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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-26
(45)【発行日】2024-04-03
(54)【発明の名称】フレキシブル共鳴トラップ回路
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/055 20060101AFI20240327BHJP
   G01N 24/00 20060101ALI20240327BHJP
   G01R 33/36 20060101ALI20240327BHJP
   H01P 1/20 20060101ALI20240327BHJP
【FI】
A61B5/055 355
G01N24/00 580E
G01R33/36
H01P1/20 B
【請求項の数】 30
(21)【出願番号】P 2021543498
(86)(22)【出願日】2020-01-22
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-16
(86)【国際出願番号】 US2020014629
(87)【国際公開番号】W WO2020154414
(87)【国際公開日】2020-07-30
【審査請求日】2023-01-20
(31)【優先権主張番号】62/796,019
(32)【優先日】2019-01-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】16/685,920
(32)【優先日】2019-11-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】521329327
【氏名又は名称】インクスペース イメージング インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】INKSPACE IMAGING,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】コリア、ジョセフ ラッセル
(72)【発明者】
【氏名】ヘイマー、ジリアン ジェントリー
【審査官】松岡 智也
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-126884(JP,A)
【文献】特開2019-083849(JP,A)
【文献】国際公開第2013/139112(WO,A1)
【文献】特開平11-253422(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104051831(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第104466318(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01P 1/20-1/219、7/00-7/10
A61B 5/055
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対向するそれぞれの内向き表面部を有するように螺旋状に縒り合わされた第1螺旋巻線セグメントと第2螺旋巻線セグメントとを備えている螺旋巻線部を備えているように配置された導体線路と、および
前記第1螺旋巻線セグメントと前記第2螺旋巻線セグメントとの間に容量を提供するように配置されたコンデンサと、
を備えている、共鳴トラップ回路。
【請求項2】
前記共鳴トラップ回路は周波数依存の抵抗を有しており、
前記螺旋巻線部は、前記第1螺旋巻線セグメントおよび前記第2螺旋巻線セグメントから等距離にあるとともに前記螺旋巻線部内で長手方向に延びる対称軸線を備えており、および
前記螺旋巻線部は、前記対称軸線に沿って曲がることができる、
請求項に記載の共鳴トラップ回路。
【請求項3】
前記螺旋巻線部は、前記対称軸線に沿って最大180度まで曲げることができる、
請求項に記載の共鳴トラップ回路。
【請求項4】
前記螺旋巻線部は、前記対称軸線の周りに360度まで変形可能である、
請求項に記載の共鳴トラップ回路。
【請求項5】
前記螺旋巻線部の直径は、前記導体線路の直径に比例する、
請求項に記載の共鳴トラップ回路。
【請求項6】
前記螺旋巻線部は、前記第1螺旋巻線セグメントと前記第2螺旋巻線セグメントとを接合する接合部を規定する折返し部を備えているように配置されている、
請求項に記載の共鳴トラップ回路。
【請求項7】
前記共鳴トラップ回路はさらに、
前記螺旋巻線部のインダクタンスを調整するべく、前記折返し部の一部に堆積された導体材料を備えている、
請求項に記載の共鳴トラップ回路。
【請求項8】
導体線路セグメントは、前記第1螺旋巻線セグメントと前記第2螺旋巻線セグメントとの接合部に、180度の折返しを有している折返し部を備えているように配置されている、
請求項に記載の共鳴トラップ回路。
【請求項9】
前記螺旋巻線部は、前記第1螺旋巻線セグメントと前記第2螺旋巻線セグメントとの接合部に折返し部を備えており、
前記第1螺旋巻線セグメントは第1ベース部を備えるとともに、前記第1ベース部と前記折返し部との間に延びており、
前記第2螺旋巻線セグメントは第2ベース部を備えるとともに、前記第2ベース部と前記折返し部との間に延びている、
請求項に記載の共鳴トラップ回路。
【請求項10】
前記コンデンサは、前記第1螺旋巻線セグメントと前記第2螺旋巻線セグメントとの間に結合された分布静電容量を備えている、
請求項に記載の共鳴トラップ回路。
【請求項11】
前記コンデンサは、前記第1ベース部と前記第2ベース部との間に電気的結合された少なくとも1つのコンデンサを備えている、
請求項に記載の共鳴トラップ回路。
【請求項12】
前記第1螺旋巻線セグメントは、1つまたは複数のそれぞれの第1内向き表面部を備えており、
前記第2螺旋巻線セグメントは、1つまたは複数のそれぞれの第2内向き表面部を備えており、および
前記第1螺旋巻線セグメントの前記1つまたは複数のそれぞれの第1内向き表面部は、前記第2螺旋巻線セグメントの前記1つまたは複数の第2内向き表面部の少なくとも1つに面しており
前記第2螺旋巻線セグメントの前記1つまたは複数のそれぞれの第2内向き表面部は、前記第1螺旋巻線セグメントの前記1つまたは複数の第1内向き表面部の少なくとも1つに面している、
請求項に記載の共鳴トラップ回路。
【請求項13】
前記第1螺旋巻線セグメントと前記第2螺旋巻線セグメントの対向する対向面同士は、前記螺旋巻線部内の電流流れに起因する磁界および電界を自己シールドするように前記螺旋巻線部内に配置されている、
請求項に記載の共鳴トラップ回路。
【請求項14】
前記導体線路は伝送線路であり
前記螺旋巻線部は前記伝送線路の連続部を備えている、
請求項に記載の共鳴トラップ回路。
【請求項15】
前記導体線路は伝送線路であり、前記伝送線路は第1導体と、第2導体と、および両者間にある誘電体とを備えており、かつ
前記コンデンサは少なくとも1つのコンデンサを備えており、前記少なくとも1つのコンデンサは、前記第1螺旋巻線セグメントにおける前記第2導体の一部と、前記第2螺旋巻線セグメントにおける前記第2導体の一部との間に結合されている、
請求項に記載の共鳴トラップ回路。
【請求項16】
前記導体線路は同軸ケーブルであり、前記同軸ケーブルは外部導体と内部導体と両者間にある誘電体とを備えており、
前記コンデンサは少なくとも1つのコンデンサを備えており、前記少なくとも1つのコンデンサは、前記第1螺旋巻線セグメントにおける前記外部導体の一部と、前記第2螺旋巻線セグメントにおける前記外部導体の一部との間に結合されている、
請求項に記載の共鳴トラップ回路。
【請求項17】
前記導体線路は伝送線路であり、前記伝送線路は誘電体によって分離された少なくとも2つの導体を備えている、
請求項に記載の共鳴トラップ回路。
【請求項18】
前記コンデンサは、前記第1螺旋巻線セグメントと前記第2螺旋巻線セグメントとの間に結合された少なくとも1つのコンデンサを備えており、
前記導体線路は伝送線路であり、前記伝送線路は誘電体によって分離された少なくとも2つの導体を備えており、および
前記少なくとも1つのコンデンサは、前記第1螺旋巻線セグメントにおける前記少なくとも2つの導体のうちの1つの導体の一部と、前記第2螺旋巻線セグメントにおける前記少なくとも2つの導体のうちの1つの導体の一部と、に結合されている
請求項に記載の共鳴トラップ回路。
【請求項19】
前記導体線路は伝送線路であり前記伝送線路は誘電体によって分離された少なくとも2つの導体を備えており、
前記少なくとも2つの導体のうちの少なくとも1つの部分は、差動信号線路として機能するように動作可能にされており、
前記少なくとも2つの導体のうちの少なくとも1つの他の部分は、前記差動信号線路の電位基準として機能するように動作可能にされている
請求項に記載の共鳴トラップ回路。
【請求項20】
前記コンデンサは、前記第1螺旋巻線セグメントと前記第2螺旋巻線セグメントとの間に結合された少なくとも1つのコンデンサを備えており、
前記導体線路は伝送線路であり、前記伝送線路は誘電体によって分離された少なくとも2つの導体を備えており、
前記伝送線路は差動線路として機能するように動作可能にされている部分と接地シールドとして機能するように動作可能にされている部分とを備えており、
前記少なくとも1つのコンデンサは、前記第1螺旋巻線セグメントにおける前記接地シールドとして機能するように動作可能にされている前記伝送線路の一部と、前記第2螺旋巻線セグメントにおける前記接地シールドとして機能するように動作可能にされている前記伝送線路の一部との間に結合されている、
請求項に記載の共鳴トラップ回路。
【請求項21】
記コンデンサは、複数のコンデンサ素子を備えている、
請求項に記載の共鳴トラップ回路。
【請求項22】
記コンデンサは、前記第1螺旋巻線セグメントと前記第2螺旋巻線セグメントとの間に分布容量である
請求項に記載の共鳴トラップ回路。
【請求項23】
前記導体線路は同軸ケーブルであり、前記同軸ケーブルは外部導体と内部導体と両者間にある誘電体とを備えており、
記コンデンサは、前記同軸ケーブルの2つ以上のシールドのうちの1つによって供給される分布容量である
請求項に記載の共鳴トラップ回路。
【請求項24】
前記コンデンサは、前記第1螺旋巻線セグメントと前記第2螺旋巻線セグメントとの間に結合された少なくとも1つのコンデンサを備えており、
前記少なくとも1つのコンデンサは、誘電体層の反対側同士に第1および第2導体層を備えている前記誘電体層を備えており、
前記第1導体層は前記第1螺旋巻線セグメントに機械的接触および電気的接触のうちの少なくとも一方をするように配置されており、
前記第2導体層は前記第2螺旋巻線セグメントに機械的接触および電気的接触のうちの少なくとも一方をするように配置されている、
請求項に記載の共鳴トラップ回路。
【請求項25】
前記誘電体層は、フレキシブル誘電体材料を備えている、
請求項24に記載の共鳴トラップ回路。
【請求項26】
前記共鳴トラップ回路はさらにフレキシブルカバーを備えており、
前記フレキシブルカバーは前記螺旋巻線部の少なくとも一部を取り囲むとともに、前記螺旋巻線部の巻き戻しを防止する、
請求項1に記載の共鳴トラップ回路。
【請求項27】
前記導体線路は多層プリント回路を備えている、
請求項に記載の共鳴トラップ回路。
【請求項28】
前記多層プリント回路は、層状誘電体基板と導線路とを備えており、前記導体線路は信号導体線路と接地導体線路と備えており、前記信号導体線路と前記接地導体線路とのそれぞれは前記層状誘電体基板の2つ以上の層内に延在しており、
前記信号導体線路および前記接地導体線は、前記層状誘電体基板内の異なる層に配置されており、
前記信号導体線路および前記接地導体線路は、螺旋状に縒り合わされた前記第1螺旋巻線セグメントおよび前記第2螺旋巻線セグメントを備えている前記螺旋巻線部を形成するように配置されている前記層状誘電体基板内で、行経路を辿るように前記層状誘電体基板内に配置されている、
請求項27に記載の共鳴トラップ回路。
【請求項29】
前記共鳴トラップ回路はさらに、剛性またはフレキシブルな層状誘電体基板を備えており、
前記導体線路は、前記層状誘電体基板内の異なる層に配置されるとともに前記層状誘電体基板内の螺旋経路を辿る第1および第2接地導体を備えており、
前記導体線路はさらに、前記層状誘電体基板内の前記第1および第2接地導体の間に位置するとともに前記層状誘電体基板内の前記螺旋経路を辿る信号導体を備えており
前記第1および第2接地導体ならびに前記信号導体が辿る複数の前記螺旋経路は、前記層状誘電体基板内で互いに平行であるとともに、螺旋状に縒り合わされた前記第1螺旋巻線セグメントおよび前記第2螺旋巻線セグメントを含む前記螺旋巻線部を形成するように配置されている、
請求項27に記載の共鳴トラップ回路。
【請求項30】
前記螺旋巻線部はさらに第3螺旋巻線セグメントを備えており、
前記第1、第2、および第3螺旋巻線セグメントはそれぞれの前記内向き表面部を有しているとともに、前記第1、第2、および第3螺旋巻線セグメントのそれぞれの前記内向き表面部が少なくとも1つの他の螺旋巻線セグメントの前記内向き表面部に向かうように前記第1、第2、および第3螺旋巻線セグメントは縒り合わされており、前記第2螺旋巻線セグメントと、第1または第3螺旋巻線セグメントとの間に容量を備えている、
請求項に記載の共鳴トラップ回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレキシブル共鳴トラップ回路に関する。
【背景技術】
【0002】
[共鳴トラップの回路]
共鳴トラップとは、1つまたは複数の特定周波数において高インピーダンスを提供する機能的な共鳴回路のことである。最も基本的な意味では、共鳴トラップは、非常に狭い周波数帯の電流をフィルタリングする。トラップのインダクタンスと容量は、集中定数、回路基板の設計、ケーブル配線などによって決定される。これらを組み合わせることで、トラップでフィルタリングされる共鳴周波数が決まる(ω~1/(LC))。共鳴トラップは、単一の導体に結合して、例えば、DC線路の無線周波数(RF)フィルタとして機能させることができる。共鳴トラップは、2つ以上の導体を持つ他の伝送線路(トランスミッションライン)(例えば、同軸ケーブル、三軸ケーブル、平面伝送線路など)に結合することができる。
【0003】
典型的な共鳴トラップ回路は、インダクタンスに並列結合された容量を備えている。一般的な共鳴トラップ回路のインピーダンスは、その共鳴周波数で非常に高くなる。この回路にさらにインダクタやコンデンサを追加することで、複数の共鳴を得ることができる。共鳴トラップ回路は、さまざまなRFアプリケーションに使用されている。例えば、共鳴トラップの共鳴周波数の信号が負荷に到達するのを阻止するべく、共鳴トラップが使用されることがある。例えば、ラジオチューナーのアプリケーションでは、共鳴トラップは、複数の放送局の中から1つを選択するべくラジオ受信機を調整するべく使用できる、可変コンデンサを持つことができる。アンテナ用途では、共鳴トラップ回路を用いて、アンテナの一部分を別の部分から分離することができる。また、MRIでは、磁気共鳴撮像(MRI)システムにおいて、被検体や構造物にエネルギーを付与するためのRF励起信号がシステム内の様々な伝送線路やケーブルに結合するのを防ぐべく、共鳴トラップ回路を使用することができる。MRIでは、受信アンテナ/コイルからの信号をMRIシステムに伝達するべく、伝送線路が使用される。これらの信号は被検体/構造物から放出され、画像を作成するべく使用される。また、MRIシステム内の他のケーブルは、デジタルやアナログの制御信号あるいは電源を、各種周辺機器からシステムに供給する。
【0004】
[MRIシステムの共鳴トラップ回路]
MRI(磁気共鳴画像)は、対象となる原子核の核スピンを利用している。水分子の水素の核スピンを利用して、人体を撮像するのが一般的である。MRIでは、Bと呼ばれる強力で均一な静磁場を用いて、原子核を偏極させる。磁気的に分極された原子核スピンは、人体に磁気モーメントを発生させる。定常状態では、磁気モーメントは静磁場Bの方向に平行に並んでおり、有用な情報は得られない。画像を取得するためには、励起信号によって磁気モーメントを定常状態から乱す必要がある。励起時には、RF送信コイルは、静磁場Bに対して垂直に配置された励起磁場(B)を発生させ、原子核スピンの自然歳差運動に近い周波数で振動させる。この歳差運動の周波数は、B磁場中の陽子のラーモア周波数であり、励起信号Bが核スピン系にエネルギーを付与し、静磁場Bとの整列から離れて磁気モーメントの正味の回転に変化をもたらす。B磁場の有効性は、歳差運動の周波数と、パルスの大きさと持続時間の両方によって決まる。MRIでは、ラーモア周波数または歳差運動周波数とは、外部磁場の周りを回る陽子の磁気モーメントの歳差運動の速度を意味する。歳差運動の周波数は、磁場の強さBと、対象となる原子核とによって定義される。RFパルスの大きさと持続時間によって、磁化がどの程度傾くか(チルト)、あるいは反転(フリップ)するかが決まり、これは一般にフリップ角と呼ばれる。受信モードでは、ラーモア周波数にチューニングされたRF受信コイルが、定常状態に戻った歳差磁化を検出する。歳差運動の磁化は、電磁誘導によって受信コイルに電流を誘導する。この誘導電流がMR信号であり、受信コイルの視野(FOV:フィールドオブビュー)内にあるすべての組織からの磁化の混合物である。一般的に、送信RFコイルを受信RFコイルとして使用することができ、また、代わりに、受信RFコイルを独立した受信専用RFコイルとすることもできる。
【0005】
送信RFコイルから送信されるエネルギーの大きさは、RF受信コイル内に誘導される電流のエネルギーの大きさよりもはるかに大きくなる。このため、患者の身体に近い位置にある受信コイルは、介在しないと励起時のB磁場に強く結合してしまい、受信コイルの損傷や、結果として生じる強い局所磁場による患者への影響が懸念される。送信コイルへの励起パルスの伝送に、または受信コイルからのMR信号の伝送に使用される伝送線路は、システム内でアンテナのような挙動を示すことがある。一般的には、電力やデジタル/アナログ信号を伝送するための導電性のワイヤやケーブルが、同様の挙動を示す。共鳴する受信コイルと同様に、伝送線路とBフィールドとの間にカップリングが発生する可能性がある。伝送線路や受信コイルと、Bフィールドとの結合は、送信フリップ角の不均一性の原因となる。フリップ角が不均一になると、誘導MR信号の情報量が減少し、安全性に問題があることを示す指標となる。情報量を低下させる可能性のある不要なアンテナのような動作を防ぐべく、共鳴トラップは受信コイルに、または誘導MR信号を伝送するための伝送線路に結合されることが多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】米国特許出願公開第2016/220812号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
MRIでは、画像の均一性を高めるべく、励起と受信が撮像領域内で空間的に均一であることが望ましい。一般的なMRIシステムでは、励起時には、全身ボリュームのRFコイルを用いて送信することで、磁場の均一性を得ることが多い。この全身用送信コイルは、一般的にシステム内で最大のRFコイルであり、均一なB磁場を作るべく使用される。しかし、大型のコイルを受信にも使用すると、主に撮像対象の組織からの距離が大きくなるため、信号対雑音比SNRが低下する。そのため、受信用には、患者の体に近い位置に設置しやすい小型の専用受信コイルを使用して、より小さな対象物からの信号対雑音比SNRを向上させることが多い。実際には、適切に設計された特殊なRF受信コイルは、可能な限り対象物の近くにフィットするように、また、患者の取り扱いを容易にし、快適にするように、機械的に構造化されている。
【0008】
業界では、柔軟で体にフィットし、快適なRF受信コイルが求められている。これらのコイルが安全であるためには、Bフィールドと、受信コイルの伝送線路や誘導素子との間のカップリングを防止するための小型の周波数トラップ回路が必要であり、それは患者の取り扱いを容易にし、快適にするための機械的な構造になっている。より詳細には、患者の解剖学的構造(アナトミー)の近くに配置されたコンパクトな受信コイルの近くに配置できるように、患者の解剖学的構造に隣接したスペースに適合するように機械的にフレキシブルな周波数トラップ回路が必要とされている。柔軟で快適な周波数トラップ回路は、周波数トラップの動作を損なうことなく曲げたり捻ったりすることができれば最も有用である。したがって、これらの回路が、例えばMRI撮像のために患者の近くに配置されている間に、曲げたり配置したりするための任意の変更によって損なわれないようにするための対応が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一態様では、共鳴トラップ回路が提供される。共鳴トラップ回路は、一緒に螺旋状に捻られた(ヘリカルにツイストされた)第1螺旋巻線セグメントおよび第2螺旋巻線セグメントを備えている螺旋巻線部を備えているように配置された導体線路(コンダクタライン)を備えている。コンデンサは、第1螺旋巻線セグメントと第2螺旋巻線セグメントとの間に容量(キャパシタンス)を提供するように配置される。
【0010】
別の局面では、共鳴トラップ回路は、磁気共鳴撮像システムに適用される。被写体の原子核を励起するための磁場内には、アナログまたはデジタルの制御信号やアナログの画像情報を伝送するための導電線路が配置されている。これらの導電線路に電気的結合された共鳴トラップ回路は、送信された磁場に導電線路が結合するのを防ぐ。
【0011】
別の側面では、磁気共鳴撮像システムに使用される受信回路が提供される。受信回路は、受信コイルと、受信コイルに結合された伝送線路と、共鳴トラップ回路とを備えている。螺旋巻線部を備えているように配置された伝送線路の一部を備えている共鳴トラップ回路は、螺旋巻線部の一部を横切る(アクロスする)容量を提供するように配置されたコンデンサを備えている。
【0012】
別の態様では、磁気共鳴撮像システムで使用するための受信アレイパッドが提供される。受信回路は、各受信コイルが他の受信コイルの少なくとも一部に重なるように配置された複数の受信コイルを備えているとともに、各伝送線路が異なる受信コイルに結合された複数の伝送線路を備えている。それぞれの伝送線路は、それぞれの共鳴トラップ回路を提供するように配置されている。それぞれの共鳴トラップ回路は、それぞれの螺旋巻線部を備えているように配置されたそれぞれの伝送線路のそれぞれの部分を備えているとともに、それぞれの螺旋巻線部の一部を横切る容量を提供するように配置されたそれぞれのコンデンサを備えている。
【0013】
別の局面では、共鳴トラップ回路を製造する方法が提供される。この方法は、螺旋巻線部を形成するべく伝送線路の一部を捻る工程を備えている。螺旋巻線部は、共に螺旋状に捻られた第1螺旋巻線セグメントと第2螺旋巻線セグメントとを備えているとともに、第1螺旋巻線セグメントと第2螺旋巻線セグメントとの接合部に折返し部を備えている。本方法はさらに、第1螺旋巻線セグメントと第2螺旋巻線セグメントとの間にコンデンサを結合する工程を備えている。
【0014】
特許または出願ファイルは、カラーで実行される少なくとも1つの図面を備えている。カラー図面を備えている本特許または特許出願公開のコピーは、要求および必要な手数料の支払いに応じて官庁から提供される。
【0015】
本開示の側面は、添付の図と合わせて読むと、以下の詳細な説明から最もよく理解される。業界の標準的な慣行に従って、様々な特徴が縮尺通りに描かれていないことが強調されている。実際には、様々な特徴の寸法は、議論を明確にするべく任意に増加または減少させることができる。さらに、本開示では、様々な例で参照番号および/または文字を繰り返すことがある。この繰り返しは、単純化してわかりやすくするためのものであり、それ自体が、議論される様々な実施形態同士および/または構成同士の間の関係を指示するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1A】MRIシステム内の患者に関連して配置されたRF送信コイルおよびRF受信コイルを示す例示的な図面。
図1B】共鳴トラップを備えている伝送線路に結合された受信コイルのアレイを備えている例示的なアレイパッドの部分的に透明な上面図。
図2】例示的な送信回路および例示的な受信回路を示す例示的な模式図。
図3】伝送線路に結合された例示的な共鳴トラップ回路の斜視図を示す例示的な図面。
図4A】共鳴回路のコンデンサ素子に結合された図3の例示的な同軸伝送線路の第1セグメントおよび第2セグメントの一部を示す例示的な側断面図。
図4B】共鳴回路のコンデンサ素子に結合された図3の例示的な同軸伝送線路の部分の端部断面図。
図5A図3の例示的な共鳴トラップの螺旋巻線部の説明的な側面図。
図5B図3の例示的な共鳴トラップの螺旋巻線部内の外面電流の流れに起因する模擬磁場のマップを示す説明図。
図5C図3の例示的な共鳴トラップの螺旋巻線部内の外面電流経路のシミュレーションの例を示す説明図。
図6A】受信コイル、伝送線路の配線、および共鳴トラップ回路がB励起に与える影響を示すための、例示的な均質な水が満たされた領域内のフリップ角を表す例示的なマップ。
図6B】受信コイル、伝送線路の配線、および共鳴トラップ回路がB励起に与える影響を示すための、例示的な均質な水が満たされた領域内のフリップ角を表す例示的なマップ。
図6C】受信コイル、伝送線路の配線、および共鳴トラップ回路がB励起に与える影響を示すための、例示的な均質な水が満たされた領域内のフリップ角を表す例示的なマップ。
図7A】フレキシブル容量シートを備えている未組立の配置と、螺旋巻線の第1セグメントおよび第2セグメントのベース部の断面端面図を示す説明図。
図7B図7Aのフレキシブル容量シートに、第1セグメントのベース部に接触してロール状に巻かれた第1導体プレートと、第2セグメントのベース部に接触してロール状に巻かれた第2導体プレートとを組み合わせた状態を示す説明図。
図8A】概ね直線的な配置で延びる例示的な共鳴トラップを示す説明図。
図8B図8Aの共鳴トラップの対応する例の周波数減衰応答を示す説明図。
図9A図8Aの共鳴トラップの例を示す説明図であり、螺旋巻線が、その螺旋巻線部の長さのほぼ中間で、約180度の角度で曲げられている。
図9B図9Aの折り曲げられた共鳴トラップの対応する例示的な周波数減衰応答を示す説明図。
図10A図8Aの共鳴トラップと同一の2つの例示的な共鳴トラップを、横に並べて(サイドバイサイドで)配置した状態を示す説明図。
図10B図10Aのサイドバイサイドのトラップの周波数減衰の例を示す説明図。
図11A】3つの螺旋巻線セグメントを生成するべく折り返されて編み込まれた伝送線路を備えている、共鳴トラップの例を示す説明的な側面図。
図11B図11Aの3つの螺旋巻線セグメントの折り返しと編組の表現を示す、共鳴トラップの簡略化されたレイアウト概略図。
図11C図11Aの共鳴トラップの例示的な電気的模式図。
図11D図11Aの例示的な共鳴トラップの例示的な周波数減衰応答を示す例示的な図面。
図12A】例示的なプリント回路基板の共鳴トラップ回路の説明的な斜視図。
図12B】誘電体材料などの基板に埋め込まれた複数の積層された平坦な導体層を示す、例示的なプリント回路基板の共鳴トラップ回路の例示的な側断面図。
図12C】例示のプリント基板共鳴トラップ回路の個々の積層された導体層の個別の断面図を示す説明的な図面。
図13図12A図12Cの例示的なプリント回路基板共鳴トラップ回路内の上下および横方向の例示的な信号電流の流れを示す例示的な概略図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1Aは、MRIシステム100内の患者に関連して、RF送信コイル110と、受信アレイパッド113に配置されたRF受信コイル112とを示す説明図である。対象となる患者102は、MRIチャンバ106内のプラットフォーム104に横たわっている。主磁石108は、静的なB磁界を生成するように配置されている。励起モードの間、1つまたは複数の送信コイル110は、関心のある周波数で静的B磁場に対して垂直なB磁場を生成する励起磁場パルスを送信する。複数の受信コイル112は、患者の体に近接して配置される。RF励起後、被験者内の正味の核磁化の歳差運動(precession)によって生じる磁束の変化は、受信コイル112内にMR電流を誘導し、これを後処理して、MR画像の構築に使用される周波数、位相、および振幅の情報を抽出することができる。以下に説明するように、安全性を考慮すると一般的に、患者の解剖学的構造(アナトミー)と、受信コイル112および関連する電子機器との間に、少なくとも最小の間隔(典型的には約5ミリメートル)が必要である。
【0018】
図1Bは、共鳴トラップ124に結合された受信コイル112のアレイを備えている、例示的な受信コイルアレイパッド113の部分的に透明な上面図である。コイル112-1、112-2のアレイは、破線で示されたフレキシブルハウジング126内に配置することができ、このハウジングは、患者の体に置かれたときの快適性のために、またコイルおよび関連する電気回路部品を患者から離すべく、布や発泡体などの柔らかいクッション材で形成することができる。受信コイル112は、例えばフレキシブルワイヤや導電箔などのフレキシブル導電材料で形成されている。第1および第2伝送線路128-1,128-2は、受信コイルアレイパッド113とMRI装置100との間に延びている。例示的な第1セットの3つの第1受信コイル112-1は、3つの第1コイル112-1のうちの1つが他の2つの第1コイル112-1の間に位置し、3つの第1コイル112-1のそれぞれが、第1コイル112-1のうちの他の2つのうちの隣接する1つと部分的に、例えば、20~25パーセントだけ重なるようにして、第1伝送線路128-1に電気的結合される。同様に、例示的な第2セットの3つの第2受信コイル112-2は、3つの第2コイル112-2のうちの1つが他の2つの第2コイル112-2の間に位置し、3つの第2コイル112-2のそれぞれが、第2コイル112-2のうちの他の2つの隣接する1つと、例えば20~25パーセントだけ部分的に重なるようにして、第2伝送線路128-2に電気的結合される。例示の第1および第2セットの受信コイルは、各セットの各コイルが他のセットの少なくとも1つのコイルに重なるように並んで(サイドバイサイドで)配置されているが、実際には、間隔を空けて配置したり、重なってオフセットしたりすることもできる。
【0019】
複数のアレイパッド113を特許の解剖学上の異なる位置に配置して、歳差運動中に生じる磁束を捕捉することができる。この捕捉された磁束は、再構成のために伝送線路128-1,128-2を介してMRIシステム100に伝送されて、画像を作成する。可撓性を有し、それぞれの受信コイル112-1,112-2にそれぞれ結合されている伝送線路128-1,128-2は、歳差運動中にコイル112-1,112-2に誘導されたMR電流を、MRIシステムに伝送して戻す。図1Bの図面では、スペースを節約するべく複数の伝送線路128-1,128-2が密接に束ねられている様子が描かれている。例示のアレイパッド113では、伝送線路128-1,128-2は、3つのグループで束ねられており、1つの伝送線路が各円形コイル要素に結合されている。個々のまたは束ねられた伝送線路128-1,128-2は、アンテナのような挙動を示す可能性がある。それぞれの共鳴トラップ124は、各コイル112-1,112-2の出力で、かつ、個々の伝送線路128-1,128-2に沿って1/4波長以上離れない間隔で、B信号の励起周波数で結合されている。各トラップ124の共鳴周波数は、励起周波数に一致する。前置増幅器回路130は、一対の共鳴トラップ回路124同士の間の伝送線路に結合されて示されているが、伝送線路に沿った任意の点に配置することができる。
【0020】
このように、受信コイルアレイパッド113は、患者の解剖学的構造に準拠し、形状を適合させることができることが理解されるであろう。受信コイル112-1,112-2は、フレキシブル材料で形成されている。伝送線路128-1,128-2は、柔軟性があり、共鳴トラップ回路124は、伝送線路128-1,128-2のセグメントの配置によって形成されている。したがって、共鳴トラップ回路124の可撓性および厚さは、伝送線路128-1,128-2の可撓性および厚さに比例する。最後に、受信コイル112-1,112-2、伝送線路128-1,128-2、および共鳴トラップ回路124は、軟質発泡材料に形成されたフレキシブルハウジング126内に収容されている。
【0021】
図2は、例示的なMRIシステムの送信回路202と例示的なMRIシステムの受信回路204を示す例示的な模式図である。例示の送信回路202は、送信コイル206、RF電力増幅器207、パルス生成回路208、デジタルアナログ変換器(DAC)回路210、およびコンピュータシステム215を備えている。励起信号伝送線路214は、増幅器207とパルス生成回路208を送信コイル206に結合する。例示の受信回路204は、受信コイル212と、RF電力増幅回路218と、アナログデジタル変換器(ADC)回路220と、コンピュータシステム215とを備えている。受信信号伝送線路228は、受信コイル212を増幅回路218に結合する。また、受信回路204は、受信伝送線路228に結合された、バラン(baluns)と呼ばれることもある例示的な第1および第2共鳴トラップ224a,224bを備えている。共鳴トラップ224aを参照して破線内に示すように、第1および第2共鳴トラップ224a,224bのそれぞれは、受信伝送線路228の一部同士の間に結合されたコンデンサ225およびインダクタ226の並列の組み合わせを備えている。第2共鳴トラップ224bは、コンデンサとインダクタ(図示せず)の同様の配置を備えていることが理解されるであろう。第1共鳴トラップ224aは、受信コイル212に隣接する受信伝送線路228の一部に結合するように配置されている。例示の第1共鳴トラップ224aは、典型的には、受信コイル212に機械的に可能な限り接近して配置される。例示の第1共鳴トラップ224aは、受信コイル212のインダクタ(図示せず)が、受信伝送線路228の一部としてスキャナに現れないようにするべく使用される。例示の第2共鳴トラップ224bは、増幅器218とアナログデジタル変換器ADC220との間の受信伝送線路に沿って配置されて示されている。実際には、例えば、受信コイル212と増幅器218との間の接続部に、および増幅器218とアナログデジタル変換器ADC220との間の接続部に、多くの追加の共鳴トラップ(図示せず)を配置することができる。一般に、これらの共鳴トラップは、トラップ同士間の受信伝送線路228の長さが(スキャナの共鳴周波数に対して)1/4波長未満になるように配置される。これによって、伝送線路上での定在波動作を防ぐことができる。したがって、トラップの位置は、ケーブル/伝送線路228の全長によって決定されることが多い。
【0022】
図2の受信回路204は、単一の受信コイル212、対応する共鳴トラップ224a、224bを有している単一の伝送線路228、および電子部品(例えば、増幅器218およびアナログデジタル変換器ADC220)を表していることが理解されるであろう。しかし、図1A図1Bの例示的な図面に示すように、MRIシステム100は、多くの場合、アレイ状に配置された複数の受信回路204を備えており、複数の受信回路204の各々は、別個のコイルおよび伝送線路の他、対応する共鳴トラップおよび電子機器を備えている。コイル同士は、歳差運動エネルギーの適切なカバレッジを確保し、受信コイル同士間の結合を最小化するべく、オーバーラップ構成で緊密に詰め込まれる。さらに、コイルの配置は安全規格に影響される。そのため、コイルを効果的に動作させるためには、コイルと同位置に配置される共鳴トラップのサイズと柔軟性が要因となることが理解されるだろう。
【0023】
励起モードの間、デジタルアナログ変換器DAC210は、コンピュータシステム215によって提供されるデジタル信号を、パルス発生器208に提供されるアナログ信号に変換する。パルス発生器208は、MRIシステムのラーモア周波数で短い励起パルス信号を生成し、その信号は(次にRF増幅器207によって増幅され、その後)送信コイル206を介して患者組織に送信され、組織内の核230の磁石モーメントの正味の回転の変化を引き起こす。励起モードの間、受信回路204に結合されている第1および第2共鳴トラップ224a,224bは、励起パルスによって伝送線路228に誘導されるコモンモード電流を吸収する。受信モード時には、定常状態に戻って弛緩する対象組織内の原子核230の歳差磁化232によって、ラーモア周波数で受信コイル内に電流が誘導される。この誘導信号は、差動信号として伝送線路228を通って増幅回路218に渡され、増幅回路218は誘導された励起信号を増幅する。次に、伝送線路228の二次部分は、増幅された信号をアナログデジタル変換器ADC220に運び、そこでコンピュータシステム215で処理するべくデジタル形式に変換される。すべての受信信号は、差動信号として伝送される。ここでは、伝送線路228に沿って伝送されるように描かれている。第1および第2共鳴トラップ224a,224bは、受信モードの間、差動信号の伝送を妨害しないように、またコモンモード電流のみを遮断するように結合されている。
【0024】
図3は、例示的な共鳴トラップ回路300の斜視図を示す例示的な図面である。例示の共鳴トラップ300は、インダクタとして機能する螺旋巻線部304を形成するべく捻り合わせられた受信伝送線路302の一部と、螺旋巻線部304のセグメント同士間に結合されたコンデンサ306を備えている。共鳴タンク回路またはバランとも呼ばれる例示的な共鳴トラップは、その共鳴周波数と呼ばれる選択された周波数で最大の抵抗を提供する。例示の共鳴トラップ300では、共鳴周波数を選択するべく、容量とインダクタンスのそれぞれを調整することができる。例示の共鳴回路は、MRIシステムのラーモア周波数で最大抵抗を提供するように選択された共鳴周波数を有している。受信伝送線路302は機械的に柔軟であり、受信伝送線路302の連続した部分を構成する螺旋巻線部も同様に柔軟である。共鳴トラップの螺旋巻線部304を構成する伝送線路の一部分は、共鳴トラップの柔軟性を決定する。全体の螺旋巻線の半径によって全体の螺旋巻線部304の曲率半径が制限されるが、螺旋巻線部304の個々の脚部は、元の巻かれていない形態の柔軟性を維持している。図4Aは、共鳴トラップ300のコンデンサ306に結合された、図3の例示的な伝送線路302の第1および第2セグメント部分の一部の例示的な側断面図である。図4Bは、共鳴トラップ300のコンデンサ306に結合された、図3の例示的な伝送線路302の部分の端部断面図である。例示的な伝送線路302は、第1導体310および第2導体312を備えている。図4A図4Bの例示的な伝送線路は、伝送線路302の内部導体として配置された第1導体310と、伝送線路302の外部導体として配置された第2導体312とを備えている同軸伝送線路を備えている。例示的な伝送線路302は、第1および第2導体310,312の間に介在して、第1(内側)導体310と第2(外側)導体312とを電気的分離する誘電体材料314を備えている。第2(外側)導体312の内表面316および外表面318は、第2導体312の連続した部分であるにもかかわらず、表皮効果(スキンエフェクト)によって電気的分離した表面として振る舞う。例示のコンデンサ306は、螺旋巻線の対向する螺旋巻線セグメント308a,308bのベース部307a,307bにおいて、第2導体線路312のそれぞれの外面部318同士の間に結合されている。以下に説明するように、共鳴トラップは、選択された周波数で、例えばラーモア周波数で、第2導体線路の外面に電流が自由に流れるのを防ぐ。
【0025】
再び図3を参照すると、例示的な共鳴トラップ300は、連続した長さの伝送線路302を折返して捻り、螺旋巻線部304を形成することを備えている。コンデンサ306は、折返し部320とは反対側の螺旋巻線部304のそれぞれの第1および第2ベース部307a,307bにおける伝送線路の部分同士の間で電気的結合されている。螺旋巻線部304は、螺旋巻線部304の第1ベース部307aと、螺旋巻線部304の頂点における折返し部320との間に延びる第1螺旋巻線セグメント308aを備えている。螺旋巻線部304は、螺旋巻線部304の第2ベース部307bと、螺旋巻線部304の頂点における折返し部320との間に延びる第2螺旋巻線セグメント308bを備えている。螺旋巻線部304が直線的なレイアウトで延びるように配置されている場合、長手方向軸線322は、折返し部320を通って、第1および第2螺旋巻線セグメント308a,308bの中心同士の間、および第1および第2ベース部307a,307bの間に延びている。
【0026】
第1螺旋巻線セグメント308aおよび第2螺旋巻線セグメント308bは、共に、伝送線路302の曲率半径に少なくとも部分的に依存する曲率半径を有している。例示的な共鳴トラップ300では、螺旋巻線部304の最小曲率半径は、伝送線路302の直径の2倍、または螺旋がきつく巻かれている全体としての螺旋巻線部の直径である。螺旋の2つの脚部の間にスペーサを配置して、螺旋の半径を効果的に大きくすることで、螺旋をよりきつく巻かないようにすることができる。また、伝送線路の外側の絶縁層の厚さを薄くすることで、螺旋をよりきつく巻くことができる。この共鳴トラップの最小曲率半径は、全体としての螺旋の直径によって制限される。螺旋の最大直径は、一般的にアプリケーションに依存し、アプリケーションが要求するトラップの自己遮蔽特性の関数となる。自己遮蔽特性は、共鳴トラップをどれだけきつく巻くか(長さあたりの捻り数(ツイストの数))と、捻り(ツイスト)の2本の脚を互いにどれだけ近づけるか(螺旋の半径)に依存する。特定の用途によって、必要な自己遮蔽のレベルが決まる。
【0027】
連続した伝送線路部分の構成要素である第1および第2伝送線路セグメント308a,308bは、折返し部320によって区画された接合部で結合する。伝送線路302の外側の絶縁層の一部は、インダクタンスの微調整を可能にするべく剥がされる。例示的な共鳴トラップ300では、例えば集積回路コンデンサまたはセラミックチップコンデンサとすることができる例示的なコンデンサ306は、第1螺旋巻線セグメント308aの第1ベース部307aと、第2螺旋巻線セグメント308bの第2ベース部307bとを電気的結合する。また、伝送線路302の外側の絶縁層の一部を剥離して、外面318の対向する部分313a,313b同士を露出させ、それらの間にコンデンサ306を電気的結合(例えば、半田付け)できるようにする。代替例の共鳴トラップでは、複数の個別のコンデンサ(図示せず)を、第1および第2螺旋巻線セグメント308a,308b同士の間に長手方向に分布して結合することができる。別の代替実施形態では、単一の分布コンデンサ素子を、螺旋捻れ部304の長さに沿って結合することができる。上で説明したように、第1および第2螺旋巻線セグメント308a、308bはそれぞれ、連続した伝送線路302の一部を構成している。
【0028】
コモンモード電流と呼ばれることもある外部電流は、螺旋捻れ部304の第1および第2螺旋巻線セグメント308a,308b内で反対方向に流れる。コモンモード電流は、例えば、伝送コイルが高エネルギーの励起パルスを送信する励起モード時に、共鳴トラップに誘導することができる。電流は、第1ベース部307aと折返し部320との間の第1螺旋巻線セグメント308a内で、第1方向に流れる。また、第2ベース部307bと折返し部320との間の第2螺旋巻線セグメント内では、第1方向とは逆の第2方向に電流が流れる。このようにして、電流は、伝送線路312のうち捻れて螺旋状に捻れた部分304を形成する部分の外面318上の連続した経路に沿って、例えば、第1ベース部307aから第1螺旋巻線セグメント308aを通って折返し部320に至り、その後、第2螺旋巻線セグメント308bに沿って第2ベース部307bに至る経路において、いずれかの方向に流れる。
【0029】
共鳴タンク回路の共鳴周波数は、螺旋捻れ部304に含まれる伝送線路の全長、螺旋捻れ部304のおおよその断面積、螺旋捻れ部304の巻き数、コンデンサ306の値と位置などの要素によって決定される。さらに、螺旋巻線部304の異なる領域に渡って異なるコンデンサを設けることで、2つ以上の共鳴周波数を有している共鳴タンク回路を作り出すことができる。さらに、インダクタンスは、送信部302に関連する誘電体特性に依存することができる。送信モードの間、螺旋巻線部304のインダクタンスは、コンデンサ306の容量と組み合わせて、第1および第2螺旋巻線セグメント308a、308bの外部導体表面318上に共鳴回路を形成し、高インピーダンス回路を形成する。この高インピーダンスによって、第1および第2螺旋巻線セグメント308a,308bの外面に沿って、螺旋巻線部304内に電流が自由に流れないようになっている。受信モードでは、伝送線路の第1(内側)導体310に沿って、および第2導体312の内側表面316に沿って、反対方向に流れる差動電流は、ケーブルの第2導体312の電流の表皮効果によって、乱れずに共鳴トラップの中心を流れる。例示的な共鳴トラップ300では、第1導体310と、第2導体312の内面316とは、差動信号を伝導する差動線路として作用する。第2導体312の外面318は、差動電流をホストしないが、コモンモード電流をホストする導電面として作用することになる。
【0030】
例示的な伝送線路302は、同軸ケーブルを使用して実装されるが、代替的な例示的な共鳴トラップ回路は、例えば、三軸ケーブルまたは二軸ケーブルを備えていることができる。例示的な共鳴トラップ回路は、例えば、ストリップ線路、マイクロストリップ、コプレーナ導波路、コプレーナストリップ、スロット線路、基板集積導波路、フィン線路、イメージ線路、またはそれらの任意の多層変形を備えているがこれらに限定されない、平面伝送線路を備えていることができる。例示的な共鳴トラップ回路は、ツイストペア、シールドペア、スタークワッドケーブル、ツインリード、レッヘル線路、または平行線路もしくは平行ワイヤ伝送線路を備えているがこれらに限定されない、平衡線路を備えていることができる。例示の共鳴トラップ回路は、例えば、金属または誘電体の導波路を備えていることができる。上記の例示的な伝送線路のそれぞれは、例えば、フレキシブルプリント回路基板、標準的なプリント回路基板上の1つまたは複数の層の様式で実装することができ、またはソリューション処理(例えば、プリンテッドエレクトロニクス)を用いて作成することができる。
【0031】
図5Aは、図3の例示的な共鳴トラップ300の螺旋巻線部304の例示的な側面図である。図5Bは、図3の例示的な共鳴トラップ300の螺旋巻線部304内の外面電流の流れに起因する模擬磁場のマップを示す例示的な図面である。図5Cは、図3の例示的な共鳴トラップ300の螺旋巻線部304内の外面電流経路の例示的なシミュレーションを示す例示的な図面である。
【0032】
図5Aは、第1巻線セグメント308aおよび第2巻線セグメント308bから等距離にあって螺旋巻線部304内で長手方向に延びる対称軸線510を示す。図5Bは、赤色で示されている第1最強磁場領域502が、対向する螺旋巻線セグメント308a、308bの表面が互いに向かって面するところに位置し、青色で示されている第2最弱磁場領域504が、対向する螺旋巻線セグメント308a、308bの表面が互いに離れて面するところに位置していることを示している。図5Cの個々の矢印は、電流の流れ方向を表している。矢印の大きさと色は、電流の流れの大きさを表している。大きなサイズの矢印は、より大きな大きさの電流の流れを表し、その逆もまた然りである。矢印の向きは、電流の流れの方向を表している。赤い矢印は電流の大きさが最大であることを表し、青い矢印は電流の大きさが最小であることを表す。電流は、対向する螺旋巻線セグメント308a,308bに沿って反対方向に流れる。図5Cは、磁場が最も大きいところで互いに向き合う対向螺旋巻線セグメント308a,308bの表面部に沿って大きな電流が流れ、磁場が最も小さいところで互いに向き合う対向螺旋巻線セグメント308a,308bの表面部に沿って小さな電流が流れることを示している。
【0033】
より詳細には、例示的な共鳴トラップ回路の動作の電磁的シミュレーションは、励起パルスの送信によって誘導される表面電流などの外表面電流が、最短の誘導経路に従うことを示している。図5Cに示すように、例示の螺旋巻線部304の場合、螺旋巻線部304のそれぞれの第1および第2ベース部307a,307bと折返し部320との間の最短経路は、螺旋に巻かれた第1および第2伝送線路セグメントの内向きの表面部に沿った経路である。図5Cに示すように、コモンモード電流などの電流は、螺旋状に巻かれた第1および第2螺旋巻線セグメント308a,308bの内向きの表面部に沿って反対方向に流れる。図5Bに示すように、コモンモード電流の流れに起因する磁界は、したがって、対向する螺旋巻線セグメント308a,308bの対向部分同士の間の螺旋巻線部304の中央部分に限定される。したがって、螺旋巻線部の各脚部308a,308bからの結果としての磁界は、放射されるのではなく、自己遮蔽される。螺旋巻線部304のこの生来の自己遮蔽は、例示の共鳴回路300を外部磁界および負荷の変化に対してより鈍感にするので、共鳴回路300が放射して磁界感度の問題を発生させるのを防止することができる。例えば、ブレード(braid)、フォイル、またはチューブで形成された任意の導電性カバーを、共鳴トラップアセンブリ全体の上に配置して、例えば、追加の電磁シールドを提供することができる。
【0034】
例示的な共鳴トラップ300は、第1および第2螺旋巻線セグメント308a,308bのベース部同士を電気的結合するべく使用される適切なサイズのコンデンサ306を選択することで調整することができる。コンデンサ306を螺旋巻線部304に接合する技術は、一般に、機械的に強力で弾力性のある電気的接続が作られていれば(例えば、半田、クリンプ、接着など)、共鳴トラップ回路300の性能には影響しない。共鳴トラップの共鳴周波数は、ω~1/(LC)の形態となる。ここで、Lは螺旋ツイストのインダクタンスによって支配される共鳴トラップのインダクタンスであり、Cは集中コンデンサ306を備えている回路の分布容量である。周波数を微調整するためには、コンデンサの位置をズラすと螺旋の長さが変わり、その結果インダクタンスが変わるので、インダクタの長さを調整するべく、コンデンサ306が第1および第2螺旋巻線セグメントに結合する位置を結合前に選択することができる。また、微調整のために、半田などの選択可能な量の導電材料324を螺旋巻線の頂点の折返し領域320に加えて、電流の流れの経路を変えてインダクタンスを調整し、実質的にインダクタの長さを調整することもできる。説明のために、例えば、折返し領域320が小さなループであり、半田の追加は、このループの領域の一部を埋めることになり、実質的にループを小さくし、したがって、インダクタンスを小さくすることを考える。また、周波数調整のために、第1および第2螺旋巻線セグメントの間にスペーサを配置すること、螺旋巻線部304の捻りを変化させて巻線の半径や長さ当たりの巻数を増減させること、あるいは伝送線路上の外装コーティングの厚さを変化させることなどによって、螺旋巻線の直径を調整して総インダクタンスを修正することができる。間隔を大きくすると、螺旋の半径が大きくなり、その結果、螺旋の断面の面積が大きくなる。半径を大きくすると、インダクタンスが大きくなるはずであるが、螺旋に沿った一部の分布静電容量が減少するため、線形性が若干低下する。また、周波数を調整するべく、集中型コンデンサ素子306や分布コンデンサ素子の容量を調整することもできる。
【0035】
MRIで使用するべく、例示の共鳴トラップ300は、スキャナのラーモア周波数で共鳴するように調整することができる。一例として、螺旋インダクタを用いた共鳴タンク回路は、3TのMRIシステムで動作するように127MHzで動作するように調整されている。測定されたコモンモード電流の低減量は、ケーブル長に応じて-10dB~-30dBであり、螺旋巻線の長さが約3.5cmの共鳴回路では典型的に-15dBであった。このように、共鳴トラップの例では、3テスラで動作するのに適した共鳴周波数を持つことができ、これは約127MHzである。例示の共鳴トラップは、1.5テスラで動作するのに適した共鳴周波数を有していることができ、これは約64MHzである。共鳴トラップの例では、7テスラで動作するのに適した共鳴周波数を持つことができ、これは約300Mhzである。現在利用可能なスキャナ(非臨床)には、0.35T~10.5T(14~450MHz)のものがある。これらのスキャナのこれらの周波数でのブロックは異なっており、妥当なブロックを生成するためには、螺旋の全長、半径、および巻数をそれに応じて変化させる必要がある。
【0036】
127MHzで動作するように調整された共鳴トラップ回路300の例では、周波数ブロッキングは10dB~30dBと測定された。ケーブルトラップの業界標準も周波数別になっており、一般的には、3Tで15dB以上のブロッキング、1.5Tで20dB以上のブロッキングとなっている。ブロッキングの量は、Bの摂動と、コイルの加熱とにも影響する。十分なブロッキングによって、Bの変動は最小限に抑えられ(図6A図6C)、IEC60601-1およびIEC60601-2-33のガイドラインに沿った温度試験に合格するはずである。
【0037】
図6A図6Cは、2つの均質な水を満たした領域で構成された構造の例であり、受信コイル、伝送線路ケーブル、共鳴トラップがB励起に与える影響を示すフリップ角を表した図である。図6Aは、受信コイルが存在しない領域のスライスにおけるベース線路のフリップ角を示しており、性能の「ゴールドスタンダード」と考えることができる。図6B図6Cはそれぞれ,受信コイルアレイに共鳴トラップが結合されていない場合(図6B)と、受信コイルアレイに共鳴トラップが結合されている場合(図6C)の、受信コイルの直下の同じスライスのフリップ角を示している。コイルに共鳴トラップがかかっていないときにできたマップ(図6B)は、ベース線路(図6A)からのフリップ角のズレ(deviations)が大きいのに対し、共鳴トラップがかかった受信コイルからのマップ(図6C)は、ベース線路のマップ(図6A)に近いものになっている。このように、励起エネルギーを吸収する共鳴トラップが受信コイルや受信伝送線路にないと、Bのフリップ角が不均一になる可能性が高くなり、MRIの結果が劣化してしまう。また、Bの局所的な変動は比吸収率SARの局所的な変動と同時に見られることが多いので、Bの大きな変動はMRIの安全上の問題と考えられる。マップは、励起エネルギーを吸収するための高インピーダンスブロックを共鳴トラップが提供することを示すとともに、受信コイルおよび伝送線路がB励起に干渉するのを共鳴トラップが防ぐことができることを示す。
【0038】
図7A図7Bは、フレキシブル誘電体704によって分離された第1および第2フレキシブル導電性プレート702a、702bを備えている、代替例のフレキシブルコンデンサ700を示すための例示図面である。図7Aは、フレキシブル容量層700を備えている未組立の配置と、螺旋巻線部の第1および第2セグメントのそれぞれの第1および第2ベース部307a,307bの断面端面図とを示す例示的な図面である。図7Bは、第1導体702aが第12ベース部307aに接触して巻き取られた状態、および第2導体702bが第2ベース部307bに接触して巻き取られた状態の、図7Aのフレキシブル容量層700を示す説明図である。より具体的には、図7Bは、第1導体702aが第1ベース部307aにおいて第2導体312の外面318に電気的接触し、第2導体702bが第2ベース部307bにおいて第2導体312の外面318に電気的接触するように配置されたフレキシブルコンデンサを示す説明図である。フレキシブルコンデンサ700は、電気的に安定した接続が確立されるように、ベース部307a,307bに接着される(例えば、半田)。例示的なフレキシブルコンデンサでは、フレキシブル誘電体材料の各面を被覆する銅クラッド積層体が、コンデンサ素子として使用される。次に、フレキシブルコンデンサは、例えば、接合点307a、307bで螺旋状に巻かれた伝送線路に半田付けされ、フレキシブル導電性プレート702a、702bの2つのプレートが螺旋の互いに対向する側に接合されるようにする。その後、フレキシブルコンデンサは、フレキシブル導電性プレート702aと702bの間で電気的接触しないように、螺旋の周りに巻き付けることができる。
【0039】
フレキシブルコンデンサの例としては、例えば、フレキシブルプリント回路基板(PCB)材料で形成された第1および第2導電性プレートを挙げることができる。あるいは、例示のフレキシブルコンデンサは、例えば、フレキシブルな誘電体シートの両側に銅クラッドで形成された第1および第2導電性プレートを備えていることができる。例示のフレキシブルコンデンサの値は、誘電体の材料特性、誘電体の厚さ、導電シートの面積などの1つまたは複数の要因に基づいて調整することができる。また、誘電体704内の外部導電面702aおよび702bの間の内部導電層の数に基づいて、静電容量を変化させることができる。このように、フレキシブルコンデンサは、例示の共鳴トラップの共鳴周波数を調整する方法を追加することができる。例えば、導体プレートの面積が静電容量を決定するので、共鳴トラップの調整は、フレキシブルコンデンサの総面積を変更することで実現できる(例えば、容量シートを切断して面積寸法を小さくすると、静電容量が減少する)。さらに、フレキシブルコンデンサの誘電体の厚さを変えると、静電容量が変わる。さらに、図7Bに示すように、フレキシブルコンデンサ素子700を伝送線路の一部に巻き付けて、可撓性を低下させることなく共鳴トラップのプロファイルを低減することができる。さらに、コンデンサのより長いスクロール状の巻き付けによって、側面同士を短くしたり(702a,702b)、共鳴トラップのサイズ/プロファイルを大幅に増加させたりすることなく、より長いコンデンサを使用することができる。矢印713は、スクロールが、オプションで、どのように巻き続けることができるかを示している。
【0040】
フレキシブルコンデンサ素子は、例えば、衝撃による損傷に対する耐性の向上など、改善された機械的安定性を示すことができる。フレキシブルコンデンサの(衝撃による)機械的制限は、ケーブルとコンデンサの間の結合であり、一方、セラミックチップコンデンサまたは集積回路コンデンサは、衝撃でより容易に粉砕されうる。フレキシブルコンデンサを使用した共鳴トラップは、第1セグメントと第2セグメントのベース部に接触してロール状に巻かれた容量シートをカットすることで調整することができる。このように、フレキシブルなコンデンサを備えた共鳴トラップは、比較的容易にチューニングすることができる。
【0041】
図8Aは、カバー802内に封入され、ロール状のコンデンサ804を備えている螺旋巻線(見えない)を有している例示的な共鳴トラップ800を示す説明図であり、螺旋巻線(カバー802の下にある)は、概ね直線的な配置で延びている。図8Bは、図8Aの共鳴トラップの127Mhzにおける対応する例示の測定周波数減衰応答を示す説明図である。カバーは、例えばプラスチックとすることができ、螺旋の巻き戻しを防止する。
【0042】
図9Aは、カバー802内の螺旋巻線部(見えない)が、螺旋巻線部の長さのほぼ中間で約180度の角度で曲げられた状態の、図8Aの例示的な共鳴トラップ800を示す説明図である。図9Bは、折り曲げられたトラップの約127Mhzにおける対応する測定周波数減衰応答例を示す説明図である。このように、共鳴トラップの螺旋巻線部を曲げても、周波数遮断特性にはほとんど影響がない。より詳細には、螺旋巻線部304によって提供される自己遮蔽によって、共鳴トラップ300、800は、中心軸線510に沿った曲げに対して実質的に影響を受けないことになる。さらに、自己遮蔽によって、共鳴トラップ300、800は、中心軸線510を中心とした捻りに対しても実質的に影響を受けないことになる。さらに、トラップ800内に剛性の高い固体コア材料がないこと、およびトラップ800を囲む剛性の高いファラデーケージがないことで、周波数減衰を変えることなくトラップ800を折り返す(折り畳む)ことができるように、トラップの巻きの柔軟性が可能になる。
【0043】
図10Aは、図8Aの共鳴トラップ800とそれぞれ同一の2つの例示的な共鳴トラップ800a、800bを横に並べて(サイドバイサイド)配置した状態を示す説明図である。図10Bは、2つのサイドバイサイドのトラップ800a、800bの127Mhzにおける対応する例示的な測定周波数減衰応答を示す例示的な図面である。弾力性トラップ800a,800bの生来の自己遮蔽性によって、それらのいずれかの周波数減衰をシフトさせることなく、それらを互いに近接して配置することが可能であることが理解されよう。螺旋構造304の自己遮蔽によって、共鳴トラップは外部の磁場や負荷の変化に対して鈍感になる。
【0044】
図11Aは、3つの螺旋巻線セグメント1108a、1108b、1108cを生成するべく折り返され、編み込まれ(braided)た伝送線路を備えている例示的な共鳴トラップ1100を示す例示的な側面図である。図11Bは、3つの螺旋巻線セグメント1108a、1108b、1108cの折り返しおよび編組の表現を示す、共鳴トラップ1100の簡略化されたレイアウト概略図である。共鳴トラップ1100は、第2セグメント1108bと第3セグメント1108cとの間に第1折返し部1120aを備えており、第3セグメント1108cと第1セグメント1108aとの間に第2折返し部1120bを備えている。図面を簡略化するべく、第2セグメント1108bは、直線で示されている。図11Cは、共鳴トラップ1100の例示的な電気的模式図である。第1コンデンサ1106aは、第2セグメント1108bと、第1セグメント1108aと第3セグメント1108cとの間の接合部1120bとの間に結合される。第2コンデンサ1106bは、第1セグメント1108aと、第2セグメント1108bと第3セグメント1108cとの間の接合部1120aとの間に結合される。図11Dは、例示的な共鳴トラップ1100について、75MHzおよび160MHzにおける対応する例示的な周波数減衰応答を示す説明図である。トラップ回路内に3つ以上の螺旋巻線セグメントを巻くことができ、追加の減衰応答を追加するべく対応するコンデンサ回路を設けることができることが理解されるであろう。しかし、より多くのセグメントの追加は、剛性を増加させ、トラップの柔軟性を低下させる。容量とインダクタンスは、トラップの各サブセクションを単一の周波数に調整するべく、それぞれのサブセクションで選択することもでき、コモンモード電流に対する抵抗の追加ポイントを提供する。
【0045】
図12Aは、例示的なプリント回路基板(PCB)(「PCBトラップ」)共鳴トラップ回路1200の斜視図である。図12Bは、螺旋巻線部1204のそれぞれの第1および第2螺旋セグメント1208A、1208Bを形成するように配置された、例えば高分子材料やセラミック材料などの誘電体などの基板に埋め込まれた複数の積層された平坦な導体層を示す、例示的なプリント回路基板PCBトラップ1200の側断面図である。プリント回路基板PCBトラップの柔軟性は、基板層の柔軟性に直接関係する。例示的なプリント回路基板PCBトラップが柔軟性のあるフィルム、例えばポリイミドフィルム上に印刷される場合、プリント回路基板PCBトラップは生来的に柔軟性を有しているであろうが、例示的なプリント回路基板PCBトラップが柔軟性のないフィルム、例えばXPC上に印刷される場合、プリント回路基板PCBトラップは柔軟性を有さないであろう。図12Cは、図12Bの個々の積層された導体層を横に並べて(サイドバイサイド)図示した6つの別々の断面図を示す説明図である。例示のプリント回路基板PCBトラップ1200は、第1~第6導体層1~6を備えている。第1導体層1はプリント回路基板PCBトラップの上部にあり、第6導体層6はプリント回路基板PCBの底部にある。第1~第6基板層1~6のそれぞれは、プリント回路基板PCBトラップの別の層に印刷され、プリント回路基板PCBの異なる層を一緒に電気的接続するべくビアが使用される。例えば、頂部、底部、および垂直といった方向性の言及は、便宜上使用されているものであり、限定することを意図していない。他の例示的なプリント回路基板PCBトラップ(図示せず)は、例えば、異なる数の層を備えていることができる。プリント回路基板PCBトラップは、例えば、フレキシブル回路基板から構成されたストリップ線路、またはマイクロストリップもしくは他のマイクロストリップ線路を備えていることができることが理解されるであろう。
【0046】
図12Aを参照すると、プリント回路基板PCBトラップ1200の上部導体層1は、第1および第2信号パッド1222,1224を備えており、第1および第2接地パッド1226,1228を備えている。なお、コンデンサ1230は図示していない。図12Bを参照すると、図3の共鳴トラップ300の307aに類似する第1螺旋セグメント1208Aの第1ベース部1207Aは、第1信号パッド1222および第1接地パッド1226の位置と、図3の共鳴トラップ300の折返し部320に類似する頂点部1220との間に延びている。図3の共鳴トラップ300の307bに類似する第2螺旋状セグメント1208Bの第2ベース部1207Bは、第2信号パッド1224および第2接地パッド1228の位置と、頂点部1220との間に延びる。第1および第2螺旋セグメント1208A、1208Bは、例えば、電流が第1および第2螺旋セグメント1208A、1208Bの一方を上り、他方を下りることができるように、頂点部1220を通って延びる連続的な電気回路を形成する。動作時には、第1および第2螺旋セグメント1208A,1208Bは、図3の共鳴トラップ300と同じ自己遮蔽機構によって、外部磁場から互いに遮蔽する。
【0047】
図12B図12Cを参照すると、螺旋巻線セグメント1208A,1208Bは3つの導電性トレースを備えており、これらはプリント回路基板PCB上の層同士の間を通過して螺旋状の捻れ(ヘリカルツイスト)を作る。一例として第1螺旋巻線セグメント1208Aを参照すると、差動信号は、信号および接地パッド入力、それぞれ1222および1226でトラップに渡される。パッド1222に渡された信号は、ビアを介して第2層2に導かれ、経路1208Aに沿って、第2層2と第5層5の間を通過して、頂点部1220に至る。パッド1226を介してプリント回路基板PCB上に渡された接地基準は、直接に第1層1上のパス1208Aに接続され、ビアによって第3層3上のパス1208Aに接続される。その後、接地トレースは1208Aに沿って、第1層1と第3層3、第4層4と第6層6の間を行き来しながら、頂点部1220まで移動する。例示の第1導体層1および第3導体層3は、例示の第2導体層2よりも幅が広く、図12Bの垂直方向に積層された構成では、信号導体層2は、接地導体層1および接地導体層3の間に位置する信号導体トレースとして機能し、これらの導体層は共に、信号を取り囲む接地プレーンとして機能する。同様に、例示の導体層4および6は接地として作用し、例示の導体層5は信号導体トレースとして作用する。例示の第4導体層4および第6導体層6は、例示の第5導体層5よりも再び幅が広く、図12Bの積層構成では、信号導体層5は、接地導体層4および接地導体層6の間に位置する。
【0048】
基板材料に形成されたそれぞれの導体ビアは、導体層2および5の対応する位置同士を電気的結合する。また、誘電体材料に形成されたそれぞれの導体ビアは、外部接地導体層1と6の対応する位置同士を電気的結合する。また、誘電体材料に形成されたそれぞれの導体ビアは、等価な接地層1と3、4と6の間の対応する位置同士を電気的結合するように配置することができる(図示せず)。
【0049】
プリント回路基板PCBトラップ内の電流は、図5Cの共鳴トラップ300で示されているのと同様に、プリント回路基板PCBトラップ1200内の導体層に沿って最短経路をとる。接地導体層3および4は、プリント回路基板PCBトラップ内で互いに最も近い内向きの接地層であり、したがって、最大の電流の流れは、接地導体層3および4内にある可能性が高い。これは、例えば、図3の同軸ケーブル共鳴トラップ300の第1および第2螺旋巻線セグメント308a,308bの内向き部分で電流の流れが大きくなることと同様である。接地導体層1および6は、互いに最も離れた外向きの層であるため、最も少ない電流の流れは、接地導体層1および6内にあると考えられる。これは、例えば、図3の同軸ケーブル共鳴トラップ300の第1および第2螺旋巻線セグメント308a,308bの外向き部分での電流の流れが少ないことと同様である。
【0050】
接地層1は、第1接地パッド1226に電気的結合されている。それぞれのビアは、第2接地パッド1228を接地層6に結合する。それぞれのビアは、第1信号パッド1222を信号導体層2に電気的結合する。それぞれのビアは、第2信号パッド1224を信号導体層5に電気的結合する。コンデンサ1230の第1端子は、接地導体層1に電気的結合され、パッド1230のビアは、コンデンサの第2端子を接地導体層6に電気的結合する。
【0051】
図13は、信号導体層2と信号導体層4との間のプリント回路基板PCBトラップ1200内を上下左右に流れる例示的な信号電流を示す模式図である。例示的な電流1340は、第1層1のパッド1222を介してプリント回路基板PCBに流入し、ビアを通って第2層2に渡される。次に電流は、信号導体セグメント1251に沿って第2層2を横切り、ビア1351を通って第5層5の信号導体セグメント1252に流れる。次に電流1340は、信号導体セグメント1252に沿って第5層5を横切り、ビア1352を通って第2層2の信号導体セグメント1253に流れる。次の電流1340は、第2層2の信号導体セグメント1253に沿って流れ、ビア1353を通って第5層5の信号導体セグメント1254に至る。次の電流1340は、第5層5を横切る信号導体セグメント1254に沿って流れ、ビア1354を通って第2層2の信号導体セグメント1255に流れる。ビア1354は、概して、図3の螺旋巻線300の頂点にある折返し領域320に対応していることに留意されたい。次に電流1340は、信号導体セグメント1255に沿って第2層2を横切り、ビア1355を通って第5層5の信号導体セグメント1256に流れる。次の電流1340は、第5層5を横切る信号導体セグメント1256に沿って流れ、ビア1356を通って第2層2の信号導体セグメント1257に流れる。次の電流1340は、第2層2を横切る信号導体セグメント1257に沿って流れ、ビア1357を通って第5層5の信号導体セグメント1258に至る。その後、信号はビアを通って第1層1のパッド1224に戻される。例示的な導体セグメント1251、1252、1253および1254は、第1螺旋セグメント1208Aの構成要素である。例示の導体セグメント1255、1256、1257、1258は、第2螺旋セグメント1208Bの構成要素である。図13のカラー版では、第1螺旋セグメント1208A内の電流経路部分1340が白で色分けされ、第2螺旋セグメント1208B内の電流経路部分1340が青で色分けされている。このように、プリント回路基板PCBトラップ1200の基板材料内で電流の流れが螺旋経路を辿るようにするための、基板層2における信号導体セグメント1251、1253、1255、および1257の例示的な配置と、基板層5における信号導体1252、1254、1256、および1258の配置と、ビア1351~1357によるセグメントの結合とは、図3の共鳴トラップ300内の螺旋状の電流の流れに類似している。当業者であれば、接地導体層1、3、4、6は、同様に、プリント回路基板PCBトラップ1200の基板材料内の螺旋状の接地導体経路に従うセグメントに、導体セグメントを挟んで配置されていることを理解するであろう。
【0052】
例示の共鳴トラップ回路300、1100、1200は、幅広い用途がある。デジタルまたはアナログの電力制御信号を伝送する電力線路は、磁場を介して延びることができる。例示の共鳴トラップ回路は、例えば、磁界の周波数で信号を減衰させることで、磁界の存在下で電力線路がアンテナとして機能することを防止するべく使用することができる。共鳴トラップは、本質的に、電力線路を、磁界の存在下で共鳴しないより短いセグメントに切り刻む。共鳴トラップ回路は、例えば、携帯電話、RFブロードバンド、ノートパソコンなどの他のRFアプリケーションにも使用できる。
【0053】
[様々な例]
共鳴トラップの実施例を挙げることができる。
実施例1は共鳴トラップ回路を備えており、共鳴トラップ回路は、互いに螺旋状に捻られた第1螺旋巻線セグメントと第2螺旋巻線セグメントとを備えている螺旋巻線部を備えているように配置された導体線路と、第1螺旋巻線セグメントと第2螺旋巻線セグメントとの間に容量を提供するように配置されたコンデンサと、を備えている。
【0054】
実施例2は、螺旋巻線部の柔軟性(フレキシビリティ)は、導体線路の柔軟性に比例する、実施例1の主題を備えていることができる。
実施例3は、共鳴トラップは周波数依存の抵抗を有しており、螺旋巻線部は、第1および第2螺旋巻線セグメントから等距離にあるとともに螺旋巻線部内で長手方向に延びる対称軸線を備えており、螺旋巻線部は、周波数減衰応答を実質的に変化させることなく、対称軸線に沿って曲がることができる、実施例1の主題を備えていることができる。
【0055】
実施例4は、周波数減衰応答を実質的に変化させることなく、対称軸線に沿って螺旋巻線部を最大180度まで曲げることができる、実施例3の主題を備えていることができる。
【0056】
実施例5は、共鳴トラップ回路は周波数減衰応答を有しており、螺旋巻線部は、第1および第2螺旋巻線セグメントから等距離にあるとともに螺旋巻線部内で長手方向に延びる対称軸線を備えており、螺旋巻線部は、周波数減衰応答を実質的に変化させることなく、対称軸線の周りに変形することができる、実施例1の主題を備えていることができる。
【0057】
実施例6は、螺旋巻線部は、周波数減衰応答を実質的に変化させることなく、対称軸線の周りに360度まで変形可能であるように、実施例3の主題を備えていることができる。
【0058】
実施例7は、螺旋巻線部の厚さは導体線路の厚さに比例する、実施例1の主題を備えていることができる。
実施例8は、螺旋巻線部の厚さは、螺旋巻線部の巻線セグメントの数に比例する、実施例1の主題を備えていることができる。
【0059】
実施例9は、螺旋巻線部は、第1螺旋巻線セグメントと第2螺旋巻線セグメントとの接合部を区画する折返し部を備えているように配置されている、実施例1の主題を備えていることができる。
【0060】
実施例10は、螺旋巻線部のインダクタンスを調整するべく、折返し部の一部に堆積された導体材料をさらに有している、実施例1の主題を備えていることができる。
実施例11は、導体線路セグメントは、第1螺旋巻線セグメントと第2螺旋巻線セグメントとの接合部に180度の折返し(折り目)を有している折返し部を備えているように配置されている、実施例1の主題を備えていることができる。
【0061】
実施例12は、螺旋巻線部は、第1螺旋巻線セグメントと第2螺旋巻線セグメントとの接合部に折返し部を備えており、第1螺旋巻線セグメントは第1ベース部を備えているとともに、第1ベース部と折返し部との間に延在しており、第2螺旋巻線セグメントは第2ベース部を備えているとともに、第2ベース部と折返し部との間に延在している、実施例1の主題を備えていることができる。
【0062】
実施例13は、コンデンサは、第1螺旋巻線セグメントと第2螺旋巻線セグメントとの間に自己容量を備えている、実施例1の主題を備えていることができる。
実施例14は、コンデンサは、第1ベース部と第2ベース部との間に電気的結合された少なくとも1つの外部コンデンサを備えている、実施例1の主題を備えていることができる。
【0063】
実施例15は、第1螺旋巻線セグメントは、1つまたは複数のそれぞれの第1内向き表面部を備えており、第2螺旋巻線セグメントは、1つまたは複数のそれぞれの第2内向き表面部を備えており、1つまたは複数の第1内向き表面部は、1つまたは複数の第2内向き表面部に面している、実施例1の主題を備えていることができる。
【0064】
実施例16は、第1螺旋巻線セグメントおよび第2螺旋巻線セグメントの対向する対向面同士は、螺旋巻線部内の電流流れによって引き起こされる磁界および電界を自己シールド(自己遮蔽)するべく螺旋巻線部内に配置されている、実施例1の主題を備えていることができる。
【0065】
実施例17は、導体線路は伝送線路を備えており、螺旋巻線部は伝送線路の連続部を備えている、実施例1の主題を備えていることができる。
実施例18は、導体線路は伝送線路を備えており、伝送線路は第1導体、第2導体、およびそれらの間にある誘電体材料を備えており、コンデンサは少なくとも1つの外部コンデンサを備えており、少なくとも1つの外部コンデンサは、第1螺旋巻線セグメントにおける第2導体の一部と、第2螺旋巻線セグメントにおける第2導体の一部との間に結合されている、実施例1の主題を備えていることができる。
【0066】
実施例19は、導体線路は同軸ケーブルを備えており、同軸ケーブルは外部導体と内部導体とそれらの間の誘電体材料とを備えており、コンデンサは少なくとも1つの外部コンデンサを備えており、少なくとも1つの外部コンデンサは、第1螺旋巻線セグメントにおける外部導体の一部と、第2螺旋巻線セグメントにおける外部導体の一部との間に結合されている、請求項1に記載の主題を備えていることができる。
【0067】
実施例20は、導体線路は伝送線路を備えており、伝送線路は誘電体によって分離された少なくとも2つの導体を備えている、実施例1の主題を備えていることができる。
実施例21は、コンデンサは、第1螺旋巻線セグメントと第2螺旋巻線セグメントとの間に結合された少なくとも1つの外部コンデンサを備えており、導体線路は伝送線路を備えており、伝送線路は誘電体によって分離された少なくとも2つの導体を備えており、少なくとも2つの導体のうちの少なくとも1つの部分は、少なくとも1つのコンデンサに結合されており、少なくとも2つの導体のうちの少なくとも1つの他の部分は、少なくとも1つのコンデンサに結合されていない、実施例1の主題を備えていることができる。
【0068】
実施例22は、導体線路は伝送線路を備えており、伝送線路は誘電体によって分離された少なくとも2つの導体を備えており、少なくとも2つの導体のうちの少なくとも1つの部分は、差動信号線路として機能しており、少なくとも2つの導体のうちの少なくとも1つの他の部分は、差動信号線路の電位基準として機能する、実施例1の主題を備えていることができる。
【0069】
実施例23は、コンデンサは、第1螺旋巻線セグメントと第2螺旋巻線セグメントとの間に結合された少なくとも1つの外部コンデンサを備えており、導体線路は伝送線路(トランスミッションライン)を備えており、伝送線路は誘電体によって分離された少なくとも2つの導体を備えており、伝送線路は差動線路(ディファレンシャルライン)と接地シールドとを備えており、少なくとも1つのコンデンサは、第1螺旋巻線セグメントにおける接地シールドの一部と、第2螺旋巻線セグメントにおける接地シールドの一部との間に結合されている、実施例1の主題を備えていることができる。
【0070】
実施例24は、少なくとも1つのコンデンサは複数のコンデンサ素子を備えている、実施例1の主題を備えていることができる。
実施例25は、少なくとも1つのコンデンサは、第1螺旋巻線セグメントと第2螺旋巻線セグメントとの間に分布容量を備えている、実施例1の主題を備えていることができる。
【0071】
実施例26は、導体線路は同軸ケーブルを備えており、同軸ケーブルは外部導体と内部導体とそれらの間の誘電体材料とを備えており、少なくとも1つのコンデンサは、同軸ケーブルの2つ以上のシールドのうちの1つによって供給される分布容量を備えている、実施例1の主題を備えていることができる。
【0072】
実施例27は、コンデンサは、第1螺旋巻線セグメントと第2螺旋巻線セグメントとの間に結合された少なくとも1つの外部コンデンサを備えており、少なくとも1つのコンデンサは、誘電体層の反対側同士に第1および第2導体層を備えている誘電体層を備えており、第1導体層は第1螺旋巻線セグメントに機械的接触および/または電気的接触し、第2螺旋巻線セグメントは第2螺旋巻線セグメントに機械的接触および/または電気的接触するように配置されている、実施例1の主題を備えていることができる。
【0073】
実施例28は、誘電体材料はフレキシブル誘電体材料を備えている、実施例27の主題を備えていることができる。
実施例29は、さらにフレキシブルカバーを備えている実施例1の主題を備えていることができる。フレキシブルカバーは、螺旋巻線部の少なくとも一部を取り囲むとともに、螺旋巻線部の巻き戻しを防止する。
【0074】
実施例30は、導体線路は多層プリント回路を備えている、実施例1の主題を備えていることができる。
実施例31は、多層プリント回路は、層状誘電体基板と、層状誘電体基板内の異なる層に配置された信号導体および接地導体に結合された導体トレースとを備えており、信号導体線路および接地導体線路はともに基板内の平行な螺旋経路を辿る、実施例30の主題を備えていることができる。
【0075】
実施例32は、共鳴トラップ回路はさらに、剛性またはフレキシブルな層状誘電体基板を備えており、導体線路は、基板内の異なる層に配置されるとともに基板内の螺旋経路を辿る第1および第2接地導体を備えており、導体線路はさらに、基板内の第1および第2接地導体の間に位置するとともに基板内の螺旋経路を辿る信号導体を備えている、実施例30の主題を備えていることができる。
【0076】
実施例33は、螺旋巻線部はさらに第3螺旋巻線セグメントを備えており、第1、第2、および第3螺旋巻線セグメントは一緒に捻られており、さらに第2螺旋巻線セグメントと、第1または第3螺旋巻線セグメントとの間に容量を備えている、実施例1の主題を備えていることができる。
【0077】
受信回路の実施例は、以下を備えていることができる。
実施例34は、磁気共鳴撮像システムで使用するための受信回路を備えていることができる。受信回路は、受信コイルと、受信コイルに結合された伝送線路と、第1共鳴トラップ回路と、を備えている。第1共鳴トラップ回路は、第1螺旋巻線部を備えているように配置された伝送線路の第1部分と、第1螺旋巻線部の一部を横切って容量を提供するように配置された第1コンデンサと、を備えている。
【0078】
実施例35は、第1コンデンサは、第1螺旋巻線部を横切る自己容量を備えている、実施例34の主題を備えていることができる。
実施例36は、第1コンデンサは、第1螺旋巻線部を横切って結合された少なくとも1つの外部コンデンサを備えている、実施例34の主題を備えていることができる。
【0079】
実施例37は、さらに2つ以上の共鳴トラップ回路を備えている実施例34の主題を備えていることができる。それぞれの共鳴トラップ回路は、第2螺旋巻線部を備えているように配置された伝送線路のそれぞれの第2部分と、第2螺旋巻線部の一部を横切って容量を提供するように配置されたそれぞれの第2コンデンサと、を備えている。
【0080】
実施例38は、第1共鳴トラップおよびそれぞれの第2共鳴トラップは整合周波数減衰を有しており、第1共鳴トラップ回路およびそれぞれの第2共鳴トラップ回路は、共鳴周波数の1/4波長以下の間隔で互いに離間している、実施例37の主題を備えていることができる。
【0081】
実施例39は、第1およびそれぞれの第2共鳴トラップは異なる周波数を減衰させる、実施例37の主題を備えていることができる。
実施例40は、第1およびそれぞれの第2共鳴トラップ回路は、並んで配置されている、実施例35の主題を備えていることができる。
【0082】
実施例41は、第1およびそれぞれの第2共鳴トラップ回路の少なくとも1つは、少なくとも180度折り返されている、実施例35の主題を備えていることができる。
実施例42は、受信コイルはフレキシブル材料で形成されている、実施例34の主題を備えていることができる。
【0083】
受信回路アレイパッドの実施例を備えていることができる。
実施例43は、磁気共鳴撮像システムで使用するための受信回路アレイパッドを備えていることができ、受信回路アレイパッドは、各受信コイルが別の受信コイルの少なくとも一部に重なるように配置された複数の受信コイルと、それぞれが異なる受信コイルに結合された複数の伝送線路と、を備えている。それぞれの伝送線路は、それぞれの第1共鳴トラップ回路を提供するように配置されている。それぞれの第1共鳴トラップ回路は、それぞれの第1螺旋巻線部を備えているように配置されている、それぞれの伝送線路のそれぞれの第1部分と、それぞれの第1螺旋巻線部の一部を横切って容量を提供するように配置されたそれぞれの第1コンデンサと、を備えている。
【0084】
実施例44は、それぞれの第1コンデンサは、それぞれの第1螺旋巻線部を横切る自己容量(セルフキャパシタンス)を備えている、実施例43の主題を備えていることができる。
【0085】
実施例45は、それぞれの第1コンデンサは、それぞれの第1螺旋巻線部を横切って結合されたそれぞれの少なくとも1つの外部コンデンサを備えている、実施例43の主題を備えていることができる。
【0086】
実施例46は、それぞれの伝送線路は、それぞれの第2共鳴トラップ回路を提供するように配置されており、それぞれの第2共鳴トラップ回路は、それぞれの第2螺旋巻線部を備えているように配置された伝送線路のそれぞれの第2部分と、それぞれの第2螺旋巻線部の一部を横切って容量を提供するように配置されたそれぞれの第2コンデンサとを備えている、実施例43の主題を備えていることができる。
【0087】
実施例47は、それぞれの伝送線路によって形成されたそれぞれの第1および第2共鳴トラップはそれぞれ異なる周波数を減衰させ、それぞれの伝送線路によって形成されたそれぞれの第1および第2共鳴トラップ回路は、共鳴周波数の1/4波長以下で互いに離間している、実施例46の主題を備えていることができる。
【0088】
実施例48は、受信コイルはフレキシブル材料で形成されている、実施例43の主題を備えていることができる。
実施例49はさらに、フレキシブル材料で形成されて複数の受信コイルを囲むハウジングを備えている、実施例44の主題を備えていることができる。
【0089】
製造方法の実施例は、以下を備えていることができる。
実施例50は、螺旋巻線部を形成するべく伝送線路の一部を捻る工程であって、螺旋巻線部は、一緒に螺旋状に捻られた第1螺旋巻線セグメントと第2螺旋巻線セグメントとを備えているとともに、第1螺旋巻線セグメントと第2螺旋巻線セグメントとの接合部に折返し部を備えている、捻る工程と、第1螺旋巻線セグメントと第2螺旋巻線セグメントとの間に少なくとも1つのコンデンサを結合する工程とを備えている、共鳴トラップ回路を製造する方法を備えていることができる。
【0090】
実施例51は、結合(カップリング)は、それぞれの第1および第2螺旋巻線セグメントにおける伝送線路のそれぞれの接地シールド部同士の間にコンデンサを結合する工程を備えている、実施例50の主題を備えていることができる。
【0091】
実施例52は、結合されたコンデンサ素子は、フレキシブル導電性コーティングによって2つの面を覆われたフレキシブル誘電体シートで作られており、フレキシブルコンデンサ素子は、コンデンサを短くせずに共鳴トラップ回路のプロファイルが低減されるように、伝送線路の螺旋状の捻れの周りにスクロール状に巻き付けられている、実施例50の主題を備えていることができる。
【0092】
実施例53は、コンデンサ素子のスクロール状の巻き付けをきつくしたり緩めたりすることで、コンデンサ素子の2次インダクタンスおよび容量を調整する、実施例52の主題を備えていることができる。
【0093】
実施例54は、螺旋巻線部のインダクタンスを調整する工程をさらに備えている、実施例50の主題を備えていることができる。
実施例55は、螺旋巻線部のインダクタンスを調整する工程は、折返し部の導体の量を調整する工程を備えている、実施例54の主題を備えていることができる。
【0094】
実施例56は、螺旋巻線部のインダクタンスを調整する工程は、螺旋巻線部の半径を調整する工程を備えている、実施例54の主題を備えていることができる。
実施例57は、螺旋巻線部のインダクタンスを調整する工程は、螺旋巻線部の周りの導電シールドの量を調整する工程を備えている、実施例54の主題を備えていることができる。
【0095】
実施例58は、螺旋巻線部のインダクタンスを調整する工程は、コンデンサが螺旋巻線部に結合される位置を調整する工程を備えている、実施例54の主題を備えていることができる。
【0096】
実施例59は、螺旋巻線部の周りにフレキシブルカバーを配置する工程をさらに備えている、実施例50の主題を備えていることができる。
実施例60は、伝送線路の長さを螺旋巻線部に通すことで、螺旋の追加脚部を形成する、実施例50の主題を備えていることができる。
【0097】
実施例61は、螺旋の追加脚部を形成する伝送線路は、螺旋巻線部の最初の2つの脚部のうちの1つを形成する伝送線路に電気的連続している、実施例60の主題を備えていることができる。
【0098】
実施例62は、伝送線路は、2つ以上の部分を備えている螺旋巻線部に追加される、実施例60の主題を備えていることができる。
実施例63は、螺旋の追加脚部の接地シールドと、元の螺旋巻線部の1つまたは複数との間にコンデンサが結合されている、実施例60の主題を備えていることができる。
【0099】
以上の説明は、当業者が共鳴トラップを作成して使用できるように提示したものである。実施例に対する様々な変更は、当業者には容易に明らかになるであろうし、本明細書で定義された一般的な原理は、本発明の精神と範囲から逸脱することなく、他の実施例や用途に適用することができる。先の説明では、説明のために多数の詳細が記載されている。しかし、当業者であれば、本開示の実施例は、これらの具体的な詳細を使用せずに実施され得ることを理解するであろう。他の例では、不必要な詳細で本発明の説明を不明瞭にしないために、周知のプロセスをブロック図の形で示している。同一の参照番号は、異なる図面における同一または類似のアイテムの異なるビューを表すべく、いくつかの場所で使用されている。このように、実施形態および実施例に関する前述の説明および図面は、本発明の原理を説明するものに過ぎない。したがって、添付の特許請求の範囲に定義されている本発明の精神および範囲から逸脱することなく、当業者が実施形態に様々な変更を加えることができることが理解されるであろう。
図1A
図1B
図2
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図5C
図6A
図6B
図6C
図7A
図7B
図8A
図8B
図9A
図9B
図10A
図10B
図11A
図11B
図11C
図11D
図12A
図12B
図12C
図13