(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-26
(45)【発行日】2024-04-03
(54)【発明の名称】ポリイミドフィルム、その製造方法、およびこれを含む軟性金属箔積層板
(51)【国際特許分類】
C08J 5/18 20060101AFI20240327BHJP
C08G 73/10 20060101ALI20240327BHJP
B32B 15/088 20060101ALI20240327BHJP
【FI】
C08J5/18 CFG
C08G73/10
B32B15/088
(21)【出願番号】P 2022530990
(86)(22)【出願日】2020-04-23
(86)【国際出願番号】 KR2020005389
(87)【国際公開番号】W WO2021107294
(87)【国際公開日】2021-06-03
【審査請求日】2022-05-27
(31)【優先権主張番号】10-2019-0157572
(32)【優先日】2019-11-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】514225065
【氏名又は名称】ピーアイ アドヴァンスド マテリアルズ カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】PI Advanced Materials CO., Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】弁理士法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ウォン・ドン ユン
(72)【発明者】
【氏名】キム・ドン ユン
【審査官】増永 淳司
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-151748(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2019-0116724(KR,A)
【文献】特開2004-068002(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2015-0037574(KR,A)
【文献】韓国公開特許第10-2019-0130526(KR,A)
【文献】特開2007-162005(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 5/18
C08G 73/10
B32B 15/088
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶媒中に第2二無水物単量体およびジアミン単量体を混合し、反応させて第2アミック酸結合単位を形成した後、第1二無水物単量体およびジアミン単量体を添加し、反応させて第1アミック酸結合単位を形成して、ポリアミック酸溶液を形成するステップと、
前記ポリアミック酸溶液をイミド化するステップと、を含むポリイミドフィルムの製造方法であって、
前記第2アミック酸結合単位は、イミド化によってガラス転移温度が400℃未満の第2イミド結合単位を形成し、
前記第1アミック酸結合単位は、イミド化によってガラス転移温度が400℃以上の第1イミド結合単位を形成し、
前記ポリイミドフィルムは、前記第1イミド結合単位を39モル%~90モル%含み、機械方向(MD)の熱膨張係数および幅方向(TD)の熱膨張係数の平均が8ppm/℃以下であるポリイミドフィルムの製造方法。
【請求項2】
前記第1二無水物単量体は、ピロメリット酸二無水物(PMDA)を含み、
前記第2二無水物単量体は、3,3',4,4'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)、3,3',4,4'-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)、オキシジフタル酸二無水物(ODPA)、またはこれらの組み合わせを含み、
前記ジアミン単量体は、p-フェニレンジアミン(PPD)、4,4'-オキシジアニリン(ODA)、m-トリジン、またはこれらの組み合わせを含む、請求項
1に記載のポリイミドフィルムの製造方法。
【請求項3】
前記第2イミド結合単位は、ガラス転移温度が300℃以上~400℃未満である、請求項
1または2に記載のポリイミドフィルムの製造方法。
【請求項4】
前記第1二無水物単量体および前記第2二無水物単量体の合計モル数と前記ジアミン単量体の総モル数との比が1:0.95~0.95:1である、請求項
1~3のいずれか1項に記載のポリイミドフィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリイミドフィルム、その製造方法、およびこれを含む軟性金属箔積層板に関し、より詳しくは、ガラス転移温度、熱膨張係数などの熱的特性に優れたポリイミドフィルム、その製造方法、およびこれを含む軟性金属箔積層板に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリイミドフィルムは、機械的、熱的寸法安定性に優れ、化学的安定性を有し、電気、電子材料、宇宙、航空および電気通信分野で幅広く用いられている。ポリイミドフィルムは、部品の軽薄短小化によって微細なパターンを有する軟性回路基板材料、例えば、TAB(tape automated bonding)やCOF(chip on film)などのベースフィルムとして多く用いられている。軟性回路基板は、ベースフィルム上に金属箔を含む回路が形成されている構造が一般的であり、このような軟性回路基板を広い意味として軟性金属箔積層板(flexible metal foil clad laminate)と称する。TABやCOFを用いた加工工程はすべて高温工程を含む。例えば、COFを用いた加工工程のうち、チップボンディング工程は380℃以上の温度で進行する。この場合、ベースフィルムとして用いられたポリイミドフィルムのガラス転移温度が低ければ、ポリイミドフィルム上に形成された回路がポリイミドフィルムから剥離されるという問題がある。
本発明の背景技術は大韓民国登録特許公報第10-0656246号などに開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、ガラス転移温度、熱膨張係数などの熱的特性に優れたポリイミドフィルムを提供することである。
本発明の他の目的は、前記ポリイミドフィルムの製造方法を提供することである。
本発明のさらに他の目的は、前記ポリイミドフィルムを含む軟性金属箔積層板を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
1.本発明の一側面によれば、ポリイミドフィルムが提供される。前記ポリイミドフィルムは、ガラス転移温度が400℃以上の第1イミド結合単位と、ガラス転移温度が400℃未満の第2イミド結合単位とを含み、前記第1イミド結合単位を約39モル%~約90モル%含むことができる。
2.前記1において、前記第1イミド結合単位は、第1二無水物単量体に由来し、前記第1二無水物単量体は、ピロメリット酸二無水物(PMDA)を含むことができる。
3.前記1または2において、前記第2イミド結合単位は、第2二無水物単量体に由来し、前記第2二無水物単量体は、3,3',4,4'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)、3,3',4,4'-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)、オキシジフタル酸二無水物(ODPA)、またはこれらの組み合わせを含むことができる。
4.前記1~3のいずれか1つにおいて、前記第1イミド結合単位は、第1二無水物単量体およびジアミン単量体の結合に由来し、前記第2イミド結合単位は、第2二無水物単量体およびジアミン単量体の結合に由来し、前記ジアミン単量体は、p-フェニレンジアミン(PPD)、4,4'-オキシジアニリン(ODA)、m-トリジン、またはこれらの組み合わせを含むことができる。
5.前記1~4のいずれか1つにおいて、前記第2イミド結合単位は、ガラス転移温度が約300℃以上~400℃未満であってもよい。
6.前記1~5のいずれか1つにおいて、前記ポリイミドフィルムは、ガラス転移温度が約370℃以上であってもよい。
7.前記1~6のいずれか1つにおいて、前記ポリイミドフィルムは、機械方向(MD)および幅方向(TD)の熱膨張係数の平均が約8ppm/℃以下であってもよい。
8.本発明の他の側面によれば、ポリイミドフィルムの製造方法が提供される。前記方法は、溶媒中に第2二無水物単量体およびジアミン単量体を混合し、反応させて第2アミック酸結合単位を形成した後、第1二無水物単量体およびジアミン単量体を添加し、反応させて第1アミック酸結合単位を形成して、ポリアミック酸溶液を形成するステップと、
前記ポリアミック酸をイミド化するステップと、を含み、前記第2アミック酸結合単位は、イミド化によってガラス転移温度が400℃未満の第2イミド結合単位を形成し、前記第1アミック酸結合単位は、イミド化によってガラス転移温度が400℃以上の第1イミド結合単位を形成し、前記ポリイミドフィルムは、前記第1イミド結合単位を約39モル%~約90モル%含むことができる。
9.前記8において、前記第1二無水物単量体は、ピロメリット酸二無水物(PMDA)を含み、前記第2二無水物単量体は、3,3',4,4'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)、3,3',4,4'-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)、オキシジフタル酸二無水物(ODPA)、またはこれらの組み合わせを含み、前記ジアミン単量体は、p-フェニレンジアミン(PPD)、4,4'-オキシジアニリン(ODA)、m-トリジン、またはこれらの組み合わせを含むことができる。
10.前記8または9において、前記第2イミド結合単位は、ガラス転移温度が約300℃以上~400℃未満であってもよい。
11.前記8または10のいずれか1つにおいて、前記第1二無水物単量体および前記第2二無水物単量体の合計モル数と前記ジアミン単量体の総モル数との比が約1:0.95~約0.95:1であってもよい。
12.本発明のさらに他の側面によれば、軟性金属箔積層板が提供される。前記軟性金属箔積層板は、前記1~7のいずれか1つに記載のポリイミドフィルムまたは前記8~11のいずれか1つに記載の方法で製造されたポリイミドフィルムと、前記ポリイミドフィルム上に形成された金属箔と、を含むことができる。
【発明の効果】
【0005】
本発明は、ガラス転移温度、熱膨張係数などの熱的特性に優れたポリイミドフィルム、その製造方法、およびこれを含む軟性金属箔積層板を提供する効果を有する。
【発明を実施するための形態】
【0006】
本発明を説明するにあたり、かかる公知の技術に関する具体的な説明が本発明の要旨を不必要にあいまいにしうると判断された場合、その詳細な説明は省略する。
本明細書上で言及した「含む」、「有する」、「なる」などが使われる場合、「~のみ」が使われない以上、他の部分が追加できる。構成要素を単数で表現した場合に、特に明示的な記載事項がない限り、複数を含む場合を含む。
また、構成要素を解釈するにあたり、別の明示的記載がなくても誤差範囲を含むと解釈する。
本明細書で使われる第1、第2などの用語は多様な構成要素を説明するのに使われるが、構成要素は用語によって限定されてはならない。用語は1つの構成要素を他の構成要素から区別する目的でのみ使われる。
構成要素を解釈するにあたり、別の明示的記載がなくても誤差範囲を含むと解釈する。
本明細書において、数値範囲を示す「a~b」における「~」は、≧aであり、≦bであると定義する。
【0007】
本明細書において、「第1イミド結合単位」とは、第1二無水物単量体に由来し、第1二無水物単量体とジアミン単量体とが直接(direct)結合して形成された単位を意味することができ、「第2イミド結合単位」とは、第2二無水物単量体に由来し、第2二無水物単量体とジアミン単量体とが直接(direct)結合して形成された単位を意味することができる。
本明細書において、「第1アミック酸結合単位」は、イミド化によって第1イミド結合単位を形成することを意味することができ、「第2アミック酸結合単位」は、イミド化によって第2イミド結合単位を形成することを意味することができる。
本明細書において、「第1イミド結合単位のガラス転移温度」とは、第1イミド結合単位をなす第1二無水物単量体とジアミン単量体のみを含むポリイミドのガラス転移温度を意味することができ、「第2イミド結合単位のガラス転移温度」とは、第2イミド結合単位をなす第2二無水物単量体とジアミン単量体のみを含むポリイミドのガラス転移温度を意味することができる。
本明細書において、「第1イミド結合単位のモル%」は、使用された単量体のモル数および投入順序を考慮して計算される。例えば、第2二無水物単量体Aモルおよびジアミン単量体Bモルを混合し、反応させた後、第1二無水物単量体Cモルおよびジアミン単量体Dモルを添加し、反応させてポリアミック酸を形成し、これをイミド化してポリイミドを製造した場合、第1イミド結合単位のモル%は、{(A+B+C+D)-(2*A)}/(A+B+C+D)で計算される。
【0008】
(ポリイミドフィルム)
本発明の一側面によれば、ポリイミドフィルムが提供される。
本発明者は、ポリイミドフィルムがガラス転移温度400℃以上のイミド結合単位(以下、「第1イミド結合単位」と称される)を、ポリイミドフィルムの総イミド結合単位中、約39モル%~約90モル%含む場合、ポリイミドフィルムの熱的特性(例えば、ガラス転移温度、熱膨張係数など)に優れていることを見出して、本発明を完成するに至った。特に、このようなポリイミドフィルムは、軟性金属箔積層板に用いるのに良い優れた熱的特性を有することができる。
第1イミド結合単位は、第1二無水物単量体から、具体的には、第1二無水物単量体およびジアミン単量体の結合に由来することができ、第1二無水物単量体としては、ジアミン単量体と結合して400℃以上のガラス転移温度を有する第1イミド結合単位を形成できるものであれば、その種類が特に限定されない。例えば、第1二無水物単量体は、ピロメリット酸二無水物(PMDA)を含み、ジアミン単量体は、p-フェニレンジアミン(PPD)、4,4’-オキシジアニリン(ODA)、m-トリジン、またはこれらの組み合わせを含むことができる。
【0009】
一実施形態によれば、第1イミド結合単位は、PMDA-PPD結合単位および/またはPMDA-ODA結合単位を含むことができ、この場合、ポリイミドフィルムは、高いガラス転移温度および所定の熱膨張係数を有することができる。
第1イミド結合単位は、ガラス転移温度が400℃以上であってもよい。前記範囲で、ガラス転移温度、熱膨張係数などの熱的特性に優れたポリイミドフィルムの提供が可能である。例えば、第1イミド結合単位は、ガラス転移温度が400℃~約430℃(例えば、400℃、約405℃、約410℃、約415℃、約420℃、約425℃、または約430℃)であってもよいが、これに限定されるものではない。
第1イミド結合単位は、ポリイミドフィルム中、約39モル%~約90モル%(例えば、約39モル%、約40モル%、約41モル%、約42モル%、約43モル%、約44モル%、約45モル%、約46モル%、約47モル%、約48モル%、約49モル%、約50モル%、約51モル%、約52モル%、約53モル%、約54モル%、約55モル%、約56モル%、約57モル%、約58モル%、約59モル%、約60モル%、約61モル%、約62モル%、約63モル%、約64モル%、約65モル%、約66モル%、約67モル%、約68モル%、約69モル%、約70モル%、約71モル%、約72モル%、約73モル%、約74モル%、約75モル%、約76モル%、約77モル%、約78モル%、約79モル%、約80モル%、約81モル%、約82モル%、約83モル%、約84モル%、約85モル%、約86モル%、約87モル%、約88モル%、約89モル%、または約90モル%)を占めることができる。第1イミド結合単位が約39モル%未満の場合、所定の熱的特性を有するポリイミドフィルムの製造が困難であり、第1イミド結合単位が約90モル%を超える場合、過度にbrittleになってポリイミドフィルムの製造過程中にフィルムが割れ続ける問題がありうる。例えば、第1イミド結合単位は、ポリイミドフィルム中、約40モル%~約90モル%、他の例として約50モル%~約90モル%、さらに他の例として約60モル%~約90モル%、さらに他の例として約70モル%~約90モル%、さらに他の例として約80モル%~約90モル%、さらに他の例として約50モル%~約80モル%、さらに他の例として約60モル%~約70モル%を占めることができるが、これに限定されるものではない。
【0010】
400℃未満のガラス転移温度を有する第2イミド結合単位は、第2二無水物単量体から、具体的には、第2二無水物単量体およびジアミン単量体の結合に由来することができ、ポリイミドフィルムのガラス転移温度、熱膨張係数などの熱的特性に悪影響を及ぼすことなくポリイミドフィルムに所定の物性を提供するために、例えば、耐薬品性を高めたり、ポリイミドフィルムが過度にbrittleにならないように含まれる。第2二無水物単量体およびジアミン単量体の種類は、目的とする物性によって異なる。例えば、第2二無水物単量体は、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)、オキシジフタル酸二無水物(ODPA)、またはこれらの組み合わせを含むことができ、ジアミン単量体は、p-フェニレンジアミン(PPD)、4,4’-オキシジアニリン(ODA)、m-トリジン、またはこれらの組み合わせを含むことができ、この場合、ポリイミドフィルムのガラス転移温度、熱膨張係数などの熱的特性に悪影響を及ぼすことなくbrittleな程度を低下させることができる。
【0011】
一実施形態によれば、第2イミド結合単位のガラス転移温度は、約300℃以上~400℃未満(例えば、約300℃、約310℃、約320℃、約330℃、約340℃、約350℃、約360℃、約370℃、約380℃、約390℃、または約399℃)であってもよい。前記範囲で、ポリイミドフィルムは、ガラス転移温度、熱膨張係数などの熱的特性に優れることができる。
【0012】
一実施形態によれば、第2イミド結合単位は、BPDA-ODA結合単位を非含有であってもよい。BPDA-ODA結合単位は、ガラス転移温度が約300℃未満と低く、MDおよびTDの熱膨張係数の平均が高い方であるため、BPDA-ODA結合単位を非含有の場合、ポリイミドフィルムのガラス転移温度、熱膨張係数などの熱的特性をより優れたものにする。
一実施形態によれば、第2イミド結合単位は、ポリイミドフィルム中、約10モル%~約61モル%(例えば、約10モル%、約11モル%、約12モル%、約13モル%、約14モル%、約15モル%、約16モル%、約17モル%、約18モル%、約19モル%、約20モル%、約21モル%、約22モル%、約23モル%、約24モル%、約25モル%、約26モル%、約27モル%、約28モル%、約29モル%、約30モル%、約31モル%、約32モル%、約33モル%、約34モル%、約35モル%、約36モル%、約37モル%、約38モル%、約39モル%、約40モル%、約41モル%、約42モル%、約43モル%、約44モル%、約45モル%、約46モル%、約47モル%、約48モル%、約49モル%、約50モル%、約51モル%、約52モル%、約53モル%、約54モル%、約55モル%、約56モル%、約57モル%、約58モル%、約59モル%、約60モル%、または約61モル%)を占めることができる。前記範囲で、ポリイミドフィルムのガラス転移温度、熱膨張係数などの熱的特性に悪影響を及ぼすことなく所定の物性を達成することができる。
【0013】
一実施形態によれば、ポリイミドフィルムは、ガラス転移温度が約370℃以上であってもよい。この場合、熱的特性に優れ、例えば、高温でも寸法変化が少ない。例えば、ポリイミドフィルムのガラス転移温度は、約370℃~約420℃(例えば、約370℃、約380℃、約390℃、約400℃、約410℃、または約420℃)、他の例として約380℃以上、さらに他の例として約380℃~約420℃、さらに他の例として約385℃以上、さらに他の例として約390℃~約420℃、さらに他の例として約390℃~約410℃であってもよいが、これに限定されるものではない。
一実施形態によれば、ポリイミドフィルムは、MDとTDの熱膨張係数の平均が約8ppm/℃以下であってもよい。この場合、MDへの寸法変化が少なくなり、COFへの半導体チップボンディング時にCOF回路の累積寸法変化率が低減可能である。例えば、ポリイミドフィルムのMDとTDの熱膨張係数の平均は、約2ppm/℃~約8ppm/℃(例えば、約2ppm/℃、約2.5ppm/℃、約3ppm/℃、約3.5ppm/℃、約4ppm/℃、約4.5ppm/℃、約5ppm/℃、約5.5ppm/℃、約6ppm/℃、約6.5ppm/℃、約7ppm/℃、約7.5ppm/℃、または約8ppm/℃)、他の例として約2ppm/℃~約6ppm/℃、さらに他の例として約2ppm/℃~約4ppm/℃であってもよいが、これに限定されるものではない。
一実施形態によれば、ポリイミドフィルムの厚さは、約25μm~約50μm(例えば、約25μm、約30μm、約35μm、約40μm、約45μm、または約50μm)であってもよい。前記範囲で、spring back特性(すなわち、stiffな特性)を低下させる効果がある。例えば、ポリイミドフィルムの厚さは、約25μm~約40μm、他の例として約30μm~約38μm、さらに他の例として約30μm~約35μmであってもよいが、これに限定されるものではない。
【0014】
(ポリイミドフィルムの製造方法)
本発明の他の側面によれば、上述したポリイミドフィルムの製造方法が提供される。前記方法は、溶媒中に第2二無水物単量体およびジアミン単量体を混合し、反応させて第2アミック酸結合単位を形成した後、第1二無水物単量体およびジアミン単量体を添加し、反応させて第1アミック酸結合単位を形成して、ポリアミック酸溶液を形成するステップと、前記ポリアミック酸をイミド化するステップと、を含み、前記第2アミック酸結合単位は、イミド化によってガラス転移温度が400℃未満の第2イミド結合単位を形成し、前記第1アミック酸結合単位は、イミド化によってガラス転移温度が400℃以上の第1イミド結合単位を形成し、前記ポリイミドフィルムは、前記第1イミド結合単位を約39モル%~約90モル%含むことができる。第1二無水物単量体、第2二無水物単量体、ジアミン単量体、第1イミド結合単位、第2イミド結合単位などについては上述したので、これに関する具体的な説明は省略する。
【0015】
まず、溶媒中に第2二無水物単量体およびジアミン単量体を混合し、反応させて第2アミック酸結合単位を形成した後、第1二無水物単量体およびジアミン単量体を添加し、反応させて第1アミック酸結合単位を形成して、ポリアミック酸溶液を形成することができる。このように、第2アミック酸結合単位を先に形成した後、第1アミック酸結合単位を形成する場合、分子構造の制御が容易であり、最終的に得られるポリイミドフィルムに要求される所定の熱的特性をより容易に達成することができる。
溶媒としては、ポリアミック酸が溶解できる溶媒であれば特に限定されず、例えば、非プロトン性極性有機溶媒(aprotic polar organic solvent)が使用できる。非プロトン性極性有機溶媒の非制限的な例として、N,N’-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N’-ジメチルアセトアミド(DMAc)などのアミド系溶媒、p-クロロフェノール、o-クロロフェノールなどのフェノール系溶媒、N-メチルピロリドン(NMP)、ガンマ-ブチロラクトン(GBL)、ジグリム(Diglyme)などが挙げられ、これらは単独でまたは2種以上組み合わされて使用可能である。場合によっては、トルエン、テトラヒドロフラン、アセトン、メチルエチルケトン、メタノール、エタノール、水などの補助的溶媒を用いて、ポリアミック酸の溶解度を調節することもできる。一実施形態において、有機溶媒は、アミド系溶媒であってもよく、例えば、N,N-ジメチルホルムアミドおよびN,N-ジメチルアセトアミドであってもよいが、これに限定されるものではない。
【0016】
一実施形態によれば、第1二無水物単量体および第2二無水物単量体の合計モル数とジアミン単量体の総モル数とは、実質的に等モルであってもよい。例えば、第1二無水物単量体および第2二無水物単量体の合計モル数とジアミン単量体の総モル数との比は、約1:0.95~約0.95:1、他の例として約1:0.96~約0.96:1、さらに他の例として約1:0.97~約0.97:1であってもよいが、これに限定されるものではない。
単量体の反応は、例えば、約0℃~約80℃の温度で約10分~約30時間行われ、反応前に少量の末端封止剤を添加して反応を制御することもできるが、これに限定されるものではない。
【0017】
一実施形態によれば、ポリアミック酸は、重量平均分子量が約5万~約50万(例えば、約5万、約10万、約15万、約20万、約25万、約30万、約35万、約40万、約45万、または約50万)であってもよい。前記範囲で、ポリイミドフィルムの機械的特性に優れることができる。ここで、「重量平均分子量」は、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)を用いて測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量であってもよい。例えば、ポリアミック酸の重量平均分子量は、約10万~約40万、他の例として約15万~約30万であってもよいが、これに限定されるものではない。
一実施形態によれば、ポリアミック酸は、粘度が約1万cP~約30万cP(例えば、約1万cP、約5万cP、約10万cP、約15万cP、約20万cP、約25万cP、または約30万cP)であってもよい。前記範囲で、安定的なフィルムの製造が可能である。ここで、「粘度」は、Haake社のRS600を用いて、25℃、shear rate 1 1/sの条件下でparallel plate方法を行って測定されるが、これに限定されるものではない。例えば、ポリアミック酸の粘度は、約3万cP~約25万cP、他の例として約5万cP~約20万cPであってもよいが、これに限定されるものではない。
一実施形態によれば、ポリアミック酸の固形分含有量は、約5重量%~約15重量%(例えば、約5重量%、約6重量%、約7重量%、約8重量%、約9重量%、約10重量%、約11重量%、約12重量%、約13重量%、約14重量%、または約15重量%、他の例として約7重量%~約13重量%)であってもよいし、前記範囲で、ポリアミック酸の保存安定性を高めることができるが、これに限定されるものではない。
【0018】
一実施形態によれば、ポリイミドフィルムの摺動性、熱伝導性、導電性、コロナ耐性、ループ硬さなどのフィルムの多様な特性を改善する目的でポリアミック酸の製造時に添加剤を追加することができる。このような添加剤の例としては、充填剤が挙げられ、このような充填剤としては、シリカ、酸化チタン、アルミナ、窒化ケイ素、窒化ホウ素、リン酸水素カルシウム、リン酸カルシウム、雲母などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。添加剤の含有量は特に限定されず、本発明の目的を損なわない範囲内で自由に選択可能である。
【0019】
その後、ポリアミック酸をイミド化することができる。
ポリアミック酸をイミド化するために、ポリアミック酸に脱水剤およびイミド化剤を添加することができる。脱水剤とは、ポリアミック酸に対する脱水作用により閉環反応を促進できるものであれば特に限定されず、脱水剤の例としては、酢酸無水物などが挙げられる。イミド化剤とは、ポリアミック酸に対する閉環反応を促進できるものであれば特に限定されず、イミド化剤の例としては、3級アミン、例えば、キノリン、イソキノリン、β-ピコリン、ピリジンなどが挙げられる。脱水剤およびイミド化剤の含有量は特に限定されるものではないが、例えば、ポリアミック酸中のアミック酸基1モルに対して、脱水剤は約3.5モル~約6.0モル(例えば、約3.5モル、約4.0モル、約4.5モル、約5.0モル、約5.5モル、または約6.0モル)添加され、イミド化剤は約0.7モル~約1.2モル(例えば、約0.7モル、約0.8モル、約0.9モル、約1.0モル、約1.1モル、または約1.2モル)添加されてもよい。
一実施形態によれば、ポリアミック酸をイミド化するステップは、ポリアミック酸に脱水剤およびイミド化剤を混合してポリイミドフィルム用組成物を製造するステップと、前記組成物を製膜するステップとを含むことができる。製膜は、ポリイミドフィルム用組成物を基材上にフィルム形状に塗布し、約30℃~約200℃の温度で約15秒~約30分間加熱乾燥させてゲルフィルムを製造した後、基材を除去したゲルフィルムを約200℃~約500℃の温度で約15秒~約30分間熱処理して行われるが、これに限定されるものではない。
上述したポリイミドフィルムの製造方法で製造されたポリイミドフィルムは、熱的特性に優れ、これを用いた高温加工工程で優れた安定性を有することができる。
【0020】
(軟性金属箔積層板)
本発明のさらに他の側面によれば、上述したポリイミドフィルムを含む軟性金属箔積層板が提供される。このような軟性金属箔積層板は、ポリイミドフィルムの一面または両面に金属箔が形成されたものであってもよい。
軟性金属箔積層板に含まれるポリイミドフィルムおよび金属箔の厚さは特に限定されない。例えば、ポリイミドフィルムの厚さは、約25μm~約50μm(例えば、約25μm~約40μm)であり、金属箔の厚さは、約30μm~約38μm(例えば、約30μm~約35μm)であってもよい。
【0021】
軟性金属箔積層板は、当該技術分野にて通常用いられる多様な方法で製造できる。例えば、軟性金属箔積層板は、(i)金属箔上にポリイミドの前駆体であるポリアミック酸をキャスティングした後、イミド化するキャスティング法、(ii)スパッタリングによってポリイミドフィルム上に直接金属層を形成するメタライジング法、(iii)ポリイミドフィルムと金属箔とを熱と圧力で接合させるラミネート法などの方法で製造できる。
上述したポリイミドフィルムを含む軟性金属箔積層板は、ポリイミドフィルムの高いガラス転移温度によってこれを用いた高温加工工程中にも金属箔がポリイミドフィルムから剥離されない。
【実施例】
【0022】
以下、本発明の好ましい実施例を通じて本発明の構成および作用をより詳細に説明する。ただし、これは本発明の好ましい例として提示されたものであり、いかなる意味でもこれによって本発明が制限されると解釈されない。
【0023】
実施例1
反応器にジメチルホルムアミド(DMF)406.7gを投入し、第2二無水物単量体として3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)0.025モル(7.29g)およびジアミン単量体としてp-フェニレンジアミン(PPD)0.223モル(24.11g)を投入した後、25℃で1時間反応させた。前記反応器に、第1二無水物単量体としてピロメリット酸二無水物(PMDA)0.218モル(47.56g)およびジアミン単量体として4,4’-オキシジアニリン(ODA)0.025モル(4.96g)を添加し、30℃で1時間反応させてポリアミック酸溶液を製造した。
このように製造されたポリアミック酸溶液に、アミック酸基1モルあたり、脱水剤として酢酸無水物を3.5モル比で、イミド化触媒としてイソキノリン(IQ)を1.1モル比で添加してポリイミドフィルム製造用組成物を得た。
前記組成物をドクターブレードを用いてSUS板(100SA、Sandvik社)上に300μmの厚さにキャスティングし、100℃で5分間乾燥させてゲルフィルムを製造した。前記ゲルフィルムをSUS板と分離した後、200℃で5分間、400℃で5分間順次に熱処理して、35μmの厚さを有するポリイミドフィルムを製造した。
【0024】
実施例2~6および比較例1および2
BPDA、PPD、PMDA、およびODAの使用量を表1に記載の通りに変更したことを除けば、実施例1と同様の方法を用いてポリイミドフィルムを製造した。
【0025】
評価例1:ガラス転移温度の測定
熱機械分析器(Q800、TA社)を用いて、実施例および比較例で製造したポリイミドフィルムを幅4mm、長さ20mmに切断した後、窒素雰囲気下、5℃/minの速度で常温から550℃まで昇温させてガラス転移温度を測定し、その結果を下記表1に示した。ガラス転移温度は、貯蔵弾性率(storage modulus)と損失弾性率(loss modulus)との比によって計算されるtanδの最大ピークと判定した。
【0026】
評価例2:熱膨張係数(CTE)の測定
熱機械分析器(Q800、TA社)を用いて、実施例および比較例で製造したポリイミドフィルムを幅2mm、長さ10mmに切断した後、窒素雰囲気下、0.05Nの張力を加えながら、10℃/minの速度で常温から480℃まで昇温させた後、再度10℃/minの速度で冷却しながら50℃から400℃の区間の傾きを測定して熱膨張係数を測定し、その結果を下記表1に示した。
【0027】
【0028】
前記表1を通して確認できるように、第1イミド結合単位を本発明の範囲内に含む実施例1~6の場合、ガラス転移温度が高く、熱膨張係数が低かった。
これに対し、第1イミド結合単位が本発明の範囲を超える比較例1の場合、過度にbrittleになってポリイミドフィルムの製造過程中にフィルムが割れる現象が発生して、正常なポリイミドフィルムを得ることができなかった。また、第1イミド結合単位が本発明の範囲に及ばない比較例2の場合、ガラス転移温度が低い問題があった。
本発明の単純な変形乃至変更はこの分野における通常の知識を有する者によって容易に実施可能であり、このような変形や変更はすべて本発明の領域に含まれる。