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特許7461445HLA-CW8拘束性の変異KRASを認識するT細胞受容体
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  • 特許-HLA-CW8拘束性の変異KRASを認識するT細胞受容体 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-26
(45)【発行日】2024-04-03
(54)【発明の名称】HLA-CW8拘束性の変異KRASを認識するT細胞受容体
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/12 20060101AFI20240327BHJP
   C07K 14/725 20060101ALI20240327BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20240327BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20240327BHJP
【FI】
C12N15/12 ZNA
C07K14/725
C12N15/63 Z
C12N5/10
【請求項の数】 26
(21)【出願番号】P 2022188263
(22)【出願日】2022-11-25
(62)【分割の表示】P 2018513423の分割
【原出願日】2016-09-09
(65)【公開番号】P2023025108
(43)【公開日】2023-02-21
【審査請求日】2022-12-23
(31)【優先権主張番号】62/218,688
(32)【優先日】2015-09-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】510002280
【氏名又は名称】アメリカ合衆国
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【弁理士】
【氏名又は名称】高島 一
(74)【代理人】
【識別番号】100125070
【弁理士】
【氏名又は名称】土井 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100121212
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 弥栄子
(74)【代理人】
【識別番号】100174296
【弁理士】
【氏名又は名称】當麻 博文
(74)【代理人】
【識別番号】100137729
【弁理士】
【氏名又は名称】赤井 厚子
(74)【代理人】
【識別番号】100151301
【弁理士】
【氏名又は名称】戸崎 富哉
(74)【代理人】
【識別番号】100152308
【弁理士】
【氏名又は名称】中 正道
(74)【代理人】
【識別番号】100201558
【弁理士】
【氏名又は名称】亀井 恵二郎
(72)【発明者】
【氏名】トラン、エリック
(72)【発明者】
【氏名】ルー、ヨン-チェン
(72)【発明者】
【氏名】ローゼンバーグ、スティーヴン エー.
【審査官】林 康子
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-528714(JP,A)
【文献】特表2013-541332(JP,A)
【文献】特表2017-536825(JP,A)
【文献】国際公開第2015/022520(WO,A1)
【文献】PNAS,2015年,Vol.112, No.3,pp.779-784,published January 20, 2015
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
改変されたヒト細胞集団を作製する方法であって、該方法が、組換え発現ベクターを単離したヒト細胞集団に導入することを含み、
ここで、該組換え発現ベクターがT細胞受容体(TCR)をコードするヌクレオチド配列を含み、該TCRが以下:
(a)配列番号3のアミノ酸配列を含むα鎖相補性決定領域(CDR)1、配列番号4のアミノ酸配列を含むα鎖CDR2、及び配列番号5のアミノ酸配列を含むα鎖CDR3;及び
(b)配列番号6のアミノ酸配列を含むβ鎖CDR1、配列番号7のアミノ酸配列を含むβ鎖CDR2、及び配列番号8のアミノ酸配列を含むβ鎖CDR3、
を含み、
ここで、該TCRが、ヒト白血球抗原(HLA)-Cw8分子によって提示された、GADGVGKSA(配列番号18)の変異KRASアミノ酸配列に対して抗原特異性を有する、
方法。
【請求項2】
前記HLA-Cw8分子がHLA-Cw*0802である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の方法であって、前記TCRが以下:
(a)配列番号9のアミノ酸配列に対して少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を含むα鎖可変領域;
(b)配列番号10のアミノ酸配列に対して少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を含むβ鎖可変領域;
(c)配列番号9のアミノ酸20~129に対して少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を含むα鎖可変領域;
(d)配列番号10のアミノ酸22~132に対して少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を含むβ鎖可変領域;又は
(e)(a)及び(b)の両方;(a)及び(d)の両方;(b)及び(c)の両方;若しくは(c)及び(d)の両方、
を含む、方法。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の方法であって、前記TCRが以下:
(a)配列番号9のアミノ酸配列を含むα鎖可変領域;
(b)配列番号10のアミノ酸配列を含むβ鎖可変領域;
(c)配列番号9のアミノ酸20~129を含むα鎖可変領域;
(d)配列番号10のアミノ酸22~132を含むβ鎖可変領域;又は
(e)(a)及び(b)の両方;(a)及び(d)の両方;(b)及び(c)の両方;若しくは(c)及び(d)の両方、
を含む、方法。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の方法であって、前記TCRが更に以下:
(a)(i)配列番号11の48位のXがThr又はCysであり;
(ii)配列番号11の112位のXがSer、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、Met又はTrpであり;
(iii)配列番号11の114位のXがMet、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、又はTrpであり;及び
(iv)配列番号11の115位のXがGly、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、Met又はTrpである、
配列番号11のアミノ酸配列に対して少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を含むα鎖定常領域;
(b)配列番号12の57位のXがSer又はCysである、配列番号12のアミノ酸配列に対して少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を含むβ鎖定常領域;又は
(c)(a)及び(b)の両方、
を含む、方法。
【請求項6】
請求項1~4のいずれか1項に記載の方法であって、前記TCRが更に以下:
(a)(i)配列番号11の48位のXがThr又はCysであり;
(ii)配列番号11の112位のXがSer、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、Met又はTrpであり;
(iii)配列番号11の114位のXがMet、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe又はTrpであり;及び
(iv)配列番号11の115位のXがGly、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、Met又はTrpである、
配列番号11のアミノ酸配列を含むα鎖定常領域;
(b)配列番号12の57位のXがSer又はCysである、配列番号12のアミノ酸配列を含むβ鎖定常領域;又は
(c)(a)及び(b)の両方、
を含む、方法。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の方法であって、前記TCRが以下:
(a)(i)配列番号13の177位のXがThr又はCysであり;
(ii)配列番号13の241位のXがSer、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、Met又はTrpであり;
(iii)配列番号13の243位のXがMet、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe又はTrpであり;及び
(iv)配列番号13の244位のXがGly、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、Met又はTrpである、
配列番号13のアミノ酸配列に対して少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を含むα鎖;
(b)配列番号14の189位のXがSer又はCysである、配列番号14のアミノ酸配列に対して少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を含むβ鎖;
(c)(i)配列番号13の177位のXがThr又はCysであり;
(ii)配列番号13の241位のXがSer、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、Met又はTrpであり;
(iii)配列番号13の243位のXがMet、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe又はTrpであり;及び
(iv)配列番号13の244位のXがGly、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、Met又はTrpである、
配列番号13のアミノ酸20~266に対して少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を含むα鎖;
(d)配列番号14の189位のXがSer又はCysである、配列番号14のアミノ酸22~305に対して少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を含むβ鎖;又は
(e)(a)及び(b)の両方;(a)及び(d)の両方;(b)及び(c)の両方;若しくは(c)及び(d)の両方、
を含む、方法。
【請求項8】
請求項1~6のいずれか1項に記載の方法であって、前記TCRが以下:
(a)(i)配列番号13の177位のXがThr又はCysであり;
(ii)配列番号13の241位のXがSer、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、Met又はTrpであり;
(iii)配列番号13の243位のXがMet、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe又はTrpであり;及び
(iv)配列番号13の244位のXがGly、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、Met又はTrpである、
配列番号13のアミノ酸配列を含むα鎖;
(b)配列番号14の189位のXがSer又はCysである、配列番号14のアミノ酸配列を含むβ鎖;
(c)(i)配列番号13の177位のXがThr又はCysであり;
(ii)配列番号13の241位のXがSer、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、Met又はTrpであり;
(iii)配列番号13の243位のXがMet、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe又はTrpであり;及び
(iv)配列番号13の244位のXがGly、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、Met又はTrpである、
配列番号13のアミノ酸20~266を含むα鎖;
(d)配列番号14の189位のXがSer又はCysである、配列番号14のアミノ酸22~305を含むβ鎖;又は
(e)(a)及び(b)の両方;(a)及び(d)の両方;(b)及び(c)の両方;若しくは(c)及び(d)の両方、
を含む、方法。
【請求項9】
改変されたヒト細胞集団を作製する方法であって、該方法が、組換え発現ベクターを単離したヒト細胞集団に導入することを含み、
ここで、該組換え発現ベクターがポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含み、ここで、該ポリペプチドが、TCRの機能的部分を含み、
ここで、該機能的部分が配列番号3のアミノ酸配列を含むα鎖相補性決定領域(CDR)1、配列番号4のアミノ酸配列を含むα鎖CDR2、配列番号5のアミノ酸配列を含むα鎖CDR3、配列番号6のアミノ酸配列を含むβ鎖CDR1、配列番号7のアミノ酸配列を含むβ鎖CDR2、及び配列番号8のアミノ酸配列を含むβ鎖CDR3、を含み、及び、
ここで該機能的部分が、ヒト白血球抗原(HLA)-Cw8分子によって提示された、GADGVGKSA(配列番号18)の変異KRASアミノ酸配列に対する抗原特異性を有する、
方法。
【請求項10】
請求項9に記載の方法であって、前記機能的部分が以下:
(a)配列番号9のアミノ酸配列に対して少なくとも99%同一であるアミノ酸配列;
(b)配列番号10のアミノ酸配列に対して少なくとも99%同一であるアミノ酸配列;
(c)配列番号9のアミノ酸20~129に対して少なくとも99%同一であるアミノ酸配列;
(d)配列番号10のアミノ酸22~132に対して少なくとも99%同一であるアミノ酸配列;又は
(e)(a)及び(b)の両方;(a)及び(c)の両方;(b)及び(c)の両方;若しくは(c)及び(d)の両方、
を含む、方法。
【請求項11】
請求項9に記載の方法であって、前記機能的部分が以下:
(a)配列番号9のアミノ酸配列;
(b)配列番号10のアミノ酸配列;
(c)配列番号9のアミノ酸20~129;
(d)配列番号10のアミノ酸22~132;又は
(e)(a)及び(b)の両方;(a)及び(c)の両方;(b)及び(c)の両方;若しくは(c)及び(d)の両方、
を含む、方法。
【請求項12】
請求項9~11のいずれか1項に記載の方法であって、前記機能的部分が更に以下:
(a)(i)配列番号11の48位のXがThr又はCysであり;
(ii)配列番号11の112位のXがSer、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、Met又はTrpであり;
(iii)配列番号11の114位のXがMet、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe又はTrpであり;及び
(iv)配列番号11の115位のXがGly、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、Met又はTrpである、
配列番号11のアミノ酸配列に対して少なくとも99%同一であるアミノ酸配列;
(b)配列番号12の57位のXがSer又はCysである、配列番号12のアミノ酸配列に対して少なくとも99%同一であるアミノ酸配列;又は
(c)(a)及び(b)の両方、
を含む、方法。
【請求項13】
請求項9~11のいずれか1項に記載の方法であって、前記機能的部分が更に以下:
(a)(i)配列番号11の48位のXがThr又はCysであり;
(ii)配列番号11の112位のXがSer、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、Met又はTrpであり;
(iii)配列番号11の114位のXがMet、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe又はTrpであり;及び
(iv)配列番号11の115位のXがGly、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、Met又はTrpである、
配列番号11のアミノ酸配列;
(b)配列番号12の57位のXがSer又はCysである、配列番号12のアミノ酸配列;又は
(c)(a)及び(b)の両方、
を含む、方法。
【請求項14】
請求項9~13のいずれか1項に記載の方法であって、前記機能的部分が以下:
(a)(i)配列番号13の177位のXがThr又はCysであり;
(ii)配列番号13の241位のXがSer、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、Met又はTrpであり;
(iii)配列番号13の243位のXがMet、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe又はTrpであり;及び
(iv)配列番号13の244位のXがGly、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、Met又はTrpである、
配列番号13のアミノ酸配列に対して少なくとも99%同一であるアミノ酸配列;
(b)配列番号14の189位のXがSer又はCysである、配列番号14のアミノ酸配列に対して少なくとも99%同一であるアミノ酸配列;
(c)(i)配列番号13の177位のXがThr又はCysであり;
(ii)配列番号13の241位のXがSer、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、Met又はTrpであり;
(iii)配列番号13の243位のXがMet、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe又はTrpであり;及び
(iv)配列番号13の244位のXがGly、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、Met又はTrpである、
配列番号13のアミノ酸20~266に対して少なくとも99%同一であるアミノ酸配列;
(d)配列番号14の189位のXがSer又はCysである、配列番号14のアミノ酸22~305に対して少なくとも99%同一であるアミノ酸配列;又は
(e)(a)及び(b)の両方;(a)及び(d)の両方;(b)及び(c)の両方;若しくは(c)及び(d)の両方、
を含む、方法。
【請求項15】
請求項9~13のいずれか1項に記載の方法であって、前記機能的部分が以下:
(a)(i)配列番号13の177位のXがThr又はCysであり;
(ii)配列番号13の241位のXがSer、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、Met又はTrpであり;
(iii)配列番号13の243位のXがMet、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe又はTrpであり;及び
(iv)配列番号13の244位のXがGly、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、Met又はTrpである、
配列番号13のアミノ酸配列;
(b)配列番号14の189位のXがSer又はCysである、配列番号14のアミノ酸配列;
(c)(i)配列番号13の177位のXがThr又はCysであり;
(ii)配列番号13の241位のXがSer、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、Met又はTrpであり;
(iii)配列番号13の243位のXがMet、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe又はTrpであり;及び
(iv)配列番号13の244位のXがGly、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、Met又はTrpである、
配列番号13のアミノ酸20~266を含むアミノ酸配列;
(d)配列番号14の189位のXがSer又はCysである、配列番号14のアミノ酸22~305を含むアミノ酸配列;又は
(e)(a)及び(b)の両方;(a)及び(d)の両方;(b)及び(c)の両方;若しくは(c)及び(d)の両方、
を含む、方法。
【請求項16】
改変されたヒト細胞集団を作製する方法であって、該方法が、組換え発現ベクターを単離したヒト細胞集団に導入することを含み、
ここで、該組換え発現ベクターが、TCRの機能的部分を含むタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含み、ここで、該タンパク質が以下:
(a)配列番号3のアミノ酸配列を含むα鎖相補性決定領域(CDR)1、配列番号4のアミノ酸配列を含むα鎖CDR2、配列番号5のアミノ酸配列を含むα鎖CDR3を含む第一のポリペプチド鎖;及び
(b)配列番号6のアミノ酸配列を含むβ鎖CDR1、配列番号7のアミノ酸配列を含むβ鎖CDR2、配列番号8のアミノ酸配列を含むβ鎖CDR3を含む第二のポリペプチド鎖、
を含み、
ここで、前記機能的部分が、ヒト白血球抗原(HLA)-Cw8分子によって提示された、GADGVGKSA(配列番号18)の変異KRASアミノ酸配列に対して抗原特異性を有する、
方法。
【請求項17】
請求項16に記載の方法であって、前記タンパク質が以下:
(a)配列番号9のアミノ酸配列に対して少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を含む第一のポリペプチド鎖;
(b)配列番号10のアミノ酸配列に対して少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を含む第二のポリペプチド鎖;
(c)配列番号9のアミノ酸20~129に対して少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を含む第一のポリペプチド鎖;
(d)配列番号10のアミノ酸22~132に対して少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を含む第二のポリペプチド鎖;又は
(e)(a)及び(b)の両方;(a)及び(c)の両方;(b)及び(c)の両方;若しくは(c)及び(d)の両方、
を含む、方法。
【請求項18】
請求項16に記載の方法であって、前記タンパク質が以下:
(a)配列番号9のアミノ酸配列を含む第一のポリペプチド鎖;
(b)配列番号10のアミノ酸配列を含む第二のポリペプチド鎖;
(c)配列番号9のアミノ酸20~129を含む第一のポリペプチド鎖;
(d)配列番号10のアミノ酸22~132を含む第二のポリペプチド鎖;又は
(e)(a)及び(b)の両方;(a)及び(c)の両方;(b)及び(c)の両方;若しくは(c)及び(d)の両方、
を含む、方法。
【請求項19】
請求項16~18のいずれか1項に記載の方法であって、前記タンパク質が以下:
(a)(i)配列番号11の48位のXがThr又はCysであり;
(ii)配列番号11の112位のXがSer、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、Met又はTrpであり;
(iii)配列番号11の114位のXがMet、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe又はTrpであり;及び
(iv)配列番号11の115位のXがGly、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、Met又はTrpである、
配列番号11のアミノ酸配列に対して少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を含む第一のポリペプチド鎖;
(b)配列番号12の57位のXがSer又はCysである、配列番号12のアミノ酸配列に対して少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を含む第二のポリペプチド鎖;又は
(c)(a)及び(b)の両方、
を含む、方法。
【請求項20】
請求項16~18のいずれか1項に記載の方法であって、前記タンパク質が以下:
(a)(i)配列番号11の48位のXがThr又はCysであり;
(ii)配列番号11の112位のXがSer、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、Met又はTrpであり;
(iii)配列番号11の114位のXがMet、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe又はTrpであり;及び
(iv)配列番号11の115位のXがGly、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、Met又はTrpである、
配列番号11のアミノ酸配列を含む第一のポリペプチド鎖;
(b)配列番号12の57位のXがSer又はCysである、配列番号12のアミノ酸配列を含む第二のポリペプチド鎖;又は
(c)(a)及び(b)の両方、
を含む、方法。
【請求項21】
請求項16~20のいずれか1項に記載の方法であって、前記タンパク質が以下:
(a)(i)配列番号13の177位のXがThr又はCysであり;
(ii)配列番号13の241位のXがSer、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、Met又はTrpであり;
(iii)配列番号13の243位のXがMet、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe又はTrpであり;
及び
(iv)配列番号13の244位のXがGly、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、Met又はTrpである、
配列番号13のアミノ酸配列に対して少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を含む第一のポリペプチド鎖;
(b)配列番号14の189位のXがSer又はCysである、配列番号14のアミノ酸配列に対して少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を含む第二のポリペプチド鎖;
(c)(i)配列番号13の177位のXがThr又はCysであり;
(ii)配列番号13の241位のXがSer、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、Met又はTrpであり;
(iii)配列番号13の243位のXがMet、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe又はTrpであり;及び
(iv)配列番号13の244位のXがGly、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、Met又はTrpである、
配列番号13のアミノ酸20~266に対して少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を含む第一のポリペプチド鎖;
(d)配列番号14の189位のXがSer又はCysである、配列番号14のアミノ酸22~305に対して少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を含む第二のポリペプチド鎖;又は
(e)(a)及び(b)の両方;(a)及び(d)の両方;(b)及び(c)の両方;若しくは(c)及び(d)の両方、
を含む、方法。
【請求項22】
請求項16~20のいずれか1項に記載の方法であって、前記タンパク質が以下:
(a)(i)配列番号13の177位のXがThr又はCysであり;
(ii)配列番号13の241位のXがSer、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、Met又はTrpであり;
(iii)配列番号13の243位のXがMet、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe又はTrpであり;及び
(iv)配列番号13の244位のXがGly、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、Met又はTrpである、
配列番号13のアミノ酸配列を含む第一のポリペプチド鎖;
(b)配列番号14の189位のXがSer又はCysである、配列番号14のアミノ酸配列を含む第二のポリペプチド鎖;
(c)(i)配列番号13の177位のXがThr又はCysであり;
(ii)配列番号13の241位のXがSer、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、Met又はTrpであり;
(iii)配列番号13の243位のXがMet、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe又はTrpであり;及び
(iv)配列番号13の244位のXがGly、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、Met又はTrpである、
配列番号13のアミノ酸20~266を含む第一のポリペプチド鎖;
(d)配列番号14の189位のXがSer又はCysである、配列番号14のアミノ酸22~305を含む第二のポリペプチド鎖;又は
(e)(a)及び(b)の両方;(a)及び(d)の両方;(b)及び(c)の両方;若しくは(c)及び(d)の両方、
を含む、方法。
【請求項23】
前記単離したヒト細胞集団が、単離したヒト末梢血リンパ球集団である、
請求項1~22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
前記単離したヒト細胞集団が、単離したヒト末梢血単核細胞集団である、請求項1~22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
前記単離したヒト細胞集団が、単離したヒトT細胞集団である、請求項1~22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
前記単離したヒト細胞集団が、単離したヒトCD8+T細胞集団である、請求項1~22のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本特許出願は、2015年9月15日に出願された米国仮特許出願番号第62/218,688号(参照
によりその全体がそれぞれ本明細書に取り込まれる)についての利益を主張する。
【0002】
電子的に提出された資料の参照による取り込み
本明細書と同時に提出され、以下の通り識別される、コンピューターで読み取り可能なヌクレオチド/アミノ酸の配列表は、参照により、その全体が本明細書に取り込まれる:2016年9月9日付けの「726288_ST25.TXT」という名前の30,753バイトのASCII(テキスト)ファイル1件。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
幾つかのがんは、特にがんが転移性で切除不能となる場合、治療のオプションが極めて限定され得る。例えば、例、手術、化学療法及び放射線治療等の治療における進歩にも関わらず、例えば、例、膵臓、結腸直腸、肺、子宮内膜、卵巣及び前立腺がん等の多くのがんについての予後は悪い場合がある。従って、がんに対する追加的な治療の満たされていないニーズが存在する。
【発明の概要】
【0004】
発明の要約
本発明の一実施形態は、ヒト白血球抗原 (HLA)-Cw8分子との関連で提示された、変異キルステンラット肉腫ウィルスがん遺伝子ホモログ (KRAS)に対する抗原特異性を有する、
単離又は精製されたT細胞受容体(TCR)を提供する。
【0005】
本発明は、関連するポリペプチド及びタンパク質、並びに関連する核酸、組換え発現ベクター、宿主細胞、細胞集団、及び本発明のTCRに関連する医薬組成物を更に提供する。
【0006】
本発明によって、哺乳動物におけるがんの存在を検出する方法、及び哺乳動物におけるがんを治療又は予防する方法が更に提供される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図面の幾つかの視点における簡単な説明
図1図1は、様々な濃度 (μM)の
【0008】
【化1】

【0009】
でパルスした標的樹状細胞との共培養の際、配列番号9のα鎖可変領域及び配列番号10の
β鎖可変領域を含む抗変異KRAS TCRをコードするヌクレオチド配列で形質導入したエフェクターT細胞によって、分泌されたインターフェロン(IFN)γの量(pg/ml)を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
発明の詳細な説明
キルステンラット肉腫ウィルスがん遺伝子ホモログ (KRAS)はまた、GTPアーゼKRas、V-Ki-Ras2キルステンラット肉腫ウィルスがん遺伝子又はKRAS2としても参照され低分子量(small)GTPアーゼ・スーパーファミリーのメンバーである。KRASには2つの転写産物変異
体:KRAS変異体A及びKRAS変異体Bがある。以降、他で特定されない限り、「KRAS」(変異又は未変異)への言及は、変異体A及び変異体Bの両方を指す。特定の理論又は機構に拘束されることはないが、変異した場合、KRASは多くのヒトがんの発がんの早期においてシグナル伝達に関与する場合があると考えられる。単一のアミノ酸置換が、変異を活性化し得る。活性化した場合、変異KRASはグアノシン-5'-三リン酸(GTP)に結合し、GTPをグアノシン5'-二リン酸 (GDP)に変換する。変異KRASタンパク質産物は、構成的に活性化され得る
。変異KRASタンパク質は、多様なヒトがん、例えば、例、膵臓 (例、膵臓がん)、結腸直
腸、肺 (例、肺腺がん)、子宮内膜、卵巣 (例、上皮卵巣がん)及び前立腺がん等のいずれかにおいて発現され得る。
【0011】
本発明の一実施形態は、変異ヒトKRAS (以降、「変異KRAS」)に対して抗原特異性を有
する、単離又は精製されたTCRを提供する。以降、他で特定されない限り、「TCR」への言及は、TCRの機能的部分及び機能的変異体も指す。本発明のTCRは、G12D変異を有する任意のKRAS (タンパク質、ポリペプチド又はペプチド)に対する抗原特異性を有し得る。本発
明の一実施形態においては、TCRは、配列番号15又は16のアミノ酸配列を含むか又はそれ
からなるKRASタンパク質である、G12D変異を有するKRASタンパク質に対する抗原特異性を有する。配列番号15の変異KRAS変異体Aタンパク質アミノ酸配列は、一般的に、配列番号15においては12位のグリシンがアスパラギン酸で置換されていることを除き、変異してい
ない、配列番号1の野生型 (WT)KRASタンパク質変異体Aアミノ酸配列の1~189位に対応す
る。配列番号16の変異KRAS変異体Bタンパク質アミノ酸配列は、一般的に、配列番号16に
おいては12位のグリシンがアスパラギン酸で置換されていることを除き、変異していない
、配列番号2のWT KRASタンパク質変異体Bアミノ酸配列の1~188位に対応する。本発明の
一実施形態においては、TCRは、任意の長さを有するKRASペプチドである、上記のG12D変
異を有するKRASペプチドに対する抗原特異性を有する。例えば、TCRは、約8~約24アミノ酸残基、好ましくは約9~約11アミノ酸残基の長さを有するKRASペプチドである、G12D変
異を有するKRASペプチドに対する抗原特異性を有し得る。本発明の一実施形態においては、TCRは、約8アミノ酸残基、約9アミノ酸残基、約10アミノ酸残基、約11アミノ酸残基、
約12アミノ酸残基又は約24アミノ酸残基の長さを有するKRASペプチドである、G12D変異を有するKRASペプチドに対する抗原特異性を有し得る。例えば、TCRは、GADGVGKSA (配列番号18)のアミノ酸配列を含むか又はそれからなるペプチドである、G12D変異を有するKRAS10-18ペプチドに対する抗原特異性を有し得る。G12D変異を有する、配列番号18の変異KRASペプチドアミノ酸配列は、一般的に、配列番号18において、3位のグリシンがアスパラギ
ン酸で置換されていることを除き、変異していない、配列番号17のWT KRAS10-18ペプチドアミノ酸配列の1~9位に対応する。本発明の更に別の実施形態においては、TCRは、MTEYKLVVVGADGVGKSALTIQLI (配列番号20);GADGVGKSA (変異KRAS10-18;配列番号18);VGADGVGKSA (変異KRAS9-18;配列番号31);又はGADGVGKSAL (変異KRAS10-19;配列番号30)のアミノ酸配列を含むか又はそれからなる変異KRASペプチドである、G12D変異を有するKRASペプチドに対する抗原特異性を有し得る。例示的な実施形態においては、TCRは、MTEYKLVVVGADGVGKSALTIQLI (配列番号20);GADGVGKSA (変異KRAS10-18;配列番号18);VGADGVGKSA (
変異KRAS9-18;配列番号31);又はGADGVGKSAL (変異KRAS10-19;配列番号30)のアミノ酸
配列を含むか又はそれからなる変異KRASエピトープである、変異KRASエピトープに対する抗原特異性を有する。
【0012】
本発明の一実施形態においては、本発明のTCRは、HLA-Cw8依存様式で変異KRASを認識することができる。本明細書において用いられる場合、「HLA-Cw8依存様式」は、TCRが、HLA-Cw8分子との関連で変異KRASに結合する際に、免疫応答を誘発することを意味する。本
発明のTCRは、HLA-Cw8分子によって提示される変異KRASを認識することができ、変異KRASに加えてHLA-Cw8分子に結合し得る。関連して、本発明のTCRが変異KRASを認識する例示的なHLA-Cw8分子としては、HLA-Cw*0801、HLA-Cw*0802、HLA-Cw*0803、HLA-Cw*0804、HLA-Cw*0805、HLA-Cw*0806、HLA-Cw*0807、HLA-Cw*0808及びHLA-Cw*0809アレルによってコードされるものが挙げられる。好ましい実施形態においては、TCRは、HLA-Cw*0802分子との関連で変異KRASを認識する。
【0013】
本発明のTCRは、養子細胞移入のために用いられた細胞によって発現される場合を含め
、多くの利点を提供する。変異KRASはがん細胞によって発現され、健常な非がん細胞によっては発現されない。特定の理論又は機構に拘束されることはないが、本発明のTCRは、
健常な非がん細胞の破壊を最小化又は排除し、それにより例えば最小化又は排除することによって毒性を低減する一方、有利にがん細胞の破壊を目的とすると考えられる。更に、本発明のTCRは、例えば、例、化学療法、手術又は放射線療法等の他の型の治療に応答し
ない変異KRAS陽性がんを、有利に成功裏に治療又は予防し得る。追加的に、本発明のTCR
は、変異KRASの高度に貪欲な認識を提供し、これは、操作されていない腫瘍細胞 (例、インターフェロン(IFN)γで処理されていない、G12D変異を有するKRASペプチドでパルス
した変異KRAS及びHLA-Cw*0802の一方若しくは両方をコードするベクターでトランスフェ
クトされていない、又はそれらの組み合わせの腫瘍細胞)を認識する能力を提供し得る。
更に、HLA-Cw*0802アレルは、アメリカ系コーカシアンとアフリカ系アメリカ人の人種の
それぞれ最大約8%及び最大約11%で発現している。従って、本発明のTCRは、他のMHC分
子との関連で抗原を認識するTCRを用いた免疫療法に適していない場合があるHLA-Cw*0802アレルを発現する患者を含むよう、免疫療法に適格ながん患者数を増加し得る。
【0014】
本明細書において用いられる場合、用語「抗原特異性」は、TCRが高いアビディティー
を有する変異KRASに特異的に結合し得、免疫学的に認識し得ることを意味する。例えば、
(a)低濃度の変異KRASペプチド (例、約0.05 ng/mL~約5 ng/mL、0.05 ng/mL、0.1 ng/mL
、0.5 ng/mL、1 ng/mL、5 ng/mL、又は前記値の任意の2つによって定義される範囲)でパ
ルスした抗原陰性HLA-Cw*0802+標的細胞、又は(b)標的細胞が変異KRASを発現するよう、
変異KRASをコードするヌクレオチド配列が導入されている抗原陰性HLA-Cw*0802+標的細胞、との共培養の際、TCRを発現する約1×104~約1×105T細胞が、少なくとも約200 pg/mL
以上(例、200 pg/mL以上、300 pg/mL以上、400 pg/mL以上、500 pg/mL以上、600 pg/mL以上、700 pg/mL以上、1000 pg/mL以上、5,000 pg/mL以上、7,000 pg/mL以上、10,000 pg/mL以上、20,000 pg/mL以上、又は前記値の任意の2つによって定義される範囲)のIFN-γを
分泌する場合、TCRは変異KRASに対して「抗原特異性」を有すると考えられ得る。本発明
のTCRを発現する細胞はまた、より高濃度の変異KRASペプチドでパルスした抗原陰性HLA-Cw*0802+標的細胞との共培養の際、IFN-γを分泌し得る。
【0015】
代替的に又は追加的に、(a)低濃度の変異KRASペプチドでパルスした抗原陰性HLA-Cw*0802+標的細胞、又は(b)標的細胞が、変異KRASを発現するよう、変異KRASをコードするヌクレオチド配列が導入されている抗原陰性HLA-Cw*0802+標的細胞、との共培養の際、TCRを
発現するT細胞が、陰性対照によって発現されるIFN-γの量と比べて少なくとも2倍のIFN-γを分泌する場合、TCRは変異KRASに対して「抗原特異性」を有すると考えられ得る。陰
性対照は、例えば、(i)(a)同じ濃度の無関係のペプチド (例、変異KRASペプチドとは異なる配列を有する幾つかの他のペプチド)でパルスした抗原陰性HLA-Cw*0802+標的細胞、若
しくは(b)標的細胞が無関係のペプチドを発現するよう、無関係のペプチドをコードする
ヌクレオチド配列が導入されている抗原陰性HLA-Cw*0802+標的細胞、と共培養した、TCR
を発現するT細胞、又は(ii)(a)同じ濃度の変異KRASペプチドでパルスした抗原陰性HLA-Cw*0802+標的細胞、若しくは(b)標的細胞が変異KRASを発現するよう、変異KRASをコードす
るヌクレオチド配列が導入されている抗原陰性HLA-Cw*0802+標的細胞、と共培養した、形質導入されていないT細胞 (例、TCRを発現しないPBMC由来)であり得る。IFN-γ分泌は、
例えば、例、酵素結合免疫吸着アッセイ (ELISA)等、当該技術分野において公知の方法によって測定され得る。
【0016】
代替的に又は追加的に、(a)低濃度の変異KRASペプチドでパルスした抗原陰性HLA-Cw*0802+標的細胞、又は(b)標的細胞が変異KRASを発現するよう、変異KRASをコードするヌクレオチド配列が導入されている抗原陰性HLA-Cw*0802+標的細胞、との共培養の際、IFN-γを分泌するTCRを発現するT細胞数が、IFN-γを分泌する陰性対照T細胞の数と比べて、少な
くとも2倍である場合、TCRは変異KRASに対して「抗原特異性」を有すると考えられ得る。ペプチドの濃度及び陰性対照は、本発明の他の態様に関して明細書に記載されたものであり得る。IFN-γを分泌する細胞数は、例えば、例、ELISPOT等の当該技術分野において公
知の方法によって測定され得る。
【0017】
代替的に又は追加的に、TCRを発現するT細胞が、例えば、変異KRASを発現する標的細胞で刺激後にフローサイトメトリーによって測定された、4-1BB及びOX40の一方又は両方の
発現を上方制御する場合、TCRは変異KRASに対して「抗原特異性」を有すると考えられ得
る。
【0018】
本発明は、例えば、TCRのアルファ(α)鎖、TCRのベータ(β)鎖、TCRのガンマ(g)鎖、TCRのデルタ(δ)鎖又はそれらの組合せ等の、2のポリペプチド (すなわち、ポリペプチド鎖)を含むTCRを提供する。本発明のTCRのポリペプチドは、TCRが変異KRASに対する抗原特異性を有するという条件で、任意のアミノ酸配列を含み得る。
【0019】
本発明の一実施形態においては、TCRは、各々がTCRの相補性決定領域(CDR)1、CDR2及びCDR3を含む可変領域を含む、2のポリペプチド鎖を含む。本発明の一実施形態においては
、TCRは、配列番号3のアミノ酸配列を含むCDR1 (α鎖のCDR1)、配列番号4のアミノ酸配列
を含むCDR2 (α鎖のCDR2)及び配列番号5のアミノ酸配列を含むCDR3 (α鎖のCDR3)を含む
第一のポリペプチド鎖、並びに配列番号6のアミノ酸配列を含むCDR1 (β鎖のCDR1)、配列番号7のアミノ酸配列を含むCDR2 (β鎖のCDR2)及び配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR3 (β鎖のCDR3)を含む第二のポリペプチド鎖を含む。これに関して、本発明のTCRは、配列
番号3~8からなる群から選択されるアミノ酸配列の任意の1以上を含み得る。好ましくは
、TCRは配列番号3~5又は配列番号6~8のアミノ酸配列を含む。特に好ましい実施形態に
おいては、TCRは配列番号3~8の全てのアミノ酸配列を含む。
【0020】
本発明の一実施形態においては、TCRは上記のCDRを含むTCRの可変領域のアミノ酸配列
を含む。これに関して、TCRは配列番号9 (α鎖の可変領域);配列番号10 (β鎖の可変領
域);又は配列番号9及び10の両方のアミノ酸配列を含み得る。好ましくは、本発明のTCR
は配列番号9及び10の両方のアミノ酸配列を含む。
【0021】
本発明のTCRは、更に定常領域を含み得る。定常領域は、例えば、例、ヒト又はマウス
等の任意の好適な種に由来し得る。本発明の一実施形態においては、TCRは、更にマウス
定常領域を含む。本明細書において用いられる場合、用語「マウスの」又は「ヒトの」は、本明細書に記載されたTCR又はTCRの任意の構成要素(例、相補性決定領域 (CDR)、可変
領域、定常領域、α鎖及び/又はβ鎖)を参照する場合、マウス又はヒトのそれぞれに由
来するTCR (又はその構成要素)、すなわち、マウスT細胞又はヒトT細胞のそれぞれに起源する又はかつて発現したTCR (又はその構成要素)を意味する。
【0022】
本発明の一実施形態は、ヒト可変領域及びマウス定常領域を含むキメラTCRであって、
該TCRがHLA-Cw8分子との関連で提示された変異KRASに対する抗原特異性を有する、キメラTCRを提供する。該キメラTCRは、配列番号24 (野生型(WT)マウスα鎖定常領域)、配列番
号25 (WTマウスβ鎖定常領域)、又は配列番号24及び25の両方のアミノ酸配列を含み得る
。好ましくは、本発明のTCRは、配列番号24及び25の両方のアミノ酸配列を含む。該キメ
ラTCRは、本発明の他の態様に関して明細書に記載されたようにCDR領域のいずれかを含み得る。本発明の別の実施形態においては、該キメラTCRは、本発明の他の態様に関して本
明細書に記載された可変領域のいずれかを含み得る。これに関して、該キメラTCRは、(i)配列番号3~5及び24;(ii)配列番号6~8及び25;(iii)配列番号3~8及び24~25;(iv)配
列番号9及び24;(v)配列番号10及び25;又は(vi)配列番号9~10及び24~25のアミノ酸配
列を含み得る。好ましくは、該キメラTCRは(i)配列番号3~8及び24~25、又は(ii)配列番号9~10及び24~25のアミノ酸配列を含む。
【0023】
本発明の一実施形態においては、本発明のTCRはTCRのα鎖及びTCRのβ鎖を含み得る。
本発明のTCRのα鎖及びβ鎖の各々は任意のアミノ酸配列を独立して含み得る。これに関
して、本発明のキメラTCRのα鎖は配列番号26のアミノ酸配列を含み得る。この型のα鎖
はTCRの任意のβ鎖と対になり得る。これに関して、本発明のTCRのβ鎖は配列番号27のアミノ酸配列を含み得る。それゆえ、本発明のTCRは配列番号26、配列番号27、又は配列番
号26及び27の両方のアミノ酸配列を含み得る。好ましくは、本発明のTCRは配列番号26及
び27の両方のアミノ酸配列を含む。
【0024】
本発明の一実施形態においては、TCRは置換されている定常領域を含む。これに関して
、TCRは、α及びβ鎖の一方又は両方の定常領域において、1、2、3又は4アミノ酸置換(
複数可)を有する本明細書に記載されたTCRのいずれかのアミノ酸配列を含み得る。幾つ
かの実施形態においては、置換されている定常領域を含むTCRは、置換されていない(野生型)定常領域を含む親TCRと比べて、変異KRAS+標的の増加した認識、宿主細胞による増加
した発現及び増加した抗腫瘍活性の1以上を有利に提供する。一般的に、それぞれ配列番
号11及び12である、TCRα及びβ鎖のマウス定常領域の置換されているアミノ酸配列は、
それぞれ配列番号24及び25である、置換されていないマウス定常領域アミノ酸配列の全部
または一部に対応し、配列番号11は、配列番号24と比べた場合に1、2、3又は4アミノ酸置換(複数可)を有し、及び配列番号12は、配列番号25と比べた場合に1アミノ酸置換を有
する。これに関して、本発明の一実施形態は、(a)(i)48位のXがThr又はCysであり;(ii)112位のXがSer、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、Met又はTrpであり;(iii)114位のXがMet、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe又はTrpであり;及び(iv)115位のXがGly、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、Met又はTrpである、配列番号11 (α鎖の定常領域);並びに(b)57位のXがSer又はCysである、配列番号12 (β鎖の定常領域)、のアミノ酸配列を含むTCRを提供
する。本発明の一実施形態においては、配列番号11を含むTCRは、配列番号24 (置換され
ていないマウスα鎖の定常領域)を含まない。本発明の一実施形態においては、配列番号12を含むTCRは配列番号25 (置換されていないマウスβ鎖の定常領域)を含まない。
【0025】
本発明の一実施形態においては、置換されている定常領域は、α及びβ鎖の一方又は両方の定常領域においてシステイン置換を含み、システインで置換されているTCRを提供す
る。α及びβ鎖中の対向するシステインは、置換されているTCRのα及びβ鎖の定常領域
を互いに連結するジスルフィド結合を提供し、それは置換されていないマウス定常領域を含むTCR中には存在しない。これに関して、TCRは、配列番号24のネイティブThr48及び配
列番号25のネイティブSer57の一方又は両方がCysで置換され得る、システイン置換キメラTCRであり得る。好ましくは、配列番号24のネイティブThr48及び配列番号25のネイティブSer57の両方がCysで置換される。一実施形態においては、システイン置換キメラTCRは、48位のXがCysであり、112位のXがネイティブSerであり、114位のXがネイティブMetであり
、及び115位のXがネイティブGlyである配列番号11のアミノ酸配列を含むα鎖定常領域、
並びに57位のXがCysである配列番号12のアミノ酸配列を含むβ鎖定常領域、を含む。本発明のシステイン置換キメラTCRは、本明細書に記載されたCDR及び/又は可変領域のいずれかに加え、置換されている定常領域を含み得る。これに関して、システイン置換キメラTCRは(i)配列番号3~8及び11~12;(ii)配列番号9~12;(iii)配列番号3~5及び11;(iv)配列番号6~8及び12;(v)配列番号9及び11;又は(vi)配列番号10及び12のアミノ酸配列を含み得る。好ましくは、システイン置換キメラTCRは(i)配列番号3~8及び11~12、又は(ii)配列番号9~12のアミノ酸配列を含む。
【0026】
本発明の一実施形態においては、システイン置換キメラTCRは完全長α鎖及び完全長β
鎖を含む。これに関して、TCRは、配列番号26のネイティブThr177及び配列番号27のネイ
ティブSer189の一方又は両方がCysで置換され得る、システイン置換キメラTCRであり得る。好ましくは、配列番号26のネイティブThr177及び配列番号27のネイティブSer189の両方がCysで置換されている。一実施形態においては、システイン置換キメラTCRは、177位のXがCysであり、241位のXがネイティブSerであり、243位のXがネイティブMetであり、及び244位のXがネイティブGlyである配列番号13のアミノ酸配列を含むα鎖、並びに189位のXがCysである配列番号14のアミノ酸配列を含むβ鎖定常領域、を含む。これに関して、シス
テイン置換キメラTCRは、(i)配列番号13、(ii)配列番号14、又は(iii)配列番号13~14の
両方のアミノ酸配列を含み得る。好ましくは、システイン置換キメラTCRは、配列番号13
のアミノ酸配列を含む完全長α鎖及び配列番号14のアミノ酸配列を含む完全長β鎖を含む。
【0027】
本発明の一実施形態においては、置換されているアミノ酸配列は、α及びβ鎖の一方又は両方の定常領域の膜貫通 (TM)ドメインにおける、1、2又は3アミノ酸の、疎水性アミノ酸との置換を含み、疎水性アミノ酸で置換されているTCR (本明細書では「LVL改変TCR」
としても参照される)を提供する。TCRのTMドメインにおける疎水性アミノ酸置換(複数可)は、TMドメイン中に疎水性アミノ酸置換(複数可)を欠くTCRと比べて、TCRのTMドメインの疎水度を上昇させ得る。これに関して、TCRは、配列番号24のネイティブSer112、Met114及びGly115の1、2又は3が独立してAla、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、Met又はTrp;好ましくはLeu、Ile又はValで置換されている、LVL改変キメラTCRである。好ましくは、配列
番号24のネイティブSer112、Met114及びGly115の3の全てが独立してAla、Val、Leu、Ile
、Pro、Phe、Met又はTrp;好ましくはLeu、Ile又はValで置換され得る。一実施形態にお
いては、LVL改変キメラTCRは、48位のXがネイティブThrであり、112位のXがSer、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、Met又はTrpであり、114位のXがMet、Ala、Val、Leu、Ile、Pro
、Phe又はTrpであり、及び115位のXがGly、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、Met又はTrp
である配列番号11のアミノ酸配列を含むα鎖定常領域、並びに配列番号11を含むLVL改変
キメラTCRが配列番号24 (置換されていないマウスα鎖の定常領域)を含まない、配列番号25のアミノ酸配列を含むβ鎖定常領域、を含む。好ましい実施形態においては、LVL改変
キメラTCRは、48位のXがネイティブThrであり、112位のXがLeuであり、114位のXがIleで
あり、及び115位のXがValである配列番号11のアミノ酸配列を含むα鎖定常領域、並びに
配列番号25のアミノ酸配列を含むβ鎖定常領域、を含む。好ましくは、LVL改変キメラTCRは配列番号11のアミノ酸配列を含むα鎖定常領域及び配列番号25のアミノ酸配列を含むβ鎖定常領域を含む。本発明のLVL改変キメラTCRは、本明細書に記載されたCDR及び/又は
可変領域のいずれかに加えて、置換されている定常領域を含み得る。これに関して、LVL
改変キメラTCRは(i)配列番号3~5及び11;(ii)配列番号6~8及び25;(iii)配列番号3~8
及び11及び25;(iv)配列番号9及び11;(v)配列番号10及び25;又は(vi)配列番号9~11及
び25のアミノ酸配列を含み得る。好ましくは、LVL改変キメラTCRは(i)配列番号3~8、11
及び25、又は(ii)配列番号9~11及び25のアミノ酸配列を含む。
【0028】
本発明の一実施形態においては、LVL改変TCRは完全長α鎖及び完全長β鎖を含む。これに関して、TCRは、配列番号26のネイティブSer241、Met243及びGly244の1、2又は3が独立してAla、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、Met又はTrp;好ましくはLeu、Ile又はValで置換さ
れ得る、LVL改変キメラTCRであり得る。好ましくは、配列番号26のネイティブSer241、Met243及びGly244の3の全てが独立してAla、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、Met又はTrp;好ま
しくはLeu、Ile又はValで置換され得る。一実施形態においては、LVL改変キメラTCRは、177位のXがネイティブThrであり、241位のXがSer、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、Met又はTrpであり、243位のXがMet、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe又はTrpであり、及び244位のXがGly、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、Met又はTrpである配列番号13のアミノ酸配列を含むα鎖、並びに配列番号27のアミノ酸配列を含むβ鎖、を含み、配列番号13を含むLVL改変キメラTCRが配列番号26 (置換されていないマウスα鎖)を含まない。好ましい実施
形態においては、LVL改変キメラTCRは、177位のXがネイティブThrであり、241位のXがLeuであり、243位のXがIleであり、及び244位のXがValである配列番号13のアミノ酸配列を含むα鎖、並びに配列番号27のアミノ酸配列を含むβ鎖、を含み、配列番号13を含むLVL改
変キメラTCRが配列番号26 (置換されていないマウスα鎖)を含まない。好ましくは、LVL
改変キメラTCRは、配列番号13のアミノ酸配列を含むα鎖及び配列番号27のアミノ酸配列
を含むβ鎖定常領域を含む。
【0029】
本発明の一実施形態においては、置換されているアミノ酸配列は、α及びβ鎖の一方又は両方の定常領域の膜貫通 (TM)ドメイン中の1、2又は3のアミノ酸の疎水性アミノ酸での置換(複数可)と組合せて、α及びβ鎖の一方又は両方の定常領域におけるシステイン置換を含む(本明細書においてまた「システイン置換LVL改変TCR」として参照する)。これに関して、TCRは、配列番号24のネイティブThr48がCysで置換され;配列番号24のネイティ
ブSer112、Met114及びGly115の1、2又は3が独立してAla、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、Met又はTrp;好ましくはLeu、Ile又はValで置換され;及び配列番号25のネイティブSer57がCysで置換されている、システイン置換LVL改変キメラTCRである。好ましくは、配列番号24のネイティブSer112、Met114及びGly115の3の全てが独立してAla、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、Met又はTrp;好ましくはLeu、Ile又はValで置換され得る。一実施形態においては、システイン置換LVL改変キメラTCRは、48位のXがCysであり、112位のXがSer、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、Met又はTrpであり、114位のXがMet、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe又はTrpであり、115位のXがGly、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、Met又はTrpである配列
番号11のアミノ酸配列を含むα鎖、並びに57位のXがCysである配列番号12のアミノ酸配列を含むβ鎖を含み、配列番号11が配列番号24 (置換されていないα鎖)を含まず、配列番
号12が配列番号25 (置換されていないβ鎖)を含まない。好ましくは、システイン置換LVL改変キメラTCRは、48位のXがCysであり、112位のXがLeuであり、114位のXがIleであり、115位のXがValである配列番号11のアミノ酸配列を含むα鎖、並びに57位のXがCysである配列番号12のアミノ酸配列を含むβ鎖を含む。本発明のシステイン置換LVL改変キメラTCRは、本明細書に記載されたCDR及び/又は可変領域のいずれかに加えて、置換されている定
常領域を含み得る。これに関して、システイン置換LVL改変キメラTCRは、(i)配列番号3~5及び11;(ii)配列番号9及び11;(iii)配列番号6~8及び12;(iv)配列番号10及び12;(v)配列番号3~8及び11~12;又は(vi)配列番号9~12を含み得る。好ましくは、システイン
置換LVL改変キメラTCRは、(i)配列番号3~8及び11~12、又は(ii)配列番号9~12のアミノ酸配列を含む。
【0030】
一実施形態においては、システイン置換LVL改変キメラTCRは完全長α鎖及び完全長β鎖を含む。これに関して、TCRは、配列番号26のネイティブThr177がCysで置換され、配列番号26のネイティブSer241、Met243及びGly244の1、2又は3が独立してAla、Val、Leu、Ile
、Pro、Phe、Met又はTrp;好ましくはLeu、Ile又はValで置換され得る、システイン置換LVL改変キメラTCRであり得る。好ましくは、配列番号26のネイティブSer241、Met243及びGly244の3の全てが独立してAla、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、Met又はTrp;好ましくはLeu
、Ile又はValで置換され得る。一実施形態においては、システイン置換LVL改変キメラTCRは、177位のXがCysであり、241位のXがSer、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、Met又はTrpであり、243位のXがMet、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe又はTrpであり、及び244位のXがGly、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、Met又はTrpである配列番号13のアミノ酸配列を含
むα鎖、並びに189位のXがCysである配列番号14のアミノ酸配列を含むβ鎖を含み、配列
番号13を含むシステイン置換LVL改変キメラが配列番号26 (置換されていないマウスα鎖)を含まない。好ましい実施形態においては、システイン置換LVL改変キメラTCRは、177位
のXがCysであり、241位のXがLeuであり、243位のXがIleであり、及び244位のXがValであ
る配列番号13のアミノ酸配列を含むα鎖、並びに189位のXがCysである配列番号14のアミ
ノ酸配列を含むβ鎖、を含む。
【0031】
本発明の範囲には、本明細書に記載された本発明のTCRの機能的変異体が含まれる。本
明細書において用いられる場合、用語「機能的変異体」は、機能的変異体が変異体のTCR
、ポリペプチド又はタンパク質の生物学的活性を保持する、親TCR、ポリペプチド又はタ
ンパク質と実質的又は有意に同一又は類似の配列を有するTCR、ポリペプチド又はタンパ
ク質を指す。例えば、機能的変異体は、親TCRが抗原特異性を有する変異KRASに特異的に
結合する、又は親TCR、ポリペプチド若しくはタンパク質と類似する程度、同じ程度若し
くはより高い程度に、親ポリペプチド若しくはタンパク質が特異的結合する、能力を保持する、本明細書に記載されたTCR、ポリペプチド又はタンパク質(親TCR、ポリペプチド又
はタンパク質)の変異体を包含する。親TCR、ポリペプチド又はタンパク質に準拠して、例えば、機能的変異体は、親TCR、ポリペプチド又はタンパク質のそれぞれに対して、アミ
ノ酸配列で少なくとも約30%、50%、75%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%以上同一であり得る。
【0032】
例えば、機能的変異体は、少なくとも1の保存的アミノ酸置換を有する親TCR、ポリペプチド又はタンパク質のアミノ酸配列を含み得る。保存的アミノ酸置換は、当該技術分野において公知であり、ある物理的及び/又は化学的性質を有する1つのアミノ酸が、同じ化学的又は物理的性質を有する別のアミノ酸と交換されるアミノ酸置換が挙げられる。例えば、保存的アミノ酸置換は、酸性アミノ酸を別の酸性アミノ酸(例えばAsp又はGlu)に置換、非極性側鎖を有するアミノ酸を別の非極性側鎖を有するアミノ酸(例えば、Ala、Gly、Val、Ile、Leu、Met、Phe、Pro、Trp、Val等)に置換、塩基性アミノ酸を別の塩基性ア
ミノ酸(Lys、Arg等)に置換、極性側鎖を有するアミノ酸を別の極性側鎖を有するアミノ酸(Asn、Cys、Gln、Ser、Thr、Tyr等)に置換したものであり得る。
【0033】
代替的に又は追加的に、機能的変異体は、少なくとも1つの非保存的アミノ酸置換を有する親TCR、ポリペプチド又はタンパク質のアミノ酸配列を含み得る。この場合、非保存
的アミノ酸置換は、機能的変異体の生物学的活性を妨害又は阻害しないことが好ましい。好ましくは、非保存的アミノ酸置換は、機能的変異体の生物学的活性が親TCR、ポリペプ
チド又はタンパク質と比較して上昇するよう、機能的変異体の生物学的活性を増強する。
【0034】
TCR、ポリペプチド又はタンパク質は、TCR、ポリペプチド又はタンパク質の他の構成要素、例、他のアミノ酸が、TCR、ポリペプチド又はタンパク質の生物学的活性を実質的に
変化させないよう、特定のアミノ酸配列又は本明細書に記載された配列から本質的になり得る。これに関して、例えば、本発明のTCR、ポリペプチド又はタンパク質は、配列番号26、配列番号27、配列番号26及び27の両方、配列番号13、配列番号14、配列番号13~14又
は配列番号13及び27の両方のアミノ酸配列から本質的になり得、本発明の他の態様に関して明細書に記載されたように配列番号13及び14が置換されている。また、例えば、本発明のTCR、ポリペプチド又はタンパク質は、配列番号9、配列番号10、又は配列番号9及び10
の両方のアミノ酸配列(複数可)から本質的になり得る。更に、本発明のTCR、ポリペプ
チド又はタンパク質は、配列番号3 (α鎖のCDR1)、配列番号4 (α鎖のCDR2)、配列番号5 (α鎖のCDR3)、配列番号6 (β鎖のCDR1)、配列番号7 (β鎖のCDR2)、配列番号8 (β鎖のCDR3)又はそれらの任意の組合せ、例、配列番号3~5;6~8;又は3~8のアミノ酸配列から本質的になり得る。
【0035】
また、本発明によって、本明細書に記載のTCRのいずれかの機能的部分を含むポリペプ
チドが提供される。本明細書で使用される場合、用語「ポリペプチド」は、オリゴペプチドを含み、1以上のペプチド結合によって連結した一本鎖のアミノ酸を指す。
【0036】
本発明のポリペプチドに関して、機能的部分が変異KRASに特異的に結合するという条件で、機能的部分はTCRの一部である連続するアミノ酸を含む任意の部分であり得る。TCRに準拠して使用される場合、用語「機能的部分」は、本発明のTCRの任意の部分又はフラグ
メントを指し、そしてその部分又はフラグメントは、一部であるTCR(親TCR)の生物学的活性を保持する。機能的部分は、例えば、変異KRASに特異的に結合する能力(例、HLA-Cw*0802依存的様式で)、又は親TCRと類似する程度、同じ程度、又はより高い程度にがんを検出、治療若しくは予防する能力、を維持するTCRの部分を含有する。親TCRに準拠して、機能的部分は、例えば、親TCRの約10%、25%、30%、50%、68%、80%、90%、95%以
上を含み得る。
【0037】
機能的部分は、追加的なアミノ酸が親TCRのアミノ酸配列に見られない、部分のアミノ
末端若しくはカルボキシ末端、又はその両方の末端に、追加的なアミノ酸を含み得る。望ましくは、追加のアミノ酸は、機能的部分の生物学的機能、例、変異KRASに特異的に結合すること;及び/又はがんを検出し、がんを治療し若しくは予防する能力を有することと干渉しない。より望ましくは、追加のアミノ酸は、親TCRの生物学的活性と比較して、そ
の生物学的活性を増強する。
【0038】
ポリペプチドは、本発明のTCRのα及びβ鎖のいずれか又は両方の機能的部分、例えば
、本発明のTCRのα鎖及び/又はβ鎖の可変領域(複数可)のCDR1、CDR2及びCDR3の1以上(one of more of)を含む機能的部分等、を含み得る。本発明の一実施形態においては、ポリペプチドは配列番号3 (α鎖のCDR1)、4 (α鎖のCDR2)、5 (α鎖のCDR3)、6 (β鎖のCDR1)、7 (β鎖のCDR2)、8 (β鎖のCDR3)又はそれらの組合せのアミノ酸配列を含む機能的部分を含み得る。好ましくは、本発明のポリペプチドは配列番号3~5;6~8;又は配列番
号3~8の全てのアミノ酸配列を含む機能的部分を含む。より好ましくは、ポリペプチドは配列番号3~8のアミノ酸配列を含む機能的部分を含む。
【0039】
本発明の一実施形態においては、本発明のポリペプチドは、例えば、上記のCDR領域の
組合せを含む本発明のTCRの可変領域を含み得る。これに関して、ポリペプチドは配列番
号9 (α鎖の可変領域)、配列番号10 (β鎖の可変領域)、又は配列番号9及び10の両方のアミノ酸配列を含み得る。好ましくは、ポリペプチドは配列番号9及び10の両方のアミノ酸
配列を含む。
【0040】
本発明の一実施形態においては、本発明のポリペプチドは、上記の本発明のTCRの定常
領域を更に含み得る。これに関して、ポリペプチドは、配列番号24 (WTマウスα鎖の定常領域)、配列番号25 (WTマウスβ鎖の定常領域)、配列番号11 (マウスα鎖の定常領域)、
配列番号12 (マウスβ鎖の定常領域)、配列番号11及び25の両方、配列番号11及び12の両
方、又は配列番号24及び25の両方のアミノ酸配列を含み得、配列番号11及び12は、本発明の他の態様に関して明細書に記載されたように置換されている。好ましくは、ポリペプチドは、(i)配列番号11及び12の両方、(ii)配列番号24及び25の両方、又は(iii)配列番号11及び25の両方のアミノ酸配列を含み、本発明の他の態様に関して本明細書に記載されたように配列番号11及び12が置換されている。
【0041】
本発明の一実施形態においては、本発明のポリペプチドは、本発明のTCRの可変領域及
び定常領域の組合せを含み得る。これに関して、ポリペプチドは、(i)配列番号9 (α鎖の可変領域)及び配列番号24 (α鎖の定常領域)の両方、(ii)配列番号10 (β鎖の可変領域)
及び配列番号25 (β鎖の定常領域)の両方、(iii)配列番号9、10、24及び25の全て、(iv)
配列番号9及び11の両方、(v)配列番号10及び12の両方、(vi)配列番号9~12の全て、又は(vii)配列番号9~11及び25、のアミノ酸配列を含み得、本発明の他の態様に関して明細書
に記載されたように配列番号11及び12が置換されている。好ましくは、ポリペプチドは、
(i)配列番号9、10、24及び25の全て、(ii)配列番号9~12の全て(配列番号11及び12)、又は(iii)配列番号9~11及び25の全て、のアミノ酸配列を含み、本発明の他の態様に関して明細書に記載されたように配列番号11及び12が置換されている。
【0042】
本発明の一実施形態においては、本発明のポリペプチドは、本明細書に記載されたCDR
領域のいずれかと、本発明のTCRの定常領域との組合せを含み得る。これに関して、ポリ
ペプチドは、(i)配列番号3~5及び24の全て、(ii)配列番号6~8及び25の全て、(iii)配列番号3~8及び24~25の全て;(iv)配列番号3~5及び11の全て;(v)配列番号6~8及び12の
全て;(vi)配列番号3~8及び11~12の全て、又は(vii)配列番号3~5、11及び25の全て、
のアミノ酸配列を含み得、本発明の他の態様に関して明細書に記載されたように配列番号11及び12が置換されている。好ましくは、ポリペプチドは、(i)配列番号3~8及び24~25
の全て、(ii)配列番号3~8及び11~12の全て、又は(iii)配列番号3~5、11及び25の全て
、のアミノ酸配列を含み、本発明の他の態様に関して明細書に記載されたように配列番号11及び12が置換されている。
【0043】
本発明の一実施形態においては、本発明のポリペプチドは、本明細書に記載されたTCR
のα又はβ鎖の全長を含み得る。これに関して、本発明のポリペプチドは、(i)配列番号26、(ii)配列番号27、(iii)配列番号26及び27の両方、(iv)配列番号13、(v)配列番号14、(vi)配列番号13及び14の両方、(vii)配列番号13及び27の両方、のアミノ酸配列を含み得、本発明の他の態様に関して明細書に記載されたように配列番号13及び14が置換されている。好ましくは、ポリペプチドは、(i)配列番号26及び27の両方、(ii)配列番号13及び14の
両方、(iii)配列番号13及び27の両方、のアミノ酸配列を含み、本発明の他の態様に関し
て明細書に記載されたように配列番号13及び14が置換されている。
【0044】
本発明は、本明細書に記載された少なくとも1のポリペプチドを含むタンパク質を更に
提供する。「タンパク質」は、1以上のポリペプチド鎖を含む分子を意味する。
【0045】
一実施形態においては、本発明のタンパク質は、(I)配列番号3~5のアミノ酸配列を含
む第一のポリペプチド鎖;(II)配列番号6~8のアミノ酸配列を含む第二のポリペプチド鎖;又は(III)(I)及び(II)の両方を含み得る。代替的に又は追加的に、本発明のタンパク質は、(I)配列番号9のアミノ酸配列を含む第一のポリペプチド鎖;(II)配列番号10のアミノ酸配列を含む第二のポリペプチド鎖;又は(III)(I)及び(II)の両方((both I) and (II)
)、を含み得る。例えば、タンパク質は、(i)配列番号9及び24の両方、(ii)配列番号9及
び11の両方、(iii)配列番号3~5及び24の全て、又は(iv)配列番号3~5及び11の全ての、
アミノ酸配列を含む第一のポリペプチド鎖、並びに(i)配列番号10及び25の両方、(ii)配
列番号10及び12、(iii)配列番号6~8及び25の全て、又は(iv)配列番号6~8及び12、のア
ミノ酸配列を含む第二のポリペプチド鎖を含み得、本発明の他の態様に関して明細書に記載されたように配列番号11及び12が置換されている。代替的に又は追加的に、本発明のタンパク質は、配列番号26又は13のアミノ酸配列を含む第一のポリペプチド鎖、及び配列番号27又は14のアミノ酸配列を含む第二のポリペプチド鎖を含み得、本発明の他の態様に関して明細書に記載されたように配列番号13及び14が置換されている。この場合においては、本発明のタンパク質はTCRであり得る。代替的に、例えば、タンパク質が、配列番号26
及び27の両方、若しくは配列番号13及び14の両方のアミノ酸配列を含む単一のポリペプチド鎖を含む場合、又はタンパク質の第一及び/又は第二のポリペプチド鎖(複数可)が他のアミノ酸配列、例、免疫グロブリン又はその部分をコードするアミノ酸配列を更に含む場合、本発明のタンパク質は融合タンパク質であり得る。これに関して、本発明はまた、少なくとも1の他のポリペプチドと共に、本明細書に記載された本発明のポリペプチドの
少なくとも1を含む融合タンパク質を提供する。他のポリペプチドは、融合タンパク質の
別のポリペプチドとして存在し得、又は本明細書に記載された本発明のポリペプチドの1
とインフレームで(in frame)(タンデムで)発現されるポリペプチドとして存在し得る。他のポリペプチドは、免疫グロブリン、CD3、CD4、CD8、MHC分子、CD1分子、例、CD1a
、CD1b、CD1c、CD1d等を含むがそれらに限定されない、任意のペプチド性若しくはタンパク質性の分子、又はそれらの部分をコードし得る。
【0046】
融合タンパク質は、本発明のポリペプチドの1以上のコピー及び/又は他のポリペプチ
ドの1以上のコピーを含み得る。例えば、融合タンパク質は、本発明のポリペプチド及び
/又は他のポリペプチドの1、2、3、4、5以上のコピーを含み得る。融合タンパク質を作
製する好適な方法は、当該技術分野において公知であり、例えば、組換え法が挙げられる。
【0047】
本発明の幾つかの実施形態においては、本発明のTCR、ポリペプチド及びタンパク質は
、α鎖及びβ鎖を連結するリンカーペプチドを含む単一のタンパク質として発現され得る。これに関して、本発明のTCR、ポリペプチド及びタンパク質は更にリンカーペプチドを
含み得る。リンカーペプチドは、宿主細胞内で、組換えTCR、ポリペプチド及び/又はタ
ンパク質の発現を有利に促進し得る。リンカーペプチドは、任意の好適なアミノ酸配列を含み得る。例えば、リンカーペプチドは、配列番号23を含み得る。宿主細胞によるリンカーペプチドを含むコンストラクトの発現において、リンカーペプチドは切断され得、結果として別のα及びβ鎖となる。本発明の一実施形態においては、TCR、ポリペプチド又は
タンパク質は、完全長α鎖、完全長β鎖、並びにα及びβ鎖間に位置するリンカーペプチドを含むアミノ酸配列を含み得る。
【0048】
本発明のタンパク質は、本明細書に記載された本発明のポリペプチドの少なくとも1を
含む組換え抗体又はその抗原結合部分であり得る。本明細書において用いられる場合、「組換え抗体」は、本発明のポリペプチド、抗体のポリペプチド鎖又はその抗原結合部分の
少なくとも1を含む組換え(例、遺伝学的に操作された)タンパク質を指す。抗体のポリペ
プチド又はその抗原結合部分は、抗体の重鎖、軽鎖、重鎖若しくは軽鎖の可変領域若しくは定常領域、一本鎖可変フラグメント(scFv)、又はFc、Fab若しくはF(ab)2'フラグメントなどであり得る。抗体のポリペプチド鎖又はその抗原結合部分は、組換え抗体の別のポリペプチドとして存在し得る。代替的に、抗体のポリペプチド鎖又はその抗原結合部分は、本発明のポリペプチドとインフレームで(タンデムで)で発現するポリペプチドとして存在し得る。抗体のポリペプチド又はその抗原結合部分は、本明細書に記載されたいずれかの抗体及び抗体フラグメントを含む、任意の抗体又は任意の抗体フラグメントのポリペプチドであり得る。
【0049】
本発明のTCR、ポリペプチド及びタンパク質は、TCR、ポリペプチド又はタンパク質が、それらの生物学的活性、例、変異KRASに特異的に結合し;哺乳動物におけるがんを検出し;又は哺乳動物におけるがんを治療若しくは予防する能力等を保持するという条件で、任意の長さ、すなわち、任意の数のアミノ酸を含み得る。例えば、ポリペプチドは、約50~約5000アミノ酸長の範囲であり得、例えば、50、70、75、100、125、150、175、200、300、400、500、600、700、800、900、1000以上のアミノ酸長等であり得る。これに関して、本発明のポリペプチドはまたオリゴペプチドを含む。
【0050】
本発明(of the invention of the invention)のTCR、ポリペプチド及びタンパク質は、天然で生じた1以上のアミノ酸の代わりに合成アミノ酸を含み得る。そのような合成アミノ酸は、当該技術分野において公知であり、例えば、アミノシクロヘキサンカルボン酸、ノルロイシン、α-アミノ-n-デカン酸、ホモセリン、S-アセチルアミノメチル-システイン、トランス-3-及びトランス-4-ヒドロキシプロリン、4-アミノフェニルアラニン、4-ニトロフェニルアラニン、4-クロロフェニルアラニン、4-カルボキシフェニルアラニン、β-フェニルセリン、β-ヒドロキシフェニルアラニン、フェニルグリシン、α-ナフチル
アラニン、シクロヘキシルアラニン、シクロヘキシルグリシン、インドリン-2-カルボン
酸、1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-3-カルボン酸、アミノマロン酸、アミノマロン
酸モノアミド、N'-ベンジル-N'-メチル-リジン、N',N'-ジベンジルリジン、6-ヒドロキシリシン、オルニチン、α-アミノシクロペンタンカルボン酸、α-アミノシクロヘキサンカルボン酸、α-アミノシクロヘプタンカルボン酸、α-(2-アミノ-2-ノルボルナン)-カルボン酸、α,γ-ジアミノ酪酸、α,β-ジアミノプロピオン酸、ホモフェニルアラニン及びα-tert-ブチルグリシンが挙げられる。
【0051】
本発明のTCR、ポリペプチド及びタンパク質は、グリコシル化、アミド化、カルボキシ
ル化、リン酸化、エステル化、N-アシル化、環化、例えばジスルフィド架橋を介したもの、又は酸付加塩への変換及び/又は任意で二量体化若しくは重合化又はコンジュゲート化し得る。
【0052】
本発明のTCR、ポリペプチド及び/又はタンパク質は、例えば、例、デノボ合成等の当
該技術分野で公知の方法によって得ることができる。また、ポリペプチド及びタンパク質は、標準的な組換え法により本明細書に記載の核酸を用いて、組換えにより作製することができる。例えば、Green and Sambrook, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 4th ed., Cold Spring Harbor Press, Cold Spring Harbor, NY(2012)を参照。代替的には
、本明細書に記載のTCR、ポリペプチド及び/又はタンパク質は、例えばSynpep (Dublin,
CA)、Peptide Technologies Corp. (Gaithersburg, MD)及びMultiple Peptide Systems (Sandiego, CA)等の企業によって商業的に合成され得る。これに関して、本発明のTCR、
ポリペプチド及びタンパク質は、合成、組換え、単離及び/又は精製され得る。
【0053】
本発明の一実施形態は、本明細書に記載されたTCR、ポリペプチド又はタンパク質のい
ずれかをコードするヌクレオチド配列を含む核酸を提供する。本明細書において用いられ
る場合、「核酸」は「ポリヌクレオチド」、「オリゴヌクレオチド」及び「核酸分子」を含み、一般にDNA又はRNAのポリマーを意味し、一本鎖又は二本鎖であり得、天然、非天然又は改変されたヌクレオチドを含み得、天然、非天然又は改変されたヌクレオチド間結合、例えば、未修飾オリゴヌクレオチドのヌクレオチド間にみられるホスホジエステルの代わりに、ホスホロアミデート結合又はホスホロチオエート結合等を含み得る。一実施形態においては、核酸は相補的DNA(cDNA)を含む。核酸が、挿入、欠失、逆位及び/又は置
換も何ら含まないことが一般には好ましい。しかし、本明細書で考察されるように、いくつかの例においては核酸が1以上の挿入、欠失、逆位、及び/又は置換を含むことが、好適であり得る。
【0054】
好ましくは、本発明の核酸は組換え体である。本明細書において使用される場合、用語「組換え体」は、(i)天然又は合成の核酸セグメントを、生細胞内で複製することができ
る核酸分子に加えることによって、生細胞外で構築される分子、又は(ii)上記(i)に記載
されたものの複製で得られる分子を指す。本明細書の目的のためには、複製はin vitro複製、又はin vivo複製であり得る。
【0055】
核酸は、当技術分野で公知の手順を用いて、化学合成及び/又は酵素的ライゲーション反応に基づいて構築され得る。例えば、上記のGreen and Sambrookら、を参照。例えば、核酸は、天然で生じたヌクレオチド、又は分子の生物学的安定性を高めるよう、若しくはハイブリダイゼーション時に形成される二本鎖の物理的安定性を高めるよう設計された、様々な修飾ヌクレオチド(例えば、ホスホロチオエート誘導体及びアクリジン置換ヌクレオチド)、を用いて化学的に合成され得る。核酸を生成するために使用し得る修飾ヌクレオチドの例としては、5-フルオロウラシル(fluorouracil)、5-ブロモウラシル(5-bromouracil)、5-クロロウラシル(5-chlorouracil)、5-ヨードウラシウル(5-iodouracil
)、ヒポキサンチン(hypoxanthine)、キサンチン(xanthine)、4-アセチルシトシン(4-acetylcytosine)、5-(カルボキシヒドロキシメチル)ウラシル(5-(carboxyhydroxymethyl)uracil)、5-カルボキシメチルアミノメチル-2-チオウリジン(5-carboxymethylaminomethyl-2-thiouridine)、5-カルボキシメチルアミノメチルウラシル(5-carboxymethylaminomethyluracil)、ジヒドロウラシル(dihydrouracil)、β-D-ガラクトシルキュ
ーオシン(β-D-galactosylqueosine)、イノシン(inosine)、N6-イソペンテニルアデ
ニン(N6-isopentenyladenine)、1-メチルグアニン(1-methylguanine)、1-メチルイノシン(1-methylinosine)、2,2-ジメチルグアニン(2,2-dimethylguanine)、2-メチルアデニン(2-methyladenine)、2-メチルグアニン(2-methylguanine)、3-メチルシトシン(3-methylcytosine)、5-メチルシトシン(5-methylcytosine)、N6-置換アデニン(N6-substituted adenine)、7-メチルグアニン(7-methylguanine)、5-メチルアミノメチルウラシル(5-methylaminomethyluracil)、5-メトキシアミノメチル-2-チオウラシル(5-methoxyaminomethyl-2-thiouracil)、β-D-マンノシルキューオシン(β-D-mannosylqueosine)、5'-メトキシカルボキシメチルウラシル(5'-methoxycarboxymethyluracil)、5-メトキシウラシル(5-methoxyuracil)、2-メチルチオ-N6-イソペンテニルアデニン(2-methylthio-N6-isopentenyladenine)、ウラシル-5-オキシ酢酸(v)(uracil-5-oxyacetic
acid (v))、ワイブトキソシン(wybutoxosine)、シュードウラシル(pseudouracil)
、キューオシン(queosine)、2-チオシトシン(2-thiocytosine)、5-メチル-2-チオウラシル(5-methyl-2-thiouracil)、2-チオウラシル(2-thiouracil)、4-チオウラシル
(4-thiouracil)、5-メチルウラシル(5-methyluracil)、ウラシル-5-オキシ酢酸メチ
ルエステル(uracil-5-oxyacetic acid methylester)、3-(3-アミノ-3-N-2-カルボキシ
プロピル)ウラシル(3-(3-amino-3-N-2-carboxypropyl)uracil)及び2,6-ジアミノプリン(2,6-diaminopurine)が挙げられるが、これらに限定されない。代替的に、本発明の核
酸の1以上は、例えばMacromolecular Resources (Fort Collins, CO)及びSynthegen (Houston, TX)等の企業から購入することができる。
【0056】
核酸は、本明細書に記載されたTCR、ポリペプチド又はタンパク質のいずれかをコード
する、任意のヌクレオチド配列を含み得る。本発明の一実施形態においては、核酸は、配列番号28 (α鎖の可変領域)及び配列番号29 (β鎖の可変領域)のヌクレオチド配列を含み得る。
【0057】
本発明の一実施形態においては、核酸は、本明細書に記載されたTCR、ポリペプチド又
はタンパク質のいずれかをコードする、コドンを最適化したヌクレオチド配列を含む。如何なる特定の理論又は機構に拘束されることもないが、ヌクレオチド配列のコドンの最適化は、mRNA転写産物の翻訳効率を上昇させると考えられる。ヌクレオチド配列のコドンの最適化は、ネイティブのコドンを、同じアミノ酸をコードするが、細胞内でより容易に利用できるtRNAによって翻訳され得る、別のコドンに置換することを含み得、それゆえ翻訳効率が上昇する。ヌクレオチド配列の最適化はまた、翻訳に干渉するmRNAの二次構造を減少させ得、それゆえ翻訳効率が上昇する。
【0058】
本発明はまた、本明細書に記載された核酸のいずれかのヌクレオチド配列に相補的なヌクレオチド配列、又は本明細書に記載された核酸のいずれかのヌクレオチド配列にストリンジェントな条件下でハイブリダイズするヌクレオチド配列を含む核酸を提供する。
【0059】
ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするヌクレオチド配列は、好ましくは高ストリンジェンシー条件下でハイブリダイズする。「高ストリンジェンシー条件」とは、ヌクレオチド配列が、非特異的なハイブリダイゼーションよりも検出可能な程度に濃い量で、標的配列(本明細書に記載されたいずれかの核酸のヌクレオチド配列)に特異的にハイブリダイズすることを意味する。高ストリンジェンシー条件には、ヌクレオチド配列と一致するいくつかの小さな領域(例、3~10塩基)を偶然有するランダム配列から、正確に
相補的な配列を有するポリヌクレオチド又は散在する僅かなミスマッチを含有するに過ぎないポリヌクレオチドを区別する条件が含まれる。そのような相補性の小領域は、14~17塩基又はそれ超の完全長の相補体よりも容易に融解し、高ストリンジェンシーハイブリダイゼーションによりそれらが容易に区別され得る。比較的高ストリンジェンシーの条件には、例えば約50~70℃の温度で、約0.02~0.1MのNaCl又はそれと同等なものによって提供される等の、低塩条件及び/又は高温条件が含まれる。そのような高ストリンジェンシー条件は、ヌクレオチド配列と鋳型又は標的鎖との間のミスマッチがあれば、ほとんど許容せず、本発明のいずれかのTCRの発現を検出するのに特に好適である。ホルムアミド添加
量を増加することによって、条件をよりストリンジェントにし得ることは一般的に理解されている。
【0060】
本発明はまた、本明細書に記載されたいずれかの核酸に対して、少なくとも約70%以上、例、約80%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%又は約99%同一であるヌクレオチド配列を含む核酸を提供する。これに関して、該核酸は、本明細書に記載されたいずれかのヌクレオチド配列から本質的になり得る。
【0061】
本発明の核酸は、組換え発現ベクターに組み込まれ得る。これに関して、本発明は、本発明の核酸のいずれかを含む組換え発現ベクターを提供する。本発明の一実施形態においては、組換え発現ベクターは、α鎖、β鎖及びリンカーペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む。
【0062】
本明細書の目的のためには、用語「組換え発現ベクター」は、コンストラクトがmRNA、タンパク質、ポリペプチド又はペプチドをコードするヌクレオチド配列を含み、細胞内でmRNA、タンパク質、ポリペプチド又はペプチドを発現させるために十分な条件下でベクターと細胞とを接触させる場合、宿主細胞によって、mRNA、タンパク質、ポリペプチド又はペプチドの発現を可能にする、遺伝的に改変されたオリゴヌクレオチド又はポリヌクレオ
チドのコンストラクトを意味する。本発明のベクターは、全体として天然で生じたものではない。しかしながら、ベクターの部分は天然に生じたものであり得る。本発明の組換え発現ベクターは、一本鎖又は二本鎖であり得、天然のソースから部分的に合成又は取得され得、天然、非天然又は改変されたヌクレオチドを含有し得る、DNA及びRNAを含むが、それらに限定されない任意の型のヌクレオチドを含み得る。組換え発現ベクターは、天然で生じたヌクレオチド間結合、非天然で生じたヌクレオチド間結合、又はその両方の型の結合を含み得る。好ましくは、非天然で生じた若しくは改変されたヌクレオチド、又はヌクレオチド間結合は、ベクターの転写又は複製を妨害しない。
【0063】
本発明の組換え発現ベクターは、任意の好適な組換え発現ベクターであり得、任意の好適な宿主細胞を形質転換又はトランスフェクトするために使用され得る。好適なベクターとしては、例えばプラスミド及びウイルス等の増殖及び増幅(expansion)のため、若し
くは発現、又はその両方のために設計されたものが挙げられる。ベクターは、pUCシリー
ズ(Fermentas Life Sciences)、pBluescriptシリーズ(Stratagene, LaJolla, CA)、pETシリーズ(Novagen, Madison, WI)、pGEXシリーズ(Pharmacia Biotech, Uppsala, Sweden)及びpEXシリーズ(Clonetech, Palo Alto, CA)からなる群から選択され得る。バ
クテリオファージベクター、例えばλGT10、λGT11、λZapII(Stratagene)、λEMBL4及びλNM1149等もまた使用され得る。植物発現ベクターの例としては、pBI01、pBI101.2、pBI101.3、pBI121及びpBIN19(Clonetech)が挙げられる。動物発現ベクターの例としては、pEUK-C1、pMAM及びpMAMneo(Clonetech)が挙げられる。好ましくは、組換え発現ベク
ターはウイルスベクター、例えばレトロウイルスベクターである。特に好ましい実施形態においては、組換え発現ベクターはMSGV1ベクターである。
【0064】
本発明の組換え発現ベクターは、例えば上記のGreen and Sambrookら、に記載された、標準的な組換えDNA技術を用いて調製され得る。環状又は線状である発現ベクターのコン
ストラクトは、原核又は真核宿主細胞内で機能的である複製システムを含有するよう調製され得る。複製システムは、例、ColE1、2μプラスミド、λ、SV40、ウシパピローマウイルス等に由来し得る。
【0065】
望ましくは、組換え発現ベクターは、適宜、ベクターがDNAベースであるか又はRNAベースであるかを考慮して、ベクターが導入される宿主細胞の型(例、細菌、真菌、植物又は動物)に特異的な、例えば転写の、並びに翻訳の開始及び終止コドン等の、制御配列を含む。
【0066】
組換え発現ベクターは、形質転換又はトランスフェクトした宿主細胞の選択を可能にする1以上のマーカー遺伝子を含み得る。マーカー遺伝子としては、殺生物剤耐性、例、抗生物質、重金属等に対する耐性、原栄養性を提供するための栄養要求性宿主細胞における相補等が挙げられる。本発明の発現ベクターのための好適なマーカー遺伝子としては、例えばネオマイシン/G418耐性遺伝子、ハイグロマイシン耐性遺伝子、ヒスチジノール耐性遺伝子、テトラサイクリン耐性遺伝子及びアンピシリン耐性遺伝子が挙げられる。
【0067】
組換え発現ベクターは、TCR、ポリペプチド若しくはタンパク質をコードするヌクレオ
チド配列、又はTCR、ポリペプチド若しくはタンパク質をコードするヌクレオチド配列に
相補的であるか若しくはハイブリダイズするヌクレオチド配列、に作動可能に連結した、ネイティブ又は非ネイティブのプロモーターを含み得る。プロモーターの選択、例、強、弱、誘導性、組織特異性及び発生段階特異性は、当業者の通常の技術の範囲内である。同様に、ヌクレオチド配列とプロモーターとを組み合わせることも当業者の技術の範囲内である。プロモーターは、非ウイルスプロモーター又はウイルスプロモーター、例、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、SV40プロモーター、RSVプロモーター、及びマウス幹細胞ウイルスの長い末端反復に見出されるプロモーターであり得る。
【0068】
本発明の組換え発現ベクターは、一過性の発現のため、安定した発現のためのいずれか、又はその両方のために、設計され得る。また、組換え発現ベクターは、構成的発現又は誘導的発現のために作製され得る。
【0069】
更に、組換え発現ベクターは自殺遺伝子を含むよう作製され得る。本明細書において用いられる場合、用語「自殺遺伝子」は、自殺遺伝子を発現する細胞を死滅させる遺伝子を指す。自殺遺伝子は、遺伝子を発現する細胞に、試薬、例えば、薬剤、に対する感受性を付与し、細胞がその試薬と接触若しくはそれに対して曝露される場合に細胞を死滅させる遺伝子であり得る。自殺遺伝子は、当該技術分野で公知であり、例えば、単純ヘルペスウイルス(HSV)チミジンキナーゼ(TK)遺伝子、シトシンデアミナーゼ(cytosine daminase)、プリンヌクレオシドホスホリラーゼ及びニトロレダクターゼが挙げられる。
【0070】
本発明の別の実施形態は、本明細書に記載された組換え発現ベクターのいずれかを含む宿主細胞をさらに提供する。本明細書中で使用される場合、用語「宿主細胞」は、本発明の組換え発現ベクターを含有し得る任意の型の細胞を指す。宿主細胞は、真核細胞、例、植物、動物、菌類若しくは藻類であり得、又は原核細胞、例、バクテリア又は原生動物であり得る。宿主細胞は、培養細胞又は初代細胞、すなわち生物、例、ヒトから直接単離し得る。宿主細胞は、付着細胞又は懸濁細胞、すなわち懸濁液中で増殖する細胞であり得る。好適な宿主細胞は当該技術分野で公知であり、例、DH5α大腸菌細胞、チャイニーズハ
ムスター卵巣細胞、サルVERO細胞、COS細胞、HEK293細胞等が挙げられる。組換え発現ベ
クターを増幅又は複製する目的のために、宿主細胞は好ましくは原核細胞、例、DH5α細
胞である。組換えTCR、ポリペプチド又はタンパク質を産生する目的のために、宿主細胞
は好ましくは哺乳動物細胞である。最も好ましくは、宿主細胞はヒト細胞である。宿主細胞は任意の細胞型であり得、任意の型の組織に由来し得、任意の発生段階であり得る一方、宿主細胞は好ましくは末梢血リンパ球(PBL)又は末梢血単核細胞(PBMC)である。よ
り好ましくは、宿主細胞はT細胞である。
【0071】
本明細書の目的のために、T細胞は、例えば培養T細胞、例、初代T細胞、又は培養T細胞株由来のT細胞、例、Jurkat, SupT1等、又は哺乳動物から得られたT細胞等の任意のT細胞であり得る。哺乳動物から得られた場合、T細胞は、血液、骨髄、リンパ節、胸腺又は他
の組織若しくは体液を含むが、これらに限定されない多数の供給源から得ることができる。T細胞はまた濃縮又は精製し得る。好ましくは、T細胞はヒトT細胞である。T細胞は、CD4/CD8二重陽性T細胞、CD4ヘルパーT細胞、例、Th1及びTh2細胞、CD4T細胞、CD8T細胞(例、細胞傷害性T細胞)、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)、記憶T細胞(例、中央記憶T細胞及びエフェクター記憶T細胞)、ナイーブT細胞等を含むが、これらに限定されない
、任意の型のT細胞であり得、任意の発生段階のT細胞であり得る。
【0072】
また本発明は、本明細書に記載された少なくとも1の宿主細胞を含む細胞集団を提供す
る。細胞集団は、少なくとも1の他の細胞、例、組換え発現ベクターのいずれも含まない
宿主細胞(例えば、T細胞)、又はT細胞以外の細胞、例、B細胞、マクロファージ、好中
球、赤血球、肝細胞、内皮細胞、上皮細胞、筋肉細胞、脳細胞等に加え、記載された組換え発現ベクターのいずれかを含む宿主細胞を含む、不均一な集団であり得る。代替的に、細胞集団は、集団が組換え発現ベクターを含む宿主細胞を主に含む(例、本質的にそれからなる)、実質的に均質な集団であり得る。集団はまた、集団の全ての細胞が組換え発現ベクターを含むような、集団の全ての細胞が組換え発現ベクターを含む単一の宿主細胞のクローンである、細胞のクローン集団であり得る。本発明の一実施形態においては、細胞集団は、本明細書に記載された組換え発現ベクターを含む宿主細胞を含むクローン集団である。
【0073】
本発明の一実施形態においては、集団内の細胞数を急速に増幅させ得る。T細胞数の増
幅は、例えば米国特許第8,034,334号;米国特許第8,383,099号;米国特許出願公開番号第2012/0244133号;Dudleyら、J. Imm nother., 26:332-42 (2003);及びRiddellら、J. Immunol. Methods, 128:189-201 (1990)に記載のように、当該技術分野において公知である多くの方法のいずれかによって達成され得る。一実施形態においては、T細胞数の増幅は
、T細胞をOKT3抗体、IL-2及びフィーダーPBMC(例、放射線照射した同種異形PBMC)と共
に培養することによって実施される。
【0074】
本発明のTCR、ポリペプチド、タンパク質、核酸、組換え発現ベクター及び宿主細胞(
その集団を含む)は、単離及び/又は精製し得る。本明細書において用いられる場合、用語「単離した」は天然環境から取り出されていることを意味する。本明細書において用いられる場合、用語「精製した」は純度において上昇していることを意味し、「純度」は相対的な用語であり、絶対の純度として解釈される必要がない。例えば、純度は少なくとも約50%以上であり得、60%、70%、80%、90%、95%超であり得、又は約100%であり得
る。
【0075】
本発明のTCR、ポリペプチド、タンパク質、核酸、組換え発現ベクター及び宿主細胞(
その集団を含む)(以降、これらは全て「本発明のTCR材料」として総称的に言及される
)は、例えば医薬組成物等の組成物に製剤化し得る。これに関して、本発明は、本明細書に記載されたTCR、ポリペプチド、タンパク質、核酸、発現ベクター及び宿主細胞(その
集団を含む)のいずれか、並びに医薬的に許容される担体を含む医薬組成物を提供する。本発明のTCR材料のいずれかを含有する本発明の医薬組成物は、1超の本発明のTCR材料、
例、ポリペプチド及び核酸、又は2以上の異なるTCRを含み得る。代替的に、医薬組成物は、例えば、化学療法剤、例、アスパラギナーゼ(asparaginase)、ブスルファン(busulfan)、カルボプラチン(carboplatin)、シスプラチン(cisplatin)、ダウノルビシン(daunorubicin)、ドキソルビシン(doxorubicin)、フルオロウラシル(fluorouracil)
、ゲムシタビン(gemcitabine)、ヒドロキシウレア(hydroxyurea)、メトトレキセート(methotrexate)、パクリタキセル(paclitaxel)、リツキシマブ(rituximab)、ビン
ブラスチン(vinblastine)、ビンクリスチン(vincristine)等の、別の医薬的な活性剤(複数可)又は薬剤(複数可)と組み合わせた本発明のTCR材料を含み得る。
【0076】
好ましくは、担体は医薬的に許容される担体である。医薬組成物に関して、担体は、特定の本発明のTCR材料のために慣用的に使用が考慮されるもののいずれかであり得る。投
与できる組成物を調製する方法は、当業者に公知又は明らかであり、例えば、Remington:
The Science and Practice of Pharmacy, 22nd Ed., Pharmaceutical Press (2012)においてより詳細に記載されている。医薬的に許容される担体は、使用条件下で有害な副作用又は毒性を有さないものであることが好ましい。
【0077】
担体の選択は、特定の本発明のTCR材料によって、及び本発明のTCR材料を投与するために使用される特定の方法によってある程度決定される。従って、本発明の医薬組成物の多様な好適な製剤がある。好適な製剤は、非経口、皮下、静脈内、筋肉内、動脈内、髄腔内、腫瘍内又は腹腔内投与のための製剤のいずれかを含み得る。1超の経路が、本発明のTCR材料を投与するために使用され得、ある場合には、特定の経路は、別の経路よりも迅速かつ効果的な応答を提供し得る。
【0078】
好ましくは、本発明のTCR材料は、注射(例、静脈内)によって投与される。本発明のTCR材料が本発明のTCRを発現する宿主細胞である場合、注射用細胞のための医薬的に許容
される担体は、例えば、例、通常の生理食塩水(水に溶解中、約0.90%w/vのNaCl、水中
約300 mOsm/LのNaCl、又は水1L当たり約9.0gのNaCl)、NORMOSOL R電解質溶液(Abbott, Chicago, IL)、PLASMA-LYTE A(Baxter, Deerfield, IL)、水中約5%のデキストロース
又はリンゲル乳酸塩等の任意の等張な担体を含んでもよい。一実施形態においては、医薬的に許容される担体に、ヒト血清アルブミンが補充される。
【0079】
本発明の目的のために、投与される本発明のTCR材料の量又は用量(例、本発明のTCR材料が1以上の細胞である場合は細胞数)は、作用、例、妥当な時間に亘って、対象又は動
物内で治療又は予防応答するために十分でなければならない。例えば、本発明のTCR材料
の用量は、がん抗原(例、変異KRAS)に結合するのに十分でなければならず、又は投与時から約2時間以上、例、12~24時間若しくはそれ超の期間内にがんを検出、治療若しくは予防するのに十分でなければならない。ある実施形態においては、期間はさらに長くなる可能性がある。用量は、特定の本発明のTCR材料の有効性及び動物(例、ヒト)の状態、
並びに治療される動物(例、ヒト)の体重によって決定される。
【0080】
投与される量を決定するための多くのアッセイは、当技術分野で公知である。本発明の目的のために、標的細胞が溶解される程度、又はT細胞の異なる用量がそれぞれ与えられ
る哺乳動物の1セットのうち、一匹の哺乳動物にそのようなT細胞を所与の用量で投与し
た際に、本発明のTCR、ポリペプチド又はタンパク質を発現するT細胞によって分泌されるIFN-γの程度を比較することを含むアッセイ法を、哺乳動物に投与する初期用量を決定するために使用し得る。ある用量の投与の際に標的細胞が溶解される又はIFN-γが分泌される程度は、当該技術分野で公知の方法によってアッセイされ得る。
【0081】
本発明のTCR材料の用量はまた、特定の本発明のTCR材料の投与に伴い得る任意の有害な副作用の存在、性質及び程度によって決定される。典型的には、主治医は、例えば年齢、体重、一般的健康状態、食事、性別、投与される本発明のTCR材料、投与経路及び治療さ
れているがんの重篤度等の様々な要因を考慮に入れて、個々の患者を治療する本発明のTCR材料の投薬量を決定する。本発明のTCR材料が細胞集団である実施形態においては、1回の注入当たりに投与される細胞数は、例、約1×106~約1×1012細胞、又はそれ超で変化
し得る。ある実施形態においては、1×106未満の細胞が投与され得る。
【0082】
当業者であれば、改良によって本発明のTCR材料の治療効果又は予防効果が増幅するよ
う、本発明のTCR材料(inventive TCR materials of the invention)を任意の数の方法
で改変し得ることを容易に理解する。例えば、本発明の(the inventive inventive)TCR材料は、化学療法剤に対する架橋によって直接的又は間接的のいずれかで結合され得る。化合物を化学療法剤に結合させる実務は当該技術分野において公知である。当業者であれば、本発明のTCR材料へ結合時に、架橋及び/又は化学療法剤が、本発明のTCR材料の機能、すなわち、変異KRASに結合する、又はがんを検出、治療若しくは予防する能力と干渉しないという条件で、本発明のTCR材料の機能のために必要でない本発明のTCR材料の部位が、架橋及び/又は化学療法剤を結合させるための理想的な部位であることを認識する。
【0083】
本発明の医薬組成物、TCR、ポリペプチド、タンパク質、核酸、組換え発現ベクター、
宿主細胞又は細胞集団は、がんを治療又は予防する方法において使用され得ると期待される。特定の理論に拘束されるものではないが、本発明のTCRは、TCR(又は関連する本発明のポリペプチド若しくはタンパク質)が、細胞によって発現される場合、変異KRASを発現する標的細胞に対する免疫応答を媒介することができるよう、変異KRASに対して特異的に結合すると考えられる。これに関して、本発明は、哺乳動物におけるがんを治療又は予防する方法を提供するものであって、哺乳動物のがんを治療又は予防するための有効量で、本明細書に記載された医薬組成物、TCR、ポリペプチド若しくはタンパク質のいずれか、
本明細書に記載されたTCR、ポリペプチド、タンパク質のいずれかをコードするヌクレオ
チド配列を含む任意の核酸若しくは組換え発現ベクター、又は本明細書に記載されたTCR
、ポリペプチド若しくはタンパク質のいずれかをコードする組換えベクターを含む任意の宿主細胞若しくは細胞集団を哺乳動物に投与すること含む。
【0084】
本発明の一実施形態は、哺乳動物におけるがんの治療又は予防における使用のために、本明細書に記載された医薬組成物、TCR、ポリペプチド若しくはタンパク質のいずれか、
本明細書に記載されたTCR、ポリペプチド、タンパク質のいずれかをコードするヌクレオ
チド配列を含む任意の核酸若しくは組換え発現ベクター、又は本明細書に記載されたTCR
、ポリペプチド若しくはタンパク質のいずれかをコードする組換えベクターを含む任意の宿主細胞若しくは細胞集団を提供する。
【0085】
本明細書において用いられる場合、用語「治療」及び「予防」、並びにそれに由来する用語は、必ずしも100%又は完全な治療若しくは予防を意味しない。むしろ、当業者が潜
在的な利益又は治療効果を有すると認識する、治療又は予防の様々な程度がある。これに関して、本発明の方法は、哺乳動物における、任意の量又は任意のレベル(any amount of any level)のがんの治療又は予防を提供し得る。更には、本発明の方法によって提供
される治療又は予防は、治療又は予防されている、がんの1以上の状態又は症状の治療又は予防を含み得る。例えば、治療又は予防は、腫瘍の退縮を促進することを含み得る。また、本明細書の目的のために、「予防」は、がん、又はその症状若しくは状態の発症を遅延させることを含み得る。代替的に又は追加的に、「予防」は、がん、又はその症状若しくは状態の再発を予防又は遅延させることを包含し得る。
【0086】
また、哺乳動物におけるがんの存在を検出する方法が提供される。該方法は、(i)本明
細書に記載された本発明のTCR、ポリペプチド、タンパク質、核酸、組換え発現ベクター
、宿主細胞、細胞集団又は医薬組成物のいずれかと、哺乳動物由来の1以上の細胞を含む試料とを接触させること、それにより複合体を形成し、該複合体を検出することを含み、該複合体の検出が哺乳動物におけるがんの存在を示す。
【0087】
哺乳動物におけるがんを検出する本発明の方法に関して、細胞の試料は、全細胞、その溶解物又は全細胞溶解物の画分、例、核若しくは細胞質画分、全タンパク質画分又は核酸画分を含む試料であり得る。
【0088】
本発明の検出方法の目的のために、接触を哺乳動物に関してin vitro又はin vitroで行い得る。好ましくは接触はin vitroである。
【0089】
また、該複合体の検出は、当技術分野で公知の任意の数の方法によって行われ得る。例えば、本明細書に記載された本発明のTCR、ポリペプチド、タンパク質、核酸、組換え発
現ベクター、宿主細胞又は細胞集団は、検出可能な標識、例えば、例、放射性同位体、フルオロフォア(例、フルオレセイン・イソチオシアネート(FITC)、フィコエリトリン(PE))、酵素(例、アルカリホスファターゼ、セイヨウワサビ・ペルオキシダーゼ)及び元素粒子(例、金粒子)等で標識され得る。
【0090】
本発明の方法の目的のために、宿主細胞又は細胞集団が投与され得、該細胞は、哺乳動物に対して同種異系又は自己の細胞であり得る。好ましくは、該細胞は哺乳動物に対して自己である。
【0091】
本発明の方法に関して、がんは、急性リンパ球性がん、急性骨髄性白血病、胞巣状横紋筋肉腫、骨がん、脳がん、乳がん、肛門、肛門管又は肛門直腸のがん、目のがん、肝内胆管のがん、関節のがん、首、胆嚢又は胸膜のがん、鼻、鼻腔又は中耳のがん、口腔のがん、膣のがん、外陰部のがん、慢性リンパ球性白血病、慢性骨髄がん、結腸がん、結腸直腸がん、子宮内膜がん、食道がん、子宮頚がん、胃腸カルチノイド腫瘍、神経膠腫、ホジキンリンパ腫、下咽頭がん、腎臓がん、喉頭がん、肝臓がん、肺がん、悪性中皮腫、メラノーマ、多発性骨髄腫、鼻咽頭がん、非ホジキンリンパ腫、口中咽頭のがん、卵巣がん、陰
茎のがん、膵臓がん、腹膜、大網及び腸間膜のがん、咽頭がん、前立腺がん、直腸がん、腎臓がん、皮膚がん、小腸がん、軟組織がん、胃がん、精巣がん、甲状腺がん、子宮がん、尿管がん及び膀胱がんのいずれかを含むがんであり得る。好ましいがんは(cancer is cancer is)、膵臓、結腸直腸、肺、子宮内膜、卵巣又は前立腺がんである。好ましくは
、肺がんは肺腺がん、卵巣がんは上皮卵巣がん、及び膵臓がんは膵臓がんである。別の好ましい実施形態においては、がんは、G12D変異を有する変異KRASアミノ酸配列を発現するがんである。
【0092】
本発明の方法で言及する哺乳動物は、任意の哺乳動物であり得る。本明細書で使用される場合、用語「哺乳動物」は、例えばマウス及びハムスター等のネズミ目の哺乳動物、及び例えばウサギ等のウサギ目の哺乳動物を含むが、これらに限定されない任意の哺乳動物を指す。好ましくは、哺乳動物はネコ科(ネコ)及びイヌ科(イヌ科)を含むネコ目由来である。より好ましくは、哺乳動物はウシ科(ウシ)及びイノシシ科(ブタ)を含むウシ目、又はウマ科(ウマ)を含むウマ目由来である。最も好ましくは、哺乳動物は霊長目、セボイド目若しくはシモイド目(サル)又は類人目(ヒト及び類人猿)である。特に好ましい哺乳動物はヒトである。
【0093】
以下の実施例において、本発明をさらに説明するが、言うまでもなく、決してその範囲を限定すると解釈されるべきではない。
【実施例
【0094】
以下の材料及び方法を実施例1~5において記載される実験に使用した。
【0095】
患者試料
試料は、国立がん研究所(NCI)の治験審査委員会(IRB)によって承認された臨床プロトコール(NCT01174121)に登録された患者に由来するものであった。
【0096】
次世代シーケンシング
患者3971を除く全患者について、以前に記載された (Jonesら、Science, 330: 228-231
(2010))ように、Personal Genome Diagnostics (PGDx, Baltimore, MD)によって、凍結
保存した腫瘍組織(最適切断温度(OCT)媒体に包埋した)及び健常な末梢血細胞におい
て、全エクソーム・シーケンシング (WES)を行った。PGDxはゲノムビルド(build)hg18
にデータを整列させた。患者3971については、健常な試料は39.19及び腫瘍試料は46.53の平均深度で、Illumina HiSeq 2000シーケンシングシステムを用いて、全ゲノム・シーケ
ンシング (WGS)を行った。
【0097】
以下に記載されるように、WESデータを再分析するために、国立衛生研究所、Bethesda,
MD (biowulf.nih.gov)で、Biowulf Linuxクラスターの高性能計算能力をまた利用した。
【0098】
アライメント、プロセッシング及び変異体コーリング
アライメントは、novoalignMPIを用いて、Novocraft (novocraft.com)からヒトゲノム
ビルドhg19までで行った。PicardのMarkDuplicatesツールを用いて、重複をマークした。GATKベストプラクティスワークフロー(broadinstitute.org/gatk)に従って、Indel再アライメント及びベース再較正を実行した。データのクリーンアップ後、パイルアップファイルを創出するためにsamtools mpileupソフトウェア(samtools.sourceforge.net)を用い、体細胞変異体をコール(call)するためにVarscan2ソフトウェア (varscan.sourceforge.net)を用いた。次いで、これらの変異体をAnnovarソフトウェア(annovar.openbioinformatics.org)を用いてアノテーションした。
【0099】
殆んどのWES試料について、タンデムミニ遺伝子(TMG)及びペプチドアプローチを用い
て、評価のためには信頼性の低い推定変異を生成するよう、PGDxによって生成したデータを再分析し、変異コール閾値を下げた。変異体コーリング後、評価のための推定変異を生成するために以下のフィルターを用いた:患者3812、3948、3995、4007及び4032については腫瘍における10%以上の変異体頻度のカットオフ、及び2以上の変異体リードを用いた
。患者4069については、腫瘍における8%以上の変異体頻度のカットオフ及び腫瘍におけ
る3以上の変異体リードを用いた。患者3978及び3942については、変異コール閾値を下げ
なかった。患者3971 (全ゲノムシーケンシング)については、変異数の決定及びTMGコンストラクトの生成のために、腫瘍における20%以上の変異体頻度のカットオフ、及び健常においては10%以下の変異体頻度を用いた。
【0100】
変異コール閾値を下げなかった場合、免疫原性の変異の1つは検出されていなかった可能性があることに注目(患者4069、ZFYVE27における変異)。残りの免疫原性の変異は、上
記で参照された変異をコールするために以前の方法を用いた場合に、変異のリスト中に存在した。
【0101】
腫瘍浸潤リンパ球 (TIL)の生成
以前に記載された (Jinら、J. Immunother., 35: 283-292 (2012))ように、TILを生成
した。簡易には、手術によって切除した腫瘍を、約1~2 mmの断片に切り分け、高用量IL-2 (6000 IU/ml, Chiron, Emeryville, CA)を含有する、2 mlの完全培地(CM)を含有す
る24ウェルプレートのウェルに個別にプレーティングした。CMは、インハウスの10%ヒト血清、2 mM L-グルタミン、25 mM HEPES及び10μg/ml ゲンタマイシンを補充したRoswell Park Memorial Institute (RPMI)培地からなった。幾つかのケースにおいては、最初にTILが増生した(outgrowth)後(2~4週の間)、ガス透過性のG-Rex100フラスコ内で、5
%ヒトAB血清、3000 IU/mlのIL-2及び30 ng/mlのOKT3抗体 (Miltenyi Biotec, Bergisch Gladbach, Germany)を補充した、400 mlの50/50培地中において、放射線照射したPBMC
を1:100の割合で用いて、厳選した培養物を急速に増幅した。50/50培地はCMとAIM-V培地との1:1混合物からなった。全ての細胞を5%CO2で、37℃で培養した。
【0102】
3971及び4069を除く全ての患者については、次世代シーケンシング及びTIL生成は、同
じ転移性の結節から導出した。患者3971については、TILを肺病変から生成し、全ゲノム
シーケンシングを肝臓病変で行った。患者4069については、TILを肝臓病変から生成し、
全エキソームシーケンシングを原発性の膵臓腫瘍で行った。
【0103】
タンデムミニ遺伝子 (TMG)コンストラクト及びin vitroで転写したRNA (IVT)RNAの生成
タンデムミニ遺伝子(TMG)コンストラクトの概要は、Luら、Clin. Cancer Res., 20: 3401-3410 (2014)及びTranら、Science, 344: 641-645 (2014)において記載される。簡易には、次世代シーケンシングによって同定した各非同義置換変異について、野生型タンパク質配列の12アミノ酸が隣接する、対応するアミノ酸変化をコードする「ミニ遺伝子」コンストラクトを作製した。TMGコンストラクトを生成するために、複数のミニ遺伝子をつな
ぎ合わせた。挿入/欠失(indels)について、次の終止コドンまで、フレームシフトした配列を翻訳することによってミニ遺伝子を作製した。これらのミニ遺伝子コンストラクトのコドンを最適化し、合成し、EcoRI及びBamHIを用いて、改変pcDNA3.1ベクターにインフレームでクローニングした (Gene Oracle, Mountain View, CA)。この改変ベクターは、mRNAの安定性を促進するためのポリAテールに加えて、シグナル配列、プロセッシング及び提示を促進するためのDC-LAMPトラフィッキング配列を含有する(Bonehillら、J. Immunol.,
172: 6649-6657 (2004))。全TMGのヌクレオチド配列を、標準的なサンガーシーケンシング (Gene Oracle)によって確認した。TMGをコードするプラスミドを制限酵素NsiIで直鎖
化した。緑色蛍光タンパク質(GFP)をコードする対照pcDNA3.1/V5-His-TOPOベクター(シ
グナル配列及びDC-LAMPトラフィッキング配列なし)をNotIで直鎖化した。直鎖化したDNAをエチレンジアミン四酢酸(EDTA)、酢酸ナトリウム及びエタノールで沈殿させた。DNA
の直鎖化は標準的なアガロースゲル電気泳動によって確認した。製造業者が指示するように、mmessage mmachine T7 Ultraキット (Life Technologies, Carlsbad, CA)を用いて、IVT RNAの生成のために約1μgの直鎖化したプラスミドを用いた。RNAをLiCl2法を用いて
沈殿させ、RNA純度及び濃度をNanoDrop分光光度計を用いて評価した。次いで、RNAをマイクロチューブに等分し、使用まで-80℃で保存した。
【0104】
自己抗原提示細胞 (APC)の生成
単球に由来する未成熟樹状細胞を、プラスチック接着法を用いて生成した。簡易には、アフェレーシス試料を解凍し、洗浄し、原液(neat)AIM-V培地(Life Technologies)で5
~10×106細胞/mlに設定し、次いで、適切なサイズの組織培養フラスコ中で約1×106
胞/cm2でインキュベーションし、37℃、5%CO2でインキュベーションした。90分(分)
後、非接着細胞を回収し、フラスコをAIM-V培地で激しく洗浄し、次いで更に60分間AIM-V培地でインキュベーションした。次いで、フラスコをAIM-V培地で再度激しく洗浄し、次
いで、接着細胞をDC培地でインキュベーションした。DC培地としては、5%ヒト血清、100
U/ml ペニシリン及び100μg/ml ストレプトマイシン、2 mM L-グルタミン、800 IU/ml顆粒球マクロファージコロニー刺激因子 (GM-CSF)(Leukine (サルグラモスチム(sargramostim))及び200 U/ml IL-4 (Peprotech, Rocky Hill, NJ)を含有するRPMIが挙げられ
た。2~3日で、培養液に新鮮なDC培地を添加した。新鮮又は凍結/解凍したDCを、培養開始後4~6日に実験で用いた。
【0105】
CD40L及びIL-4刺激法を用いて、抗原提示B細胞を生成した。簡易には、自己アフェレーシス試料から陽性のB細胞を選択するために、ヒトCD19-マイクロビーズ (Miltenyi Biotec)を用いた。次いで、CD19+細胞と、CD40Lを安定して発現する放射線照射した (6000 rad)3T3細胞(3T3-CD40L)とを、B細胞培地中で約1:1の割合で培養した。B細胞培地としては
、10%ヒト血清、100 U/ml ペニシリン及び100μg/mlストレプトマイシン、10μg/ml
ゲンタマイシン、2 mM L-グルタミン及び200 U/ml IL-4 (Peprotech)を補充した、イス
コフの改変ダルベッコ培地(IMDM)培地(Life Technologies)が挙げられた。新鮮なB細胞培地を添加し(3日目に開始)、それ以降は2~3日毎に培地を添加又は交換した。必要に
応じ、5~8日毎にB細胞を再刺激するために、放射線照射した3T3-CD40Lフィーダー細胞を追加的に用いた。典型的には、3T3-CD40L細胞で最後に刺激した後5~8日の実験において
新鮮又は凍結/解凍したB細胞を用いた。
【0106】
RNAトランスフェクション
APC (DC又はB細胞)を回収し、PBSで1回洗浄し、次いで、Opti-MEM培地(Life Technologies)中で10~30×106細胞/mlで再懸濁した。IVT RNA (4μg又は8μg)を、2 mmギャップ
の電気穿孔法キュベットの底に等分し、50μl又は100μlのAPCをキュベットに直接添加した。電気穿孔法において用いたRNA終濃度は、それゆえ80μg/mlであった。BTX-830方形
波エレクトロポレーターを用いて電気穿孔法を実行した。DCは150 V、10ミリ秒及び1パルスで電気穿孔し、B細胞は150 V、20ミリ秒及び1パルスで電気穿孔した。これらの設定を
用いたトランスフェクション効率は、GFP RNAで評価したとき、いつも70~90%の間であ
った。全工程を室温で実行した。電気穿孔法に続いて、細胞を直ぐに、適切なサイトカインを補充したDC又はB細胞培地を含有するポリプロピレンチューブに移した。トランスフ
ェクションした細胞は37℃、5%CO2で、オーバーナイトで (12~14時間)インキュベーシ
ョンした。共培養アッセイにおける使用に先立って、細胞をリン酸緩衝生理食塩水 (PBS)で1回洗浄した。共培養アッセイにおいては、無関係なTMG RNA対照は、異なる患者由来のTMGであった。
【0107】
ペプチドパルス
DC又はB細胞を回収し、次いで適切なサイトカインを含有するDC又はB細胞培地のいずれかで、0.5×106細胞/ml (DC)又は1×106細胞/ml (B細胞)で再懸濁した。長いペプチド
(通常25mer、Genscript, Piscataway, NJ)をジメチルスルホキシド (DMSO)で溶解し、約10μg/ml(又は力価測定のために表示した濃度)でAPCへパルスし、37℃、5%CO2で、オ
ーバーナイトでインキュベーションした。翌日(通常、ペプチドパルス後12~16時間(h
))、T細胞との共培養に先立って、APCを1回洗浄した。短い/予測された最小のペプチ
ドについて、APCを37℃で約2時間、約0.1~1μg/mlのペプチド (他で明記しない限り)でパルスし、T細胞との共培養に先立って1回洗浄した。
【0108】
T細胞選別、増幅及びクローニング
細胞の選別を必要とする全ての実験において、BD FACSAria IIuセルソーター及びBD FACSJazzセルソーターを用いた。表示した実験においては、30 ng/ml抗CD3抗体 (OKT3)及
び3000 IU/ml IL-2を含有する50/50培地中の過剰に放射線照射した(4000 rad)同種異系
フィーダー細胞 (3の異なるドナーの白血球アフェレーシス試料のプール)を用いて、選別したT細胞を増幅した。典型的には、細胞は最初の刺激の2~3週間後、アッセイにおいて
用いた。
【0109】
幾つかのケースにおいては、メラノーマ患者内のPD-1+CD8+T細胞は、腫瘍反応性T細胞
において濃縮されることが実証されているので (Grosら、J. Clin. Invest., 124: 2246-2259 (2014))、T細胞の変異反応性を研究するために、新鮮な腫瘍溶解物に由来するCD4及びCD8T細胞をPD-1発現に基づいて選別し、増幅した。フローベースの細胞選別をまた、以下の「変異反応性TCRの同定及び構築」に記載されるように、変異反応性T細胞について濃縮するために使用した。
【0110】
共培養アッセイ:細胞表面活性化マーカーのためのIFN-γELISPOT、ELISA及びフローサイトメトリー
DCをAPCとして使用した場合、96ウェルプレートの1ウェル当たり約3.5×104~7×104のDCを使用した。B細胞をAPCとして使用した場合、96ウェルプレートの1ウェル当たり約2×105細胞を使用した。酵素結合免疫スポット (ELISPOT)アッセイにおいては、1ウェル当たり1×104~4×104のエフェクターT細胞を使用した。ELISPOTプレートを処理するのに先立って、細胞をプレートから回収し、以下に記載のフローサイトメトリー分析のために処理した。典型的には、共培養に少なくとも2日先立って、T細胞を解凍し、IL-2 (3000 IU/ml IL-2)含有50/50培地中で休ませた。全ての共培養は、外因的に添加したサイトカインの非存在下で行った。全てのIFN-γELISPOT及びフローサイトメトリーアッセイについては
、陽性対照としてプレートに結合したOKT3 (1μg/ml)を用いた。COS-7及び膵臓細胞株との共培養については、1×105のT細胞を1×105の標的細胞とオーバーナイトで共培養した
。上清を回収し、IFN-γELISAを用いてIFN-γについて評価した。
【0111】
IFN-γELISPOTアッセイについては、簡易には、ELISpot PVDF (ELIIP)プレート (Millipore, Billerica, MA (MAIPSWU)を、1ウェル当たり50μlの70%エタノールで2分間前処理し、PBSで3回洗浄し、次いで50μlの10μg/ml IFN-γ捕捉抗体(Mabtech, Cincinnati, OH)(クローン:1-D1K)でコートし、冷蔵庫内でオーバーナイトでインキュベーションした
。OKT3対照については、ウェルをIFN-γ捕捉抗体 (10μg/ml)及びOKT3 (1μg/ml)の混
合物でコートした。共培養に先立って、プレートをPBSで3回洗浄し、その後、50/50培地
で室温(RT)で少なくとも1時間ブロッキングした。共培養の20~22時間後、細胞をELISPOTプレートから標準的な96ウェル丸底プレートに回収し、次いでELISPOTプレートをPBS+0.05% Tween-20デタージェント(PBS-T)で6回洗浄し、次いで1ウェル当たり、100μlの1μg/ml ビオチン化抗ヒトIFN-γ検出抗体溶液 (Mabtech、クローン:7-B6-1)(0.22μmでろ過)と共に室温で2時間インキュベーションした。次いで、プレートをPBS-Tで3回洗浄し
、その後、1ウェル当たり100μlのストレプトアビジンALP (Mabtech、1:3000希釈)と共
に1時間インキュベーションした。次いで、プレートをPBSで5回洗浄し、その後、1ウェル当たり100μlのBCIP/NBT基質溶液 (KPL, Inc., Gaithersburg, MD)(0.45μmでろ過)で
発色させた。冷水道水で十分にすすぐことにより反応を停止した。ImmunoSpotプレートリーダー及び付属のソフトウェア (Cellular Technologies, Ltd., Shaker Heights, OH)を用いて、ELISPOTプレートをスキャン及び計数した。
【0112】
刺激後約22~24時間で、フローサイトメトリーによって、T細胞活性化マーカーOX40及
び4-1BBの発現を評価した。簡易には、ELISPOTプレートから回収した細胞をペレット化し、蛍光活性化細胞選別(FACS)バッファー (1%FBS及び2 mM EDTAを補充した1×PBS)で洗浄し、次いで暗所で適切な抗体で4℃で約30分間染色した。BD FACSCanto IIフローサイトメーターで取得するのに先立って、細胞を少なくとも1回、FACSバッファーで洗浄した。全
てのデータは生きた (PI陰性)単一細胞でゲートした。回収した生きたT細胞イベント数は、通常、2×103~8×103の範囲であった。
【0113】
フローサイトメトリー抗体
細胞表面染色については、以下の力価測定した抗ヒト抗体:CD3-AF700 (クローン:UCHT1)、CD4-APC-Cy7 (クローン:SK3)、CD8-PE-Cy7 (クローン:SK1)、OX40-FITC (クロー
ン:Ber-ACT35)及び4-1BB-APC (クローン:4B4-1)を用いた。CD8-PE-Cy7及びOX40-FITC (BD Bioscience, Franklin Lakes, NJ)を除き、全ての抗体はBioLegend (San Diego, CA)
由来であった。表示した(indicated)T細胞集団のTCR-Vβのレパートリーを評価するた
めに、IO Mark Beta Mark TCR Vキット (Beckman Coulter, Schaumburg, IL)を用いた。TCR形質導入効率を評価するために、フルオロクロム結合抗マウスTCRβ定常領域抗体 (ク
ローン:H57-597, eBioscience, San Diego, CA)を用いた。
【0114】
TCR-Vβディープシーケンシング
DNeasy血液及び組織キット(Qiagen, Venlo, Netherlands)を用いて、末梢血、T細胞及
び凍結した腫瘍組織から単離したゲノムDNAにおいて、immunoSEQアッセイ、Adaptive Biotechnologies (Seattle, WA)によって、TCR-Vβディープシーケンシングを行った。TCR頻度の計算においては、実益性のある(productive)TCR再構成のみを用いた。
【0115】
変異反応性TCRの同定及び構築
変異反応性TCR配列を同定するために幾つかの方法を用いた。第一に、変異したTMG又はペプチドとの共培養に際して活性化マーカー (4-1BB又はOX40)を上方制御したT細胞をFACS精製し、次いで以下に記載されるように、ダイレクトにシーケンシングし、又は更に増
幅した。第二に、優勢なTCR-Vβクローン型(IO Mark Beta Mark TCR Vキットを用いて決
定される)と相関する優勢な反応性があった場合においては、優勢なTCR-Vβを発現するT
細胞をFACS精製し、次いでダイレクトにシーケンシングか、又はシーケンシング前に更に増幅かのいずれかにした。
【0116】
殆どのケースにおいては、増幅後、濃縮した変異反応性細胞をペレット化し、全RNAを
単離した(RNeasyMiniキット、Qiagen)。次いで、TCR-α及び-β鎖定常プライマーを用い
て、製造業者が指示するように、総RNAを5'RACEにかけた (SMARTer RACE cDNA増幅キット、Clontech, Mountain View, CA)。PCRのために、伸長時間を改変して(3分の代わりに2分間)、キットのプログラム1を用いた。α及びβ鎖定常プライマーの配列は:TCR-α、配列番号21;TCR-β、配列番号22である。次いで、TCRのPCR産物を標準的なアガロースゲル電気泳動及びゲル抽出 (Clontech)によって単離した。次いで、産物をダイレクトのシーケ
ンシングか、又はTOPO-TAクローニング後、個々のコロニーのシーケンシングのいずれか
にした (Macrogen, Seoul, Korea)。他のケースにおいては、高度に優勢なTCR-Vβ配列をしばしばもたらす濃縮した変異反応性細胞において、TCR-Vβディープシーケンシングを
行った (Adaptive Biotechnologies, Seattle, WA)。集団が、同定した変異に対して実際に反応性であったことを確認するために、濃縮した変異反応性T細胞集団及び/又はTCR-
形質導入T細胞を用いた共培養アッセイを行った。
【0117】
マウスTCR-α定常鎖にTCR-αV-J領域を融合、及びマウスTCR-β定常鎖にTCR-β、V-D-J領域を融合することによって、変異反応性TCRの構築を行った。マウスTCR-α定常鎖は配
列番号24のアミノ酸配列を有し、マウスTCR-β定常鎖は配列番号25のアミノ酸配列を有していた。フリンSGSG P2Aリンカー (配列番号23)によって、α及びβ鎖を分離した。マウ
スTCR定常領域の使用は、導入したTCRのペアリングを促進し、またマウスTCR-β鎖に特異的な抗体(eBioscience)を用いたフローサイトメトリーによって、形質導入した陽性T細胞の同定を容易にする。1のβ鎖とペアとなる2つの推定TCRα鎖があったケースにおいては
、両方のTCRを構築し、反応性について評価した。TCRコンストラクトを合成し、MSGV1レ
トロウイルスベクター (Gene Oracle)にクローニングした。
【0118】
細胞株トランスフェクション及び形質導入
患者3995に由来するHLA-B及び-CアレルcDNAs (各50 ng)のうちの1つと組合せた、KRAS野生型又はG12D cDNA (各200 ng)で、COS-7細胞をトランスフェクションした (表1)。予
備実験によって、KRAS G12D反応性についての拘束要素としてHLA-Aが除外されたので、HLA-B及びHLA-Cアレルだけをテストした。96ウェルプレート中で、トランスフェクションを行った。KRASG12D陰性細胞株BxPC-3 (KRAS wt)、A818.8 (KRASG12R)、SK-PC3 (KRASG12V)及びMIA PaCa-2 (KRASG12C)に加えて、いずれもKRASG12Dを発現するヒト膵臓がん細胞株ASPC-1、MDA-Panc48、PK-45p、FA6-2及びHPAC-1を、形質導入しないか、又はHLA-Cw*08:02をコードするレトロウイルスで形質導入した。
【0119】
【表1】
【0120】
末梢血T細胞のTCR形質導入
自己アフェレーシス試料を解凍し、5%のインハウスヒト血清、10μg/ml ゲンタマイ
シン、100 U/ml ペニシリン及び100μg/ml ストレプトマイシン、1.25μg/ml FungizoneアンフォテリシンB及び2 mM L-グルタミンを補充したRPMI及びAIM-V培地の50/50混合物からなる、T細胞培地中で2×106細胞/mlに設定した。レトロウイルス形質導入に先立っ
て、50 ng/ml 可溶性OKT3 (Miltenyi Biotec)及び300 IU/ml rhu IL-2 (Chiron)を含む24ウェルプレート中で、2×106細胞 (1 ml)を2日間刺激した。一時的なレトロウイルス上清を生成するために、Lipofectamine 2000試薬 (Life Technologies)を用いて、レトロウイルスパッケージング細胞株293GP (6ウェルのポリ-D-リジンでコートしたプレートに1ウェル当たり1×106細胞を、トランスフェクションに先立って、その日にプレーティング)
に変異反応性TCRをコードするレトロウイルスベクターMSGV1 (1ウェル当たり1.5μg)及びエンベロープをコードするプラスミドRD114 (1ウェル当たり0.75μg)を共トランスフェクションした。トランスフェクション後42~48時間でレトロウイルス上清を回収し、DMEM培地で1:1希釈し、次いでRetronectin試薬でコート (10μg/ml、Takara, Shiga, Japan)
し、組織培養処理していない6ウェルプレート上へ、32℃で2時間、2,000 gで遠心分離し
た。次いで、レトロウイルスプレート上へ、活性化したT細胞 (IL-2を含有するT細胞培地中で0.5×106細胞/mlで、1ウェル当たり2×106)を10分間、300 gでスピンした。活性化
したT細胞をオーバーナイトで形質導入し、プレートから回収し、IL-2を含有するT細胞培地中で更に培養した。形質導入実験においては、GFP及びmock形質導入対照を含めた。典
型的には、レトロウイルス形質導入後10~14日で、細胞をアッセイした。
【0121】
実施例1
本実施例は、転移性の腫瘍中に存在する体細胞変異の同定について実証する。
【0122】
全エキソーム又は全ゲノムシーケンシングを用いて、結腸、直腸、食道、胆管又は膵臓に起源するがんを有する9患者由来の転移性の腫瘍に存在する体細胞変異を同定した (表2)。変異をコールするために以前の方法 (Tranら、Science, 344: 641-645 (2014))を用いた場合、変異数は10~155の範囲であった (表2)。しかしながら、任意の低いカバレッジ
及び低い信頼度の変異を評価するために、変異コールの基準を殆んどの試料について緩和し、それゆえ38~264の間の推定変異について評価した (表2)。
【0123】
【表2】
【0124】
実施例2
本実施例は、結腸直腸がんを有する患者(患者番号3995)に由来する、KRAS G12Dを認識
するT細胞の単離について実証する。
【0125】
表2に示される各患者の転移性の病変から、複数のTIL培養物を生成した。各患者由来のTIL培養物のいずれかが、彼ら自身の腫瘍変異を認識したかをテストするために、以前に
記載された (Luら、Clin. Cancer Res., 20: 3401-3410 (2014);Tranら、Science, 344:
641-645 (2014))ように、タンデムミニ遺伝子 (TMG)アプローチを用いた。簡易には、これらのTMGは、次の終止コドンまでcDNAが翻訳されるフレームシフト変異のケースを除き
、親タンパク質由来の12の野生型アミノ酸によって両端の各側の同定した変異をコードする遺伝的なコンストラクトである、一連のミニ遺伝子からなる。in vitro転写後、次いで自己抗原提示細胞 (APC)に、TMG RNAを個々にトランスフェクションし、患者のMHCクラスI及びクラスII分子の各々によって、全ての変異したエピトープの潜在的なプロセッシン
グと提示を可能にし、その後、様々なTIL培養物と共に共培養した。
【0126】
患者3995について、無関係なタンデムミニ遺伝子 (TMG)RNA、又は実施例1に記載したように全エキソームシーケンシングによって同定した154のミニ遺伝子を共にコードする10
の異なるTMGコンストラクト (TMG-1~TMG-10)のうちの1でトランスフェクションした自己DCと、19の異なるTIL培養物とを共培養した。
【0127】
IFN-γELISPOTによって決定したように、TIL培養物は、TMG-2及びTMG-5に対して反応性であると同定した。TMG-2及びTMG-5中で認識されている変異抗原を同定するために、TMG-2又はTMG-5によってコードされる変異ペプチドで、それぞれ個々にパルスした自己DCと、TMG-2及びTMG-5反応性細胞とを共培養した。RNF213N1702S及びTUBGCP2P293Lに対する、患者固有の変異特異的CD8+T細胞を同定した。
【0128】
更に、KRASG12Dホットスポット変異に対する低レベルのCD8+TIL反応性を観察した。こ
のTIL培養物は、IFN-γELISPOTによって決定したように、TMG-3に対して反応性であった
。TMG-3は、KRAS G12Dホットスポット変異を含む、13の変異したミニ遺伝子をコードしていた。野生型 (wt)ペプチド (配列番号19)又は変異KRAS G12Dの長いペプチド (配列番号20)(24mer)でパルスした自己DCと、TMG-3反応性細胞とを共培養した。3×104TIL当たりの
計数したスポット数は、wt KRASペプチドと共培養したTILについては0であり、変異KRAS G12D ペプチドと共培養したTILについては59であった。従って、KRAS G12Dは、TMG-3反応性TILによって認識された変異として同定した。特に、細胞によって認識された配列番号20の変異KRASの長いペプチドは、患者によって発現されたMHC-I分子C08:02に結合したペプチドの上位2%の中に順位づけられると推定される、最小のT細胞エピトープGADGVGKSAL (配列番号18)を包含した。
【0129】
KRAS G12D刺激に際して、4-1BBを上方制御したCD8+ T細胞をFACS精製し、増幅した。wtペプチド若しくはKRAS G12Dの長いペプチドでパルスしたDC、又は完全長wt RNA若しくはKRAS G12D RNAでトランスフェクションしたDC、と共にオーバーナイトで共培養した、KRAS
G12Dで濃縮したCD8+ T細胞に関して、IFN-γELISPOTアッセイ及び4-1BB発現のフローサ
イトメトリー分析を実施した。
【0130】
IFN-γELISPOTアッセイ及び4-1BB発現のフローサイトメトリー分析によって、濃縮集団は、(i)変異KRASG12Dペプチドでパルスした場合、又は完全長KRASG12D RNAでトランスフ
ェクションした場合、APCを特異的に認識し、(ii)WT KRASペプチドでパルスした場合、又は完全長WT KRAS RNAでトランスフェクションした場合、APCを特異的に認識しなかったことを確認した。
【0131】
形質導入しなかった(Mock)、又はHLA-C*08:02アレルで形質導入した膵臓がん細胞株MDA-Panc48 (KRASG12D)、HPAC (KRASG12D)若しくはMIA PaCa-2 (KRASG12C)と、KRASG12D反応性TILの濃縮集団とを6時間共培養した。フローサイトメトリーを用いて、細胞内サイトカ
イン染色によって、CD107a発現及びTNF産生を評価した。wtペプチド又はKRASG12Dの24ア
ミノ酸長のペプチドでオーバーナイトでパルスした自己APC (末梢血単核細胞)を、対照標的細胞として用いた。データは、KRASG12D反応性TCR Vβ5.2を発現するCD8+ T細胞でゲートした。
【0132】
結果は、KRAS変異反応性TILは、HLAC* 08:02及びKRASG12Dを発現する膵臓がん細胞株に対して、特異的に腫瘍壊死因子 (TNF)を産生し、細胞溶解能を示すことを示した。
【0133】
実施例3
本実施例は、実施例2のKRASG12D特異的T細胞からの抗KRAS G12D TCRの単離について実
証する。本実施例はまた、単離したTCRで遺伝的に改変した、自己オープンレパートリー
(open-repertoire)T細胞が、KRASG12DでトランスフェクションしたCOS-7細胞のHLA-Cw*08:02拘束性の認識を提供したことについて実証する。
【0134】
実施例2において単離したKRAS G12D反応性細胞のTCRのα及びβ鎖可変領域をコードす
るヌクレオチド配列を、T細胞から単離した。マウスTCRα定常鎖(配列番号24)及びマウスβ定常鎖 (配列番号25)にそれぞれ融合したα鎖可変領域 (配列番号9)及びβ鎖可変領域 (配列番号10)をコードするヌクレオチド配列を、発現ベクターにクローニングした。抗KRAS G12D TCRを発現するよう、自己オープンレパートリーT細胞を遺伝的に改変した。
【0135】
(i)なし、又はWT KRAS若しくはKRAS G12Dをコードするヌクレオチド配列と共に、(ii)HLA分子なし、又は患者(B*14:01、B*18:01、Cw*05:01又はCw*08:02)によって発現される個々のHLA-B及び-Cアレル、で共トランスフェクションしたCOS-7細胞と、遺伝的に改変した細胞とを共培養した。IFN-γELISA アッセイによって、IFN-γ分泌を測定した。結果は、KRASG12D特異的T細胞から単離したTCRで遺伝的に改変したT細胞が、KRASG12Dでトランス
フェクションしたCOS-7細胞にHLA-Cw*08:02拘束性の反応性を向け直したことを示した。
結果はまた、遺伝的に改変したT細胞は、WT KRAS、KRASなし又はHLA分子なしでトランス
フェクションしたCOS-7細胞のいずれをも認識しなかったことを示した。遺伝的に改変し
たT細胞はまた、(i)KRAS G12D、及び(ii)B*14:01、B*18:01又はCw*05:01分子、の両方で
、共トランスフェクションしたCOS-7細胞を認識しなかった。
【0136】
実施例4
本実施例は、実施例3において単離したTCRで遺伝的に改変した、自己オープンレパートリーT細胞が、KRASG12Dを発現する膵臓がん細胞株のHLA-Cw*08:02拘束性の認識を提供し
たことについて実証する。
【0137】
実施例3の抗KRAS G12D TCRを発現するよう、自己オープンレパートリーT細胞を遺伝的
に改変した。形質導入されなかったか(Mock)又はHLA-Cw*08:02アレルで形質導入した様々な膵臓がん細胞株と、遺伝的に改変したT細胞とを共培養した。膵臓細胞株は、以下:ASPC-1 (KRAS G12D+);MDA-Panc48 (KRAS G12D+);PK-45p (KRAS G12D+);FA6-2 (KRAS G12D+);HPAC (KRAS G12D+);BxPC-3 (KRAS wt);A818.8 (KRASG12R);SK-PC3 (KRASG12V);
及びMIA PaCa-2 (KRASG12C)であった。ELISAによって、IFN-γ分泌を測定した。
【0138】
結果は、KRASG12D特異的T細胞から単離したTCRによる自己オープンレパートリーT細胞
の遺伝的改変が、KRASG12Dを発現する膵臓がん細胞株にHLA-Cw*08:02拘束性の反応性を向け直したことを示した。結果はまた、遺伝的に改変した細胞は、BxPC-3 (KRAS wt);A818.8 (KRASG12R);SK-PC3 (KRASG12V);又はMIA PaCa-2 (KRASG12C)細胞株を認識しなかっ
たことを示した。HLA-Cw*08:02の非存在下では、膵臓細胞株の認識を認めなかった。
【0139】
実施例5
本実施例は、表2に示される患者の転移性の病変に浸潤している変異反応性T細胞の頻度について実証する。
【0140】
転移性の病変に浸潤している変異反応性T細胞の内在的な頻度を決定するために、凍結
保存した転移性の腫瘍病変で、TCR-Vβディープシーケンシングを行った。表2において示されるように、転移性の病変に浸潤している同定した変異反応性T細胞の頻度は、所定の
腫瘍内の全T細胞の0.009~125%の範囲で変動できるものであった。同定した17の変異反
応性TCRのうち4つが、腫瘍内の最も頻度の高いTCRの上位10以内にランク付けられた(ランク範囲:3~2718、表2)。注目すべきは、同じ転移性の病変に由来するほんの少数のTIL培養物が、しばしば、検出できるレベルのIFN-γを産生する変異反応性T細胞を有しており
、更に様々なTIL培養物が、様々な変異に対して反応性のT細胞について濃縮された (表2)。特定の理論又は機構に拘束されることはないが、新しいエピトープのT細胞反応性にお
けるこの不均一性は、ヒトがん内で観察された腫瘍内ゲノム不均一性と関係する可能性がある。
【0141】
実施例6
本実施例は、実施例3の抗変異KRAS TCRをコードするヌクレオチド配列で形質導入したT細胞が、変異KRASペプチドでパルスした自己樹状細胞を認識したことについて実証する。
【0142】
T細胞を実施例3の抗変異KRAS TCRをコードするヌクレオチド配列で形質導入した。表3
に示されるペプチドの1を様々な濃度でパルスした自己樹状細胞と、形質導入した細胞と
を共培養した。ELISAによって、IFN-γを測定した。結果を図1に示す。
【0143】
【表3】
【0144】
図1に示されるように、実施例3の抗変異KRAS TCRをコードするヌクレオチド配列で形質導入したT細胞は、変異KRASペプチドの各々を認識し、いずれのWT KRASペプチドも認識しなかった。
【0145】
本明細書において引用した刊行物、特許出願及び特許を含む全ての参考文献は、各参考文献が個別に、具体的に、参照によって取り込まれることが示されているのと同程度に、かつ全体が本明細書に記載されているのと同程度まで、参照することによって本明細書に取り込まれる。
【0146】
本発明を記載する文脈(特に、以下の特許請求の範囲の文脈)における用語「a」及び
「an」及び「the」及び「少なくとも1つ」並びに同様の指示対象の使用は、本明細書中で別段の指示がない限り、又は文脈によって明確に矛盾しない限り、単数及び複数形の両方を含むものとして解釈されるべきである。1以上の項目の列記が続く、用語「少なくとも
1つ」の使用(例えば、「A及びBの少なくとも1つ」)は、本明細書に別段の記載がない
限り、又は文脈によって明確に矛盾しない限り、列記された項目から選択された1つの項目(A又はB)、又は列記された項目の2以上の任意の組合せ(A及びB)を意味するものと
して解釈されるべきである。「含む(comprising)」、「有する(having)」、「含む(
including)」及び「含有する(containing)」という用語は、別段の記載がない限り、
制限のない用語(open-ended terms)(すなわち、「含むが、これに限定されない(including, but not limited to)」を意味する)として解釈されるべきである。本明細書中
の値の範囲の列挙は、本明細書中に別段の指示がない限り、単に範囲内の各別個の値を個別に指す簡略方法として役立つことを意図しており、本明細書において個々の値はそれぞれ個別に列挙されているかのように、個々の値は明細書に取り込まれる。本明細書中に記載された全ての方法は、本明細書中で別段の指示がない限り、又は特に文脈によって明らかに矛盾しない限り、任意の適切な順序で実施し得る。本明細書で提供される任意の及び全ての例、又は例示的な言語(例えば「など(such as)」)の使用は、単に本発明をよ
りよく説明することを意図しており、特段特許請求されない限り、本発明の範囲に限定を課すものではない。本明細書中のいかなる言葉も、本発明の実施に不可欠であるとして、特許請求されていない任意の要素を示すものと解釈されるべきではない。
【0147】
本発明を実施するための発明者が知るベストモードを含む、本発明の好ましい実施形態は、本明細書に記載される。これらの好ましい実施形態の変形は、前述の記載を読むことで当業者に明らかになり得る。本発明者らは、当業者がこのような変形を適宜使用することを予測し、本発明者らは本発明が本明細書に具体的に記載されたものとは別の方法で実施されることを意図する。従って、本発明は適用法によって許容されるように、本明細書に添付した特許請求の範囲に記載された主題の全ての改変及び均等物を含む。更に、本明細書中で別段の指示がない限り、又は特に文脈によって明らかに矛盾しない限り、それらの全ての可能な変形における上記要素の任意の組合せが本発明に包含される。
図1
【配列表】
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