(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-26
(45)【発行日】2024-04-03
(54)【発明の名称】統合ガス化及びガス発酵システムにおける発酵テールガスの使用
(51)【国際特許分類】
C10J 3/00 20060101AFI20240327BHJP
C12N 1/20 20060101ALI20240327BHJP
C12P 1/04 20060101ALI20240327BHJP
C12P 5/02 20060101ALI20240327BHJP
C10K 1/32 20060101ALI20240327BHJP
C10J 3/02 20060101ALI20240327BHJP
【FI】
C10J3/00 F
C12N1/20 Z
C12P1/04 Z
C12P5/02
C10K1/32
C10J3/02 J
(21)【出願番号】P 2022547188
(86)(22)【出願日】2021-03-04
(86)【国際出願番号】 US2021020801
(87)【国際公開番号】W WO2021188301
(87)【国際公開日】2021-09-23
【審査請求日】2022-08-03
(32)【優先日】2020-03-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-02-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518403425
【氏名又は名称】ランザテク,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100196966
【氏名又は名称】植田 渉
(72)【発明者】
【氏名】ガオ,アラン ハイミング
(72)【発明者】
【氏名】コンラド,ロバート ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ロジン,リチャード
(72)【発明者】
【氏名】モリン,グレゴリー
(72)【発明者】
【氏名】ノヴァク,フランツ-マルクス
【審査官】森 健一
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0152441(US,A1)
【文献】特表2014-518924(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0138684(US,A1)
【文献】特開2014-050406(JP,A)
【文献】特開2019-167424(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10J 3/00
C12N 1/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a.
ガス化プロセスを用いてガス化原料をガス化して、少なくとも一酸化炭素、水素、水及びタールを含む合成ガスを生成すること、
b.前記合成ガスを冷却して、凝縮によって水と少なくとも1つのタールを分離し、水と少なくとも1つのタールが枯渇し
た合成ガスを提供すること、
c.前記少なくとも1つのタールを、
i.燃料ガス、天然ガス、合成ガス、ガス発酵プロセスからのテールガス、又はそれらの任意の組み合わせの燃焼によって生成される火炎を使用して、前記少なくとも1つのタールを燃焼させること、又は、
ii.前記少なくとも1つのタールを廃水処理プロセスに送ること、によって廃棄すること、
d.前
記水と少なくとも1つのタールが枯渇した合成ガスを、炭化水素、含酸素化合物、硫黄化合物、窒素化合物、又はそれらの任意の組み合わせのうちの少なくとも1つを含む成分を吸着剤に吸着させることによって処理して処理済み流を生成すること、
e.微生物を使用してバイオリアクター内で前記処理済み流の少なくとも一部を発酵させて、少なくとも1つの生成物と、少なくとも二酸化炭素を含むテールガス流とを含む放出物を生成すること、
f.前記テールガス流の少なくとも一部を使用して前記成分を少なくとも部分的に脱着することによって前記吸着剤を再生して、二酸化炭素と脱着された成分とを含む濃縮されたテールガス流を提供すること、及び、
g.前記濃縮されたテールガス流を、
i.蒸気ボイラーで前記濃縮されたテールガス流を燃焼させて蒸気を生成すること、
ii.前記濃縮されたテールガス流を発電に利用すること、
iii.前記濃縮されたテールガス流をガス化プロセスへ再循環させること、又は
iv.前記濃縮されたテールガス流を生成物回収ゾーンに送ること、のうちの少なくとも1つに利用すること、を含む方法。
【請求項2】
テールガスが、メタン、一酸化炭素、及び水素をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記微生物が、1つ以上のC1固定微生物である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記C1固定微生物が、モーレラ(Moorella)、クロストリジウム(Clostridium)、ルミノコッカス(Ruminococcus)、アセトバクテリウム(Acetobacterium)、ユウバクテリウム(Eubacterium)、ブチリバクテリウム(Butyribacterium)、オキソバクター(Oxobacter)、メタノサルシナ(Methanosarcina)、及びデスルホトマクルム(Desulfotomaculum)からなる群から選択される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記蒸気が高圧蒸気である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記蒸気を、発酵生成物の蒸留、吸着冷却装置の工程、蒸気駆動圧縮、廃水の蒸発、バイオマスの乾燥、適所での蒸気工程、適所での洗浄工程、原料の乾燥、蒸気で駆動される原料コンベヤー、建物の暖房、発電、及び発酵プロセスのコンプレッサーに電力を供給するための発電のために使用する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
ステップ(a)の合成ガス流が、石炭のガス化、製油所残留物のガス化、バイオマスのガス化、リグノセルロース材料のガス化、黒液ガス化、都市固形廃棄物のガス化、工業用固形廃棄物のガス化、下水道のガス化、廃水処理からのスラッジのガス化
、又はそれらの任意の組み合わせからのものである、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記発電が、コージェネレーション又は直接発電である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記テールガス流が、
ステップ(a)の前記ガス化プロセ
スからの前記合成ガス流と比較して、
a.N
2が濃縮されている、
b.CO
2が濃縮されている、
c.不純物が枯渇している、又は
d.(a)(b)若しくは(c)の任意の組み合わせを兼ね備えている、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
この出願は、2020年3月16日に出願された米国仮特許出願第62/990,216号及び2021年2月19日に出願された米国特許出願第17/180,583号の利益を主張する。両方の出願の内容は、それらの全体が参照により本明細書に明示的に組み込まれる。
【0002】
本発明は、ガス化プロセスとガス発酵プロセスの統合を改善するためのプロセスに関する。詳細には、本発明は、ガス化プロセスによって生成された合成ガスから、その合成ガスがガス発酵プロセスへの供給物として使用される前にタールを分離するために使用される吸着剤から、ガス発酵プロセスのテールガスの少なくとも一部を使用して少なくとも1つのタールを脱着することに関する。別の実施形態では、テールガスは、産業ガスがガス発酵プロセスに導入される前に産業ガスからタールを分離するために使用される吸着剤を再生するために使用される。
【背景技術】
【0003】
世界の人口が増加するにつれて、そのような人口によってもたらされる廃棄物がますます大きな懸念事項となっている。廃棄物処理の解決策の1つは、ガス化である。ガス化とは、有機又は化石燃料系の炭素質材料を、一酸化炭素、二酸化炭素、及び水素を含む合成ガスに変換するプロセスである。ガス化は、有利には、最終的に埋め立て処分される廃棄物の量を減らし、また1つ以上の後続のプロセスによって有用な生成物に変換可能な生成物である合成ガスを生成する。
【0004】
ガス化によって生成された合成ガスは、フィッシャー・トロプシュなどの多くのプロセスで利用され得る。フィッシャー・トロプシュプロセスは、一酸化炭素の接触水素化を提供して、炭化水素、アルコール、又は他の含酸素炭化水素といったさまざまな生成物をもたらす。しかしながら、フィッシャー・トロプシュプロセスにおける触媒床は、ガス化原料に応じて合成ガス流中に存在し得るさまざまな成分に特に敏感である。そのような成分の1つは硫黄である。フィッシャー・トロプシュプロセスに送られる前に合成ガス流から硫黄が除去されない場合、硫黄は、フィッシャー・トロプシュ反応に必要な触媒を失活させる場合がある。したがって、フィッシャー・トロプシュプロセスに好適なガスとなるには、多くの場合、大規模なガス浄化技術が必要になる。
【0005】
フィッシャー・トロプシュプロセスの代替案の1つは、ガス発酵である。ガス発酵は、1つ以上の生成物に対する合成ガスなどのガスの生物学的固定をもたらす。ガス発酵には、フィッシャー・トロプシュプロセスに比べて様々な利点がある。まず、フィッシャー・トロプシュでは、高温(150~350℃)、高圧(30bar)、及びコバルト、ルテニウム、及び鉄などの不均一系触媒が利用される。それに比べて、ガス発酵は、約37℃で行われ、多くの場合、大気圧で実施されるので、フィッシャー・トロプシュプロセスに比べて大幅なエネルギー及びコストの節約になる。さらに、フィッシャー・トロプシュプロセスでは、合成ガスのH2:CO比(約2:1)が比較的一定している必要があるが、ガス発酵では、H2:CO比が異なるさまざまな基質を受け入れて利用することができる。
【0006】
ガス化では、部分酸化によってバイオマス又は都市廃棄物が、一酸化炭素、水素、メタン、窒素、水蒸気、二酸化炭素、及びタールを含む合成ガスのガス状混合物に変換される。特にバイオマス由来の合成ガスは、利用する合成ガスから除去する必要がある高濃度のタール状化合物や粒子を含有している。タールは多くの場合、さまざまな炭化水素と含酸素化合物で構成されている。例としては、芳香族化合物、多芳香族化合物、フラン骨格構造が挙げられ、脂肪族化合物や含酸素官能基(酸、アルデヒド、ケトン、アルコールなど)がその骨格に結合している。産業ガスは、その産業ガスの供給源によってはタールを含むことも想定されている。
【0007】
産業ガス又はガス化由来の合成ガスから、その産業ガス又は合成ガスを下流のプロセスで利用する前に、タールを効率的に除去することが依然として必要とされている。加えて、ガス化工程とガス発酵工程とを、一方の工程の廃棄物の流れをシステム全体にとって最も有益な方法で利用できるように、より高度に統合することが依然として必要とされている。ガス発酵工程からのテールガスの予想外に有益な使用は、合成ガスがガス発酵工程への供給物として使用される前に、合成ガスから少なくとも1つのタールを分離するために使用される吸着剤を再生するためにテールガスの少なくとも一部を使用することである。タールの脱着後にテールガスを燃焼させることによって統合の度合がさらに高めることができ、その結果として、蒸気ボイラー内においてタールが濃縮され発熱量が高くなって、蒸気が生成される。タールが濃縮されたテールガスには驚くべき量の残留エネルギーが存在し、その結果、驚くべき量の蒸気が生成される。統合は、蒸気を利用してガス発酵工程で使用されるコンプレッサー用に発電することによってさらに統合されうる。他のオプションには、ガスエンジンやガスタービンなどにおける発電が含まれる。
【発明の概要】
【0008】
本開示は、ガス化プロセス又は産業ガスからの合成ガス流を少なくとも1つの炭化水素及び/又は含酸素化合物を吸着剤に吸着させることによって処理して処理済み流を生成すること、微生物を使用してバイオリアクター内で処理済み流の少なくとも一部を発酵させて、少なくとも1つの生成物及びテールガス流を含む放出物を生成すること、テールガス流の少なくとも一部を使用して少なくとも1つの炭化水素又は含酸素化合物を脱着することによって吸着剤を再生し、脱着された少なくとも1つの炭化水素又は含酸素化合物をさらに含む濃縮されたテールガス流を提供すること、及び、濃縮されたテールガスの少なくとも一部を、蒸気ボイラーで燃焼させて蒸気を生成すること、発電すること、又はガス化プロセスへ再循環させること、のうちの少なくとも1つに利用すること、を含む方法に関する。
【0009】
本開示はさらに、吸着剤を収容する吸着ユニットと、吸着ユニットと流体連結しているガス化装置と、吸着ユニットと流体連結しているバイオリアクターと、バイオリアクター及び吸着ユニットと流体連結しているテールガス導管と、蒸気発生ユニットと、吸着ユニット及び蒸気発生ユニットと流体連結している濃縮テールガス導管とを含む装置に関する。本装置は、発電システムと流体連結している蒸気導管をさらに備えていてもよい。本装置は、発電システムと電気的に通信し、バイオリアクターと流体連結しているコンプレッサーをさらに備えていてもよい。
【0010】
一実施形態では、発酵プロセスは、ガス化によって生成された合成ガスなどのC1含有ガス状基質を発酵するのに好適な1つ以上のC1固定微生物を利用する。さまざまな実施形態において、C1固定微生物は、モーレラ(Moorella)、クロストリジウム(Clostridium)、ルミノコッカス(Ruminococcus)、アセトバクテリウム(Acetobacterium)、ユウバクテリウム(Eubacterium)、ブチリバクテリウム(Butyribacterium)、オキソバクター(Oxobacter)、メタノサルシナ(Methanosarcina)、及びデスルホトマクルム(Desulfotomaculum)からなる群から選択される。微生物は、クロストリジウム(Clostridium)属のメンバーであり得る。ある特定の場合において、微生物は、クロストリジウム・オーランチブチリカム(Clostridium autoethanogenum)である。
【0011】
様々な実施形態において、ガス化原料は、都市固形廃棄物、農業廃棄物、微生物バイオマス、又はそれらの任意の組み合わせである。ガス化原料は乾燥機で乾燥され、次にガス化されて合成ガス流を生成する。合成ガス流の少なくとも一部は発酵プロセスに送られ、1つ以上の生成物及び場合によって少なくとも1つの副生成物を生成する。いくつかの実施形態では、発酵プロセスから生成された微生物バイオマスは、ガス化の原料としてガス化工程に送られる。
【0012】
いくつかの実施形態では、発酵プロセスによって生成された微生物バイオマスの実質的にすべてを、生成物の回収後に発酵プロセスに再循環させ、廃水処理プロセスによって処理し、かつ/又はガス化プロセスに送って合成ガスを生成する。特定の例では、ガス化プロセスは、発酵プロセスからの微生物バイオマスの少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、又は実質的にすべてを受け入れる。
【0013】
いくつかの実施形態では、廃水処理プロセスから生成された微生物バイオマスをガス化プロセスに送る。廃水処理プロセスから生成された微生物バイオマスを、少なくとも部分的に、廃水処理プロセスにおける嫌気性消化槽プロセスから回収することができる。さまざまな例において、廃水処理プロセスからの微生物バイオマスの少なくとも一部を、ガス化プロセスに送る前に乾燥させる。特定の例では、廃水処理プロセスからの微生物バイオマスの実質的にすべてを、ガス化プロセスに送る前に乾燥させる。
【0014】
特定の実施形態では、発酵プロセスからの微生物バイオマス低減水の少なくとも一部をガス化プロセスに送る。さまざまな例において、微生物バイオマス低減水をガス化プロセスに送り、合成ガス流におけるH2:CO比を増加させる。好ましくは、微生物バイオマス低減水の少なくとも一部をガス化プロセスに送り、合成ガス流におけるH2:CO比を、少なくとも2:1、少なくとも3:1、又は少なくとも4:1に増加させる。微生物バイオマス低減水をガス化プロセスに送り、合成ガス流におけるH2:CO比を増加させることで、ガス発酵プロセスによって生成されるエタノールに対する選択率を増加させること、微生物バイオマスの生成に対する選択率を減少させること、発酵反応による水の消費量を減少させること、及び/又は廃水処理プロセスへのブリード流(bleed flow)を低減させることができる。
【0015】
特定の実施形態では、発酵プロセスから生成された廃水の少なくとも一部をガス化プロセスに送る。この廃水は、1つ以上の生成物及び/又は副生成物、限定するものではないが微生物バイオマスなどを含有し得る。さまざまな例において、発酵プロセスから生成された廃水をガス化プロセスに送り、合成ガス流におけるH2:CO比を増加させる。好ましくは、発酵プロセスから生成された廃水の少なくとも一部をガス化プロセスに送り、合成ガス流におけるH2:CO比を、少なくとも2:1、少なくとも3:1、又は少なくとも4:1に増加させる。発酵プロセスから生成された廃水をガス化プロセスに送り、合成ガス流におけるH2:CO比を増加させることで、ガス発酵プロセスによって生成されるエタノールに対する選択率を増加させること、微生物バイオマスの生成に対する選択率を減少させること、発酵反応による水の消費量を減少させること、及び/又は廃水処理プロセスへのブリード流を低減させることができる。
【0016】
特定の実施形態では、廃水処理プロセスからの浄化水の少なくとも一部をガス化プロセスに送る。さまざまな例において、廃水処理プロセスからの浄化水をガス化プロセスに送り、合成ガス流におけるH2:CO比を増加させる。好ましくは、廃水処理プロセスからの浄化水の少なくとも一部をガス化プロセスに送り、合成ガス流におけるH2:CO比を、少なくとも2:1、少なくとも3:1、又は少なくとも4:1に増加させる。廃水処理プロセスからの浄化水をガス化プロセスに送り、合成ガス流におけるH2:CO比を増加させることで、ガス発酵プロセスによって生成されるエタノールに対する選択率を増加させること、微生物バイオマスの生成に対する選択率を減少させること、発酵反応による水の消費量を減少させること、及び/又は廃水処理プロセスへのブリード流を低減させることができる。
【0017】
好ましくは、発酵プロセス及び/又は廃水処理プロセスからの少なくとも1つの放出物の少なくとも一部によって、ガス化プロセスに必要なプロセス水の少なくとも一部を置き換える。特定の例では、ガス化プロセスに必要なプロセス水を少なくとも45パーセント低減させる。少なくとも1つの実施形態では、ガス化プロセスに必要なプロセス水を45~100パーセント低減させる。特定の実施形態では、ガス化プロセスに必要なプロセス水を、45~75パーセント、55~75パーセント、65~75パーセント、55~100パーセント、65~100パーセント、又は75~100パーセント低減させる。
【0018】
特定の例では、少なくとも1つの放出物の少なくとも一部が、合成ガス流の温度を低下させるために、ガス化プロセスによって生成された合成ガス流に注入される。好ましくは、ガス化プロセスによって生成された合成ガス流に注入される放出物は、微生物バイオマス低減水、発酵プロセスから生成された廃水、及び廃水処理プラントからの浄化水からなる群から選択される。好ましくは、合成ガス流の温度を少なくとも摂氏100度低下させる。少なくとも1つの実施形態では、ガス化プロセスから出る合成ガス流は、800℃~1200℃である。好ましくは、合成ガス流の温度を、さらなるガス処理及び/又は発酵に好適な温度範囲内で低下させる。さまざまな例において、少なくとも1つの微粒子を合成ガス流から除去するために、合成ガス流への少なくとも1つの放出物の注入を完了する。
【0019】
特定の例では、合成ガス流を部分的に急冷する。好ましくは、合成ガス流を、微生物バイオマス低減水、発酵プロセスから生成された廃水、及び廃水処理プラントからの浄化水からなる群から選択される1つ以上の放出物を合成ガス流に注入することによって部分的に急冷する。さまざまな実施形態において、合成ガス流を部分的に急冷して、合成ガス流の温度を700~800℃まで低下させる。さまざまな実施形態において、この温度の低下には、1000℃で開始する場合、急冷される合成ガス10,000Nm3あたり約1.2トンのプロセス水が必要とされる。好ましくは、このプロセス水の少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、又は実質的にすべてを、1つ以上の放出物を合成ガス流に注入することによって置き換える。
【0020】
特定の例では、合成ガス流を完全に急冷する。好ましくは、合成ガス流を、微生物バイオマス低減水、発酵プロセスから生成された廃水、及び廃水処理プラントからの浄化水からなる群から選択される1つ以上の放出物を合成ガス流に注入することによって完全に急冷する。さまざまな実施形態において、合成ガス流を完全に急冷して、合成ガス流の温度を300℃未満まで低下させる。さまざまな実施形態において、この温度の低下には、1000℃で開始する場合、急冷される合成ガス10,000Nm3あたり約4トンのプロセス水が必要とされる。好ましくは、このプロセス水の少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、又は実質的にすべてを、1つ以上の放出物を合成ガス流に注入することによって置き換える。
【0021】
特定の実施形態では、廃水処理プロセスから生成されたバイオガスの少なくとも一部をガス化プロセスに送る。このバイオガスは、メタン、二酸化炭素、一酸化炭素、アンモニア、及び硫黄化合物からなる群から選択される1つ以上の成分を含有し得る。さまざまな例において、この硫黄化合物は、硫化水素である。少なくとも1つの実施形態では、バイオガスは、約60パーセントのメタン及び約40パーセントの二酸化炭素を含む。少なくとも1つの実施形態では、バイオガスは、約65パーセントのメタン及び約35パーセントの二酸化炭素を含む。
【0022】
特定の実施形態では、廃水処理プロセスから生成されたバイオガスの少なくとも一部を加熱源として使用する。好ましくは、廃水処理プロセスから生成されたバイオガスの少なくとも一部をガス化プロセスによって加熱源として使用する。さまざまな例において、ガス化プロセスに送られたバイオガスの少なくとも一部を、ガス化プロセスによって生成されるスラグの少なくとも一部を溶融するための加熱源として使用する。1つ以上の実施形態では、廃水処理プロセスからのバイオガスを、ガス化プロセスに送る前に除去プロセスに送る。さまざまな例において、除去プロセスは、バイオガス流中の少なくとも1つの構成物質の量を除去、変換、及び/又は低減することができる1つ以上の除去モジュールを含む。好ましくは、除去プロセスで、バイオガス流をガス化プロセスに送る前に、少なくとも1つの硫黄化合物の少なくとも一部をバイオガス流から除去する。
【0023】
特定の実施形態では、ガス化プロセスによってガス化した後に、バイオガス中のメタンの少なくとも一部をCO及びH2に改質する。さまざまな例において、メタンは、合成ガスに含有された水分と反応して、一酸化炭素及び水素を生成する。
【0024】
ある実施形態では、発酵プロセスから生成されたテールガス、ガス化プロセスによって生成された未使用の合成ガス、生成物回収プロセスからの粗エタノール、及び/又は生成物回収プロセスからのフーゼル油の少なくとも一部を加熱源として使用する。好ましくは、これらの放出物のうちの少なくとも1つの少なくとも一部をガス化プロセスによって加熱源として使用する。さまざまな例において、これらの放出物のうちの少なくとも1つの少なくとも一部をガス化プロセスに送り、ガス化プロセスによって生成されるスラグの少なくとも一部を溶融するための加熱源として使用されることになっている。1つ以上の実施形態では、これらの放出物を、ガス化プロセスに送る前に除去プロセスによって処理する。さまざまな例において、除去プロセスは、放出物中の少なくとも1つの構成物質の量を除去、変換、及び/又は低減することができる1つ以上の除去モジュールを含む。
【0025】
廃水処理プロセスからの浄化水の少なくとも一部をガス化プロセスに送ることに加えて、廃水処理プロセスからの浄化水の少なくとも一部を発酵プロセスに送ってもよい。特定の例では、廃水処理プロセスからの浄化水の実質的にすべてをガス化プロセス及び/又は発酵プロセスのいずれかに再循環させる。特定の例では、ガス化プロセスは、廃水処理プロセスからの浄化水の少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、又は実質的にすべてを受け入れる。特定の例では、発酵プロセスは、廃水処理プロセスからの浄化水の少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、又は実質的にすべてを受け入れる。
【0026】
好ましくは、発酵プロセスは、ガス化プロセスからの合成ガスの少なくとも一部を利用して、1つ以上の燃料又は化学物質を生成する。発酵プロセスによって生成された生成物のうちの少なくとも1つは、エタノール、アセテート、ブタノール、ブチレート、2,3-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、ラクテート、ブテン、ブタジエン、メチルエチルケトン、エチレン、アセトン、イソプロパノール、脂質、3-ヒドロキシプロピオネート、テルペン(イソプレンを含むがこれに限定されない)、脂肪酸、2-ブタノール、イソブチレン、イソブタノール、1,2-プロパンジオール、1-プロパノール、及びC6~C12アルコールを含む群から選択され得る。
【0027】
1つ以上の実施形態では、発酵プロセスによって生成された微生物バイオマスの少なくとも一部を単一細胞タンパク質(SCP)に変換する場合がある。
【0028】
さまざまな例において、1つ以上の燃料又は化学物質の少なくとも一部を二次変換プロセスに送る。好ましくは、二次変換プロセスで、1つ以上の燃料又は化学物質の少なくとも一部を、ディーゼル燃料、ジェット燃料、ガソリン、プロピレン、ナイロン6-6、ゴム、及び/又は樹脂の少なくとも1つの成分にさらに変換する。
【0029】
1つ以上の実施形態では、ガス化プロセスからの合成ガスを、発酵プロセスに送る前に除去プロセスに送る。さまざまな例において、除去プロセスは、合成ガス流に含有された微生物阻害剤及び/又は触媒阻害剤の量を除去、変換、及び/又は低減することができる1つ以上の除去モジュールを含む。
【0030】
好ましくは、除去プロセスによって合成ガス流において除去、変換、又は低減される少なくとも1つの構成物質は、硫黄化合物、芳香族化合物、アルキン、アルケン、アルカン、オレフィン、窒素化合物、リン含有化合物、微粒子状物質、固形物、酸素、ハロゲン化化合物、ケイ素含有化合物、カルボニル、金属、アルコール、エステル、ケトン、過酸化物、アルデヒド、エーテル、及びタールを含む群から選択される。
【0031】
好ましくは、除去プロセスは、加水分解モジュール、酸性ガス除去モジュール、脱酸素モジュール、接触水素化モジュール、微粒子除去モジュール、塩化物除去モジュール、タール除去モジュール、及びシアン化水素研磨モジュールを含む群から選択される少なくとも1つの除去モジュールを含む。さまざまな例において、除去プロセスは、少なくとも2つの除去モジュールを含む。
【0032】
本発明はさらに、プロセスの1つ以上の点での合成ガス流の圧力を増加及び/又は減少させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】
図1は、ガス化プロセス、ガス発酵プロセス、生成物回収プロセス、及び廃水処理プロセスの統合を示すプロセス統合スキームを示しており、ガス発酵プロセスからのテールガスが、合成ガス流に対する吸着ユニットのパージガスとして使用され、本発明の一実施形態によれば、濃縮されたテールガスは、蒸気ボイラーに導かれて高圧蒸気を生成し、次に、これを使用して、ガス発酵工程用のコンプレッサーに電力を供給する。
【
図2】
図2は、ガス化プロセスとガス発酵プロセスとの間に除去プロセスをさらに含む、本発明の一実施形態による、
図1からのプロセス統合スキームを示す。
【
図3】
図3は、廃水処理プロセス後に除去プロセスをさらに含む、本発明の一実施形態による、
図2からのプロセス統合スキームを示す。
【
図4】
図4は、ガス発酵プロセス、生成物回収プロセス、及び廃水処理プロセスの統合を示すプロセス統合スキームを示しており、ガス発酵プロセスからのテールガスが、供給流に対する吸着ユニットのパージガスとして使用され、本発明の一実施形態によれば、濃縮されたテールガスは、蒸気ボイラーに導かれて高圧蒸気を生成し、次に、これを使用して、ガス発酵工程へ供給するためのコンプレッサーに電力を供給する。
【
図5】
図5は、材料のガス化によって合成ガスを生成せずに、基質又はC1炭素源として産業廃棄物ガスを使用する実施形態を示しており、インラインの濃縮テールガスは、発電ユニットに向けられる。
図5はまた、濃縮されたテールガスがプロセス回収プロセス及びユニットに向けられて、例えば、生成物を乾燥させる代替の実施形態を示している。
【
図6】
図6は、ガス化装置を使用して、基質又はC1炭素源として合成ガスを生成する実施形態を示しており、濃縮されたテールガスは、発電ユニットに向けられる。
図6はまた、濃縮されたテールガスが生成物回収プロセス及びユニットに向けられて、例えば、生成物を乾燥させる代替の実施形態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本開示は、ガス化プロセスと、発酵プロセスと、任意選択で廃水処理プロセスとの統合について説明している。ガス化プロセスからの合成ガスは、炭化水素や含酸素化合物などの少なくとも1つのタールを除去するために吸着ユニットを通過する。説明を容易にするために、本明細書で使用されるタールは、硫黄化合物及び窒素化合物、並びに炭化水素及び含酸素化合物を含むことを意味する。発酵プロセスからのテールガスは、吸着剤を再生するために吸着ユニットに再循環される。脱着したタールで濃縮されたテールガスは、蒸気発生ユニットに送られ、蒸気を生成する。この蒸気は、ガス発酵プロセスのより多くのコンプレッサーなどの様々な目的に使用することができる。統合ガス化プロセス及びガス発酵プロセスの効率と相乗効果に対する実質的な予期しない利益が達成される。通常、タールやその他の不純物は、窒素を使用して吸着剤から脱着される。この方法では、コストをかけて窒素を製造及び貯蔵する必要があり、その後には、直ちに処理する必要がある大量の汚染された窒素と共に、エネルギー値の低い希薄なテールガス流が生じる。別の方法は、処理された合成ガスを使用して吸着剤を再生することであるが、収率損失が大きくなる可能性がある。テールガスを吸着ユニットのパージとして使用することにより、これらのコストと問題が回避される。
【0035】
「効率を高める」、「効率が高められた」などの用語は、発酵プロセスに関して使用される場合、発酵を触媒する微生物の増殖速度を増加させること、上昇した生成物濃度における増殖及び/又は生成物生成速度を増加させること、消費される基質の体積あたりに生成される所望の生成物の体積を増加させること、所望の生成物の生成速度又は生成レベルを増加させること、発酵の他の副生成物と比較して生成される所望の生成物の相対的割合を増加させること、プロセスによって消費される水の量を減少させること、並びにプロセスによって利用されるエネルギーの量を減少させることのうちの1つ以上を含むが、これらに限定されない。
【0036】
「効率を高める」、「効率が高められた」などの用語は、ガス化プロセスに関連して使用される場合、プロセスによって生成される合成ガスの量を増加させること、プロセスによって利用される水の供給量を減少させること、ガス発酵のために合成ガス流を最適化すること、温室効果ガスの排出量を減少させること、及びプロセスによって利用される外部燃料を含むがこれに限定されないエネルギーの量を減少させることを含むが、これらに限定されない。
【0037】
「効率を高める」、「効率が高められた」などの用語は、廃水処理プロセスに関連して使用される場合、プロセスにおける水の保持時間を短縮すること、プロセスによって生成されるバイオガスの利用を増加させること、廃水処理プロセスに送られる放出物の量を減少させること、プロセスの量的要件を減少させること、プロセスによるアンモニア分離の必要性を減少させること、及びプロセスによって利用されるエネルギーの量を減少させることを含むが、これらに限定されない。
【0038】
基質及び/又はC1炭素源は、自動車の排出ガス又はバイオマスガス化からなど、産業プロセスの副産物として得られる、又は何らかの他の源からの廃ガスであってもよい。ある特定の実施形態では、産業プロセスは、鉄金属製品製造、例えば、製鉄所製造、非鉄製品製造、石油精製、石炭ガス化、電力生成、カーボンブラック生成、アンモニア生成、メタノール生成、及びコークス製造からなる群から選択される。これらの実施形態では、基質及び/又はC1炭素源は、任意の簡便な方法を使用して、それが大気中に放出される前に産業プロセスから捕捉されてもよい。産業ガスという用語は、工業プロセスからのこれらの基質を含むことを意味する。
【0039】
「発酵」、「ガス発酵」などの用語は、ガス化によって生成された合成ガスなどの1つ以上の基質を受容し、1つ以上のC1固定微生物を利用して1つ以上の生成物を生成するプロセスとして解釈されるべきである。好ましくは、発酵プロセスは、1つ以上のバイオリアクターの使用を含む。発酵プロセスは、「バッチ」又は「連続」のいずれかとして説明され得る。「バッチ発酵」は、バイオリアクターが微生物とともに原料、例えば炭素源で満たされ、発酵が完了するまで生成物がバイオリアクター内に留まる発酵プロセスを説明するために使用される。「バッチ」プロセスでは、発酵が完了した後に、生成物を抽出し、次の「バッチ」が始まる前にバイオリアクターを洗浄する。「連続発酵」は、発酵プロセスがより長期間にわたって延長され、発酵中に生成物及び/又は代謝物が抽出される発酵プロセスを説明するために使用される。好ましくは、発酵プロセスは連続的である。
【0040】
「廃水処理」などの用語は、発酵プロセスからの放出物からの成分を分離して浄化水を生成するプロセスとして解釈されるべきである。廃水処理プロセスは、滞留時間が変化する1つ以上の嫌気性消化槽、及び1つ以上のアンモニアストリッピングプロセスを含み得るが、これらに限定されない。
【0041】
「ガス化」などの用語は、有機又は化石燃料系の炭素質材料を一酸化炭素(CO)、水素(H2)、及び二酸化炭素(CO2)に変換するプロセスとして解釈されるべきである。ガス化プロセスは、向流式固定床ガス化装置、並流式固定床ガス化装置、流動床反応器、同伴流ガス化装置、及びプラズマガス化装置を含むがこれらに限定されないさまざまな技術を含み得る。ガス化プロセスでは、合成ガス流を生成することができる任意の供給物が利用され得る。「ガス化プロセス」という用語は、ガス化装置用の加熱源を含むガス化に関連する単位工程と一緒になったガス化装置自体及び合成ガス急冷プロセスを包含する。
【0042】
「合成ガス流」、「合成流」などは、ガス化プロセスから出るガス状基質を指す。合成ガス流は、主に、一酸化炭素(CO)、水素(H2)、及び二酸化炭素(CO2)からなるべきである。合成ガス流の組成は、関連する供給原料及びガス化プロセスに応じて非常にさまざまであり得るが、合成ガスの一般的な組成は、30~60パーセント(30~60%)の一酸化炭素(CO)、25~30パーセント(25~30%)の水素(H2)、0~5パーセント(0~5%)のメタン(CH4)、5~15パーセント(5~15%)の二酸化炭素(CO2)、及びより少ない又は多い量の水蒸気、より少ない量の硫黄化合物、硫化水素(H2S)、硫化カルボニル(COS)、アンモニア(NH3)、及び他の微量の汚染物質を含む。
【0043】
特定の実施形態では、水素の存在は、発酵プロセスによるアルコール生成の改善された全体的な効率をもたらす。
【0044】
合成ガスの組成を改善して、所望の又は最適なH2:CO:CO2比を提供することができる。合成ガスの組成を、ガス化プロセスに供給される原料を調整することによって改善してもよい。望ましいH2:CO:CO2比は、発酵プロセスの所望の発酵生成物に依存する。
【0045】
水素の存在下で発酵プロセスを操作することには、発酵プロセスによって生成されるCO2の量が低減されるというさらなる利点がある。例えば、最小限のH2を含むガス状基質は、一般に、以下の化学量論[6CO+3H2O→C2H5OH+4CO2]に従って、エタノール及びCO2を生成するであろう。C1固定細菌によって利用される水素の量が増加すると、生成されるCO2の量は減少する[例えば、2CO+4H2→C2H5OH+H2O]。
【0046】
COがエタノール生成の唯一の炭素及びエネルギー源である場合、以下のように炭素の一部がCO2に失われる:
6CO+3H2O→C2H5OH+4CO2(ΔG°=-224.90kJ/molエタノール)
【0047】
基質で利用可能なH2の量が増加すると、生成されるCO2の量は減少する。化学量論比が2:1(H2:CO)の場合、CO2の生成は完全に回避される。
5CO+1H2+2H2O→1C2H5OH+3CO2(ΔG°=-204.80kJ/molエタノール)
4CO+2H2+1H2O→1C2H5OH+2CO2(ΔG°=-184.70kJ/molエタノール)
3CO+3H2→1C2H5OH+1CO2(ΔG°=-164.60kJ/molエタノール)
【0048】
「流」とは、例えば、あるプロセスから別のプロセスへ、あるモジュールから別のモジュールへ、及び/又はあるプロセスから炭素捕捉手段へ送ることが可能な任意の基質を指す。
【0049】
本明細書で使用される場合、「反応物質」とは、化学反応中の変化に関与し、化学反応中に変化する物質を指す。特定の実施形態では、反応物質としては、CO及び/又はH2が挙げられるが、これらに限定されない。
【0050】
本明細書で使用される「微生物阻害剤」は、微生物を含む特定の化学反応又は他のプロセスを減速又は防止する1つ以上の構成物を指す。特定の実施形態では、微生物阻害剤としては、酸素(O2)、シアン化水素(HCN)、アセチレン(C2H2)、及びBTEX(ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0051】
本明細書で使用される場合、「触媒阻害剤」、「吸着阻害剤」などは、化学反応の速度を低下させるか、又は化学反応を防止する1つ以上の物質を指す。特定の実施形態では、触媒阻害剤及び/又は吸着阻害剤としては、硫化水素(H2S)及び硫化カルボニル(COS)が挙げられ得るが、これらに限定されない。
【0052】
「除去プロセス」、「除去モジュール」、「洗浄モジュール」などとしては、ガス流からの微生物阻害剤及び/又は触媒阻害剤の変換及び/又は除去のいずれかを行うことができる技術が挙げられる。特定の実施形態では、下流の除去モジュールにおける1つ以上の触媒の阻害を防止するために、触媒阻害剤を上流の除去モジュールによって除去する必要がある。
【0053】
本明細書で使用される場合、「構成物質」、「汚染物質」などの用語は、ガス流中に見られ得る微生物阻害剤及び/又は触媒阻害剤を指す。特定の実施形態では、構成物質としては、硫黄化合物、芳香族化合物、アルキン、アルケン、アルカン、オレフィン、窒素化合物、リン含有化合物、微粒子状物質、固形物、酸素、ハロゲン化化合物、ケイ素含有化合物、カルボニル、金属、アルコール、エステル、ケトン、過酸化物、アルデヒド、エーテル、及びタールが挙げられるが、これらに限定されない。
【0054】
「処理済みガス」、「処理済み流」などの用語は、少なくとも1つの除去モジュールを通過し、かつ1つ以上の構成物質が除去及び/又は変換されたガス流を指す。
【0055】
本明細書で使用される場合、「炭素捕捉」という用語は、CO2及び/若しくはCOを含む流からのCO2及び/若しくはCOを含む炭素化合物の隔離、並びに
CO2及び/若しくはCOを生成物に変換すること、又は
CO2及び/若しくはCOを長期貯蔵に好適な物質に変換すること、又は
CO2及び/若しくはCOを長期貯蔵に好適な物質中に閉じ込めること、又は
これらのプロセスの組み合わせのいずれかを指す。
【0056】
「バイオリアクター」、「リアクター」などの用語は、1つ以上の容器及び/若しくは塔又は配管装置からなる発酵装置を含み、連続撹拌槽型リアクター(CSTR)、固定化細胞リアクター(Immobilized Cell Reactor(ICR))、トリクルベッドリアクター(TBR)、気泡塔、ガスリフト発酵槽(Gas Lift Fermenter)、スタティックミキサ、循環ループリアクター、中空繊維膜バイオリアクター(HFMBR)などの膜リアクター、バブルリアクター、ファインバブルリアクター、マイクロバブルリアクター、又は、気液接触に適した他の容器若しくは他の装置を含む。反応器は、好ましくは、CO若しくはCO2若しくはH2又はそれらの混合物を含むガス状基質を受け入れるように適合される。反応器は、並列又は直列のいずれかで、複数の反応器(段)を備え得る。例えば、反応器は、細菌が培養される第1の増殖反応器と、増殖反応器からの発酵ブロスが供給され、発酵生成物の大部分が生成され得る第2の発酵反応器とを備え得る。
【0057】
「栄養培地(Nutrient media又はNutrient medium)」は、細菌増殖培地を説明するために使用される。好ましくは、発酵プロセスは、バイオリアクターにおいて栄養培地を利用する。一般に、この用語は、培養微生物の増殖に適した栄養素及び他の成分を含有する培地を指す。「栄養素」という用語は、微生物の代謝経路において利用され得る任意の物質を含む。例示的な栄養素としては、カリウム、ビタミンB、微量金属、及びアミノ酸が挙げられる。
【0058】
「発酵ブロス」又は「ブロス」という用語は、栄養培地及び培養物又は1つ以上の微生物を含む成分の混合物を包含することを意図する。好ましくは、発酵プロセスで、発酵ブロスを利用して、合成ガス流を1つ以上の生成物に発酵させる。
【0059】
本明細書で使用される「酸」という用語は、本明細書に記載の発酵ブロス中に存在する遊離酢酸と酢酸塩との混合物など、カルボン酸及び関連するカルボン酸アニオンの両方を含む。発酵ブロス中の分子酸とカルボン酸との比は、系のpHに依存する。さらに、「アセテート」という用語は、酢酸塩単独、及び本明細書に記載の発酵ブロス中に存在する酢酸塩と遊離酢酸との混合物などの分子又は遊離酢酸と酢酸塩との混合物の両方を含む。
【0060】
「所望の組成」という用語は、例えば、合成ガスを含むがこれに限定されないガス流などの物質における構成成分の所望のレベル及び種類を指すために使用される。より具体的には、ガスは、それが特定の成分(例えば、CO、H2、及び/又はCO2)を含有する、及び/又は特定の成分を特定の割合で含有する、及び/又は特定の成分(例えば、微生物に有害な汚染物質)を含有しない、及び/又は特定の成分を特定の割合で含有しない場合、「所望の組成」を有すると考えられる。ガス流が所望の組成を有しているかどうかを決定する際に、2つ以上の成分が考慮され得る。
【0061】
文脈上別段の要求がない限り、本明細書で使用される場合、「発酵」、「発酵プロセス」、又は「発酵反応」などの句は、ガス状基質の増殖期及び生成物生合成期の両方を包含することを意図する。
【0062】
「微生物」は、顕微鏡生物、特に、細菌、古細菌、ウイルス、又は真菌である。本発明の微生物は、一般に細菌である。本明細書で使用される場合、「微生物」という用語の列挙は、「細菌」を包含すると考えられるべきである。微生物という用語及び細菌という用語は、本文書を通じて互換的に使用されることに留意されたい。
【0063】
「親微生物」は、本発明の微生物を生成するために使用される微生物である。親微生物は、天然に存在する微生物(例えば、野生型微生物)、又は以前に修飾された微生物(例えば、変異体又は組換え微生物)であってもよい。本発明の微生物は、親微生物において発現又は過剰発現しなかった1つ以上の酵素を発現又は過剰発現するように修飾され得る。同様に、本発明の微生物は、親微生物が含有しなかった1つ以上の遺伝子を含有するように修飾され得る。本発明の微生物は、また、親微生物において発現された1つ以上の酵素を発現しない又はより少ない量を発現させるように修飾され得る。一実施形態では、親微生物は、クロストリジウム・オーランチブチリカム(Clostridium autoethanogenum)、クロストリジウム・リュングダリイ(Clostridium ljungdahlii)、又はClostridium ragsdaleiである。好ましい実施形態では、親微生物は、2010年6月7日にドイツのD-38124 ブラウンシュヴァイク、インホッヘンシュトラーベ7Bにあるドイツ微生物細胞培養コレクション(Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH(DSMZ))にブダペスト条約の条項下で2010年6月7日に寄託され、受託番号DSM23693を付与されたクロストリジウム・オーランチブチリカム(Clostridium autoethanogenum)LZ1561である。この菌株は、国際公開第2012/015317号として公開されている国際特許出願PCT/NZ2011/000144号に記載されている。
【0064】
「から誘導される」という用語は、核酸、タンパク質、又は微生物が異なる(例えば、親又は野生型)核酸、タンパク質、又は微生物から改変又は適合されて、新しい核酸、タンパク質、又は微生物を生成することを示す。そのような改変又は適合は、典型的には、核酸若しくは遺伝子の挿入、欠失、変異、又は置換を含む。一般に、本発明の微生物は、親微生物から誘導される。一実施形態では、本発明の親微生物は、クロストリジウム・オーランチブチリカム(Clostridium autoethanogenum)、クロストリジウム・リュングダリイ(Clostridium ljungdahlii)、又はClostridium ragsdaleiから誘導される。好ましい実施形態では、本発明の微生物は、DSMZ受託番号DSM23693の下で寄託される、クロストリジウム・オーランチブチリカム(Clostridium autoethanogenum)LZ1561から誘導される。
【0065】
「Wood-Ljungdahl」とは、例えば、Ragsdale,Biochim Biophys Acta,1784:1873-1898,2008に記載されている炭素固定のWood-Ljungdahl経路を指す。「Wood-Ljungdahl微生物」は、予想通り、Wood-Ljungdahl経路を有する微生物を指す。一般に、本発明の微生物は天然のWood-Ljungdahl経路を有する。本明細書では、Wood-Ljungdahl経路は、天然の未修飾のWood-Ljungdahl経路であってもよく、又はCO、CO2、及び/若しくはH2をアセチル-CoAに変換するように依然として機能する限り、ある程度の遺伝子修飾(例えば、過剰発現、異種発現、遺伝子欠損など)を有するWood-Ljungdahl経路であってもよい。
【0066】
「C1」は、1炭素分子、例えば、CO、CO2、CH4、又はCH3OHを指す。「C1含酸素化合物」は、少なくとも1つの酸素原子も含む1炭素分子、例えば、CO、CO2、又はCH3OHを指す。「C1炭素源」は、本発明の微生物のための部分的又は唯一の炭素源として機能する1炭素分子を指す。例えば、C1炭素源は、CO、CO2、CH4、CH3OH、又はCH2O2のうちの1つ以上を含み得る。好ましくは、C1炭素源は、CO及びCO2のうちの1方又は両方を含む。「C1固定微生物」は、C1炭素源から1つ以上の生成物を生成する能力を有する微生物である。一般に、本発明の微生物はC1固定細菌である。
【0067】
「嫌気性菌」は、増殖のために酸素を必要としない微生物である。嫌気性菌は、酸素が特定の閾値を超えて存在する場合、負の反応を起こし得るか、若しくは死滅し得る。しかしながら、いくつかの嫌気性細菌は、低レベルの酸素(例えば、0.000001~5%の酸素)を許容可能である。一般に、本発明の微生物は嫌気性細菌である。
【0068】
「アセトゲン」は、エネルギー節約のため、並びにアセテートなどのアセチル-CoA及びアセチル-CoA由来生成物の合成のために、それらの主要機構として、Wood-Ljungdahl経路を使用する、偏性嫌気性細菌である(Ragsdale,Biochim Biophys Acta,1784:1873-1898,2008)。特に、アセトゲンは、Wood-Ljungdahl経路を、(1)CO2からのアセチル-CoAの還元合成のための機構、(2)最終電子受容エネルギー節約プロセス、(3)細胞炭素の合成におけるCO2の固定(同化)のための機構として使用する(Drake,Acetogenic Prokaryotes,In:The Prokaryotes,3rdedition,p.354,New York,NY,2006)。天然に存在するすべてのアセトゲンは、C1固定、嫌気性、独立栄養性、及び非メタン資化性である。一般に、本発明の微生物はアセトゲンである。
【0069】
「エタノロゲン(ethanologen)」は、エタノールを生成する、又は生成することが可能である微生物である。一般に、本発明の微生物はエタノロゲンである。
【0070】
「独立栄養生物」は、有機炭素の不在下で増殖することが可能な微生物である。代わりに、独立栄養生物は、CO及び/又はCO2などの無機炭素源を使用する。一般に、本発明の微生物は独立栄養生物である。
【0071】
「カルボキシド栄養生物」は、炭素及びエネルギーの唯一の供給源としてCOを利用することが可能な微生物である。一般に、本発明の微生物はカルボキシド栄養生物である。
【0072】
「メタン資化性菌」は、炭素及びエネルギーの唯一の供給源としてメタンを利用することが可能な微生物である。特定の実施形態では、本発明の微生物は、メタン資化性菌であるか、又はメタン資化性菌から誘導される。他の実施形態では、本発明の微生物はメタン資化性菌ではないか、メタン資化性菌から誘導されない。
【0073】
「基質」は、本発明の微生物のための炭素及び/又はエネルギー源を指す。一般に、基質は、ガス状であり、C1炭素源、例えば、CO、CO2、及び/又はCH4を含む。好ましくは、基質は、CO又はCO+CO2のC1炭素源を含む。基質は、H2又はN2などの他の非炭素成分をさらに含み得る。
【0074】
「共基質」という用語は、必ずしも生成物合成のための一次エネルギー及び材料供給源ではないが、一次基質などの別の基質に添加された場合に生成物合成に利用され得る物質を指す。
【0075】
基質の組成は、反応の効率及び/又はコストに著しい影響を及ぼし得る。例えば、酸素(O2)の存在は、嫌気性発酵プロセスの効率を低減させ得る。基質の組成に応じて、基質を処理、スクラブ、又は濾過して、毒素、望ましくない構成成分、又はちり粒子等のいかなる望ましくない不純物も除去すること、及び/又は所望の構成成分の濃度を増加させることが望ましくあり得る。
【0076】
特定の実施形態では、発酵は、糖、デンプン、リグニン、セルロース、又はヘミセルロースなどの炭水化物基質の不在下で実施される。
【0077】
本発明の微生物は、1つ以上の生成物を生成するようにガス流とともに培養され得る。例えば、本発明の微生物は、エタノール(国際公開第2007/117157号)、アセテート(国際公開第2007/117157号)、ブタノール(国際公開第2008/115080号及び国際公開第2012/053905号)、ブチレート(国際公開第2008/115080号)、2,3-ブタンジオール(国際公開第2009/151342号及び国際公開第2016/094334号)、ラクテート(国際公開第2011/112103号)、ブテン(国際公開第2012/024522号)、ブタジエン(国際公開第2012/024522号)、メチルエチルケトン(2-ブタノン)(国際公開第2012/024522号及び国際公開第2013/185123号)、エチレン(国際公開第2012/026833号)、アセトン(国際公開第2012/115527号)、イソプロパノール(国際公開第2012/115527号)、脂質(国際公開第2013/036147号)、3-ヒドロキシプロピオネート(3-HP)(国際公開第2013/180581号)、イソプレンを含むテルペン(国際公開第2013/180584号)、脂肪酸(国際公開第2013/191567号)、2-ブタノール(国際公開第2013/185123号)、1,2-プロパンジオール(国際公開第2014/036152号)、1-プロパノール(国際公開第2014/0369152号)、コリスメート由来生成物(国際公開第2016/191625号)、3-ヒドロキシブチレート(国際公開第2017/066498号)、及び1,3-ブタンジオール(国際公開第2017/0066498号)を生成することができるか、又は生成するように操作され得る。特定の実施形態では、微生物バイオマス自体が生成物とみなされ得る。これらの生成物はさらに変換されて、ディーゼル、ジェット燃料、及び/又はガソリンのうちの少なくとも1つの成分を生成し得る。加えて、微生物バイオマスはさらに処理されて、単細胞タンパク質(SCP)を生成し得る。
【0078】
「単細胞タンパク質」(SCP)は、タンパク質が豊富なヒト及び/又は動物用飼料に使用され得る微生物バイオマスを指し、多くの場合、大豆又は魚粉などの従来のタンパク質補給源に取って代わる。単細胞タンパク質又は他の生成物を生成するために、本方法は、追加の分離、加工、又は処理工程を含み得る。例えば、本方法は、微生物バイオマスを滅菌すること、微生物バイオマスを遠心分離すること、及び/又は微生物バイオマスを乾燥させることを含み得る。特定の実施形態では、微生物バイオマスは、噴霧乾燥又はパドル乾燥を使用して乾燥される。核酸含有量の高い食事を摂取すると、核酸分解生成物の蓄積及び/又は胃腸障害が生じ得るため、本方法は、当技術分野で既知の任意の方法を使用して、微生物バイオマスの核酸含有量を低減させることも含み得る。単細胞タンパク質は、家畜やペットなどの動物への給餌に好適であり得る。特に、動物用飼料は、1頭以上の肉用牛、乳用牛、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、ラバ、ロバ、シカ、バッファロー/バイソン、ラマ、アルパカ、トナカイ、ラクダ、バンテン、ガヤル、ヤク、ニワトリ、シチメンチョウ、アヒル、ガチョウ、ウズラ、ホロホロドリ、ひなバト/ハト、サカナ、エビ、甲殻類、ネコ、イヌ、及びげっ歯類に給餌するのに好適であり得る。動物用飼料の組成は、異なる動物の栄養要件に合わせて調整され得る。さらに、プロセスは、微生物バイオマスを1つ以上の賦形剤と混合すること又は組み合わせることを含み得る。
【0079】
「賦形剤」は、動物用飼料の形態、特性、又は栄養含有量を強化又は変更するために、微生物バイオマスに添加され得る任意の物質を指し得る。例えば、賦形剤は、炭水化物、繊維、脂肪、タンパク質、ビタミン、ミネラル、水、香料、甘味料、酸化防止剤、酵素、防腐剤、プロバイオティクス、又は抗生物質のうちの1つ以上を含み得る。いくつかの実施形態では、賦形剤は、干し草、わら、貯蔵生牧草、穀物、油若しくは脂肪、又は他の植物材料であってもよい。賦形剤は、Chiba,Section18:Diet Formulation and Common Feed Ingredients,Animal Nutrition Handbook,3rdrevision,pages575-633,2014に特定される、任意の飼料成分であってもよい。
【0080】
「天然生成物」は、遺伝子組換えされない微生物によって生成された生成物である。例えば、エタノール、アセテート、及び2,3-ブタンジオールは、クロストリジウム・オーランチブチリカム(Clostridium autoethanogenum)、クロストリジウム・リュングダリイ(Clostridium ljungdahlii)、及びClostridium ragsdaleiの天然生成物である。「非天然生成物」は、遺伝子組換えされた微生物によって生成されるが、遺伝子組換えされた微生物が由来する遺伝子組換えされない微生物によって生成されない生成物である。
【0081】
「選択性」は、微生物によって生成される全発酵生成物の生成に対する標的生成物の生成の比率を指す。本発明の微生物は、ある特定の選択性で、又は最小の選択性で生成物を生成するように操作され得る。一実施形態では、標的生成物は、本発明の微生物によって生成される全発酵生成物の少なくとも約5%、10%、15%、20%、30%、50%、又は75%を占める。一実施形態では、標的生成物は、本発明の微生物が少なくとも10%の標的生成物に対して選択性を有するように、本発明の微生物によって生成される全発酵生成物の少なくとも10%を占める。別の実施形態では、標的生成物は、本発明の微生物が少なくとも30%の標的生成物に対して選択性を有するように、本発明の微生物によって生成される全発酵生成物の少なくとも30%を占める。
【0082】
培養物は概して、微生物の増殖を可能にするのに十分な栄養素、ビタミン、及び/又は無機物を含有する水性培地中で維持される。好ましくは、水性培養培地は、最小嫌気性微生物増殖培地などの嫌気性微生物増殖培地である。
【0083】
培養/発酵は、望ましくは、標的生成物の生成に適切な条件下で実施されるべきである。典型的に、培養/発酵は、嫌気性条件下で実施される。考慮すべき反応条件は、圧力(又は分圧)、温度、ガス流速、液体流速、培地pH、培地酸化還元電位、撹拌速度(連続撹拌槽反応器を使用する場合)、接種レベル、液相中のガスが制限的にならないことを確実にするための最大ガス基質濃度、及び生成物阻害を回避するための最大生成物濃度を含む。特に、基質の導入速度は、生成物がガス制限条件下での培養によって消費され得るため、液相中のガスの濃度が制限的にならないことを確実にするように制御されてもよい。
【0084】
上昇した圧力でバイオリアクターを操作することは、気相から液相へのガス物質移動の増加した速度を可能にする。したがって、概して、大気圧よりも高い圧力で培養/発酵を実施することが好ましい。また、所与のガス変換速度が部分的に基質保持時間の関数であり、かつ保持時間がバイオリアクターの必要な容積を示すため、加圧システムの使用は、必要なバイオリアクターの容積、及びその結果として培養/発酵装置の資本コストを大幅に削減することができる。これは、同様に、バイオリアクター中の液体体積を入力ガス流速で除算したものと定義される保持時間が、バイオリアクターが大気圧よりも上昇した圧力に維持されるときに短縮し得ることを意味する。最適反応条件は、使用される特定の微生物に部分的に依存する。しかしながら、一般的には、大気圧より高い圧力で発酵を行うことが好ましい。また、所与のガス変換速度が部分的に基質保持時間の関数であり、かつ所望の保持時間を達成することが同様にバイオリアクターの必要な容積を示すため、加圧システムの使用は、必要なバイオリアクターの容積、及びその結果として発酵装置の資本コストを大幅に削減することができる。
【0085】
標的生成物は、例えば、分留、真空蒸留、蒸発、浸透気化、ガスストリッピング、相分離、及び例えば、液-液抽出を含む抽出発酵を含む、当該技術分野において既知の方法又は方法の組み合わせを利用し得る好適な任意の除去プロセスを使用して、発酵ブロスから分離又は精製することができる。特定の実施形態において、標的生成物は、ブロスの一部をバイオリアクターから連続的に取り出し、微生物細胞をブロスから(濾過により簡便に)分離し、1つ以上の標的生成物をブロスから回収することによって、発酵ブロスから回収される。アルコール及び/又はアセトンは、例えば、蒸留によって回収され得る。酸は、例えば、活性炭上での吸着によって回収され得る。分離された微生物細胞をバイオリアクターに返送することができる。標的生成物が取り出された後に残存している無細胞透過液もバイオリアクターに返送することができる。追加の栄養素(ビタミンBなど)を、無細胞透過液に添加して、培地を補充した後にバイオリアクターに返送することができる。
【0086】
「濃縮された」とは、濃縮工程前の流れと比較して、成分の量が増加した流れを指す。
説明
【0087】
本開示は、ガス化工程と発酵工程を統合システムに統合することにより、予想外の相乗効果によって統合システムの全体的な効率が改善されることを示している。より具体的には、本開示は、ガス化プロセスからの合成ガスを吸着剤を使用して処理し、炭化水素又は含酸素化合物などの少なくとも1つのタールを除去し、発酵工程のテールガスが吸着剤を再生するために使用され、それによってタールが濃縮され、発熱量が増加する統合について明らかにする。濃縮されたテールガスは、蒸気発生ユニットで燃焼されて、多くの異なる目的に使用し得る蒸気を生成することができる。さらなる統合を提供するそのような使用は、蒸気を使用して電力を生成して、ガス発酵プロセスのコンプレッサーに電力を供給することである。
【0088】
バイオマス又は廃棄物原料のガス化によって生成される合成ガスには、一般にタールとして知られる炭化水素と含酸素化合物が含まれ、その生成と濃度は原料とガス化プロセスの温度に関連している。通常、空気が酸化剤として使用されるガス化装置では、濃縮空気又は精製酸素が酸化剤として使用されるプロセスと比較して、温度が低くなる。低温ガス化装置は、1000~10,000ppmvといったかなりの濃度のタールと1~5体積%のメタンを生成する合成ガスを生成する。タールとメタンはガス発酵にとって望ましくない生成物である。どちらも発酵性ではなく、特にタールはガス発酵プロセスの工程にあたって除去する必要がある。
【0089】
より重く、より高い沸点のタールの除去は、合成ガスを冷却することによって実行することができ、これにより、これらのタールが合成ガス中に存在する水とともに凝縮する。この液体生成物である凝縮物は、炭化水素、含酸素化合物、及び/又は水のうちの1つ以上を含む廃棄物であり、多くの場合、廃棄する必要がある。大量の凝縮物が生成され、その凝縮物の1つの成分がかなりの濃度であるいくつかの実施形態では、販売のためにその成分を精製することが望ましく、また経済的である場合がある。別の実施形態では、凝縮物の廃棄方法は燃焼である。凝縮物は、燃料ガス、天然ガス、合成ガス、又はガス発酵プロセスから得られる発酵テールガスの燃焼によって生成される火炎を使用することによって燃焼させることができる。あるいは、凝縮物を処分するために廃水処理プロセスに送ることもでき、これにより、凝縮物を燃焼させる場合と比較して、収量が増加する。メタンと残留CO及びH2を含み得る発酵テールガスを使用することは、テールガスが低コストであり、またそれが廃棄を必要とし得る廃棄流であるという点で理想的である。発酵テールガスを使用することは、合成ガスのメタン成分がテールガスに移動し、テールガスの発熱量を増加させて可燃流としてのテールの価値を増加させる可能性があることから、この統合にとって一層比類なく適している。
【0090】
低温ガス化の実施形態などの他の実施形態では、合成ガス中にかなりの量の凝縮物とメタンの両方が存在するため、結果として生じるテールガスは、燃焼にとってかなりの価値がある。しかしながら、高温ガス化プロセスなどのいくつかのガス化プロセスは、非常に少ないタール又はメタンを含む合成ガス、例えば、一実施形態では0.5%未満、又は別の実施形態では0.1mol%まで下がった合成ガスをもたらし得、燃焼するには希薄すぎる発酵テールガスをもたらす。この実施形態では、廃棄を必要とする凝縮物は非常に少ないか又は全くない。発酵テールガス流を使用したタール及び含酸素化合物の脱着は、それによって発酵テールガスのエネルギー密度を高め、そうでなければ価値の低いテールガスをより価値の高い生成場面で使用する機会を与える。例えば、テールガスを燃やすためにメタンを加える代わりに、タール及び含酸素化合物の脱着後に濃縮されたテールガスを、蒸気ボイラーで、あるいはさらにコージェネレーションユニット又は直接発電ユニットなどの発電ユニットで使用することができる。濃縮された発酵テールガスには、蒸気ボイラーや発電機等に使用した場合に燃焼効率を向上させるエネルギー価値が付加されている。吸着剤から炭化水素及び含酸素化合物を脱着するためにテールガスを使用しない場合には、吸着剤を脱着し再生するために窒素を入手して使用することが必要になり得るので、さらなる効率が達成される。内部プロセス流を使用することによって、コストが削減される。
【0091】
ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン(BTEX)などの沸点の低い軽いタールも、ガス化プロセスからの合成ガス又は産業ガスに存在する可能性があり、これらをガス発酵の前に除去する必要がある。BTEXは、温度スイング吸着(TSA)ユニットや圧力スイング吸着(PSA)などの吸着ユニットによって除去することができる。発酵テールガスの2番目の用途は、吸着床からBTEXを脱着するためのパージガスとしてのそれである。パージガスとして使用された後に、テールガスは残留合成ガス成分(CH4、CO、H2)を含み、脱着したBTEXが濃縮されるため、かなりの再生可能エネルギーを含む濃縮テールガスが形成される。濃縮されたテールガス流は、残りの発酵テールガスに加えて、蒸気ボイラーで燃焼されて蒸気を生成することができ、例えば、ガス化システム及びガス発酵システムで使用されるプロセスユニットなどの様々なプロセスユニットに適した高圧流を生成することができる。
【0092】
濃縮されたテールガスには驚くほど大量のエネルギーが残留しており、そのため、濃縮されたテールガスから驚くほどの量の蒸気が生成される。一実施形態である空気吹きガス化システムでは、原料に含まれる化学エネルギーの75%を合成ガスとして回収することができ、その20%(原料の15%、75%の20%)がBTEX、メタン、その他の軽質炭化水素として存在し得、80%がCO及びH2として存在し得る。18GJ/トンという低い発熱量を有する1乾燥トンの飼料の場合、これは、約1.2トンの蒸気生成に相当する3GJが非発酵種として存在することを意味する。ガス化プロセス又は産業廃棄物ガスからの合成ガス流と比較して、濃縮されたテールガスは、N2が濃縮されている、CO2が濃縮されている、不純物が枯渇している、又はこれらのうちのいずれかを兼ね備えており、その結果、濃縮されたテールガスは、吸着成分の脱着に予想外の改善をもたらす。生成された蒸気は、発酵生成物の蒸留、吸着冷却装置の工程、蒸気駆動圧縮、廃水の蒸発、生体触媒の乾燥、チームインプレース(SIP)、定置洗浄(CIP)、原料の乾燥、蒸気駆動の原料運搬装置、建物の暖房、及び発電に使用することができる。生成された蒸気が発電に使用され、その電力がガス発酵プロセスのコンプレッサーに電力を供給するために使用される場合、統合のさらなる段階が達成され得る。
【0093】
他の実施形態は、廃水処理プロセスから生成されたバイオガス、発酵プロセスから生成されたテールガス、ガス化プロセスによって生成された未使用の合成ガス、発酵プロセスから生成された微生物バイオマス、廃水処理プロセスから生成された微生物バイオマス、生成物回収プロセスからの粗エタノール、生成物回収プロセスからのフーゼル油、微生物バイオマス低減水、発酵プロセスから生成された廃水、及び廃水処理プロセスからの浄化水から選択される1つ以上の放出物を含み、これを合成ガス流を生成するガス化プロセスに送ることができ、ガス化プロセスで熱源として利用することができ、かつ/又はガス化プロセスで合成ガス流を急冷するために利用することができる。合成ガス流は、好ましくはガス発酵に好適である。
【0094】
これらのさまざまな放出物は、発酵プロセスの最中又はその下流のいずれかで生成される。発酵プロセスでは、微生物バイオマス、エタノール、アセテート、及び2-3ブタンジオールなどの有機代謝物、並びに塩及び微量金属などのさまざまな無機化合物を含む廃水流が生成される。この廃水流は、多くの場合、廃水処理プロセスに送られる。一般的な廃水処理プロセスは、以下の工程、すなわち、(i)懸濁固形物である微生物バイオマスを分離する工程、(ii)個別の長い滞留時間(約30日)の嫌気性消化槽において微生物バイオマス固形物を濃縮する工程、(iii)溶解性有機物を含有する、微生物バイオマス固形物の量が低減された、浄化された放出物を、より短い滞留時間(約2~3日)の嫌気性消化槽において濃縮する工程を含む。一般に、これらの嫌気性消化槽は、供給物中の有機物の大部分、好ましくは80%超を消費し、バイオガス生成物を生成する。バイオガス生成物は、主に、メタン(CH4)及び二酸化炭素(CO2)からなる。
【0095】
このバイオガス生成物は、発電に有用であり得る。しかしながら、バイオガスを発電に使用するには、一般に、バイオガスを1つ以上の除去モジュールで処理する必要がある。さらに、後に説明されるように、微生物バイオマスを使用してバイオガスを生成することは、微生物バイオマスをガス化又は乾燥する条件と比較した場合、比較的価値の低い微生物バイオマス使用であることが見出された。
【0096】
前述の工程に加えて、廃水処理プロセスはまた、嫌気性消化槽に続く追加の処理工程を含み得る。一般に、嫌気性消化槽からの処理済みの放出物は、好気性処理、ストルバイト回収、窒素回収、及び場合によっては逆浸透を含む追加の処理にかけられる。廃水処理プロセスによって生成された浄化水は、再利用及び/又は排出に好適である。この浄化水を使用する好適な手法の1つは、浄化水を発酵プロセス及び/又はガス化プロセスに再循環させることである。
【0097】
廃水処理プロセスは、発酵プロセスからの廃水を問題なく処理して浄化水を生成することができるが、廃水流中の有機代謝物は、多くの場合、いくつかの課題を呈する。具体的には、廃水処理プロセスによる廃水流中の微生物バイオマスの処理は、(i)嫌気性消化中のタンパク質含有量が高いこと、したがってアンモニアの生成が多いこと、及び(ii)廃水処理プロセスを収容するのに必要な区画スペースが大きいことを原因として、設計上の課題を呈する場合がある。
【0098】
アンモニアは、高濃度の場合、嫌気性消化プロセス中のメタン生成の阻害に関連するため、嫌気性消化に課題を呈する。アンモニアの阻害濃度は、2~3g/Lの範囲であることが分かっている。分離された微生物バイオマスが消化されると、アンモニア濃度が20g/L超になり得るため、この閾値を大幅に上回り得る。したがって、廃水処理プロセスによって微生物バイオマスを処理するためには、多くの場合、アンモニアストリッピングプロセスが、アンモニア濃度を阻害レベル未満に下げるために必要とされる。
【0099】
区画スペースが大きいという要件は、土地が高価な地域で重大な問題を呈する。廃水処理プロセスの各成分は、処理される量が多いため、かなりのスペースを必要とする。例えば、長い滞留時間の嫌気性消化槽は、場合によっては、7,000m3を超えることがある。
【0100】
本発明者等は、微生物バイオマスの少なくとも一部をガス化プロセスに再循環させることによって、これらの課題を克服することができると見出した。嫌気性消化に送られる微生物バイオマスがより少なくなると、生成されるアンモニアがより少なくなるため、アンモニアストリッピングプロセスの必要性が低減及び/又は排除される。さらに、発酵プロセスからより多くの量の放出物がガス化プロセスに送られるので、より少ない量の放出物が廃水処理プロセスに送られる。廃水処理プロセスによって処理される放出物の量がより少なくなると、必要な量及び対応する区画スペースの要件が低減され、土地が高価な地域について設計が有利になる。
【0101】
前述の課題を克服することに加えて、微生物バイオマスをガス化プロセスに再循環させると、以下の有利な結果が得られる:(i)バイオマスに含まれたエネルギーの大部分が回収される点、(ii)得られる合成ガス流におけるH2:CO比が増加する点、(iii)通常は廃水処理プロセスによる追加の処理工程を必要とし得る、微生物バイオマス中の無機含有量、金属化合物、及びアルカリ元素が、すでに処分が必要な灰分の一部としてガス化プロセスにおいて都合良く回収され、したがって、全体的な廃棄物処理が低減される点、(iv)バイオマスに含まれている窒素が、既存の除去プロセスと良好に統合されるガス化装置内で反応して、N2、NH3、及び微量のHCNになる点。
【0102】
本発明者等はまた、驚くべきことに、バイオガスの生成におけるバイオマスの使用と比較した場合、バイオマスをガス化に再循環させる際に収益が増加することを見出した。具体的には、本発明者等は、合成ガス中のバイオマスの利用とバイオガスの生成におけるバイオマスの利用とを比較すると、収益が321%増加することを見出した。
【0103】
この収益増加のパーセンテージは、以下の表に最も良く示される。この表は、各経路で得られた20GJ/時のバイオマスから生成された値を示す。
【表1】
【0104】
上記の表に示される計算では、嫌気性消化によるバイオマスからバイオガスへの変換の値と、ガス化によるバイオマスから合成ガスへの変換の値とを比較する。嫌気性消化によってバイオマスからバイオガスを生成する変換効率は、約60パーセント(60%)である。ガス化によってバイオマスから合成ガスを生成する変換効率は、約75パーセント(75%)であり、これは、使用されるガス化技術に応じて異なる。GJ/時生成物ガスは、GJ/時バイオマスに各変換効率を掛けたものを表す。GJ/時エタノールは、GJ/時生成物ガスにガス発酵の変換効率を掛けたものを表す。エタノールを生成するためのガス発酵の変換効率は、控えめに言って、約55パーセント(55%)である。この変換効率によって、GJ/時エタノールは、8.25であると分かった。再生可能インセンティブが存在しないバイオガスの現在の価格は、2018年11月5日の時点で、米国の4ドル($4)~EUの10ドル($10)の範囲にある。分析の目的で、バイオガス1ギガジュールあたり8ドル($8/GJ生成物価値)の価格を使用する。低炭素エタノールの価格は、2018年11月5日現在、EUで850ドル/トン(エタノール)、中国で1100ドル/トン(エタノール)、米国で1200ドル/トン(エタノール)である。分析の目的で、$37.30/GJに相当する1000ドル/トン(エタノール)の価格を使用する。$/時収益は、GJ/時生成物ガスに$/GJ生成物価値を掛けたものである。%収益増加は、バイオガスにする嫌気性消化の$/時収益と、合成ガスにするガス化の$/時収益との比較値である。$GJバイオマス価値は、このプロセスが選択されることを考慮した場合のバイオマスの価値を示す。これは、$/時収益をGJ/時バイオマスで割ることによって計算される。示されるように、バイオマスを利用してガス化によって合成ガスを生成することによって、バイオマスの収益及び価値の両方が大幅に改善される。
【0105】
微生物バイオマスをガス化プロセスに供給することのさらなる利点は、微生物バイオマスが、発酵プロセスを適切に供給するために必要とされ得る補足量の合成ガスを提供するのに役立ち得ることである。例えば、現在の設計パラメータに基づいて、100,000トン/年のエタノール生成発酵プロセスに必要な合成ガスを供給するためには、1時間あたり50乾燥トンに相当する1日あたり約1,200乾燥トンのガス化装置供給速度が必要である。この規模の発酵プロセスによって生成されるバイオマスは、通常、1,000~1,200kg/時である。この量のバイオマスはかなりの量である。バイオマスのガス化によって生成可能な補足量の合成ガスは、ガス化装置供給原料が限られている場合又は供給原料の価格が高い場合に、特に有益であり得る。
【0106】
発酵プロセスによって生成されたバイオマスは、バイオマス含有量のパーセンテージを増加させるために、ガス化装置に送る前に追加の乾燥工程を必要とする場合がある。ガス化装置の要件によっては、バイオマスが20重量%超を占めるまでバイオマスを乾燥させる必要がある場合がある。
【0107】
しかしながら、増加した水分含有量を有するバイオマスをガス化することには、生成される合成ガスにおけるH2:CO比が増加するというさらなる利点がある。ガス化原料における水分が約15重量%の場合、得られる合成ガス流は、1:1のH2:CO比を含む。ガス化原料における水分が40重量%まで増加すると、得られる合成ガス流は、2:1のH2:CO比を含む。前述のように、発酵プロセスに供給される合成ガス流におけるH2:CO比が増加すると、発酵プロセスの効率が増加する。
【0108】
基質及び/又はC1炭素源は、産業プロセスの副産物として得ることができ、あるいは、自動車の排出ガス、バイオマスガス若しくは埋立地ガスなどの他の供給源から、又は電気分解から得ることができる。基質及び/又はC1炭素源は、熱分解、焙焼、又はガス化によって生成された合成ガスであり得る。言い換えれば、廃棄物は、熱分解、焙焼、又はガス化によって再利用されて、基質及び/又はC1炭素源として使用される合成ガスを生成することができる。ある特定の実施形態では、産業プロセスは、鉄鋼製造などの鉄金属製品製造、非鉄製品製造、石油精製、石炭ガス化、電力生成、カーボンブラック生成、紙及びパルプ製造、アンモニア生成、メタノール生成、コークス製造、又はこれらの組み合わせからなる群から選択される。これらの実施形態では、基質及び/又はC1炭素源は、任意の既知の方法を使用して、それが大気中に放出される前に産業プロセスから捕捉されてもよい。基質及び/又はC1炭素源は、合成ガスであり得、例えば、石炭のガス化、製油所残留物のガス化、バイオマスのガス化、リグノセルロース材料のガス化、黒液ガス化、都市固形廃棄物のガス化、工業用固形廃棄物のガス化、下水道のガス化、廃水処理からのスラッジのガス化、天然ガスの改質、バイオマスの改質、埋立地ガスの改質、又はこれらの任意の組み合わせによって得られる合成ガスであり得る。都市固形廃棄物の例としては、タイヤ、プラスチック、及びショールズ(sholes)、衣服、繊維製品の繊維が挙げられる。都市固形廃棄物は、分別されている場合とされていない場合がある。バイオマスの例としては、リグノセルロース材料を挙げることができ、微生物バイオマスを挙げることもできる。リグノセルロース材料には、農業廃棄物と森林廃棄物が含まれる場合がある。
【0109】
以下で説明する図では、最初にガス化を伴うプロセスと装置を扱い、次に合成ガスを生成するためのガス化が不要なプロセスと装置を扱う。すべての場合において、発酵からのテールガスは、吸着剤から少なくとも1つの成分を脱着するために使用され、それによってテールガスを濃縮する。濃縮されたテールガスには、複数の用途がある。発酵からのテールガスは、さらに驚くべきことに、例えば未処理の合成ガスよりも優れた脱着剤として機能する。
【0110】
図1は、ガス発酵プロセス100を有するガス化プロセス300、生成物回収プロセス400、及び廃水処理プロセス200の統合を図示する、本発明の一実施態様によるプロセス統合スキームを示す。これらのプロセスは、驚くべき相乗効果と利点をもたらす方法で統合されている。ガス化プロセス300では、ガス化されて合成ガス流302を生成することが可能な任意の好適な材料であり得るガス化供給物301を受け入れる。さまざまな例において、ガス化供給物301は、少なくとも部分的に、分別され、かつ/又は分別されていない都市固形廃棄物からなる。他の例では、ガス化供給物301は、少なくとも部分的に、森林及び/又は農業廃棄物からなる。特定の実施形態では、ガス化供給物301は、分別された都市固形廃棄物、分別されていない都市固形廃棄物、森林廃棄物、農業廃棄物、発酵プロセス100からの少なくとも1つの放出物、生成物回収プロセス400からの少なくとも1つの放出物、及び廃水処理プロセス200からの少なくとも1つの放出物のうちの2つ以上の組み合わせからなる。
【0111】
ガス化プロセス300では、ガス化供給物301を受容し、ガス発酵プロセス100による発酵に適した合成ガス流302を生成する。発酵プロセス100では、この流を、1つ以上の放出流102、104に少なくとも部分的に含有され得る1つ以上の生成物を生成するための炭素源として利用する。さまざまな例において、発酵プロセス100からの放出物は、発酵ブロスである。ただし、合成ガスの特定の成分は、合成ガスが発酵プロセス300で発酵される前に、吸着ユニット10で除去されることになっている。除去される成分には、炭化水素、含酸素化合物、硫黄化合物、及び/又は窒素化合物のうちの少なくとも1つが含まれる。この成分は吸着ユニットの吸着剤に吸着される。吸着ユニットは、温度スイング吸着システム、圧力スイング吸着システム、スイングベッドシステム、移動ベッドシステム、又は固定ベッドシステムであり得る。時間の経過とともに、吸着剤は容量に達し、再生が必要になる場合がある。脱着剤及び/又はパージガスは、吸着剤を再生するのに役立つ。上記のように、ガス化プロセスとガス発酵プロセスのさらなる統合は、発酵プロセス100のテールガス104の少なくとも一部を脱着剤として使用するか、又は12のように吸着ユニット10をパージすることである。吸着ユニット10の脱着剤又はパージ12として使用されるテールガスは、吸着剤から脱着される、少なくとも1つの炭化水素、含酸素化合物、硫黄化合物及び/又は窒素化合物を含む成分が濃縮され、流れ12よりも高い発熱量を有する濃縮されたテールガス18を形成する。この実施形態では、濃縮されたテールガス18は、蒸気ボイラー14に導かれて、高圧蒸気20を生成する。高圧蒸気20は、高圧蒸気から電力を生成するシステム16に供給され、合成ガスがガス発酵プロセス100に導入される前に、合成ガスを圧縮するコンプレッサーに動力を供給する。
【0112】
発酵プロセス100によって生成された1つ以上の生成物を、生成物回収プロセス400によって発酵ブロスから除去及び/又は分離する。好ましくは、生成物回収プロセス400で、1つ以上の生成物406を除去し、低減された量の少なくとも1つの生成物を含む少なくとも1つの放出物402、404、408を生成する。この放出物を、導管402を介して廃水処理プロセス200に送り、ガス化プロセス300及び/又は発酵プロセス100に再循環させることが可能な少なくとも1つの放出物202を生成することができる。
【0113】
発酵プロセス100からの放出物は、発酵プロセス100によって生成されたテールガスである。このテールガスの少なくとも一部を、導管104、124及び125を介してガス化プロセス300に送ることができる。ペールガスの一部は、吸着ユニット10の脱着剤及び/又はパージガスとして使用するためにライン12に導かれる。任意選択の実施形態では、テールガスの少なくとも一部を、導管124によってガス化プロセス300に送り、ガス化供給物301の一部として使用することができる。任意選択の別の実施形態では、テールガスの少なくとも一部を、導管114を介してガス化プロセス300に送り、合成ガス流302を急冷することができる。
【0114】
少なくとも1つの実施形態では、発酵プロセス100からの放出物は発酵ブロスである。発酵ブロスの少なくとも一部を、導管102を介して生成物回収プロセス400に送る。少なくとも1つの実施形態では、生成物回収プロセス400で、微生物バイオマスの少なくとも一部を発酵プロセス100から分離する。さまざまな実施形態において、発酵ブロスから分離された微生物バイオマスの少なくとも一部を、導管404を介して発酵プロセス100に再循環させる。さまざまな実施形態において、発酵ブロスから分離された微生物バイオマスの少なくとも一部を、導管428を介してガス化プロセス300に送る。微生物バイオマスの少なくとも一部をガス化供給物301の一部として使用することができる。
【0115】
さまざまな任意選択の実施形態では、発酵プロセス100からの、微生物バイオマスを含有し得る発酵ブロスを含む廃水流の少なくとも一部を、生成物回収プロセス400に送ることなく、導管104を介してガス化プロセス300に直接送ることができる。廃水の少なくとも一部を、導管124によってガス化プロセス300に送り、ガス化供給物301の一部として使用することができる。発酵ブロスの少なくとも一部を、導管114を介してガス化プロセス300に送り、合成ガス流302を急冷することができる。
【0116】
発酵ブロスを生成物回収プロセス400によって処理する場合、発酵ブロスからの微生物バイオマスの除去によって生成された微生物バイオマス低減水の少なくとも一部を、導管404を介して発酵プロセス100に返送すること、及び/又は導管408を介してガス化プロセス300に送ることができる。微生物バイオマス低減水の少なくとも一部を、導管428を介してガス化プロセス300に送り、ガス化供給物301の一部として使用することができる。微生物バイオマス低減水の少なくとも一部を、導管418を介して送り、合成ガス流302を急冷することができる。さらに、生成物回収プロセス400からの放出物の少なくとも一部を、導管402を介して廃水処理プロセス200に送ることができる。好ましくは、生成物回収プロセス400からの放出物は、低減された量の生成物及び/又は微生物バイオマスを含む。
【0117】
好ましくは、廃水処理プロセス200で、1つ以上のプロセスからの放出物を受容及び処理し、浄化水を生成する。この浄化水を、導管202を介して1つ以上のプロセスに送ることができる。特定の例では、浄化水の少なくとも一部を、導管212を介して発酵プロセスに送る。浄化水の少なくとも一部を、導管232によってガス化プロセス300に送り、ガス化供給物301の一部として使用することができる。浄化水の少なくとも一部を、導管222を介してガス化プロセス300に送り、合成ガス流302を急冷することができる。
【0118】
特定の例では、廃水処理プロセス200で、処理プロセスの一部として微生物バイオマスを生成する。この微生物バイオマスの少なくとも一部を、導管232を介してガス化プロセス300に送ることができる。好ましくは、ガス化プロセス300で、ガス化供給物301の一部として、廃水処理プロセス200によって生成された微生物バイオマスの少なくとも一部を利用する。
【0119】
廃水処理プロセス200で、微生物バイオマスの処理の副生成物としてバイオガスが生成される。このバイオガスの少なくとも一部を、導管202を介してガス化プロセス300に送ることができる。特定の例では、バイオガスの少なくとも一部を、導管232を介してガス化プロセス300に送り、ガス化供給物301の一部として使用する。バイオガスの少なくとも一部を、導管222を介してガス化プロセス300に送り、合成ガス流302を急冷することができる。
【0120】
好ましくは、ガス化プロセス300で、発酵プロセス100、生成物回収プロセス400、及び/又は廃水処理プロセス200から1つ以上の放出物を受容し、合成ガス流302を生成する。この合成ガス流302は、好ましくは、ガス発酵プロセス100の供給原料として使用するのに好適である。
【0121】
ガス発酵プロセス100の原料として使用するのに好適であるために、合成ガス流302は、好ましくは、所望の組成を有するべきである。特定の例では、ガス化プロセス300によって生成された合成ガス302は、除去及び/又は変換する必要のある1つ以上の構成物質を含有する。
【0122】
除去及び/又は変換する必要のあり得る、合成ガス流302中に見られる一般的な構成物質としては、硫黄化合物、芳香族化合物、アルキン、アルケン、アルカン、オレフィン、窒素化合物、リン含有化合物、微粒子状物質、固形物、酸素、ハロゲン化化合物、ケイ素含有化合物、カルボニル、金属、アルコール、エステル、ケトン、過酸化物、アルデヒド、エーテル、及びタールが挙げられるが、これらに限定されない。これらの構成物質は、1つ以上の除去プロセスによって除去することができる。
【0123】
図2は、ガス化プロセス300とガス発酵プロセス100との間に、吸着ユニット10に加えて除去プロセス500をさらに含む、本発明の一態様による
図1のプロセス統合スキームを示す。
【0124】
好ましくは、除去プロセス500は、以下のモジュール、すなわち、加水分解モジュール、酸性ガス除去モジュール、脱酸素モジュール、接触水素化モジュール、微粒子除去モジュール、塩化物除去モジュール、及びシアン化水素研磨モジュールのうちの1つ以上を含む。
【0125】
除去プロセス500を組み込む場合、ガス化プロセス300からの合成ガス302の少なくとも一部を除去プロセス500に送り、合成ガス流302中に見られる少なくとも1つの構成物質の少なくとも一部を除去及び/又は変換する。好ましくは、除去プロセス500で、発酵プロセス100による発酵に好適な処理済み流502を生成するように、構成物質を許容レベル内にする。
【0126】
さまざまな例において、除去プロセス500は、加水分解モジュール、酸性ガス除去モジュール、脱酸素モジュール、接触水素化モジュール、微粒子除去モジュール、塩化物除去モジュール、及びシアン化水素研磨モジュールを含む群から選択される2つ以上の除去モジュールを含む。特定の例では、これらの除去モジュールのうちの1つ以上を使用して、下流のプロセス、例えば、下流の発酵プロセス100及び/又は除去プロセス500における下流の除去モジュールに悪影響を及ぼし得る1つ以上の構成物質をガス流から除去する。
【0127】
除去プロセス500によって除去及び/又は変換された1つ以上の構成物質を、微生物バイオマスのガス化によって導入及び/又は濃縮することができる。特定の例では、除去プロセス500で、アンモニア(NH3)及び/又はシアン化水素(HCN)を除去する。このアンモニア及び/又はシアン化水素を、微生物バイオマスをガス化プロセス300によってガス化する際に導入及び/又は濃縮することができる。アンモニア及びシアン化水素を、微生物バイオマスに含有された窒素(これは、ガス化プロセス300において反応して、N2、NH3、及び微量のHCNになる)から生成することができる。
【0128】
一般に、発酵プロセス100に供給される合成ガス流はガス状である。ただし、合成ガス流は、代替的な形態で供給することもできる。例えば、合成ガス流を、合成ガスで飽和した液体に溶解させることができ、次いで、これを発酵プロセス100に供給することができる。さらなる例として、合成ガスを固体担体上に吸着させてもよい。
【0129】
好ましくは、発酵プロセス100で、C1固定微生物を利用して、合成ガス流302を発酵させ、1つ以上の生成物を生成する。発酵プロセス100におけるC1固定微生物は、一般に、カルボキシドトロピック細菌である。特定の実施形態では、カルボキシド栄養性細菌は、モーレラ(Moorella)、クロストリジウム(Clostridium)、ルミノコッカス(Ruminococcus)、アセトバクテリウム(Acetobacterium)、ユウバクテリウム(Eubacterium)、ブチリバクテリウム(Butyribacterium)、オキソバクター(Oxobacter)、メタノサルシナ(Methanosarcina)、メタノサルシナ(Methanosarcina)、及びデスルホトマクルム(Desulfotomaculum)を含む群から選択される。さまざまな実施形態では、カルボキシド栄養性細菌は、クロストリジウム・オーランチブチリカム(Clostridium autoethanogenum)である。
【0130】
特定の例では、これらのプロセスのうちの1つ以上を、1つのプロセスからの少なくとも1つの放出物の少なくとも一部を少なくとも1つの他のプロセスの加熱源として利用することによって統合する。
【0131】
図3は、ガス化プロセス300、ガス発酵プロセス100、生成物回収プロセス400、及び廃水処理プロセス200の統合を図示する、本発明の一態様によるプロセス統合スキームを示す。さまざまな例において、これらのプロセスを、少なくとも1つのプロセスからの少なくとも1つの放出物を少なくとも1つの他のプロセスの加熱源として利用することによって統合する。特定の実施形態では、廃水処理プロセス200によって生成されたバイオガスを1つ以上のプロセスの加熱源として利用する。好ましくは、廃水処理プロセス200によって生成されたバイオガスの少なくとも一部をガス化プロセス300の加熱源として利用する。特定の例では、ガス化プロセス300で、廃水処理プロセス200によって生成されたバイオガスの少なくとも一部を利用して、ガス化プロセス300によって生成されるスラグの少なくとも一部を溶融する。1つ以上の実施形態では、廃水処理プロセス200によって生成されたバイオガスの少なくとも一部をガス発酵プロセス100の加熱源として利用する。1つ以上の実施形態では、廃水処理プロセス200によって生成されたバイオガスの少なくとも一部を生成物回収プロセス400の加熱源として利用する。1つ以上の実施形態では、廃水処理プロセス200によって生成されたバイオガスの少なくとも一部を除去プロセス500の加熱源として利用する。
【0132】
さまざまな例において、廃水処理プロセス200からのバイオガス流を、1つ以上のプロセスに送る前に、導管202を介して少なくとも1つの除去プロセス600に送る。好ましくは、除去プロセス600で、バイオガス流中の少なくとも1つの硫黄化合物の量を低減させる。
【0133】
廃水処理プロセス200に続いて除去プロセス600を組み込む場合、廃水処理プロセス200からのバイオガスの少なくとも一部を除去プロセス600に送り、バイオガス流中に見られる少なくとも1つの構成物質の少なくとも一部を除去及び/又は変換する。好ましくは、除去プロセス600で、それぞれ後続の1つ以上のプロセス400、100、500、及び/又は300によって使用するのに好適な処理済み流642、612、622、及び/又は632を生成するように、構成物質を許容レベル内にする。
【0134】
特定の実施形態では、発酵プロセス100によって生成されたテールガスを1つ以上のプロセスの加熱源として利用することができる。例えば、発酵プロセス100によって生成されたテールガスの少なくとも一部をガス化プロセス300の加熱源として利用することができる。特定の例では、ガス化プロセス300で、発酵プロセス100によって生成されたテールガスの少なくとも一部を利用して、ガス化プロセス300によって生成されるスラグの少なくとも一部を溶融する。1つ以上の実施形態では、発酵プロセス100によって生成されたテールガスの少なくとも一部を生成物回収プロセス400の加熱源として利用する。さまざまな例において、発酵プロセス100からのテールガスを、1つ以上のプロセスに送る前に、少なくとも1つの除去プロセスに送る。
【0135】
特定の実施形態では、ガス化プロセス300によって生成された未使用の合成ガスを1つ以上のプロセスの加熱源として利用する。好ましくは、ガス化プロセス300によって生成された未使用の合成ガスの少なくとも一部をガス化プロセス300の加熱源として利用する。特定の例では、ガス化プロセス300で、ガス化プロセス300によって生成された未使用の合成ガスの少なくとも一部を利用して、ガス化プロセス300によって生成されるスラグの少なくとも一部を溶融する。1つ以上の実施形態では、ガス化プロセス300によって生成された未使用の合成ガスの少なくとも一部を生成物回収プロセス400の加熱源として利用する。さまざまな例において、ガス化プロセス300からの未使用の合成ガスを、1つ以上のプロセスに送る前に、少なくとも1つの除去プロセスに送る。
【0136】
発酵プロセス100で、好ましくは、さまざまな生成物を生成することができる。これらの生成物は、好ましくは、生成物回収プロセス400を使用することによって分離することが可能である。さまざまな例において、発酵プロセス100によって生成された生成物のうちの少なくとも1つの少なくとも一部を1つ以上のプロセスの供給源として使用することができる。特定の例では、生成物回収プロセス400からのエタノールの少なくとも一部をガス化プロセス300の加熱源として利用する。好ましくは、1つ以上のプロセスの加熱源として利用されるエタノールは、燃料グレードのエタノールの仕様要件を満たしていない粗エタノールである。特定の例では、ガス化プロセス300で、生成物回収プロセス400からの粗エタノールの少なくとも一部を利用して、ガス化プロセス300によって生成されるスラグの少なくとも一部を溶融する。
【0137】
特定の例では、発酵プロセス100でフーゼル油を生成する。このフーゼル油は、生成物回収プロセス400によって、任意の好適な手段を介して、例えば、蒸留装置の精留塔内で回収することができる。少なくとも1つの実施形態では、生成物回収プロセス400からのフーゼル油の少なくとも一部を1つ以上のプロセスの加熱源として使用する。特定の例では、生成物回収プロセス400からのフーゼル油の少なくとも一部をガス化プロセス300の加熱源として利用する。好ましくは、ガス化プロセス300で、生成物回収プロセス400からのフーゼル油の少なくとも一部を利用して、ガス化プロセス300によって生成されるスラグの少なくとも一部を溶融する。
【0138】
図4は、材料のガス化によって合成ガスを生成することなく、基質又はC1炭素源として産業廃棄物ガスを使用する実施形態を示している。様々な場合において、供給物401は、産業プロセスの副産物として、あるいは自動車の排気ガス、バイオガス又は埋立地ガスなどの別の供給源から、又は電気分解から得られる廃ガスからなる。この産業プロセスは、鉄鋼製造などの鉄金属製品製造、非鉄製品製造、石油精製、電力生成、カーボンブラック生成、紙及びパルプ製造、アンモニア生成、メタノール生成、及びコークス製造、又はこれらの組み合わせからなる群から選択される。任意選択で、供給物401はまた、発酵プロセス100からの少なくとも1つの放出物、生成物回収プロセス400からの少なくとも1つの放出物、及び廃水処理プロセス200からの少なくとも1つの放出物を含み得る。
【0139】
発酵プロセス100で、好ましくは、この供給流を、1つ以上の放出流102、104に少なくとも部分的に含有され得る1つ以上の生成物を生成するための炭素源として利用する。さまざまな例において、発酵プロセス100からの放出物は、発酵ブロスである。ただし、供給物の特定の成分は、処理された供給物がライン22を通過し、発酵プロセス100で発酵される前に、吸着ユニット10において除去されることになっている。除去される成分には、炭化水素、含酸素化合物、硫黄化合物、及び/又は窒素化合物のうちの少なくとも1つが含まれる。吸着ユニットによって除去する必要のあり得る、供給物401中に見られる一般的な成分としては、硫黄化合物、芳香族化合物、アルキン、アルケン、アルカン、オレフィン、窒素化合物、リン含有化合物、微粒子状物質、固形物、酸素、ハロゲン化化合物、ケイ素含有化合物、カルボニル、金属、アルコール、エステル、ケトン、過酸化物、アルデヒド、エーテル、及びタールが挙げられるが、これらに限定されない。
【0140】
これらの成分は、吸着ユニット10の吸着剤に吸着される。吸着ユニットは、温度スイング吸着システム、圧力スイング吸着システム、スイングベッドシステム、移動ベッドシステム、又は固定ベッドシステムであり得る。時間の経過とともに、吸着剤は容量に達し、再生が必要になる場合がある。脱着剤及び/又はパージガスは、吸着剤を再生するのに役立つ。発酵プロセス100のテールガス104の少なくとも一部は、吸着ユニット10の脱着剤又はパージ12として使用することができる。吸着ユニット10の脱着剤又はパージ12として使用されるテールガスは、吸着剤から脱着される、少なくとも1つの炭化水素、含酸素化合物、硫黄化合物及び/又は窒素化合物を含む成分が濃縮され、テールガス脱着剤12よりも高い発熱量を有する濃縮されたテールガス18を形成する。この実施形態では、濃縮されたテールガス18は、蒸気ボイラー14に導かれて、高圧蒸気20を生成する。高圧蒸気20は、高圧蒸気から電力を生成するシステム16に供給され、供給物がライン22を介してガス発酵プロセス100に導入される前に、供給物を圧縮するコンプレッサーに動力を供給する。
【0141】
発酵プロセス100からの放出物は、発酵プロセス100によって生成されたテールガスである。テールガスの一部は、吸着ユニット10の脱着剤及び/又はパージガスとして使用するために、ライン104及び12に導かれる。任意選択の実施形態では、テールガスの少なくとも一部は、導管124によって送られて供給物401と結合し得る。
【0142】
好ましくは、発酵プロセス100によって生成された1つ以上の生成物を、上記のように生成物回収プロセス400によって発酵ブロスから除去及び/又は分離する。同様に、少なくとも1つの実施形態では、発酵プロセス100からの放出物は発酵ブロスであり、発酵ブロスの少なくとも一部は、上記のように、導管102を介して生成物回収プロセス400に送られる。
【0143】
図5は、材料のガス化によって合成ガスを生成せずに、基質又はC1炭素源として産業廃棄物ガスを使用する実施形態を示し、ライン18内の濃縮テールガスは、発電ユニット48に向けられる。
図5はまた、ライン18内の濃縮されたテールガスが、例えば、生成物を乾燥させるために、ライン50を介してプロセス回収プロセス及びユニット400に向けられる代替の実施形態を示す。
【0144】
図6は、ガス化装置300を使用して、基質又はC1炭素源として合成ガスを生成する実施形態であって、ライン18内の濃縮されたテールガスが発電ユニットに向けられる実施形態を示している。
図6はまた、濃縮されたテールガスが、例えば、生成物を乾燥させるために生成物回収プロセス及びユニット400に向けられる代替の実施形態を示している。
【0145】
発酵ブロスを生成物回収プロセス400によって処理する場合、発酵ブロスからの微生物バイオマスの除去によって生成された微生物バイオマス低減水の少なくとも一部を、導管404を介して発酵プロセス100に返送すること、及び/又は導管408を介して送って供給物401の一部として使用することができる。さらに、生成物回収プロセス400からの放出物の少なくとも一部を、導管402を介して廃水処理プロセス200に送ることができる。好ましくは、生成物回収プロセス400からの放出物は、低減された量の生成物及び/又は微生物バイオマスを含む。
【0146】
本明細書に列挙される公表文献、特許出願、及び特許を含むすべての参考文献は、各参考文献があたかも参照により組み込まれることが個々にかつ具体的に示され、かつその全体が本明細書中に記載された場合と同じ程度まで、参照により本明細書に組み込まれる。本明細書におけるいかなる先行技術への言及も、その先行技術がいかなる国の努力傾注分野において共通の一般知識の一部をなすという認識ではなく、かつそのように解釈されるべきではない。
【0147】
本発明を説明する文脈において(特に、以下の特許請求の範囲の文脈において)、「1つの(a及びan)」及び「その(the)」という用語並びに同様の指示語の使用は、本明細書中に他に指示がない限り、又は文脈と明らかに相反することがない限り、単数及び複数の両方を包含すると解釈されるものとする。「含む」、「有する」、「含む」、及び「含有する」という用語は、特に断りのない限り、非限定的な用語(例えば、「を含むがこれらに限定されることはない」を意味する)と解釈されるものとする。「から本質的になる」という用語は、組成物、プロセス、又は方法の範囲を、特定の材料、又は工程、又は組成物、プロセス若しくは方法の基本的及び新規の特性に実質的に影響しないものに限定する。代替語(例えば、「又は」)の使用は、代替語の一方、両方、又はこれらの任意の組み合わせを意味すると理解されるべきである。本明細書で使用される場合、「約」という用語は、別段の指示がない限り、指示された範囲、値、又は構造の±20%を意味する。
【0148】
本明細書の値の範囲の列挙は、本明細書で別段の指示がない限り、範囲内に入る各別個の値を個々に言及する簡略法としての機能を果たすことを単に意図し、各別個の値は、あたかも本明細書に個々に列挙されたかのように、本明細書中に組み込まれる。例えば、任意の濃度範囲、パーセンテージ範囲、比率範囲、整数範囲、サイズ範囲、又は厚さ範囲は、別段の指示がない限り、列挙された範囲内の任意の整数の値、及び適切な場合、その分数(整数の10分の1及び100分の1など)を含むと理解されるべきである。
【0149】
本明細書に記載されるすべての方法は、本明細書に別段の指示がない限り、又は文脈によって明らかに相反することがない限り、任意の好適な順序で実施され得る。本明細書に提供されるありとあらゆる例又は例示的な言葉(例えば、「など」)の使用は、本発明をより良く解明することを単に意図し、別段、特許請求されない限り、本発明の範囲を制限しない。本明細書におけるいかなる言葉も、本発明の実施に不可欠ないかなる非特許請求要素を示すものと解釈されるべきではない。
【0150】
本発明の好ましい実施形態が本明細書に記載される。それらの好ましい実施形態の変化形態は、上記の説明を読むことによって当業者に明らかとなり得る。本発明者らは、当業者が必要に応じてそのような変化形を採用することを予想し、本発明者らは、本発明が本明細書に具体的に記載されるものとは別の方法で実施されることを意図する。したがって、本発明は、適用法によって許可された通り、本明細書に添付される特許請求の範囲に記載される主題のすべての修正物及び均等物を含む。さらに、好ましい実施形態のすべての考えられる変化形における上記の要素のあらゆる組み合わせは、本明細書で別段の指示がない限り、又は文脈と明らかに相反することがない限り、本発明によって包含される。
本発明の様々な実施形態を以下に示す。
1.a.ガス化プロセス又は産業廃棄物ガスからの合成ガス流を、炭化水素、含酸素化合物、硫黄化合物、窒素化合物、又はそれらの任意の組み合わせのうちの少なくとも1つを含む成分を吸着剤に吸着させることによって処理して処理済み流を生成すること、
b.微生物を使用してバイオリアクター内で前記処理済み流の少なくとも一部を発酵させて、少なくとも1つの生成物と、少なくとも二酸化炭素を含むテールガス流とを含む放出物を生成すること、
c.前記テールガス流の少なくとも一部を使用して前記成分を少なくとも部分的に脱着することによって前記吸着剤を再生して、二酸化炭素と脱着された成分とを含む濃縮されたテールガス流を提供すること、及び、
d.前記濃縮されたテールガス流を、
i.蒸気ボイラーで燃焼させて蒸気を生成すること、
ii.発電すること、
iii.ガス化プロセスへ再循環させること、又は
iv.生成物回収ゾーンに送ること、のうちの少なくとも1つに利用すること、を含む方法。
2.テールガスが、メタン、一酸化炭素、及び水素をさらに含む、上記1に記載の方法。
3.前記微生物が、1つ以上のC1固定微生物である、上記1に記載の方法。
4.前記C1固定微生物が、モーレラ(Moorella)、クロストリジウム(Clostridium)、ルミノコッカス(Ruminococcus)、アセトバクテリウム(Acetobacterium)、ユウバクテリウム(Eubacterium)、ブチリバクテリウム(Butyribacterium)、オキソバクター(Oxobacter)、メタノサルシナ(Methanosarcina)、及びデスルホトマクルム(Desulfotomaculum)からなる群から選択される、上記3に記載の方法。
5.前記蒸気が高圧蒸気である、上記1に記載の方法。
6.前記蒸気を、発酵生成物の蒸留、吸着冷却装置の工程、蒸気駆動圧縮、廃水の蒸発、バイオマスの乾燥、適所での蒸気工程、適所での洗浄工程、原料の乾燥、蒸気で駆動される原料コンベヤー、建物の暖房、発電、及び発酵プロセスのコンプレッサーに電力を供給するための発電のために使用する、上記1に記載の方法。
7.産業廃棄ガスが、鉄金属製品製造、非鉄製品製造、石油精製、電力生成、カーボンブラック生成、紙及びパルプ製造、アンモニア生成、メタノール生成、コークス製造、及びそれらの任意の組み合わせから選択されるプロセスからのものであり、かつ/又は、合成ガス流が、石炭のガス化、製油所残留物のガス化、バイオマスのガス化、リグノセルロース材料のガス化、黒液ガス化、都市固形廃棄物のガス化、工業用固形廃棄物のガス化、下水道のガス化、廃水処理からのスラッジのガス化、天然ガスの改質、バイオガスの改質、埋立地ガスの改質、又はそれらの任意の組み合わせからのものである、上記1に記載の方法。
8.前記発電が、コージェネレーション又は直接発電である、上記1に記載のプロセス。
9.前記テールガス流が、前記ガス化プロセス又は前記産業廃棄物ガスからの前記合成ガス流と比較して、
a.N
2
が濃縮されている、
b.CO
2
が濃縮されている、
c.不純物が枯渇している、又は
d.(a)(b)若しくは(c)の任意の組み合わせを兼ね備えている、上記1に記載のプロセス。
10.前記テールガス流の少なくとも一部を使用した前記成分の脱着が、合成ガス流を使用した前記成分の脱着に比較して改善される、上記9に記載のプロセス。
11.a.ガス化原料をガス化して、少なくとも一酸化炭素、水素、水及びタールを含む合成ガスを生成すること、
b.前記合成ガスを冷却して、凝縮によって水と少なくとも1つのタールを分離し、水と少なくとも1つのタールが枯渇した残りの合成ガスを提供すること、
c.前記少なくとも1つのタールを、
i.燃料ガス、天然ガス、合成ガス、ガス発酵プロセスからのテールガス、又はそれらの任意の組み合わせの燃焼によって生成される火炎を使用して、前記少なくとも1つのタールを燃焼させること、又は、
ii.前記少なくとも1つのタールを廃水処理プロセスに送ること、によって廃棄すること、及び、
d.前記残りの合成ガスの少なくとも一部を微生物を使用してバイオリアクターで発酵させて、少なくとも1つの生成物を含む放出物を生成すること、を含む方法。
12.吸着剤を使用する吸着によって前記合成ガスから少なくとも第2のタールを除去することをさらに含む、上記11に記載の方法。
13.前記発酵が前記テールガスをさらに生成する、上記12に記載の方法。
14.前記テールガスを使用して前記吸着剤を再生することをさらに含む、上記13に記載の方法。
15.前記吸着剤を再生した後に、前記テールガスを利用して蒸気を生成することをさらに含む、上記14に記載の方法。
16.前記蒸気を使用して電力を生成することをさらに含む、上記15に記載の方法。
17.前記電力を使用して発酵工程のコンプレッサーに電力を供給することをさらに含む、上記16に記載の方法。
18.a.吸着剤を収容する吸着ユニットと、
b.前記吸着ユニットと流体連結しているバイオリアクターと、
c.前記バイオリアクターと前記吸着ユニットとを流体連結しているテールガス導管と、
d.濃縮テールガス利用ユニットであって、
i.前記吸着ユニットと流体連結しているガス化装置、
ii.蒸気発生ユニット、
iii.電力生成ユニット、又は
iv.前記バイオリアクターと流体連結している生成物回収ユニット、のうちの少なくとも1つを含む濃縮テールガス利用ユニットと、
e.前記吸着ユニットと前記濃縮テールガス利用ユニットとを流体連結している濃縮テールガス導管と、を備える装置。
19.前記蒸気発生ユニットと発電システムとを流体連結している蒸気導管をさらに備える、上記18に記載の装置。
20.前記発電システムと電気的に通信し、前記バイオリアクターと流体連結しているコンプレッサーをさらに備える、上記19に記載の装置。
21.前記電力生成ユニットが、コージェネレーション電力生成ユニット又は直接電力生成ユニットである、上記18に記載の装置。
22.前記吸着ユニットと流体連結している供給原料導管をさらに備える、上記18に記載の装置。