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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-26
(45)【発行日】2024-04-03
(54)【発明の名称】情報処理装置
(51)【国際特許分類】
   G08G 5/02 20060101AFI20240327BHJP
   B64C 39/02 20060101ALI20240327BHJP
   B64D 47/08 20060101ALI20240327BHJP
   B64D 45/04 20060101ALI20240327BHJP
【FI】
G08G5/02 A
B64C39/02
B64D47/08
B64D45/04 Z
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021573081
(86)(22)【出願日】2021-01-13
(86)【国際出願番号】 JP2021000781
(87)【国際公開番号】W WO2021149546
(87)【国際公開日】2021-07-29
【審査請求日】2022-06-30
(31)【優先権主張番号】P 2020007667
(32)【優先日】2020-01-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】392026693
【氏名又は名称】株式会社NTTドコモ
(74)【代理人】
【識別番号】110000752
【氏名又は名称】弁理士法人朝日特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 誠
(72)【発明者】
【氏名】鷹見 忠雄
(72)【発明者】
【氏名】河上 寛
(72)【発明者】
【氏名】新畑 香緒莉
【審査官】武内 俊之
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/060414(WO,A1)
【文献】特開2019-196150(JP,A)
【文献】特許第6293369(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 5/02
B64C 39/02
B64D 47/08
B64D 45/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
飛行体に設けられたステレオカメラが撮影した画像を取得する取得部と、
取得された前記画像の各画素が示す地点までの前記ステレオカメラからの距離を算出する算出部と、
取得された前記画像から障害物を検出するとともに当該障害物の属性を決定する検出部と、
予め設定された地上エリアごとに、当該地上エリアにおいて該検出された障害物の属性に応じた重みづけを用いて表される当該地上エリアの危険度が所定レベル以下である場合に、算出された前記距離に基づいて前記飛行体の当該地上エリアへの着陸を指示する着陸指示部と
前記飛行体が着陸に失敗した場合の損害度を前記地上エリアごとに判定する判定部と
を備え、
前記着陸指示部は、該判定された損害度に更に基づいて、前記飛行体を着陸させるべき一の地上エリアを決定する、
情報処理装置。
【請求項2】
前記検出部は、前記検出された障害物の形状と予め登録された形状との類似度に基づいて、障害物か否かを判定する
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記障害物が検出された場合に当該障害物の別の方向からの撮影を指示する撮影指示部を備え、
前記検出部は、前記撮影の指示により撮影された画像を加えて、前記障害物を再度検出する
請求項1または2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記着陸指示部は、検出された前記障害物が前記撮影された画像内の所定の範囲に含まれない場合に着陸条件が満たされたと判断する
請求項1からのいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記着陸指示部は、検出された前記障害物が前記範囲に含まれていても、当該障害物が移動により前記飛行体の着陸前に前記範囲に含まれなくなる場合は前記着陸条件が満たされると判断する
請求項に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記着陸指示部は、前記飛行体の種類に応じて前記範囲を変化させる
請求項4又は5に記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記着陸指示部は、着陸地点の気象状況に応じて前記範囲を変化させる
請求項4から6のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飛行体を着陸させる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
飛行体を着陸させる技術として、特許文献1には、無人飛行機に搭載されているGPSにより着陸点近くまで飛行させたのちに着陸点に置かれたターゲットマークを撮像装置でとらえ、それを目指して着陸させる技術と、離着陸台のGPSが測定する位置情報とドローンの位置情報の差をゼロにするようにして着陸させる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-190362号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ドローンのような飛行体を着陸させる場合、着陸地点の近くに存在する障害物(人間、乗り物、建物等)に衝突すると、飛行体の破損はもちろん、障害物の破損(特に人間の場合は怪我)にも繋がる虞がある。
そこで、本発明は、飛行体の着陸時に障害物に衝突する可能性を低くすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明は、飛行体に設けられたステレオカメラが撮影した画像を取得する取得部と、取得された前記画像の各画素が示す地点までの前記ステレオカメラからの距離を算出する算出部と、取得された前記画像から障害物を検出する検出部と、前記障害物が検出されても当該障害物の位置が着陸条件を満たす場合には、算出された前記距離に基づく前記飛行体の着陸を指示する着陸指示部とを備える情報処理装置を提供する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、飛行体の着陸時に障害物に衝突する可能性を低くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1実施例に係るドローンのハードウェア構成の一例を表す図
図2】ドローンが実現する機能構成を表す図
図3】分割領域の一例を表す図
図4】重みテーブルの一例を表す図
図5】危険度テーブルの一例を表す図
図6】分割領域の配置と移動方向の関係の例を表す図
図7】損害度テーブルの一例を表す図
図8】判定された損害度の一例を表す図
図9】着陸処理における動作手順の一例を表す図
図10】第2実施例に係る着陸支援システムの全体構成の一例を表す図
図11】サーバ装置のハードウェア構成の一例を表す図
図12】実施例で実現される機能構成を表す図
図13】実施例の着陸処理における動作手順の一例を表す図
【発明を実施するための形態】
【0008】
[1]第1実施例
図1は第1実施例に係るドローン10のハードウェア構成の一例を表す。ドローン10は、物理的には、プロセッサ11と、メモリ12と、ストレージ13と、通信装置14と、飛行装置15と、センサ装置16と、ステレオカメラ17と、バス18などを含むコンピュータ装置として構成されてもよい。なお、以下の説明では、「装置」という文言は、回路、デバイス、ユニットなどに読み替えることができる。
【0009】
また、各装置は、1つ又は複数含まれていてもよいし、一部の装置が含まれていなくてもよい。プロセッサ11は、例えば、オペレーティングシステムを動作させてコンピュータ全体を制御する。プロセッサ11は、周辺装置とのインターフェース、制御装置、演算装置、レジスタなどを含む中央処理装置(CPU:Central Processing Unit)によって構成されてもよい。
【0010】
例えば、ベースバンド信号処理部等は、プロセッサ11によって実現されてもよい。また、プロセッサ11は、プログラム(プログラムコード)、ソフトウェアモジュール、データなどを、ストレージ13及び通信装置14の少なくとも一方からメモリ12に読み出し、読み出したプログラム等に従って各種の処理を実行する。プログラムとしては、上述の実施の形態において説明した動作の少なくとも一部をコンピュータに実行させるプログラムが用いられる。
【0011】
上述の各種処理は、1つのプロセッサ11によって実行される旨を説明してきたが、2以上のプロセッサ11により同時又は逐次に実行されてもよい。プロセッサ11は、1以上のチップによって実装されてもよい。なお、プログラムは、電気通信回線を介してネットワークから送信されても良い。メモリ12は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体である。
【0012】
メモリ12は、例えば、ROM(Read Only Memory)、EPROM(Erasable Programmable ROM)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable ROM)、RAM(Random Access Memory)などの少なくとも1つによって構成されてもよい。メモリ12は、レジスタ、キャッシュ、メインメモリ(主記憶装置)などと呼ばれてもよい。メモリ12は、本開示の一実施の形態に係る無線通信方法を実施するために実行可能なプログラム(プログラムコード)、ソフトウェアモジュールなどを保存することができる。
【0013】
ストレージ13は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体であり、例えば、CD-ROM(Compact Disc ROM)などの光ディスク、ハードディスクドライブ、フレキシブルディスク、光磁気ディスク(例えば、コンパクトディスク、デジタル多用途ディスク、Blu-ray(登録商標)ディスク)、スマートカード、フラッシュメモリ(例えば、カード、スティック、キードライブ)、フロッピー(登録商標)ディスク、磁気ストリップなどの少なくとも1つによって構成されてもよい。
【0014】
ストレージ13は、補助記憶装置と呼ばれてもよい。上述の記憶媒体は、例えば、メモリ12及びストレージ13の少なくとも一方を含むデータベース、サーバその他の適切な媒体であってもよい。通信装置14は、有線ネットワーク及び無線ネットワークの少なくとも一方を介してコンピュータ間の通信を行うためのハードウェア(送受信デバイス)である。
【0015】
例えば、上述の送受信アンテナ、アンプ部、送受信部、伝送路インターフェースなどは、通信装置14によって実現されてもよい。送受信部は、送信部と受信部とで、物理的に、または論理的に分離された実装がなされてもよい。また、プロセッサ11、メモリ12などの各装置は、情報を通信するためのバス18によって接続される。バス18は、単一のバスを用いて構成されてもよいし、装置間ごとに異なるバスを用いて構成されてもよい。
【0016】
飛行装置15は、モータ及びローター等を備え、自機を飛行させる装置である。飛行装置15は、空中において、あらゆる方向に自機を移動させたり、自機を静止(ホバリング)させたりすることができる。センサ装置16は、飛行制御に必要な情報を取得するセンサ群を有する装置である。センサ装置16は、例えば、自機の位置(緯度及び経度)を測定する位置センサを備える。
【0017】
また、センサ装置16は、自機が向いている方向(ドローンには自機の正面方向が定められており、定められた正面方向が向いている方向)を測定する方向センサと、自機の高度を測定する高度センサとを備える。また、センサ装置16は、自機の速度を測定する速度センサと、3軸の角速度及び3方向の加速度を測定する慣性計測センサ(IMU(Inertial Measurement Unit))とを備える。
【0018】
ステレオカメラ17は、複数のカメラを備え、それら複数のカメラにより複数の方向から対象物を撮影することで、対象物の奥行き方向の情報を記録できるようにしたカメラである。ステレオカメラ17は、本実施例では、2つのカメラを備える。各カメラは、レンズを含む光学系とイメージセンサとをそれぞれ備える。ステレオカメラ17は、自機の鉛直下方を撮影するように設けられている。
【0019】
また、上記の装置は、マイクロプロセッサ、デジタル信号プロセッサ(DSP:Digital Signal Processor)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、PLD(Programmable Logic Device)、FPGA(Field Programmable Gate Array)などのハードウェアを含んで構成されてもよい。また、上記の装置は、当該ハードウェアにより、各機能ブロックの一部又は全てが実現されてもよい。例えば、プロセッサ11は、当該ハードウェアの少なくとも1つを用いて実装されてもよい。
【0020】
ドローン10における各機能は、プロセッサ11、メモリ12などのハードウェア上に所定のソフトウェア(プログラム)を読み込ませることによって、プロセッサ11が演算を行い、通信装置14による通信を制御したり、メモリ12及びストレージ13におけるデータの読み出し及び書き込みの少なくとも一方を制御したりすることによって実現される。
【0021】
図2はドローン10が実現する機能構成を表す。ドローン10は、センサ取得部101と、距離算出部102と、危険度判定部103と、飛行指示部104と、飛行制御部105と、損害規模判定部106と、障害物検出部107と、撮影指示部108と、着陸指示部109とを備える。センサ取得部101は、飛行体である自機(ドローン10)に設けられたセンサの測定値を取得する。
【0022】
本実施例では、センサ取得部101は、イメージセンサの測定値として、自機に設けられたステレオカメラ17が撮影した自機の鉛直下方の画像を取得する。言い方を変えると、センサ取得部101は、ステレオカメラ17のイメージセンサが出力した自機の鉛直下方の画像を示す画素値をセンサの測定値として取得する。センサ取得部101は本発明の「取得部」の一例である。センサ取得部101は、取得した画像を距離算出部102に供給する。
【0023】
距離算出部102は、センサ取得部101により取得された画像の各画素が示す対象物が存在する地点までのステレオカメラ17からの距離(以下「画素毎の距離」と言う)を算出する。距離算出部102は本発明の「算出部」の一例である。ステレオカメラ17が撮影した画像は同一の地点を複数のアングルから撮影するため、各画素に写っている対象物が存在する地点までのステレオカメラ17からの距離が算出可能である。
【0024】
ここで、撮影された画像には、地面が写っているとは限らず、建築物、自然物、水面又は動物等のあらゆる物体が写っている可能性がある。本実施例では、ステレオカメラ17からの距離はドローン10からの距離と見做すことができるものとする。画素毎の距離の算出方法については、例えば特開平11-230745に記載されているような周知の技術が用いられればよい。
【0025】
距離算出部102は、画素毎の距離を算出すると、算出した画素毎の距離を示す距離情報を危険度判定部103に供給する。危険度判定部103は、センサ取得部101により取得された測定値に基づき、自機の鉛直下方にある地上領域を分割した複数の分割領域の各々の着陸の際の危険度を判定する。
【0026】
着陸の際の危険度とは、安全に着陸できない可能性の高さのことである。安全な着陸とは、何の破損も伴わない着陸のことである。つまり、危険度とは、例えば着陸の際に何らかの物体(人間やその他の動物を含む)と接触するまたは着陸時の姿勢が乱れる(その結果として転倒する場合を含む)ことにより、ドローン10自身が破損したり、ドローン10が接触した物体を破損(怪我を含む)させたりする可能性の高さを表す。
【0027】
図3は分割領域の一例を表す。危険度判定部103は、本実施例では、自機を上空から鉛直下方に見た場合に、自機を頂点とし且つ辺の長さが等しい4つの正方形の領域を分割領域B1、B2、B3、B4として用いる。危険度判定部103は、センサ取得部101により取得された測定値に基づき算出される、分割領域における着陸に適していない不適領域の割合に基づき危険度を判定する。
【0028】
不適領域は、例えば、商業地、住宅地、工業地及び公園のように人が集まるため落下時に人を怪我させてしまう可能性が他の領域に比べて高い領域である。また、不適領域は、森林、傾斜地、電柱及び車両等のように着陸しようとすると何らかの物体に接触したり転倒したりしてドローン10が破損する可能性が他の領域に比べて高い領域であってもよい。
【0029】
本実施例では、危険度判定部103は、まず、供給された距離情報が示す距離、すなわち、距離算出部102により算出された画素毎の距離から地上に存在する物体を認識する。地上には、建物、乗り物、人、動物、電柱、樹木、森林、斜面及び平地等の物体が存在する場合がある。危険度判定部103は、画像中の物体を表す部分に含まれる各画素と自機との距離と、自機の高度から、各画素が示す物体の地上からの高さを算出する。
【0030】
物体を表す各画素の高さが分かると、3次元空間におけるその物体の輪郭が表されることになる。危険度判定部103は、物体の種類毎に形状と大きさのパターンを記憶しておき、記憶したパターンとの類似度が閾値を超える場合にそのパターンに対応する物体であると認識する。危険度判定部103は、このようにして、センサ取得部101により取得された画素値から地上に存在する物体を認識する。
【0031】
そして、危険度判定部103は、認識した物体が占める領域の面積にその物体の属性に応じた重みを付けて算出される不適領域の割合に基づき危険度を判定する。危険度判定部103は、物体の属性と重みとを対応付けた重みテーブルを用いる。
図4は重みテーブルの一例を表す。図4の例では、「斜面」には「1.0」、「建物、電柱、樹木」には「1.5」、「乗り物、人、動物」には「2.0」というように、物体の属性と重みとが対応付けられている。
【0032】
危険度判定部103は、分割領域に存在する物体を認識すると、その物体の画素数にその物体の属性に応じた重みを乗じた値を認識した全ての物体について算出する。そして、危険度判定部103は、算出した値の合計値を分割領域全体の画素数で除した値を不適領域の割合として算出する。危険度判定部103は、例えば、不適領域の割合と危険度とを対応付けた危険度テーブルを用いて危険度を判定する。
【0033】
図5は危険度テーブルの一例を表す。図5の例では、「Th11未満」、「Th11以上Th12未満」及び「Th12以上」という不適領域の割合に、「危険Lv1」、「危険Lv2」及び「危険Lv3」という危険度が対応付けられている。Th11及びTh12は、不適領域の割合の閾値であり、例えば30%及び60%といった値である。危険度は、数値が大きいほど危険度が高いことを表す。危険度判定部103は、例えば不適領域の割合がTh11以上Th12未満の分割領域の危険度を危険Lv2と判定する。
【0034】
危険度判定部103は、各分割領域の危険度を判定すると、判定結果を飛行指示部104に供給する。飛行指示部104は、危険度判定部103により判定された危険度が予め定められた基準以上の分割領域の配置に応じた方向に自機(ドローン10)を移動させる指示を行う。
【0035】
飛行指示部104は、飛行制御部105に対して上記の指示を行う。飛行制御部105は、センサ装置16が測定する各種の値(位置、高度及び方向等)に基づいて、自機(ドローン10)の飛行を制御する。飛行制御部105は、飛行指示部104から移動の指示が行われると、指示された方向に自機を移動させる制御を行う。
【0036】
図6は分割領域の配置と移動方向の関係の例を表す。図6では、基準の危険度がLv3と定められているものとする。飛行指示部104は、図6(a)のように危険Lv3の分割領域が3つある場合は、残り1つの危険度が基準未満の分割領域の中心に向かう方向A1を移動方向として指示する。飛行指示部104は、本実施例では、方向A1にある分割領域B1の中心C1までの移動を指示する。
【0037】
飛行指示部104は、図6(b)のように危険Lv3の分割領域が並んで2つある場合は、残り2つの危険度が基準未満の分割領域同士の境目に向かう方向A2を移動方向として指示する。この場合、飛行指示部104は、本実施例では、方向A2にある分割領域B1及びB2の辺の中心C2までの移動を指示する。なお、飛行指示部104は、図6(a)の場合に分割領域B1の対角線上にある頂点C3までの移動を指示してもよい。
【0038】
また、図6(b)の場合に分割領域B1及びB2の辺の反対側の端C4までの移動を指示してもよい。ただし、以下の説明では、いずれも中心C1、C2に相当する位置までの移動が指示されるものとする。飛行指示部104は、図6(c)のように危険Lv3の分割領域が1つだけの場合は、その分割領域とドローン10を挟んで対向する分割領域の中心に向かう方向A3を移動方向として指示する。
【0039】
また、飛行指示部104は、図6(d)のように危険Lv3の分割領域が2つだけで且つ互いに隣接していない場合は、それら分割領域に隣接する2つの分割領域のいずれかの中心に向かう方向A4-1又は方向A4-2を移動方向として指示する。飛行指示部104は、方向A4-1又は方向A4-2のいずれかをランダムに選択してもよいし、該当する分割領域の危険度を比較して小さい方を選択してもよい。
【0040】
また、飛行指示部104は、2つの分割領域の危険度が同じであれば、不適領域の割合を比較して小さい方を選択してもよい。また、飛行指示部104は、危険Lv3の分割領域が並んで2つある場合は、残り2つの危険度が基準未満の分割領域同士の境目に向かう方向を移動方向として指示してもよいが、図6(e)のように残り2つの分割領域の危険度が基準未満であるがレベルが異なる場合であれば、より危険度の小さい分割領域の中心に向かう方向A5を移動方向として指示してもよい。
【0041】
ドローン10が飛行している地域によっては、4つの分割領域の全てが危険Lv3という場合も起こりうる。その場合、飛行指示部104は、次の2つの飛行指示を試みる。危険度判定部103により判定された危険度が第1基準未満となる分割領域がない場合、飛行指示部104は、まず、高度を上げてから再度画素値を取得するよう指示する。
【0042】
飛行指示部104は、具体的には、飛行制御部105に対して高度を上げる指示を行い、センサ取得部101に対して画素値の再取得を指示する。指示に従い高度を上げて画素値が取得されると、危険度判定部103は、高度を上げる前に比べて広い範囲を示すことになった分割領域の危険度を判定する。これにより、危険度が第1基準未満となる分割領域が存在する可能性が生じるので、より安全な着陸が可能な領域に移動してからの着陸を試みることができる。
【0043】
飛行指示部104は、危険度が第1基準未満となる分割領域が見つからない場合、上記の高度を上げる指示を繰り返し行ってもよい。ただし、決められた回数(例えば飛行禁止となる高度に達する回数)だけ指示を繰り返しても危険度が第1基準未満となる分割領域が見つからない場合は、飛行指示部104は、着陸が失敗したときの損害を考慮した移動の指示を行う。
【0044】
損害規模判定部106は、着陸が失敗したときの損害の大きさを示す損害度を複数の分割領域の各々について判定する。損害規模判定部106には、距離算出部102から画素毎の距離を示す距離情報が供給される。損害規模判定部106は、供給された距離情報が示す画素毎の距離から、例えば危険度判定部103と同じパターンを用いる方法で地上に存在する物体を認識する。損害規模判定部106は、認識した物体から、各分割領域の属性を特定する。
【0045】
損害規模判定部106は、例えば、樹木及び傾斜地が一定の割合以上含まれる分割領域は「山林」と特定する。また、損害規模判定部106は、作物及び農業用機械(トラクター等)が一定の割合以上含まれる分割領域は「農業地」と特定し、工場の設備(パイプライン及び倉庫等)が一定の割合以上含まれる分割領域は「工業地」と特定する。また、損害規模判定部106は、一戸建て及び集団住宅が一定の割合以上含まれる分割領域は「住宅地」と特定し、アーケード及び看板が一定の割合以上含まれる分割領域は「商業地」と特定する。
【0046】
なお、分割領域の属性の特定方法はこれに限らない。例えばセンサ取得部101が自機の位置を示す位置情報をセンサの測定値として取得し損害規模判定部106に供給する。
そして、損害規模判定部106が、地域毎の属性を示す地図情報を記憶しておき、供給された位置情報が示す位置の属性を特定する。このように、損害規模判定部106は、危険度判定部103等が用いるものとは異なるセンサの測定値を用いてもよい。
【0047】
画素毎の距離も測定値に基づき算出される値であるから、いずれの場合も、損害規模判定部106は、センサ取得部101により取得された測定値に基づき(位置情報のように直接的に基づく場合と画素毎の距離のように間接的に基づく場合を含む)、損害度を判定する。損害規模判定部106は、例えば、分割領域の属性と損害度とを対応付けた損害度テーブルを用いて損害度を判定する。
【0048】
図7は損害度テーブルの一例を表す。図7の例では、「山林、農業地」には「損害Lv1」、「工業地」には「損害Lv2」、「住宅地、商業地」には「損害Lv3」というように分割領域の属性と損害度とが対応付けられている。損害規模判定部106は、上記のとおり特定した分割領域の属性に損害度テーブルで対応付けられている損害度を、その分割領域の損害度として判定する。
【0049】
損害規模判定部106は、各分割領域について損害度を判定するとその判定結果を飛行指示部104に供給する。飛行指示部104は、危険度判定部103により判定された危険度が基準未満の分割領域がない場合、損害規模判定部106により判定された損害度が最も小さい分割領域の方向に自機を移動させて下降させる指示を行う。
【0050】
図8は判定された損害度の一例を表す。図8の例では、分割領域B1~B4の危険度が全てLv3であるが、損害度は分割領域B1がLv1、分割領域B3がLv2、分割領域B2、B4がLv3と判定されている。この場合、飛行指示部104は、最も損害度が小さい分割領域B1の中心に向かう方向A6を移動方向として指示する。このように損害度を考慮して移動方向を指示することで、ドローン10の着陸が万が一失敗してもそれによる損害を最小限に食い止めることができる。
【0051】
飛行指示部104は、危険度判定部103により判定された危険度が予め定められた基準未満の分割領域が自機(ドローン10)の移動する方向にある場合、所定の距離の下降を合わせて指示する。本実施例では、危険Lv2が第2基準として用いられるものとする。飛行指示部104は、図6(a)~(e)の例であれば、いずれも危険Lv1の分割領域に移動するので、所定の距離の下降も合わせて指示する。
【0052】
一方、図6(f)のように移動方向A6にある分割領域が危険Lv2である場合は、飛行指示部104は、下降を指示せずに、移動のみを指示する。飛行制御部105は、移動のみを指示された場合は、水平方向に移動するよう自機を制御し、移動及び下降を指示された場合は、斜め下方に移動するよう自機を制御する。なお、飛行制御部105は、後者の場合に水平方向に移動してから下降するよう自機を制御してもよい。
【0053】
飛行指示部104は、上述した移動及び下降の指示を繰り返し、自機(ドローン10)の高度が所定の高度未満になると、測距手段による測定結果に基づく着陸制御を行うよう飛行制御部105に指示する。測距手段とは、地上までの距離を測定する手段であり、本実施例では、距離算出部102が測距手段として用いられ、距離算出部102が算出する距離が測定結果として用いられる。
【0054】
距離算出部102は、画素毎の距離を示す距離情報を障害物検出部107にも供給する。障害物検出部107は、センサ取得部101により取得されたステレオカメラ17が撮影した画像から障害物を検出する。障害物検出部107は本発明の「検出部」の一例である。障害物とは、ドローン10の着陸を邪魔する物体のことであり、建築物、自然物及び動物(人間含む)等のいずれも該当する場合がある。
【0055】
障害物検出部107は、障害物を示す可能性がある画素について算出された距離が示す形状がその障害物として許容される範囲にある場合に障害物を検出する。距離が示す形状とは、危険度判定部103が物体を認識する際に用いた物体の輪郭と同じものである。障害物検出部107は、危険度判定部103と同様に、障害物の種類毎に形状と大きさのパターンを記憶しておく。
【0056】
そして、障害物検出部107は、記憶したパターンとの類似度が閾値を超える場合に形状が障害物として許容される範囲にあると判断し、そのパターンに対応する障害物として検出する。障害物検出部107は、障害物を検出すると、検出した障害物が写った画素を示す画素情報を撮影指示部108に供給する。撮影指示部108は、障害物検出部107により障害物が検出された場合にその障害物の別の方向からの撮影を指示する。撮影指示部108は本発明の「撮影指示部」の一例である。
【0057】
撮影指示部108は、供給された画素情報が示す画素の位置から検出された障害物の地上における位置を判断し、その位置を画角に含む範囲で自機を移動させるよう飛行制御部105に指示する。そして、撮影指示部108は、移動後にステレオカメラ17に対して撮影を指示することで、障害物の別の方向からの撮影を指示する。障害物検出部107は、撮影指示部108の撮影の指示により撮影された画像を加えて、障害物を再度検出する。
【0058】
以上のとおり再撮影及び再検出が行われることで、複数のアングルから撮影された障害物を検出することができ、一つの画像だけからの検出に比べて、障害物が示す空間中の領域をより正確に把握することができる。障害物検出部107は、こうして検出した障害物が写った画素を示す画素情報を着陸指示部109に供給する。着陸指示部109は、距離算出部102により算出された画素毎の距離に基づく自機(ドローン10)の着陸を飛行制御部105に対して指示する。着陸指示部109は本発明の「着陸指示部」の一例である。
【0059】
着陸指示部109は、着陸する方向に障害物がない場合であれば、そのまま高度を低下させて自機を着陸させる指示を行う。また、着陸指示部109は、着陸する方向に障害物が検出された場合であっても、その障害物の位置が着陸条件を満たす場合には、算出された画素毎の距離に基づく自機の着陸を飛行制御部105に対して指示する。着陸指示部109は、例えば、障害物検出部107により検出された障害物が撮影された画像の所定の範囲に含まれない場合に着陸条件が満たされたと判断する。
【0060】
所定の範囲とは、例えば、撮影される画像の中央から所定半径の円の形状をした範囲である。なお、範囲の形状は円に限らず、楕円、方形、四角形等のいずれでもよく、また、画像の中央からずれていてもよい。以下ではこれらの範囲のことを「着陸判断用の範囲」と言う。これにより、例えば撮影された画像の端の方に障害物が写っている場合であれば、着陸がされるようにすることができる。
【0061】
また、着陸指示部109は、障害物検出部107により検出された障害物が着陸判断用の範囲に含まれていても、その障害物が移動により自機の着陸前に着陸判断用の範囲に含まれなくなる場合は着陸条件が満たされると判断する。移動する障害物とは、例えば乗り物又は動物(人間を含む)等である。着陸が指示されると、飛行制御部105は、自機の高度を下げてゆき、地上又は地上の物体の上に着陸すると飛行制御を終了する。
【0062】
ドローン10は、上記の構成に基づいて、自機を着陸させる着陸処理を行う。
図9は着陸処理における動作手順の一例を表す。図9の動作手順は、例えば、ドローン10が計画された飛行経路を飛行することを契機に開始される。まず、ドローン10(センサ取得部101)は、イメージセンサの測定値として、ステレオカメラ17による自機の鉛直下方の撮影画像を取得する(ステップS11)。
【0063】
次に、ドローン10(距離算出部102)は、取得された撮影画像の各画素が示す地点までの距離を算出する(ステップS12)。続いて、ドローン10(危険度判定部103)は、算出された画素毎の距離に基づき、自機の鉛直下方にある複数の分割領域の各々の着陸の際の危険度を判定する(ステップS13)。次に、ドローン10(飛行指示部104)は、判定された危険度が第1基準以上の分割領域の配置に応じた方向及び高度に自機を移動させる指示を行う(ステップS14)。
【0064】
続いて、ドローン10は、所定の高度未満になったか否かを判断し(ステップS15)、なっていない(NO)と判断した場合はステップS11に戻って動作を継続し、所定の高度未満になった(YES)と判断した場合は次の動作手順に進む。まず、ドローン10(センサ取得部101)は、ステップS11と同様に自機の鉛直下方の撮影画像を取得する(ステップS21)。
【0065】
次に、ドローン10(距離算出部102)は、取得された撮影画像の各画素が示す地点までの距離を算出する(ステップS22)。続いて、ドローン10(障害物検出部107)は、算出された画素毎の距離に基づき、取得された撮影画像から障害物を検出する処理を行う(ステップS23)。ドローン10は、ステップS23で障害物が検出された(YES)場合は着陸条件を満たす否かを判断する(ステップS24)。
【0066】
ドローン10は、ステップS24で着陸条件を満たさない(NO)と判断した場合はステップS21に戻って動作を継続し、着陸条件を満たす(YES)と判断した場合は次の動作手順に進む。ステップS23で障害物が検出されなかった(NO)場合と、ステップS24で着陸条件が満たされた(YES)場合に、ドローン10(着陸指示部109)は、算出された画素毎の距離に基づく自機の着陸を飛行制御部105に対して指示し、着陸制御を開始させる(ステップS25)。
【0067】
本実施例では、上記のとおり、複数の分割領域の中でも他に比べて危険度が少ない分割領域、すなわち、飛行体が安全に着陸できる可能性が比較的高い場所を探索することができる。また、本実施例では、移動だけなく下降も指示されるので、安全な分割領域の範囲を徐々に小さく絞り込んでいくことができる。そして、こうして探索された分割領域まで移動してから着陸制御が行われることで、分割領域の危険度に関係なく着陸制御が行われる場合に比べて、飛行体を安全に着陸させることができる。
【0068】
また、上記のとおり測距手段による測定結果に基づく着陸制御が行われる場合、測定結果の精度が低いほど、望ましくない挙動(例えば必要以上に障害物を避ける移動等)が起こり得る。本実施例では、ドローン10が所定の高度未満まで下降してから着陸制御が行われるので、測定精度の低さを原因とした望ましくない挙動の発生を抑制することができる。また、本実施例では、着陸に適していない不適領域の割合に基づき危険度が判定される。これにより、不適領域の割合を考慮しない場合に比べて、より精度の高い危険度を判定することができる。
【0069】
また、本実施例では、ドローン10が、障害物を検出しても、着陸条件が満たされる場合には着陸制御を行う。これにより、飛行体の着陸時に障害物に衝突する可能性を低くしつつ、例えばわずかな障害物のためにいつまでも着陸できずにバッテリー切れを起こすといった事態を防ぐことができる。また、例えばステレオカメラ17で撮影した画像は立体視等に利用する場合があるが、そのように別の用途のために撮影した画像を利用して障害物を検出することができる。
【0070】
[2]第2実施例 本発明の第2実施例について、以下、第1実施例と異なる点を中心に説明する。第1実施例では、ドローン10自身が着陸に関する処理を全て行ったが、第2実施例では、ドローン10及びサーバ装置がそれらの処理を分担する。
図10は第2実施例に係る着陸支援システム1の全体構成の一例を表す。着陸支援システム1は、ドローン10のような飛行体の着陸を支援するシステムである。
【0071】
着陸支援システム1は、ネットワーク2と、ドローン10と、サーバ装置20とを備える。ネットワーク2は、移動体通信網及びインターネット等を含む通信システムであり、自システムにアクセスする装置同士のデータのやり取りを中継する。ネットワーク2には、サーバ装置20が有線通信で(無線通信でもよい)、ドローン10が無線通信でアクセスしている。
【0072】
図11はサーバ装置20のハードウェア構成の一例を表す。サーバ装置20は、物理的には、プロセッサ21と、メモリ22と、ストレージ23と、通信装置24と、バス25などを含むコンピュータ装置として構成されてもよい。プロセッサ21等の図1に同名のハードウェアが表されているものは、性能及び仕様等の違いはあるが図1と同種のハードウェアである。
【0073】
図12は本実施例で実現される機能構成を表す。ドローン10は、飛行制御部105と、画像撮影部110とを備える。サーバ装置20は、センサ取得部101と、距離算出部102と、危険度判定部103と、飛行指示部104と、損害規模判定部106と、障害物検出部107と、撮影指示部108と、着陸指示部109とを備える。画像撮影部110は、ステレオカメラ17を備えて自機の鉛直下方の画像を撮影する。
【0074】
画像撮影部110は、撮影した画像を示す撮影画像データをサーバ装置20に送信する。サーバ装置20のセンサ取得部101は、送信されてきた撮影画像データが示す撮影画像をイメージセンサの測定値として取得する。以降、センサ取得部101から着陸指示部109まで、第1実施例と同様に動作してドローン10の着陸を支援する。第1実施例との違いは、飛行指示部104、撮影指示部108及び着陸指示部109による指示は、指示データをドローン10に送信することで行われる点である。
【0075】
図13は本実施例の着陸処理における動作手順の一例を表す。図13の動作手順は、例えば、ドローン10が計画された飛行経路を飛行することを契機に開始される。まず、ドローン10(画像撮影部110)は、自機の鉛直下方の画像の撮影と、自機の高度の測定とを行う(ステップS31)。次に、ドローン10(画像撮影部110)は、撮影した画像及び自機の高度を示す撮影画像データをサーバ装置20に送信する(ステップS32)。
【0076】
サーバ装置20は、送信されてきた撮影画像データが示すドローン10の高度が所定の高度未満であるか否かを判断する(ステップS33)。ステップS33で所定の高度未満ではない(NO)と判断した場合、サーバ装置20(センサ取得部101)は、イメージセンサの測定値として、ステレオカメラ17による自機の鉛直下方の撮影画像を取得する(ステップS41)。
【0077】
次に、サーバ装置20(距離算出部102)は、取得された撮影画像の各画素が示す地点までの距離を画素毎の距離として算出する(ステップS42)。続いて、サーバ装置20(危険度判定部103)は、算出された画素毎の距離に基づいて複数の分割領域の危険度を判定する(ステップS43)。次に、サーバ装置20(飛行指示部104)は、判定された危険度が第1基準以上の分割領域の配置に応じた方向及び高度に自機を移動させる指示を示す指示データを生成し(ステップS44)、ドローン10に送信する(ステップS45)。
【0078】
ドローン10(飛行制御部105)は、送信されてきた指示データが示す指示に従い自機の飛行を制御する(ステップS46)。以降、ステップS33において所定の高度未満(YES)と判断されるまで、ステップS31からS46までの動作が繰り返される。ステップS33において所定の高度未満(YES)と判断されると、まず、ステップS31、S32、S41、S42と同じ動作手順であるステップS51、S52、S53、S54の動作手順が行われる。
【0079】
次に、サーバ装置20(障害物検出部107)は、ステップS54で算出された画素毎の距離に基づき、取得された撮影画像から障害物を検出する処理を行う(ステップS55)。図13の例では障害物が検出されたものとする。サーバ装置20は、着陸条件を満たす否かを判断し(ステップS56)、着陸条件を満たさない(NO)と判断した場合はステップS52に戻って動作を継続し、着陸条件を満たす(YES)と判断した場合は次の動作手順に進む。
【0080】
ステップS56で着陸条件が満たされた(YES)と判断した場合、サーバ装置20(着陸指示部109)は、算出された画素毎の距離と、その距離に基づく自機の着陸とを指示する指示データを生成し(ステップS57)、ドローン10に送信する(ステップS58)。ドローン10(飛行制御部105)は、送信されてきた指示データが示す指示に従い自機の着陸を制御する(ステップS59)。
【0081】
本実施例では、画素毎の距離の算出、危険度の判定、損害規模の判定及び障害物の検出等の処理がサーバ装置20で行われるので、第1実施例に比べてドローン10の処理の負荷が軽減される。その結果、ドローン10に搭載するプロセッサ11等のコンピュータ資源を軽量化及び小型化できる。一方、第1実施例の場合、飛行指示等に通信が不要なので、通信状況に影響されることなく着陸を支援することができる。
【0082】
[3]変形例 上述した実施例は本発明の実施の一例に過ぎず、以下のように変形させてもよい。また、実施例及び各変形例は必要に応じてそれぞれ組み合わせてもよい。実施例及び各変形例を組み合わせる際は、各変形例について優先順位を付けて(各変形例を実施すると競合する事象が生じる場合にどちらを優先するかを決める順位付けをして)実施してもよい。
【0083】
[3-1]センサ取得部101 センサ取得部101は、上記の実施例ではステレオカメラ17のイメージセンサの測定値を取得したが、これに限らない。センサ取得部101は、例えば、自機のセンサ装置16が備える位置センサが測定した自機の位置を示す位置情報をセンサの測定値として取得する。
【0084】
センサ取得部101は、取得した位置情報を危険度判定部103に供給する。危険度判定部103は、供給された位置情報に基づいて危険度を判定する。危険度判定部103は、例えば、地上に存在する物体の属性を領域ごとに表す地図を記憶する。物体の属性とは、例えば図4の重みテーブルに示す属性である。
【0085】
危険度判定部103は、まず、記憶している地図において、センサ取得部101により取得された位置情報が示す位置を含む所定の領域を地上領域とする。そして、危険度判定部103は、地上領域を分割した分割領域に存在する物体が占める不適領域の面積にその物体の属性に応じた重みを付けて算出される不適領域の割合に基づき危険度を判定する。
【0086】
危険度判定部103は、第1実施例で説明したように、物体を認識し、図4の重みテーブルを用いて重み付けをして、図5の危険度テーブルを用いて危険度を判定する。本変形例では、撮影画像を用いずに危険度を判定するので、例えば霧が出ていて上空からだと地上がはっきり撮影できない状況でも、危険度を判定することができる。一方、第1実施例の場合は、例えば別の用途(立体視用の画像撮影等)のために撮影した画像を利用して障害物を検出することができる。
【0087】
なお、本変形例において、第1実施例でも述べたように危険度判定部103により判定された危険度が第1基準未満となる分割領域(図6の例であれば危険Lv1、Lv2の分割領域)がない場合、危険度判定部103は、記憶している地図における地上領域を拡大して危険度を再度判定する。地上領域とは、分割領域に分割する前の領域のことであり、図6の例であれば分割領域B1、B2、B3、B4を合わせた領域である。
【0088】
地上領域を拡大することで、拡大した部分に危険度が低い領域が含まれている場合がある。これにより、危険度が第1基準未満となる分割領域が存在する可能性が生じるので、より安全な着陸が可能な領域に移動してからの着陸を試みることができる。危険度判定部103は、一度再判定をしても危険度が第1基準未満となる分割領域が見つからない場合には、繰り返し地上領域を拡大して危険度の再判定を行ってもよい。そうすることで、より確実に危険度が第1基準未満となる分割領域を見つけることができる。
【0089】
[3-2]飛行体
実施例では、飛行体として回転翼機型の飛行体が用いられたが、これに限らない。飛行体は、例えば飛行機型の飛行体であってもよいし、ヘリコプター型の飛行体であってもよい。また、VTOL(Vertical Take-Off and Landing Aircraft)と呼ばれる垂直離着陸機であってもよい。
【0090】
[3-3]着陸条件 着陸指示部109は、第1実施例とは異なる着陸条件を用いてもよい。着陸指示部109は、例えば、第1実施例では、検出された障害物が撮影された画像の所定の範囲に含まれない場合に着陸条件が満たされたと判断したが、この所定の範囲を、飛行体の種類に応じて変化させてもよい。
【0091】
着陸指示部109は、例えば、第1実施例で述べた回転翼機型の飛行体やヘリコプター型の飛行体の場合は、ほぼ鉛直上方から鉛直下方に向けて下降するので、円形の範囲を用いる。また、着陸指示部109は、VTOLの飛行体の場合は、安定して下降させるために斜めに滑空しながら下降することが多いので、楕円形の範囲を用いる。また、着陸指示部109は、飛行機型の飛行体の場合は、水平に近い角度で斜めに下降してくるので、より長い楕円形の範囲を用いる。
【0092】
例えば飛行機型の飛行体で円形の範囲を用いた場合、その範囲に着陸する前から障害物に接触する高さを飛行するので、範囲の外にある障害物に接触するおそれが生じる。そこで、飛行機型の飛行体の場合は、より長い楕円形の範囲を用いることで、障害物に接触するおそれがない所定の範囲の上空の空間を通って着陸することができる。このように、飛行体が下降するときの飛行経路の角度に応じて所定の範囲の長さを変化させることで、例えば常に円形の範囲を用いる場合に比べて、飛行体の種類に関わらず着陸時に障害物に接触する危険を少なくすることができる。
【0093】
また、着陸指示部109は、所定の範囲を、着陸地点の気象状況に応じて変化させてもよい。この場合、着陸指示部109は、例えばインターネット上で地域毎の気象状況を提供する事業者のシステムに、着陸地点を含む地域の気象状況を問い合わせる。着陸指示部109は、問い合わせの応答で得られた気象状況がドローン10の飛行に適した状況であるほど小さい範囲を所定の範囲として用いる。
【0094】
つまり、着陸指示部109は、気象状況が悪くドローン10の飛行に適していない状況であるほど、所定の範囲を大きくする。気象状況が悪い(例えば風が強い)と、ドローン10が下降中に例えば風に煽られて近くの障害物に接触する危険が大きくなる。そこで、気象状況が悪いほど所定の範囲を大きくすることで、気象状況に関係なく範囲を一定にする場合に比べて、着陸時に障害物に接触する危険を少なくすることができる。
【0095】
[3-4]分割領域
実施例では、鉛直上方から見て4つの正方形の分割領域が用いられたが、これに限らない。例えば、各分割領域の形状が長方形であってもよい。また、例えば正六角形の分割領域が3つ用いられてもよいし、正三角形の分割領域が6つ用いられてもよい。また、各分割領域の形状及び大きさが一致していたが、これらも厳密に同じである必要はなく、多少異なっていてもよい。いずれの場合も、危険度が第1基準以上の分割領域の配置と、その配置の際に最も安全な着陸が期待できる領域に向けた移動方向とが対応付けられていればよい。
【0096】
[3-5]指示方法
飛行指示部104、撮影指示部108及び着陸指示部109は、実施例ではドローン10に対して指示を行ったが、これに限らず、例えばプロポでドローン10が操作される場合は操作者に対して指示を行ってもよい。この場合、各指示部は、例えば、移動方向、移動後の高度、撮影する位置、着陸制御への切り替えを指示する文字列を示すデータをプロポに送信し、プロポの表示面にそれらの文字列を表示させることで指示を行うとよい。
【0097】
[3-6]危険度
危険度判定部103は、実施例では3段階で危険度を判定したが、2段階でもよいし、4段階以上であってもよい。また、「Lv1」のように数値で表すだけでなく、「大」、「中」、「小」や「A」、「B」、「C」のように危険度が文字列で表されていてもよい。要するに、ドローン10が安全に着陸できない可能性の高さを表す情報であればよい。
飛行指示部104が移動方向を決める際に用いる第1基準と下降の有無を決める際に用いる第2基準は、こうした危険度の表し方に応じて定められればよい。
【0098】
[3-7]移動方向の決定方法 飛行指示部104は、実施例とは異なる方法で移動方向を決定してもよい。飛行指示部104は、例えば、危険度と損害度とのバランスを考慮して移動方向を決定してもよい。
例えば危険Lv2で損害Lv1の分割領域B1と危険Lv1で損害Lv3の分割領域B2とがあった場合、飛行指示部104は、危険度が小さい方の分割領域B2を移動方向としてもよいが、例えば両方のレベルの合計値が小さい分割領域B1を移動方向としてもよい。
【0099】
[3-8]測距手段 着陸制御で用いられる測距手段は、ステレオカメラに限らない。例えば、赤外線、超音波又はミリ波等を用いて対象物との距離を測定する手段が測距手段として用いられてもよい。
【0100】
[3-9]各機能を実現する装置
図2及び図12に表す各機能を実現する装置は、上述した装置に限らない。例えば、サーバ装置20が実現する機能をクラウドサービスで提供されるコンピュータ資源が実現してもよい。いずれの場合も、着陸支援システム1の全体で図2又は図12に表す各機能が実現されていればよい。
【0101】
[3-10]発明のカテゴリ
本発明は、上述したドローン10及びサーバ装置20のような情報処理装置の他、それらの情報処理装置を備える着陸支援システム1のような情報処理システムとしても捉えられる。また、本発明は、情報処理装置が実施する処理を実現するための情報処理方法としても捉えられるし、情報処理装置を制御するコンピュータを機能させるためのプログラムとしても捉えられる。本発明として捉えられるプログラムは、プログラムを記憶させた光ディスク等の記録媒体の形態で提供されてもよいし、インターネット等のネットワークを介してコンピュータにダウンロードさせ、ダウンロードしたプログラムをインストールして利用可能にするなどの形態で提供されてもよい。
【0102】
[3-11]機能ブロック
なお、上記実施例の説明に用いたブロック図は、機能単位のブロックを示している。これらの機能ブロック(構成部)は、ハードウェア及びソフトウェアの少なくとも一方の任意の組み合わせによって実現される。また、各機能ブロックの実現方法は特に限定されない。
【0103】
すなわち、各機能ブロックは、物理的又は論理的に結合した1つの装置を用いて実現されてもよいし、物理的又は論理的に分離した2つ以上の装置を直接的又は間接的に(例えば、有線、無線などを用いて)接続し、これら複数の装置を用いて実現されてもよい。機能ブロックは、上記1つの装置又は上記複数の装置にソフトウェアを組み合わせて実現されてもよい。
【0104】
機能には、判断、決定、判定、計算、算出、処理、導出、調査、探索、確認、受信、送信、出力、アクセス、解決、選択、選定、確立、比較、想定、期待、見做し、報知(broadcasting)、通知(notifying)、通信(communicating)、転送(forwarding)、構成(configuring)、再構成(reconfiguring)、割り当て(allocating、mapping)、割り振り(assigning)などがあるが、これらに限られない。たとえば、送信を機能させる機能ブロック(構成部)は、送信部(transmitting unit)や送信機(transmitter)と呼称される。いずれも、上述したとおり、実現方法は特に限定されない。
【0105】
[3-12]入出力された情報等の扱い 入出力された情報等は特定の場所(例えば、メモリ)に保存されてもよいし、管理テーブルを用いて管理してもよい。入出力される情報等は、上書き、更新、又は追記され得る。出力された情報等は削除されてもよい。入力された情報等は他の装置へ送信されてもよい。
【0106】
[3-13]判定方法 判定は、1ビットで表される値(0か1か)によって行われてもよいし、真偽値(Boolean:true又はfalse)によって行われてもよいし、数値の比較(例えば、所定の値との比較)によって行われてもよい。
【0107】
[3-14]処理手順等 本開示において説明した各態様/実施例の処理手順、シーケンス、フローチャートなどは、矛盾の無い限り、順序を入れ替えてもよい。例えば、本開示において説明した方法については、例示的な順序を用いて様々なステップの要素を提示しており、提示した特定の順序に限定されない。
【0108】
[3-15]入出力された情報等の扱い 入出力された情報等は特定の場所(例えばメモリ)に保存されてもよいし、管理テーブルで管理してもよい。入出力される情報等は、上書き、更新、又は追記され得る。出力された情報等は削除されてもよい。入力された情報等は他の装置へ送信されてもよい。
【0109】
[3-16]ソフトウェア
ソフトウェアは、ソフトウェア、ファームウェア、ミドルウェア、マイクロコード、ハードウェア記述言語と呼ばれるか、他の名称で呼ばれるかを問わず、命令、命令セット、コード、コードセグメント、プログラムコード、プログラム、サブプログラム、ソフトウェアモジュール、アプリケーション、ソフトウェアアプリケーション、ソフトウェアパッケージ、ルーチン、サブルーチン、オブジェクト、実行可能ファイル、実行スレッド、手順、機能などを意味するよう広く解釈されるべきである。
【0110】
また、ソフトウェア、命令、情報などは、伝送媒体を介して送受信されてもよい。例えば、ソフトウェアが、有線技術(同軸ケーブル、光ファイバケーブル、ツイストペア、デジタル加入者回線(DSL:Digital Subscriber Line)など)及び無線技術(赤外線、マイクロ波など)の少なくとも一方を使用してウェブサイト、サーバ、又は他のリモートソースから送信される場合、これらの有線技術及び無線技術の少なくとも一方は、伝送媒体の定義内に含まれる。
【0111】
[3-17]情報、信号
本開示において説明した情報、信号などは、様々な異なる技術のいずれかを使用して表されてもよい。例えば、上記の説明全体に渡って言及され得るデータ、命令、コマンド、情報、信号、ビット、シンボル、チップなどは、電圧、電流、電磁波、磁界若しくは磁性粒子、光場若しくは光子、又はこれらの任意の組み合わせによって表されてもよい。
【0112】
[3-18]「判断」、「決定」
本開示で使用する「判断(determining)」、「決定(determining)」という用語は、多種多様な動作を包含する場合がある。「判断」、「決定」は、例えば、判定(judging)、計算(calculating)、算出(computing)、処理(processing)、導出(deriving)、調査(investigating)、探索(looking up、search、inquiry)(例えば、テーブル、データベース又は別のデータ構造での探索)、確認(ascertaining)した事を「判断」「決定」したとみなす事などを含み得る。
【0113】
また、「判断」、「決定」は、受信(receiving)(例えば、情報を受信すること)、送信(transmitting)(例えば、情報を送信すること)、入力(input)、出力(output)、アクセス(accessing)(例えば、メモリ中のデータにアクセスすること)した事を「判断」「決定」したとみなす事などを含み得る。また、「判断」、「決定」は、解決(resolving)、選択(selecting)、選定(choosing)、確立(establishing)、比較(comparing)などした事を「判断」「決定」したとみなす事を含み得る。つまり、「判断」「決定」は、何らかの動作を「判断」「決定」したとみなす事を含み得る。また、「判断(決定)」は、「想定する(assuming)」、「期待する(expecting)」、「みなす(considering)」などで読み替えられてもよい。
【0114】
[3-19]「に基づいて」の意味 本開示において使用する「に基づいて」という記載は、別段に明記されていない限り、「のみに基づいて」を意味しない。言い換えれば、「に基づいて」という記載は、「のみに基づいて」と「に少なくとも基づいて」の両方を意味する。
【0115】
[3-20]「異なる」 本開示において、「AとBが異なる」という用語は、「AとBが互いに異なる」ことを意味してもよい。なお、当該用語は、「AとBがそれぞれCと異なる」ことを意味してもよい。「離れる」、「結合される」などの用語も、「異なる」と同様に解釈されてもよい。
【0116】
[3-21]「及び」、「又は」 本開示において、「A及びB」でも「A又はB」でも実施可能な構成については、一方の表現で記載された構成を、他方の表現で記載された構成として用いてもよい。例えば「A及びB」と記載されている場合、他の記載との不整合が生じず実施可能であれば、「A又はB」として用いてもよい。
【0117】
[3-22]態様のバリエーション等 本開示において説明した各態様/実施形態は単独で用いてもよいし、組み合わせて用いてもよいし、実行に伴って切り替えて用いてもよい。また、所定の情報の通知(例えば、「Xであること」の通知)は、明示的に行うものに限られず、暗黙的(例えば、当該所定の情報の通知を行わない)ことによって行われてもよい。
【0118】
以上、本開示について詳細に説明したが、当業者にとっては、本開示が本開示中に説明した実施形態に限定されるものではないということは明らかである。本開示は、請求の範囲の記載により定まる本開示の趣旨及び範囲を逸脱することなく修正及び変更態様として実施することができる。したがって、本開示の記載は、例示説明を目的とするものであり、本開示に対して何ら制限的な意味を有するものではない。
【符号の説明】
【0119】
1…着陸支援システム、10…ドローン、17…ステレオカメラ、20…サーバ装置、101…センサ取得部、102…距離算出部、103…危険度判定部、104…飛行指示部、105…飛行制御部、106…損害規模判定部、107…障害物検出部、108…撮影指示部、109…着陸指示部、110…画像撮影部。
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