(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-26
(45)【発行日】2024-04-03
(54)【発明の名称】ポリアミド系フィルム、その製造方法、並びにそれを含むカバーウィンドウおよびディスプレイ装置
(51)【国際特許分類】
C08J 5/18 20060101AFI20240327BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20240327BHJP
C08G 73/14 20060101ALI20240327BHJP
C08L 79/08 20060101ALI20240327BHJP
G09F 9/00 20060101ALI20240327BHJP
【FI】
C08J5/18 CFG
C08K3/013
C08G73/14
C08L79/08 C
G09F9/00 302
G09F9/00 313
G09F9/00 342
(21)【出願番号】P 2022127990
(22)【出願日】2022-08-10
【審査請求日】2022-08-10
(31)【優先権主張番号】10-2021-0115972
(32)【優先日】2021-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2022-0055281
(32)【優先日】2022-05-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】523061191
【氏名又は名称】エスケーマイクロワークス 株式会社
【氏名又は名称原語表記】SK microworks Co., Ltd.
【住所又は居所原語表記】84, Jangan-ro 309beon-gil, Jangan-gu, Suwon-si,Gyeonggi-do, Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】イ、ハクス
(72)【発明者】
【氏名】キム、ヘジン
(72)【発明者】
【氏名】イ、ジンウ
【審査官】脇田 寛泰
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第112230326(CN,A)
【文献】特開2021-055096(JP,A)
【文献】特開2021-055094(JP,A)
【文献】特表2020-505489(JP,A)
【文献】韓国特許第10-1999-0067144(KR,B1)
【文献】特開2016-126033(JP,A)
【文献】特開2002-83415(JP,A)
【文献】特開平11-152353(JP,A)
【文献】特開2003-200542(JP,A)
【文献】特開2008-290256(JP,A)
【文献】国際公開第98/08892(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B1/00-43/00
C08G73/00-73/26
C08J5/00-5/02
5/12-5/22
C08K3/00-13/08
C08L1/00-101/14
G09F9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアミド系重合体および前記ポリアミド系重合体の重量に対して600ppm以上のフィラーを含み、
前記ポリアミド系重合体は、ジアミン化合物、ジカルボニル化合物、および選択的にジアンヒドリド化合物を重合してなり、
前記ジアミン化合物は、2,2'-ビス(トリフルオロメチル)-4,4'-ジアミノビフェニル(TFMB)を含み、前記ジカルボニル化合物は、テレフタロイルクロリド(TPC)を含み、
3D表面粗さ測定の際、下記の測定方法で測定された単位面積当たりの頂点(summit)の数(Sds)が
1600~3900/mm
2
であるポリアミド系フィルム:
[測定方法]
ブルカー(Bruker)社のCONTOUR GT-Xを用いて、1回の測定領域を166μm×220μmに設定し、20倍率の対物レンズ(OBJECTIVE LENS)を適用して測定した後、ガウシアンフィルタを適用する。
【請求項2】
3D表面粗さ測定の際、5つの最も高いピーク(peak)と5つの最も低い谷(valley)の平均差値を表面高低差(Sz)とすると、
前記表面高低差(Sz)は320nm~2000nmであり、
前記頂点の平均曲率(Ssc)は24/mm~47/mmである、請求項1に記載のポリアミド系フィルム。
【請求項3】
前記フィラーは無機物粒子を含み、
前記フィラーの平均粒径(D50)が30nm~200nmであり、
前記フィラーの含有量は、前記ポリアミド系重合体の総重量を基準に600ppm~3000ppmである、請求項1に記載のポリアミド系フィルム。
【請求項4】
フィルムの厚さ50μmを基準に、
モジュラスが5GPa以上であり、
透過度が80%以上であり、
ヘイズが1%以下であり、
黄色度が3以下であり、
鉛筆硬度がF以上である、請求項1に記載のポリアミド系フィルム。
【請求項5】
請求項1に記載のポリアミド系フィルムを製造する方法であって、
有機溶媒上でジアミン化合物、ジカルボニル化合物、および選択的にジアンヒドリド化合物を重合して、ポリアミド系重合体を含む重合体溶液を調製する段階と、
前記重合体溶液をベルト上にキャスティングおよび乾燥してゲルシートを製造する段階と、
前記ゲルシートを熱処理する段階と、を含
み、
前記重合体溶液をベルト上で乾燥させる段階は、単位面積当たりの溶媒蒸発量を1.1kg/m
2
~3.0kg/m
2
に調節して行われる、ポリアミド系フィルムの製造方法。
【請求項6】
前記ポリアミド系重合体を含む重合体溶液を調製する段階は、
20℃にて測定した粘度500cps~10000cpsの第1重合体溶液を形成する段階と、
前記第1重合体溶液に追加のジカルボニル化合物を反応させ、20℃にて測定した粘度150000cps~300000cpsの第2重合体溶液を形成する段階とを含む、
請求項5に記載のポリアミド系フィルムの製造方法。
【請求項7】
ポリアミド系フィルムと機能層とを含み、
前記ポリアミド系フィルムは、ポリアミド系重合体を含み、
前記ポリアミド系重合体は、ジアミン化合物、ジカルボニル化合物、および選択的にジアンヒドリド化合物を重合してなり、
前記ジアミン化合物は、2,2'-ビス(トリフルオロメチル)-4,4'-ジアミノビフェニル(TFMB)を含み、前記ジカルボニル化合物は、テレフタロイルクロリド(TPC)を含み、
前記ポリアミド系フィルムは、3D表面粗さ測定の際、下記の測定方法で測定された単位面積当たりの頂点の数(Sds)が
1600~3900/mm
2
である、ディスプレイ装置用カバーウィンドウ:
[測定方法]
ブルカー社のCONTOUR GT-Xを用いて、1回の測定領域を166μm×220μmに設定し、20倍率の対物レンズを適用して測定した後、ガウシアンフィルタを適用する。
【請求項8】
表示部と、
前記表示部上に配置されたカバーウィンドウとを含み、
前記カバーウィンドウは、ポリアミド系フィルムと機能層とを含み、
前記ポリアミド系フィルムは、ポリアミド系重合体を含み、
前記ポリアミド系重合体は、ジアミン化合物、ジカルボニル化合物、および選択的にジアンヒドリド化合物を重合してなり、
前記ジアミン化合物は、2,2'-ビス(トリフルオロメチル)-4,4'-ジアミノビフェニル(TFMB)を含み、前記ジカルボニル化合物は、テレフタロイルクロリド(TPC)を含み、
前記ポリアミド系フィルムは、3D表面粗さ測定の際、下記の測定方法で測定された単位面積当たりの頂点の数(Sds)が
1600~3900/mm
2
である、ディスプレイ装置:
[測定方法]
ブルカー社のCONTOUR GT-Xを用いて、1回の測定領域を166μm×220μmに設定し、20倍率の対物レンズを適用して測定した後、ガウシアンフィルタを適用する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
実現例は、ポリアミド系フィルム、その製造方法、並びにそれを含むカバーウィンドウおよびディスプレイ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリアミド系重合体は、摩擦、熱、および化学的な抵抗力に優れ、1次電気絶縁材、コーティング剤、接着剤、押出用樹脂、耐熱塗料、耐熱板、耐熱接着剤、耐熱繊維、および耐熱フィルムなどに応用される。
【0003】
ポリアミドは、様々な分野で活用されている。例えば、ポリアミドは、粉末状に作られ金属または磁石ワイヤなどのコーティング剤として使用され、用途に応じて他の添加剤と混合して使用される。また、ポリアミドは、フッ素重合体とともに装飾や腐食防止のための塗料として使用され、フッ素重合体を金属基板に接着させる役割をする。また、ポリアミドは、厨房調理器具にコーティングをするためにも使用され、耐熱性と耐薬品性の特徴があって、ガス分離に使用するメンブレンとしても使用され、天然ガス油井において二酸化炭素、硫化水素および不純物のような汚染物をろ過する装置にも使用される。
【0004】
最近では、ポリアミドをフィルム化することにより、より安価でありながらも光学的、機械的、および熱的特性に優れたポリアミド系フィルムが開発されている。このようなポリアミド系フィルムは、有機発光ダイオード(OLED、organic light-emitting diode)または液晶ディスプレイ(LCD、liquid-crystal display)などのディスプレイ材料に適用可能であり、位相差物性の実現時に、反射防止フィルム、補償フィルム、または位相差フィルムに適用可能である。
【0005】
このようなポリアミド系フィルムをフォルダブルディスプレイ、フレキシブルディスプレイなどに適用する際には、透明性、無色性などの光学特性、および柔軟性、硬度などの機械的物性が求められる。しかし、一般的に光学特性と機械的物性とはトレードオフの関係にあり、機械的物性を向上させると、光学特性が低下され得る。
【0006】
したがって、機械的物性と光学特性とがともに向上されたポリアミド系フィルムに対する研究が持続的に求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
実現例は、光学特性および機械的特性に優れたポリアミド系フィルム、これを含むカバーウィンドウおよびディスプレイ装置を提供する。
【0008】
実現例は、光学特性および機械的特性に優れたポリアミド系フィルムの製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
実現例によるポリアミド系フィルムは、ポリアミド系重合体および前記ポリアミド系重合体の重量に対して600ppm以上のフィラーを含み、3D表面粗さ測定の際、下記の測定方法で測定された単位面積当たりの頂点(summit)の数(Sds)が4400/mm2以下である。
【0010】
[測定方法]
ブルカー(Bruker)社のCONTOUR GT-Xを用いて、1回の測定領域を166μm×220μmに設定し、20倍率の対物レンズ(OBJECTIVE LENS)を適用して測定した後、ガウシアンフィルタを適用する。
【0011】
実現例によるポリアミド系フィルムの製造方法は、有機溶媒上でジアミン化合物、ジカルボニル化合物、および選択的にジアンヒドリド化合物を重合して、ポリアミド系重合体を含む重合体溶液を調製する段階と、前記重合体溶液をベルト上にキャスティングおよび乾燥してゲルシートを製造する段階と、前記ゲルシートを熱処理する段階とを含む。
【0012】
実現例によるディスプレイ装置用カバーウィンドウは、ポリアミド系フィルムと機能層とを含み、前記ポリアミド系フィルムは、3D表面粗さ測定の際、前記測定方法で測定された単位面積当たりの頂点の数(Sds)が4400/mm2以下である。
【0013】
実現例によるディスプレイ装置は、表示部と、前記表示部上に配置されたカバーウィンドウとを含み、前記カバーウィンドウはポリアミド系フィルムと機能層とを含み、前記ポリアミド系フィルムは、3D表面粗さ測定の際、前記測定方法で測定された単位面積当たり頂点の数(Sds)が4400/mm2以下である。
【発明の効果】
【0014】
実現例によるポリアミド系フィルムは、ポリアミド系重合体の重量に対して600ppm以上のフィラーを含み、3D表面粗さ測定の際、単位面積当たりの頂点の数(Sds)が4400/mm2以下に調節されることにより、黄色度、透過率などの光学特性が改善され、モジュラス、表面硬度などの機械的特性が向上するのみならず、滑り性および巻取性が向上され得る。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、一実現例によるディスプレイ装置の概略的な斜視図である。
【
図2】
図2は、一実現例によるディスプレイ装置の概略的な分解図である。
【
図3】
図3は、一実現例によるディスプレイ装置の概略的な断面図である。
【
図4】
図4は、一実現例によるポリアミド系フィルムの製造方法の概略的手順を示すフロー図である。
【
図5】
図5は、一実現例によるポリアミド系フィルムの工程設備に関する概略的な概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者が容易に実施できるように、実現例について添付の図面を参考にして詳細に説明する。しかし、実現例は様々な異なる形態で実現されてよく、本明細書において説明する実現例に限定されない。
【0017】
本明細書において、各フィルム、ウインドウ、パネル、または層などが、各フィルム、ウインドウ、パネル、または層などの「上(on)」または「下(under)」に形成されるものとして記載される場合において、「上(on)」と「下(under)」は、「直接(directly)」または「他の構成要素を介して(indirectly)」形成されるものをすべて含む。また、各構成要素の上/下に対する基準は、図面を基準に説明する。なお、図面における各構成要素の大きさは、説明のために誇張されることがあり、実際に適用される大きさを意味するものではない。また、明細書全体に亘って、同一参照符号は同一構成要素を指す。
【0018】
本明細書において、ある部分がある構成要素を「含む」と言うとき、特に反する記載がない限り、他の構成要素を除外するのではなく、他の構成要素をさらに含み得ることを意味する。
【0019】
本明細書において単数表現は、特別な説明がなければ、文脈上解釈される単数または複数を含む意味で解釈される。
【0020】
また、本明細書に記載されている構成成分の量、反応条件などを表すすべての数字および表現は、特に記載がない限り、すべての場合に「約」という用語で修飾されるものと理解するべきである。
【0021】
本明細書において、第1、第2などの用語は、様々な構成要素を説明するために用いられるものであり、前記構成要素は、前記用語によって限定されてはならない。前記用語は、1つの構成要素を他の構成要素と区別するためにのみ用いられる。
【0022】
また、本明細書において「置換された」ということは、特に記載がない限り、重水素、-F、-Cl、-Br、-I、ヒドロキシル基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、アミジノ基、ヒドラジン基、ヒドラゾン基、エステル基、ケトン基、カルボキシル基、置換または非置換のアルキル基、置換または非置換のアルケニル基、置換または非置換のアルキニル基、置換または非置換のアルコキシ基、置換または非置換の脂環式有機基、置換または非置換のヘテロ環基、置換または非置換のアリール基、および置換または非置換のヘテロアリール基からなる群より選択された1種以上の置換基で置換されたことを意味し、前記列挙された置換基は互いに結合して環を形成し得る。
【0023】
[ポリアミド系フィルム]
実現例は、透過度、ヘイズ、黄色度のような光学特性、モジュラス、表面硬度のような機械的特性のみならず、滑り性および巻取性に優れたポリアミド系フィルムを提供する。
【0024】
一実現例によるポリアミド系フィルムは、ポリアミド系重合体と、前記ポリアミド系重合体の重量に対して600ppm以上のフィラーとを含む。
【0025】
前記ポリアミド系フィルムは、3D表面粗さ測定の際、下記の測定方法で測定された単位面積当たりの頂点の数(Sds)が4400/mm2以下である。
【0026】
[測定方法]
ブルカー社のCONTOUR GT-Xを用いて、1回の測定領域を166μm×220μmに設定し、20倍率の対物レンズを適用して測定した後、ガウシアンフィルタを適用する。
【0027】
前記3D表面粗さは、物体表面の凹凸を光学式または接触式で測定してデータ化したものであり、前記物体表面の平面方向に対して所定領域に対する地形的(topographical)特徴を示し得る。前記頂点(summit)とは、例えば、3D表面粗さ測定の際、平均平面(mean plane)よりも表面高低差(Sz)の5%以上高いところで見られるピーク(peak)のことを意味する。また、前記頂点は、他の頂点と特定距離(サンプル側面サイズの1%)を置いて離れたピークのことを意味する。前記ピークは、最も近い8カ所よりも上に位置するすべての点のことを意味し得る。より具体的に、前記単位面積当たりの頂点の数(Sds)は、EUR 15178 ENに提示されている規格に従って測定された値であり得る。
【0028】
例えば、前記Sdsが4400/mm2を超えると、フィルム表面に高さ変化幅の大きい微細凹凸が過剰に多量存在することにより、フィルムの滑り性および巻取性が低下し得る。
【0029】
実現例によると、前記Sdsが4400/mm2以下に調節されると、フィルムの透過率、ヘイズ、黄色度などの光学特性、モジュラス、表面硬度などの機械的特性が総合的に改善されるとともに、フィルムをロール状に巻取る際に押圧痕(lump)などの不良が発生することもなく、巻取られたフィルムが容易に繰り出され得る。
【0030】
一部の実現例において、前記Sdsは、4000/mm2以下、3900/mm2以下、3800/mm2以下、3500/mm2以下、3300/mm2以下、または3100/mm2以下であり得るが、これに限定されない。また、前記Sdsは、500/mm2以上、800/mm2以上、1000/mm2以上、1200/mm2以上、1500/mm2以上、1600/mm2以上、1800/mm2以上、2000/mm2以上、2200/mm2以上、または2400/mm2以上であり得るが、これに限定されない。
【0031】
例えば、前記Sdsは、1600mm2~4400/mm2、1600mm2~4000/mm2、1600mm2~3900/mm2、1600mm2~3500/mm2、1600mm2~3100/mm2、2000mm2~4400/mm2、2000mm2~4000/mm2、2000mm2~3900/mm2、2000mm2~3500/mm2、2000mm2~3100/mm2、2400mm2~4400/mm2、2400mm2~4000/mm2、2400mm2~3900/mm2、2400mm2~3500/mm2、または2400mm2~3100/mm2であり得る。
【0032】
一部の実現例において、前記Szは320nm以上であり得る。この場合、フィルム表面の凹凸の程度(最低点と最高点との高さの差)が増加することにより、フィルムが巻取られる際にフィルムのロールの厚さ方向に隣接する部分の間における微小接触面積が減少され、これにより、巻取性および滑り性が向上され得る。好ましくは、前記Szは330nm以上であり得るが、これに限定されない。また、前記Szは、2000nm以下、1800nm以下、1500nm以下、1200nm以下、1000nm以下、800nm以下、700nm以下、600nm以下、または550nm以下であり得るが、これに限定されない。より具体的に、前記Sz(表面高低差)は320nm~2000nmであり得る。
【0033】
前記Sz(表面高低差)は、5つの最も高いピークと5つの最も低い谷の平均差値を意味し得る。前記ピークは、最も近い8カ所より上に位置するすべての点のことを意味し、前記谷は、最も近い8カ所より下に位置するすべての点のことを意味し得る。具体的に、前記Szは、ISO 25178により定義されたS10z(Ten point height of surface)値であり得る。より具体的に、前記Szは、ブルカー社のCONTOUR GT-Xを用いて、1回の測定領域を166μm×220μmに設定し、20倍率の対物レンズを適用して測定した後、ガウシアンフィルタを適用した値であり得る。
【0034】
一部の実現例において、前記頂点の平均曲率(Ssc)は24/mm~47/mmであり、好ましくは、24/mm~45/mm、24/mm~42/mm、25/mm~47/mm、25/mm~45/mm、または25/mm~42/mmであり得る。この場合、モジュラス、透過率、ヘイズ、黄色度、表面硬度、滑り性および巻取性に優れたフィルムが実現され得る。
【0035】
実現例によるポリアミド系フィルムのx方向屈折率(nx)は、1.60~1.70、1.61~1.69、1.62~1.68、1.64~1.68、1.64~1.66、または1.64~1.65であり得る。
【0036】
また、ポリアミド系フィルムのy方向屈折率(ny)は、1.60~1.70、1.61~1.69、1.62~1.68、1.63~1.68、1.63~1.66、または1.63~1.64であり得る。
【0037】
さらに、ポリアミド系フィルムのz方向屈折率(nz)は、1.50~1.60、1.51~1.59、1.52~1.58、1.53~1.58、1.54~1.58、または1.54~1.56であり得る。
【0038】
前記ポリアミド系フィルムのx方向屈折率、y方向屈折率およびz方向屈折率の値が前記範囲であると、前記フィルムをディスプレイ装置に適用する際、前からだけでなく横から見ても視認性に優れ、広い視野角を実現し得る。
【0039】
実現例によるポリアミド系フィルムの面内位相差(Ro)は、800nm以下であり得る。具体的に、前記ポリアミド系フィルムの面内位相差(Ro)は、700nm以下、600nm以下、550nm以下、100nm~800nm、200nm~800nm、200nm~700nm、300nm~700nm、300nm~600nm、または300nm~540nmであり得る。
【0040】
また、実現例によるポリアミド系フィルムの厚さ方向位相差(Rth)は、5000nm以下であり得る。具体的に、前記ポリアミド系フィルムの厚さ方向位相差(Rth)は、4800nm以下、4700nm以下、4650nm以下、1000nm~5000nm、1500nm~5000nm、2000nm~5000nm、2500nm~5000nm、3000nm~5000nm、3500nm~5000nm、4000nm~5000nm、3000nm~4800nm、3000nm~4700nm、4000nm~4700nm、または4200nm~4650nmであり得る。
【0041】
なお、前記面内位相差(in-plane retardation、Ro)とは、フィルムの平面内の直交する2つの軸の屈折率の異方性(△nxy=|nx-ny|)とフィルム厚さ(d)との積(△nxy×d)で定義されるパラメータとして、光学的等方性または異方性を示す尺度である。
【0042】
また、厚さ方向位相差(thickness direction retardation、Rth)とは、フィルムの厚さ方向の断面から見たときの2つの複屈折である△nxz(=|nx-nz|)および△nyz(=|ny-nz|)にそれぞれフィルムの厚さ(d)を乗じて得られる位相差の平均と定義されるパラメータである。
【0043】
前記ポリアミド系フィルムの面内位相差および厚さ方向位相差の値が前記範囲であると、前記フィルムをディスプレイ装置に適用する際、光学歪みおよび色相歪みを最小化することができ、側面から光が漏れてくる光漏れ現象も最小化し得る。
【0044】
前記フィラーは、フィルムの硬度、モジュラス、脆性、柔軟性などの機械的特性および透過率、ヘイズ、黄色度などの光学特性を調節することができ、フィルム表面の地形的特性を調節し得る。
【0045】
一部の実現例において、前記フィラーとしては、硬度2.5~6の粒子が非限定的に使用され得る。フィラーが前記硬度を有すると、フィルムの硬度およびモジュラスを向上させながらも、柔軟性を低下させない。また、フィルムの光学特性を悪化させない。好ましくは、前記フィラーの硬度は2.5~5または2.5~4であり得る。
【0046】
好ましくは、前記フィラーは、シリカおよび硫酸バリウム(BaSO4)のうちの少なくとも1つを含む無機物粒子を含み得る。
【0047】
前記フィラーの平均粒径(D50)は30nm~200nmであり得る。具体的に、前記フィラーの平均粒径は、30nm~180nm、30nm~150nm、30nm~120nm、30nm~100nm、40nm~200nm、40nm~180nm、40nm~150nm、40nm~120nm、40nm~100nm、50nm~200nm、50nm~180nm、50nm~150nm、50nm~120nm、50nmnm~100nm、60nm~200nm、60nm~180nm、60nm~150nm、60nm~120nm、または60nm~100nmであり得るが、これに限定されるものではない。フィラーが前記粒径を有すると、優れた機械的特性を実現するために前記フィラーを多量使用しても、フィルムの柔軟性および光学特性を低下させないながらも、フィルムの巻取性および滑り性を向上させ得る。
【0048】
一部の実現例において、前記フィラーは、前述の平均粒径を有しながらも、約90%以上の粒子が30nm~200nm、30nm~150nm、30nm~120nm、50nm~200nm、50nm~150nm、または50nm~120nmの粒径を有し得る。
【0049】
前記フィラーの含有量は、ポリアミド系重合体の総重量を基準に、600ppm以上であり得る。具体的に、前記フィラーの含有量は、ポリアミド系重合体の総重量を基準に、700ppm以上、800ppm以上、900ppm以上、1000ppm以上、1100ppm以上、または1200ppm以上であり得る。また、ポリアミド系重合体の総重量を基準に、5000ppm以下、4500ppm以下、4000ppm以下、3500ppm以下、3000ppm以下、2500ppm以下、または2000ppm以下であり得るが、これに限定されるものではない。より具体的に、前記フィラーの含有量は、ポリアミド系重合体の総重量を基準に、600ppm~3000ppmであり得るが、これに限定されるものではない。
【0050】
前記フィラーの含有量が前記範囲から外れると、フィルムのヘイズが急激に増加し、フィルム表面にフィラー同士の凝集現象が発生して異物感が目視されたり、生産工程において走行に問題が発生したり、巻取性が低下し得る。また、フィルムの硬度、柔軟性などの機械的特性および透過率、黄色度などの光学特性が総合的に阻害され得る。
【0051】
例えば、前記フィラーの粒径および含有量を調節して、前記3D表面粗さで表されるSds、SzおよびSsc等の表面特性を、目的とする範囲に調節し得る。
【0052】
前記フィラーの屈折率は1.55~1.75であり得る。具体的に、前記フィラーの屈折率は1.60~1.75、1.60~1.70、1.60~1.68、または1.62~1.65であり得るが、これに限定されるものではない。
【0053】
前記フィラーの屈折率が前記範囲を満足することにより、nx、ny、nzに関連する複屈折値が適切に調節され、フィルムの様々な角度における輝度が改善され得る。
【0054】
一方、前記フィラーの屈折率が前記範囲を外れると、フィルム上でフィラーの存在が目視で視認されるか、またはフィラーによってヘイズが上昇する問題が生じ得る。
【0055】
前記フィラーは、表面に特別なコーティング処理がなされていない状態であり、フィルム全体にむらなく分散され得る。
【0056】
前記ポリアミド系フィルムが前記フィラーを含むことにより、前記フィルムは、光学特性の低下することなく、広い視野角を確保し得る。
【0057】
前記ポリアミド系フィルム内の残留溶媒含有量は、1500ppm以下であり得る。例えば、前記残留溶媒の含有量は、1200ppm以下、1000ppm以下、800ppm以下、500ppm以下であり得るが、これに限定されるものではない。
【0058】
前記残留溶媒は、フィルム製造時に揮発されず、最終的に製造されたフィルムに残っている溶媒の量のことを意味する。
【0059】
前記ポリアミド系フィルム内の残留溶媒の含有量が前記範囲を超えると、フィルムの耐久性が低下し、輝度にも影響を与え得る。
【0060】
実現例によるポリアミド系フィルムは、厚さ50μmを基準に曲率半径が3mmとなるようにフォルディングする際、破断するまでのフォルディング回数が20万回以上であり得る。
【0061】
前記フォルディング回数は、フィルムの曲率半径が3mmとなるように曲げて広げることを1回とする。
【0062】
前記ポリアミド系フィルムが、前述の範囲のフォルディング回数を満足することにより、フォルダブルディスプレイ装置やフレキシブルディスプレイ装置に有用に適用され得る。
【0063】
実現例によるポリアミド系フィルムの表面粗さは、0.01μm~0.07μmであり得る。具体的に、前記表面粗さは、0.01μm~0.07μmまたは0.01μm~0.06μmであり得るが、これに限定されるものではない。
【0064】
前記ポリアミド系フィルムの表面粗さが前記範囲を満足することにより、面光源の法線方向からの角度が大きくなる場合にも、高い輝度を実現するのに有利であり得る。
【0065】
一実現例によるポリアミド系フィルムは、ポリアミド系重合体を含む。前記ポリアミド系重合体は、アミド系繰り返し単位を含む。一部の実現例において、前記ポリアミド系重合体は、イミド系繰り返し単位をさらに含むポリアミド-イミド重合体を含み得る。
また他の例として、前記ポリアミド系重合体は、アミド系繰り返し単位およびイミド系繰り返し単位を含み得る。
【0066】
前記ポリアミド系重合体は、ジアミン化合物およびジカルボニル化合物を含む反応物が同時または順次反応して形成され得る。具体的に、前記ポリアミド系重合体は、ジアミン化合物とジカルボニル化合物とが重合して形成され得る。
【0067】
一部の実現例において、前記ポリアミド系重合体は、ジアンヒドリド化合物をさらに含んで形成され得る。この際、ジアミン化合物とジアンヒドリド化合物との重合に由来するイミド(imide)繰り返し単位と、前記ジアミン化合物とジカルボニル化合物との重合に由来するアミド(amide)繰り返し単位とを含むポリアミド-イミド重合体が形成され得る。
【0068】
前記ジアミン化合物は、前記ジアンヒドリド化合物とイミド結合し、前記ジカルボニル化合物とアミド結合して共重合体を形成する化合物である。
【0069】
前記ジアミン化合物は特に制限されないが、例えば、芳香族構造を含む芳香族ジアミン化合物であり得る。例えば、前記ジアミン化合物は、下記化学式1の化合物であり得る。
[化1]
【0070】
前記化学式1において、Eは、置換または非置換の2価のC6-C30脂環式基、置換または非置換の2価のC4-C30ヘテロ脂環式基、置換または非置換の2価のC6-C30芳香族環基、置換または非置換の2価のC4-C30芳香族ヘテロ環基、置換または非置換のC1-C30アルキレン基、置換または非置換のC2-C30アルケニレン基、置換または非置換のC2-C30アルキニレン基、-O-、-S-、-C(=O)-、-CH(OH)-、-S(=O)2-、-Si(CH3)2-、-C(CH3)2-、および-C(CF3)2-の中から選択され得る。
【0071】
eは1~5の整数の中から選択され、eが2以上の場合、Eは互いに同一または異なり得る。
【0072】
前記化学式1の(E)
eは、下記化学式1-1a~1-14aで表される基の中から選択され得るが、これに限定されるものではない。
【0073】
具体的に、前記化学式1の(E)
eは、下記化学式1-1b~1-13bで表される基の中から選択され得るが、これに限定されるものではない。
【0074】
より具体的に、前記化学式1の(E)eは、前記化学式1-6bで表される基または前記化学式1-9bで表される基であり得る。
【0075】
一実現例において、前記ジアミン化合物は、フッ素含有置換基を有する化合物またはエーテル基(-O-)を有する化合物を含み得る。
【0076】
前記ジアミン化合物は、フッ素含有置換基を有する化合物からなり得る。この際、前記フッ素含有置換基はフッ素化炭化水素基であり、具体的にはトリフルオロメチル基であり得るが、これに限定されるものではない。
【0077】
他の実現例において、前記ジアミン化合物は1種のジアミン化合物を使用し得る。すなわち、前記ジアミン化合物は単一成分からなり得る。
【0078】
例えば、前記ジアミン化合物は、下記のような構造を有する2,2'-ビス(トリフルオロメチル)-4,4'-ジアミノビフェニル(2,2'-Bis(trifluoromethyl)-4,4'-diaminodiphenyl、
TFMB)を含み得るが、これに限定されるものではない。
【0079】
前記ジアンヒドリド化合物は特に制限されないが、芳香族ジアンヒドリド化合物を含み得る。例えば、前記ジアンヒドリド化合物は、ポリアミド系樹脂の複屈折特性を減少させ、ポリアミド系フィルムの透過度などの光学特性を向上させ得る。
【0080】
一実現例において、前記ジアンヒドリド化合物は、フッ素含有置換基を有する化合物を含み得る。この際、前記フッ素含有置換基はフッ素化炭化水素基であってよく、具体的にはトリフルオロメチル基などのパーフルオロアルキル基(-CnF4n-1、nは正の整数)を含み得るが、これに限定されるものではない。
【0081】
一部の実現例において、前記ジアンヒドリド化合物は、ジアンヒドリド基で置換された芳香族環基を2個以上含み得る。前記芳香族環基は、フッ素含有置換基によって互いに連結され得る。前記フッ素含有置換基は、フルオロアルキル基で置換された炭化水素基を含み、例えば、前記フルオロアルキル基は、トリフルオロメチル基などのパーフルオロアルキル基(-CnF4n-1、nは正の整数)を含み得る。前記炭化水素基は、飽和炭化水素基を含み、例えば、メチレン基(-CH2-)などのアルキレン基を含み得る。
【0082】
例えば、前記芳香族ジアンヒドリド化合物は、下記化学式2で表される化合物を含み得る。
[化2]
【0083】
前記化学式2において、Gは置換または非置換の4価のC6-C30脂環式基、置換または非置換の4価のC4-C30ヘテロ脂環式基、置換または非置換の4価のC6-C30芳香族環基、置換または非置換の4価のC4-C30芳香族ヘテロ環基であり、前記脂環式基、前記ヘテロ脂環式基、前記芳香族環基、または前記芳香族ヘテロ環基が単独で存在するか、互いに結合され縮合環を形成するか、置換または非置換のC1-C30アルキレン基、置換または非置換のC2-C30アルケニレン基、置換または非置換のC2-C30アルキニレン基、-O-、-S-、-C(=O)-、-CH(OH)-、-S(=O)2-、-Si(CH3)2-、-C(CH3)2-、および-C(CF3)2-の中から選択された連結基によって連結され得る。
【0084】
前記化学式2におけるGは、下記化学式2-1a~2-9aで表される基の中から選択され得るが、これに限定されるものではない。
【0085】
例えば、前記化学式2におけるGは、前記化学式2-2aで表される基、前記化学式2-8aで表される基、または前記化学式2-9aで表される基であり得る。
【0086】
例えば、前記ジアンヒドリド化合物は、下記のような構造を有する2,2'-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物(2,2'-Bis-(3,4-Dicarboxyphenyl)hexafluoropropane dianhydride;6-FDA),3,3',4,4'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(3,3',4,4'-biphenyltetracarboxylic dianhydride、BPDA)、またはその組み合わせを含み得るが、これに限定されるものではない。
【0087】
前記ジアミン化合物と前記ジアンヒドリド化合物とが重合してアミド酸基を形成し得る。
【0088】
次いで、前記アミド酸基は、脱水反応によってイミド基に転換され、この場合、ポリイミドセグメントおよびポリアミドセグメントを含むポリアミド-イミド系重合体が形成され得る。
【0089】
前記ポリイミドセグメントは、下記化学式Aで表される繰り返し単位を含み得る。
[化学式A]
前記化学式Aにおいて、E、Gおよびeに関する説明は前述の通りである。
【0090】
例えば、前記ポリイミドセグメントは、下記化学式A-1で表される繰り返し単位を含み得るが、これらに限定されるものではない。
[化学式A-1]
前記化学式A-1のnは1~400の整数であり得る。
【0091】
前記ジカルボニル化合物は特に限定されないが、例えば、下記化学式3の化合物であり得る。
[化3]
【0092】
前記化学式3において、Jは、置換または非置換の2価のC6-C30脂環式基、置換または非置換の2価のC4-C30ヘテロ脂環式基、置換または非置換の2価のC6-C30芳香族環基、置換または非置換の2価のC4-C30芳香族ヘテロ環基、置換または非置換のC1-C30アルキレン基、置換または非置換のC2-C30アルケニレン基、置換または非置換のC2-C30アルキニレン基、-O-、-S-、-C(=O)-、-CH(OH)-、-S(=O)2-、-Si(CH3)2-、-C(CH3)2-、および-C(CF3)2-の中から選択され得る。
【0093】
jは1~5の整数の中から選択され、jが2以上の場合、Jは互いに同一または異なり得る。
Xはハロゲン原子である。具体的に、XはF、Cl、Br、I等であり得る。より具体的に、XはClであり得るが、これに限定されるものではない。
【0094】
前記化学式3の(J)
jは、下記化学式3-1a~3-14aで表される基の中から選択され得るが、これに限定されるものではない。
【0095】
具体的に、前記化学式3の(J)
jは、下記化学式3-1b~3-8bで表される基の中から選択され得るが、これに限定されるものではない。
【0096】
より具体的に、前記化学式3の(J)jは、前記化学式3-1bで表される基、前記化学式3-2bで表される基、3-3bで表される基、または3-8bで表される基であり得る。
【0097】
一実現例において、前記ジカルボニル化合物は、1種以上のジカルボニル化合物を使用し得る。前記ジカルボニル化合物が2種以上使用される場合、前記ジカルボニル化合物は、前記化学式3において(J)jが前記化学式3-1b~3-8bで表される基の中から選択される2種以上が使用され得る。
【0098】
他の実現例において、前記ジカルボニル化合物は、芳香族構造を含む芳香族ジカルボニル化合物であり得る。
【0099】
前記ジカルボニル化合物は、下記のような構造を有するテレフタロイルクロリド(terephthaloyl chloride、TPC)、1,1'-ビフェニル-4,4'-ジカルボニルジクロリド(1,1'-biphenyl-4,4'-dicarbonyl dichloride、BPDC)、イソフタロイルクロリド(isophthaloyl chloride、IPC)、またはその組み合わせを含み得るが、これに限定されるものではない。
【0100】
一実現例において、前記ポリアミド系重合体は、1種以上のアミド系繰り返し単位を含み得る。
【0101】
また、前記ポリアミド系重合体が2種以上のアミド系繰り返し単位を含む場合、前記2種以上のアミド系繰り返し単位は、第1アミド系繰り返し単位および第2アミド系繰り返し単位を含み得る。前記第1アミド系繰り返し単位は、第1ジカルボニル化合物と前記ジアミン化合物とが反応して形成され、前記第2アミド系繰り返し単位は、第2ジカルボニル化合物と前記ジアミン化合物とが反応して形成され得る。
【0102】
また他の例として、前記ポリアミド系重合体は、第1ジカルボニル化合物に由来の第1アミド系繰り返し単位および第2ジカルボニル化合物に由来の第2アミド系繰り返し単位を含み得る。
【0103】
前記第1ジカルボニル化合物および前記第2ジカルボニル化合物は、互いに異なる化合物であり得る。
【0104】
前記第1ジカルボニル化合物および前記第2ジカルボニル化合物は、それぞれ2つのカルボニル基を含み得る。前記第1ジカルボニル化合物に含まれている2つのカルボニル基間の角度は、前記第2ジカルボニル化合物に含まれている2つのカルボニル基間の角度よりも大きくあり得る。
【0105】
実現例において、前記第1ジカルボニル化合物および前記第2ジカルボニル化合物は、互いに構造異性体の関係であり得る。
【0106】
前記第1ジカルボニル化合物および前記第2ジカルボニル化合物は、それぞれ芳香族ジカルボニル化合物(aromatic dicarbonyl compound)であり得る。一部の実現例において、前記第1ジカルボニル化合物および前記第2ジカルボニル化合物は、それぞれ1個のベンゼン環(フェニル基)を有し得る。
【0107】
例えば、前記第1ジカルボニル化合物および前記第2ジカルボニル化合物が互いに異なる芳香族ジカルボニル化合物であり得るが、これに限定されるものではない。
【0108】
前記第1ジカルボニル化合物および前記第2ジカルボニル化合物がそれぞれ芳香族ジカルボニル化合物の場合、ベンゼン環を含んでいるので、製造されたポリアミド系重合体を含むフィルムの表面硬度および引張強度のような機械的物性を向上させるのに寄与し得る。
【0109】
例えば、前記第1ジカルボニル化合物に含まれている2つのカルボニル基の間角は160°~180°であり、前記第2ジカルボニル化合物に含まれている2つのカルボニル基の間角は80°~140°であり得る。
【0110】
例えば、前記第1ジカルボニル化合物はTPCを含み、前記第2ジカルボニル化合物はIPCを含み得るが、これに限定されるものではない。
【0111】
前記第1ジカルボニル化合物としてTPC、前記第2ジカルボニル化合物としてIPCを適切に組み合わせて使用すると、製造されたポリアミド系重合体を含むフィルムは、高い耐酸化性、生産性、透光率、透明度、モジュラスなどを有することができ、ヘイズおよび黄色度が低く表面の凹凸特徴が改善され得る。
【0112】
前記ジアミン化合物および前記ジカルボニル化合物が重合して、下記化学式Bで表される繰り返し単位を形成し得る。
[化B]
前記化学式Bにおいて、E、J、e、およびjに関する説明は前述の通りである。
【0113】
例えば、前記ジアミン化合物および前記ジカルボニル化合物が重合して、化学式B-1およびB-2で表されるアミド繰り返し単位を形成し得る。
【0114】
[化B-1]
前記化学式B-1のyは1~400の整数である。
【0115】
[化B-2]
前記化学式B-2のyは1~400の整数である。
【0116】
一部の実現例において、前記第1アミド系繰り返し単位と前記第2アミド系繰り返し単位とのモル比は、20:80~80:20であり得る。好ましくは、前記第1アミド系繰り返し単位と前記第2アミド系繰り返し単位とのモル比は、30:70~80:20、40:60~80:20、または50:50~80:20であり得るが、これに限定されるものではない。
【0117】
一部の実現例において、前記ポリアミド系重合体は、イミド系繰り返し単位とアミド系繰り返し単位とを0:100~80:20のモル比で含み得る。具体的に、前記ポリアミド系重合体は、イミド系繰り返し単位とアミド系繰り返し単位とを、0:100~70:30、0:100~50:50、1:99~50:50、または5:95~50:50のモル比で含み得る。
【0118】
前術のモル比範囲を満足すると、ポリアミド系フィルムの柔軟性、機械的強度および光学特性がともに向上され得る。
【0119】
例えば、前述のポリアミド系重合体の組成および使用されるフィラーの粒径、含有量、工程条件などが総合され、フィルム表面の3D粗さによって測定される特性を調節し得る。
【0120】
一部の実現例において、前記ポリアミド系フィルムは、厚さ50μmを基準に厚さ偏差が4μm以下であり得る。前記厚さ偏差は、前記フィルムの任意(random)の位置の10か所を測定した厚さの平均に対する最大値または最小値間の偏差のことを意味し得る。この場合、前記ポリアミド系フィルムは、均一な厚さを有し、各ポイントにおける光学特性および機械的特性が均一に表れ得る。
【0121】
前記ポリアミド系フィルムの透過度は80%以上であり得る。例えば、前記透過度は、82%以上、85%以上、88%以上、89%以上、80%~99%、88%~99%、または89%~99%であり得るが、これに限定されるものではない。
【0122】
前記ポリアミド系フィルムの黄色度(yellow index)は4以下であり得る。例えば、前記黄色度が3.5以下または3以下であり得るが、これに限定されるものではない。
【0123】
前記ポリアミド系フィルムのモジュラスが5GPa以上であり得る。具体的に、前記モジュラスは、5.5GPa以上、6GPa以上、または6.5GPa以上であり得るが、これに限定されるものではない。
【0124】
前記ポリアミド系フィルムの圧縮強度は、0.4kgf/μm以上であり得る。具体的に、前記圧縮強度は、0.45kgf/μm以上または0.46kgf/μm以上であり得るが、これに限定されるものではない。
【0125】
前記ポリアミド系フィルムをUTM圧縮モードで2.5mm球状のチップを用いて、10mm/minの速度で穿孔する際、クラックを含む穿孔最大径(mm)が60mm以下である。具体的に、前記穿孔最大径が、5mm~60mm、10mm~60mm、15mm~60mm、20mm~60mm、25mm~60mm、または25mm~58mmであり得るが、これに限定されるものではない。
【0126】
前記ポリアミド系フィルムのヘイズは1%以下であり得る。具体的に、前記ヘイズは0.7%以下または0.5%以下であり得るが、これに限定されない。
【0127】
前記ポリアミド系フィルムは、鉛筆硬度がHB以上であり得る。具体的に、前記鉛筆硬度がF以上またはH以上であり得るが、これに限定されるものではない。
【0128】
前記ポリアミド系フィルムは、引張強度が15kgf/mm2以上であり得る。具体的に、前記引張強度が、18kgf/mm2以上、20kgf/mm2以上、21kgf/mm2以上、または22kgf/mm2以上であり得るが、これに限定されるものではない。
【0129】
前記ポリアミド系フィルムは、伸び率が15%以上であり得る。具体的に、前記伸び率が、16%以上、17%以上、または17.5%以上であり得るが、これに限定されるものではない。
【0130】
前述の前記ポリアミド系フィルムの各物性は、40μm~60μmの厚さを基準とする。例えば、前記ポリアミド系フィルムの各物性は、50μmの厚さを基準とする。
【0131】
前述のポリアミド系フィルムの構成成分および物性に関する特徴は、互いに組み合わされ得る。
【0132】
例えば、前記ポリアミド系フィルムは、ポリアミド系重合体を含み、フィルムの厚さ50μmを基準に、モジュラスが5GPa以上であり、透過度が80%以上であり、ヘイズが1%以下であり、黄色度が3以下であり、鉛筆硬度がF以上であり得る。
【0133】
[ディスプレイ装置用カバーウィンドウ]
一実現例によるディスプレイ装置用カバーウィンドウは、ポリアミド系フィルムおよび機能層を含む。
【0134】
前記ポリアミド系フィルムは、3D表面粗さ測定の際、下記の測定方法で測定された単位面積当たりの頂点の数(Sds)が4400/mm2以下である。
【0135】
[測定方法]
ブルカー社のCONTOUR GT-Xを用いて、1回の測定領域を166μm×220μmに設定し、20倍率の対物レンズを適用して測定した後、ガウシアンフィルタを適用する。
【0136】
前記ポリアミド系フィルムに関する具体的な説明は、前述の通りである。
【0137】
前記ディスプレイ装置用カバーウィンドウは、ディスプレイ装置に有用に適用され得る。
【0138】
前記ポリアミド系フィルムは、前述の3D表面粗さ特性を有することにより、優れた光学特性・機械的特性および巻取性・滑り性を有し得る。
【0139】
[ディスプレイ装置]
一実現例によるディスプレイ装置は、表示部と、前記表示部上に配置されたカバーウィンドウとを含み、前記カバーウィンドウがポリアミド系フィルムと機能層とを含む。
【0140】
前記ポリアミド系フィルムは、3D表面粗さ測定の際、下記の測定方法で測定された単位面積当たりの頂点の数(Sds)が4400/mm2以下である。
【0141】
[測定方法]
ブルカー社のCONTOUR GT-Xを用いて、1回の測定領域を166μm×220μmに設定し、20倍率の対物レンズを適用して測定した後、ガウシアンフィルタを適用する。
【0142】
前記ポリアミド系フィルムおよびカバーウィンドウに関する具体的な説明は、前述の通りである。
【0143】
図1~
図3は、一実現例によるディスプレイ装置の概略的な斜視図、分解図および断面図である。
【0144】
具体的に、
図1~
図3には、表示部400と、前記表示部400上に第1面101および第2面102を有するポリアミド系フィルム100と機能層200とを含むカバーウィンドウ300とが配置され、前記表示部400とカバーウィンドウ300との間に接着層500が配置されたディスプレイ装置が例示されている。
【0145】
前記表示部400は、画像が表示され得るものであり、フレキシブル(flexible)な特性を有し得る。
【0146】
前記表示部400は、画像を表示するための表示パネルであり得るが、例えば、液晶表示パネルまたは有機電界発光表示パネルであり得る。前記有機電界発光表示パネルは、前面偏光板および有機ELパネルを含み得る。
【0147】
前記前面偏光板は、前記有機ELパネルの前面上に配置され得る。具体的に、前記前面偏光板は、前記有機ELパネルにおいて、画像が表示される面に接着され得る。
【0148】
前記有機ELパネルは、ピクセル単位の自己発光によって画像を表示し得る。前記有機ELパネルは、有機EL基板および駆動基板を含み得る。前記有機EL基板は、ピクセルにそれぞれ対応する複数の有機電界発光ユニットを含み得る。具体的に、それぞれ陰極、電子輸送層、発光層、正孔輸送層、および陽極を含み得る。前記駆動基板は、前記有機EL基板に駆動的に接続され得る。すなわち、前記駆動基板は、前記有機EL基板に駆動電流などのような駆動信号を印加し得るように接続されることにより、前記有機電界発光ユニットにそれぞれ電流を印加して、前記有機EL基板を駆動し得る。
【0149】
また、前記表示部400および前記カバーウィンドウ300の間に接着層500が含まれ得る。前記接着層は、光学的に透明な接着層であってよく、特に限定されない。
【0150】
前記カバーウィンドウ300は、前記表示部400上に配置され得る。前記カバーウィンドウは、実現例によるディスプレイ装置の最外郭に位置して、前記表示部を保護し得る。
【0151】
前記カバーウィンドウ300は、ポリアミド系フィルムと機能層とを含み得る。前記機能層は、ハードコーティング層、反射率低減層、防汚層、および防眩層からなる群より選択された1種以上であり得る。前記機能層は、前記ポリアミド系フィルムの少なくとも一面にコーティングされ得る。
【0152】
実現例によるポリアミド系フィルムの場合、ディスプレイ駆動方式やパネル内部のカラーフィルター、積層構造などの変更もなく簡単にディスプレイ装置の外部にフィルム状で適用して、均一な厚さ、低いヘイズ、高い透光率および透明性を有するディスプレイ装置を提供し得るところ、過度の工程変更やコスト増加を必要としないので、生産コストを削減できるという利点もある。
【0153】
実現例によるポリアミド系フィルムは、高い透過度、低いヘイズ、低い黄色度のような優れた光学特性を有するのみならず、3D表面粗さ上のSds、Szおよび/またはSscが所定の範囲に調節されることにより、優れたモジュラス、鉛筆硬度などの機械的特性および滑り性、巻取性などの取扱容易性を有し得る。
【0154】
また、実現例によるポリアミド系フィルムは、特定レベル以下の面内位相差および厚さ方向位相差を有することにより、光学歪みを最小化することができ、側面から光が漏れてくる光漏れ現象をも減少させ得る。
【0155】
前述の範囲のSds、Szおよび/またはSscを有するポリアミド系フィルムの場合、フィルムの優れた光学・機械的特性を有しながらも滑り性および巻取性に優れるので、フィルムを大面積化しても損傷することなくフィルムをロールで巻き取り、それを繰り出して使用することができ、ローラーブル/フレキシブルディスプレイ装置に効果的に適用され得る。
【0156】
[ポリアミド系フィルムの製造方法]
一実現例は、ポリアミド系フィルムの製造方法を提供する。
【0157】
前記ポリアミド系フィルムの3D表面粗さ上の特性は、前記ポリアミド系フィルムをなす成分の化学的、物理的特性とともに、後述する前記ポリアミド系フィルムの製造方法において各段階の工程条件が総合されて現れる結果であり得る。
【0158】
例えば、ポリアミド系フィルムをなす成分の組成と含有量、フィルム製造工程において重合条件および熱処理条件等が総合され、目的とする3D表面粗さ上の特性を実現し得る。
【0159】
一実現例によるポリアミド系フィルムの製造方法は、有機溶媒中でジアミン化合物と、ジカルボニル化合物およびジアンヒドリド化合物のうち少なくとも1つとを重合して、ポリアミド系重合体を含む重合体溶液を調製する段階と、前記重合体溶液をベルト上にキャスティングおよび乾燥して、ゲルシートを製造する段階と、前記ゲルシートを熱処理する段階とを含む。
【0160】
具体的に、前記ポリアミド系フィルムの製造方法は、有機溶媒中でジアミン化合物、ジカルボニル化合物、および選択的にジアンヒドリド化合物を重合して、ポリアミド系重合体を含む重合体溶液を調製する段階と、前記重合体溶液をベルト上にキャスティングおよび乾燥して、ゲルシートを製造する段階と、前記ゲルシートを熱処理する段階とを含む。
【0161】
図4を参照すると、一実現例によるポリアミド系フィルムの製造方法は、ジアミン化合物、ジカルボニル化合物、および選択的にジアンヒドリド化合物を重合して、ポリアミド系重合体溶液を調製する段階(S100)と、前記重合体溶液をベルト上にキャスティングした後乾燥してゲルシートを製造する段階(S200)と、前記ゲルシートを熱処理する段階(S300)とを含む。
【0162】
前記ポリアミド系フィルムは、ポリアミド系重合体を含むフィルムであって、前記ポリアミド系重合体は、構造単位としてアミド繰り返し単位を含み、選択的に、イミド繰り返し単位をさらに含んでも良い。
【0163】
前記ポリアミド系フィルムの製造方法において、前記ポリアミド系重合体を調製するための重合体溶液は、反応器内で有機溶媒中にジアミン化合物、ジカルボニル化合物、および選択的にジアンヒドリド化合物を同時または順次混合し、前記混合物を反応させて調製され得る(S100)。
【0164】
一実現例において、前記重合体溶液は、有機溶媒中にジアミン化合物とジカルボニル化合物とを同時または順次混合および反応させて調製され、この際、ジアンヒドリド化合物がさらに混合および反応され得る。
【0165】
一実現例において、前記重合体溶液は、有機溶媒中にジアミン化合物、ジアンヒドリド化合物およびジカルボニル化合物を同時に投入して反応させることにより調製され得る。
【0166】
一実現例において、有機溶媒中でジアミン化合物およびジアンヒドリド化合物が先に反応した後、ジカルボニル化合物と反応し得る。例えば、ジアンヒドリド化合物をジアミン化合物と反応させてポリアミック酸またはポリイミドを形成した後、前記ポリアミック酸またはポリイミドを前記ジカルボニル化合物と反応させてポリアミド-イミドを含む重合体溶液を形成し得る。
【0167】
または、ジアミン化合物がジカルボニル化合物と反応した後、ジアンヒドリド化合物が投入されて良く、この場合、ジアミン化合物とジカルボニル化合物とが反応して形成されたポリアミドに、ジアンヒドリド化合物が追加され得る。
【0168】
一部の実現例において、前記ジアンヒドリド化合物と前記ジカルボニル化合物とは、0:100~80:20のモル比で使用され得る。具体的に、前記ジアンヒドリド化合物と前記ジカルボニル化合物とは、0:100~70:30、0:100~50:50、1:99~50:50、5:95~50:50のモル比で含み得る。
【0169】
他の実現例において、前記ジカルボニル化合物は、互いに異なる2種のジカルボニル化合物が使用され得る。この場合、前記2種のジカルボニル化合物は、同時または順次混合および反応され得る。好ましくは、第1ジカルボニル化合物と前記ジアミン化合物、前記ポリアミック酸または前記ポリイミドが反応してプレポリアミド系重合体が形成され、前記プレポリアミド系重合体と第2ジカルボニル化合物とが反応して、前記ポリアミド系重合体が形成され得る。この場合、ポリアミド系重合体の3D表面粗さ特性が容易に調節され得る。
【0170】
前記重合体溶液に含まれている重合体は、前記ジアミン化合物と前記ジカルボニル化合物との重合に由来のアミド繰り返し単位を含み、前記ジアミン化合物と前記ジアンヒドリド化合物との重合に由来のイミド繰り返し単位を含み得る。
【0171】
一実現例において、前記ジアミン化合物と前記ジアンヒドリド化合物との混合および反応は、0℃~50℃の温度条件にて行われ得る。前記温度範囲から外れると、重合核の形成が少なすぎるかまたは多すぎるため、目的とする3D表面粗さ特性を有するポリアミド系重合体またはフィルムの製造が難しくなり得る。したがって、ポリアミド系フィルムの機械的特性および光学特性が低下し得る。また、前記重合体溶液の粘度が所定範囲に未達となり得る。好ましくは、前記ジアミン化合物と前記ジアンヒドリド化合物との混合および反応は、0℃~45℃、0℃~40℃、10℃~50℃、10℃~45℃、10℃~40℃、20℃~50℃、20℃~45℃、または20℃~40℃の温度条件にて行われ得る。
【0172】
一実現例において、前記ジアミン化合物、前記ポリアミック酸または前記ポリイミドと、前記ジカルボニル化合物との混合および反応は、-20℃~25℃の温度条件にて行われ得る。例えば、前記溶媒、前記ジアミン化合物および前記ジカルボニル化合物の混合および反応は、-20℃~25℃の温度条件にて行われ得る。前記温度範囲から外れると、重合核の形成が少なすぎるか多すぎて、目的とする特性を有するポリアミド系重合体の形成が難しくなり得る。これによって、前述の3D表面粗さ特性が実現できなくなり得る。したがって、ポリアミド系フィルムのモジュラス、黄色度、巻取性、滑り性など特性が低下し得る。また、前記重合体溶液の粘度が所定の範囲に未達となり、製膜したフィルムの厚さ偏差が増加し得る。好ましくは、前記ポリアミド系重合体を含む溶液を調製する段階は、-20℃~20℃、-20℃~15℃、-20℃~10℃、-15℃~20℃、-15℃~15℃、-15℃~10℃、-10℃~20℃、-10℃~15℃、-10℃~10℃、-8℃~20℃、-8℃~15℃、-8℃~10℃、-5℃~20℃、-5℃~15℃、または-5℃~10℃の温度条件にて行われ得る。
【0173】
前記重合体溶液に含まれている固形分の含有量は10重量%~30重量%であり得るが、これに限定されるものではない。
【0174】
前記重合体溶液に含まれている固形分の含有量が前記範囲であると、キャスティング工程において、効果的にポリアミド系フィルムが製造され得る。また、製造されたポリアミド系フィルムは、向上されたモジュラス、鉛筆硬度などの機械的物性および低い黄色度などの光学物性を有し得る。
【0175】
また他の実現例において、前記重合体溶液を調製する段階は、前記重合体溶液のpHを調整する段階をさらに含み得る。この段階において、前記重合体溶液のpHは4~7に調整され、例えば、4.5~7に調整され得る。
【0176】
前記重合体溶液のpHは、pH調整剤を添加することにより調整され、前記pH調整剤は特に制限されないが、例えば、アルコキシアミン、アルキルアミンまたはアルカノールアミンなどのアミン系化合物を含み得る。
【0177】
前記重合体溶液のpHを前述の範囲で調整することにより、前記重合体溶液から製造されたフィルムの欠陥発生を阻止し、黄色度およびモジュラスの面で目的とする光学物性および機械的物性を実現し得る。
【0178】
前記pH調整剤は、前記重合体溶液内の単量体の総モル数を基準に、0.1モル%~10モル%の量で添加され得る。
【0179】
前記重合体溶液を調製するために使用される前記第1ジカルボニル化合物と前記第2ジカルボニル化合物とのモル比は、25:75~95:5であり得る。好ましくは、前記第1ジカルボニル化合物と前記第2ジカルボニル化合物とのモル比は、20:80~80:20、30:70~80:20、40:60~80:20、または50:50~80:20であり得るが、これに限定されるものではない。
【0180】
前記第1ジカルボニル化合物と前記第2ジカルボニル化合物とがこのような割合で使用されることにより、フィラーとの相溶性に優れ、3D表面粗さ特性が前述の範囲にあるポリアミド系重合体を調製することができ、ポリアミド系フィルムの機械的特性および光学特性を改善し得る。
【0181】
前記ジアミン化合物およびジカルボニル化合物に関する説明は前述の通りである。
【0182】
一実現例において、前記有機溶媒は、ジメチルホルムアミド(dimethylformamide、DMF)、ジメチルアセトアミド(dimethylacetamide、DMAc)、N-メチル-2-ピロリドン(N-methyl-2-pyrrolidone、NMP)、m-クレゾール(m-cresol)、テトラヒドロフラン(tetrahydrofuran、THF)、およびクロロホルムからなる群より選択された1種以上であり得る。前記重合体溶液に用いられる有機溶媒は、ジメチルアセトアミド(DMAc)であり得るが、これに限定されるものではない。
【0183】
図5は、一実現例によるポリアミド系フィルムの工程設備に関する概略的な概念図である。
図5を参照すると、前述の前記重合体溶液は重合設備10にて調製され、タンク20に移動して保管され得る。
【0184】
前記重合体溶液は、-20℃~20℃、-20℃~10℃、-20℃~5℃、-20℃~0℃、または0℃~10℃にて保管され得る。
【0185】
前記温度で保管すると、前記重合体溶液の変質を防止することができ、含水率を低下させ、これにより製造されたフィルムの欠陥(defect)を防止し得る。
【0186】
一実現例において、前記ポリアミド系重合体溶液を脱気する段階をさらに含み得る。前記脱気は、タンク20内にて行われ得る。前記脱気により前記重合体溶液中の水分を除去し、不純物を減少させることにより、反応収率を増加し得る。また、脱気済みの重合体溶液を所定の条件で乾燥させることにより、目的とする3D表面粗さ特性を効果的に実現し得る。
【0187】
前記脱気は、真空脱泡または不活性ガスパージを含み得る。
前記真空脱泡は、前記重合体溶液が収容されている反応器を0.1bar~0.7barに減圧した後、30分~3時間行われ得る。このような条件で真空脱泡を行うことにより、前記重合体溶液内部の気泡を低減させることができ、その結果、それにより製造されたフィルムの表面欠陥を防止し、ヘイズなどの優れた光学物性を実現し得る。
【0188】
具体的に、前記パージは、不活性ガスを用いて前記タンクの内部圧力を1気圧~2気圧でパージする方法により行われ得る。このような条件で前記パージを実施することにより、前記重合体溶液内部の水分を除去し、不純物を減少させることによって、反応収率を増加することができ、ヘイズなどの優れた光学物性および機械的物性などを実現し得る。
【0189】
前記不活性ガスは、窒素、ヘリウム(He)、ネオン(Ne)、アルゴン(Ar)、クリプトン(Kr)、キセノン(Xe)、およびラドン(Rn)からなる群より選択された1種以上であり得るが、これに限定されるものではない。具体的に、前記不活性ガスは窒素であり得る。
【0190】
前記真空脱泡および前記不活性ガスパージは、別の工程で行われ得る。
例えば、真空脱泡する工程が行われ、それ以降に不活性ガスでパージする工程が行われ得るが、これに限定されることではない。
【0191】
前記真空脱泡および/または前記不活性ガスパージを行うことにより、製造されたポリアミド系フィルム表面の物性が向上され得る。
【0192】
一部の実現例において、前記重合体溶液を熟成させ得る。
前記熟成は、前記重合体溶液を24時間以上-10℃~10℃の温度条件に静置して行われ得る。この場合、前記重合体溶液に含まれているポリアミド系重合体または未反応物が、例えば、反応を仕上げたり、化学平衡をなしたりすることにより前記重合体溶液が均質化され、これにより形成されたポリアミド系フィルムの機械的特性および光学特性が、フィルム全体の面積および全体の深さに対して実質的に均一となり得る。好ましくは、前記熟成は、-5℃~10℃、-5℃~5℃、または-3℃~5℃の温度条件で行われ得る。
【0193】
前述のように、有機溶媒中でポリアミド系重合体溶液を調製した後、前記重合体溶液にフィラーを投入し得る。例えば、フィラーの投入は、前記熟成前、前記脱泡前、前記パージ前、または前記保管(タンク移動)前に行われ得る。
【0194】
前記フィラーの使用量は、重合体溶液中の固形分の総重量に対して600ppm以上であり得る。具体的に、前記フィラーの使用量は、固形分総重量を基準に、700ppm以上、800ppm以上、900ppm以上、1000ppm以上、1100ppm以上、または1200ppm以上であり得る。また、固形分総重量を基準に、5000ppm以下、4500ppm以下、4000ppm以下、3500ppm以下、3000ppm以下、2500ppm以下、または2000ppm以下であり得るが、これに限定されるものではない。
【0195】
前記フィラーは、分散溶媒上に分散してフィラー分散液として投入され得る。前記フィラー分散液の分散溶媒としては、前記重合体形成反応の溶媒として例示した溶媒が使用され得る。好ましくは、前記分散溶媒と前記重合体反応溶媒とは同一であり得る。
【0196】
一部の実現例において、前記フィラー分散液中のフィラー固形分の含有量は10重量%~30重量%であり得る。この場合、前記フィラーが前記重合体溶液に均一に混合され、それにより、フィルムの3D表面粗さ特性を効果的に調節し得る。
前記フィラーに関するより具体的な説明は前述の通りである。
【0197】
前記重合体溶液の粘度は、20℃にて50000cps~500000cpsであり得る。
【0198】
具体的に、前記重合体溶液を調製する段階は、重合体溶液の粘度を調節する段階を含み得る。
【0199】
より具体的に、前記ポリアミド系重合体を含む重合体溶液を調製する段階は、20℃にて測定した粘度500cps~10000cpsの第1重合体溶液を形成する段階と、前記第1重合体溶液に追加のジカルボニル化合物を反応させて20℃にて測定した粘度150000cps~300000cpsの第2重合体溶液を形成する段階とを含み得る。
【0200】
例えば、前記第1重合体溶液の粘度は、600cps~10000cps、800cps~10000cps、または1000cps~10000cpsであり得る。
【0201】
また、前記第2重合体溶液の粘度は、150000cps~250000cps、150000cps~220000cps、または180000cps~220000cpsであり得る。
【0202】
前記粘度範囲を満足することにより、前記重合体溶液がキャスティングされる際、欠陥なく均一な厚さにキャスティングされ、乾燥過程において厚さおよび平面方向に対して局所的・部分的な光学・機械的物性のばらつきもなく、実質的に均一な厚さのポリアミド系フィルムを形成し得る。
【0203】
前記重合体溶液をキャスティングしてゲルシートを製造し得る(S200)。
例えば、前記重合体溶液は、ロール、ベルトなどの支持体上に圧出および/またはキャスティングされ得る。
図5を参照すると、前記重合体溶液は、ベルト30上に塗布され移動および乾燥されることにより、ゲルシートを形成し得る。
【0204】
前記重合体溶液がベルト30上にキャスティングされるとき、重合体溶液の注入速度は300g/分~700g/分であり得る。前記重合体溶液の注入速度が前記範囲を満足することによって、前記ゲルシートが適切な厚さで均一に形成され得る。
【0205】
前記重合体溶液のキャスティング厚は200μm~700μmであり得る。前記重合体溶液が前記厚さ範囲にキャスティングされることにより、乾燥および熱処理を経て最終フィルムとして製造されたとき、適切な厚さと厚さ均一度とを確保し得る。
【0206】
一部の実現例において、前記重合体溶液は、50℃~200℃でベルト上にキャスティングおよび乾燥され得る。この場合、溶媒蒸発量が効果的に調節され得る。好ましくは、前記キャスティングおよび乾燥温度は、60℃~200℃、70℃~200℃、50℃~150℃、60℃~150℃、70℃~150℃、50℃~120℃、60℃~120℃、70℃~120℃、50℃~100℃、60℃~100℃、または70℃~100℃であり得る。
【0207】
一部の実現例において、前記乾燥時間は、5分~60分、10分~60分、15分~60分、5分~50分、10分~50分、15分~50分、5分~40分、10分~40分、または15分~40分であり得る。
【0208】
一部の実現例において、前記重合体溶液をベルト上で乾燥させる段階は、単位面積当たりの溶媒蒸発量を1.1kg/m2~3.0kg/m2に調節して行われ得る。この場合、フィルムの表面粗さ特性が目標とする範囲に効果的に調節され、これにより、光学特性、機械的特性、並びに滑り性および巻取性が向上したフィルムが製造され得る。好ましくは、前記単位面積当たりの溶媒蒸発量は、1.1kg/m2~2.5kg/m2、1.1kg/m2~2.0kg/m2、1.1kg/m2~1.8kg/m2、1.3kg/m2~3.0kg/m2、1.3kg/m2~2.5kg/m2、1.3kg/m2~2.0kg/m2、1.3kg/m2~1.8kg/m2、1.4kg/m2~3.0kg/m2、1.4kg/m2~2.5kg/m2、1.4kg/m2~2.0kg/m2、または1.4kg/m2~1.8kg/m2に調節され得る。
【0209】
例えば、ベルトの移動距離は40m~60mであり得る。また、前記ベルトは0.5m/分~15m/分、具体的には1m/分~10m/分の速度で移動し得る。
【0210】
前記乾燥中に前記重合体溶液の溶媒が一部または全部揮発され、前記ゲルシートが製造され得る。
【0211】
一実現例によると、前記乾燥後のゲルシートに含まれている残留溶媒の含有量は、1500ppm以下であり得る。この場合、フィルムの表面粗さ特性が目標とする範囲に効果的に調節され、これにより、光学特性、機械的特性、並びに滑り性および巻取性が向上したフィルムが製造され得る。
【0212】
一実現例によると、前記ゲルシートを製造する段階以降に、ゲルシートの端部を固定する段階を行い得る。
【0213】
前記ゲルシートの端部を固定する段階において、前記ゲルシートをMD方向に0.99倍~1.1倍延伸し得る。具体的に、前記ゲルシートをMD方向に0.99倍~1.08倍、1.0倍~1.08倍、または1.01倍~1.08倍延伸し得るが、これに限定されるものではない。
【0214】
また、前記ゲルシートの端部を固定する段階において、前記ゲルシートをTD方向に0.99倍~1.1倍延伸し得る。具体的に、前記ゲルシートをTD方向に0.99倍~1.08倍、1.0倍~1.08倍、または1.01倍~1.08倍延伸し得るが、これに限定されるものではない。
【0215】
また、前記ゲルシートは、下記の熱処理段階において、徐々に延伸され得る。具体的に、前記ゲルシートは、下記の熱処理段階において、約1.01倍~約1.08倍延伸され得る。
【0216】
乾燥されたゲルシートは、熱処理されてポリアミド系フィルムを形成し得る(S300)。
前記ゲルシートの熱処理は、例えば、熱硬化装置40により行われ得る。
【0217】
前記熱硬化装置は、熱風により前記ゲルシートを熱処理し得る。
熱風による熱処理を行うと、熱量が均等に付与され得る。もし、熱量が均等に分布されないと、満足のいく表面粗さが実現できず、そうすると、表面エネルギーが上昇し過ぎたり、低下し過ぎたりし得る。
【0218】
一実現例によると、前記熱処理後のフィルムに含まれている残留溶媒の含有量は、1500ppm以下であり得る。この場合、フィルムの表面粗さ特性が目標とする範囲に効果的に調節され、これにより、光学特性、機械的特性、並びに滑り性および巻取性が向上したフィルムが製造され得る。
【0219】
前記ゲルシートの熱処理は、60℃~500℃の範囲で5分~200分間行われ得る。具体的に、前記ゲルシートの熱処理は、80℃~300℃の範囲で1.5℃/分~20℃/分の速度で昇温させながら10分~150分間行われ得る。
【0220】
この際、前記ゲルシートの熱処理開始温度は60℃以上であり得る。具体的に、前記ゲルシートの熱処理開始温度は80℃~180℃であり得る。
【0221】
また、熱処理中の最高温度は200℃~500℃であり得る。例えば、前記熱処理中の最高温度は、230℃~500℃、250℃~500℃、300℃~500℃、200℃~450℃、230℃~450℃、または300℃~450℃であり得る。
【0222】
一実現例によると、前記ゲルシートの熱処理は2段階以上で行われ得る。
具体的に、前記熱処理は、60℃~120℃の範囲で5分~30分間行われる第1熱風処理段階と、120℃~350℃の範囲で10分~120分間行われる第2熱風処理段階とを含み得る。
【0223】
このような条件で熱処理することにより、前記ゲルシートの溶媒含有量および硬化度を調節して、目的とする3D表面粗さ特性を実現することができ、前記硬化フィルムが高い光透過率および低いヘイズ、適正なレベルの光沢度を同時に確保し得る。
【0224】
一実現例によると、前記熱処理は赤外線(IR)ヒーターを通過させる段階を含み得る。前記IRヒーターによる熱処理は、300℃以上の温度範囲で1分~30分間行われ得る。具体的に、前記IRヒーターによる熱処理は、300℃~500℃の温度範囲で1分~20分間行われ得る。
【0225】
硬化したフィルムは移動および冷却され得る。
図5を参照すると、熱硬化装置40を通過した硬化フィルムは、冷却チャンバー(図示せず)または適切な温度雰囲気下で冷却され得る。
【0226】
前記硬化フィルムを移動させながら冷却する段階は、100℃/分~1000℃/分の速度で減温する第1減温段階と、40℃/分~400℃/分の速度で減温する第2減温段階とを含み得る。
【0227】
この際、具体的に、前記第1減温段階の後で前記第2減温段階が行われ、前記第1減温段階の減温速度は、前記第2減温段階の減温速度より速くあり得る。
【0228】
例えば、前記第1減温段階中の最大速度が、前記第2減温段階中の最大速度よりも速くあり得る。または、前記第1減温段階中の最低速度が、前記第2減温段階中の最低速度よりも速くあり得る。
【0229】
前記硬化フィルムの冷却段階がこのように多段階で行われることにより、前記硬化フィルムの物性をより安定化させることができ、前記硬化過程で実現されたフィルムの光学的物性、機械的物性、滑り性などをより安定的に長期間維持し得る。
【0230】
図5を参照すると、冷却された硬化フィルムはワインダー50を介して巻取られ得る。
【0231】
前記乾燥時のベルト上におけるゲルシートの移動速度と、巻取時の硬化フィルムの移動速度との比は、1:0.95~1:1.40であり得る。具体的に、前記移動速度の比は、1:0.99~1:1.20、1:0.99~1:1.10、または1:1.00~1:1.05であり得るが、これに限定されるものではない。
【0232】
前記移動速度の比が前記範囲から外れると、前記硬化フィルムの機械的物性が損なわれるおそれがあり、柔軟性および弾性特性が低下するおそれがある。
【0233】
前記ポリアミド系フィルムは、前述の製造方法により製造されることによって、所定範囲の3D表面粗さ特性を有することができ、これにより、光学特性、機械的特性、巻取性および滑り性がともに向上され得る。
【0234】
このような前記ポリアミド系フィルムは、柔軟性、透明性、特定レベルの輝度が求められる様々な用途に適用可能である。例えば、前記ポリアミド系フィルムは、太陽電池、ディスプレイ、半導体素子、センサーなどに適用され得る。
【0235】
特に、前記ポリアミド系フィルムは、優れた表面特性および光学特性を有するので、ディスプレイ装置用カバーウィンドウおよびディスプレイ装置に有用に適用され、フォルディング特性に優れてフォルダブルディスプレイ装置やフレキシブルディスプレイ装置にも有用に適用され得る。
【0236】
前記で述べた製造方法により製造されたポリアミド系フィルムに関する説明は、前述の通りである。
【0237】
(実施例)
前記の内容を下記実施例によりさらに詳細に説明する。なお、以下の実施例は、本発明を例示するものであるのみ、実施例の範囲がこれらにのみ限定されるものではない。
【0238】
(実験例1)
温度調整が可能な二重ジャケットの1L用ガラス反応器に、10℃の窒素雰囲気下で、有機溶媒であるジメチルアセトアミド(DMAc)を満たした後、芳香族ジアミンである2,2'-ビス(トリフルオロメチル)-4,4'-ジアミノビフェニル(TFMB)を徐々に投入しながら溶解した。
【0239】
次いで、反応器内部の温度を30℃に上げ、4,4'-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物(6FDA)を徐々に投入しながら反応溶液を2時間撹拌した。
【0240】
反応器の温度を10℃に下げ、テレフタロイルクロリド(TPC)をゆっくり投入しながら1時間撹拌した。そして、イソフタロイルクロリド(IPC)(全投入量に対して94mol%)を投入した後、1時間撹拌して、第1重合体溶液を調製した。調製した第1重合体溶液の粘度は1000cps~10000cpsであった。
【0241】
そして、濃度10重量%のIPC溶液(DMAc溶媒)を1mL添加した後、30分間撹拌する過程を繰り返して、粘度180000cps~220000cpsの第2重合体溶液を調製した。
【0242】
この際、重合体溶液の粘度は、LAMY RHEOLOGY Instruments社のRM100 CP2000 PLUS装置を用いて、20℃恒温条件およびせん断速度(Shear rate)4s-1の条件で測定して、目標粘度が実現されるか否かを確認した。
【0243】
第2重合体溶液に、粒径が約70nm~100nmであり、DMAc溶媒中に分散したシリカ(日産、DMAc-ST-ZL)を重合体溶液の固形分総重量に対して1500ppmを投入して重合体溶液を調製した。前記シリカは、BET法による平均粒径(D50)が約83nmであった。
【0244】
前記重合体溶液をベルト上にキャスティングし、熱硬化装置に投入する前に、単位面積当たり約1.8kg/m2のDMAcが蒸発するように、ベルト上の注入速度、乾燥温度、乾燥時間、移動距離、および移動速度などを調節しながらフィルムを移動させた。この際、ゲルシートに熱風を加える方式で乾燥が行われた。
【0245】
乾燥されたポリアミド系ゲルシートを80℃~300℃の温度範囲で2℃/分の速度で昇温する熱硬化装置に投入し、冷却および巻取りして、厚さ50μmのポリアミド系フィルムを得た。
【0246】
ポリアミド系重合体の具体的な組成およびモル比は、下記表1に記載の通りである。
(実験例2~11)
実験例1において、ポリアミド系重合体の単量体組成、フィラー含有量、および乾燥段階で単位面積当たりの蒸発量を下記表1に従って変更したことを除いては、同様の方法によりポリアミド系フィルムを得た。
【0247】
<評価例>
前記実験例において製造されたフィルムについて、下記のように物性を測定および評価し、その結果を下記表1に示した。
【0248】
(評価例1:3D表面粗さ測定)
ブルッカー社のCONTOUR GT-Xを用いて測定した。1回の測定領域を166μm×220μmに設定し、倍率20の対物レンズを適用して測定した後、ガウシアンフィルタを適用して基本補正を行った。同様の測定を5回繰り返した後、測定されたデータから最大値、最小値を除いた値の平均値を取った。測定された領域における表面の5つの最も高いピーク(peak)と5つの最も低い谷(valley)の平均差値(表面高低差(Sz))、平均平面(mean plane)よりも前記表面高低差(Sz)の5%以上高い所で見られ、他の頂点(summit)と特定の距離(サンプル側面サイズ(Sample side size)の1%)を置いて離れているピークの単位面積あたりの数(単位面積あたりの頂点の数(Sds))および前記頂点の平均曲率(Ssc)を下記表1に記載した。
【0249】
(評価例2:モジュラス測定)
インストロン社の万能試験機UTM5566Aを用いて、サンプルの主収縮方向と直交した方向に10cm以上、および主収縮方向に10mmで切り、10cm間隔のクリップに装着した後、常温にて破断が起きるまで12.5mm/分の速度で伸しながら応力-ひずみ曲線(stress-strain curve)を得た。前記応力-ひずみ曲線において初期変形に対する荷重の傾きをモジュラス(GPa)とした。
【0250】
(評価例3:透過度およびヘイズ測定)
日本電色工業社のヘイズメーターNDH-5000Wを用いて、JIS K 7136規格に基づいて光透過度およびヘイズを測定した。
【0251】
(評価例4:黄色度測定)
黄色度(YI)は、分光光度計(UltraScan PRO、Hunter Associates Laboratory)によりd65、10°の条件で、ASTM-E313規格により測定した。
【0252】
(評価例5:鉛筆硬度測定)
KIPAE E&T社のPencil Hardness Testerと日本三菱社のPressure-Proofed Hi-Density Lead Pencilを使用して鉛筆硬度を測定した。
【0253】
具体的に、前記ポリアミド系フィルムの製造後、ベルト接触面の反対面に対して表面硬度を測定した。Pencil Hardness Testerのガラス基板上に前記反対面が露出するように固定し、三菱鉛筆をフィルムの表面と45度の角度をなすように設置した後、750gの荷重を加えた状態でフィルムの表面を5回擦ってスクラッチの有無をもって硬度を判断した。
【0254】
(評価例6:滑り性評価)
フィルムをロールで巻取る際に互いに当接するフィルムの一面と他面との間の摩擦係数を測定し、0.3以下であれば良好、0.3超であれば不良と評価した。
【0255】
(評価例7:巻取性評価)
フィルムの両端部をトリミングして1460mm幅で500m長さを連続して巻いてロールを準備した後、幅全体に明暗差を示す押圧痕(lump)があるかどうかを目視で観察することにより判断し、10人の作業者のうち2人以上の作業者が、押圧痕があると判断した場合は不良、そうでない場合は良好と評価した。
【0256】
【0257】
表1を参照すると、Sds値が4400/mm2を超える実験例8の場合、滑り性および巻取性の面においていずれも不良と判断されたのに対し、Sds値が4400/mm2以下の実験例の場合、滑り性、巻取性のみならず、機械的、光学的物性においても全体的に優れた結果を示した。
【符号の説明】
【0258】
10:重合設備
20:タンク
30:ベルト
40:熱硬化装置
50:ワインダー
100:ポリアミド系フィルム
101:第1面
102:第2面
200:機能層
300:カバーウィンドウ
400:表示部
500:接着層