(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-26
(45)【発行日】2024-04-03
(54)【発明の名称】美白機能を有する米ペプチド及びその調製方法
(51)【国際特許分類】
C07K 1/12 20060101AFI20240327BHJP
C07K 1/02 20060101ALI20240327BHJP
C07K 1/14 20060101ALI20240327BHJP
C07K 1/34 20060101ALI20240327BHJP
C07K 5/062 20060101ALI20240327BHJP
C07K 14/415 20060101ALN20240327BHJP
【FI】
C07K1/12
C07K1/02
C07K1/14
C07K1/34
C07K5/062
C07K14/415
(21)【出願番号】P 2022525163
(86)(22)【出願日】2020-02-27
(86)【国際出願番号】 CN2020076899
(87)【国際公開番号】W WO2021082310
(87)【国際公開日】2021-05-06
【審査請求日】2022-04-28
(31)【優先権主張番号】201911040377.9
(32)【優先日】2019-10-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】521155645
【氏名又は名称】チャイナ ナショナル リサーチ インスティテュート オブ フード アンド ファーメンテーション インダストリーズ カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】CHINA NATIONAL RESEARCH INSTITUTE OF FOOD & FERMENTATION INDUSTRIES CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】Bldg. 6, No. 24, Jiuxianqiao Middle Road, Chaoyang District, Beijing 100015 China
(74)【代理人】
【識別番号】100106297
【氏名又は名称】伊藤 克博
(72)【発明者】
【氏名】サイ、 ムイ
(72)【発明者】
【氏名】グ、 ルイゼン
(72)【発明者】
【氏名】チェン、 リアン
(72)【発明者】
【氏名】ル、 ル
(72)【発明者】
【氏名】チャン、 ハイシン
(72)【発明者】
【氏名】ウェイ、 イン
(72)【発明者】
【氏名】ワン、 ユチェン
(72)【発明者】
【氏名】ワン、 ユキン
(72)【発明者】
【氏名】リ、 グオミン
(72)【発明者】
【氏名】マ、 ヨンキン
(72)【発明者】
【氏名】リウ、 ウェニン
(72)【発明者】
【氏名】キン、 シュウユアン
【審査官】小金井 悟
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-040111(JP,A)
【文献】特表2013-521236(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第109575106(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第109880874(CN,A)
【文献】特開平05-032533(JP,A)
【文献】特開平06-345797(JP,A)
【文献】特開平05-170637(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 1/00-19/00
Google/Google Scholar
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
米ペプチドの調製方法であって、
米タンパク原料に対して蒸気爆発処理を行った後に、水を加えて混合液を製造するステップと、
前記混合液のpHを酸性に調整した後にペプシンを加えて第一酵素加水分解を行い、1.5-3h後に、第一酵素加水分解液を得るステップと、
前記第一酵素加水分解液のpHを弱酸又は中性に調整した後に、パパインを加えて第二酵素加水分解を行い、1-2h後に、第二酵素加水分解液を得るステップと、
前記第二酵素加水分解液へアミノペプチダーゼを加えて第三酵素加水分解を行い、0.5-1h後に、酵素を不活性化させ、第三酵素加水分解液を得るステップと、
前記第三酵素加水分解液に対して順次にろ過および樹脂精製処理を行い、前記米ペプチドを得るステップと、を含
み、
前記米ペプチドの組成には少なくともペプチドフラグメントGS、GLおよびGFが含まれ、
前記米ペプチドの質量に基づいて、前記ペプチドフラグメントGSの含有量≧200.00mg/100gで、ペプチドフラグメントGLの含有量≧200.00mg/100gで、ペプチドフラグメントGFの含有量≧100.00mg/100gであり、
前記米タンパク原料は、米が粉砕、精製、乾燥等の工程を経て形成される粉末物質であり、米から抽出されたタンパク質である米タンパクを含有し、米タンパクに、アルブミンが総量の2-5%を占め、グロブリンが総量の2-10%を占め、グリアジンが総量の1-5%を占め、グルテンが総量の80%以上を占めることを特徴とする米ペプチドの調製方法。
【請求項2】
前記蒸気爆発処理は、前記米タンパク原料が0.5-1.5Mpaの蒸気圧で30-120s保たれた後に、前記米タンパク原料が3.0-8.5ms内に圧力を放出し、米蒸気爆発粒子を得ることを含むことを特徴とする請求項
1に記載の米ペプチドの調製方法。
【請求項3】
水と前記米タンパク原料との質量比が(5-20):1であるように、前記米蒸気爆発粒子へ水を加え、前記混合液を得ることを特徴とする請求項
2に記載の米ペプチドの調製方法。
【請求項4】
前記米タンパク原料におけるタンパク含有量に基づいて、前記ペプシンの投与量が600-1500U/100gで、前記パパインの投与量が100000-200000U/100gで、前記アミノペプチダーゼの投与量が50-150LAPU/100gであることを特徴とする請求項
1に記載の米ペプチドの調製方法。
【請求項5】
前記第三酵素加水分解液を多段階ろ過で処理するステップは、
孔径が50-200nmのろ過膜を採用して前記第三酵素加水分解液に対して一次ろ過を行い、一次ろ液を収集するステップと、
分子量カットオフが2000-5000uのナノろ過膜を採用して前記一次ろ液に対して二次ろ過を行い、二次ろ液を得るステップと、を含むことを特徴とする請求項
1に記載の米ペプチドの調製方法。
【請求項6】
前記樹脂精製処理は、前記二次ろ液に対して順次に陽イオン交換樹脂精製処理及び陰イオン交換樹脂精製処理を行うことを含むことを特徴とする請求項
5に記載の米ペプチドの調製方法。
【請求項7】
抗酸化製品及び美白製品の製造における、請求項1-
6のいずれか1項に記載の
米ペプチドの調製方法によって得られた米ペプチドの使用。
【請求項8】
請求項1-6のいずれか1項に記載の米ペプチドの調製方法によって得られた米ペプチド。
【請求項9】
前記米ペプチド内には、分子量が1000uより小さいペプチドの質量含有量≧90%であることを特徴とする請求項8に記載の米ペプチド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、美白機能を有する米ペプチド及びその調製方法や応用に関し、米深加工技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
米は栄養が非常に豊富であり、中国のほとんどの地域の人々の主要食品である。米は主にスタ-チやタンパク質によって構成され、含有量がそれぞれ約80%と8%である。米内のタンパク質の生物学的価値が大豆に相当し、リジン、スレオニン等の含有量が非常に豊富であるため、通常に、米を加工処理してその中のタンパク質を抽出する。
【0003】
米タンパクとは、米から抽出されたタンパク質が粉砕、精製、乾燥等の工程を経て形成される粉末物質であり、優れた栄養品質を有し、穀物タンパク質の中で高品質植物性タンパクとして認められている。米タンパクに、アルブミンが総量の2-5%を占め、グロブリンが総量の2-10%を占め、グリアジンが総量の1-5%を占め、グルテンが総量の80%以上を占める。米タンパクは、トウモロコシタンパク質、小麦タンパク質に比べて、優れた栄養価値及びヒトによる高吸収利用率等の特徴を有するほか、低アレルギー性、色素干渉なし、柔らかな味及び刺激なし等の利点も有する。
【0004】
現段階に、米のタンパクの利用率をさらに向上させることができるために、米タンパク含有の原料、例えば米タンパク粉末を原料として酵素加水分解を行うことが多く、製造されたポリペプチド生成物は、米ペプチドとも呼ばれ、米ペプチドの各種類の機能効果はタンパク質高分子が切断されて形成されるいくつかの短いペプチドから由来し、その中に生物有機体の生命活動に有益な又は生理学的作用を有する、異なる小さいペプチドが含まれていると思われる共通認識がある。既存の研究報道に記載したように、米ペプチド内のいくつかの短いペプチドは一定のヒト代謝や生理学的調整機能を有し、腸内直接に吸収され、これにより米ペプチドは米タンパクに比べてより容易で迅速に吸収されるようになるため、米タンパクが酵素加水分解を経て得られた米ペプチドは米深加工の新たな研究方向である。
【0005】
現在、米ペプチドに対する研究や開発応用は、多くがヒトにより容易に吸収される栄養を提供し、身体健康状態を維持することや向上させることを方向としており、米タンパクに対する酵素加水分解工程探索も米タンパクによる従来の機能効果に関連する結果により多く注目しており、酵素加水分解による生成物は吸収促進のみを果たさないペプチドフラグメントが存在するかどうか、および他の機能を有するペプチドフラグメントを得ることによって米ペプチド応用範囲を拡大できるかどうかについて、研究や報道はいまだにそれほど多くないので、米原料深加工の研究進展も影響されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、美白機能を有する米ペプチド提供し、該米ペプチドは、その中に含有する特定質量含有量の機能ペプチドフラグメントであるグリシルセリン(Gly-Ser、GS)、グリシルロイシン(Gly-Leu、GL)およびグリシルフェニルアラニン(Gly-Phe、GF)によって、フリーラジカル消去、メラニン合成阻害等の面で優れた機能効果を表現することができる。
【0007】
本発明はさらに、上記米ペプチドの調製方法を提供し、生成物が特定質量含有量のグリシルセリン(Gly-Ser、GS)、グリシルロイシン(Gly-Leu、GL)およびグリシルフェニルアラニン(Gly-Phe、GF)等の機能性ペプチドフラグメントを含有するように、米タンパクの酵素加水分解および分離精製プロセスを制御する。
【0008】
本発明はさらに、抗酸化製品や美白製品における上記米ペプチドの応用を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、米ペプチドを提供し、前記米ペプチド組成にはペプチドフラグメントグリシルセリンGS、グリシルロイシンGLおよびグリシルフェニルアラニンGFが少なくとも含まれる。
【0010】
具体的に、本発明に係る米ペプチドには、米ペプチドの総質量(乾燥ベース)に基づいて、GSの質量含有量≧200.00mg/100gで、GLの質量含有量≧200.00mg/100gで、GFの質量含有量≧100.00mg/100gである。
【0011】
このほかにも、上記米ペプチドはまた、平均分子量が小さくて吸収されやすい特徴があり、具体的に、米ペプチドには、分子量が1000uより小さいペプチドの質量含有量≧90%である。
【0012】
さらに、上記米ペプチドは、米タンパク原料、例えば米タンパク粉末に対して、順次に蒸気爆発処理、酵素加水分解処理および分離精製処理を行うことによって取得され、ここで、酵素加水分解処理は、40-60℃で、順次にペプシン、パパインおよびアミノペプチダーゼを利用して3段階の酵素加水分解を行う処理である。
【0013】
具体な実施過程で、米タンパク原料が蒸気爆発処理された生成物は水と混ぜて混合液を得て、そして順次にペプシン、パパインおよびアミノペプチダーゼを使用して混合液に対して3段階の酵素加水分解を行い、具体的に、まず、ペプシンを利用して第一酵素加水分解を行い、第一酵素加水分解液を得て、次に、パパインを利用して第一酵素加水分解液に対して第二酵素加水分解を行い、第二酵素加水分解液を得て、最後に、第二酵素加水分解液へアミノペプチダーゼを加えて第三酵素加水分解を行い、酵素を不活性化させた後に、第三酵素加水分解液を得る。ここで、三回の酵素加水分解のpH環境や温度はそれぞれの酵素の最良酵素加水分解条件で決定されるが、三回の酵素加水分解の時間は、それぞれ3h内に制御され、例えば第一酵素加水分解時間が1.5-3hに、第二酵素加水分解の時間が1-2hに、第三酵素加水分解の時間が0.5-1hに制御されてもよい。上記酵素不活性化操作は本分野常用の高温酵素不活性化技術を利用してもよい。
【0014】
酵素加水分解処理には、酵素加水分解の温度、pH環境および時間を制御するほか、酵素の投与量を制御して生成物におけるペプチドフラグメントGS、GLおよびGFが高い質量含有量を有するようにできるだけ確保する必要がある。米タンパク原料内の米タンパクの有効質量を基準として、米タンパク100gあたりに、600-1500Uペプシン、100000-200000Uパパイン、50-150LAPUアミノペプチダーゼを利用することができる。
【0015】
酵素加水分解終了後に、第三酵素加水分解液に対して分離精製処理を行い、上記米ペプチドを得る。
【0016】
ここで、分離精製処理は、順次にろ過精製および樹脂精製処理を含み、ここで、樹脂精製処理は順次に陽イオン交換樹脂を使用する精製処理と陰イオン交換樹脂を使用する精製処理とを含む。
【0017】
ここで、陽イオン交換樹脂として、水素型陽イオン交換樹脂を選択してもよく、粒子サイズが0.315-1.25nmであり、陰イオン交換樹脂として、水酸化物型陰イオン交換樹脂を選択してもよく、粒子サイズが0.315-1.25nmである。
【0018】
さらに、ろ過処理は、少なくとも二次ろ過処理であってもよい。ここで、第一次ろ過処理は、孔径が50-200nmのろ過膜等、孔径が比較的大きいろ過膜を選択してろ過し、不溶の固体粒子を除去する。第二次ろ過処理は、分子量カットオフが2000-5000uのナノろ過膜を選択して第一次ろ過で得られたろ液に対して再度ろ過を行い、溶性高分子物質を除去し、ターゲットペプチドフラグメントの含有量をさらに増加することができる。
【0019】
上記分離精製処理によって、酵素加水分解生成物内のGS、GLおよびGFという3つのペプチドフラグメントを保留することができる。この後に、分離精製された液体生成物に対して濃縮乾燥を行い、必要とされる米ペプチド製品を得て、その中には少なくともペプチドフラグメントGS、GLおよびGFを含有する。
【0020】
研究により、特定質量含有量のペプチドフラグメントGS、GLおよびGFを含有する上記米ペプチドはDPPHフリーラジカルおよびOHフリーラジカルを明らかに消去し、人の皮膚メラノサイト内ROS含有量、メラニン合成速率、チロシナーゼ活性を低下させることができ、抗酸化能力や美白能力が強いことが表明されている。
【0021】
本発明はさらに、上記いずれかの米ペプチドの調製方法を提供し、
米タンパク原料に対して蒸気爆発処理を行った後に、水を加えて混合液を製造するステップと、
前記混合液のpHを酸性に調整した後にペプシンを加えて第一酵素加水分解を行い、1.5-3h後に、第一酵素加水分解液を得るステップと、
前記第一酵素加水分解液のpHを弱酸又は中性に調整した後に、パパインを加えて第二酵素加水分解を行い、1-2h後に、第二酵素加水分解液を得るステップと、
前記第二酵素加水分解液へアミノペプチダーゼを加えて第三酵素加水分解を行い、0.5-1h後に、酵素を不活性化させ、第三酵素加水分解液を得るステップと、
前記第三酵素加水分解液に対して順次にろ過および樹脂精製処理を行い、前記米ペプチドを得るステップと、を含む。
【0022】
本発明において、米ペプチドを調製する原料は、米タンパクを提供できる任意の原料、例えば米タンパク粉末であり、本発明において、酵素加水分解処理の効率を確保するために、純度が60-90%で、粒度が60-200メッシュの米タンパク粉末を原料として選択してもよい。
【0023】
酵素加水分解を行う前に、米タンパク原料に対して前処理を行う必要があり、本発明での前処理は、蒸気爆発装置を利用して米タンパク原料に対して蒸気爆発処理を行うことである。具体的に、蒸気爆発処理は、飽和水蒸気環境でターゲット物に対して圧力を加えて、且つ高圧を一定の時間維持した後に、非常に短時間内にターゲット物の圧力を常圧(爆発放出)に低下させる。該過程により、飽和水蒸気および過熱液体がターゲット物内部を充満するようになり、高圧が瞬時に解放された後に、ターゲット物内部の過熱液体が気化して膨張し、これによりターゲット物が爆発し、米蒸気爆発粒子を得る。
【0024】
蒸気爆発処理によって、粒子表面は非常に緻密な細孔を持つようになり、これにより酵素加水分解過程で有効成分放出に有利であるのみならず、酵素と原料との接触面積も増大し、酵素加水分解効率が向上するようになる。
【0025】
具体的に、下記条件にしたがって蒸気爆発処理を行うことができる。米タンパク原料は0.5-1.5Mpaの蒸気圧で30-120s保たれた後に、前記米タンパク粉末が3.0-8.5ms内に常圧に戻り、米蒸気爆発粒子を得る。蒸気爆発を実施する装置は例えば、済南思明特SMT-BPXT-21型蒸気爆発実験台である。
【0026】
米蒸気爆発粒子を収集し、水と米タンパク原料との質量比が(5-20):1であるように米蒸気爆発粒子へ水を加え、酵素加水分解に用いられる混合液を調製する。混合液を調製するとき、水を少なすぎて加えると、混合液の流動性が悪くなり、酵素加水分解効率が低下するが、水を多すぎて加えると、反応体積が大きすぎて、この後の処理(例えば濃縮等)に影響を与えるほか、コストも相応に増加する。ここで、水は、精製水、蒸留水、脱イオン水等を採用してもよいが、本発明において精製水を採用する。
【0027】
本発明者は、いかにして米タンパク粉末の酵素加水分解生成物に予想質量含有量のGS、GLおよびGFペプチドフラグメントを含有するかについて大量の研究を行った結果、酵素製剤の選択及び相応の分離工程が結果に対して肝心な影響を与えていることが証明された。発明者は研究過程で意外にも、ペプシン、パパインおよびアミノペプチダーゼを採用して順次に3段階の酵素加水分解を行うことが、GS、GLおよびGFペプチドフラグメントを同時に得ることに有利であるのみならず、他の酵素加水分解生成物の含有量を低下させることもできるから、これにより、この後にGS、GLおよびGFペプチドフラグメントに対する分離精製により、GSの質量含有量≧200.00mg/100gで、GLの質量含有量≧200.00mg/100gで、GFの質量含有量≧100.00mg/100gであるようにすることに寄与する。
【0028】
本発明の3段階の酵素加水分解はいずれも40-60℃の温度で行われ、且つ各段階の酵素加水分解の時間を制御し、酵素加水分解時間が短すぎてタンパクの分解に不利であること、又は時間が長すぎて(例えば8hを超える)ターゲットペプチドフラグメントのさらなる分解が引き起こされることを防止する。
【0029】
ペプシンを加える前に、濃塩酸を利用して混合液のpH値を2-3等、酸性に調整し、そしてペプシンを加えて、1.5-3h後に、第一酵素加水分解液を得て、この後に水酸化ナトリウムを利用して第一酵素加水分解液のpH値が6-7になるように調整し、パパインの適宜酵素加水分解温度でパパイヤを加えて第二酵素加水分解を行い、第二酵素加水分解液を得る。
【0030】
最後に、アミノペプチダーゼの適宜酵素加水分解温度で、直接に第二酵素加水分解液へアミノペプチダーゼを加えて第三酵素加水分解を行い、0.5-1h後に、体系温度を90-95℃まで昇温して酵素を不活性化させ、第三酵素加水分解液を得る。
【0031】
本発明の酵素加水分解において、ペプシンの投与量は600-1500U/100gで、前記パパインの投与量は100000-200000U/100gで、前記アミノペプチダーゼの投与量は50-150LPAU/100gである。具体的には、各酵素の投与量は米タンパク原料内の有効な米タンパクの質量に応じるものであり、即ち、米タンパク100gあたりに、ペプシンを600-1500U、パパインを100000~200000Uおよびアミノペプチダーゼを50-150LPAU使用する。
【0032】
以下、酵素加水分解液の後処理について詳細に紹介する。
【0033】
まず、孔径が50-200nmのろ過膜を採用して第三酵素加水分解液に対して一次ろ過を行い、一次ろ液を収集し、続いて、分子量カットオフが2000-5000uのナノろ過膜を採用して一次ろ液に対して二次ろ過を行い、二次ろ液を得る。多段階ろ過工程によって分子量が大きい成分をさらにカットオフし、これにより米ペプチド内の3種のターゲットペプチドフラグメントの質量含有量を増加させることができる。
【0034】
多段階ろ過終了後に、二次ろ液に対して樹脂精製処理を行い、具体的に二次ろ液に対して順次に陽イオン交換樹脂精製処理及び陰イオン交換樹脂精製処理を行う。
【0035】
ここで、陽イオン交換樹脂精製処理は、ろ液を1~10mL/minの直線流量で陽イオン交換樹脂カラムに通過させ、紫外線検出値が200mAuに達したとき、流出液収集を開始し、材料や液体がすべて処理された後に、ろ液の代わりに精製水を用いて樹脂を流し、紫外線検出値が200mAuより小さいとき、流出液収集を停止することを含む。
陰イオン交換樹脂精製は、陽イオン交換樹脂によって精製された流出液を1~10mL/minの直線流量で陰イオン交換樹脂カラムに通過させ、紫外線検出値が200mAuに達したとき、流出液収集を開始し、材料や液体がすべて処理された後に、陽イオン交換樹脂によって精製された流出液の代わりに精製水を用いて樹脂を流し、紫外線検出値が200mAuより小さいとき、流出液収集を停止することを含む。
【0036】
上記陽イオン交換樹脂カラムは、予め平衡化された水素型陽イオン交換樹脂カラムであってもよく、粒子サイズが0.315-1.25nmであり、陰イオン交換樹脂カラムは、予め平衡化された水酸化物型陰イオン交換樹脂カラムであってもよく、粒子サイズが0.315-1.25nmである。
【0037】
さらに、陰イオン交換樹脂から収集された流出液に対して蒸発濃縮を行ってもよく、例えば真空蒸発濃縮装置を採用して蒸発濃縮を行い、濃縮液の濃度が20%±2%になるように制御してもよい。さらに、濃縮後に乾燥を行ってもよく、例えば噴霧乾燥塔を採用し、乾燥塔入口温度を140-160℃に制御し、出口温度を60-80℃に制御し、これにより本発明の米ペプチドを調製して得る。
【0038】
上記酵素加水分解工程及び分離精製工程によって、米タンパク粉末におけるGS、GLおよびGFを保留することができるのみならず、また、適宜な工程パラメータによってペプチドフラグメントGSの質量含有量≧200.00mg/100gに、ペプチドフラグメントGLの質量含有量≧200.00mg/100gに、ペプチドフラグメントGFの質量含有量≧100.00mg/100gになるようにさせることもできる。
【0039】
本発明はさらに、抗酸化製品及び美白製品における上記いずれかの米ペプチドの応用を提供する。
【0040】
大量の研究データによって、本発明のGSの質量含有量≧200.00mg/100gで、GLの質量含有量≧200.00mg/100gで、GFの質量含有量≧100.00mg/100gの米ペプチドが優れたフリーラジカル消去能、特にDPPHフリーラジカル及びOHフリーラジカルに対する消去能を示しており、且つメラニン合成が効果的に阻害されることが証明され、本発明に係る米ペプチドは著しい抗酸化機能及び美白機能を有しており、従来の意義上の保健応用以外に、抗酸化製品及び美白製品等にも応用することができ、これにより米タンパク粉末の応用範囲は広くなり、米原料の深加工に新たな研究方向が提供されると考えられる。
【0041】
且つ、該米ペプチドにおいて、分子量が1000uより小さい成分が占める割合は90%よりも高くし、これによりヒトの腸によって完全に吸収されることに有利であり、体内で作用を発揮することが容易になる。
【発明の効果】
【0042】
本発明の実施は、少なくとも以下の利点を有する。
1、本発明に係る米ペプチドは、GS、GLおよびGFペプチドフラグメントを明確に含有し、GSの質量含有量≧200.00mg/100gで、GLの質量含有量≧200.00mg/100gで、GFの質量含有量≧100.00mg/100gであるため、本発明の米ペプチドは著しい抗酸化機能及び美白機能を有し、関連機能製品の原料に用いられ、米ペプチド製品により広範な応用見通しを提供する。
2、本発明に係る米ペプチドの調製方法において、特殊な前処理、酵素加水分解および分離精製工程を採用することによって、特定質量含有量のペプチドフラグメントGS、GLおよびGFペプチドフラグメントを有する米タンパク深加工生成物を得る。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【
図1】本発明の実施例1において米ペプチドの分子量分布ゲルクロマトグラムである。
【
図2】本発明の実施例及び比較例においてGS、GL及びGF同定に用いられる1μg/mL標準サンプルマススペクトルの図である。
【
図3】本発明の100μg/mL実施例1において米ペプチド内のGS、GL及びGFのマススペクトルの図である。
【
図4】本発明の実施例2において米ペプチドの分子量分布ゲルクロマトグラムである。
【
図5】本発明の100μg/mL実施例2において米ペプチド内のGS、GL及びGFのマススペクトルの図である。
【
図6】本発明の実施例3において米ペプチドの分子量分布ゲルクロマトグラムである。
【
図7】本発明の100μg/mL実施例3において米ペプチド内のGS、GL及びGFのマススペクトルの図である。
【
図8】本発明の100μg/mL比較例1において米ペプチド内のGS、GL及びGFのマススペクトルの図である。
【
図9】本発明の100μg/mL比較例2において米ペプチド内のGS、GL及びGFのマススペクトルの図である。
【
図10】本発明の100μg/mL比較例3において米ペプチド内のGS、GL及びGFのマススペクトルの図である。
【
図11】本発明の実施例1、2、3の米ペプチドおよび比較例1、2、3の米ペプチドが異なる質量濃度でDPPHフリーラジカルを消去する曲線図である。
【
図12】本発明の実施例1、2、3の米ペプチドおよび比較例1、2、3の米ペプチドが異なる質量濃度でOHフリーラジカルを消去する曲線図である。
【
図13】各試験組とROS含有量との関係図である。
【
図14】本発明の実施例1の米ペプチドが異なる質量濃度でROS含有量との関係図である。
【
図15】各試験組とPIG1細胞メラニン合成促進率との関係図である。
【
図16】本発明の実施例1の米ペプチドが異なる質量濃度でPIG1細胞メラニン合成促進率との関係図である。
【
図17】各試験組とPIG1細胞チロシナーゼ活性化率との関係図である。
【
図18】本発明の実施例1の米ペプチドが異なる質量濃度でPIG1細胞チロシナーゼ活性化率との関係図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
本発明の実施例の目的、技術的解決手段及び利点をより明瞭にするために、以下、本発明の実施例を参照しながら、本発明の実施例における技術的解決手段を明瞭で、且つ完全に説明し、当然ながら、記載される実施例は本発明の実施例の一部にすぎず、すべての実施例ではない。当業者が本発明における実施例に基づいて創造的な労働なしに取得されたその他のすべての実施例は、いずれも本発明の保護範囲に属する。
【0045】
以下の実施例及び比較例において、米タンパク粉末は江西金農生物科技有限公司から購入し、80グレードで、ペプシンはSIGMA社から購入し、3000U/gで、パパインは南寧厖博から購入し、1000000U/gで、アミノペプチダーゼはNovozymesから購入し、500LAPU/g(1グラムあたりの製品でのロイシンアミノペプチダーゼの単位)で、アルカリプロテアーゼは南寧厖博から購入し、200000U/gで、中性プロテアーゼは南寧厖博から購入し、200000U/gで、ブロメラインは南寧厖博から購入し、500000U/gである。
【0046】
実施例1
【0047】
本実施例の米ペプチドは、以下の方法によって調製して得られる。
1、米タンパク粉末(タンパク含有量80%、60メッシュ)500gを蒸気爆発反応タンクに加え、蒸気を注入し、圧力を0.65Mpaに制御し、100s保たれ、そして5.0ミリ秒で圧力を放出し、米蒸気爆発粒子を得て、
米蒸気爆発粒子へ精製水を5L加え、混合液を得る。
2、混合液を50℃まで昇温し、濃塩酸を10mL加えてpHが3.0になるように調整した後に、ペプシンを2g加えて第一酵素加水分解を行い、酵素加水分解3h後に第一酵素加水分解液を得て、
そして第一酵素加水分解液へ水酸化ナトリウムを4g加えてpHが7.0になるように調整した後に、パパインを1g加えて第二酵素加水分解を行い、酵素加水分解1h後に第二酵素加水分解液を得て、
第二酵素加水分解液へアミノペプチダーゼを0.5g加えて、酵素加水分解1h後に、体系を95℃まで昇温して30min保温して酵素不活性化を行い、第三酵素加水分解液を得る。
3、孔径が200nmのセラミック膜を採用して第三酵素加水分解液に対してろ過を行い、固体不純物を除去し、初歩的に酵素加水分解液を清澄化し、一次ろ液を得て、そして、分子量カットオフが2000uのナノろ過膜を用いて一次ろ液に対して二次ろ過を行い、可溶性高分子不純物を除去し、二次ろ液を収集し、
二次ろ液を10mL/minの流量で予め平衡化された水素型陽イオン交換樹脂カラムに通過させ、紫外線検出値が200mAuより高いとき、流出液収集を開始し、サンプルを注入し終わった後に引き続き脱イオン水を用いて陽イオン交換樹脂カラムを洗浄し、紫外線検出値が200mAuより小さいとき、流出液収集を停止し、陽イオン交換樹脂カラムから収集された流出液を10mL/minの流量で予め平衡化された水酸化物型陰イオン交換樹脂カラムに通過させ、紫外線検出値が200mAuより高いとき、収集を開始し、サンプルを注入し終わった後に引き続き脱イオン水を用いて陰イオン交換樹脂カラムを洗浄し、紫外線検出値が200mAuより小さいとき、流出液収集を停止する。
4、真空蒸発濃縮装置を使用してイオン交換樹脂カラムによって収集された流出液に対してボーム値が22%になるまで濃縮を行い、そして、濃縮液を噴霧乾燥塔に送り、乾燥塔入口温度が140℃で、本実施例の米ペプチドを得る。
【0048】
生成物測定
【0049】
1、米ペプチドの分子量分布検出
GB/T 22492-2008大豆ペプチド粉末の付録に規定された実験方法を採用して米ペプチドの分子量分布を検出する。
【0050】
図1は、本発明の実施例1において米ペプチドの分子量分布ゲルクロマトグラムである。
【0051】
表1は、実施例1において米ペプチドの分子量分布データである。
【0052】
【0053】
2、米ペプチド内の機能ペプチドフラグメントGS、GLおよびGFの含有量検出
【0054】
超高速液体クロマトグラフNexera X2及びトリプル四重極質量分析計複合システム(島津製作所製、日本)を利用して本実施例における米ペプチドにおけるペプチド組成を同定する。
【0055】
液体クロマトグラフィー条件について、クロマトグラムカラムはInertsil ODS-3 (5μm、 2.1*250mm)で、移動相は、Aが0.1%ギ酸水溶液で、Bが0.1%ギ酸アセトニトリル溶液で、グラジエント溶出プロセスは、0-15min、 B 0-50%で、15-20min、B 50-100%で、20-25min、 B 100%で、25.1-35min、 B 0%で、流量は0.2mL/minで、サンプル注入体積は1μLで、カラム温度は40℃である。
【0056】
マススペクトル条件について、イオン化モードがESI、陽イオンモードで、イオン噴霧電圧が+4.5kVで、噴霧ガス流量が窒素 3.0 L/minで、加熱ガス流量が窒素 10 L/minで、乾燥ガス流量が窒素10 L/minで、DL温度が250℃で、加熱モジュール温度が400℃で、イオン源温度が300℃で、走査モードがマルチプルリアクションモニタリング(MRM)で、滞留時間が100 msで、遅延時間が3 msで、MRMパラメータが表2を参照する。
【0057】
【0058】
ペプチドフラグメント標準品の調製において、GS、GL及びGF標準品粉末をそれぞれ20.0mg正確に量り、水を加えて溶解させ、ボルテックスして均一に混ぜ、容積を100 mLまで定め、200μg/mLの標準ストック溶液になる。上記標準ストック溶液をそれぞれ500μL取り、容積を10mLまで定め、混合標準母液10μg/mLを得る。上記混合標準母液を純水で次第に0.0625、0.125、0.25、0.5、1、2.5、5及び10μg/mLの一連の標準作業溶液まで希釈する。
【0059】
図2は、本発明の実施例及び比較例においてGS、GL及びGF同定に用いられる1μg/mL標準サンプルマススペクトルの図であり、
図3は、本発明の100μg/mL実施例1において米ペプチド内のGS、GL及びGFのマススペクトルの図である。
【0060】
図3と
図2との比較によって、本実施例1における米ペプチド内にペプチドフラグメントGS、GL及びGFが同時に存在することが分かる。検出により、本実施例1で調製された米ペプチド内にGS含有量が208.35mg/100gで、GL含有量が208.74mg/100gで、GF含有量が105.63mg/100gである。
【0061】
実施例2
【0062】
本実施例の米ペプチドは以下の方法によって調製して得られる。
1、米タンパク粉末(タンパク含有量80%、60メッシュ)200gを蒸気爆発反応タンクに加え、蒸気を注入し、圧力を0.6Mpaに制御し、100s保たれ、そして5.0ミリ秒に圧力を放出し、米蒸気爆発粒子を得て、
米蒸気爆発粒子へ精製水を2L加え、混合液を得る。
2、混合液を50℃まで昇温し、濃塩酸を4mL加えてpHが3.0になるように調整した後に、ペプシンを1g加えて第一酵素加水分解を行い、酵素加水分解3h後に第一酵素加水分解液を得て、
そして第一酵素加水分解液へ水酸化ナトリウムを1.5g加えてpHが6.5になるように調整した後に、パパインを0.4g加えて第二酵素加水分解を行い、酵素加水分解1.5h後に第二酵素加水分解液を得て、
第二酵素加水分解液へアミノペプチダーゼを0.2g加え、酵素加水分解1h後に、体系を95℃まで昇温して30min保温して酵素不活性化を行い、第三酵素加水分解液を得る。
3、孔径が50nmのセラミック膜を採用して第三酵素加水分解液に対してろ過を行い、固体不純物を除去し、初歩的に酵素加水分解液を清澄化し、一次ろ液を得て、そして分子量カットオフが5000uのナノろ過膜を用いて一次ろ液に対して二次ろ過を行い、可溶性高分子不純物を除去し、二次ろ液を収集し、
二次ろ液を5mL/minの流量で予め平衡化された水素型陽イオン交換樹脂カラムに通過させ、紫外線検出値が200mAuより高いとき、流出液収集を開始し、サンプルを注入し終わった後に引き続き脱イオン水を用いて陽イオン交換樹脂カラムを洗浄し、紫外線検出値が200mAuより小さいとき、流出液収集を停止し、陽イオン交換樹脂カラムから収集された流出液を5mL/minの流量で予め平衡化された水酸化物型陰イオン交換樹脂カラムに通過させ、紫外線検出値が200mAuより高いとき、収集を開始し、サンプルを注入し終わった後に引き続き脱イオン水を用いて陰イオン交換樹脂カラムを洗浄し、紫外線検出値が200mAuより小さいとき、流出液収集を停止する。
4、真空蒸発濃縮装置を使用してイオン交換樹脂カラムによって収集された流出液に対してボーム値が20%になるまで濃縮を行い、そして、濃縮液を噴霧乾燥塔に送り、乾燥塔入口温度が140℃で、本実施例の米ペプチドを得る。
【0063】
生成物測定
【0064】
1、実施例1と同じ方法を採用して本実施例の米ペプチドの分子量分布を検出する。
【0065】
図4は、本発明の実施例2において米ペプチドの分子量分布ゲルクロマトグラムである。
【0066】
表3は、実施例2において米ペプチドの分子量分布データである。
【0067】
【0068】
2、実施例1と同じ方法を採用して米ペプチド内の機能ペプチドフラグメントGS、GL及びGFの含有量を検出する。
【0069】
図5は、本発明の100μg/mL実施例2において米ペプチド内のGS、GL及びGFのマススペクトルの図である。
【0070】
図5と
図2との比較によって、本実施例2における米ペプチド内にペプチドフラグメントGS、GL及びGFが同時に存在することが分かる。検出により、本実施例2で調製された米ペプチド内には、GS含有量が205.58mg/100gで、GL含有量が210.75mg/100gで、GF含有量が103.95mg/100gである。
【0071】
実施例3
【0072】
本実施例の米ペプチドは以下の方法によって調製して得られる。
1、米タンパク粉末(タンパク含有量80%、60メッシュ)100gを蒸気爆発反応タンクに加え、蒸気を注入し、圧力を0.6Mpaに制御し、100s保たれ、そして5.0ミリ秒で圧力を放出し、米蒸気爆発粒子を得て、
米蒸気爆発粒子へ精製水を5L加え、混合液を得る。
2、混合液を50℃まで昇温し、濃塩酸を2mL加えてpHが3.0になるように調整した後に、ペプシンを0.3g加えて第一酵素加水分解を行い、酵素加水分解3h後に第一酵素加水分解液を得て、
そして第一酵素加水分解液へ水酸化ナトリウム1.0gを加えてpHが7.5になるように調整した後に、パパインを0.2g加えて第二酵素加水分解を行い、酵素加水分解1.5h後に第二酵素加水分解液を得て、
第二酵素加水分解液へアミノペプチダーゼを0.1g加え、酵素加水分解0.5h後に、体系を95℃まで昇温して30min保温して酵素不活性化を行い、第三酵素加水分解液を得る。
3、孔径が200nmのセラミック膜を採用して第三酵素加水分解液に対してろ過を行い、固体不純物を除去し、初歩的に酵素加水分解液を清澄化し、一次ろ液を得て、そして分子量カットオフが5000uのナノろ過膜を用いて一次ろ液に対して二次ろ過を行い、可溶性高分子不純物を除去し、二次ろ液を収集し、
二次ろ液を1mL/minの流量で予め平衡化された水素型陽イオン交換樹脂カラムに通過させ、紫外線検出値が200mAuより高いとき、流出液収集を開始し、サンプルを注入し終わった後に引き続き脱イオン水を用いて陽イオン交換樹脂カラムを洗浄し、紫外線検出値が200mAuより小さいとき、流出液収集を停止し、陽イオン交換樹脂カラムから収集された流出液を1mL/minの流量で予め平衡化された水酸化物型陰イオン交換樹脂カラムに通過させ、紫外線検出値が200mAuより高いとき、収集を開始し、サンプルを注入し終わった後に引き続き脱イオン水を用いて陰イオン交換樹脂カラムを洗浄し、紫外線検出値が200mAuより小さいとき、流出液収集を停止する。
4、真空蒸発濃縮装置を使用してイオン交換樹脂カラムによって収集された流出液に対してボーム値が18%になるまで濃縮を行い、そして、濃縮液を噴霧乾燥塔に送り、乾燥塔入口温度が140℃で、本実施例の米ペプチドを得る。
【0073】
生成物測定
【0074】
1、実施例1と同じ方法を採用して本実施例の米ペプチドの分子量分布を検出する。
【0075】
図6は、本発明の実施例3において米ペプチドの分子量分布ゲルクロマトグラムである。
【0076】
表4は、実施例3において米ペプチドの分子量分布データである。
【0077】
【0078】
2、実施例1と同じ方法を採用して米ペプチド内の機能ペプチドフラグメントGS、GL及びGFの含有量を検出する。
【0079】
図7は、本発明の100μg/mL実施例3において米ペプチド内のGS、GL及びGFのマススペクトルの図である。
【0080】
図7と
図2との比較によって、本実施例3における米ペプチド内にペプチドフラグメントGS、GL及びGFが同時に存在することが分かる。検出により、本実施例3で調製された米ペプチド内には、GS含有量が203.67mg/100gで、GL含有量が207.85mg/100gで、GF含有量が104.54mg/100gである。
【0081】
比較例1
【0082】
本比較例の米ペプチドは、以下の方法によって調製して得られる。
1、米タンパク粉末(タンパク含有量80%、60メッシュ)500gを5Lの精製水に加え、混合液を得る。
2、混合液を50℃まで昇温し、濃塩酸10mLを加えてpHが3.0になるように調整した後に、ペプシン2gを加えて第一酵素加水分解を行い、酵素加水分解3h後に第一酵素加水分解液を得て、
そして第一酵素加水分解液へ水酸化ナトリウム4gを加えてpHが7.0になるように調整した後に、パパイン1gを加えて第二酵素加水分解を行い、酵素加水分解1h後に第二酵素加水分解液を得て、
第二酵素加水分解液へアミノペプチダーゼ0.5gを加え、酵素加水分解1h後に、体系を95℃まで昇温して30min保温して酵素不活性化を行い、第三酵素加水分解液を得る。
3、孔径が200nmのセラミック膜を採用して第三酵素加水分解液に対してろ過を行い、固体不純物を除去し、初歩的に酵素加水分解液を清澄化し、一次ろ液を得て、そして、分子量カットオフが2000uのナノろ過膜を用いて一次ろ液に対して二次ろ過を行い、可溶性高分子不純物を除去し、二次ろ液を収集し、
二次ろ液を10mL/minの流量で予め平衡化された水素型陽イオン交換樹脂カラムに通過させ、紫外線検出値が200mAuより高いとき、流出液収集を開始し、サンプルを注入し終わった後に引き続き脱イオン水を用いて陽イオン交換樹脂カラムを洗浄し、紫外線検出値が200mAuより小さいとき、流出液収集を停止し、陽イオン交換樹脂カラムから収集された流出液を10mL/minの流量で予め平衡化された水酸化物型陰イオン交換樹脂カラムに通過させ、紫外線検出値が200mAuより高いとき、収集を開始し、サンプルを注入し終わった後に引き続き脱イオン水を用いて陰イオン交換樹脂カラムを洗浄し、紫外線検出値が200mAuより小さいとき、流出液収集を停止する。
4、真空蒸発濃縮装置を使用してイオン交換樹脂カラムによって収集された流出液に対してボーム値が21%になるまで濃縮を行い、そして、濃縮液を噴霧乾燥塔に送り、乾燥塔入口温度が140℃で、本比較例の米ペプチドを得る。
【0083】
生成物測定
【0084】
1、実施例1と同じ方法を採用して米ペプチド内の機能ペプチドフラグメントGS、GL及びGFの含有量を検出する。
【0085】
図8は、本発明の100μg/mL比較例1において米ペプチド内のGS、GL及びGFのマススペクトルの図である。
【0086】
図8と
図2との比較によって、本比較例1における米ペプチド内にペプチドフラグメントGS、GL及びGFが同時に存在することが分かる。検出により、本比較例1で調製された米ペプチド内には、GS含有量が145.86mg/100gで、GL含有量が153.61mg/100gで、GF含有量が76.84mg/100gである。
【0087】
比較例2
【0088】
本比較例の米ペプチドは、以下の方法によって調製して得られる。
1、米タンパク粉末(タンパク含有量80%、60メッシュ)500gを蒸気爆発反応タンクに加え、蒸気を注入し、圧力を0.65Mpaに制御し、100s保たれ、そして5.0ミリ秒で圧力を放出し、米蒸気爆発粒子を得て、
米蒸気爆発粒子へ精製水を5L加え、混合液を得る。
2、混合液を50℃まで昇温し、水酸化ナトリウムを4g加えてpHが8.0になるように調整し、アルカリプロテアーゼを5g、中性プロテアーゼを2g加え、ともに酵素加水分解3h後に、ブロメラインを1g加え、引き続き酵素加水分解1h後に、体系を95℃まで昇温して30min保温して酵素不活性化を行い、酵素加水分解液を得る。
3、孔径が200nmのセラミック膜を採用して酵素加水分解液に対してろ過を行い、固体不純物を除去し、初歩的に酵素加水分解液を清澄化し、一次ろ液を得て、そして分子量カットオフが2000uのナノろ過膜を用いて一次ろ液に対して二次ろ過を行い、可溶性高分子不純物を除去し、二次ろ液を収集し、
二次ろ液を10mL/minの流量で予め平衡化された水素型陽イオン交換樹脂カラムに通過させ、紫外線検出値が200mAuより高いとき、流出液収集を開始し、サンプルを注入し終わった後に引き続き脱イオン水を用いて陽イオン交換樹脂カラムを洗浄し、紫外線検出値が200mAuより小さいとき、流出液収集を停止し、陽イオン交換樹脂カラムから収集された流出液を10mL/minの流量で予め平衡化された水酸化物型陰イオン交換樹脂カラムに通過させ、紫外線検出値が200mAuより高いとき、収集を開始し、サンプルを注入し終わった後に引き続き脱イオン水を用いて陰イオン交換樹脂カラムを洗浄し、紫外線検出値が200mAuより小さいとき、流出液収集を停止する。
4、真空蒸発濃縮装置を使用してイオン交換樹脂カラムによって収集された流出液に対してボーム値が20%になるまで濃縮を行い、そして、濃縮液を噴霧乾燥塔に送り、乾燥塔入口温度が140℃で、本比較例の米ペプチドを得る。
【0089】
生成物測定
【0090】
1、実施例1と同じ方法を採用して米ペプチド内の機能ペプチドフラグメントGS、GL及びGFの含有量を検出する。
【0091】
図9は、本発明の100μg/mL比較例2において米ペプチド内のGS、GL及びGFのマススペクトルの図である。
【0092】
図9と
図2との比較によって、本比較例2における米ペプチド内にペプチドフラグメントGS、GL及びGFが同時に存在することが分かる。検出により、本比較例2で調製された米ペプチド内には、GS含有量が95.35mg/100gで、GL含有量が108.98mg/100gで、GF含有量が49.83mg/100gである。
【0093】
比較例3
【0094】
本比較例の米ペプチドは、以下の方法によって調製して得られる。
1、米タンパク粉末(タンパク含有量80%、60メッシュ)500gを蒸気爆発反応タンクに加え、蒸気を注入し、圧力を0.65Mpaに制御し、100s保たれ、そして5.0ミリ秒で圧力を放出し、米蒸気爆発粒子を得て、
米蒸気爆発粒子へ精製水を5L加え、混合液を得る。
2、混合液を50℃まで昇温し、濃塩酸を10mL加えてpHが3.0になるように調整した後に、ペプシンを2g加えて第一酵素加水分解を行い、酵素加水分解3h後に第一酵素加水分解液を得て、
そして第一酵素加水分解液へ水酸化ナトリウムを4g加えてpHが7.0になるように調整した後に、パパインを1g加えて第二酵素加水分解を行い、酵素加水分解1h後に第二酵素加水分解液を得て、
第二酵素加水分解液へアミノペプチダーゼを0.5g加え、酵素加水分解1h後に、体系を95℃まで昇温して30min保温して酵素不活性化を行い、第三酵素加水分解液を得る。
3、孔径が200nmのセラミック膜を採用して第三酵素加水分解液に対してろ過を行い、固体不純物を除去し、初歩的に酵素加水分解液を清澄化し、一次ろ液を得て、そして、分子量カットオフが2000uのナノろ過膜を用いて一次ろ液に対して二次ろ過を行い、可溶性高分子不純物を除去し、二次ろ液を収集する。
4、真空蒸発濃縮装置を使用して二次ろ液に対してボーム値が23%になるまで濃縮を行い、そして、濃縮液を噴霧乾燥塔に送り、乾燥塔入口温度が140℃で、本比較例の米ペプチドを得る。
【0095】
生成物測定
【0096】
1、実施例1と同じ方法を採用して米ペプチド内の機能ペプチドフラグメントGS、GL及びGFの含有量を検出する。
【0097】
図10は、本発明の100μg/mL比較例3において米ペプチド内のGS、GL及びGFのマススペクトルの図である。
【0098】
図10と
図2との比較によって、本比較例3における米ペプチド内にペプチドフラグメントGS、GL及びGFが同時に存在することが分かる。検出により、本比較例3で調製された米ペプチド内には、GS含有量が71.39mg/100gで、GL含有量が75.81mg/100gで、GF含有量が34.68mg/100gである。
【0099】
下記方法を利用してサンプルの抗酸化機能及び美白機能を評価する。
【0100】
抗酸化機能評価
【0101】
a.DPPHフリーラジカル消去能の測定
【0102】
質量濃度が異なるサンプル溶液と0.1mMのDPPH-無水エタノール溶液とを1:3の体積比率で均一に混ぜて、遮光条件で、室温で30min反応し、517nmで吸光度(A
1)を計測する。相応的に、質量濃度が異なるサンプル溶液と無水エタノール溶液とを1:3の体積比率で均一に混ぜて、遮光条件で室温で30min保存され、517nmで吸光度(A
2)を計測する。蒸留水と0.1mMのDPPH-無水エタノール溶液とを1:3の体積比率で均一に混ぜて、遮光条件で室温で30min保存され、517nmで吸光度(A
0)を計測する。以下の式にしたがってサンプルのDPPHフリーラジカルに対する消去率を計算して得る。
【数1】
【0103】
b.OHフリーラジカル消去能の測定
【0104】
質量濃度が異なるサンプル溶液と5mMのFeSO
4と5mMのサリチル酸-無水エタノール溶液とを1:2:2の体積比率で均一に混ぜて、1体積の5mMのH
2O
2溶液で反応を始動し、37℃の恒温水で反応を1hインキュベートし、510nmで吸光度(A
1)を計測する。相応的に、1体積の水で5mMのH
2O
2溶液を代替し、残る試薬比率が変わらず、37℃の恒温水で反応を1hインキュベートし、510nmで吸光度(A
2)を計測する。蒸留水でサンプル溶液を代替し、残る試薬比率が変わらず、37℃の恒温水で反応を1hインキュベートし、510nmで吸光度(A
0)を計測する。以下の式にしたがって米ペプチドによるOHフリーラジカルの消去率を計算して得る。
【数2】
【0105】
c.ROS含有量低下能力の測定
【0106】
密度1.0×10
5個/mLのヒト皮膚メラノサイト(PIG1細胞)でウェルあたり2mLの6ウェル細胞培養プレートに接種し、37℃で置いて、5%CO
2の細胞インキュベーターで24h培養する。この後に6ウェルでの細胞上清液を注意深く取り除き、PBSで洗浄し、サンプル含有の不完全な培地を加え、4hインキュベートする。インキュベート完了後に、サンプル含有の培養液を注ぎ出し、PBSで洗浄し、ウェルあたりに0.5mLのPBS緩衝液を加えて底面を覆い、UVBを照射する(照射線量が700mJ/cm
2である)。最終濃度が10μmol/Lの蛍光染料DCFH-DAを加え、37℃で、5%CO
2の細胞インキュベーターで30minインキュベートし、そして上清液を吸引して取り除き、PBSで注意深く3回洗浄する。消化し、完全な培地まで終了し、フローサイトメーターにおいて相対蛍光値を測定する。人の皮膚メラノサイト内抗酸化能力はROS含有量で示され、計算式は、以下の通りである。
【数3】
【0107】
美白機能評価
【0108】
a. メラニン合成促進率の測定
【0109】
細胞密度を2.0×10
5個/mLに調整し、2mL/ウェルで6ウェルプレートに入れて、24h細胞接着した後に、培養液を捨てる。ウェルあたりに0.5mLのPBS緩衝液で底面を覆い、UVBを照射し、照射線量が700mJ/cm
2である。照射完了後に、PBS溶液を捨て、サンプル含有のDMEM不完全な培地を加えて24hインキュベートする。細胞インキュベーターから取り出し、上清液を捨て、PBS緩衝液で2回洗浄し、各ウェルに200μLの1% Triton X-100溶液を加え、-80℃冷蔵庫に入れて30min後に溶解し、12000r/minで10min遠心分離し、沈殿に1mol/LのNaOH(10%DMSO含有)を加えて溶解して均一に混ぜ、90℃で30min水浴し、405nmで吸光値を読み取り、遠心分離された上清液はBCA法でタンパク含有量を測定する。各組の吸光値を測定した後に、それぞれ各組の上清液のタンパク含有量で割って、平均吸光値になり、平均吸光値でメラニン合成促進率を計算し、式は以下の通りである。
【数4】
【0110】
b. L-DOPA法によるチロシナーゼ活性の活性化率の測定
【0111】
a.実験方法における上清液を取り、同量の0.1%レボドパ(L-DOPA)を加えて37℃で1hインキュベートし、475nmでの吸光値を計測し、計算式は以下の通りである。
【数5】
【0112】
実施例1-3における米ペプチドおよび比較例1-3における米ペプチドをサンプルとして以下の試験を行う。
【0113】
試験例1
【0114】
DPPHは、安定した有機フリーラジカルで、サンプルのDPPHフリーラジカルに対する消去能を検出することによってその抗酸化性の強弱を示すことができる。
【0115】
図11は、本発明の実施例1、2、3の米ペプチドおよび比較例1、2、3の米ペプチドが異なる質量濃度でDPPHフリーラジカルを消去する曲線図である。
図11に示すように、米ペプチド濃度の増大につれて、実施例および比較例の米ペプチドのDPPHフリーラジカルに対する消去率も徐々に増大するが、実施例の米ペプチドのDPPHフリーラジカル消去率は比較例の米ペプチドのDPPHフリーラジカル消去率より著しく優れている。実施例1の場合、DPPHフリーラジカル消去率が70%程度に安定しており、且つIC
50=5mg/mLである。
【0116】
試験例2
【0117】
OHフリーラジカル(-OH)は、酸化能力が非常に強いフリーラジカルで、生命活動における酸化代謝過程に参加しやすく、DNA鎖の切断、タンパク質の酸化、脂質の酸化等を引き起こし、ひいては細胞のアポトーシス、色素沈着等一連の反応を引き起こす。
【0118】
図12は、本発明の実施例1、2、3の米ペプチドおよび比較例1、2、3の米ペプチドが異なる質量濃度でOHフリーラジカルを消去する曲線図である。
図12に示すように、米ペプチド濃度の増大につれて、実施例および比較例の米ペプチドの-OHに対する消去能が徐々に増強できるが、実施例の米ペプチドの-OH消去能は比較例の米ペプチドの-OH消去能より著しく優れている。実施例1の場合、その-OH消去率が50%程度に安定している。
【0119】
試験例3
【0120】
ROSは、酸素を必要としている生物が代謝過程で生成した酸素より活性が高い酸素含有活性物質で、ROSが過量になると、有機体組織細胞の酸化ストレス反応を引き起こし、生物学的高分子物質に損傷を与え、正常な生物学的機能に影響を与え、ROS含有量変化が抗酸化能力の重要な指標の1つである。
【0121】
本試験例において、2種類の異なる試験方法を採用して米ペプチドとROS含有量との関係について試験して説明する。
【0122】
第1種の試験方法(方法1)は、UVB誘導を先にして、サンプル注入をその次にする方法で、即ち、1.0×105個/mLの密度でヒト皮膚メラノサイト(PIG1細胞)をウェルあたり2mLで6ウェル細胞培養プレートに接種し、37℃で置いて、5%CO2の細胞インキュベーターで24h培養する。この後に6ウェルでの細胞上清液を注意深く取り除き、PBSで洗浄し、ウェルあたりに0.5mLのPBS緩衝液を加えて底面を覆い、UVBを照射(照射線量が700mJ/cm2である)した後に、サンプル含有の不完全な培地を加え、4hインキュベートする。インキュベート完了後に、サンプル含有の培養液を注ぎ出し、PBSで洗浄し、最終濃度が10μmol/Lの蛍光染料DCFH-DAを加え、37℃で、5%CO2の細胞インキュベーターで30minインキュベートし、そして上清液を吸引して取り除き、PBSで注意深く3回洗浄する。消化し、完全な培地まで終了し、フローサイトメーターにおいて相対蛍光値を測定する。
【0123】
第2種の試験方法(方法2)は、サンプル注入を先にして、UVB誘導をその次にする方法で、即ち、1.0×105個/mLの密度でヒト皮膚メラノサイト(PIG1細胞)をウェルあたり2mLで6ウェル細胞培養プレートに接種し、37℃で置いて、5%CO2の細胞インキュベーターで24h培養する。この後に6ウェルでの細胞上清液を注意深く取り除き、PBSで洗浄し、サンプル含有の不完全な培地を加え、2hインキュベートする。インキュベート完了後に、サンプル含有の培養液を注ぎ出し、PBSで洗浄し、ウェルあたりに0.5mLのPBS緩衝液を加えて底面を覆い、UVBを照射する(照射線量が700mJ/cm2である)。サンプル含有の不完全な培地を加え、引き続き2hインキュベートする。インキュベート完了後に、サンプル含有の培養液を注ぎ出し、PBSで洗浄し、最終濃度が10μmol/Lの蛍光染料DCFH-DAを加え、37℃で、5%CO2の細胞インキュベーターで30minインキュベートし、そして上清液を吸引して取り除き、PBSで注意深く3回洗浄する。消化し、完全な培地まで終了し、フローサイトメーターにおいて相対蛍光値を測定する。
【0124】
図13は、各試験組とROS含有量との関係図である。
図13で、空白組にはPIG1細胞でUVB光照射を提供せず、モデル組にはPIG1細胞でUVB(700mJ/cm
2)光照射を提供し、陽性対照組には10μg/mLアルブチン+PIG1細胞でUVB(700mJ/cm
2)光照射を提供し、サンプル組1には100μg/mLの実施例1における米ペプチド+PIG1細胞でUVB(700mJ/cm
2)光照射を提供し、サンプル組2には100μg/mLの実施例2における米ペプチド+PIG1細胞でUVB(700mJ/cm
2)光照射を提供し、サンプル組3には100μg/mLの実施例3における米ペプチド+PIG1細胞でUVB(700mJ/cm
2)光照射を提供し、サンプル組4には100μg/mLの比較例1における米ペプチド+PIG1細胞でUVB(700mJ/cm
2)光照射を提供し、サンプル組5には100μg/mLの比較例2における米ペプチド+PIG1細胞でUVB(700mJ/cm
2)光照射を提供し、サンプル組6には100μg/mLの比較例3における米ペプチド+PIG1細胞でUVB(700mJ/cm
2)光照射を提供する。
図13に示すように、モデル組から分かるように、方法1と方法2により、細胞内ROS含有量を極めて著しく向上させ、酸化ストレス反応が発生することができ、方法1によって生成されたROSは方法2によって生成されたROSよりも多くし、それぞれ186.5%と163.3%であり、陽性対照組とサンプル組1-6は、ROS含有量を著しく低下させ、サンプル組4-6でのROS含有量および陽性対照組でのROS含有量はいずれもサンプル組1-3でのROS含有量よりも高くし、即ち、比較例1-3と陽性対照組での抗酸化効果は実施例1-3よりも劣っていることが分かる。
【0125】
図14は、本発明の実施例1の米ペプチドが異なる質量濃度でROS含有量との関係図である。
図14では、空白組にはPIG1細胞でUVB光照射を提供せず、モデル組にはPIG1細胞でUVB(700mJ/cm
2)光照射を提供し、陽性対照組には10μg/mLアルブチン+PIG1細胞でUVB(700mJ/cm
2)光照射を提供し、サンプル組1には50μg/mLの実施例1における米ペプチド+PIG1細胞でUVB(700mJ/cm
2)光照射を提供し、サンプル組2には100μg/mLの実施例1における米ペプチド+PIG1細胞でUVB(700mJ/cm
2)光照射を提供し、サンプル組3には200μg/mLの実施例1における米ペプチド+PIG1細胞でUVB(700mJ/cm
2)光照射を提供する。
図14に示すように、実施例1における米ペプチド濃度の増大につれて、ROS含有量を低下させる能力が強くなり、方法2における200μg/mLの米ペプチドによる酸化ストレス反応低下効果が最も優れており、このときROS含有量が113%である。
【0126】
試験例4
【0127】
人間の肌の色はメラノサイトによって生成されたメラニンが皮膚における含有量や分布状態に関連し、肌の色の発色過程は、メラノサイトにおけるメラノソームがメラニンを合成してメラニンを包んで角質細胞に転送し、角質細胞がメラニンを摂取して発色し、上に皮膚角質層に移動し、最終の肌の色を形成することである。
【0128】
図15は、各試験組とPIG1細胞メラニン合成促進率との関係図である。
図15では、空白組、モデル組、陽性対照組、サンプル組1-6はいずれも
図13と同じである。
図15に示すように、モデル組から分かるように、方法1と方法2は、いずれもメラニン含有量を極めて著しく向上させることができ、メラニン合成促進率がそれぞれ12.2%と8.0%であり、陽性対照組では、メラニン合成促進率を極めて著しく低下させることができ、サンプル組1-3では、メラニン合成促進率を極めて著しく低下させることができ、サンプル組4-6では、メラニン合成促進率を極めて著しく低下させることができないため、実施例1-3において、メラニン合成促進率の低下効果は比較例1-3より強い。
【0129】
図16は、本発明の実施例1の米ペプチドが異なる質量濃度でPIG1細胞メラニン合成促進率との関係図である。
図16では、空白組、モデル組、陽性対照組、サンプル組1-3はいずれも
図14と同じである。
【0130】
図16に示すように、方法1で処理されるとき、実施例1の200μg/mLの米ペプチドによるメラニン合成促進率低下の能力が最も強く、このとき促進率が1.1%であり、方法2で処理されるとき、米ペプチド濃度の増大につれて、メラニン合成促進率が徐々に低下し、200μg/mLのとき、2.4%である。総合的に、方法2によるメラニン合成促進率がより低くし、効果がより優れる。
【0131】
試験例5
【0132】
メラニンの合成に必要とされる3種の物質は、基質チロシン、反応の肝心な酵素-チロシナーゼおよび酸素元素である。チロシナーゼは、銅含有の酸化還元酵素で、生命体に広く存在しており、メラニン生成のための律速酵素であり、L-チロシンをL-レボドパ(L-DOPA)に触媒し、さらに酸化によってL-ドーパキノンになり、メラニンを合成する。
【0133】
図17は、各試験組とPIG1細胞チロシナーゼ活性化率との関係図である。
図17では、空白組、モデル組、陽性対照組、サンプル組1-6はいずれも
図13と同じである。
図17に示すように、モデル組では、チロシナーゼ活性化率を極めて著しく向上させることができ、それぞれ21.0%と17.6%であり、陽性対照組とサンプル組1-3では、いずれもチロシナーゼ活性化率を極めて著しく低下させることができ、サンプル組4-6では、チロシナーゼ活性化率を低下させることができないため、比較例1-3でのチロシナーゼ活性低下能力は実施例1-3より劣っている。
【0134】
図18は、本発明の実施例1の米ペプチドが異なる質量濃度でPIG1細胞チロシナーゼ活性化率との関係図である。
図18では、空白組、モデル組、陽性対照組、サンプル組1-3はいずれも
図14と同じである。
【0135】
図18に示すように、実施例1における米ペプチド濃度の増大につれて、PIG1細胞チロシナーゼ活性化率が徐々に低下し、方法1で処理されるとき、200μg/mLの米ペプチドによるチロシナーゼ活性化率低下能力は最も強い。このとき、方法2によるチロシナーゼ活性化(10.2%)率とほぼ同じである。
【0136】
図13-
図18では、「*」は空白組に比べて、P<0.05であることを表し、「**」は空白組に比べて、P<0.01であることを表し、「#」はモデル組に比べて、P<0.05であることを表し、「##」はモデル組に比べて、P<0.01であることを表す。
【0137】
最後に説明すべきものとして、以上の各実施例は、本発明の技術的解決手段を説明するためのものだけであり、これを制限するものではなく、前述の各実施例を参照しながら本発明を詳細に説明したが、当業者であれば、依然として前述の各実施例に記載の技術的解決手段を修正するか、又はそのうちの一部又はすべての技術的特徴に対して等価置換を行うことができ、これらの修正又は置換は、対応する技術的解決手段の本質を本発明の各実施例の技術的解決手段の主旨から逸脱しないと理解すべきである。