(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-26
(45)【発行日】2024-04-03
(54)【発明の名称】クッション構造及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
B32B 25/14 20060101AFI20240327BHJP
B32B 27/18 20060101ALI20240327BHJP
B32B 5/18 20060101ALI20240327BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20240327BHJP
B29C 43/32 20060101ALI20240327BHJP
【FI】
B32B25/14
B32B27/18 Z
B32B5/18
B32B27/00 101
B29C43/32
(21)【出願番号】P 2022164736
(22)【出願日】2022-10-13
【審査請求日】2022-10-13
(32)【優先日】2021-10-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】501296612
【氏名又は名称】南亞塑膠工業股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】NAN YA PLASTICS CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】廖 ▲徳▼超
(72)【発明者】
【氏名】曹 俊哲
(72)【発明者】
【氏名】顏 世勳
【審査官】深谷 陽子
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-132889(JP,A)
【文献】特表2013-500176(JP,A)
【文献】特開2004-167727(JP,A)
【文献】特開2003-048268(JP,A)
【文献】特開2003-170458(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2007-0018111(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
B29C 39/00-39/44、43/00-43/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
銅箔基板のホットプレス成形に用いる、クッション構造であって、
前記クッション構造は、
第1の表面及び反対面の第2の表面を有する中間層と、
前記中間層の前記第1の表面及び前記第2の表面にそれぞれ設置される、2つのゴム層と、
2つの前記ゴム層にそれぞれ設置される、2つの表層と、を備え、
前記ゴム層のそれぞれは、主ゴムと、熱伝導性炭素材と、発泡剤とを含むゴム組成物で形成され
、
前記主ゴムの添加量を100重量部として、前記熱伝導性炭素材の添加量は、3重量部~8重量部であり、前記発泡剤の添加量は、0.1重量部~5重量部であり、
前記主ゴムは、数平均分子量が30,000~100,000の液状シリコーンゴムであり、前記熱伝導性炭素材はカーボンブラックである、ことを特徴とするクッション構造。
【請求項2】
2つの表面処理層を更に備え、1つの前記表面処理層は1つの前記ゴム層と1つの前記表層との間に設置され、もう1つの前記表面処理層はもう1つの前記ゴム層ともう1つの前記表層との間に設置される、請求項1に記載のクッション構造。
【請求項3】
前記表面処理層は、シラン化合物を含む、請求項
2に記載のクッション構造。
【請求項4】
前記中間層は、パラアラミド繊維で形成された不織布層であり、2つの前記表層はそれぞれ、メタアラミド繊維で織られた平織層である、請求項1に記載のクッション構造。
【請求項5】
前記中間層の厚みは2.2mm~2.3mmである、請求項1に記載のクッション構造。
【請求項6】
前記ゴム層の厚みは1mm~1.3mmである、請求項1に記載のクッション構造。
【請求項7】
前記クッション構造の
熱伝達率は、11.5℃/minであ
り、熱伝達率は、下記式(I):
【数1】
[式(1)中、T
1
は、以下の試験によって測定される温度である:クッション構造を上ホットプレートと下ホットプレートとの間に設置すると共に、クッション構造の下に60枚の7628ガラス繊維布を置く。クッション構造の下方及びガラス繊維布の下方にそれぞれ、温度測定ラインを設置する。上ホットプレートを190℃にて加熱し、下ホットプレートの温度(ガラス繊維布の下方の温度測定ラインの温度)を30℃にし、単位面積圧力25kg/cm
2
の圧力で10分間をプレスした時に、クッション構造の下方の温度測定ラインが示す温度をT
1
とする。]
で計算される、請求項1に記載のクッション構造。
【請求項8】
温度190℃、単位面積圧力25kg/cm
2の条件で、前記ゴム層の回復率は、20%を超える、請求項1に記載のクッション構造。
【請求項9】
銅箔基板のホットプレス成形に用いる、クッション構造の製造方法であって、
前記クッション構造の製造方法は、
第1の表面及び反対面の第2の表面を有する中間層を提供する工程と、
ゴム層を介して表層を前記中間層の前記第1の表面に接着し、且つもう1つのゴム層を介してもう1つの表層を前記中間層の前記第2の表面に接着する工程と、
を含み、
前記ゴム層及びもう1つの前記ゴム層はそれぞれ、主ゴムと、熱伝導性炭素材と、発泡剤とを含むゴム組成物で形成され
、
前記主ゴムの添加量を100重量部として、前記熱伝導性炭素材の添加量は、3重量部~8重量部であり、前記発泡剤の添加量は、0.1重量部~5重量部であり、
前記主ゴムは、数平均分子量が30,000~100,000の液状シリコーンゴムであり、前記熱伝導性炭素材はカーボンブラックである、ことを特徴とするクッション構造の製造方法。
【請求項10】
前記ゴム層を介して前記表層を前記中間層の前記第1の表面に接着するこ
とは、前記表層に表面処理層を先に形成するステップと、前記表面処理層を介して前記ゴム層と前記表層とを一体となるように接着するステップと、前記ゴム層を前記中間層の前記第1の表面に貼り合わせるステップと、を含み、
もう1つの前記ゴム層を介してもう1つの前記表層を前記中間層の前記第2の表面に接着することは、もう1つの前記表層にもう1つの表面処理層を先に形成するステップと、もう1つの前記表面処理層を介して前記もう1つの前記ゴム層を前記もう1つの前記表層とを一体となるように接着するステップと、前記もう1つの前記ゴム層を前記中間層の前記第2の表面に貼り合わせるステップと、を含む、請求項
9に記載のクッション構造の製造方法。
【請求項11】
前記表層に前記表面処理層を先に形成するステップにおいて、シラン化合物で前記表層の一つの表面を処理することを更に含み、
もう1つの前記表層にもう1つの前記表面処理層を先に形成するステップにおいて、もう1つのシラン化合物でもう1つの前記表層の一つの表面を処理することを更に含む、請求項
10に記載のクッション構造の製造方法。
【請求項12】
前記中間層は、パラアラミド繊維で形成された不織布層であり、前記表層及びもう1つの前記表層はそれぞれ、メタアラミド繊維で織られた平織層である、請求項
9に記載のクッション構造の製造方法。
【請求項13】
前記中間層の厚みは2.2mm~2.3mmであり、前記ゴム層及びもう1つの前記ゴム層の厚みは1mm~1.3mmである、請求項
9に記載のクッション構造の製造方法。
【請求項14】
前記クッション構造の
熱伝達率は、11.5℃/minであ
り、熱伝達率は、下記式(I):
【数2】
[式(1)中、T
1
は、以下の試験によって測定される温度である:クッション構造を上ホットプレートと下ホットプレートとの間に設置すると共に、クッション構造の下に60枚の7628ガラス繊維布を置く。クッション構造の下方及びガラス繊維布の下方にそれぞれ、温度測定ラインを設置する。上ホットプレートを190℃にて加熱し、下ホットプレートの温度(ガラス繊維布の下方の温度測定ラインの温度)を30℃にし、単位面積圧力25kg/cm
2
の圧力で10分間をプレスした時に、クッション構造の下方の温度測定ラインが示す温度をT
1
とする。]
で計算される、請求項
9に記載のクッション構造の製造方法。
【請求項15】
温度190℃、単位面積圧力25kg/cm
2の条件で、前記ゴム層の回復率は、20%を超える、請求項
9に記載のクッション構造の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クッション構造に関し、特に、銅箔基板のホットプレス成形に用いるクッション構造に関する。
【背景技術】
【0002】
銅箔基板をホットプレス成形する場合、熱伝導性と加圧均一性を向上させるためにクッション層を使用する必要がある。従来の銅箔基板のホットプレスプロセスでは、主にクッション層としてクラフト紙を使用し、所望のクッション効果を達成するために、一回に複数のクラフト紙を使用する必要があり、クラフト紙の限られた回復率によれば、1~2回しか使用できず、良好なクッション効果を達成するために、頻繁な交換が必要である。このように、必然的に余分な人件費がかかり、クラフト紙の消費量が多いということは、継続的に伐採する必要があるため、自然環境に負担をかけることになる。
【0003】
また、クッション材料は、ホットプレス成形にかかる時間を短くするように、高い熱伝導性を有する必要がある。なお、クッション材料は、一回に複数の銅シートに対してホットプレス成形を行う際に、銅シートのそれぞれが均一的に加圧されるように、高い加圧均一性を有する必要がある。
【0004】
故に、クラフト紙の代わりとして、耐用性を向上すると同時に、良好な熱伝導性及び加圧均一性を維持するクッション材料を開発することによって、上述した欠点を克服することは、本事業にとって重要な課題となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする技術の課題は、従来技術の不足に対し、良好な熱伝導性及び均一性を有し、且つ多回に再利用されることが可能である、クッション構造及びその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の技術的課題を解決するために、本発明が採用する一つの技術的手段は、銅箔基板のホットプレス成形に用いる、クッション構造を提供する。前記クッション構造は、中間層、2つのゴム層及び2つの表層を備える。前記中間層は、第1の表面及び反対面の第2の表面を有し、2つの前記ゴム層はそれぞれ、前記中間層の前記第1の表面及び前記第2の表面に設置され、2つの前記表層はそれぞれ、2つの前記ゴム層に設置される。前記ゴム層のそれぞれは、主ゴムと、熱伝導性炭素材と、発泡剤とを含むゴム組成物で形成される。
【0007】
本発明の一つの実施形態において、前記主ゴムの添加量を100重量部として、前記熱伝導性炭素材の添加量は、3重量部~8重量部であり、前記発泡剤の添加量は、0.1重量部~5重量部である。
【0008】
本発明の一つの実施形態において、前記主ゴムは、分子量が30,000~100,000の液状シリコーンゴムであり、前記熱伝導性炭素材はカーボンブラックである。
【0009】
本発明の一つの実施形態において、本発明に係るクッション構造は、2つの表面処理層を更に備え、1つの前記表面処理層は、1つの前記ゴム層と1つの前記表層との間に設置され、もう1つの前記表面処理層は、もう1つの前記ゴム層ともう1つの前記表層との間に設置される。
【0010】
本発明の一つの実施形態において、前記表面処理層は、シラン化合物を含む。
【0011】
本発明の一つの実施形態において、前記中間層は、パラアラミド繊維で形成された不織布層であり、2つの前記表層はそれぞれ、メタアラミド繊維で織られた平織層である。
【0012】
本発明の一つの実施形態において、前記中間層の厚みは2.2mm~2.3mmである。
【0013】
本発明の一つの実施形態において、前記ゴム層の厚みは1mm~1.3mmである。
【0014】
本発明の一つの実施形態において、前記クッション構造の熱伝導率は、11.5℃/min。
【0015】
本発明の一つの実施形態において、温度190℃、単位面積圧力25kg/cm2の条件で、前記ゴム層の回復率は、20%を超える。
【0016】
上記の技術的課題を解決するために、本発明が採用するもう一つの技術的手段は、銅箔基板のホットプレス成形に用いる、クッション構造の製造方法を提供することである。前記クッション構造の製造方法は、第1の表面及び反対面の第2の表面を有する中間層を提供する工程と、ゴム層を介して表層を前記中間層の前記第1の表面に接着する工程と、もう1つの前記ゴム層を介してもう1つの前記表層と前記中間層の前記第2の表面に接着する工程と、を含み、なかでも、前記ゴム層及び前記もう1つの前記ゴム層はそれぞれ、主ゴムと、熱伝導性炭素材と、発泡剤とを含むゴム組成物で形成される。
【0017】
本発明の一つの実施形態において、前記主ゴムの添加量を100重量部として、前記熱伝導性炭素材の添加量は、3重量部~8重量部であり、前記発泡剤の添加量は、0.1重量部~5重量部である。
【0018】
本発明の一つの実施形態において、前記主ゴムは、分子量が30,000~100,000の液状シリコーンゴムであり、前記熱伝導性炭素材はカーボンブラックである。
【0019】
本発明の一つの実施形態において、前記ゴム層を介して前記表層を前記中間層の前記第1の表面に接着する工程には、前記表層に前記表面処理層を先に形成するステップと、前記表面処理層を介して前記ゴム層と前記表層とを一体となるように接着するステップと、前記ゴム層を前記中間層の前記第1の表面に貼り合わせるステップと、を含む。前記もう1つの前記ゴム層を介してもう1つの前記表層を前記中間層の前記第2の表面に接着する工程には、もう1つの前記表層にもう1つの前記表面処理層を先に形成するステップと、もう1つの前記表面処理層を介してもう1つの前記ゴム層ともう1つの前記表層とを一体となるように接着するステップと、もう1つの前記ゴム層を前記中間層の前記第2の表面に貼り合わせるステップと、を含む。
【0020】
本発明の一つの実施形態において、前記表層に前記表面処理層を先に形成するステップにおいて、シラン化合物で前記表層の一つの表面を処理することを更に含む。もう1つの前記表層にもう1つの前記表面処理層を先に形成するステップにおいて、もう1つのシラン化合物でもう1つの前記表層の一つの表面を処理することを更に含む。
【0021】
本発明の一つの実施形態において、前記中間層は、パラアラミド繊維で形成された不織布層であり、前記表層及びもう1つの前記表層はそれぞれ、メタアラミド繊維で織られた平織層である。
【0022】
本発明の一つの実施形態において、前記中間層の厚みは2.2mm~2.3mmであり、前記ゴム層及び前記もう1つのゴム層の厚みは1mm~1.3mmである。
【0023】
本発明の一つの実施形態において、前記クッション構造の熱伝導率は、11.5℃/min。
【0024】
本発明の一つの実施形態において、温度190℃、単位面積圧力25kg/cm2の条件で、前記ゴム層の回復率は、20%を超える。
【発明の効果】
【0025】
本発明の有利な効果として、本発明に係るクッション構造は、「中間層と、2つのゴム層と、2つの表層とを備えるクッション構造」及び「ゴム層は、主ゴムと、熱伝導性炭素材と、発泡剤とを含むゴム組成物で形成される。」といった技術特徴によって、良好な熱伝導性及び加圧均一性を与えられると共に、多回に再利用されることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係るクッション構造の断面図である。
【
図2】本発明の第2の実施形態に係るクッション構造の断面図である。
【
図3】本発明の実施形態に係るクッション構造の製造方法のフローチャートである。
【
図4】本発明に係るクッション構造の平面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の特徴及び技術内容がより一層分かるように、以下の本発明に関する詳細な説明と添付図面を参照されたい。しかし、提供される添付図面は参考と説明のために提供するものに過ぎず、本発明の請求の範囲を制限するためのものではない。
【0028】
以下、所定の具体的な実施態様によって「クッション構造及びその製造方法」を説明し、当業者は、本明細書に開示された内容に基づいて本発明の利点と効果を理解することができる。本発明は、他の異なる具体的な実施態様によって実行または適用でき、本明細書における各細部についても、異なる観点と用途に基づいて、本発明の構想から逸脱しない限り、各種の修正と変更を行うことができる。また、事前に説明するように、本発明の添付図面は、簡単な模式的説明であり、実際のサイズに基づいて描かれたものではない。以下の実施形態に基づいて本発明に係る技術内容を更に詳細に説明するが、開示される内容によって本発明の保護範囲を制限することはない。また、本明細書において使用される「または」という用語は、実際の状況に応じて、関連して挙げられる項目におけるいずれか1つまたは複数の組み合わせを含むことがある。
【0029】
[第一実施形態]
図1に示すように、本発明に係る第一実施形態は、銅箔基板のホットプレス成形に用いる、五層構造を有するクッション構造を提供する。
図1に示すように、クッション構造は、第1の表面11及び反対面の第2の表面12を有する中間層10と、第1の表面11及び第2の表面12のそれぞれに設置された2つのゴム層20と、2つのゴム層20のそれぞれに設置された2つの表層30と、を備える。実際に応用する際に、中間層10及び表層30の材料は、アラミド繊維(Aramid fiber)である。より具体的に説明すると、中間層10は、パラアラミド繊維で形成された不織布層であり、2つの表層30はそれぞれ、メタアラミド繊維で織られた平織層である。
【0030】
本実施形態において、2つのゴム層20はそれぞれ、ゴム組成物で形成される。特筆すべきことは、ゴム組成物の配合は、クッション構造のクッション性及び熱伝導性を増加することができる。ゴム組成物は主に、主ゴムと、熱伝導性炭素材と、発泡剤とを含む。実際に応用する際に、主ゴムは、特に限られず、クッション構造にクッション性に与えると共に、熱伝導性炭素材の分散に影響しないものであればよい。主ゴムは、液体シリコーンゴム(Liquid Silicone Rubber)であってもよく、液体シリコーンゴムとは、室温でペースト状であるゴムである。液体シリコーンゴムは、縮合型液体シリコーンゴム又は付加型液体シリコーンゴムであってもよい。本願の液体シリコーンゴムの数平均分子量は、30,000~100,000であり、50,000~80,000であることが好ましい。数平均分子量が30,000未満であると、ゴム組成物の成形が困難となることがある。数平均分子量が100,000を超えると、加工性に影響することがある。熱伝導性炭素材は、熱伝導性を増加できれば、特に限られない。熱伝導性炭素材は、カーボンブラック、グラファイト、窒化ホウ素、酸化アルミニウム又はステンレス鋼粉末であってもよい。説明すべきことは、当業者であれば、ゴム層20に必要された特性を与えられれば、必要に応じてゴム組成物の配合を調整することができる。例えば、形成されたゴム層20は、温度190℃、単位面積圧力25kg/cm2の条件で、前記ゴム層の回復率は20%を超えることが挙げられるが、本発明はこれに制限されるものではない。
【0031】
更に説明すると、熱伝導性炭素材の添加量は、主ゴム100重量部に対して、3重量部~8重量部であってもよく、例えば、3.5重量部、4重量部、4.5重量部、5重量部、5.5重量部、6重量部、6.5重量部、7重量部又は7.5重量部であってもよい。熱伝導性炭素材の添加量が3重量部未満であると、熱伝導性が不良となる。熱伝導性炭素材の添加量が8重量部を超えると、機械的特性が低減する。発泡剤の添加量は、主ゴム100重量部に対して、0.1重量部~5重量部であってもよく、例えば、0.5重量部、1.0重量部、1.5重量部、2.0重量部、2.5重量部、3.0重量部、3.5重量部、4.0重量部又は4.5重量部であってもよい。発泡剤の添加量が0.1重量部未満であると、発泡速度が低すぎて、発泡が均一でなくなる。発泡剤の添加量が5重量部を超えると、ゴム層の柔軟度が増加することによって、回復性が悪化する。
【0032】
本発明に係るゴム組成物の製造過程において、主ゴム、熱伝導性炭素材、及び発泡剤と、溶媒とを混合してもよい。溶媒は、主ゴム、熱伝導性炭素材、及び発泡剤を溶媒に均一に分散できれば、特に限られない。例えば、溶媒は、トルエン、キシレン又は低分子シリコーンオイルであってもよい。溶媒の含有量は、80重量部~140重量部であってもよく、例えば、85重量部、90重量部、95重量部、100重量部、105重量部、110重量部、115重量部、120重量部、125重量部、130重量部または135重量部であってもよい。
【0033】
前記ゴム組成物の成分によって、ゴム層20は、液状シリコーンゴム、熱伝導性炭素材、発泡剤及び溶媒を混合することで製造されることを理解できる。よって、ゴム層20は、液状として中間層10と表層30との間に塗布されることで、中間層10と表層30とをお互いに接着させる。しかし、液状シリコーンゴムを表層30に塗布して圧接する場合、液状シリコーンゴムが表層30にある細孔から滲出して機器に粘着することはある。
【0034】
図2に示すように、一つの好ましい実施形態において、本発明のクッション構造は、2つの表面処理層40を更に含んでもよい。一つの表面処理層40(例えば、上表面処理層)は、一つのゴム層20(例えば、上ゴム層)と一つの表層30(例えば、上表層)との間に設置される。もう一つの表面処理層40(例えば、下表面処理層)は、もう一つのゴム層20(例えば、下ゴム層)ともう一つの表層30(例えば、下表層)との間に設置される。このように、ゴム層20と表層30との接着強度を向上するだけでなく、液状シリコーンゴムが表層30にある細孔から滲出して機器に粘着することを回避することができる。更に説明すると、表面処理層40は、シラン化合物で表層30の1つの表面(例えば、内側の表面)を処理することによって形成されてもよい。表面処理層40は、アラミド繊維の織り物層とシリコーンゴム層との結合界面、及びバリア層として、液状シリコーンゴムが織り物から滲出することを回避する、という役割を果たせる。シラン化合物は、ジメチルシロキサン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、(3-メルカプトプロピル)トリメトキシシラン、(3-メルカプトプロピル)トリエトキシシラン等であってもよいが、本発明はこれに制限されるものではない。
【0035】
一つの実施形態において、本発明のクッション構造の厚みは、5mmであってもよい。なかでも、中間層10の厚みは、2.2mm~2.3mmであってもよく、例えば、2.21mm、2.22mm、2.23mm、2.24mm、2.25mm、2.26mm、2.27mm、2.28mmまたは2.29mmである。説明すべきことは、中間層10の厚みが2.3mmを超えると、クッション構造のホットプレスプロセスでの熱伝導性に影響する。中間層10の厚みが2.2mm未満であると、十分な支持効果を提供することができない。また、ゴム層20の厚みは、1mm~1.3mmであってもよく、例えば、1.0mm、1.1mm、1.2mmまたは1.3mmであってもよい。説明すべきことは、ゴム層20の厚みが1.3mmを超えると、クッション構造のホットプレスプロセスの熱伝導性に影響する。ゴム層20の厚みが1.0mm未満であると、所望のクッション効果を与えられない。
【0036】
熱伝導率の式「k=(Q/t)*L/(A*T)」に基づいて本発明に係るクッション構造の熱伝達係数(K)計算する。なかでも、kは熱伝導率、Qは熱エネルギーであり、tは時間であり、Lは長さであり、Aは面積であり、Tは温度差である。
【0037】
本発明のクッション構造の熱伝達率(即ち、昇温速度)は、以下の測定方法によって測定される。クッション構造を上ホットプレートと下ホットプレートとの間に設置されると共に、クッション構造の下に60枚の7628ガラス繊維布を置いた。クッション構造の下方及びガラス繊維布の下方にそれぞれ、温度測定ラインが設置された後に、上ホットプレートを190℃に加熱させ、下ホットプレートを30℃にして、単位面積圧力25kg/cm
2の圧力で10分間をプレスした。次に、2つの温度測定ラインの10分でプレスした時に示す温度を記録して、下記式で熱伝達率(昇温速度)を計算する。本発明のクッション構造の熱伝達率は11.5℃/minに達成することができる。上のホットプレートの温度は、190℃の条件で、本発明に係るクッション構造の下の銅箔基板は常温から145℃に加熱するまでに、10分のみかかる。
【数1】
【0038】
[第二実施形態]
図1及び
図2に合わせて、
図3に示すように、本発明の第二実施形態は、五層構造を有するクッション構造の製造方法を提供する。クッション構造の製造方法は、第1の表面及び反対面の第2の表面を有する中間層を提供する工程S1と、ゴム層を介して表層を中間層の第1の表面に接着し、且つもう1つのゴム層を介して1つの表層を前記中間層の前記第2の表面に接着する工程S2と、を少なくとも含む。本発明に係る製造方法で製造されたクッション構造の熱伝達率は11.5℃/minを達成することができるため、熱伝導性に影響せずに所望のクッション効果を提供することができる。
【0039】
更に説明すると、工程S2において、先に表面処理層40を1つの表層30(例えば、上表層)に形成させた後に、この表面処理層40を介して1つのゴム層20(例えば、上ゴム層)と1つの表層30とを一体となるように接着し、次に、1つのゴム層20を前記中間層10の第1の表面11に貼り合わせ、また、先にもう1つの表面処理層40をもう1つの表層30(例えば、下表層)に形成させた後に、このもう1つの表面処理層40を介してもう1つのゴム層20(例えば、下ゴム層)ともう1つの表層30とを一体となるように接着し、次に、もう1つのゴム層20を前記中間層10の第2の表面12に貼り合わせる。2つの表面処理層40はそれぞれ、シラン化合物で対応する表層の表面を処理することで形成される。シラン化合物は、ジメチルシロキサン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、(3-メルカプトプロピル)トリメトキシシラン、(3-メルカプトプロピル)トリエトキシシランであってもよいが、本発明はこれに制限されるものではない。
【0040】
本実施形態において、中間層10は、パラアラミド繊維で形成された不織布層であり、2つの前記表層30はそれぞれ、メタアラミド繊維で織られた平織層である。2つのゴム層20はそれぞれ、ゴム組成物で形成される。ゴム組成物の配合は、クッション構造のクッション性及び熱伝導性を増加することができる。
【0041】
本発明の発泡方法として、物理発泡又は化学発泡を採用することができる。物理発泡は、非活性ガスを加圧状態でプラスチックメルト又はペーストに溶解させて、減圧を経ってガスをリリースさせることで、プラスチックで気孔を形成して発泡させるか、若しくは、プラスチックで空心球体を添加し、発泡体を形成して発泡させることが挙げられるが、本発明はそれに限られない。化学発泡の方法としては、発泡剤を添加することができる。発泡剤として、例えば、塩化炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウム、アゾジカルボンアミド(AC発泡剤とも呼ばれる)、アゾビスイソブチロニトリル、N,N-ジメチルN,N-ジニトロソテレフタラミドなどが挙げられる。化学発泡の温度は、異なる種類の発泡剤に応じて調整できるが、一般的に70℃~250℃である。
【0042】
本発明に係るゴム組成物を製造する際に、主ゴムと、熱伝導性炭素材と、発泡剤と、溶媒とを混合する。実際に応用する際に、主ゴムは、分子量が30,000~100,000の液体シリコーンゴムであってもよく、溶媒はキシレンであってもよく、熱伝導性炭素材はカーボンブラックであってもよい。説明すべきことは、当業者であれば、ゴム層20に必要された特性を与えられれば、必要に応じてゴム組成物の配合を調整することができる。例えば、形成されたゴム層20は、温度190℃、単位面積圧力25kg/cm2の条件で、前記ゴム層の回復率は20%を超えることが挙げられるが、本発明はこれに制限されるものではない。
【0043】
更に説明すると、主ゴムの添加量を100重量部として、溶媒の添加量は、80重量部~140重量部であってもよく、例えば、85重量部、90重量部、95重量部、100重量部、105重量部、110重量部、115重量部、120重量部、125重量部、130重量部又は135重量部であってもよい。主ゴムの添加量を100重量部として、熱伝導性炭素材の添加量は、3重量部~8重量部であってもよく、例えば、3.5重量部、4重量部、4.5重量部、5重量部、5.5重量部、6重量部、6.5重量部、7重量部又は7.5重量部であってもよい。主ゴムの添加量を100重量部として、発泡剤の添加量は、0.1重量部~5重量部であってもよく、例えば、0.5重量部、1.0重量部、1.5重量部、2.0重量部、2.5重量部、3.0重量部、3.5重量部、4.0重量部又は4.5重量部であってもよい。
【0044】
図4を参考しながら、以下にてクッション性及び回復率を計算する方法を説明する。
図4に示すように、前後の測定位置を同一であることを確保するために、クッション構造に9つの位置点をマークすると共に、9つの位置点の厚みの平均値を測定して圧接前厚み(A)を得た。また、クッション構造と適切な距離を開けるドット箇所でリードブロックを設置した。次に、上ホットプレート及び下ホットプレートを190℃に加熱して30分圧接するように、圧接工程をシミュレーションする。この際に、プレート圧力は25kg/cm
3である。起型後に30分を経った際に、9つの位置点の厚みを測定して圧接後厚み(C)を得た。また、リードブロックの厚みを圧接する際の厚み(B)とした。
【0045】
上記の圧接前厚み(A)、圧接する際の厚み(B)及び圧接後厚み(C)で、下式でクッション性及び回復性を計算した。次に、クッション性及び回復性で回復率を更に計算した。計算式は、以下に示すとおりである。
【数2】
【0046】
上記の式によれば、本発明に係るクッション構造と12層のクラフト紙との比較を行った。12層のクラフト紙は、1350mm×1260mmであり、厚みは5mmである。比較の結果は、下表1に示すとおりである。
【実施例】
【0047】
[実施例1]
主ゴムとして数平均分子量30,000である液状シリコーンゴム100重量部と、溶媒としてキシレン88重量部と、熱伝導性炭素材としてカーボンブラック3.3重量部と、発泡剤としてアゾジカルボンアミド0.11重量部とを混合することによって、ゴム組成物を得た。前記ゴム組成物を、厚みが2.2mmであるパラアラミド繊維で形成された不織布層(中間層)の両面にナイフ塗布機及びコンマロールで乾式塗布した後に、厚みが0.4mmであるメタアラミド繊維で織られた平織層をそれぞれ、ゴム組成物層に貼り合わせて、ラミネート機(Laminating machine)を用いて200℃で乾燥することによって、厚みが5mmであるクッション構造を製造した。
【0048】
[実施例2]
ゴム組成物の組成を下表1に示すように変更した以外は、実施例1と同じように実施例2のクッション構造を製造した。
【0049】
[実施例3]
ゴム組成物の組成を下表1に示すように変更したと共に、数平均分子量55,000である液状シリコーンゴムに変更した以外は、実施例1と同じように実施例3のクッション構造を製造した。
【0050】
[実施例4]
ゴム組成物の組成を下表1に示すように変更したと共に、数平均分子量100,000である液状シリコーンゴムに変更した以外は、実施例1と同じように実施例4のクッション構造を製造した。
【0051】
【0052】
上表1に示すように、「再利用できる」とは、ホットプレス基材の特性を影響せずに、再度にホットプレスを行うことが可能であることを指す。温度190℃、単位面積圧力25kg/cm2の条件で、クッション性が10%以下で、且つ回復性が5%以下となると、「再利用できない」と判断した。本願の実施例において、ホットプレス10回以下の回数に行うと「再利用できない」状態となる場合、「×」とした。ホットプレス11回~300回に行うと「再利用できない」状態となる場合、「△」とした。ホットプレス300回を超える回数に行うと「再利用できない」状態となる場合、「○」とした。従来の銅箔基板では、クッション層としてクラフト紙用い、ある程度のクッション率を有するが、クラフト紙の回復率は5%であり、回復率が不良である状態であると再利用回数を減少することとなる。従来のクラフト紙に比べて、本願に係るクッション構造は、クラスクラフト紙より優れたクッション率を得られ、且つ回復率は90以上に達成することができ、再利用回数を300回以上に増加することができる。よって、本発明に係るクッション構造は、クッション効果及び構造を安定させる効果を有し、銅箔基板のホットプレスプロセスで多回に再利用されることができる。クッション効果に影響しない場合に、使用回数の増加は、クッション層を交換する人力を低減し、且つクッション層を交換する際の危険を減少すると共に、資源の浪費を減らすことができる。
【0053】
[実施形態による有利な効果]
本発明の有利な効果として、本発明に係るクッション構造は、「中間層と、2つのゴム層と、2つの表層とを備えるクッション構造」及び「ゴム層は、主ゴムと、溶媒と、熱伝導性炭素材と、発泡剤とを含むゴム組成物で形成される」といった技術特徴によって、良好な熱伝導性及び加圧均一性を与えられると共に、多回に再利用されることができる。本発明のもう1つの有利な効果として、本発明に係るクッション構造は、「シラン化合物で対応する表層の表面を処理することで形成されてなる表面処理層」といった技術特徴によって、液状シリコーンゴムが表層にある細孔から滲出して機器に粘着することを回避することができる。
【0054】
以上に開示された内容は、ただ本発明の好ましい実行可能な実施態様であり、本発明の請求の範囲はこれに制限されない。そのため、本発明の明細書及び図面内容を利用して成される全ての等価な技術変更は、いずれも本発明の請求の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0055】
10…中間層
11…第1の表面
12…第2の表面
20…ゴム層
30…表層
40…表面処理層