(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-26
(45)【発行日】2024-04-03
(54)【発明の名称】ローズウッド抽出物を含む組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/9789 20170101AFI20240327BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20240327BHJP
【FI】
A61K8/9789
A61Q19/00
(21)【出願番号】P 2022537764
(86)(22)【出願日】2020-12-18
(86)【国際出願番号】 EP2020087214
(87)【国際公開番号】W WO2021123302
(87)【国際公開日】2021-06-24
【審査請求日】2022-08-17
(32)【優先日】2019-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】391023932
【氏名又は名称】ロレアル
【氏名又は名称原語表記】L’OREAL
【住所又は居所原語表記】14 Rue Royale,75008 PARIS,France
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133086
【氏名又は名称】堀江 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】マチュー・シャブリランジェ
(72)【発明者】
【氏名】ティエリー・コトン
(72)【発明者】
【氏名】サンドリーン・マットン-デュボ
【審査官】阪▲崎▼ 裕美
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/210947(WO,A1)
【文献】特開2010-195746(JP,A)
【文献】特表2021-522199(JP,A)
【文献】特開2014-084298(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第108815057(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第106137843(CN,A)
【文献】韓国公開特許第10-2014-0137767(KR,A)
【文献】中国特許出願公開第109394616(CN,A)
【文献】Mintel GNPD,Cream (ID: 5174463),Mintel GNPD [online],2017年10月,[検索日;2023年6月28日]
【文献】Mintel GNPD,Rose Drop Night Peeling Concentrate (ID: 5475687),Mintel GNPD [online],2018年3月,[検索日;2023年6月28日]
【文献】Mintel GNPD,Siamese Rose Nourishing and Anti-Aging Organic Hand Cream (ID: 6267845),Mintel GNPD [online],2019年1月,[検索日;2023年6月28日]
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00-8/99
A61Q 1/00-90/00
A61K 36/185
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
組成
物であって、
少なくとも1種のローズウッド抽出物であって、前記抽出物の質量に対して少なくとも20質量%のポリフェノールを含む、抽出物、並びに
少なくとも1種の溶媒であって、
少なくとも3つのヒドロキシ官能基を含むポリオールであって、その場合前記ポリオールが前記組成物の唯一の溶媒である、ポリオール、
少なくとも3つのヒドロキシ官能基を含む少なくとも1種のポリオール及び水の混合物、並びに
少なくとも3つのヒドロキシ官能基を含む少なくとも1種のポリオール及び2から4個の炭素原子を含む少なくとも1種のジオールの混合物
から選択される、溶媒
を含み、
ローズウッド抽出物の溶媒に対する質量比が、厳密に7:13未満であ
り、少なくとも0.01であり、ポリフェノールを含む前記ローズウッド抽出物が、前記組成物の総質量に対して30質量%以下の量で存在する、
組成
物。
【請求項2】
ポリフェノールを含む前記ローズウッド抽出物が
、前記組成物の総質量に対して少なくとも0.01質量
%の量で存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
ローズウッド抽出物の溶媒に対する質量比が、0.5以
下である、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記ローズウッド抽出物が、前記抽出物の質量に対して少なくとも30質量%のポリフェノールを含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記ローズウッド抽出物が、バラの木の茎及び/又は葉及び/又は吸枝から得ら
れる、請求項1から4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
少なくとも3つのヒドロキシ官能基を含む前記ポリオールが、少なくとも2個の炭素原
子を有する炭化水素鎖を含み、少なくとも3つのヒドロキシ基を有する、請求項1から5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
少なくとも3つのヒドロキシ官能基を含む前記ポリオールが、グリセリン及びその誘導体、並びに少なくとも3つのヒドロキシ官能基を含むグリコール及びその誘導体から選択さ
れる、請求項1から6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
本発明による前記ローズウッド抽出物が、前記組成物の総質量に対して少なくとも1質量%の量で存在する場合、少なくとも3つのヒドロキシ官能基を含む前記ポリオールが、前記組成物の総質量に対して少なくとも35質量
%の量で存在する、請求項1から7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
2から4個の炭素原子を含む前記ジオールが、直鎖状炭素鎖を含むジオールで
ある、請求項1から8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
ケラチン物
質の美容的ケア方法であって、前記ケラチン物質上に請求項1から9のいずれか一項に記載の組成物を適用する工程を含む、方法。
【請求項11】
酸化的皮膚ストレスに対処するための、請求項1から9のいずれか一項に記載の組成物の美容的使用。
【請求項12】
皮膚老化の兆
候に対処するための、請求項1から9のいずれか一項に記載の組成物の美容的使用。
【請求項13】
請求項1から9のいずれか一項に記載の少なくとも1種の組成物、並びに
少なくとも1つの水性相及び/又は少なくとも1つの油性相を含む少なくとも1種の美容用組成物
を含むキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリフェノールが豊富なローズウッド(rosewood)抽出物を含む、組成物、好ましくは美容用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒト皮膚は、真皮と真皮の表面を覆う表皮との2つの主な層で形成されている。天然ヒト表皮は、主に3タイプの細胞から構成され、それらは、大部分を占めるケラチノサイト、メラノサイト、及びランゲルハンス細胞である。これらの細胞タイプはそれぞれ、身体における皮膚が果たす重要な役割、特に外部攻撃(気候、紫外線、タバコ等)から身体を保護する役割のために、それらの特異的な機能を介して寄与し、「バリア機能」として既知である。
【0003】
表皮は、90%がケラチノサイトで形成された角質化層状単層扁平上皮である。表皮から真皮を分離する基底膜細胞の、表皮表面への進行性の分化は、皮膚表面に移動しそれらが剥離されるケラチノサイトの分化を特に含む。
【0004】
表皮の老化は、主にその厚さの減少によって現れる。表皮萎縮症は、ケラチノサイト増殖が減速し、老化したケラチノサイトが蓄積した結果である。角質層はくすんでくる。
【0005】
落屑は、皮膚(the kin)の上層を形成する表皮が常に再生しているという事実と関連する自然現象である。表皮はいくつかの細胞層で形成され、その最深部は未分化細胞で形成された基底層である。経時的に、これらの細胞は、落屑によって消失する死滅細胞である角質細胞が表皮表面に形成されるまで、分化し、表皮表面に移動し、それらのさまざまな層を形成することになる。表面でのこの損失は、基底層から表皮表面への細胞の移動によって相殺される。これは皮膚の永久的な再生である。角質層の強制的な除去は、再生を促進し、老化に対処する(combat)助けとなる。
【0006】
同時に、これらの細胞はその分化を継続し、その最終的な段階は角質細胞である。実際、これらは、表皮の最終層、すなわち、角質層としても知られる最外層を形成する死滅細胞である。
【0007】
更に、経時的及び/又は化学線的老化の進行において、皮膚は酸化的ストレスにさらされ、これらは、反応性酸素種(ROS):スーパーオキシドラジカルO2
-、過酸化水素H2O2、ヒドロキシルラジカルHO°、一重項酸素1O2又は窒素(RNS:ペルオキシナイトライトONOO、一酸化窒素(NO)による全ての細胞の生物学的高分子(DNA、脂質、タンパク質)の酸化的攻撃としてまとめられることがある。この酸化的ストレスは、生理学的であるか又は外部因子、例えば、UV、汚染又はタバコによって引き起こされる場合があり、細胞及び組織損傷を誘発し、これらが皮膚老化の一因となる。
【0008】
皮膚に関しては、UVA光線(320~400nm)が主な酸化的皮膚ストレス源である。これらは、酸素に必要なエネルギーを伝達する発光団によって吸収されて、反応性一重項状態(1O2)となる。UVA光線はまた、O2がスーパーオキシドアニオン(O2°-)に還元されるのを誘発し、そしてスーパーオキシドジスムターゼ(SOD)酵素によって過酸化水素(H2O2)に急速に変換する。次いでH2O2は、第一鉄イオン(フェントン反応)の存在下で又はスーパーオキシドラジカルアニオン(ハーバーワイス)によってヒドロキシルラジカル(OH°)に還元される。ヒドロキシルラジカルは最も反応性が高く、任意の隣接する分子RHから水素を除去して、ペルオキシ及びアルコキシルラジカル(ROO°及びRO°)の前駆体形態であるアルキルラジカル(R°)を得ることができ、これらは自己酸化中の増殖期に関与している。酸素のこれらの反応形態は相互に依存する。
【0009】
その結果、皮膚老化を制限するために、酸化的皮膚ストレスに対処することが重要である点が明確に理解される。
【0010】
酸化的皮膚ストレスに対処するための抗酸化活性剤が提案される。
【0011】
後者はポリフェノールを特に含む。この化合物は、特定のフラボノイドポリフェノール、例えば、エピガロカテキン、エピカテキン3-ガレート、エピガロカテキン3-ガレート、バイカリン、タキシフォリン、ケルセチン、ヘスペレチン又はゲニステイン;又は非フラボノイドポリフェノール、例えば、レスベラトロールである。これらのポリフェノールのうち、いくつかは植物抽出物由来のものである。
【0012】
しかし、大量のポリフェノールを含む植物抽出物は、水中での溶解性の問題を一般的に示す。更に、それらは組成物に濁った外観を与える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【発明の概要】
【0014】
本発明者らは、大量のポリフェノールを含む特定の植物抽出物と、特定のグリコール、例えばグリセロールとを合わせると、これらのポリフェノールを親水性媒体中に可溶化させることが可能になり、非混濁の安定な組成物が得られることを発見した。
【0015】
したがって、本発明は、
ポリフェノールを含む少なくとも1種のローズウッド抽出物と、
- 少なくとも3つのヒドロキシ官能基を含むポリオールであって、そして、組成物の唯一の溶媒である前記ポリオール、
- 少なくとも3つのヒドロキシ官能基を含む少なくとも1種のポリオールと水との混合物、及び
- 少なくとも3つのヒドロキシ官能基を含む少なくとも1種のポリオールと、2から4個の炭素原子を含む少なくとも1種のジオールとの混合物
から選択される少なくとも1種の溶媒と
を含み、
ローズウッド抽出物の溶媒に対する質量比が厳密には7:13未満である
組成物に関する。
【0016】
本発明による組成物は好ましくは美容用組成物である。
【0017】
実際、例で示すように、少なくとも3つのヒドロキシ官能基を含むポリオール、例えばグリセロールは、植物抽出物中に含まれるポリフェノールを可溶化して、均質で、同時に透明で安定な本発明による組成物を得ることを可能にする。
【0018】
「安定な」組成物という用語は、遠心分離後、特に900g、室温で1時間遠心分離後、少なくとも最大24時間沈降を示さない組成物を示す。更に、組成物は、遠心分離後、室温で、4℃で、37℃及び45℃で最大2カ月沈降を示さなかった場合、「安定」とみなされる。
【0019】
本発明はまた、
本発明による少なくとも1種の組成物と、
少なくとも1つの水性相及び/又は少なくとも1つの油性相を含む少なくとも1種の美容用組成物と
を含むキットに関する。
【0020】
本発明はまた、ケラチン物質、好ましくは皮膚の美容的ケア方法であって、前記ケラチン物質上に本発明による組成物を適用する工程を含む、方法に関する。
【0021】
本発明はまた、酸化的皮膚ストレスに対処するための、本発明による組成物の美容的使用に関する。本発明はまた、皮膚老化の兆候、例えば、小じわ(wrinkle)又はしわ(line)等に対処するための、本発明による組成物の美容的使用に関する。
【発明を実施するための形態】
【0022】
ポリフェノールを含むローズウッド抽出物
本発明による組成物は、ポリフェノールを含む少なくとも1種のローズウッド抽出物を含む。
【0023】
ポリフェノールは、植物界で広く認められる有機分子のファミリーを表す。「ポリフェノール」という用語は、少なくとも2つのフェノール基を含む化合物を意味し;これらのフェノール基は多かれ少なかれ複雑な構造に会合することができ、これらは一般的に高分子である。
【0024】
ポリフェノール中でも、フラボノイドポリフェノール、例えば、エピガロカテキン、エピカテキン3-ガレート、エピガロカテキン3-ガレート、バイカリン、タキシフォリン、ケルセチン、ヘスペレチン又はゲニステイン;又は非フラボノイドポリフェノール、例えば、レスベラトロールが特に言及される場合がある。
【0025】
本発明によるローズウッド抽出物は、ポリフェノールが豊富な抽出物である。ローズウッド抽出物は、抽出物の総質量に対して、少なくとも20質量%、優先的には、少なくとも30質量%のポリフェノールを含む。
【0026】
典型的には、ローズウッド抽出物は、バラの木(rose bush)の茎及び/又は葉及び/又は吸枝(suckers)から得られる。好ましくは、使用されるバラは、バラ属のものである、好ましくは品種はロサ・ケンティフォリア(Rosa centifolia)(Rosa xcentifolia)である。好ましくは、使用されるバラは南フランスで栽培され、茎及び/又は葉及び/又は吸枝は、冬の終わりに切断されている。
【0027】
抽出物は、典型的には、以下の方法に従って得られる:
a)バラの木の茎及び/又は葉及び/又は吸枝を水アルコール混合物中で、好ましくは90℃以下の温度で抽出して、抽出物を含む水アルコール混合物を得ること;
b)a)で得られた抽出物を含む水アルコール混合物から植物デブリ及び/又は固体粒子を除去し、その結果、ローズウッド抽出物を含む液体を得ること。工程b)は、一次分離工程、遠心分離工程及び/又はろ過工程を特に含んでいてもよい。好ましくは、工程b)は、a)で得られた抽出物を含む水アルコール混合物から特に分離することによって植物デブリを除去し、次いで特に遠心分離及び/又はろ過によって固体粒子を除去することを含む;
c)次いで、好ましくは、b)で得られたローズウッド抽出物を含む液体を霧化して、粉末形態としてポリフェノールを含むローズウッド抽出物を得ること。
【0028】
好ましくは、ポリフェノールを含む本発明によるローズウッド抽出物は粉末形態で提示される。典型的には、粉末の色は暗く、茶色から黒色である。
【0029】
好ましくは、ポリフェノールを含む本発明によるローズウッド抽出物は、組成物の総質量に対して35質量%以下、好ましくは30質量%以下の量で存在する。
【0030】
好ましくは、本発明によるポリフェノールを含むローズウッド抽出物は、組成物の総質量に対して少なくとも0.01質量%、好ましくは少なくとも0.05質量%、好ましくは少なくとも0.1質量%、好ましくは少なくとも1質量%、好ましくは少なくとも1.5質量%、好ましくは少なくとも2質量%の量で存在する。
【0031】
溶媒
本発明による組成物は、
- 少なくとも3つのヒドロキシ官能基を含むポリオールであって、そして、組成物の唯一の溶媒である前記ポリオール、
- 少なくとも3つのヒドロキシ官能基を含む少なくとも1種のポリオールと水との混合物、及び
- 少なくとも3つのヒドロキシ官能基を含む少なくとも1種のポリオールと、2から4個の炭素原子を含む少なくとも1種のジオールとの混合物
から選択される少なくとも1種の溶媒を含む。
【0032】
更に、本発明による組成物は、好ましくは、組成物の総質量に対して少なくとも0.01質量%、少なくとも2質量%、少なくとも4質量%、少なくとも6質量%、少なくとも10質量%、少なくとも20質量%、少なくとも35質量%の少なくとも3つのヒドロキシ官能基を含むポリオールを含む。
【0033】
本発明による少なくとも3つのヒドロキシ官能基を含むポリオールという用語は、少なくとも2個の炭素原子、好ましくは2から50個の炭素原子、好ましくは3から20個の炭素原子を有し、好ましくは2から10個の炭素原子、優先的には、2から6個の炭素原子を有し、少なくとも3つのヒドロキシ基を有する炭化水素鎖を意味する。本発明において使用されるポリオールの平均分子量は、1000g/mol以下、好ましくは85から500g/molの間であってもよい。
【0034】
少なくとも3つの官能基を含むポリオールは、天然ポリオールであっても合成ポリオールであってもよい。ポリオールは、直鎖状、分岐状又は環式分子構造を有していてもよい。
【0035】
少なくとも3つのヒドロキシ官能基を含むポリオールは、グリセリン及びその誘導体、並びに少なくとも3つのヒドロキシ官能基を含むグリコール及びその誘導体から選択してもよい。少なくとも3つのヒドロキシ官能基を含むポリオールは、グリセリン(又はグリセロール)、ジグリセリン(又はジグリセロール)、糖、例えばソルビトール、及びこれらの混合物からなる群から選択してもよい。
【0036】
より具体的には、少なくとも3つのヒドロキシ官能基を含むポリオールはグリセリンである。
【0037】
本発明によれば、ローズウッド抽出物の溶媒に対する質量比は、厳密には7:13未満(すなわち0.538)である。好ましくは、ローズウッド抽出物の溶媒に対する質量比は0.5以下、好ましくは0.45以下である。好ましくは、ローズウッド抽出物の溶媒に対する質量比は少なくとも0.01、好ましくは少なくとも0.02である。
【0038】
本発明によるローズウッド抽出物が、組成物の総質量に対して少なくとも1質量%の量で存在する場合、本発明による少なくとも3つのヒドロキシ官能基を含むポリオールは、組成物の総質量に対して少なくとも35質量%、好ましくは少なくとも40質量%、好ましくは少なくとも45質量%の量で存在する。
【0039】
本発明によるローズウッド抽出物が、組成物の総質量に対して少なくとも1質量%の量で存在する場合、本発明による少なくとも3つのヒドロキシ官能基を含むポリオールは、組成物の総質量に対して35%から99質量%の範囲、好ましくは40%から95質量%の範囲、優先的には、50%から90質量%の範囲の濃度で存在してもよい。
【0040】
少なくとも3つのヒドロキシ官能基を含むポリオールは、単独で使用することができ;そして唯一の溶媒である。この場合、本発明によるローズウッド抽出物が、組成物の総質量に対して少なくとも1質量%の量で存在する場合、本発明による少なくとも3つのヒドロキシ官能基を含むポリオールは、組成物の総質量に対して35%から99質量%の範囲、好ましくは50%から98.5質量%の範囲、優先的には、60%から98質量%の範囲の濃度で存在してもよい。特に、少なくとも3つのヒドロキシ官能基を含むポリオールが単独で(単一の/唯一の溶媒として)使用される場合、組成物は、水及び/又は2から4個の炭素原子を含むジオールを含むその他の溶媒を含まない。典型的には、少なくとも3つのヒドロキシ官能基を含むポリオールが単独で(単一の溶媒として)使用される場合、組成物は、水、ジプロピレングリコール及び/又はペンチレングリコールを含まない。
【0041】
更なる実施形態によれば、溶媒は、少なくとも3つのヒドロキシ官能基を含む少なくとも1種のポリオールと水との混合物である。この場合、本発明によるローズウッド抽出物が、組成物の総質量に対して少なくとも1質量%の量で存在する場合、本発明による少なくとも3つのヒドロキシ官能基を含むポリオールは、組成物の総質量に対して35%から90質量%の範囲の濃度で存在してもよく、水は、好ましくは10%から65質量%の範囲、優先的には、20%から55質量%の範囲の濃度で存在する。
【0042】
更なる実施形態によれば、溶媒は、少なくとも3つのヒドロキシ官能基を含む少なくとも1種のポリオールと、2から4個の炭素原子を含む少なくとも1種のジオールとの混合物である。好ましくは、2から4個の炭素原子を含むジオールは直鎖状炭素鎖を含むジオールであり、好ましくはジオールはプロパンジオール、好ましくはプロパン-1,2-ジオールである。本発明によるローズウッド抽出物が、組成物の総質量に対して少なくとも1質量%の量で存在する場合、本発明による少なくとも3つのヒドロキシ官能基を含むポリオールは、組成物の総質量に対して35%から90質量%、好ましくは45%から55質量%の範囲の濃度で存在してもよく、2から4個の炭素原子を含むジオールは、好ましくは40%から70質量%の範囲、優先的には、45%から55質量%の範囲の濃度で存在する。
【0043】
好ましくは、本発明による組成物は、
ポリフェノールを含む少なくとも1種のローズウッド抽出物と、
- 少なくとも3つのヒドロキシ官能基を含むポリオールであって、そして、組成物の唯一の溶媒である前記ポリオール、
- 少なくとも3つのヒドロキシ官能基を含む少なくとも1種のポリオールと水との混合物、及び
- 少なくとも3つのヒドロキシ官能基を含む少なくとも1種のポリオールと、2から4個の炭素原子を含む少なくとも1種のジオールとの混合物
から選択される少なくとも1種の溶媒と
からなり、
ローズウッド抽出物の溶媒に対する質量比が厳密には7:13未満である。
【0044】
好ましくは、このローズウッド抽出物の溶媒に対する質量比は0.5以下、好ましくは0.45以下である。好ましくは、ローズウッド抽出物の溶媒に対する質量比は、少なくとも0.01、好ましくは少なくとも0.02である。
【0045】
本発明によるキット
本発明はまた、
少なくとも1種の本発明による組成物(「組成物A」とも称される)と、
少なくとも1つの水性相及び/又は少なくとも1つの油性相を含む少なくとも1種の美容用組成物(「組成物B」とも称される)と
を含むキットに関する。
【0046】
本発明による組成物は上述のようなものである。好ましくは、この組成物は、ピペット中に包装されており、このピペットは、混合前に切断し、ケラチン物質、好ましくは皮膚に適用することができる。
【0047】
典型的には、本発明による組成物(組成物A)は少なくとも1つの水性相及び/又は少なくとも1つの油性相を含む美容用組成物(組成物B)と混合し、次いでケラチン物質、特に皮膚に適用される。
【0048】
少なくとも1つの水性相及び/又は少なくとも1つの油性相を含む美容用組成物は、エマルション又はゲルであってもよい。好ましくは、そのような組成物は、水性相及び油性相を含み、前記水性及び油性相は上記で定義されたようなものである。好ましくは、そのような組成物は水中油エマルションである。
【0049】
水性相
組成物Bは、生理学的に許容される水性媒体を含んでいてもよい。「生理学的に許容される」は、ケラチン物質に適合する媒体を意味する。
【0050】
組成物Bは、好ましくは、水、並びに任意選択で、例えば、直鎖状又は分岐状C2~C4アルカノール、例えば、エタノール及びイソプロパノール、プロパノール、ブタノール;ポリオール;及びこれらの混合物から選択される25℃で水に溶解性の有機溶媒を含む水性媒体を含む。
【0051】
ポリオールは、少なくとも2個の炭素原子、好ましくは2から50個の炭素原子、好ましくは4から20個の炭素原子、好ましくは2から10個の炭素原子を有し、優先的には、2から6個の炭素原子を有し、少なくとも2つのヒドロキシ基を有する炭化水素鎖を有する化合物から選択してもよい。ポリオールは天然ポリオールであっても合成ポリオールであってもよい。ポリオールは、直鎖状、分岐状又は環式分子構造を有していてもよい。
【0052】
このポリオールは、グリセリン及びその誘導体、並びにグリコール及びその誘導体から選択してもよい。ポリオールは、特に5から50個のエチレンオキシド基を有する、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブチレングリコール、ペンチレングリコール、ヘキシレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,5-ペンタンジオール、オクタン1,2-ジオール、ポリエチレングリコール、及び糖、例えばソルビトール、並びにこれらの混合物から構成される群から選択してもよい。
【0053】
前記ポリオールは、組成物Bの総質量に対して2%から30質量%の範囲、好ましくは3%から25質量%の範囲、優先的には、5%から20質量%の範囲の量で存在してもよい。
【0054】
組成物Bは、一般的に、組成物の総質量に対して10から95質量%、好ましくは40から80%の水を含む。
【0055】
有機溶媒の量は、例えば、組成物Bの総質量に対して0から30質量%、好ましくは0.5から25質量%、より好ましくは5から20質量%、更により好ましくは10から22質量%の範囲であってもよい。
【0056】
油性相
組成物Bは少なくとも1つの油性相を含んでいてもよい。組成物が油性相を含む場合、この油性相は、好ましくは、少なくとも1種の油、特に化粧用油を含む。それは、他の脂肪を更に含んでいてもよい。
【0057】
組成物に使用するのに好適な油として、例えば、
- 動物由来の炭化水素油、例えば、ペルヒドロスクアレン、
- 植物由来の炭化水素油、例えば、4から10個の炭素原子を有する液状脂肪酸トリグリセリド、例えば、ヘプタン酸若しくはオクタン酸トリグリセリド又は、例えば、ヒマワリ油、トウモロコシ油、ダイズ油、パンプキン油、グレープシード油、ゴマ油、ヘーゼルナッツ油、アプリコット油、マカダミア油、アララ油、ヒマワリ油、ヒマシ油、アボカド油、カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド、例えば、Stearineries Dubois社によって販売されているもの若しくはDynamit Nobel社によってMiglyol「810」、「812」及び「818」の商品名で販売されているもの、ホホバ油、シアバター油、
- エステル及び合成エステル、特に脂肪酸、例えば、式R1COOR2及びR1OR2(式中、R1は8から29個の炭素原子を有する脂肪酸残基であり、R2は、3から30個の炭素原子を含む分岐状又は非分岐状の炭化水素鎖である)を有する油、例えば、Purcellin油、イソノナン酸イソノニル、ミリスチン酸イソプロピル、エチル-2-ヘキシルパルミテート、オクチル-2-ドデシルステアレート、オクチル-2-ドデシルエルケート、イソステアリルイソステアレート;ヒドロキシル化エステル、例えば、乳酸イソステアリル、ヒドロキシステアレート、オクチルドデシルヒドロキシステアレート、リンゴ酸ジイソステアリル、クエン酸トリイソセチル等;脂肪アルコールのヘプタノエート、オクタノエート、デカノエート;ポリオールエステル、例えば、プロピレングリコールジオクタノエート、ネオペンチルグリコールジヘプタノエート及びジエチレングリコールジイソノナノエート;並びにペンタエリスリトールエステル、例えば、ペンタエリスリチルテトライソステアレート又はペンタエリスリチルテトラオクタノエート、
- 無機又は合成由来の直鎖状又は分岐状炭化水素、例えば、揮発性又は非揮発性パラフィン油及びその誘導体、10から20個の炭素原子を含む分岐状鎖を有する炭化水素油、例えば、イソヘキサデカン、イソドデカン、イソパラフィン及びこれらの混合物、ワセリン、ポリデセン、水素化ポリイソブテン、例えばParleam(登録商標)油、
- 8から26個の炭素原子を有する脂肪アルコール、例えば、セチルアルコール、ステアリルアルコール、セチルアルコールとステアリルアルコールとの混合物(セチルステアリルアルコール)、オクチルドデカノール、2-ブチルオクタノール、2-ヘキシルデカノール、2-ウンデシルペンタデカノール、オレイン酸又はリノール酸、
- 部分的炭化水素及び/又はシリコーンフッ化油、例えば、文献JP-A-2-295912に記載されているもの、
- 任意選択で揮発性の、直鎖状又は環式シリコーン鎖を有し、室温で液状又はペースト状のシリコーン油、例えば、ポリメチルシロキサン(PDMS)、特にシクロポリジメチルシロキサン(シクロメチコーン)、例えば、シクロヘキサシロキサン;アルキル、アルコキシ又はフェニルペンダント又はケイ素鎖-末端基を含み、その基が2から24個の炭素原子を有するポリジメチルシロキサン;フェニルシリコーン、例えば、フェニルトリメチコーン、フェニルジメチコーン、フェニルトリメチルシロキシジフェニル-シロキサン、ジフェニル-ジメチコーン、ジフェニルメチルジフェニルトリシロキサン、2-フェニルエチルトリメチル-シロキシシリケート、及びポリメチルフェニルシロキサン、又は
- それらの混合物
を挙げてもよい。
【0058】
油性相の量は、組成物Bの総質量に対して、例えば0.1から30質量%、例えば、1から20質量%の範囲であってもよい。
【0059】
組成物Bは、ゲル化剤、界面活性剤、防腐剤、電解質、pH調整剤、イオン性又は非イオン性増粘剤、湿潤剤、消泡剤、香料、活性化剤、特に老化防止剤、フィラー又は化粧品及び/又は皮膚科学の分野において通常使用される任意の成分から特に選択される従来の化粧用補助剤も含んでいてもよい。
【0060】
本発明はまた、ケラチン物質、好ましくは皮膚の美容的ケア方法であって、前記ケラチン物質上に本発明による組成物を適用する工程を含む、方法に関する。
【0061】
本発明はまた、酸化的皮膚ストレスに対処するための、本発明による組成物の美容的使用に関する。本発明はまた、皮膚老化の兆候、例えば、小じわ又はしわ等に対処するための、本発明による組成物の美容的使用に関する。
【0062】
本発明を例示するが決して限定するものではない具体的な例を次に示す。
【0063】
例では、温度は、他に言及がない限り摂氏温度で示される室温(20℃)であり、圧力は他に言及がない限り大気圧である。
【0064】
例では、組成物の成分の量は、組成物の総質量に対する質量%(%w/w)で与えられる。
【実施例1】
【0065】
さまざまな溶媒中でのローズウッド抽出物の可溶化
明細書中に記載した方法に従ってロサ・ケンティフォリアの葉及び茎から得られ、抽出物の総質量に対して30%から50質量%のポリフェノールを含む、粉末形態のローズウッド抽出物200gとさまざまな溶媒とをローターステーターを用いて室温で混合してから、さまざまな評価基準の試験を行った。
【0066】
評価基準は以下のとおりである:
- ローターステーター後の混合物の溶解性、
- 900gで1時間遠心分離してから24時間後の分散体の安定性、及び
- 分散体の透明性の程度(関連性がある場合)。
【0067】
組成及び結果をTable 1(表1)からTable 3(表3)に示す。
【0068】
混合物AからE、GからJ、M及びOは比較である。
【0069】
混合物F、L及びNは、本発明によるものである(アスタリスクが付いている)。
【0070】
【0071】
【0072】
結論
グリセリンは、被検溶媒の中で唯一の溶媒であり、完全な可溶化を可能にし、遠心分離で安定な半透明の混合物をもたらす。
【0073】
【0074】
結論
グリセリンは単独で、又は実際には50%プロパン-1,2-ジオールと組み合わせて使用して、遠心分離で安定な半透明の混合物を得ることができる。
【実施例2】
【0075】
グリセリン中のローズウッド抽出物の溶解性の限界の判定
実施例1で示されたように、ローズウッド抽出物の溶媒としてのグリセリンの使用は、室温での抽出物を可溶化し、半透明の混合物を得ることを可能にする。
【0076】
さまざまな量の抽出物及びグリセリンを用いて、さまざまな混合物M1からM7を生成した。
【0077】
評価基準は以下のとおりである:
- ローター-ステーター後の混合物の溶解性(外観)、及び
- 900gで1時間遠心分離してから24時間後の分散体の安定性。
【0078】
結果をTable 4(表4)に示す。
【0079】
【0080】
結論
ローズウッド抽出物の可溶化の限界は約30%である。
【0081】
最良の可溶化の結果は、組成物の総質量に対して15%から25質量%の抽出物で得られる。
【実施例3】
【0082】
本発明による組成物及びキット
以下のTable 5(表5)に記載される本発明による組成物は、Table 6(表6)(血清)で記載される美容用組成物との混合物において、特に6%でブースターとして使用することができる。混合物を得てから、皮膚に適用する。
【0083】
典型的には、Table 5(表5)(ブースター)の組成物はピペット中で包装してもよく、これは切断してからTable 6(表6)(血清)の美容用組成物と混合し、次いで皮膚に適用する。
【0084】
【0085】
【0086】
上記の組成物は、以下の方法に従って調製した:
相Aを、OLSA社によって販売されている撹拌機、例えば、MAXILAB TURBOTESTタンク底部ローター/ステータータービン中、1000rpmの速度、室温で、溶液が均質になるまで混合する;
相Bを、室温の撹拌機中の相A中に入れて、2500rpmの速度で均質なゲルを得る;
相Cを、撹拌機を備えた混合物A+Bに入れて、2500~3000rpmの速度で良好に均質化された溶液を得る。