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特許7461506キャリア基板およびキャリア基板の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-26
(45)【発行日】2024-04-03
(54)【発明の名称】キャリア基板およびキャリア基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 37/02 20060101AFI20240327BHJP
   H05K 1/03 20060101ALI20240327BHJP
【FI】
C04B37/02 B
H05K1/03 610D
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2022566157
(86)(22)【出願日】2021-04-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-30
(86)【国際出願番号】 EP2021061054
(87)【国際公開番号】W WO2021219685
(87)【国際公開日】2021-11-04
【審査請求日】2022-11-18
(31)【優先権主張番号】102020111700.0
(32)【優先日】2020-04-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】515063390
【氏名又は名称】ロジャーズ ジャーマニー ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Rogers Germany GmbH
【住所又は居所原語表記】Am Stadtwald 2, D-92676 Eschenbach, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100116322
【弁理士】
【氏名又は名称】桑垣 衛
(72)【発明者】
【氏名】ヴェルカー、ティロ
(72)【発明者】
【氏名】シュミット、カルステン
(72)【発明者】
【氏名】ブリッティング、シュテファン
【審査官】末松 佳記
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第03217209(US,A)
【文献】特開昭61-032752(JP,A)
【文献】特開2019-081690(JP,A)
【文献】国際公開第2011/034075(WO,A1)
【文献】特開平09-181423(JP,A)
【文献】特開2013-027918(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 37/00-37/04
H05K 1/03-1/05
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気部品用の支持部としてのキャリア基板(1)であって、
少なくとも1つの金属層(10)と、
ラミック要素、ガラス要素、ガラス-セラミック要素、および高温耐熱プラスチック要素のうちの少なくとも1つを含む絶縁要素(30)
を備え、
前記少なくとも1つの金属層(10)および前記絶縁要素(30)が、主延伸面(HSE)に沿って延び、前記主延伸面(HSE)と垂直に延びる積層方向(S)に沿って、重なり合って配置され、
接合層(12)が、前記少なくとも1つの金属層(10)と前記絶縁要素(30)との間で、完成したキャリア基板(1)中に形成され、
前記接合層(12)の活性金属を含む接着層(13)が、5Ω/sq超の表面抵抗を有し、
前記活性金属は、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、ニオブ(Nb)、セリウム(Ce)、タンタル(Ta)、マグネシウム(Mg)、ランタン(La)、またはバナジウム(V)を含むことを特徴とする、キャリア基板(1)。
【請求項2】
前記積層方向(S)に測定され、前記主延伸面(HSE)と平行に延びる1つまたは複数の所定のエリア(F)内の複数の測定点にわたって平均化された前記接合層(12)の厚さ(D)が、20μm未満の値を有する、請求項1に記載のキャリア基板(1)。
【請求項3】
前記キャリア基板(1)が、前記少なくとも1つの金属層(10)の反対側で前記絶縁要素(30)に接合された少なくとも1つの追加金属層(20)を備え、追加接合層(12’)が、前記少なくとも1つの追加金属層(20)と前記絶縁要素(30)との間で、完成した前記キャリア基板(1)中に形成され、前記積層方向(S)に測定され、前記主延伸面(HSE)と平行に延びる1つまたは複数のエリア(F)内の複数の測定点にわたって平均化された前記接合層(12)および前記追加接合層(12’)の累積厚さが、0.045mm未満の値を有する、請求項1に記載のキャリア基板(1)。
【請求項4】
前記接合層(12)および前記追加接合層(12’)の両方または一方が、はんだ材料およびはんだ基材(16)またははんだ材料もしくははんだ基材(16)の銀リッチ層を含む、請求項に記載のキャリア基板(1)。
【請求項5】
前記接合層(12)および前記追加接合層(12’)の両方または一方が、活性金属を含む接着層(13)である、請求項に記載のキャリア基板(1)。
【請求項6】
活性金属を含む前記接着層(13)中の活性金属の割合が、15重量%超である、請求項5に記載のキャリア基板(1)。
【請求項7】
前記積層方向(S)に測定されて合算され、前記主延伸面(HSE)と平行に延びる前記エリア内の複数の測定点にわたって平均化された前記接合層(12)および前記追加接合層(12’)の合計厚さ(D)が、0.005mm未満の値を有する、請求項4または5に記載のキャリア基板(1)。
【請求項8】
前記絶縁要素(30)の表面粗さ(R)が、少なくともいくつかのエリアにおいて、1.0μm未満である、請求項1~7のいずれか一項に記載のキャリア基板(1)。
【請求項9】
前記絶縁要素(30)の表面粗さ(R)が、少なくともいくつかのエリアにおいて、1.0μm超である、請求項1~のいずれか一項に記載のキャリア基板(1)。
【請求項10】
前記少なくとも1つの金属層(10)の上下縁部間で前記主延伸面(HSE)と平行な方向に測定された前記少なくとも1つの金属層(10)の最外縁部領域の長さの標準偏差が、0.4未満の値を有する、請求項1~9のいずれか一項に記載のキャリア基板(1)。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載のキャリア基板(1)を製造するための方法であって、
少なくとも1つの金属層(10)と、セラミック要素(30)、ガラス要素、ガラス-セラミック要素、および高温耐熱プラスチック要素のうち少なくとも1つを含む絶縁要素(30)と、を用意することであって、前記少なくとも1つの金属層(10)および前記絶縁要素(30)が、主延伸面(HSE)に沿って延びていることと、
前記主延伸面(HSE)と垂直に延びる積層方向(S)に重ね合わせて、前記少なくとも1つの金属層(10)および前記絶縁要素(30)を配置することであって、前記少なくとも1つの金属層(10)と前記絶縁要素(30)との間に活性金属層(15)が配置されていることと、
前記活性金属層(15)を介して前記少なくとも1つの金属層(10)を前記絶縁要素(30)に接合することによって前記少なくとも1つの金属層(10)と前記絶縁要素(30)との間に接合層(12)を形成することと
を含む方法。
【請求項12】
配置された前記活性金属層(15)中の不純物の割合が、1重量%未満である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記絶縁要素上に配置された前記活性金属の密度が、前記活性金属の理論密度の90%超となるように、物理気相成長法および化学気相成長法の少なくとも一方、または蒸着、もしくは電気化学析出が実行される、請求項11又は2に記載の方法。
【請求項14】
前記絶縁要素(30)の表面粗さ(R)が、少なくともいくつかのエリアにおいて、1.0μm未満である、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
少なくとも1つのはんだ層と、少なくとも1つの活性金属層と、を含む多層はんだ付けシステムが提供される、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャリア基板およびキャリア基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術(たとえば、特許文献1、特許文献2、および特許文献3)により、プリント配線板または配線板として、金属-セラミック基板等のキャリア基板が充分に公知周知となっている。通常、金属-セラミック基板またはキャリア基板の一方の部品面には、電気部品および導電体トラック用の接続エリアが配置されており、電気部品と導電体トラックとの相互接続によって電気回路を形成可能である。金属-セラミック基板の必須構成要素は、絶縁層(セラミックで構成されるのが好ましい)および当該絶縁層に接合された少なくとも1つの金属層である。セラミックで構成された絶縁層は、比較的高い絶縁強度を有することから、パワーエレクトロニクスにおいて特に有利であることが分かっている。金属層を構造化することによって、電気部品用の導電性トラックおよび接続エリアまたは導電性トラックもしくは接続エリアが実現され得る。
【0003】
金属-セラミック基板の提供に成功する要件は、金属層とセラミック層との間の永久的な接合である。従来技術によれば、いわゆる直接金属接合プロセスすなわちDCBまたはDABプロセスのほか、はんだ材料を介して金属層をセラミック層に接合することが知られている(AMBプロセス)。
【0004】
本明細書においては、たとえば金属層または金属箔(特に銅層または銅箔も)をセラミック材料に接合するための活性ろう付けプロセスが、金属-セラミック基板の製造に特に使用されるプロセスとして理解されるものとする。このプロセスにおいては、銅、銀、および/または金等の主成分のほかに活性金属も含む硬質はんだを用いて、金属箔(たとえば、銅箔)とセラミック基板(たとえば、窒化アルミニウム)との間の接合がおよそ650~1000℃の温度で生成される。活性金属は、たとえばHf、Ti、Zr、Nb、Ceから成る群から選択される少なくとも1つの元素であり、化学反応によってはんだとセラミック材料との間に接合を生成する一方、はんだと金属との間の接合は、金属硬質はんだ接合である。
【0005】
さらに、たとえば特許文献4および特許文献5によれば、セラミック層への金属層の接合による金属-セラミック基板の形成に熱間静水圧プレスが用いられるプロセスが知られている。熱間静水圧プレスは、はんだ付け法または直接金属接合法を用いた場合の接合時に形成される多くのボイドを削減するための後処理にも使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】独国特許出願公開第102013104739号明細書
【文献】独国特許発明第19927046号明細書
【文献】独国特許出願公開第102009033029号明細書
【文献】独国特許出願公開第102013113734号明細書
【文献】特開平4-325470号公報
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
従来技術に基づいて、本発明の目的は、既知のキャリア基板に関して、特に、金属の絶縁要素(たとえば、セラミック要素)に対する接合挙動に関して、さらなる改良がなされたキャリア基板、特に、金属-セラミック基板を提供することである。
【0008】
この目的は、請求項1に係るキャリア基板および請求項7に係るキャリア基板を製造するための方法を提供することによって、本発明により達成される。他の実施形態については、従属請求項および本明細書から明らかとなる。
【0009】
本発明の第1の態様によれば、電気部品用の支持部としてのキャリア基板、特に、金属-セラミック基板であって、
少なくとも1つの金属層と、絶縁要素、特に、セラミック要素、ガラス要素、ガラス-セラミック要素、および高温耐熱プラスチック要素のうちの少なくとも1つと、を備え、少なくとも1つの金属層および絶縁要素が、主延伸面に沿って延び、主延伸面と垂直に延びる積層方向に沿って、重なり合って配置され、接合層が、少なくとも1つの金属層と絶縁要素との間で、製造済キャリア基板中に形成され、接合層の接着層が、5Ω/sq超、好ましくは10Ω/sq超、特に好ましくは20Ω/sq超の表面抵抗を有する、キャリア基板が提供される。
【0010】
従来技術により知られるキャリア基板と比較して、本発明によれば、接合層の接着層の表面抵抗は、5Ω/sq超、好ましくは10Ω/sq超、特に好ましくは20Ω/sq超である。決定された表面抵抗は、少なくとも1つの金属層を絶縁要素へ接合するのに不可欠な、接合層中の活性金属の割合と直接関連する。表面抵抗は、接合層中の活性金属の割合の低下とともに高くなる。これに対応して、表面抵抗が高いことは、接合層中の活性金属含有量が少ないことに対応する。
【0011】
表面抵抗は、単一のパラメータで決まることはなく、複数のパラメータの相互作用から影響を受ける。たとえば、表面抵抗の規定には、活性金属の純度、接合層の厚さ、および絶縁要素の表面粗さのうちの少なくとも1つも寄与する。特に、高い表面抵抗は、少なくとも2つのパラメータの相互作用によってのみ実現され得る。
【0012】
活性金属の割合が高い場合は脆弱な金属間相の形成が支配的となって、絶縁層上の金属層の剥離強度を損なうことが分かっている。言い換えると、本発明に係る表面抵抗は、脆弱な金属間相の形成の抑制による接合層の剥離強度の改善すなわち増大を表すのに用いられる。したがって、要件に応じた表面抵抗の選択的な調整により、少なくとも1つの金属層とセラミック要素との間の特に強い接合を実現可能である。このような接合強度の増大は、キャリア基板の耐用年数の観点から都合が良い。
【0013】
表面抵抗を決定するには、たとえばエッチングによって、金属層と、必要に応じてはんだ基層とを最初に、製造されたキャリア基板から除去する。その後、少なくとも1つの金属層とはんだ基層とが除去されたキャリア基板の上面または下面の4点測定によって、表面抵抗を測定する。特に、材料サンプルの表面抵抗は、表面積に対する抵抗として理解されるものとする。従来、表面抵抗は、Ω/sq(スクウェア)という単位で表される。表面抵抗の物理単位は、Ωである。
【0014】
好ましくは、積層方向に測定され、主延伸面と平行に延びる1つまたは複数の所定のエリア内の複数の測定点にわたって平均化された接合層の厚さが、0.20mm未満、好ましくは10μm未満、特に好ましくは6μm未満の値を有する。複数のエリアに言及する場合は特に、少なくとも1つの金属層が最大等サイズのエリアに細分化され、少なくとも1つの金属層を細分化したこれらのエリアそれぞれにおいて、厚さに関する少なくとも1つの値、好ましくは複数の測定値が記録されることになる。そして、異なる点でこのように決定された厚さが算術平均される。
【0015】
少なくとも1つの金属層と絶縁要素との間には、従来技術により知られるキャリア基板と比較して、相対的に薄い接合層が形成される。この背景において、接合層の明確な厚さを決定するために、1つまたは複数の所定または規定のエリア内の複数の測定点にわたって測定厚さが平均化される。これは、絶縁要素、特に、セラミック要素が一般的に起伏しているという事実、すなわち、絶縁要素が波形であるという事実を考慮に入れているため都合が良い。特に、当業者であれば、主延伸面と平行に延びる方向に沿う数ミリメートルまたは数センチメートルにわたって見られるように、波形が、絶縁要素の大略平坦なコースの変調を意味することが理解される。したがって、このような起伏は、絶縁要素上に通例付加的に存在する絶縁要素の表面粗さとは異なる。このような一般的に避けられない絶縁要素の波形を厚さ決定に取り入れることで、波形によって接合層が変動し得ること、特に、絶縁要素の頂部領域よりも絶縁要素の谷部領域において接合層が大きくなり得ることが確かとなる。
【0016】
この起伏にも関わらず、平均厚さは、従来技術のキャリア基板で知られている値よりも著しく低い値である。これは特に、または一例として、絶縁要素と少なくとも1つの金属層との間に、たとえばはんだ基材(たとえば、活性金属を含まない場合もあるし、活性金属が存在しない場合もある)のほかに、個別すなわち別々に必要な活性金属層を絶縁要素と少なくとも1つの金属層との間に配置することによって実現されることになる。化学気相成長法および物理気相成長法の少なくとも一方(たとえば、スパッタリングプロセス)によるはんだ基材、少なくとも1つの金属層、および絶縁要素のうちの少なくとも1つへの活性金属の適用によって、相対的に薄い活性金属層が実現され、これにより相対的に薄い接合層、特に、均質で薄い接着層が得られる。また、真空プラズマおよび真空蒸着の両方または一方によって、はんだ基材、絶縁要素、および少なくとも1つの金属層のうちの少なくとも1つの上に活性金属層を設けることも考えられる。また、電気めっきによって活性金属層を実現することも考えられる。活性金属層およびはんだ基材の両方または一方が箔として設けられるのが特に好ましい。
【0017】
好ましくは、活性金属を含む接着層中の活性金属の割合が、15重量%超、好ましくは20重量%超、特に好ましくは25重量%超である。
さらに、はんだ基材および活性金属層の両方または一方が凹部を有することが考えられる。このような場合は、接合プロセスにおいてはんだ基材および活性金属層の両方または一方が液状化して上記凹部または凹部エリアを満たすことになるため、はんだ基材および活性金属層の両方または一方に、より厚い層を使用可能である。したがって、たとえば活性金属層がより大きな厚さを伴う場合でも、望ましくは相対的に少量の活性金属を提供することによって、同様に接合層を形成可能である。たとえば、凹部を有するはんだ基材および活性金属層の両方または一方は、たとえばメッシュ状またはフェンス状の網目により形成され、絶縁要素と少なくとも1つの金属層との間に配置されたメッシュまたはエキスパンドメタルである。この場合は、はんだ基材および活性金属層の両方または一方が箔として設けられるのが好ましい。
【0018】
相対的に薄い接合層の形成によって特に、たとえば接合層の除去によってキャリア基板、特に、少なくとも1つの金属層および接合層を構造化するための少なくとも特定のエリアにおける「第2エッチング」プロセスでの手間が少なくなる。少なくとも1つの金属層の複数の金属部を互いに電気的に隔離するために実行されるこの構造化は、エッチング、機械加工ステップ、およびレーザ光のうちの少なくとも1つによって実行されるのが好ましい。また、層の厚さを小さくすることにより、たとえばはんだ材料中の材料欠陥を原因とする接合層中の考え得る欠陥の数を減らせるため都合が良いことが示されている。接合層中の欠陥またははんだ材料中の材料欠陥は、接合層に巨大な粒子を形成する可能性がありかつ完全に融解しないためスペーサとしてはんだ間隙の最小化の妨げとなる、または、接合層に巨大な粒子を形成する可能性があるかもしくは完全に融解しないためスペーサとしてはんだ間隙の最小化の妨げとなる、(たとえば活性金属粒子等の)はんだ材料中の大きな粒子を意味するものと理解される。相対的に大きな粒子が活性金属層の一部となって接合層または接着層中に見え続けるようなことがないようにする簡単かつ容易な方法として、特にスパッタリングを用いた適用がある。最後に、製造されたキャリア基板上に薄い接合層が均質に形成されるため都合が良い。
【0019】
特に、接合層の平均厚さは、規定エリアまたは複数のエリアにおいて厚さが確率的または統計的に分布した様態で決定または測定された後、その算術平均が決定されることを意味する。この目的のために、たとえば、好ましくは走査型電子顕微鏡(SEM:scanning electron microscope)を用いることにより、基板を通って主延伸面と垂直な方向にそれぞれ延びる異なる断面の複数の顕微鏡像が最初に取得される。この場合、断面像は、主延伸面と垂直な断面に沿って延びる。その後、断面において厚さが決定される。言い換えると、それぞれが主延伸面と垂直で、表面または複数の異なる表面において測定点に均一または不規則に分布した複数の断面が取得される。たとえば、キャリア基板からスライスを除去することにより、互いに平行にオフセットした複数の断面が用いられる。その後、基板上の規定のエリアすなわちさまざまな断面において、好ましくは25個または100個超、より好ましくは200個超、特に好ましくは500個超の接合層の厚さが測定され、算術平均が決定される。起伏が測定結果に及ぼす影響を取り除くための、2つの測定点間の距離は、少なくとも100μmである。基板においては通例、2つの接合層がセラミックの両側で対向するため、前述した反対側の層厚の測定値についても、同じ数だけ測定する必要がある。選択エリアが大きくなるほど、起伏によって接合層の決定厚さが誤った像または歪んだ像が記録される確率は低くなる。特に主延伸面と平行に延びる所定または規定のエリアは、マスターカードの場合、25cm超、好ましくは50cm超、特に好ましくは100cm超のサイズを有する。マスターカードから分離されたキャリア基板の場合、このサイズは、1cm超、好ましくは1.5cm超、特に好ましくは5cm超であってもよい。
【0020】
決定に寄与する測定エリアを、キャリア基板のサイズに関わらず決定および選択するための以下の方法が提供されることが特に好ましい。
第1のステップにおいて、キャリア基板の少なくとも1つの金属層は、等サイズの9つの矩形、特に、正方形に分割される(すなわち、略等サイズの複数のエリアに分割される)。このように規定された測定エリアそれぞれにおいて、2つまたは3つの断面像が生成され、これらの断面それぞれにおける少なくとも1つの金属層の平均厚さの決定に使用される。断面は、たとえば2000倍または2500倍の倍率でSEMプロセスにより記録されるのが好ましい。その後、第2のステップにおいて、9つのすべての矩形測定エリアに分布した断面に記録された合計18個または27個の厚さの平均が取得される。このようにして、平均厚さは、キャリア基板全体について、確実に、少なくとも1つの金属層と絶縁要素との間の接合層の代表値となるため都合が良い。言い換えると、本段落に記載のプロセスは、均一に分布した測定エリアにおいて、少なくとも1つの金属層に対して決定された平均厚さを提供する。厚さの平均値の決定に寄与する測定エリアを選択するための本明細書に記載の方法は、表面抵抗の決定にも同様に用いられるものとする。
【0021】
キャリア基板は、製造状態において、絶縁要素に接合された少なくとも1つの金属層が構造化されたプリント配線板として提供されるのが好ましい。たとえば、この目的のために、接合ステップの後には、電気または電子部品用の導電体トラックおよび接続部または導電体トラックもしくは接続部を実現するために、たとえばレーザ加工、エッチング、および機械加工のうちの少なくとも1つによる構造化も実行される。セラミック要素上に製造された金属-セラミック基板においては、金属層の反対側に別の金属層、特に、裏面メタライゼーションおよび冷却要素の両方または一方が設けられるのが好ましい。裏面メタライゼーションは撓みに対処するものであり、冷却要素は、プリント配線板または金属-セラミック基板に接続された電気または電子部品が動作中に発する熱を効果的に放熱するものであるのが好ましい。
【0022】
金属-セラミック基板における少なくとも1つの金属層および/もしくは少なくとも1つの他の金属層または絶縁要素用に考えられる材料は、銅、アルミニウム、モリブデン、タングステン、ニッケル、および/またはそれらの合金(CuZr、AlSi、またはAlMgSi等)のほか、CuW、CuMo、CuAl、および/もしくはAlCu等の積層体、またはCuW、CuM、もしくはAlSiC等のMMC(金属マトリクス複合材)である。さらに、完成した金属-セラミック基板上の少なくとも1つの金属層は、特に成分メタライゼーションとして表面改質されているのが好ましい。考えられる表面改質は、クラックの形成またはクラックの拡大を抑制するための、たとえば貴金属、特に、銀および/もしくは金、(無電解)ニッケルもしくはENIG(「無電解ニッケル浸漬金(electroless nickel immersion gold)」)等を用いた封止、または、メタライゼーション上の縁部一体成型である。
【0023】
セラミック要素は、セラミックの材料として、Al、Si、AlN、HPSXセラミック(すなわち、ZrOの割合がxパーセントのAlマトリックスを含むセラミックであり、たとえば、9%のZrOを含むAL=HPS9、または25%のZrOを含むAl=HPS25)、SiC、BeO、MgO、高密度MgO(理論密度の90%超)、TSZ(テトラゴン安定化酸化ジルコニウム(tetragonally stabilized zirconium oxide))を含むのが好ましい。この背景において、セラミック要素は、複合または混成セラミックとして設計され、さまざまな所望の特性を組み合わせるために、材料組成がそれぞれ異なる複数のセラミック層が重なり合って配置され、一体的な結合によって絶縁要素を形成することが考えられる。
【0024】
接合層は、少なくとも1つの金属層とセラミック要素との間で、特に中断なく、すなわち連続して、平面となるように形成されるのが好ましい。少なくとも1つの接合層と絶縁要素との間に接合層が形成されたエリアに対する、少なくとも1つの金属層と絶縁要素との間に接合層が形成されていないエリアの比は、0.05mm未満、好ましくは0.02mm未満、特に好ましくは0.007mm未満であるのが好ましい。この背景において、当業者であれば特に、前記比を実現するためには、パターニングによって少なくとも1つの金属層の金属が取り除かれたエリアは含まれないことが理解されよう。
【0025】
好ましくは、キャリア基板が、少なくとも1つの金属層の反対側で絶縁要素に接合された少なくとも1つの追加金属層を備え、追加接合層が、少なくとも1つの追加金属層と絶縁要素との間で、製造されたキャリア基板中に形成され、積層方向に測定され、主延伸面と平行に延びる1つまたは複数の所定のエリア内の複数の測定点にわたって平均化された接合層および追加接合層の累積厚さが、0.045mm未満、好ましくは0.0225mm未満、特に好ましくは0.0135mm未満の値を有する。
【0026】
好ましくは、接合層および追加接合層の両方または一方が、はんだ材料およびはんだ基材の両方または一方の銀を含む。一般的に、この層は、製造されたキャリア基板においてはんだ基材の主成分が蓄積したはんだ基層を形成する。たとえば、接合層は、銀ベースのはんだ材料の場合、少なくとも1つの金属層と絶縁要素との間に形成された層となることが理解される。これは、本質的に銀を含むことから、金属-セラミック基板の積層方向に沿った断面において識別され得る。この場合、使用または測定される厚さは、銀リッチ相の固体部分を表し、特に、少なくとも1つの金属層(特に、銀層に対する縁部領域)に見られる含有物を除外する。
【0027】
接合層には、銀ベースのはんだ材料または銀ベースのはんだ基材からの銀のほかに、接着層が形成されている。金属-セラミック基板の場合、接着層は、一方では活性金属(たとえば、チタン)を含み、他方ではセラミック元素の構成物質(たとえば、酸素O、窒素N、炭素C、ケイ素Si、アルミニウムAl、マグネシウムMg、およびカルシウムCaのうちの少なくとも1つ)を含む化合物により実現または形成されているのが好ましい。これに対応して、接着層は、たとえば、特に、異なる酸化状態の窒化チタン、炭化チタン、および酸化チタンのうちの少なくとも1つを含む。
【0028】
さらには、箔として、ペーストとして、物理気相成長法および化学気相成長法の少なくとも一方により形成された層として、および/または電気めっき層としてはんだ基材を設けることが考えられる。
【0029】
好ましくは、接合層および追加接合層の両方または一方が、活性金属を含む接着層である。特に、接合層は、活性金属を含む接着層によってのみ形成されるものとする。この点、接合層中の接着層は、窒素、酸素、または炭素等のセラミック要素の構成物質と、セラミックのその他の構成物質と、を接合に含む。したがって、接合層は、たとえば窒化チタン、酸化チタン、および炭化チタンのうちの少なくとも1つを含む。たとえば、接合層は、活性金属を含む接着層のみを備え、すなわち接合層は、銀も他のはんだ基材成分も含まない。この場合、積層方向に測定され、主延伸面と平行な表面または複数の表面内の複数の測定点にわたって平均化された接合層の厚さは、0.003mm(3000nm)未満、好ましくは0.001mm(1500nm)未満、特に好ましくは0.0005mm(500nm)未満、または0.00035mm(350nm)未満の値を想定する。特に、はんだ基材および銀部分の両方または一方が取り除かれているこのような接合層の場合は、これに対応して、さらに薄い接合層が形成され得る。
【0030】
特に、活性金属を含む接合層は、特に、絶縁要素中の起伏によって変調されたはんだ基層とは異なり、厚さが実質的に一定である。特に、1つまたは複数のエリア内で決定された測定厚さの値は、0.2μm未満、好ましくは0.1μm未満、特に好ましくは0.05μm未満の標準偏差が割り当てられた分布を有する。特に、活性金属層および結果としての接合層の物理気相成長法および化学気相成長法の少なくとも一方によって、接合層の厚さが均質かつ均一分布となり、接合層は特に、接着層のみから成る。また、接着層は、はんだ基材と併せて形成されている場合、厚さが一定となり得る。
【0031】
本発明の別の目的は、本発明に係るキャリア基板、特に、金属-セラミック基板を製造するための方法であって、
少なくとも1つの金属層と、絶縁要素、特に、セラミック要素、ガラス要素、ガラス-セラミック要素、および高温耐熱プラスチック要素のうちの少なくとも1つと、を用意することであって、少なくとも1つの金属層および絶縁要素が、主延伸面に沿って延びている、用意することと、
主延伸面(HSE)と垂直に延びる積層方向に重ね合わせて、少なくとも1つの金属層および絶縁要素を配置することであって、少なくとも1つの金属層と絶縁要素との間に活性金属層が配置されている、配置することと、
活性金属層を介して少なくとも1つの金属層を絶縁要素に接合することによって少なくとも1つの金属層と絶縁要素との間に接合層を形成する、接合することと、
を含む方法である。
【0032】
キャリア基板について説明したすべての利点および特性は、プロセスへの移行または類似的な移行が可能であり、逆もまた同様である。
活性金属層は、活性金属の、化学析出または電気化学析出と、物理気相成長法(PVD:physical vapor deposition)と、の両方または一方によって実現されるのが好ましい。この場合、活性金属層は、絶縁要素、はんだ基材、および少なくとも1つの金属層のうちの少なくとも1つの上に形成可能である。この代替または追加として、はんだ基材層およびはんだ箔の両方または一方と、ならびに/または少なくとも1つの金属層との組み合わせで提供される別個の箔または箔として活性金属層を設けることが考えられる。
【0033】
特に、別々に設けられた活性金属層の使用によって、この層を相対的に薄くすることができることから、特に1つまたは複数のエリア内の異なる測定値で平均化された場合に、特許請求の範囲に係る接合層の相対的に薄い厚さを実現可能となる。活性金属の例は、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、クロム(Cr)、ニオブ(Nb)、セリウム(Ce)、タンタル(Ta)、マグネシウム(Mg)、ランタン(La)、およびバナジウム(V)である。本明細書においては、金属La、Ce、Ca、およびMgが容易に酸化され得ることに留意するものとする。さらに、元素Cr、Mo、およびWは、古典的な活性金属ではないが、少なくとも1つの金属層(たとえば、銅)と金属間相を形成せず、端部溶解性がないことから、Siと少なくとも1つの金属層、はんだシステム、またははんだ材料との間の接触層として適していることに留意するものとする。
【0034】
特に、はんだ基材は、金属ベースの基材、特に、銀ベースの基材または銅ベースの基材である。銀ベースの基材においては、銀が主成分(すなわち、重量の割合が最も高い成分)である一方、銅ベースの基材においては、銅が主成分である。銀ベースの基材の例は、AgCu、特に、AgCu28、AgCuIn、AgCuSn、およびAgCuGaである。銅ベースの基材の例は、CuSn、CuAg、CuIn、CuGa、CuInSn、CuInMn、CuGaSnである。NiCrMnまたはSnCuに基づくはんだ基材を使用することも考えられる。
【0035】
好ましくは、配置された活性金属層において、非金属不純物の割合が、0.1重量%未満、好ましくは0.05重量%未満、特に好ましくは0.01重量%未満である。不純物を最小限に抑えることによって、層厚を低減可能であるため都合が良い。これは、不純物が存在する場合、絶縁要素への少なくとも1つの金属層の接合には、存在する活性金属の一部しか寄与せず、その他の活性金属は不純物を介して結合するためである。不純物の割合を適切に、相対的に低くすることによって、より効果的な接合が実現されるため、活性金属の割合を減らすことができる結果、接合層をさらに薄い層として作製可能となる。
【0036】
さらに、好ましくは、絶縁要素上に堆積された活性金属の密度が、活性金属の理論密度の90%超、好ましくは理論密度の95%超、特に好ましくは理論密度の99%超となるように、物理気相成長法および化学気相成長法の少なくとも一方、または電気化学析出が実行される。当業者であれば特に、活性金属の理論密度によって、人工的なボイドも細孔も導入されていない活性金属のデータシートで見られる密度が理解されよう。特に、密度が相対的に高いと、不純物として活性金属の望ましくない結合を引き起こし得る酸素、窒素、および炭素のうち少なくとも1つを、接合中の活性金属層中に存在しないようにすることができる。これに対応して、活性金属層の密度が高くなると、少なくとも1つの金属層とセラミック要素との接合に効果的に使用可能な割合が多くなるため、活性金属層をより薄い層として作製可能である、という事実に至る。
【0037】
活性金属層としては、厚さが10nm~1000nm、好ましくは50nm~750nm、特に好ましくは100~500nmのものを使用するのが好ましい。さらに、物理気相成長法および化学気相成長法の少なくとも一方によって活性金属が絶縁要素およびはんだ基材の両方または一方(膜としても形成されるのが好ましい)に適用されるのが好ましい。たとえば、活性金属をはんだ材料とともに所望の厚さへと圧延して、少なくとも1つの金属層と絶縁要素との間に、相対的に薄い接合層を形成することも考えられる。
【0038】
好ましくは、はんだ箔が用いられ、これは、20μm未満、好ましくは12μm未満、特に好ましくは8μm未満である。はんだ層の厚さは、2~20μmまたは2~5μm、好ましくは8~15μm、特に好ましくは5~10μmの値である。さらには、箔として、ペーストとして、物理的析出および化学的析出の少なくとも一方により形成された層として、および/または電気めっき層としてはんだ基材を設けることが考えられる。
【0039】
さらに、好ましくは、絶縁要素の表面粗さRが、少なくともいくつかのエリアにおいて、1.0μm未満、好ましくは0.7μm未満、特に好ましくは0.5μm未満である。絶縁要素の表面上の粗さを抑えることによって、少なくとも1つの金属層を絶縁要素に接合するための活性金属の有効利用に(酸素が蓄積し得る結果として)汚染の面で悪影響を及ぼす空気包有物または中空エリアを回避できて都合が良い。特に、中心部の粗さが想定される。記号Rにより表される中心粗さの値は、表面上の測定点から中心線までの平均距離を示す。中心線は、当該中心線と平行な平面におけるプロファイル全体の偏差が基準線の長さ全体に分布するように、基準線内で実際のプロファイルと交差する。
【0040】
また、絶縁要素の表面粗さRが、少なくともいくつかのエリアにおいて、1.0μm超、好ましくは0.4μm~1.5μm、特に好ましくは0.75~1.25μmであることも考えられる。特に、粗さが増すと表面抵抗も高くなることが分かっている。
【0041】
さらに、特に絶縁要素に対向する側で、フリンジ形成の影響を受けにくくするように、少なくとも1つの金属層の最外縁部を設計可能であることが分かっている。従来技術のプロセスにおいては通例、フリンジ状の最外縁部が形成されるが、このフリンジ形成を抑制することができる。縁部領域における少なくとも1つの金属層の辺長は、絶縁要素と反対側の少なくとも1つの金属層の上縁と最外周の絶縁要素対向側の金属層を制限する下縁との間の延長として決定されることが好ましい。少なくとも1つの金属層の下縁によって、はんだ材料またはその残留物等の材料付着手段が生じる。少なくとも1つの金属層の構造化の背景においては、構造化によって形成された金属部の周方向に沿って下縁が直線状に延びず、フリンジ状の経路を生じさせることが、従来技術の実施において一般的である。これにより、主延伸面と平行な方向に測定された上縁と下縁との間の少なくとも1つの金属層の長さが周方向に沿って変動する。これは、少なくとも1つの金属層の最外周におけるフリンジ形成に対応する。本明細書において、少なくとも1つの金属層の上縁と下縁との間で寸法規定された最外縁部の長さは、確率的に分布している。
【0042】
この少なくとも1つの金属層の最外縁部の長さの変動を制限可能であることが分かっている。特に、少なくとも1つの金属層の上下縁部間で主延伸面と平行な方向に測定された少なくとも1つの金属層の最外縁部領域の長さの標準偏差は、0.4未満、好ましくは0.2未満、より好ましくは0.1未満の値を有する。縁部領域における少なくとも1つの金属層の長さの分散が小さいことから、如何なる製造公差をも取り込んで、隣り合う金属部を互いに近づけることが可能であるため都合が良い。このため、可能な限り小型のプリント配線板の形成が促進されることになる。
【0043】
さらに、少なくとも1つの金属層および少なくとも1つの追加金属層の両方または一方は、活性はんだ付け、熱間静水圧プレスプロセス、およびDCBプロセスのうち少なくとも1つによって、絶縁要素に接合されるのが好ましい。
【0044】
たとえば、金属-セラミック基板を製造するためのプロセスであって、
特に少なくとも1つのはんだ箔または硬質はんだ箔の形態のはんだ層を用意することと、
少なくとも1つの活性金属層によって、絶縁要素、少なくとも1つの金属層、および少なくとも1つのはんだ層のうちの少なくとも1つを被覆することと、
積層方向に沿って絶縁要素と少なくとも1つの金属層との間に少なくとも1つのはんだ層を配置することにより、少なくとも1つのはんだ層および少なくとも1つの活性金属層を含むはんだシステムを形成することであって、少なくとも1つのはんだ層のはんだ材料が、融点低減材料もリンも含まないことが好ましいことと、
活性はんだ付けプロセスを用いることにより、はんだシステムを介して、少なくとも1つの金属層を少なくとも1つのセラミック層に接合することと
を含むプロセスが提供される。
【0045】
特に、少なくとも1つのはんだ層、好ましくは融点降下元素を含まない少なくとも1つのはんだ層、特に好ましくはリンを含まない少なくとも1つのはんだ層と、少なくとも1つの活性金属層と、を含む多層はんだ付けシステムが提供される。少なくとも1つの活性金属層および少なくとも1つのはんだ層の分離は、特にはんだ層が箔である場合に、相対的に薄いはんだ層が実現され得るため有利であることが示されている。分離がなければ、脆弱な金属間相の存在または一般的な活性金属およびそれぞれの金属間相の高い弾性係数および高い降伏強度により、はんだペーストまたははんだ層の再成形が妨げられ、その結果、最小層厚が活性金属含有はんだ材料の製造特性により制限されるため、活性金属を含むはんだ材料について、相対的に大きなはんだ層厚が実現されることになる。したがって、活性金属含有はんだ層の場合は、結合プロセスに必要な最小厚さではなく,技術的に可能な最小層厚によって、はんだ層の最小層厚が決定される。結果として、活性金属を含む、より厚いこのはんだ層は、薄い層よりも高価となる。リンを含まない場合、当業者であれば特に、はんだ層中のリンの割合が150ppm未満、100ppm未満、特に好ましくは50ppm未満であることが理解されよう。
【0046】
はんだ層、特に、リンを含まないはんだ層は、純金属のほかに、複数の材料を含むのが好ましい。たとえば、はんだ層に用いられるはんだ材料の成分の1つがインジウムである。
【0047】
さらに、物理気相成長法および化学気相成長法の少なくとも一方を用いて、ならびに/または電気めっきによって、はんだ層を形成するためのはんだ材料を活性金属層および少なくとも1つの金属層の両方または一方に適用することが考えられる。このように、はんだ付けシステムにおいて、相対的に薄いはんだ層、特に、均質分布の薄いはんだ層を実現可能であるため都合が良い。
【0048】
たとえば、キャリア基板、特に、金属-セラミック基板の製造においては、
セラミック要素および金属層を用意するステップと、
セラミック要素を含み、好ましくは金属層により形成されるか、または金属層を含む気密容器を用意するステップと、
熱間静水圧プレスにより金属層をセラミック要素に接合して、金属-セラミック基板を形成するステップと
がさらに提供され、
金属-セラミック基板を形成するために、金属層とセラミック要素との間に、活性金属層または活性金属を含む接触層が少なくとも部分的に配置されることにより、セラミック要素への金属層の接合が促進される。容器は、金属層および追加金属層の両方または一方により金属容器として形成されているのが好ましい。あるいは、ガラス容器の使用も考えられる。
【0049】
熱間静水圧プレスにおいては特に、圧力下の加熱によって接合が実行され、この場合、金属容器の第1および第2の金属層または第1もしくは第2の金属層、特に、金属-セラミック基板の後者の金属層および存在する任意の共晶層は、融液相に変化しない。同様に、熱間静水圧プレスにおいては、直接金属接合プロセス、特に、DCBプロセスよりも低い温度が必要となる。
【0050】
はんだ材料を用いた、セラミック層への金属層の接合では、通例は少なくとも1つの金属層の溶融温度を下回る温度が使用されるが、これと比較して本方法では、活性金属さえあればはんだ基材が不要となるため都合が良い。熱間静水圧プレス時の圧力の使用または利用は、一方で第1の金属シートおよび第2の金属シートの両方または一方と、他方でセラミック要素と、の間の空気包有物または空洞を減少させることが可能であることにより、形成または製造される金属-セラミック基板における空洞の形成の頻度が低減または完全に回避されるため、好都合であることが示されている。このことは、金属層または金属容器の第1および第2の金属層または第1もしくは第2の金属層とセラミック要素との間の接合の品質に有利な影響を及ぼす。また、「第2エッチング」の簡素化と、はんだ残留物および銀マイグレーションの回避と、が可能となるため都合が良い。
【0051】
また、熱間静水圧プレス時に、セラミック要素と少なくとも1つの金属層との間に追加のはんだ材料を導入することも考えられ、追加のはんだ材料の溶融温度は、熱間静水圧プレスの実行温度より低くてもよい(すなわち、少なくとも1つの金属層の溶融温度より低くてもよい)。
【0052】
熱間静水圧プレス時、金属容器は、加熱・加圧装置において、100~2000bar、好ましくは150~1200bar、特に好ましくは300~1000barのガス圧と、少なくとも1つの金属層の溶融温度、特に、溶融温度を下回る温度までの300℃のプロセス温度と、に曝されるのが好ましい。このように、直接金属接合プロセス(たとえば、DCBプロセスまたはDABプロセス)に必要な温度と、活性はんだ付けに用いられるはんだ基材と、のいずれかまたは両方の使用なく、金属層すなわち金属容器の第1および第2の金属シートまたは第1もしくは第2の金属シートをセラミック要素に接合可能であることが分かっているため都合が良い。また、適切なガス圧の恩恵または使用により、可能な限りボイドのない、すなわち、金属層とセラミック要素との間に気体を含まない金属-セラミック基板を作製できる可能性がある。特に、本明細書に援用する特許文献4に記載のプロセスパラメータが使用される。
【0053】
添付の図面を参照した本発明の好適な実施形態に関する以下の説明から、他の利点および仕様が明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
図1】本発明の第1の例示的な実施形態に係るキャリア基板である。
図2】接合前の図1のキャリア基板の構成要素である。
図3】本発明の第2の例示的な実施形態に係るキャリア基板である。
図4】接合前の図3のキャリア基板の構成要素である。
図5】本発明の第3の例示的な実施形態に係るキャリア基板の詳細図である。
【発明を実施するための形態】
【0055】
図1は、本発明の第1の例示的な実施形態に係るキャリア基板1を示している。特に金属-セラミック基板の形態の、このようなキャリア基板1は、当該キャリア基板1の部品面の少なくとも1つの金属層10に接合可能な電子または電気部品用の支持部またはプリント配線板として用いられるのが好ましい。この背景においては、適切な導電体トラックおよび接続エリアまたは導電体トラックもしくは接続エリアを形成するように少なくとも1つの金属層10が構造化されること、すなわち、完成したキャリア基板1において、互いに電気的に絶縁された複数の金属部を少なくとも1つの金属層10が備えることが好ましい。したがって、主延伸面HSEに沿って延びる少なくとも1つの金属層10および主延伸面HSEに沿って延びる絶縁要素30は、主延伸面HSEと垂直に延びる積層方向Sに沿って、互いに重なり合って配置されるとともに、接合層12を介して互いに接合または接続されているのが好ましい。キャリア基板1は、少なくとも1つの金属層10のほかに、積層方向Sに見て絶縁要素30の少なくとも1つの金属層10と反対側に配置され、追加接合層12’を介して絶縁要素30に接合された、少なくとも1つの追加金属層20を備えるのが好ましい。
【0056】
この場合、少なくとも1つの追加金属層20は、キャリア基板1、特に、金属-セラミック要素の撓みに対処する裏面メタライゼーションとして、かつ、金属-セラミック基板1上の電気もしくは電子部品による如何なる熱入力をも放熱するように設計されたヒートシンクとして、またはそのいずれかとして、使用される。
【0057】
特に、キャリア基板1は、少なくとも1つの金属層10と絶縁要素30との間に配置された接合層12を有する。この点、積層方向Sに測定した場合の接合層12の厚さを相対的に薄くするのが好都合であることが示されている。さらに、少なくとも1つの金属層10の構造化を目的としたエッチングプロセスが提供される場合は、少なくとも1つの金属層10と絶縁要素30との間の接合層12の厚さを相対的に薄くするのが好都合であることが示されている。たとえば、このようにして、狭隘な絶縁トレンチ、すなわち、少なくとも1つの金属層10の個々の金属部間の距離が実現されていてもよい。たとえば、2つの金属部間の厚さ200μm~400μmの隔離トレンチ、主延伸面HSEと平行な方向に測定した場合に、700μm未満、好ましくは600μm未満、特に好ましくは500μm未満の幅zがこのように実現されてもよい。
【0058】
さらに、接合層12を薄く形成すると、最終的に使用されるはんだ材料の材料欠陥に起因する接合層12中の考え得る欠陥の数をさらに減らせるため好都合であることが示されている。
【0059】
図1に示す例において、接合層12は特に、活性金属を含む接着層13である。キャリア基板1は、絶縁要素30がセラミック要素である金属-セラミック基板であるのが好ましい。この場合、接着層13は、一方でセラミック要素の成分と他方で活性金属との化合物を含む材料組成により形成されているのが好ましい。これらは非常に脆弱で壊れやすい化合物であるため、この接着層13を可能な限り薄く設計することは、絶縁要素30上の少なくとも1つの金属層10の接着強度に有益である。
【0060】
図2は、接合前の図1のキャリア基板1を示している。接合プロセスに先立って、絶縁要素30(すなわち、特にセラミック要素)および少なくとも1つの金属層10が、積層方向Sに見て重なり合って配置され、少なくとも1つの金属層10と絶縁要素30との間には活性金属層15が配置されている。
【0061】
さらに、絶縁要素30の少なくとも1つの金属層10の反対側に少なくとも1つの追加金属層20を接合するために、絶縁要素30と少なくとも1つの追加金属層20との間には、活性金属層15が同様に配置されているのが特に好ましい。この場合も同様に、少なくとも1つの追加金属層20および絶縁要素30は、積層方向Sに互いに重なり合って配置されている。たとえば、本明細書において、絶縁要素30への少なくとも1つの金属層10の接合は熱間静水圧プレスによって実行され、この場合、絶縁要素30、活性金属層15、および少なくとも1つの金属層10を含む集合体に作用する圧力および温度下で接合が実現される。この目的のために、絶縁要素30と活性金属層15とを含む集合体が配置された容器が用いられるのが好ましい。気密金属容器の一部が少なくとも1つの金属層10を構成することにより、集合体の一部を構成しているのが好ましい。あるいは、「フラッシュライトアニーリング」の背景においては、活性金属層15を介した、絶縁要素30への少なくとも1つの金属層10の接合が生じるように、エネルギー入力(たとえば、フラッシュライトの適用)によって活性金属層15を補助することも考えられる。「フラッシュライトアニーリング」は、絶縁要素30および少なくとも1つの金属層10上または絶縁要素30もしくは少なくとも1つの金属層10上に活性金属層15を載置した後に実行されるのが好ましい。
【0062】
アニーリングプロセスの結果、活性金属層15は、接合層12、特に、活性金属含有接着層13となる。特に、接合層12は活性金属含有材料を含み、たとえば活性金属含有材料は特に、セラミック材料に応じて、好ましくは異なる酸化状態の炭化チタン、窒化チタン、および酸化チタンのうちの少なくとも1つであってもよい。
【0063】
活性金属層15は、物理気相成長法および化学気相成長法の少なくとも一方(たとえば、スパッタリング)によって、絶縁要素30および少なくとも1つの金属層10の両方または一方に適用されるのが好ましい。この目的のために、特に好ましくは、物理気相成長法において、活性金属の理論密度の90%超、好ましくは活性金属の理論密度の95%超、特に好ましくは活性金属の理論密度の99%超の密度の活性金属層15が実現される。空気の割合、特に、接合プロセスにおける活性金属層15中の酸素の割合が少なくなると、絶縁要素30への少なくとも1つの金属層10の接合において、少なくなった割合の活性金属のみ(すなわち、考え得る最大の割合ではない)が用いられることになるため都合が良い。
【0064】
特に、活性金属層15中の不純物の割合は、1重量%未満、好ましくは0.7重量%未満、特に好ましくは0.5重量%未満であるのが好都合であることが示されている。これにより、最大限に薄い層として活性金属層15を適用可能となり、相対的に薄い接合層12が形成されることになる。たとえば、不純物のサイズは、キャリア材料の純度によって決まる。たとえば、積層方向Sに測定した場合の活性金属層15の層厚は、活性金属層15を介した、絶縁要素30への少なくとも1つの金属層10の接合に先立って、10nm~1000nm、好ましくは50nm~150nm、特に好ましくは100nm~500nmである。さらに、少なくとも1つの金属層10を絶縁要素30に結合または接合した後は、特にエッチングまたはエッチングプロセスによって構造化が実行されるのが特に好ましい。この目的のために、少なくとも1つの金属層10および接合層12の部分または部分エリアの両方を再度除去することによるパターニングの実行によって、少なくとも1つの金属層10中の金属部を互いに電気的に絶縁する。
【0065】
図3は、第2の例示的な実施形態に係るキャリア基板1を示している。本明細書において、図3の実施形態は、キャリア基板1が接着層13のほかに、接合層12としてのはんだ基層14を有する点のみが、図1の実施形態と異なる。はんだ基層14は特に、材料として用いられるはんだ基材16のはんだ主成分またははんだ基材16の必須成分を含む。はんだ基層14は、特に銀ベースのはんだ基材16の場合は、銀で形成されているのが好ましい。
【0066】
図4は、結合前の図3の例示的な実施形態を示している。図2に示したシステムとは対照的に、活性金属層15のほかに、積層方向Sに見て絶縁要素30と少なくとも1つの金属層10との間に配置されたはんだ基材16が設けられる。はんだ基材16は、積層方向Sに見て、活性金属層15と少なくとも1つの金属層10との間に配置されているのが好ましい。はんだ付けプロセスによって、絶縁要素30と、活性金属層15と、はんだ基材16と、少なくとも1つの金属層10とを含む組み立て集合体が、好適なプロセス温度に曝され、活性金属層15とはんだ基材16とを備えたはんだシステムによって、絶縁要素30への少なくとも1つの金属層10の接合がもたらされる。図4の例において、少なくとも1つの追加金属層20を絶縁要素30に接合する場合にも同じことが当てはまる。はんだ基材16は、一方で少なくとも1つの金属層10および少なくとも1つの追加金属層20または少なくとも1つの金属層10もしくは少なくとも1つの追加金属層20と他方で絶縁要素30とを接合するために配置された箔であるのが好ましい。この背景においては、物理気相成長法および化学気相成長法の少なくとも一方により、はんだ材料または箔として形成されたはんだ基材16に活性金属層15を適用することが考えられる。特に、はんだ基材16と併せて、別個の活性金属層15を使用することにより、相対的に薄い接合層12を実現可能であることが示されている。
【0067】
さらに、図1図4の例示的な実施形態に示すような別個の活性金属層15を使用することによって、2次元の連続した接合層12を実現可能となるため好都合であることが分かっている。このことは、たとえば等量のチタンが想定される場合または等厚のはんだシステムが用いられる場合で、はんだ基材16および活性金属の両方を含むペースト材料を使用する場合には保証されない。これらの接合欠陥は統計的に、接合層の領域に分布する。同様に、絶縁要素30への少なくとも1つの金属層10の選択的な平面的または連続的接合によって、中断のない、すなわち連続した接合層12を実現可能であり、これによって、絶縁要素30への少なくとも1つの金属層10の接合挙動が大幅に改善される。少なくとも1つの金属層10と絶縁要素30との間に接合層12が形成されたエリアに対する、少なくとも1つの金属層10と絶縁要素30との間に接合層12が形成されていないエリアの比は、0.05未満、好ましくは0.025未満、特に好ましくは0.01未満の値を有するのが好ましい。この比を決定するために、キャリア基板1の構造化されていない部分のみを使用することが特に意図される。言い換えると、製造されたキャリア基板1において、前記比は、少なくとも1つの金属層10と少なくとも1つの追加金属層20とのうちの1つおよび/または複数の金属部と関連する。この比は、金属-セラミック基板全体またはキャリア基板1全体にわたって確立されるのが好ましく、それぞれ別個の金属部全体にわたって個々の部分エリアが合計される。
【0068】
図5は、本発明の第3の例示的な実施形態に係るキャリア基板1を示している。特に、上側は、積層方向Sに実質的に対応する視認方向におけるキャリア基板1の平面図である。したがって、少なくとも1つの金属層10と、少なくとも1つの金属層10の最外縁部に対して突き出した絶縁要素30の上面と、が見えている。この突き出しまたは突出部(いわゆるプルバック)は特に、絶縁要素30の後面における少なくとも1つの金属層10と少なくとも1つの追加金属層20との間の電気的フラッシュオーバを防止するものである。接合層12の厚さDを定量的に決定するには、平均値の決定の後、少なくとも1つの金属層10を一体的に形成するか、またはキャリア基板の表面全体にわたって一体的に延びる異なるエリアF内の異なる位置、好ましくは複数の矩形での決定が好ましい。図示の例において、金属層は、略等しいサイズの9つの矩形または正方形すなわちエリアに分割される。9つのエリアFそれぞれにおいては、SEMプロセスによって、少なくとも2つ、好ましくは3つの断面像が記録される。個々の断面像においては、当該断面に沿って、接合層12、特に、接着層13の平均厚さDが決定される。この断面は、主延伸面HSEと垂直である。その後、断面において決定されたすべての厚さの算術平均が決定される。このようにして、キャリア基板1または絶縁要素30が一般的に起伏すなわち波形を有する結果、製造プロセスまたは接合プロセスにおいて、はんだ基材16がその上側の絶縁要素30の谷部に流れ込み、変調した主延伸面HSEに沿って接合層12の厚さDが生成されることになり得るため都合が良い。それにも関わらず、好都合であると説明した効果および結果は、厚さDが相対的に薄い場合、特に、代表的なペースト状はんだ材料16が使用される場合に生じる同等の接合層12よりも薄い場合にも起こることが分かっている。断面像と関連付けられた厚さDを決定するため、この厚さDは、たとえば断面に沿って連続的にノンストップで記録すなわち積分することも可能であるし、多数の離散測定による像に記録した後、平均値を決定することも可能である。
【0069】
少なくとも1つの追加金属層20と絶縁要素30との間に形成された接合層12および追加接合層12’の累積厚さが用いられるのが好ましい。積層方向Sに見て、互いに反対側または互いに対応するように配置された接合層12および追加接合層12’それぞれの厚さDが合計される。累積厚さDは、1つまたは複数の領域F中の異なる位置で再決定された後、少なくとも1つの金属層10を一体的に形成する複数のエリアまたは複数の矩形にわたって決定されるのが好ましい。特に、平均化という用語は、少なくとも1つの金属層10全体にわたり、異なる表面エリアまたは矩形において、ある数、好ましくは合計25個超の測定値、特に好ましくは100個超の測定値、特に好ましくは500個超の測定値が用いられ、それぞれの表面エリアまたは矩形において、測定値がエリアF全体にわたって確率的に分布することを意味する。
【0070】
図6aおよび図6bは、キャリア基板1から取得した2つの例示的な断面図である。特に、これらは、銅-セラミック基板である。図6aは、通常のはんだペーストが製造に用いられた銅-セラミック基板を示している。一方、図6bの銅-セラミック基板は、PVDプロセスにより適用された活性金属層15とはんだ基材16とを用いて製造されたものである。
【0071】
従来の銀ベースのはんだペーストは活性金属としてチタンを含み、はんだペースト中のチタンの割合を活性金属換算で1.5μmの層厚に割り当て可能である一方、PVDにより適用された活性金属層は、厚さDが300nmである。層厚が20μmのAgCuInをはんだ基材16として使用した。
【0072】
まず、これらの図面では、はんだ基層14を淡色のストライプとして示している。また、両断面図から、銅層すなわち少なくとも1つの金属層10中の銀の含有物42が明らかである。これらの銅層中の含有物42は、接合層13の層厚測定には組み込まれない。
【0073】
SEM法により取得された像から取り出した図示の切り抜きは、断面像6bにおいて、均質に分布した接合層13が形成されていることを示す。また、多くの脆弱な金属間相41は本質的に、従来のはんだペーストを用いて製造された接合層13において見られることが分かる。本明細書において、脆弱な金属間相41は、はんだ基層14および接合層13の両方において見られる。
【0074】
一方、脆弱な金属間相41の数、頻度、およびサイズは、特に、脆弱な金属間相41の数が減少するほど剥離強度が高くなるように、剥離強度に影響を及ぼす。脆弱な金属間相41の形成は、活性金属(この場合はチタン)の量と関係する。
【0075】
この結果として、図7に示す接着促進層13の剥離強度と厚さとの関係が得られる。剥離強度(N/mm)は、チタン層の厚さ、またははんだペーストに使用されているチタンの量に基づく換算厚さが減少するにつれて少高くなることが分かる。
【0076】
本明細書において決定される剥離強度は、以下のように決定した。
まず、厚さが0.8mmの銅層がはんだ付けによってセラミック要素の両側に接合されたキャリア基板1を用意する。剥離試験のため、長さ×幅を105mm×5mmとして銅を構造化する。キャリア基板を引っ張り試験機に固定する。本明細書においては、90°(±5°)で10mm/minの均一速度でセラミック表面から銅ストリップを剥離する。印加する力は、ストリップの長さまたは測定の全体にわたって連続的に記録する。測定長の10%~90%に印加される剥離力の値の範囲から平均値を形成した後、剥離ストリップの幅に対して正規化する(N/mm)。
【0077】
特に、脆弱な金属間相42の割合は、接合層13、特に、接着層13における活性金属の割合によって決まることが示されている。一方、活性金属、特に、チタンの割合は、活性金属の割合が低下するにつれて高くなる表面抵抗から決まり得る。
【0078】
図8aおよび図8bは、表面抵抗を決定するための方法を示している。本明細書においては、最初にキャリア基板1から少なくとも1つの金属層10を除去した後、はんだ基層14を除去して、本質的に接着層13のみが残るようにする(図8a参照)。その後、4点法によって表面抵抗を決定する。
【0079】
この目的のために、5mmの等しい間隔sの列として互いに隣り合って配置された4つの測定チップ45の配列を使用する。この配列を図8bに示す。エッチングした接着層13上に、丸みを帯びた測定チップ45を接触圧1.5N以下で載置する。測定チップ45とサンプルの縁部との間に十分な距離すなわち隣り合う2つの測定チップ45間の距離sの3倍超の距離が確保されるように注意する。2つの外部測定チップ45が電流Iを誘起する間に、2つの内部測定チップ45によって電圧Vを決定する。サンプルの加熱を回避するため、50mA未満の電流Iを使用する。したがって、電流Iに対する電圧Vの比から抵抗Rが決まる。その後、以下の式に従って、表面抵抗R(Ω/sq)を決定する。
【0080】
【数1】
上述の通り、以下のはんだ材料を用いて製造した接着層13を測定した。
【0081】
【表1】
活性金属としてチタンを含む従来のはんだペーストを基準(基準1および基準2)として使用する。ペーストに含まれるチタンの量は、1500nmの活性金属換算層厚に対応する。この場合、ペーストの厚さは、およそ30μmである。このような換算層厚は、チタンがペーストの成分であり、ペースト中で均一に分布していることから、ペースト中のチタンの割合に基づいて決定される。
【0082】
銅層と層厚がおよそ30μmのSiセラミック層との間にペーストを載置した後、接合プロセスを行った。
PVDによってSiセラミック層に適用された厚さ300nmのチタン活性金属層でサンプルAMB V1~AMB V5によるはんだシステムを構成した。はんだ基材16は、基準1および2で使用した従来のはんだペースト(チタンなし)の組成に対応しており、それぞれをはんだ箔として提供した。
【0083】
Siセラミック層と銅層との間にはんだシステムを載置した後、接合を行った。
表面抵抗を決定するため、エッチングによって再度、銅層とはんだ基層14とを除去した。結果として、セラミック層の上下それぞれに接着層13が残った。
【0084】
XRF測定によって、サンプルの上面で測定対象の構成物質を決定した。その結果、接着層を含むセラミック層の上面または下面における元素の割合(at%)は、以下の通りである。
【0085】
【表2】
この表から、サンプルの上下面の銀および銅の割合はごくわずかであり、表面抵抗に大きな影響を及ぼさないことが分かる。
図9は、上述の方法を用いて決定した表面抵抗の結果をまとめたものである。サンプルAMB V1~AMB V5の表面抵抗は、基準1および基準2の表面抵抗の15倍超であることが分かる。サンプルAMB V1~AMB V5には、製造業者およびPVDシステムの異なるセラミックも使用した。表面抵抗は、XRF測定からも分かる通り、接合層12および接着層13中のチタンの割合を反映している。このチタンの割合の減少は、接合層12、特に、接着層13における脆弱な金属間相42の形成に大きな影響を及ぼし、この金属間相は、剥離強度に悪影響を及ぼす。したがって、表面抵抗の低下は、表面抵抗が5Ω/sq超、好ましくは10Ω/sq超、特に好ましくは20Ω/sq超の場合に金属間相の形成が抑制されることを反映している。
【符号の説明】
【0086】
1 キャリア基板
10 金属層
12 接合層
12’ 追加接合層
13 接着層
14 はんだ基層
15 活性金属層
16 はんだ基材
20 追加金属層
30 絶縁層
41 脆弱な金属間相
42 含有物
45 測定チップ
s 距離
D 厚さ
HSE 主延伸面
S 積層方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7
図8A
図8B
図9