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特許7461463大腸菌に基づく組換え株ならびにその構築方法および使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-26
(45)【発行日】2024-04-03
(54)【発明の名称】大腸菌に基づく組換え株ならびにその構築方法および使用
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/61 20060101AFI20240327BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20240327BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20240327BHJP
   C12N 15/31 20060101ALI20240327BHJP
   C12P 13/08 20060101ALN20240327BHJP
【FI】
C12N15/61
C12N15/63 Z ZNA
C12N1/21
C12N15/31
C12P13/08 C
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2022513936
(86)(22)【出願日】2020-08-27
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-07
(86)【国際出願番号】 CN2020111840
(87)【国際公開番号】W WO2021037165
(87)【国際公開日】2021-03-04
【審査請求日】2022-02-28
(31)【優先権主張番号】201910927600.5
(32)【優先日】2019-09-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】201910804035.3
(32)【優先日】2019-08-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】522077878
【氏名又は名称】内蒙古伊品生物科技有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】孟剛
(72)【発明者】
【氏名】魏愛英
(72)【発明者】
【氏名】賈慧萍
(72)【発明者】
【氏名】趙春光
(72)【発明者】
【氏名】周暁群
(72)【発明者】
【氏名】馬風勇
(72)【発明者】
【氏名】郭小▲ウェイ▼
(72)【発明者】
【氏名】田斌
(72)【発明者】
【氏名】蘇厚波
(72)【発明者】
【氏名】楊立鵬
【審査官】田ノ上 拓自
(56)【参考文献】
【文献】Research Disclosure, 2017年12月21日,Vol.645,p.114-115, 118, 123
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
C12N 1/21
C12N 15/31
C12P 13/08
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
SEQ ID NO:13に示すヌクレオチド配列の289番目の塩基がアデニン(A)からグアニン(G)へ突然変異して形成されたプロモーターヌクレオチド配列ii、を含むポリヌクレオチド。
【請求項2】
iiにおける前記突然変異後のヌクレオチド配列がSEQ ID NO:14に示すものである、
請求項1に記載のポリヌクレオチド。
【請求項3】
請求項1に記載のプロモーターヌクレオチド配列ii、および、rhtA遺伝子コードヌクレオチド配列を含む発現カセット。
【請求項4】
前記rhtA遺伝子コードヌクレオチド配列が、SEQ ID NO:15に示すヌクレオチド配列を含む、
請求項3に記載の発現カセット。
【請求項5】
請求項1に記載のポリヌクレオチドを含む組換えベクター。
【請求項6】
前記組換えベクターは、前記ポリヌクレオチドをプラスミドに導入することによって構築されたものである、請求項5に記載の組換えベクター。
【請求項7】
請求項1に記載のポリヌクレオチドを含む組換え株。
【請求項8】
(1)SEQ ID NO:13に示す野生型遺伝子のヌクレオチド配列を形質転換して、SEQ ID NO:14に示す突然変異された後のヌクレオチド配列を得るステップ、
(2)突然変異された後のヌクレオチド配列をプラスミドに接続して組換えベクターを構築するステップ、および、
(3)前記組換えベクターを宿主株に導入して組換え株を得るステップ
を含む、請求項7に記載の組換え株の構築方法。
【請求項9】
L-スレオニンの発酵調製における、請求項1に記載のポリヌクレオチド、請求項3に記載の発現カセット、請求項5に記載の組換えベクター、または、請求項7に記載の組換え株の使用。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本願出願は、2019年09月27日に中国国家知的財産局に提出された特許出願番号2019109276005の先願の優先権、2019年08月28日に中国国家知的財産局に提出された特許出願番号2019108040353の先願の優先権を主張し、前述した先願の全文は、参照により本出願に組み込まれている。
【0002】
〔技術分野〕
本発明は、遺伝子工学および微生物技術の分野に属し、具体的には、大腸菌に基づく組換え株ならびにその構築方法および使用に関する。
【0003】
〔背景技術〕
L-スレオニンは8種類の必須アミノ酸の1種類であり、かつヒトや動物が自分で合成することはできないアミノ酸である。L-スレオニンは、穀物の吸収を強化し、体内の代謝のバランスを調整し、体の成長と発達を促進することができ、飼料、医薬品および食品業界で広く使用されている。
【0004】
現在、L-スレオニンの生産は、主に化学合成法、タンパク質加水分解法、および、微生物発酵法があり、そのうち、微生物発酵法は生産コストが低く、生産強度が高く、環境汚染が少ないため、L-スレオニンの工業生産に最も広く採用されている方法になる。L-スレオニンの微生物発酵生産には、生産株として大腸菌、コリネバクテリウム属、セラチア属などの野生型誘導突然変異株などさまざまな細菌を使用することができる。具体的な例としては、アミノ酸アナログ耐性変異株や、メチオニン、スレオニン、イソロイシンなどのさまざまな栄養要求性変異株がある。しかし、伝統的な誘導突然変異育種では、ランダムな突然変異であるため、株の成長が遅くなり、多くの副産物を生成し、高収量の株を得ることが困難になる。したがって、代謝工学的手法を使用して組換え大腸菌を構築することは、L-スレオニンを生産する効果的なルールである。現在、大腸菌の遺伝子改変の主な手段として、発現プラスミドを介したアミノ酸合成経路および競合経路におけるキー酵素遺伝子の過剰発現または弱化(attenuation)発現の利用がある。しかしながら、L-スレオニンをより経済的に高収率で製造する方法の開発は、依然として望まれている。
【0005】
外来遺伝子発現の宿主として、大腸菌は、遺伝的背景が明確で、技術的な操作や培養条件が簡単で、大規模な発酵が経済的であり、遺伝子工学の専門家からの大きな注目を集めている。大腸菌のゲノムDNAは擬核中の1つの環状分子であり、同時に複数の環状プラスミドDNAを有することができる。大腸菌細胞の擬核には、長さが約4700000塩基対である1つのDNA分子があり、DNA分子には約4400の遺伝子が分布しており、各遺伝子の平均の長さは約1000塩基対である。分子生物学で一般的に使用される大腸菌株は、いくつかの例外を除いて、DNA組換え試験で使用されるほとんどの株は、大腸菌株K12とその誘導体である。
【0006】
〔発明の概要〕
本発明は、大腸菌株K12またはその誘導体に基づく組換え株、その組換え構築方法および発酵によるアミノ酸の生産における使用を提供する。
【0007】
本発明者らは、E.coli K12株およびその派生株(例えば、MG1655、W3110など)の野生型deoB遺伝子(ORF配列は、Genbankアクセッション番号CP032667.1における配列3902352-3903575に示す。)、野生型rhtA遺伝子プロモーター配列PrhtA(Genbankアクセッション番号AP009048.1における配列850520-850871に示す。)に焦点を当てて、前記遺伝子を部位特異的変異した後に得られた突然変異遺伝子および前記変異遺伝子を含む組換え株が、L-スレオニンの生産に使用でき、変異していない野生型株と比べて、得られた株はL-スレオニンの生産量を大幅に増加させることができ、かつ株の安定性が優れ、L-スレオニン生産株として、生産コストが削減され、生産効率が改善されることを見出した。
【0008】
上記の発明に基づいて、本発明は、以下の2つの部分の構成を提供する。
【0009】
第一部分として、SEQ ID NO:1に示す野生型deoB遺伝子コード配列の1049番目の塩基の突然変異によって形成された配列を含むヌクレオチド配列を提供する。
【0010】
本発明によれば、前記突然変異とは、前記部位の塩基/ヌクレオチドが変化することを意味し、前記突然変異の方法は、誘発、PCR部位特異的突然変異法、および/または相同組換えなどの方法から選ばれた少なくとも1種であってもよい。
【0011】
本発明によれば、前記突然変異は、SEQ ID NO:1における1049番目の塩基のグアニン(G)からアデニン(A)への突然変異であり、具体的には、前記突然変異された後のヌクレオチド配列はSEQ ID NO:2に示す。
【0012】
本発明は、さらに前述したヌクレオチド配列でコードされる組換えタンパク質を提供する。
【0013】
本発明の組換えタンパク質によれば、SEQ ID NO:4に示すアミノ酸配列を含む。
【0014】
本発明は、さらに前記ヌクレオチド配列を含む組換えベクターを提供する。
【0015】
本発明の組換えベクターによれば、前記ヌクレオチド配列をプラスミドに導入することによって構築してなり、1つの実施形態として、前記プラスミドはpKOVプラスミドである。具体的に、前記ヌクレオチド配列および前記プラスミドを、エンドヌクレアーゼで消化して相補的な粘着末端を形成し、両者を接続して組換えベクターを構築してもよい。
【0016】
本発明は、さらに,コード配列に点突然変異を有するdeoB遺伝子コードヌクレオチド配列を含む組換え株を提供する。
【0017】
本発明の組換え株によれば、前記の突然変異後のヌクレオチド配列を含む。
【0018】
本発明の1つの実施形態によれば、SEQ ID NO:2に示すヌクレオチド配列を含む。
【0019】
本発明の1つの実施形態によれば、SEQ ID NO:4に示すアミノ酸配列を含む。
【0020】
本発明の組換え株によれば,前述した組換えベクターを宿主株に導入することによって組換えして形成され、前記宿主株は、特に限定されておらず、当業界に周知されたdeoB遺伝子が保持されているL-スレオニン産生株、例えば、大腸菌から選ばれたものであってもよい。本発明の1つの実施形態によれば、前記宿主株はE.coli K12(W3110)株、または、E.coli CGMCC 7.232株である。
【0021】
本発明の組換え株によれば,pKOVプラスミドをベクターとする。
【0022】
本発明の組換え株によれば,さらに他の改変をさらに含むことができる。
【0023】
本発明は、さらにSEQ ID NO:1に示す野生型deoB遺伝子のオープンリーディングフレーム領域のヌクレオチド配列をその1049番目の塩基を突然変異させるように改変し、突然変異されたdeoBコード遺伝子を含むL-スレオニン産生組換え株を得ることを含む組換え株の構築方法を提供する。
【0024】
本発明の構築方法によれば、前記改変は、誘発、PCR部位特異的突然変異法、および/または相同組換えなどの方法のうちの少なくとも1種を含む。
【0025】
本発明の構築方法によれば,前記突然変異とは、SEQ ID NO:1における1049番目の塩基のグアニン(G)からアデニン(A)への突然変異を意味し、具体的に、前記突然変異され後のヌクレオチド配列は、SEQ ID NO:2に示す。
【0026】
例示的に、前記構築方法は、
(1)SEQ ID NO:1に示す野生型deoB遺伝子のオープンリーディングフレーム領域のヌクレオチド配列を、その1049番目の塩基を突然変異させように改変して、突然変異されたdeoB遺伝子のオープンリーディングフレーム領域のヌクレオチド配列を得るステップ、
(2)前記突然変異されたヌクレオチド配列とプラスミドを接続して、組換えベクターを構築するステップ、および、
(3)前記組換えベクターを宿主株に導入して、前記点突然変異を含むL-スレオニン産生組換え株を得るステップ、
を含む。
【0027】
本発明の構築方法によれば,前記ステップ(1)は、点突然変異されたdeoB遺伝子コード領域の構築、すなわち、deoB遺伝子コード配列に従って、deoB遺伝子コード領域の断片を増幅するための2対のプライマーを合成し、PCR部位特異的突然変異法により、野生型deoB遺伝子コード領域(SEQ ID NO:1)に点突然変異を導入し、点突然変異されたdeoB遺伝子コード領域のヌクレオチド配列(SEQ ID NO:2)を取り得、deoB(G1049A)と表記されることを含む。
【0028】
本発明の1つの実施形態において、前記ステップ(1)において、前記プライマーは、下記に示す。
P1:5’CGGGATCCATGGACGGCAACGCTGAAG 3’ (下線が引かれた部分は制限エンドヌクレアーゼ切断部位BamH Iである。)(SEQ ID NO:5)
P2:5’GATCGTAACCGTGGTCAG 3’(SEQ ID NO:6)
P3:5’CTGACCACGGTTACGATC 3’(SEQ ID NO:7)
P4:5’AAGGAAAAAAGCGGCCGCGCTCGTGAGTGCGGATGT 3’ (下線が引かれた部分は制限エンドヌクレアーゼ切断部位Not Iである。)(SEQ ID NO:8)。
【0029】
本発明の1つの実施形態において、前記ステップ(1)では、下記を含む。すなわち、E.coli K12をテンプレートとし、プライマーとしてそれぞれP1/P2、および、P3/P4を使用してPCR増幅を行って、deoB遺伝子コード領域を含む分離されているサイズがそれぞれ836bp、890bpである2つのDNA断片(deoB UpとdeoB Down)を得ることを含む。上記の2つのDNA断片をアガロースゲル電気泳動で分離・精製した後、上記の2つのDNA断片をテンプレートとして使用し、P1とP4をプライマーとしてオーバーラップPCR(Overlap PCR)で増幅してdeoB(G1049A)-Up-Downを得る。
【0030】
本発明の1つの実施形態において、前記deoB(G1049A)-Up-Downヌクレオチド配列は、サイズが1726bpである。
【0031】
本発明の1つの実施形態において、前記PCR増幅では、94°Cで30sの変性、52°Cで30sのアニーリングおよび72°Cで30sの伸長(30サイクル)を行う。
【0032】
本発明の1つの実施形態において、前記オーバーラップPCR増幅では、94°Cで30sの変性、52°Cで30sのアニーリングおよび72°Cで60sの伸長(30サイクル)を行う。
【0033】
本発明の構築方法によれば,前記ステップ(2)は、組換えベクターの構築を含み、すなわち、前記deoB(G1049A)-Up-Down断片を、アガロースゲル電気泳動で分離・精製した後、これとpKOVプラスミドをそれぞれBamH I/Not Iで二重消化し、消化された後のdeoB(G1049A)-Up-Down断片とpKOVプラスミドをアガロースゲル電気泳動で分離・精製し、かつ接続して、組換えベクターpKOV-deoB(G1049A)を得ることを含む。
【0034】
本発明の構築方法によれば,前記ステップ(3)は、組換え株の構築を含み、すなわち、組換えベクターpKOV-deoB(G1049A)を宿主株に形質転換して組換え株を得ることを含む。
【0035】
本発明の1つの実施形態において、前記ステップ(3)における形質転換は、エレクトロポレーション法で行い、例示的に、前記ステップ(3)において、組換えベクターを前記宿主株に導入する。
【0036】
本発明の構築方法によれば,さらに組換え株をスクリーニングするステップを含み、例示的に、例えば、クロラムフェニコール培地でスクリーニングすることがある。
【0037】
本発明は、さらに前述した構築方法で得られた組換え株を提供する。
【0038】
本発明は、さらにL-スレオニンの製造またはL-スレオニンの発酵量の向上における前述した組換え株の使用を提供する。
【0039】
本発明に係るL-スレオニンの製造における前記組換え株の使用によれば、前記組換え株を用いて発酵してL-スレオニンを製造することを含む。
【0040】
第二部分として、本発明は、SEQ ID NO:13に示すクレオチド配列の上流の-67番目の塩基の突然変異によって形成されたヌクレオチド配列を含むプロモーターを提供する。
【0041】
本発明によれば、前記突然変異とは、前記位点の塩基が変化することを指し、前記突然変異の方法は、誘発、PCR部位特異的突然変異法、および/または相同組換えなどの方法から選ばれた少なくとも1種であってもよい。
【0042】
本発明によれば、前記突然変異は、SEQ ID NO:13における-67番目の塩基のアデニン(A)からグアニン(G)への突然変異であり、具体的に、前記点突然変異した後のプロモーターのヌクレオチド配列はSEQ ID NO:14に示す。
【0043】
本発明は、前記プロモーターおよびrhtA遺伝子のコードヌクレオチド配列を含む発現カセットを提供する。本発明の1つの実施形態によれば,前記プロモーターは、rhtA遺伝子のコードヌクレオチド配列の5’上流に位置し、発現カセットの一部を構成する。
【0044】
本発明の発現カセットによれば、前記rhtA遺伝子のコードヌクレオチド配列は、SEQ ID NO:15に示すヌクレオチド配列を含み、前記ヌクレオチド配列のコードは、SEQ ID NO:16に示すアミノ酸配列を含む。
【0045】
本発明は、前記プロモーターを含む組換えベクターを提供する。
【0046】
本発明の組換えベクターによれば、前記プロモーターを含むヌクレオチド配列をプラスミドに導入することによって構築してなり、1つの実施形態として、前記プラスミドはpKOVプラスミドである。具体的に、前記プロモーターを含むヌクレオチド配列と前記プラスミドを、エンドヌクレアーゼで消化して相補的な粘着末端を形成し、両者を接続して組換えベクターを構築する。
【0047】
本発明は、さらに前記プロモーターを含む組換え株を提供する。
【0048】
本発明の組換え株によれば,SEQ ID NO:14に示すプロモーターヌクレオチド配列を含み、さらに前記組換え株は、前述した発現カセットを含む。
本発明の組換え株によれば、前述した組換えベクターを宿主株に導入して組換えして形成され、前記宿主株は、特に限定されておらず、当業界に周知されたrhtA遺伝子が保持されているL-スレオニン産生株から選ばれたものであってもよく、例えば、大腸菌から選ばれたものであってもよい。本発明の1つの実施形態によれば、前記宿主株はE.coli K12、または、その派生株E.coli K12(W3110)株、E.coli CGMCC 7.232株である。
【0049】
本発明の組換え株によれば、pKOVプラスミドをベクターとする。
【0050】
本発明の組換え株によれば、さらに他の改変を含んでもよく、含んでいなくでもよい。
【0051】
本発明は、さらに、下記のステップを含む組換え株の構築方法を提供する。
【0052】
例えばSEQ ID NO:13に示すプロモーター領域を、その-67番目の塩基を突然変異させるように改変して、点突然変異されたプロモーターを含む組換え株を得るステップ。
【0053】
本発明の構築方法によれば,前記改変は、誘発、PCR部位特異的突然変異法、及び/または相同組換えなどの方法から選ばれた少なくとも1種を含む。
【0054】
本発明の構築方法によれば,前記突然変異は、SEQ ID NO:13における-67番目の塩基のアデニン(A)からグアニン(G)への突然変異であり、具体的に、前記点突然変異を含むrhtA遺伝子プロモーターのヌクレオチド配列は、SEQ ID NO:14に示す。
【0055】
さらに、前記構築方法は、下記のステップを含む。
【0056】
(1)SEQ ID NO:13に示すrhtA遺伝子の野生型プロモーター領域を、その-67番目の塩基を突然変異させるように改変して、突然変異されたプロモーター領域ヌクレオチド配列を得るステップ、
(2)前記突然変異されたプロモーター領域ヌクレオチド配列をプラスミドに接続して組換えベクターを構築するステップ、および、
(3)前記組換えベクターを宿主株に導入して突然変異されたプロモーター領域を含む組換え株を得るステップ。
【0057】
本発明によれば、前記ステップ(1)において、前記塩基を突然変異させる方法は、誘発、PCR部位特異的突然変異法または相同組換えを含むが、好ましくはPCR部位特異的突然変異法である。
【0058】
本発明によれば、前記ステップ(1)は、
Genbankにおける野生型rhtA遺伝子プロモーター配列に従って、rhtA遺伝子プロモーター領域の断片を増幅するための2対のプライマーを合成し、対立遺伝子によって宿主株のバックグラウンドにあるrhtA遺伝子プロモーター領域に置き換える。
【0059】
本発明の1つの実施形態において、前記プライマーは、
P1:5’CGGGATCCTCGCTGGTGTCGTGTTTGTAGG 3’ (下線が引かれた部分は制限エンドヌクレアーゼ切断部位BamH Iである。) (SEQ ID NO:17)
P2:5’TATACCCAATGCTGGTCGAG 3’(SEQ ID NO:18)
P3:5’CGACCAGCATTGGGTATATC 3’(SEQ ID NO:19)
P4:5’AAGGAAAAAAGCGGCCGCCGAAAATTAACGCTGCAATCAAC 3’ (下線が引かれた部分は制限エンドヌクレアーゼ切断部位Not Iである。)(SEQ ID NO:20)である。
【0060】
本発明の1つの実施形態において、前記ステップ(1)では、E.coli K12をテンプレートとし、プライマーとしてそれぞれP1とP2、P3とP4を使用してPCR増幅を行ってサイズがそれぞれ690bpと640bpであるrhtA遺伝子プロモーター領域を含む分離されている2つのDNA断片、すなわち、PrhtA(A(-67)G)-UpおよびPrhtA(A(-67)G)-Down断片を取り得、前記2つのDNA断片をテンプレートとし、プライマーとしてP1とP4を用いて、オーバーラップPCRによる増幅(Overlap PCR)を行い、前記オーバーラップPCR増幅では、94℃で30sの変性、52℃で30sのアニーリングおよび72℃で60sの伸長(30サイクル)を行って、PrhtA(A(-67)G)-Up-Down断片を得ることを含む。
【0061】
本発明によれば、前記ステップ(2)では、PrhtA(A(-67)G)-Up-Down断片に対してアガロースゲル電気泳動および分離・精製を行い、前記断片をBamH I/Not Iで二重消化した後、EcoR I/Sph Iで二重消化した後のプラスミドに接続して、対立遺伝子で置換された組換えベクターを得ることを含む。
【0062】
本発明の1つの実施形態において、前記ステップ(3)の形質転換は、エレクトロポレーション法で行う。
【0063】
本発明は、さらに前述した構築方法で得られた組換え株を提供する。
【0064】
本発明は、L-スレオニン製造における前述した組換え株の使用を提供する。
【0065】
本発明に係るL-スレオニン製造における組換え株の使用によれば、前記組換え株を用いて発酵し、L-スレオニンを製造することを含む。
【0066】
〔発明を実施するための形態〕
以下、本発明の実施例の説明を通じて、本発明の上記および他の特徴および利点をより詳細に解釈および説明する。以下の実施例は、本発明の構成を例示的に説明することを意図しており、特許請求の範囲およびそれらの均等物によって定義される本発明の保護範囲を決して制限することを意図するものではないと理解されたい。
【0067】
特に明記しない限り、本明細書の材料および試薬はすべて市販の製品であるか、または先行技術に従って当業者によって調製することができる。
【0068】
実施例1
(1)deoB遺伝子コード領域の部位特異的突然変異(G1049A)に用いるプラスミドpKOV-deoB(G1049A)の構築(対応するコードされるタンパク質のアミノ酸配列SEQ ID NO:3における350番目のシステインをチロシン(C350Y)に置き換え、置換した後のアミノ酸配列はSEQ ID NO:4であった。)
ペントースリン酸ムターゼはdeoB遺伝子によってコードされ、E.coli K12 株およびその派生株(例えばMG1655など)において、野生型のdeoB遺伝子ORF配列は、Genbankアクセッション番号CP032667.1における配列3902352-3903575に示した。当該配列に基づいてdeoBを増幅するための2対のプライマーを設計および合成し、開始株のdeoB遺伝子コード領域配列(SEQ ID NO:1)の1049番目の塩基GをA(ヌクレオチド配列SEQ ID NO:2を取り得る)に突然変異させることに用いるベクターを構築した。プライマーは、以下のように設計した(中国上海invitrogen社より合成された)。
【0069】
P1:5’CGGGATCCATGGACGGCAACGCTGAAG 3’(下線が引かれた部分は制限エンドヌクレアーゼ切断部位BamH Iである。)(SEQ ID NO:5)
P2:5’GATCGTAACCGTGGTCAG 3’(SEQ ID NO:6)
P3:5’CTGACCACGGTTACGATC 3’(SEQ ID NO:7)
P4:5’AAGGAAAAAAGCGGCCGCGCTCGTGAGTGCGGATGT 3’(下線が引かれた部分は制限エンドヌクレアーゼ切断部位Not Iである。)(SEQ ID NO:8)
構築方法は、野生型株E.coli K12ゲノムをテンプレートとし、プライマーとしてそれぞれP1とP2、P3とP4を用いてPCR増幅を行って長さがそれぞれ836bp、890bpの点突然変異を含む2つのDNA断片(deoB(G1049A)-UpおよびdeoB(G1049A) -Down断片)を得た。PCRシステム:10× Ex Taq Buffer 5μL、dNTP Mixture(それぞれ2.5 mM) 4μL、MgCl(25 mM)4μL、プライマー(10pm)それぞれ2μL、Template 1μL、Ex Taq(5 U/μl)0.25μL、総体積50μL。前記PCR増幅では、94℃で5min予備変性し、そして、94℃で30sの変性、52℃で30sのアニーリングおよび72℃で90sの伸長(30サイクル)を行い、そして、72℃で10minの過伸長を行った。前記の2つのDNA断片をアガロースゲル電気泳動で分離・精製した後、精製された2つのDNA断片をテンプレートとし、P1とP4をプライマーとし、OverlapPCRで長さ約1726bpの断片(deoB(G1049A) -Up-Down断片)を増幅した。Overlap PCRシステム:10× Ex Taq Buffer 5μL、dNTP Mixture(それぞれ2.5 mM)4μL、MgCl(25 mM) 4μL、プライマー(10pm)それぞれ2μL、Template 1μL、Ex Taq (5 U/μl)0.25μL、総体積50μL。前記PCR増幅では、94℃で5min予備変性し、そして、94℃で30sの変性、52℃で30sのアニーリングおよび72℃で90sの伸長(30サイクル)を行い、そして、72℃で10minの過伸長を行った。前記deoB(G1049A)-Up-Down断片をアガロースゲル電気泳動で分離・精製し、それとpKOVプラスミド(Addgene社から購入)を、それぞれBamH I/Not Iで二重消化し、消化されたdeoB(G1049A)-Up-Down断片とpKOVプラスミドをアガロースゲル電気泳動で分離・精製し、かつ接続してベクターpKOV-deoB(G1049A)を得た。ベクターpKOV-deoB(G1049A)が、配列決定のために配列決定会社に送り,得られた配列決定結果は、SEQ ID NO:11に示した。正しい点突然変異(deoB(G1049A))を含むベクターpKOV-deoB(G1049A)を置いておく。
【0070】
(2)点突然変異遺伝子deoB(G1049A)を含む操作された株の構築
野生型大腸菌株E.coli K12 (W3110)と高生産性でL-スレオニンを生産する株E.coli CGMCC 7.232(中国微生物菌種保蔵管理委員会普通微生物センターに寄託されている)は、いずれも染色体上に野生型のdeoB遺伝子が保持されている。構築されたプラスミドpKOV-deoB(G1049A)をそれぞれE.coli K12(W3110)およびE.coli CGMCC 7.232に形質転換し、対立遺伝子の置き換えによって当該2つの株の染色体のdeoB遺伝子配列のSEQ ID NO:1に対する1049番目の塩基GをAに改変した。
【0071】
具体的なプロセスとして、プラスミドpKOV-deoB(G1049A)を、エレクトロポレーションによって宿主菌コンピテントセルに形質転換した後、SOC液体培地0.5mLを添加し、シェーカーで30°C、100 rpmで2h蘇生し、培養液100μLを取り、クロラムフェニコール含有量34mg/mLのLB固体培地に塗り、30°Cで18h培養し、成長したモノクローナルコロニーを選択し、それらをLB液体培地10mLに接種し、37°C、200 rpmで8h培養し、培養液100μLをクロラムフェニコール含有量34mg/mLのLB固体培地に塗り、42°Cで12h培養し、1~5個の単一コロニーを選択してLB液体培地1 mLに接種し、37°C、200rpmで4h培養し、培養液100μLを、10%スクロース含有LB固体培地に塗り、30°Cで24h培養し、モノクローナルを選択し、かつ対応したLB固体培地およびクロラムフェニコール含有量34mg/mLのLB固体培地に線を引き、対応したLB固形培地で増殖し、かつクロラムフェニコール含有量34mg/mLのLB固体培地で増殖しなかった菌株を選択し、PCR増幅を行って同定した。PCR増幅は、下記のプライマー(中国上海invitrogen社より合成された)を採用した。
【0072】
P5:5’ TGACGCCACCATCAAAGAGA 3’(SEQ ID NO:9)
P6:5’ GTCAACGCTCCGCCCAAAT 3’(SEQ ID NO:10)
前記PCR増幅産物に対してSSCP(一本鎖高次構造多型、Single-Strand Conformation Polymorphism)電気泳動を行い、プラスミドpKOV-deoB(G1049A)増幅断片を陽性対照とし、野生型大腸菌増幅断片を陰性対照とし、水をブランクコントロールとして使用した。SSCP電気泳動において、同じ長さで配列が異なる一本鎖オリゴヌクレオチド鎖は、氷浴で形成する空間構造が異なり、電気泳動中の移動度も異なる。したがって、断片の電気泳動位置が陰性対照断片の位置と一致せず、かつ陽性対照断片の位置と一致する株は、対立遺伝子置換が成功した株であった。対立遺伝子置換が成功した株をテンプレートとし、プライマーとしてP5とP6を用いて再び目的断片をPCRで増幅し、かつ目的断片をpMD19-Tベクターに接続して配列決定した。配列決定結果を比較すると、SEQ ID NO:12に示したように、deoB遺伝子コード領域配列の1049番目の塩基のGがAに変更した組換え体は、成功に改変された株であった。E.coli K12(W3110)から由来した組換え体(recombinant)を、YPThr09と名付け、E.coli CGMCC 7.232から由来した組換え体を、YPThr10と名付けた。
【0073】
(3)スレオニン発酵試験
E.coli K12(W3110)株、E.coli CGMCC 7.232株および突然変異株YPThr09、YPThr10を、それぞれ表1に記載した液体培地 25mLに接種し、37℃、200rpmで12h培養した。そして、各株の培養物1mLをそれぞれ表1に記載の液体培地25mLに接種し、37℃、200rpmで36h発酵培養した。そして、HPLCでL-スレオニンの含有量を測定し、1株あたり3回の並行試験を行い、平均値を算出し、結果を表2に示した。
【0074】
【表1】
【0075】
【表2】
【0076】
表2の結果から示したように、L-スレオニン生産が高収率または低収率である元の株(original strain)にも関わらず、deoB遺伝子のアミノ酸配列の350番目のシステインからチロシンへの置換は、L-スレオニン収率の向上に寄与した。
【0077】
実施例2
(1)点突然変異を含むrhtA遺伝子プロモーターの形質転換ベクターpKOV-PrhtA(A(-67)G)の構築
スレオニンおよびホモセリン排出タンパク質(RHTA酵素)は、rhtA遺伝子によってコードされ、E.coli K12株およびその派生株(例えばW3110など)において、野生型rhtA遺伝子プロモーター配列PrhtAを、Genbankアクセッション番号AP009048.1における配列850520-850871に示した。当該配列に基づいてプロモーターPrhtAを増幅するための2対のプライマーを設計および合成し、開始株のPrhtAプロモーターの塩基配列(SEQ ID NO:13)上流-67番目の塩基AをG(SEQ ID NO:14)に変異させることに用いるベクターを構築した。プライマーは、以下のように設計した(中国上海invitrogen社より合成された)。
【0078】
P1:5’CGGGATCCTCGCTGGTGTCGTGTTTGTAGG 3’ (下線が引かれた部分は、制限エンドヌクレアーゼ切断部位BamH Iである。) (SEQ ID NO:17)
P2:5’TATACCCAATGCTGGTCGAG 3’(SEQ ID NO:18)
P3:5’CGACCAGCATTGGGTATATC 3’(SEQ ID NO:19)
P4:5’AAGGAAAAAAGCGGCCGCCGAAAATTAACGCTGCAATCAAC 3’(下線が引かれた部分は制限エンドヌクレアーゼ切断部位Not Iである。)(SEQ ID NO:20)。
【0079】
構築方法として、野生型株E.coli K12ゲノムをテンプレートとし、それぞれP1とP2、P3とP4をプライマーとして用いてPCR増幅を行って、長さがそれぞれ690bp、640bpである点突然変異を含む2つのDNA断片(PrhtA(A(-67)G)-UpおよびPrhtA(A(-67)G)-Down断片)を得た。PCRシステム:10×Ex Taq Buffer 5μL、dNTP Mixture(それぞれ2.5mM)4μL、Mg2+(25mM)4μL、プライマー(10pM)それぞれ2μL、Ex Taq(5U/μL)0.25μL、総体積50μL。前記PCR増幅では、94℃で5min予備変性し、そして94℃で30sの変性、52℃で30sのアニーリングおよび72℃で30sの伸長(30サイクル)を行い、そして72℃で10minの過伸長を行った。
【0080】
前記の2つのDNA断片を、アガロースゲル電気泳動で分離・精製した後、再び精製された2つのDNA断片をテンプレートとし、P1とP4をプライマーとして用いて、Overlap PCRで長さ約1310bpの断片(PrhtA(A(-67)G)-Up-Down断片)を増幅した。
【0081】
PCRシステム:10×Ex Taq Buffer 5μL、dNTP Mixture(それぞれ2.5mM)4μL、Mg2+(25mM)4μL、プライマー(10pM)それぞれ2μL、Ex Taq(5U/μL)0.25μL、総体積50μL。前記Overlap PCRは、94℃で30sの変性、52℃で30sのアニーリングおよび72℃で60sの伸長(30サイクル)を行った。
【0082】
前記PrhtA(A(-67)G)-Up-Down断片をアガロースゲル電気泳動で分離・精製した後、それとpKOVプラスミド(Addgene社から購入)を、それぞれBamH I/Not Iで二重消化し、消化した後のPrhtA(A(-67)G)-Up-Down断片およびpKOVプラスミドをアガロースゲル電気泳動で分離・精製し、かつ接続して、ベクターpKOV-PrhtA(A(-67)G)を得た。ベクターpKOV-PrhtA(A(-67)G)を、配列決定のために配列決定会社に送り、正しい点突然変異(PrhtA(A(-67)G))を含むベクターpKOV-PrhtA(A(-67)G)を置いておく。
【0083】
(2)点突然変異部位PrhtA(A(-67)G)を含む操作された株の構築
野生型大腸菌株E.coli K12(W3110)と高生産性でL-スレオニンを生産する株E.coli CGMCC 7.232(中国微生物菌種保蔵管理委員会普通微生物センターに寄託されている)は、いずれも染色体上に野生型のPrhtAプロモーターが保持されている。構築したプラスミドpKOV-PrhtA(A(-67)G)をそれぞれE.coli K12(W3110)およびE.coli CGMCC 7.232に形質転換し、対立遺伝子の置き換えによって,2つの株の染色体におけるPrhtAプロモーターの塩基配列の上流-67番目の塩基AをGに変更した。具体的なプロセスとして、プラスミドpKOV-PrhtA(A(-67)G)をエレクトロポレーションにより宿主菌コンピテントセルに形質転換し、SOC液体培地0.5mLを添加し、シェーカーで30°C、100 rpmで2h蘇生し、培養液100μLを取り、クロラムフェニコール含有量34 μg/mLのLB固体培地に塗り、30°Cで18h培養し、成長したモノクローナルコロニーを選択し、それらをLB液体培地10mLに接種し、37°C、200 rpmで8h培養し、培養液100μLをクロラムフェニコール含有量34 μg/mLのLB固体培地に塗り、42°Cで12h培養し、1~5個の単一コロニーを選択してLB液体培地1 mLに接種し、37°C、200 rpmで4h培養し、培養液100μLを10%スクロースを含むLB固体培地に塗り、30°Cで24h培養し、モノクローナルを選択し、かつ対応したLB固体培地およびクロラムフェニコール含有量34μg/mLのLB固体培地に線を引き、対応したLB固形培地で増殖し、かつクロラムフェニコール含有量が34μg/mLのLB固体培地で増殖しなかった株を選択し、PCR増幅を行って同定した。PCR増幅は、下記のプライマー(中国上海invitrogen社より合成された)を採用した。
【0084】
P5: 5’ ATACACCGCTATCCATCT 3’(SEQ ID NO:21)
P6: 5’ AACCAGGCATCCTTTCTC 3’(SEQ ID NO:22)
上述PCRシステム:10×Ex Taq Buffer 5μL、dNTP Mixture(それぞれ2.5mM)4μL、Mg2+(25mM)4μL、プライマー(10pM)それぞれ2μL、Ex Taq(5U/μL)0.25μL、総体積50μL。前記PCR増幅では、94℃で5min予備変性し、そして、94℃で30sの変性、52℃で30sのアニーリングおよび72℃で30sの伸長(30サイクル)を行行い、そして72℃で10minの過伸長を行った。PCR増幅産物に対して、SSCP(一本鎖高次構造多型、Single-Strand Conformation Polymorphism)電気泳動を行い、プラスミドpKOV-PrhtA(A(-67)G)増幅断片を陽性対照とし、野生型大腸菌増幅断片を陰性対照とし、水をブランクコントロールとして使用した。SSCP電気泳動では、同じ長さで配列が異なる一本鎖オリゴヌクレオチド鎖は、氷浴で形成する空間構造が異なり、電気泳動中の移動度も異なる。したがって、断片の電気泳動位置が陰性対照断片の位置と一致せず、かつ陽性対照断片の位置と一致した株は、対立遺伝子置換が成功した株であった。対立遺伝子置換が成功した株をテンプレートとし、プライマーとしてP5とP6を用いて再び目的断片をPCRで増幅し、かつ目的断片をpMD19-Tベクターに接続して配列決定した。配列決定結果を比較したところ、PrhtAプロモーターの塩基配列上流-67番目の塩基AがGに変更された組換え体は、成功に改変された株であった。E.coli K12(W3110)から由来した組換え体を、YPThr01と名付け、E.coli CGMCC 7.232から由来した組換え体を、YPThr02と名付けた。
【0085】
(3)スレオニン発酵試験
E.coli K12(W3110)株、E.coli CGMCC 7.232株および突然変異株YPThr01、YPThr02を、それぞれ表1に記載した液体培地 25mLに接種し、37℃、200rpmで12h培養した。そして、各株の培養物1mLを、それぞれ表1に記載の液体培地25mLに接種し、37℃、200rpmで36h発酵培養した。そして、HPLCでL-スレオニンの含有量を測定し、1株あたり3回の並行試験を行い、平均値を算出し、結果を表2に示した。
【0086】
【表3】
【0087】
【表4】
【0088】
表2の結果に示したように、L-スレオニン生産が高収率または低収率である元の株にも関わらず、rhtA遺伝子のプロモーター配列PrhtAのアミノ酸配列の-67番目の塩基AからGへの突然変異は、L-スレオニン収率の向上に寄与した。
【0089】
以上、本発明の具体的な実施形態について説明したが、本発明は、上記の実施形態に限定されるものではない。本発明の要旨および原則の範囲内でのいかなる修正、同等の置換、改善なども、本発明の請求の範囲内に属する。
【配列表】
0007461463000001.app