(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-26
(45)【発行日】2024-04-03
(54)【発明の名称】リニアモーター
(51)【国際特許分類】
H02K 41/03 20060101AFI20240327BHJP
H02K 9/19 20060101ALI20240327BHJP
【FI】
H02K41/03 A
H02K9/19 B
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022168350
(22)【出願日】2022-10-20
【審査請求日】2023-02-09
(31)【優先権主張番号】10 2021 127 495.8
(32)【優先日】2021-10-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】514297888
【氏名又は名称】マルコ システマナリセ ウント エントヴィックルング ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ロイター,マルティン
【審査官】島倉 理
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/169908(WO,A1)
【文献】独国実用新案第202013012261(DE,U1)
【文献】米国特許出願公開第2020/0313487(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 41/03
H02K 9/19
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水冷式のリニアモーターであって、
永久磁石を有する固定子(10)と、前記固定子(10)内に直線的且つ変位可能に配置され、少なくとも1つの電気コイルを含む回転子(12)と、を備え、前記回転子(12)には、液冷式のヒートシンク(20)に熱伝導可能に接続された熱伝導層(18)が設けられ、
前記熱伝導層(18)は、スリット状の中断部(24)を有し、
前記中断部(24)は、少なくとも部分的に蛇行して延在する、リニアモーター。
【請求項2】
前記熱伝導層(18)は、電気伝導性であることを特徴とする、請求項1に記載のリニアモーター。
【請求項3】
前記熱伝導層は、金属膜、特に銅膜(18)であることを特徴とする、請求項1または2に記載のリニアモーター。
【請求項4】
前記回転子(12)は、少なくとも2つの側面で前記熱伝導層(18)によって包まれることを特徴とする、請求項
1に記載のリニアモーター。
【請求項5】
前記中断部(24)は、少なくとも部分的に平行および/または直線的に延在することを特徴とする、請求項
1に記載のリニアモーター。
【請求項6】
前記回転子は、平行6面体の形状を有し、2つの平行な主面と、それらを接続する端面(14)と、を有し、前記平行6面体の前記端面における前記中断部(24)は、蛇行して延在することを特徴とする、請求項
1に記載のリニアモーター。
【請求項7】
前記ヒートシンク(20)は、前記回転子(2)上に配置されることを特徴とする、請求項
1に記載のリニアモーター。
【請求項8】
前記ヒートシンクは、液冷式の冷却ブロック(20)であることを特徴とする、請求項
1に記載のリニアモーター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、永久磁石を有する固定子と、固定子内に直線的且つ変位可能に配置され、少なくとも1つの電気コイルを含む回転子と、を備える水冷式のリニアモーターに関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術から、冷却式のリニアモーターが知られている。空冷式のリニアモーターでは、特定の用途において、固定子と回転子との間の細い隙間にノズルから空気がエアカーテンとして吹き付けられる。しかしながら、空気の熱容量が小さいため、特に使用される空気の量を非常に多くする必要があるので、効果的な冷却を行うことができない。さらに、このような冷却は、液滴の移送を発生させる可能性があり、クリーンルームでは乱流が望ましくないため、そこでの適用には問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
そこで、本発明の目的は、クリーンルームで使用することができ、効果的な冷却が可能なリニアモーターを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この目的は、請求項1に記載の特徴によって満たされる。より詳細には、上述したタイプのリニアモーターにおいて、熱伝導層が回転子に設けられ、液冷式のヒートシンクに熱伝導可能に接続されている。
【0005】
本発明によれば、回転子の冷却は、熱の照射ではなく、熱伝導に基づくものである。このため、回転子には熱伝導層が設けられる。熱伝導層は、回転子で発生する熱を液冷式のヒートシンクに導く。水は同じ体積の空気よりもはるかに大きな熱容量をもつので、例えばヒートシンクを水で冷却して回転子の温度を制御することができる。
【0006】
本発明の有利な実施形態は、本明細書、添付の図面および従属請求項に記載されている。
【0007】
第1の有利な実施形態によれば、熱伝導層は、電気伝導性であり得る。そのような材料は、通常、高い熱伝導率を有し、熱を導くのに非常に適している。
【0008】
さらなる有利な実施形態によれば、熱伝導層は、金属膜、特に銅膜であり得る。リニアモーターの固定子は、このような膜によって広い面積にわたって覆われることができる。膜は、0.5mm未満の厚さ、例えば0.2mmの厚さを有することができる。
【0009】
さらなる有利な実施形態によれば、回転子には、1つの側面においてのみ熱伝導層が設けられ得る。さらなる実施形態によれば、熱伝導によるヒートシンクへの熱の伝達を最適化するために、回転子は、少なくとも2つの側面、特に3つの側面で熱伝導層によって包まれることができる。
【0010】
さらなる有利な実施形態によれば、熱伝導層は、スリット状のスリット状の中断部を有することができる。これは、電気伝導性の熱伝導層の場合、熱伝導層において過電流が防止されるので、回転子の移動時に望ましくない制動トルクが作用しないという利点を有する。
【0011】
さらなる有利な実施形態によれば、中断部は、少なくとも部分的に平行および/または直線的に延在することができる。これは、リニアモーターの製造を簡素化して、過電流を効果的に防止することができる。
【0012】
さらなる有利な実施形態によれば、中断部が少なくとも部分的に蛇行して延在していると、熱伝導層が回転子に形状適合するように接着結合することができるので、有利となり得る。ここで、中断部によって互いに分離されている熱伝導層の2つの隣接する領域間の分離線が同時に増加する。これにより、熱伝導層の各部分が比較的大きな外周に沿って接着結合されることができるので、熱伝導層が回転子に特に良好に固定される。
【0013】
さらなる有利な実施形態によれば、回転子は、平行6面体の形状を有することができ、2つの平行な主面と、それらを接続する端面と、を有することができる。この端面の面積は、主面に比べて非常に小さい。そのため、平行6面体の端面における中断部が蛇行して延在し、そこに熱伝導層の一部の領域が形状適合するように接着結合することができるのは、有利であり得る。
【0014】
さらなる有利な実施形態によれば、ヒートシンクは、回転子上に配置されて回転子に沿って移動することができる。
【0015】
さらなる有利な実施形態によれば、ヒートシンクは、特に熱伝導層と熱伝導的に連通する液冷式の冷却ブロックであり得る。
【図面の簡単な説明】
【0016】
以下、本発明の有利な実施形態と添付の図面を参照して、純粋に一例として本発明を説明する。
【
図1】リニアモーターを模式的に示す側面図である。
【
図2】
図1のリニアモーターの回転子の斜視図である。
【
図4】
図3の細部IVに対応する大きく拡大した部分図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は、回転子12の両側に、詳細には図示しない永久磁石が既知の状態で配置された固定子10を備えるリニアモーターを模式的に示す側面図である。回転子12は、固定子10内で直線的に変位可能(図の平面に対して垂直)であり、回転子12内に配置された1つまたは複数の電気コイルに適宜通電することで、既知の方法で回転子12を直線的に変位させることができる。
【0018】
回転子12は、基本的に平行6面体の形状を有し、2つの平行な主面と、それらを接続する端面14と、を有する。さらに、回転子12は、端面14の反対側で端子ブロック16を有する。端子ブロック16には、コイルのための電気接続線が収容される。
【0019】
本発明によれば、回転子12には、図に示す実施形態において薄い銅膜として構成された熱伝導層18が設けられる。回転子12は、2つの主面および下端面14において熱伝導層18によって包まれている。熱伝導層18は、さらに端子ブロック16を包み、その上側にまで延在する。端子ブロック16の上側においてヒートシンク20が設けられる。ヒートシンク20は液冷式のものであり、図に示す実施形態において液冷式の冷却ブロック20として構成される。冷却ブロック20は、その上側において水などの冷却液のための供給ライン21および排出ライン22を有し、冷却ブロック20の内部には、冷却液を冷却ブロック20内に導くための冷却流路が設けられる。
【0020】
図1に示すように、熱伝導層18の上端部は、冷却ブロック20と端子ブロック16との間に挟まれている。これにより、熱伝導層18と冷却ブロック20との間で良好な熱伝達が行われ得る。
【0021】
過電流を防止するために、熱伝導層18は、回転子12の2つの主面およびその下端面14に設けられた複数のスリット状の中断部24を有する。2つの主面において、この領域のスリット状の中断部24が平行且つ直線状に延在するので、中断部は、熱伝導層を平行に離間させたストリップに分割させる。ただし、回転子12の下端面14において、中断部は、蛇行したデザインを有している(
図4参照)。この領域において、熱伝導層18は、回転子12に形状適合するように接着結合されている。