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特許7461460不織布積層体、被覆シート及び吸収性物品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-26
(45)【発行日】2024-04-03
(54)【発明の名称】不織布積層体、被覆シート及び吸収性物品
(51)【国際特許分類】
   D04H 3/16 20060101AFI20240327BHJP
   B32B 5/02 20060101ALI20240327BHJP
   B32B 5/26 20060101ALI20240327BHJP
【FI】
D04H3/16
B32B5/02 C
B32B5/26
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2022512128
(86)(22)【出願日】2021-03-26
(86)【国際出願番号】 JP2021012946
(87)【国際公開番号】W WO2021200682
(87)【国際公開日】2021-10-07
【審査請求日】2022-09-29
(31)【優先権主張番号】P 2020065275
(32)【優先日】2020-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】523419521
【氏名又は名称】エム・エーライフマテリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】飯濱 翔
(72)【発明者】
【氏名】島田 幸一
【審査官】印出 亮太
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第02/061192(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/146726(WO,A1)
【文献】特開2018-145544(JP,A)
【文献】特開2019-131945(JP,A)
【文献】特開2019-131946(JP,A)
【文献】特開2016-141929(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0271716(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D04H 1/00 - 18/04
B32B 1/00 - 43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
捲縮繊維を含む捲縮スパンボンド不織布からなる捲縮表面層と、
捲縮繊維を含む捲縮スパンボンド不織布からなる捲縮中間層と、
非捲縮繊維を含む非捲縮スパンボンド不織布からなる非捲縮表面層と、
をこの順番に有し、
前記捲縮表面層における前記捲縮繊維の線質量密度が1.4デニール以上1.6デニール以下であり、
前記捲縮中間層における前記捲縮繊維の線質量密度が1.4デニール未満である不織布積層体。
【請求項2】
前記捲縮表面層における前記捲縮繊維の線質量密度が1.5デニール以上1.6デニール以下である請求項1に記載の不織布積層体。
【請求項3】
前記捲縮中間層における前記捲縮繊維の線質量密度が0.7デニール以上1.3デニール以下である請求項1又は請求項2に記載の不織布積層体。
【請求項4】
前記非捲縮表面層における前記非捲縮繊維の線質量密度が1.3デニール以下である請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の不織布積層体。
【請求項5】
前記捲縮表面層における前記捲縮繊維、及び、前記捲縮中間層における前記捲縮繊維が、プロピレン系重合体を含む請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の不織布積層体。
【請求項6】
前記捲縮表面層における前記捲縮繊維に含まれる熱可塑性樹脂及び前記捲縮中間層における前記捲縮繊維に含まれる熱可塑性樹脂のメルトフローレート(MFR)(ASTM D-1238、230℃、荷重2,160g)が、それぞれ独立に100g/10分以下である請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の不織布積層体。
【請求項7】
不織布積層体の全体目付が15g/m以上20g/m以下である請求項1~請求項6のいずれか1項に記載の不織布積層体。
【請求項8】
前記捲縮表面層及び前記捲縮中間層の目付の合計値が、不織布積層体の全体目付の50%以上である請求項1~請求項7のいずれか1項に記載の不織布積層体。
【請求項9】
不織布積層体の各層において、目付が最大となる層における目付(最大目付)と、目付が最小となる層における目付(最小目付)との比率(最大目付/最小目付)は、1.0以上1.3以下である請求項1~請求項8のいずれか1項に記載の不織布積層体。
【請求項10】
捲縮繊維を含む捲縮スパンボンド不織布からなる捲縮表面層と、
捲縮繊維を含む捲縮スパンボンド不織布からなる捲縮中間層と、
非捲縮繊維を含む非捲縮スパンボンド不織布からなる非捲縮表面層と、
この順番に有し、以下の(1)~(3)を満たす不織布積層体。
(1)KES法で測定した圧縮特性試験における圧力0.5gf/cmにおける厚みTOと、KES法で測定した圧力50gf/cmにおける厚みTMとの差(TO-TM)が0.30mmよりも大きい。
(2)JIS L 1913:2010のカンチレバー法(ISO法)に準拠した、MD方向のカンチレバーの値が40mm未満である。
(3)以下の式(a)で表される地合指数(V)が310未満である。
V=10σ/E・・・(a)
(式(a)中、Vは地合指数を表し、σは不織布積層体の濃淡ムラの標準偏差を表し、Eは2-logTを表す。Tは不織布積層体の光透過率(%)を表す。
【請求項11】
請求項1~請求項10のいずれか1項に記載の不織布積層体を含む被覆シート。
【請求項12】
請求項1~請求項10のいずれか1項に記載の不織布積層体又は請求項11に記載の被覆シートを含む吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不織布積層体、被覆シート及び吸収性物品に関する。
【0002】
スパンボンド不織布は通気性、柔軟性等に優れていることから、紙おむつ、生理用品等の吸収性物品として利用されているが、さらなる特性の向上が要求されている。例えば、嵩高性等の特性向上の点から、捲縮繊維を含む捲縮スパンボンド不織布を用いること、捲縮スパンボンド不織布層を複数積層させた不織布積層体とすること等が検討されている。
【0003】
複数のスパンボンド不織布層を有するスパンボンド不織布積層体として、少なくとも二つで最大四つのスパンボンド不織布層が、捲縮したエンドレスフィラメントを含むかまたは捲縮したエンドレスフィラメントからなり、これらのスパンボンド不織布層中のフィラメントの捲縮度が異なっており、スパンボンド不織布層の捲縮したフィラメントが、それらの長さ1cmあたりで少なくとも2個の輪(ループ)を持つ捲縮数をそれぞれ有し、スパンボンド不織布層の捲縮したフィラメントが、第一のプラスチック成分及び第二のプラスチック成分を用いた二成分フィラメントとして構成され、前記両プラスチック成分のそれぞれが、少なくとも10重量%の割合でそれぞれのフィラメント中に存在するスパンボンド不織布積層体が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
さらに、特許文献1では、互いに重ねて配置されたスパンボンド不織布層の捲縮度が下から上にいくにつれて大きくなるスパンボンド不織布積層体が提案されている。
【0004】
また、捲縮した多成分繊維を有し、多成分繊維の第1の成分が、熱可塑性の第1のベースポリマーを含む熱可塑性の第1のポリマー材料からなり、多成分繊維の第2の成分が、第1のベースポリマーとは異なる熱可塑性の第2のベースポリマーを含む熱可塑性の第2のポリマー材料からなる、スパンボンド不織布であって、第1のポリマー材料又は第2のポリマー材料のうち少なくとも1つは、それぞれのベースポリマーに加えて、さらに、1重量%~10重量%の高メルトフローレートポリマーを含むポリマーブレンドであり、高メルトフローレートポリマーのメルトフローレートは、230℃及び2.16kgの条件で600g/10分~3000g/10分であり、成分繊維は、線質量密度が1.5デニール未満であり、多成分繊維の平均捲縮数は、繊維1cmあたり、少なくとも5つの範囲である、スパンボンド不織布が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2019-131945号公報
【文献】特開2019-131946号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
嵩高さ、柔軟性及び均一性の全てが良好なスパンボンド不織布積層体を提供することは難しい。特許文献1に記載のスパンボンド不織布積層体は、嵩高さに優れるが、均一性の点で改善の余地がある。また、特許文献2に記載のスパンボンド不織布は、均一性と柔軟性が改善されているが、嵩高さの点で改善の余地があり、均一性の点でもさらなる改善の余地がある。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、嵩高さ、柔軟性及び均一性に優れる不織布積層体、並びにこの不織布積層体を含む被覆シート及び吸収性物品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する手段には、以下の態様が含まれる。
<1> 捲縮繊維を含む捲縮スパンボンド不織布からなる捲縮表面層と、
捲縮繊維を含む捲縮スパンボンド不織布からなる捲縮中間層と、
非捲縮繊維を含む非捲縮スパンボンド不織布からなる非捲縮表面層と、
をこの順番に有し、
前記捲縮表面層における前記捲縮繊維の線質量密度が1.4デニール以上1.6デニール以下であり、
前記捲縮中間層における前記捲縮繊維の線質量密度が1.4デニール未満である不織布積層体。
<2> 前記捲縮表面層における前記捲縮繊維の線質量密度が1.5デニール以上1.6デニール以下である<1>に記載の不織布積層体。
<3> 前記捲縮中間層における前記捲縮繊維の線質量密度が0.7デニール以上1.3デニール以下である<1>又は<2>に記載の不織布積層体。
<4> 前記非捲縮表面層における前記非捲縮繊維の線質量密度が1.3デニール以下である<1>~<3>のいずれか1つに記載の不織布積層体。
<5> 前記捲縮表面層における前記捲縮繊維、及び、前記捲縮中間層における前記捲縮繊維が、プロピレン系重合体を含む<1>~<4>のいずれか1つに記載の不織布積層体。
<6> 前記捲縮表面層における前記捲縮繊維に含まれる熱可塑性樹脂及び前記捲縮中間層における前記捲縮繊維に含まれる熱可塑性樹脂のメルトフローレート(MFR)(ASTM D-1238、230℃、荷重2,160g)が、それぞれ独立に100g/10分以下である<1>~<5>のいずれか1つに記載の不織布積層体。
<7> 不織布積層体の全体目付が15g/m以上20g/m以下である<1>~<6>のいずれか1つに記載の不織布積層体。
<8> 前記捲縮表面層及び前記捲縮中間層の目付の合計値が、不織布積層体の全体目付の50%以上である<1>~<7>のいずれか1つに記載の不織布積層体。
<9> 不織布積層体の各層において、目付が最大となる層における目付(最大目付)と、目付が最小となる層における目付(最小目付)との比率(最大目付/最小目付)は、1.0以上1.3以下である<1>~<8>のいずれか1つに記載の不織布積層体。
<10> 捲縮繊維を含む捲縮スパンボンド不織布からなる捲縮層と、
非捲縮繊維を含む非捲縮スパンボンド不織布からなる非捲縮表面層と、
を有し、以下の(1)~(3)を満たす不織布積層体。
(1)KES法で測定した圧縮特性試験における圧力0.5gf/cmにおける厚みTOと、KES法で測定した圧力50gf/cmにおける厚みTMとの差(TO-TM)が0.30mmよりも大きい。
(2)JIS L 1913:2010のカンチレバー法(ISO法)に準拠した、MD方向のカンチレバーの値が40mm未満である。
(3)以下の式(a)で表される地合指数(V)が310未満である。
V=10σ/E・・・(a)
(式(a)中、Vは地合指数を表し、σは不織布積層体の濃淡ムラの標準偏差を表し、Eは2-logTを表す。Tは不織布積層体の光透過率(%)を表す。
<11> <1>~<10>のいずれか1つに記載の不織布積層体を含む被覆シート。
<12> <1>~<10>のいずれか1つに記載の不織布積層体又は<11>に記載の被覆シートを含む吸収性物品。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、嵩高さ、柔軟性及び均一性に優れる不織布積層体、並びにこの不織布積層体を含む被覆シート及び吸収性物品を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示において、数値範囲を示す「~」とはその前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
本開示において段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本開示において「工程」との語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。
本開示において、組成物中の各成分の量について言及する場合、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合には、特に断らない限り、組成物中に存在する複数の物質の合計量を意味する。
【0011】
[不織布積層体]
<第1実施形態>
本開示の第1実施形態に係る不織布積層体は、捲縮繊維を含む捲縮スパンボンド不織布からなる捲縮表面層と、捲縮繊維を含む捲縮スパンボンド不織布からなる捲縮中間層と、非捲縮繊維を含む非捲縮スパンボンド不織布からなる非捲縮表面層と、をこの順番に有し、前記捲縮表面層における前記捲縮繊維の線質量密度が1.4デニール以上1.6デニール以下であり、前記捲縮中間層における前記捲縮繊維の線質量密度が1.4デニール未満である。
【0012】
本実施形態の不織布積層体は、嵩高さ、柔軟性及び均一性に優れる。この理由は以下のように推測される。本実施形態の不織布積層体は、捲縮繊維の線質量密度が1.4デニール以上1.6デニール以下である捲縮表面層と、捲縮繊維の線質量密度が1.4デニール未満である捲縮中間層とを備えることにより、不織布積層体は柔軟性、嵩高性及び均一性に優れる。特に、本実施形態の不織布積層体は捲縮中間層を備えることにより、非捲縮中間層を備え、捲縮中間層を備えない不織布積層体と比較して嵩高性に優れる。さらに、捲縮中間層において、捲縮繊維の線質量密度が1.4デニール未満であることにより、この捲縮繊維は細く、同一目付において捲縮中間層における繊維の量を増やすことができるため、不織布積層体の均一性向上に寄与する。また、本実施形態の不織布積層体は、捲縮繊維の線質量密度が1.4デニール以上1.6デニール以下である捲縮表面層を備えることにより、捲縮繊維の線質量密度が1.4デニール未満の捲縮表面層を備える場合と比較して嵩高性を向上させることができ、捲縮繊維の線質量密度が1.6デニールを超える捲縮表面層を備える場合と比較して均一性を向上させることができる。
【0013】
さらに、本実施形態の不織布積層体は、耐毛羽性に優れる。この理由は、本実施形態の不織布積層体は非捲縮スパンボンド不織布からなる非捲縮表面層を備え、非捲縮表面層は捲縮表面層よりも毛羽立ちにくいため、と推測される。
【0014】
以下、本実施形態の不織布積層体が有する捲縮表面層、捲縮中間層及び非捲縮表面層の構成について説明する。
【0015】
(捲縮表面層)
本実施形態の不織布積層体は、捲縮繊維を含む捲縮スパンボンド不織布からなる捲縮表面層を有し、捲縮表面層における捲縮繊維の線質量密度が1.4デニール以上1.6デニール以下である。
【0016】
捲縮表面層は、1層であってもよく、2層以上であってもよい。捲縮表面層が2層以上である場合、それぞれの捲縮表面層において、捲縮繊維の線質量密度が1.4デニール以上1.6デニール以下を満たせばよい。
【0017】
捲縮表面層における捲縮繊維の線質量密度は、不織布積層体の嵩高性及び均一性の観点から、1.5デニール以上1.6デニール以下であることが好ましい。
【0018】
捲縮表面層における捲縮繊維は、熱可塑性樹脂を含むことが好ましい。熱可塑性樹脂としては、捲縮繊維を含む捲縮スパンボンド不織布を製造可能であれば特に限定されず、例えば、オレフィン系重合体、ポリエステル系重合体、ポリアミド系重合体、これら重合体を複数種含む熱可塑性樹脂組成物等が挙げられる。本開示において、熱可塑性樹脂は、熱可塑性樹脂組成物を含む概念である。
【0019】
熱可塑性樹脂のメルトフローレート(MFR)(ASTM D-1238、230℃、荷重2,160g)は、100g/10分以下であることが好ましく、20g/10分~100g/10分であることがより好ましく、30g/10分~80g/10分であることがさらに好ましい。熱可塑性樹脂のMFRが100g/10分以下であることにより、捲縮繊維の機械的強度に優れる傾向にある。熱可塑性樹脂のMFRが20g/10分以上であることにより、延伸紡糸時の繊維破断を抑制できる傾向にある。
【0020】
オレフィン系重合体は、オレフィン由来の構造単位を主体として含む重合体であり、ポリエステル系重合体は、ポリエステルを構造単位として含む重合体であり、ポリアミド系重合体は、ポリアミドを構造単位として含む重合体である。
本開示において、主体として含むとは、対象となる物質が、全体に対して最も多く含まれることを表す。例えば、全体に占める割合として、対象となる物質の含有割合が50質量%以上であることを示す。
【0021】
熱可塑性樹脂は、オレフィン系重合体を含むことが好ましい。オレフィン系重合体としては、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、3-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ペンテン、3-エチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ヘキセン等のα-オレフィンの単独重合体又は共重合体が挙げられる。
【0022】
α-オレフィンの単独重合体又は共重合体としては、より具体的には、高圧法低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、高密度ポリエチレン、エチレン由来の構造単位を主体として含むエチレン・α-オレフィン共重合体等のエチレン系重合体、ポリプロピレン(プロピレン単独重合体)、プロピレン由来の構造単位を主体として含むプロピレン・α-オレフィン共重合体等のプロピレン系重合体、1-ブテン単独重合体、1-ブテン由来の構造単位を主体として含む1-ブテン・α-オレフィン共重合体等の1-ブテン系重合体、4-メチル-1-ペンテン単独重合体、4-メチル-1-ペンテン由来の構造単位を主体として含む4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体等の4-メチル-1-ペンテン系重合体などが挙げられる。中でも、α-オレフィンの単独重合体又は共重合体としては、紡糸性、機械的強度、耐薬品性等に優れる観点から、プロピレン系重合体が好ましい。
【0023】
プロピレン系重合体としては、プロピレン単独重合体、及びプロピレン・α-オレフィン共重合体のいずれでもよく、両方を含んでいてもよい。プロピレン・α-オレフィン共重合体の共重合に用いるα-オレフィンとしては、炭素数2以上のα-オレフィン(プロピレンを除く)が好ましく、炭素数2又は4~8のα-オレフィンがより好ましい。α-オレフィンとしては、具体的には、エチレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、3-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ペンテン、3-エチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ヘキセン等が好ましい。
【0024】
プロピレン・α-オレフィン共重合体としては、より具体的には、プロピレン・エチレン共重合体、プロピレン・エチレン・1-ブテン共重合体等が挙げられる。
【0025】
プロピレン・α-オレフィン共重合体では、α-オレフィンに由来する構造単位の含有率は、全体の1モル%~10モル%であることが好ましく、全体の1モル%~5モル%であることがより好ましい。
【0026】
プロピレン系重合体の融点(Tm)は、120℃以上であることが好ましく、125℃~165℃であることがより好ましい。
本開示において、融点は以下のようにして測定される。
(1)プロピレン系重合体をパーキンエルマー社製示差走査熱量分析(DSC)の測定用パンにセットし、30℃から200℃まで、10℃/分で昇温し、200℃で10分間保持した後、30℃まで10℃/分で降温する。
(2)次に、再び、30℃から200℃まで10℃/分で昇温し、その間に観測されたピークから融点を求める。
【0027】
プロピレン単独重合体の融点(Tm)は、155℃以上であることが好ましく、157℃~165℃であることがより好ましい。
また、プロピレン・α-オレフィン共重合体の融点(Tm)は、120℃~155℃であることが好ましく、125℃~150℃であることがより好ましい。
【0028】
プロピレン系重合体のメルトフローレート(MFR)(ASTM D-1238、230℃、荷重2,160g)は、20g/10分~100g/10分であることが好ましく、30g/10分~80g/10分であることがより好ましい。プロピレン系重合体のMFRが100g/10分以下であることにより、捲縮繊維の機械的強度に優れる傾向にある。プロピレン系重合体のMFRが20g/10分以上であることにより、延伸紡糸時の繊維破断を抑制できる傾向にある。
【0029】
捲縮表面層における捲縮繊維は、1種の熱可塑性樹脂を含む繊維であってもよく、2種以上の熱可塑性樹脂を含む複合繊維であってもよい。複合繊維は、例えば、サイドバイサイド型、同芯芯鞘型又は偏芯芯鞘型であってもよい。偏芯芯鞘型の複合繊維は、芯部が表面に露出している露出型でもよく、芯部が表面に露出していない非露出型でもよい。
【0030】
複合繊維が芯鞘型である場合、鞘部と芯部との質量比(芯部/鞘部)としては、例えば、95/5~5/95であることが好ましく、90/10~10/90であることがより好ましく、60/40~10/90であることがさらに好ましい。
【0031】
捲縮表面層における捲縮繊維は、プロピレン系重合体を含む複合繊維であることが好ましく、プロピレン系重合体を含む捲縮複合繊維であることがより好ましく、プロピレン系重合体を含む偏芯芯鞘型の捲縮複合繊維であることがさらに好ましい。
【0032】
捲縮表面層における捲縮繊維がプロピレン系重合体を含む複合繊維である場合、2種以上のプロピレン系重合体を含む複合繊維であることが好ましい。複合繊維が芯鞘型である場合、芯部及び鞘部がそれぞれ1種以上のプロピレン系重合体を含むことが好ましい。芯部に含まれるプロピレン系重合体は、融点(Tm)が155℃以上、好ましくは157℃~165℃であるプロピレン単独重合体(A)であることが好ましい。鞘部に含まれるプロピレン系重合体は、融点(Tm)が120℃~155℃、好ましくは125℃~150℃であるプロピレン・α-オレフィン共重合体(B)であることが好ましい。
【0033】
プロピレン単独重合体(A)、プロピレン・α-オレフィン共重合体(B)等のプロピレン系重合体は、通常、所謂チタン含有固体状遷移金属成分と有機金属成分とを組み合わせたチーグラー・ナッタ型触媒、あるいはシクロペンタジエニル骨格を少なくとも1個有する周期律表第4族~第6族の遷移金属化合物及び助触媒成分からなるメタロセン触媒を用いて、スラリー重合、気相重合、バルク重合により、プロピレンを単独重合、あるいはプロピレンと少量のα-オレフィンとを共重合させることにより得られる。
【0034】
プロピレン単独重合体(A)として市販の該当品を用いてもよく、例えば、株式会社プライムポリマー製のプロピレン系重合体である商品名 プライムポリプロ S119を用いてもよい。
【0035】
プロピレン・α-オレフィン共重合体(B)として市販の該当品を用いてもよく、例えば、株式会社プライムポリマー製のプロピレン系重合体である商品名 プライムポリプロ S229Rを用いてもよい。
【0036】
捲縮表面層の目付は、特に限定されず、例えば、2g/m以上10g/m以下であることが好ましく、3g/m以上8g/m以下であることがより好ましい。
本開示における目付の測定方法は後述の実施例に記載の通りである。
【0037】
(捲縮中間層)
本実施形態の不織布積層体は、捲縮繊維を含む捲縮スパンボンド不織布からなる捲縮中間層を有し、捲縮中間層における捲縮繊維の線質量密度が1.4デニール未満である。
【0038】
捲縮中間層は、1層であってもよく、2層以上であってもよい。捲縮中間層が2層以上である場合、それぞれの捲縮中間層において、捲縮繊維の線質量密度が1.4デニール未満を満たせばよい。
【0039】
捲縮中間層における捲縮繊維の線質量密度は、不織布積層体の嵩高性及び均一性の観点から、1.3デニール以下であることが好ましく、0.7デニール以上1.3デニール以下であることがより好ましく、1.0デニール以上1.3デニール以下であることがさらに好ましい。
【0040】
捲縮中間層における捲縮繊維は、熱可塑性樹脂を含むことが好ましい。熱可塑性樹脂としては、前述の捲縮表面層における捲縮繊維に含まれ得る熱可塑性樹脂が挙げられる。
【0041】
捲縮中間層における捲縮繊維は、1種の熱可塑性樹脂を含む繊維であってもよく、2種以上の熱可塑性樹脂を含む複合繊維であってもよい。捲縮中間層における捲縮繊維が複合繊維である場合、好ましい形態としては、前述の捲縮表面層と同様である。
【0042】
捲縮中間層の目付は、特に限定されず、例えば、2g/m以上10g/m以下であることが好ましく、3g/m以上8g/m以下であることがより好ましい。
【0043】
本実施形態の不織布積層体では、捲縮表面層における捲縮繊維の線質量密度が1.4デニール以上1.6デニール以下であり、かつ捲縮中間層における捲縮繊維の線質量密度が1.4デニール未満である。これにより、捲縮中間層の捲縮度は捲縮表面層の捲縮度よりも大きい傾向を示す。
本開示にて、捲縮度とは繊維の捲縮の度合いを意味し、捲縮度が大きいとは繊維の捲縮の度合いが大きいことを意味する。捲縮度の大小は、例えば、不織布積層体の断面を走査型電子顕微鏡等を用いて観察し、不織布積層体の表面及び内部における繊維のクリンプ形状を比較することで確認することができる。
【0044】
(非捲縮表面層)
本実施形態の不織布積層体は、非捲縮繊維を含む非捲縮スパンボンド不織布からなる非捲縮表面層を有する。非捲縮表面層は、1層であってもよく、2層以上であってもよい。
【0045】
非捲縮表面層における非捲縮繊維の線質量密度は、1.3デニール以下であることが好ましく、1.0デニール以上1.3デニール以下であることがより好ましい。非捲縮繊維の線質量密度が1.3デニール以下であることにより、非捲縮繊維の機械的強度及び均一性に優れる傾向にある。非捲縮繊維の線質量密度が1.0デニール以上であることにより、非捲縮繊維の機械的強度に優れる傾向にある。
【0046】
非捲縮表面層における非捲縮繊維は、熱可塑性樹脂を含むことが好ましい。熱可塑性樹脂としては、前述の捲縮表面層における捲縮繊維に含まれ得る熱可塑性樹脂が挙げられる。
【0047】
非捲縮表面層における非捲縮繊維に含まれ得る熱可塑性樹脂としては、前述のオレフィン系重合体であることが好ましく、プロピレン系重合体であることがより好ましい。
【0048】
非捲縮表面層の目付は、特に限定されず、例えば、2g/m以上10g/m以下であることが好ましく、3g/m以上8g/m以下であることがより好ましい。
【0049】
捲縮表面層及び捲縮中間層における捲縮繊維、並びに非捲縮表面層における非捲縮繊維は、不織布の製造に用いられる添加剤を含んでいてもよい。添加剤としては、例えば、親水化剤、酸化防止剤、耐候安定剤、耐熱安定剤、耐光安定剤、帯電防止剤、防曇剤、滑剤、染料、顔料、天然油、合成油、ワックス等の種々公知の添加剤が挙げられる。
【0050】
本実施形態の不織布積層体は、捲縮表面層と捲縮中間層との間、捲縮中間層と非捲縮表面層との間、捲縮表面層の外側、非捲縮表面層の外側等に、他の不織布層を備えていてもよく、好ましくは、捲縮表面層と捲縮中間層との間、捲縮中間層と非捲縮表面層との間又は捲縮表面層の外側に、他の不織布層を備えていてもよい。他の不織布層を構成する不織布としては、スパンボンド不織布、メルトブロー不織布、湿式不織布、乾式不織布、乾式パルプ不織布、フラッシュ紡糸不織布、開繊不織布等、種々公知の不織布が挙げられる。他の不織布層を構成する不織布がスパンボンド不織布である場合、このスパンボンド不織布は、捲縮表面層における捲縮スパンボンド不織布、捲縮中間層における捲縮スパンボンド不織布、及び非捲縮表面層における非捲縮スパンボンド不織布以外であれば特に限定されない。
【0051】
他の不織布層を構成する不織布は、メルトブロー不織布であってもよい。例えば、本実施形態の不織布積層体は、捲縮表面層と捲縮中間層との間、捲縮中間層と非捲縮表面層との間又は捲縮表面層の外側に、メルトブロー不織布からなるメルトブロー不織布層を備えていてもよい。
【0052】
本実施形態の不織布積層体には、前述の他の不織布層、編布、織布、フィルム等の他の層が積層されていてもよい。不織布積層体と他の層を積層する場合は、熱エンボス加工、超音波融着等の熱融着法、ニードルパンチ、ウォータージェット等の機械的交絡法、ホットメルト接着剤、ウレタン系接着剤等の接着剤による方法、押出しラミネート等の種々公知の方法を採り得る。
【0053】
本実施形態の不織布積層体では、機械的強度、柔軟性、嵩高性及び均一性のバランスの観点から、不織布積層体の全体目付が10g/m以上30g/m以下であることが好ましく、15g/m以上20g/m以下であることがより好ましい。不織布積層体の全体目付が30g/m以下であることにより、不織布積層体の柔軟性に優れる傾向にある。不織布積層体の全体目付が10g/m以上であることにより、不織布積層体の機械的強度、嵩高性及び均一性に優れる傾向にある。さらに、不織布積層体の低目付化を図った場合に嵩高性、均一性等が損なわれる傾向にある一方、本実施形態の不織布積層体では、嵩高性及び均一性を向上可能であるため、不織布積層体の低目付化と、優れた嵩高性及び均一性との両立が容易である。
【0054】
本実施形態の不織布積層体では、機械的強度、柔軟性、嵩高性及び均一性のバランスの観点から、捲縮表面層及び捲縮中間層の目付の合計値が、不織布積層体の全体目付の50%以上であることが好ましく、60%以上75%以下であることがより好ましい。前述の合計値の比率が75%以下であることにより、不織布積層体の機械的強度及び均一性に優れる傾向にある。前述の合計値の比率が50%以上であることにより、不織布積層体の柔軟性及び嵩高性に優れる傾向にある。
【0055】
本実施形態の不織布積層体では、柔軟性、嵩高性及び均一性のバランスの観点から、捲縮表面層、捲縮中間層及び非捲縮表面層の目付の合計値が、不織布積層体の全体目付の60%以上100%以下であることが好ましく、80%以上100%以下であることがより好ましい。
【0056】
本実施形態の不織布積層体では、各層において、目付が最大となる層における目付(最大目付)と、目付が最小となる層における目付(最小目付)との比率(最大目付/最小目付)は、1.0以上1.3以下であることが好ましく、1.1以上1.3以下であることがより好ましい。
【0057】
本実施形態の不織布積層体では、捲縮表面層の目付と、捲縮中間層の目付との比率(捲縮表面層の目付/捲縮中間層の目付)は、柔軟性、嵩高性及び均一性のバランスの観点から、0.5以上1.5以下であることが好ましく、0.7以上1.3以下であることがより好ましい。
【0058】
本開示の不織布積層体の製造方法は、特に限定されない。
例えば、本開示の不織布積層体は、以下の製造方法1又は製造方法2によって製造することができる。
【0059】
(不織布積層体の製造方法1)
不織布積層体の製造方法1は、熱可塑性樹脂をスパンボンド法により溶融紡糸し、溶融紡糸により得られた捲縮繊維を移動捕集面に堆積させて捲縮スパンボンド不織布からなる捲縮表面層を作製する工程と、
熱可塑性樹脂をスパンボンド法により溶融紡糸し、溶融紡糸により得られた捲縮繊維を移動捕集面上の捲縮表面層に堆積させて捲縮スパンボンド不織布からなる捲縮中間層を作製する工程と、
熱可塑性樹脂をスパンボンド法により溶融紡糸し、溶融紡糸により得られた非捲縮繊維を捲縮中間層に積層させて非捲縮スパンボンド不織布からなる非捲縮表面層を作製する工程と、を含む。
【0060】
捲縮表面層を作製する工程及び捲縮中間層を作製する工程では、少なくとも二つの押出機を用いて熱可塑性樹脂をそれぞれ個別に溶融し、複合紡糸ノズルから2種以上の熱可塑性樹脂を吐出して複合溶融紡糸を行うことで捲縮繊維を得てもよい。
【0061】
捲縮表面層を作製する工程及び捲縮中間層を作製する工程では、スパンボンド法により溶融紡糸する際のエアー量、紡糸ノズル孔径、紡糸ノズルからの吐出量等を適宜調節することで、捲縮表面層における捲縮繊維の線質量密度及び捲縮中間層における捲縮繊維の線質量密度を調節することができる。
【0062】
(不織布積層体の製造方法2)
不織布積層体の製造方法2は、熱可塑性樹脂をスパンボンド法により溶融紡糸し、溶融紡糸により得られた非捲縮繊維を移動捕集面に堆積させて非捲縮スパンボンド不織布からなる非捲縮表面層を作製する工程と、
熱可塑性樹脂をスパンボンド法により溶融紡糸し、溶融紡糸により得られた捲縮繊維を移動捕集面上の非捲縮表面層に堆積させて捲縮スパンボンド不織布からなる捲縮中間層を作製する工程と、
熱可塑性樹脂をスパンボンド法により溶融紡糸し、溶融紡糸により得られた捲縮繊維を捲縮中間層に積層させて捲縮スパンボンド不織布からなる捲縮表面層を作製する工程と、を含む。
不織布積層体の製造方法2は、非捲縮表面層及び捲縮表面層を作製する順番を変更した以外は、不織布積層体の製造方法1と同じである。
【0063】
<第2実施形態>
本開示の第2実施形態に係る不織布積層体は、捲縮繊維を含む捲縮スパンボンド不織布からなる捲縮層と、非捲縮繊維を含む非捲縮スパンボンド不織布からなる非捲縮表面層と、を有し、以下の(1)~(3)を満たす。
(1)KES法で測定した圧縮特性試験における圧力0.5gf/cmにおける厚みTOと、KES法で測定した圧力50gf/cmにおける厚みTMとの差(TO-TM)が0.30mmよりも大きい。
(2)JIS L 1913:2010のカンチレバー法(ISO法)に準拠した、MD方向のカンチレバーの値が40mm未満である。
(3)以下の式(a)で表される地合指数(V)が310未満である。
V=10σ/E・・・(a)
(式(a)中、Vは地合指数を表し、σは不織布積層体の濃淡ムラの標準偏差を表し、Eは2-logTを表す。Tは不織布積層体の光透過率(%)を表す。
【0064】
本実施形態の不織布積層体は、嵩高さ、柔軟性及び均一性に優れ、非捲縮繊維を含む非捲縮スパンボンド不織布からなる非捲縮表面層を備えることで耐毛羽性にも優れる。
【0065】
本実施形態の不織布積層体は、KES法で測定した圧縮特性試験における圧力0.5gf/cmにおける厚みTOと、KES法で測定した圧力50gf/cmにおける厚みTMとの差(TO-TM)が0.30mmよりも大きく、0.31mm以上であることが好ましい。TO-TMの値が大きいほど、不織布積層体は嵩高性に優れる。
TO-TMの上限は特に限定されず、0.40mm以下であってもよい。
【0066】
KES(Kawabata Evaluation System)法とは、不織布の風合いを計測し、客観的に評価するための方法の一つである。TO及びTMの具体的な測定方法は、以下の実施例に記載された通りである。
【0067】
本実施形態の不織布積層体は、JIS L 1913:2010のカンチレバー法(ISO法)に準拠した、MD方向のカンチレバーの値が40mm未満であり、38mm以下であることが好ましい。MD方向のカンチレバーの値が小さいほど、不織布積層体は柔軟性に優れる。MD方向のカンチレバーの値は、以下の実施例に記載された通りである。
MD方向のカンチレバーの値の下限は特に限定されず、30mm以上であってもよい。
【0068】
本実施形態の不織布積層体は、式(a)で表される地合指数(V)が310未満であり、305以下であることが好ましい。地合指数(V)の値が小さいほど、不織布積層体の地合がよく、均一性に優れている。地合指数(V)の値は、以下の実施例に記載された通りである。
地合指数(V)の値の下限は特に限定されず、280以上であってもよい。
【0069】
本実施形態の不織布積層体では、捲縮繊維を含む捲縮スパンボンド不織布からなる捲縮層は、1層であってもよく、2層以上であってもよい。また、非捲縮繊維を含む非捲縮スパンボンド不織布からなる非捲縮表面層は、1層であってもよく、2層以上であってもよい。本実施形態の捲縮層の好ましい態様は、第1実施形態の捲縮表面層又は捲縮中間層と同様であり、本実施形態の非捲縮表面層の好ましい態様は、第1実施形態の非捲縮表面層と同様であるため、詳細な説明を省略する。
【0070】
本実施形態の不織布積層体では、例えば、捲縮層又は非捲縮表面層を作製するときに、スパンボンド法により溶融紡糸する際のエアー量、紡糸ノズル孔径、紡糸ノズルからの吐出量等を適宜調節することで、前述の(1)~(3)を満たす不織布積層体を得ることができる。また、捲縮層又は非捲縮表面層を作製するときに、紡糸ノズル孔径及びノズル孔密度の少なくとも一方の異なる紡糸ノズルを複数用いたり、径の異なる孔を複数種備えた紡糸ノズルを用いたり、複数の押出機から押し出された樹脂を別々の孔から同時に吐出できる紡糸ノズルを用いて、孔ごとに樹脂の吐出量を変更したりしてもよい。
【0071】
本実施形態の捲縮表面層、捲縮中間層及び非捲縮表面層の好ましい態様は、第1実施形態の捲縮表面層、捲縮中間層及び非捲縮表面層の好ましい形態と同様であるため、詳細な説明を省略する。
【0072】
本実施形態の不織布積層体では、例えば、捲縮表面層又は捲縮中間層を作製するときに、スパンボンド法により溶融紡糸する際のエアー量、紡糸ノズル孔径、紡糸ノズルからの吐出量等を適宜調節することで、前述の捲縮度の関係を有する不織布積層体を得ることができる。
【0073】
<被覆シート>
本開示の被覆シートは、前述の本開示の不織布積層体を含む。本開示の被覆シートは、本開示の不織布積層体を含んでいれば特に制限されるものではない。本開示の被覆シートは、対象となる物体の少なくとも一部を被覆するためのシートを指す。被覆シートは、特に限定されず、各種用途が挙げられる。被覆シートが適用される用途としては、具体的には、吸収性物品(使い捨ておむつ、使い捨てパンツ、生理用品、尿取りパッド、ペット用シートなどのトップシート、セカンドシート、吸収体(パルプ、高分子吸収体粒子等)用の包装材(コアラップ等)など);化粧用材料(フェイスマスク等);衛生材料(湿布材、シーツ、タオル、産業用マスク、衛生用マスク、ヘアキャップ、ガーゼ、使い捨て下着等);包装用材料(脱酸素剤、カイロ、温シップ、食品包装材等)などが挙げられる。さらに、衣服カバーなどの生活資材全般に適用可能である。自動車内装材や各種バッキング材としても好適に使用できる。液体フィルター、エアフィルターなどのフィルター資材としても広く適用可能である。
【0074】
吸収性物品、化粧用材料、衛生材料、包装用材料、生活資材、自動車内装材、バッキング材、フィルター資材等は、それぞれ独立に、前述の本開示の不織布積層体又は前述の本開示の被覆シートを含んでいれば特に制限されるものではない。
【実施例
【0075】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はその主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0076】
実施例及び比較例にて捲縮繊維を含む捲縮スパンボンド不織布を製造する際に用いた熱可塑性樹脂を以下に示す。
<捲縮スパンボンド不織布を製造する際に用いた熱可塑性樹脂>
-芯成分-
MFR(ASTM D-1238、230℃、荷重2,160g):60g/10分、融点162℃、のプロピレン単独重合体(hPP)
-鞘成分-
MFR(ASTM D-1238、230℃、荷重2,160g):60g/10分、融点142℃、エチレン含量4質量%のプロピレン・エチレンランダム共重合体(rPP)
【0077】
実施例及び比較例にて非捲縮繊維を含む非捲縮スパンボンド不織布を製造する際に用いた熱可塑性樹脂を以下に示す。
<非捲縮スパンボンド不織布を製造する際に用いた熱可塑性樹脂>
MFR(ASTM D-1238、230℃、荷重2,160g):60g/10分、融点162℃、密度0.92g/cmのプロピレン単独重合体(hPP)と、MFR(ASTM D-1238、230℃、荷重2,160g):60g/10分、融点142℃、エチレン含量4質量%、密度0.92g/cmのプロピレン・エチレンランダム共重合体(rPP)とを、30:70の質量比で混合した重合体混合物
【0078】
[実施例1]
(不織布積層体の製造)
<非捲縮表面層の作製>
前述の重合体混合物を用い、スパンボンド法により溶融紡糸を行った。溶融紡糸により得られた非捲縮繊維を移動捕集面に堆積させ、非捲縮スパンボンド不織布からなる非捲縮表面層を作製した。
<捲縮中間層の作製>
前述の芯成分であるプロピレン単独重合体(hPP)と前述の鞘成分であるプロピレン・エチレンランダム共重合体(rPP)と、を用い、スパンボンド法により複合溶融紡糸を行った。芯成分/鞘成分の質量比は、30/70とした。移動捕集面に堆積させた非捲縮表面層上に複合溶融紡糸により得られた偏芯芯鞘型の捲縮繊維を堆積させ、捲縮スパンボンド不織布からなる捲縮中間層を作製した。
<捲縮表面層の作製>
前述の芯成分であるプロピレン単独重合体(hPP)と前述の鞘成分であるプロピレン・エチレンランダム共重合体(rPP)と、を用い、スパンボンド法により複合溶融紡糸を行った。芯成分/鞘成分の質量比は、30/70とした。移動捕集面に堆積させた捲縮中間層上に複合溶融紡糸により得られた偏芯芯鞘型の捲縮繊維を堆積させ、捲縮スパンボンド不織布からなる捲縮表面層を作製した。
以上の3層を面積率10%の熱エンボスロールに通布し繊維を溶融、交絡させることにより、非捲縮表面層、捲縮中間層及び捲縮表面層の順に積層された不織布積層体を製造した。
【0079】
作製した非捲縮表面層の目付、作製した捲縮中間層の目付及び捲縮表面層の目付並びに捲縮中間層における捲縮繊維の線質量密度及び捲縮表面層における捲縮繊維の線質量密度は、表1に示す通りである。
【0080】
[実施例2]
実施例1において捲縮表面層における捲縮繊維の線質量密度及び捲縮中間層における捲縮繊維の線質量密度を、各層の繊維を紡糸する際のエアー量及び紡糸ノズルからの吐出量を変更することにより、表1に示す値にした以外は実施例1と同様にして、非捲縮表面層、捲縮中間層及び捲縮表面層の順に積層された不織布積層体を得た。
【0081】
[比較例1~4]
実施例1において、捲縮表面層における捲縮繊維の線質量密度及び捲縮表面層の目付、並びに、捲縮中間層における捲縮繊維の線質量密度及び捲縮中間層の目付を、各層の繊維を紡糸する際のエアー量及び紡糸ノズルからの吐出量を変更することにより、表1に示す値にした以外は実施例1と同様にして、非捲縮表面層、捲縮中間層及び捲縮表面層の順に積層された不織布積層体を得た。
【0082】
[比較例5]
<捲縮表面層の作製>
前述の芯成分であるプロピレン単独重合体(hPP)と前述の鞘成分であるプロピレン・エチレンランダム共重合体(rPP)と、を用い、スパンボンド法により複合溶融紡糸を行った。芯成分/鞘成分の質量比は、30/70とした。移動捕集面に複合溶融紡糸により得られた偏芯芯鞘型の捲縮繊維を堆積させ、捲縮スパンボンド不織布からなる捲縮表面層を作製した。
<非捲縮中間層の作製>
前述の重合体混合物を用い、スパンボンド法により溶融紡糸を行った。移動捕集面に堆積させた捲縮表面層上に溶融紡糸により得られた非捲縮繊維を堆積させ、非捲縮スパンボンド不織布からなる非捲縮中間層を作製した。
<捲縮表面層の作製>
前述の芯成分であるプロピレン単独重合体(hPP)と前述の鞘成分であるプロピレン・エチレンランダム共重合体(rPP)と、を用い、スパンボンド法により複合溶融紡糸を行った。芯成分/鞘成分の質量比は、30/70とした。非捲縮中間層上に複合溶融紡糸により得られた偏芯芯鞘型の捲縮繊維を堆積させ、捲縮スパンボンド不織布からなる捲縮表面層を作製した。
以上の3層を面積率10%の熱エンボスロールに通布し繊維を溶融、交絡させることにより、捲縮表面層、非捲縮中間層及び捲縮表面層の順に積層された不織布積層体を製造した。
【0083】
[比較例6]
<捲縮表面層の作製>
前述の芯成分であるプロピレン単独重合体(hPP)と前述の鞘成分であるプロピレン・エチレンランダム共重合体(rPP)と、を用い、スパンボンド法により複合溶融紡糸を行った。芯成分/鞘成分の質量比は、30/70とした。移動捕集面に複合溶融紡糸により得られた偏芯芯鞘型の捲縮繊維を堆積させ、捲縮スパンボンド不織布からなる捲縮表面層を作製した。
<捲縮中間層の作製>
前述の芯成分であるプロピレン単独重合体(hPP)と前述の鞘成分であるプロピレン・エチレンランダム共重合体(rPP)と、を用い、スパンボンド法により複合溶融紡糸を行った。芯成分/鞘成分の質量比は、30/70とした。移動捕集面に堆積させた捲縮表面層上に複合溶融紡糸により得られた偏芯芯鞘型の捲縮繊維を堆積させ、捲縮スパンボンド不織布からなる捲縮中間層を作製した。
<捲縮表面層の作製>
前述の芯成分であるプロピレン単独重合体(hPP)と前述の鞘成分であるプロピレン・エチレンランダム共重合体(rPP)と、を用い、スパンボンド法により複合溶融紡糸を行った。芯成分/鞘成分の質量比は、30/70とした。捲縮中間層上に複合溶融紡糸により得られた偏芯芯鞘型の捲縮繊維を堆積させ、捲縮スパンボンド不織布からなる捲縮表面層を作製した。
以上の3層を面積率10%の熱エンボスロールに通布し繊維を溶融、交絡させることにより、捲縮表面層、捲縮中間層及び捲縮表面層の順に積層された不織布積層体を製造した。
【0084】
[比較例7]
比較例1と同様にして作製した非捲縮表面層上に、比較例5と同様にして作製した非捲縮中間層を作製し、次いで、比較例6と同様にして捲縮表面層を非捲縮中間層上に作製した。
以上により、非捲縮表面層、非捲縮中間層及び捲縮表面層の順に積層された不織布積層体を製造した。
【0085】
[比較例8]
比較例7において、捲縮表面層を比較例7にて作製した非捲縮表面層に変更した以外は比較例7と同様にして非捲縮表面層、非捲縮中間層及び非捲縮表面層の順に積層された不織布積層体を得た。
【0086】
(1)目付〔g/m
各層に対応する不織布から、100mm(流れ方向:MD)×100mm(流れ方向と直交する方向:CD)の試験片を10点採取した。試験片の採取場所は、CD方向にわたって10箇所とした。次いで、23℃、相対湿度50%RH環境下で、採取した各試験片に対して上皿電子天秤(研精工業社製)を用いて、それぞれ質量〔g〕を測定した。各試験片の質量の平均値を求めた。求めた平均値から1m当たりの質量〔g〕に換算し、小数点第2位を四捨五入して各不織布の目付〔g/m〕とした。
また、各層の目付の合計値を全体目付とした。
【0087】
(2)線質量密度
線質量密度は、9000m当たり1gである繊維の太さを意味し、繊維9000m当たりの質量が1gのとき、この繊維の線質量密度は1デニールである。各層に含まれる繊維の線質量密度は、以下のようにして算出した。
不織布積層体の断面を走査型電子顕微鏡にて観察し、捲縮表面層、捲縮中間層、非捲縮中間層及び非捲縮表面層それぞれについて、各層に含まれる繊維20本の繊維外径の平均値〔μm〕を有効数字3桁で求めた。この繊維外径の平均値と樹脂密度とを用いて、各層に含まれる繊維の線質量密度〔デニール〕、すなわち〔g/9000m〕を有効数字2桁で算出した。
【0088】
(3)層間目付比
不織布積層体を構成する各層の中で、目付が最も小さい層の目付に対する目付が最も大きい層の目付の比率を層間目付比とした。なお、各層の目付の値が等しい場合、層間目付比は1.00となる。
【0089】
(4)生産性
不織布積層体を作製する際の移動捕集面から熱エンボスロールへの移動、及び巻取の各工程における安定性から生産性を評価した。評価基準は以下の通りである。
-評価基準-
評価A:不織布積層体の巾変動及び断裂が生じず、安定的に生産できる。
評価B:不織布積層体の巾変動及び断裂の少なくとも一方が生じ、安定的に生産できない。
【0090】
(5)TO(圧力0.5gf/cmにおける厚み)-TM(圧力50gf/cmにおける厚み)〔mm〕(嵩高性の評価)
得られた不織布積層体から、150mm(MD)×150mm(CD)の試験片を2点採取した。なお、採取場所はCD方向にわたって2箇所とした。次いで、試験片をカトーテック株式会社製のKES-FB3-Aにより、測定条件として、20℃、相対湿度50%RH環境下で、圧縮子(圧縮面積2cmの円形平面をもつ鋼製加圧板)を用い、圧縮変形速度0.020mm/sec、最大圧力50gf/cmにて圧縮試験を行い、TO〔mm〕及びTM〔mm〕を測定した。
各試験片のTO〔mm〕及びTM〔mm〕の平均値を求め、小数点第3位を四捨五入して各不織布サンプルのTO〔mm〕及びTM〔mm〕とした。各不織布サンプルのTO-TM〔mm〕を計算した。
嵩高性の評価基準は以下の通りである。
評価A:TO-TMが0.30mmよりも大きい。
評価B:TO-TMが0.30mm以下である。
【0091】
(6)カンチレバー(柔軟性の評価)
得られた不織布積層体について、JIS L 1913:2010のカンチレバー法(ISO法)に準拠して、MD方向のカンチレバー(mm)を求めた。
柔軟性の評価基準は、以下の通りである。
評価A:カンチレバーの値が40mm未満である。
評価B:カンチレバーの値が40mm以上である。
【0092】
(7)地合指数(均一性の評価)
得られた不織布積層体を、野村商事株式会社のファーメーションテスター FMT-MIIIを用いて、n=5の地合指数の平均値を地合指数とした。地合指数が小さいほど、地合が良好であり、均一性に優れる。
地合指数(V)はV=10σ/Eで表される。σは不織布積層体の濃淡ムラの標準偏差を表し、Eは2-logTを表す。Tは、不織布積層体の光透過率(%)を表す。光透過率が100%に近い場合(地合不良)、E≒0となり、Vは無限大に大きな値を示す。反対に、透過率が0%に近づいて地合が良好になるほど、Eはより大きい値となり、Vはより小さい値となる。
均一性の評価基準は、以下の通りである。
評価A:地合指数の値が310未満である。
評価B:地合指数の値が310以上である。
【0093】
(8)使用面耐毛羽性
表1に示す使用面の耐毛羽性について、以下のようにして評価した。
得られた不織布積層体から150mm(MD)×150mm(CD)のCD試験片を各2点採取した。なお、採取場所は任意の2箇所とした。次いで、採取した各試験片を学振型摩擦堅牢度試験機(大栄科学精器製作所社製、新型NR-100)を用い、JIS L 0849の摩擦堅牢度試験法に準拠して摩擦試験を行った。なお、摩擦子側には布テープ(寺岡製作所社製、No.1532)を貼付し、荷重300gをかけた状態で、使用面をMD方向に50回往復させて擦り、各試験片における被摩擦面の毛羽立ち状態を以下の基準で評価した。
-評価基準-
評価A:毛羽立ちがない、又は、一カ所に小さな毛玉(直径:0.1mm以上0.8mm未満)ができはじめる程度に毛羽立っている。
評価B:はっきりとした毛玉(直径:0.8mm以上)ができはじめ、又は小さな毛玉(直径:0.8mm未満)が複数見られる。
【0094】
各実施例及び各比較例について、層構成、結果評価等を表1に示す。なお、表1中の「-」は、不織布積層体中に該当する層が存在しないことを意味する。
【0095】
【表1】
【0096】
表1に示されるように、実施例1及び2では、不織布積層体の生産性に優れ、得られた不織布積層体は嵩高性、柔軟性、均一性及び使用面耐毛羽性に優れていた。
一方、比較例1~5、7及び8では、不織布積層体の生産性に優れていたものの、得らえた不織布積層体は嵩高性、柔軟性、均一性及び使用面耐毛羽性の内、少なくとも1つが充分でなかった。
また、比較例6では、不織布積層体の生産性が良好でなく、得られた不織布積層体は均一性及び使用面耐毛羽性が充分でなかった。
【0097】
2020年3月31日に出願された日本国特許出願2020-065275号の開示は、その全体が参照により本明細書に取り込まれる。
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