(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-26
(45)【発行日】2024-04-03
(54)【発明の名称】改良された熱可塑性縮合ポリマーおよびその形成方法
(51)【国際特許分類】
C08G 85/00 20060101AFI20240327BHJP
【FI】
C08G85/00
(21)【出願番号】P 2022544111
(86)(22)【出願日】2021-02-24
(86)【国際出願番号】 US2021019405
(87)【国際公開番号】W WO2021173663
(87)【国際公開日】2021-09-02
【審査請求日】2022-11-04
(32)【優先日】2020-02-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-02-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-03-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514073570
【氏名又は名称】ジャビル インク
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100175042
【氏名又は名称】高橋 秀明
(72)【発明者】
【氏名】フライ,トーマス
(72)【発明者】
【氏名】レッシュ,レヴィ
(72)【発明者】
【氏名】ピーターソン,ザッカリー
(72)【発明者】
【氏名】ロジャース,ルーク
【審査官】南 宏樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-195815(JP,A)
【文献】特表2008-523182(JP,A)
【文献】特開平05-086279(JP,A)
【文献】EICHHORN, K. J.,Characterization of low Molecular Weight Carboxyl-Terminated Polyamides Obtained by Reactive Extrusi,Journal of Applied Polymer Science,1996年,62巻,2053-2060
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 2/00-85/00
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00-13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鎖が延長した縮合ポリマーを形成する方法において、
(i)多官能性鎖延長剤の存在下で縮合ポリマーをその溶融温度の
±50℃以内に加熱して、該縮合ポリマーの一部を開裂させて、開裂端部を有する開裂した縮合ポリマーを形成する工程であって、前記鎖延長剤は、前記開裂端部の少なくとも一部と反応して、少なくとも1つの縮合反応基を有する
、端部キャップを有する端部がキャッピングされた開裂した縮合ポリマーを形成する工程、および
(ii)次いで、前記開裂した縮合ポリマーの端部キャップの
縮合反応基と反応する反応基を有する、前記縮合ポリマーおよび前記鎖延長剤と異なる第2の化合物を反応させて、前記鎖が延長した縮合ポリマーを形成する工程であって、該第2の化合物は、前記端部がキャッピングされた開裂した縮合ポリマーに
縮合反応基を導入する該鎖延長剤と反応する別の鎖延長剤からなり
、該縮合ポリマー全ての少なくとも2質量%
が該第2の化合物と反応して、該鎖が延長した縮合ポリマーを形成する工程、
を有してなる方法。
【請求項2】
前記多官能性鎖延長剤が、エポキシド、カルボン酸、アルコール、無水物、アミン、イソシアネート、アジリジン、オキサゾリン、亜リン酸エステル、またはその組合せからなる少なくとも2つの官能基を含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記鎖延長剤が
、2から10のカルボン酸部分を有する、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記鎖延長剤が、異なる反応性を有する少なくとも2つの官能基を有する、請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記鎖延長剤の官能基が、カルボン酸、エポキシド、または無水物である、請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記鎖延長剤の官能基が無水物である、請求項1記載の方法。
【請求項7】
前記端部キャップが、少なくとも1つの反応基から10の反応基を有する、請求項1記載の方法。
【請求項8】
前記端部キャップが少なくとも2から5の反応基を有する、請求項7載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、縮合ポリマーおよびその製造方法に関する。より詳しくは、本発明は、重縮合ポリマー(例えば、ポリアミドおよびポリエステル)の開裂、開裂したポリマーの多官能性端部キャップによるキャッピング、およびその多官能性端部キャップの、縮合できる別の化合物との反応に関する。
【背景技術】
【0002】
押出し、フイルムブロー成形、射出成形などの従来の方法によって造形品を形成するために、縮合ポリマーが使用されてきた。これらの過程において、ポリマーは、溶融され、実質的に剪断されて、ポリマーの開裂と分子量の未制御の損失が結果としてもたらされ、造形品(例えば、ブロー成形ボトルおよび押出管)の形成中に変形を生じる。一般に、それぞれ、特許文献1および2においてポリエステルおよびポリエチレンテレフタレートについて記載されているように、分子量の損失を元に戻して、十分に高い溶融強度および溶融粘度を実現するために、鎖延長剤が添加される。
【0003】
熱可塑性ポリマーの付加製造では、典型的に、層状パターンの局部溶融を必要とし、この溶融により、その後、続く層が融合され、支持される。加熱されたノズルに引き込まれ、溶融され、次いで押し出される熱可塑性フィラメントを使用し、押し出されたフィラメントが冷却の際に互いに融合することによって、3D部品を形成するために、一般に、プラスチックジェットプリンティングとも呼ばれる溶融フィラメント製造(FFF)が使用されてきた(例えば、特許文献3および4を参照のこと)。
【0004】
同様に、粉末床内の粉末を選択的に焼結することによって、3D部品を製造するために、選択的レーザ焼結または溶融(SLSまたはSLM)が使用されてきた(例えば、特許文献5を参照のこと)。この方法において、高温に維持された粉末床は、CO2レーザまたは他の電磁放射線源を使用して選択的に焼結される。最初の層が一旦焼結されたら、さらなる粉末層が計量しながら供給され、所望の3D部品が製造されるまで、選択的焼結が繰り返される。粉末を焼結または溶融しなければならないので、SLSは、反りやスランピングなく焼結を行い、特に層間に所望の融合を達成できるようにする非常に際だった特徴を有する熱可塑性ポリマーの使用に制限されてきた。これらの要件は、印刷するときに、1種類のポリマーまたは相溶性の高い複数のポリマーの使用を要求する傾向にある。
【0005】
局部加熱および製造されている部品が形成されている間にそれ自体を支持する必要性のために、層内、および特に層間の結合の強度は、一般に、モノリスの成形(例えば、射出成形)塊から形成された部品よりも低い。加熱を局所化し、溶融し、形成されている部品を支持するための十分な強度を取り戻す能力により決定される制約のために、層内と層間の強度(Z方向または構築方向の強度と称される)は、様々なポリマーを部品内で均一にまたは部品内で不均一に一緒に使用する上で、問題となってきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】米国特許第4246378号明細書
【文献】米国特許第7544387号明細書
【文献】米国特許第5121329号明細書
【文献】米国特許第5503785号明細書
【文献】米国特許第5597589号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、付加製造物品または他の造形品を製造するために、相溶性が限定された縮合ポリマーを使用できるようにすることなど、当該技術分野における問題の1つ以上を解決する縮合ポリマーを提供することが望ましいであろう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
特定の鎖延長剤、縮合ポリマーおよび処理を選択することによって、特有の縮合ブロック共重合体、分岐共重合体および星形共重合体を形成できることが分かった。これらは、次に、本発明のブロック共重合体のブロックの単独重合体に関する相溶化剤として使用できる。それらはまた、付加製造方法、ブロー成形、射出成形などにより物品を形成するために使用することができる。
【0009】
本発明の第1の態様は、鎖が延長した縮合ポリマーを形成する方法において、(i)多官能性鎖延長剤の存在下で縮合ポリマーを加熱して、縮合ポリマーの一部を開裂させて、開裂端部を有する開裂した縮合ポリマーを形成する工程であって、鎖延長剤は、開裂端部の少なくとも一部と反応して、少なくとも1つの縮合反応基を有する端部キャップを有する端部がキャッピングされた開裂した重縮合ポリマーを形成する工程、および(ii)開裂した縮合ポリマーの端部キャップの反応基と反応する反応基を有する、その縮合ポリマーと異なる第2の化合物を反応させて、鎖が延長した縮合ポリマーを形成する工程を有してなる方法である。特別な実施の形態において、鎖延長剤は、1の官能価(すなわち、キャッピングされた開裂した縮重合ポリマーの端部キャップの機能を果たす)を有するが、この同じ鎖延長剤は、次に開裂した端部がキャッピングされた縮合ポリマーをキャッピングする鎖延長剤に残っている反応性官能基と反応できる別の縮合ポリマーと2の官能価を有する。
【0010】
本発明の第2の態様は、複数のブロックを含むブロック共重合体であり、各ブロックは、鎖延長剤の残基を通じて別のブロックに結合した縮合ポリマーであり、少なくとも2つのブロックは化学的に異なる。
【0011】
本発明の第3の態様は、各ブロックが縮合ポリマーである、複数のブロックを含む分岐ブロック共重合体であり、各ブロックおよび分岐は、鎖延長剤の残基を通じて結合しており、少なくとも1つのブロックまたは1つの分岐は、分岐ブロック共重合体の別の分岐またはブロックと異なる。
【0012】
本発明の第4の態様は、各枝分かれ鎖(leg)が、鎖延長剤の残基を通じて結合した縮合ポリマーである、複数の枝分かれ鎖を含む星形縮合共重合体であり、少なくとも1つの枝分かれ鎖は、星形共重合体の別の枝分かれ鎖と化学的に異なる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の線状共重合体を形成する方法の説明図
【
図2】本発明の星形共重合体を形成する方法の説明図
【
図3】本発明の星形共重合体を形成する方法の別の説明図
【
図4A】本発明の分岐共重合体を形成する方法の説明図
【発明を実施するための形態】
【0014】
ここに提示された説明および解説は、当業者に本発明、その原理、およびその実用的応用を知らせることが意図されている。記載された本開示の具体的な実施の形態は、網羅的である、または本開示の範囲を限定することを意図していない。
【0015】
ここに用いられている「1つ以上」は、列挙された成分の少なくとも1つ、または複数を、開示されたように、使用してよいことを意味する。任意の材料または成分の官能価は、原材料の不完全さ、反応体の不完全な転化、および副生成物の形成のために、平均の官能価であることがあるのが理解されよう。
【0016】
本発明の方法は、縮合ポリマーを、多官能性鎖延長剤の存在下でそのポリマーの一部を開裂するのに十分に加熱する工程を含む。この鎖延長剤は、開裂端部と反応する。次に、この多官能性鎖延長剤は、異なる第2の化合物と反応して、本発明の鎖が延長したポリマーを形成し、これは、1つ以上の異なるブロックを有するブロック、グラフトまたは星形ポリマーであってよい。この方法は、縮合ポリマーを剪断することによって、促進させてもよい。
【0017】
縮合ポリマーは、当業者に公知で市販のものなど、どの適切な縮合ポリマーであってもよい。有用なポリマーの例としては、ポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリアセタールまたはその組合せが挙げられる。ポリマーが、ポリアミド、ポリエステル、またはポリカーボネートであることが望ましい。縮合ポリマーは、直鎖状であっても、分岐していてもよい。縮合ポリマーが直鎖状であることが望ましい。ポリアミドの例としては、ポリアミド6、ポリアミド6/66共重合体、ポリアミド6/66/12共重合体、およびポリアミド6/12共重合体などの宇部興産株式会社から入手できるものが挙げられる。ポリエステルの例としては、ポリエチレンテレフタレートおよび商標名CELANEXでCelaneseから入手できるものなど、他の市販のポリエステルが挙げられる。ポリカーボネートの例としては、商標名CALIBREでTrinseo S.A.から入手できるものが挙げられる。
【0018】
一般に、縮合ポリマーは、1000、10,000、100,000から1,000,000ダルトンを超える重量平均分子量(Mw)を有する。一般に、ASTM D1238により定められた方法によって、[g/10分]235℃で2.16kgで測定された縮合ポリマーのメルトフローレート(MFR)は、0.1または1から100、50、20または10までである。
【0019】
多官能性鎖延長剤は、使用する特定の縮合ポリマーに応じて、異なる官能価を有することがある。鎖延長剤の官能価は、鎖が延長した縮合ポリマーにとって望ましい鎖の延長を実現するために、縮合ポリマーの内の少なくとも1つに関して1または2から5であり、第2の化合物に関して少なくとも2から4であることが望ましい。特定の実施の形態において、鎖延長剤は、縮合ポリマーに関して1の官能価(端部キャップの機能を果たす)を、第2の化合物に関して2以上の官能価(すなわち、縮合ポリマーを第2の化合物で延長させる)を有し、このことを、これからさらに説明する。特定の実施の形態の実例として、無水物は、ポリアミドの端部をキャッピングするのに特に有用であり(1の官能価)、このことが、ここに引用される、Thomas Fry等による「CHAIN SCISSION TO MAKE IMPROVED POLYMERS FOR 3D PRINTING」と題する、同時に出願された同時継続出願に記載されており、この無水物は、ポリエステルと2回反応することがある(2の官能価)。その上、鎖延長剤は、特定の縮合ポリマーと異なる反応性または異なる縮合ポリマーと異なる反応性を持つ2以上の官能(反応)基を有することがある。
【0020】
鎖延長剤は、縮合ポリマーと反応し、それを延長するのに有用な、どの鎖延長剤であってもよく、特定の縮合ポリマーに応じて様々であってよい。鎖延長剤の例としては、エポキシド、カルボン酸、アルコール、無水物、アミン、イソシアネート、アジリジン、オキサゾリン、または亜リン酸エステルもしくはその任意の組合せからなるものが挙げられる。鎖延長剤が、カルボン酸、エポキシド、無水物またはその任意の組合せからなることが望ましい。
【0021】
鎖延長剤は、前記方法の最中に、異なる縮合ポリマーと2回以上反応して、特定の縮合ポリマーを延長する能力を有することがある、および/または異なる縮合ポリマーを接続することができるのが理解されよう。例えば、結果として得られる鎖が延長した縮合ポリマーの異なる所望の構造を実現するために、1種類以上の多官能性鎖延長剤が使用されることがある。実例として、星形ポリマーなどの構造を実現するために、多量の二官能性鎖延長剤と共に、少量のより高い官能価(例えば、4~10の反応基)の鎖延長剤が、使用されることがある。
【0022】
エポキシドの例としては、Miller-Stephensonから商標名EPONで入手できるもの、およびBASFから商標名JONCRYLで市販されているスチレン系エポキシド含有化合物などの、固体のエポキシ樹脂が挙げられる。他の例に、エポキシ熱可塑性エラストマーがある。追加の例としては、(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリテトラメチレングリコールジグリシジルエーテル、レゾルシンジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、アジピン酸ジグリシジルエステル、オルトフタル酸ジグリシジルエステル、テレフタル酸ジグリシジルエステル、ヒドロキノンジグリシジルエーテル、ビスフェノールSジグリシジルエーテル、グリセロールジグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ソルビタンポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリトリトールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、トリグリシジルトリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、グリセロールトリグリシジルエーテル、およびトリメチロールプロパンポリグリシジルエーテルが挙げられる。別の追加のエポキシ化合物に、エポキシ化大豆油がある。
【0023】
無水物の例としては、ピロメリット酸二無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ブタン-1,2,3,4-テトラカルボン酸二無水物、無水マレイン酸単独重合体、無水マレイン酸-酢酸ビニル共重合体、無水マレイン酸-エチレン共重合体、無水マレイン酸-イソブチレン共重合体、無水マレイン酸-イソブチルビニルエーテル共重合体、無水マレイン酸-アクリロニトリル共重合体、無水マレイン酸-スチレン共重合体、無水テトラブロモフタル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水トリメリット酸、無水1,8-ナフタル酸、無水フタル酸、または無水スルホフタル酸、フェニレンビスオキサゾリン、トリメリット酸二無水物、ピロメリット酸二無水物、ビスフェノールA-ジグリシジルエーテルテトラエポキシドテトラグリシジルジアミノジフェニルメタンが挙げられる。
【0024】
有用であろう他の鎖延長剤の例として、ここに引用される、特許文献2の第3段の第10行から第5段の第34行までに記載されたものが挙げられる。
【0025】
ポリアミドに関して1の官能価およびポリエステルに関して2の官能価を示す鎖延長剤の例としては、以下に限られないが、無水フタル酸、無水テトラブロモフタル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水スルホフタル酸、無水トリメリット酸、無水1,8-ナフタル酸など、1つだけ無水物を有する無水物が挙げられる。説明すると、その無水物は、無水物を開環して、カルボン酸を残すことができ、次に、このカルボン酸は、ポリエステルと反応せしめられて、鎖が延長したブロック共重合体を形成することができる。さらなる多官能性鎖延長剤の実列が、ここに引用される、Thomas Fry等による「METHOD FOR IMPROVING ADHESION IN AND BETWEEN LAYERS OF ADDITIVE MANUFACTURED ARTICLES」と題する、同時に出願された同時継続出願に記載されている。
【0026】
縮合ポリマーおよび鎖延長剤は、縮合ポリマーの少なくとも一部を開裂し、鎖延長剤を開裂した端部と反応させて、端部がキャッピングされた開裂した縮合ポリマーを形成するのに十分に加熱され、剪断される。そのような端部がキャッピングされた開裂した縮合ポリマーの一部が、第2の化合物と反応できる少なくとも1つのさらなる縮合反応基を有する端部キャップを有する限り、鎖延長剤は、縮合ポリマーの末端基とも反応し、縮合ポリマー自体の鎖をある程度延長させることがあることが理解されよう。一部は、所望の端部がキャッピングされた開裂した縮合ポリマーおよび鎖が延長した縮合ポリマーを実現するのにどのような量であってもよい。一般に、一部は、数または質量で、約2から3、10、20、50、75パーセントから実質的に全てまでのどのような量であってもよく、縮合ポリマーの全てが開裂され、端部がキャッピングされ、延長されてもよいことが理解されよう。
【0027】
第2の化合物は、本発明の縮合ポリマーに組み込まれるべき、どのような所望の化合物であってもよい。例えば、第2の化合物は、開裂した縮合ポリマーをキャッピングする鎖延長剤の残基に残っている1つ以上の官能基と反応できる化合物であることがある。第2の化合物の例としては、鎖延長剤と反応した縮合ポリマーと化学的に異なる他の縮合ポリマーであることがある。縮合ポリマーのこれらの第2の化合物は、先に記載されたもののいずれであってもよい。第2の化合物は、縮合反応により形成され、縮合ポリマーと反応した鎖延長剤と反応できる化学基を1つ以上有するオリゴマーであることがある。第2の化合物は、縮合ポリマーと反応した鎖延長剤と反応して、鎖延長剤と反応した縮合ポリマーにさらに官能価を加えることのできる別の鎖延長剤などの化合物であることがある(そのような場合、別の縮合ポリマーなどのさらに異なる第2の化合物を加えることによって、さらなる延長が続くことがある)。
【0028】
端部がキャッピングされた開裂した縮合ポリマーを形成するための加熱は、当該技術分野で公知のものなど、ポリマーを加熱し、混合/剪断するためのどの適切な方法および装置であってもよい。その例に、高強度ミキサーおよびスクリュー押出機(単軸および二軸押出機)がある。剪断の量は、特定の装置において望ましい開裂および端部キャッピングを促進するのにどの有用な量であってもよい。押出機は、1つの温度に保持されても、または所望の開裂および端部キャッピングを促進するために押出機の長さに沿って勾配を有してもよい。温度は、例えば、特定の縮合ポリマーが分解し始める温度をわずかに下回る、端部がキャッピングされた開裂した縮合ポリマーを形成するのに十分ないずれの温度であってもよい。一般に、その温度は、縮合ポリマーの溶融温度の100℃以内、50℃以内、または25℃以内の温度であってよい。典型的な温度は、約150℃、175℃、または200℃から約300℃または250℃であることがある。その上、第2の化合物と反応するときに、直前に記載されたものなどの鎖が延長した縮合ポリマーを形成するために、どの温度を使用してもよい。剪断は、混練押出機内で縮合ポリマーを混練する際に典型的に使用されるような、いずれの剪断であってもよい。同様に、時間は、所望の鎖が延長した縮合ポリマーを実現するのに十分ないずれの時間であってもよい。典型的な時間は、鎖延長剤を開裂した縮合ポリマーと反応させるために、または第2の化合物と反応させるために、1~2分から数時間(3~5時間)であることがある。
【0029】
図1は、本発明の方法により製造された線状ブロック共重合体を形成する1つの実施の形態を説明するものである。この説明において、ポリアミド1Aが開裂され、ポリアミドPA1AおよびPA1Bを形成しており、PA1Bは、鎖延長剤(図示された無水トリメリット酸)で端部がキャッピングされている。分子量が減少したこれら2つの新たなポリアミド(PA1AおよびPA1B)は、鎖延長剤の第2の化合物(例えば、ピロメリット酸二無水物)を使用することにより、最初の2つのポリアミド(PA1AおよびPA1B)の交互のブロックの線状ブロック共重合体を形成することができる。分岐または星形ブロック重合体も、下記に記載されるように形成できる。PA1Aは、異なる化学的性質または構造の別に提供されたポリアミドであってもよいことが理解されよう。他の実施の形態において、異なる種類の2つのポリマーは、適切な端部キャッピング試薬および鎖延長剤の選択によって、結合することができる。この種の共重合は、適切な鎖延長剤および第2の化合物(さらなる鎖延長剤と縮合ポリマーを含むことがある)により、ポリアミド/ポリエステル、ポリアミド/ポリイミド、ポリエステル/ポリカーボネート、およびその他の組合せなど、提供されるどの縮重合対の間で起こっても差し支えない。それゆえ、前記方法は、先に記載された縮合ポリマー対など、少なくとも2つのブロックが化学的に異なる、鎖延長剤の残基を通じて別のブロックに結合された縮合ポリマーブロックからなる新規の特有のブロック共重合体を形成することができる。特定の実施の形態において、そのブロック共重合体は、交互のA-Bブロック構造(例えば、A-B-AまたはA-B-A-B-A)を有する。Aブロックがポリアミドであり、Bブロックがポリエステルであることが望ましい。ブロック共重合体は、どの有用なMwを有してもよい。そのブロック共重合体は、相溶化剤として有用なことがあり、特定の実施の形態において、ブロック共重合体は、ブロック共重合体を形成する過程中に残留する未反応の縮合ポリマーのためのその場で生成された相溶化剤であることがある。
【0030】
図2は、星形ポリマーの形成を説明するものである。この説明において、先に記載された説明におけるポリアミドが、図示されたさらなる鎖延長剤のピロメリット酸二無水物およびポリエステルからなる第2の化合物との組合せで、加熱され、剪断され、次いで、これにより、1つの枝分かれ鎖がポリアミドであり、2つの枝分かれ鎖がポリエステルである、3つの枝分かれ鎖を有する星形ポリマーが形成される。このように、この方法は、各枝分かれ鎖が、鎖延長剤の残基を通じて結合した縮合ポリマーである、複数の枝分かれ鎖を含む新規の特有の星形ポリマーを形成することがあり、星形共重合体の少なくとも1つの枝分かれ鎖は別の枝分かれ鎖と化学的に異なっている。星形ポリマーの各枝分かれ鎖が、全ての枝分かれ鎖の数平均分子量(Mn)の30%以内の分子量を有することが望ましい。星形共重合体の枝分かれ鎖は、ポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアミドイミド、ポリイミド、またはポリアセタールからなる群より選択される縮合ポリマーからなることが望ましい。特定の実施の形態において、枝分かれ鎖の少なくとも1つは、ポリアミドまたはポリエステルである。枝分かれ鎖を構成できる例示の縮合ポリマー対は、線状ブロック共重合体について、先に記載されたものと同じであってよい。
【0031】
図3は、星形ポリマーを製造するためのさらに別の経路を示し、この星形ポリマーは、次いで、架橋剤として使用することができる。
図3は、無水アミノフタル酸を使用して開裂されたポリアミドを示す。分子量が減少した2つの新たなポリアミドを、無水メリト酸などの鎖延長剤を使用することによって、押出過程で結合させることができる。ほとんどの鎖が末端アミノ基を含有しているので、無水メリト酸との一次反応は三官能性であり得る。この場合、3つの無水物が開かれて、これらの末端アミノ基と結合する。3つの遊離ポリアミド鎖は、この接合部で結合して、大きい星形分子を作ることができる。これらの3つの鎖の端部で、追加の鎖延長剤により同様の反応が起こり、その結果、架橋系を形成することができる。
【0032】
図4Aおよび4Bは、本発明の方法による分岐共重合体の形成を示している。
図4Aおよび4Bには、1つの分岐ポリアミドを生じるために使用されている2つの異なる線状ポリアミドの反応スキームが示されている。このスキームにおいて、ポリアミド1Aは、高分子量のポリアミドを称するのに対し、ポリアミド2は、低分子量のものであると考えられる。2つの異なる押出過程において、これらのポリアミドは、それぞれ、無水アミノフタル酸および無水ヒドロキシフタル酸を用いて、開裂され、端部キャッピングされる。第3の押出過程において、ポリアミド1Aおよび1Bは、ジヒドロキシピロメリット酸二無水物と共に溶融加工されて、2つのポリマーのアミノ端部キャップと、鎖延長分子上に存在する反対向きの無水物基との間に鎖延長反応が起こる。次いで、結果として得られるポリマーは、第2の鎖延長反応を促進するために、ビスフェノールA-ジグリシジルエーテル(DGEBA)のような鎖延長剤およびポリアミド2Aと2Bと共に溶融加工することができる。この反応において、鎖延長分子上のエポキシ基が、ジヒドロキシピロメリット酸二無水物上に存在するヒドロキシル基と共有結合を形成することができる。DGEBAからの残留するヒドロキシル基は、次に、ポリアミド2Aおよび2Bのヒドロキシル端部およびアミノ端部と結合して、より長い高分子主鎖から離れた分岐を形成することができる。
【0033】
共重合および分岐により、結晶化動力学を調整できるであろう。ブロック共重合体が作られる上記の例において、結晶化は、使用する2つのポリマーの比率と選択によって制御することができる。2つのポリアミドが、異なるガラス転移温度のものであり、短縮され、端部キャッピングされる仮想例において、この2つの成分を適切な鎖延長剤と組み合わせることにより、熱的性質が調節されたポリアミドを生成することができる。ポリアミド12に由来するものなど、結晶化が遅い断片をポリアミド6からの断片に結合させて、結晶化を遅らせることができる。ポリフタルアミドなどの高温ポリアミド部分を、ナイロン6などの低温ポリアミドの断片に結合させて、共結晶化および立体障害により、ガラス転移温度および溶融温度を変えることができる。それに加え、グリコール変性ポリエチレンテレフタレートからのものなど、従来非晶質であるポリマー部分をポリアミドに結合させて、結晶成長を遅くするまたは完全に中断させることができる。
【0034】
他の実施の形態において、分岐を使用して、結晶化を制御された程度まで遅くすることができる。
図4Aおよび4Bに示された例を使用して、ポリアミド2Aおよび2Bからの鎖の長さと量を用いて、結晶化を遅くし、結晶化度を減少させることができる。ポリアミド1Aおよび1Bの鎖延長により作られた主鎖に沿った分岐の数とそれら分岐の長さを増加させることによって、鎖の間の自由体積を増加させることができる。この増加した自由体積は、ポリアミド鎖の詰め込みを防ぐことにより、並びに鎖が再配向する能力を阻害することにより、結晶形成を中断させることができる。この結晶化の調節は、主鎖/分岐中に配置すべきポリマーの選択、並びに分岐を可能にするのに選ばれた鎖延長分子の濃度に基づいて、高度に制御可能にすることができる。
【0035】
分岐または星形ポリマーに作られる所定の縮合ポリマーに関する結晶化度は、Mw、多分散性、加熱と冷却の履歴など、他の全ての条件が実質的に同じであれば、約10%、20%、30%、50%、またはそれより大きく変えられるであろう。例えば、開裂され、開裂部分から分岐ポリマーに形成される線状ポリアミドは、そのような結晶化度の変更を実現できる。同様に、レオロジー特性も、そのような量によって変わることがあり、例えば、ここに記載されたようなMFRは、同様に、変わることがある。
以下、本発明の好ましい実施形態を項分け記載する。
実施形態1
鎖が延長した縮合ポリマーを形成する方法において、
(i)多官能性鎖延長剤の存在下で縮合ポリマーを加熱して、該縮合ポリマーの一部を開裂させて、開裂端部を有する開裂した縮合ポリマーを形成する工程であって、前記鎖延長剤は、前記開裂端部の少なくとも一部と反応して、少なくとも1つの縮合反応基を有する端部キャップを有する端部がキャッピングされた開裂した縮合ポリマーを形成する工程、および
(ii)前記開裂した縮合ポリマーの端部キャップの反応基と反応する反応基を有する、前記縮合ポリマーと異なる第2の化合物を反応させて、前記鎖が延長した縮合ポリマーを形成する工程、
を有してなる方法。
実施形態2
前記多官能性鎖延長剤が、エポキシド、カルボン酸、アルコール、無水物、アミン、イソシアネート、アジリジン、オキサゾリン、亜リン酸エステル、またはその組合せからなる少なくとも2つの官能基を含む、実施形態1に記載の方法。
実施形態3
前記鎖延長剤が、約2から約10のカルボン酸部分を有する、実施形態1または2に記載の方法。
実施形態4
前記鎖延長剤が、異なる反応性を有する少なくとも2つの官能基を有する、実施形態1から3いずれか1つに記載の方法。
実施形態5
前記鎖延長剤の官能基が、カルボン酸、エポキシド、または無水物である、実施形態1から4いずれか1つに記載の方法。
実施形態6
前記鎖延長剤の官能基が無水物である、実施形態1から5いずれか1つに記載の方法。
実施形態7
前記第2の化合物が、オリゴマー、ポリマーまたはその混合物である、実施形態1から6いずれか1つに記載の方法。
実施形態8
前記第2の化合物が熱可塑性ポリマーであり、前記反応基が、ペンダント基、末端基またはその混合物である、実施形態7に記載の方法。
実施形態9
前記熱可塑性ポリマーが縮合ポリマーである、実施形態8に記載の方法。
実施形態10
前記熱可塑性ポリマーが、ポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアミドイミド、ポリイミド、またはポリアセタールである、実施形態9に記載の方法。
実施形態11
前記端部キャップが、少なくとも1つの反応基から10の反応基を有する、実施形態1から10いずれか1つに記載の方法。
実施形態12
前記端部キャップが少なくとも2から5の反応基を有する、実施形態11に記載の方法。
実施形態13
実施形態1から12いずれか1つに記載の方法により作られた前記鎖が延長した縮合ポリマーを含む組成物。
実施形態14
複数のブロックを含むブロック共重合体であって、各ブロックは、鎖延長剤の残基を通じて別のブロックに結合した縮合ポリマーであり、少なくとも2つのブロックは化学的に異なる、ブロック共重合体。
実施形態15
前記ブロックが、ポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアミドイミド、ポリイミド、またはポリアセタールからなる群より選択される、実施形態14に記載のブロック共重合体。
実施形態16
少なくとも1つのブロックがポリアミドである、実施形態14または15に記載のブロック共重合体。
実施形態17
少なくとも1つのブロックがポリエステルである、実施形態14から16いずれか1つに記載のブロック共重合体。
実施形態18
前記鎖延長剤が、エポキシド、カルボン酸、アルコール、無水物、アミン、イソシアネート、アジリジン、オキサゾリン、亜リン酸エステル、またはその組合せからなる少なくとも2つの官能基を含む、実施形態14から17いずれか1つに記載のブロック共重合体。
実施形態19
前記鎖延長剤の官能基が、カルボン酸、エポキシド、または無水物である、実施形態18に記載のブロック共重合体。
実施形態20
前記ブロック共重合体が、AブロックとBブロックを有し、A-B-AまたはA-B-A-B-Aブロック構造を有する、実施形態14から19いずれか1つに記載のブロック共重合体。
実施形態21
前記Aブロックがポリエステルまたはポリアミドであり、前記Bブロックがポリエステルまたはポリアミドである、実施形態20に記載のブロック共重合体。
実施形態22
前記ブロック共重合体が相溶化剤である、実施形態14から21いずれか1つに記載のブロック共重合体。
実施形態23
各ブロックが縮合ポリマーである、複数のブロックを含む分岐ブロック共重合体であって、各ブロックおよび分岐は、鎖延長剤の残基を通じて結合しており、少なくとも1つのブロックまたは分岐は、該分岐ブロック共重合体の別の分岐またはブロックと異なる、分岐ブロック共重合体。
実施形態24
前記ブロックおよび分岐が、ポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアミドイミド、ポリイミド、またはポリアセタールである、実施形態23に記載の分岐ブロック共重合体。
実施形態25
前記少なくとも1つのブロックまたは分岐がポリアミドである、実施形態23または24に記載の分岐ブロック共重合体。
実施形態26
前記少なくとも1つのブロックまたは分岐がポリエステルである、実施形態23から25いずれか1つに記載の分岐ブロック共重合体。
実施形態27
前記鎖延長剤が、エポキシド、カルボン酸、アルコール、無水物、アミン、イソシアネート、アジリジン、オキサゾリン、亜リン酸エステル、またはその組合せからなる少なくとも2つの官能基の残基を含む、実施形態23から26いずれか1つに記載の分岐ブロック共重合体。
実施形態28
前記鎖延長剤の官能基が、カルボン酸、エポキシド、または無水物である、実施形態27に記載の分岐ブロック共重合体。
実施形態29
前記分岐ブロック共重合体が、同じ化学物質および実質的に同じ分子量と多分散性を有する線状縮合ポリマーと比べて、少なくとも約10%異なる、1つ以上のレオロジー特性を有する、実施形態23から28いずれか1つに記載の分岐ブロック共重合体。
実施形態30
各枝分かれ鎖が、鎖延長剤の残基を通じて結合した縮合ポリマーである、複数の枝分かれ鎖を含む星形縮合共重合体であって、少なくとも1つの枝分かれ鎖は、該星形縮合共重合体の別の枝分かれ鎖と化学的に異なる、星形縮合共重合体。
実施形態31
前記星形縮合共重合体が少なくとも3つの枝分かれ鎖を有する、実施形態31に記載の星形縮合共重合体。
実施形態32
各枝分かれ鎖が、全ての枝分かれ鎖の数平均分子量(Mn)の30%以内の分子量を有する、実施形態30または31に記載の星形縮合共重合体。
実施形態33
前記枝分かれ鎖が、ポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアミドイミド、ポリイミド、またはポリアセタールからなる群より選択される縮合ポリマーからなる、実施形態30から32いずれか1つに記載の星形縮合共重合体。
実施形態34
前記少なくとも1つの枝分かれ鎖がポリアミドである、実施形態33に記載の星形縮合共重合体。
実施形態35
前記少なくとも1つの枝分かれ鎖がポリエステルである、実施形態33または34に記載の星形縮合共重合体。
実施形態36
前記加熱する工程の最中に剪断する工程をさらに含む、実施形態1から12いずれか1つに記載の方法。
実施形態37
結晶化度が、同じ組成およびMwの線状縮合ポリマーと比べて、少なくとも10%異なる、実施形態23から29いずれか1つに記載の分岐ブロック共重合体。