開放遠位端は、前記液体移送装置内の液体を移送するために前記コネクタ部が接続される接続用アダプタの近位端が挿入されるように構成され、
前記セプタムサポートに取り付けられた前記セプタムは、前記接続用アダプタの近位端の挿入の際に前記接続用アダプタの近位端に係合し、前記外側本体の開放遠位端に挿入された前記接続用アダプタの近位端によって前記セプタムに加えられる押力により前記セプタムホルダは前記コネクタ部内で前記外側本体に対して移動し、前記セプタムサポート及び前記本体部分は互いに近づく方向に移動するように、構成されている、コネクタ部
【請求項2】
記セプタムサポートは、前記本体部分に向けて下向きに突出して歯形要素で終端する少なくとも1つの弾性の細長いアームを含み、
前記本体部分は、
前記セプタムサポートの少なくとも1つのアームが通る少なくとも1つのスロットを有する上面要素と、
前記セプタムサポートの少なくとも1つのアームの下部にある前記歯形要素が入ることができる少なくとも1つの上部窓と前記上部窓よりも下側に位置し前記セプタムサポートの少なくとも1つのアームの下部にある前記歯形要素が入ることができる少なくとも1つの下部スロット又は下部窓とを有する側面要素と、有し、
前記少なくとも1つの弾性の細長いアームの前記歯形要素が前記上部窓にカチッとはまることにより、前記セプタムが取り付けられた前記セプタムサポートによって中空針のポートを介した液体の流れがブロックされていない非ブロック状態で、前記本体部分が前記セプタムサポートを解放可能に保持し、
前記歯形要素が前記下部スロット又は前記下部窓にカチッとはまることにより、前記セプタムサポートによって前記中空針のポートを介した液体の流れがブロックされたブロック状態で、前記本体部分および前記セプタムサポートの互いに離れる方向の移動がロックされる、
請求項に記載のコネクタ部。
【請求項3】
前記セプタムサポートは、前記セプタムサポートに前記セプタムを取り付けるためのセプタムシートを含み、
前記セプタムは、前記セプタムシートの外径よりも大きい内径を有する円筒形凹部の形態の中空内部を含む下部を含む、
請求項に記載のコネクタ部。
【請求項4】
コネクタ部に接続された液体の密閉移送のためのシリンジまたはその他の気密装置で構成される液体の密閉移送のためのユニットを滅菌するための方法であって、
前記コネクタ部は、液体を密閉して移送するためのシリンジまたは気密装置に取り付けられるように適合された近位端と開放遠位端とを有する外側本体と;前記コネクタ部の本体の近位端に固定して取り付けられた少なくとも1つの中空針であって、針の外部と中空内部との間の流体連通を可能にする、その尖っている遠位先端に隣接するその下端に少なくとも1つのポートを有する針と;前記コネクタ部の前記外側本体の内側に配置され少なくとも2つの部分で構成されたセプタムホルダ;とを備え、
前記セプタムホルダの少なくとも2つの部分は、互いに近づく方向および互いに離れる方向に移動可能なセプタムサポート及び本体部分と、前記セプタムサポートに取り付けられたセプタムとを備え、
前記本体部分と前記セプタムサポートは、前記互いに近づく方向の移動の終端で互いに係合することにより前記互いに離れる方向の移動をロックする構成要素をそれぞれ含み、
前記セプタムホルダは、前記コネクタ部の外側本体に対して移動可能に構成され、
前記セプタムサポートは、少なくとも1つの中空針の尖った遠位先端に隣接する下端の少なくとも1つのポートが適合して針弁を形成する少なくとも1つのボアを含むインサートを収容するための開口部を含み、
前記少なくとも1つのポートが前記インサートのボアの外側にあり、液体が前記中空針を通って流れることを可能にする非ブロック状態で、前記本体部分が前記セプタムサポートを解放可能に保持し、
前記セプタムサポートと前記本体部分とが互いに最も近づく位置に移動し、前記少なくとも1つのポートが前記インサートのボアの内側にあり、前記中空針を通る液体の流れを遮断するブロック状態で、前記本体部分および前記セプタムサポートの互いに離れる方向の移動がロックされ、
前記方法は、
a)前記セプタムホルダをブロックされていない構成に配置することと;
b)ガス滅菌に適したパックで前記ユニットを密封することと;
c)前記パックを閉鎖された容器または部屋に置くことと;
d)前記閉鎖された容器または部屋に滅菌ガスを導入することと;
e)前記ガスが前記パックに入り、前記針の尖った遠位先端に隣接する前記ポートを通って前記シリンジおよび前記コネクタ部の内部に入るのに十分な時間、前記パックを前記滅菌ガスにさらしたままにして、それにより、前記シリンジおよび前記コネクタ部を滅菌することと;
f)前記滅菌ガスを前記容器または前記部屋から排出して、前記パックおよび前記シリンジおよび前記コネクタ部の内側から前記滅菌ガスを引き出すことと;
g)前記滅菌ガスを交換するための空気を、前記容器または前記部屋、前記パック、および前記シリンジおよび前記コネクタ部の内部に導入すること(ここで、前記パック内の空気は滅菌されている)と、
h)必要に応じて、十分な無菌レベルに達するまで、前記ステップdからgを繰り返すことと、を含み、
閉鎖系の接続用アダプタの近位端を前記コネクタ部の本体の開放遠位端に挿入することによって液体を移送するために前記閉鎖系の接続用アダプタに前記ユニットを接続すると、前記セプタムホルダが前記コネクタ部内で移動し、前記セプタムサポートと前記本体部分が互いに近づく方向に移動し、それによって前記ブロック状態で前記本体部分および前記セプタムサポートの互いに離れる方向の移動がロックされる、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体移送装置の分野に関する。具体的には、本発明は、ある容器から別の容器へ有害な薬物を汚染なしで移送するための装置に関する。より具体的には、本発明は、流体移送装置に使用されるコネクタ部の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
医療処置の進歩、および処置の改善により、液体形態の薬物を取り扱うための装置の改善の必要性が絶えず増大する。様々な種類、品質、針の安全性、微生物侵入防止および漏出防止に関連する要求が絶えず増大している。さらに、サンプリングまたは用量分注技術の進歩、自動および手動、無菌または非無菌の用途では、サンプリング用の針のための新たな安全な隠蔽の解決策が必要となる。有害な薬物の調製および投与に関与する医学および薬理学的な人員が、薬物、および周囲に漏れる可能性があるそれらの蒸気に曝される危険を抱えている分野では、非常に厳しい要求が存在する。
【0003】
液体または粉末の形態の有害な薬物は、バイアル内に収容され、典型的には、防護服、口腔用マスクおよび層流安全キャビネットを備えた薬剤師により、別の部屋で調製される。バイアルから薬物を移送するために、カニューレ、すなわち中空針が設けられたシリンジが使用される。調製後、有害な薬物は、静脈内投与用の生理食塩水のような、非経口投与を意図したバッグに含まれる溶液に加えられる。
【0004】
本願の出願人の米国特許第8,196,614号明細書は、有害な薬物を汚染なく移送するように設計された閉鎖系の液体移送装置を記載している。図1および図2a~図2dは、当該特許に記載された装置の一実施形態による、周囲を汚染することなく有害な薬物を移送するための装置10の概略的な断面図である。本発明に関連するこの装置の主な特徴をここで説明する。追加の詳細は、前述の特許で得られる。
【0005】
装置10の近位部は、シリンジ12であり、これは、所望の容積の有害な薬物を流体移送構成要素、例えばバイアル16またはそれが収容されている静注(IV)バッグから吸引または注入し、続いて薬物を別の流体移送構成要素に移送するように適合されている。シリンジ12の遠位端には、コネクタ部14が接続され、このコネクタ部14は、次にバイアルアダプタ15によってバイアル16に接続される。
【0006】
装置10のシリンジ12は、本体18より相当に小さい直径を有する管状スロート20を有する円筒状本体18、円筒状本体18の近位端に固定される環状ゴムガスケットまたはストッパアセンブリ22、ストッパ22を密封するように経る中空ピストンロッド24、および近位のピストンロッドキャップ26からなり、近位のピストンロッドキャップ26により使用者はストッパ22を介してピストンロッド24を上下に押したり引いたりすることができる。ピストンロッド24の遠位端には、エラストマー材料から作られるピストン28がしっかりと取り付けられている。円筒状本体18は、剛性材料、例えばプラスチックで作られている。
【0007】
ピストン28は、円筒状本体18の内壁を密封するよう係合し、円筒状本体18に対して移動可能であり、可変の容積の2つのチャンバを画定する。ピストン28の遠位面とコネクタ部14との間の遠位液体チャンバ30と、ピストン28の近位面とストッパ22との間の近位空気チャンバ32である。
【0008】
コネクタ部14は、コネクタ部14の上部から近位に突出し、スロート20を取り囲むカラーによって、シリンジ12のスロート20に接続されている。装置の実施形態は、スロート20を必ずしも有さないことに留意されたい。これらの実施形態では、シリンジ12およびコネクタ部14は、製造時に単一の要素として一緒に形成されるか、例えば接着剤または溶接によって一緒に永久に取り付けられるか、ねじ係合またはルアーコネクタのような連結手段で形成される。コネクタ部14は、二重メンブレン密閉アクチュエータを含み、これは二重メンブレン密閉アクチュエータが第1の遠位位置に配置されたときに針が隠れる通常の第1の構成と、二重メンブレン密閉アクチュエータが近位に移動したときに針が露出される第2の位置で往復運動可能である。コネクタ部14は、「流体移送アセンブリ」を製造するための薬物バイアル、静注バッグ、または静脈内ラインのような標準的なコネクタを有する任意の流体コンテナであり得る別の流体移送構成要素に解放可能に連結されるように適合され、それにおいて流体が1つの流体移送構成要素から別の構成要素に移送される。
【0009】
コネクタ部14は、円筒状の中空の外側本体と;本体から半径方向に突出し、流体移送構成要素の近位端が連結のために挿入される開口部を有する遠位端で終端する遠位肩部と;本体の内部で往復移動可能な二重メンブレン密閉アクチュエータ34と;その近位端が二重メンブレン密閉アクチュエータ34を含む円筒形アクチュエータケーシングの中間部分に接続された係止要素として役立つ1つ以上の弾性アーム35とを含む。空気導管38および液体導管40として機能する2つの中空針は、コネクタ部14の上部の中央部分からコネクタ部14の内部に突出する針ホルダ36内に固定して保持される。
【0010】
導管38および40は、針ホルダ36から遠位に延び、アクチュエータ34の上部メンブレンを突き刺す。導管38および40の遠位端は、流体移送操作の間に必要とされるときに、空気および液体がそれぞれ導管の内部に出入りすることができる尖った端部および開口を有する。空気導管38の近位端は、シリンジ12の近位空気チャンバ32の内部で延びる。図1に示す実施形態では、空気導管38は、ピストン28を通過し、中空のピストンロッド24の内側に延びている。導管38を通って流れる空気は、ピストンロッド24の内部に出入りし、ピストン28のすぐ上のピストンロッド24の遠位端に形成された開口を通して空気チャンバ32に出入りする。液体導管40の近位端は、液体導管がシリンジ12のスロート20の内部を通って遠位液体チャンバ30と流体連通するように、針ホルダ36の頂部または頂部からわずかに近位の所で終端する。
【0011】
二重メンブレン密閉アクチュエータ34は、長方形の断面を有する近位の円盤状のメンブレン34aと、円盤状の近位部、および近位部に対して半径方向内向きに配置される円盤状の遠位部を有するT字形の断面を有する2つのレベルの遠位メンブレン34bとを保持する円筒状のケーシングを備える。遠位メンブレン34bの遠位部は、アクチュエータ34から遠位に突出する。2つ以上の等しい長さの弾性の細長いアーム35が、アクチュエータ34のケーシングの遠位端に取り付けられている。アームは遠位の拡大要素で終端する。アクチュエータ34が第1の位置にあるとき、導管38、40の尖った端部は近位メンブレンと遠位メンブレンとの間に保持され、導管38、40の端部を周囲から隔離し、それによってシリンジ12の内部の汚染、およびその内部に含まれている有害な薬物の周囲への漏出を防ぐ。
【0012】
バイアルアダプタ15は、コネクタ部14を薬物バイアル16または適切に成形され寸法決めされたポートを有する他のいずれかの構成要素に接続するために使用される中間接続部である。バイアルアダプタ15は円盤状の中央ピースを含み、これにバイアル16の頭部への固定を容易にするためにその内面に凸状のリップが形成された複数の円周状セグメントが、円盤の円周において取り付けられ、遠位方向にそれから突出して、長手方向延長部が円盤状の中央ピースの他方の側から近位方向に突出する。長手方向延長部は、コネクタ部14の遠位端の開口部に嵌合して、本明細書で以下に記載するような薬物の移送ができるようにする。長手方向延長部は、延長部の直径よりも大きい直径を有するメンブレンエンクロージャで近位に終端する。メンブレンエンクロージャの中央開口部は、メンブレン15aを保持し、アクセス可能にする。
【0013】
長手方向延長部の内部に形成され、メンブレンエンクロージャのメンブレンから遠位に延びる2つの長手方向チャネルは、それぞれ導管38および40を受け入れるように適合されている。コネクタ部14がバイアルアダプタ15とかみ合うとき、導管38および40が常に長手方向延長部内の指定されたチャネルに入ることを確実にする機械的誘導機構が設けられる。長手方向延長部は、遠位に突出するスパイク要素15bで遠位に終端する。スパイク要素は、内部に形成されたチャネルとそれぞれ連通する開口部と、その遠位の尖った端部にある開口部が形成されている。
【0014】
バイアル16は、首部を有するバイアルの主要本体に取り付けられた拡大円形頭部を有する。頭部の中央には、そこに収容された薬物の外部への漏れを防止するように適合された近位シール16aがある。バイアル16の頭部がバイアルアダプタ15のカラー部に挿入され、遠位方向の力がバイアルアダプタ15に加えられると、コネクタ部14のスパイク要素15bがバイアル16のシール16aを突き刺して、コネクタ部14の内部チャネルが薬物バイアル16の内部と連通するようにする。こうなると、コネクタ部のカラー部の遠位端の円周方向セグメントが、バイアル16の頭部と確実に係合される。バイアル16のシールが穿孔された後、これによりスパイクの周りが密閉され、バイアルからの薬物の外部への漏れを防止する。同時に、バイアルアダプタ15の内部チャネルの頂部は、バイアルアダプタ15の頂部のメンブレン15aによって密閉され、空気または薬物がバイアル16の内部に出入りすることを防止する。
【0015】
図2a~図2dに示すように、薬物移送装置10を組み立てる処置が実行される。
ステップ1-バイアル16とバイアルアダプタ15とが結合され、スパイク要素15bがバイアルの近位シール16aを貫通した後、バイアルアダプタ15のメンブレンエンクロージャは、図2aに示すように、コネクタ部14の遠位開口部の近くに配置される。
ステップ2-図2bに示すように、バイアルアダプタ15のメンブレンエンクロージャおよび長手方向延長部がコネクタ部14の遠位端の開口部に入るまで、コネクタ部14の本体を軸方向の動きで遠位に移動させることによって、二重メンブレン係合処置が開始される。
ステップ3-アクチュエータ34の遠位メンブレン34bは、コネクタ部14の本体のさらなる遠位の移動によって、バイアルアダプタ15の固定メンブレン15aに接触して押し付けられる。メンブレンがしっかりと共に押し込まれた後、コネクタ部14のアームの端部にある拡大要素は、コネクタ部14のより狭い近位部分に押し込まれ、それによってメンブレンが互いに押し付けられて保持され、図2cに示すように、長手方向延長部の周りで、バイアルアダプタ15のメンブレンエンクロージャの下で係合し、それによってバイアルアダプタ15から二重メンブレン密閉アクチュエータ34が外れることを防止する。
ステップ4-図2dに示すように、コネクタ部14の本体の追加の遠位の移動は、アクチュエータ34を、導管38と40の先端がアクチュエータ34の遠位のメンブレンおよびバイアルアダプタ15の頂部のメンブレンを貫通してバイアル16の内部と流体連通するまで、コネクタ部15の本体に対して近位方向に移動させる。これらの4つのステップは、コネクタ部14がバイアルアダプタ15に対して遠位に移動するときに1つの連続的な軸方向運動によって行われ、それらは逆にされて、コネクタ部14とバイアルアダプタ15を引き離すことによってコネクタ部14をバイアルアダプタ15から分離するようにする。この処置は、本明細書では4つの別個の段ステップを含むものとして記載されているが、これは処置の説明を簡単にするためのみであるという点を強調することが重要である。実際には、本発明を用いた安全な二重メンブレン係合(および離脱)処置は、単一の滑らかな軸方向運動を用いて行われることが理解されるべきである。
【0016】
図1に示す薬物移送アセンブリ10が図2a~図2dを参照して上述したように組み立てられた後、ピストンロッド24を移動させてバイアル16から液体を引き出しても、シリンジからバイアルに液体を注入してもよい。シリンジ12の遠位液体チャンバ30とバイアル16の液体48との間の液体の移送と、シリンジ12の近位空気チャンバ32とバイアル16の空気46との間の空気の移送は、内圧均等化プロセスにより生じ、それにおいて通路42および44でそれぞれ図1に象徴的に示される別々のチャネルを移動することにより、同じ体積の空気および液体が交換される。これは、アセンブリ10の内部と周囲との間で空気または液滴または蒸気が交換される可能性を排除する閉鎖系である。
【0017】
上述の装置10が発明されて以来数年、出願人は、上述したような基本的な特徴ならびに組み立ておよび分解の形態を保持しながら、装置の構成要素を数多く改良した。
【0018】
コネクタ部14に関しては、本発明に至るまでいくつかの改良がなされている。PCT特許出願の国際公開第2014/122643号パンフレットには、装置を使用するときに時々発生する問題に対する解決策が記載されている。
【0019】
図3は、図1に示す薬物移送装置の従来技術のコネクタ部14の拡大図である。本明細書で上述したように、シリンジ12および取り付けられたコネクタ部14が別の構成要素に接続されていないとき、空気導管38および液体導管40を形成する中空針の先端は、二重メンブレン密閉アクチュエータ34の近位メンブレンと遠位メンブレンの間に存在する。シリンジのピストンロッドが遠位方向に押し込まれると、シリンジのピストンの下の液体チャンバ内にある液体は、液体導管40の遠位端の開口部から押し出され、空気導管38の遠位端にある開口部に押し出されて、ピストンシリンジの上方の空気チャンバに押し込まれ得る。ピストンロッドが遠位に引っ張られると、空気と液体の逆の流れが起こり、空気が空気チャンバからシリンジの液体チャンバに押し出され得る。
【0020】
本願の出願人の国際公開第2014/122643号パンフレットに提供された解決策を図4および図5に示す。その解決策は、空気導管38を備える針の先端が挿入されるスリーブ64である。スリーブ64は、エラストマー材料から作られ、二重メンブレン密閉アクチュエータ34の内側に配置される。
【0021】
図4に示すように、液体チャンバ30が液体を含み、シリンジのピストン28が遠位に押し出されると、液体導管40の先端から押し出された流体がアクチュエータ34の内部に圧力を生じさせ、スリーブ64を空気導管38の先端に押して、それによって空気用の針内部に液体が通ることを阻止する。より懸命にピストンロッドを押すほど、スリーブのブロック作用がより効果的になる。加えて、同時に、ピストン28の近位側のシリンジの空気チャンバ内に、および空気導管38内に吸引が生成され、スリーブ64が空気導管の先端にはるかに強く押し付けられ、それによってブロック作用が増大する。
【0022】
図5に示すように、シリンジのピストン28が近位に引っ張られるとき、液体導管40は吸引モードにあり、アクチュエータ34の内部に真空を作り出す。同時に、空気導管38は、アクチュエータ34の内部に空気を注入し、そのためスリーブ64を導管38の先端から離すよう空気が押し出し、その直径を拡張させ、それによって空気を空気導管38から液体導管40に流入させる。図4および図5から、一方向の弁の作動が生じている、すなわち、液体がシリンジ内の空気チャネルまたは空気チャンバに通過できないが、空気が液体チャンバに流れることができることが分かる。液体チャンバ内に空気を引き込めることは、薬物調製中の特定の操作のために必要とされるので、目的があって望ましい。
【0023】
図6および図7は、図3に示す従来技術の二重メンブレン密閉アクチュエータの国際公開第2014/122643号パンフレットに最初に記載された別の改良を示す。本発明のこの態様は、二重メンブレンアクチュエータの製造を単純化する。この実施形態によれば、空気導管38および液体導管40を形成する針を固定して支持する針ホルダ36の長さは長くなり、その形状は円形の断面を有する円筒形に作られる。さらに、近位メンブレン34aが除去され、針ホルダ36の外面にしっかりと嵌合するOリング66と交換される。
【0024】
図6は、バイアルアダプタ15に接続されていないときのコネクタ部14を示す。この構成では、Oリング66は針ホルダ36の遠位端にあり、空気導管および液体導管の先端はアクチュエータの下部メンブレン34bの上にある。コネクタ部とバイアルアダプタが一緒に押し込まれると、図7に示されているように、アクチュエータがコネクタ部の近位端に達し、針がアクチュエータの下部メンブレン34bとバイアルアダプタの頂部にあるメンブレンとを貫通するまで、Oリング66が針ホルダ36を上方に摺動しながら、アクチュエータが近位部分内に押し込まれる。
【0025】
本願の出願人のPCT特許出願の国際公開第2014/181320号パンフレットおよび国際公開第2016/042544号パンフレットは、いずれもコネクタ部14のメンブレンアクチュエータに組み込むことができる針弁を記載している。針弁は、コネクタ部14がバイアルまたは他の流体移送構成要素に接続されていないときに、遠位液体チャンバ30またはバイアル16から近位空気チャンバへ空気導管を通って液体が移動できないようにする。針弁はまたメンブレンアクチュエータの構造を単純化して、図1~4に示すコネクタ部のように二重メンブレンアクチュエータの代わりに単一メンブレンアクチュエータを使用することができるようにする。
【0026】
図8は、コネクタ部14の概略的な断面図である。この実施形態では、2つのメンブレン34aおよび34bおよびアーム35(図3参照)を備えるコネクタ部14の従来技術の二重メンブレン密閉アクチュエータ34が、針弁54の実施形態を含むアクチュエータ52、1つのみのメンブレン34b、およびアーム35と置き換えられる。この実施形態では、コネクタが他の流体移送構成要素に接続されていないときに空気導管および液体導管の遠位端にあるポート56を囲むタスクは、従来技術ではメンブレン34aおよび34bによって達成されていたが、針弁構成およびメンブレン34bのみにより単一のメンブレンアクチュエータ52で、また一部の実施形態では針弁自体によって達成されるため、任意の様式で、アクチュエータ52の近位端を密閉する必要はないことに留意することが重要である。
【0027】
図8を参照すると、アクチュエータ52は、空気導管38および液体導管40の針が通過する2つのボアを含む弁シート54を備える。1つのみの針38を含む液体移送装置に使用するための1つのボアを含むアクチュエータ52の実施形態も記載されていることに留意されたい。
【0028】
図8に示すように、シリンジおよび取り付けられたコネクタが装置の他のいずれかの構成要素に接続されていないとき、アクチュエータ52はコネクタ部14の遠位端にあり、針38および40の先端は、針弁の弁シート54のボアに位置する。この構成では、針の側部のポート56は、針を互いに完全に隔離するボアの内壁によってブロックされ、それにより空気がシリンジの液体チャンバに入るのを、または液体が空気チャンバに入るのを防止する。
【0029】
シリンジおよび取り付けられたコネクタがバイアルアダプタのような装置の別の構成要素に接続されると、アクチュエータ52はコネクタ部14の近位端に向けて押される。針38および40は針ホルダ36によってコネクタ14に固定されているので、アクチュエータ52が近位に移動すると、針38および40の先端およびポート56が針弁のシート54のボアの遠位端を経て、メンブレン34bを経て、またバイアルアダプタの頂部にあるメンブレンを経て押し出され、それによってそれぞれのチャネルに開いた流体経路を確立する。
【0030】
コネクタの第1の目的は、液体が空気チャンバに移動する可能性を完全に排除することである。これは、例えば、バイアルアダプタからの切断後に空気チャンバと液体チャンバとの間の圧力差が存在した場合や、空気チャンバの圧力が液体チャンバの圧力よりも低く、空気チャンバへの液体の望ましくない移動をもたらした場合に起こり得る。第2の目的は、シリンジプランジャの偶発的な押し込みの間にコネクタに漏れたり損傷したりしないようにすることである。病院の環境で頻繁に行われる薬物移送操作の1つは、静注またはボーラス注入として知られている。典型的には、必要な量の薬物は、病院の薬局においてシリンジで調製され、適格な看護師が以前に確立されたIVラインを介して患者に薬物を投与する病棟に届けられる。この処置に関連する共通の問題は、薬局から病棟またはベッドサイドへの移動の間に、シリンジのピストンが時に意図せずに押し出されて、シリンジのバレルから薬物の一部を押し出す、またはピストンが意図せず引っ張られることである。小容量のシリンジ(1~5ml)のプランジャを手動で押すことにより、最大20気圧の高圧を簡単に生成することができる。このような圧力は、コネクタを分解させたり、メンブレンを剥がしたりする可能性がある。図8に示すコネクタは、空気チャンバと液体チャンバとの間のこうした流体の意図しない移送に関連する問題の解決策として、また、プランジャの偶発的な押し込み中に発生する高圧に抵抗するための解決策として提案されている。図から分かるように、コネクタ14がアダプタ15に接続されていないとき、周囲と針の中空内部との間の流体の交換を可能にする針38、40の遠位端のポート56は、針弁のシート54内のボアの内部によりブロックされる。シリンジが液体で満たされているか部分的に液体で満たされている場合、プランジャを前方に押して針を通して液体を流すように力が加えられると、液体はポート56を通って針から出ることができない。反対に、プランジャを後ろに引っ張る力が加えられると、空気はポート56を通って進入することができず、針の内部を通ってシリンジのバレル内に流れることができない。
【0031】
本願の出願人のPCT特許出願の国際公開第2019/147178号パンフレットは、シリンジを液体移送装置の他の要素に接続するために使用されるコネクタ部に使用するためのセプタムホルダの実施形態を記載している。この特許出願に記載されたセプタムホルダの実施形態はすべて、セプタムホルダ本体と、本体の側面に取り付けられた遠位の拡大要素で終端する少なくとも1つの弾性伸長アームと、セプタムとを備える。国際公開第2019/147178号パンフレットのセプタムホルダは、針弁のシートとして機能する少なくとも1つのボアを含むことを特徴とする。ボアは、セプタムホルダの本体またはセプタムのいずれかに固定されたセプタムまたはインサートに作成される。国際公開第2019/147178号パンフレットに記載されたセプタムホルダは、セプタムが少なくとも1つの細長いアームと平行に下方に突出するセプタムホルダの本体の底に取り付けられていることも特徴とする。
【0032】
図9a、図9bおよび図9cは、国際公開第2019/147178号パンフレットに記載されたセプタムホルダ58の実施形態の正面図、断面図、および分解図である。セプタムホルダ58は円盤状の環状の本体60からなる。2つの等しい長さの弾性の細長いアーム62が本体60の側面に取り付けられている。アームは遠位の拡大要素63で終端する。本体60の底部は、アーム62間で下方に突出する円筒形部分からなる。キャビティ166が本体60の底部に形成され、この中には、針弁のシートを形成する2つのボア70を含むインサート68が取り付けられている。別の実施形態では、インサート68は、示されたものとは異なる形状を有することができ、一実施形態では、本体60の底部に形成された適切な直径の平行ボアに挿入される1つ又は2つの別個のチューブの部分からなることができる。
【0033】
セプタム72は、円筒形状の弾力性のある材料の単一部品で作られている。セプタム72の上部は、本体60の底部の円筒形部分の外径ほど大きくない内径を有する円筒形凹部74を形成する、中空の内部を有する。インサート68がキャビティ166内に嵌め込まれた後、セプタム72は、凹部74の下のセプタム72の中実の部分がインサート68のボア70の底に当接し、それによりボアの内部の底を外部環境から隔離するまで本体60の底部に押し付けられる。セプタム72は、当技術分野で知られている任意の手段によってセプタムホルダ58の本体60に固定されて保持される。例えば、セプタムの弾性材料は、セプタムを適所に保持するために、本体60の底部で円筒形部分の側面を把持するのに十分に強くできる。または図9cに示すように、セプタムホルダの実施形態では、本体60の底部の円筒形部分は、ねじまたは歯76、またはその外面に形成された同等の構造を有してもよく、セプタム72は、セプタム72が本体60の底部の上に押されたときに2つの構造体が互いにかみ合うように、その中空の内部(図9cには図示せず)の内径と類似する構造を有し得る。他の実施形態では、糊付け、超音波成形、またはレーザ溶接または超音波溶接などの他の方法が使用される。
【0034】
図9dは、閉鎖系液体移送装置のコネクタ部92における図9a、図9b、および図9cのセプタムホルダを概略的に示す。コネクタ部92は、本質的には、本明細書で上述した従来技術の装置と同じである。コネクタ部の円筒状の外部ハウジング78は、シリンジ12に取り付けられている。空気導管40および液体導管38としてそれぞれ機能する2つの中空針が、コネクタ部の外部ハウジング78の上端部に固定されて取り付けられている。尖った遠位の先端に隣接する針の下端には、針の外部と中空内部との間の流体連通を可能にするポート56がある。円筒状の外部ハウジング78の底部近くの外部隆起部88は、コネクタ部およびシリンジを薬物移送システムの他の要素に取り付けるときに使用するための指グリップとして役立つ。隆起部88は本質的ではなく、同じ目的を達成するために、除去したり、例えば粗面化された表面領域などの他の手段と置き換えたりしてもよい。
【0035】
セプタムホルダ58は、コネクタ部の円筒状の外部ハウジング78の内側に配置されている。図示のように、針82、84の遠位端は、インサート68のボア70に挿入される(図9c参照)。インサート68が可撓性材料、例えば、シリコンで作られている場合には、ボア70の直径は針のシャフトの外径よりも小さく、そのため、インサートを製造する弾性材料は、ポート86を密閉する針のシャフトに対して半径方向に押す。液体移送システムの別の要素に接続されていないとき、アーム62の遠位の拡大要素63は、外部ハウジング78の遠位端の肩部90に係合される。図9dに示すように、この位置では、針の先端は、底部のセプタム72によって外側から隔離され、針のシャフト上で半径方向に押圧するボア70の壁は、流体が針の内部に出入りするのを防ぐ。
【0036】
コネクタ部の流体移送構成要素への接続、例えばバイアルアダプタ、IVバッグへの接続のためのスパイクアダプタ、またはIVラインへの接続のためのコネクタは、本明細書で上記の従来技術と同じ方法で達成される。流体移送構成要素のセプタムがセプタム72に押し付けられると、セプタムホルダ58は外部ハウジング78の内部で上方に移動し始め、針の先端がボア70から出始めてセプタム72の固体材料を貫通する。セプタムホルダ58が引き続き上方に押し進められ、針の先端がセプタム72および流体移送構成要素のセプタムを通過して、それにより、流体移送構成要素に取り付けられた液体移送システムの要素と、シリンジの近位空気チャンバと遠位液体チャンバとの間に空気と液体のチャネルが確立される。
【0037】
図10aおよび図10bは、国際公開第2019/147178号パンフレットに記載されたセプタムホルダ110の実施形態を概略的に示す。これらの図に示されるセプタムホルダは、弾性アーム118の数-図10aの2本のアームおよび図10bの4本のアーム-を除いて同一である。
【0038】
セプタムホルダ110は、図9aから図9dに示されたものと構造的には同じであるが、アーム118が異なる方法で動くことができるように本体の側面に取り付けられている点が異なる。セプタムホルダ110は、円筒形状の環状の本体112からなる。2つ(または4つ)の平行な等しい長さの下向きに伸びる弾性の細長いアーム118が本体112の側面に取り付けられている。アームは遠位の拡大要素120で終端する。遠位の拡大要素は、丸く外向きの後側と、尖っている内向きの前側とを有する人間の足のように、ほぼ整形されている。本体112の底部は、アーム118と平行に下方に突出する円筒形部分からなる。キャビティは、針弁のシートを形成する1つまたは2つのボアを含むインサートに適合する本体112の底部に形成される。リブ114または同等の構造が本体112の内部に存在して、機械的強度およびインサートへの支持を提供することができる。
【0039】
セプタム116は、円筒形状の弾性材料の単一部品で作られている。セプタム116の上部は、本体112の底部の円筒形部分の外径ほど大きくない内径を有する円筒形凹部を形成する、中空の内部を有する。インサートが本体112のキャビティに嵌め込まれた後、セプタム116の中空の内部の底部がインサートのボアの底部に当接し、それによってボアの内部の底部を外部環境から隔離するまで、セプタム116が本体112の円筒形の底部に嵌合される(編まれたキャップが頭部の上に引っ張られる程度に)。セプタム116は、セプタムホルダ110の本体112上に、本明細書で上述したような当技術分野で知られている任意の手段によって、下向きに固定されて保持される。
【0040】
図11aおよび図11bは、図9a~図9dのセプタムホルダおよび図10aおよび図10bのセプタムホルダへのアームの取り付けの違いを概略的に示す。図9aにおいて、一対のアームは、セプタムホルダの対向する側に互いに向き合って配置されている。アームの遠位端の拡大要素は、図11aの二重矢印で示された方向にセプタムホルダの本体の円形断面の直径の延長部に沿って前後に移動する。図10aのセプタムホルダにおいて、一対のアームは、セプタムホルダの同じ側に、互いに並んで配置される。アームの遠位端の拡大要素は、図11bの二重矢印で示された方向にセプタムホルダの本体の円形断面の平行な弦の延長部に沿って前後に移動する。
【0041】
例えば上記の国際公開第2019/147178号パンフレットに記載されているセプタムホルダの他の実施形態などの他のセプタムホルダは、図3図6および図8に示されるものなどの他のセプタムハウジングが可能であるように、図10aおよび図10bを参照して説明したようにアームを配置することによって、必要に応じて変更できるよう適合されるという旨に留意されたい。また、図10aに示したのと同様のセプタムホルダは、1つのアームのみまたは5つ以上のアームを有するように製造することができることにも留意されたい。3つのアームの使用によって非常に安定した構成が得られるが、これは製造するのにより複雑な実施形態である。
【0042】
図10a~図11bに関して上述したセプタムホルダの側面へのアームの取り付けに加えられた変更は、これらのセプタムホルダを含むコネクタ部の再設計を必要としていた。
【0043】
図12は、コネクタ部104の外部を概略的に示しており、これは、本願の出願人の国際公開第2016/199133号パンフレットに詳細に記載されている。コネクタ部104の内部要素、すなわちセプタムホルダおよび1本または2本の針は、外部ハウジング140によって取り囲まれている。外部ハウジング140は、略正方形の断面を有する直角プリズムの形状と、開口した遠位(底)端部とを有し、その中にアダプタ構成要素の近位端、例えば、バイアルアダプタを挿入することができる。外部ハウジング140の近位(上側)の部分142は、流体移送装置の構成要素、例えばシリンジまたはIVラインに接続するために、多くの方法で構成することができる。
【0044】
本発明の目的は、従来技術のセプタムホルダを含む製品の製造および滅菌の問題を克服する改良版セプタムホルダを提供することである。
【0045】
本発明のさらなる目的および利点は、説明が進むにつれて明白になるであろう。
【発明の概要】
【0046】
第1の態様において、本発明は、少なくとも2つの部分を備えるセプタムホルダである。少なくとも2つの部分は、互いに関連して移動可能な本体部分およびセプタムサポートと、セプタムサポートに取り付けられたセプタムとを含む。本体部分およびセプタムサポートは、それらを互いに最も近い位置に移動させる移動の終端で互いにロックされるように構成される。
【0047】
セプタムホルダの実施形態では、セプタムホルダは、液体移送装置用のコネクタ部の一部である。
【0048】
セプタムホルダの実施形態では、本体部分およびセプタムサポートは、セプタムサポートをブロックされていない構成で解放可能に保持し、セプタムサポートを本体部分に対して移動され、ブロックされた構成でロックできるように構成された構成要素を含む。
【0049】
セプタムホルダの実施形態では、セプタムサポートはセプタムシートおよび本体部分を含み、セプタムサポートは、針弁のシートを形成する少なくとも1つのボアを含むインサートを収容するための開口部を含む。
【0050】
セプタムホルダの実施形態では、セプタムサポートは、本体部分から下向きに突出した歯形要素で終端する少なくとも1つの弾性の細長いアームを含み、本体部分は、それらの内部を通る少なくとも1つの上部窓と、セプタムサポートの少なくとも1つのアームの下部にある歯形要素が入ることができるそれらの下部分に少なくとも1つの下部スロットまたは窓と含む突出要素を含む。少なくとも1つの弾性の細長いアームは、歯形要素が上部窓にカチッとはまり、セプタムホルダをブロックされていない構成で解放可能に保持し、歯形要素が下部スロットまたは窓にカチッとはまり、セプタムホルダをブロックされた構成でロックできるように構成される。
【0051】
セプタムホルダの実施形態では、セプタムはセプタムサポートに取り付けられる。
【0052】
セプタムホルダの実施形態では、セプタムは、円盤状のセプタムシートの外径よりも大きい内径を有する円筒形凹部の形態の中空内部を含む上部と、セプタムホルダのセプタムサポートの下縁を越えて下向きに延びる下部とを含む。
【0053】
第2の態様において、本発明は、液体移送装置用のコネクタ部である。コネクタ部は、シリンジに取り付けられるように適合された近位端と開放遠位端とを有する外側本体と;コネクタ部の本体の近位端に固定して取り付けられた少なくとも1つの中空針であって、針の外部と中空内部との間の流体連通を可能にするその尖っている遠位先端に隣接するその下端に少なくとも1つのポートを有する針と;コネクタ部の円筒状の本体の内側に配置され少なくとも2つの部分で構成されたセプタムホルダとを備える。セプタムホルダの少なくとも2つの部分は、互いに関連して移動可能な本体部分およびセプタムサポートと、セプタムサポートに取り付けられたセプタムとを含む。本体部分とセプタムサポートは、それらを互いに最も近い位置に移動させる移動の終端で互いにロックされるように構成される。
【0054】
コネクタ部の実施形態では、本体部分およびセプタムサポートは、セプタムサポートをブロックされていない構成で解放可能に保持し、セプタムサポートが本体部分に対して移動され、ブロックされた構成でロックできるように構成された構成要素を含む。
【0055】
セプタムホルダの実施形態では、セプタムサポートはセプタムシートおよび本体部分を含み、セプタムサポートは、針弁のシートを形成する少なくとも1つのボアを含むインサートを収容するための開口部を含む。
【0056】
セプタムホルダの実施形態では、セプタムサポートは、本体部分から下向きに突出した歯形要素で終端する少なくとも1つの弾性の細長いアームを含み、本体部分は、それらの内部を通る少なくとも1つの上部窓と、セプタムサポートの少なくとも1つのアームの下部にある歯形要素が入ることができるそれらの下部分に少なくとも1つの下部スロットまたは窓とを含む突出要素を含む。少なくとも1つの弾性の細長いアームは、歯形要素が上部窓にカチッとはまり、セプタムホルダをブロックされていない構成で解放可能に保持し、歯形要素が下部スロットまたは窓にカチッとはまり、セプタムホルダをブロックされた構成でロックできるように構成される。
【0057】
セプタムホルダの実施形態では、セプタムはセプタムサポートに取り付けられる。
【0058】
セプタムホルダの実施形態では、セプタムは、円盤状のセプタムシートの外径よりも大きい内径を有する円筒形凹部の形態の中空内部を含む上部と、セプタムホルダのセプタムサポートの下縁を越えて下向きに延びる下部とを含む。
【0059】
第3の態様において、本発明は、液体の密閉移送のためにユニットを滅菌するための方法である。ユニットは、コネクタ部に接続された液体を密閉して移送するためのシリンジまたはその他の気密装置で構成される。コネクタ部は、液体を密閉して移送するためのシリンジまたは気密装置に取り付けられるように適合された近位端と開放遠位端とを有する外側本体と;コネクタ部の本体の近位端に固定して取り付けられた少なくとも1つの中空針であって、針の外部と中空内部との間の流体連通を可能にする、その尖っている遠位先端に隣接するその下端に少なくとも1つのポートを有する針と;コネクタ部の円筒状の本体の内側に配置され少なくとも2つの部分で構成されたセプタムホルダとを備える。セプタムホルダの少なくとも2つの部分は、互いに関連して移動可能なセプタムシートを含むセプタムサポートと本体部分とを備える。セプタムサポートおよび本体部分は、少なくとも1つの中空針の尖った遠位先端に隣接する下端の少なくとも1つのポートが適合して針弁を形成する少なくとも1つのボアを含むインサートを収容するための開口部を含む。本体部分とセプタムサポートは、少なくとも1つのポートがインサートのボアの外側にあり、液体が中空針を通って流れることを可能にするブロックされていない構成でセプタムホルダを解放可能に保持し、セプタムサポートと本体部分とを互いに最も近い位置に移動し、少なくとも1つのポートがインサートのボアの内側にあり、中空針を通る液体の流れを遮断するブロックされた構成でロックできるように構成されたコンポーネントを備え、前記方法は、
a)セプタムホルダをブロックされていない構成に配置することと;
b)ガス滅菌に適したパックでユニットを密封することと;
c)パックを閉鎖された容器または部屋に置くことと;
d)閉鎖された容器または部屋に滅菌ガスを導入することと;
e)ガスがパックに入り、針の尖った遠位先端に隣接するポートを通ってシリンジおよびコネクタ部の内部に入るのに十分な時間、パックを滅菌ガスにさらしたままにして、それにより、シリンジおよびコネクタ部を滅菌することと;
f)滅菌ガスを容器または部屋から排出して、パックおよびシリンジおよびコネクタ部の内側から滅菌ガスを引き出すことと;
g)滅菌ガスを交換するための空気を容器または部屋、パック、およびシリンジおよびコネクタ部の内部に導入すること(ここで、パック内の空気は滅菌されている)と、
h)必要に応じて、十分な無菌レベルに達するまで、ステップdからgを繰り返すことと、を含み、
第2の部材の近位端をコネクタ部の本体の開放遠位端に挿入することによって液体を移送するために閉鎖系の第2の部材にユニットを接続すると、セプタムホルダがコネクタ部内で移動し、セプタムサポートと本体部分が互いに最も近い位置に移動し、それによってセプタムホルダをブロックされた構成でロックする、方法である。
【0060】
本発明の上記および他の特徴および利点はすべて、添付の図面を参照しながら、その実施形態の以下の説明および非限定的な記載によりさらに理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0061】
図1】有害な薬物を移送するための従来技術の装置の概略的な断面図である。
図2a図1の装置のコネクタ部とバイアルアダプタとの間の4ステップ接続シーケンスを概略的に示す断面図である。
図2b図1の装置のコネクタ部とバイアルアダプタとの間の4ステップ接続シーケンスを概略的に示す断面図である。
図2c図1の装置のコネクタ部とバイアルアダプタとの間の4ステップ接続シーケンスを概略的に示す断面図である。
図2d図1の装置のコネクタ部とバイアルアダプタとの間の4ステップ接続シーケンスを概略的に示す断面図である。
図3図1に示す従来の二重メンブレン密閉アクチュエータの拡大図である。
図4】シリンジのピストンロッドが誤って押されたり引っ張られたりした場合に液体が空気チャネルに入れないようにする、本発明による図3の二重メンブレン密閉アクチュエータの改良を示す。
図5】シリンジのピストンロッドが誤って押されたり引っ張られたりした場合に液体が空気チャネルに入れないようにする、本発明による図3の二重メンブレン密閉アクチュエータの改良を示す。
図6】アクチュエータの製造を単純化する、本発明による図3の二重メンブレン密閉アクチュエータの改良を示す。
図7】アクチュエータの製造を単純化する、本発明による図3の二重メンブレン密閉アクチュエータの改良を示す。
図8】コネクタ部の概略的な断面図である。
図9a】従来技術のセプタムホルダの第1の実施形態の正面図である。
図9b】従来技術のセプタムホルダの第1の実施形態の断面図である。
図9c】従来技術のセプタムホルダの第1の実施形態の分解図である。
図9d】閉鎖系薬物移送装置のコネクタ部における図9aのホルダを概略的に示す。
図10a】セプタムホルダの実施形態を概略的に示す。
図10b】セプタムホルダの実施形態を概略的に示す。
図11a】従来技術のセプタムホルダへのアームの取り付けと、図10aのセプタムホルダへのアームの取り付けとの間の差を概略的に示す。
図11b】従来技術のセプタムホルダへのアームの取り付けと、図10aのセプタムホルダへのアームの取り付けとの間の差を概略的に示す。
図12図10aのセプタムホルダを備えるように構成されたコネクタ構成要素の外部を概略的に示す。
図13】本発明の一実施形態に係るセプタムホルダの分解された図を概略的に示す。
図14A図13のセプタムホルダの組み立てられた図を概略的に示す。
図14B図13のセプタムホルダの組み立てられた図を概略的に示す。
図14C図13のセプタムホルダの組み立てられた図を概略的に示す。
図15A】閉鎖系液体移送装置のコネクタ部におけるブロックされていない構成における図13のセプタムホルダを概略的に示す。
図15B】閉鎖系液体移送装置のコネクタ部におけるブロックされた構成における図13のセプタムホルダを概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0062】
本特許出願の出願人によって製造された製品の1つは、コネクタ部に接続されたシリンジからなる液体の閉鎖移送用のユニットである。これらのユニットは、製造および組み立て後、ブリスターパックで梱包され、顧客に出荷される前に滅菌されるように送られる。滅菌は、ブリスターパックを閉鎖された容器、またはその後エチレンオキシドで満たされる部屋に置くことで行われる。ブリスターパックは、細菌に対して不浸透性であるが気体分子を通過させる紙の表紙に対して密閉される、気体および細菌に対して不浸透性である熱可塑性の前部からなる。エチレンオキシドガスは、紙の表紙を通ってブリスターパックに入り、針開口部を通ってシリンジおよびコネクタ部の内部に入り、シリンジおよびコネクタ部を滅菌する。ある期間の後、ブリスターパックから滅菌ガスを引き出すために容器内に真空が形成され、次いで空気がブリスターパックに導入され、次いでそれが使用準備の整った滅菌製品になる。
【0063】
コネクタ部が図9dに示すようなセプタムホルダを備える場合、空気および液体チャネルの先端のポート56は、コネクタ部がその遠位端でバイアルアダプタなどの別の要素に接続されていないときに、インサート68のボアの側面によってブロックされる。これは、上記の製品がブリスターパックに入れられるときの状況である。ポート56はブロックされているので、滅菌ガスは、滅菌できないシリンジの本体に入ることができず、これは当然受け入れられない。この問題に対する現在の解決策は、アーム62の遠位の拡大要素63がコネクタ部の外部ハウジング78の外側になるまで、図9dに示される位置からセプタムホルダ58が下に引っ張られた状態で、ブリスターパックにおいてシリンジと取り付けられたコネクタを密閉することである。この構成では、ポート56がインサート68のボアから除去され、滅菌ガスがシリンジの内部に入り、滅菌空気と交換されるようにする。滅菌プロセスが完了した後、セプタムホルダは、遠位の拡大要素63が外部ハウジング78の遠位端の肩部90、インサート68のボア70の針の先端および図9bおよび図9dに示すように、ボア70の底部を密封するセプタム72の頂部に係合して、ブリスターパックを開かずに正しい位置に押し戻される。
【0064】
滅菌後、箱詰めの製品は滅菌所から製造現場に送られ、ブリスターパックを箱から取り出してセプタムホルダを正しい位置に移動させ、その後ブリスターを箱に戻して梱包する必要がある。両者がブリスターパックの内部に密封されている間、コネクタ部内の正しい位置にセプタムホルダを移動させることは、手動でしか行えない困難かつ非常に時間がかかる作業である。この余分な取り扱いのすべてにより、製造プロセスに多大な費用が加えられる。
【0065】
この問題は、本願の背景技術のセクションに示されている従来技術のコネクタのすべての実施形態にも存在する。
【0066】
本発明は、この問題を克服するために発明されたセプタムホルダである。これは、例えば、図9bに示すコネクタ部92または図12に示すコネクタ部104に使用することができる。本発明のセプタムホルダは、セプタムホルダで上下に移動して、針の先端のポートを交互にブロックまたはブロック解除することができるセプタムおよびインサートを含む。
【0067】
図13は、本発明の一実施形態に係るセプタムホルダ300の分解された図を概略的に示す。セプタムホルダ300は、本体部分360およびセプタムサポート361からなる。
【0068】
本体部分360は、円盤状の上面と、上面から下向きに突出する側面要素392とを備える。要素392は、図に示されているもの以外の形状およびサイズを有してもよい。図13に示すように、遠位の拡大要素363で終端する2つの等しい長さの弾性の細長いアーム362がその側面に取り付けられ、互いに平行に垂直に上向きに突出している。2対の突出要素377は、本体部分360の上面から垂直に上向きに突出している。突出要素377の各対は、対の要素間のスロット378を規定する。スロット377は、本体部分360の円盤状の上面を垂直に下向きに通過する。また、図13には、本体部分360の要素392の2つの窓380のうちの1つ、2つのスロット389のうちの1つ、および本体部分360の上面を貫通する穴379が見られる。窓380、スロット389および穴379の機能は、本明細書で以下に説明される。本発明の実施形態では、スロット389は、要素392の下端近くの窓で置き換えてもよい。
【0069】
セプタムホルダ300は、別個の空気導管および液体導管として機能する2本の針を含むコネクタ部で使用するように構成されているものとして本明細書で説明する。セプタムホルダ300の実施形態はまた、1本の針のみを含むコネクタ部で使用するために必要な変更を加えて提供されてもよい。
【0070】
図に示す実施形態では、セプタムサポート361は、ディスク形状のセプタムシート382で構成され、そこから2つの弾性の細長いアーム386がアーム362に平行に下向きに突出している。各アーム386の上端には、外向きに突出する肩部390があり、各アーム386の下端には、上部水平面および下部傾斜面を有する外向きに突出する歯形要素388がある。この実施形態では2つのボア370を含むインサート368は、2つの針弁のシートを形成する。インサート368は、セプタムシート382の開口部384を通過し、セプタムシート382から開口部384に延びる小さなスパイク381および383によってセプタムシート382に取り付けられ、それを所定の位置に保持するインサート368にスパイク/噛み込む。インサート368は、本明細書で以下に説明するように、セプタムシート382と共にセプタムホルダ300内で上下に移動する。他の実施形態では、インサート368は、接着またはレーザ溶接または他の機械的固定などの当技術分野で知られている他の手段によってセプタムシート382に固定することができる。
【0071】
セプタムは、さまざまな方法でセプタムサポートに取り付けることができる。図に示す特定の実施形態では、セプタム372は、円筒形の弾性材料の単一片でできている。セプタム372の下部は、セプタムシート382の外径よりも大きい内径を有する円筒形凹部374を形成する中空内部を有する。セプタム372の下縁は、内側に突出するエッジ376(図15Aを参照)として構造化され、セプタムシート382上に押されると、セプタム372をセプタムシート382上に保持する。他の実施形態では、セプタム372は、接着、溶接、または別のタイプの機械的固定などの当技術分野で知られている他の手段によってセプタムシート382に固定することができる。
【0072】
図14Aから図14Cは、セプタムホルダ300の組み立てられた図を概略的に示す。セプタムサポート361のアーム386の長さにより、セプタムシート382および取り付けられたインサート368およびセプタム372は、アーム386の上部の肩390およびアーム386の底部の歯形要素388によって規定される2つの制限位置の間のセプタムホルダ内で上下に移動することができる。図14Aおよび図14Bは、ブロックされた構成で、セプタム372がセプタムシート382に取り付けられていない場合および取り付けられている場合のセプタムホルダ300をそれぞれ示している。図14Cは、ブロックされていない構成のセプタムホルダ300を示している。
【0073】
ブロックされていない構成では、セプタムサポート361は、スロット378内のアーム386のさらなる上向きの動きが、ウィンドウ380にカチッとはまるアーム386の底部にある歯形要素388によって妨げられるまで、本体部分360から上方に押し出されている。小さな下向きの力でセプタムサポートをブロックされていない構成から解放するのに十分であるように、セプタムサポートは、ブロックされていない構成で解放可能に保持されている。図14Aおよび図14Bに示されるブロックされていない構成からブロックされた構成に移動するために、セプタムサポート361は、本体部分360に向かって下向きに押される。アーム386の底部にある歯形要素388の傾斜した底面は、窓380から滑り出し、セプタムサポート361は、スロット378を通るアーム386のさらなる下向きの動きが、突出要素377に接触する肩390によって妨げられるまで下向きに続く。これが発生すると、アーム386の底部にある歯形要素388がスロット389にカチッとはまり、これにより、セプタムホルダがブロックされていない構成に戻るのを防ぐ。
【0074】
図15Aおよび図15Bは、閉鎖系液体移送装置のコネクタ部92/104内の本発明のセプタムホルダ300を概略的に示す。両方の図において、コネクタ部92/104は、液体移送装置の別の構成要素に接続されていないことが示されている。図15Aおよび図15Bには、コネクタ部300が、ブロックされていない構成およびブロックされた構成でそれぞれ示されている。図15Aおよび15Bに示されるブロックされていない構成およびブロックされた構成では、針38および40の先端およびポート56はそれぞれ、セプタムホルダ300のインサート368のボア370の外側および内側にある。コネクタ部は、セプタムホルダを除いて、本明細書で上述した図9bに示される従来技術のコネクタ部92または図12に示されるコネクタ部104のものと同じである。コネクタ部の外部ハウジング78または104は、その上端で、シリンジまたはIVラインなどの液体移送システムの別の構成要素に接続されるように構成される。それぞれ空気導管38および液体導管40として機能する2つの中空針が、針ホルダ36によって、コネクタ部の外部ハウジング78または104の上端に固定的に取り付けられている。尖った遠位先端に隣接する針の下端には、針の外部と中空内部との間の流体連通を可能にするポート56がある。
【0075】
本明細書に記載された従来技術のコネクタ部、ならびに図13から図15Cに示されるコネクタ部が製造された後、コネクタ部の円筒形の中空の外側本体の遠位端にある開口部内に、コネクタ部を薬物バイアル、静注バッグ、または静脈内ラインに接続するために使用されるもののようなシミュレートされたアダプタの近位端を挿入することによって、品質管理チェックを行う。本明細書で上述した薬物移送装置を組み立てる手順のように、シミュレートされたアダプタは、セプタムホルダのセプタム372に対して押し付けられる。これにより、セプタムサポート361のアーム386、セプタムシート382、および取り付けられたインサート368およびセプタム372が、アーム386の底部の歯形要素388がスロット389にカチッとはまる図14A図14B、および図15Bに示されるブロックされた構成に達するまで、セプタムホルダ内で上方に移動する。上述したように、ブロックされた構成に達すると、セプタムホルダ300は永久にこの構成のままである。シミュレートされたアダプタを押し続けると、シミュレートされたアダプタとセプタムホルダが遠位の拡大要素363によって互いに取り付けられ、取り付けられたセプタムホルダ300は、針38および40の先端がボア370を出て本体部分360の穴379およびセプタム372を通過するまで、コネクタ部内で上方に動かされる。シミュレートされたアダプタおよび取り付けられたセプタムホルダは、次に、針の先端がセプタム372、本体部分360の穴379を通って引き戻され、ポート56をブロックするボア370に再び入るまで下方に引っ張られる。セプタムを構成するエラストマー材料は、針が穴を通って引き戻されるときに穴を密閉する。シミュレートされたアダプタをさらに引き下げると、アダプタがセプタムホルダから分離する。このプロセスは、コネクタ部の品質が確認される前に少なくとももう1回繰り返される。
【0076】
上記の品質管理チェックは、追加の利益をもたらす。セプタムを穿刺する行為は、薬局、診療所、または病院の病棟で薬物移送装置を組み立てるためにエンドユーザが必要とする力の量を大幅に減少させる。はじめてセプタムを穿刺するのにかなりの力が必要であることが判明している。2回目に針がセプタムを通過するときは、最初の時よりも著しく小さい力が必要であり、針がセプタムを通過する3回目およびそれ以降は、2回目よりも著しく小さい力が必要である。
【0077】
上記の品質管理チェックの後、特別に設計された製造ツールがブロックされた構成のロックを解除し、セプタムホルダ300を含むコネクタ部に接続されたシリンジで構成されるユニットが、図14Cおよび図15Aに示すように、ブロックされていない構成のセプタムホルダ300とともにブリスターパックに密封される。この構成のセプタムでは、針の先端およびポート56は、インサート368のボア370の外側にあり、必要に応じて滅菌処置を実行することができる。
【0078】
滅菌処置が完了した後、ポート56を再密閉するためにセプタムホルダを移動させるべく製品を製造現場に送る必要はなく、顧客に配送することができる。ポート56の再密封は、コネクタ部を流体移送構成要素、例えばバイアルアダプタ、IVバッグへの接続のためのスパイクアダプタ、またはIVラインへの接続のためのコネクタに最初に接続する際の最初の使用時に、セプタムサポート361および取り付けられたインサート368が図15Aに示される位置から図15Bに示される位置まで上方に押し上げられると、自動的に達成される。最初の接続の後、ポート56は、以下のすべての接続処置において、ブロックされた構成で密閉されたままである。
【0079】
接続は、本明細書で上述した先行技術と同じ方法で達成される。流体移送構成要素のセプタムがセプタム372の底部に押し付けられると、セプタムシート382および取り付けられたインサート368およびセプタム372は、針の遠位先端がインサート168のボア370に完全に挿入されるまで上方に移動する。コネクタ部および流体移送構成要素が引き続き一緒に押し込まれると、セプタムホルダ300は外部ハウジング78/140の内部で上方に移動し始め、針の先端はボア370の底部から出始めて、本体部分360の穴379を通過し、セプタム372の固体材料を貫通する。セプタムホルダ300が引き続き上方に押し進められ、針の先端がセプタム372および流体移送構成要素の頂部のセプタムを通過して、それにより、流体移送構成要素に取り付けられた液体移送システムの要素と、シリンジの近位空気チャンバと遠位液体チャンバとの間に空気と液体のチャネルが確立される。
【0080】
本発明の実施形態を例示として説明してきたが、本発明は、特許請求の範囲を超えることなく、多くの変形、修正、および適応を伴って実施することができることが理解されよう。
図1
図2a
図2b
図2c
図2d
図3
図4-5】
図6
図7
図8
図9a
図9b
図9c
図9d
図10a
図10b
図11a
図11b
図12
図13
図14A
図14B
図14C
図15A
図15B